説明

排気浄化装置

【課題】パティキュレートフィルタを備えた状態でNOとNO2の比を制御してNOxの低減化を行う排気浄化装置を提供する。
【解決手段】エンジン1の排気管11途中に装備されて酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応させ得る選択還元型触媒16と、選択還元型触媒16の入側で排気ガス9中に還元剤として尿素水21を添加する尿素水添加手段22と、尿素水添加手段22の添加より上流に装備されて排気ガス9中の煤を捕捉するパティキュレートフィルタ28と、パティキュレートフィルタ28より上流で排気ガス9中に放電してNO2を発生させるプラズマ発生装置25と、排気ガス9中のNOとNO2の比を調整するようプラズマ発生装置25を温度領域ごとに制御して尿素水添加手段22に尿素水の添加を行しめる共にパティキュレートフィルタ28中の煤を酸化し得る制御装置32とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジン等のエンジンに適用される排気浄化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレート(Particulate Matter:粒子状物質)は、炭素質から成る煤と、高沸点炭化水素成分から成るSOF分(Soluble Organic Fraction:可溶性有機成分)とを主成分とし、更に微量のサルフェート(ミスト状硫酸成分)を含んだ組成を成すものであるが、この種のパティキュレートの低減対策としては、排気ガスが流通する排気管の途中に、パティキュレートフィルタを装備することが従来より行われている。
【0003】
この種のパティキュレートフィルタは、コージェライト等のセラミックから成る多孔質のハニカム構造となっており、格子状に区画された各流路の入口が交互に目封じされ、入口が目封じされていない流路については、その出口が目封じされるようになっており、各流路を区画する多孔質薄壁を透過した排気ガスのみが下流側へ排出されるようにしてある。
【0004】
そして、排気ガス中のパティキュレートは、前記多孔質薄壁の内側表面に捕集されて堆積するので、目詰まりにより排気抵抗が増加しないうちにパティキュレートを適宜に燃焼除去してパティキュレートフィルタの再生を図る必要があるが、通常のディーゼルエンジンの運転状態においては、パティキュレートが自己燃焼するほどの高い排気温度が得られる機会が少ないため、例えば白金等の貴金属系の酸化触媒をパティキュレートフィルタに一体的に担持させたり、パティキュレートフィルタの前段に酸化触媒を別体で配置するようにした触媒再生型のパティキュレートフィルタを採用することが検討されている。
【0005】
即ち、このような触媒再生型のパティキュレートフィルタを採用すれば、捕集されたパティキュレートの酸化反応が促進されて着火温度が低下し、従来より低い排気温度でもパティキュレートを燃焼除去することが可能となるのである。
【0006】
又、排気ガス中におけるNOx低減対策としては、排気ガスが流通する排気管の途中に、酸素共存下でも選択的にNOxを還元剤と反応させる性質を備えた選択還元型触媒を装備し、該選択還元型触媒の上流側に必要量の還元剤を添加して該還元剤を選択還元型触媒上で排気ガス中のNOx(窒素酸化物)と還元反応させ、これによりNOxの排出濃度を低減し得るようにしたものがある。
【0007】
例えば、この種の選択還元型触媒としては、白金,パラジウム等の貴金属触媒や、バナジウム,銅,鉄の酸化物等の卑金属触媒が前述した如き性質を有するものとして既に知られているが、これらの選択還元型触媒の活性温度域は一般的に狭く、ディーゼルエンジンの排気温度範囲の一部でしかNOxを浄化できていないのが現状であり、選択還元型触媒の活性温度域の拡大、特に低温活性の向上が今後の大きな課題となっている。
【0008】
そこで、本発明者らは、選択還元型触媒の前段に酸化触媒を配置して該酸化触媒により排気ガス中のNOを酸化して酸化力の強いNO2を生成し、このような酸化力の強いNO2を選択還元型触媒に導くことにより該選択還元型触媒上での還元剤による還元反応を促進し、通常の選択還元型触媒の単独使用の場合より低い温度域から還元反応が起こるようにすることを創案するに到った(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−161732号公報
【0009】
尚、プラント等における工業的な排煙脱硝処理の分野では、還元剤にアンモニア(NH3)を用いてNOxを還元浄化する手法の有効性が既に広く知られているところであるが、自動車の場合には、アンモニアのような有毒な物質を搭載して走行することに関し安全確保が困難であるため、近年においては、毒性のない尿素水を還元剤として使用することが研究されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、還元剤にアンモニア(NH3)を用いてNOxを還元浄化する還元反応には、
