説明

液体を充填したキトサン−アニオン性脂溶性界面活性剤カプセルの分散体

本発明は、概して膜の分野に関する。本発明は特に、膜に囲まれた物体を含む組成物に関する。この組成物は、例えば食用組成物である。本発明の一実施形態は、油性画分、親水性画分及び少なくとも1つの物体を含有する組成物であって、物体は、キトサン及び少なくとも1種の脂質ホスファチジン酸界面活性剤の分子層を何層か含むシェルと、親水性成分及び/又は疎水性成分を含有する内相を含む内容物と、を含む、組成物に関する。組成物を使用して、例えば食品を保護し又は特定の性質を製品に送達することができる。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、概して膜の分野に関する。本発明は特に、膜に囲まれた物体(body)を含む組成物に関する。この組成物は、例えば食用組成物である。本発明の一実施形態は、油性画分、親水性画分及び少なくとも1つの物体を含む組成物であって、物体は、複合体形成物質分子の分子層を何層か含んだシェル(複合体形成物質分子は、キトサン及び少なくとも1種の脂質ホスファチジン酸界面活性剤である。)と、親水性成分及び/又は疎水性成分を含有する内相を含む内容物と、を含む、組成物に関する。組成物は、例えば、食品を保護するために又は特定の性質を製品に送達するために使用できる。
【0002】
送達を制御するために大きさ及び厚さが制御された水中油型又は油中水型の中空カプセルは、通常、エマルションの液滴への(ポリ)イオン種の交互吸着処理によって製造される(Sukhishvili S.A.,Curr.Op.Coll.Int.Sci.2005, 10, 37;Grigoriev D.O.,Miller R.,Curr.Op.Coll.Int.Sci.2009, 14, 48;Peyratout C.S.,Dahne L.,Angew.Chem.Int.Edit.2004, 43, 3762)。これは、時間のかかる冗長な多段階プロセスであり、用途にもよるが、ほとんどの場合、帯電の符号が変わる2つの連続した吸着ステップの間に洗浄ステップを必要とする(Decher G.,Eckle M.,Schmitt J.,Struth B.,Curr.Op.Coll.Int.Sci.1998, 3, 32)。その結果、交互吸着法を用いて形成された境界面は、ほとんどの場合薄く機械的に弱い。
【0003】
交互吸着法の主な利点は、適合した複合多層構造を構築し、中空カプセルのシェルを形成することを可能にすることである。シェルの厚さに対するある程度の制御を可能にする他の公知の方法は、多重エマルションの使用又はo/w界面での相分離に基づく(Grigoriev D.O.,Miller R.,Curr.Op.Coll.Int.Sci.2009, 14, 48)。
【0004】
コアセルベーション法に関しては、その主な欠点は、プロセスパラメーターに高感受性であること及びシェルの厚さが不均一なことである。均一で制御されたシェルの厚さは、低分子界面活性剤と高分子界面活性剤との間の界面重合によって実現できるが、これらの方法は、通常、非食用有機溶媒及びモノマーの除去を必要とする。この結果、生成したカプセルは、一般に食品等級製品に適用できない。
【0005】
例えば、米国特許第5843509号には、アセトンを有機溶媒として用いて、キトサン及び油溶性レシチンを使用したサブミクロンカプセルを形成することが記載されている。
【0006】
キトサンは、静電的相互作用に基づいて、リポソームの被覆によって(Henriksen,I.;Smistad,G.;Karlsen,Int.J.Pharm.1994, 101, 227;Ogawa S.,Decker E.A.,McClements D.J.,J.Agr.Food Chem.2003, 51, 2806)(例えば米国特許第5843509号にも記載されている)、又はアニオン性乳化剤の溶液をキトサン溶液と混合したときの自己組織化によって(Gerelli Y.,Barbieri S.,Di Bari M.T.,Deriu A.,Cantu L.,Brocca P.,Sonvico F.,Colombo P.,May R.,Motta S.,Langmuir 2008, 24, 11378)、中空カプセルを形成することが示されているが、シェルの厚さが常に(湿潤状態において)100nm未満であり、また、一般に非食用有機溶媒を使用することによって中空カプセルが形成される。
【0007】
本発明は、現在の技術水準を改善すること、特に少なくとも100nmからそれ以上の制御可能な壁厚を有するカプセルを含む食品等級組成物を提供することを目的とした。
【0008】
水中油型又は油中水型のエマルションの場合、カプセル壁の厚さ制御によって、大きな値すなわち約100nm〜1mmの壁厚が実現されたことは全くなかった。
【0009】
驚くべきことに、本発明者らは、簡便な一ステップで製造可能で、組成、大きさが調整可能であり、シェル厚が100nmからミリメートルの領域まで調整可能な食品等級カプセルを含む組成物を、油/水界面で膜を形成するイオン種間の界面複合体形成に基づいて提供することができた。
【0010】
その結果、本発明者らは、独立クレームの発明によって本発明の目的を実現することができた。従属クレームは、本発明のアイデアをさらに発展させたものである。
【0011】
本発明者らは、油/水の界面で膜を形成するイオン種間の界面複合体形成に基づいて、キトサンを使用して、簡便な一ステップで、組成、大きさ及びシェル厚が調整可能な食品等級カプセルを製造する方法を記載している。
【0012】
より具体的には、キトサンは、脂質ホスファチジン酸界面活性剤と複合体を形成する。
【0013】
上記方法は、油中水型及び水中油型のカプセルを形成することを可能にし、フレーバーなどの特定の油溶性又は水溶性低分子のカプセル化を可能にする。
【0014】
カプセルの大きさは、マイクロ流体及びバッチ乳化法を用いて観察されたような、油と水を混合したときの乳化ステップによって決定される。カプセルの厚さは、数ナノメートルからミリメートル規模までの間で細かく制御できる。厚さの値が大きいと、粘弾性率が非常に高くなる(ずれにおいて1Pa.m超に及び得る)。それにもかかわらず、湿潤状態におけるシェルは、高度に柔軟な状態にとどまる。
【0015】
