説明

有機金属膜のパターニング方法、接合方法、接合体およびエッチング方法

【課題】有機金属材料で構成された導電性の有機金属膜を、容易にパターニングすることができ、所望の形状の有機金属膜を効率よく安価に形成可能な有機金属膜のパターニング方法、有機金属膜を介して基材と被着体とを部分的に効率よく接合可能な接合方法、この接合方法により接合された接合体、および、前記有機金属膜をマスクとして、基材の所望の領域を選択的にエッチングするエッチング方法を提供すること。
【解決手段】第1の基材21上に有機金属膜3を形成する工程と、有機金属膜3の一部に設定した加圧領域310を圧子4により膜厚方向に加圧する工程と、有機金属膜3にエッチング処理を施す工程とを有する。加圧領域310の有機金属膜3には、加圧に伴い、加圧されない非加圧領域311との間に疎密差が生じる。この疎密差は有機金属膜3におけるエッチング速度に反映されるため、これにより有機金属膜3をパターニングすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機金属膜のパターニング方法、接合方法、接合体およびエッチング方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、被膜を所望の形状にパターニングするためには、被膜を覆うように所定パターンのレジスト膜を形成し、このレジスト膜をマスクとして用いて、被膜をエッチングすることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
この特許文献1には、被膜をエッチングする方法として、まず、シリコン基板上にシリコン酸化膜を形成し、このシリコン酸化膜を覆うようにレジスト膜を形成する。次いで、このレジスト膜にフォトリソグラフィーを行うことにより、レジスト膜をパターニングする。これにより、レジスト膜に所定パターンの開口領域を形成する。その後、シリコン酸化膜をエッチング液を用いてエッチングすることにより、レジスト膜の開口領域におけるシリコン酸化膜が選択的にエッチングされる。以上のようにして、シリコン酸化膜(被膜)を所望の形状にパターニングすることができる。
ところが、レジスト膜の形成は、例えば、被膜上へのレジスト材料の供給、乾燥、ベーク処理、露光、現像、洗浄、乾燥等の多段階の工程を要する。
このような工程は、極めて煩雑であり、従来、被膜のパターニングには多大な時間と手間を要していた。
【0003】
【特許文献1】特開2003−109937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、有機金属材料で構成された導電性の有機金属膜を、容易にパターニングすることができ、所望の形状の有機金属膜を効率よく安価に形成可能な有機金属膜のパターニング方法を提供することにある。
また、このパターニング方法を用いて、基材上に形成された有機金属膜をパターニングすることにより、有機金属膜を介して基材と被着体とを部分的に効率よく接合可能な接合方法、この接合方法により接合された接合体、および、前記パターニング方法を用いてパターニングされた有機金属膜をマスクとして、基材の所望の領域を選択的にエッチングするエッチング方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の有機金属膜のパターニング方法は、基材上に、有機金属材料で構成された有機金属膜を形成する有機金属膜形成工程と、
前記有機金属膜の一部を膜厚方向に加圧する加圧工程と、
前記有機金属膜に対してエッチング処理を施す有機金属膜エッチング工程とを有し、
前記有機金属膜エッチング工程において、前記有機金属膜の加圧されていない非加圧領域におけるエッチング速度が、前記有機金属膜の加圧された加圧領域におけるエッチング速度よりも速いことを利用して、前記非加圧領域を選択的に除去することを特徴とする。
これにより、有機金属材料で構成された導電性の有機金属膜を、容易にパターニングすることができ、所望の形状の有機金属膜を効率よく安価に形成することができる。
【0006】
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記有機金属材料は、金属錯体であることが好ましい。
金属錯体を用いて有機金属膜を成膜することにより、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存した状態で、確実に有機金属膜を形成することができる。
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記有機金属材料は、金属原子と有機成分とを含んでおり、
前記金属原子は、銅、アルミニウム、亜鉛および鉄のうちの少なくとも1種であることが好ましい。
有機金属膜を、これらの金属原子を含むものとすることにより、この有機金属膜は、優れた導電性を発揮するものとなる。
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記有機成分は、アルキル基であることが好ましい。
アルキル基で構成される有機成分は、化学的な安定性が高いため、有機成分としてアルキル基を備える有機金属膜は、耐候性および耐薬品性に優れたものとなる。
【0007】
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記有機金属膜中の金属原子と炭素原子との存在比は、3:7〜7:3であることが好ましい。
金属原子と炭素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、有機金属膜の安定性が高くなり、例えば有機金属膜を接合膜として用いる場合、接合される基材同士をより強固に接合することができるようになる。また、有機金属膜を優れた導電性を発揮するものとすることができる。さらに、有機金属膜中の金属原子と炭素原子の存在比が前記範囲内であれば、金属原子と有機成分とのバランスが最適化され、有機金属膜を加圧したときにはエッチングの起点となるサイトが確実に減少し、エッチング速度を確実に抑制する一方、有機金属膜を加圧しない場合にはエッチングの起点となるサイトが十分に含まれているため、高いエッチング速度が確保される。したがって、有機金属膜に生じさせた疎密差を緩和させることなく、有機金属膜のエッチング速度差に確実に反映させ、十分なエッチング速度差を確保することができる。このため、輪郭がより明瞭になるように有機金属膜をパターニングすることができる。
【0008】
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記加圧工程前の前記有機金属膜は、非晶質の有機金属材料で構成されていることが好ましい。
これにより、有機金属膜は、結晶質の有機金属材料で構成されたものに比べてエッチング異方性が発現し難く、目的とする形状に加工し易いという利点もある。
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記加圧工程前の前記有機金属膜は、多孔質状をなしていることが好ましい。
これにより、有機金属膜は、加圧した際の圧縮率が高くなるため、加圧後の加圧領域と非加圧領域との間で疎密差がより大きいものとなる。その結果、疎密差が反映された有機金属膜のエッチング速度の差も拡大するため、有機金属膜を短時間でより確実にパターニングすることができる。
【0009】
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記有機金属膜の平均厚さは、1〜5000nmであることが好ましい。
これにより、有機金属膜は十分な導電性を有するものとなる。また、例えば有機金属膜を接合膜として用いる場合、接合される基材同士をより強固に接合することができる。
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記有機金属膜は、有機金属材料を原材料として、有機金属化学気相成膜法を用いて成膜されたものであることが好ましい。
有機金属化学気相成膜法によれば、比較的簡単な工程で、均一な膜厚の有機金属膜を成膜することができる。
【0010】
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記有機金属膜は、低還元性雰囲気下で成膜されたものであることが好ましい。
これにより、基材上に純粋な金属膜が形成されることなく、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で確実に成膜することができる。
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記有機金属膜は、金属アルコキシドを原材料として、ゾル・ゲル法により成膜されたものであることが好ましい。
ゾル・ゲル法によれば、塗布法を用いて有機金属膜を形成することができるので、大面積の基材に対しても有機金属膜を効率よく形成することができる。
【0011】
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記加圧工程において、前記加圧領域を加圧する際の圧力は、10〜250MPaであることが好ましい。
これにより、加圧する際の圧力が高すぎて、有機金属膜や基材を損傷するのを防止しつつ、有機金属膜を加圧して十分に緻密化することができる。
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記加圧工程において、前記有機金属膜は、加圧に伴って圧縮するものであり、その圧縮の際の圧縮率は、5〜70%であることが好ましい。
有機金属膜の圧縮率が前記範囲内であれば、有機金属膜の加圧領域と非加圧領域との間で十分な疎密差が得られるため、この疎密差が反映される加圧領域と非加圧領域との間でも、十分なエッチング速度差が得られることとなる。これにより、輪郭がより明瞭なエッチング加工が可能になる。
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記加圧工程において、前記基材よりも硬度の高い材料で構成された圧子を用いて、前記加圧領域を加圧することが好ましい。
これにより、加圧する際に圧子自体が変形してしまうのを防止することができ、加圧領域を確実に加圧して緻密化することができる。
【0012】
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記圧子は、その押圧面の面積が、前記加工領域の面積より小さいものであり、
前記加圧工程において、前記圧子を前記加圧領域に対して押圧しつつ走査することが好ましい。
これにより、加圧領域がいかなる形状であっても、1種類の圧子で対応することができるので、加圧処理をより簡単に行うことができる。また、圧子の汎用性を高めることができる。
【0013】
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記エッチング処理は、ドライエッチング法またはウェットエッチング法により行われることが好ましい。
これらの方法によれば、有機金属膜を確実にエッチングすることができる。さらにドライエッチング法によれば、寸法精度の高いエッチングを行うことができ、一方、ウェットエッチング法によれば、真空雰囲気を用意する必要がないので、簡単にエッチング処理を施すことができる。
【0014】
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記有機金属材料は、有機銅を主成分とするものであり、
前記ウェットエッチング法に用いるエッチング液は、塩化第二銅または塩化第二鉄を主成分とするものであることが好ましい。
このようなエッチング液は、有機金属材料に対するエッチング特性が高い一方、非金属材料に対するエッチング特性は比較的低いので、基材がエッチングされてしまうのを防止しつつ、有機金属膜を確実にエッチングすることができる。
【0015】
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記有機金属膜エッチング工程の後、有機酸を含む洗浄液により前記基材を洗浄することが好ましい。
有機酸は、塩酸やフッ酸のような無機酸に比べて金属と反応し難い特徴を有するため、パターニングにより残存した加圧領域に位置する有機金属膜を侵すことなく、非加圧領域の基材に付着したエッチング後の残留物等の異物を洗浄し、除去することができる。
【0016】
本発明の有機金属膜のパターニング方法では、前記有機金属膜は、エネルギーを付与することにより、その表面付近に存在する前記有機金属材料中の有機成分が前記有機金属膜から脱離することにより、被着体との接着性が発現するものであることが好ましい。
