説明

歩行者検知システム及び歩行者検知装置

【課題】 道路を横断する歩行者の安全性を向上させることができる歩行者検知システム及び歩行者検知装置を提供する。
【解決手段】 歩行者44の靴には、歩行者の体格や性別等を示す情報を含む歩行者属性情報を送信するICタグが内蔵されている。交差点の横断歩道42A〜42Dの両端側には、歩行者側から送信された歩行者属性情報を受信し、歩行者の有無や進行方向、横断歩道の横断歩道番号等を含む歩行者横断情報を送信する歩行者横断情報出力装置46A1〜46D2が設けられている。車両30は、歩行者横断情報出力装置46A1〜D2から送信された歩行者横断情報を受信して参照し、自車両の進行方向の横断歩道に歩行者が存在する場合には、その歩行者の有無や歩行者の進行方向等を運転者に警告する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、歩行者検知システム及び歩行者検知装置に係り、特に、道路を横断中の歩行者を検知する歩行者検知システム及び歩行者検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
交差点には信号機が設けられると共に、歩行者の安全を確保するために横断歩道が設けられる。そして、車両が交差点に進入し、右左折する際には、歩行者が横断歩道を横断中か否かを十分に確認して右左折する必要がある。
【0003】
しかしながら、車両が交差点を右左折して横断歩道を横切る場合、特に車両が交差点に進入してきた方向と横断歩道を渡る歩行者の進行方向が同じ場合には、車両にとって歩行者が死角となりやすく、歩行者の安全性が十分とは言えない。
【0004】
このため、例えば特許文献1には、歩行者に取り付けられた発信器から電波出力された歩行者の現在位置や歩行能力に関する情報を含む歩行者情報を交差点側に設けられた装置で受信し、これを各車両に送信する交差点横断歩行者監視システムが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、交差点側に設けられた歩行者検出装置で横断歩道を横断する歩行者を検出して歩行者の有無の情報や横断歩道を識別する識別信号等を含む歩行者情報を車両に送信し、車両側では、車両の進行方向に応じて必要な歩行者情報のみをディスプレイに表示させる車両用歩行者検知警報システムが開示されている。
【特許文献1】特開2001−134891号公報
【特許文献2】特開平7−105477号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、車両側で歩行者の進行方向を検知することができないため、車両のドライバーが横断歩道を横断する歩行者の現在の状況を適切に認識することができない場合がある。従って、交差点での歩行者の安全性をさらに向上させるために、改良の余地がある。
【0007】
本発明は、上記事実を考慮して成されたものであり、道路を横断する歩行者の安全性を向上させることができる歩行者検知システム及び歩行者検知装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の歩行者検知システムは、歩行者が身に付ける物に取り付けられ、前記歩行者の存在を示す歩行者信号を発信する発信装置と、道路側に設けられ、道路を横断する歩行者から発信された前記歩行者信号を受信する道路側受信手段、及び、受信した前記歩行者信号に基づいて前記道路を横断する歩行者の歩行者進行方向を含む歩行者横断情報を生成して、前記交差点に進入する車両に向けて送信する送信手段を含む歩行者横断情報出力装置と、前記車両に設けられ、前記歩行者横断情報を受信する車両側受信手段、及び、前記歩行者横断情報に基づいて、前記道路を横断する歩行者の存在及び前記歩行者進行方向を前記車両の乗員に向けて報知する報知手段を含む歩行者検知装置と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、歩行者が身に付ける発信装置、道路側に設けられる歩行者横断情報出力装置、及び車両側に設けられる歩行者検知装置を備えている。
【0010】
