説明

液浸露光用レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法

【課題】液浸露光に於いて、レジストパターンの倒れ、プロファイルの劣化が少なく、液浸液への溶出が抑制された液浸露光用レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法を提供する。
【解決手段】(A)重合溶媒として、鎖状ケトン、環状ケトン、鎖状エーテル及び環状エーテルからなる群から選択される溶剤を用いて製造された、特定の、シクロアルキル構造を有する繰り返し単位を有し、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂及び(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物を含有する液浸露光用レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IC等の半導体製造工程、液晶、サーマルヘッド等の回路基板の製造、さらにはその他のフォトアプリケーションのリソグラフィー工程に使用される、液浸露光用レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法に関するものである。特に波長が300nm以下の遠紫外線光を光源とする液浸式投影露光装置で露光するために好適な、液浸露光用レジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体素子の微細化に伴い露光光源の短波長化と投影レンズの高開口数(高NA)化が進み、現在では193nm波長を有するArFエキシマレーザーを光源とするNA0.84の露光機が開発されている。開口数、解像力、焦点深度の関係は一般によく知れている様に次式で表すことができる。
(解像力)=k1・(λ/NA)
(焦点深度)=±k2・λ/NA2
ここでλは露光光源の波長、NAは投影レンズの開口数、k1及びk2はプロセスに関係する係数である。
【0003】
更なる波長の短波化による高解像力化のために157nmの波長を有するF2エキシマレーザーを光源とする露光機が検討されているが、短波長化のために露光装置に使用するレンズ素材とレジストに使用する素材が非常に限定されるため、装置や素材の製造コストが上がり、品質安定化が非常に困難であり、十分な性能と安定性を有する露光装置及びレジストが望まれている。
【0004】
従来から、光学顕微鏡において解像力を高める技術として、投影レンズと試料の間に高屈折率の液体(以下、「液浸液」ともいう)で満たす、所謂、液浸法が知られている。
液浸した場合、λ0を露光光の空気中での波長とし、nを空気に対する液浸液の屈折率、θを光線の収束半角としNA0=sinθとすると、前述の解像力及び焦点深度は次式で表すことができる。
(解像力)=k1・(λ0/n)/NA0
(焦点深度)=±k2・(λ0/n)/NA02
すなわち、液浸の効果は波長が1/nの露光波長を使用するのと等価である。言い換えれば、同じNAの投影光学系の場合、液浸により、焦点深度をn倍にすることができる。これは、あらゆるパターン形状に対して有効であり、更に、現在検討されている位相シフト法、変形照明法などの超解像技術と組み合わせることが可能である。
【0005】
この効果を半導体素子の微細画像パターンの転写に応用した装置例が、特許文献1、特許文献2等にて紹介されている。
最近の液浸露光技術進捗が非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3等で報告されている。ArFエキシマレーザーを光源とする場合は、取り扱い安全性と193nmにおける透過率と屈折率の観点で純水(193nmにおける屈折率1.44)が液浸液として最も有望であると考えられている。
2エキシマレーザーを光源とする場合は、157nmにおける透過率と屈折率のバランスからフッ素を含有する溶液が検討されているが、環境安全性の観点や屈折率の点で十分な物は未だ見出されていない。液浸の効果の度合いとレジストの完成度から液浸露光技術はArF露光機に最も早く搭載されると考えられている。
【0006】
KrFエキシマレーザー(248nm)用レジスト以降、光吸収による感度低下を補う
ためにレジストの画像形成方法として化学増幅という画像形成方法が用いられている。ポジ型の化学増幅の画像形成方法を例に挙げ説明すると、露光で露光部の酸発生剤が分解し酸を生成させ、露光後のベーク(PEB:Post Exposure Bake)でその発生酸を反応触媒として利用してアルカリ不溶の基をアルカリ可溶基に変化させ、アルカリ現像により露光部を除去する画像形成方法である。
この化学増幅機構を用いたArFエキシマレーザー用(193nm)レジストは、現在主流になりつつあるが、液浸露光した場合には、形成したラインパターンが倒れてしまい、デバイス製造時の欠陥となるパターン倒れの問題があった。
また、ドライエッチング耐性を改良するためにはモノマーの炭素密度を向上する必要があるが、炭素密度が高い脂環基などの疎水基と水酸基などの極性基を有するモノマーを用いる重合を行う際にモノマーの溶剤溶解性が悪化する問題が発生している。特許文献3には、レジスト樹脂の製造に用いる重合溶媒としては、テトラヒドロフランなどが用いられている。また、特許文献4にはモノマーの溶剤溶解性を改良する重合溶媒として環状ケトン溶媒が記載されているが、モノマー種によっては溶剤溶解性が悪化するなど十分ではなかった。
【0007】
化学増幅レジストを液浸露光に適用すると、露光時にレジスト層が浸漬液と接触することになるため、レジスト層が変質することや、レジスト層から浸漬液に悪影響を及ぼす成分が滲出することが指摘されている。特許文献5では、ArF露光用のレジストを露光前後に水に浸すことによりレジスト性能が変化する例が記載されており、液浸露光における問題と指摘している。
【0008】
【特許文献1】特開昭57−153433号公報
【特許文献2】特開平7−220990号公報
【特許文献3】特開平10−307400号公報
【特許文献4】特開2004−175981号公報
【特許文献5】国際公開第04/068242号パンフレット
【非特許文献1】国際光工学会紀要(Proc. SPIE), 2002年, 第4688巻,第11頁
【非特許文献2】J.Vac.Sci.Tecnol.B 17(1999)
【非特許文献3】国際光工学会紀要(Proc. SPIE), 2000年, 第3999巻,第2頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、液浸露光に於いて、レジストパターンの倒れ、プロファイルの劣化が少なく、液浸液への溶出が抑制されたレジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意検討を行った結果、レジスト組成物に用いられる樹脂を重合によって製造する際に、特定の繰り返し単位を有する樹脂を特定の重合溶媒を用いて重合することによって製造された樹脂を用いたレジスト組成物は、プロファイルやパターン倒れ性能の劣化が少なく、液浸液への溶出が抑制されることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
本発明は、次の通りである。
【0012】
(1) (A)重合溶媒として、鎖状ケトン、環状ケトン、鎖状エーテル及び環状エーテルからなる群から選択される溶剤を用いて製造された、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有し、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂及び
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
を含有することを特徴とする液浸露光用レジスト組成物。
【0013】
【化1】

【0014】
一般式(I)に於いて、
は、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
は、アルキル基を表す。
は、複数ある場合は各々独立して、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、シアノ基又は水酸基を表す。
CAは、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基を表す。
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
nは、0又は正の整数を表す。
【0015】
(2) 重合溶媒が、鎖状ケトン又は環状ケトンであることを特徴とする(1)に記載の液浸露光用レジスト組成物。
【0016】
(3) 重合溶媒が、環状ケトン及び鎖状ケトンを含有する混合溶剤であることを特徴とする(1)に記載の液浸露光用レジスト組成物。
【0017】
(4) (A)成分の樹脂が、更に、ラクトン基を有する繰り返し単位を有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の液浸露光用レジスト組成物。
【0018】
(5) (A)成分の樹脂が、更に、水酸基を有する繰り返し単位を有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の液浸露光用レジスト組成物。
【0019】
(6) 下記一般式(Im)で表されるモノマーを含有するモノマーを、鎖状ケトン、環状ケトン、鎖状エーテル及び環状エーテルからなる群から選択される溶剤を含有する重合溶媒中で重合させることを特徴とする、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂の製造方法。
【化2】

