機能素子、機能素子の製造方法、物理量センサー及び電子機器
【課題】製造効率の低下を抑制した機能素子、機能素子の製造方法、物理量センサー及び電子機器を提供する。
【解決手段】第1基板12と、前記第1基板12上に設けられ、且つ、素子部を有する第2基板50と、を備え、前記第1基板12と前記第2基板50との間には内部空間68が設けられ、前記第1基板12および前記第2基板50の互いに対向する面の少なくとも一方には、前記内部空間68と外部とを連通する排気溝24が設けられていることを特徴とする。
【解決手段】第1基板12と、前記第1基板12上に設けられ、且つ、素子部を有する第2基板50と、を備え、前記第1基板12と前記第2基板50との間には内部空間68が設けられ、前記第1基板12および前記第2基板50の互いに対向する面の少なくとも一方には、前記内部空間68と外部とを連通する排気溝24が設けられていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能素子、機能素子の製造方法、物理量センサー及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機能素子としては、固定配置された固定電極と、固定電極に対して間隔を隔てて対向するとともに変位可能に設けられた可動電極とを有し、固定電極と可動電極との間の静電容量に基づいて、加速度、角速度等の物理量を検出する物理量センサー素子が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1、特許文献2の物理量センサー素子は、差動方式で容量検出できるように各々の櫛歯電極部が絶縁材料を充填した溝により電気的に絶縁されつつ機械的には繋がっている構造を有している。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の物理量センサー素子は、単層の半導体基板、またはSOI基板を用い、固定電極及び可動電極が、それぞれ櫛歯状をなすように並ぶ複数の電極指を有し、互いにかみ合うように配置されている。
【0005】
また、特許文献1に記載の物理量センサー素子では、可動電極の隣り合う2つの電極指間に、固定電極の2つの電極指が臨むように設けられているとともに、当該固定電極の2つの電極指が互いに電気的に絶縁されている。これにより、固定電極の当該2つの電極指の一方の電極指の他方の電極指とそれに対向する可動電極の電極指との間の静電容量とを別々に測定し、それらの測定結果に基づいて(いわゆる差動検出方式を用いて)、物理量を検出することができる。
【0006】
さらに特許文献1、特許文献2においては、単層の半導体基板をドライエッチング等で可動構造体の下に空洞を加工することで物理量センサー素子を形成している。このような手法を用いると単層基板だけで絶縁分離構造を含むセンサー構造が形成でき、低コストが実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4238437号公報
【特許文献2】特表2002−510139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、特許文献2においては、単層の半導体基板において絶縁分離した可動構造体をドライエッチング等で浮かせる構成となるため、可動構造の厚みや形状に制約があり、高感度化や耐衝撃性の点で問題があった。
【0009】
特に、特許文献1に記載の物理量センサー素子では、固定電極及び可動電極の各々が導通しないように電極指を個別に絶縁分離する必要があり、製造効率が低下するという問題がある。さらにSOI基板は一般的に高価であり、製品コストが大きくなる問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題点に着目し、製造効率の低下を抑制した機能素子、機能素子の製造方法、物理量センサー及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0012】
[適用例1]第1基板と、前記第1基板上に設けられ、且つ、素子部を有する第2基板と、を備え、前記第1基板と前記第2基板との間には内部空間が設けられ、前記第1基板および前記第2基板の互いに対向する面の少なくとも一方には、前記内部空間と外部とを連通する溝が設けられていることを特徴とする機能素子。
【0013】
上記構成において、例えば第1基板に第2基板を積層したのち第2基板に素子部を形成する場合、第1基板と第2基板の接合時に接合によるガスが発生する場合があり、これが内部空間に蓄えられ膨張し、素子部の形成に悪影響を及ぼす虞がある。しかし、積層する前に第1基板および第2基板の少なくとも一方の面に外部と内部空間とを連通する溝を形成しておくことにより、積層時において前記ガスが内部空間から通気孔を通って外部に排出させることができるので、素子部の製造の歩留を高めることができる。また、通気用の孔を独立に形成する必要は無く、基板の表面に溝を形成しておき積層することで容易に通気用の孔を形成することができる。
【0014】
[適用例2]前記第1基板上には、前記第2基板を覆うようにリッドが接着部材で接合され、前記溝は、前記接着部材により封止されたことを特徴とする適用例1に記載の機能素子。
上記構成により、リッドで第2基板を封止しつつ、溝をリッドの接着部材で封止することができるので、製造効率が格段に向上する。
【0015】
[適用例3]前記溝には、前記素子部の配線が設けられたことを特徴とする適用例1または2に記載の機能素子。
上記構成により、溝を内部空間のガス抜きの用途だけでなく素子部の配線経路としても利用することができる。
【0016】
[適用例4]前記第1基板は、ガラスで形成され、前記第2基板は、半導体材料で形成され、前記第1基板と前記第2基板とは、陽極接合により接合されたことを特徴とする適用例1乃至3のいずれか1例に記載の機能素子。
上記構成により、接着剤を用いることなく第1基板と第2基板とを陽極接合により強固に接続することができる。また陽極接合時にガスが発生して内部空間に放出されるが、通気孔によりガスを外部に排出して可動部の製造の歩留を高めることができる。
【0017】
[適用例5]前記素子部は、可動部と、前記可動部を支持する支持部と、前記第1基板側に接続する固定電極指と、を有し、前記可動部は、前記固定電極指に対向する可動電極指と、前記可動電極指および前記支持部を接続した可撓部とを、有することを特徴とする適用例1乃至4のいずれか1例に記載の機能素子。
上記構成により、例えば、外力を受けたときに、可動電極指と固定電極指との間の静電容量は、可動電極指の変位により変化する。よって、この静電容量の変化により加速度等の物理量を検知することができ、製造効率の優れたセンサーを実現できる。
【0018】
[適用例6]第1基板と第2基板とを用意し、前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方に表面に溝を形成する工程と、前記第1基板上に前記第2基板を接合し、前記第1基板と前記第2基板との間に内部空間を形成し、前記溝により前記内部空間を通気させる工程と、前記第2基板に素子部を形成する工程と、前記第2基板を覆うようにリッドを前記第1基板上に接着部材で接合すると共に、前記接着部材により前記溝を封止する工程と、を備えたことを特徴とする機能素子の製造方法。
上記方法により、第1基板と第2基板の積層時において前記ガスが内部空間から溝により形成された通気孔を通って外部に排出させることができるので、素子部の製造の歩留を高めることができる。
【0019】
[適用例7]第1基板と第2基板とを用意し、前記第2基板に貫通孔を形成する工程と、前記第1基板上に前記第2基板を接合し、前記第1基板と前記第2基板との間に内部空間を形成し、前記貫通孔により前記内部空間を通気させる工程と、前記第2基板の前記貫通孔を含む領域をエッチングで抜いて素子部を形成する工程と、を備えたことを特徴とする機能素子の製造方法。
【0020】
上記方法により、積層時において前記ガスが内部空間から貫通孔を通って外部に排出させることができるので、素子部の製造の歩留を高めることができる。さらに、第2基板のエッチングを行う領域に内部空間に貫通する貫通孔を形成するので、素子部を形成するときに貫通孔を消失させることができ、貫通孔を封止する必要がないので、製造効率が向上する。
【0021】
[適用例8]適用例1乃至5のいずれか1例に記載の機能素子を有することを特徴とする物理量センサー。
上記構成により、製造効率が優れた物理量センサーを提供できる。
【0022】
[適用例9]適用例1乃至8のいずれか1例に記載の機能素子を有することを特徴とする電子機器。
上記構成により、製造効率が優れた電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係る機能素子の平面図である。
【図2】図1の一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図1のB−B線断面図である。
【図5】図1のC−C線断面図である。
【図6】図1のD−D線断面図である。
【図7】第1実施形態の機能素子の製造工程を示す。ここで図7(a)乃至図7(e)において、左側は図5の一点鎖線で囲まれた部分の製造工程を示し、中央は図3の一点鎖線で囲まれた部分の製造工程を示し、右側は図4の一点鎖線で囲まれた部分の製造工程を示す。
【図8】第2実施形態に係る機能素子を示す図である。
【図9】第3実施形態に係る機能素子を示し、図9(a)は部分平面図、図9(b)は部分側面図である。
【図10】第4実施形態に係る機能素子を示し、図10(a)は第2基板に可動部等を形成する前の部分平面図、図10(b)は図10(a)のA−A線断面図、図10(c)は第2基板に可動部等を形成した後の部分平面図である。
【図11】第5実施形態に係る機能素子を示す図である。
【図12】第6実施形態に係る機能素子を示し、図12(a)は平面図、図12(b)は側面から見た模式図である。
【図13】第7実施形態に係る機能素子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0025】
図1乃至図6に第1実施形態に係る機能素子を示す。ここで図1は第1実施形態に係る機能素子の平面図、図2は図1の一点鎖線で囲まれた部分の拡大図、図3は図1のA−A線断面図、図4は図1のB−B線断面図、図5は図1のC−C線断面図、図6は図1のD−D線断面図である。
【0026】
本実施形態の機能素子10は、絶縁体となる第1基板12上に第2基板50を積層し、第2基板50をリッド66で封止した構成を有している。
例えば、第1基板12はガラス等の絶縁体で形成されており、第2基板50は、シリコン等の半導体基板で形成されている。第1基板12の第2基板50側には凹部20と、第1の溝となる排気溝24、第2の溝となる第1配線溝26、第2配線溝28が形成されている。さらに第1基板12には、第1配線溝26、第2配線溝28とは別に第3配線溝30が形成されている。
【0027】
また第1基板12は、第2基板50と接合する接合部14と、接合部14の周囲を囲む外周部16と、外周部16に接続する端子部18とを有する。接合部14は平面視して第2基板50と重なる領域であり、外周部16は接合部14の周囲であって平面視してリッド66と重なる領域である。
【0028】
凹部20は、後述の素子部を構成する可動部54と第1基板12との干渉を回避するためのものである。よって凹部は接合部14内であって可動部54と対向する位置に形成される。また、第1基板12に第2基板50を積層すると、この凹部20により、第1基板12を内壁の一部とする内部空間68が形成される。
