説明

接着剤組成物、それを用いたフィルム状接着剤及び回路接続材料、並びに回路部材の接続構造及びその製造方法

【課題】 十分な接着強度が得られるとともに、高温高湿環境下でも安定した接着強度を得ることが可能な接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】 硬化性成分と、下記一般式(1)又は(2)で表されるシラン化合物と、を含有することを特徴とする接着剤組成物。
【化1】


【化2】


[式(1)及び(2)中、Rは炭素数2〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、nは1〜6の整数を示す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、それを用いたフィルム状接着剤及び回路接続材料、並びに回路部材の接続構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体や液晶ディスプレイなどの分野では、電子部品を固定したり回路接続を行うために各種の接着剤が使用されている。これら半導体や液晶ディスプレイでは、ますます高密度化、高精細化がすすみ、これらの用途に適用される接着剤にも高い接着強度、特に高温高湿環境下(例えば、85℃、85%RH)における優れた接着強度が求められている。
【0003】
また、液晶ディスプレイとテープキャリアパッケージ(TCP)との接続や、フレキシブルプリント基板(FPC)とTCPとの接続、FPCとプリント配線板との接続には、回路接続をより確実に行うために、接着剤中に導電粒子を分散させた異方導電性接着剤が使用されている(例えば、特許文献1〜4参照)。更に、最近では、半導体シリコンチップを基板に実装する場合でも、従来のワイヤーボンドに代えて、半導体シリコンチップをフェイスダウンで基板に直接実装するいわゆるフリップチップ実装が行われており、ここでも異方導電性接着剤の適用が開始されている。
【特許文献1】特開昭59−120436号公報
【特許文献2】特開昭60−191228号公報
【特許文献3】特開平1−251787号公報
【特許文献4】特開平7−90237号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の接着剤では、各種基板等の被着体に対する接着強度が必ずしも十分ではなく、特に高温高湿環境下で接着強度が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、十分な接着強度が得られるとともに、高温高湿環境下でも安定した接着強度を得ることが可能な接着剤組成物、それを用いたフィルム状接着剤及び回路接続材料、並びに回路部材の接続構造及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の接着剤組成物は、硬化性成分と、下記一般式(1)又は(2)で表されるシラン化合物と、を含有することを特徴とする。
【化1】

