説明

死角車両検出システム、路側装置、車載装置および死角車両検出方法

【課題】死角車両を高精度に検出すること。
【解決手段】路側装置の通信経由情報生成部が、所定の端末装置を搭載した車両の位置およびサイズを含んだ情報である通信経由情報を生成し、路側装置の画像経由情報生成部が、道路の交通状況を撮像するカメラによる画像を画像解析することによって検出された車両の位置およびサイズを含んだ情報である画像経由情報を生成し、路側装置の車両配置情報生成部が、通信経由情報と画像経由情報とを照合して各車両に対応する車両配置情報を生成する際に、路側装置の信頼度付加処理部が、各車両配置情報に対して情報精度の高低を表す信頼度を付加し、車載装置の死角車両検出部が、信頼度が所定値以下である場合に、車両配置情報に含まれるサイズを変更して死角車両を検出するように死角車両検出システムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、自車両との間に存在する障害車両によって自車両から死角となる位置に存在する死角車両を検出する死角車両検出システム、路側装置、車載装置および死角車両検出方法に関し、特に、死角車両を高精度に検出することができる死角車両検出システム、路側装置、車載装置および死角車両検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自位置を送信する位置通報端末を保持した車両や歩行者の位置情報を無線通信経由で収集し、自車両のドライバーへ警告する手法が知られている。また、自車両もしくは道路近辺に設置されたカメラによる画像を解析することによって検出した障害物や対向車等をドライバーへ警告する手法についても知られている。
【0003】
そして、これらの手法を組み合わせ、自車両からみた死角に存在する物体(たとえば、対向車両や歩行者)を検出しようとする試みもなされている。たとえば、特許文献1には、歩行者に携帯させた携帯端末の位置と、車載カメラで撮像した障害物の位置とに基づいて死角位置に存在する歩行者を検出し、ドライバーへ警告する警告システムが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−46426号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている技術は、カメラによる画像に基づく位置情報と、位置通報端末に基づく位置情報とを組み合わせてはいるものの、位置通報端末を保持していない死角歩行者を検出することができないという問題がある。すなわち、特許文献1のものは、自車両からみて死角位置に存在する歩行者が、位置通報端末を携帯していることを前提とする技術である。
【0006】
ところが、道路上、あるいは、道路近辺に存在する歩行者すべてが、かかる位置通報端末を保持しているとは限らない。このため、位置通報端末を保持していない死角歩行者を検出するためには、カメラによる画像の解析結果と組み合わせることが必要となる。なお、特許文献1のものを応用して死角車両の検出に用いる場合にも、同様のことがいえる。
【0007】
ここで、カメラ画像を解析して得られる情報は、天候あるいは時刻に左右される視界、カメラの精度、認識プログラムの精度に依存するため、位置通報端末を経由して得られる情報に比べて精度が低い情報となる。したがって、カメラ画像を解析して得られる情報と、位置通報端末を経由して得られる情報とを単に組み合わせても、死角車両や死角歩行者の高精度な検出は困難である。
【0008】
これらのことから、死角車両を高精度に検出することができる死角車両検出システム、路側装置、車載装置および死角車両検出方法をいかにして実現するかが大きな課題となっている。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するためになされたものであり、死角車両を高精度に検出することができる死角車両検出システム、路側装置、車載装置および死角車両検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、自車両との間に存在する障害車両によって前記自車両から死角となる位置に存在する死角車両を検出する死角車両検出システムであって、所定の端末装置を搭載した車両の位置およびサイズを含んだ情報である通信経由情報を生成する通信経由情報生成手段と、道路の交通状況を撮像するカメラによる画像を画像解析することによって検出された車両の位置およびサイズを含んだ情報である画像経由情報を生成する画像経由情報生成手段と、前記通信経由情報と前記画像経由情報とを照合して各車両に対応する車両配置情報を生成する際に、各車両配置情報に対して情報精度の高低を表す信頼度を付加する信頼度付加手段と、前記信頼度が所定値以下である場合に、前記車両配置情報に含まれる前記サイズを変更