説明

案内装置、案内方法、及び案内プログラム

【課題】回生エネルギーの回収に適し、且つ、安全性に適したブレーキ操作量について、運転者に案内することができる案内装置等を提供すること。
【解決手段】摩擦ブレーキと回生ブレーキを備える車両において、ブレーキペダルの操作量に関する案内を行う案内装置80であって、回生ブレーキのみが作動するブレーキペダルの操作量の上限値である回生上限操作量を現在速度に基づいて算出する回生上限操作量算出部81aと、現在速度を減速目標位置において減速目標速度とするために必要になるブレーキペダルの操作量である減速必要操作量を、現在速度、減速目標速度、及び減速目標位置までの距離に基づいて算出する安全減速必要操作量算出部81bと、回生上限操作量と減速必要操作量とに基づいて、ブレーキペダルの操作量に関する案内制御を行う案内制御部81dとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内装置、案内方法、及び案内プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータとエンジンを駆動源とするハイブリッド車両において、車両の減速時に、モータの制動力と油圧式ブレーキの制動力の各々の配分比率に対応する領域を表示する表示装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ハイブリッド車両において、ブレーキ操作を行った際に、現在のブレーキ操作で回収される回生エネルギーのレベルを示す運行制御システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−314100号公報(段落「0033」)
【特許文献2】特開2007−186045号公報(段落「0046」)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ブレーキ操作の基本的な目的は、車両の現在速度を前方の減速目標位置において所望の速度に減速することである。これに対して、上述の如き従来の装置では、減速目標位置において所望の速度に減速するために必要となるブレーキの操作量を考慮することなく、現在のブレーキ操作で回収できている回生エネルギーのレベル等のみを表示していたので、回生エネルギーの回収に適し、且つ、安全性に適したブレーキ操作量について、運転者に案内することができなかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、回生エネルギーの回収に適し、且つ、安全性に適したブレーキ操作量について、運転者に案内することができる、案内装置、案内方法、及び案内プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の案内装置は、摩擦ブレーキと回生ブレーキを備える車両において、ブレーキペダルの操作量に関する案内を行う案内装置であって、前記回生ブレーキのみが作動する前記ブレーキペダルの操作量の上限値である回生上限操作量を、前記車両の現在速度に基づいて算出する回生上限操作量算出手段と、前記車両の現在速度を減速目標位置において減速目標速度とするために必要になる前記ブレーキペダルの操作量である減速必要操作量を、車両の現在速度、前記減速目標速度、及び前記減速目標位置までの距離に基づいて算出する減速必要操作量算出手段と、前記回生上限操作量算出手段にて算出された回生上限操作量と、前記減速必要操作量算出手段にて算出された減速必要操作量とに基づいて、前記ブレーキペダルの操作量に関する案内制御を行う案内制御手段とを備える。
【0007】
また、請求項2に記載の案内装置は、請求項1に記載の案内装置において、前記ブレーキペダルの現在の操作量である現在操作量を取得する現在操作量取得手段を備え、前記案内制御手段は、前記回生上限操作量算出手段にて算出された回生上限操作量と、前記減速必要操作量算出手段にて算出された減速必要操作量と、前記現在操作量取得手段にて取得された現在操作量とに基づいて、前記ブレーキペダルの操作量に関する案内制御を行う。
【0008】
また、請求項3に記載の案内装置は、請求項1又は2に記載の案内装置において、前記案内制御手段は、前記ブレーキペダルの上限操作量を基準とした案内制御を行う。
【0009】
また、請求項4に記載の案内装置は、請求項3に記載の案内装置において、前記ブレーキペダルの現在の操作量である現在操作量を取得する現在操作量取得手段を備え、前記案内制御手段は、前記ブレーキペダルの操作量を表示する表示領域であって、当該ブレーキペダルの非操作状態に対応する位置から前記上限操作量に対応する位置に至る表示領域の中に、前記現在操作量取得手段にて取得された現在操作量を表示する現在操作量表示部、前記回生上限操作量算出手段にて算出された回生上限操作量を表示する回生上限操作量表示部、及び前記減速必要操作量算出手段にて算出された減速必要操作量を表示する減速必要操作量表示部を表示する案内制御を行う。
【0010】
また、請求項5に記載の案内方法は、摩擦ブレーキと回生ブレーキを備える車両において、ブレーキペダルの操作量に関する案内を行う案内方法であって、前記回生ブレーキのみが作動する前記ブレーキペダルの操作量の上限値である回生上限操作量を、前記車両の現在速度に基づいて算出する回生上限操作量算出ステップと、前記車両の現在速度を減速目標位置において減速目標速度とするために必要になる前記ブレーキペダルの操作量である減速必要操作量を、車両の現在速度、前記減速目標速度、及び前記減速目標位置までの距離に基づいて算出する減速必要操作量算出ステップと、前記回生上限操作量算出ステップにて算出された回生上限操作量と、前記減速必要操作量算出ステップにて算出された減速必要操作量とに基づいて、前記ブレーキペダルの操作量に関する案内制御を行う案内制御ステップとを備える。
【0011】