【0020】
一般式(Im)に於いて、
は、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
は、アルキル基を表す。
は、複数ある場合は各々独立して、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、シアノ基又は水酸基を表す。
CAは、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基を表す。
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
nは、0又は正の整数を表す。
【0021】
(7) (1)〜(5)のいずれかに記載のレジスト組成物を用いて、レジスト膜を形成し、該レジスト膜を、液浸露光、現像することを特徴とするパターン形成方法。
【0022】
以下、更に、本発明の好ましい実施の態様を挙げる。
【0023】
(8) 2成分以上の重合溶媒を用いることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の液浸露光用レジスト組成物。
【0024】
(9) 3成分以上の重合溶媒溶媒を用いることを特徴とする(1)〜(5)に記載の液浸露光用レジスト組成物。
【発明の効果】
【0025】
本発明により、液浸露光に於いて、レジストパターンの倒れ、プロファイルの劣化が少なく、液浸液への溶出が抑制されレジスト組成物及びそれを用いたパターン形成方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
尚、本明細書に於ける基(原子団)の表記に於いて、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
【0027】
(A)酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂
本発明に於ける、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂(以下、「樹脂(A)」ともいう)は、酸の作用により分解してアルカリ可溶性基を生じ
る基(酸分解性基)を有する。
樹脂(A)は、酸分解性基を、樹脂の主鎖又は側鎖、或いは、主鎖及び側鎖の両方に有してもよいが、側鎖に有するほうが好ましい。
酸分解性基として好ましい基は、−COOH基、−OH基等のアルカリ可溶性基の水素原子を酸で脱離する基で置換した基である。
酸で脱離する基としては、例えば、−C(R36)(R37)(R38)、−C(R36)(R37)(OR39)、−C(R01)(R02)(OR39)等を挙げることができる。
式中、R36〜R39は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基表す。R36とR37、R36とR39とは、互いに結合して環を形成してもよい。
01〜R02は、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
本発明においては、酸分解性基は、アセタール基又は3級エステル基が好ましい。
【0028】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する繰り返し単位として、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有する。
【0029】
【化3】

【0030】
一般式(I)に於いて、
は、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
は、アルキル基を表す。
は、複数ある場合は各々独立して、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、シアノ基又は水酸基を表す。
CAは、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基を表す。
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
nは、0又は正の整数を表す。
【0031】
一般式(I)に於ける、R1のアルキル基としては、炭素数1〜4のものが好ましく、たとえば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などがあげられる。また、水酸基、ハロゲン原子(より好ましくはフッ素原子)、シアノ基などを有していても良い。R1は、水素原子またはメチル基が好ましい。
のアルキル基として、炭素数1〜5の直鎖若しくは分岐のアルキル基が好ましく、炭素数1〜3がより好ましく、炭素数1若しくは2が更により好ましい。
CAの炭素数5若しくは6のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基を挙げることができる。
Aの2価の連結基としては、アルキレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル
基、エステル基、アミド基、スルホンアミド基、ウレタン基又はウレア基よりなる群から選択される単独あるいは2つ以上の基の組み合わせを挙げることができる。
Aは、好ましくは単結合、−COO−CH2−であり、より好ましくは単結合である。
3のハロゲン原子としては、好ましくはフッ素原子である。
3のアルキル基としては、たとえばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などがあげられる。R3の置換基は、環のいずれの位置にも有することができる。
3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
nは、0または正の整数を表す。即ち、CAで表されるシクロアルキル基は、置換基R3を置換しうる範囲の数で有していてもよい。nは、好ましくは0または1である。
これらR2、R3におけるアルキル基、シクロアルキル基は、更に置換基を有していてもよく、有してもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシ基、置換カルボニル基、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜10)、アリール基(好ましくは炭素数6〜14)、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜10)、置換アシル基(好ましくは炭素数2〜20)、置換アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜10)、置換アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜20)、置換アミノアシル基(好ましくは炭素数2〜10)などが挙げられる。アリール基、シクロアルキル基などにおける環状構造の置換基については、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10)を挙げることができる。置換カルボニル基、置換アシル基、置換アシルオキシ基、置換アルコキシカルボニル基における置換基については、1または2のアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)を挙げることができる。置換アミノアシル基における置換基については、1個または2個のアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)を挙げることができる。
【0032】
一般式(I)で表される繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、15〜60mol%が好ましく、より好ましくは20〜50mol%である。
【0033】
以下、一般式(I)で表される繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0034】
【化4】

【0035】
樹脂(A)は、一般式(I)で表される繰り返し単位の他に、更に、酸分解性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
酸分解性基を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AI)で表される繰り返し単位が好ましい。
【0036】
【化5】

【0037】
一般式(AI)に於いて、
Xa1は、水素原子、メチル基、トリフルオロメチル基又はヒドロキシメチル基を表す。
Tは、単結合又は2価の連結基を表す。
Rx1〜Rx3は、それぞれ独立に、アルキル基(直鎖若しくは分岐)又はシクロアルキル基(単環若しくは多環)を表す。
Rx1〜Rx3の少なくとも2つが結合して、シクロアルキル基(単環若しくは多環、但し、シクロペンチル基、シクロへキシル基を除く)を形成してもよい。
【0038】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、−COO−Rt−基、−O−Rt−基等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基又はシクロアルキレン基を表す。
Tは、単結合又は−COO−Rt−基が好ましい。Rtは、炭素数1〜5のアルキレン基が好ましく、−CH2−基、−(CH23−基がより好ましい。
Rx1〜Rx3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などの炭素数1〜4のものが好ましい。
Rx1〜Rx3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロへキシル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1〜Rx3の少なくとも2つが結合して形成されるシクロアルキル基としては、シクロヘプチル基などの単環のシクロアルキル基、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
Rx1がメチル基またはエチル基であり、Rx2とRx3とが結合して上述のシクロアルキル基を形成している様態が好ましい。
【0039】
一般式(I)で表される繰り返し単位以外の、酸分解性基を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、20〜50mol%が好ましく、より好ましくは25〜45mol%である。
【0040】
好ましく用いられる酸分解性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0041】
【化6】

【0042】
【化7】

【0043】
【化8】

【0044】
【化9】

【0045】
樹脂(A)は、更に、ラクトン基、水酸基、シアノ基及びアルカリ可溶性基から選ばれる少なくとも1種類の基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
【0046】
樹脂(A)は、ラクトン基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。
ラクトン基としては、ラクトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものが好ましい。下記一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。また、ラクトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましいラクトン構造としては(LC1−1)、(LC1−4)、(LC1−5)、(LC1−6)、(LC1−13)、(LC1−14)であり、特定のラクトン構造を用いることでラインエッジラフネス、現像欠陥が良好になる。
【0047】
【化10】

【0048】
ラクトン構造部分は、置換基(Rb2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数1〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、ハロゲン原子、水酸基、シアノ基、酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、酸分解性基である。n2は、0〜4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在する置換基(Rb2)は、同一でも異なっていてもよく、また、複数存在する置換基(Rb2)同士が結合して環を形成してもよい。
【0049】
一般式(LC1−1)〜(LC1−16)のいずれかで表されるラクトン構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AL)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0050】
【化11】

【0051】
一般式(AL)中、
Rb0は、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜4のアルキル基を表す。Rb0のアルキル基が有していてもよい好ましい置換基としては、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。Rb0のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子を挙げる
ことができる。Rb0は、水素原子又はメチル基が好ましい。
Abは、単結合、アルキレン基、単環若しくは多環の脂環炭化水素構造を有する2価の連結基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、又はこれらを組み合わせた2価の連結基を表す。好ましくは、単結合、−Ab1−CO2−で表される2価の連結基である。Ab1は、直鎖若しくは分岐アルキレン基又は単環若しくは多環のシクロアルキレン基であり、好ましくはメチレン基、エチレン基、シクロヘキシレン基、アダマンチレン基、ノルボルニレン基である。
Vは、一般式(LC1−1)〜(LC1−16)の内のいずれかで示される構造を有する基を表す。
【0052】
ラクトン基を有する繰り返し単位は、通常光学異性体が存在するが、いずれの光学異性体を用いてもよい。また、1種の光学異性体を単独で用いても、複数の光学異性体混合して用いてもよい。1種の光学異性体を主に用いる場合、その光学純度(ee)が90以上のものが好ましく、より好ましくは95以上である。
【0053】
ラクトン基を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、15〜60mol%が好ましく、より好ましくは20〜50mol%、更に好ましくは30〜50mol%である。
【0054】
ラクトン基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0055】
【化12】