発信装置は、歩行者が身に付ける物に取り付けられ、歩行者の存在を示す歩行者信号を発信する。
【0011】
歩行者横断情報出力装置は、道路を横断する歩行者から発信された歩行者信号を受信し、受信した歩行者信号に基づいて道路を横断する歩行者の歩行者進行方向を含む歩行者横断情報を生成して、交差点に進入する車両に設けられた歩行者検知装置に向けて送信する。なお、道路を横断する歩行者とは、道路を横断中の歩行者のみならず、これから道路を横断しようとする歩行者を含む。
【0012】
歩行者検知装置は、歩行者横断情報出力装置から送信された歩行者横断情報を受信し、受信した歩行者横断情報に基づいて、道路を横断する歩行者の存在及び歩行者進行方向を前記車両の乗員に向けて報知する。
【0013】
このように、道路側で道路を横断する歩行者の進行方向を検出して車両側に通知し、車両側では歩行者の進行方向を車両の乗員に報知するので、車両の運転者は、確実に道路を横断する歩行者を認識することができる。このため、運転者が歩行者に注意して運転することが促進され、道路を横断する歩行者の安全性を向上させることができる。
【0014】
なお、請求項2に記載したように、前記歩行者信号は、前記歩行者の体格に関する情報及び性別に関する情報の少なくとも一方の情報を含む信号とすることができる。これにより、車両の運転者は道路を横断する歩行者が大人か子供か等を認識することができ、運転者が歩行者に注意して運転することがさらに促進され、より歩行者の安全性を向上させることができる。
【0015】
また、請求項3に記載したように、前記歩行者が身に付ける物は靴であり、前記発信装置は、前記歩行者の靴に内蔵される構成とすることができる。この場合、例えば靴の製造時点において例えば靴の踵に内蔵させる。これにより、ユーザーが発信装置を取り付けたりする必要がなく、利便性を向上させることができる。
【0016】
また、請求項4に記載したように、前記発信装置から発信される歩行者信号は指向性を有すると共に、前記道路側受信手段は、前記道路の横断方向の両端側に各々設けられた構成としてもよい。これにより、簡単な構成で歩行者の進行方向を検出することができる。
【0017】
請求項5記載の発明の歩行者検知装置は、歩行者が身に付ける物に取り付けられ、前記歩行者の存在を示す歩行者信号を発信する発信装置と、道路側に設けられ、道路を横断する歩行者から発信された前記歩行者信号を受信する道路側受信手段、及び、受信した前記歩行者信号に基づいて前記道路を横断する歩行者の歩行者進行方向を含む歩行者横断情報を生成して、前記交差点に進入する車両に向けて送信する送信手段を含む歩行者横断情報出力装置と、を含む歩行者検知システムにおいて前記車両に搭載される歩行者検知装置であって、前記歩行者横断情報を受信する車両側受信手段と、前記歩行者横断情報に基づいて、前記道路を横断する歩行者の存在及び前記歩行者進行方向を前記車両の乗員に向けて報知する報知手段と、を含むことを特徴とする。
【0018】
この発明によれば、運転者が歩行者に注意して運転することが促進され、道路を横断する歩行者の安全性を向上させることができる。
【0019】
なお、請求項6に記載したように、前記車両の車両進行方向を検出する進行方向検出手段をさらに備え、前記報知手段は、前記車両進行方向の道路を横断する歩行者が存在する場合にのみ報知するようにしてもよい。これにより、車両の運転者にとって真に必要な情報のみが報知されるため、運転者はより的確に車両の進行方向の道路を横断する歩行者を認識することができる。
【0020】
また、請求項7に記載したように、前記報知手段は、音声出力手段を含み、前記道路を横断する歩行者の存在及び前記歩行者進行方向を表す警告メッセージを出力するようにしてもよい。
【0021】
また、請求項8に記載したように、前記報知手段は、カーナビゲーションシステムを含み、前記道路を横断する歩行者の存在及び前記歩行者進行方向を示すマークを地図上に表示させるようにしてもよい。
【0022】
また、請求項9に記載したように、前記報知手段は、前記車両のフロントガラスに画像を投影させるヘッドアップディスプレイを含み、前記道路を横断する歩行者の存在及び前記歩行者進行方向を示すマークを前記フロントガラスに投影させるようにしてもよい。