これにより、2つの基材間を部分的に接合可能な接合膜となり得る有機金属膜を得ることができる。
【0017】
本発明の接合方法は、基材と、該基材上に設けられ、本発明の有機金属膜のパターニング方法により形成された前記有機金属膜とを有する有機金属膜付き基材と、該有機金属膜付き基材との接合に供される被着体とを用意する第1の工程と、
前記有機金属膜付き基材の前記有機金属膜にエネルギーを付与することにより、前記有機金属膜の表面付近に存在する前記有機金属材料中の有機成分を前記有機金属膜から脱離させることにより、前記有機金属膜に接着性を発現させる第2の工程と、
前記有機金属膜と前記被着体とが密着するように、前記有機金属膜付き基材と前記被着体とを重ね合わせることにより、これらを接合した接合体を得る第3の工程とを有することを特徴とする。
これにより、基材上に形成された有機金属膜をパターニングすることにより、有機金属膜を介して基材と被着体とを部分的に効率よく強固に接合することができる。
【0018】
本発明の接合方法では、前記有機金属膜は、導電性を有することが好ましい。
これにより、基材と被着体とを電気的に接合することができる。
本発明の接合方法では、前記被着体は、基材と、該基材上に設けられた前記有機金属膜と同様の有機金属膜とを有するものであり、
前記第2の工程において、前記被着体が有する前記有機金属膜にエネルギーを付与し、
前記第3の工程において、前記有機金属膜付き基材が有する前記有機金属膜と、前記被着体が有する前記有機金属膜とが密着するように、前記有機金属膜付き基材と前記被着体とを重ね合わせることが好ましい。
これにより、基材と被着体とをより強固に接合することができる。
本発明の接合方法では、前記有機金属膜付き基材および前記被着体が有する有機金属膜は、それぞれ配線を構成していることが好ましい。
これにより、配線同士を機械的および電気的に確実に接続することができる。
【0019】
本発明の接合方法では、前記エネルギーの付与は、前記有機金属膜にエネルギー線を照射する方法、前記有機金属膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われることが好ましい。
これにより、有機金属膜に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができる。
【0020】
本発明の接合体は、2つの基材が、本発明の接合方法により部分的に接合されてなることを特徴とする。
これにより、接合部の面積や形状を制御することができるので、任意の接合強度の接合体を得ることができる。
【0021】
本発明のエッチング方法は、基材上に、本発明の有機金属膜のパターニング方法によりパターニングされた有機金属膜を形成する成膜工程と、
前記有機金属膜をマスクとして前記基材に対してエッチング処理を施すことにより、前記マスクで覆われていない領域の前記基材を選択的にエッチングする基材エッチング工程とを有することを特徴とする。
これにより、レジスト等を用いてマスクを形成する必要がなく、単に有機金属膜を加圧することのみで所望の形状のマスクを得ることができるので、基材の所望の領域を選択的に効率よくエッチングすることができる。
【0022】
本発明のエッチング方法では、前記基材は、酸化ケイ素を主材料とするものであり、
前記基材エッチング工程におけるエッチング処理は、アルカリ性を示すエッチング液を用いて行われることが好ましい。
これにより、マスクを侵すことなく、基材を選択的にエッチングすることができるので、寸法精度の高いエッチング加工が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の有機金属膜のパターニング方法、接合方法、接合体およびエッチング方法を、添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の有機金属膜のパターニング方法は、有機金属材料で構成された有機金属膜を所定の形状にパターニングする方法である。
このような方法によれば、フォトリソグラフィーのような煩雑なプロセスを用いることなく、有機金属膜を複雑な形状にパターニングし、目的とする形状の有機金属膜を得ることができる。
【0024】
<有機金属膜のパターニング方法および接合方法>
まず、本発明の有機金属膜のパターニング方法の実施形態および本発明の接合方法の実施形態について順次説明する。
図1および図2は、本発明の有機金属膜のパターニング方法の実施形態を説明するための図(縦断面図)、図3は、本発明の有機金属膜のパターニング方法においてパターニングされる有機金属膜を製造する成膜装置を示す図、図4は、本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)、図5は、本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図1、2および図4、5中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0025】
本実施形態にかかる有機金属膜のパターニング方法は、[1]第1の基材21上に有機金属膜3を形成する有機金属膜形成工程と、[2]有機金属膜3の一部を膜厚方向に加圧する加圧工程と、[3]有機金属膜3にエッチング処理を施す有機金属膜エッチング工程とを有する。
また、本実施形態にかかる接合方法は、[4]本発明の有機金属膜のパターニング方法により製造され、第1の基材21とその表面上に形成された有機金属膜3とを有する有機金属膜付き基材11と、この有機金属膜付き基材11との接合に供される第2の基材22(被着体)とを用意する第1の工程と、[5]有機金属膜3にエネルギーを付与することにより、有機金属膜3に接着性を発現させる第2の工程と、[6]有機金属膜3と第2の基材22とが密着するように、有機金属膜付き基材11と第2の基材22とを重ね合わせることにより、これらを接合し、接合体1を得る第3の工程とを有する。
【0026】
以下、各工程について順次説明する。
≪有機金属膜のパターニング方法≫
[1]まず、図1(a)に示すように、第1の基材21の上面23上に有機金属膜3を形成する(有機金属膜形成工程)。これにより、有機金属膜付き基材11を得る。
このような第1の基材21の構成材料は、後述する有機金属膜エッチング工程においてエッチングされない材料であれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アイオノマー、アクリル系樹脂、ポリメチルメタクリレート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS樹脂)、ブタジエン−スチレン共重合体、ポリオキシメチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンテレフタレート(PCT)等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリアセタール(POM)、ポリフェニレンオキシド、変性ポリフェニレンオキシド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリアリレート、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、その他フッ素系樹脂、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、アラミド系樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ポリウレタン等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等の樹脂系材料、Fe、Ni、Co、Cr、Mn、Zn、Pt、Au、Ag、Cu、Pd、Al、W、Ti、V、Mo、Nb、Zr、Pr、Nd、Smのような金属、またはこれらの金属を含む合金、炭素鋼、ステンレス鋼、インジウム錫酸化物(ITO)、ガリウムヒ素のような金属系材料、単結晶シリコン、多結晶シリコン、非晶質シリコンのようなシリコン系材料、ケイ酸ガラス(石英ガラス)、ケイ酸アルカリガラス、ソーダ石灰ガラス、カリ石灰ガラス、鉛(アルカリ)ガラス、バリウムガラス、ホウケイ酸ガラスのようなガラス系材料、アルミナ、ジルコニア、フェライト、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化チタン、炭化ケイ素、炭化ホウ素、炭化チタン、炭化タングステンのようなセラミックス系材料、グラファイトのような炭素系材料、またはこれらの各材料の1種または2種以上を組み合わせた複合材料等が挙げられる。
また、第1の基材21は、その表面に、Niめっきのようなめっき処理、クロメート処理のような不働態化処理、または窒化処理等を施したものであってもよい。
【0027】
次に、必要に応じて、第1の基材21の上面23に有機金属膜3との密着性を高める表面処理を施す。これにより、上面23を清浄化および活性化され、上面23に対して有機金属膜3が化学的に作用し易くなる。その結果、上面23上に有機金属膜3を形成したとき、上面23と有機金属膜3との密着強度を高めることができる。
この表面処理としては、特に限定されないが、例えば、スパッタリング処理、ブラスト処理のような物理的表面処理、酸素プラズマ、窒素プラズマ等を用いたプラズマ処理、コロナ放電処理、エッチング処理、電子線照射処理、紫外線照射処理、オゾン暴露処理のような化学的表面処理、または、これらを組み合わせた処理等が挙げられる。
【0028】
なお、表面処理を施す第1の基材21が、樹脂材料(高分子材料)で構成されている場合には、特に、コロナ放電処理、窒素プラズマ処理等が好適に用いられる。
また、表面処理として、特にプラズマ処理または紫外線照射処理を行うことにより、上面23を、より清浄化および活性化することができる。その結果、上面23と有機金属膜3との密着強度を特に高めることができる。
また、第1の基材21の構成材料によっては、上記のような表面処理を施さなくても、有機金属膜3との接合強度が十分に高くなるものがある。このような効果が得られる第1の基材21の構成材料としては、例えば、前述したような各種金属系材料、各種シリコン系材料、各種ガラス系材料等を主材料とするものが挙げられる。
【0029】
このような材料で構成された第1の基材21は、その表面が酸化膜で覆われており、この酸化膜の表面には、水酸基が結合している。したがって、このような酸化膜で覆われた第1の基材21を用いることにより、上記のような表面処理を施さなくても、第1の基材21の上面23と有機金属膜3との接合強度を高めることができる。
なお、この場合、第1の基材21の全体が上記のような材料で構成されていなくてもよく、少なくとも上面23付近が上記のような材料で構成されていればよい。
【0030】
また、表面処理に代えて、第1の基材21の上面23に、あらかじめ、中間層を形成しておいてもよい。
この中間層は、いかなる機能を有するものであってもよく、例えば、有機金属膜3との密着性を高める機能、クッション性(緩衝機能)、応力集中を緩和する機能等を有するものが好ましい。このような中間層上に有機金属膜3を成膜することにより、第1の基材21に対して有機金属膜3を強固に密着させることができる。
【0031】
かかる中間層の構成材料としては、例えば、アルミニウム、チタンのような金属系材料、金属酸化物、シリコン酸化物のような酸化物系材料、金属窒化物、シリコン窒化物のような窒化物系材料、グラファイト、ダイヤモンドライクカーボンのような炭素系材料、シランカップリング剤、チオール系化合物、金属アルコキシド、金属−ハロゲン化合物のような自己組織化膜材料、樹脂系接着剤、樹脂フィルム、樹脂コーティング材、各種ゴム材料、各種エラストマーのような樹脂系材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらの各材料で構成された中間層の中でも、酸化物系材料で構成された中間層によれば、第1の基材21と有機金属膜3との間の密着強度を特に高めることができる。
【0032】
このような第1の基材21の上面23に、有機金属材料で構成された有機金属膜3を形成する。
有機金属材料は、金属原子と有機成分とを含んでいる。この金属原子としては、例えば、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、各種ランタノイド元素、各種アクチノイド元素のような遷移金属元素、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Zn、Ga、Rb、Sr、Cd、In、Sn、Sb、Cs、Ba、Tl、Pd、Bi、Poのような典型金属元素等が挙げられる。