[化1]
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2
[化2]
4NO+4NH3+O2→3N2+6H2
[化3]
2NO2+4NH3+O2→3N2+6H2
[化4]
8NH3+6NO2→7N2+12H2
があり、上から下へ順に反応速度が遅くなるため、最も反応速度が早い[化1]の還元反応で処理し得るよう、排気ガス中のNOとNO2の比を約1:1に近くに制御して低温でも良好なNOxの低減化を図ることが求められる。
【0011】
一方、排気ガス中のNOとNO2の比を約1:1に近くに制御しても、パティキュレートフィルタを備えて排気ガスを処理する際には、パティキュレートフィルタに溜ったパティキュレートの煤とNO2とが反応してNOとNO2の比のバランスが崩れ、NOxの低減を適切に行うことができないという問題があった。
【0012】
本発明は、上述の実情に鑑みてなされたものであり、パティキュレートフィルタを備えた状態でNOとNO2の比を制御してNOxの低減化を行う排気浄化装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、エンジンの排気管途中に装備されて酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応させ得る選択還元型触媒と、該選択還元型触媒の入側で排気ガス中に還元剤として尿素水を添加する尿素水添加手段と、該尿素水添加手段の添加より上流に装備されて排気ガス中の煤を捕捉するパティキュレートフィルタと、該パティキュレートフィルタより上流で排気ガス中に放電してNO2を発生させるプラズマ発生装置と、前記排気ガス中のNOとNO2の比を調整するよう前記プラズマ発生装置を温度領域ごとに制御して前記尿素水添加手段に尿素水の添加を行しめる共にパティキュレートフィルタ中の煤を酸化し得る制御装置とを備えたことを特徴とする排気浄化装置、に係るものである。
【0014】
又、本発明において、プラズマ発生装置の制御は、パティキュレートフィルタ中の煤を酸化させると共に、NOとNO2の比のバランスを維持するよう構成されることが好ましい。
【0015】
更に、本発明において、エンジンの回転数を検出する回転センサと、排気温度を検出する温度センサと、NOx濃度を検出するNOxセンサとを備え、これら回転センサ及び温度センサ並びにNOxセンサからの検出値に基づきプラズマ発生装置を制御するように構成することが好ましい。
【0016】
更に又、本発明において、プラズマ発生装置の上流に酸化触媒を装備することが好ましい。
【0017】
而して、このようにすれば、プラズマ発生装置により排気ガス中のNOをNO2に酸化してNOとNO2の比を制御するので、尿素水添加手段により尿素水を添加する場合であってもNOxの低減化を行うことができる。又、同時にパティキュレートフィルタを備えた状態であっても、排気ガス中のNOとNO2の比を調整してNO2によりパティキュレートフィルタの煤を酸化させるので、パティキュレートフィルタの煤の影響を抑制し、NOxの低減化を行うことができる。更に、プラズマ発生装置を温度領域ごとに制御するので、それぞれの温度領域における温度の影響を考慮してNOxの低減化や煤の酸化の処理を行うことができる。
【0018】
又、プラズマ発生装置の制御は、パティキュレートフィルタ中の煤を酸化させると共に、NOとNO2の比のバランスを維持するよう構成されると、パティキュレートフィルタの煤の影響を一層抑制し、NOxの低減化を好適に行うことができる。
【0019】
更に、エンジンの回転数を検出する回転センサと、排気温度を検出する温度センサと、NOx濃度を検出するNOxセンサとを備え、これら回転センサ及び温度センサ並びにNOxセンサからの検出値に基づきプラズマ発生装置を制御するように構成すると、NOとNO2の比や温度の影響を考慮して適切に処理し得るので、プラズマ発生装置及び/又は尿素水添加手段を容易に制御し、NOxの低減化を一層好適に行うことができる。
【0020】
更に又、プラズマ発生装置の上流に酸化触媒を装備すると、酸化触媒でNO2を生成して選択還元型触媒へ流下させるので、NOとNO2の比を容易に制御し、NOxの低減化を一層好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0021】