【0056】
【化13】

【0057】
【化14】

【0058】
特に好ましいラクトン基を有する繰り返し単位としては、下記の繰り返し単位が挙げられる。最適なラクトン基を選択することにより、パターンプロファイル、粗密依存性が良好となる。
【0059】
【化15】

【0060】
樹脂(A)は、水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位を有することが好ましく、水酸基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。これにより基板密着性、現像液親和性が向上する。水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位は、水酸基又はシアノ基で
置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位であることが好ましい。水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造に於ける、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、ジアマンチル基、ノルボルナン基が好ましい。好ましい水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造としては、下記一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造が好ましい。
【0061】
【化16】

【0062】
一般式(VIIa)〜(VIIc)に於いて、
2c〜R4cは、各々独立に、水素原子、水酸基又はシアノ基を表す。ただし、R2c〜R4cの内の少なくとも1つは、水酸基又はシアノ基を表す。好ましくは、R2c〜R4cの内の1つ又は2つが、水酸基で、残りが水素原子である。一般式(VIIa)に於いて、更に好ましくは、R2c〜R4cの内の2つが、水酸基で、残りが水素原子である。
【0063】
一般式(VIIa)〜(VIId)で表される部分構造を有する繰り返し単位としては、下記一般式(AIIa)〜(AIId)で表される繰り返し単位を挙げることができる。
【0064】
【化17】

【0065】
一般式(AIIa)〜(AIId)に於いて、
1cは、水素原子、メチル基、トリフロロメチル基又はヒドロキメチル基を表す。
2c〜R4cは、一般式(VIIa)〜(VIIc)に於ける、R2c〜R4cと同義である。
【0066】
水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、5〜40mol%が好ましく、より好ましくは5〜30mol%、更に好ましくは10〜25mol%である。
【0067】
水酸基又はシアノ基を有する繰り返し単位の具体例を以下に挙げるが、本発明はこれらに限定されない。
【0068】
【化18】

【0069】
樹脂(A)は、アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を有することが好ましい。アルカリ可溶性基としてはカルボキシル基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、ビスルスルホニルイミド基、α位が電子吸引性基で置換された脂肪族アルコール(例えばヘキサフロロイソプロパノール基)が挙げられ、カルボキシル基を有する繰り返し単位を有することがより好ましい。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位を含有することによりコンタクトホール用途での解像性が増す。アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、さらにはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましく、連結基は単環または多環の環状炭化水素構造を有していてもよい。特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸による繰り返し単位である。
【0070】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、0〜20mol%が好ましく、より好ましくは3〜15mol%、更に好ましくは5〜10mol%である。
【0071】
アルカリ可溶性基を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0072】
【化19】

【0073】
ラクトン基、水酸基、シアノ基及びアルカリ可溶性基から選ばれる少なくとも1種類の基を有する繰り返し単位として、更に好ましくは、ラクトン基、水酸基、シアノ基、アルカリ可溶性基から選ばれる少なくとも2つを有する繰り返し単位であり、好ましくはシアノ基とラクトン基を有する繰り返し単位である。特に好ましくは前記(LCI−4)のラクトン構造にシアノ基が置換した構造を有する繰り返し単位である。
【0074】
樹脂(A)は、更に、脂環炭化水素構造を有し、酸分解性を示さない繰り返し単位を有してもよい。これにより液浸露光時にレジスト膜から液浸液への低分子成分の溶出が低減できる。このような繰り返し単位として、例えば1−アダマンチル(メタ)アクリレート、ジアマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位などが挙げられる。
【0075】
樹脂(A)は、上記の繰り返し構造単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な繰り返し構造単位を有することができる。
【0076】
このような繰り返し構造単位としては、下記の単量体に相当する繰り返し構造単位を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
これにより、樹脂(A)に要求される性能、特に、
(1)塗布溶剤に対する溶解性、
(2)製膜性(ガラス転移点)、
(3)アルカリ現像性、
(4)膜べり(親疎水性、アルカリ可溶性基選択)、
(5)未露光部の基板への密着性、
(6)ドライエッチング耐性、
等の微調整が可能となる。
【0078】
このような単量体として、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、ア
クリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
【0079】
その他にも、上記種々の繰り返し構造単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
【0080】
樹脂(A)において、各繰り返し構造単位の含有モル比はレジストのドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、さらにはレジストの一般的な必要性能である解像力、耐熱性、感度等を調節するために適宜設定される。
【0081】
本発明の液浸露光用レジスト組成物が、ArF露光用であるとき、ArF光への透明性の点から樹脂(A)は芳香族基を有さないことが好ましい。
【0082】
樹脂(A)として好ましくは、繰り返し単位のすべてが(メタ)アクリレート系繰り返し単位で構成されたものである。この場合、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがアクリレート系繰り返し単位であるもの、繰り返し単位のすべてがメタクリレート系繰り返し単位とアクリレート系繰り返し単位とによるもののいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系繰り返し単位が全繰り返し単位の50mol%以下であることが好ましい。より好ましくは、一般式(I)で表される繰り返し単位15〜60mol%、一般式(AI)で表される、酸分解性基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位20〜50モル%、ラクトン基を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位20〜50モル%、水酸基又はシアノ基で置換された脂環炭化水素構造を有する(メタ)アクリレート系繰り返し単位5〜30モル%、更にその他の(メタ)アクリレート系繰り返し単位を0〜20モル%含む共重合ポリマーである。
【0083】
本発明の液浸露光用レジスト組成物にKrFエキシマレーザー光、電子線、X線、波長50nm以下の高エネルギー光線(EUVなど)を照射する場合には、樹脂(A)は、一般式(I)で表される繰り返し単位の他に、更に、ヒドロキシスチレン系繰り返し単位を有することが好ましい。更に好ましくはヒドロキシスチレン系繰り返し単位と、酸分解基で保護されたヒドロキシスチレン系繰り返し単位、(メタ)アクリル酸3級アルキルエステル等の酸分解性繰り返し単位を有するが好ましい。
【0084】
好ましい酸分解性基を有する繰り返し単位としては、例えば、t−ブトキシカルボニルオキシスチレン、1−アルコキシエトキシスチレン、(メタ)アクリル酸3級アルキルエステルによる繰り返し単位等を挙げることができ、2−アルキル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート及びジアルキル(1−アダマンチル)メチル(メタ)アクリレートによる繰り返し単位がより好ましい。
【0085】
<樹脂の製造方法>
樹脂(A)は、常法に従って(例えばラジカル重合)製造することができる。例えば、一般的製造方法としては、下記一般式(Im)で表されるモノマーを含有するモノマーおよび重合開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマーと重合開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。
【0086】
【化20】