【0029】
排気溝24は、第1基板12を第2基板50に積層(接着)する際に発生するガスを外部に排出するためのものである。排気溝24は凹部20の内壁の一部を切り欠くとともに、接合部14及び外周部16を経由して外部に連通される。よってこの排気溝24により内部空間68から接合部14の外部に連通する排気孔70が形成される。
【0030】
第1配線溝26は、第2基板50と電気的に接続する第1配線32を配置するための溝であり、第2配線溝28は、第2基板50と電気的に接続する第1配線溝26とは別の第2配線38を配置するための溝である。第1配線溝26、第2配線溝28は、第1基板12の接合部14であって凹部20の外側となる領域から外周部16を経由して端子部18にわたり、再び外周部16及び接合部14に戻るU字型に形成されている。そして第2配線溝28は第1配線溝26の内側に沿って形成されている。また接合部14において第1配線溝26、第2配線溝28は、第2基板50を用いて構成される後述の固定電極指(第1固定電極指62、第2固定電極指64)の下を通過する。なお、第1配線溝26、第2配線溝28により、第2基板50を用いて構成される後述の支持部52との間に隙間が形成され、各配線溝を後述のように絶縁材料等で埋めない限り接合部14にある各配線溝は排気孔72として機能する。
【0031】
第3配線溝30は、第2基板50と電気的に接続するための第3配線44を配置するための溝である。第3配線溝30は、支持部52の下を通り外周部16を経由して端子部18に引き出されている。
【0032】
第1基板12の構成材料としては、具体的には高抵抗なシリコン材料、ガラス材料を用いるのが好ましく、特に後述の第2基板がシリコン材料を主原料として構成されている場合、アルカリ金属イオン(可動イオン)を含むガラス材料(例えば、パイレックス(登録商標)のような硼珪酸ガラス)を用いるのが好ましい。これにより。第2基板50がシリコンを主原料として構成されている場合、第1基板12と第2基板50とを陽極接合することができる。この陽極接合により、接着剤を用いることなく第1基板12と第2基板50とを強固に接続することができる。
【0033】
また第1基板12の構成材料は、第2基板50の構成材料の熱膨張係数差ができるだけ小さいことが好ましく、具体的には、第1基板12の構成材料と第2基板50の構成材料(及びリッドの構成材料)との熱膨張係数差が3ppm/℃以下であることが好ましい。これにより、第1基板12と第2基板50との接合時に高温下に晒されても、第1基板12と第2基板50との間の残留応力を低減することができる。
【0034】
第1配線32は、後述の素子部の配線として第1配線溝26内に形成されるとともに、固定電極指を構成する第1固定電極指62と電気的に接続するものである。また第2配線38は、後述の素子部の配線として第2配線溝28内に形成されるとともに、固定電極指を構成する第2固定電極指64と電気的に接続するものである。よって、第1配線32の第1固定電極指62に対向する位置には、突起となる第1バンプ34が設けられ、第2配線38の第2固定電極指64に対向する位置には、突起となる第2バンプ40が設けられている。また第1配線32の端子部18側には、第1端子電極36が設けられ、第2配線38の端子部18側には、第2端子電極42が設けられている。
【0035】
第3配線44は、後述の素子部の配線として第3配線溝30内に形成されるとともに、第2基板50を用いて構成される後述の支持部52(可動電極指58)に電気的に接続するものである。よって第3配線44の支持部52に対向する位置には、突起となる第3バンプ46が設けられ、第3配線44の端子部18側には第3端子電極48が設けられている。
【0036】
なお、第1配線32、第2配線38、第3配線44の厚み寸法は、それぞれ第1配線溝26、第2配線溝28、第3配線溝30の深さ寸法より小さくなるように形成されている。また第1バンプ34、第2バンプ40、第3バンプ46はそれぞれ第1配線溝26、第2配線溝28、第3配線溝30から第1基板12の主面上にはみ出るように形成される。そして各バンプは第1基板12に第2基板50を積層する際に押しつぶされる。その結果、第1配線32は、後述の第1固定電極指62と電気的・機械的に接続され、第2配線38は後述の第2固定電極指64と電気的・機械的に接続され、第3配線44は後述の支持部52(可動電極指58)と電気的・機械的に接続する。
【0037】
また第1配線溝26、第2配線溝28、第3配線溝30は、それぞれ第1バンプ34、第1端子電極36、第2バンプ40、第2端子電極42、第3バンプ46、第3端子電極48を露出させた状態で絶縁性の樹脂材料等で埋め込んでもよい。
【0038】
第1配線32、第2配線38、第3配線44の構成材料としては、それぞれ導電性を有するものであれば、特に限定されず、各種電極材料を用いることができるが、例えば、ITO(Indim Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In3O3、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物(透明電極材料)、Au、Pt、Ag、Cu、Alまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
中でも、前述の各配線の構成材料としては、透明電極材料(特にITO)を用いることが好適である。各配線がそれぞれ透明導電材料で構成されていると、第1基板12が透明であった場合、第2基板50を構成する固定電極指(第1固定電極指62、第2固定電極指64)の面上に存在する異物等を第1基板12の固定電極指とは反対の面から容易に視認することができ、機能素子10の検査を容易に行うことができる。
【0040】
また第1端子電極36、第2端子電極42、第3端子電極48の構成材料としては、前述した各配線と同様に導電性を有するものであれば、特に限定されず各種電極材料を用いることができる。
【0041】
さらに、第1バンプ34、第2バンプ40、第3バンプ46の構成材料としては、それぞれ、導電性を有するものであれば、特に限定されず、各種電極材料を用いることができるが、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Al等の金属単体、またはこれらを含む合金の金属が好適である。このような金属を用いて各バンプを構成することにより、前述の各配線と固定電極指(第1固定電極指62、第2固定電極指64)、可動電極指58との間の接点抵抗を小さくすることができる。
【0042】
第2基板50は、機能素子10において加速度等の物理量を検知するものである。第2基板50は、支持部52、可動部54、第1固定電極指62、第2固定電極指64を含む素子部を有する。ここで第2基板50は導電性を有するものを用いるのが好ましく、支持部52と可動部54は電気的に接続した状態となっている。一方、第1固定電極指62、第2固定電極指64は、支持部52及び可動部54から空間的に分離され、電気的に絶縁されている。よって、第2基板50は、支持部52、可動部54、第1固定電極指62、第2固定電極指64との間に空洞部74を有する。
【0043】
支持部52は、第1基板12と接合するとともに可動部54を支持するものである。また支持部は第3バンプ接続することにより第3配線、第3端子電極と電気的に接続する。また支持部52は、第1基板12に第2基板50を積層することにより排気溝24との間に隙間を形成する。これにより内部空間68から第1基板12の接合部14の外部に連通する排気孔70が形成される。
【0044】
可動部54は、図1中の矢印の方向に変位するものである。可動部54は第1基板12に形成された凹部20に対向する位置に形成され、可動部54は第1基板12との接合や干渉が回避され、外部から受ける外力(例えば加速度)により可動する。可動部54は図1中の矢印方向を長手方向とするビーム56と、ビーム56の長手方向の両端に接続され支持部52に接続される可撓部60と、ビーム56の長手方向に垂直な方向に延出するようにビーム56に一定の間隔で並べられた状態で接続する複数の可動電極指58を有する。可撓部60は、例えば可動部54全体が図中の矢印の方向に加速度を受けると、図中の矢印の方向に撓み変形する。よってビーム56はその加速度によりビーム56の長手方向に変位する。これによりビーム56に接続する可動電極指58もビーム56の長手方向に変位する。
【0045】
第1固定電極指62、第2固定電極指64は、上述のように支持部52及び可動部54と空間的に分離して形成されるとともに、固定電極指の長手方向の一端が第1基板12の接合部14の第1配線32、第2配線38に対向する位置に接合され、固定電極指の長手方向の他端が第1基板12の凹部20に対向する位置に配置される。また第1固定電極指62、第2固定電極指64は、図中の矢印の方向に交互に一定の間隔を置いて並べられて配置される。また第1固定電極指62と第2固定電極指64との間には、可動電極指58が図中の矢印の方向と垂直な方向から交差するように配置されている。よって可動電極指58は、図中の矢印の方向の一方の面において第1固定電極指62と一定の間隔を置いて対向し、他方の面において第2固定電極指64と一定の間隔を置いて対向することになる。したがって第1固定電極指62、第2固定電極指64の配列により櫛歯状の固定電極が形成され、この櫛歯状の固定電極に噛み込むように配置された可動電極指58により櫛歯状の可動電極が形成される。
【0046】
さらに第1固定電極指62は、第1バンプ34と電気的に接続され、第2固定電極指64は第2バンプ40と電気的に接続される。よって第1固定電極指62は第1端子電極36と電気的に接続され、第2固定電極指64は第2端子電極42に電気的に接続される。また可動電極指58はビーム56、可撓部60を経由して支持部52に電気的に接続する。したがって、可動電極指58は支持部52を経由して第3端子電極48に電気的に接続する。よって第3端子電極48に電圧を印加すると、可動電極指58と第1固定電極指62との間で静電容量が発生し、可動電極指58と第2固定電極指64との間で静電容量が発生する。よって第1端子電極36から可動電極指58と第1固定電極指62との間の静電容量の情報を得ることができ。第2端子電極42から可動電極指58と第2固定電極指64との間の静電容量の情報を得ることができる。
【0047】
ここで可動部54が図中の矢印の方向に変位した場合に、可動電極指58は、第1固定電極指62、第2固定電極指64のいずれか一方の側に偏ることになる。このとき可動電極指58が接近した方の固定電極指と可動電極指58との間の静電容量は増加し、可動電極指58が遠ざかった方の固定電極指と可動電極指58との間の静電容量は減少する。
【0048】
したがって、本実施形態においては、可動電極指58と第1固定電極指62との間の静電容量と、可動電極指58と第2固定電極指64との間の静電容量を独立に測定することができ、さらにその差分を測定することにより測定される物理量の大きさとその方向(図中の矢印の方向)を高精度に検出することができる。
【0049】