【化2】

[式(1)及び(2)中、Rは炭素数2〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、nは1〜6の整数を示す。]
【0007】
本発明の接着剤組成物は、硬化性成分と、上記一般式(1)又は(2)で表されるシラン化合物とを含有する構成を有することにより、十分な接着強度を得ることができ、且つ、高温高湿環境下でも長期間にわたって安定した接着強度を得ることができる。また、接着温度の低温化及び接着時間の短縮化(これらを合わせて「低温速硬化」という)を図ることができる。更に、本発明の接着剤組成物は、少なくとも表面が金属をはじめとする無機材質で構成される被着体に対して高い接着強度を示し、低温速硬化も可能である。このように表面が無機材質で構成される被着体に対して高い接着強度を有することから、本発明の接着剤組成物は、回路接続材料用として好適である。本発明の接着剤組成物を回路接続材料として用いる場合、低温速硬化が可能となることから、回路部材を接続する際の基板へのダメージや位置ずれを低減することができるとともに、生産効率の向上を図ることができる。
【0008】
本発明の接着剤組成物において、上記硬化性成分が、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含むものであることが好ましい。
【0009】
かかる接着剤組成物は、いわゆるラジカル硬化型接着剤組成物である。硬化性成分としてラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含むラジカル硬化型接着剤組成物において、上記一般式(1)又は(2)で表されるシラン化合物を含有させることにより、より十分な接着強度を得ることができ、且つ、高温高湿環境下でもより長期間にわたって安定した接着強度を得ることができる。また、かかる接着剤組成物においては、特に、より短時間での接着が可能となり、回路接続材料として用いる場合の接続時の基板へのダメージや位置ずれの低減、及び生産効率の向上をより十分に図ることができる。
【0010】
また、本発明の接着剤組成物において、上記硬化性成分が、エポキシ樹脂及び該エポキシ樹脂の潜在性硬化剤を含むものであることが好ましい。
【0011】
このように硬化性成分としてエポキシ樹脂及び該エポキシ樹脂の潜在性硬化剤を含む接着剤組成物において、上記一般式(1)又は(2)で表されるシラン化合物を含有させることにより、より十分な接着強度を得ることができ、且つ、高温高湿環境下でもより長期間にわたって安定した接着強度を得ることができる。
【0012】
また、本発明の接着剤組成物は、さらにフィルム形成材を含有することが好ましい。フィルム形成材を含有することにより、接着剤組成物をフィルム状に形成することが容易に可能となる。
【0013】
本発明のフィルム状接着剤は、上記本発明の接着剤組成物をフィルム状に形成してなることを特徴とするものである。
【0014】
このフィルム状接着剤は、取り扱いが容易であり、基板等の被着体へ容易に設置することができ、接続作業を容易に行うことができる。
【0015】
本発明の回路接続材料は、第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、上記第一の回路電極と上記第二の回路電極とを対向配置させた状態で接続するための回路接続材料であって、上記本発明の接着剤組成物を含有することを特徴とする。
【0016】
この回路接続材料は、上記本発明の接着剤組成物を含有することから、無機材質で構成される回路部材に対しても高い接着強度を有しており、回路部材を接着するのに好適である。また、高温高湿環境下でも長期間にわたって安定した接着強度を得ることができる。
【0017】
また、本発明の回路接続材料は、さらに導電性粒子を含有することが好ましい。これにより、接続する回路電極間の接続信頼性を高めることができるとともに、接続抵抗を低減することができる。
【0018】
本発明の回路部材の接続構造は、第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材と、上記第一の回路基板の主面と上記第二の回路基板の主面との間に設けられ、上記第一の回路電極と上記第二の回路電極とを対向配置させた状態で上記第一及び第二の回路部材同士を接続する回路接続部材と、を備える回路部材の接続構造であって、上記回路接続部材は、上記本発明の回路接続材料の硬化物からなり、上記第一の回路電極と上記第二の回路電極とが電気的に接続されていることを特徴とする。
【0019】
この回路部材の接続構造は、回路接続部材が本発明の回路接続材料の硬化物からなることから、接続抵抗が十分に低減されており、接着強度の信頼性に優れ、高温高湿環境下でも長期間にわたって安定した接着強度を得ることができる。
【0020】
本発明の回路部材の接続構造の製造方法は、第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材と、上記第一の回路基板の主面と上記第二の回路基板の主面との間に設けられ、上記第一の回路電極と上記第二の回路電極とを対向配置させた状態で上記第一及び第二の回路部材同士を接続する回路接続部材と、を備える回路部材の接続構造の製造方法であって、上記第一の回路基板の主面と上記第二の回路基板の主面との間に上記本発明の回路接続材料を配置し、上記第一及び第二の回路部材を介して上記回路接続材料を加熱及び加圧して硬化処理して上記第一の回路部材と上記第二の回路部材とを接続することにより上記回路部材の接続構造を製造することを特徴とする。
【0021】
この回路部材の接続構造の製造方法によれば、本発明の回路接続材料を用いることにより、低温速硬化が可能となり、回路部材への悪影響が十分に抑制されるとともに、接着強度の信頼性に優れ、高温高湿環境下でも長期間にわたって安定した接着強度を有する回路部材の接続構造を形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の接着剤組成物は、十分な接着強度を得ることができ、且つ、高温高湿環境下でも長期間にわたって安定した接着強度を得ることができる。
【0023】
また、本発明のフィルム状接着剤は、取り扱いが容易であり、基板等の被着体へ容易に設置することができ、接続作業を容易に行うことができる。
【0024】
更に、本発明の接着剤組成物を用いた回路接続材料は、回路部材(例えば、半導体素子、液晶表示素子)を接着するのに好適であり、かかる回路接続材料を用いて作製された回路部材の接続構造は、接続抵抗が十分に低減されており、接着強度(特に、高温高湿環境下)の信頼性に優れる。また、かかる回路接続材料を用いる回路部材の接続構造の製造方法によれば、低温速硬化が可能であることから、回路部材への悪影響が十分に抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、場合により図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明において、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、以下の説明において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味するものとする。
【0026】
(接着剤組成物及び回路接続材料)
本発明の接着剤組成物は、硬化性成分と、上記一般式(1)又は(2)で表されるシラン化合物と、を含有する。
【0027】
本発明における硬化性成分とは、熱やエネルギー線等の外部エネルギーにより硬化する性質を有する成分である。かかる硬化性成分としては特に制限されないが、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤の組み合わせと、エポキシ樹脂及び該エポキシ樹脂の潜在性硬化剤の組み合わせと、の少なくとも一方の組み合わせを含んで構成されるものであることが好ましい。
【0028】
ラジカル重合性化合物は、ラジカルにより重合する官能基を有する物質である。かかるラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリレート、マレイミド化合物、スチレン誘導体等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。また、ラジカル重合性化合物は、モノマー、又はオリゴマーのいずれの状態でも使用することができ、モノマーとオリゴマーとを混合して使用してもよい。
【0029】
(メタ)アクリレート化合物としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、エテレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールテトラ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジアクリロキシプロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシメトキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロキシエトキシ)フェニル]プロパン、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレートトリシクロデカニル(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ウレタン(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド変性ジアクリレート等が挙げられる。これらは、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。上記(メタ)アクリレート化合物をラジカル重合させることで、(メタ)アクリル樹脂が得られる。
【0030】