【0033】
このうち、遷移金属は、最外殻電子がd軌道またはf軌道に位置しており、各遷移金属元素間は、最外殻電子の数が異なることのみの差異であるため、物性が類似している。そして、遷移金属は、一般に、硬度や融点が高く、電気伝導性および熱伝導性が高い。このため、有機金属膜3を構成する有機金属材料が含む金属原子として、遷移金属元素の原子を選択することにより、有機金属膜3に発現する導電性をより高めることができる。
【0034】
また、特に、有機金属膜3が含む金属原子としてCu、Al、ZnおよびFeのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることにより、有機金属膜3は、特に優れた導電性を発揮するものとなる。さらに、有機金属膜3を後述する有機金属化学気相成長法を用いて成膜する場合には、これらの金属を含む金属錯体等を原材料として用いて、比較的簡単な工程で、均一な膜厚の有機金属膜3を成膜することができる。
【0035】
一方、有機金属材料が含む有機成分としては、メチル基、エチル基のようなアルキル基、メトキシ基、エトキシ基のようなアルコキシ基、カルボキシル基等の他、前記アルキル基の末端がイソシアネート基、アミノ基およびスルホン酸基等で終端しているもの等が挙げられる。
以上のような有機成分の中でも、特にアルキル基が好ましい。アルキル基を含む有機金属材料は、化学的安定性が高いため、耐候性および耐薬品性に優れた有機金属膜3を形成することが可能である。
【0036】
また、かかる構成の有機金属膜3において、金属原子と炭素原子の存在比は、3:7〜7:3程度であるのが好ましく、4:6〜6:4程度であるのがより好ましい。金属原子と炭素原子の存在比を前記範囲内になるよう設定することにより、有機金属膜3の安定性が高くなり、例えば有機金属膜3を接合膜として用いる場合、第1の基材21とそれに接合される第2の基材22(被着体)とをより強固に接合することができるようになる。また、有機金属膜3を優れた導電性を発揮するものとすることができる。
【0037】
また、有機金属膜3の平均厚さは、1〜5000nm程度であるのが好ましく、2〜3000nm程度であるのがより好ましい。有機金属膜3の平均厚さを前記範囲内とすることにより、有機金属膜3は十分な導電性を有するものとなる。また、例えば有機金属膜3を接合膜として用いる場合、第1の基材21とそれに接合される第2の基材22(被着体)とをより強固に接合することができる。
すなわち、有機金属膜3の平均厚さが前記下限値を下回った場合は、十分な導電性や接合強度が得られないおそれがある。一方、有機金属膜3の平均厚さが前記上限値を上回った場合は、接合体1の寸法精度が著しく低下するおそれがある。
【0038】
さらに、有機金属膜3の平均厚さが前記範囲内であれば、有機金属膜3にある程度の形状追従性が確保される。このため、例えば、第1の基材21の上面23(有機金属膜3を成膜する面)に凹凸が存在している場合でも、その凹凸の高さにもよるが、凹凸の形状に追従するように有機金属膜3を被着させることができる。その結果、有機金属膜3は、凹凸を吸収して、その表面に生じる凹凸の高さを緩和することができる。そして、有機金属膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせた際に、有機金属膜3の第2の基材22に対する密着性を高めることができる。
なお、上記のような形状追従性の程度は、有機金属膜3の厚さが厚いほど顕著になる。したがって、形状追従性を十分に確保するためには、有機金属膜3の厚さをできるだけ厚くすればよい。
【0039】
また、有機金属膜3は、導電性を有するものとなる。したがって、有機金属膜3は、後述する有機金属膜パターニングを経ることにより、配線や、その端子等に適用することができる。
また、有機金属膜3の抵抗率は、構成材料の組成に応じて若干異なるものの、1×10−3Ω・cm以下となる。有機金属膜3の抵抗率が、このように十分に低ければ、有機金属膜3を、例えば、損失の少ない配線として十分に利用することができる。
【0040】
以上説明したような有機金属膜3は、いかなる方法で成膜してもよいが、例えば、A:金属原子で構成される金属膜に、有機成分を、金属膜のほぼ全体に付与して有機金属膜3を形成する方法、B:金属原子と有機成分とを有する有機金属材料を原材料として適切な溶媒に溶解させスピンコート法などを用いて接合膜を形成する方法(ゾル・ゲル法)、C:金属原子と有機成分とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法を用いて有機金属膜3を形成する方法等が挙げられる。これらの中でも、BまたはCの方法により有機金属膜3を成膜するのが好ましい。かかる方法によれば、比較的簡単な工程で、かつ、均一な膜厚の有機金属膜3を形成することができる。
【0041】
以下では、BおよびCの方法について代表に説明する。
(B)
ゾル・ゲル法により有機金属材料で構成された有機金属膜3を形成する場合、金属アルコキシド溶液を加水分解・重合により、金属酸化物または金属水酸化物の微粒子が分散したゾルを得る。そして、このゾルをさらに昇温して反応を促進させるとともに乾燥することにより、ゾルがゲル化した非晶質の有機金属材料で構成された有機金属膜3を得ることができる。
【0042】
金属アルコキシドは、M(OR)の一般式で表すことができる。この一般式のうち、Mは金属元素、Rはアルキル基、nは金属元素の酸化数である。また、Mの金属元素としては、例えば、前述した各種金属原子が挙げられる。
具体的には、例えば、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラn−プロポキシチタン、テトライソブトキシチタン、テトラn−ブトキシチタン等のチタンアルコキシド、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリn−ブトキシアルミニウム等のアルミニウムアルコキシド等が用いられる。
このような金属アルコキシドを水やアルコール等の溶媒に溶解することにより、金属アルコキシド溶液を調製する。
【0043】
次いで、この金属アルコキシド溶液をスピンコート法、ディップコート法等の各種塗布法により、第1の基材21の上面23上に塗布し、液状被膜を形成する。この液状被膜中では、金属アルコキシドの加水分解が進行し、さらに重縮合反応により、金属酸化物および金属水酸化物が得られる。この際、加水分解の進行を促進するために、硝酸等の触媒を添加するようにしてもよい。
次いで、得られた液状被膜を乾燥することにより、有機金属膜3を形成することができる。
【0044】
このようにして形成された有機金属膜3は、金属原子と有機成分とを含む有機金属材料で構成されたものとなる。この有機成分は、加圧されることにより、有機金属膜3において金属原子のエッチング速度に影響を及ぼし、加圧領域310および非加圧領域311におけるエッチング速度に差をもたらす。したがって、有機金属膜3は、パターニングに適したものとなる。
【0045】
また、ゾル・ゲル法では、スピンコート法のような塗布法を用いることができるので、大面積の第1の基材21に対しても有機金属膜3を効率よく形成することができる。
また、ゾル・ゲル法により形成された有機金属膜3は、非晶質の有機金属材料で構成されたものとなる。このため、このような有機金属膜3は、結晶質のものに比べてエッチング異方性が発現し難く、目的とする形状に加工し易いという利点もある。
【0046】
さらに、ゾル・ゲル法によれば、多孔質状の有機金属膜3を得ることができる。このため、このような有機金属膜3は加圧した際の圧縮率が高くなるため、加圧後の加圧領域310と非加圧領域311との間で疎密差がより大きいものとなる。その結果、疎密差が反映した有機金属膜3のエッチング速度の差も拡大するため、有機金属膜3を短時間でより確実にパターニングすることができる。
【0047】
(C)
次に、Cの方法、すなわち金属原子と有機成分とを有する有機金属材料を原材料として有機金属化学気相成長法により、有機金属膜3を得る場合を代表に説明する。
まず、有機金属膜3の成膜方法を説明するのに先立って、有機金属膜3を成膜する際に用いられる成膜装置500について説明する。
【0048】
図3に示す成膜装置500は、有機金属化学気相成長法(以下、「MOCVD法」と省略することもある。)による有機金属膜3の形成をチャンバー511内で行えるように構成されている。
具体的には、成膜装置500は、チャンバー(真空チャンバー)511と、このチャンバー511内に設置され、第1の基材(成膜対象物)21を保持する基板ホルダー(成膜対象物保持部)512と、チャンバー511内に、気化または霧化した有機金属材料を供給する有機金属材料供給手段560と、チャンバー511内を低還元性雰囲気下とするためのガスを供給するガス供給手段570と、チャンバー511内の排気をして圧力を制御する排気手段530と、基板ホルダー512を加熱する加熱手段(図示せず)とを有している。
【0049】
基板ホルダー512は、本実施形態では、チャンバー511の底部に取り付けられている。この基板ホルダー512は、モータの作動により回動可能となっている。これにより、第1の基材21上に有機金属膜3を均質かつ均一な厚さで成膜することができる。
また、基板ホルダー512の近傍には、それぞれ、これらを覆うことができるシャッター521が配設されている。このシャッター521は、第1の基材21および有機金属膜3が不要な雰囲気等に曝されるのを防ぐためのものである。
【0050】
有機金属材料供給手段560は、チャンバー511に接続されている。この有機金属材料供給手段560は、固形状の有機金属材料を貯留する貯留槽562と、気化または霧化した有機金属材料をチャンバー511内に送気するキャリアガスを貯留するガスボンベ565と、キャリアガスと気化または霧化した有機金属材料をチャンバー511内に導くガス供給ライン561と、ガス供給ライン561の途中に設けられたポンプ564およびバルブ563とで構成されている。かかる構成の有機金属材料供給手段560では、貯留槽562は、加熱手段を有しており、この加熱手段の作動により固形状の有機金属材料を加熱して気化し得るようになっている。そのため、バルブ563を開放した状態で、ポンプ564を作動させて、キャリアガスをガスボンベ565から貯留槽562に供給すると、このキャリアガスとともに気化または霧化した有機金属材料が、供給ライン561内を通過してチャンバー511内に供給されるようになっている。
なお、キャリアガスとしては、特に限定されず、例えば、窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガス等が好適に用いられる。
【0051】
また、本実施形態では、ガス供給手段570がチャンバー511に接続されている。ガス供給手段570は、チャンバー511内を低還元性雰囲気下とするためのガスを貯留するガスボンベ575と、前記低還元性雰囲気下とするためのガスをチャンバー511内に導くガス供給ライン571と、ガス供給ライン571の途中に設けられたポンプ574およびバルブ573とで構成されている。かかる構成のガス供給手段570では、バルブ573を開放した状態で、ポンプ574を作動させると、前記低還元性雰囲気下とするためのガスが、ガスボンベ575から、供給ライン571を介して、チャンバー511内に供給されるようになっている。ガス供給手段570をかかる構成とすることにより、チャンバー511内を有機金属材料に対して確実に低還元な雰囲気とすることができる。その結果、有機金属材料を原材料としてMOCVD法を用いて有機金属膜3を成膜する際に、有機金属材料に含まれる有機成分の少なくとも一部を残存させた状態で有機金属膜3が確実に成膜される。
チャンバー511内を低還元性雰囲気下とするためのガスとしては、特に限定されないが、例えば、窒素ガスおよびヘリウム、アルゴン、キセノンのような希ガス等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
なお、有機金属材料として、後述する2,4−ペンタジオネート−銅(II)や[Cu(hfac)(VTMS)]等のように分子構造中に酸素原子を含有するものを用いる場合には、低還元性雰囲気下とするためのガスに、水素ガスを添加するのが好ましい。これにより、酸素原子に対する還元性を向上させることができ、有機金属膜3に過度の酸素原子が残存することなく、有機金属膜3を成膜することができる。その結果、この有機金属膜3は、膜中における金属酸化物の存在率が低いものとなり、優れた導電性および熱伝導性を発揮することとなる。