その結果、化粧品又は食品に使用した場合、壁厚がマイクロメートル領域以下のカプセルが存在すれば、ザラザラするなどの望ましくない感覚特性をもたらすことはないであろう。
【0016】
したがって、本発明の一実施形態は、油性画分、親水性画分及び少なくとも1つの物体を含有する組成物であって、物体は、(1)複合体形成物質分子の分子層を少なくとも5層含むシェルと、(2)親水性成分及び/又は疎水性成分を含有する内相を含む内容物と、を含む、組成物である。シェルの厚さは、極低温SEM又は極低温TEM法によって制御できる。湿潤状態において、シェルの厚さは約100nm以上である。
【0017】
複合体形成物質分子は、キトサン及び少なくとも1種の脂質ホスファチジン酸界面活性剤であってもよい。
【0018】
通常、脂質ホスファチジン酸界面活性剤の含有量は、シェル中に存在する全脂質界面活性剤の少なくとも20%w/wに達する。
【0019】
また、脂質ホスファチジン酸界面活性剤の含有量は、シェル中に存在する全脂質界面活性剤の少なくとも50%w/wに達してもよい。
【0020】
例えば、0.1重量%以下のキトサンが組成物の油性画分中に可溶化状態で存在してもよく、及び/又は10重量%以下の脂質ホスファチジン酸界面活性剤がエマルションの親水性画分中に可溶化状態で存在してもよい。
【0021】
キトサンと少なくとも1種の脂質ホスファチジン酸界面活性剤は、超分子レベルで複合体形成され得る。この複合体形成はシェルの安定性に寄与する。
【0022】
生成した物体は、実効正電荷を有していても、実効負電荷を有していてもよく、又は実効電荷がなくてもよい。
【0023】
実効正電荷又は実効負電荷は、物体が反対の電荷を有する化合物によって機能的にされ得る又は各物体が電荷分離によって組成物から分離され得るという利点を持つ。これは、カプセルのコロイド凝集の回避にも寄与し得る。負電荷は、食品における望ましくない収斂性を回避するために、食品マトリックス、及びカプセルの濃度・大きさに応じて使用できる。
【0024】
中性の実効電荷は、例えば容器に摩擦が与えられた場合など、正電荷又は負電荷を既に有し得る又は生じ得る容器の中にあったとしても、物体が組成物の不可欠な部分を残すことになるという利点がある。
【0025】
組成物は、食品等級の油以外の有機溶媒を使用せずに生成することができる。したがって、本発明の組成物は、非食用有機溶媒又はその残留物を含有しない。これは、組成物が、非食用有機溶媒を除去する必要なしで、かつ組成物中に存在する前記有機溶媒の残留物がいくらか混入している危険性なしで、化粧用途又は食品用途に容易に使用できるという利点を必然的に有する。
【0026】
有機溶媒は、炭素を含有する溶媒である。例えば、本発明の組成物は、有機溶媒を使用せずに調製でき、及び/又は沸点100℃、90℃又は80℃未満の有機溶媒を含まない。
【0027】
キトサンは、多糖主鎖を有する天然化合物であり、甲殻類の貝殻又は菌類を起源とするキチン由来であり、そのポリカチオン特性が溶解を助けるであろう特定のpHより低いpHで水溶性である。
【0028】
本発明の組成物はいかなる種類の組成物であってもよい。好ましくは、食品等級組成物又は食品である。
【0029】
例えば、組成物は、エマルション、例えばサブマイクロエマルション、マイクロエマルション又はマクロエマルションであってもよい。
【0030】
エマルションは、(例えば低カロリー用途向けの)二重エマルションであってもよい。
【0031】
エマルションはまた、ISAmulsionであってもよい。ISAmulsionは、例えば米国特許出願20080255247に詳細に記載されている。「ISAmulsion」という用語は、内部で自己組織化した構造を含有する油滴の特有の性質を表し、油滴が親水性ドメインを含む自己組織化ナノサイズ構造を持たない一般の水中油型又はw/o/w二重エマルション、例えばナノエマルション及びマイクロエマルションとは異なる。ISAmulsion液滴は、基本的に親水性ドメインを含む自己組織化構造を持つ油滴からなる。この構造は、ラメラ液晶又はラメラ結晶の、又はL2、マイクロエマルション、等方性液相、ヘキサゴナル、ミセルキュービック又は双連続立方相を含む逆性のものであってもよい。油相におけるこれらの構造は、単一のナノ構造又は種々のナノ構造の混合物として出現することができる。
【0032】
エマルションは、快適に摂取させ、魅力的な口腔内感覚をもたらすという利点を持つ。
【0033】
サブマイクロエマルションは、光学的に透明であり、曇った外観を持たないという利点がある。
【0034】
マイクロエマルション又はマクロエマルションは各々特有の感覚刺激特性をもたらすため、使用目的によっては、これらのエマルションは好ましくなり得る。
【0035】
少なくとも1つの物体は、実質的に球状のカプセル、細長いカプセル、平板形状のカプセル又は繊維であってもよい。本発明の方法は、必要に応じて物体の形状を調節することを可能にする。
【0036】
有益な油性又は親水性化合物を輸送又は保護するために物体を使用することが望まれる場合、実質的に球状又は球状の形態が好ましいことがある。それは、この形状が、表面当たり最大の量での内容物の含有を可能にするためである。
【0037】
細長いカプセル、平板形状のカプセル又は繊維には、表面が広いという利点がある。これは、表面が機能的にされる場合に、特に有益である。その上、非球状カプセルの形状に起因して、エマルション内の流体力学的相互作用が著しく増え得る。これにより、これらの形状が、製品の粘性及び質感を制御するのに適したものとなる。
【0038】
物体は、内相を含有する。この内相は、物体の内容物の少なくとも約0.01体積%、好ましくは少なくとも約50体積%、さらにより好ましくは少なくとも約90体積%を占めてもよい。例えば、物体は内相で完全に満ちていてもよい。
【0039】
内相は、単一化合物からなっていてもよく、又は化合物の混合物を含有していてもよい。
【0040】
例えば、内相は、少なくとも1種の親水性成分を含むことができる。内相の親水性成分は、液体であっても気体であってもよい。かかる物理的条件は、室温及び標準気圧を指す。
【0041】
親水性成分は、水、果汁、レモネード、アルコール飲料、コーヒーリカー、コーヒー抽出液、フレーバーウォーター、溶液若しくは分散液中のタンパク質、溶液若しくは分散液中の酵素、溶液中の水溶性ビタミンなどの親水性液体、又はそれらの組み合わせからなる群から選択できる。
