説明

施設特定装置、施設特定方法及びコンピュータプログラム

【課題】複数の視線方向から乗員が注視する施設を正確に特定することが可能な施設特定装置、施設特定方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】異なる2以上のタイミングにおいて車両51を運転する運転者53の複数の視線方向E,Eを車内カメラ22の撮像画像から検出し、検出された運転者53の複数の視線方向E,Eが交差する地点から運転者の注視点Cを検出し、検出された注視点Cから所定の検索距離内に位置する施設を運転者の注視する施設として特定するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の乗員が注視する施設を特定する施設特定装置、施設特定方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載用のナビゲーション装置、PDA(Personal Digital Assistant)や携帯電話機などの携帯情報機器、パーソナルコンピュータ等では、地図情報として一般道路及び高速道路等の道路や施設名称等を各種記憶デバイスに記憶するか、又はサーバ等からダウンロードすることにより、利用者に対して所望のエリアの地図を表示することが可能となっている。
【0003】
更に、従来のナビゲーション装置等では地図を表示するのみでなく、利用者の利便性をより向上させる為に、表示された道路の近辺に存在する施設(ショッピングセンタ、レストラン等)に関する情報(施設名称、提供する料理の種類、営業時間等)を案内することについても行われていた。しかし、車両周辺に施設が多数ある場合に、その全ての施設についての案内を行うことは乗員にとって煩わしいものとなっていた。
【0004】
そこで、乗員が案内を必要とする施設を特定する技術として、例えば特開平11−288341号公報には、乗員の視線方向を検出し、その視線方向から乗員の注視する施設を乗員が案内を必要とする施設として特定して、その施設の案内を行うナビゲーション装置について記載されている。
【特許文献1】特開平11−288341号公報(第4頁〜第6頁、図8、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記した特許文献1に記載されたナビゲーション装置では、乗員の一の視線方向のみに基づいて乗員の注視する施設を特定するので、乗員から注視する施設までの距離については特定できない。その結果、乗員の視線方向上に異なる距離で複数の施設が位置する場合には、視線方向にある複数の施設の内、どの施設が実際に乗員が注視する施設であるのかを判定することは難しい。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、複数の視線方向から乗員が注視する施設を正確に特定することが可能となり、例えば、乗員の注視する施設を案内する際には、乗員にとって不要な施設情報については案内を抑制することができ、また、乗員の注視する施設をナビゲーションシステムの目的地に設定する場合には、乗員の希望する目的地を複雑な操作を課すことなく設定することができ、利便性を向上させた施設特定装置、施設特定方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る施設特定装置(1)は、車両の乗員の視線方向を異なるタイミングで複数検出する視線方向検出手段(13)と、前記視線方向検出手段により検出された乗員の複数の視線方向から乗員の注視点を検出する注視点検出手段(13)と、前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点に基づいて乗員の注視する施設を特定する施設特定手段(13)と、を有することを特徴とする。
尚、「異なるタイミング」とは、時間を基準としたタイミングでも良いし、車両の走行距離を基準としたタイミングでも良い。また、乗員の操作に基づくタイミングでも良い。
【0008】
また、請求項2に係る施設特定装置(1)は、請求項1に記載の施設特定装置であって、車両の現在位置を検出する車両位置検出手段(13)と、地図上における施設の位置を取得する施設位置取得手段(13)と、を有し、前記注視点検出手段(13)は、前記車両の現在位置と前記乗員の複数の視線方向とに基づいて乗員の注視点を検出し、前記施設特定手段(13)は、前記地図上における施設の位置と前記乗員の注視点に基づいて乗員の注視する施設を特定することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る施設特定装置(1)は、請求項1又は請求項2に記載の施設特定装置であって、前記施設特定手段(13)は、前記注視点検出手段(13)により検出された乗員の注視点から所定の検索距離内にある施設を検索する施設検索手段(13)を備え、前記施設検索手段によって検索された施設を乗員の注視する施設として特定することを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に係る施設特定装置(1)は、請求項3に記載の施設特定装置であって、前記施設特定手段(13)は、前記施設検索手段(13)によって前記注視点検出手段(13)により検出された乗員の注視点から前記検索距離内に施設が検索できなかった場合に、前記検索距離を拡張する検索範囲拡張手段(13)を備え、前記検索範囲拡張手段は、前記検索距離を乗員の視野及び又は車両から注視点までの距離に基づいて設定された最大距離まで拡張することを