説明

携帯装置およびそれを用いた異常通知システム

【課題】通学児童や通勤女性などを狙った連れ去り等の異常事態の発生を迅速に把握し、周囲に警報を発したり関係者に通報できる携帯装置およびこれを用いた異常通知システムを提供せんとする。
【解決手段】携帯端末が、位置情報取得手段、歩数情報取得手段、取得した位置情報および歩数情報に基づき、携帯者の移動動作の状態を認識する状態認識手段、当該携帯者の予め設定された正常の移動動作パターンを記憶する正常動作記憶手段、状態認識手段で認識した状態と記憶されている正常の移動動作パターンとを比較し、異常の有無を判定する異常判定手段、並びに、異常判定手段または状態認識手段により異常と判定した場合に、当該異常情報を通信回線を介してクライアント端末に通知するための異常通知手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通学児童などの異常を検知し、その旨を出力する携帯装置、およびそれを用いた異常通知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、子供や高齢者の現在位置の追跡サービス、盗難自動車の追跡サービス、ストーカや恐喝等による緊急通報サービス、高齢者の急病等による緊急通報サービス等が知られており、具体的には、携帯端末がGPS衛星からの電波を受信して測位しており、緊急時に、携帯者が通報ボタンを押下することにより、緊急通報と共に、測位した位置情報を送出し、これを受信した緊急通報管理センタが、位置情報を基に端末の位置を識別して、救援者の派遣等を行うシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、従来の緊急通報サービスでは、携帯者が通報ボタンを押さない限り、緊急事態の発生を認識することはできない。また、ボタンを押すことができたとしても、センタが把握できるのはその位置や経路履歴のみであり、事態の内容に関する情報はまったく得ることができない。
【0004】
一方、要介助者、高齢者等の対象者に異変が起きたことを通報するための緊急通報システムであって、対象者が歩行中であるか静止中であるかを検出する携帯用検出器として万歩計(登録商標)を採用し、万歩計(登録商標)による歩数のカウント状況に基づき異変の発生の有無を判断し、異変が起きたものと判断された場合には緊急通報を発生するものが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この通報システムは、上記特定の者を対象に、歩行状況により体調異変により倒れていたり、夜中に徘徊しているような危険な事態を検知できるにすぎない。
【0005】
このように、従来の通報システムでは、対象者の位置から通常エリア外に出た場合に異常を通報するものや、歩行動作がないことから体調不調を検知するものや、夜中の歩行動作により徘徊の可能性を検知するものであり、例えば通学児童が不審者に車で連れ去られるような状況や、交通機関の乗り間違いなどの異常事態について、通常エリア内において発生から直ぐに迅速に把握することはできなかった。
【0006】
【特許文献1】特開2004−38634号公報
【特許文献2】特開2000−207659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、通学児童や通勤女性などを狙った連れ去り等の異常事態の発生を迅速に把握し、周囲に警報を発したり関係者に通報できる携帯装置およびこれを用いた異常通知システムを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題解決のために、位置情報を取得する位置情報取得手段、携帯者の歩数情報を取得する歩数情報取得手段、取得した位置情報および歩数情報に基づき、少なくとも徒歩による移動、および電車、バス、乗用車、自転車等の乗り物に乗った移動を含む携帯者の移動動作の状態を認識する状態認識手段、当該携帯者の予め設定された正常の移動動作パターンを記憶する正常動作記憶手段、前記状態認識手段で認識した状態と前記記憶されている正常の移動動作パターンとを比較し、異常の有無を判定する異常判定手段、並びに、前記異常判定手段または状態認識手段により異常と判定した場合に異常を知らせる出力手段を備えたことを特徴とする携帯装置を構成した。