【0042】
内相は、少なくとも1種の疎水性成分を代替的に又は追加的に含んでもよい。内相の疎水性成分も、液体であっても気体であってもよい。
【0043】
例えば、内相は、フレーバーオイル及び/又はフレグランスオイル、例えばハッカ油;精油;魚油;オメガ−3脂肪酸及び/又はオメガ−6脂肪酸を含む油性化合物からなる群から選択される疎水性成分を含んでもよい。
【0044】
したがって、本発明の物体は、いくつかの目的のために使用できる。例えば:
有益な食品成分を、例えば酸化から保護する;
機能性原料、例えば酵素の、食品との直接接触を回避する;
望ましくない異味を隠す;
不要な臭気発生を回避する;
製品に特定の味覚を与える;
製品に特定の食感を与える;
製品に特定の質感を与える;又は
油滴を、場合によりフレーバーと一緒に、カプセル化するためにカプセルを使用し、過剰の水を除去することによって、例えばブイヨン中に、安定した分散構造を形成する;
ために使用できる。
【0045】
物体のシェルは、キトサン及び少なくとも1種の脂質ホスファチジン酸界面活性剤を含んでいてもよい。また、シェルは、例えばタンパク質などの他の高分子電解質をも含有していてもよい。
【0046】
シェルはまた、キトサン及び脂質ホスファチジン酸界面活性剤からなってもよい。
【0047】
キトサン及び少なくとも1種の両親媒性界面活性剤が、安定なシェルを形成させる任意の比率で存在していてもよい。好適な比率は、当業者により日常の実験を用いて決定可能である。
【0048】
例えば、キトサンと少なくとも1種の両親媒性アニオン性脂質界面活性剤が、1:10〜10:1、好ましくは5:1〜1:1の重量比で使用できる。
【0049】
脂質ホスファチジン酸界面活性剤は、周囲条件において1:100未満の分配係数(水/油)を有していてもよい。このようなアニオン性脂質界面活性剤は、分散油相の体積分率が十分に高いという条件で、溶解状態で油性画分中に及び/又は組成物の油/水界面でほとんど独占的に存在することになるという利点を有する。例えば、脂質ホスファチジン酸界面活性剤は、ホスファチジン脂肪酸アンモニウム、又は例えばレシチン(好ましくはレシチンYN)中に含まれるホスファチジン酸の混合物であってもよい。
【0050】
例えば、物体のシェルは、キトサン及びレシチンを含んでもよい。さらなる実施例において、物体のシェルは、キトサン及びレシチンYNを含んでもよい。
【0051】
本発明の方法は、驚くほど厚い物体、したがって耐久性のあるシェルを生成することを可能にする。結果として、湿潤状態にあるシェルの直径は、約100nm〜1000μm、好ましくは約300nm〜3μm、より好ましくは約500nm〜1μmであってもよい。シェルの厚さを選択することによって、例えば内相のカプセル化及び/又は機械的保護のために望まれる適正な特性を実現できる。
【0052】
本発明の物体は、約0.0001〜80重量%、好ましくは約0.01〜1重量%、より好ましくは約0.01〜0.3重量%のキトサンを含んでいてもよい。
【0053】
本発明の物体のキトサン含有量が高ければ(例えば10〜80重量%)、組成物から取り除かれた場合、外観は乾燥しているが液体コアを含有する物体の調製が可能となる。
【0054】
したがって、本発明は、10〜80重量%のキトサン及び少なくとも1種の脂質ホスファチジン酸界面活性剤と、親水性成分及び/又は疎水性成分を含有する内相を含む内容物と、を含む物体にも関する。
【0055】
本発明の物体は、水/油界面上に吸着し、シェル中に閉じ込められていて、シェルの疎水性側で突出している粒子をさらに含んでもよい。
【0056】
高い界面エネルギー利得によって不可逆的にシェルの水/油界面に付着する粒子は、シェルの表面で捕獲されて、さらなる適用が可能となる。その結果、カプセル又は膜は、機能化表面を有すると見なされ、したがって粒子の表面層は、環境との物理的及び化学的相互作用を制御するために使用できる。
【0057】
このような粒子は、物体に所望の特性を送達する任意の粒子であってもよい。例えば、このような粒子は、着色剤、味覚物質、酸化防止剤、抗菌剤、ラジカルスカベンジャー、脂肪球、鉱物粒子、荷電分子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択できる。
【0058】
原則として、本発明の組成物を使用して、本発明の物体が有益と見なされる種類の製品はすべて調製できる。
【0059】
例えば、本発明の組成物は、食品組成物、動物性食品組成物、医薬組成物、化粧品組成物、栄養補助食品、飲料、食品添加物又は医薬品の調製に使用できる。
【0060】
本発明の組成物及び/又は本発明の物体は既に述べた多くの利点をもたらす。
【0061】
例えば、本発明の組成物及び/又は本発明の物体は、エマルションを安定化するために使用できる。
【0062】
本発明の物体は、著しい安定性を示し、これによりエマルションの安定性がもたらされるであろう。
【0063】
さらに、物体の表面は、乳化剤など、自らエマルションを安定化させる働きをする助剤によって機能化され得る。
【0064】
本発明の組成物及び/又は本発明の物体を使用して、いかなる種類のエマルションも、例えば油中水型(w/o)若しくは水中油型(o/w)エマルション、二重エマルション(w/o/w又はo/w/o)又はISAmulsionも安定化できる。
【0065】
本発明の組成物は、多くの異なる特徴及び/又は機能を製品に付与できる。本質的には、これは、物体の内容物によって、物体のシェル表面の機能化によって、又は両方の方法の組み合わせによって実現できる。
【0066】
例えば、本発明の組成物及び/又は本発明の物体は、フレーバー知覚をより長く持続させるための製品の調製に使用できる。
【0067】
有利には、経口摂取後、本発明の物体は、食品組成物中に存在する通常の味覚物質よりもずっと長く舌に接触することになる。例えばハッカ油などの味覚物質は、例えば噛んだときに、物体の内容物からゆっくりその場で放出されるであろう。
【0068】
さらに又は一方で、本発明の組成物及び/又は本発明の物体は、改善されたフレーバーの維持及び/又はフレグランスの維持を提供するために使用できる。
【0069】