また、請求項6に記載の案内プログラムは、請求項5に記載の方法をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の案内装置、請求項5に記載の案内方法、及び請求項6に記載の案内プログラムによれば、回生上限操作量と減速必要操作量を算出し、これら回生上限操作量と減速必要操作量に基づいてブレーキペダルの操作量に関する案内制御を行うので、回生エネルギーを回収可能なブレーキペダルの操作量と、車両の現在速度を減速目標位置において減速目標速度とするために必要になるブレーキペダルの操作量に基づいた案内を、運転者に案内することができる。したがって、運転者は、これら回生上限操作量や減速必要操作量を考慮したブレーキ操作を行うことができ、制動エネルギーを効率的に回収することに加えて、安全性を考慮した減速を行うことが容易となる。
【0013】
また、請求項2に記載の案内装置によれば、回生上限操作量と減速必要操作量に加えて現在操作量を算出し、これら回生上限操作量と、減速必要操作量と、現在操作量とに基づいて、ブレーキペダルの操作量に関する案内制御を行うので、回生上限操作量と減速必要操作量に加えて、現在操作量に基づいた案内を、運転者に案内することができる。したがって、運転者は、回生上限操作量と減速必要操作量に加えて、現在のブレーキペダルの操作量を考慮したブレーキ操作を行うことができ、制動エネルギーを効率的に回収することに加えて、安全性を考慮した減速を行うことが、一層容易となる。
【0014】
また、請求項3に記載の案内装置によれば、ブレーキペダルの上限操作量を基準とした案内制御を行うので、運転者は、回生上限操作量、減速必要操作量、あるいは現在操作量の相互の相対的な関係を、ブレーキペダルの上限操作量を基準として考慮することが可能となる。
【0015】
また、請求項4に記載の案内装置によれば、ブレーキペダルの非操作状態に対応する位置から上限操作量に対応する位置に至る表示領域の中に、現在操作量表示部、回生上限操作量表示部、及び減速必要操作量表示部を表示する案内制御を行うので、運転者は、回生上限操作量、減速必要操作量、あるいは現在操作量の相互の相対的な関係を、ブレーキペダルの非操作状態や上限操作量を基準として把握することが可能となると共に、同一の表示領域に表示された回生上限操作量、減速必要操作量、あるいは現在操作量を目視することでこれら相互の相対的な関係を容易に把握することが可能となる。このため、例えば、運転者は、ブレーキペダルの現在操作量が、回生上限操作量や減速必要操作量に対して適切であるか否かを認識することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態に係る案内システムを例示するブロック図である。
【図2】実施の形態に係る案内処理のフローチャートである。
【図3】回生上限操作量、安全減速必要操作量、又は現在操作量のディスプレイにおける表示例を示す図である。
【図4】図3に続く、回生上限操作量、安全減速必要操作量、又は現在操作量のディスプレイにおける表示例を示す図である。
【図5】回生上限操作量、安全減速必要操作量、又は現在操作量のディスプレイにおける表示例の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る案内装置、案内方法、及び案内プログラムの実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(構成)
まず、本実施の形態に係る案内システムの構成を説明する。図1は、本実施の形態に係る案内システム1を例示するブロック図である。図1に示すように、案内システム1は、現在位置検出処理部10、車速センサ20、アクセル機構30、ブレーキ機構40、バッテリ制御部50、ディスプレイ60、スピーカ70、及び案内装置80を備えている。
【0019】
(構成−現在位置検出処理部)
現在位置検出処理部10は、案内装置80が取り付けられた車両(以下、自車両)の現在位置を検出する現在位置検出手段である。具体的には、現在位置検出処理部10は、GPS、地磁気センサ、距離センサ、又はジャイロセンサ(いずれも図示省略)の少なくとも一つを有し、現在の自車両の位置(座標)及び方位等を公知の方法にて検出する。
【0020】
(構成−車速センサ)
車速センサ20は、自車両の車輪の回転速度等を案内装置80に出力するものであり、公知の車速センサ20を用いることができる。
【0021】
(構成−アクセル機構)
アクセル機構30は、自車両の駆動機構である。このアクセル機構30は、アクセルペダル(図示省略)の操作量(踏み込み量)に応じてエンジンや電気モータを制御するものであり、公知の機構で構成されている。このアクセル機構30は、アクセルペダルの現在の操作量であるアクセルペダル現在操作量を案内装置80に出力する。
【0022】
(構成−ブレーキ機構)
ブレーキ機構40は、自車両の制動機構である。このブレーキ機構40は、摩擦ブレーキ(油圧式ブレーキ)と回生ブレーキの2種類を組み合わせて構成されており、これら2種類のブレーキをブレーキペダル(図示省略)にて操作することができる。すなわち、自車両は、動力源であるエンジン及び電気モータを搭載したハイブリッド自動車として構成されており、自車両の制動エネルギーによって回生発電された電力をバッテリに蓄電し、このバッテリの電力によって電気モータを駆動等することが可能となっている(いずれも図示省略)。そして、ブレーキペダルには、ブレーキペダルの操作量(踏み込み量であり、いわゆる遊び部分を除いた量)を検知するペダルセンサ(図示省略)が設けられており、このペダルセンサの出力に基づいて摩擦ブレーキと回生ブレーキを協調制御することで制動を行う。このような摩擦ブレーキと回生ブレーキの協調制御は、図示しないブレーキ制御部や油圧機構等を介した公知の方法で行われる。このブレーキ機構40は、ブレーキペダルの現在の操作量であるブレーキペダル現在操作量を案内装置80に出力する。
【0023】
(構成−バッテリ制御部)
バッテリ制御部50は、回生発電された電力を蓄電する上述のバッテリを制御する制御手段であり、バッテリの充電状態に関する情報であるバッテリ充電情報を案内装置80に出力する。
【0024】
(構成−ディスプレイ)