上記した本発明の排気浄化装置によれば、プラズマ発生装置によりNOとNO2の比を制御するので、尿素水添加手段により尿素水の添加を行ってもNOxの低減化を行うことができる。又、同時にNO2によりパティキュレートフィルタの煤を酸化させるので、パティキュレートフィルタの煤の影響を抑制することができる。更に、プラズマ発生装置を温度領域ごとに制御するので、それぞれの温度領域における温度の影響を考慮してNOxの低減化や煤の酸化の処理を行うことができるという優れた効果を奏し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0023】
図1〜図4は本発明を実施する形態の一例を示すもので、図1中における符号1はディーゼル機関であるディーゼルエンジンを示し、ここに図示しているエンジン1では、ターボチャージャ2が備えられており、エアクリーナ3から導いた吸気4が吸気管5を介し前記ターボチャージャ2のコンプレッサ2aへと送られ、該コンプレッサ2aで加圧された吸気4が更にインタークーラ6へと送られて冷却され、該インタークーラ6から更に吸気マニホールド7へと吸気4が導かれてディーゼルエンジン1の各気筒8(図1では直列6気筒の場合を例示している)に分配されるようになっている。
【0024】
更に、このディーゼルエンジン1の各気筒8から排出された排気ガス9は、排気マニホールド10を介しターボチャージャ2のタービン2bへと送られ、該タービン2bを駆動した排気ガス9が排気管11を介し車外へ排出されるようにしてある。
【0025】
又、排気マニホールド10における各気筒8の並び方向の一端部と、吸気マニホールド7に接続されている吸気管5の一端部との間をEGRパイプ12で接続し、排気マニホールド10から抜き出した排気ガス9の一部を水冷式のEGRクーラ13及びEGRバルブ14を介して吸気管5に再循環するようになっており、排気側から吸気側へ再循環された排気ガス9で各気筒8内での燃料の燃焼を抑制して燃焼温度を下げることによりNOxの発生を低減し得るようにしてある。
【0026】
更に、排気管11の途中には、ケーシング15により抱持された選択還元型触媒16が装備されており、この選択還元型触媒16は、フロースルー方式のハニカム構造物として形成され、酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応させ得るような性質を有している。ここで、前記選択還元型触媒16には、白金,パラジウム等の貴金属触媒や、バナジウム,銅,鉄の酸化物等の卑金属触媒といった従来周知の触媒を採用することが可能であるが、SO2をサルフェート(硫酸塩)に酸化し易い貴金属触媒を採用するよりも、比較的酸化力の弱い卑金属触媒を採用する方がより好ましい。
【0027】
又、ケーシング15より上流側の排気管11には噴射ノズル17が設置され、噴射ノズル17と所要場所に設けた尿素水タンク18との間が尿素水供給ライン19により接続されており、該尿素水供給ライン19の途中に装備した供給ポンプ20の駆動により尿素水タンク18内の尿素水21(還元剤)を噴射ノズル17を介し選択還元型触媒16の上流側に添加し得るようになっていて、これら噴射ノズル17と尿素水タンク18と尿素水供給ライン19と供給ポンプ20とにより尿素水添加装置22が構成されている。
【0028】
そして、この尿素水添加装置22による尿素水21の添加位置(噴射ノズル17の開口位置)とケーシング15との間には、尿素水21の噴霧を均等に拡散するミキサ23が設けられており、又、前記ケーシング15内における選択還元型触媒16の直後には、リークアンモニア対策として余剰のアンモニアを酸化処理するNH3スリップ触媒24が装備されている。
【0029】
一方、尿素水21の添加位置(噴射ノズル17の開口位置)より上流側の排気管11には、排気ガス9中に放電してプラズマを発生させるプラズマ発生装置25が配設されており、プラズマ発生装置25は、電源26に接続された複数の電極(図示せず)を対向配置して相互間に放電を行い得る構造を備え、プラズマを発生させることによってNOをNO2に酸化するようにしている。ここで、NO2生成量は、図2に示す如く、プラズマを発生させる電力量の調整により制御可能になっている。
【0030】
又、プラズマ発生装置25は、プラズマ発生の電源制御を容易にするために電気的もしくはメカニカルな接点をもつON−OFFスイッチで、パルスのような切り替えを行っても良く、この場合には印可電圧を一定にし、スイッチング間隔を制御することにより電気量を調整し、プラズマを発生させることになる。電源26は、直流電源、高周波電源、パルス電源も適用可能である。更に、NO2の生成率を上げるために、電極に酸化触媒を付け、電極間に酸化触媒を塗った誘電体(図示せず)を挟むことが好ましい。更に又、プラズマ発生装置25の電源26には、指示された電力を供給し得るように内部にコンピュータを内蔵することが好ましい。又、プラズマ発生装置25の電極は相互間距離がほぼ一様に設定できるものであれば、板型、ロッド型、円筒型等の様々な形状でも良い。