【0053】
また、キャリアガスとして前述した窒素ガス、アルゴンガスおよびヘリウムガスのうちの少なくとも1種を用いる場合には、このキャリアガスに低還元性雰囲気下とするためのガスとしての機能をも発揮させることができる。
また、排気手段530は、ポンプ532と、ポンプ532とチャンバー511とを連通する排気ライン531と、排気ライン531の途中に設けられたバルブ533とで構成されており、チャンバー511内を所望の圧力に減圧し得るようになっている。
【0054】
以上のような構成の成膜装置500を用いてMOCVD法により、以下のようにして第1の基材21上に有機金属膜3が形成される。
まず、第1の基材21を成膜装置500のチャンバー511内に搬入し、基板ホルダー512に装着(セット)する。
次に、排気手段530を動作させ、すなわちポンプ532を作動させた状態でバルブ533を開くことにより、チャンバー511内を減圧状態にする。この減圧の程度(真空度)は、特に限定されないが、1×10−7〜1×10−4Torr程度であるのが好ましく、1×10−6〜1×10−5Torr程度であるのがより好ましい。
【0055】
また、ガス供給手段570を動作させ、すなわちポンプ574を作動させた状態でバルブ573を開くことにより、チャンバー511内に、低還元性雰囲気下とするためのガスを供給して、チャンバー511内を低還元性雰囲気下とする。ガス供給手段570による前記ガスの流量は、特に限定されないが、0.1〜10sccm程度であるのが好ましく、0.5〜5sccm程度であるのがより好ましい。
【0056】
さらに、このとき、加熱手段を動作させ、基板ホルダー512を加熱する。基板ホルダー512の温度は、形成する有機金属膜3の種類、すなわち、有機金属膜3を形成する際に用いる原材料の種類によっても若干異なるが、80〜300℃程度で有るのが好ましく、100〜275℃程度であるのがより好ましい。かかる範囲内に設定することにより、後述する有機金属材料を用いて、優れた接着性を有する有機金属膜3を成膜することができる。
【0057】
次に、シャッター521を開いた状態にする。
そして、固形状の有機金属材料を貯留された貯留槽562が備える加熱手段を動作させることにより、有機金属材料を気化させた状態で、ポンプ564を動作させるとともに、バルブ563を開くことにより、気化または霧化した有機金属材料をキャリアガスとともにチャンバー内に導入する。
このように、前記工程で基板ホルダー512が加熱された状態で、チャンバー511内に、気化または霧化した有機金属材料を供給すると、第1の基材21上で有機金属材料が加熱されることにより、有機金属材料中に含まれる有機物の一部が残存した状態で、第1の基材21上に有機金属材料で構成された有機金属膜3を形成することができる。
【0058】
また、MOCVD法によれば、有機金属材料に含まれる有機物の一部が残存するように金属原子を含む膜を形成すれば、この有機物の一部が、有機金属膜3から脱離する脱離基として機能する有機金属膜3を第1の基材21上に形成することができる。したがって、このような有機金属膜3は、後述する本発明の接合方法における接合膜として好適に用いられる。
【0059】
このようなMOCVD法に用いられる、有機金属材料としては、特に限定されないが、例えば、2,4−ペンタジオネート−銅(II)、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(Alq)、トリス(4−メチル−8キノリノレート)アルミニウム(III)(Almq)、(8−ヒドロキシキノリン)亜鉛(Znq)、銅フタロシアニン、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(hfac)(VTMS)]、Cu(ヘキサフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(hfac)(MHY)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(ビニルトリメチルシラン)[Cu(pfac)(VTMS)]、Cu(パーフルオロアセチルアセトネート)(2−メチル−1−ヘキセン−3−エン)[Cu(pfac)(MHY)]のような金属錯体、トリメチルガリウム、トリメチルアルミニウム、ジエチル亜鉛のようなアルキル金属や、その誘導体等が挙げられる。これらの中でも、有機金属材料としては、金属錯体であるのが好ましい。金属錯体を用いることにより、金属錯体中に含まれる有機物の一部を残存した状態で、有機金属膜3を確実に形成することができる。
【0060】
また、本実施形態では、ガス供給手段570を動作させることにより、チャンバー511内を低還元性雰囲気下となっているが、このような雰囲気下とすることにより、第1の基材21上に純粋な金属膜が形成されることなく、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で成膜することができる。すなわち、接合膜および金属膜としての双方の特性に優れた有機金属膜3を形成することができる。また、この有機成分は、加圧されることにより、有機金属膜3において金属原子のエッチング速度に影響を及ぼし、加圧領域310および非加圧領域311におけるエッチング速度に差をもたらす。したがって、有機金属膜3は、パターニングに適したものとなる。
気化または霧化した有機金属材料の流量は、0.1〜100ccm程度であるのが好ましく、0.5〜60ccm程度であるのがより好ましい。これにより、均一な膜厚で、かつ、有機金属材料中に含まれる有機物の一部を残存させた状態で、有機金属膜3を成膜することができる。
以上のようにして、有機金属膜3を成膜することができる。
【0061】
また、MOCVD法により形成された有機金属膜3は、有機金属材料で構成された多数の微粒子が集合した集合物で構成されている。このため、各微粒子間には隙間があり、有機金属膜3全体が多孔質状になっている。これにより、このような有機金属膜3は加圧した際の圧縮率が高くなり、加圧後の加圧領域310と非加圧領域311との間で疎密差がより大きいものとなる。その結果、疎密差が反映した有機金属膜3のエッチング速度の差も拡大し、有機金属膜3を短時間でより確実にパターニングすることができる。
【0062】
[2]次に、有機金属膜3のうち、一部の加圧領域310を、図1(b)および図1(c)に示すように膜厚方向に加圧する(加圧工程)。
有機金属膜3の加圧領域310を図1(c)に示すように加圧すると、加圧領域310は図1(d)に示すように圧縮される。その結果、有機金属膜3の加圧領域310は、より緻密化する。一方、有機金属膜3の加圧領域310以外の領域(非加圧領域311)は、加圧領域310に比べて相対的に疎になる。すなわち、このような加圧工程を経ることにより、有機金属膜3の加圧領域310と非加圧領域311との間で疎密差を設けることができる。この疎密差は、後述する有機金属膜エッチング工程において、エッチング速度の差に反映されることになる。
【0063】
加圧領域310を加圧する方法としては、特に限定されないが、図1(b)に示すように圧子4を用いて加圧領域310を押圧する方法が好ましい。このような方法によれば、特殊な設備や複雑なプロセスを経ることなく、加圧領域310のみを簡単に加圧することができる。
また、圧子4の押圧面40は、加圧領域310に対応する形状であるのが好ましい。これにより、加圧領域310全体において、有機金属膜3を均一な圧力で加圧することができる。その結果、加圧領域310における疎密差を抑制することができる。
【0064】
また、図1では、圧子4の押圧面40の面積と加圧領域310の面積とは同程度あるが、圧子4の押圧面40は加圧領域310より小さくてもよい。押圧面40の形状が加圧領域310よりも小さい場合、圧子4を加圧領域310に押圧しつつ加圧領域310全体を走査するようにすればよい。このようにすれば、加圧領域310がいかなる形状であっても、1種類の圧子4で対応することができるので、加圧処理をより簡単に行うことができる。また、圧子4の汎用性を高めることができる。
このような圧子4としては、第1の基材21よりも高硬度のものが好ましい。このような圧子4であれば、加圧処理によって圧子4自体が変形してしまうのを防止することができ、加圧領域310を確実に加圧して緻密化することができる。
【0065】
また、圧子4の構成材料は、第1の基材21の構成材料に応じて適宜選択されるが、例えば、ダイヤモンド、サファイア、水晶等の結晶性材料、アルミナ、ジルコニア、炭化ケイ素、窒化けい素等のセラミックス材料、超硬合金、タングステン合金、モリブデン合金等の金属材料等が挙げられる。このうち、ダイヤモンドまたは超硬合金で構成された圧子4を用いるのが好ましい。ダイヤモンドは、最も高硬度な材料であるため、第1の基材21の構成材料によらず、圧子4が変形するのを確実に防止することを可能にする。また、超硬合金は、粉末冶金技術を用いて所望の形状の圧子4を得ることを可能にする。このため、ある程度広くてかつ平滑性の高い押圧面40を有する圧子4を得ることができ、この圧子4を用いることで、加圧領域310を効率よく均一に加圧することができる。その結果、加圧領域310における疎密差を抑制することができる。
なお、加圧領域310を加圧する際の圧力は、10〜250MPa程度であるのが好ましく、20〜200MPa程度であるのがより好ましい。圧力を前記範囲内とすることにより、圧子4が有機金属膜3や第1の基材21を損傷するのを防止しつつ、有機金属膜3を加圧して十分に緻密化することができる。
【0066】
また、有機金属膜3は、有機金属材料で構成されているため、可塑性を有している。このため、加圧に伴って圧縮する。この圧縮の際の圧縮率は、5〜70%程度であるのが好ましく、10〜50%程度であるのがより好ましい。有機金属膜3の圧縮率が前記範囲内であれば、有機金属膜3の加圧領域310と非加圧領域311との間で十分な疎密差が得られるため、この疎密差が反映される加圧領域310と非加圧領域311との間でも、十分なエッチング速度差が得られることとなる。これにより、輪郭がより明瞭なエッチング加工が可能になる。
【0067】
[3]次に、図2(e)に示すように、有機金属膜3を形成した第1の基材21にエッチング処理を施す(有機金属膜エッチング工程)。
このようにして有機金属膜3の部分ごとに疎密差が形成されると、この疎密差に基づいて、加圧領域310と非加圧領域311との間でエッチング速度(エッチングレート)に差が生じる。これにより、図2(f)に示すように、非加圧領域311が選択的にエッチングされる一方、加圧領域310がほとんどエッチングされない。その結果、一定時間経過すると、図2(g)非加圧領域311のみが除去され、加圧領域310のみが残存する。このようにして有機金属膜3をパターニングすることができる。
【0068】
なお、有機金属膜3の疎密差がエッチング速度差に反映されるメカニズムとしては、以下のようなものが考えられる。
有機金属膜3は、有機金属材料で構成されているため、前述したように、金属原子と有機成分とを含んでいる。これらの金属原子と有機成分とは有機金属膜3中で均一に分散しているため、有機金属膜3にエッチング処理を施したとき、金属原子がエッチングされる確率は、金属原子と有機成分との干渉度合いに依存している。すなわち、有機金属膜3の加圧領域310では、加圧に伴って金属原子と有機成分とが相対的に強く干渉しているため、金属原子が有機成分により保護されたような状態となっており、金属原子がエッチング処理に曝され難くなる。このため、加圧領域310では、エッチングの起点となるサイトが減少し、エッチング速度が相対的に低下する。一方、有機金属膜3の非加圧領域311では、金属原子と有機成分との干渉が相対的に弱いため、エッチングの起点となるサイトが多く、金属原子がエッチング処理に曝され易い。このため、非加圧領域311では、エッチング速度が相対的に増大する。
【0069】
以上のようなメカニズムにより、有機金属膜3に生じさせた疎密差を、エッチング速度の際に反映させることができる。これにより、有機金属材料で構成された有機金属膜3を、単に加圧領域310を選択的に加圧するのみで容易にパターニングすることができ、所望の形状の有機金属膜3を効率よく安価に形成することができる。
また、本発明によれば、従来のように、パターニングに際してレジスト膜を形成する必要がなく、それに伴うレジスト材料の供給、乾燥、ベーク処理、露光、現像、洗浄、乾燥等の複数の工程が必要なくなるので、工程の簡素化を図ることができる。
【0070】