ディスプレイ60は、案内装置80によって案内された画像を表示する表示手段である。ディスプレイ60の具体的な構成は任意であり、公知の液晶ディスプレイや有機ELディスプレイの如きフラットパネルディスプレイを使用することができる。
【0025】
(構成−スピーカ)
スピーカ70は、案内装置80の制御に基づいて各種の音声を出力する出力手段である。スピーカ70より出力される音声の具体的な態様は任意であり、必要に応じて生成された合成音声や、予め録音された音声を出力することができる。
【0026】
(構成−案内装置)
案内装置80は、ブレーキペダルの操作量に関する案内制御を行う案内制御手段であり、制御部81及びデータ記録部82を備えている。
【0027】
(構成−案内装置−制御部)
制御部81は、案内装置80を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。特に、本実施の形態に係る案内プログラムは、任意の記録媒体又はネットワークを介して案内装置80にインストールされることで、制御部81の各部を実質的に構成する。
【0028】
この制御部81は、機能概念的に、回生上限操作量算出部81a、安全減速必要操作量算出部81b、現在操作量取得部81c、及び案内制御部81dを備えている。
【0029】
回生上限操作量算出部81aは、回生ブレーキのみが作動するブレーキペダルの操作量の上限値(以下「回生上限操作量」)を、自車両の現在速度に基づいて算出する回生上限操作量算出手段である。
【0030】
安全減速必要操作量算出部81bは、自車両の現在速度を減速目標位置において減速目標速度とするために必要になるブレーキペダルの操作量(以下「減速必要操作量」)を、自車両の現在速度、減速目標速度、及び減速目標位置までの距離に基づいて算出する減速必要操作量算出手段である。
【0031】
ここで、「減速目標位置」とは、自車両の現在速度を減速するに際して当該減速を達成すべき目標となる位置であり、例えば、地図情報のみに基づいて自動的に特定される位置(一時停止地点、インターチェンジ等のETCゲート、右左折地点、T字路、所定曲率以上のカーブの入口、障害物等の地物等)や、地図情報に対して自車両の運転者が任意に設定した位置(立寄地や目的地等)を含む。また、「減速目標速度」とは、自車両が減速目標位置に到達した時点でとるべき速度である。また、特記する場合を除き、「減速」には「停止」を含むものとし、したがって、「減速目標位置」は「停止目標位置」を含み、「停止目標位置」における「減速目標速度」は「速度=ゼロ」となる。ここで、安全減速必要操作量算出部81bは、現在位置から減速目標位置に至るまで、一定の減速Gで減速を行う場合の減速必要操作量を算定する。ここでは「一定の減速G」を、自車両の挙動が安定する減速G(以下「安全減速G」)とする。この安全減速Gは、固定的な値ではなく、当該安全減速Gを算定する際における、車両の現在速度、減速目標速度、及び減速目標位置までの距離に応じて変動し得る値である。このように安全減速Gで減速を行う場合の減速必要操作量を、以下「安全減速必要操作量」と称する。
【0032】
現在操作量取得部81cは、ブレーキペダルの現在の操作量である現在操作量を取得する現在操作量取得手段である。
【0033】
案内制御部81dは、回生上限操作量算出部81aにて算出された回生上限操作量と、安全減速必要操作量算出部81bにて算出された安全減速必要操作量とに基づいて、ブレーキペダルの操作量に関する案内制御を行う案内制御手段である。これらの制御部81の各構成要素によって実行される処理の詳細については後述する。
【0034】
(構成−案内装置−データ記録部)
データ記録部82は、案内装置80の動作に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記録装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。
【0035】
このデータ記録部82は、地図情報データベース(以下、データベースを「DB」と称する)82aを備えている。地図情報DB82aは、地図情報を格納する地図情報格納手段である。「地図情報」とは、交差点や一時停止地点を含む各種の位置の特定に必要な情報であり、例えば、交差点データ(交差点座標等)や、地図をディスプレイ60に表示するための地図表示データ等を含んで構成されている。さらに、データ記録部82には、後述する案内処理において、回生上限操作量、安全減速必要操作量、及び現在操作量を取得するために必要な情報を任意形式で記憶することができる。
【0036】
(処理)
次に、このように構成される案内装置80によって実行される案内処理について説明する。図2は案内処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この案内処理は、例えば、自車両のエンジン始動後に自動的に起動される。
【0037】
案内処理の起動後、制御部81は、自車両の前方に、減速目標位置が有るか否かを継続的に監視する(SA1)。減速目標位置が有るか否かの判定は、例えば、地図情報DB82aに格納された地図情報に基づいて、自車両の走行経路上(例えば、自車両の走行ルートが設定されている場合には当該走行ルート上であり、自車両の走行ルートが設定されていない場合には自車両が現在走行している道路上)において、所定条件に合致する減速目標位置があるか否かによって判定する。この所定条件としては、例えば、減速目標位置が、現在位置を基準とする距離であって、「現在位置においてアクセルをオフにすることで加速を停止した場合に、自車両の慣性力によって到達可能な距離(以下「慣性到達距離」)」に対して「回生上限操作量や安全減速必要操作量を算出するために必要な時間を確保するための余裕分の距離」を加えた距離(以下「慣性到達余裕距離」)に位置するか否かを条件とすることができる。すなわち、制御部81は、車速センサ20から現在速度を取得し、当該取得した現在速度に基づいて慣性到達余裕距離を算出し、現在位置の前方における慣性到達余裕距離以内に位置する減速目標位置がある場合には、当該減速目標位置を、所定条件に合致する減速目標位置であると判定する。