【0023】
また、請求項10に記載したように、前記報知手段は、前記車両の乗員の体の一部が接触する部位を振動させる振動装置を含み、前記道路を横断する歩行者が存在する場合に前記振動装置を振動させるようにしてもよい。
【0024】
また、請求項11に記載したように、前記報知手段は、前記車両の乗員を拘束するシートベルトの張力を調整する張力調整装置を含み、前記道路を横断する歩行者が存在する場合に前記シートベルトの張力を強めるようにしてもよい。
【0025】
また、請求項12に記載したように、前記報知手段は、前記車両を操舵するステアリングに微弱電流を供給する電流供給装置を含み、前記道路を横断する歩行者が存在する場合に前記ステアリングに微弱電流を供給するようにしてもよい。
【0026】
また、請求項13に記載したように、前記進行方向検出手段は、前記車両のウインカースイッチ、ヨーレートセンサ、及び操舵角センサの少なくとも一つである構成としてもよい。
【発明の効果】
【0027】
以上説明したように本発明によれば、道路を横断する歩行者の安全性を向上させることができる、という効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施形態に係る歩行者検知装置10の概略構成を示している。図1に示すように、歩行者検知装置10は、制御部12、左ウインカースイッチ14L、右ウインカースイッチ14R、ヨーレートセンサ16、操舵角センサ18、操作部20、状態表示部22、警告装置24、カーナビゲーションシステム26、及び受信部28等を含んで構成されている。この歩行者検知装置10は、図2に示すような車両30に搭載される。
【0030】
左ウインカースイッチ14Lは、車両30の左ウインカーを点滅させるようにドライバーが車両30のウィンカーレバーを操作した時にオンするスイッチであり、右ウインカースイッチ14Rは、車両30の右ウインカーを点滅させるようにドライバーが車両30のウィンカーレバーを操作した時にオンするスイッチである。
【0031】
ヨーレートセンサ16は、車両30の重心周りの回転角速度を検出し、これに応じた信号(回転角速度信号)を出力する。
【0032】
操舵角センサ18は、車両30の前輪を操舵するステアリングの操舵角を検出し、これに応じた信号(操舵角信号)を出力する。
【0033】
操作部20は、空調条件や各種機能の設定を行うためのボタンやスイッチ等を含んで構成される。
【0034】
状態表示部22は、車両30の速度やエンジンの回転数、ドアの開閉状況、トランクの開閉状況等の車両30の状態を表示する。
【0035】
警告装置24は、車両30が交差点に進入した際に、車両30の進行方向の歩道上に歩行者が存在することが検出された場合にドライバー等に対して警告するための装置であり、例えば警告音を出力したり、警告メッセージを音声で出力したりする。
【0036】
カーナビゲーションシステム26は、地図データを記録したDVD−ROM、CD−ROM、ハードディスク等の記録媒体やディスプレイ、制御装置等を備え、車両30の位置(緯度、経度、高度)をGPS(Global Positioning System)衛星からの信号に基づいて演算し、これを2次元又は3次元の地図上に表示したナビゲーション画面を生成して前記ディスプレイ上に表示するシステムである。
【0037】
受信部28は、交差点側に設けられた歩行者横断情報出力装置から出力された歩行者横断情報を無線受信する。
【0038】
図2に示すように、交差点40には、歩行者が道路を安全に横断するための横断歩道42A〜42Dが設けられている。そして、横断歩道42Aの両端側には、横断歩道42Aを渡る又は渡ろうとする歩行者44から出力された歩行者属性情報を受信し、これに基づいて歩行者横断情報を生成して送信する歩行者横断情報出力装置46A1、A2が設けられている。同様に、横断歩道42Bの両端側には歩行者横断情報出力装置46B1、B2が、横断歩道42Cの両端側には歩行者横断情報出力装置46C1、C2が、横断歩道42Dの両端側には歩行者横断情報出力装置46D1、D2が、それぞれ設けられている。
【0039】