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に係る施設特定装置(1)は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の施設特定装置であって、前記注視点検出手段(13)は、前記乗員の複数の視線方向が交差する地点を乗員の注視点として検出することを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に係る施設特定方法は、車両の乗員の視線方向を異なるタイミングで複数検出する視線方向検出ステップ(S3、S6)と、前記視線方向検出ステップにより検出された乗員の複数の視線方向から乗員の注視点を検出する注視点検出ステップ(S8)と、前記注視点検出ステップにより検出された乗員の注視点に基づいて乗員の注視する施設を特定する施設特定ステップ(S9〜S13)と、を有することを特徴とする。
【0013】
更に、請求項7に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに搭載され、車両の乗員の視線方向を異なるタイミングで複数検出する視線方向検出機能(S3、S6)と、前記視線方向検出機能により検出された乗員の複数の視線方向から乗員の注視点を検出する注視点検出機能(S8)と、前記注視点検出機能により検出された乗員の注視点に基づいて乗員の注視する施設を特定する施設特定機能(S9〜S13)と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
前記構成を有する請求項1に記載の施設特定装置によれば、乗員の視線方向に対して複数の施設がある場合であっても、複数の視線方向から乗員が注視する施設を正確に特定することが可能となる。従って、例えば乗員の注視する施設を案内する際には、乗員にとって不要な施設情報については案内を抑制することができる。また、乗員の注視する施設をナビゲーションシステムの目的地に設定する場合には、乗員の希望する目的地を複雑な操作を課すことなく設定することができ、利便性が向上する。
【0015】
また、請求項2に記載の施設特定装置によれば、車両の現在位置や方位や地図上の施設の位置情報を用いることによって、車両に対する相対的な乗員の視線方向から絶対的な乗員の視線方向の検出が可能となり、乗員の注視する施設を地図上で正確に特定することができる。
【0016】
また、請求項3に記載の施設特定装置によれば、乗員の注視点を基準として周囲に位置する施設の検索を行うので、注視点を検出する際に誤差が生じたとしても、乗員の注視する施設を的確に検出することが可能となる。
【0017】
また、請求項4に記載の施設特定装置によれば、施設を検索する検索範囲を徐々に拡大させるので、注視点を検出する際の誤差が大きくなったとしても、乗員の注視する施設を的確に検出することが可能となる。また、乗員の視野や注視点までの距離に基づいて最大の検索範囲を設定するので、検出された注視点に誤差が生じた場合であっても、誤った施設が乗員の注視する施設として特定されることを防止できる。
【0018】
また、請求項5に記載の施設特定装置によれば、乗員が同一の施設を注視し続けている場合において、乗員の複数の視線方向から乗員の注視する施設を確実に特定する事が可能となる。
【0019】
また、請求項6に記載の施設特定方法によれば、乗員の視線方向に対して複数の施設がある場合であっても、複数の視線方向から乗員が注視する施設を正確に特定することが可能となる。
【0020】
更に、請求項7に記載のコンピュータプログラムによれば、乗員の視線方向に対して複数の施設がある場合であっても、複数の視線方向から乗員が注視する施設を正確に特定するようにコンピュータを制御させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る車両用情報案内装置についてナビゲーション装置に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成図である。
【0022】
図1に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、自車の現在位置を検出する現在位置検出部11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU(視線方向検出手段、注視点検出手段、施設特定手段、車両位置検出手段、施設位置取得手段、施設検索手段、検索範囲拡張手段)13と、操作者からの操作を受け付ける操作部14と、操作者に対して自車周辺の地図や施設に関する施設情報を表示する液晶ディスプレイ15と、経路案内に関する音声ガイダンスや施設に関する案内音声を出力するスピーカ16と、記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ17と、交通情報センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール18と、運転者の発話音声を解析する音声認識部19とから構成されている。また、ナビゲーションECU13には、自車の走行速度を検出する車速センサ20と、運転者の発話音声を録取するマイク21と、車内で運転者の顔を撮像する車内カメラ22が接続される。
【0023】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部11は、GPS31、地磁気センサ32、距離センサ33、ステアリングセンサ34、方位検出部としてのジャイロセンサ35、高度計(図示せず)等からなり、現在の自車の位置、方位等を検出することが可能となっている。