マレイミド化合物は、マレイミド基を少なくとも1個有する化合物である。マレイミド化合物としては、フェニルマレイミド、1−メチル−2,4−ビスマレイミドベンゼン、N,N’−m−フェニレンビスマレイミド、N,N’−p−フェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−ビフェニレンビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルビフェニレン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジメチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−(3,3−ジエチルジフェニルメタン)ビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルメタンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルプロパンビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルエーテルビスマレイミド、N,N’−4,4−ジフェニルスルホンビスマレイミド、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(3−s−ブチル−3,4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、1,1−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)デカン、4,4’−シクロヘキシリデン−ビス(1−(4−マレイミドフェノキシ)フェノキシ)−2−シクロヘキシルベンゼン、2,2−ビス(4−(4−マレイミドフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらは、1種を単独で、2種以上を混合して使用してもよい。
【0031】
ラジカル重合開始剤としては、過酸化化合物、アゾ系化合物等の加熱により分解して遊離ラジカルを発生するものが挙げられる。これらは目的とする接続温度、接続時間、保存安定性等により適宜選定されるが、高反応性と保存安定性の点から、半減期10時間の温度が40℃以上、且つ、半減期1分の温度が180℃以下の有機過酸化物、アゾ系化合物が好ましく、半減期10時間の温度が60℃以上、且つ、半減期1分の温度が170℃以下の有機過酸化物、アゾ系化合物がより好ましい。接続時間を10秒以下とした場合、ラジカル重合開始剤の配合量は、十分な反応率を得るために、ラジカル重合性化合物と後述の必要に応じて配合されるフィルム形成材との合計100質量部に対して、0.1〜30質量部とすることが好ましく、1〜20質量部とすることがより好ましい。ラジカル重合開始剤の配合量が0.1質量部未満では、十分な反応率を得ることができず、良好な接着強度や小さな接続抵抗が得られにくくなる傾向にある。一方、ラジカル重合開始剤の配合量が30質量部を超えると、接着剤の流動性が低下したり、接続抵抗が上昇したり、接着剤の保存安定性が低下する傾向にある。
【0032】
ラジカル重合開始剤の具体例としては、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート、パーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイド等が挙げられる。また、回路部材の接続端子の腐食を押さえるために、開始剤中に含有される塩素イオンや有機酸は5000ppm以下であることが好ましい。これらの中でもパーオキシエステル、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、シリルパーオキサイドから選定されることが好ましく、高反応性が得られるパーオキシエステル、パーオキシケタールから選定されることがより好ましい。これらは、1種を単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。
【0033】
ジアシルパーオキサイドとしては、イソブチルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルへキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、スクシニツクパーオキサイド、ベンゾイルパーオキシトルエン、ベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0034】
パーオキシジカーボネートとしては、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロへキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシメトキシパーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルへキシルパーオキシ)ジカーボネート、ジメトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3メトキシブチルパーオキシ)ジカーボネート等が挙げられる。
【0035】
パーオキシエステルとしては、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロへキシル−1−メチルエチルパーオキシノエデカノエート、t−へキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロへキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノネート、t−へキシルパーオキシ−2−エチルへキサノネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキサノネート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロへキサン、t−へキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルへキサノネート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(m−トルオイルパーオキシ)へキサン、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルへキシルモノカーボネート、t−へキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシアセテート等が挙げられる。
【0036】
パーオキシケタールとしては、1,1−ビス(t−へキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロへキサン、1,1−ビス(t−へキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロへキサン、1,1−(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)デカン等が挙げられる。
【0037】
ジアルキルパーオキサイドとしては、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)へキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0038】
ハイドロパーオキサイドとしては、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0039】
シリルパーオキサイドとしては、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジメチルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリビニルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジビニルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)ビニルシリルパーオキサイド、t−ブチルトリアリルシリルパーオキサイド、ビス(t−ブチル)ジアリルシリルパーオキサイド、トリス(t−ブチル)アリルシリルパーオキサイド等が挙げられる。
【0040】
これらの加熱により遊離ラジカルを発生するラジカル重合開始剤は、単独で又は混合して使用することができ、更に分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。また、これらの開始剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるために好ましい。
【0041】
エポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやF、AD等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやクレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂やナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、グリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を単独で又は2種以上を混合して用いることが可能である。これらのエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na、Cl等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることがエレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
【0042】
エポキシ樹脂の潜在性硬化剤としては、イミダゾール系、ヒドラジド系、アミンイミド、ジシアンジアミド等が挙げられる。これらは、単独で又は混合して使用することができ、分解促進剤、抑制剤等を混合して用いてもよい。また、これらの硬化剤をポリウレタン系、ポリエステル系の高分子物質等で被覆してマイクロカプセル化したものは、可使時間が延長されるために好ましい。
【0043】
潜在性硬化剤の配合量は十分な反応率を得るためにエポキシ樹脂と後述の必要に応じて配合されるフィルム形成材との合計100質量部に対して、0.1〜60質量部とすることが好ましく、1〜20質量部とすることがより好ましい。潜在性硬化剤の配合量が0.1質量部未満では、十分な反応率を得ることができず、良好な接着強度や小さな接続抵抗が得られにくくなる傾向にある。一方、潜在性硬化剤の配合量が60質量部を超えると、接着剤の流動性が低下したり、接続抵抗が上昇したり、接着剤の保存安定性が低下する傾向にある。
【0044】
本発明の接着剤組成物に含有されるシラン化合物は、下記一般式(1)又は(2)で表される構造を有するものであり、窒素原子と2以上のシリコン原子とを有し、窒素原子に少なくとも1つのシリコン原子が結合した構造を有するシラン化合物である。
【化3】

