説明

気密端子の製造方法、気密端子、圧電振動子、発振器、電子機器及び電波時計

【課題】 2本のリード端子を有する気密端子を、高品質で歩留まり良く、しかも小型化を図りながら効率良く製造すること。
【解決手段】 導電性材料からなるベース基板を加工して、所定の間隔Xを空けて平行に配された一対の平板部21が両端で繋がった枠部22を形成する枠部形成工程と、枠部の所定位置に充填材12を介してステム10を装着するステム装着工程と、枠部の一端側を切断して一対の平板部の繋がりを切り離し、各平板部の一端側をインナーリードとする第1切断工程と、枠部に対して所定の金属膜を被膜させる被膜工程と、枠部の他端側を切断して一対の平板部の繋がりを切り離し、各平板部の他端側をアウターリードとすると共に、一対の平板部をリード端子として機能させる第2切断工程とを行う気密端子の製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動片をケース内に気密封止した状態で保持する気密端子の製造方法、該製造方法により製造された気密端子、これを有するシリンダパッケージタイプの圧電振動子、これを有する発振器、電子機器及び電波時計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話や携帯情報端末機器には、時刻源や制御信号のタイミング源、リファレンス信号源等として水晶等を利用した圧電振動子が用いられている。この種の圧電振動子は、様々なものが提供されているが、その1つとして、円筒状に形成されたシリンダパッケージタイプの圧電振動子が知られている。
【0003】
この圧電振動子70は、図31に示すように、音叉型の圧電振動片71と、該圧電振動片71を内部に収納する有底円筒状のケース72と、圧電振動片71をケース72内に密閉させる気密端子73とを備えている。
気密端子73は、金属材料で形成された環状のステム74と、該ステム74を貫くように配され、圧電振動片71の両マウント電極71aに接合された2本のリード端子75と、該リード端子75とステム74とを絶縁状態で一体的に固定すると共にケース72内を密封させる充填材76とで構成されている。
2本のリード端子75は、ケース72内に突出している部分がインナーリード75aとなり、ケース72外に突出している部分がアウターリード75bとなっている。そして、このアウターリード75bが、外部接続端子として機能するようになっている。
また、ケース72は、ステム74の外周に対して圧入されて嵌合固定されている。このケース72の圧入は、真空雰囲気下で行われているため、ケース72内の圧電振動片71を囲む空間は、真空に保たれた状態で密閉されている。
【0004】
このように構成された圧電振動子70は、2本のリード端子75のアウターリード75bにそれぞれ所定の電圧を駆動電圧として印加すると、電流がインナーリード75aからマウント電極71aを介して圧電振動片71に流れる。これにより、圧電振動片71が所定の周波数で発振するようになっている。
【0005】
ところで、この種の圧電振動子は、各種の電子機器等に搭載されるが、これら電子機器等は年々小型化が進んでいる。そのため、圧電振動子においても、さらなる小型化が求められている。圧電振動子の小型化を図るためには、ステムの外径を小さくすることが有効である。そのためには、2本のリード端子の径を細くする必要がある。ところが、リード端子を現状よりもさらに細くした場合には、剛性が低下してしまうので、製造途中で変形してしまう恐れがあった、特に、インナーリードよりも長さのあるアウターリードが変形し易いものであった。アウターリードが変形してしまうと、互いの平行度が保てなくなってしまうので、品質が低下してしまい、製品として使用できなくなってしまう。その結果、歩留まりの悪化を招く可能性があった。
【0006】
また、製造途中で、アウターリードが他の気密端子のアウターリードと絡み合ってしまい、生産ラインを一時的に停止させる恐れもあった。この点においても、歩留まりの悪化を招く可能性があった。特に、小型化を目指すほど、上述した問題が顕著に発生する恐れがあった。そのため、現状の製造方法では、歩留まり良く、高品質でさらなる小型化を図った圧電振動子を製造することが困難である。特に、圧電振動子を構成する気密端子を製造することが困難である。
【0007】
そこで、2本のリード端子ではなく、1本のリード端子からなる気密端子を備えた圧電振動子が提供されている(特許文献1参照)。この気密端子は、ステムに一体的に形成された突出片を有しており、該突出片が従来のインナーリードの役目を果たしている。つまり、リード端子及び突出片が、圧電振動片に対してそれぞれ電気的に接続するようになっている。このように、ステムに一体的に形成した突出片をインナーリードとして機能させることができるので、従来2本必要であったリード端子を1本にすることができる。
そのため、ステムの外径を小さくしたとしても、2本の場合と比べてリード端子の径を細くする必要がない。よって、剛性の低下を防止でき、変形を防ぐことができる。しかも、リード端子が1本であるので、製造途中で他のものと絡み合う恐れも少ない。従って、気密端子の小型化に繋がるので、圧電振動子の小型化を図ることができる。
【特許文献1】特開2002−43886号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の方法では、以下の課題が残されている。
即ち、特許文献1記載の気密端子は、ステムに対して突出片を一体的に形成する必要がある。しかも、環状に形成されたステムの一部分に突出片を形成する必要がある。ところが、このような加工は容易に行うことができず、非常に手間と時間がかかるものであった。特に、突出片を折り曲げ加工する際に、ステムが変形してしまうことを防止しながら折り曲げる必要があるので、生産性が悪かった。従って、実際には一日に大量の気密端子を量産する必要があるが、このような大量生産には適さないものであった。
【0009】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、2本のリード端子を有する気密端子を、高品質で歩留まり良く、しかも小型化を図りながら効率良く製造することができる気密端子の製造方法、該製造方法で製造された気密端子、該気密端子を有する圧電振動子、該圧電振動子を有する発振器、電子機器及び電波時計を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る気密端子の製造方法は、環状のステムと、該ステムを貫通した状態で配置され、ステムを間に挟んで一端側が圧電振動片に電気的に接続されるインナーリードとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリードとされた板状の一対のリード端子と、該リード端子と前記ステムとを固定させる充填材とを有し、圧電振動片をケース内に封止させる気密端子を製造する方法であって、導電性材料からなるベース基板を加工して、所定の間隔を空けて平行に配された一対の平板部が両端で繋がった枠部を形成する枠部形成工程と、該枠部形成工程後、前記枠部の所定位置に前記充填材を介して前記ステムを装着するステム装着工程と、該ステム装着工程後、前記枠部の一端側を切断して前記一対の平板部の繋がりを切り離し、各平板部の一端側を前記インナーリードとする第1切断工程と、該第1切断工程後、少なくとも前記枠部に対して所定の金属膜を被膜させる被膜工程と、該被膜工程後、前記枠部の他端側を切断して前記一対の平板部の繋がりを切り離し、各平板部の他端側を前記アウターリードとすると共に、一対の平板部を前記リード端子として機能させる第2切断工程とを行うことを特徴とするものである。