して前記死角車両を検出する死角車両検出手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所定の端末装置を搭載した車両の位置およびサイズを含んだ情報である通信経由情報を生成し、道路の交通状況を撮像するカメラによる画像を画像解析することによって検出された車両の位置およびサイズを含んだ情報である画像経由情報を生成し、通信経由情報と画像経由情報とを照合して各車両に対応する車両配置情報を生成する際に、各車両配置情報に対して情報精度の高低を表す信頼度を付加し、信頼度が所定値以下である場合に、車両配置情報に含まれるサイズを変更して死角車両を検出することとしたので、精度の異なる情報を効率良く組み合わせることによって、通信経由情報のみ、あるいは、画像経由情報のみに含まれる死角車両についても、高精度に検出することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る死角車両検出システム、路側装置、車載装置および死角車両検出方法の好適な実施例を詳細に説明する。なお、実施例1では、路側装置に接続されたカメラで道路状況を撮像する場合について、実施例2では、自車両に搭載されたカメラで道路状況を撮像する場合について、それぞれ説明することとする。
【実施例1】
【0013】
図1は、実施例1に係る死角車両検出システムの配置を示す図である。同図に示すように、死角車両検出システム1は、地上に設置された路側装置10と、自車両に搭載された車載装置20とから構成される。ここで、路側装置10には、道路状況を撮像するCCD(Charge Coupled Devices)カメラ等のカメラと、位置通報端末を搭載した他車両(同図における「A」および「D」参照)から、現在位置、現在速度、車両サイズ、車種といった情報を収集する通信装置とが接続されている。なお、同図における「B」および「C」は、位置通報端末を搭載していない車両を表している。
【0014】
路側装置10は、通信装置経由で取得した車両位置、車両サイズ等の情報から車両配置に係る情報(以下、「通信経由情報」と記載する)を生成するとともに、カメラによる画像を画像解析することによって検出した車両の車両位置、車両サイズ等の情報(以下、「画像経由情報」と記載する)を生成する。そして、通信経由情報と画像経由情報とを照合して各車両に対応する車両配置情報を生成する。なお、路側装置10は、車両配置情報を生成する際に、情報精度の高低を表す信頼度を付加するが、この点については、図2を用いて後述する。
【0015】
つづいて、路側装置10は、信頼度を付加した車両配置情報を車載装置20へ無線送信し、車載装置20では、信頼度が付加された車両配置情報および自車位置に係る情報から死角車両を検出する処理を行う。
【0016】
このように、死角車両検出システム1は、路側装置10が通信装置を介して生成した通信経由情報を用いるが、この通信経由情報は、位置通報端末を搭載した他車両(同図における「A」および「D」参照)に限られる。すなわち、位置通報端末を搭載していない他車両(同図における「B」および「C」参照)に関する情報は含まない。したがって、通信経由情報に含まれない車両に関する情報については、カメラ画像に由来する情報である画像経由情報で補完する必要がある。
【0017】
ところが、カメラ画像に由来する情報である画像経由情報は、天候あるいは時刻に左右される視界、カメラの精度、認識プログラムの精度に依存するため、位置通報端末に由来する情報である通信経由情報と比べて一般的に低精度な情報である。また、画像経由情報は、撮像された車両が他車両によって遮蔽される場合(他車両の背後に隠れる場合)があり、遮蔽された車両の位置情報は、さらに低精度なものとなる。このため、通信経由情報と画像経由情報とを単に合成することは、情報精度の観点から好ましくない。
【0018】
そこで、死角車両検出システム1では、路側装置10が、通信経由情報と画像経由情報とを合成して最終的な車両配置情報を生成する際に、情報精度の高低を表す信頼度を付加することとしている。そして、車載装置20が、死角車両を検出する際には、かかる信頼度を用いて死角車両であるか否かを判定する。また、路側装置10では、画像経由情報における遮蔽率(他車両によって画像が遮蔽される割合)を考慮して信頼度を付与することとしている。
【0019】
次に、実施例1に係る死角車両検出システム1の特徴について、図2を用いて説明する。図2は、実施例1に係る死角車両検出システム1の特徴を示す図である。なお、同図では、路面を上方からみた場合における、車両配置(車両位置および車両サイズ)を示している。また、同図における「A」〜「D」は、図1における車両「A」〜「D」に対応するものである。
【0020】