【化4】

[式(1)及び(2)中、Rは炭素数2〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、nは1〜6の整数を示す。]
【0045】
ここで、上記R、R、R、R、R及びRにおいて、上記シクロアルキル基は、炭素数が4〜8のものであることが好ましく、上記置換フェニル基の置換基は、1価の有機基又はハロゲン原子であることが好ましい。
【0046】
また、上記式(1)及び(2)において、上記Rが炭素数2〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、炭素数4〜8のシクロアルキル基又はフェニル基であり、上記R及びRがそれぞれ独立に炭素数1〜5の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基又はフェニル基であり、上記R、R及びRがそれぞれ独立にメチル基又はエチル基であることが好ましい。
【0047】
更に、上記式(1)及び(2)において、上記Rがイソプロピル基、t−ブチル基又はフェニル基であり、上記R、R及びRがそれぞれ独立にエチル基であることが好ましい。
【0048】
上記式(1)又は(2)で表されるシラン化合物の具体的な構造としては、下記表1〜8に示す、下記一般式(1−1)〜(1−50)及び(2−1)〜(2−50)で表される化合物が好ましい例として挙げられる。なお、式(1−1)〜(1−50)及び(2−1)〜(2−50)中、Meはメチル基、Etはエチル基、Proはn−プロピル基、Buはn−ブチル基、Phはフェニル基をそれぞれ意味する。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