【0009】
ここで、前記状態認識手段が、位置情報から得られる携帯者の移動量と歩数情報から算出される移動量とを比較し、前者の移動量と後者の移動量がほぼ同じで所定の誤差範囲内に収まる場合には、徒歩状態と判定し、前者の移動量が後者の移動量に比べて前記誤差範囲を越えて大きい場合には、乗り物に乗った移動状態と判定するシステムが好ましい。
【0010】
より詳しくは、前記正常動作記憶手段が、移動動作パターンとして所定の移動区間ごとに正常の移動動作状態を記憶しており、前記異常判定手段は、現在の位置情報に基づき、現在の移動区間を特定し、前記状態認識手段で認識した現在の状態と当該移動区間における正常の移動動作状態とを比較し異常の有無を判定するシステムが好ましい。
【0011】
さらに、前記携帯装置が地図情報を記憶する地図情報記憶手段を備え、前記正常動作記憶手段が、移動動作パターンとして地図上の移動経路とともに、該経路上の所定の移動区間ごとに正常の移動動作状態を記憶しており、前記異常判定手段は、現在の位置情報に基づき、前記移動経路上の現在の移動区間を特定し、前記状態認識手段で認識した現在の状態と当該移動区間における正常の移動動作状態とを比較し異常の有無を判定するシステムが好ましい。
【0012】
また、前記異常判定手段は、現在の位置が移動経路上にない場合に異常と判定することが好ましい。
【0013】
また、前記異常判定手段は、現在の位置が移動経路上になく、前記状態認識手段で認識した現在の状態が乗り物に乗った移動動作状態であり、目的地と異なる方向に向かっている場合に連れ去り又は交通機関の乗り間違いの可能性が高い異常状態であると判定することが好ましい。
【0014】
また、前記状態認識手段が、位置情報から得られる携帯者の移動量と歩数情報から算出される移動量を比較し、前者の移動量が後者の移動量に比べて小さい場合に異常状態と判定することが好ましい。
【0015】
また、前記状態認識手段が、歩数情報の歩行間隔に所定範囲以上の乱れが生じた場合に異常状態と判定することが好ましい。
【0016】
さらに、前記状態認識手段は、位置情報から得られる携帯者の移動量と歩数情報から得られる移動量がいずれもゼロである状態が一定時間経過した場合に、異常状態であると判定することが好ましい。
【0017】
また本発明は、上記携帯装置と、該携帯装置に対して通信回線を介して通信接続される保護者その他の関係者、関係機関のクライアント端末とから構成し、前記異常判定手段または状態認識手段により異常と判定した場合に異常を知らせる出力手段として、当該異常情報を通信回線を介してクライアント端末に通知するための異常通知手段を設けてなる異常通知システムをも構成する。ここで、前記クライアント端末が、前記異常情報を受信して異常を報知する報知手段を備えてなるシステムが好ましい。
【0018】
また、前記異常通知手段が、携帯装置の地図上の現在位置、移動履歴の情報を付加して通知するシステムが好ましい。
【0019】
また、前記異常通知手段が、状態認識手段で認識された現在の携帯者の移動動作状態の情報を付加して通知してなるシステムが好ましい。
【0020】
また、前記携帯装置が前記クライアント端末の電話番号を記憶する電話番号記憶手段を備え、前記異常判定手段または状態認識手段が、異常と判定した場合に、クライアント端末に対して自動ダイヤルして通話可能とするシステムが好ましい。
【0021】
とくに、前記自動ダイヤルの処理が、所定時間をおいて複数回行なわれることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