【0087】
一般式(Im)に於いて、
は、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
は、アルキル基を表す。
は、複数ある場合は各々独立して、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、シアノ基又は水酸基を表す。
CAは、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基を表す。
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
nは、0又は正の整数を表す。
【0088】
一般式(Im)に於ける、R〜R、CA、A及びnは、一般式(I)に於ける、R〜R、CA、A及びnと同義である。
【0089】
重合溶媒として、鎖状ケトン、環状ケトン、鎖状エーテル及び環状エーテルからなる群から選択される溶剤を用いて製造される。
鎖状ケトンとしては、例えば、2−ヘプタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどが挙げられ、好ましくは2−ヘプタノンである。
環状ケトンとしては、例えば、シクロペンタノン、3−メチル−2−シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、イソホロン等挙げられ、好ましくはシクロヘキサノン、シクロヘプタノンである。
鎖状エーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチルなどが挙げられる。
環状エーテルとしては、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を挙げることができる。
重合溶媒として、鎖状ケトン、環状ケトン、鎖状エーテル及び環状エーテルからなる群から選択される溶剤を用いるとは、鎖状ケトン、環状ケトン、鎖状エーテル及び環状エーテルからなる群から選択される溶剤を単独で用いてもよいし、鎖状ケトン、環状ケトン、鎖状エーテル及び環状エーテルからなる群から選択される溶剤を2種類以上混合した混合溶剤を用いてもよいし、鎖状ケトン、環状ケトン、鎖状エーテル及び環状エーテルからなる群から選択される少なくとも1種類の溶剤と他の溶剤との混合溶剤を用いてもよい。
鎖状ケトン、環状ケトン、鎖状エーテル及び環状エーテルからなる群から選択される少なくとも1種類の溶剤と混合し得る他の溶剤としては、例えば、エチレンジクロライド、
γ−ブチロラクトン、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン等を挙げることができる。
鎖状ケトン、環状ケトン、鎖状エーテル及び環状エーテルからなる群から選択される少なくとも1種類の溶剤と他の溶剤との混合溶剤に於いて、鎖状ケトン、環状ケトン、鎖状エーテル及び環状エーテルからなる群から選択される少なくとも1種類の溶剤の含有量は、20〜100質量%とすることが好ましく、60〜100質量%とすることがより好ましい。
重合溶媒としては、鎖状ケトン、環状ケトンがより好ましく、環状ケトンが特に好ましい。
重合溶媒は、環状ケトン及び鎖状エーテルを含有する混合溶剤であることが更により好ましい。環状ケトンと鎖状エーテルとの混合比率(質量比)は、8:2〜3:7が好ましく、7:3〜4:6がより好ましく、6:4〜5:5が特に好ましい。
本発明に係る重合溶媒は、モノマー混合物、重合開始剤及び得られる樹脂のいずれとも相溶性に優れ、得られる樹脂の反応率を向上することができる。
重合溶媒の沸点は、100℃以上200℃以下が好ましく、120℃以上180℃以下がより好ましい、特に好ましくは、130℃以上160℃以下である。
【0090】
本発明に於いては、レジスト組成物に用いられる樹脂を重合によって製造する際に、特定の繰り返し単位を有する樹脂を特定の重合溶媒を用いて重合することにより、得られた樹脂をレジスト組成物に用いた場合に、プロファイルやパターン倒れ性能の劣化が少なく、液浸液への溶出が抑制されたレジスト組成物を調製することができる。
【0091】
重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)が用いられる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤がより好ましい。好ましい重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンー1−カルボニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレイン酸)、tert−ブチルパーオクトエート、1,1'−アゾビス−(シクロヘキサン−1−カルボニトリル、1−[(1−ジアゾ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド等を挙げることができる。特に好ましい重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。重合開始剤は、それぞれ、単独又は混合して用いることができる。
重合開始剤とともにチオール化合物などの連鎖移動剤を併用してもよい。所望により開始剤を追加、あるいは分割で添加してもよい。
重合開始剤の使用量は、特に制限されず、例えば、モノマー100質量部に対して、0.1〜10質量部、好ましくは1〜5質量部である。
【0092】
反応の濃度は、得られる樹脂の質量平均分子量が制御しやすい点から、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは10〜30質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
なお、重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
【0093】
重合反応により得られた樹脂を含有する反応液を、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、イソプロパノール、メタノール、水などの単独又は混合溶媒を用い、これら多量の溶媒中に滴下して、樹脂を析出させる。その後、得られた析出物を濾別、洗浄、乾燥することにより、本発明の樹脂(A)を得ることができる。この工程は、場合により不要であること
もあるが、反応液中に残存する未反応の単量体(モノマー)や重合開始剤等を取り除くのに有効である。これらの未反応物がそのまま残存しているとレジスト性能に悪影響を及ぼす可能性があるため、取り除いた方が好ましい。
【0094】
本発明に係る樹脂(A)の重量平均分子量は、GPC法によりポリスチレン換算値として、好ましくは1,000〜200,000であり、更に好ましくは3,000〜20,000、最も好ましくは5,000〜15,000である。重量平均分子量を、1,000〜200,000とすることにより、耐熱性やドライエッチング耐性の劣化を防ぐことができ、且つ現像性が劣化したり、粘度が高くなって製膜性が劣化することを防ぐことができる。
分子量分布は通常1〜5であり、好ましくは1〜2、更に好ましくは1.3〜2である。分子量分布の小さいものほど、解像度、レジスト形状が優れ、且つレジストパターンの側壁がスムーズであり、ラフネス性に優れる。
樹脂(A)の構造は、特に制限されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体のいずれであっても良い。
【0095】
本発明の液浸露光用レジスト組成物において、樹脂(A)の組成物全体中の配合量は、全固形分中50〜99.99質量%が好ましく、より好ましくは60〜99.0質量%である。
また、本発明において、樹脂(A)は、1種で使用してもよいし、複数併用してもよい。
【0096】
<レジスト組成物>
本発明の液浸露光用レジスト組成物は、上述の樹脂(A)と、(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物とを含有するものである。
【0097】
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
本発明の液浸露光用レジスト組成物は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物(以下、「酸発生剤」ともいう)を含有する。
そのような酸発生剤としては、光カチオン重合の光開始剤、光ラジカル重合の光開始剤、色素類の光消色剤、光変色剤、あるいはマイクロレジスト等に使用されている活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物及びそれらの混合物を適宜に選択して使用することができる。
【0098】
たとえば、ジアゾニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、イミドスルホネート、オキシムスルホネート、ジアゾジスルホン、ジスルホン、o−ニトロベンジルスルホネートを挙げることができる。
【0099】
また、これらの活性光線又は放射線の照射により酸を発生する基、あるいは化合物をポリマーの主鎖又は側鎖に導入した化合物、たとえば、米国特許第3,849,137号、独国特許第3914407号、特開昭63−26653号、特開昭55−164824号、特開昭62−69263号、特開昭63−146038号、特開昭63−163452号、特開昭62−153853号、特開昭63−146029号等に記載の化合物を用いることができる。
【0100】
さらに米国特許第3,779,778号、欧州特許第126,712号等に記載の光により酸を発生する化合物も使用することができる。
【0101】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、下記一般式(ZI)、(ZII)、(ZIII)で表される化合物を挙げることができる。
【0102】
【化21】

【0103】
一般式(ZI)において、
201、R202及びR203は、各々独立に、有機基を表す。
-は、非求核性アニオンを表し、好ましくはスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、ビス(アルキルスルホニル)アミドアニオン、トリス(アルキルスルホニル)メチドアニオン、BF4-、PF6-、SbF6-などが挙げられ、好ましくは炭素原子を有する有機アニオンである。
【0104】
好ましい有機アニオンとしては、下記一般式(AN1)〜(AN4)に示す有機アニオンが挙げられる。
【0105】
【化22】

【0106】
一般式(AN1)〜(AN2)に於いて、
Rc1は、有機基を表す。
Rc1における有機基として、炭素数1〜30のものが挙げられ、好ましくは置換していてもよいアルキル基、アリール基、またはこれらの複数が、単結合、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−などの連結基で連結された基を挙げることができる。
Rd1は、水素原子、アルキル基を表し、結合しているアルキル基、アリール基と環構造を形成してもよい。
Rc1の有機基としてより好ましくは、1位がフッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたアルキル基、フッ素原子またはフロロアルキル基で置換されたフェニル基である。フッ素原子またはフロロアルキル基を有することにより、光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上する。Rc1において炭素原子を5個以上有する時、少なくとも1つの炭素原子は水素原子が全てフッ素原子で置換されているのではなく、水素原子を有していることが好ましく、水素原子の数がフッ素原子より多いことがより好ましい。炭素数5以上のパーフロロアルキル基を有さないことにより生態への毒性が軽減する。
Rc1の特に好ましい様態としては、下記一般式で表される基である。
【0107】
【化23】