【0038】
そして、減速目標位置が有ると判定した場合(SA1、Yes)、回生上限操作量算出部81aは、回生上限操作量を算出する(SA2)。例えば、回生ブレーキのみが作動する一方で摩擦ブレーキは作動しないブレーキペダルの操作量は、自車両の車速に応じて予め特定可能であるため、これらブレーキペダルの操作量と車速との対応関係を示すデータをテーブルやグラフ等の任意の形式でデータ記録部82に格納しておく。そして、回生上限操作量算出部81aは、車速センサ20から取得した現在速度に基づいて、このデータ記録部82のデータを参照することで、回生上限操作量を算出する。また、この際、バッテリ制御部50から出力されているバッテリ充電情報を参照し、バッテリにおける充電率を考慮して、回生上限操作量を算出してもよい。
【0039】
次いで、安全減速必要操作量算出部81bは、安全減速必要操作量を算出する(SA3)。例えば、現在位置から減速目標位置に至るまでに安全減速Gで減速を行う場合、減速目標位置において減速目標速度に減速するために必要になるブレーキペダルの操作量は、自車両の現在速度、減速目標速度、及び減速目標位置までの距離に基づいて公知の方法で算定可能である。したがって、安全減速必要操作量算出部81bは、車速センサ20から取得した現在速度と、所定方法で特定した減速目標速度と、SA1で所定条件に合致するものと判定された減速目標位置までの現在位置からの距離に基づいて、安全減速必要操作量を算出する。ここで、減速目標速度の特定方法は任意であるが、例えば、減速目標位置に応じた減速目標速度を、地図情報DB82aに予め格納しておき必要に応じて読み出すことで特定してもよい。例えば、減速目標位置が一時停止地点、立寄地、若しくは目的地である場合には、「減速目標速度=ゼロ」とし、減速目標位置が所定曲率以上のカーブの入口である場合には、「減速目標速度=当該カーブを安全に曲がることができる速度であって、当該カーブの曲率に応じた速度」とすることができる。減速目標位置までの現在位置からの距離は、所定条件に合致するものと判定された減速目標位置と、現在位置検出処理部10から出力された自車両の現在位置と、地図情報DB82aの地図情報から、求めることができる。
【0040】
次いで、案内制御部81dは、これら回生上限操作量と安全減速必要操作量を表示すべき所定の表示タイミングが到来したか否かを判定する(SA4)。この表示タイミングの特定方法は任意であり、これら回生上限操作量と安全減速必要操作量を自車両の運転者に報知することが有効となり得る任意のタイミングを設定することができる。例えば、アクセルペダルがオフになった場合であり、かつ、減速目標位置が自車両の現在位置から上述の慣性到達距離以内に入った場合には、安全減速のために何らかのブレーキ操作が必要な状態になったものとし、表示タイミングが到来したものと判定する。ここで、アクセルペダルがオフになったか否かは、アクセル機構30から出力されるアクセルペダル現在操作量に基づいて判定することができる。
【0041】
表示タイミングが到来したと判定した場合(SA4、Yes)、案内制御部81dは、SA2で算出した回生上限操作量と、SA3で算出した安全減速必要操作量を、所定の表示形式でディスプレイ60に表示する(SA5)。この表示例については後述する。
【0042】
次いで、案内制御部81dは、ブレーキペダルが操作されたかを判定する(SA6)。すなわち、現在操作量取得部81cは、ブレーキ機構40からブレーキペダルの現在操作量を取得しており、案内制御部81dは、当該取得された現在操作量に基づいて、ブレーキペダルが操作されたかを判定する。そして、ブレーキペダルが操作された場合(SA6、Yes)、案内制御部81dは、現在操作量取得部81cにて取得された現在操作量を、SA5で表示している回生上限操作量及び安全減速必要操作量と共に、所定の表示形式でディスプレイ60に表示する(SA7)。この表示例については後述する。
【0043】
その後、制御部81は、自車両がSA1の減速目標位置に到達したか否かを監視し(SA8)、到達していない場合には(SA8、No)、SA2に移行する。以降同様に、自車両がSA1の減速目標位置に到達する迄、SA2からSA8を繰り返し行うことで、回生上限操作量、安全減速必要操作量、及び現在操作量を常に最新の値に更新し、ディスプレイ60に表示する。そして、自車両がSA1の減速目標位置に到達した場合には(SA8、Yes)、SA1に移行して、自車両の前方に、次の減速目標位置が有るか否かを継続的に監視する(SA1)。そして、次の減速目標位置が有る場合には(SA1、Yes)、当該次の減速目標位置に対して、再びSA2からSA8の処理が実行される。以降同様に、各減速目標位置に対して、SA2からSA8の処理が実行される。
【0044】
(表示例)
次に、図2のSA5及びSA7における表示例について説明する。図3及び図4は、回生上限操作量、安全減速必要操作量、又は現在操作量のディスプレイ60における表示例を示す図である。
【0045】
これら表示例の個別的な内容を説明する前に、各表示例に共通する表示形式について説明する。図3及び図4に示すように、ディスプレイ60(図3及び図4では図示省略)には、ブレーキペダルの操作量を表示する表示領域90が表示されている。この表示領域90は、全体として半円状の領域であり、底辺を曲率中心を中心として左右均等に分割した場合における左右いずれか一方の辺(ここでは図示左側の辺)が、ブレーキペダルの非操作状態に対応する位置(以下「非操作位置」)P1を示し、当該左右いずれか他方の辺(ここでは図示右側の辺)が、ブレーキペダルの上限操作量(ブレーキぺダルを最も踏み込んだ状態における操作量であり、車両毎の機構によって定まる操作量)に対応する位置(以下「上限操作位置」)P2を示しており、これら非操作位置P1から上限操作位置P2に至る領域91がブレーキペダルの操作量に対応する領域を示している。
【0046】