以上にしてなる本願発明に係る携帯端末、およびこれを用いた異常通知システムによれば、徒歩による移動、および電車、バス、乗用車、自転車等の乗り物に乗った移動を含む携帯者の移動動作の状態を認識し、当該携帯者の予め設定された正常の移動動作パターンと比較することにより、異常の有無を判定するので、例えば通常は徒歩で通学/通勤するのに対して、車による移動となった場合など、携帯者の通学路内や学校区内、通勤経路内において発生した異常事態を即時に検知し、周囲に警報を発したり、当該携帯装置から関係者に対して迅速に通報することができる。
【0023】
また、現在の位置だけでなく、予想される現在の移動動作の詳細(今、乗り物に乗っているのか、歩いているのか、激しく動いているのかどうかなど)についても携帯装置が把握しているため、これを通知することにより関係者による的確な対処が可能である。
【0024】
また、位置情報から得られる携帯者の移動量と歩数情報から算出される移動量とを比較し、前者の移動量と後者の移動量がほぼ同じで所定の誤差範囲内に収まる場合には、徒歩状態と判定し、前者の移動量が後者の移動量に比べて前記誤差範囲を越えて大きい場合には、乗り物に乗った移動状態と判定するので、現在の移動動作の詳細を確実に把握できる。
【0025】
また、正常動作記憶手段が、移動動作パターンとして所定の移動区間ごとに正常の移動動作状態を記憶しており、前記異常判定手段は、現在の位置情報に基づき、現在の移動区間を特定し、前記状態認識手段で認識した現在の状態と当該移動区間における正常の移動動作状態とを比較し異常の有無を判定するので、即座に周囲に警報を発したり、関係者に異常発生を迅速に通知できる。
【0026】
また、移動動作パターンとして地図上の移動経路とともに、該経路上の所定の移動区間ごとに正常の移動動作状態を記憶しており、前記異常判定手段は、現在の位置情報に基づき、前記移動経路上の現在の移動区間を特定し、前記状態認識手段で認識した現在の状態と当該移動区間における正常の移動動作状態とを比較し異常の有無を判定するので、地図上の詳細な位置に関連づけて、通常と異なるルートを移動している場合など、より詳細で的確迅速な異常検知が可能となり、即座に周囲に警報を発したり、より詳細な情報を関係者に提供できる。
【0027】
また、現在の位置が移動経路上にない場合に異常と判定することで、異常の発生を迅速に把握できる。
【0028】
また、異常判定手段は、現在の位置が移動経路上になく、前記状態認識手段で認識した現在の状態が乗り物に乗った移動動作状態であり、目的地と異なる方向に向かっている場合に連れ去り又は交通機関の乗り間違いの可能性が高い異常状態であると判定するので、早期に周囲に警報を発することができ、また関係者は携帯者の状況を的確・迅速に把握することができる。
【0029】
また、状態認識手段が、位置情報から得られる携帯者の移動量と歩数情報から算出される移動量を比較し、前者の移動量が後者の移動量に比べて小さい場合に異常状態と判定するので、携帯者がその場でジタバタするなど拘束された危険な状態を迅速に周囲に知らせることや関係者に通報できる。
【0030】
また、前記状態認識手段が、歩数情報の歩行間隔に所定範囲以上の乱れが生じた場合に異常状態と判定するので、携帯者が走っているなど、何らかの異常事態、危険な事態が生じていることを迅速に周囲や関係者に知らせることができる。
【0031】
さらに、前記状態認識手段は、位置情報から得られる携帯者の移動量と歩数情報から得られる移動量がいずれもゼロである状態が一定時間経過した場合に、異常状態であると判定するので、携帯装置の不携帯の可能性、または携帯者が動けない若しくはその場で倒れている状態にあることを迅速に把握して周囲や関係者に知らせることができる。
【0032】
また、前記クライアント端末が、前記異常情報を受信して異常を報知する報知手段を備えたので、関係者に異常事態の詳細を迅速・確実に提供できる。
【0033】
また、携帯装置の地図上の現在位置、移動履歴の情報を付加して通知したり、状態認識手段で認識された現在の携帯者の移動動作状態の情報を付加して通知することにより、関係者は携帯者の異常事態に対して、迅速・的確に対処することが可能となる。