【0108】
上記一般式に於いて、
Rc6は、炭素数4以下、より好ましくは2〜4、更に好ましくは2〜3のパーフロロアルキレン基、又は、1〜4個のフッ素原子及び/又は1〜3個のフロロアルキル基で置換されたフェニレン基を表す。
Axは、単結合又は2価の連結基(好ましくは、−O−、−CO2−、−S−、−SO3−、−SO2N(Rd1)−)を表す。Rd1は、水素原子又はアルキル基を表し、Rc7と結合して環構造を形成してもよい。
Rc7は、水素原子、フッ素原子、置換していてもよい直鎖若しくは分岐状アルキル基、置換していてもよい単環若しくは多環シクロアルキル基又は置換していてもよいアリール基を表す。置換していてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリール基は、置換基としてフッソ原子を含有しないことが好ましい。
【0109】
一般式(AN3)及び(AN4)に於いて、
Rc3、Rc4及びRc5は、各々独立に、有機基を表す。
Rc3、Rc4及びRc5の有機基として、好ましくは、Rc1における好ましい有機基と同じものを挙げることができる。
Rc3とRc4が結合して環を形成していてもよい。
Rc3とRc4が結合して形成される基としては、アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基が挙げられる。好ましくは炭素数2〜4のパーフロロアルキレン基である。Rc3とRc4が結合して環を形成することにより光照射によって発生した酸の酸性度が上がり、感度が向上し、好ましい。
【0110】
一般式(ZI)に於ける、R201、R202及びR203としての有機基の炭素数は、一般的に1〜30、好ましくは1〜20である。
また、R201〜R203の内の2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、カルボニル基を含んでいてもよい。R201〜R203の内の2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)を挙げることができる。
201、R202及びR203としての有機基の具体例としては、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)における対応する基を挙げることができる。
【0111】
尚、一般式(Z1)で表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、一般式(ZI)で表される化合物のR201〜R203の少なくともひとつが、一般式(ZI)で表されるもうひとつの化合物のR201〜R203の少なくともひとつと結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0112】
更に好ましい(Z1)成分として、以下に説明する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、及び(ZI−3)を挙げることができる。
【0113】
化合物(ZI−1)は、上記一般式(ZI)のR201〜R203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニム化合物、即ち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R201〜R203の全てがアリール基でもよいし、R201
〜R203の一部がアリール基で、残りがアルキル基、シクロアルキル基でもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、アリールジシクロアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、ナフチル基などのアリール基、インドール残基、ピロール残基、などのヘテロアリール基が好ましく、更に好ましくはフェニル基、インドール残基である。アリールスルホニム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基は、炭素数1〜15の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基等を挙げることができる。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているシクロアルキル基は、炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロヘキシル基等を挙げることができる。
201〜R203のアリール基、アルキル基、シクロアルキル基は、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基を置換基として有してもよい。好ましい置換基としては炭素数1〜12の直鎖若しくは分岐状アルキル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、炭素数1〜12の直鎖、分岐又は環状のアルコキシ基であり、特に好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基である。置換基は、3つのR201〜R203のうちのいずれか1つに置換していてもよいし、3つ全てに置換していてもよい。また、R201〜R203がアリール基の場合に、置換基はアリール基のp−位に置換していることが好ましい。
【0114】
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
化合物(ZI−2)は、一般式(ZI)におけるR201〜R203が、各々独立に、芳香環を含有しない有機基を表す場合の化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含するものである。
201〜R203としての芳香環を含有しない有機基は、一般的に炭素数1〜30、好ましくは炭素数1〜20である。
201〜R203は、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、ビニル基であり、更に好ましくは直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基、特に好ましくは直鎖、分岐2−オキソアルキル基である。
【0115】
201〜R203としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。R201〜R203としてのアルキル基は、直鎖若しくは分岐状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることが好ましい。
201〜R203としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。R201〜R203としてのシクロアルキル基は、環状2−オキソアルキル基であることが好ましい。
201〜R203としての2−オキソアルキル基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、好ましくは、上記のアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
201〜R203としてのアルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基としては、好ましくは炭素数1〜5のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基)を挙げることができる。
201〜R203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、ニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0116】
化合物(ZI−3)とは、以下の一般式(ZI−3)で表される化合物であり、フェナシルスルフォニウム塩構造を有する化合物である。
【0117】
【化24】

【0118】
一般式(ZI−3)に於いて、
1c〜R5cは、各々独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、又はハロゲン原子を表す。
6c及びR7cは、各々独立に、水素原子、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
Rx及びRyは、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基を表す。
1c〜R7c中のいずれか2つ以上、及びRxとRyは、それぞれ結合して環構造を形成しても良く、この環構造は、酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合を含んでいてもよい。R1c〜R7c中のいずれか2つ以上、及びRxとRyが結合して形成する基としては、ブチレン基、ペンチレン基等を挙げることができる。
-は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0119】
1c〜R7cとしてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜20個の直鎖又は分岐アルキル基、好ましくは、炭素数1〜12個の直鎖及び分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、直鎖又は分岐プロピル基、直鎖又は分岐ブチル基、直鎖又は分岐ペンチル基)を挙げることができる。
1c〜R7cとしてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜8個のシクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基)を挙げることができる。
1c〜R5cとしてのアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状のいずれであってもよく、例えば炭素数1〜10のアルコキシ基、好ましくは、炭素数1〜5の直鎖及び分岐アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、直鎖又は分岐プロポキシ基、直鎖又は分岐ブトキシ基、直鎖又は分岐ペントキシ基)、炭素数3〜8の環状アルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)を挙げることができる。
好ましくは、R1c〜R5cのうちいずれかが直鎖若しくは分岐状アルキル基、シクロアルキル基又は直鎖、分岐、環状アルコキシ基であり、更に好ましくはR1c〜R5cの炭素数の和が2〜15である。これにより、より溶剤溶解性が向上し、保存時にパーティクルの発生が抑制される。
【0120】
x及びRyとしてのアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基と同様のものを挙げ
ることができる。Rx及びRyとしてのアルキル基は、直鎖若しくは分岐状2−オキソアルキル基、アルコキシカルボニルメチル基であることが好ましい。
x及びRyとしてのシクロアルキル基は、R1c〜R7cとしてのシクロアルキル基と同様のものを挙げることができる。Rx及びRyとしてのシクロアルキル基は、環状2−オキソアルキル基であることが好ましい。
直鎖、分岐、環状2−オキソアルキル基は、R1c〜R7cとしてのアルキル基、シクロアルキル基の2位に>C=Oを有する基を挙げることができる。
アルコキシカルボニルメチル基におけるアルコキシ基については、R1c〜R5cとしてのアルコキシ基と同様のものを挙げることができる。
x、Ryは、好ましくは炭素数4個以上のアルキル基であり、より好ましくは6個以上、更に好ましくは8個以上のアルキル基である。
【0121】
前記一般式(ZII)及び(ZIII)に於いて、
204〜R207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
204〜R207のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましく、更に好ましくはフェニル基である。
204〜R207としてのアルキル基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖又は分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基)を挙げることができる。
204〜R207としてのシクロアルキル基は、好ましくは、炭素数3〜10のシクロアルキル基(シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボニル基)を挙げることができる。
204〜R207が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、フェニルチオ基等を挙げることができる。
-は、非求核性アニオンを表し、一般式(ZI)に於けるX-の非求核性アニオンと同様のものを挙げることができる。
【0122】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内で好ましい化合物として、更に、下記一般式(ZIV)、(ZV)、(ZVI)で表される化合物を挙げることができる。
【0123】
【化25】