【0011】
この発明に係る気密端子の製造方法においては、まず、枠部形成工程により、導電性材料からなるベース基板を加工して枠部を形成する。この枠部は、所定の間隔を空けて平行に配された一対の平板部が両端で繋がった状態のものであり、例えば、四角い枠型に形成されている。また、一対の平板部は、後に一対のリード端子となるものである。
続いて、枠部の所定位置に充填材を介してステムを装着するステム装着工程を行う。これにより、ステムを間に挟んで、該ステムの両側から枠部が外方に突出した状態となる。
【0012】
続いて、ステムから突出した枠部の一端側を切断して、一対の平板部の繋がりを切り離す第1切断工程を行う。これにより一対の平板部の一端側は、所定の間隔を空けて互いに平行に配された自由端となり、インナーリードとして機能する。
続いて、少なくとも枠部に対して所定の金属膜をメッキ等により被膜する被膜工程を行う。これにより、金属膜を利用して、後にインナーリードと圧電振動片とを電気的に確実に接続させることが可能となる。
【0013】
最後に上記被膜工程が終了した後、ステムから突出した枠部の他端側を切断して、一対の平板部の繋がりを切り離す第2切断工程を行う。これにより一対の平板部の他端側は、一端側と同様に、所定の間隔を空けて互いに平行に配された自由端となり、アウターリードとして機能する。つまり、一対の平板部は、この時点で繋がりが完全になくなって互いに離間した状態となり、一対のリード端子として機能する。また、被膜工程によってアウターリードにも金属膜が被膜されているので、該金属膜を利用してアウターリードを外部に対して電気的に確実に接続させることが可能である。
この第2切断工程の結果、気密端子を製造することができる。
【0014】
特にこの製造方法は、最後の第2切断工程を行うまで枠部の他端側を切断しないので、一対のリード端子のアウターリードが一体的に繋がった状態となっている。そのため、製造途中で外力を受けたとしても、アウターリードが変形し難くなっている。従って、互いのアウターリードの位置関係がずれないので平行度を維持することができる。その結果、気密端子の高品質化を図ることができる。
また、第2切断工程を行うまでアウターリードが繋がっているので、製造途中(例えば、被膜工程中)で他の枠部と一緒になったとしても、従来のように絡み合ってしまうことがない。そのため、歩留まり良く製造することができ、効率良く生産して大量生産にも対応することができる。
なお、インナーリードに関しては、アウターリードよりもステムからの長さが通常遥かに短いので、第1切断工程以降に変形したり、絡み合ったりする可能性が少ない。
【0015】
また第2切断工程を行うまで、アウターリードが一体的に繋がっているので、リード端子の幅をできるだけ小さくしても全体の剛性としては低下し難い。よって、リード端子を小型にすることができ、ステムの小型化に繋げることができる。その結果、気密端子のさらなる小型化を図ることができる。
上述したように、第2切断工程を行うまで一対のリード端子をあたかも1つのリード端子のように取り扱うことができるので、高品質で歩留まり良く、しかも小型化を図りながら2本のリード端子を有する気密端子を効率良く製造することができる。
【0016】
なお、製造された気密端子は、圧電振動子の組み立てに利用される。つまり、金属膜を利用してインナーリードと圧電振動片とを固定すると共に電気的に接続する。次いで、圧電振動片を収納するようにケースを挿入すると共に、該ケースを気密端子のステムに装着して、内部を封止する。これにより、圧電振動子を組み立てることができる。
【0017】
また、本発明に係る気密端子の製造方法は、上記本発明の気密端子の製造方法において、前記枠部形成工程の際、接続部を介して前記枠部を前記ベース基板に繋げた状態で複数形成し、前記ステム装着工程の際、前記接続部を切断して複数の前記枠部を切り離すことを特徴とするものである。
【0018】
この発明に係る気密端子の製造方法においては、枠部形成工程を行う際に、ベース基板から1つの枠部を形成するのではなく、接続部を介してベース基板に繋げた状態で複数の枠部を形成する。そして、ステム装着工程の際に、接続部を切断して複数の枠部をベース基板から切り離す。このように、1つのベース基板から枠部を一度に複数得ることができるので、より効率良く気密端子を製造することができる。
【0019】
また、本発明に係る気密端子の製造方法は、上記本発明の気密端子の製造方法において、前記第1切断工程の際、一方の前記インナーリード上に前記圧電振動片を載置したときに、他方の前記インナーリードが圧電振動片の側面に当接するように、前記枠部を切断することを特徴とするものである。
【0020】
この発明に係る気密端子の製造方法においては、第1切断工程の際に、ステムから突出する長さが一方のインナーリードに比べて他方のインナーリードの方が短くなるように切断する。これにより、圧電振動子を組み立てる際、一方のインナーリード上に圧電振動片を載置したときに、他方のインナーリードを圧電振動片の側面に当接させることができる。このように、インナーリードの長さを変えることで、一方のインナーリードに圧電振動片を面接触させることができるので、該圧電振動片をより確実に固定することができる。また、両インナーリードと圧電振動片との電気的接続をそれぞれ確認しながら別々のタイミングで行える。よって、圧電振動子の高品質化に繋がる気密端子を製造することができる。なお、他方のインナーリードと圧電振動片との間は、例えば、導電性接着剤や金バンプ等を介して電気的に接続すれば良い。
【0021】
また、本発明に係る気密端子は、上記本発明のいずれかの気密端子の製造方法により製造されたことを特徴とするものである。
【0022】
この発明に係る気密端子においては、上述した製造方法により製造されているので、高品質化、小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0023】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の気密端子と、前記インナーリードに電気的に接続された圧電振動片と、該圧電振動片を内部に封止した状態で前記気密端子に接合されたケースとを備えていることを特徴とするものである。
【0024】
この発明に係る圧電振動子においては、上述した気密端子を備えているので、圧電振動子自体の高品質化、小型化及び低コスト化を図ることができる。なお、圧電振動片とインナーリードとは、被膜工程によって被膜された金属膜を利用して接続されている。
【0025】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動子において、前記圧電振動片と前記インナーリードとが、導電性接着剤を介して接続されていることを特徴とするものである。
【0026】
この発明に係る圧電振動子においては、圧電振動片とインナーリードとの間に段差が生じていたとしても、導電性接着剤を利用するので、段差の影響を受けることなく確実に圧電振動片とインナーリードとを電気的に接続することができる。
【0027】