同図の「(1)路車間通信による車両配置」に示したように、通信経由情報に基づく車両配置には、位置通報端末を搭載した車両のみ(「A」および「D」)が含まれる(同図の21参照)。一方、「(2)画像解析による車両配置」に示したように、画像経由情報に基づく車両配置には、図1に示したカメラの視野内に存在する車両(「B」、「C」および「D」)が含まれる(同図の22a参照)。ここで、同図の22bには、カメラによる撮像画像を示しているが、「C」および「D」は、カメラとの間に存在する「B」によって遮蔽されている。すなわち、「C」および「D」に対応する位置情報は、「B」に対応する位置情報に比べて低精度な情報である。
【0021】
そして、「(3)合成した車両配置」に示したように、(1)および(2)を合成することで、「A」〜「D」の4台についての位置情報が得られるが(同図の23参照)、各位置情報には、「通常」、または、「通常」よりも信頼度が低いことを表す「低」の2種類の信頼度が付与されている。ここで、「A」および「D」については、通信経由情報(同図の(1)参照))に含まれているため、信頼度を「通常」としている。また、「B」については、通信経由情報には含まれないものの、画像経由情報において他車両による遮蔽がないため信頼度を「通常」としている。一方、「D」については、通信経由情報に含まれず、かつ、画像経由情報において他車両による遮蔽があるため信頼度を「低」としている。
【0022】
このように、車両配置情報に信頼度を付与し、信頼度が付与された車両配置情報を用いて死角判定を行うことで、情報の精度を加味した死角判定処理を行うことが可能となる。したがって、情報が低精度である場合には、安全マージンをとった死角判定処理(たとえば、位置情報に基づけば死角車両とはいえないが、死角車両と判定する等)を行うことができる。なお、死角判定処理の詳細については、図7および図8を用いて後述する。また、本実施例1では、信頼度を「通常」および「低」の2段階としているが、3段階以上とすることとしてもよい。
【0023】
次に、実施例1に係る死角車両検出システム1に含まれる各装置の構成について図3を用いて説明する。図3は、実施例1に係る死角車両検出システム1に含まれる各装置の構成を示す図である。同図に示すように、死角車両検出システム1は、路側装置10と、車載装置20とから構成される。
【0024】
路側装置10は、図1に示したカメラおよび通信装置に接続され、画像経由情報と通信経由情報とを合成することで最終的な車両配置情報を生成するとともに、生成した車両配置情報を車載装置20へ送信する処理を行う地上装置である。同図に示すように、路側装置10は、受信部11と、入力部12と、送信部13と、制御部14と、記憶部15とを備えている。また、制御部14は、通信経由情報生成部14aと、画像経由情報生成部14bと、信頼度付加処理部14cと、車両配置情報生成部14dとをさらに備えており、記憶部15は、通信経由情報15aと、画像経由情報15bと、車両配置情報15cとを記憶する。
【0025】
受信部11は、図1に示した通信装置と接続され、位置通報端末を搭載した車両から送られた車両位置、車両サイズ等の情報を、制御部14の通信経由情報生成部14aへ渡す処理を行う。入力部12は、図1に示したカメラと接続され、カメラが撮像した交通状況に係る画像データを受け付け、制御部14の画像経由情報生成部14bへ渡す処理を行う。送信部13は、制御部14の車両配置情報生成部14dが生成して記憶部15へ格納した車両配置情報15cを車載装置20へ無線送信する処理を行う。
【0026】
制御部14は、受信部11が受信したデータおよび入力部12が受け付けたデータに基づいて通信経由情報15aおよび画像経由情報15bを生成し、生成した通信経由情報15aおよび画像経由情報15bを合成する際に信頼度を付与した車両配置情報15cを生成する処理を行う。通信経由情報生成部14aは、受信部11から位置通報端末に由来する情報を受け取り、受け取った情報に基づいて通信経由情報15aを生成し、記憶部15へ格納する処理を行う処理部である。
【0027】
ここで、通信経由情報15aの例について図4を用いて説明しておく。図4は、通信経由情報15aの一例を示す図である。同図に示すように、通信経由情報15aは、たとえば、各データの通し番号を表す「通番」と、各車両の中心点等の代表位置を表す「代表位置」と、車両のサイズを表す「サイズ」とを含んだテーブルとして構成される。なお、「代表位置」および「サイズ」は、図2に示した車両配置のX軸/Y軸に対応して2次元のもの(道路を上方からみた平面図)を示したが、さらにZ軸方向のデータを含めて3次元のものとしてもよい。また、車両速度を含めて所定時間後における代表位置を算出することとしてもよい。
【0028】
図3に戻り、画像経由情報生成部14bについて説明する。画像経由情報生成部14bは、入力部12からカメラ画像を受け取り、受け取った画像を画像解析することによって画像に含まれる各車両の位置およびサイズを検出して画像経由情報15bを生成し、記憶部15へ格納する処理を行う処理部である。