【0054】
【表6】

【0055】
【表7】

【0056】
【表8】

【0057】
上記一般式(1)及び(2)で表されるシラン化合物において、R、R、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つが炭素数13以上の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基である場合、十分な接着強度が得られない。また、窒素原子にシリコン原子が結合していない場合、保管時に劣化が進行し、接着強度が低下し、回路接続体を製造する際に、回路の接続が困難となる。更に、R、R及びRがすべてメチル基である場合(例えば、N−トリメチルシリル―γ―アミノプロピルトリアルキルオキシシラン等)、分解が生じやすく、保存安定性が不十分である。
【0058】
これらのシラン化合物は単独で用いてもよく、また2種類以上を混合して用いても良い。
【0059】
本発明の接着剤組成物は、上記硬化性成分及び上記シラン化合物を含有するとともに、更にフィルム形成材を含有することが好ましい。
【0060】
フィルム形成材とは、液状物を固形化し、構成組成物をフィルム形状とした場合に、そのフィルムの取り扱いが容易で、容易に裂けたり、割れたり、べたついたりしない機械特性等を付与するものであり、通常の状態でフィルムとしての取り扱いができるものである。かかるフィルム形成材としては、フェノキシ樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、キシレン樹脂、ポリウレタン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、接着強度、相溶性、耐熱性、機械強度に優れることからフェノキシ樹脂が好ましい。
【0061】
フェノキシ樹脂は2官能フェノール類とエピハロヒドリンを高分子量まで反応させるか、又は2官能エポキシ樹脂と2官能フェノール類を重付加させることにより得られる樹脂である。具体的には、2官能フェノール類1モルとエピハロヒドリン0.985〜1.015とをアルカリ金属水酸化物の存在下において非反応性溶媒中で40〜120℃の温度で反応させることにより得ることができる。また、樹脂の機械的特性や熱的特性の点からは、特に2官能性エポキシ樹脂と2官能性フェノール類の配合当量比をエポキシ基/フェノール水酸基=1/0.9〜1/1.1としアルカリ金属化合物、有機リン系化合物、環状アミン系化合物等の触媒の存在下で沸点が120℃以上のアミド系、エーテル系、ケトン系、ラクトン系、アルコール系等の有機溶剤中で反応固形分が50質量部以下で50〜200℃に加熱して重付加反応させて得たものが好ましい。
【0062】
2官能エポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニルジグリシジルエーテル、メチル置換ビフェニルジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0063】
2官能フェノール類は2個のフェノール性水酸基を持つものであり、例えば、ハイドロキノン類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ビスフェノールS、ビスフェノールフルオレン、メチル置換ビスフェノールフルオレン、ジヒドロキシビフェニル、メチル置換ジヒドロキシビフェニル等のビスフェノール類等が挙げられる。
【0064】
また、フェノキシ樹脂はラジカル重合性の官能基や、その他の反応性化合物により変性されていてもよい。フェノキシ樹脂は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0065】
本発明の接着剤組成物が、フィルム形成材、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始材を含有する場合、シラン化合物との混合比率は、フィルム形成材、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始材の合計100質量部に対してシラン化合物が0.01〜25質量部であることが好ましく、0.1〜20質量部であることがより好ましく、0.5〜15質量部であることが更に好ましく、1〜10質量部であることが最も好ましい。シラン化合物の配合量が0.01質量部未満又は25質量部を超える場合、接着剤組成物の接着強度が低下する傾向にある。
【0066】
本発明の接着剤組成物には、更に、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びアクリロニトリルのうちの少なくとも一つをモノマー成分とした重合体又は共重合体を配合することもできる。特に、グリシジルエーテル基を含有するグリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートを含む共重合体系アクリルゴムを併用した場合、応力緩和に優れるので好ましい。これらアクリルゴムの重量平均分子量は、接着剤組成物の凝集力を高める点から20万以上であることが好ましい。
【0067】
また、本発明の接着剤組成物には、更に、充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、難燃化剤、色素、チキソトロピック剤、フェノール樹脂、メラミン樹脂、イソシアネート類等を配合することもできる。
【0068】
また、本発明の接着剤には、更に、上記一般式(1)又は(2)で表されるシラン化合物以外の汎用シランカップリング剤を配合しても良い。汎用シランカップリング剤とは、その分子中にアルコキシシラン結合(Si−O−R)を有する化合物である。かかる汎用シランカップリング剤としては特に制限されないが、例えば、下記一般式(3)〜(8)で表される化合物を使用することができる。
【0069】
11−Si(OR12 (3)
11−SiR13(OR12 (4)
11−Si(R13−OR12 (5)
[式(3)〜(5)中、R11、R12及びR13はそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示す。]
【0070】
F−R21−Si(OR22 (6)
F−R21−SiR23(OR22 (7)
F−R21−Si(R23−OR22 (8)
[式(6)〜(8)中、R21は炭素数1〜6のアルキレン基を示し、R22及びR23はそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、Fはウレイド基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、グリシジルオキシ基、イソシアネート基、ビニル基、メタクリレート基、アクリレート基又はメルカプト基を示す。]
【0071】
なお、式(6)〜(8)中のFがアミノ基である場合の汎用シランカップリング剤も使用可能であるが、接着剤組成物の保存安定性が低下する傾向があるため好ましくない。
【0072】
以上説明した構成を有する接着剤組成物の使用形態は特に制限されないが、例えば、上記各成分をトルエン、酢酸エチル等の有機溶媒に溶解及び/又は分散させた溶液、或いは、この溶液から溶媒を除去して所定の形状に成形した成形体(例えば、後述するフィルム状接着剤)として使用することができる。
【0073】
また、上述した接着剤組成物は、回路部材同士を接続するための回路接続材料として使用可能である。このとき、回路接続材料は、導電性粒子を含有することが好ましい。
【0074】
導電性粒子としては、Au、Ag、Ni、Cu、はんだ等の金属粒子やカーボン等が挙げられ、十分な保存安定性を得るためには、表層はNi、Cu等の遷移金属類ではなくAu、Ag、白金属の貴金属類が好ましくAuがより好ましい。また、Ni等の遷移金属類の表面をAu等の貴金属類で被覆したものでもよい。また、非導電性のガラス、セラミック、プラスチック等を上記金属等の導電物質で被覆したものも使用でき、この場合にも最外層を貴金属類としたものが好ましい。
【0075】
導電性粒子として非導電性のプラスチック等を導電物質で被覆したものや、熱溶融金属粒子を用いると、加熱加圧によりこれらの導電性粒子は変形するため、接続時に電極との接触面積が増加し、回路部材の回路端子の厚みばらつきを吸収し接続信頼性が向上する傾向があるので好ましい。
【0076】
貴金属類の被覆層の厚みは、良好な抵抗を得る観点から、10nm以上が好ましい。しかし、Ni等の遷移金属の上に貴金属類の層を設ける場合は、貴金属類層の欠損や導電性粒子の混合分散時に生じる貴金属類層の欠損等により生じる酸化還元作用で遊離ラジカルが発生し、保存安定性の低下を引き起こす傾向があるため、これを防止する観点から、被覆層の厚みは30nm以上が好ましい。なお、被覆層の厚みの上限は特に制限されないが、得られる効果が飽和してくるため、1μm以下とすることが好ましい。
【0077】
導電性粒子の配合量は、接着剤組成物100体積部に対して0.1〜30体積部とすることが好ましく、この範囲内で用途に応じて適宜調節することが好ましい。なお、導電性粒子が過剰に存在することによる隣接回路の短絡等を防止する観点から、配合量は0.1〜10体積部とすることがより好ましい。
【0078】
(フィルム状接着剤)
図1は、フィルム状接着剤の一実施形態を示す断面図である。図1に示すフィルム状接着剤1は、上述した接着剤組成物をフィルム状に形成してなるものである。このフィルム状接着剤によれば、取り扱いが容易であり、被着体へ容易に設置することができ、接続作業を容易に行うことができる。
【0079】
なお、フィルム状接着剤1は、接着剤組成物を硬化させたときのTg(ガラス転移温度)が5℃以上異なる2種以上の層からなる多層構成(図示せず)としてもよい。
【0080】
フィルム状接着剤1は、例えば、接着剤組成物を溶媒に溶解したものを支持体(PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム等)上に塗工装置を用いて塗布し、接着剤組成物が硬化しない温度で所定時間熱風乾燥することにより作製することができる。また、フィルム状接着剤1の厚さは、10〜50μmであることが好ましい。
【0081】
(回路部材の接続構造)
図2は、本発明の回路部材の接続構造の一実施形態を示す概略断面図である。図2に示すように、本実施形態の回路部材の接続構造は、相互に対向する第一の回路部材20及び第二の回路部材30を備えており、第一の回路部材20と第二の回路部材30との間には、これらを接続する回路接続部材10が設けられている。
【0082】