物体中に存在する場合又は物体の表面の機能部分として存在する場合、フレーバー及び/又はアロマ化合物は、顕著に低揮発性であり、極めて長い期間、製品中に残るであろう。これらは、例えば酸化など、望ましくない反応からも保護される。
【0070】
リフレッシング効果を与える味覚物質又はフレグランスが用いられると、知覚強度が向上し、効果が延長されるので、リフレッシング効果は改善されるであろう。リフレッシング効果をもたらす味覚物質又はフレグランスは、ハッカ油又は柑橘油、例えばレモン油、ライム油、オレンジ油、又はグレープフルーツ油などであってもよい。他のエーテル油も同様に良好に用いることができる。
【0071】
本発明の組成物及び/又は本発明の物体は、例えば防湿層を形成するためにも使用できる。特に、物体が繊維状又は平板形状を有する場合、これらは、例えば湿り損失から製品を保護するために使用できる。その場合、物体は、製品を保護する膜状様構造を形成するであろう。
【0072】
本発明の組成物及び/又は本発明の物体は、抗菌及び/又は抗真菌活性を提供するためにも使用できる。本発明の物体は、特に平板形状又は繊維状の形状を有する場合、防湿層として機能できる。そのようなものとして、製品の微生物又は真菌定着を自動的に防止するであろう。
【0073】
一方で又はさらに、いかなる形状の物体も、抗菌及び/又は抗真菌剤で満ちていてもよい。一方で又はさらに、シェルの表面は、抗菌及び/又は抗真菌剤で機能化してもよい。このような物体は、製品と混合した場合、また組成物が微生物又は真菌汚染から保護されるべき製品の表面を覆う場合、有効となるであろう。
【0074】
本発明の物体を含む組成物は、少なくとも1種の脂質ホスファチジン酸界面活性剤を油性画分と合わせて溶液Aを得るステップと、キトサンを親水性画分と合わせて溶液Bを得るステップとを含む方法によって調製できる。
【0075】
ここでは、通常、油性画分中の少なくとも1種の脂質ホスファチジン酸界面活性剤の量は0.01%〜1%w/wであり、pHは1.5〜6.5に調節してもよい。
【0076】
親水性画分中のキトサンの典型的な量は0.01%〜1%w/wであり、pHは1.5〜6.5に調節してもよい。
【0077】
次いで、溶液Aと溶液Bを混合して分散液C1を調製するか、或いは分散液Dを溶液A及び親水性溶媒から調製し、次いで分散液Dを溶液Bと混合して分散液C2を調製するか、或いは分散液Eを溶液B及び疎水性溶媒から調製し、次いで分散液Eを溶液Aと混合して分散液C3を調製する。
【0078】
分散液C1において、A及びBを1:1000〜1:2の体積比で使用してもよい。
【0079】
分散液Dにおいて、A及び親水性溶媒を1:1000〜1:2の体積比で使用してもよい。pHは1.5〜6.5に調節してもよい。
【0080】
分散液C2において、D及びBは1:1000〜1:2の体積比で使用してもよい。
【0081】
分散液Eにおいて、B及び疎水性溶媒は、1:1000〜1:2の体積範囲で使用してもよい。pHは1.5〜6.5に調節してもよい。
【0082】
分散液C3において、E及びAは、1:1000〜1:2の体積範囲で使用してもよい。
【0083】
こうして本発明の物体のシェルを表すことになる膜を形成することができる。
【0084】
膜の成長は、当業者に既知の方法によって中断させることができる。
【0085】
キトサン溶液が連続相である場合、例えば、膜成長は、(例えばアニオン性水溶性化合物を用いた)可溶性キトサンの凝集によって、又はpHを7より高い値に調節することによって、及び/又は(例えばカプセルの濃縮及び再分散、又は透析を用いて)連続相からキトサンを洗浄除去することによって中断させることができる。
【0086】
脂質溶液が連続相である場合、膜成長は、(例えばカプセルの濃縮及び再分散、又は透析を用いて)連続相からアニオン性脂質乳化剤を洗浄除去することによって中断させることができる。
【0087】
生成した物体の形状は、本質的には球体であろう。異なる物体形状が望まれる場合、流力、剪断力、又は絞り力を分散液C1、C2又はC3に適用してもよい。このような力を用いて、平板形状又は細長い形状を得ることができる。
【0088】
物体の大きさ及びシェルの厚さの両方が制御できる。
【0089】
これらの制御は、物体を制御された送達のために使用する場合、重要となり得る。
【0090】
シェルの厚さ及び物体の大きさは、使用目的によって物体を微調整するのに使用できるパラメーターである。適切な厚さを選択することによってシェルの高い力学的性質が実現できるため、例えば水中油型カプセルは、例えば噴霧乾燥によって粉末に変わるための良好な候補である。他の乾燥方法も使用できる。
【0091】
湿ったシェルの膨潤度は、pH、浸透圧、及び製造段階のpH値及び使用段階のpH値間の差異に影響され得る。
【0092】
提案した方法を、カプセルの内相に関する特定の選択と組み合わせて使用することもでき、これは例えば機械的強度を向上させ得る又は放出制御するための制御パラメーターを加えることができる。
【0093】
さらに、シェル表面で捕獲された脂肪球を使用すれば、例えばシェルの湿潤性が制御できる。本発明の物体のコロイド特性、及び異なる性質の物体又は分子との力学的相互作用は、粒子の選択及び使用環境、物体の大きさ及びシェルの柔軟性に依存するであろう。
【0094】
シェル上にある粒子の存在は、カプセル化特性に著しく影響を及ぼすことはない。なぜなら膜連続性が同じ長さスケールで維持されているからである。
【0095】
開示されている本発明の範囲から逸脱することなく本出願に記載のすべての特徴を自由に組み合わせられることは、当業者に明らかである。
【0096】
本発明のさらなる利点及び特徴は以下の実施例及び図面から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】a)キトサン(0.24%w/w;Mw=300,000g/mol;80%脱アセチル化)及びレシチンYNをpH3で用いて形成されるシェルのSEM観察を示す図である。SEMは、膜が高度に均質な厚さであり、最小の観察スケール約10nmで多孔質でないことも明らかにしている。b)マイクロ流体法(直径250μm)を用いて形成された単分散カプセルであって、(油相を洗い流した後の)エタノール中に浮遊している単分散カプセルを示す図である。c)マイクロ流体法(直径250μm)を用いて形成された単分散カプセルを示す図である。