さらに、有機金属膜3中の金属原子と炭素原子の存在比が前記範囲内であれば、金属原子と有機成分とのバランスが最適化され、有機金属膜3を加圧したときにはエッチングの起点となるサイトが確実に減少し、エッチング速度を確実に抑制する一方、有機金属膜3を加圧しない場合にはエッチングの起点となるサイトが十分に含まれているため、高いエッチング速度が確保される。したがって、有機金属膜3に生じさせた疎密差を緩和させることなく、有機金属膜3のエッチング速度差に確実に反映させ、十分なエッチング速度差を確保することができる。このため、輪郭がより明瞭になるように有機金属膜3をパターニングすることができる。
【0071】
また、有機金属膜3に対するエッチング処理は、例えば、ドライエッチング法またはウェットエッチング法により行われる。これらの方法によれば、有機金属膜3を確実にエッチングすることができる。さらにドライエッチング法によれば、寸法精度の高いパターニングを行うことができる。一方、ウェットエッチング法によれば、ドライエッチングのように真空雰囲気を用意する必要がないので、有機金属膜3に対して簡単にエッチング処理を施すことができる。
【0072】
このうち、ドライエッチング法は、反応性の気体(エッチングガス)やイオン、ラジカル等の活性種により、被処理物をエッチングする方法である。
具体的には、反応性ガスエッチング、反応性イオンエッチング、イオンビームエッチング、反応性イオンビームエッチング、反応性レーザービームエッチング等が挙げられるが、特にイオンビームエッチング等の物理エッチングが好ましく用いられる。物理エッチングによれば、有機金属膜3を構成する有機金属材料の組成によらず、有機金属膜3をエッチングすることが可能である。
一方、ウェットエッチング法としては、被処理物を腐食溶解する性質を有する薬液(エッチング液)を用いて被処理物をエッチングする方法である。
【0073】
用いるエッチング液は、有機金属膜3を構成する有機金属材料に応じて適宜選択すればよいが、例えば、有機金属材料が有機銅を主成分とする場合、塩化第二鉄、塩化第二銅のような酸性エッチング液等が挙げられる。このようなエッチング液は、有機金属材料に対するエッチング特性が高い一方、非金属材料に対するエッチング特性は比較的低いので、第1の基材21がエッチングされてしまうのを防止しつつ、有機金属膜3を確実にエッチングすることができる。
【0074】
以上のようにして有機金属膜3をパターニングすることができる。このようにしてパターニングされた有機金属膜3は、導電性を有しているため、例えば配線や電極として利用することができる。また、本発明の有機金属膜のパターニング方法によれば、配線が複雑に組み合わされた回路であっても、簡単に作製することができる。
なお、有機金属膜3をパターニングした後、洗浄液により有機金属膜3を有する第1の基材21を洗浄する。
【0075】
この場合、洗浄液には、有機酸を含むものが好ましく用いられる。有機酸は、塩酸やフッ酸のような無機酸に比べて金属と反応し難い特徴を有する。このため、パターニングにより残存した加圧領域310に位置する有機金属膜3を侵すことなく、非加圧領域310の第1の基材21に付着したエッチング後の残留物等の異物を洗浄し、除去することができる。
なお、有機酸としては、例えば、クエン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、シュウ酸等が挙げられる。
【0076】
≪接合方法≫
(第1実施形態)
次に、本発明の接合方法の第1実施形態について説明する。
[4]まず、前述した本発明の有機金属膜のパターニング方法により、第1の基材21上に形成された有機金属膜3が所定の形状にパターニングされ、その結果、第1の基材21とパターニングされた有機金属膜3とを有する有機金属膜付き基材11を得る(第1の工程)。
また、この有機金属膜付き基材11との接合に供される第2の基材22(被着体)を用意する(図4(a)参照)。
【0077】
第2の基材22の構成材料は、特に限定されず、第1の基材21と同様のものを用いることができる。
なお、第1の基材21の構成材料と第2の基材22の構成材料とは、それぞれ同じでも、異なっていてもよい。
また、第1の基材21の熱膨張率と第2の基材22の熱膨張率は、ほぼ等しいのが好ましい。これらの熱膨張率がほぼ等しければ、第1の基材21と第2の基材22とを接合した際に、その接合界面に熱膨張に伴う応力が発生し難くなる。その結果、最終的に得られる接合体1において、剥離を確実に防止することができる。
なお、後に詳述するが、第1の基材21の熱膨張率と第2の基材22の熱膨張率が互いに異なる場合でも、後述する工程において、第1の基材21と第2の基材22とを接合する際の条件を最適化することにより、これらを高い寸法精度で強固に接合することができる。
【0078】
また、2つの基材21、22は、互いに剛性が異なるのが好ましい。これにより、2つの基材21、22をより強固に接合することができる。
また、2つの基材21、22のうち、少なくとも一方の構成材料は、樹脂材料であるのが好ましい。樹脂材料は、その柔軟性により、2つの基材21、22を接合した際に、その接合界面に発生する応力(例えば、熱膨張に伴う応力等)を緩和することができる。このため、接合界面が破壊し難くなり、結果的に、接合強度の高い接合体1を得ることができる。
なお、上記のような観点から、2つの基材21、22のうちの少なくとも一方は、可撓性を有しているのが好ましい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を図ることができる。さらに、2つの基材21、22の双方が可撓性を有している場合には、全体として可撓性を有し、機能性の高い接合体1が得られる。
【0079】
また、各基材21、22の形状は、それぞれ、有機金属膜3を支持する面を有するような形状であればよく、例えば、板状(層状)、塊状(ブロック状)、棒状等とされる。
なお、本実施形態では、図4に示すように、各基材21、22がそれぞれ板状をなしている。これにより、各基材21、22は撓み易くなり、2つの基材21、22を重ね合わせたときに、互いの形状に沿って十分に変形し得るものとなる。このため、2つの基材21、22を重ね合わせたときの密着性が高くなり、最終的に得られる接合体1における接合強度が高くなる。
また、各基材21、22が撓むことによって、接合界面に生じる応力を、ある程度緩和する作用が期待できる。
この場合、各基材21、22の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜10mm程度であるのが好ましく、0.1〜3mm程度であるのがより好ましい。
【0080】
また、第2の基材22の下面24にも、第1の基材21と同様、有機金属膜3との密着性を高める表面処理を施すのが好ましい。
また、第2の基材22の下面24に、以下の基や物質を有する場合には、表面処理を施さなくても、第2の基材22の下面24と有機金属膜3との密着強度を高めることができる。
【0081】
このような基や物質としては、例えば、水酸基、チオール基、カルボキシル基、アミノ基、ニトロ基、イミダゾール基のような各種官能基、各種ラジカル、開環分子または、2重結合、3重結合のような不飽和結合を有する脱離性中間体分子、F、Cl、Br、Iのようなハロゲン、過酸化物からなる群から選択される少なくとも1つの基や物質、または、これらの基が脱離してなる終端化されていない結合手(未結合手、ダングリングボンド)が挙げられる。
【0082】
このうち、脱離性中間体分子は、開環分子または不飽和結合を有する炭化水素分子であるのが好ましい。このような炭化水素分子は、開環分子および不飽和結合の顕著な反応性に基づき、有機金属膜3に対して強固に作用する。したがって、このような炭化水素分子を有する下面24は、有機金属膜3に対して特に強固に接合可能なものとなる。
また、下面24が有する官能基は、特に水酸基が好ましい。これにより、下面24は、有機金属膜3に対して特に容易かつ強固に接合可能なものとなる。特に有機金属膜3の表面に水酸基が露出している場合には、水酸基同士間に生じる水素結合に基づいて、下面24と有機金属膜3との間を短時間で強固に接合することができる。
また、このような基や物質を有するように、下面24に対して上述したような各種表面処理を適宜選択して行うことにより、有機金属膜3に対して強固に接合可能な第2の基材22が得られる。
【0083】
このうち、第2の基材22の下面24には、水酸基が存在しているのが好ましい。このような下面24には、水酸基が露出した有機金属膜3との間に、水素結合に基づく大きな引力が生じる。これにより、最終的に、有機金属膜付き基材11と第2の基材22とを特に強固に接合することができる。
また、表面処理に代えて、第1の基材21と同様、第2の基材22の下面24に、あらかじめ中間層を形成しておいてもよい。
【0084】
[5]次に、有機金属膜付き基材11の有機金属膜3に対してエネルギーを付与する(第2の工程)。
ここで、有機金属膜付き基材11が有する有機金属膜3は、金属原子と有機成分とを含む有機金属材料で構成されているが、この有機成分は、エネルギーの付与に伴って脱離基として有機金属膜3から脱離する。そして、有機成分が脱離した後には、有機金属膜3の表面付近に活性手が生じる。これにより、有機金属膜3の表面に、第2の基材22との接着性が発現する。
このような状態の有機金属膜付き基材11は、第2の基材22と、化学的結合に基づいて強固に接合可能なものとなる。
【0085】
ここで、有機金属膜3に付与するエネルギーは、いかなる方法を用いて付与されるものであってもよいが、例えば、有機金属膜3にエネルギー線を照射する方法、有機金属膜3を加熱する方法、有機金属膜3に圧縮力(物理的エネルギー)を付与する方法、有機金属膜3をプラズマに曝す(プラズマエネルギーを付与する)方法、有機金属膜3をオゾンガスに曝す(化学的エネルギーを付与する)方法等が挙げられる。中でも、本実施形態では、有機金属膜3にエネルギーを付与する方法として、特に、有機金属膜3にエネルギー線を照射する方法を用いるのが好ましい。かかる方法は、有機金属膜3に対して比較的簡単に効率よくエネルギーを付与することができるので、エネルギーを付与する方法として好適に用いられる。
【0086】
このうち、エネルギー線としては、例えば、紫外線、レーザ光のような光、X線、γ線のような電磁波、電子線、イオンビームのような粒子線等や、またはこれらのエネルギー線を2種以上組み合わせたものが挙げられる。
これらのエネルギー線の中でも、特に、波長126〜300nm程度の紫外線を用いるのが好ましい(図4(b)参照)。かかる範囲内の紫外線によれば、付与されるエネルギー量が最適化されるので、有機金属膜3中の骨格をなす分子結合が必要以上に破壊されるのを防止しつつ、有機金属膜3から脱離基を選択的に切断することができる。これにより、有機金属膜3の特性(機械的特性、化学的特性等)が低下するのを防止しつつ、有機金属膜3に接着性を確実に発現させることができる。
【0087】
また、紫外線によれば、広い範囲をムラなく短時間に処理することができるので、脱離基の脱離を効率よく行わせることができる。さらに、紫外線には、例えば、UVランプ等の簡単な設備で発生させることができるという利点もある。
なお、紫外線の波長は、より好ましくは、126〜200nm程度とされる。
また、UVランプを用いる場合、その出力は、有機金属膜3の面積に応じて異なるが、1mW/cm〜1W/cm程度であるのが好ましく、5mW/cm〜50mW/cm程度であるのがより好ましい。なお、この場合、UVランプと有機金属膜3との離間距離は、3〜3000mm程度とするのが好ましく、10〜1000mm程度とするのがより好ましい。
【0088】
また、紫外線を照射する時間は、有機金属膜3の表面付近の脱離基を脱離し得る程度の時間、すなわち、有機金属膜3の表面付近に存在する脱離基を選択的に脱離し得る程度の時間とするのが好ましい。具体的には、紫外線の光量、有機金属膜3の構成材料等に応じて若干異なるものの、1秒〜30分程度であるのが好ましく、1秒〜10分程度であるのがより好ましい。
また、紫外線は、時間的に連続して照射されてもよいが、間欠的(パルス状)に照射されてもよい。
【0089】
一方、レーザ光としては、例えば、エキシマレーザのようなパルス発振レーザ(パルスレーザ)、炭酸ガスレーザ、半導体レーザのような連続発振レーザ等が挙げられる。中でも、パルスレーザが好ましく用いられる。パルスレーザでは、有機金属膜3のレーザ光が照射された部分に経時的に熱が蓄積され難いので、蓄積された熱による有機金属膜3の変質・劣化を確実に防止することができる。すなわち、パルスレーザによれば、有機金属膜3の内部にまで蓄積された熱の影響がおよぶのを、防止することができる。