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明の圧電振動子において、前記圧電振動片と前記インナーリードとが、導電性材料から形成されたバンプを介して接続されていることを特徴とするものである。
【0028】
この発明に係る圧電振動子においては、圧電振動片とインナーリードとの間に段差が生じていたとしても、導電性材料から形成されたバンプ(例えば、金バンプ)を利用するので、段差の影響を受けることなく確実に圧電振動片とインナーリードとを電気的に接続することができる。
【0029】
また、本発明に係る発振器は、上記本発明のいずれかの圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る電子機器は、上記本発明のいずれかの圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
また、本発明に係る圧電振動子は、上記本発明のいずれかの圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とするものである。
【0030】
この発明に係る発振器、電子機器及び電波時計においては、上述した圧電振動子を備えているので、同様に高品質化、小型化及び低コスト化を図ることができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明に係る気密端子の製造方法によれば、高品質で歩留まり良く、しかも小型化を図りながら2本のリード端子を有する気密端子を効率良く製造することができる。
また、本発明に係る気密端子によれば、上述した製造方法により製造されているので、高品質化、小型化及び低コスト化を図ることができる。
また、本発明に係る圧電振動子によれば、上述した気密端子を備えているので、圧電振動子自体の高品質化、小型化及び低コスト化を図ることができる
更に、本発明に係る発振器、電子機器及び電波時計によれば、上述した圧電振動子を備えているので、同様に高品質化、小型化及び低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明に係る気密端子、圧電振動子及び気密端子の製造方法の一実施形態を、図1から図22を参照して説明する。
本実施形態の圧電振動子1は、シリンダパッケージタイプの圧電振動子であって、図1に示すように、気密端子2と、圧電振動片3と、該圧電振動片3を内部に封止した状態で気密端子2に接合されたケース4とを備えている。
【0033】
上記圧電振動片3は、水晶、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等の圧電材料から形成された音叉型の振動片である。なお本実施形態では、ハンマーヘッドタイプの圧電振動片を例に挙げて説明する。
この圧電振動片3は、図1及び図2に示すように、互いに平行に配置され、基端側が基部5aに一体的に固定された一対の振動腕部5bと、該一対の振動腕部5bの外表面上に形成されて一対の振動腕部5bを振動させる図示しない励振電極と、該励振電極に電気的に接続されたマウント電極6とを有している。
【0034】
励振電極は、一対の振動腕部5bを互いに接近又は離間する方向に所定の共振周波数で振動させる電極であり、図示しない引き出し電極を介してマウント電極6に電気的に接続されている。そして圧電振動片3は、このマウント電極6を介して電圧が印加されるようになっている。
なおマウント電極6は、例えば、クロム(Cr)と金(Au)との積層膜であり、水晶と密着性の良いクロム膜を下地として被膜した後に、表面に金の薄膜を施したものである。なお、この場合に限られず、例えば、クロムとニクロム(NiCr)の積層膜の表面にさらに金の薄膜を積層しても構わない。
【0035】
また、一対の振動腕部5bは、略中間付近から先端に亘って横幅が大きくなるように設計されており、この部分が錘部5cとなっている。即ち、この錘部5cの横幅W1は、中間付近の横幅W2の倍近い大きさとなっている。これにより、一対の振動腕部5bは、錘部5cが形成されている分だけ、慣性モーメントが増大するようになっている。よって、一対の振動腕部5bの長さL1を短くすることができ、その結果、圧電振動片3の全長L2も、従来よりも短く設計されている。
【0036】
なお、錘部5cには、一対の振動腕部5bの振動状態を所定の周波数の範囲内で振動するように調整(周波数調整)を行うための、図示しない重り金属膜が被膜されている。この重り金属膜を利用して周波数調整を行うことで、一対の振動腕部5bの周波数をデバイスの公称周波数の範囲内に収めることができるようになっている。
【0037】
上記ケース4は、図1に示すように、有底円筒状に形成されており、圧電振動片3を内部に収納した状態で気密端子2の後述するステム10の外周に対して圧入されて嵌合固定されている。これにより、圧電振動片3は、ケース4内に封止されている。
【0038】
上記気密端子2は、図1から図3に示すように、ステム10と、該ステム10を貫通した状態で配置され、ステム10を間に挟んで一端側が圧電振動片3のマウント電極6に電気的に接続されるインナーリード11aとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリード11bとされた板状の一対のリード端子11と、該リード端子11とステム10とを固定させる充填材12とを有している。
【0039】
上記ステム10は、金属材料(例えば、低炭素鋼(Fe)、鉄ニッケル合金(Fe−Ni)、鉄ニッケルコバルト合金(Fe−Ni−Co))で環状に形成されたものである。また、充填材12の材料としては、例えば、ホウ珪酸ガラスである。なお、このステム10の外周には、耐熱ハンダメッキや、錫銅合金や金錫合金等の後述する金属膜13が被膜されている。(なお、ステム10の外周の金属膜13は図示を省略している)そして、ステム10の外周の金属膜13を介在させて、ケース4を真空中で冷間圧接させることにより、ケース4の内部を真空状態で気密封止できるようになっている。
【0040】
一対のリード端子11は、導電性材料からなる後述するベース基板20から形成されたものであって、ケース4内に突出している部分がインナーリード11aとなり、ケース4外に突出している部分がアウターリード11bとなっている。そして、インナーリード11aとマウント電極6とが、ケース4内で電気的及び機械的に接続されている。
また、本実施形態のインナーリード11aは、ステム10から突出している長さが異なっており、一方のインナーリード11aの方が他方のインナーリード11aよりも長くなっている。これにより、図2に示すように、一方のインナーリード11a上に圧電振動片3のマウント電極6が面接触した状態で電気的及び機械的に接続されている。なお、一方のインナーリード11aとマウント電極6とは、一方のインナーリード11aに被膜させた金の薄膜等からなる金属膜13を利用して接続されている。なお、図を見易くするため、金属膜13は一方のインナーリード11a上に被膜されている部分のみを図示している。
【0041】
また、他方のインナーリード11aは、圧電振動片3の側面に当接している。この際、図2に示すように、他方のインナーリード11aと圧電振動片3との間に若干の段差が生じていても構わない。そして、他方のインナーリード11aと圧電振動片3のマウント電極6とは、導電性接着材14によって電気的及び機械的に接続されている。なお、導電性接着材14としては、例えば、合成樹脂等を利用したバインダー成分に、銀粒子等の荷電粒子を混入したもので、機械的接合と電気的接合とを同時に達成することができるものである。