【0029】
ここで、画像経由情報15bの例について図5を用いて説明しておく。図5は、画像経由情報15bの一例を示す図である。同図に示すように、画像経由情報15bは、たとえば、各データの通し番号を表す「通番」と、各車両の中心点等の代表位置を表す「代表位置」と、車両のサイズを表す「サイズ」と、他車両によって特定車両の画像が遮蔽される割合を表す「遮蔽率」とを含んだテーブルとして構成される。
【0030】
「遮蔽率」については、同図の通番1に示すように他車両による遮蔽が全くない場合には「0%」、同図の通番2に示すように他車両による遮蔽面積が20%であれば「20%」のようになる。なお、「代表位置」および「サイズ」は、図2に示した車両配置のX軸/Y軸に対応して2次元のもの(道路を上方からみた平面図)を示したが、さらにZ軸方向のデータを含めて3次元のものとしてもよい。また、時系列の画像を比較することで求めた車両速度を含めることとしてもよい。
【0031】
図3に戻り、信頼度付加処理部14cについて説明する。信頼度付加処理部14cは、通信経由情報15aおよび画像経由情報15bを入力データとして受け取り、これらの各データに、情報精度の高低を表す信頼度を付加したうえで、車両配置情報生成部14dへ渡す処理を行う処理部である。
【0032】
信頼度付加処理部14cは、通信経由情報15aに含まれる各車両データについて信頼度を「通常」とする。また、画像経由情報14bのみに含まれる各車両データについて、図5に示した「遮蔽率」が所定の閾値を下回る場合には信頼度を「通常」とするとともに、所定の閾値以上である場合には信頼度を「低」とする。なお、所定の閾値を0とすることで、画像経由情報14bのみに含まれる各車両データについての信頼度をすべて「低」とすることもできる。
【0033】
なお、本実施例1では、信頼度を「通常」と、「通常」よりも低い「低」との2段階としたが、3段階以上の多段階としてもよい。たとえば、通信経由情報15aに含まれる各車両データの信頼度を「通常」よりも高い「高」、画像経由情報14bのみに含まれる各車両データについて、遮蔽率が所定の閾値を下回る場合には「通常」、遮蔽率が所定の閾値以上である場合には「通常」よりも低い「低」とすることとしてもよい。
【0034】
車両配置情報生成部14dは、信頼度付加処理部14cによって付加された通信経由情報15aおよび画像経由情報15bに基づいて最終的な車両配置に係る情報である車両配置情報15cを生成し、記憶部15へ格納する処理を行う処理部である。
【0035】
ここで、車両配置情報15cの例について図6を用いて説明しておく。図6は、車両配置情報15cの一例を示す図である。同図に示すように、車両配置情報15cは、たとえば、各車両を一意に識別する「車両識別子」と、各車両の中心点等の代表位置を表す「代表位置」と、車両のサイズを表す「サイズ」と、信頼度付加処理部14cによって付加された「信頼度」とを含んだテーブルとして構成される。なお、「代表位置」および「サイズ」は、図2に示した車両配置のX軸/Y軸に対応して2次元のもの(道路を上方からみた平面図)を示したが、さらにZ軸方向のデータを含めて3次元のものとしてもよい。また、車両速度を含めることとしてもよい。
【0036】
記憶部15は、RAM(Random Access Memory)や、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶デバイスで構成される記憶部である。また、この記憶部15には、既に説明した通信経由情報15a(図4参照)、画像経由情報15b(図5参照)および車両配置情報15c(図6参照)が記憶される。なお、通信経由情報15a、画像経由情報15bおよび車両配置情報15cは、それぞれ、通信経由情報生成部14a、画像経由情報生成部14bおよび車両配置情報生成部14dによって、随時更新される。
【0037】
車載装置20は、自車両に搭載される装置であり、路側装置10から信頼度が付与された車両配置情報15cを受け取り、受け取った車両配置情報15cおよび自車位置に基づいて自車両からみた死角車両を検出する処理を行う装置である。なお、同図では、車載装置20の特徴点を説明するために必要な構成要素についてのみ記載しているが、一般的なカーナビゲーション装置が備える、GPS(Global Positioning System)機能や、マップ表示機能を有するものとする。
【0038】
同図に示すように、車載装置20は、受信部21と、ディスプレイ22と、制御部23と、記憶部24とを備えている。また、制御部23は、死角車両検出部23aをさらに備えており、記憶部24は、車両配置情報24aおよび自車位置情報24bを記憶する。なお、同図では、死角車両検出部23aの検出結果をディスプレイ22に表示する場合について示しているが、図示しない音声出力装置を介して音声で通知することとしてもよい。