【0034】
また、前記携帯装置が前記クライアント端末の電話番号を記憶する電話番号記憶手段を備え、前記異常判定手段または状態認識手段が、異常と判定した場合に、クライアント端末に対して自動ダイヤルして通話可能とすることにより、携帯者が携帯装置を操作できない状況にあっても、関係者と通話可能となり、関係者は携帯装置から聞こえてくる携帯者又は第三者の会話や周囲の音を聞くことが可能となり、異常事態の詳細を知る手懸りとなる。
【0035】
この自動ダイヤルの処理は、所定時間をおいて複数回行なわれるので、トンネル内や地下などで通話不能又は通話が途切れた場合にも再度回線接続を試み、より確実に通話可能状態が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0037】
図1は、本発明に係る異常通知システムの全体構成を示す図であり、図4、5は、それぞれ異常通知システムにおける状態認識処理、異常判定処理を示すフロー図である。
【0038】
本発明に係る異常通知システムSは、異常通知機能を備えた携帯者の携帯装置1と、携帯者の保護者、関係者、関係機関の管理下にあるクライアント端末2とが、通信回線Nを介して互いに接続されている。
【0039】
携帯装置1は、図2に示すように、処理装置10を中心に、記憶手段11、GPS受信器12、歩数計測手段13、無線にて通信回線に接続される通信制御部14が接続された携帯型のコンピュータであり、処理装置10は、マイクロプロセッサなどのCPUを主体に構成され、図示しないRAM、ROMからなる記憶部を有して各種処理動作の手順を規定するプログラムや処理データが記憶される。
【0040】
処理装置10は、機能的には、GPS受信器12により受信したGPS信号に基づき現在の位置情報を取得する位置情報取得部10a、歩数計測手段13により携帯者の歩数情報を取得する歩数情報取得部10b、携帯者の移動動作の状態を認識し、これを記憶手段の認識状態記憶部11cに記憶する状態認識処理部10c、状態認識処理部10cで認識された状態と、前記記憶されている正常の移動動作パターンとをそれぞれ記憶手段11から取り出して比較し、異常の有無を判定する異常判定処理部10d、前記異常判定処理または状態認識処理により、状態が異常であると判定したとき、当該異常情報を通信制御部14より通信回線を介して前記クライアント端末2に送信し、通知する異常通知処理部10e、同じく異常判定したとき、クライアント端末に対して自動ダイヤルするダイヤル処理部10fを備え、これら機能は上記記憶部のプログラムにより実現される。
【0041】
携帯装置1は、具体的には異常時に直接連絡を行うことが可能である点で通話機能を備えた携帯電話やPHSが好ましいが、通話機能を備えないその他のモバイル端末や専用端末であってもよく、その場合には上記ダイヤル処理部10fは省略される。歩数計測手段13は、従来より「万歩計(登録商標)」として知られる振動センサ又は加速度センサを備えた歩数計を採用できる。また、現在の位置情報は本例ではGPS受信器12により得ているが、それ以外に、PHS基地局の電波を受信して受信エリアを特定することにより位置を推定することや、RFIDやICタグを設け、位置認識することなども可能である。また、異常通知処理部10eは、たとえばメールに地図情報等を添付してクライアント端末2に送信することができる。
【0042】
また、前記記憶手段11は、取得した位置情報を記憶する位置情報記憶部11a、同じく取得した歩数情報を記憶する歩数情報記憶部11b、上記の状態認識処理部10aで認識された移動動作状態を記憶する認識状態記憶部11c、当該携帯者の予め設定された正常の移動動作パターンを記憶する正常動作記憶部11d、移動経路周辺の地理、駅、バス停等の交通機関の乗り場情報などを含む地図情報を記憶した地図情報記憶部11e、クライアント端末の電話番号を記憶する電話番号記憶部11fを備えている。
【0043】