【0024】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB36、後述のナビゲーションECU13により検出された運転者の視線方向を累積的に記憶する視線方向DB37、所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0025】
ここで、地図情報DB36は、経路案内、交通情報案内及び地図表示に必要なデータが記録されている。具体的には、道路(リンク)形状に関するリンクデータ38、ノード点に関するノードデータ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、施設に関する施設データ(POI(Point of Interest)情報)39、地点を検索するための検索データ、地図、道路、交通情報等の画像を液晶ディスプレイ15に描画するための画像描画データ等から構成されている。
【0026】
ここで、特に、本実施形態に係るナビゲーション装置1に記憶される施設データ39について図2を用いて説明する。
図2に示すように施設データ39は、地図上に位置する各種施設について、識別情報としての施設IDと、施設の位置を特定する位置座標(x、y)と、施設のジャンル(飲食店、イタリア料理、中華料理、書店、コンビニ等)と、施設の営業時間等が記憶される。
そして、後述するようにナビゲーションECU13は施設データ39の特に施設の位置座標に基づいて、運転者が注視する施設を特定する。また、運転者が注視する施設が特定された場合には、その施設に関するジャンルや営業時間等に関する情報を液晶ディスプレイ15に表示したり、音声でスピーカ16から出力することにより運転者に施設の案内を行う。
【0027】
また、視線方向DB37は、運転者の視線方向の検出結果が検出時刻とともに記憶されるDBである。具体的には、車内カメラ22で撮像した撮像画像に基づいてナビゲーションECU13により検出された運転者の視線方向が、車両方位に対する相対角度(視線角度)によって相対的に特定され、GPS31やジャイロセンサ35等によって検出された現在時刻、車両の現在位置、方位とともに視線方向データとして記憶される。尚、運転者の視線方向は絶対方位によって特定しても良い。
【0028】
ここで、特に、本実施形態に係るナビゲーション装置1の視線方向DB37に記憶される視線方向データについて図3の具体例を用いて説明する。
図3では、車両51が道路52を走行中の場合において、所定のタイミングでの車両51を運転する運転者53の視線方向Eを特定する視線方向データを示す。そして、視線方向データは、現在の時刻(視線方向Eを検出した時刻)と、車両の現在位置(X,Y)と、車両の絶対方位φと、車両方位に対する運転者53の視線方向Eの相対角度(視線角度)θとから構成される。そして、上記視線方向データに基づいて運転者53の絶対的な視線方向Eが特定可能となる。
【0029】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)13は、目的地が選択された場合に現在位置から目的地までの誘導経路を設定する誘導経路設定処理や運転者の注視する施設を特定する施設特定処理(図4参照)等のナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、制御用のプログラムのほか、施設特定処理プログラム(図4参照)等が記録されたROM43、ROM43から読み出したプログラムを記録するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置を備えている。
【0030】
操作部14は、走行開始時の現在位置を修正し、案内開始地点としての出発地及び案内終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。また、ナビゲーション装置1で音声認識を開始する際に操作されるトークスイッチも操作部14に含まれる。
そして、ナビゲーションECU13は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、操作部14は液晶ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。
【0031】
また、液晶ディスプレイ15には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在位置から目的地までの誘導経路、誘導経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。
【0032】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU13からの指示に基づいて誘導経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。
【0033】
また、DVDドライブ17は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて地図情報DB36の更新等が行われる。
【0034】
また、通信モジュール18は、交通情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、駐車場情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