これらの歩行者横断情報出力装置は、例えば信号機に併設して設けられる。なお、以下では、これらの歩行者横断情報出力装置を総称するときは単に歩行者横断情報出力装置46という。
【0040】
歩行者横断情報出力装置46は、後述する歩行者44が携行するICタグを駆動するための所定の電磁波を常時横断歩道へ向けて照射し、横断歩道を含む所定範囲に前記ICタグを駆動するための電界エリアを形成させる。
【0041】
例えば図3に示すように、歩行者横断情報出力装置46A2は、横断歩道42Aに向けて(同図において上側から下側へ向けて)所定の電磁波を出力し、横断歩道42A及び横断歩道42Aの横断前に歩行者が待機するエリアの一部を含む範囲に電界エリアEを形成する。一方、歩行者横断情報出力装置A1は、横断歩道42Aに向けて(同図において下側から上側へ向けて)所定の電磁波を出力し、横断歩道42A及び横断歩道42Aの横断前に歩行者が待機するエリアの一部を含む範囲に電界エリア(図示省略)を形成する。
【0042】
歩行者44は、歩行者属性情報を送信するためのICタグを携行している。本実施形態では、図4に示すように靴48の踵48AにICタグ50が予め内蔵されている。
【0043】
図5に示すように、ICタグ50は、ICタグ50全体を制御するCPU(中央処理装置)52と、各種情報の書き込み及び読み出しが可能に構成された不揮発性のメモリ54と、アンテナ56を介して歩行者横断情報出力装置46との間で信号の送受信を行う送受信部58と、歩行者横断情報出力装置46から出力された所定の電磁波による電磁誘導によって発生した電力を蓄電するコンデンサ59と、を備えている。
【0044】
送受信部58は、歩行者横断情報出力装置46から出力された所定の電磁波をアンテナ56を介して受信して電磁誘導によって電力を発生する機能を有し、これをコンデンサに蓄電させる。CPU52及びメモリ54は、コンデンサ59に蓄電された電力によって駆動する。従って、歩行者44が電界エリアEに入ることによりICタグ50が動作可能となる。
【0045】
メモリ54には、歩行者44が履いている靴48の靴サイズLや靴の種類(大人男性用、女性用、小学生等の子供用)といった歩行者44の体格を特定するための情報や性別を特定するための情報等の歩行者44の属性に関する情報を含む歩行者属性情報が予め書き込まれている。
【0046】
歩行者44が電界エリアEに入ると、CPU52が作動し、メモリ54に記憶された歩行者属性情報を読み出し、これを送受信部58及びアンテナ56を介して送信する。なお、歩行者属性情報の送信は、例えば所定時間毎に定期的に送信する。
【0047】
なお、アンテナ56から送信される電磁波は指向性を有しており、ICタグ50は、歩行者44が歩行する方向に向けて、すなわち歩行者44の靴48の踵48A側からつま先側へ向けて歩行者属性情報が送信されるように踵48Aに内蔵される。
【0048】
これにより、図2に示すように、歩行者44が横断歩道42Aを図中矢印A方向に横断した場合、歩行者44から送信された歩行者属性情報は歩行者横断情報出力装置46A2によって受信される。従って、歩行者横断情報出力装置46A2では、歩行者44が横断歩道42Aを図中矢印A方向に横断していることを検出することができる。
【0049】
一方、歩行者44が横断歩道42Aを図中矢印B方向に横断した場合、歩行者44から送信された歩行者属性情報は歩行者横断情報出力装置46A1によって受信される。従って、歩行者横断情報出力装置46A1では、歩行者44が横断歩道42Aを図中矢印B方向に横断していることを検出することができる。
【0050】
なお、歩行者横断情報出力装置46とICタグ50との通信は、例えばマイクロ波によって行うことができるが、これに限られるものではない。
【0051】
歩行者横断情報出力装置46は、図6に示すように、制御部60、送受信部62、及びメモリ64を含んで構成されている。メモリ64には、横断歩道情報66が予め記憶されている。横断歩道情報66は、その歩行者横断情報出力装置46が担当する横断歩道を特定するための情報、例えばその横断歩道に予め付与された横断歩道番号と、その歩行者横断情報出力装置46が検出する歩行者の進行方向と、を含む。この場合、各横断歩道にはそれぞれ固有の横断歩道番号が予め付与される。歩行者の進行方向の情報は、例えば歩行者が進行する方角に対応した情報とすることができる。例えば図2の上側の方角が北で下側が南である場合、図中矢印A方向に進行する歩行者の進行方向は「北」、すなわち「南」から「北」へ向かう方向となる。