クライアント端末2は、図3に示すように、処理装置20を中心に、記憶手段21、地図情報等の情報を表示する表示手段22、警告音を発するスピーカや振動を発生させるバイブレータなど、異常状態である旨を知らせることができる報知手段23、通信回線に接続する通信制御部24が接続されたコンピュータからなり、処理装置20は、マイクロプロセッサなどのCPUを主体に構成され、図示しないRAM、ROMからなる記憶部を有して各種処理動作の手順を規定するプログラムや処理データが記憶される。具体的には、デスクトップ型パソコン、ノート型パソコン、携帯電話、モバイル端末、カーナビなどであってもよい。
【0044】
携帯装置1の状態認識処理部10cによる状態認識処理は、図4に示すように、取得した位置情報および歩数情報を記憶手段11より取り出し(S101)、位置情報から得られる携帯者の移動量と、歩数情報から算出される移動量とを一定時間おきに比較して(S104)、少なくとも徒歩による移動、および電車、バス、乗用車、自転車等の乗り物に乗った移動を含む携帯者の移動動作の状態を認識する。すなわち移動速度を比較している。
【0045】
具体的には、S104において、位置情報から得られる携帯者の移動量(x)と、歩数情報から算出される移動量(y)とが、ほぼ同じで所定の誤差範囲内に収まる場合には(x≒y)、徒歩状態と判定し(S105)、前者の移動量が後者の移動量に比べて前記誤差範囲を越えて大きい場合には(x>y)、乗り物に乗った移動状態であると判定する(S106)。
【0046】
また、状態認識処理部10cでは、認識される状態が、後述する異常判定処理部10dによる正常動作との比較を行うまでもなく、異常であると判断できる場合には、この段階で異常状態と判定し、異常通知処理部10eによってクライアント端末2に対して通知が為される。
【0047】
本例では、S104において、上述のように位置情報から得られる携帯者の移動量(x)と歩数情報から算出される移動量(y)を比較した結果、前者の移動量が後者の移動量に比べて小さい場合には(x<y)、携帯者がその場でジタバタするなど拘束された危険な状態である可能性が高く、異常状態であると判定し(S108)、その旨を通知するとともに自動ダイヤルする(S109)。
【0048】
また、S102において、歩数情報から得られる歩行間隔に、所定範囲以上の乱れが生じた場合には、異常状態であると判定し(S108)、その旨を通知するとともに自動ダイヤルする(S109)。この場合、走っているなど、何らかの異常事態、危険な事態が生じている可能性が高い。
【0049】
また、S103において、位置情報から得られる携帯者の移動量(x)と歩数情報から得られる移動量(y)が、いずれもゼロである状態が一定時間経過した場合には、携帯装置の不携帯の可能性、または携帯者が動けない若しくはその場で倒れている状態にある可能性が高い異常状態であると判定し(S108)、その旨を通知するとともに自動ダイヤルする(S109)。
以上のようにして認識された移動動作の状態は、記憶手段の認識状態記憶部11cに記憶される。
【0050】
異常判定処理部10dが判定に用いる正常動作記憶部11dの移動動作パターンとしては、詳しくは、地図上の移動経路とともに、該経路上の所定の移動区間ごとに正常の移動動作状態が記憶されている。ここで、正常の移動動作パターンは複数でも良く、たとえば児童の通学の場合であればよく通る通学経路を複数設定したり、また、バスや電車の乗車駅を異なる駅として、移動手段を変えた複数の動作パターンを設定することも好ましい。
【0051】
そして、異常判定処理部10dによる異常判定処理は、図5に示すように、位置情報記憶部11aから得られる現在の位置情報に基づき、前記移動経路上の現在の移動区間を特定した上、認識状態記憶部11cより取り出した現在の移動動作状態と、当該移動区間における正常の移動動作状態とを比較し、異常の有無を判定する。
【0052】