【0042】
このように構成された圧電振動子1を作動させる場合には、2本のリード端子11のアウターリード11bに対して、所定の駆動電圧を印加する。これにより、インナーリード11a、マウント電極6及び引き出し電極を介して、励振電極に電流を流すことができ、一対の振動腕部5bを所定の周波数で振動させることができる。そして、一対の振動腕部5bの振動を利用して、時刻源、制御信号のタイミング源やリファレンス信号源等として利用することができる。
【0043】
次に、上述した圧電振動子1を組み立てる場合について、図4及び図5に示すフローチャートを参照しながら以下に説明する。始めに、気密端子2の製造について説明する。
本実施形態の気密端子2の製造方法は、枠部形成工程、ステム装着工程、第1切断工程、被膜工程、第2切断工程を順に行うことで、ベース基板20から一度に複数の気密端子2を製造する方法である。これら各工程について、以下に詳細に説明する。
【0044】
まず、導電性材料からなるベース基板20を加工して、図6に示すように、所定の間隔Xを空けて平行に配された一対の平板部21が両端で繋がった枠部22を形成する枠部形成工程を行う。この工程を具体的に説明すると、平板状のベース基板20を準備(S1)した後、プレス加工、レーザ加工或いはエッチング等の化学的な加工を施して、枠部22を形成する(S2)。
本実施形態では、図6及び図7に示すように、一対の平板部21が両端で繋がった四角い枠型に枠部22を形成する。しかも、接続部23を介してベース基板20に繋げた状態で枠部22を複数形成する。なお、枠部22を構成する一対の平板部21は、後に一対のリード端子11となるものである。
【0045】
次いで、枠部22の所定位置に充填材12を介してステム10を装着するステム装着工程を行う。この工程を具体的に説明すると、まず、充填材12との密着性を高めるため、枠部22が複数形成されたベース基板20を酸化処理する(S3)。また、この酸化処理の間に、充填材12の原料を準備しておく(S4)。この原料としては、例えばホウ珪酸ガラス粉末である。続いて、この充填材12の原料を、図示しない型を利用して酸化処理が終了した各枠部22の所定位置、具体的には、一対の平板部21の間に充填すると共に、加圧成形する(S5)。続いて、750℃前後の温度雰囲気で仮焼成を行い、図8及び図9に示すように、充填材12aを仮焼結させる(S6)。なお、この充填材12aは、後述するリング部12bと一緒になることで、上述した充填材12となるものである。また、この時点では充填材12aはまだ一対の平板部21との間に隙間をもったままである。また、充填材12aの長さL3は、リング部12bと同じ長さになるようにしておく。
【0046】
そして充填材12aの仮焼結が終了した後、枠部22をベース基板20から切り離す工程を行う。つまり、図10に示すように、枠部22と接続部23との境界線を切断して、複数の枠部22をベース基板20から切り離す(S7)。これにより、充填材12aが仮焼結された枠部22を一度に複数得ることができる。
【0047】
また、上述した工程と同時に以下の工程を行って、図11に示すリング部12bを用意しておく(S8)。即ち、充填材12の原料を図示しない型の中に充填して加圧成形した後、仮焼結を行う。これにより、筒状のリング部12bを形成することができる。このリング部12bは、外形が円状に形成されており、中心に枠部22が挿通される断面略四角状の挿通孔12cが形成されたものである。
続いて、リング部12bを用意した後、図12に示すように、リング部12bの挿通孔12c内に枠部22を挿入する(S9)。そして、図13に示すように、挿通孔12c内に完全にリング部12bが挿入された時点で、枠部22とリング部12bとを仮固定する。
【0048】
また、上記工程と同時にさらに以下の工程を行って、ステム10を用意しておく。即ち、低炭素鋼、鉄ニッケル合金、鉄ニッケルコバルト合金等からなるステム10用の板材を準備(S10)した後、この板材をプレスで打ち抜いて環状に形成する(S11)。続いて、酸洗浄や還元処理等の前処理を実施(S12)した後、リング部12b及び充填材12aとの密着性を高めるために酸化処理を行う(S13)。これらの工程を行って、予めステム10を用意しておく。
【0049】
そして、図14に示すように、ステム10をリング部12bの外側に装着する(S14)。また、ステム10を装着した後、1000℃前後の温度雰囲気でリング部12b及び充填材12aの焼成を実施する(S15)。これにより、リング部12b及び充填材12aと枠部22との間、リング部12bとステム10との間が完全に封着され、気密に耐えられる構造となる。また、この時点で充填材12aとリング12bとが一緒になって、充填材12となる。特に、予め充填材12aを枠部22内に仮焼結させているので、気密を確実なものにすることができる。
これにより、ステム10と枠部22とを固定することができ、ステム10を間に挟んで該ステム10の両側から枠部22が外方に突出した状態となる。なおこの時点で、ステム装着工程が終了する。
【0050】
次に、枠部22の一端側を切断して一対の平板部21の繋がりを切り離し、各平板部21の一端側をインナーリード11aとする第1切断工程を行う。即ち、図15に示すように、枠部22の一端側を切断線Aに沿って切断する。これにより、一対の平板部21の一端側は、図16に示すように、所定の間隔Xを空けて互いに平行に配された自由端となり、インナーリード11aとして機能する(S16)。
また、この切断を行う際に、ステム10から突出する長さが、一方のインナーリード11aに比べて他方のインナーリード11aの方が短くなるように切断する。これにより、圧電振動子1を組み立てた際、図2に示すように、一方のインナーリード11a上に圧電振動片3を載置したときに、他方のインナーリード11aを圧電振動片3の側面に当接させることが可能となる。
【0051】
そして第1切断工程後、図16に示すように、少なくとも枠部22に対して所定の金属膜13を被膜させる被膜工程を行う。なお、本実施形態では、枠部22だけでなく、ステム10の外周面にも同一材料の金属膜13を湿式メッキ方で被膜する場合を例にする。但し、図を見易くするため、一方のインナーリード11aに被膜された金属膜13のみを図示している。また、この金属膜13は、下地金属膜と仕上金属膜とからなる多層膜を例にする。
まず、前処理として枠部22の表面及びステム10の外周面を洗浄すると共に、アルカリ溶液で脱脂した後、塩酸及び硫酸の溶液にて酸洗浄を行う(S17)。この前処理が終了した後、枠部22の表面及びステム10の外周面に下地金属膜を形成する(S18)。例えば、銅メッキを略2μmから5μmの膜厚で被膜させる。
【0052】
続いて、下地金属膜上に仕上金属膜を形成する(S19)。例えば、金を薄膜状に被膜させる。このように下地金属膜及び仕上金属膜からなる金属膜13を被膜させることで、一方のインナーリード11aと圧電振動片3のマウント電極6との接続を確実にすることができる。また、圧電振動片3の接続だけでなく、ステム10の外周面に被膜された金属膜13を弾性変形させることで、ステム10とケース4との冷間圧接を可能にすることができ、気密接合を行うことができる。なお、金属膜13を被膜する際に、湿式メッキ法で行った場合を例にしたが、この場合に限られず、例えば、蒸着法や化学気相法等も構わない。