【0052】
なお、横断歩道番号は、車両30に搭載されるカーナビゲーションシステム26にも地図データの一部として記憶される。また、横断歩道を特定するための情報は、横断歩道番号に限らず、横断歩道の位置を示す緯度・経度等の情報でもよい。
【0053】
歩行者横断情報出力装置46は、歩行者44から歩行者属性情報を受信すると、歩行者横断情報を生成して送信する。なお、歩行者横断情報の送信エリアは、交差点近傍の所定範囲であって、交差点に進入しようとする車両又は交差点に進入した車両が受信可能な範囲である。
【0054】
次に、本実施形態の作用として、各歩行者横断情報出力装置46の制御部60で実行される制御及び歩行者検知装置10の制御部12で実行される制御について、図7及び図8に示すフローチャートを参照して説明する。
【0055】
まず、歩行者横断情報出力装置46の制御部60で実行される制御について説明する。図7に示すように、ステップ100では、歩行者44から送信された歩行者属性情報を送受信部62で受信したか否かを判断する。そして、歩行者属性情報を受信していない場合には受信するまで待機し、歩行者属性情報を受信した場合には、ステップ102へ移行する。
【0056】
ステップ102では、受信した歩行者属性情報に基づいて歩行者横断情報を生成する。この歩行者横断情報は、例えば受信した歩行者属性情報にメモリ64に記憶された横断歩道情報66を加えた情報である。ステップ104では、生成した歩行者横断情報を送信する。
【0057】
次に、車両30に搭載された歩行者検知装置10の制御部12で実行される制御について説明する。なお、この制御は、車両30のイグニッションスイッチがオンされると実行される。
【0058】
図8に示すように、ステップ200では、歩行者横断情報出力装置46から送信された歩行者横断情報を受信したか否かを判断する。そして、歩行者横断情報を受信していない場合には、歩行者横断情報を受信するまで待機し、歩行者横断情報を受信した場合には、ステップ202へ移行する。なお、交差点に進入した車両30は、歩行者を検出した歩行者横断情報出力装置46から各々歩行者横断情報を受信する。
【0059】
ステップ202では、車両30の進行方向を検出する。例えば右ウインカースイッチ14R及び左ウインカースイッチ14Lのオンオフを検出することにより進行方向を検出することができる。すなわち、右ウインカースイッチ14Rがオンならば進行方向は右方向と判断することができ、左ウインカースイッチ14Lがオンであれば進行方向は左方向と判断することができ、何れもオフであれば進行方向は直進方向であると判断することができる。
【0060】
なお、車両30の進行方向の検出は上記に限られるものではない。例えば、ヨーレートセンサ16から出力された回転角速度信号で表される回転角速度が予め定めた右折用閾値以上又は予め定めた左折用閾値以上か否かを判断し、何れかの閾値以上である場合に進行方向が右方向又は左方向であると判断するようにしてもよい。
【0061】
また、操舵角センサ18から出力された操舵角信号で表される車両30のステアリングの操舵角が予め定めた右折用閾値以上又は予め定めた左折用閾値以上か否かを判断し、何れかの閾値以上である場合に進行方向が右方向又は左方向であると判断するようにしてもよい。このようにヨーレートセンサ16又は操舵角センサ18からの出力信号に基づいて進行方向を判断する場合、各閾値は、各センサで検出された回転角速度又は操舵角が、この値以上であれば確実に右折又は左折しようとしていると判断できる値に設定される。
【0062】
ステップ204では、車両30の進行方向の横断歩道に歩行者が存在するか否かを判断する。すなわち進行方向が直進方向の場合には、その先の横断歩道に歩行者が存在するか否かを判断し、進行方向が右方向又は左方向の場合には、車両30が右折又は左折した先の横断歩道に歩行者が存在するか否かを判断する。