この異常の有無の判定は、たとえば、携帯装置の現在の位置が移動経路上にない場合、異常状態であると判定し、さらに、携帯装置の現在の位置が移動経路上になく、かつ現在の移動動作状態が乗り物に乗った状態であり、目的地と異なる方向に向かっている場合は、連れ去り又は乗り間違いの可能性が高い異常状態であると判定する。
【0053】
異常通知処理部10eは、地図上の現在位置や移動履歴(本例では、地図上の現在位置、移動経路)、現在の携帯者の移動動作状態、予測される異常状態の詳細(倒れている、連れ去り等)の情報を付加して、通信制御部14より通信回線を介してクライアント端末2に送信する。なお、携帯装置1が現在の位置や移動履歴を付加した略地図を作成した上で、該地図をクライアント端末2に送信してもよいし、或いは、携帯装置1の処理負担や送信データ量の軽減化の観点より、現在の位置の緯度経度情報、移動履歴のベクトル情報をクライアント端末2に送信し、クライアント端末2がこれら情報に基づいて自ら有する地図上に付加して表示するようにしてもよい。
【0054】
異常判定処理部10dによる判定例を、通学児童の場合を例に説明する。図6は、徒歩で通学する児童の異常検知例、図7は交通機関を利用して通学する児童の異常検知例を示している。
【0055】
たとえば図6のように、徒歩で「家」から「A地点」を経由して「学校」に通う場合、(a)のように正常の移動動作パターンとして、地図上の移動経路とともに、該経路上の所定の移動区間ごとに正常の移動動作状態として「徒歩」情報が予め正常動作記憶部11dに記憶される。
【0056】
そして、状態認識処理部10cによって(b)のように、「A地点」から向かう方向が目的地の「学校」でなく、正常の移動経路を外れ、移動動作も「徒歩」ではなく「乗り物」であると認識された場合、異常判定処理部10dは、「A地点」からの方向、移動動作の異常を検知し、連れ去りの可能性があるとして異常状態と判定する。
【0057】
また、(c)のように「A地点」から学校へ向かう移動動作が、「徒歩」ではなく「乗り物」であると認識された場合、連れ去りの可能性もあるが、とりあえず想定外の異常事態と判定する。
【0058】
次に、図7のように、徒歩で「家」から「B駅」まで向かい、電車で「C駅」まで行き、そこから徒歩で「学校」へ向かうような場合、同じく(a)のように正常の移動動作パターンとして、地図上の移動経路とともに、該経路上の所定の移動区間ごとに正常の移動動作状態として、「家」から「B駅」までの間においては「徒歩」、「B駅」から「C駅」までの間においては「乗り物」、「C駅」から「学校」までの間においては「徒歩」の情報がそれぞれ正常動作記憶部11dに記憶される。
【0059】
そして、状態認識処理部10cによって(b)のように正常の移動経路を外れ、「B駅」以外の地点から想定外の「乗り物」による移動となり、目的地以外の方向に向かっていると認識された場合、異常判定処理部10dは、連れ去り又は電車やバスの乗り間違いの可能性が高いとして異常と判定する。
【0060】
また、(c)のように正常の移動経路を外れて目的地以外の方向に向かっているが、移動動作は「徒歩」のままであると認識された場合、連れ去りの可能性もあるが、道に迷っている可能性、あるいは寄り道の可能性もあるため、とりあえず想定外の異常と判定し、通知する。
【0061】
また、(d)のように正常の移動経路を外れたが目的地に向かっている場合には、移動動作が想定外の「乗り物」であっても連れ去りの可能性もあるが、友達の保護者の車に乗せてもらった可能性もあり、とりあえず想定外の事態であるとして異常と判定する。
【0062】
GPS通信ができず位置情報が得られない場所、たとえばトンネルや地下街において、歩数情報から得られる移動量を計測し、当該地下街又はトンネルの距離を越えているにもかかわらず出てこない場合には、異常と判定し、その旨をクライアント端末2に通知することが好ましい。
【0063】
次に、本発明の他の実施形態を図8に基づいて説明する。
【0064】