【図2】a)i)レシチンYN 0.5%w/wを含む水/MCT溶液、ii)キトサン溶液0.24%w/w /MCT油、iii)レシチンYN 0.5%w/wを含むキトサン溶液0.24%w/w /MCT油の油/水界面での動的界面張力を示すグラフである。b)標準濃度(レシチンYN 0.5%w/wを含むキトサン溶液0.24%w/w /MCT油)及びpH3でのSEM画像から決定された膜厚対形成時間を示すグラフである。c)標準濃度(レシチンYN 0.5%w/wを含むキトサン溶液0.24%w/w /MCT油)及びpH3、23℃、0.1Hzでの成膜(0.1Hz)の間の線形剪断界面係数を示すグラフである。
【図3】左図は、温度が25℃、50℃及び80℃の乾燥膜のX線小角度散乱シグネチャーを示す図であり、右図は、裂けた膜のマルチシート様構造を示す図である。
【図4】a)キトサンの化学構造を示す図である。b)油中水滴型の界面でのキトサン/アニオン性乳化剤の複合体形成によって形成した第1層の略図である。c)脂質ホスファチジン酸分子の代表的化学構造を示す図である。
【図5】a)鮮度の持続性に対するキトサンの影響を示すグラフである。b)甘味の持続性に対するキトサンの影響を示すグラフである。星印は、平均スコア間の有意な差異(p<0.05)を意味する。
【図6】キトサン/レシチンYN膜、及びエタノール中で捕獲され、回収され、乾燥させた疎水性ポリスチレン粒子(直径2.7μm)を含むカプセルを示す図である。(a)、(b)、(c):大きな膜。(a)SEM画像。(b)光学顕微鏡法(X50)。(c)(X10)。(d)同じポリスチレン粒子で「機能化した」カプセル。
【実施例】
【0098】
カプセルの大きさに対する制御を証明するマイクロ流体法:
マイクロ流体の流れ集束幾何構造によって、大きさが制御された単分散カプセルの製造(Xu S.,Nie Z.,Seo M.,Lewis P.,Kumacheva E.,Stone H.A.,Garstecki P.,Weibel D.B.,Gitlin I.,Whitesides G.M.,Angew.Chem.Int.Edit.2005, 200544, 724)が、油中水型系及び水中油型系の両方で可能になった。単分散カプセルは、マイクロ流体法を用いて形成でき、その化学的及び物理的安定性が研究され、観側するために集められた。疎水性高分子マイクロ流体チップThinXXs AG(ドイツ)を用いて油中水型エマルションを生じ、Micronit BV(オランダ)製の親水性ガラスチップを用いて水中油型エマルションを生じた(図1c)。
【0099】
動的界面張力測定による油/水界面での界面複合体形成の証明:
界面張力測定法:
油相及び水相間の接触時間に対する界面張力測定は、ペンダント−ドロップ法を用いて実施した(Tracker,Teclis,フランス)。液滴が円筒状キャピラリーからぶら下がり、液滴の形及びキャピラリーに接する接触角を随時記録する。界面張力は、キャピラリー及び重力の存在下で液滴の形を平衡状態に適合させることによって推定される。
【0100】
ペンダント−ドロップ法を用いた動的界面張力測定によって示されるように、キトサン溶液及びレシチンYN溶液(油中)の境界面で、すなわちキトサン及びレシチンYNの第1複合体形成物質分子が境界面に達したら直ちに静電複合体形成が起こる。キトサン及びレシチンYNの両方の存在下では、界面張力が、レシチンYNのみの場合より100倍速い10秒程度の時間内で3mN/m未満に低減するが、このことによりキトサン又はレシチンYNのいずれかが不在である場合との対比が顕著であり、界面膜の形成が実証される(図2a)。
【0101】
シェルの厚さの制御:
シェルの厚さは、カプセルを乾燥した後、SEM顕微鏡法を用いて測定した。
【0102】
シェルの厚さは、濃度及び形成時間を用いて細かく制御できる。低濃度の複合体形成物質及び短い形成時間を選ぶことによって、小さい値の厚さが実現されるであろう。厚さは、1年にわたる形成時間の後で、湿潤状態で数百ミクロンの値に達することができるが、これは乾燥状態での数十ミクロンに相当する。最初に湿潤状態にあったとして(例えば、水と接触してpH3)、完全に乾燥させると、シェルの体積は10分の1に縮小することに留意すべきである。長期にわたって、強い対流運動が存在しない中で、シェルの厚さは、時間平方根に比例して増大し、拡散律速機構が優勢であることを示している。
【0103】
カプセルシェルの力学的性質:
界面剪断レオロジーによるシェルの力学的特性解析法:
平らな油/水界面で形成する膜の線形剪断界面粘弾性率G’(貯蔵)及びG”(損失)を、形成時間の関数として(典型的には0.1Hzで)特性化した。膜の線形粘弾性を記録するために使用した装置は、Anton Paar Physica(ドイツ)製の界面レオロジーセルであり、Boussinesq(Boussinesq.M.,Ann.Chim.Phys.1913, 29, 349)によって予想されたように、バルク相の寄与を差し引く方法を用いた。
【0104】
標準的な観察:
膜は、以下の図に示す条件下において、数分以内に弾性特性を生じ、この弾性(すなわちG’/G”)は最初の3〜4時間の間に増加する。任意の待機時間で、吸着したキトサンのみ(同じ濃度を基とする)からなる境界面のレベルと、吸着したレシチンYN(同上)からなる境界面のレベルの両方と比較して、非常に高い率に急速に達する。剪断弾性率が1Pa.m程度に達すると、膜はピンセットで容易に操作でき、液体環境にあり、水と接触する(すなわち乾燥していない)場合、高い柔軟性を示し、すなわち非常に容易に折り曲げられる。
【0105】
乾燥し切ったときでさえ、ガラス状膜は、厚さがマイクロメートル程度の場合、非常に柔軟であるが、一方で数十マイクロメートルのより厚い膜は堅くて脆い。
【0106】
カプセルの化学的及び物理的安定性:
種々の化学的及び物理的ストレスに対する膜の反応を試験した。膜は、蒸留水又はエタノール若しくはアセトンなどの溶媒の中で回収でき、室温で数ヶ月にわたってその完全性及び形状を維持できた。pH2〜14に属する酸性水又はアルカリ水において同じ結果が見られ、pH3〜14では少なくとも2年間の安定性が認められた。これに対し、pH1の場合、膜は数日後に粉々に崩れた。また、カプセルはpH3で40℃又は50℃の温度で形成でき、したがって、かかる温度は確実にシェルを損傷しないことも認められた。カプセルの完全性は、−20℃まで凍結させ、加熱して再度溶かした後でも維持されていた。