【0063】
具体的には、進行方向の横断歩道の横断歩道番号を特定し、特定した横断歩道番号と、受信した全ての歩行者横断情報に含まれる横断歩道番号とを各々比較して、一致する歩行者横断情報が存在するか否かを判断する。横断歩道番号が一致する歩行者横断情報が存在する場合には、その横断歩道番号で示される横断歩道に歩行者が存在すると判断することができる。
【0064】
なお、横断歩道番号の特定は、例えばカーナビゲーションシステム26により行うことができる。例えば横断歩道番号とその横断歩道の位置(緯度・経度等)を示す位置データとの対応関係をカーナビゲーションシステム26を構成する記録媒体に地図データの一部として予め記憶しておき、これと車両30の現在位置、ステップ202で検出した進行方向に基づいて、車両30の進行方向の横断歩道の横断歩道番号を特定することができる。
【0065】
そして、車両30の進行方向の横断歩道に歩行者が存在しないと判断した場合には、ステップ200へ戻って上記と同様の処理を繰り返し、車両30の進行方向の横断歩道に歩行者が存在すると判断した場合には、ステップ206へ移行する。
【0066】
ステップ206では、警告処理を行う。具体的には、例えば警告装置24により進行方向の横断歩道に歩行者が存在すること及び歩行者の進行方向を示す警告メッセージを音声出力させることにより、運転者に対して報知する。なお、歩行者の進行方向は、歩行者横断情報に含まれるので、これを参照すればよい。また、警告音を出力することにより運転者に報知するようにしてもよい。
【0067】
このように、車両30の進行方向以外の横断歩道に歩行者がいても警告せず、進行方向の横断歩道に歩行者がいる場合にのみ警告するので、運転者は的確に周囲の状況を認識することができる。また、例えば図2において、車両30は、横断歩道42Aを図中矢印B方向に歩行する歩行者44は認識しやすいが、図中矢印A方向に歩行する歩行者44は認識しづらいが、本実施形態では歩行者の進行方向をも報知するので、運転者は死角になりやすい歩行者44を確実に認識することができる。さらに、歩行者横断情報出力装置46が歩行者のICタグ50を駆動するために形成する電界エリアEは、横断歩道のみならず横断歩道の横断前に歩行者が待機するエリアの一部を含む範囲としているので、横断歩道上の歩行者のみならず、これから横断歩道を歩行しようとする歩行者をも検出することができ、運転者は、死角になりやすい歩行者をより確実に認識することができる。
【0068】
また、警告メッセージに、単に進行方向に横断歩道に歩行者が存在することだけでなく、歩行者横断情報に含まれる歩行者属性情報を参照して、歩行者の体格や性別(大人か子供か、男性か女性か等)を含めるようにしてもよい。なお、警告音を出力する場合には、警告音の音色や長さを適宜変更することにより歩行者の体格や性別を運転者に認識させることができる。このように、歩行者の体格や性別をも運転者に報知することにより、運転者は、例えば歩行者が子供の場合には、より注意して運転しなければならないことを的確に認識することができる。
【0069】
なお、警告処理は、運転者に注意を促すことができるものであれば、これに限られるものではない。例えばカーナビゲーションシステム26に歩行者が存在する横断歩道の横断歩道番号を通知し、その位置に歩行者が存在することを示すマーク、歩行者の進行方向を示すマーク等を表示したナビゲーション画面を表示させるようにしてもよい。
【0070】
また、警告装置24を、車両30のフロントガラスに画像を投影させる所謂ヘッドアップディスプレイで構成し、進行方向の横断歩道に歩行者が存在することや歩行者の進行方向を示す警告マークや警告メッセージ等を当該ヘッドアップディスプレイに表示させるようにしてもよい。
【0071】
また、警告装置24を、車両30の運転者が着座するシートのシートバック(背もたれ)やヘッドレスト等の運転者の体の一部が接触する部位を振動させる振動装置で構成し、進行方向に歩行者が存在する場合に当該振動装置を振動させて警告するようにしてもよい。
【0072】