本例では、クライアント端末2を省略するとともに、携帯装置1が異常を検知した際、音を発するブザー、光を発する発光装置、または振動を発するバイブレータ、またはこれら2種以上の組合せで構成される警報手段15が設けられ、該警報手段15より警報を発することにより、周囲の人に迅速に異常を知らせるものである。このような警報手段15を設けることにより、携帯者の周囲の人の注意を惹き、危険に対する迅速な対処が可能となる。このような警報手段15は、通信が不要であることから場所を選ばず、周囲に対して何時何処でも即座に警報を発することができる点で好ましい。その他の携帯装置1の構成については、上述したクライアント端末2と通信接続される異常通知システムSの携帯携帯1の場合と同様であり、その説明は省略する。
【0065】
なお、このような警報手段15を、上述したクライアント端末2と通信接続される異常通知システムSを構成する携帯端末1に設けておき、該システムSにおいてクライアント端末2と通信不能な場所においても迅速に周囲に警報を発することができるように構成することも好ましい実施例であることは言うまでもない。
【0066】
本発明は、通学児童の安全監視に好適であるが、利用シーンはそれに限定されず、たとえば通勤時の安全監視、特に帰宅帰りの女性の安全監視にも好適であるし、また、ストーカー被害の防止にも利用できる。また、決まったスーパー等に買い物に行く主婦にも、買い物の行き帰りの安全監視として好適に用いられる。さらに、決まったルートをジョギングする場合の安全監視にも好適である。いずれも、通勤、買い物、ジョギング等の道、動作を予め登録しておけば、異常事態に巻き込まれた際、迅速に周囲に警報でき、また関係者にすぐに通知して安全監視を行うことが出来るのである。
【0067】
以上本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態に係る異常通知システムの全体構成を示す説明図。
【図2】同じく異常通知システムを構成する携帯装置の構成を示すブロック図。
【図3】クライアント端末の構成を示すブロック図。
【図4】状態認識処理の例を示すフロー図。
【図5】異常判定処理の例を示すフロー図。
【図6】(a)〜(c)は徒歩で通学する児童の異常検知の例を示す説明図。
【図7】(a)〜(d)は交通機関を利用して通学する児童の異常検知の例を示す説明図。
【図8】本発明の他の実施形態に係る携帯装置の構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0069】
S 異常通知システム
N 通信回線
1 携帯装置
2 クライアント端末
10 処理装置
10a 位置情報取得部
10b 歩数情報取得部
10c 状態認識処理部
10d 異常判定処理部
10e 異常通知処理部
10f ダイヤル処理部
11 記憶手段
11a 位置情報記憶部
11b 歩数情報記憶部
11c 認識状態記憶部
11d 正常動作記憶部
11e 地図情報記憶部
11f 電話番号記憶部
12 GPS受信器
13 歩数計測手段
14 通信制御部
15 警報装置
20 処理装置
21 記憶手段
22 表示手段
23 報知手段
24 通信制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置情報を取得する位置情報取得手段、携帯者の歩数情報を取得する歩数情報取得手段、取得した位置情報および歩数情報に基づき、少なくとも徒歩による移動、および電車、バス、乗用車、自転車等の乗り物に乗った移動を含む携帯者の移動動作の状態を認識する状態認識手段、当該携帯者の予め設定された正常の移動動作パターンを記憶する正常動作記憶手段、前記状態認識手段で認識した状態と前記記憶されている正常の移動動作パターンとを比較し、異常の有無を判定する異常判定手段、並びに、前記異常判定手段または状態認識手段により異常と判定した場合に異常を知らせる出力手段を備えたことを特徴とする携帯装置。
【請求項2】
前記状態認識手段が、位置情報から得られる携帯者の移動量と歩数情報から算出される移動量とを比較し、前者の移動量と後者の移動量がほぼ同じで所定の誤差範囲内に収まる場合には、徒歩状態と判定し、前者の移動量が後者の移動量に比べて前記誤差範囲を越えて大きい場合には、乗り物に乗った移動状態と判定してなる請求項1記載の携帯装置。