【0124】
一般式(ZIV)〜(ZVI)に於いて、
Ar3及びAr4は、各々独立に、アリール基を表す。
208は、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を表す。
209及びR210は、各々独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は電子吸引性基を表す。R209として、好ましくは、アリール基である。R210として、好ましくは、電子吸引性基であり、より好ましくはシアノ基、フロロアルキル基である。
Aは、アルキレン基、アルケニレン基又はアリーレン基を表す。
【0125】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の内でより好ましくは、一般式(ZI)〜(ZIII)で表される化合物であり、更に好ましくは一般式(ZI)で表される化合物であり、特に好ましくは一般式(ZI−1)〜(ZI−3)で表される化合物である。
更に、活性光線又は放射線の照射により、下記一般式(AC1)〜(AC3)で表される酸を発生する化合物が好ましい。
【0126】
【化26】

【0127】
すなわち、特に好ましい酸発生剤の様態としては、前記一般式(ZI)で表される化合物に於いて、Xが、前記一般式(AN1)、(AN3)、(AN4)から選ばれるアニオンである化合物である。
【0128】
活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物の中で、特に好ましいものの例を以下に挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0129】
【化27】

【0130】
【化28】

【0131】
【化29】

【0132】
酸発生剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。2種以上を組み合わせて使用する際には、水素原子を除く全原子数が2以上異なる2種の有機酸を発生する化合物を組み合わせることが好ましい。
酸発生剤の組成物中の含量は、レジスト組成物の全固形分を基準として、0.1〜20質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0133】
溶剤
本発明に於いては、前記各成分を溶剤に溶解させて液浸露光用レジスト組成物を調製する。
前記各成分を溶解させて液浸露光用レジスト組成物を調製する際に使用することができる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4〜10)、環を含有しても良いモノケトン化合物(好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、ピルビン酸アルキル等の有機溶剤を挙げることができる。
【0134】
アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレートとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、プロピレングリコールモノエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテートが好ましく挙げられる。
アルキレングリコールモノアルキルエーテルとしては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルを好ましく挙げられる。
【0135】
乳酸アルキルエステルとしては、例えば、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸プロピル、乳酸ブチルを好ましく挙げられる。
アルコキシプロピオン酸アルキルとしては、例えば、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチルを好ましく挙げられる。
【0136】
環状ラクトンとしては、例えば、β−プロピオラクトン、β−ブチロラクトン、γ−ブチロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、γ−オクタノイックラクトン、α−ヒドロキシ−γ−ブチロラクトンが好ましく挙げられる。
【0137】
環を含有しても良いモノケトン化合物としては、例えば、2−ブタノン、3−メチルブタノン、ピナコロン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、4−メチル−2−ペンタノン、2−メチル−3−ペンタノン、4,4−ジメチル−2−ペンタノン、2,4−ジメチル−3−ペンタノン、2,2,4,4−テトラメチル−3−ペンタノン、2−ヘキサノン、3−ヘキサノン、5−メチル−3−ヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−メチル−3−ヘプタノン、5−メチル−3−ヘプタノン、2,6−ジメチル−4−ヘプタノン、2−オクタノン、3−オクタノン、2−ノナノン、3−ノナノン、5−ノナノン、2−デカノン、3−デカノン、、4−デカノン、5−ヘキセン−2−オン、3−ペンテン−2−オン、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、2,2−ジメチルシクロペンタノン、2,4,4−トリメチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、3−メチルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−エチルシクロヘキサノン、2,2−ジメチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、2,2,6−トリメチルシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、2−メチルシクロヘプタノン、3−メチルシクロヘプタノンが好ましく挙げられる。
【0138】
アルキレンカーボネートとしては、例えば、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネートが好ましく挙げられる。
アルコキシ酢酸アルキルとしては、例えば、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、酢酸−3−メトキシ−3−メチルブチル、酢酸−1−メトキシ−2−プロピルが好ましく挙げられる。
ピルビン酸アルキルとしては、例えば、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピルが好ましく挙げられる。
好ましく使用できる溶剤としては、常温常圧下で、沸点130℃以上の溶剤が挙げられる。具体的には、シクロペンタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−エトキシプロピオン酸エチル、ピルビン酸エチル、酢酸−2−エトキシエチル、酢酸−2−(2−エトキシエトキシ)エチル、プロピレンカーボネートが挙げられる。
本発明に於いては、上記溶剤を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0139】
本発明においては、有機溶剤として構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤としては、例えば、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、乳酸エチル等を挙げることができ、これらの内でプロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルが特に好ましい。
水酸基を含有しない溶剤としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等を挙げることができ、これらの内で、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、酢酸ブチルが特に好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノンが最も好ましい。
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量)は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜60/40である。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が塗布均一性の点で特に好ましい。
【0140】
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であることが好ましい。
【0141】
塩基性化合物
本発明の液浸露光用レジスト組成物は、露光から加熱までの経時による性能変化を低減するために、塩基性化合物を含有することが好ましい。
塩基性化合物としては、好ましくは、下記式(A)〜(E)で示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0142】
【化30】