第一の回路部材20は、回路基板(第一の回路基板)21と、回路基板21の主面21a上に形成される回路電極(第一の回路電極)22とを備えている。なお、回路基板21の主面21a上には、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0083】
一方、第二の回路部材30は、回路基板(第二の回路基板)31と、回路基板31の主面31a上に形成される回路電極(第二の回路電極)32とを備えている。また、回路基板31の主面31a上にも、場合により絶縁層(図示せず)が形成されていてもよい。
【0084】
第一及び第二の回路部材20,30としては、電気的接続を必要とする電極が形成されているものであれば特に制限はない。具体的には、液晶ディスプレイに用いられているITO等で電極が形成されているガラス又はプラスチック基板、プリント配線板、セラミック配線板、フレキシブル配線板、半導体シリコンチップ等が挙げられ、これらは必要に応じて組み合わせて使用される。このように、本実施形態では、プリント配線板やポリイミド等の有機物からなる材質をはじめ、銅、アルミニウム等の金属やITO(indium tin oxide)、窒化ケイ素(SiN)、二酸化ケイ素(SiO)等の無機材質のように多種多様な表面状態を有する回路部材を用いることができる。
【0085】
回路接続部材10は、絶縁性物質11及び導電性粒子7を含有している。導電性粒子7は、対向する回路電極22と回路電極32との間のみならず、主面21a,31a同士間にも配置されている。回路部材の接続構造においては、回路電極22,32が、導電性粒子7を介して電気的に接続されている。即ち、導電性粒子7が回路電極22,32の双方に直接接触している。
【0086】
ここで、導電性粒子7は、電気的接続を得ることができる導電性を有していれば特に制限はないが、Au、Ag、Ni、Cu、Co、はんだ等の金属粒子やカーボン等がある。また、非導電性のガラス、セラミックス、プラスチック等を上記金属等の導電物質で被覆したものも使用できる。このとき、被覆する金属層の厚さは十分な導電性を得るためには10nm以上が好ましい。
【0087】
この回路部材の接続構造においては、上述したように、対向する回路電極22と回路電極32とが導電性粒子7を介して電気的に接続されている。このため、回路電極22,32間の接続抵抗が十分に低減される。従って、回路電極22,32間の電流の流れを円滑にすることができ、回路の持つ機能を十分に発揮することができる。なお、回路接続部材10が導電性粒子7を含有していない場合には、回路電極22と回路電極32とが直接接触することで、電気的に接続される。
【0088】
回路接続部材10は後述するように、上記接着剤組成物を含む回路接続材料の硬化物により構成されていることから、回路部材20又は30に対する回路接続部材10の接着強度が十分に高くなり、特に高温高湿環境下において安定した接着強度が得られる。また、回路部材の接続構造では接着強度が十分に高い状態が長期間にわたって持続される。したがって、回路電極22,32間の距離の経時的変化が十分に防止され、回路電極22,32間の電気特性の長期信頼性を十分に高めることが可能となる。
【0089】
(回路部材の接続構造の製造方法)
次に、上述した回路部材の接続構造の製造方法について説明する。
【0090】
先ず、上述した第一の回路部材20と、フィルム状回路接続材料40を用意する(図3(a)参照)。フィルム状回路接続材料40は、回路接続材料をフィルム状に成形してなるものである。回路接続材料は、接着剤組成物5と、導電性粒子7とを含有する。ここで、接着剤組成物5には上述した本発明の接着剤組成物が用いられる。以下の説明では、接着剤組成物5における硬化性成分がラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤である場合について説明する。なお、回路接続材料が導電性粒子7を含有しない場合でも、その回路接続材料は絶縁性接着剤として異方導電性接着に使用でき、特にNCP(Non-Conductive Paste)と呼ばれることもある。また、回路接続材料が導電性粒子7を含有する場合には、その回路接続材料はACP(Anisotropic Conductive Paste)と呼ばれることもある。
【0091】
フィルム状回路接続材料40の厚さは、10〜50μmであることが好ましい。フィルム状回路接続材料40の厚さが10μm未満では、回路電極22,32間に回路接続材料が充填不足となる傾向がある。他方、50μmを超えると、回路電極22,32間の接着剤組成物を十分に排除しきれなくなり、回路電極22,32間の導通の確保が困難となる傾向がある。
【0092】
次に、フィルム状回路接続材料40を第一の回路部材20の回路電極22が形成されている面上に載せる。なお、フィルム状回路接続材料40が支持体(図示せず)上に付着している場合には、フィルム状回路接続材料40側を第一の回路部材20に向けるようにして、第一の回路部材20上に載せる。このとき、フィルム状回路接続材料40はフィルム状であり、取り扱いが容易である。このため、第一の回路部材20と第二の回路部材30との間にフィルム状回路接続材料40を容易に介在させることができ、第一の回路部材20と第二の回路部材30との接続作業を容易に行うことができる。
【0093】
そして、フィルム状回路接続材料40を、図3(a)の矢印A及びB方向に加圧し、フィルム状回路接続材料40を第一の回路部材20に仮接続する(図3(b)参照)。このとき、加熱しながら加圧してもよい。但し、加熱温度はフィルム状回路接続材料40中の接着剤組成物が硬化しない温度、すなわちラジカル重合開始剤がラジカルを発生する温度よりも低い温度とする。
【0094】
続いて、図3(c)に示すように、第二の回路部材30を、第二の回路電極を第一の回路部材20に向けるようにしてフィルム状回路接続材料40上に載せる。なお、フィルム状回路接続材料40が支持体(図示せず)上に付着している場合には、支持体を剥離してから第二の回路部材30をフィルム状回路接続材料40上に載せる。
【0095】
そして、フィルム状回路接続材料40を加熱しながら、図3(c)の矢印A及びB方向に第一及び第二の回路部材20,30を介して加圧する。このときの加熱温度は、ラジカル重合開始剤がラジカルを発生可能な温度とする。これにより、ラジカル重合開始剤においてラジカルが発生し、ラジカル重合性化合物の重合が開始される。こうして、フィルム状回路接続材料40が硬化処理され、本接続が行われ、図2に示すような回路部材の接続構造が得られる。
【0096】
加熱温度は、例えば、90〜200℃とし、接続時間は例えば1秒〜10分とする。これらの条件は、使用する用途、接着剤組成物、回路部材によって適宜選択され、必要に応じて、後硬化を行ってもよい。
【0097】
上記のようにして、回路部材の接続構造を製造すると、得られる回路部材の接続構造において、導電性粒子7を対向する回路電極22,32の双方に接触させることが可能となり、回路電極22,32間の接続抵抗を十分に低減することができる。
【0098】
また、フィルム状回路接続材料40の加熱により、回路電極22と回路電極32との間の距離を十分に小さくした状態で接着剤組成物5が硬化して絶縁性物質11となり、第一の回路部材20と第二の回路部材30とが回路接続部材10を介して強固に接続される。即ち、得られる回路部材の接続構造においては、回路接続部材10は、上記接着剤組成物を含む回路接続材料の硬化物により構成されていることから、回路部材20又は30に対する回路接続部材10の接着強度が十分に高くなり、特に高温高湿条件下において十分に接着強度が高くなる。また、回路部材の接続構造では接着強度が十分に高い状態が長期間にわたって持続される。したがって、得られる回路部材の接続構造は、回路電極22,32間の距離の経時的変化が十分に防止され、回路電極22,32間の電気特性の長期信頼性に優れる。
【0099】
なお、上記実施形態では、接着剤組成物5として、少なくとも加熱によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤を含むものが用いられているが、このラジカル重合開始剤に代えて、光照射のみでラジカルを発生するラジカル重合開始剤を用いてもよい。この場合、フィルム状回路接続材料40の硬化処理に際して、加熱に代えて光照射を行えばよい。この他にも、必要に応じて、超音波、電磁波等によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤を用いてもよい。また、接着剤組成物5における硬化性成分としてエポキシ樹脂及び潜在性硬化剤を用いてもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、フィルム状回路接続材料40を用いて回路部材の接続構造を製造しているが、フィルム状回路接続材料40に代えて、フィルム状に形成されていない回路接続材料を用いてもよい。この場合でも、回路接続材料を溶媒に溶解させ、その溶液を、第一の回路部材20又は第二の回路部材30のいずれかに塗布し乾燥させれば、第一及び第二の回路部材20,30間に回路接続材料を介在させることができる。
【0101】
また、導電性粒子7の代わりに、他の導電材料を用いてもよい。他の導電材料としては、粒子状、又は短繊維状のカーボン、AuめっきNi線などの金属線条等が挙げられる。
【実施例1】
【0102】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0103】
(合成例1:シラン化合物Aの合成)
30mlのガラス製反応容器に乾燥窒素を充填し、ここにアミノ基を有するシリルエーテル化合物であるγ−アミノプロピルトリエトキシシラン1.00g(チッソ社製、サイラエースS330)と、塩基性化合物であるトリエチルアミン0.492g(和光純薬工業社製)と、溶媒である脱水ヘキサン10ml(和光純薬工業社製)とを加えて、均一になるまで撹拌して混合液を得た。次に、得られた混合液に、アルキル(フェニル)シリルハロリドであるトリイソプロピルシリルクロリド0.824g(チッソ社製)を10分間かけて滴下し、25℃で48時間撹拌して反応を終了した。その後、析出したトリエチルアミン塩酸塩をガラスフィルターでろ別し、ヘキサンを留去した。次に、減圧蒸留を行い、下記式(9)で表されるN−トリ(イソプロピル)シリル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(沸点:180℃/67Pa)(シラン化合物A)0.99gを得た。なお、得られたN−トリ(イソプロピル)シリル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランの赤外線吸収スペクトルを図4に、NMRスペクトルを図5にそれぞれ示す。
【化5】