【0031】
更に、プラズマ発生装置25と尿素水21の添加位置(噴射ノズル17の開口位置)との間の排気管11には、ケーシング27に抱持されたパティキュレートフィルタ28が装備されており、このパティキュレートフィルタ28は、コージェライト等のセラミックから成る多孔質のハニカム構造となっており、格子状に区画された各流路の入口が交互に目封じされ、入口が目封じされていない流路については、その出口が目封じされるようになっており、各流路を区画する多孔質薄壁を透過した排気ガスのみが下流側へ排出されるようにしてある。
【0032】
更に又、プラズマ発生装置25とターボチャージャ2のタービン2bとの間の排気管11には、プラズマ発生装置25の上流に装備されて選択還元型触媒16の低温活性を向上させるよう、ケーシング29により抱持された酸化触媒30が装備されており、この酸化触媒30は、白金に酸化アルミニウム(アルミナ)を混合してステンレス製のメタル担体等に担持させた構造となっている。ここで、酸化触媒30とプラズマ発生装置25は、図1の如く別々に備えられても良いが、酸化触媒をプラズマ発生装置25に付設してまとめ、酸化触媒付きプラズマ発生装置にしても良いし、更にパティキュレートフィルタ28も付設してまとめ、酸化触媒及びパティキュレートフィルタ付きプラズマ発生装置(酸化触媒付きプラズマDPF)にしても良い。
【0033】
ここで、前記プラズマ発生装置25の作動、前記尿素水添加装置22の作動、排気ガス9を再循環させるEGRバルブ14の作動、各気筒8に燃料を噴射する燃料噴射装置31の作動は、エンジン制御コンピュータ(ECU:Electronic Control Unit)を成す制御装置32からの指令信号26a,22a,14a,31aを受けて実行されるようになっている。
【0034】
他方、この制御装置32においては、前記エンジン1での回転センサ33からの回転数信号33aと、アクセル開度をエンジン1の負荷として検出するアクセルセンサ34(負荷センサ)からの負荷信号34aと、ケーシング27と尿素水21の添加位置の間、及びケーシング15より下流側の適宜位置で排気ガス9中のNOx濃度を検出するNOxセンサ35,36からの検出信号35a,36aと、ケーシング15の入側及び出側で排気温度を検出する温度センサ37,38からの検出信号37a,38aと、吸気マニホールド7の入側で吸気温度を検出する温度センサ39からの検出信号39aと、吸気マニホールド7の入側で過給圧を検出する過給圧センサ40からの検出信号40aと、エアクリーナ3とコンプレッサ2aとの間で吸入空気量を計測するエアフローメータ41からの検出信号41aとが入力されるようになっている。ここで、制御装置32においては、更に外部に配置した外気温センサ(図示せず)からの検出信号が入力されるようにしてもよい。
【0035】
以下、本発明の実施の形態例の作用を説明する。
【0036】
排気ガス9中のNOxを浄化する際には、初めに、回転センサ33からの回転数信号33aに基づいて現在のエンジン1の回転数が読み出されると共に、NOxセンサ35,36からの検出信号35a,36aに基づいてNOx濃度が読み出され、更に、温度センサ37,38からの検出信号37a,38aに基づいて排気ガスの温度が読み出され、図3に示す如きエンジン回転数、NOx濃度、排気温度からなる3Dマップ(3次元マップ)により、プラズマ発生装置25でプラズマを発生させるプラズマ電力が決定される。
【0037】
ここで、決定されるプラズマ電力は温度領域によって制御装置の制御方法が異なっており、具体的な温度領域における制御方法の一例を示すと、温度領域は、下限温度から130℃までの温度領域(図4ではIの温度領域)、130℃から180℃までの温度領域(図4ではIIの温度領域)、180℃から270℃までの温度領域(図4ではIIIの温度領域)、270℃から450℃までの温度領域(図4ではIVの温度領域)、450℃から600℃までの温度領域(図4ではVの温度領域)、600℃から上限温度までの温度領域(図4ではVIの温度領域)に分かれている。
【0038】