【0039】
受信部21は、路側装置から無線経由で受け取った車両配置情報15cを、車両配置情報24aとして記憶部24へ格納する処理を行う。また、ディスプレイ22は、たとえば、タッチパネルディスプレイ等のディスプレイであり、一般的なカーナビゲーションシステムで用いられている表示装置である。
【0040】
制御部23は、死角車両検出部23aを備えている。死角車両検出部23aは、記憶部24の車両配置情報24aおよび自車位置情報24bに基づいて自車両からみた死角位置に存在する死角車両を検出する処理を行うとともに、検出結果をディスプレイ22へ出力する処理を行う。なお、死角車両検出部23aが、かかる検出結果を道路や建物に関するマップ情報と合成してディスプレイ22へ出力することとしてもよい。
【0041】
ここで、死角車両検出部23aが行う死角車両判定処理の概要について図7および図8を用いて説明しておく。図7は、死角車両判定処理の例その1を示す図であり、図8は、死角車両判定処理の例その2を示す図である。なお、図7および図8には、図6に示した車両配置情報15c(車両配置情報24aと同一)の一部を例示している。
【0042】
図7に示すように、死角車両検出部23aは、車両配置情報24aに含まれる各車両データから任意に一組を選択し、これらの位置関係に基づいて片方を「障害車」、他方を「死角判定対象車」とする。なお、同図に示した場合では、「α」が「障害車」であり、「β」が「死角判定対象車」である。
【0043】
ここで、図7に示した場合では、「α」および「β」に対応する車両配置情報24aの「信頼度」は、いずれも「低」である。このため、障害車(α)に対応する車両配置情報24aの「サイズ」を所定の拡大率で拡大する。すなわち、信頼度が低いデータに基づく障害車の「サイズ」を大きめに見積もることで、死角判定対象車が死角車両と判定される機会を増加させる。
【0044】
一方、死角判定対象車(β)に対応する車両配置情報24aの「サイズ」については、所定の縮小率で縮小する。すなわち、信頼度が低いデータに基づく死角判定対象車の「サイズ」を小さめに見積もることで、死角判定対象車が死角車両と判定される機会を増加させる。
【0045】
すなわち、信頼度が所定の閾値以下である場合に、障害車についてはサイズを大きめに、死角判定対象車についてはサイズを小さめに変更したうえで、自車両から死角判定対象車が見えるか否かによって、死角車両であるか否かを判定する。そして、これらの処理を車両配置情報24aに含まれるすべての車両データについて繰り返すことで、死角車両の検出が行われる。
【0046】
図8には、図7に示した「β」が、障害車として選択された場合における死角判定処理を示している。ここで、死角判定対象車として選択された「γ」に対応する車両配置情報24aの「信頼度」は、「通常」である。このため、「γ」に対応する車両配置情報24aの「サイズ」については変更しない。一方、「β」は、図8では障害車として選択されているので、今度は「サイズ」を所定の拡大率で拡大する。
【0047】
図3の説明に戻り、記憶部24について説明する。記憶部24は、RAM(Random Access Memory)や、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶デバイスで構成される記憶部である。車両配置情報24aは、受信部21経由で路側装置10から受け取った車両配置情報15cである。また、自車位置情報24bは、図示しないGPS(Global Positioning System)機能や、車速センサ等のセンサによって取得される車載装置20の現在位置を表す情報(たとえば、緯度および経度)であり、車両の移動に伴って随時更新される。
【0048】
次に、路側装置10において行われる処理手順について図9を用いて説明する。図9は、路側装置10における処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、受信部11が路車間通信で車両情報を受信すると(ステップS101)、通信経由情報生成部14aが通信経由情報15aを生成する(ステップS102)。また、入力部12がカメラ画像を受信すると(ステップS103)、画像経由情報生成部14bが遮蔽率を加味した画像経由情報15bを生成する(ステップS104)。なお、ステップS101〜ステップS102およびステップS103〜ステップS104を並行して処理することとしてもよい。
【0049】
つづいて、信頼度付加処理部14cが通信経由情報15aおよび画像経由情報15bに対して信頼度を付加し(ステップS105)、車両配置情報生成部14dが車両配置情報15cを生成する(ステップS106)。そして、送信部13が車両配置情報15cを車載装置20へ向けて送信し(ステップS107)、処理を終了する。