【0104】
(合成例2:シラン化合物Bの合成)
アルキル(フェニル)シリルハロリドに代えて、ジフェニルイソプロピルシリルクロリド1.23g(塩化イソプロピルマグネシウムとジクロロジフェニルシランからの合成品:第4版実験化学講座24 有機合成VI 145頁参照)を用いた以外は合成例1と同様にして反応を行い、下記式(10)で表されるN−(ジフェニルイソプロピル)シリル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン(沸点:250℃/80Pa)(シラン化合物B)1.12gを得た。なお、得られたN−(ジフェニルイソプロピル)シリル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランの赤外線吸収スペクトルを図6に、NMRスペクトルを図7にそれぞれ示す。
【化6】

【0105】
(合成例3:フィルム形成材Aの合成)
4,4−(9−フルオレニリデン)−ジフェノール45gと、3,3’,5,5’−テトラメチルビフェノールジグリシジルエーテル50gとをN−メチルピロリジオン1000mlに溶解し、これに炭酸カリウム21gを加え、110℃で攪拌した。3時間攪拌後、多量のメタノールに滴下し、生成した沈殿物を濾取してフェノキシ樹脂(フィルム形成材A)75gを得た。得られたフェノキシ樹脂の分子量を、東ソー社製GPC8020(カラム:東ソー社製TSKgelG3000HXL及びTSKgelG4000HXL、流速:1.0ml/min)により測定した結果、ポリスチレン換算でMn=12,500、Mw=30,300、Mw/Mn=2.42であった。
【0106】
(合成例4:フィルム形成材Bの合成)
窒素導入管、温度計、冷却管及びメカニカルスターラーを取り付けた2リットルの四つ口フラスコに、テトラブロモビスフェノールA(FG−2000、帝人化成社製)333.83gと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(YD−8125、分子蒸留品、エポキシ当量172g/当量、東都化成社製)205.56gと、N,N−ジメチルアセトアミド1257gとを入れ、窒素雰囲気下で均一になるまで撹拌混合して混合液を得た。次に、得られた混合液に水酸化リチウム0.94gを添加し、温度を徐々に上げながら120℃で9時間反応させた。反応の追跡は、一定時間ごとに反応溶液の粘度を測定し、粘度が増加しなくなるまで反応を行った。反応終了後、反応溶液を放冷し、これに活性アルミナ(200メッシュ)約420gを加えて一晩放置した。その後、活性アルミナを濾別して、フェノキシ樹脂のN,N−ジメチルアセトアミド溶液を得た。次いで、窒素導入管、温度計、冷却管及びメカニカルスターラーを取り付けた1リットルの四つ口フラスコに、得られたフェノキシ樹脂のN,N−ジメチルアセトアミド溶液807.62gと、末端カルボキシル基含有ブタジエン−アクリロニトリル共重合体(Hycar CTBNX1009−SP、宇部興産社製)50.88gとを入れ、撹拌混合しながら十分に窒素置換した。次に、窒素雰囲気下で撹拌混合し、温度を徐々に上げながら溶剤が還流する状態で8.5時間加熱した。冷却後、多量のメタノールに滴下し、生成した沈殿物を濾取してフェノキシ樹脂(フィルム形成材B)470gを得た。
【0107】
[実施例1]
合成例3で得られたフィルム形成材A、トルエン、及び酢酸エチルを、質量比がフィルム形成材A:トルエン:酢酸エチル=40:30:30となるように混合した混合溶液A100部と、合成例4で得られたフィルム形成材B、及びメチルエチルケトンを、質量比がフィルム形成材B:メチルエチルケトン=50/50となるように混合した混合溶液B20質量部と、ラジカル重合性化合物としてのイソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジアクリレート(東亞合成社製、M−313)10質量部と、ウレタンアクリレート(新中村化学工業社製、NKオリゴUA512)40質量部と、ラジカル重合開始剤としての1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルへキサノネート(日本油脂社製、パーヘキサ25O)3質量部と、導電性粒子としてのNi/Auめっきポリスチレン粒子(平均粒径4μm)10質量部と、合成例1で得られたシラン化合物A3質量部とを混合し、接着剤組成物を得た。この接着剤組成物を、厚み50μmのPETフィルム上に塗工し、70℃で5分間乾燥させて、膜厚25μmの接着剤フィルムを得た。
【0108】
[実施例2]
合成例3で得られたフィルム形成材A、トルエン、及び酢酸エチルを、質量比がフィルム形成材A:トルエン:酢酸エチル=40:30:30となるように混合した混合溶液A100質量部と、エポキシ樹脂、及び潜在性硬化剤の混合物としてのマイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(HX3941HP、旭化成工業社製、エポキシ当量185)60質量部と、導電性粒子としてNi/Auめっきポリスチレン粒子(平均粒径4μm)10質量部と、合成例1で得られたシラン化合物A2質量部とを混合し、接着剤組成物を得た。この接着剤組成物を、厚み50μmのPETフィルム上に塗工し、70℃で5分間乾燥させて、膜厚25μmの接着剤フィルムを得た。
【0109】
[実施例3]
シラン化合物Aに代えて、合成例2で得られたシラン化合物B3質量部と汎用シランカップリング剤としてのγ−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM503)5質量部とを用いた以外は実施例1と同様にして、接着剤フィルムを得た。
【0110】
[実施例4]
シラン化合物Aに代えて、合成例2で得られたシラン化合物B2質量部を用いた以外は実施例2と同様にして、接着剤フィルムを得た。
【0111】
[比較例1]
シラン化合物Aに代えて、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン3質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、接着剤フィルムを得た。
【0112】
[比較例2]
シラン化合物Aに代えて、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン2質量部を用いた以外は実施例2と同様にして、接着剤フィルムを得た。
【0113】
[比較例3]
シラン化合物Aに代えて、γ−エポキシプロピルトリメトキシシラン3質量部を用いた以外は実施例1と同様にして、接着剤フィルムを得た。
【0114】
[比較例4]
シラン化合物Aに代えて、γ−エポキシプロピルトリメトキシシラン2質量部を用いた以外は実施例2と同様にして、接着剤フィルムを得た。
【0115】
(接続構造の作製1)
バンプ面積50μm×50μm、ピッチ100μm、高さ20μmの金バンプを配置したICチップと、厚み1.1mmのガラス上にインジュウム−錫酸化物(ITO)を蒸着により形成したITO基板(表面抵抗率20Ω/□以下)とを準備した。このICチップとITO基板との間に、実施例1,3及び比較例1,3で得られた接着剤フィルムを配置し、これらを石英ガラスと加圧ヘッドとで挟んで、200℃、100MPa(バンプ面積換算)で10秒間加熱加圧して、ICチップとITO基板との接続を行った。このとき、接着剤フィルムは、あらかじめITO基板上に接着剤フィルムの接着面を70℃、0.5MPa(バンプ面積換算)で5秒間加熱加圧して貼り付け、その後、PETフィルムを剥離してICチップと上記の温度及び圧力条件で接続した。これにより、実施例1,3及び比較例1,3の接着剤フィルムを用いたIC/ITO接続構造をそれぞれ作製した。
【0116】
(接続構造の作製2)
実施例2,4及び比較例2,4の接着剤フィルムを用い、接着剤フィルムとICチップとの接続を220℃、100MPa(バンプ面積換算)で5秒間加熱加圧することで行った以外は上記接続構造の作製1と同様にして、ICチップとITO基板との接続を行った。これにより、実施例2,4及び比較例2,4の接着剤フィルムを用いたIC/ITO接続構造をそれぞれ作製した。
【0117】
(接続抵抗の測定)
上記接続構造の作製1,2により、実施例1〜4及び比較例1〜4の接着剤フィルムを用いたIC/ITO接続構造をそれぞれ10個ずつ作製した。このIC/ITO接続構造の接続直後の接続抵抗(初期接続抵抗)と、高温高湿試験(85℃、85%RH)を500時間行った後の接続抵抗(高温高湿試験後接続抵抗)とを四端子法で測定した。また、40℃で5日間加熱して劣化させた実施例1〜4及び比較例1〜4の接着剤フィルムを用いて、上記接続構造の作製1,2により、IC/ITO接続構造をそれぞれ10個ずつ作製した。この劣化後の接着剤フィルムを用いたIC/ITO接続構造の接続直後の接続抵抗(劣化後接続抵抗)を四端子法で測定した。測定結果の平均値をそれぞれ表9に示す。なお、10個のうち1個でも接続抵抗が大きすぎて測定できないものがある場合には、OPEN不良とした。
【0118】
(高温高湿試験後の外観検査)
上記高温高湿試験を行った後のIC/ITO接続構造の接続面を金属顕微鏡で観察した。作製した各10個のIC/ITO接続構造のうち剥離が観察されたもの不良とし、不良数を測定した。その結果を表9に示す。
【表9】