ここで、第2基板50の構成材料、すなわち支持部52、可動部54(ビーム56、可動電極指58、可撓部60)、第1固定電極指62、第2固定電極指64は、後述のようにエッチングにより形成することが好適である。そして上述のように第1基板12の可動部54に対向する位置には凹部20が形成されている。よって第2基板50において、可動部54と第1基板12との接合及び干渉を回避するための凹部を形成する必要はなく、各構成材料は予め用意された第2基板50の厚みを有した状態で形成することができる。よって各構成材料の厚みを簡単かつ高精度に揃えることができる。また各構成材料を厚く形成することができるので、機能素子10の耐衝撃性を高めることができる。さらに可動電極指58、第1固定電極指62、第2固定電極指64を厚く形成することができるので、電極間の静電容量を大きくすることができ、機能素子10の物理量検出の感度を高めることができる。さらに第1固定電極指62、第2固定電極指64は、支持部52及び可動部54から空間的に分離している。これにより各固定電極指と第1基板12との接合面積を十分なものとしつつ各固定電極指の小型化を図ることができる。そのため機能素子10の耐衝撃性の向上と小型化を両立させることができる。
【0050】
第2基板50の構成材料としては、前述したように静電容量の変化に基づく物理量の検出が可能であれば特に限定されないが、半導体が好ましく、具体的には、例えば、単結晶シリコン、ポリシリコン等のシリコン材料を用いることが好ましい。
【0051】
シリコンはエッチングにより高精度に加工することができる。そのため第2基板50を、シリコンを主原料として構成することにより、第2基板50の寸法精度を高め、その結果物理量センサー素子である機能素子10の高感度化を図ることができる。またシリコンは疲労が少ないため、機能素子10の耐久性を向上させることもできる。また第2基板50を構成するシリコン材料には、リン、ボロン等の不純物がドープされているのが好ましい、これにより第2基板50の導電性を優れたものとすることができる。
【0052】
リッド66は、キャップ型の形状でキャビティ部76を有し、例えばエポキシ系の接着剤等により第1基板12の外周部16に接合されるとともに、キャビティ部76に第2基板50を収納して第2基板50を封止する。その際、リッド66と第1基板12との間の接着部材としての接着層78が、排気溝24、第1配線溝26、第2配線溝28、第3配線溝30に入り込むことにより第2基板50が封止される。
【0053】
図7に第1実施形態の機能素子の製造工程を示す。ここで図7(a)乃至図7(f)において、左側は図5の一点鎖線で囲まれた部分の製造工程を示し、中央は図3の一点鎖線で囲まれた部分の製造工程を示し、右側は図4の一点鎖線で囲まれた部分の製造工程を示す。
【0054】
上記構成に係る機能素子10の製造工程について説明する。本実施形態においては、第1基板12の構成材料としてガラス材料を用い、第2基板50の構成材料としてシリコンを用いた場合について説明する。まず図7(a)に示すように、第1基板12において、凹部20、排気溝24、第1配線溝26(不図示)、第2配線溝28、第3配線溝30を形成する。これらの形成方法としては、特に限定されないが、例えばプラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、以下の各工程におけるエッチングにおいても、同様の方法を用いることができる。
【0055】
また上述したエッチングに際しては、例えば、フォトリソグラフィー法により形成されたマスクを好適に用いることができる。また、マスク形成、エッチング、マスク除去を複数回繰り返し、凹部20、排気溝24、第1配線溝26、第2配線溝28、第3配線溝30を形成する。そして、このマスクはエッチング後に除去される。このマスクの除去方法としては、例えば、マスクがレジスト材料で形成される場合には、レジスト剥離液、マスクが金属材料で構成される場合には、リン酸溶液のようなメタル剥離液等を用いることができる。なお、凹部20、排気溝24、第1配線溝26、第2配線溝28、第3配線溝30の形成順序は任意に設定することができるが、マスクとして、例えば、グレースケールマスクを用いることにより、これら(深さの異なる複数の凹部)を一括形成しても良い。
【0056】
次に図7(b)に示すように第1基板12上に第1配線32(不図示)、第2配線38、第3配線44を形成する。各配線の形成方法(成膜方法)としては特に限定されないが、例えば、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、容射等、薄膜の接合等が挙げられる。なお、以下の各工程における成膜においても、同様の方法を用いることができる。
【0057】
そして、図7(c)に示すように、第1端子電極36(不図示)、第2端子電極42(不図示)、第3端子電極48、第1バンプ34(不図示)、第2バンプ40、第3バンプ46を形成する。なお、これらを形成後、これらを露出させた状態で各配線を保護する絶縁材料を各溝に埋め込んでもよい。
【0058】
次に、図7(d)に示すように、第1基板12の上面の接合部14と、エッチング前の第2基板50と、を陽極接合法により接合する。これにより、凹部20と第2基板50による内部空間が形成される。また、この接合により、各バンプは押しつぶされて、上述のように対応する可動電極指58や固定電極指に電気的・機械的に接合する。
【0059】
ところで、この陽極接合により第1基板12と第2基板50との接合領域から酸素が発生し内部空間68に放出される。しかし、この陽極接合の際に第2基板50と排気溝24により内部空間68と外部とを連通する排気孔70が形成されるので、内部空間68から外部に酸素を排出させることができる。また第2基板50は、第1基板12に積層する際の取り扱い性を高めたり、固定電極指や可動電極指のアスペクト比(電極幅対電極厚みの比率)を大きくして検出感度を高めるために、第1基板12への接合前に必要とする厚みより厚くしておく場合がある。このときは、CPM法、ドライポリッシュ法等を用いて積層後の第2基板50の薄肉化を行なう。
【0060】
そして、図7(e)に示すように、第2基板50をエッチングすることにより、空洞部74を形成し、支持部52、可動部54(ビーム56、可動電極指58、可撓部60)、第1固定電極指62、第2固定電極指64が形成される。このとき、第1固定電極指62、第2固定電極指64は、それぞれ互いに空間的に分離するとともに、支持部52及び可動部とも空間的に分離しつつ第1基板12の接合部14に接合した状態を維持する。また第1固定電極指62は、第1バンプ34に接合した状態を維持し。第2固定電極指64は、第2バンプ40に接合した状態を維持する。
【0061】
最後に、図7(f)に示すように、キャビティ部76を有するリッド66を第1基板12に接合し、第2基板50を収納・封止した機能素子10が形成される。このようにリッド66により第2基板50を封止するので、可動部54を安定的に動作させることができる。さらに排気孔70を上述の排気溝24で形成している場合は、リッド66による第2基板50の封止と同時に排気溝24を接着剤(接着層78)で封止することが可能となり、製造工程を削減してコストを抑制することができる。
【0062】
本実施形態のように、第1基板12に第2基板50を積層したのち可動部54を形成する場合、第1基板12と第2基板50の接合時に接合によるガスが発生するため、凹部20の内部の雰囲気が膨張し、可動部54の形成に悪影響を及ぼしたり、第1基板12と第2基板50が剥離してしまう虞がある。しかし、積層する前に外部と内部空間68とを接続する排気孔70を形成しておくことにより、積層時においてガスが内部空間68から排気孔70を通って外部に排出させることができるので、可動部54の製造の歩留を高めることができる。また本実施形態では、排気孔70を独立に形成する必要は無く、基板(第1基板12)の表面に溝を形成することにより容易に排気孔70が形成することができる。
【0063】
図8に第2実施形態に係る機能素子を示す。なお、以降の実施形態において、第1実施形態と共通する構成要素については同一番号を付するものとし、必要な場合を除いてその説明を省略する。第2実施形態に係る機能素子80は、基本構成は第1実施形態と類似するが、第1基板12は、前述の第2の溝(第2配線溝28)から分岐して内部空間68に接続する第3の溝(排出溝82)を有する点で相違する。
【0064】
このため、第1基板12にエッチング前の第2基板50を積層する際に、第2の溝(第2配線溝28)及び第3の溝(排出溝82)を、第2の溝(第2配線溝28)の外周部16側及び第3の溝(排出溝82)の内部空間68側の端部を残して封止される。これにより内部空間68と第2基板50の外部とを連通する排気孔84が形成される。
【0065】
よって、第2実施形態においては、第2配線溝28は排出溝としての機能も有する。 よって、第2配線38を絶縁材料で保護する際、第2配線溝28の排気孔84と共有する領域においては絶縁材料等により溝を完全に埋めないようにする必要がある。
【0066】
そして第1基板12とエッチング前の第2基板50を陽極接合により接合する際、内部空間68に放出された酸素は、第2の溝(第2配線溝28)、第3の溝(排出溝82)により形成される排気孔84を通って第2基板50の外部に排出させることができる。よって、第1実施形態の排気溝24を形成する必要は無い。なお第2実施形態の機能素子80は、排気溝24を形成せず排出溝82を形成する点で異なるだけあるので、その製造方法についての説明を省略する。
【0067】
図9に第3実施形態に係る機能素子を示す。図9(a)は部分平面図、図9(b)は部分側面図である。第3実施形態に係る機能素子90は、第1実施形態、第2実施形態とは異なり、第1基板12に凹部20を形成せず、第2基板50の第1基板12に対向する側に凹部92を形成している。そして第2基板50のこの凹部92に対向する位置に可動部94(可動部54)を形成している。一方、第1基板12においては、排気溝25が第1基板12の外周部16から第2基板50の凹部92に対向する位置にまで延びて形成されている。そして第1基板12とエッチング前の第2基板50との陽極接合の際に、凹部92と第1基板12により形成された内部空間98に酸素が放出される。しかし、排気溝25及び第1基板12より形成された排気孔100により内部空間98と外部とが連通されるので、内部空間98に放出された酸素を外部に排出することができる。なお凹部92は、第1基板12に第2基板50を積層する前に上述のエッチング等により形成する。
【0068】
なお、凹部(第1実施形態の凹部20、第2実施形態の凹部92)は可動部54、可動部94と第1基板12との接合・干渉を回避するためのものであるので、第1基板12、及び/または、第2基板50に形成することができる。
【0069】
図10に第4実施形態に係る機能素子を示す。図10(a)は第2基板に可動部等を形成する前の部分平面図、図10(b)は図10(a)のA−A線断面図、図10(c)は第2基板に可動部等を形成した後の部分平面図である。第4実施形態に係る機能素子110は、第1実施形態、第2実施形態同様に第1基板12に凹部20を形成するが、排気溝112を第2基板50の端部から第1基板12の凹部20に対向する面にまで形成する点で相違する。これにより、第2基板50および排気溝112により排気孔114が形成され、この排気孔114により、凹部20及びエッチング前の第2基板50により形成される内部空間68と、外部と、が連通する。そして図10(c)に示すように、エッチングによる可動部54等の形成後は、排気孔114の凹部20(空洞部74)に対向する領域は切除される。
【0070】