【請求項3】
前記正常動作記憶手段が、移動動作パターンとして所定の移動区間ごとに正常の移動動作状態を記憶しており、前記異常判定手段は、現在の位置情報に基づき、現在の移動区間を特定し、前記状態認識手段で認識した現在の状態と当該移動区間における正常の移動動作状態とを比較し異常の有無を判定してなる請求項1又は2記載の携帯装置。
【請求項4】
前記携帯装置が地図情報を記憶する地図情報記憶手段を備え、前記正常動作記憶手段が、移動動作パターンとして地図上の移動経路とともに、該経路上の所定の移動区間ごとに正常の移動動作状態を記憶しており、前記異常判定手段は、現在の位置情報に基づき、前記移動経路上の現在の移動区間を特定し、前記状態認識手段で認識した現在の状態と当該移動区間における正常の移動動作状態とを比較し異常の有無を判定してなる請求項1〜3の何れか1項に記載の携帯装置。
【請求項5】
前記異常判定手段は、現在の位置が移動経路上にない場合に異常と判定してなる請求項1〜4の何れか1項に記載の携帯装置。
【請求項6】
前記異常判定手段は、現在の位置が移動経路上になく、前記状態認識手段で認識した現在の状態が乗り物に乗った移動動作状態であり、目的地と異なる方向に向かっている場合に連れ去り又は交通機関の乗り間違いの可能性が高い異常状態であると判定してなる請求項5記載の携帯装置。
【請求項7】
前記状態認識手段が、位置情報から得られる携帯者の移動量と歩数情報から算出される移動量を比較し、前者の移動量が後者の移動量に比べて小さい場合に異常状態と判定してなる請求項1〜6の何れか1項に記載の携帯装置。
【請求項8】
前記状態認識手段が、歩数情報の歩行間隔に所定範囲以上の乱れが生じた場合に異常状態と判定してなる請求項1〜7の何れか1項に記載の携帯装置。
【請求項9】
前記状態認識手段は、位置情報から得られる携帯者の移動量と歩数情報から得られる移動量がいずれもゼロである状態が一定時間経過した場合に、異常状態であると判定してなる請求項1〜8の何れか1項に記載の携帯装置。
【請求項10】
請求項1〜9の何れかに記載の携帯装置と、該携帯装置に対して通信回線を介して通信接続される保護者その他の関係者、関係機関のクライアント端末とから構成し、前記異常判定手段または状態認識手段により異常と判定した場合に異常を知らせる出力手段として、当該異常情報を通信回線を介してクライアント端末に通知するための異常通知手段を設けてなる異常通知システム。
【請求項11】
前記クライアント端末が、前記異常情報を受信して異常を報知する報知手段を備えてなる請求項10記載の異常通知システム。
【請求項12】
前記異常通知手段が、前記携帯装置の地図上の現在位置、移動履歴の情報を付加して通知してなる請求項10又は11記載の異常通知システム。
【請求項13】
前記異常通知手段が、状態認識手段で認識された現在の携帯者の移動動作状態の情報を付加して通知してなる請求項10〜12の何れか1項に記載の異常通知システム。
【請求項14】
前記携帯装置が前記クライアント端末の電話番号を記憶する電話番号記憶手段を備え、前記異常判定手段または状態認識手段が、異常と判定した場合に、クライアント端末に対して自動ダイヤルして通話可能とする請求項10〜13の何れか1項に記載の異常通知システム。
【請求項15】
前記自動ダイヤルの処理が、所定時間をおいて複数回行なわれる請求項14記載の異常通知システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−226714(P2007−226714A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−49887(P2006−49887)
【出願日】平成18年2月27日(2006.2.27)
【出願人】(599108242)Sky株式会社 (257)
【Fターム(参考)】