【0050】
次に、車載装置20において行われる処理手順について図10を用いて説明する。図10は、車載装置20における処理手順を示すフローチャートである。同図に示すように、受信部21が車両配置情報15cを受信すると(ステップS201)、記憶部24に対して車両配置情報24aとして格納する。そして、死角車両検出部23aは、車両配置情報24aおよび自車位置情報24bに基づいた死角車両検出処理を開始する。
【0051】
死角車両検出部23aは、障害車両及び死角候補車両を選択し(ステップS202)、障害車両に対応する車両配置情報24aの信頼度が「低」であるか否かを判定する(ステップS203)。そして、信頼度が「低」である場合には(ステップS203,Yes)、障害車両の車両サイズを所定の拡大率に基づいて拡大する(ステップS204)。なお、信頼度が「低」ではない場合には(ステップS203,No)、ステップS204の処理を行うことなくステップS205へ進む。
【0052】
つづいて、死角候補車両に対応する車両配置情報24aの信頼度が「低」であるか否かが判定され(ステップS205)、信頼度が「低」である場合には(ステップS205,Yes)、死角候補車両の車両サイズを所定の縮小率に基づいて縮小する(ステップS206)。一方、信頼度が「低」ではない場合には(ステップS205,No)、ステップS206の処理を行うことなくステップS207へ進む。
【0053】
そして、障害車両による死角候補車両の遮蔽率が所定の閾値以上であるか否かが判定され(ステップS207)、所定の閾値以上である場合には(ステップS207,Yes)、死角候補車両を死角車両と判定する(ステップS208)。なお、所定の閾値未満である場合には(ステップS207,No)、死角候補車両を死角車両と判定することなくステップS209へ進む。
【0054】
そして、すべての車両について判定が完了したか否かが判定され(ステップS209)、すべての車両について判定が完了した場合には(ステップS209,Yes)、処理を終了する。一方、すべての車両についての判定が未だ完了していない場合には(ステップS209,No)、ステップS202以降の処理を繰り返すことになる。
【0055】
上述してきたように、実施例1では、路側装置の通信経由情報生成部が、所定の端末装置を搭載した車両の位置およびサイズを含んだ情報である通信経由情報を生成し、路側装置の画像経由情報生成部が、道路の交通状況を撮像するカメラによる画像を画像解析することによって検出された車両の位置およびサイズを含んだ情報である画像経由情報を生成し、路側装置の車両配置情報生成部が、通信経由情報と画像経由情報とを照合して各車両に対応する車両配置情報を生成する際に、路側装置の信頼度付加処理部が、各車両配置情報に対して情報精度の高低を表す信頼度を付加し、車載装置の死角車両検出部が、信頼度が所定値以下である場合に、車両配置情報に含まれるサイズを変更して死角車両を検出することとした。
【0056】
したがって、精度の異なる情報を効率良く組み合わせることによって、通信経由情報のみ、あるいは、画像経由情報のみに含まれる死角車両についても、高精度に検出することができる。また、カメラによる道路状況の撮像、画像処理、通信経由情報と画像経由情報とのマッチング処理、信頼度の付加処理を路側装置で行うことで、車載装置は死角車両検出処理を行えば足りる。このため、車載装置を低コストで実現することができる。
【0057】
ところで、上述した実施例1では、路側装置に接続されたカメラで道路状況を撮像する場合について説明したが、自車両に搭載されたカメラで道路状況を撮像することとしてもよい。そこで、以下に示す実施例2では、自車両に搭載されたカメラで道路状況を撮像する場合について説明する。なお、以下では、実施例1において既に説明した事項については、説明を省略するか簡単な説明にとどめることにする。
【実施例2】
【0058】
図11は、実施例2に係る死角車両検出システムに含まれる各装置の構成を示す図である。なお、図11に示す路側装置110には、道路状況を撮像するカメラが接続されておらず、そのかわりに、車載装置20には、道路状況を撮像するカメラが接続されている。そして、路側装置110では、図3における通信経由情報15aに相当する通信経由情報115aの生成処理および通信経由情報155aを車載装置120へ向けて送信する送信処理のみが行われる。
【0059】
一方、車載装置120では、路側装置110から無線通信で受け取った通信経由情報115aと、車載カメラに接続された入力部123からの画像データに基づいて生成した画像経由情報125bに基づいて車両配置情報125cを生成する。すなわち、実施例2では、実施例1における路側装置10が備えていた受信部11、通信経由情報生成部14aおよび送信部13以外の処理部、すなわち、入力部12、画像経由情報生成部14b、信頼度付加処理部14cおよび車両配置情報生成部14dを、車載装置20へ移した場合について示している。