【0035】
また、音声認識部19は、操作部14のトークスイッチがONされている間にマイク21によって録取された音声を解析する装置である。そして、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、音声認識部19によって運転者の発声した音声が認識されたことをトリガとして、運転者の注視する施設の特定が行われる。
【0036】
一方、車速センサ20は、車両の車輪の回転に応じて車速パルスを発生させ、車両の移動距離や車速を検出するセンサである。
【0037】
また、マイク21は、音を電気信号に変換する機器であり、電気信号に変換された音は音声認識部19へと送信される。ここで、マイク21はインストルメントパネルの上面に取り付けられ、集音方向が運転席方向となるように設置される。
【0038】
また、車内カメラ22は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたものであり、インストルメントパネルの上面に取り付けられ、視線方向を運転席に向けて設置される。そして、運転席に座った運転者の顔を撮像する。また、ナビゲーションECU13は後述するように撮像された撮像画像から運転者の視線方向を検出し、検出した運転者の視線方向から運転者が注視する施設を特定する。
【0039】
続いて、前記構成を有する本実施形態に係るナビゲーション装置1においてナビゲーションECU13が実行する施設特定処理プログラムについて図4に基づき説明する。図4は本実施形態に係る施設特定処理プログラムのフローチャートである。ここで、施設特定処理プログラムは車両のイグニションがONされた後に所定間隔(例えば200ms毎)で実行され、運転者が注視する施設を特定するプログラムである。尚、以下の図4にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM42やROM43に記憶されており、CPU41により実行される。
【0040】
先ず、施設特定処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU41はメモリの初期化などの初期化処理を実行する。
【0041】
次に、S2でCPU41は運転者の注視する施設の特定を開始する開始トリガが入力されたか否かを判定する。ここで、本実施形態では、トークスイッチがONされて運転者による発話を音声認識部19で認識した場合に開始トリガが入力されたと判定する。尚、トークスイッチがONされたことのみを開始トリガの入力の条件としても良い。また、特定の発話内容(例えば、「あの店は?」)を認識したことを開始トリガの入力の条件としても良い。
【0042】
その結果、開始トリガが入力されたと判定された場合(S2:YES)にはS3へと移行する。一方、開始トリガが入力されていないと判定された場合(S2:NO)には、開始トリガが入力されるまで待機する。
【0043】
S3においてCPU41は、GPS31により自車の現在位置(仮にA地点とする)での位置座標(X1,Y1)を検出するとともに、地磁気センサ32やジャイロセンサ35により自車の絶対方位φ1を検出する。
更に、S3でCPU41は自車の現在位置(A地点)での運転者の視線方向Eを検出する。具体的には、車内カメラ22によって運転席に座った運転者の顔を撮像し、撮像画像に所定の画像処理を施すことによって運転者の顔の向きや瞳孔の位置を検出する。そして、検出された運転者の顔の向きや瞳孔の位置、車内カメラ22の設置位置や設置角度から運転者の視線方向Eを検出する。尚、視線方向Eは図5に示すように自車方位φ1に対する相対角度(視線角度)θ1によって相対的に特定される。
【0044】
そして、S4でCPU41は、前記S3で検出された自車位置(X1,Y1)、自車方位φ1、視線角度θ1を含むA地点での視線方向データを視線方向DB37に記憶する。
【0045】
続いて、S5でCPU41は所定時間T(例えば2sec)待機する。
【0046】
そして、S6においてCPU41は、GPS31により自車の現在位置(仮にB地点とする)での位置座標(X2,Y2)を検出するとともに、地磁気センサ32やジャイロセンサ35により自車の絶対方位φ2を検出する。
更に、S6でCPU41は自車の現在位置(B地点)での運転者の視線方向Eを検出する。具体的には、車内カメラ22によって運転席に座った運転者の顔を撮像し、撮像画像に所定の画像処理を施すことによって運転者の顔の向きや瞳孔の位置を検出する。そして、検出された運転者の顔の向きや瞳孔の位置、車内カメラ22の設置位置や設置角度から運転者の視線方向Eを検出する。尚、視線方向Eは図5に示すように自車方位φ2に対する相対角度(視線角度)θ2によって相対的に特定される。また、上記S3及びS6が車両位置検出手段及び視線方向検出手段の処理に相当する。
【0047】
そして、S7でCPU41は、前記S6で検出された自車位置(X2,Y2)、自車方位φ2、視線角度θ2を含むB地点での視線方向データを視線方向DB37に記憶する。
【0048】
その後、S8でCPU41は、前記S4で記憶されたA地点での視線方向データと前記S7で記憶されたB地点での視線方向データとに基づいて、運転者が注視する注視点C(XX,YY)を検出する。具体的に、本実施形態では図5に示すように運転者が同一の注視点Cを見続けると仮定し、異なるタイミング(本実施形態では5sec間隔)で検出されたA地点とB地点での運転者の視線方向E,Eが交差する地点の座標を、三角測量による位置測定技術を用いて算出する。そして、算出された地点を運転者が注視する注視点C(XX,YY)として検出する。尚、上記S8が注視点検出手段の処理に相当する。