そして、この領域91に、現在操作量を表示する現在操作量表示部92、回生上限操作量を表示する回生上限操作量表示部93、及び安全減速必要操作量を表示する安全減速必要操作量表示部(減速必要操作量表示部)94が表示される。これら各量は、上限操作位置P2にて示されるブレーキペダルの上限操作量を基準として、この上限操作量への到達度合に応じた位置で表示される。これら各量の具体的な表示形態は任意であるが、ここでは、曲率中心を中心として回転する表示指針として表示している。この表示指針は、相互に区別容易に表示することが好ましく、例えば、現在操作量表示部92を「黒色」の表示指針、回生上限操作量表示部93を「緑色」の表示指針、安全減速必要操作量表示部94を「赤色」の表示指針として表示する。
【0047】
図3(a)は、図2のSA4において表示タイミングが到来したと判定された時点における表示例を示す。この時点では、現在車速が比較的大きいため、回生上限操作量が小さいことから、回生上限操作量表示部93が非操作位置P1に比較的近い位置に表示されている。この回生上限操作量表示部93を見ることにより、運転者は、非操作位置P1から回生上限操作量表示部93に至る領域として示されるブレーキペダルの操作量の範囲内に入るように、ブレーキペダルを操作することで、自車両の制動エネルギーを100%回収できることが分かる。また、この時点では、減速目標位置が自車両の現在位置から慣性到達距離以内に入った直後であり、安全減速必要操作量はほぼゼロであるため、安全減速必要操作量表示部94は非操作位置P1とほぼ同じ位置に表示されている。この安全減速必要操作量表示部94を見ることにより、運転者は、非操作位置P1から安全減速必要操作量表示部94に至る領域を上回る領域(安全減速必要操作量表示部94から上限操作位置P2に至る領域)として示されるブレーキペダルの操作量の範囲内に入るように、ブレーキペダルを操作することで、目標減速Gで継続的に減速を行うことによって減速目標位置では減速目標速度に減速できること(すなわち、安全に減速できること)が分かる。なお、この時点では、運転者がブレーキペダルを操作していないため、現在操作量表示部92は表示されていない。また、このように回生上限操作量表示部93と安全減速必要操作量表示部94を同一の表示領域90において同一の基準で表示することで、運転者は、回生上限操作量と安全減速必要操作量の相対的な関係を把握することができる。すなわち、この図3(a)の表示例では、回生上限操作量が安全減速必要操作量より大きいことから、運転者は、これら回生上限操作量表示部93と安全減速必要操作量表示部94の間の領域として示されるブレーキペダルの操作量の範囲内に入るように、ブレーキペダルを操作することで、自車両の制動エネルギーを100%回収でき、かつ、目標減速Gで継続的に減速を行うことで減速目標位置において減速目標速度に減速できることが可能であることが分かる。
【0048】
次の図3(b)の表示例は、図3(a)の場合よりも自車両が減速目標位置に近づいた時点であって、現在速度が図3(a)の場合より小さく、運転者が未だブレーキペダルを操作していない時点における表示例を示す。この時点では、図3(a)の時点に比べて、現在車速が小さくなった分、回生上限操作量が大きくなっていることから、回生上限操作量表示部93が上限操作位置P2に少し近づいた位置に表示されている。また、この時点では、図3(a)の時点に比べて、安全減速必要操作量が大きくなっていることから、安全減速必要操作量表示部94が上限操作位置P2に少し近づいた位置に表示されている。なお、この時点では、運転者が未だブレーキペダルを操作していないため、現在操作量表示部92は表示されていない。
【0049】
次の図3(c)の表示例は、図3(b)の場合よりも自車両が減速目標位置に近づいた時点であって、現在速度が図3(b)の場合より小さく、図2のSA6においてブレーキペダル操作有りと判定された時点における表示例を示す。この時点では、図3(b)の時点に比べて、さらに現在車速が小さくなった分、回生上限操作量が大きくなっていることから、回生上限操作量表示部93が上限操作位置P2に少し近づいた位置に表示されている。また、この時点では、図3(b)の時点に比べて、安全減速必要操作量が大きくなっていることから、安全減速必要操作量表示部94が上限操作位置P2に少し近づいた位置に表示されている。さらに、この時点では、運転者がブレーキペダルを操作しているため、現在操作量表示部92が表示されている。この現在操作量表示部92を見ることで、運転者は、回生上限操作量や安全減速必要操作量に対する現在操作量を相対的に把握することが可能となる。
【0050】
次の図4(a)の表示例は、図3(c)の場合よりも自車両が減速目標位置に近づいた時点であって、現在速度が図3(c)の場合より小さく、減速目標位置に未だ到達していない時点における表示例を示す。この時点では、図3(c)の時点に比べて、さらに現在車速が小さくなった分、回生上限操作量が大きくなっていることから、回生上限操作量表示部93が上限操作位置P2に少し近づいた位置に表示されている。また、この時点では、図3(c)の時点に比べて、安全減速必要操作量が大きくなっていることから、安全減速必要操作量表示部94が上限操作位置P2に少し近づいた位置に表示されている。さらに、この時点では、運転者がブレーキペダルを操作しているため、この現在操作量表示部92が表示されている。
【0051】
次の図4(b)の表示例は、図4(a)の場合よりも自車両が減速目標位置に近づいた時点であって、現在速度が図4(a)の場合より小さく、減速目標位置に到達する直前の時点であり、運転者が適切なブレーキ操作を行った時点における表示例を示す。この時点では、図4(a)の時点に比べて、現在車速が小さくなり、回生上限操作量が大きくなっていることから、回生上限操作量表示部93が上限操作位置P2に少し近づいた位置に表示されている。また、この時点では、図4(a)の時点に比べて、安全減速必要操作量が大きくなっていることから、安全減速必要操作量表示部94が上限操作位置P2に少し近づいた位置に表示されている。特に、運転者が適切なブレーキ操作を行ったことから、回生上限操作量、安全減速必要操作量、及び現在操作量が相互に一致しており、回生上限操作量表示部93、安全減速必要操作量表示部94、及び現在操作量表示部92が相互に同位置に表示されている。このことから、運転者は、自車両の制動エネルギーを100%回収できるブレーキペダルの操作量と、目標減速Gで継続的に減速を行うことで減速目標位置において減速目標速度に減速できるブレーキペダルの操作量とが相互に一致しており、かつ、この操作量に合致する操作量でブレーキペダルを操作していること(すなわち、適切なブレーキ操作を行っていること)が分かる。