図11に第5実施形態に係る機能素子を示す。第5実施形態に係る機能素子170は、第1実施形態、第2実施形態同様に第1基板12に凹部20を形成するが、第2基板50のエッチングを行なう領域(空洞部74)に内部空間68に貫通する貫通孔172を形成したのち、第1基板12に第2基板50を積層する点で相違する。すなわちエッチングにより形成される空洞部74であって凹部20に対向する位置に貫通孔172を形成する。これにより、第1基板12と第2基板50との陽極接合の際に内部空間68に放出された酸素を貫通孔172から排出させることができる。またエッチングにより可動部等を形成したのちは、この貫通孔172は消失する。このため、可動部等の形成後に貫通孔172を封止する必要がないので、製造効率が向上する。
【0071】
図12に第6実施形態に係る機能素子を示す。図12(a)は平面図、図12(b)は側面から見た模式図である。第6実施形態に係る機能素子120は、第1基板122と第2基板130の積層構造であるが、第2基板130は、可動部132と、前記可動部132を支持する支持部142と、により形成されている。そして可動部132は、フラップ板134と、フラップ板134の釣り合いの位置から離れた位置と前記支持部142とを連結し、前記フラップ板134の回転軸となる連結部136と、フラップ板134の第1基板122に対向する面に形成された可動電極138、可動電極140と、を有する。また可動電極138、可動電極140は連結部136を挟むように、それぞれフラップ板134の片側に接続されている。また可動電極138、可動電極140は連結部136を経由して第2基板130の外部と電気的に接続可能である。
【0072】
一方、第1基板122はフラップ板134との干渉を回避するためフラップ板134に対向する位置に凹部124を形成し、凹部124の底部に固定電極126、固定電極128を形成している。固定電極126は、第1基板122の可動電極138に対向する位置に形成され、固定電極128は第2基板の可動電極140に対向する位置に形成されている。
【0073】
本実施形態の場合も第1基板122と第2基板130とを陽極接合により接合することができるが、第1実施形態等と同様に第1基板122に排気溝144を形成すればよい。また本実施形態においてもフラップ板134と連結部136はエッチングにより形成するが、第5実施形態と同様に、エッチングされる領域に貫通孔146を形成した後に陽極接合を行えばよい。なお可動電極138、可動電極140、固定電極126、固定電極128は、第1基板122と第2基板130との陽極接合を行なう前に形成する必要がある。
【0074】
本実施形態においては、可動電極と固定電極との間で電圧を印加すると、可動電極138と固定電極126との間で静電容量が発生し、可動電極140と固定電極128との間で静電容量が発生する。そして、例えば第2基板130の法線方向から加速度を受けた場合、フラップ板134は連結部を軸として回転する。この場合、フラップ板134は可動電極138が設けられた方が重くなるので、可動電極138が設けられた側は慣性の法則により加速度の方向と反対の方向に変位する。よって、可動電極138と固定電極126との間の静電容量、可動電極140と固定電極128との間の静電容量は一方が増加すると他方が減少する関係になる。よって両者の差分を採ることにより加速度等の物理量の大きさとその方向(第2基板130の法線方向)を検知することができる。
【0075】
図13に第7実施形態に係る機能素子を示す。第7実施形態に係る機能素子150は、第1基板152と第2基板の積層構造であるが、可動部は、第2基板158の一部が薄肉に形成され第2基板158の主面の法線方向からの外力により撓み変形可能とするダイアフラム160として形成されている。そしてダイアフラム160の第1基板152側には可動電極162が形成されている。
【0076】
第1基板152は、第2基板158と対向する位置に凹部154が形成され、凹部154の底面の可動電極162に対向する位置に固定電極156を有している。本実施形態の場合も第1基板152と第2基板158とを陽極接合により接合することができるが、第1実施形態等と同様に第1基板152に排気溝164を形成すればよい。また上述のように取り扱いの便宜のため、第2基板158は必要とする厚みより厚い状態で第1基板152と陽極接合を行い、接合後に第2基板158を薄肉化することによりダイアフラム160を形成してもよい。また前述同様に可動電極162、固定電極156は、第1基板152と第2基板158との陽極接合を行なう前に形成する必要がある。
【0077】
本実施形態においては、例えば第2基板158の法線方向に垂直な方向に加速度を受けると慣性の法則によりダイアフラム160が加速度と反対側に向けて撓み変形する。また内部空間166が気密封止されている場合は、内部空間166の圧力と外部との圧力差によりダイアフラム160が撓み変形する。これにより可動電極162と固定電極156との間の静電容量の変化を測定して物理量の大きさとその方向を検知することができる。
【0078】
いずれの実施形態に係る機能素子においても、機能素子を駆動する集積回路(IC)等に接続して物理量センサーを構築することが可能である。例えばICを角速度検出回路や加速検出回路、圧力検出回路として形成することにより、ジャイロセンサー、加速度センサー、圧力センサーとして構成することができる。
【0079】
またいずれの実施形態に係る機能素子を、デジタルカメラ、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、医療機器、各種測定機器等に搭載した電子機器を構築することができる。
【0080】
以上、本発明の機能素子、機能素子の製造方法、物理量センサー及び電子機器について図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、上記説明では、第1基板および第2基板の少なくとも一方に凹部を形成し、内部空間を形成したが、平板状の第1基板および第2基板を用い、第1基板と第2基板との間にスペーサを介して両基板を接合することにより内部空間を形成してもよい。また、櫛歯状をなすように並ぶ複数の第1固定電極指62、第2固定電極指64が互いに空間的に分離していれば前述した実施形態に限定されない。
【0081】
また第1固定電極指62及び第2固定電極指64と、これに噛み合うように設けられた可動電極指58の本数、配置及び大きさ等の形態は、前述した実施形態に限定されない。
【0082】
また可動部54を図1の矢印の方向に垂直な方向に変位させるように構成してもよいし、図1の矢印の方向を回転軸として回動させるように構成してもよい。この場合、第1固定電極指62及び第2固定電極指64と可動電極指58の対向面積の変化による静電容量変化に基づいて物理量を検出すればよい。
【0083】
また上述の第1実施形態乃至第5実施形態では、機能素子を物理量センサー素子として用いる場合について説明したが、物理量センサー素子に限らず、例えば、各固定電極指、と可動電極指に異なる電圧を印加してクーロン力により可動電極指を駆動させることにより、固有周波数により発振する共振子として本発明の機能素子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10………機能素子、12………第1基板、14………接合部、16………外周部、18………端子部、20………凹部、24………排気溝、25………排気溝、26………第1配線溝、28………第2配線溝、30………第3配線溝、32………第1配線、34………第1バンプ、36………第1端子電極、38………第2配線、40………第2バンプ、42………第2端子電極、44………第3配線、46………第3バンプ、48………第3端子電極、50………第2基板、52………支持部、54………可動部、56………ビーム、58………可動電極指、60………可撓部、62………第1固定電極指、64………第2固定電極指、66………リッド、68………内部空間、70………排気孔、72………排気孔、74………空洞部、76………キャビティ部、78………接着層、80………機能素子、82………排出溝、84………排気孔、90………機能素子、92………凹部、94………可動部、96………排気溝、98………内部空間、100………排気孔、110………機能素子、112………排気溝、114………排気孔、120………機能素子、122………第1基板、124………凹部、126………固定電極、128………固定電極、130………第2基板、132………可動部、134………フラップ板、136………連結部、138………可動電極、140………可動電極、142………支持部、144………排気溝、146………貫通孔、150………機能素子、152………第1基板、154………凹部、156………固定電極、158………第2基板、160………ダイアフラム、162………可動電極、164………排気溝、166………内部空間、170………機能素子、172………貫通孔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能素子、機能素子の製造方法、物理量センサー及び電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
機能素子としては、固定配置された固定電極と、固定電極に対して間隔を隔てて対向するとともに変位可能に設けられた可動電極とを有し、固定電極と可動電極との間の静電容量に基づいて、加速度、角速度等の物理量を検出する物理量センサー素子が知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
特許文献1、特許文献2の物理量センサー素子は、差動方式で容量検出できるように各々の櫛歯電極部が絶縁材料を充填した溝により電気的に絶縁されつつ機械的には繋がっている構造を有している。
【0004】
例えば、特許文献1に記載の物理量センサー素子は、単層の半導体基板、またはSOI基板を用い、固定電極及び可動電極が、それぞれ櫛歯状をなすように並ぶ複数の電極指を有し、互いにかみ合うように配置されている。
【0005】
また、特許文献1に記載の物理量センサー素子では、可動電極の隣り合う2つの電極指間に、固定電極の2つの電極指が臨むように設けられているとともに、当該固定電極の2つの電極指が互いに電気的に絶縁されている。これにより、固定電極の当該2つの電極指の一方の電極指の他方の電極指とそれに対向する可動電極の電極指との間の静電容量とを別々に測定し、それらの測定結果に基づいて(いわゆる差動検出方式を用いて)、物理量を検出することができる。
【0006】
さらに特許文献1、特許文献2においては、単層の半導体基板をドライエッチング等で可動構造体の下に空洞を加工することで物理量センサー素子を形成している。このような手法を用いると単層基板だけで絶縁分離構造を含むセンサー構造が形成でき、低コストが実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4238437号公報
【特許文献2】特表2002−510139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、特許文献2においては、単層の半導体基板において絶縁分離した可動構造体をドライエッチング等で浮かせる構成となるため、可動構造の厚みや形状に制約があり、高感度化や耐衝撃性の点で問題があった。
【0009】
特に、特許文献1に記載の物理量センサー素子では、固定電極及び可動電極の各々が導通しないように電極指を個別に絶縁分離する必要があり、製造効率が低下するという問題がある。さらにSOI基板は一般的に高価であり、製品コストが大きくなる問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題点に着目し、製造効率の低下を抑制した機能素子、機能素子の製造方法、物理量センサー及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例として実現することが可能である。