また、警告装置24を、車両30の運転者をシートに拘束するシートベルトの張力を調整する張力調整装置で構成し、進行方向に歩行者が存在する場合に当該張力調整装置でシートベルトの張力を強めることにより警告するようにしてもよい。
【0073】
また、警告装置24を、車両30のステアリングに微弱電流を供給する電流供給装置で構成し、進行方向に歩行者が存在する場合に当該電流供給装置を作動させてステアリングに微弱電流を流し、運転者の手に軽度の電気ショックを与えることにより警告するようにしてもよい。さらに、上記の警告方法を組み合わせても良い。
【0074】
このように、本実施形態では、交差点側に設けられた歩行者横断情報出力装置46から横断歩道を歩行する歩行者の車両30の進行方向を検出し、交差点での歩行者の安全性を向上させることができる
なお、本実施形態では、横断情報出力装置46とICタグ50の通信にマイクロ波を用いているが、これに限らず、ミリ波、赤外線等の他の種類の電磁波を用いて通信してもよい。
【0075】
また、本実施形態では、ICタグ50が、歩行者横断情報出力装置46が出力する所定の電磁波を受信し電磁誘導によって得た電力に基づき作動する場合について説明したが、これに限らず、ICタグ50を駆動するための電源(リチウム電池等)を靴48の踵48Aに予め内蔵し、この電源によってICタグ50を駆動するようにしてもよい。この場合、例えば定期的にICタグ50から歩行者属性情報を出力する。これにより、歩行者横断情報出力装置46からICタグ50を駆動するための所定の電磁波を出力する必要がなくなる。
【0076】
また、本実施形態では、ICタグ50が歩行者の靴の踵に内蔵された場合について説明したが、ICタグ50から送信される歩行者属性情報が常に歩行者の進行方向を向くように内蔵できるものであれば、これに限られない。例えば、ベルトのバックル部分、帽子のつば、めがねのフレーム、衣服の正面側の一部分等のように、歩行者が身に付けた場合に常に特定の方向を向くものにICタグ50を内蔵するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明に係る歩行者検知装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】交差点の平面図である。
【図3】電界エリアについて説明するための図である。
【図4】歩行者の靴を一部破断した状態で示す側面図である。
【図5】ICタグの概略構成を示すブロック図である。
【図6】歩行者横断情報出力装置の概略構成を示すブロック図である。
【図7】歩行者横断情報出力装置の制御部で実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【図8】歩行者検知装置の制御部で実行される制御ルーチンのフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
10 歩行者検知装置
12 制御部
14R 右ウインカースイッチ(進行方向検出手段)
14L 左ウインカースイッチ(進行方向検出手段)
16 ヨーレートセンサ(進行方向検出手段)
18 操舵角センサ(進行方向検出手段)
20 操作部
22 状態表示部
24 警告装置(報知手段)
26 カーナビゲーションシステム(報知手段)
28 受信部(車両側受信手段)
30 車両
40 交差点
42A〜42D 横断歩道
44 歩行者
46A1〜D2 歩行者横断情報出力装置
50 ICタグ(発信装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
歩行者が身に付ける物に取り付けられ、前記歩行者の存在を示す歩行者信号を発信する発信装置と、
道路側に設けられ、道路を横断する歩行者から発信された前記歩行者信号を受信する道路側受信手段、及び、受信した前記歩行者信号に基づいて前記道路を横断する歩行者の歩行者進行方向を含む歩行者横断情報を生成して、前記交差点に進入する車両に向けて送信する送信手段を含む歩行者横断情報出力装置と、
前記車両に設けられ、前記歩行者横断情報を受信する車両側受信手段、及び、前記歩行者横断情報に基づいて、前記道路を横断する歩行者の存在及び前記歩行者進行方向を前記車両の乗員に向けて報知する報知手段を含む歩行者検知装置と、