【0052】
次の図4(c)の表示例は、図4(a)の場合よりも自車両が減速目標位置に近づいた時点であって、現在速度が図4(a)の場合より小さく、減速目標位置に到達する直前の時点であり、運転者のブレーキ操作が図4(b)の場合に比べて遅れた時点における表示例を示す。この時点では、図4(b)の時点に比べて、ブレーキ操作が遅れたことで現在車速が大きくなっており、回生上限操作量が小さくなっていることから、回生上限操作量表示部93が非操作位置P1に少し近づいた位置に表示されている。また、この時点では、図4(b)の時点に比べて、安全減速必要操作量が大きくなっていることから、安全減速必要操作量表示部94が上限操作位置P2に少し近づいた位置に表示されている。特に、ブレーキ操作が遅れたことで、減速目標位置において減速目標速度に減速するためには、回生ブレーキのみでは不足になったことから、安全減速必要操作量が回生上限操作量を上回り、安全減速必要操作量表示部94は回生上限操作量表示部93よりも上限操作位置P2に近い位置に表示されている。
【0053】
(効果)
このように本実施の形態によれば、回生上限操作量と安全減速必要操作量を算出し、これら回生上限操作量と安全減速必要操作量に基づいてブレーキペダルの操作量に関する案内制御を行うので、回生エネルギーを回収可能なブレーキペダルの操作量と、車両の現在速度を減速目標位置において減速目標速度とするために必要になるブレーキペダルの操作量に基づいた案内を、運転者に案内することができる。したがって、運転者は、これら回生上限操作量や減速必要操作量を把握した上でブレーキ操作を行うことができ、制動エネルギーを効率的に回収することに加えて、安全性を考慮した減速を行うことが容易となる。
【0054】
また、回生上限操作量と減速必要操作量に加えて現在操作量を算出し、これら回生上限操作量と、減速必要操作量と、現在操作量とに基づいて、ブレーキペダルの操作量に関する案内制御を行うので、回生上限操作量と減速必要操作量に加えて、現在操作量に基づいた案内を、運転者に案内することができる。したがって、運転者は、回生上限操作量と減速必要操作量に加えて、現在のブレーキペダルの操作量を考慮したブレーキ操作を行うことができ、制動エネルギーを効率的に回収することに加えて、安全性を考慮した減速を行うことが、一層容易となる。
【0055】
また、ブレーキペダルの上限操作量を基準とした案内制御を行うので、運転者は、回生上限操作量、減速必要操作量、あるいは現在操作量の相互の相対的な関係を、ブレーキペダルの上限操作量を基準として考慮することが可能となる。
【0056】
また、ブレーキペダルの非操作状態に対応する位置から上限操作量に対応する位置に至る表示領域90の中に、現在操作量表示部92、回生上限操作量表示部93、及び減速必要操作量表示部94を表示する案内制御を行うので、運転者は、回生上限操作量、減速必要操作量、あるいは現在操作量の相互の相対的な関係を、ブレーキペダルの非操作状態や上限操作量を基準として把握することが可能となると共に、同一の表示領域に表示された回生上限操作量、減速必要操作量、あるいは現在操作量を目視することでこれら相互の相対的な関係を容易に把握することが可能となる。
【0057】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0058】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、上述の内容に限定されるものではなく、発明の実施環境や構成の細部に応じて異なる可能性があり、上述した課題の一部のみを解決したり、上述した効果の一部のみを奏することがある。
【0059】
(自車両の構成について)
上記実施の形態では、自車両がハイブリッド自動車である場合について説明したが、電気モータのみを動力源とする電気自動車である場合においても、本発明を同様に適用することが可能である。
【0060】
(減速目標位置について)
減速目標位置が有るか否かの判定は、地図情報DB82aに格納された地図情報に基づいて判定するものとしたが、例えば、自車両の前方をカメラ等にて撮像して画像解析することで、自車両の前方における地物の有無やその種類を判定し、所定種類の地物(例えば、一時停止標識)があるものと判定された場合に、減速目標位置があると判定してもよい。
【0061】
(回生上限操作量、減速必要操作量、現在操作量の算出方法について)
回生上限操作量、安全減速必要操作量、あるいは現在操作量は、上記した算出方法以外の方法で算出することもできる。例えば、現在位置から減速目標位置に至る路面の勾配に関する勾配情報を地図情報に含めておき、必要に応じて地図情報から勾配情報を呼び出して、これら各量の算出に用いてもよい。また、回生上限操作量と安全減速必要操作量のみに基づいて案内制御を行うこととし、現在操作量は省略してもよい。この場合においても、例えば図3の(a)(b)のような表示を行うことができるので、運転者は、これら回生上限操作量や安全減速必要操作量を考慮した上でブレーキ操作を行うことができ、制動エネルギーを効率的に回収することに加えて、安全性を考慮した減速を行うことが容易となる。
【0062】
(減速必要操作量について)