【0060】
図11に示すように、路側装置110は、受信部111と、送信部113と、制御部114と、記憶部115とを備えている。そして、制御部114は、通信経由情報生成部114aをさらに備えており、記憶部115は、通信経由情報115aを記憶する。ここで、受信部111は図3における受信部11に、送信部113は同じく送信部13に、通信経由情報生成部114aは同じく通信経由情報生成部14aに、通信経由情報115aは同じく通信経由情報15aに、それぞれ対応している。
【0061】
また、車載装置120は、受信部121と、ディスプレイ122と、車載カメラからの画像データを受け取る入力部123と、制御部124と、記憶部125とを備えている。そして、制御部124は、画像経由情報生成部124aと、信頼度付加処理部124bと、車両配置情報生成部124cと、死角車両検出部124dとをさらに備えており、記憶部125は、通信経由情報125aと、画像経由情報125bと、車両配置情報125cと、自車位置情報125dとを記憶する。
【0062】
ここで、受信部121は図3における受信部21に、ディスプレイ122は同じくディスプレイ22に、画像経由情報生成部124aは同じく画像経由情報生成部14bに、信頼度付加処理部124bは同じく信頼度付加処理部14cに、車両配置情報生成部124cは同じく車両配置情報生成部14dに、死角車両検出部124dは同じく死角車両検出部23aに、それぞれ対応している。また、画像経由情報125bは図3における画像経由情報15bに、車両配置情報125cは同じく車両配置情報15cあるいは車両配置情報24aに、自車位置情報125dは同じく自車位置情報24bに、それぞれ対応している。
【0063】
このように、車載装置120が搭載される車両上の車載カメラから道路状況を撮像する場合であっても、実施例1に示した場合と同様に、死角車両の効率的な検出が可能である。また、車載カメラ画像に基づく車両の配置に関する情報を、位置通報端末に由来する車両の配置に関する情報で補完することができる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上のように、本発明に係る死角車両検出システム、路側装置、車載装置および死角車両検出方法は、死角車両や死角歩行者の検出に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】実施例1に係る死角車両検出システムの配置を示す図である。
【図2】実施例1に係る死角車両検出システムの特徴を示す図である。
【図3】実施例1に係る死角車両検出システムに含まれる各装置の構成を示す図である。
【図4】通信経由情報の一例を示す図である。
【図5】画像経由情報の一例を示す図である。
【図6】車両配置情報の一例を示す図である。
【図7】死角車両判定処理の例その1を示す図である。
【図8】死角車両判定処理の例その2を示す図である。
【図9】路側装置における処理手順を示すフローチャートである。
【図10】車載装置における処理手順を示すフローチャートである。
【図11】実施例2に係る死角車両検出システムに含まれる各装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0066】
1 死角車両検出システム
10 路側装置
11 受信部
12 入力部
13 送信部
14 制御部
14a 通信経由情報生成部
14b 画像経由情報生成部
14c 信頼度付加処理部
14d 車両配置情報生成部
15 記憶部
15a 通信経由情報
15b 画像経由情報
15c 車両配置情報
20 車載装置
21 受信部
22 ディスプレイ
23 制御部
23a 死角車両検出部
24 記憶部
24a 車両配置情報
24b 自車位置情報
110 路側装置
111 受信部
113 送信部
114 制御部
114a 通信経由情報生成部
115 記憶部
115a 通信経由情報
120 車載装置
121 受信部
122 ディスプレイ
123 入力部
124 制御部
124a 画像経由情報生成部
124b 信頼度付加処理部
124c 車両配置情報生成部
124d 死角車両検出部
125 記憶部
125a 通信経由情報
125b 画像経由情報
125c 車両配置情報
125d 自車位置情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両との間に存在する障害車両によって前記自車両から死角となる位置に存在する死角車両を検出する死角車両検出システムであって、