【0119】
(接続構造の作製3)
金めっきバンプ(50μm×50μm、バンプ高さ15μm、スペース10μm)付きICチップ(1.0mm×10mm×0.55mm)と、0.7mm厚のガラスとを準備した。このICチップとガラスとの間に、実施例1,3及び比較例1,3で得られた接着剤フィルムを配置し、200℃、100MPa(バンプ面積換算)で3秒間加熱加圧して、ICチップとガラスとの接続を行った。これにより、実施例1,3及び比較例1,3の接着剤フィルムを用いたIC/ガラス接続構造をそれぞれ作製した。
【0120】
(接続構造の作製4)
実施例2,4及び比較例2,4の接着剤フィルムを用い、220℃、100MPa(バンプ面積換算)で5秒間加熱加圧することで接続を行った以外は上記接続構造の作製3と同様にして、ICチップとガラスとの接続を行った。これにより、実施例2,4及び比較例2,4の接着剤フィルムを用いたIC/ガラス接続構造をそれぞれ作製した。
【0121】
(接着強度の測定)
上記接続構造の作製3,4により、実施例1〜4及び比較例1〜4の接着剤フィルムを用いたIC/ITO接続構造をそれぞれ10個ずつ作製した。このIC/ITO接続構造について、接続直後のせん断接着強度(初期接着強度)と、高温高湿試験(85℃、85%RH)を168時間行った後のせん断接着強度(高温高湿試験後接着強度)とを、ボンドテスタ(Dyge社製)を用いて測定した。測定結果の平均値をそれぞれ表10に示す。
【0122】
【表10】

【0123】
表9及び表10に示した結果から明らかなように、実施例1〜4の接着剤フィルム及びそれを用いた回路部材の接続構造によれば、比較例1〜4の接着剤フィルム及びそれを用いた回路部材の接続構造と比較して、接続抵抗が十分に低減されており、十分な接着強度が得られることが確認された。また、長期間の高温高湿試験後においても接続抵抗と接着強度とが十分に維持され、接続面の外観も良好であることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0124】
【図1】本発明のフィルム状接着剤の一実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明の回路部材の接続構造の一実施形態を示す概略断面図である。
【図3】(a)〜(c)はそれぞれ回路部材を接続する一連の工程図である。
【図4】N−トリ(イソプロピル)シリル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランの赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図5】N−トリ(イソプロピル)シリル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランのNMRスペクトルを示す図である。
【図6】N−(ジフェニルイソプロピル)シリル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランの赤外線吸収スペクトルを示す図である。
【図7】N−(ジフェニルイソプロピル)シリル−γ−アミノプロピルトリエトキシシランのNMRスペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0125】
1…フィルム状接着剤、5…接着剤組成物、7…導電性粒子、10…回路接続部材、11…絶縁性物質、20…第一の回路部材、21…回路基板(第一の回路基板)、21a…主面、22…回路電極(第一の回路電極)、30…第二の回路部材、31…回路基板(第二の回路基板)、31a…主面、32…回路電極(第二の回路電極)、40…フィルム状回路接続材料。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性成分と、下記一般式(1)又は(2)で表されるシラン化合物と、を含有することを特徴とする接着剤組成物。
【化1】

【化2】

[式(1)及び(2)中、Rは炭素数2〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、R、R、R、R及びRはそれぞれ独立に炭素数1〜12の直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を示し、nは1〜6の整数を示す。]
【請求項2】
前記硬化性成分が、ラジカル重合性化合物及びラジカル重合開始剤を含むものであることを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記硬化性成分が、エポキシ樹脂及び該エポキシ樹脂の潜在性硬化剤を含むものであることを特徴とする請求項1又は2記載の接着剤組成物。
【請求項4】
さらにフィルム形成材を含有することを特徴とする請求項1〜3のうちのいずれか一項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の接着剤組成物をフィルム状に形成してなることを特徴とするフィルム状接着剤。
【請求項6】
第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材とを、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とを対向配置させた状態で接続するための回路接続材料であって、
請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の接着剤組成物を含有することを特徴とする回路接続材料。
【請求項7】
さらに導電性粒子を含有することを特徴とする請求項6記載の回路接続材料。
【請求項8】
第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、
第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材と、
前記第一の回路基板の主面と前記第二の回路基板の主面との間に設けられ、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とを対向配置させた状態で前記第一及び第二の回路部材同士を接続する回路接続部材と、
を備える回路部材の接続構造であって、
前記回路接続部材は、請求項6又は7記載の回路接続材料の硬化物からなり、
前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とが電気的に接続されていることを特徴とする回路部材の接続構造。
【請求項9】
第一の回路基板の主面上に第一の回路電極が形成された第一の回路部材と、
第二の回路基板の主面上に第二の回路電極が形成された第二の回路部材と、
前記第一の回路基板の主面と前記第二の回路基板の主面との間に設けられ、前記第一の回路電極と前記第二の回路電極とを対向配置させた状態で前記第一及び第二の回路部材同士を接続する回路接続部材と、
を備える回路部材の接続構造の製造方法であって、
前記第一の回路基板の主面と前記第二の回路基板の主面との間に請求項6又は7記載の回路接続材料を配置し、
前記第一及び第二の回路部材を介して前記回路接続材料を加熱及び加圧して硬化処理して前記第一の回路部材と前記第二の回路部材とを接続することにより前記回路部材の接続構造を製造することを特徴とする回路部材の接続構造の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−16580(P2006−16580A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−198515(P2004−198515)
【出願日】平成16年7月5日(2004.7.5)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】