減速必要操作量に基づく案内としては、さらに快適減速必要操作量を考慮した案内を行ってもよい。ここで、「快適減速必要操作量」とは、現在位置から減速目標位置に至るまで、一定の減速Gで減速を行う場合の減速必要操作量であって、自車両の挙動が安定する減速Gであり、かつ、運転者にとって快適な減速G(以下「快適減速G」。例えば、0.2Gの固定値)で減速を行う場合の減速必要操作量である。この快適減速必要操作量を考慮した案内制御の方法は任意であるが、例えば、図3、4の表示例において、安全減速必要操作量表示部94を表示している場合において、安全減速必要操作量=快適減速必要操作量となった場合に、安全減速必要操作量表示部94を強調表示してもよい。この場合には、運転者は、さらに快適減速必要操作量を把握した上でブレーキ操作を行うことができ、制動エネルギーを効率的に回収することや安全性を考慮することに加えて、さらに快適性を考慮した減速を行うことが容易となる。
【0063】
(安全減速Gについて)
安全減速Gとしては、実施の形態で説明したものとは異なる減速Gを適用することもできる。例えば、最終的には快適減速Gで減速を行う(快適減速必要操作量でブレーキ操作を行う)ことを前提とする場合において、現在位置から減速目標位置に至るまで一定の減速を行って減速目標速度とするために必要な減速Gが、快適減速Gを所定減速G以上超えている場合を想定する。この場合には、自車両が現在位置から所定距離先の位置(以下「中間位置」)に至るまでは、自車両を中間的な減速G(以下「中間減速G」)で減速し、中間位置から減速目標位置に至るまでは、快適減速Gで減速を行うようにしてもよい。この中間減速Gとしては、上述した安全減速Gを適用することができる。また、所定距離としては、自車両の現在速度と、自車両が現在位置において取るべき速度(減速目標位置まで快適減速Gで減速するための減速曲線に基づいて定められる速度)に基づいて、算出される距離を適用することができる。すなわち、安全減速必要操作量算出部81bは、現在位置から中間位置まで安全減速Gで減速する場合の減速必要操作量を、車両の現在速度、自車両が現在位置において取るべき速度、及び中間位置までの距離に基づいて算定し、案内制御部81dは、当該減速必要操作量を運転者に案内し、中間位置に到達した場合には、安全減速必要操作量算出部81bは、中間位置から減速目標位置まで快適減速Gで減速を行う場合の快適減速必要操作量を、中間位置における自車両の現在速度、減速目標速度、及び減速目標位置までの距離に基づいて算定して、案内制御部81dは、当該快適減速必要操作量を運転者に案内するようにしてもよい。このように、目標とする減速Gとしては、ニーズに応じて異なる減速Gを適用したり、複数の減速Gを多段的に組み合わせてもよい。
【0064】
(現在操作量について)
また、実施の形態において、ブレーキペダルの操作量は、いわゆる遊び部分を除いた量として説明したが、遊び部分を含んだ量としてもよく、この場合には、遊び部分に対応するブレーキペダルの操作量を、遊び部分以外の部分に対応するブレーキペダルの操作量から区別可能となるように、運転者に案内することが好ましい。この案内例としては、例えば、図3、4の表示例において、ブレーキペダルの操作量に対応する領域91のうち、遊び部分のブレーキペダルの操作量に対応する領域のみを他の領域とは異なる色で表示することが考えられる。
【0065】
(算出タイミングについて)
回生上限操作量、安全減速必要操作量、快適減速必要操作量、あるいは現在操作量を算出するタイミングは、上記したタイミング以外のタイミングであってもよい。例えば、実施の形態では、回生上限操作量や安全減速必要操作量を、表示タイミングの到来を判定する前に算出しているが、表示タイミングが到来したと判定された後に算出するようにしてもよい。
【0066】
(表示タイミングについて)
回生上限操作量、安全減速必要操作量、快適減速必要操作量、あるいは現在操作量をディスプレイ60に表示するタイミングは、上記したタイミング以外のタイミングであってもよい。例えば、実施の形態では、回生上限操作量や安全減速必要操作量を表示するタイミングの一例として、アクセルペダルがオフになった場合であり、かつ、減速目標位置が自車両の現在位置から慣性到達距離以内に入った場合であると説明しているが、アクセルペダルがオフであるか否かに関わらず、減速目標位置が自車両の現在位置から慣性到達距離以内に入った場合に表示することとして、アクセルペダルをオフにすることを促してもよい。
【0067】
(支援内容について)
また、例えば、回生上限操作量、安全減速必要操作量、快適減速必要操作量、あるいは現在操作量を逐次出力することに変えて、あるいは、逐次出力と共に、これら各量が最終的に所定状態又は所定関係になった場合に当該最終的な状態になった旨を出力してもよい。例えば、安全減速必要操作量が、回生上限操作量を上回った時に、「回生ブレーキのみでの減速では安全な減速が出来ない」旨の案内を、ディスプレイ60に表示したり、スピーカ70から音声出力してもよい。
【0068】
(案内形態について)
回生上限操作量、安全減速必要操作量、快適減速必要操作量、あるいは現在操作量の案内形態としては、ディスプレイ60による表示に代えて、あるいはディスプレイ60による表示と共に、他の形態を用いてもよい。例えば、スピーカ70による出力を行ってもよい。このように出力を行う場合の例としては、各量が所定基準値以上になった場合に当該旨を報知する音や、これら各量の相対的な関係が所定関係になった場合に当該旨を報知する音、あるいは、各量の相対的な関係に基づいて運転者のブレーキ操作を支援する音を出力することが挙げられる。後者の具体例としては、図4(b)の状態になった時点で、「現在のペダル操作を維持してください」との合成音声を出力することや、図4(c)の状態になった時点で、ブレーキペダルの操作遅れを警報するためのブザー音を出力することが挙げられる。
【0069】
(表示形態について)