【0143】
一般式(A)〜(E)中、
200 、R201及びR202 は、同一でも異なってもよく、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(炭素数6〜20)を表し、ここで、R201とR202は、互いに結合して環を形成してもよい。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、または炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
203 、R204、R205及びR206は、同一でも異なってもよく、炭素数1〜20個のアルキル基を表す。
これら一般式(A)〜(E)中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0144】
好ましい化合物として、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、ピペリジン等を挙げることができ、更に好ましい化合物として、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造又はピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体等を挙げることができる。
【0145】
イミダゾール構造を有する化合物としてはイミダゾール、2、4、5−トリフェニルイミダゾール、ベンズイミダゾール、2−フェニルベンゾイミダゾール等が挙げられる。ジアザビシクロ構造を有する化合物としては1、4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1、5−ジアザビシクロ[4,3,0]ノナ−5−エン、1、8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデカー7−エン等が挙げられる。オニウムヒドロキシド構造を有する化合物としてはテトラブチルアンモニウムヒドロキシド、トリアリールスルホニウムヒドロキシド、フェナシルスルホニウムヒドロキシド、2−オキソアルキル基を有するスルホニウムヒドロキシド、具体的にはトリフェニルスルホニウムヒドロキシド、トリス(t−ブチルフェニル)スルホニウムヒドロキシド、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムヒドロキシド、フェナシルチオフェニウムヒドロキシド、2−オキソプロピルチオフェニウムヒドロキシド等が挙げられる。オニウムカルボキシレート構造を有する化合物としてはオニウムヒドロキシド構造を有する化合物のアニオン部がカルボキシレートになったものであり、例えばアセテート、アダマンタンー1−カルボキシレート、パーフロロアルキルカルボキシレート等が挙げられる。トリアルキルアミン構造を有する化合物としては、トリ(n−ブチル)アミン、トリ(n−オクチル)アミン等を挙げることができる。アニリン化合物としては、2,6−ジイソプロピルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジブチルアニリン、N,N−ジヘキシルアニリン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−フェニルジエタノールアミン、トリス(メトキシエトキシエチル)アミン等を挙げることができる。水酸基及び/又はエーテル結合を有するアニリン誘導体としては、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン等を挙げることができる。
【0146】
好ましい塩基性化合物として、更に、フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物、スルホン酸エステル基を有するアミン化合物及びスルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物を挙げることができる。
アミン化合物は、1級、2級、3級のアミン化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアミン化合物が好ましい。アミン化合物は、3級アミン化合物であることがより好ましい。アミン化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜12)が窒素原子に結合していてもよい。アミン化合物は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−もしくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。
【0147】
アンモニウム塩化合物は、1級、2級、3級、4級のアンモニウム塩化合物を使用することができ、少なくとも1つのアルキル基が窒素原子に結合しているアンモニウム塩化合物が好ましい。アンモニウム塩化合物は、少なくとも1つのアルキル基(好ましくは炭素数1〜20)が窒素原子に結合していれば、アルキル基の他に、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜12)が窒素原子に結合していてもよい。アンモニウム塩化合物は、アルキル鎖中に、酸素原子を有し、オキシアルキレン基が形成されていることが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−もしくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。 アンモニウム塩化合物のアニオンとしては、ハロゲン原子、スルホネート、ボレート、フォスフェート等が挙げられるが、中でもハロゲン原子、スルホネートが好ましい。ハロゲン原子としてはクロライド、ブロマイド、アイオダイドが特に好ましく、スルホネートとしては、炭素数1〜20の有機スルホネートが特に好ましい。有機スルホネートとしては、炭素数1〜20のアルキルスルホネート、アリールスルホネートが挙げられる。アルキルスルホネートのアルキル基は置換基を有していてもよく、置換基としては例えばフッ素、塩素、臭素、アルコキシ基、アシル基、アリール基等が挙げられる。アルキルスルホネートとして、具体的にはメタンスルホネート、エタンスルホネート、ブタンスルホネート、ヘキサンスルホネート、オクタンスルホネート、ベンジルスルホネート、トリフルオロメタンスルホネート、ペンタフルオロエタンスルホネート、ノナフルオロブタンスルホネート等が挙げられる。アリールスルホネートのアリール基としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環が挙げられる。ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環は置換基を有していてもよく、置換基としては炭素数1〜6の直鎖若しくは分岐アルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基が好ましい。直鎖若しくは分岐アルキル基、シクロアルキル基として、具体的にはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル等が挙げられる。他の置換基としては炭素数1〜6のアルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アシル基、アシロキシ基等が挙げられる。
【0148】
フェノキシ基を有するアミン化合物、フェノキシ基を有するアンモニウム塩化合物とは、アミン化合物又はアンモニウム塩化合物のアルキル基の窒素原子と反対側の末端にフェノキシ基を有するものである。フェノキシ基は、置換基を有していてもよい。フェノキシ基の置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基、アリール基、
アラルキル基、アシロキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。置換基の置換位は、2〜6位のいずれであってもよい。置換基の数は、1〜5の範囲で何れであってもよい。
フェノキシ基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン基を有することが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−もしくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。
【0149】
スルホン酸エステル基を有するアミン化合物、スルホン酸エステル基を有するアンモニウム塩化合物に於ける、スルホン酸エステル基としては、アルキルスルホン酸エステル、シクロアルキル基スルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステルのいずれであっても良く、アルキルスルホン酸エステルの場合にアルキル基は炭素数1〜20、シクロアルキルスルホン酸エステルの場合にシクロアルキル基は炭素数3〜20、アリールスルホン酸エステルの場合にアリール基は炭素数6〜12が好ましい。アルキルスルホン酸エステル、シクロアルキルスルホン酸エステル、アリールスルホン酸エステルは置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、スルホン酸エステル基が好ましい。
スルホン酸エステル基と窒素原子との間に、少なくとも1つのオキシアルキレン基を有することが好ましい。オキシアルキレン基の数は、分子内に1つ以上、好ましくは3〜9個、さらに好ましくは4〜6個である。オキシアルキレン基の中でもオキシエチレン基(−CH2CH2O−)もしくはオキシプロピレン基(−CH(CH3)CH2O−もしくは−CH2CH2CH2O−)が好ましく、さらに好ましくはオキシエチレン基である。
【0150】
これらの塩基性化合物は、単独であるいは2種以上一緒に用いられる。
【0151】
塩基性化合物の使用量は、液浸露光用レジスト組成物の固形分を基準として、通常、0.001〜10質量%、好ましくは0.01〜5質量%である。
【0152】
酸発生剤と塩基性化合物の組成物中の使用割合は、酸発生剤/塩基性化合物(モル比)=2.5〜300であることが好ましい。即ち、感度、解像度の点からモル比が2.5以上が好ましく、露光後加熱処理までの経時でのレジストパターンの太りによる解像度の低下抑制の点から300以下が好ましい。酸発生剤/塩基性化合物(モル比)は、より好ましくは5.0〜200、更に好ましくは7.0〜150である。
【0153】
界面活性剤
本発明の液浸露光用レジスト組成物は、更に界面活性剤を含有することが好ましく、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤(フッ素系界面活性剤、シリコン系界面活性剤、フッ素原子と珪素原子の両方を有する界面活性剤)のいずれか、あるいは2種以上を含有することがより好ましい。
【0154】
本発明の液浸露光用レジスト組成物が上記界面活性剤を含有することにより、250nm以下、特に220nm以下の露光光源の使用時に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを与えることが可能となる。
フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤としては、例えば特開昭62−36663号公報、特開昭61−226746号公報、特開昭61−226745号公報、特開昭62−170950号公報、特開昭63−34540号公報、特開平7−230165号公報、特開平8−62834号公報、特開平9−54432号公報、特開平9−5988号公報、特開2002−277862号公報、米国特許第5405720号明細書、同5360692号明細書、同5529881号明細書、同5296330号明細書、同5436098号明細書、同5576143号明細書、同5294511号明細書、同58244
51号明細書記載の界面活性剤を挙げることができ、下記市販の界面活性剤をそのまま用いることもできる。
使用できる市販の界面活性剤として、例えばエフトップEF301、EF303、(新秋田化成(株)製)、フロラードFC430、431、4430(住友スリーエム(株)製)、メガファックF171、F173、F176、F189、F113、F110、F177、F120、R08(大日本インキ化学工業(株)製)、サーフロンS−382、SC101、102、103、104、105、106(旭硝子(株)製)、トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)、GF−300、GF−150(東亜合成化学(株)製)、サーフロンS−393(セイミケミカル(株)製)、エフトップEF121、EF122A、EF122B、RF122C、EF125M、EF135M、EF351、352、EF801、EF802、EF601((株)ジェムコ製)、PF636、PF656、PF6320、PF6520(OMNOVA社製)、FTX−204G、208G、218G、230G、204D、208D、212D、218D、222D((株)ネオス製)等のフッ素系界面活性剤又はシリコン系界面活性剤を挙げることができる。またポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)もシリコン系界面活性剤として用いることができる。
【0155】
また、界面活性剤としては、上記に示すような公知のものの他に、テロメリゼーション法(テロマー法ともいわれる)もしくはオリゴメリゼーション法(オリゴマー法ともいわれる)により製造されたフルオロ脂肪族化合物から導かれたフルオロ脂肪族基を有する重合体を用いた界面活性剤を用いることが出来る。フルオロ脂肪族化合物は、特開2002−90991号公報に記載された方法によって合成することが出来る。
フルオロ脂肪族基を有する重合体としては、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート及び/又は(ポリ(オキシアルキレン))メタクリレートとの共重合体が好ましく、不規則に分布しているものでも、ブロック共重合していてもよい。また、ポリ(オキシアルキレン)基としては、ポリ(オキシエチレン)基、ポリ(オキシプロピレン)基、ポリ(オキシブチレン)基などが挙げられ、また、ポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとオキシエチレンとのブロック連結体)やポリ(オキシエチレンとオキシプロピレンとのブロック連結体)など同じ鎖長内に異なる鎖長のアルキレンを有するようなユニットでもよい。さらに、フルオロ脂肪族基を有するモノマーと(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体は2元共重合体ばかりでなく、異なる2種以上のフルオロ脂肪族基を有するモノマーや、異なる2種以上の(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)などを同時に共重合した3元系以上の共重合体でもよい。
【0156】
例えば、市販の界面活性剤として、メガファックF178、F−470、F−473、F−475、F−476、F−472(大日本インキ化学工業(株)製)を挙げることができる。さらに、C613基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシアルキレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体、C37基を有するアクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシエチレン))アクリレート(又はメタクリレート)と(ポリ(オキシプロピレン))アクリレート(又はメタクリレート)との共重合体などを挙げることができる。
【0157】
また、本発明では、フッ素系及び/又はシリコン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタン
モノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタントリステアレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテ−ト、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類等のノニオン系界面活性剤等を挙げることができる。
【0158】
これらの界面活性剤は単独で使用してもよいし、また、いくつかの組み合わせで使用してもよい。
【0159】
界面活性剤の使用量は、液浸露光用レジスト組成物全量(溶剤を除く)に対して、好ましくは0.01〜10質量%、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0160】
疎水性樹脂
本発明の液浸露光用レジスト組成物には、疎水性樹脂(HR)を添加することが好ましい。これにより、レジスト膜表層に疎水性樹脂(HR)が偏在化し、液浸媒体が水の場合、レジスト膜とした際の水に対するレジスト膜表面の後退接触角を向上させ、液浸水追随性を向上させることができる。疎水性樹脂(HR)としては、表面の後退接触角が添加することにより向上する樹脂であれば何でもよいが、フッ素原子及び珪素原子の少なくともいずれかを有する樹脂であることが好ましい。レジスト膜の後退接触角は60°〜90°が好ましく、更に好ましくは70°以上である。添加量は、レジスト膜の後退接触角が前記範囲になるよう適宜調整して使用できるが、液浸露光用レジスト組成物の全固形分を基準として、0.1〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜5質量%である。疎水性樹脂(HR)は前述のように界面に遍在するものであるが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくても良い。
後退接触角とは、液滴-基板界面での接触線が後退する際に測定される接触角であり、動的な状態での液滴の移動しやすさをシミュレートする際に有用であることが一般に知られている。簡易的には、針先端から吐出した液滴を基板上に着滴させた後、その液滴を再び針へと吸い込んだときの、液滴の界面が後退するときの接触角として定義でき、一般に拡張収縮法と呼ばれる接触角の測定方法を用いて測定することができる。
液浸露光工程に於いては、露光ヘッドが高速でウェハ上をスキャンし露光パターンを形成していく動きに追随して、液浸液がウェハ上を動く必要があるので、動的な状態に於けるレジスト膜に対する液浸液の接触角が重要になり、液滴が残存することなく、露光ヘッドの高速なスキャンに追随する性能がレジストには求められる。
【0161】
疎水性樹脂(HR)に於けるフッ素原子又は珪素原子は、樹脂の主鎖中に有していても、側鎖に置換していてもよい。
【0162】
疎水性樹脂(HR)は、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、または、フッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
フッ素原子を有するアルキル基(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜4)は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖又は分岐アルキル基であり、さらに他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環または多環のシクロアルキル基であり、さらに他の置換基を有していてもよい。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、ナフチル基などのアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられ、さらに他の置換基
を有していてもよい。
【0163】
フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、または、フッ素原子を有するアリール基として、好ましくは、下記一般式(F2)〜(F4)で表される基を挙げることができるが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0164】
【化31】