続いて、金属膜13の安定化を図るために、真空雰囲気の炉中でアニーリングを行う(S20)。例えば、170℃の温度で1時間の加熱を行う。これにより、下地金属膜の材料と仕上金属膜の材料との界面に形成される金属間化合物の組成を調整して、ウイスカの発生を抑制することができる。
【0053】
このアニーリングが終了した後、枠部22の他端側を切断して一対の平板部21の繋がりを切り離し、各平板部21の他端側をアウターリード11bとすると共に、一対の平板部21をリード端子11として機能させる第2切断工程を行う。即ち、図16に示すように、枠部22の他端側を切断線Bに沿って切断する。これにより、一対の平板部21の他端側は、一端側と同様、図17に示すように、所定の間隔Xを空けて互いに平行に配された自由端となり、アウターリード11bとして機能する(S21)。つまり、一対の平板部21は、この時点で繋がりが完全になくなって互いに離間した状態となり、一対のリード端子11として機能する。
また、先に行った被膜工程によってアウターリード11bにも金属膜13が被膜されているので、該金属膜13を利用してアウターリード11bを外部に対して電気的に確実に接続させることが可能である。
【0054】
この第2切断工程の結果、図3に示す気密端子2を製造することができる。続いて、この気密端子2を利用して圧電振動子1の組み立てを行う。なお、この組み立ては、図18に示すパレット25を利用して行う。ここで、このパレット25について、簡単に説明する。このパレット25は、複数の気密端子2を固定するために使用されるものであって、絶縁性材料(例えば、ジルコニア系のセラミック材料等)により、図18(a)、(b)に示すように長尺な平板状に形成されている。また、パレット25の表裏面には、長手方向に沿って一定間隔毎に溝部25aが形成されている。
【0055】
まず、製造した複数の気密端子2を、このパレット25に固定する(S22)。具体的には、図19(a)、(b)に示すように、パレット25に形成された溝部25aに沿って気密端子2をアウターリード11b側から挿入する。この際、一対のリード端子11の間でパレット25を挟むように挿入する。これにより、インナーリード11aを外側に向けた状態で、気密端子2をパレット25に固定することができる。なお、気密端子2を固定した後、押さえ板25bでアウターリード11bをパレット25に押さえつけて、しっかりと気密端子2を固定する。
【0056】
次に、図20(a)、(b)に示すように、圧電振動片3のマウント電極6と一方のインナーリード11aとを機械的に位置合わして、面接触させる。この際、他方のインナーリード11aは、圧電振動片3の側面に当接した状態となっている。続いて、一方のインナーリード11aに先ほど施された金属膜13を熱源により溶融させて、一方のインナーリード11aとマウント電極6とを接続する。これにより、一方のインナーリード11aと圧電振動片3とを電気的及び機械的に接続することができる(S23)。なお、熱源としては、加熱した不活性ガス、レーザや光源等が利用される。
【0057】
続いて、図21(a)、(b)に示すように、他方のインナーリード11aと圧電振動片3のマウント電極6との間に導電性接着材14を塗布した後、該導電性接着材14を硬化させる。これにより、他方のインナーリード11aと圧電振動片3とを電気的及び機械的に接続することができる(S24)。その結果、圧電振動片3のマウントが終了する。
【0058】
次に、上述したマウントによる歪みを除去するために、所定の温度でベーキングを行う(S25)。続いて、ケース4を固定する前に、圧電振動片3の周波数調整(微調)を行う(S26)。この周波数調整について具体的に説明すると、全体を真空チャンバーに入れた状態で、両アウターリード11b間に電圧を印加して圧電振動片3を振動させる。そして、周波数を計測しながら、レーザにより一対の振動腕部5bの錘部5cに設けられた重り金属膜を蒸発させることで、周波数の調整を行う。なお、周波数計測を行うには、図21(b)に示すように、両アウターリード11bにプローブPの先端を押し付けることで、計測を正確に行うことができる。この周波数調整工程を行うことで、予め決められた周波数の範囲内に圧電振動片3の周波数を調整することができる。
なお、レーザの照射により重り金属膜を蒸発させることで、周波数調整を行ったが、レーザではなくアルゴンイオンを利用しても構わない。この場合には、アルゴンイオンの照射によりスパッタリングを行い、重り金属膜を除去することで周波数調整を行う。
【0059】
次に、圧電振動片3を内部に収納した状態で、ケース4と気密端子2とを固定する工程を行う。この工程について具体的に説明すると、真空中で図22(a)、(b)に示すようにケース4を接近させると共に、所定の荷重を加えながらケース4を気密端子2のステム10の外周に圧入する(S27)。すると、ステム10の外周面に形成された金属膜13が弾性変形するので、気密封止することができる。これにより、ケース4内に圧電振動片3を密閉して真空封止することができる。
また、この工程を行う前に、気密端子2、圧電振動片3及びケース4を十分に加熱して、表面吸着水分等を脱離させておく。
【0060】
続いて、ケース4を固定した後、複数の気密端子2をパレット25から取り外す。そして、取り外した後、スクリーニングを行う。このスクリーニングは、周波数や共振抵抗値の安定化を図ると共に、ケース4を圧入した嵌合部に圧縮応力に起因する金属ウイスカが発生してしまうことを抑制するために行うものである。スクリーニング終了後、内部の電気特性検査を行う。即ち、圧電振動片3の共振周波数、共振抵抗値、ドライブレベル特性(共振周波数及び共振抵抗値の励振電力依存性)等を測定してチェックする。また、絶縁抵抗特性等を併せてチェックする。そして、最後に圧電振動子1の外観検査を行って、寸法や品質等を最終的にチェックする。この結果、図1及び図2に示す圧電振動子1を組み立てることができる。
【0061】
特に、圧電振動子1を構成する気密端子2を製造する際に、最後の第2切断工程を行うまで、枠部22の他端側を切断しないので、一対のリード端子11のアウターリード11bが一体的に繋がった状態となっている。そのため、製造途中で外力を受けたとしても、アウターリード11bが変形し難くなっている。従って、互いのアウターリード11bの位置関係がずれないので平行度を維持することができる。その結果、気密端子2の高品質化を図ることができる。
【0062】
また、第2切断工程を行うまで、アウターリード11bが繋がっているので、製造途中(例えば、被膜工程中)で他の枠部22と一緒になったとしても、従来のように絡み合ってしまうことがない。そのため、歩留まり良く製造することができ、効率良く生産して大量生産にも対応することができる。しかも、本実施形態では、枠部形成工程の際に、ベース基板20から1つの枠部22を形成するのではなく、複数の枠部22を形成している。そのため、枠部22を一度に複数得ることができるので、より効率良く気密端子2を製造することができる。
なお、インナーリード11aに関しては、アウターリード11bよりもステム10からの長さが遥かに短いので、第1切断工程以降に変形したり、絡み合ったりする可能性が少ない。
【0063】
更に、第2切断工程を行うまで、アウターリード11bが一体的に繋がっているので、リード端子11の幅をできるだけ小さくしても、全体の剛性としては低下し難い。よって、リード端子11を小型にすることができ、ステム10の小型化に繋げることができる。その結果、気密端子2のさらなる小型化を図ることができる。