【0090】
また、パルスレーザのパルス幅は、熱の影響を考慮した場合、できるだけ短い方が好ましい。具体的には、パルス幅が1ps(ピコ秒)以下であるのが好ましく、500fs(フェムト秒)以下であるのがより好ましい。パルス幅を前記範囲内にすれば、レーザ光照射に伴って有機金属膜3に生じる熱の影響を、的確に抑制することができる。なお、パルス幅が前記範囲内程度に小さいパルスレーザは、「フェムト秒レーザ」と呼ばれる。
【0091】
また、レーザ光の波長は、特に限定されないが、例えば、200〜1200nm程度であるのが好ましく、400〜1000nm程度であるのがより好ましい。
また、レーザ光のピーク出力は、パルスレーザの場合、パルス幅によって異なるが、0.1〜10W程度であるのが好ましく、1〜5W程度であるのがより好ましい。
さらに、パルスレーザの繰り返し周波数は、0.1〜100kHz程度であるのが好ましく、1〜10kHz程度であるのがより好ましい。パルスレーザの周波数を前記範囲内に設定することにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇して、有機金属膜3の骨格をなす分子結合が切断されてしまうのを防止しつつ、脱離基を有機金属膜3から確実に切断することができる。
【0092】
なお、このようなレーザ光の各種条件は、レーザ光を照射された部分の温度が、好ましくは常温(室温)〜600℃程度、より好ましくは200〜600℃程度、さらに好ましくは300〜400℃程度になるように適宜調整されるのが好ましい。これにより、レーザ光を照射した部分の温度が著しく上昇して、有機金属膜3の骨格をなす分子結合が切断されてしまうのを防止しつつ、脱離基を有機金属膜3から確実に切断することができる。
【0093】
また、有機金属膜3に照射するレーザ光は、その焦点を、有機金属膜3の表面に合わせた状態で、この表面に沿って走査されるようにするのが好ましい。これにより、レーザ光の照射によって発生した熱が、表面付近に局所的に蓄積されることとなる。その結果、有機金属膜3の表面に存在する脱離基を選択的に脱離させることができる。
【0094】
また、有機金属膜3に対するエネルギー線の照射は、いかなる雰囲気中で行うようにしてもよく、具体的には、大気、酸素のような酸化性ガス雰囲気、水素のような還元性ガス雰囲気、窒素、アルゴンのような不活性ガス雰囲気、またはこれらの雰囲気を減圧した減圧(真空)雰囲気等が挙げられるが、中でも、特に、大気雰囲気中で行うのが好ましい。これにより、雰囲気を制御することに手間やコストをかける必要がなくなり、エネルギー線の照射をより簡単に行うことができる。
【0095】
このように、エネルギー線を照射する方法によれば、有機金属膜3に対して選択的にエネルギーを付与することが容易に行えるため、例えば、エネルギーの付与による第1の基材21の変質・劣化を防止することができる。
また、エネルギー線を照射する方法によれば、付与するエネルギーの大きさを、精度よく簡単に調整することができる。このため、有機金属膜3から脱離する脱離基の脱離量を調整することが可能となる。このように脱離基の脱離量を調整することにより、有機金属膜付き基材11と第2の基材22との間の接合強度を容易に制御することができる。
すなわち、脱離基の脱離量を多くすることにより、有機金属膜3の表面および内部に、より多くの活性手が生じるため、有機金属膜3に発現する接着性をより高めることができる。一方、脱離基の脱離量を少なくすることにより、有機金属膜3の表面および内部に生じる活性手を少なくし、有機金属膜3に発現する接着性を抑えることができる。
【0096】
なお、付与するエネルギーの大きさを調整するためには、例えば、エネルギー線の種類、エネルギー線の出力、エネルギー線の照射時間等の条件を調整すればよい。
さらに、エネルギー線を照射する方法によれば、短時間で大きなエネルギーを付与することができるので、エネルギーの付与をより効率よく行うことができる。
ところで、エネルギーが付与される前の有機金属膜3は、その少なくとも表面付近に脱離基(有機成分)を有している。かかる有機金属膜3にエネルギーを付与すると、脱離基が有機金属膜3から脱離する。これにより、有機金属膜3の表面に活性手が生じ、活性化される。その結果、有機金属膜3の表面に接着性が発現する。
【0097】
ここで、本明細書中において、有機金属膜3が「活性化された」状態とは、上述のように有機金属膜3の表面および内部の脱離基が脱離して、有機金属膜3中に終端化されていない結合手(以下、「未結合手」または「ダングリングボンド」とも言う。)が生じた状態の他、この未結合手が水酸基(OH基)によって終端化された状態、さらに、これらの状態が混在した状態を含めて、有機金属膜3が「活性化された」状態と言うこととする。
【0098】
したがって、活性手とは、未結合手(ダングリングボンド)、または未結合手が水酸基によって終端化されたもののことを言う。このような活性手が存在するようにすれば、第2の基材22に対して、特に強固な接合が可能となる。
なお、後者の状態(未結合手が水酸基によって終端化された状態)は、例えば、有機金属膜3に対して大気雰囲気中でエネルギー線を照射することにより、大気中の水分が未結合手を終端化することによって、容易に生成されることとなる。
【0099】
[6]次に、有機金属膜3と第2の基材22とが密着するように、有機金属膜付き基材11と第2の基材22(被着体)とを貼り合わせる(図4(c)参照)。これにより、前記工程において、有機金属膜3に第2の基材22に対する接着性が発現していることから、有機金属膜3と第2の基材22とが化学的に結合する。その結果、有機金属膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とが加圧領域310において部分的に接合され、図4(d)に示す接合体1が得られる(第3の工程)。
【0100】
このようにして得られた接合体1では、従来の接合方法で用いられていた接着剤のように、主にアンカー効果のような物理的結合に基づく接着ではなく、共有結合のような短時間で生じる強固な化学的結合に基づいて、2つの基材21、22が接合されている。このため、接合体1は短時間で形成することができ、かつ、極めて剥離し難く、接合ムラ等も生じ難いものとなる。
【0101】
また、このような接合方法によれば、従来の固体接合のように、高温(例えば、700℃以上)での熱処理を必要としないことから、耐熱性の低い材料で構成された第1の基材21および第2の基材22をも、接合に供することができる。
また、有機金属膜3を介して第1の基材21と第2の基材22とを接合しているため、各基材21、22の構成材料に制約がないという利点もある。
【0102】
以上のことから、本発明によれば、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料の選択の幅をそれぞれ広げることができる。
また、固体接合では、接合層を介していないため、第1の基材21と第2の基材22との間の熱膨張率に大きな差がある場合、その差に基づく応力が接合界面に集中し易く、剥離等が生じるおそれがあったが、接合体(本発明の接合体)1では、有機金属膜3によって応力の集中が緩和され、剥離の発生を的確に抑制または防止することができる。
【0103】
また、第1の基材21の熱膨張率と第2の基材22の熱膨張率が互いに異なっている場合には、できるだけ低温下で接合を行うのが好ましい。接合を低温下で行うことにより、接合界面に発生する熱応力のさらなる低減を図ることができる。
具体的には、第1の基材21と第2の基材22との熱膨張率の差にもよるが、第1の基材21および第2の基材22の温度が25〜50℃程度である状態下で、有機金属膜付き基材11と第2の基材22とを貼り合わせるのが好ましく、25〜40℃程度である状態下で貼り合わせるのがより好ましい。このような温度範囲であれば、第1の基材21と第2の基材22との熱膨張率の差がある程度大きくても、接合界面に発生する熱応力を十分に低減することができる。その結果、接合体1における反りや剥離等の発生を確実に抑制または防止することができる。
また、この場合、具体的な第1の基材21と第2の基材22との間の熱膨張係数の差が、5×10−5/K以上あるような場合には、上記のようにして、できるだけ低温下で接合を行うことが特に推奨される。
【0104】
また、本実施形態によれば、第1の基材21と第2の基材22とを接合する際に、これらの接合面(互いに対向する面)全体を接合するのではなく、一部の領域(加圧領域310)のみを選択的に接合する。この接合の際、有機金属膜3を形成する領域(加圧領域310)を制御することのみで、接合される領域を簡単に選択することができる。これにより、例えば、第1の基材21と第2の基材22との接合部の面積や形状を制御することができるので、接合体1の接合強度を容易に調整することができる。その結果、例えば、接合部を容易に分離可能な接合体1が得られる。
【0105】
すなわち、接合体1の接合強度を調整可能であると同時に、接合体1を分離する際の強度(割裂強度)を調整可能である。
かかる観点から、容易に分離可能な接合体1を作製する場合には、接合体1の接合強度は、人の手で容易に分離可能な程度の大きさであるのが好ましい。これにより、接合体1を分離する際、装置等を用いることなく、簡単に行うことができる。
また、第1の基材21と第2の基材22との接合部の面積や形状を制御することにより、接合部に生じる応力の局所集中を緩和することができる。これにより、例えば、第1の基材21と第2の基材22との間で熱膨張率差が大きい場合でも、各基材21、22を確実に接合することができる。
【0106】
さらに、本実施形態にかかる接合方法によれば、図4(d)に示すように、接合される加圧領域310以外の領域では、第1の基材21と第2の基材22との間に、有機金属膜3の厚さに相当する距離(高さ)の空間3cが形成される。この空間3cを活かすため、加圧領域310の形状を適宜調整することにより、第1の基材21と第2の基材22との間に、閉空間や流路を形成することができる。
【0107】
ここで、本工程において、有機金属膜付き基材11と第2の基材22とを接合するメカニズムについて説明する。
例えば、第2の基材22の下面24に水酸基が露出している場合を例に説明すると、本工程において、有機金属膜付き基材11の有機金属膜3と第2の基材22の下面24とが接触するように、これらを貼り合わせたとき、有機金属膜3の表面に存在する水酸基と、第2の基材22の下面24に存在する水酸基とが、水素結合によって互いに引き合い、水酸基同士の間に引力が発生する。この引力によって、有機金属膜付き基材11と第2の基材22とが接合されると推察される。
また、この水素結合によって互いに引き合う水酸基同士は、温度条件等によって、脱水縮合する。その結果、有機金属膜付き基材11と第2の基材22との接触界面では、水酸基が結合していた結合手同士が酸素原子を介して結合する。これにより、有機金属膜付き基材11と第2の基材22とがより強固に接合されると推察される。
【0108】
また、有機金属膜付き基材11の有機金属膜3の表面や内部、および、第2の基材22の下面24や内部に、それぞれ終端化されていない結合手すなわち未結合手(ダングリングボンド)が存在している場合、有機金属膜付き基材11と第2の基材22とを貼り合わせた時、これらの未結合手同士が再結合する。この再結合は、互いに重なり合う(絡み合う)ように複雑に生じることから、接合界面にネットワーク状の結合が形成されることとなる。これにより、有機金属膜付き基材11と第2の基材22とが特に強固に接合される。
【0109】
なお、前記工程[5]で活性化された有機金属膜3の表面は、その活性状態が経時的に緩和してしまう。このため、前記工程[5]の終了後、できるだけ早く本工程[6]を行うようにするのが好ましい。具体的には、前記工程[5]の終了後、60分以内に本工程[6]を行うようにするのが好ましく、5分以内に行うのがより好ましい。かかる時間内であれば、有機金属膜3の表面が十分な活性状態を維持しているので、有機金属膜付き基材11と第2の基材22とを貼り合わせたとき、これらの間に十分な接合強度を得ることができる。
【0110】
換言すれば、活性化させる前の有機金属膜3は、金属系の骨格に脱離基を導入した接合膜であるため、化学的に比較的安定であり、耐候性に優れている。このため、活性化させる前の有機金属膜3は、長期にわたる保存に適したものとなる。したがって、そのような有機金属膜3を備えた有機金属膜付き基材11を多量に製造して保存しておき、本工程の貼り合わせを行う直前に、必要な個数のみに前記工程[5]に記載したエネルギーの付与を行うようにすれば、接合体1の製造効率の観点から有効である。