【0107】
キトサン/レシチンのシェルにおける構造:
乾燥膜について異なる温度で決定したX線小角度錯乱曲線は、すべて特性長さスケールでの4.8nmで幅広いピークを示す。これは、実際には、溶液中、自己組織化したキトサン−レシチンのカプセルにおいて認められるラメラ構造の厚さ程度及び脂肪酸二分子層厚さの程度の値である。また、裂けた乾燥膜のSEM画像はマルチシート構造を示す。膜は容易に剥離して多数の薄いシートにすることができ、膜と平行にラメラ成長があることが示唆される(図3)。
【0108】
キトサン/レシチンYNカプセルの形成:
材料:
キトサン(CAS番号9012−76−4)は、アルカリ処理によるキチン(ポリ−b−1,4−D−N−アセチルグルコサミン)の脱アセチル化から得られる炭水化物ポリマーであり、図4aに示す包括的構造を有する。この構造は、脱アセチル化の程度によって決まり、一般に60%〜99%含まれる(100%の脱アセチル化はポリ(D−グルコサミン)を生成すると思われる)。これにより、帯電密度が決まる。
【0109】
使用されるホスファチジン脂肪酸アンモニウムは、Palsgaardから購入した市販のレシチン(レシチンYNとして知られる)(Palgaard(登録商標)4448;食品等級E442;チョコレート処方において粘度調整剤として一般に使われる)中に含まれている。レシチンYN中のホスファチジン酸の包括的化学構造は、図4cにアニオン型で図示されている。ホスファチジン酸は、レシチンYN中に含まれる全ての脂質乳化剤のうちの50%超を占める。図4cにおいて、基R又はRのうちの少なくとも1つは脂肪酸部分であり、そうでなければ水素原子であり、対イオンの1つはアンモニウムである(図示せず)。レシチンYNは、いかなる温度でも水に不溶性である。レシチンYNは、一般的な食用油及び溶かした油に1リットル当たり数グラムまで可溶性である。レシチンYN中のホスファチジン酸分子の主なpKa値は3.0及び8.0であるため、pHが約3以上の油/水界面で吸着したとき分子は陰電荷のかなりの割合を保持するが、その割合はpH3で0.25である。キトサン鎖のpKaを下回るpHで、キトサンの酸塩基の基の大部分は荷電している。
【0110】
カプセル形成:
1.キトサン粉末(平均分子量Mw:100,000〜500,000g/mol;脱アセチル化度:60〜80%)を水に分散させることによって、0.1〜1%w/wの濃度のキトサン溶液を調製する。適正な溶解を実現するために、塩酸を用いてpHを(理想的には)3に設定する。
2.レシチンYNを0.1〜0.5%w/wの濃度で中鎖トリグリセリド油に溶解する。
3.機械的分散法、一般には(例えばPolytronタイプの)高速ローター−ステーターを使用して、(2)で形成したレシチンYN油溶液を、水に対する油の体積比が通常1%〜40%になるように水にpH3で分散させることによって、エマルションを形成する。
4.(3)で形成したエマルションを、(1)で調製したキトサン溶液と、1:1の重量比で、中程度の機械攪拌によって混合する。
5.(4)で形成した分散液を静止状態に置く又は中程度の機械攪拌を維持することで、界面シェルの厚さを成長させる。
6.(5)で形成した分散液において、水酸化ナトリウムを用いて水相中のpHを7に設定することによって、カプセルシェルの成長を止める。
7.その後、カプセルの分散液を乾燥又は噴霧乾燥して、無水又は水分の少ない処方に使用してもよい。これは、例えばブイヨンにおけるカプセル化処方の代替として使用できる。好ましいカプセルの厚さは、そのような場合には、1マイクロメートルを超え、このような用途に必要とされるのに十分高い機械的強度が実現できる。
【0111】
キトサン/レシチン油中水型カプセルの形成:
油中水型カプセルは、以下に記載のように油相及び水相の役割を変えて、実施例1の正確な対称プロトコルを実施することによって形成できる。
【0112】
1.キトサン粉末(平均分子量Mw:100,000〜500,000g/mol;脱アセチル化度:60〜80%)を水に分散させることによって、0.1〜1%w/wの濃度のキトサン溶液を調製する。適正な溶解を実現するために、塩酸を用いてpHを(理想的には)3に設定する。
2.レシチンYNを0.1〜0.5%w/wの濃度で中鎖トリグリセリド(MCT)油に溶解する。
3.機械的分散法、一般には(例えばPolytronタイプの)高速ローター−ステーターを使用して、(1)で形成したキトサン溶液を、油に対する水の体積比が通常1%〜40%になるように中鎖トリグリセリド油に分散させることによって、エマルションを形成する。
4.(3)で形成したエマルションを、(2)で調製したレシチンYN溶液と、1:1の重量比で、中程度の機械攪拌によって混合する。
5.(4)で形成した分散液を静止状態に置く又は中程度の機械攪拌を維持することで、界面シェルの厚さを成長させる。
6.(5)で形成した分散液において、レシチンYN中の濃度が、実験上のタイムスケールでの形成速度が実際に止まるのに十分低くなるまで、例えば0.001%w/wになるまで、遠心分離/再分散(再分散は純粋なMCT油中で行う。)のステップを連続で実施することによって、カプセルシェルの成長を止める。
【0113】
キトサン/レシチン水中油型繊維の形成:
キトサン/レシチンのシェルを有する繊維は、以下に記載のようにシェル形成プロセスの初めに短期間機械力を適用することによって、形成できる。これは、回収後、増粘剤として使用できる。
【0114】
1.キトサン粉末(平均分子量Mw:100,000〜500,000g/mol;脱アセチル化度:60〜80%)を水に分散させることによって、0.1〜1%w/wの濃度のキトサン溶液を調製する。適正な溶解を実現するために、塩酸を用いてpHを(理想的には)3に設定する。
2.レシチンYNを0.1〜0.5%w/wの濃度で中鎖トリグリセリド油に溶解する。
3.例えばPolytronローター−ステーターを使用して、高応力機械攪拌下で、(2)で形成したレシチンYN溶液を、(1)で形成したキトサン溶液中に分散させる。機械的分散法、一般には(例えばPolytronタイプの)高速ローター−ステーターを使用して、(2)で形成したレシチンYN油溶液を、水に対する油の体積比が通常1%〜40%になるように水にpH3で分散させることによって、エマルションを形成する。膜が形成し始めた直後は界面張力が非常に低いため、液滴は非常に変形しやすく、高い剪断力によって繊維状に伸びる。