下限温度から130℃までの温度領域(図4ではIの温度領域)は、プラズマ発生装置25によりプラズマを発生させてもNOxの低減に関与しない領域であり、電力を供給しないようにしている。又、130℃から180℃までの温度領域(図4ではIIの温度領域)は、先の温度領域と同様にプラズマ発生装置25によりプラズマを発生させてもNOxの低減に関与しない領域であるが、プラズマの発生の熱で選択還元型触媒16を活性温度領域にするよう排気ガスの温度を所定温度に維持する電力を供給している。更に、180℃から270℃までの温度領域(図4ではIIIの温度領域)は、煤を酸化させる必要はないが、尿素水添加装置22により尿素水21を添加し、NOxの低減を向上させる必要がある領域であり、NOxの低減のためにプラズマ発生装置25によりNO2を生成する電力を供給している。更に又、270℃から450℃までの温度領域(図4ではIVの温度領域)は、選択還元型触媒16の活性が高く、選択還元型触媒16に対して、NO2の生成は少くても良いが、煤を酸化させる必要がある領域であり、NO2により煤を酸化させるためにプラズマ発生装置25によりNO2を生成する電力を供給している。なお、270℃から450℃までの温度領域は図4に示すく180℃から270℃までの温度領域より少ない電力で良い。又、450℃から600℃までの温度領域(図ではVの温度領域)は、選択還元型触媒16の活性が更に高く、選択還元型触媒16に対してNO2の生成は不要であるが、煤を確実に酸化させる必要がある領域であり、NO2により煤の酸化を促進するためにプラズマ発生装置25によりNO2を生成する電力を供給している。更に、600℃から上限温度までの温度領域(図ではVIの温度領域)は、煤が自然に酸化する領域であり、NO2は不要であるため電力を供給しないようにしている。
【0039】
これらの温度領域において、プラズマ発生装置25によりNO2が適宜生成されており、具体例を、180℃から270℃までの温度領域(図ではIIIの温度領域)の場合で説明すると、プラズマ発生装置25でNO2を生成する際には、回転センサ33からの回転数信号33aに基づいて現在のエンジン1の回転数が読み出されると共に、アクセルセンサ34からの負荷信号34aに基づいて現在の燃料噴射量が換算され、NOxセンサ35,36からの検出信号35a,36a、温度センサ37,38からの検出信号37a,38aに基づいて、温度、流速、NO濃度、N2濃度、O2濃度等を推定する。ここで、回転センサ33、アクセルセンサ34、NOxセンサ35,36、温度センサ37,38等は、随時、データを更新検出することにより、エンジン1の運転状態の変化に伴って温度、流速、NO濃度、N2濃度、O2濃度等に変化があっても対応し得るようになっている。又、EGRバルブ14で排気ガス9を再循環させた際には、エンジン1出口でNO2の量も変化するが、同様に、データを更新検出して対応し得るようになっている。
【0040】
温度、流速、NO濃度、N2濃度、O2濃度等を推定した後には、制御装置32により、NOxセンサ35,36の検出信号(検出値)35a,36aを介して、又はエンジン1の回転数とアクセル開度(燃料噴射量)とを入力したマップを介して、どの程度NO2を生成すれば排気ガス9中のNOとNO2の比が約1:1になるのか判断し、プラズマ発生装置25の電力を調整してプラズマを発生させ、所定量のNOをNO2に酸化する。
【0041】
ここで、プラズマ発生装置25によるNO2の生成は、
[数1]
NO2の生成=f(プラズマのエネルギー、温度、流速、NO濃度、N2濃度、O2濃度)
の関数で処理されており、温度、流速、NO濃度、N2濃度、O2濃度はエンジン1の運転状態により変化するため、プラズマのエネルギーを適宜調整している。
又、プラズマのエネルギーは、
[数2]
プラズマのエネルギー=f(電力、極板間距離、誘電率(体))
の関数で求まり、極板間距離と誘電率(体)は装置の設定により不可変の数になっている。
更に、電力は、
[数3]
電力=f(印可電圧、周波数(電流量))
である。つまり、プラズマのエネルギーは、電圧と周波数を変えることによって制御可能である。ここで、電源は、高周波、パルスを用いても良い。
【0042】
このため、NO2の生成量は、温度、流速、NO濃度、N2濃度、O2濃度に合わせて、電力、つまり電圧と周波数(電流量)を調整することによって求まる。
【0043】
プラズマ発生装置25によりNOをNO2に酸化して排気ガス9中のNOとNO2の比を約1:1にした後には、NOxセンサ35,36等からの検出信号35a,36aに基づいて尿素水21の添加量を算出すると共に、温度センサ37,38等からの検出信号37a,38aにより排気温度が選択還元型触媒16の活性温度領域であることを確認し、制御装置32からの指令信号22aにより尿素水添加装置22の噴射ノズル17から尿素水21を噴射し、NOxを低減する。
【0044】
而して、このように排気浄化装置を構成すれば、プラズマ発生装置25により排気ガス中のNOをNO2に酸化してNOとNO2の比を制御するので、尿素水添加装置22により尿素水を添加する場合であってもNOxの低減化を行うことができる。又、同時にパティキュレートフィルタ28を備えた状態であっても、温度領域の区分けにより排気ガス中のNOとNO2の比を調整してNO2によりパティキュレートフィルタ28の煤を酸化させるので、パティキュレートフィルタ28の煤の影響を抑制し、NOxの低減化を行うことができる。更に、プラズマ発生装置25を温度領域ごとに制御するので、それぞれの温度領域における温度の影響を考慮してNOxの低減化や煤の酸化の処理を行うと共に消費電力を低減することができる。