【0111】
以上のようにして、図4(d)に示す接合体(本発明の接合体)1を得ることができる。
なお、本実施形態では、第2の工程の後に第3の工程を行うが、これらの順序は逆であってもよい。すなわち、有機金属膜付き基材11と第2の基材22とを重ね合わせて仮接合体とした後、この仮接合体中の有機金属膜3に対してエネルギーを付与することにより、有機金属膜3に接着性が発現し、有機金属膜付き基材11と第2の基材22とを接合することができる。
この場合、仮接合体の状態では、有機金属膜付き基材11と第2の基材22との間は接合されておらず、互いの位置をずらすことができる。したがって、仮接合体の状態で有機金属膜付き基材11と第2の基材22の位置を容易に微調整することができ、最終的に得られる接合体1の寸法精度を高めることができる。
【0112】
このようにして得られた接合体1は、第1の基材21と第2の基材22の間の接合強度が5MPa(50kgf/cm)以上であるのが好ましく、10MPa(100kgf/cm)以上であるのがより好ましい。このような接合強度を有する接合体1は、その剥離を十分に防止し得るものとなる。
なお、従来のシリコン基板同士を直接接合するような固体接合では、接合に供される基板の表面を活性化させても、その活性状態は、大気中で数秒〜数十秒程度の極めて短時間しか維持することができなかった。このため、表面の活性化を行った後、接合する2つの基板を貼り合わせる等の作業に要する時間を、十分に確保することができないという問題があった。
【0113】
これに対し、本発明によれば、比較的長時間にわたって活性状態を維持することができる。このため、貼り合わせ作業に要する時間を十分に確保することができ、接合作業の効率化を高めることができる。
なお、接合体1を得た後に、この接合体1に対して、必要に応じ、以下の2つの工程([7A]および[7B])のうちの少なくとも1つの工程(接合体1の接合強度を高める工程)を行うようにしてもよい。これにより、接合体1の接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
【0114】
[7A]得られた接合体1を、第1の基材21と第2の基材22とが互いに近づく方向に加圧する。
これにより、第1の基材21の表面および第2の基材22の表面に、それぞれ有機金属膜3の表面がより近接し、接合体1における接合強度をより高めることができる。
また、接合体1を加圧することにより、接合体1中の接合界面に残存していた隙間を押し潰して、接合面積をさらに広げることができる。これにより、接合体1における接合強度をさらに高めることができる。
【0115】
なお、この圧力は、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料や各厚さ、接合装置等の条件に応じて、適宜調整すればよい。具体的には、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料や各厚さ等に応じて若干異なるものの、0.2〜10MPa程度であるのが好ましく、1〜5MPa程度であるのがより好ましい。これにより、接合体1の接合強度を確実に高めることができる。なお、この圧力が前記上限値を上回っても構わないが、第1の基材21および第2の基材22の各構成材料によっては、各基材21、22に損傷等が生じるおそれがある。
また、加圧する時間は、特に限定されないが、10秒〜30分程度であるのが好ましい。なお、加圧する時間は、加圧する際の圧力に応じて適宜変更すればよい。具体的には、接合体1を加圧する際の圧力が高いほど、加圧する時間を短くしても、接合強度の向上を図ることができる。
【0116】
[7B]得られた接合体1を加熱する。
これにより、接合体1における接合強度をより高めることができる。
このとき、接合体1を加熱する際の温度は、室温より高く、接合体1の耐熱温度未満であれば、特に限定されないが、好ましくは25〜100℃程度とされ、より好ましくは50〜100℃程度とされる。かかる範囲の温度で加熱すれば、接合体1が熱によって変質・劣化するのを確実に防止しつつ、接合強度を確実に高めることができる。
【0117】
また、加熱時間は、特に限定されないが、1〜30分程度であるのが好ましい。
また、前記工程[7A]、[7B]の双方を行う場合、これらを同時に行うのが好ましい。すなわち、接合体1を加圧しつつ、加熱するのが好ましい。これにより、加圧による効果と、加熱による効果とが相乗的に発揮され、接合体1の接合強度を特に高めることができる。
以上のような工程を行うことにより、接合体1における接合強度のさらなる向上を容易に図ることができる。
【0118】
(第2実施形態)
次に、本発明の接合方法の第2実施形態について説明する。
以下、第2実施形態にかかる接合方法について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本実施形態にかかる接合方法は、有機金属膜付き基材11と貼り合わせる被着体として、有機金属膜付き基材11と同様のものを用いる、すなわち、有機金属膜付き基材同士を接合するようにした以外は、前記第1実施形態と同様である。
【0119】
本実施形態にかかる接合方法は、[4’]本発明の有機金属膜のパターニング方法により製造され、第1の基材21とその表面上に形成された有機金属膜3とを有する第1の有機金属膜付き基材11と、第2の基材22とその表面上に形成された有機金属膜3’とを有する第2の有機金属膜付き基材12とを用意する第1の工程と、[5’]有機金属膜3および有機金属膜3’にそれぞれエネルギーを付与することにより、有機金属膜3および有機金属膜3’に接着性を発現させる第2の工程と、[6’]有機金属膜3と有機金属膜3’とが密着するように、第1の有機金属膜付き基材11と第2の有機金属膜付き基材12とを重ね合わせることにより、これらを接合し、接合体1’を得る第3の工程とを有する。
【0120】
以下、各工程について順次説明する。
[4’]まず、前述した本発明の有機金属膜のパターニング方法により、第1の基材21上に形成された有機金属膜3が所定の形状にパターニングされ、その結果、第1の基材21とパターニングされた有機金属膜3とを有する第1の有機金属膜付き基材11を得る。また、第1の有機金属膜付き基材11と同様にして、第2の基材22と、その表面上に設けられた有機金属膜3’とを有する第2の有機金属膜付き基材12を用意する(第1の工程)。なお、第1の有機金属膜付き基材11が有する有機金属膜3のパターンと、第2の有機金属膜付き基材12が有する有機金属膜3’のパターンとは、同様である(図5(a)参照)。
[5’]次に、図5(b)に示すように、第1の有機金属膜付き基材11の有機金属膜3および第2の有機金属膜付き基材12の有機金属膜3’に対してそれぞれエネルギー(図5(b)では、紫外線)を付与する(第2の工程)。これにより、有機金属膜3の表面と有機金属膜3’の表面にそれぞれ接着性が発現する。
【0121】
[6’]次に、有機金属膜3と有機金属膜3’とが密着するように、第1の有機金属膜付き基材11と第2の有機金属膜付き基材12とを貼り合わせる(図5(c)参照)。これにより、前記工程において、有機金属膜3および有機金属膜3’にそれぞれ接着性が発現していることから、有機金属膜3と有機金属膜3’とが化学的に結合する。その結果、有機金属膜3および有機金属膜3’を介して第1の有機金属膜付き基材11と第2の有機金属膜付き基材12とが部分的に接合され、図5(d)に示す接合体1’が得られる(第3の工程)。
【0122】
以上のような第2実施形態においても、前記第1実施形態と同様の作用・効果が得られる。
また、第2実施形態によれば、有機金属膜同士の接合により第1の基材21と第2の基材22とを貼り合わせているので、前記第1実施形態に比べてより強固な接合が可能である。
なお、このような接合方法は、種々の複数の部材同士を接合するのに用いることができる。
【0123】
この接合に供される部材としては、例えば、トランジスタ、ダイオード、メモリのような半導体素子、水晶発振子のような圧電素子、反射鏡、光学レンズ、回折格子、光学フィルターのような光学素子、太陽電池のような光電変換素子、半導体基板とそれに搭載される半導体素子、絶縁性基板と配線または電極、インクジェット式記録ヘッド、マイクロリアクタ、マイクロミラーのようなMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)部品、圧力センサ、加速度センサのようなセンサ部品、半導体素子や電子部品のパッケージ部品、磁気記録媒体、光磁気記録媒体、光記録媒体のような記録媒体、液晶表示素子、有機EL素子、電気泳動表示素子のような表示素子用部品、燃料電池用部品等が挙げられる。
また、本発明の接合方法によれば、例えば、配線パターンが形成された基材同士を接合するとともに、配線パターン間を電気的に接続することができる。
【0124】
図6は、配線基板同士の接続に本発明の接合方法を適用した例を示す斜視図である。
図6に示す第1の配線基板13は、絶縁性基板211と、その表面上の一部に設けられた2つの導電膜212aとにより構成されている。一方、図6に示す第2の配線基板14は、絶縁性基板221と、その表面上の一部に設けられた2つの導電膜222aとにより構成されている。これらの第1の配線基板13および第2の配線基板14は、それぞれ本発明の有機金属膜のパターニング方法により導電膜(有機金属膜)をパターニングして作製されたものである。
【0125】
また、2つの導電膜212aおよび2つの導電膜222aはそれぞれが帯状をなしており、これらがストライプ状に配設されていることにより第1の配線パターン212および第2の配線パターン222が構成されている。なお、2つの導電膜212aおよび2つの導電膜222aは互いに離間して設けられており、互いに絶縁されている。
【0126】
また、これらの第1の配線パターン212および第2の配線パターン222は、その寸法およびピッチがほぼ同じであり、後述する工程を経ることにより、各導電膜212aとその各々に対応する各導電膜222aとが接合膜を介して電気的に接続される。
そして、第1の配線基板13と第2の配線基板14とを、本発明の接合方法により接合する。これにより、第1の配線基板13と第2の配線基板14とが接合されるとともに、第1の配線パターン212と第2の配線パターン222とが電気的に接続される。
以上のように、本発明の接合方法は、例えば、各種半導体装置や電子部品の回路基板への実装、回路基板同士や配線同士の接続等に適用することができる。これにより、高密度での実装や接続が簡単に実現できる。
【0127】
<エッチング方法>
次に、本発明のエッチング方法の実施形態について説明する。
図7は、本発明のエッチング方法の実施形態を説明するための図(縦断面図)である。なお、以下の説明では、図7中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
本実施形態にかかるエッチング方法は、エッチング対象物として第1の基材21を用いる場合であり、[a]本発明の有機金属膜のパターニング方法により製造され、第1の基材21と、その表面上に形成されたマスクとしての有機金属膜3とを有するマスク付き基材15を得る成膜工程と、[b]マスク付き基材15に対してエッチング処理を施すことにより、マスクで覆われていない領域の第1の基材21を選択的にエッチングする基材エッチング工程とを有する。
【0128】
以下、各工程について順次説明する。
[a]まず、前述した本発明の有機金属膜のパターニング方法により、第1の基材21上に形成された有機金属膜3が所定の形状にパターニングされ、その結果、図7(a)に示すように、第1の基材21とパターニングされた有機金属膜3とを有するマスク付き基材15を得る(成膜工程)。
【0129】
本実施形態では、パターニングにより、非加圧領域311に位置する有機金属膜3が除去され、この領域に開口部312が形成される。この開口部312からは第1の基材21の上面23が露出することとなる。この第1の基材21の露出部が後述する基材エッチング工程においてエッチングされることになる。したがって、第1の基材21のエッチングすべき領域に応じて、有機金属膜3の加圧領域311をあらかじめ設定すればよい。
以上のような方法によれば、従来のようにレジスト等を用いてマスクを形成する必要がなく、単に加圧領域311を設定してその領域を加圧するのみで所望の形状のマスクを得ることができるので、第1の基材21を短時間で簡単に、所望の形状にエッチングすることが可能である。
【0130】