4.(3)で形成した分散液を静止状態に置く又は中程度の機械攪拌を維持することで、界面シェルの厚さを成長させ、分散した水中油型物体の形を、生体高分子の固体シェルを有する繊維にする。
5.(4)で形成した分散液において、水酸化ナトリウムを用いて水相中のpHを7に設定することによって、カプセルシェルの成長を止める。
6.次いで、(5)で形成した分散液から、純水中で遠心分離/再分散することによって繊維を回収する。
【0115】
複合シェルを含むキトサン/レシチンYN水中油型カプセルの形成:
カプセル及び膜は、非イオン性乳化剤の存在下で形成できるが、これは1%w/wのポリソルベート20(この商品名はTween20である。)で試験された。特にシェル形成を乳化ステップから切り離す必要がある場合、キトサン及びレシチンYNの乳化性とは別に、このような乳化剤を使用できる。静電超分子複合体形成機構との相互作用を最小限にするために、乳化剤を非イオン性となるように選択してもよい。この結果により、少量の乳化剤の存在下での成膜の可能性が立証される。
【0116】
1.キトサン粉末(平均分子量Mw:100,000〜500,000g/mol;脱アセチル化度:60〜80%)を水に分散させることによって、0.1〜1%w/wの濃度のキトサン溶液を調製する。適正な溶解を実現するために、塩酸を用いてpHを(理想的には)3に設定する。
2.1%w/wのTween20を、(1)で形成した溶液中に溶解する。
3.レシチンYNを、0.1〜0.5%w/wの濃度で中鎖トリグリセリド油に溶解する。
4.機械的分散法、一般には(例えばPolytronタイプの)高速ローター−ステーターを使用して、(3)で形成したレシチンYN油溶液を、水に対する油の体積比が通常1%〜40%になるように水にpH3で分散させることによって、エマルションを形成する。
5.(4)で形成したエマルションを、(1)で調製したキトサン溶液と、1:1の重量比で、中程度の機械攪拌によって混合する。
6.(5)で形成した分散液を静止状態に置く又は中程度の機械攪拌を維持することで、界面シェルの厚さを成長させる。
7.(6)で形成した分散液において、水酸化ナトリウムを用いて水相のpHを7に設定することによって、カプセルシェルの成長を止める。
【0117】
菓子の鮮度知覚を延長するための、ハッカ油を囲むキトサン/レシチンYN水中油型カプセルの形成:
ハッカ油のカプセル化を行った。糖をベースとするマトリックスに分散されたカプセルは、ハッカ油によって(ハッカ油の粘膜接着性に起因して)鮮度知覚の強化及び延長をもたらす。
【0118】
1.実施例1に記載の方法を使用して、MCT油をハッカ油に置き換えることによって、水中ハッカ油型のカプセル(サイズ:直径1〜20マイクロメートル)を調製する。
2.カプセルを、粉末形状の、糖をベースとするマトリックス中に分散させる。
3.粉末を錠剤にする。
【0119】
鮮度及び甘味知覚持続性の結果:
24名の未経験参加者が官能評価試験に参加した。参加者らは、口中で錠剤が完全に溶けた後に知覚したリフレッシング/鮮度及び甘味属性の延長強度を評価した。各属性は、製品摂取から5分後、15分後、35分後、45分後及び55分後に評価された。被験者間の釣合型実験計画に従って製品をコード化・評価した。各被験者は、1日で1つのサンプルを、常に一日の同じ時に評価した。各属性について、製品間のパネル平均差を、対応のあるt−検定(両側検定)によって計算した。信頼水準は、すべての分析について95%に設定した。
【0120】
図5aは、鮮度の持続性が、キトサンと合わせたハッカ錠を摂取した後の方が、参照用ハッカ錠(キトサンを含まない)を摂取した後よりも、5分後及び15分後の時点で有意に高かったことを示す。他の評価時点でも、キトサンが鮮度を増強する効果が認められたが、ここでの効果は有意ではなかった。
【0121】
図5bは、甘味の持続性が、キトサンと合わせたハッカ錠を摂取した後の方が、参照用ハッカ錠(キトサンを含まない)を摂取した後よりも、摂取後55分で有意に低かったことを示す。他の評価時点でも、キトサンによる甘味低減が認められたが、ここでの効果は有意ではなかった。
【0122】
カプセルシェルの厚さは、糖ベースのマトリックス中にあるカプセルが、破壊してカプセル化した物質を損失することなく処理されるために、十分高い機械的強度の実現を、ここでも可能にさせる。
【0123】
粒子がカプセルシェル中に閉じ込められているキトサン/レシチンYN油中水型カプセルの形成:
界面活性粒子(これは疎水性である任意の粒子を指す。)は、接着力によって、疎水性相側の膜の表面で捕獲され得る(図6)。まず、少なくとも1種の複合体形成物質もない状態で、粒子で満ちた水/油の界面が作られ、次いでo/wの界面で膜が形成される。
【0124】
1.0.1〜1%w/wの濃度のキトサン溶液を、キトサン粉末を水中に分散させることによって調製する(平均分子量Mw:100,000〜500,000g/mol;脱アセチル化度:60〜80%)。適正な溶解を実現するために、塩酸を用いてpHを(理想的には)3に設定する。
2.レシチンYNを0.1〜0.5%w/wの濃度で中鎖トリグリセリド(MCT)油中に溶解する。
3.界面活性粒子の分散液、例えばコロイド状ポリスチレン粒子(例えば、直径2.7マイクロメートル、非荷電)を水(pH3)又は水及びエタノールの混合液(通常、1:1の体積比)に分散させた分散液を調製する。
4.(3)で調製した分散液を、(1)で調製したキトサン溶液と混合する。
5.機械的分散法、一般には(例えばPolytronタイプの)高速ローター−ステーターを使用して、(4)で調製した粒子と混合したキトサン溶液を、油に対する水の体積比が通常1%〜40%になるように中鎖トリグリセリド油と分散させることによって、エマルションを形成する。
6.粒子が油/水界面(すなわち液滴の表面)に吸着するまで、(5)で調製したエマルションを放置して老化させる。
7.(6)で形成したエマルションを、(2)で調製したレシチンYN溶液と、1:1の重量比で、中程度の機械攪拌によって混合する。
8.(4)で形成した分散液を静止状態に置く又は中程度の機械攪拌を維持することで、界面シェルの厚さを成長させる。