【0064】
上述したように、本実施形態の気密端子2の製造方法によれば、第2切断工程を行うまで、一対のリード端子11をあたかも1つのリード端子11のように取り扱うことができるので、高品質で歩留まり良く、しかも小型化を図りながら2本のリード端子11を有する気密端子2を製造することができる。
また、本実施形態では、インナーリード11aの長さを変えて製造しているので、一方のインナーリード11aに圧電振動片3のマウント電極6を面接触させることができ、該圧電振動片3をより確実に固定することができる。また、両インナーリード11aと圧電振動片3との機械的及び電気的接続を、それぞれ確認しながら別々のタイミングで行える。つまり、一方のインナーリード11aと圧電振動片3との接続状態をしっかりと確認した後に、他方のインナーリード11aと圧電振動片3との接続作業を開始することができる。よって、圧電振動子1を高品質に組み立てることができる。つまり、圧電振動子1の高品質化に繋がる気密端子2を製造することができる。
【0065】
そして本実施形態の圧電振動子1は、上述したように高品質化、小型化及び低コスト化が図られた気密端子2を有しているので、同様に高品質化、小型化及び低コスト化を図ることができる。
【0066】
次に、本発明に係る発振器の一実施形態について、図23を参照しながら説明する。
本実施形態の発振器30は、図23に示すように、圧電振動子1を、集積回路31に電気的に接続された発振子として構成したものである。この発振器30は、コンデンサ等の電子部品32が実装された基板33を備えている。基板33には、発振器用の上記集積回路31が実装されており、この集積回路31の近傍に、圧電振動子1の圧電振動片3が実装されている。これら電子部品32、集積回路31及び圧電振動子1は、図示しない配線パターンによってそれぞれ電気的に接続されている。なお、各構成部品は、図示しない樹脂によりモールドされている。
【0067】
このように構成された発振器30において、圧電振動子1に電圧を印加すると、該圧電振動子1内の圧電振動片3が振動する。この振動は、圧電振動片3が有する圧電特性により電気信号に変換されて、集積回路31に電気信号として入力される。入力された電気信号は、集積回路31によって各種処理がなされ、周波数信号として出力される。これにより、圧電振動子1が発振子として機能する。
また、集積回路31の構成を、例えば、RTC(リアルタイムクロック)モジュール等を要求に応じて選択的に設定することで、時計用単機能発振器等の他、当該機器や外部機器の動作日や時刻を制御したり、時刻やカレンダー等を提供したりする機能を付加することができる。
【0068】
上述したように、本実施形態の発振器30によれば、高品質化、小型化及び低コスト化が図られた圧電振動子1を備えているので、発振器30自体の高品質化を図ることができ、製品の信頼性を向上することができる。また、発振器自体の小型化及び低コスト化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な周波数信号を得ることができる。
【0069】
次に、本発明に係る電子機器の一実施形態について、図24を参照して説明する。なお電子機器として、上述した圧電振動子1を有する携帯情報機器40を例にして説明する。
始めに本実施形態の携帯情報機器40は、例えば、携帯電話に代表されるものであり、従来技術における腕時計を発展、改良したものである。外観は腕時計に類似し、文字盤に相当する部分に液晶ディスプレイを配し、この画面上に現在の時刻等を表示させることができるものである。また、通信機として利用する場合には、手首から外し、バンドの内側部分に内蔵されたスピーカ及びマイクロフォンによって、従来技術の携帯電話と同様の通信を行うことが可能である。しかしながら、従来の携帯電話と比較して、格段に小型化及び軽量化されている。
【0070】
次に、本実施形態の携帯情報機器40の構成について説明する。この携帯情報機器40は、図24に示すように、圧電振動子1と、電力を供給するための電源部41とを備えている。電源部41は、例えば、リチウム二次電池からなっている。この電源部41には、各種制御を行う制御部42と、時刻等のカウントを行う計時部43と、外部との通信を行う通信部44と、各種情報を表示する表示部45と、それぞれの機能部の電圧を検出する電圧検出部46とが並列に接続されている。そして、電源部41によって、各機能部に電力が供給されるようになっている。
【0071】
制御部42は、各機能部を制御して音声データの送信及び受信、現在時刻の計測や表示等、システム10全体の動作制御を行う。また、制御部42は、予めプログラムが書き込まれたROMと、該ROMに書き込まれたプログラムを読み出して実行するCPUと、該CPUのワークエリアとして使用されるRAM等とを備えている。
【0072】
計時部43は、発振回路、レジスタ回路、カウンタ回路及びインターフェース回路等を内蔵する集積回路と、圧電振動子1とを備えている。圧電振動子1に電圧を印加すると圧電振動片3が振動し、該振動が水晶の有する圧電特性により電気信号に変換されて、発振回路に電気信号として入力される。発振回路の出力は二値化され、レジスタ回路とカウンタ回路とにより計数される。そして、インターフェース回路を介して、制御部42と信号の送受信が行われ、表示部45に、現在時刻や現在日付或いはカレンダー情報等が表示される。
【0073】
通信部44は、従来の携帯電話と同様の機能を有し、無線部47、音声処理部48、切替部49、増幅部50、音声入出力部51、電話番号入力部52、着信音発生部53及び呼制御メモリ部54を備えている。
無線部47は、音声データ等の各種データを、アンテナ55を介して基地局と送受信のやりとりを行う。音声処理部48は、無線部47又は増幅部50から入力された音声信号を符号化及び複号化する。増幅部50は、音声処理部48又は音声入出力部51から入力された信号を、所定のレベルまで増幅する。音声入出力部51は、スピーカやマイクロフォン等からなり、着信音や受話音声を拡声したり、音声を集音したりする。
【0074】
また、着信音発生部53は、基地局からの呼び出しに応じて着信音を生成する。切替部49は、着信時に限って、音声処理部48に接続されている増幅部50を着信音発生部53に切り替えることによって、着信音発生部53において生成された着信音が増幅部50を介して音声入出力部51に出力される。
なお、呼制御メモリ部54は、通信の発着呼制御に係るプログラムを格納する。また、電話番号入力部52は、例えば、0から9の番号キー及びその他のキーを備えており、これら番号キー等を押下することにより、通話先の電話番号等が入力される。
【0075】
電圧検出部46は、電源部41によって制御部42等の各機能部に対して加えられている電圧が、所定の値を下回った場合に、その電圧降下を検出して制御部42に通知する。このときの所定の電圧値は、通信部44を安定して動作させるために必要な最低限の電圧として予め設定されている値であり、例えば、3V程度となる。電圧検出部46から電圧降下の通知を受けた制御部42は、無線部47、音声処理部48、切替部49及び着信音発生部53の動作を禁止する。特に、消費電力の大きな無線部47の動作停止は、必須となる。更に、表示部45に、通信部44が電池残量の不足により使用不能になった旨が表示される。
【0076】