[b]次に、マスク付き基材15に対して、第1の基材21をエッチング可能なエッチング処理を施す(図7(b)参照)。これにより、図7(c)に示すように、マスクの開口部312に対応する位置の第1の基材21を選択的にエッチングすることができ、第1の基材21に貫通孔25を形成することができる(基材エッチング工程)。
第1の基材21に対するエッチング処理は、例えば、ドライエッチング法またはウェットエッチング法により行われる。ドライエッチング法によれば、寸法精度の高いパターニングを行うことができる。一方、ウェットエッチング法によれば、ドライエッチングのように真空雰囲気を用意する必要がないので、第1の基材21に対して簡単にエッチング処理を施すことができる。
また、ドライエッチング法およびウェットエッチング法としては、前述した有機金属膜3に対するエッチング法と同様の方法を用いることができる。
【0131】
なお、第1の基材21がアルカリエッチング液でエッチング可能なものであれば、アルカリ性を示すエッチング液を用いて第1の基材21をウェットエッチング処理するのが好ましい。アルカリ性のエッチング液を用いることにより、マスクである有機金属膜3を侵すことなく、第1の基材21を選択的にエッチングすることができる。このため、第1の基材21に対して寸法精度の高いエッチング加工を施すことができる。このように、第1の基材21をエッチングする際には、有機金属膜3が侵されないようなエッチング方法(エッチング液)を用いるのが好ましい。
【0132】
その後、必要に応じて、図7(d)に示すように有機金属膜3を除去する。なお、有機金属膜3は、前述したような各種エッチング法により除去することができる。
以上のようなエッチング方法は、各種エッチング工程に適用することができ、具体的には、半導体製造プロセス、MEMS(micro electro mechanical systems)製造プロセス、インクジェット式記録ヘッド製造プロセス等に適用することができる。
【0133】
以上、本発明の有機金属膜のパターニング方法、接合方法、接合体およびエッチング方法について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
例えば、本発明の有機金属膜のパターニング方法、接合方法およびエッチング方法では、必要に応じて、任意の工程を追加することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の有機金属膜のパターニング方法の実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図2】本発明の有機金属膜のパターニング方法の実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図3】本発明の有機金属膜のパターニング方法においてパターニングされる有機金属膜を製造する成膜装置を示す図である。
【図4】本発明の接合方法の第1実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【図5】本発明の接合方法の第2実施形態を説明するための図(縦断面図)である
【図6】配線基板同士の接続に本発明の接合方法を適用した例を示す斜視図である。
【図7】本発明のエッチング方法の実施形態を説明するための図(縦断面図)である。
【符号の説明】
【0135】
1、1’……接合体 11……有機金属膜付き基材(第1の有機金属膜付き基材) 12……第2の有機金属膜付き基材 13……第1の配線基板 14……第2の配線基板 15……マスク付き基材 21……第1の基材 211……絶縁性基板 212……第1の配線パターン 212a……導電膜 22……第2の基材 221……絶縁性基板 222……第2の配線パターン 222a……導電膜 23……上面 24……下面 25……貫通孔 3、3’……有機金属膜 3c……空間 310……加圧領域 311……非加圧領域 312……開口部 4……圧子 40……押圧面 500……成膜装置 511……チャンバー 512……基板ホルダー 521……シャッター 530……排気手段 531……排気ライン 532……ポンプ 533……バルブ 560……有機金属材料供給手段 561……ガス供給ライン 562……貯留槽 563……バルブ 564……ポンプ 565……ガスボンベ 570……ガス供給手段 571……ガス供給ライン 573……バルブ 574……ポンプ 575……ガスボンベ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、有機金属材料で構成された有機金属膜を形成する有機金属膜形成工程と、
前記有機金属膜の一部を膜厚方向に加圧する加圧工程と、
前記有機金属膜に対してエッチング処理を施す有機金属膜エッチング工程とを有し、
前記有機金属膜エッチング工程において、前記有機金属膜の加圧されていない非加圧領域におけるエッチング速度が、前記有機金属膜の加圧された加圧領域におけるエッチング速度よりも速いことを利用して、前記非加圧領域を選択的に除去することを特徴とする有機金属膜のパターニング方法。
【請求項2】
前記有機金属材料は、金属錯体である請求項1に記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項3】
前記有機金属材料は、金属原子と有機成分とを含んでおり、
前記金属原子は、銅、アルミニウム、亜鉛および鉄のうちの少なくとも1種である請求項1または2に記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項4】
前記有機成分は、アルキル基である請求項1ないし3のいずれかに記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項5】
前記有機金属膜中の金属原子と炭素原子との存在比は、3:7〜7:3である請求項1ないし4のいずれかに記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項6】
前記加圧工程前の前記有機金属膜は、非晶質の有機金属材料で構成されている請求項1ないし5のいずれかに記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項7】
前記加圧工程前の前記有機金属膜は、多孔質状をなしている請求項1ないし6のいずれかに記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項8】
前記有機金属膜の平均厚さは、1〜5000nmである請求項1ないし7のいずれかに記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項9】
前記有機金属膜は、有機金属材料を原材料として、有機金属化学気相成膜法を用いて成膜されたものである請求項1ないし8のいずれかに記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項10】
前記有機金属膜は、低還元性雰囲気下で成膜されたものである請求項9に記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項11】
前記有機金属膜は、金属アルコキシドを原材料として、ゾル・ゲル法により成膜されたものである請求項1ないし8のいずれかに記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項12】
前記加圧工程において、前記加圧領域を加圧する際の圧力は、10〜250MPaである請求項1ないし11のいずれかに記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項13】
前記加圧工程において、前記有機金属膜は、加圧に伴って圧縮するものであり、その圧縮の際の圧縮率は、5〜70%である請求項1ないし12のいずれかに記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項14】
前記加圧工程において、前記基材よりも硬度の高い材料で構成された圧子を用いて、前記加圧領域を加圧する請求項1ないし13のいずれかに記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項15】
前記圧子は、その押圧面の面積が、前記加工領域の面積より小さいものであり、
前記加圧工程において、前記圧子を前記加圧領域に対して押圧しつつ走査する請求項14に記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項16】
前記エッチング処理は、ドライエッチング法またはウェットエッチング法により行われる請求項1ないし15のいずれかに記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項17】
前記有機金属材料は、有機銅を主成分とするものであり、
前記ウェットエッチング法に用いるエッチング液は、塩化第二銅または塩化第二鉄を主成分とするものである請求項16に記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項18】
前記有機金属膜エッチング工程の後、有機酸を含む洗浄液により前記基材を洗浄する請求項1ないし17のいずれかに記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項19】
前記有機金属膜は、エネルギーを付与することにより、その表面付近に存在する前記有機金属材料中の有機成分が前記有機金属膜から脱離することにより、被着体との接着性が発現するものである請求項1ないし18のいずれかに記載の有機金属膜のパターニング方法。
【請求項20】
基材と、該基材上に設けられ、請求項19に記載の有機金属膜のパターニング方法により形成された前記有機金属膜とを有する有機金属膜付き基材と、該有機金属膜付き基材との接合に供される被着体とを用意する第1の工程と、
前記有機金属膜付き基材の前記有機金属膜にエネルギーを付与することにより、前記有機金属膜の表面付近に存在する前記有機金属材料中の有機成分を前記有機金属膜から脱離させることにより、前記有機金属膜に接着性を発現させる第2の工程と、
前記有機金属膜と前記被着体とが密着するように、前記有機金属膜付き基材と前記被着体とを重ね合わせることにより、これらを接合した接合体を得る第3の工程とを有することを特徴とする接合方法。
【請求項21】
前記有機金属膜は、導電性を有する請求項20に記載の接合方法。
【請求項22】
前記被着体は、基材と、該基材上に設けられた前記有機金属膜と同様の有機金属膜とを有するものであり、
前記第2の工程において、前記被着体が有する前記有機金属膜にエネルギーを付与し、
前記第3の工程において、前記有機金属膜付き基材が有する前記有機金属膜と、前記被着体が有する前記有機金属膜とが密着するように、前記有機金属膜付き基材と前記被着体とを重ね合わせる請求項20または21に記載の接合方法。
【請求項23】
前記有機金属膜付き基材および前記被着体が有する有機金属膜は、それぞれ配線を構成している請求項22に記載の接合方法。
【請求項24】
前記エネルギーの付与は、前記有機金属膜にエネルギー線を照射する方法、前記有機金属膜を加熱する方法、および前記接合膜に圧縮力を付与する方法のうちの少なくとも1つの方法により行われる請求項20ないし23のいずれかに記載の接合方法。
【請求項25】
2つの基材が、請求項20ないし24のいずれかに記載の接合方法により部分的に接合されてなることを特徴とする接合体。
【請求項26】
基材上に、請求項1ないし19のいずれかに記載の有機金属膜のパターニング方法によりパターニングされた有機金属膜を形成する成膜工程と、
前記有機金属膜をマスクとして前記基材に対してエッチング処理を施すことにより、前記マスクで覆われていない領域の前記基材を選択的にエッチングする基材エッチング工程とを有することを特徴とするエッチング方法。
【請求項27】
前記基材は、酸化ケイ素を主材料とするものであり、
前記基材エッチング工程におけるエッチング処理は、アルカリ性を示すエッチング液を用いて行われる請求項26に記載のエッチング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−16014(P2010−16014A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−171850(P2008−171850)
【出願日】平成20年6月30日(2008.6.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】