【0012】
[適用例1]第1基板と、前記第1基板上に設けられ、且つ、素子部を有する第2基板と、を備え、前記第1基板と前記第2基板との間には内部空間が設けられ、前記第1基板および前記第2基板の互いに対向する面の少なくとも一方には、前記内部空間と外部とを連通する溝が設けられていることを特徴とする機能素子。
【0013】
上記構成において、例えば第1基板に第2基板を積層したのち第2基板に素子部を形成する場合、第1基板と第2基板の接合時に接合によるガスが発生する場合があり、これが内部空間に蓄えられ膨張し、素子部の形成に悪影響を及ぼす虞がある。しかし、積層する前に第1基板および第2基板の少なくとも一方の面に外部と内部空間とを連通する溝を形成しておくことにより、積層時において前記ガスが内部空間から通気孔を通って外部に排出させることができるので、素子部の製造の歩留を高めることができる。また、通気用の孔を独立に形成する必要は無く、基板の表面に溝を形成しておき積層することで容易に通気用の孔を形成することができる。
【0014】
[適用例2]前記第1基板上には、前記第2基板を覆うようにリッドが接着部材で接合され、前記溝は、前記接着部材により封止されたことを特徴とする適用例1に記載の機能素子。
上記構成により、リッドで第2基板を封止しつつ、溝をリッドの接着部材で封止することができるので、製造効率が格段に向上する。
【0015】
[適用例3]前記溝には、前記素子部の配線が設けられたことを特徴とする適用例1または2に記載の機能素子。
上記構成により、溝を内部空間のガス抜きの用途だけでなく素子部の配線経路としても利用することができる。
【0016】
[適用例4]前記第1基板は、ガラスで形成され、前記第2基板は、半導体材料で形成され、前記第1基板と前記第2基板とは、陽極接合により接合されたことを特徴とする適用例1乃至3のいずれか1例に記載の機能素子。
上記構成により、接着剤を用いることなく第1基板と第2基板とを陽極接合により強固に接続することができる。また陽極接合時にガスが発生して内部空間に放出されるが、通気孔によりガスを外部に排出して可動部の製造の歩留を高めることができる。
【0017】
[適用例5]前記素子部は、可動部と、前記可動部を支持する支持部と、前記第1基板側に接続する固定電極指と、を有し、前記可動部は、前記固定電極指に対向する可動電極指と、前記可動電極指および前記支持部を接続した可撓部とを、有することを特徴とする適用例1乃至4のいずれか1例に記載の機能素子。
上記構成により、例えば、外力を受けたときに、可動電極指と固定電極指との間の静電容量は、可動電極指の変位により変化する。よって、この静電容量の変化により加速度等の物理量を検知することができ、製造効率の優れたセンサーを実現できる。
【0018】
[適用例6]第1基板と第2基板とを用意し、前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方に表面に溝を形成する工程と、前記第1基板上に前記第2基板を接合し、前記第1基板と前記第2基板との間に内部空間を形成し、前記溝により前記内部空間を通気させる工程と、前記第2基板に素子部を形成する工程と、前記第2基板を覆うようにリッドを前記第1基板上に接着部材で接合すると共に、前記接着部材により前記溝を封止する工程と、を備えたことを特徴とする機能素子の製造方法。
上記方法により、第1基板と第2基板の積層時において前記ガスが内部空間から溝により形成された通気孔を通って外部に排出させることができるので、素子部の製造の歩留を高めることができる。
【0019】
[適用例7]第1基板と第2基板とを用意し、前記第2基板に貫通孔を形成する工程と、前記第1基板上に前記第2基板を接合し、前記第1基板と前記第2基板との間に内部空間を形成し、前記貫通孔により前記内部空間を通気させる工程と、前記第2基板の前記貫通孔を含む領域をエッチングで抜いて素子部を形成する工程と、を備えたことを特徴とする機能素子の製造方法。
【0020】
上記方法により、積層時において前記ガスが内部空間から貫通孔を通って外部に排出させることができるので、素子部の製造の歩留を高めることができる。さらに、第2基板のエッチングを行う領域に内部空間に貫通する貫通孔を形成するので、素子部を形成するときに貫通孔を消失させることができ、貫通孔を封止する必要がないので、製造効率が向上する。
【0021】
[適用例8]適用例1乃至5のいずれか1例に記載の機能素子を有することを特徴とする物理量センサー。
上記構成により、製造効率が優れた物理量センサーを提供できる。
【0022】
[適用例9]適用例1乃至8のいずれか1例に記載の機能素子を有することを特徴とする電子機器。
上記構成により、製造効率が優れた電子機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】第1実施形態に係る機能素子の平面図である。
【図2】図1の一点鎖線で囲まれた部分の拡大図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】図1のB−B線断面図である。
【図5】図1のC−C線断面図である。
【図6】図1のD−D線断面図である。
【図7】第1実施形態の機能素子の製造工程を示す。ここで図7(a)乃至図7(e)において、左側は図5の一点鎖線で囲まれた部分の製造工程を示し、中央は図3の一点鎖線で囲まれた部分の製造工程を示し、右側は図4の一点鎖線で囲まれた部分の製造工程を示す。
【図8】第2実施形態に係る機能素子を示す図である。
【図9】第3実施形態に係る機能素子を示し、図9(a)は部分平面図、図9(b)は部分側面図である。
【図10】第4実施形態に係る機能素子を示し、図10(a)は第2基板に可動部等を形成する前の部分平面図、図10(b)は図10(a)のA−A線断面図、図10(c)は第2基板に可動部等を形成した後の部分平面図である。
【図11】第5実施形態に係る機能素子を示す図である。
【図12】第6実施形態に係る機能素子を示し、図12(a)は平面図、図12(b)は側面から見た模式図である。
【図13】第7実施形態に係る機能素子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を図に示した実施形態を用いて詳細に説明する。但し、この実施形態に記載される構成要素、種類、組み合わせ、形状、その相対配置などは特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する主旨ではなく単なる説明例に過ぎない。
【0025】
図1乃至図6に第1実施形態に係る機能素子を示す。ここで図1は第1実施形態に係る機能素子の平面図、図2は図1の一点鎖線で囲まれた部分の拡大図、図3は図1のA−A線断面図、図4は図1のB−B線断面図、図5は図1のC−C線断面図、図6は図1のD−D線断面図である。
【0026】
本実施形態の機能素子10は、絶縁体となる第1基板12上に第2基板50を積層し、第2基板50をリッド66で封止した構成を有している。
例えば、第1基板12はガラス等の絶縁体で形成されており、第2基板50は、シリコン等の半導体基板で形成されている。第1基板12の第2基板50側には凹部20と、第1の溝となる排気溝24、第2の溝となる第1配線溝26、第2配線溝28が形成されている。さらに第1基板12には、第1配線溝26、第2配線溝28とは別に第3配線溝30が形成されている。
【0027】
また第1基板12は、第2基板50と接合する接合部14と、接合部14の周囲を囲む外周部16と、外周部16に接続する端子部18とを有する。接合部14は平面視して第2基板50と重なる領域であり、外周部16は接合部14の周囲であって平面視してリッド66と重なる領域である。
【0028】
凹部20は、後述の素子部を構成する可動部54と第1基板12との干渉を回避するためのものである。よって凹部は接合部14内であって可動部54と対向する位置に形成される。また、第1基板12に第2基板50を積層すると、この凹部20により、第1基板12を内壁の一部とする内部空間68が形成される。
【0029】
排気溝24は、第1基板12を第2基板50に積層(接着)する際に発生するガスを外部に排出するためのものである。排気溝24は凹部20の内壁の一部を切り欠くとともに、接合部14及び外周部16を経由して外部に連通される。よってこの排気溝24により内部空間68から接合部14の外部に連通する排気孔70が形成される。
【0030】
第1配線溝26は、第2基板50と電気的に接続する第1配線32を配置するための溝であり、第2配線溝28は、第2基板50と電気的に接続する第1配線溝26とは別の第2配線38を配置するための溝である。第1配線溝26、第2配線溝28は、第1基板12の接合部14であって凹部20の外側となる領域から外周部16を経由して端子部18にわたり、再び外周部16及び接合部14に戻るU字型に形成されている。そして第2配線溝28は第1配線溝26の内側に沿って形成されている。また接合部14において第1配線溝26、第2配線溝28は、第2基板50を用いて構成される後述の固定電極指(第1固定電極指62、第2固定電極指64)の下を通過する。なお、第1配線溝26、第2配線溝28により、第2基板50を用いて構成される後述の支持部52との間に隙間が形成され、各配線溝を後述のように絶縁材料等で埋めない限り接合部14にある各配線溝は排気孔72として機能する。
【0031】
第3配線溝30は、第2基板50と電気的に接続するための第3配線44を配置するための溝である。第3配線溝30は、支持部52の下を通り外周部16を経由して端子部18に引き出されている。
【0032】
第1基板12の構成材料としては、具体的には高抵抗なシリコン材料、ガラス材料を用いるのが好ましく、特に後述の第2基板がシリコン材料を主原料として構成されている場合、アルカリ金属イオン(可動イオン)を含むガラス材料(例えば、パイレックス(登録商標)のような硼珪酸ガラス)を用いるのが好ましい。これにより。第2基板50がシリコンを主原料として構成されている場合、第1基板12と第2基板50とを陽極接合することができる。この陽極接合により、接着剤を用いることなく第1基板12と第2基板50とを強固に接続することができる。
【0033】
また第1基板12の構成材料は、第2基板50の構成材料の熱膨張係数差ができるだけ小さいことが好ましく、具体的には、第1基板12の構成材料と第2基板50の構成材料(及びリッドの構成材料)との熱膨張係数差が3ppm/℃以下であることが好ましい。これにより、第1基板12と第2基板50との接合時に高温下に晒されても、第1基板12と第2基板50との間の残留応力を低減することができる。
【0034】
第1配線32は、後述の素子部の配線として第1配線溝26内に形成されるとともに、固定電極指を構成する第1固定電極指62と電気的に接続するものである。また第2配線38は、後述の素子部の配線として第2配線溝28内に形成されるとともに、固定電極指を構成する第2固定電極指64と電気的に接続するものである。よって、第1配線32の第1固定電極指62に対向する位置には、突起となる第1バンプ34が設けられ、第2配線38の第2固定電極指64に対向する位置には、突起となる第2バンプ40が設けられている。また第1配線32の端子部18側には、第1端子電極36が設けられ、第2配線38の端子部18側には、第2端子電極42が設けられている。