即ち、電圧検出部46と制御部42とによって、通信部44の動作を禁止し、その旨を表示部45に表示することができる。この表示は、文字メッセージであっても良いが、より直感的な表示として、表示部45の表示面の上部に表示された電話アイコンに、×(バツ)印を付けるようにしても良い。
なお、通信部44の機能に係る部分の電源を、選択的に遮断することができる電源遮断部56を備えることで、通信部44の機能をより確実に停止することができる。
【0077】
上述したように、本実施形態の携帯情報機器40によれば、高品質化、小型化及び低コスト化が図られた圧電振動子1を備えているので、携帯情報機器40自体の高品質化を図ることができ、製品の信頼性を向上することができる。また、携帯情報機器自体の小型化及び低コスト化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定した高精度な時計情報を表示することができる。
【0078】
次に、本発明に係る電波時計の一実施形態について、図25を参照して説明する。
本実施形態の電波時計60は、図25に示すように、フィルタ部61に電気的に接続された圧電振動子1を備えたものであり、時計情報を含む標準の電波を受信して、正確な時刻に自動修正して表示する機能を備えた時計である。
日本国内には、福島県(40kHz)と佐賀県(60kHz)とに、標準の電波を送信する送信所(送信局)があり、それぞれ標準電波を送信している。40kHz若しくは60kHzのような長波は、地表を伝播する性質と、電離層と地表とを反射しながら伝播する性質とを併せもつため、伝播範囲が広く、上述した2つの送信所で日本国内を全て網羅している。
【0079】
以下、電波時計60の機能的構成について詳細に説明する。
アンテナ62は、40kHz若しくは60kHzの長波の標準電波を受信する。長波の標準電波は、タイムコードと呼ばれる時刻情報を、40kHz若しくは60kHzの搬送波にAM変調をかけたものである。受信された長波の標準電波は、アンプ63によって増幅され、複数の圧電振動子1を有するフィルタ部61によって濾波、同調される。
本実施形態における圧電振動子1は、上記搬送周波数と同一の40kHz及び60kHzの共振周波数を有する水晶振動子部68、69をそれぞれ備えている。
【0080】
更に、濾波された所定周波数の信号は、検波、整流回路64により検波復調される。続いて、波形整形回路65を介してタイムコードが取り出され、CPU66でカウントされる。CPU66では、現在の年、積算日、曜日、時刻等の情報を読み取る。読み取られた情報は、RTC67に反映され、正確な時刻情報が表示される。
搬送波は、40kHz若しくは60kHzであるから、水晶振動子部68、69は、上述した音叉型の構造を持つ振動子が好適である。
【0081】
なお、上述の説明は、日本国内の例で示したが、長波の標準電波の周波数は、海外では異なっている。例えば、ドイツでは77.5KHzの標準電波が用いられている。従って、海外でも対応可能な電波時計60を携帯機器に組み込む場合には、さらに日本の場合とは異なる周波数の圧電振動子1を必要とする。
【0082】
上述したように、本実施形態の電波時計60によれば、高品質化、小型化及び低コスト化が図られた圧電振動子1を備えているので、電波時計60自体の高品質化を図ることができ、製品の信頼性を向上することができる。また、電波時計自体の小型化及び低コスト化を図ることができる。さらにこれに加え、長期にわたって安定して高精度に時刻をカウントすることができる。
【0083】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0084】
例えば、上記実施形態では、音叉型の圧電振動片3を例に挙げたが、圧電振動片は屈曲振動する音叉型に限られず、例えば厚み滑りモードで振動する圧電振動片であってもよい。また、圧電振動片3の一例として、振動腕部5bの先端が錘部5cとなったハンマーヘッドタイプを例に挙げたが、この場合に限られず、基端から先端に亘って横幅が一定の振動腕部を有する圧電振動片でも構わない。但し、圧電振動片をハンマーヘッドタイプにすることで、気密端子の全長を抑えてより小型化を図ることができるので、好ましい。特に、携帯電話等の小型の電子機器に好適に使用することができる。
【0085】
また、上記実施形態では、四角い枠型の枠部22としたが、この形状に限られず、所定の間隔Xを空けて平行に配された一対の平板部21を両端で繋げた形状であれば構わない。例えば、図26及び図27に示す枠部22であっても構わない。但し、加工し易い点で、四角い枠型の枠部22とすることが好ましい。
【0086】
また、上記実施形態において、圧電振動片3の厚みが薄い場合には、圧電振動片3と他方のインナーリード11aとの間に生じる段差が大きくなってしまう。このような場合には、図28に示すように、第1切断工程の際、一方のインナーリード11aの先端に段差が生じるように、枠部22の一端側を切断しても構わない。こうすることで、厚みが薄い圧電振動片3であっても、図29に示すように、該圧電振動片3と他方のインナーリード11aとの間に生じる段差をできるだけ狭めることができ、機械的及び電気的な接続を確実にすることができる。
【0087】
更には、第1切断工程時に、図30に示すように、他方のインナーリード11aの端面が一部斜面になるように切断しても構わない。こうすることで、他方のインナーリード11aと圧電振動片3との間の段差をなだらかにすることができると共に、導電性接着材14の接触面積を増大することができる。従って、他方のインナーリード11aと圧電振動片3とを、より確実に接続することができる。
【0088】
また、上記実施形態では、他方のインナーリード11aと圧電振動片3のマウント電極6とを、導電性接着材14を介して電気的及び機械的に接続したが、この場合に限られるものではない。例えば、金等の導電性材料によりバンプを形成し、該バンプを利用して両者を接続しても構わない。特に、バンプを利用することで、他方のインナーリード11aと圧電振動片3との間に多少の段差があったとしても、問題なく両者を接続することができる。また、一方のインナーリード11aと圧電振動片3との間も同様にバンプを利用して接続しても構わない。また、半田を利用して接続しても構わない。
【0089】
また、上記実施形態では、被膜工程を行う際に、ステム10及び枠部22に対して共に下地金属層及び仕上金属層を被膜させたが、例えば、ステム10及び枠部22に対して下地金属層を被膜させた後、圧電振動片3のマウント電極6と面接触する一方のインナーリード11aの一部分だけに、金の薄膜等の仕上げ金属膜を被膜させても構わない。
【0090】
また、上記実施形態において、枠部形成工程後、バレル処理等を行って枠部22の縁を面取りしても構わない。こうすることで、枠部22の表面積を大きくすることができ、リング部12bとの間の密着度をより高めることができる。その結果、気密封止をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明に係る圧電振動子の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す切断線A−Aに沿った断面図である。
【図3】図1に示す気密端子の斜視図である。
【図4】図1に示す圧電振動子を製造する際の一工程を示すフローチャートである。
【図5】図4に示すフローチャートの続きである。
【図6】図1に示す圧電振動子を製造する際の一工程を示す図であって、ベース基板を加工して、接続部を介してベース基板に接続された枠部を複数形成した状態を示す図である。