所定の端末装置を搭載した車両の位置およびサイズを含んだ情報である通信経由情報を生成する通信経由情報生成手段と、
道路の交通状況を撮像するカメラによる画像を画像解析することによって検出された車両の位置およびサイズを含んだ情報である画像経由情報を生成する画像経由情報生成手段と、
前記通信経由情報と前記画像経由情報とを照合して各車両に対応する車両配置情報を生成する際に、各車両配置情報に対して情報精度の高低を表す信頼度を付加する信頼度付加手段と、
前記信頼度が所定値以下である場合に、前記車両配置情報に含まれる前記サイズを変更して前記死角車両を検出する死角車両検出手段と
を備えたことを特徴とする死角車両検出システム。
【請求項2】
前記画像経由情報生成手段は、
前記画像経由情報に対して他車両による遮蔽率を含めるものであって、
前記信頼度付加手段は、
前記画像経由情報にのみ含まれる車両に対応する前記車両配置情報であって前記遮蔽率が所定の閾値以上である場合に、通常の信頼度である通常信頼度よりも低い低信頼度を、その他の前記車両配置情報に対して前記通常信頼度を、それぞれ付加することを特徴とする請求項1に記載の死角車両検出システム。
【請求項3】
前記信頼度付加手段は、
前記通信経由情報および前記画像経由情報の双方に含まれる車両に対応する前記車両配置情報に対して通常の信頼度である通常信頼度を、前記画像経由情報にのみ含まれる車両に対応する前記車両配置情報に対して前記通常信頼度よりも低い信頼度である低信頼度を、それぞれ付加することを特徴とする請求項1に記載の死角車両検出システム。
【請求項4】
前記死角車両検出手段は、
前記信頼度付加手段によって前記低信頼度が付加された前記車両配置情報に含まれる前記車両サイズを、当該車両配置情報が前記障害車両に対応する場合には所定の拡大率で拡大し、当該車両配置情報が前記死角車両の候補となる死角候補車両に対応する場合には所定の縮小率で縮小することを特徴とする請求項1、2または3に記載の死角車両検出システム。
【請求項5】
自車両との間に存在する障害車両によって前記自車両から死角となる位置に存在する死角車両を検出する死角車両検出システムに用いられる路側装置であって、
所定の端末装置を搭載した車両の位置およびサイズを含んだ情報である通信経由情報を生成する通信経由情報生成手段と、
道路の交通状況を撮像するカメラによる画像を画像解析することによって検出された車両の位置およびサイズを含んだ情報である画像経由情報を生成する画像経由情報生成手段と、
前記通信経由情報と前記画像経由情報とを照合して各車両に対応する車両配置情報を生成する際に、各車両配置情報に対して情報精度の高低を表す信頼度を付加する信頼度付加手段と
を備えたことを特徴とする路側装置。
【請求項6】
自車両との間に存在する障害車両によって前記自車両から死角となる位置に存在する死角車両を検出する死角車両検出システムに用いられる車載装置であって、
所定の端末装置を搭載した車両の位置およびサイズを含んだ情報である通信経由情報と、道路の交通状況を撮像するカメラによる画像を画像解析することによって検出された車両の位置およびサイズを含んだ情報である画像経由情報とを照合して各車両に対応する車両配置情報を生成する際に、各車両配置情報に対して情報精度の高低を表す信頼度が付加された前記車両配置情報を受信する車両配置情報受信手段と、
前記信頼度が所定値以下である場合に、前記車両配置情報に含まれる前記サイズを変更して前記死角車両を検出する死角車両検出手段と
を備えたことを特徴とする車載装置。
【請求項7】
自車両との間に存在する障害車両によって前記自車両から死角となる位置に存在する死角車両を検出する死角車両検出方法であって、
所定の端末装置を搭載した車両の位置およびサイズを含んだ情報である通信経由情報を生成する通信経由情報生成工程と、
道路の交通状況を撮像するカメラによる画像を画像解析することによって検出された車両の位置およびサイズを含んだ情報である画像経由情報を生成する画像経由情報生成工程と、
前記通信経由情報と前記画像経由情報とを照合して各車両に対応する車両配置情報を生成する際に、各車両配置情報に対して情報精度の高低を表す信頼度を付加する信頼度付加工程と、
前記信頼度が所定値以下である場合に、前記車両配置情報に含まれる前記サイズを変更して前記死角車両を検出する死角車両検出工程と
を含んだことを特徴とする死角車両検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−104330(P2009−104330A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−274221(P2007−274221)
【出願日】平成19年10月22日(2007.10.22)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】