【0035】
第3配線44は、後述の素子部の配線として第3配線溝30内に形成されるとともに、第2基板50を用いて構成される後述の支持部52(可動電極指58)に電気的に接続するものである。よって第3配線44の支持部52に対向する位置には、突起となる第3バンプ46が設けられ、第3配線44の端子部18側には第3端子電極48が設けられている。
【0036】
なお、第1配線32、第2配線38、第3配線44の厚み寸法は、それぞれ第1配線溝26、第2配線溝28、第3配線溝30の深さ寸法より小さくなるように形成されている。また第1バンプ34、第2バンプ40、第3バンプ46はそれぞれ第1配線溝26、第2配線溝28、第3配線溝30から第1基板12の主面上にはみ出るように形成される。そして各バンプは第1基板12に第2基板50を積層する際に押しつぶされる。その結果、第1配線32は、後述の第1固定電極指62と電気的・機械的に接続され、第2配線38は後述の第2固定電極指64と電気的・機械的に接続され、第3配線44は後述の支持部52(可動電極指58)と電気的・機械的に接続する。
【0037】
また第1配線溝26、第2配線溝28、第3配線溝30は、それぞれ第1バンプ34、第1端子電極36、第2バンプ40、第2端子電極42、第3バンプ46、第3端子電極48を露出させた状態で絶縁性の樹脂材料等で埋め込んでもよい。
【0038】
第1配線32、第2配線38、第3配線44の構成材料としては、それぞれ導電性を有するものであれば、特に限定されず、各種電極材料を用いることができるが、例えば、ITO(Indim Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、In3O3、SnO2、Sb含有SnO2、Al含有ZnO等の酸化物(透明電極材料)、Au、Pt、Ag、Cu、Alまたはこれらを含む合金等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
中でも、前述の各配線の構成材料としては、透明電極材料(特にITO)を用いることが好適である。各配線がそれぞれ透明導電材料で構成されていると、第1基板12が透明であった場合、第2基板50を構成する固定電極指(第1固定電極指62、第2固定電極指64)の面上に存在する異物等を第1基板12の固定電極指とは反対の面から容易に視認することができ、機能素子10の検査を容易に行うことができる。
【0040】
また第1端子電極36、第2端子電極42、第3端子電極48の構成材料としては、前述した各配線と同様に導電性を有するものであれば、特に限定されず各種電極材料を用いることができる。
【0041】
さらに、第1バンプ34、第2バンプ40、第3バンプ46の構成材料としては、それぞれ、導電性を有するものであれば、特に限定されず、各種電極材料を用いることができるが、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Al等の金属単体、またはこれらを含む合金の金属が好適である。このような金属を用いて各バンプを構成することにより、前述の各配線と固定電極指(第1固定電極指62、第2固定電極指64)、可動電極指58との間の接点抵抗を小さくすることができる。
【0042】
第2基板50は、機能素子10において加速度等の物理量を検知するものである。第2基板50は、支持部52、可動部54、第1固定電極指62、第2固定電極指64を含む素子部を有する。ここで第2基板50は導電性を有するものを用いるのが好ましく、支持部52と可動部54は電気的に接続した状態となっている。一方、第1固定電極指62、第2固定電極指64は、支持部52及び可動部54から空間的に分離され、電気的に絶縁されている。よって、第2基板50は、支持部52、可動部54、第1固定電極指62、第2固定電極指64との間に空洞部74を有する。
【0043】
支持部52は、第1基板12と接合するとともに可動部54を支持するものである。また支持部は第3バンプ接続することにより第3配線、第3端子電極と電気的に接続する。また支持部52は、第1基板12に第2基板50を積層することにより排気溝24との間に隙間を形成する。これにより内部空間68から第1基板12の接合部14の外部に連通する排気孔70が形成される。
【0044】
可動部54は、図1中の矢印の方向に変位するものである。可動部54は第1基板12に形成された凹部20に対向する位置に形成され、可動部54は第1基板12との接合や干渉が回避され、外部から受ける外力(例えば加速度)により可動する。可動部54は図1中の矢印方向を長手方向とするビーム56と、ビーム56の長手方向の両端に接続され支持部52に接続される可撓部60と、ビーム56の長手方向に垂直な方向に延出するようにビーム56に一定の間隔で並べられた状態で接続する複数の可動電極指58を有する。可撓部60は、例えば可動部54全体が図中の矢印の方向に加速度を受けると、図中の矢印の方向に撓み変形する。よってビーム56はその加速度によりビーム56の長手方向に変位する。これによりビーム56に接続する可動電極指58もビーム56の長手方向に変位する。
【0045】
第1固定電極指62、第2固定電極指64は、上述のように支持部52及び可動部54と空間的に分離して形成されるとともに、固定電極指の長手方向の一端が第1基板12の接合部14の第1配線32、第2配線38に対向する位置に接合され、固定電極指の長手方向の他端が第1基板12の凹部20に対向する位置に配置される。また第1固定電極指62、第2固定電極指64は、図中の矢印の方向に交互に一定の間隔を置いて並べられて配置される。また第1固定電極指62と第2固定電極指64との間には、可動電極指58が図中の矢印の方向と垂直な方向から交差するように配置されている。よって可動電極指58は、図中の矢印の方向の一方の面において第1固定電極指62と一定の間隔を置いて対向し、他方の面において第2固定電極指64と一定の間隔を置いて対向することになる。したがって第1固定電極指62、第2固定電極指64の配列により櫛歯状の固定電極が形成され、この櫛歯状の固定電極に噛み込むように配置された可動電極指58により櫛歯状の可動電極が形成される。
【0046】
さらに第1固定電極指62は、第1バンプ34と電気的に接続され、第2固定電極指64は第2バンプ40と電気的に接続される。よって第1固定電極指62は第1端子電極36と電気的に接続され、第2固定電極指64は第2端子電極42に電気的に接続される。また可動電極指58はビーム56、可撓部60を経由して支持部52に電気的に接続する。したがって、可動電極指58は支持部52を経由して第3端子電極48に電気的に接続する。よって第3端子電極48に電圧を印加すると、可動電極指58と第1固定電極指62との間で静電容量が発生し、可動電極指58と第2固定電極指64との間で静電容量が発生する。よって第1端子電極36から可動電極指58と第1固定電極指62との間の静電容量の情報を得ることができ。第2端子電極42から可動電極指58と第2固定電極指64との間の静電容量の情報を得ることができる。
【0047】
ここで可動部54が図中の矢印の方向に変位した場合に、可動電極指58は、第1固定電極指62、第2固定電極指64のいずれか一方の側に偏ることになる。このとき可動電極指58が接近した方の固定電極指と可動電極指58との間の静電容量は増加し、可動電極指58が遠ざかった方の固定電極指と可動電極指58との間の静電容量は減少する。
【0048】
したがって、本実施形態においては、可動電極指58と第1固定電極指62との間の静電容量と、可動電極指58と第2固定電極指64との間の静電容量を独立に測定することができ、さらにその差分を測定することにより測定される物理量の大きさとその方向(図中の矢印の方向)を高精度に検出することができる。
【0049】
ここで、第2基板50の構成材料、すなわち支持部52、可動部54(ビーム56、可動電極指58、可撓部60)、第1固定電極指62、第2固定電極指64は、後述のようにエッチングにより形成することが好適である。そして上述のように第1基板12の可動部54に対向する位置には凹部20が形成されている。よって第2基板50において、可動部54と第1基板12との接合及び干渉を回避するための凹部を形成する必要はなく、各構成材料は予め用意された第2基板50の厚みを有した状態で形成することができる。よって各構成材料の厚みを簡単かつ高精度に揃えることができる。また各構成材料を厚く形成することができるので、機能素子10の耐衝撃性を高めることができる。さらに可動電極指58、第1固定電極指62、第2固定電極指64を厚く形成することができるので、電極間の静電容量を大きくすることができ、機能素子10の物理量検出の感度を高めることができる。さらに第1固定電極指62、第2固定電極指64は、支持部52及び可動部54から空間的に分離している。これにより各固定電極指と第1基板12との接合面積を十分なものとしつつ各固定電極指の小型化を図ることができる。そのため機能素子10の耐衝撃性の向上と小型化を両立させることができる。
【0050】
第2基板50の構成材料としては、前述したように静電容量の変化に基づく物理量の検出が可能であれば特に限定されないが、半導体が好ましく、具体的には、例えば、単結晶シリコン、ポリシリコン等のシリコン材料を用いることが好ましい。
【0051】
シリコンはエッチングにより高精度に加工することができる。そのため第2基板50を、シリコンを主原料として構成することにより、第2基板50の寸法精度を高め、その結果物理量センサー素子である機能素子10の高感度化を図ることができる。またシリコンは疲労が少ないため、機能素子10の耐久性を向上させることもできる。また第2基板50を構成するシリコン材料には、リン、ボロン等の不純物がドープされているのが好ましい、これにより第2基板50の導電性を優れたものとすることができる。
【0052】
リッド66は、キャップ型の形状でキャビティ部76を有し、例えばエポキシ系の接着剤等により第1基板12の外周部16に接合されるとともに、キャビティ部76に第2基板50を収納して第2基板50を封止する。その際、リッド66と第1基板12との間の接着部材としての接着層78が、排気溝24、第1配線溝26、第2配線溝28、第3配線溝30に入り込むことにより第2基板50が封止される。
【0053】
図7に第1実施形態の機能素子の製造工程を示す。ここで図7(a)乃至図7(f)において、左側は図5の一点鎖線で囲まれた部分の製造工程を示し、中央は図3の一点鎖線で囲まれた部分の製造工程を示し、右側は図4の一点鎖線で囲まれた部分の製造工程を示す。
【0054】
上記構成に係る機能素子10の製造工程について説明する。本実施形態においては、第1基板12の構成材料としてガラス材料を用い、第2基板50の構成材料としてシリコンを用いた場合について説明する。まず図7(a)に示すように、第1基板12において、凹部20、排気溝24、第1配線溝26(不図示)、第2配線溝28、第3配線溝30を形成する。これらの形成方法としては、特に限定されないが、例えばプラズマエッチング、リアクティブイオンエッチング、ビームエッチング、光アシストエッチング等の物理的エッチング法、ウェットエッチング等の化学的エッチング等のうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、以下の各工程におけるエッチングにおいても、同様の方法を用いることができる。
【0055】