また、ディスプレイ60による表示を行う場合であっても、上記した表示形態以外の形態で表示してもよい。例えば、回生上限操作量表示部、安全減速必要操作量表示部、快適減速必要操作量表示部、あるいは現在操作量表示部を表示指針にて表示する場合において、これらを相互に区別可能とするため、表示指針の線種、太さ、あるいは点滅又は点灯の有無や間隔を変えてもよい。また、表示指針ではなく、表示面による表示を行うこともできる。このような表示面による表示例を図5(a)に示す。この図5(a)では、図3と同様な半円状の表示領域90において、回生上限操作量表示部93を、上限操作位置P2から連続する表示面(図示のハッチング面)、安全減速必要操作量表示部94を、非操作位置P1から連続する表示面(図示のハッチング面)、現在操作量を図3と同様の表示指針にて表示している。あるいは、表示領域を半円状以外の形状としてもよい。このような半円状以外の形状による表示例を図5(b)に示す。この図5(b)では、表示領域90は、全体として横長帯状の領域であり、左右いずれか一方の辺(ここでは図示左側の辺)が、プレーキペダルの非操作状態に対応する位置(以下「非操作位置」)P1を示し、当該左右いずれか他方の辺(ここでは図示右側の辺)が、プレーキペダルの上限操作量に対応する位置(以下「上限操作位置」)P2を示しており、これら非操作位置P1から上限操作位置P2に至る領域91がプレーキペダルの操作量に対応する領域を示している。そして、この領域91に、現在操作量表示部92、回生上限操作量表示部93、及び安全減速必要操作量表示部94が表示される。ここでは、これら各部を、表示領域90の長手方向に直交する方向に沿った表示指針として表示する。この表示指針は、相互に区別容易に表示することが好ましく、例えば、現在操作量表示部92を「黒色」の表示指針、回生上限操作量表示部93を「緑色」の表示指針、安全減速必要操作量表示部94を「青色」の表示指針として表示する。また、図3から図5のように表示を行う際の表示領域90は、ディスプレイ60に表示する場合の他、スピードメータの近傍やフロントガラスに投影等にて表示してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 案内システム
10 現在位置検出処理部
20 車速センサ
30 アクセル機構
40 ブレーキ機構
50 バッテリ制御部
60 ディスプレイ
70 スピーカ
80 案内装置
81 制御部
81a 回生上限操作量算出部
81b 安全減速必要操作量算出部
81c 現在操作量取得部
81d 案内制御部
82 データ記録部
82a 地図情報DB
90 表示領域
91 領域
92 現在操作量表示部
93 回生上限操作量表示部
94 安全減速必要操作量表示部
P1 非操作位置
P2 上限操作位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦ブレーキと回生ブレーキを備える車両において、ブレーキペダルの操作量に関する案内を行う案内装置であって、
前記回生ブレーキのみが作動する前記ブレーキペダルの操作量の上限値である回生上限操作量を、前記車両の現在速度に基づいて算出する回生上限操作量算出手段と、
前記車両の現在速度を減速目標位置において減速目標速度とするために必要になる前記ブレーキペダルの操作量である減速必要操作量を、車両の現在速度、前記減速目標速度、及び前記減速目標位置までの距離に基づいて算出する減速必要操作量算出手段と、
前記回生上限操作量算出手段にて算出された回生上限操作量と、前記減速必要操作量算出手段にて算出された減速必要操作量とに基づいて、前記ブレーキペダルの操作量に関する案内制御を行う案内制御手段と、
を備える案内装置。
【請求項2】
前記ブレーキペダルの現在の操作量である現在操作量を取得する現在操作量取得手段を備え、
前記案内制御手段は、前記回生上限操作量算出手段にて算出された回生上限操作量と、前記減速必要操作量算出手段にて算出された減速必要操作量と、前記現在操作量取得手段にて取得された現在操作量とに基づいて、前記ブレーキペダルの操作量に関する案内制御を行う、
請求項1に記載の案内装置。
【請求項3】
前記案内制御手段は、前記ブレーキペダルの上限操作量を基準とした案内制御を行う、
請求項1又は2に記載の案内装置。
【請求項4】
前記ブレーキペダルの現在の操作量である現在操作量を取得する現在操作量取得手段を備え、
前記案内制御手段は、前記ブレーキペダルの操作量を表示する表示領域であって、当該ブレーキペダルの非操作状態に対応する位置から前記上限操作量に対応する位置に至る表示領域の中に、前記現在操作量取得手段にて取得された現在操作量を表示する現在操作量表示部、前記回生上限操作量算出手段にて算出された回生上限操作量を表示する回生上限操作量表示部、及び前記減速必要操作量算出手段にて算出された減速必要操作量を表示する減速必要操作量表示部を表示する案内制御を行う、
請求項3に記載の案内装置。
【請求項5】
摩擦ブレーキと回生ブレーキを備える車両において、ブレーキペダルの操作量に関する案内を行う案内方法であって、
前記回生ブレーキのみが作動する前記ブレーキペダルの操作量の上限値である回生上限操作量を、前記車両の現在速度に基づいて算出する回生上限操作量算出ステップと、
前記車両の現在速度を減速目標位置において減速目標速度とするために必要になる前記ブレーキペダルの操作量である減速必要操作量を、車両の現在速度、前記減速目標速度、及び前記減速目標位置までの距離に基づいて算出する減速必要操作量算出ステップと、
前記回生上限操作量算出ステップにて算出された回生上限操作量と、前記減速必要操作量算出ステップにて算出された減速必要操作量とに基づいて、前記ブレーキペダルの操作量に関する案内制御を行う案内制御ステップと、
を備える案内方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法をコンピュータに実行させる案内プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−24353(P2011−24353A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167783(P2009−167783)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】