【0049】
続いて、S9でCPU41は、前記S8で検出された注視点Cと、地図情報DB36から取得した注視点周辺の施設の位置座標に基づいて、注視点Cから所定の検索距離以内(例えば、10m〜50m)にある施設を検索する。尚、検索距離は初期段階では最も短い最短距離(例えば10m)であり、その後に検索範囲(注視点Cを中心に半径を検索距離とした円形範囲)内に施設が位置しないと判定された場合に後述のように最大距離(例えば50m)まで徐々に拡大される(S12)。尚、上記S9が施設位置取得手段及び施設検索手段の処理に相当する。
【0050】
そして、S10でCPU41は、注視点Cから現在の検索距離以内で施設が検索できたか否か判定する。その結果、現在の検索距離で施設が検索できたと判定された場合(S10:YES)には、S11へと移行する。
【0051】
S11においてCPU41は、前記S9で検索された施設を運転者の注視する施設として特定する。そして、特定した施設に対する案内を液晶ディスプレイ15やスピーカ16を用いて行う。また、特定した施設をナビゲーション装置1の目的地に設定しても良い。
【0052】
ここで、図6及び図7を用いて上記S9〜S11で実行される運転者の注視する施設の検索処理及び特定処理について、より詳細に説明する。
図6は注視点Cを中心とした検索範囲55内に一の施設のみが位置する場合を示した図である。そして、図6に示す状況で前記S9の施設の検索処理が行われると、注視点Cを中心とした検索範囲55内において施設(B)のみが検索される。従って、前記S11では施設(B)が運転者の注視する施設として特定される。
【0053】
図7は注視点Cを中心とした検索範囲55内に2以上の施設が位置する場合を示した図である。そして、図7に示す状況で前記S9の施設の検索処理が行われると、注視点Cを中心とした検索範囲55内において施設(A)と施設(B)が検索される。従って、前記S11では施設(A)と施設(B)が運転者の注視する施設として特定される。尚、検索範囲内に2以上の施設が位置する場合には、注視点に最も近い施設(図7では施設(B))のみを運転者の注視する施設として特定しても良い。
【0054】
一方、現在の検索距離では施設が検索できないと判定された場合(S10:NO)には、検索距離を所定距離(例えば10m)だけ拡張する(S12)。尚、上記S12が検索範囲拡張手段の処理に相当する。
【0055】
更に、S13においてCPU41は、その拡張された検索距離が最大距離(例えば50m)を越えたか否か判定する。そして、検索距離が最大距離を越えたと判定された場合(S13:YES)には、運転者が注視する施設を特定することなく、当該施設特定処理プログラムを終了する。
【0056】
ここで、図8は運転者が注視する施設を特定できない場合を示した図である。図8に示すように、検索距離が最大距離となった状態で検索範囲55内にいずれの施設も位置しない場合では、前記S9の施設の検索処理によってはいずれの施設(A)〜(C)も検索されない。従って、運転者の注視する施設は特定されない。
【0057】
尚、検索距離の最大値は、運転者の視野角と車両から注視点までの距離によって決定される。ここで、図9は検索距離の最大値の決定方法について示した図である。
図9に示すように、車両51を運転する運転者53の視野角が2αであって、車両51から注視点Cまでの距離がLである場合には、検索距離の最大値は“L×tanα”と決定する。尚、運転者の視野角又は車両から注視点までの距離のいずれか一方のみに基づいて検索距離の最大値を決定しても良い。
【0058】
それに対して、前記S13において検索距離が最大距離を越えていないと判定された場合(S13:NO)にはS9へと戻り、拡張した検索距離に基づいて、再度、施設の検索が行われる。尚、上記S9〜S13が施設特定手段の処理に相当する。
【0059】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1及びナビゲーション装置1による施設特定方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、異なる2以上のタイミングにおいて車両を運転する運転者の複数の視線方向を車内カメラ22の撮像画像から検出し(S3、S6)、検出された運転者の複数の視線方向が交差する地点から運転者の注視点を検出し(S8)、検出された注視点から所定の検索距離内に位置する施設を運転者の注視する施設として特定する(S9〜S13)ので、運転者の視線方向に対して複数の施設がある場合であっても、複数の視線方向から運転者の注視する施設を正確に特定することが可能となる。従って、例えば運転者の注視する施設を案内する際には、運転者にとって不要な施設情報については案内を抑制することができる。また、運転者の注視する施設をナビゲーション装置1の目的地に設定する場合には、運転者の希望する目的地を複雑な操作を課すことなく設定することができ、利便性が向上する。
また、車両の現在位置や方位や地図上の施設の位置情報を用いることによって、車両に対する相対的な運転者の視線方向から絶対的な運転者の視線方向の検出が可能となり、運転者の注視する施設を地図上で正確に特定することができる。
また、運転者の注視点を基準として周囲に位置する施設の検索を行うので、注視点を検出する際に誤差が生じたとしても、運転者の注視する施設を的確に検出することが可能となる。