また上述したエッチングに際しては、例えば、フォトリソグラフィー法により形成されたマスクを好適に用いることができる。また、マスク形成、エッチング、マスク除去を複数回繰り返し、凹部20、排気溝24、第1配線溝26、第2配線溝28、第3配線溝30を形成する。そして、このマスクはエッチング後に除去される。このマスクの除去方法としては、例えば、マスクがレジスト材料で形成される場合には、レジスト剥離液、マスクが金属材料で構成される場合には、リン酸溶液のようなメタル剥離液等を用いることができる。なお、凹部20、排気溝24、第1配線溝26、第2配線溝28、第3配線溝30の形成順序は任意に設定することができるが、マスクとして、例えば、グレースケールマスクを用いることにより、これら(深さの異なる複数の凹部)を一括形成しても良い。
【0056】
次に図7(b)に示すように第1基板12上に第1配線32(不図示)、第2配線38、第3配線44を形成する。各配線の形成方法(成膜方法)としては特に限定されないが、例えば、真空蒸着、スパッタリング(低温スパッタリング)、イオンプレーティング等の乾式メッキ法、電解メッキ、無電解メッキ等の湿式メッキ法、容射等、薄膜の接合等が挙げられる。なお、以下の各工程における成膜においても、同様の方法を用いることができる。
【0057】
そして、図7(c)に示すように、第1端子電極36(不図示)、第2端子電極42(不図示)、第3端子電極48、第1バンプ34(不図示)、第2バンプ40、第3バンプ46を形成する。なお、これらを形成後、これらを露出させた状態で各配線を保護する絶縁材料を各溝に埋め込んでもよい。
【0058】
次に、図7(d)に示すように、第1基板12の上面の接合部14と、エッチング前の第2基板50と、を陽極接合法により接合する。これにより、凹部20と第2基板50による内部空間が形成される。また、この接合により、各バンプは押しつぶされて、上述のように対応する可動電極指58や固定電極指に電気的・機械的に接合する。
【0059】
ところで、この陽極接合により第1基板12と第2基板50との接合領域から酸素が発生し内部空間68に放出される。しかし、この陽極接合の際に第2基板50と排気溝24により内部空間68と外部とを連通する排気孔70が形成されるので、内部空間68から外部に酸素を排出させることができる。また第2基板50は、第1基板12に積層する際の取り扱い性を高めたり、固定電極指や可動電極指のアスペクト比(電極幅対電極厚みの比率)を大きくして検出感度を高めるために、第1基板12への接合前に必要とする厚みより厚くしておく場合がある。このときは、CPM法、ドライポリッシュ法等を用いて積層後の第2基板50の薄肉化を行なう。
【0060】
そして、図7(e)に示すように、第2基板50をエッチングすることにより、空洞部74を形成し、支持部52、可動部54(ビーム56、可動電極指58、可撓部60)、第1固定電極指62、第2固定電極指64が形成される。このとき、第1固定電極指62、第2固定電極指64は、それぞれ互いに空間的に分離するとともに、支持部52及び可動部とも空間的に分離しつつ第1基板12の接合部14に接合した状態を維持する。また第1固定電極指62は、第1バンプ34に接合した状態を維持し。第2固定電極指64は、第2バンプ40に接合した状態を維持する。
【0061】
最後に、図7(f)に示すように、キャビティ部76を有するリッド66を第1基板12に接合し、第2基板50を収納・封止した機能素子10が形成される。このようにリッド66により第2基板50を封止するので、可動部54を安定的に動作させることができる。さらに排気孔70を上述の排気溝24で形成している場合は、リッド66による第2基板50の封止と同時に排気溝24を接着剤(接着層78)で封止することが可能となり、製造工程を削減してコストを抑制することができる。
【0062】
本実施形態のように、第1基板12に第2基板50を積層したのち可動部54を形成する場合、第1基板12と第2基板50の接合時に接合によるガスが発生するため、凹部20の内部の雰囲気が膨張し、可動部54の形成に悪影響を及ぼしたり、第1基板12と第2基板50が剥離してしまう虞がある。しかし、積層する前に外部と内部空間68とを接続する排気孔70を形成しておくことにより、積層時においてガスが内部空間68から排気孔70を通って外部に排出させることができるので、可動部54の製造の歩留を高めることができる。また本実施形態では、排気孔70を独立に形成する必要は無く、基板(第1基板12)の表面に溝を形成することにより容易に排気孔70が形成することができる。
【0063】
図8に第2実施形態に係る機能素子を示す。なお、以降の実施形態において、第1実施形態と共通する構成要素については同一番号を付するものとし、必要な場合を除いてその説明を省略する。第2実施形態に係る機能素子80は、基本構成は第1実施形態と類似するが、第1基板12は、前述の第2の溝(第2配線溝28)から分岐して内部空間68に接続する第3の溝(排出溝82)を有する点で相違する。
【0064】
このため、第1基板12にエッチング前の第2基板50を積層する際に、第2の溝(第2配線溝28)及び第3の溝(排出溝82)を、第2の溝(第2配線溝28)の外周部16側及び第3の溝(排出溝82)の内部空間68側の端部を残して封止される。これにより内部空間68と第2基板50の外部とを連通する排気孔84が形成される。
【0065】
よって、第2実施形態においては、第2配線溝28は排出溝としての機能も有する。 よって、第2配線38を絶縁材料で保護する際、第2配線溝28の排気孔84と共有する領域においては絶縁材料等により溝を完全に埋めないようにする必要がある。
【0066】
そして第1基板12とエッチング前の第2基板50を陽極接合により接合する際、内部空間68に放出された酸素は、第2の溝(第2配線溝28)、第3の溝(排出溝82)により形成される排気孔84を通って第2基板50の外部に排出させることができる。よって、第1実施形態の排気溝24を形成する必要は無い。なお第2実施形態の機能素子80は、排気溝24を形成せず排出溝82を形成する点で異なるだけあるので、その製造方法についての説明を省略する。
【0067】
図9に第3実施形態に係る機能素子を示す。図9(a)は部分平面図、図9(b)は部分側面図である。第3実施形態に係る機能素子90は、第1実施形態、第2実施形態とは異なり、第1基板12に凹部20を形成せず、第2基板50の第1基板12に対向する側に凹部92を形成している。そして第2基板50のこの凹部92に対向する位置に可動部94(可動部54)を形成している。一方、第1基板12においては、排気溝25が第1基板12の外周部16から第2基板50の凹部92に対向する位置にまで延びて形成されている。そして第1基板12とエッチング前の第2基板50との陽極接合の際に、凹部92と第1基板12により形成された内部空間98に酸素が放出される。しかし、排気溝25及び第1基板12より形成された排気孔100により内部空間98と外部とが連通されるので、内部空間98に放出された酸素を外部に排出することができる。なお凹部92は、第1基板12に第2基板50を積層する前に上述のエッチング等により形成する。
【0068】
なお、凹部(第1実施形態の凹部20、第2実施形態の凹部92)は可動部54、可動部94と第1基板12との接合・干渉を回避するためのものであるので、第1基板12、及び/または、第2基板50に形成することができる。
【0069】
図10に第4実施形態に係る機能素子を示す。図10(a)は第2基板に可動部等を形成する前の部分平面図、図10(b)は図10(a)のA−A線断面図、図10(c)は第2基板に可動部等を形成した後の部分平面図である。第4実施形態に係る機能素子110は、第1実施形態、第2実施形態同様に第1基板12に凹部20を形成するが、排気溝112を第2基板50の端部から第1基板12の凹部20に対向する面にまで形成する点で相違する。これにより、第2基板50および排気溝112により排気孔114が形成され、この排気孔114により、凹部20及びエッチング前の第2基板50により形成される内部空間68と、外部と、が連通する。そして図10(c)に示すように、エッチングによる可動部54等の形成後は、排気孔114の凹部20(空洞部74)に対向する領域は切除される。
【0070】
図11に第5実施形態に係る機能素子を示す。第5実施形態に係る機能素子170は、第1実施形態、第2実施形態同様に第1基板12に凹部20を形成するが、第2基板50のエッチングを行なう領域(空洞部74)に内部空間68に貫通する貫通孔172を形成したのち、第1基板12に第2基板50を積層する点で相違する。すなわちエッチングにより形成される空洞部74であって凹部20に対向する位置に貫通孔172を形成する。これにより、第1基板12と第2基板50との陽極接合の際に内部空間68に放出された酸素を貫通孔172から排出させることができる。またエッチングにより可動部等を形成したのちは、この貫通孔172は消失する。このため、可動部等の形成後に貫通孔172を封止する必要がないので、製造効率が向上する。
【0071】
図12に第6実施形態に係る機能素子を示す。図12(a)は平面図、図12(b)は側面から見た模式図である。第6実施形態に係る機能素子120は、第1基板122と第2基板130の積層構造であるが、第2基板130は、可動部132と、前記可動部132を支持する支持部142と、により形成されている。そして可動部132は、フラップ板134と、フラップ板134の釣り合いの位置から離れた位置と前記支持部142とを連結し、前記フラップ板134の回転軸となる連結部136と、フラップ板134の第1基板122に対向する面に形成された可動電極138、可動電極140と、を有する。また可動電極138、可動電極140は連結部136を挟むように、それぞれフラップ板134の片側に接続されている。また可動電極138、可動電極140は連結部136を経由して第2基板130の外部と電気的に接続可能である。
【0072】
一方、第1基板122はフラップ板134との干渉を回避するためフラップ板134に対向する位置に凹部124を形成し、凹部124の底部に固定電極126、固定電極128を形成している。固定電極126は、第1基板122の可動電極138に対向する位置に形成され、固定電極128は第2基板の可動電極140に対向する位置に形成されている。
【0073】
本実施形態の場合も第1基板122と第2基板130とを陽極接合により接合することができるが、第1実施形態等と同様に第1基板122に排気溝144を形成すればよい。また本実施形態においてもフラップ板134と連結部136はエッチングにより形成するが、第5実施形態と同様に、エッチングされる領域に貫通孔146を形成した後に陽極接合を行えばよい。なお可動電極138、可動電極140、固定電極126、固定電極128は、第1基板122と第2基板130との陽極接合を行なう前に形成する必要がある。
【0074】
本実施形態においては、可動電極と固定電極との間で電圧を印加すると、可動電極138と固定電極126との間で静電容量が発生し、可動電極140と固定電極128との間で静電容量が発生する。そして、例えば第2基板130の法線方向から加速度を受けた場合、フラップ板134は連結部を軸として回転する。この場合、フラップ板134は可動電極138が設けられた方が重くなるので、可動電極138が設けられた側は慣性の法則により加速度の方向と反対の方向に変位する。よって、可動電極138と固定電極126との間の静電容量、可動電極140と固定電極128との間の静電容量は一方が増加すると他方が減少する関係になる。よって両者の差分を採ることにより加速度等の物理量の大きさとその方向(第2基板130の法線方向)を検知することができる。
【0075】