9.(5)で形成した分散液において、レシチンYN中の濃度が、実験上のタイムスケールでの形成速度が実際に止まるのに十分低くなるまで、例えば0.001%w/wになるまで、遠心分離/再分散(再分散は純粋なMCT油中で行う。)のステップを連続で実施することによって、カプセルシェルの成長を止める。
【0125】
結果については図6を参照されたい。
【図1a)】

【図1b)】

【図1c)】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性画分、親水性画分及び少なくとも1つの物体を含有する組成物であって、
前記物体は、
複合体形成物質分子の分子層を少なくとも5層含むシェルであって、該複合体形成物質分子がキトサン及び少なくとも1種の脂質ホスファチジン酸界面活性剤であり、該脂質ホスファチジン酸界面活性剤の含有量が、シェル中に存在する全脂質界面活性剤の少なくとも20%w/wに達する、シェルと、
親水性成分及び/又は疎水性成分を含有する内相を含む内容物と、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記組成物がエマルション、例えばサブマイクロエマルション、マイクロエマルション又はマクロエマルションであり、及び/又は前記少なくとも1つの物体が、実質的に球状のカプセル、細長いカプセル、平板形状のカプセル、又は繊維である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記内相は、物体の内容物の少なくとも約0.01体積%、好ましくは少なくとも約50体積%、より好ましくは少なくとも約90体積%を占める、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記シェルは、キトサン及び脂質ホスファチジン酸界面活性剤を1:10〜10:1の比率で含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
前記内容物の親水性成分が液体又は気体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記内相は、少なくとも1種のフレーバーオイル及び/又はフレグランスオイル、例えばハッカ油、精油、魚油、オメガ−3脂肪酸及び/又はオメガ−6脂肪酸を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記親水性成分は、親水性液体、例えば水、果汁、レモネード、アルコール飲料、コーヒーリカー、コーヒー抽出液、フレーバーウォーター、タンパク質、酵素、水溶性ビタミン、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1〜6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記物体は、約0.0001〜80重量%、好ましくは約0.01〜1重量%、より好ましくは約0.01〜0.3重量%のキトサンを含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記脂質ホスファチジン酸界面活性剤は周囲条件下で1:100未満の分配係数(水/油)を有し、ホスファチジン脂肪酸アンモニウム、又はレシチン(好ましくはレシチンYN)に、シェル中に存在する全脂質界面活性剤の少なくとも20%w/wの量で含まれるホスファチジン酸の混合物であってもよい、請求項1〜8のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項10】
前記物体は、水/油界面に吸着し、シェル中に閉じ込められており、シェルの疎水性側で突出している粒子をさらに含み、該粒子は、着色剤、味覚物質、酸化防止剤、抗菌剤、ラジカルスカベンジャー、脂肪球、鉱物粒子、荷電分子、及びそれらの組み合わせからなる群から選択できる、請求項1〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
製品、例えば食品組成物、動物性食品組成物、医薬組成物、化粧品組成物、栄養補助食品、飲料、食品添加物又は医薬品の調製のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項12】
フレーバー知覚を長持ちさせるための製品の調製のための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項13】
改善されたフレーバー及び/又はフレグランスの維持及び/又は改善されたリフレッシング効果を提供するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項14】
防湿層、及び/又は抗菌及び/又は抗真菌活性を有する膜を提供するための、請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項15】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の組成物を製造する方法であって、
少なくとも1種の脂質ホスファチジン酸界面活性剤を油性画分と合わせて溶液Aを得るステップ、
キトサンを親水性画分と合わせて溶液Bを得るステップ、
溶液Aと溶液Bを混合して分散液Cを得るステップ、
膜を形成させるステップ、
場合により膜の成長を止めるステップ、
場合により分散液Cに流力、剪断力又は圧搾力を適用するステップ、及び/又は
場合により混合物を完全に乾燥させるステップ、
を含む方法。

【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【公表番号】特表2013−519518(P2013−519518A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−553320(P2012−553320)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際出願番号】PCT/EP2011/052363
【国際公開番号】WO2011/101415
【国際公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】