【0045】
又、プラズマ発生装置25の制御は、パティキュレートフィルタ28中の煤を酸化させると共に、NOとNO2の比のバランスを維持するよう構成されると、パティキュレートフィルタ28の煤の影響を一層抑制し、NOxの低減化を好適に行うことができる。
【0046】
更に、エンジン1の回転数を検出する回転センサ33と、排気ガスの温度を検出する温度センサ37,38と、NOx濃度を検出するNOxセンサ35,36とを備え、これら回転センサ33及び温度センサ37,38並びにNOxセンサ35,36からの検出値に基づきプラズマ発生装置25を制御するように構成すると、NOとNO2の比や温度の影響を考慮して適切に処理し得るので、プラズマ発生装置25及び/又は尿素水添加装置22を容易に制御し、NOxの低減化を一層好適に行うことができる。
【0047】
更に又、プラズマ発生装置25の上流に装備される酸化触媒30を備えると、酸化触媒30でNO2を生成して選択還元型触媒16へ流下させるので、NOとNO2の比を容易に制御し、NOxの低減化を一層好適に行うことができる。
【0048】
尚、本発明の排気浄化装置は、上述の形態例にのみ限定されるものではなく、プラズマにより煤を酸化させると共にNOとNO2の比を制御するならば、制御方法、プラズマの発生方法及びNOxの処理手順は特に限定されるものではないこと、プラズマ発生装置及び尿素水添加装置の制御は他のセンサからの指令信号によって制御しても良いこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明を実施する形態例を示す概略図である。
【図2】電力とNO2生成量の関係を示すグラフである。
【図3】プラズマ電力を求める3Dマップを示す概念図である。
【図4】温度領域による制御方法の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
【0050】
1 ディーゼルエンジン(エンジン)
9 排気ガス
11 排気管
16 選択還元型触媒
21 尿素水(還元剤)
22 尿素水添加装置(尿素水添加手段)
25 プラズマ発生装置
28 パティキュレートフィルタ
30 酸化触媒
32 制御装置
33 回転センサ
33a 回転数信号(検出値)
34 アクセルセンサ(負荷センサ)
34a 負荷信号(検出値)
35 NOxセンサ
35a 検出信号(検出値)
36 NOxセンサ
36a 検出信号(検出値)
37 温度センサ
37a 検出信号(検出値)
38 温度センサ
38a 検出信号(検出値)
39 温度センサ
39a 検出信号(検出値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの排気管途中に装備されて酸素共存下でも選択的にNOxをアンモニアと反応させ得る選択還元型触媒と、該選択還元型触媒の入側で排気ガス中に還元剤として尿素水を添加する尿素水添加手段と、該尿素水添加手段の添加より上流に装備されて排気ガス中の煤を捕捉するパティキュレートフィルタと、該パティキュレートフィルタより上流で排気ガス中に放電してNO2を発生させるプラズマ発生装置と、前記排気ガス中のNOとNO2の比を調整するよう前記プラズマ発生装置を温度領域ごとに制御して前記尿素水添加手段に尿素水の添加を行しめる共にパティキュレートフィルタ中の煤を酸化し得る制御装置とを備えたことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
プラズマ発生装置の制御は、パティキュレートフィルタ中の煤を酸化させると共に、NOとNO2の比のバランスを維持するよう構成されたことを特徴とする請求項1記載の排気浄化装置。
【請求項3】
エンジンの回転数を検出する回転センサと、排気温度を検出する温度センサと、NOx濃度を検出するNOxセンサとを備え、これら回転センサ及び温度センサ並びにNOxセンサからの検出値に基づきプラズマ発生装置を制御するように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の排気浄化装置。
【請求項4】
プラズマ発生装置の上流に酸化触媒を装備したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−70771(P2006−70771A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−253907(P2004−253907)
【出願日】平成16年9月1日(2004.9.1)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】