また、施設を検索する検索範囲を徐々に拡大させるので、注視点を検出する際の誤差が大きくなったとしても、運転者の注視する施設を的確に検出することが可能となる。また、運転者の視野や注視点までの距離に基づいて最大の検索範囲を設定するので、検出された注視点に誤差が生じた場合であっても、誤った施設が運転者の注視する施設として特定されることを防止できる。
また、視線方向の交点を運転者の注視点として検出するので、運転者が同一の施設を注視し続けている場合において、運転者の複数の視線方向から運転者の注視する施設を確実に特定する事が可能となる。
【0060】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では運転者の注視した施設を検出することとしているが、運転者以外でも助手席や後部座席に着座する乗員の注視した施設を検出することとしても良い。
【0061】
また、本実施形態では運転者の視線方向を検出するA地点とB地点は、所定時間(例えば、5sec)だけ時刻の異なるタイミングとしているが、所定距離(例えば、100m)だけ走行距離の異なるタイミングとしても良い。また、運転者の操作に基づいてA地点とB地点を特定しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施形態に係るナビゲーション装置の概略構成図である。
【図2】地図情報DBに記憶される施設データの一例を示した図である。
【図3】視線方向DBに記憶される視線方向データの一例を示した図である。
【図4】本実施形態に係る施設特定処理プログラムのフローチャートである。
【図5】運転者の注視点の検出方法を説明した説明図である。
【図6】注視点を中心とした検索範囲内に一の施設のみが位置する場合を示した図である。
【図7】注視点を中心とした検索範囲内に2以上の施設が位置する場合を示した図である。
【図8】運転者が注視する施設を特定できない場合を示した図である。
【図9】検索距離の最大値の決定方法について示した図である。
【符号の説明】
【0063】
1 ナビゲーション装置
13 ナビゲーションECU
36 地図情報DB
37 視線方向DB
41 CPU
42 RAM
43 ROM
51 車両
53 運転者


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の乗員の視線方向を異なるタイミングで複数検出する視線方向検出手段と、
前記視線方向検出手段により検出された乗員の複数の視線方向から乗員の注視点を検出する注視点検出手段と、
前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点に基づいて乗員の注視する施設を特定する施設特定手段と、を有することを特徴とする施設特定装置。
【請求項2】
車両の現在位置を検出する車両位置検出手段と、
地図上における施設の位置を取得する施設位置取得手段と、を有し、
前記注視点検出手段は、前記車両の現在位置と前記乗員の複数の視線方向とに基づいて乗員の注視点を検出し、
前記施設特定手段は、前記地図上における施設の位置と前記乗員の注視点に基づいて乗員の注視する施設を特定することを特徴とする請求項1に記載の施設特定装置。
【請求項3】
前記施設特定手段は、
前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点から所定の検索距離内にある施設を検索する施設検索手段を備え、
前記施設検索手段によって検索された施設を乗員の注視する施設として特定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の施設特定装置。
【請求項4】
前記施設特定手段は、
前記施設検索手段によって前記注視点検出手段により検出された乗員の注視点から前記検索距離内に施設が検索できなかった場合に、前記検索距離を拡張する検索範囲拡張手段を備え、
前記検索範囲拡張手段は、前記検索距離を乗員の視野及び又は車両から注視点までの距離に基づいて設定された最大距離まで拡張することを特徴とする請求項3に記載の施設特定装置。
【請求項5】
前記注視点検出手段は、前記乗員の複数の視線方向が交差する地点を乗員の注視点として検出することを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の施設特定装置。
【請求項6】
車両の乗員の視線方向を異なるタイミングで複数検出する視線方向検出ステップと、
前記視線方向検出ステップにより検出された乗員の複数の視線方向から乗員の注視点を検出する注視点検出ステップと、
前記注視点検出ステップにより検出された乗員の注視点に基づいて乗員の注視する施設を特定する施設特定ステップと、を有することを特徴とする施設特定方法。
【請求項7】
コンピュータに搭載され、
車両の乗員の視線方向を異なるタイミングで複数検出する視線方向検出機能と、
前記視線方向検出機能により検出された乗員の複数の視線方向から乗員の注視点を検出する注視点検出機能と、
前記注視点検出機能により検出された乗員の注視点に基づいて乗員の注視する施設を特定する施設特定機能と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−31943(P2009−31943A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193815(P2007−193815)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】