図13に第7実施形態に係る機能素子を示す。第7実施形態に係る機能素子150は、第1基板152と第2基板の積層構造であるが、可動部は、第2基板158の一部が薄肉に形成され第2基板158の主面の法線方向からの外力により撓み変形可能とするダイアフラム160として形成されている。そしてダイアフラム160の第1基板152側には可動電極162が形成されている。
【0076】
第1基板152は、第2基板158と対向する位置に凹部154が形成され、凹部154の底面の可動電極162に対向する位置に固定電極156を有している。本実施形態の場合も第1基板152と第2基板158とを陽極接合により接合することができるが、第1実施形態等と同様に第1基板152に排気溝164を形成すればよい。また上述のように取り扱いの便宜のため、第2基板158は必要とする厚みより厚い状態で第1基板152と陽極接合を行い、接合後に第2基板158を薄肉化することによりダイアフラム160を形成してもよい。また前述同様に可動電極162、固定電極156は、第1基板152と第2基板158との陽極接合を行なう前に形成する必要がある。
【0077】
本実施形態においては、例えば第2基板158の法線方向に垂直な方向に加速度を受けると慣性の法則によりダイアフラム160が加速度と反対側に向けて撓み変形する。また内部空間166が気密封止されている場合は、内部空間166の圧力と外部との圧力差によりダイアフラム160が撓み変形する。これにより可動電極162と固定電極156との間の静電容量の変化を測定して物理量の大きさとその方向を検知することができる。
【0078】
いずれの実施形態に係る機能素子においても、機能素子を駆動する集積回路(IC)等に接続して物理量センサーを構築することが可能である。例えばICを角速度検出回路や加速検出回路、圧力検出回路として形成することにより、ジャイロセンサー、加速度センサー、圧力センサーとして構成することができる。
【0079】
またいずれの実施形態に係る機能素子を、デジタルカメラ、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、医療機器、各種測定機器等に搭載した電子機器を構築することができる。
【0080】
以上、本発明の機能素子、機能素子の製造方法、物理量センサー及び電子機器について図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。例えば、上記説明では、第1基板および第2基板の少なくとも一方に凹部を形成し、内部空間を形成したが、平板状の第1基板および第2基板を用い、第1基板と第2基板との間にスペーサを介して両基板を接合することにより内部空間を形成してもよい。また、櫛歯状をなすように並ぶ複数の第1固定電極指62、第2固定電極指64が互いに空間的に分離していれば前述した実施形態に限定されない。
【0081】
また第1固定電極指62及び第2固定電極指64と、これに噛み合うように設けられた可動電極指58の本数、配置及び大きさ等の形態は、前述した実施形態に限定されない。
【0082】
また可動部54を図1の矢印の方向に垂直な方向に変位させるように構成してもよいし、図1の矢印の方向を回転軸として回動させるように構成してもよい。この場合、第1固定電極指62及び第2固定電極指64と可動電極指58の対向面積の変化による静電容量変化に基づいて物理量を検出すればよい。
【0083】
また上述の第1実施形態乃至第5実施形態では、機能素子を物理量センサー素子として用いる場合について説明したが、物理量センサー素子に限らず、例えば、各固定電極指、と可動電極指に異なる電圧を印加してクーロン力により可動電極指を駆動させることにより、固有周波数により発振する共振子として本発明の機能素子を用いてもよい。
【符号の説明】
【0084】
10………機能素子、12………第1基板、14………接合部、16………外周部、18………端子部、20………凹部、24………排気溝、25………排気溝、26………第1配線溝、28………第2配線溝、30………第3配線溝、32………第1配線、34………第1バンプ、36………第1端子電極、38………第2配線、40………第2バンプ、42………第2端子電極、44………第3配線、46………第3バンプ、48………第3端子電極、50………第2基板、52………支持部、54………可動部、56………ビーム、58………可動電極指、60………可撓部、62………第1固定電極指、64………第2固定電極指、66………リッド、68………内部空間、70………排気孔、72………排気孔、74………空洞部、76………キャビティ部、78………接着層、80………機能素子、82………排出溝、84………排気孔、90………機能素子、92………凹部、94………可動部、96………排気溝、98………内部空間、100………排気孔、110………機能素子、112………排気溝、114………排気孔、120………機能素子、122………第1基板、124………凹部、126………固定電極、128………固定電極、130………第2基板、132………可動部、134………フラップ板、136………連結部、138………可動電極、140………可動電極、142………支持部、144………排気溝、146………貫通孔、150………機能素子、152………第1基板、154………凹部、156………固定電極、158………第2基板、160………ダイアフラム、162………可動電極、164………排気溝、166………内部空間、170………機能素子、172………貫通孔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板上に設けられ、且つ、素子部を有する第2基板と、
を備え、
前記第1基板と前記第2基板との間には内部空間が設けられ、
前記第1基板および前記第2基板の互いに対向する面の少なくとも一方には、前記内部空間と外部とを連通する溝が設けられていることを特徴とする機能素子。
【請求項2】
前記第1基板上には、前記第2基板を覆うようにリッドが接着部材で接合され、
前記溝は、前記接着部材により封止されたことを特徴とする請求項1に記載の機能素子。
【請求項3】
前記溝には、前記素子部の配線が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の機能素子。
【請求項4】
前記第1基板は、ガラスで形成され、
前記第2基板は、半導体材料で形成され、
前記第1基板と前記第2基板とは、陽極接合により接合されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項5】
前記素子部は、
可動部と、
前記可動部を支持する支持部と、
前記第1基板側に接続する固定電極指と、を有し、
前記可動部は、
前記固定電極指に対向する可動電極指と、前記可動電極指および前記支持部を接続した可撓部とを、有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項6】
第1基板と第2基板とを用意し、前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方に表面に溝を形成する工程と、
前記第1基板上に前記第2基板を接合し、前記第1基板と前記第2基板との間に内部空間を形成し、前記溝により前記内部空間を通気させる工程と、
前記第2基板に素子部を形成する工程と、
前記第2基板を覆うようにリッドを前記第1基板上に接着部材で接合すると共に、前記接着部材により前記溝を封止する工程と、
を備えたことを特徴とする機能素子の製造方法。
【請求項7】
第1基板と第2基板とを用意し、前記第2基板に貫通孔を形成する工程と、前記第1基板上に前記第2基板を接合し、前記第1基板と前記第2基板との間に内部空間を形成し、 前記貫通孔により前記内部空間を通気させる工程と、
前記第2基板の前記貫通孔を含む領域をエッチングで抜いて素子部を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする機能素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の機能素子を有することを特徴とする物理量センサー。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の機能素子を有することを特徴とする電子機器。
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板上に設けられ、且つ、素子部を有する第2基板と、
を備え、
前記第1基板と前記第2基板との間には内部空間が設けられ、
前記第1基板および前記第2基板の互いに対向する面の少なくとも一方には、前記内部空間と外部とを連通する溝が設けられていることを特徴とする機能素子。
【請求項2】
前記第1基板上には、前記第2基板を覆うようにリッドが接着部材で接合され、
前記溝は、前記接着部材により封止されたことを特徴とする請求項1に記載の機能素子。
【請求項3】
前記溝には、前記素子部の配線が設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の機能素子。
【請求項4】
前記第1基板は、ガラスで形成され、
前記第2基板は、半導体材料で形成され、
前記第1基板と前記第2基板とは、陽極接合により接合されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項5】
前記素子部は、
可動部と、
前記可動部を支持する支持部と、
前記第1基板側に接続する固定電極指と、を有し、
前記可動部は、
前記固定電極指に対向する可動電極指と、前記可動電極指および前記支持部を接続した可撓部とを、有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の機能素子。
【請求項6】
第1基板と第2基板とを用意し、前記第1基板および前記第2基板の少なくとも一方に表面に溝を形成する工程と、
前記第1基板上に前記第2基板を接合し、前記第1基板と前記第2基板との間に内部空間を形成し、前記溝により前記内部空間を通気させる工程と、
前記第2基板に素子部を形成する工程と、
前記第2基板を覆うようにリッドを前記第1基板上に接着部材で接合すると共に、前記接着部材により前記溝を封止する工程と、
を備えたことを特徴とする機能素子の製造方法。
【請求項7】
第1基板と第2基板とを用意し、前記第2基板に貫通孔を形成する工程と、前記第1基板上に前記第2基板を接合し、前記第1基板と前記第2基板との間に内部空間を形成し、 前記貫通孔により前記内部空間を通気させる工程と、
前記第2基板の前記貫通孔を含む領域をエッチングで抜いて素子部を形成する工程と、
を備えたことを特徴とする機能素子の製造方法。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の機能素子を有することを特徴とする物理量センサー。
【請求項9】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の機能素子を有することを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−141160(P2012−141160A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292289(P2010−292289)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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