を備えた歩行者検知システム。
【請求項2】
前記歩行者信号は、前記歩行者の体格に関する情報及び性別に関する情報の少なくとも一方の情報を含む信号であることを特徴とする請求項1記載の歩行者検知システム。
【請求項3】
前記歩行者が身に付ける物は靴であり、前記発信装置は、前記歩行者の靴に内蔵されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の歩行者検知システム。
【請求項4】
前記発信装置から発信される歩行者信号は指向性を有すると共に、前記道路側受信手段は、前記道路の横断方向の両端側に各々設けられたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の歩行者検知システム。
【請求項5】
歩行者が身に付ける物に取り付けられ、前記歩行者の存在を示す歩行者信号を発信する発信装置と、道路側に設けられ、道路を横断する歩行者から発信された前記歩行者信号を受信する道路側受信手段、及び、受信した前記歩行者信号に基づいて前記道路を横断する歩行者の歩行者進行方向を含む歩行者横断情報を生成して、前記交差点に進入する車両に向けて送信する送信手段を含む歩行者横断情報出力装置と、を含む歩行者検知システムにおいて前記車両に搭載される歩行者検知装置であって、
前記歩行者横断情報を受信する車両側受信手段と、
前記歩行者横断情報に基づいて、前記道路を横断する歩行者の存在及び前記歩行者進行方向を前記車両の乗員に向けて報知する報知手段と、
を含むことを特徴とする歩行者検知装置。
【請求項6】
前記車両の車両進行方向を検出する進行方向検出手段をさらに備え、前記報知手段は、前記車両進行方向の道路を横断する歩行者が存在する場合にのみ報知することを特徴とする請求項5記載の歩行者検知装置。
【請求項7】
前記報知手段は、音声出力手段を含み、前記道路を横断する歩行者の存在及び前記歩行者進行方向を表す警告メッセージを出力することを特徴とする請求項5又は請求項6記載の歩行者検知装置。
【請求項8】
前記報知手段は、カーナビゲーションシステムを含み、前記道路を横断する歩行者の存在及び前記歩行者進行方向を示すマークを地図上に表示させることを特徴とする請求項5乃至請求項7の何れか1項に記載の歩行者検知装置。
【請求項9】
前記報知手段は、前記車両のフロントガラスに画像を投影させるヘッドアップディスプレイを含み、前記道路を横断する歩行者の存在及び前記歩行者進行方向を示すマークを前記フロントガラスに投影させることを特徴とする請求項5乃至請求項8の何れか1項に記載の歩行者検知装置。
【請求項10】
前記報知手段は、前記車両の乗員の体の一部が接触する部位を振動させる振動装置を含み、前記道路を横断する歩行者が存在する場合に前記振動装置を振動させることを特徴とする請求項5乃至請求項9の何れか1項に記載の歩行者検知装置。
【請求項11】
前記報知手段は、前記車両の乗員を拘束するシートベルトの張力を調整する張力調整装置を含み、前記道路を横断する歩行者が存在する場合に前記シートベルトの張力を強めることを特徴とする請求項5乃至請求項10の何れか1項に記載の歩行者検知装置。
【請求項12】
前記報知手段は、前記車両を操舵するステアリングに微弱電流を供給する電流供給装置を含み、前記道路を横断する歩行者が存在する場合に前記ステアリングに微弱電流を供給することを特徴とする請求項5乃至請求項11の何れか1項に記載の歩行者検知装置。
【請求項13】
前記進行方向検出手段は、前記車両のウインカースイッチ、ヨーレートセンサ、及び操舵角センサの少なくとも一つであることを特徴とする請求項6乃至請求項12の何れか1項に記載の歩行者検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−72658(P2007−72658A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−257623(P2005−257623)
【出願日】平成17年9月6日(2005.9.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】