【図7】図6に示す枠部を拡大した状態を示す斜視図である。
【図8】図6に示す状態から、枠部内に充填材を仮焼結させた状態を示す図である。
【図9】図8に示す枠部を拡大した状態を示す斜視図である。
【図10】図9に示す状態から、接続部を切断して、ベース基板から枠部を切り離した状態を示す斜視図である。
【図11】充填材材料を成型して作製したリング部を示す図であって、(a)は挿通孔に沿って切断した断面図であり、(b)は(a)の断面矢視B−B図である。
【図12】図10に示す枠部を、リング部の挿通孔内に挿通している状態を示す図である。
【図13】図12に示す状態から、枠部に仮焼結させた充填材とリング部とを一致させた位置で、枠部とリング部とを仮固定した状態を示す図である。
【図14】図13に示す状態から、ステムを挿着した後、リング部及び充填材の焼成を行った状態を示す図である。
【図15】図14に示す状態から、枠部の一端側を切断線に沿って切断する直前の状態を示す図である。
【図16】図15に示す状態から、枠部の一端側を切断してインナーリードを形成した後、金属膜を被膜させた状態を示す図である。
【図17】図16に示す状態から、枠部の他端側を切断してアウターリードを形成すると共にリード端子を形成して、気密端子を製造した状態を示す図である。
【図18】気密端子を固定するパレットを示す図であって、(a)は上方から見た図であり、(b)は(a)の断面矢視C−C図である。
【図19】製造した気密端子を図18に示すパレットに固定した状態を示す図であって、(a)は上方から見た図であり、(b)は(a)を側面から見た図である。
【図20】図19に示す状態から、一方のインナーリードと圧電振動片のマウント電極とを接続した状態を示す図であって、(a)は上方から見た図であり、(b)は(a)を側面から見た図である。
【図21】図20に示す状態から、他方のインナーリードと圧電振動片のマウント電極とを接続した状態を示す図であって、(a)は上方から見た図であり、(b)は(a)を側面から見た図である。
【図22】図21に示す状態から、圧電振動片を内部に収納させるようにケースを被せている状態を示す図であって、(a)は上方から見た図であり、(b)は(a)を側面から見た図である。
【図23】本発明に係る発振器の一実施形態を示す構成図である。
【図24】本発明に係る電子機器の一実施形態を示す構成図である。
【図25】本発明に係る電波時計の一実施形態を示す構成図である。
【図26】本発明に係る枠部の他の例を示す斜視図である。
【図27】本発明に係る枠部のさらに他の例を示す斜視図である。
【図28】枠部の一端側を切断する際に、一方のインナーリードの先端に段差がつくように切断する直前の状態を示す図である。
【図29】図28に示す切断線で切断されたインナーリードを有する圧電振動子の断面図である。
【図30】先端の一部が斜面となった他方のインナーリードを有する圧電振動子の断面図である。
【図31】従来の圧電振動子の一例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0092】
1 圧電振動子
2 気密端子
3 圧電振動片
4 ケース
10 ステム
11 一対のリード端子
11a インナーリード
11b アウターリード
12 充填材
13 金属膜
20 ベース基板
21 一対の平板部
22 枠部
23 接続部
30 発振器
31 集積回路
40 携帯情報機器(電子機器)
43 計時部
60 電波時計
61 フィルタ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のステムと、該ステムを貫通した状態で配置され、ステムを間に挟んで一端側が圧電振動片に電気的に接続されるインナーリードとされ、他端側が外部に電気的に接続されるアウターリードとされた板状の一対のリード端子と、該リード端子と前記ステムとを固定させる充填材とを有し、圧電振動片をケース内に封止させる気密端子を製造する方法であって、
導電性材料からなるベース基板を加工して、所定の間隔を空けて平行に配された一対の平板部が両端で繋がった枠部を形成する枠部形成工程と、
該枠部形成工程後、前記枠部の所定位置に前記充填材を介して前記ステムを装着するステム装着工程と、
該ステム装着工程後、前記枠部の一端側を切断して前記一対の平板部の繋がりを切り離し、各平板部の一端側を前記インナーリードとする第1切断工程と、
該第1切断工程後、少なくとも前記枠部に対して所定の金属膜を被膜させる被膜工程と、
該被膜工程後、前記枠部の他端側を切断して前記一対の平板部の繋がりを切り離し、各平板部の他端側を前記アウターリードとすると共に、一対の平板部を前記リード端子として機能させる第2切断工程とを行うことを特徴とする気密端子の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の気密端子の製造方法において、
前記枠部形成工程の際、接続部を介して前記枠部を前記ベース基板に繋げた状態で複数形成し、
前記ステム装着工程の際、前記接続部を切断して複数の前記枠部を切り離すことを特徴とする気密端子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の気密端子の製造方法において、
前記第1切断工程の際、一方の前記インナーリード上に前記圧電振動片を載置したときに、他方の前記インナーリードが圧電振動片の側面に当接するように、前記枠部を切断することを特徴とする気密端子の製造方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の気密端子の製造方法により製造されたことを特徴とする気密端子。
【請求項5】
請求項4に記載の気密端子と、
前記インナーリードに電気的に接続された圧電振動片と、
該圧電振動片を内部に封止した状態で前記気密端子に接合されたケースとを備えていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項6】
請求項5に記載の圧電振動子において、
前記圧電振動片と前記インナーリードとは、導電性接着剤を介して接続されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項7】
請求項5に記載の圧電振動子において、
前記圧電振動片と前記インナーリードとは、導電性材料から形成されたバンプを介して接続されていることを特徴とする圧電振動子。
【請求項8】
請求項4から7のいずれか1項に記載の圧電振動子が、発振子として集積回路に電気的に接続されていることを特徴とする発振器。
【請求項9】
請求項4から7のいずれか1項に記載の圧電振動子が、計時部に電気的に接続されていることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項4から7のいずれか1項に記載の圧電振動子が、フィルタ部に電気的に接続されていることを特徴とする電波時計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2008−177930(P2008−177930A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−10491(P2007−10491)
【出願日】平成19年1月19日(2007.1.19)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】