【0165】
一般式(F2)〜(F4)中、
57〜R68は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基を表す。但し、R57〜R61、R62〜R64およびR65〜R68の内、少なくとも1つは、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)を表す。R57〜R61及びR65〜R67は、全てがフッ素原子であることが好ましい。R62、R63及びR68は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)が好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることがさらに好ましい。R62とR63は、互いに連結して環を形成してもよい。
【0166】
一般式(F2)で表される基の具体例としては、例えば、p−フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、3,5-ジ(トリフルオロメチル)フェニル基等が挙げられる。
一般式(F3)で表される基の具体例としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロブチル基、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、ノナフルオロブチル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロヘキシル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロ(トリメチル)ヘキシル基、2,2,3,3-テトラフルオロシクロブチル基、パーフルオロシクロヘキシル基などが挙げられる。ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基、ヘキサフルオロ(2−メチル)イソプロピル基、オクタフルオロイソブチル基、ノナフルオロ−t−ブチル基、パーフルオロイソペンチル基が好ましく、ヘキサフルオロイソプロピル基、ヘプタフルオロイソプロピル基が更に好ましい。
一般式(F4)で表される基の具体例としては、例えば、−C(CF32OH、−C(C252OH、−C(CF3)(CH3)OH、−CH(CF3)OH等が挙げられ、−C(CF32OHが好ましい。
【0167】
以下、フッ素原子を有する繰り返し単位の具体例を示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
具体例中、X1は、水素原子、−CH3、−F又は−CF3を表す。
2は、−F又は−CF3を表す。
【0168】
【化32】

【0169】
疎水性樹脂(HR)は、珪素原子を有する部分構造として、アルキルシリル構造(好ましくはトリアルキルシリル基)、または環状シロキサン構造を有する樹脂であることが好ましい。
アルキルシリル構造、または環状シロキサン構造としては、具体的には、下記一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基などが挙げられる。
【0170】
【化33】

【0171】
一般式(CS−1)〜(CS−3)に於いて、
12〜R26は、各々独立に、直鎖もしくは分岐アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)またはシクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)を表す。
3〜L5は、単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、アルキレン基、フェニレン基、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、ウレタン基、またはウレア基よりなる群から選択される単独あるいは2つ以上の基の組み合わせを挙げられる。
nは、1〜5の整数を表す。
【0172】
以下、一般式(CS−1)〜(CS−3)で表される基を有する繰り返し単位の具体例を挙げるが、本発明は、これに限定されるものではない。なお、具体例中、X1は、水素原子、−CH3、−F又は−CF3を表す。
【0173】
【化34】

【0174】
更に、疎水性樹脂(HR)は、下記(x)〜(z)の群から選ばれる基を少なくとも1つを有していてもよい。
(x)アルカリ可溶性基、
(y)アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基、
(z)酸の作用により分解する基。
【0175】
(x)アルカリ可溶性基としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、トリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
好ましいアルカリ可溶性基としては、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホンイミド基、ビス(カルボニル)メチレン基が挙げられる。
【0176】
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位としては、アクリル酸、メタクリル酸に
よる繰り返し単位のような樹脂の主鎖に直接アルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位、あるいは連結基を介して樹脂の主鎖にアルカリ可溶性基が結合している繰り返し単位などが挙げられ、さらにはアルカリ可溶性基を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入することもでき、いずれの場合も好ましい。
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、1〜50mol%が好ましく、より好ましくは3〜35mol%、更に好ましくは5〜20mol%である。
【0177】
アルカリ可溶性基(x)を有する繰り返し単位の具体例を以下に示すが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0178】
【化35】

【0179】
(y)アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基としては、例えば、ラクトン構造を有する基、酸無水物基、酸イミド基などが挙げられ、好ましくはラクトン構造を有する基である。
アルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルによる繰り
返し単位のように、樹脂の主鎖にアルカリ現像液の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)が結合している繰り返し単位、あるいはアルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有する重合開始剤や連鎖移動剤を重合時に用いてポリマー鎖の末端に導入、のいずれも好ましい。
アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、1〜40mol%が好ましく、より好ましくは3〜30mol%、更に好ましくは5〜15mol%である。
【0180】
アルカリ現像液中での溶解度が増大する基(y)を有する繰り返し単位の具体例としては、(A)成分の樹脂で挙げたラクトン構造を有する繰り返し単位と同様のものを挙げることができる。
【0181】
疎水性樹脂(HR)に於ける、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位は、(A)成分の樹脂で挙げた酸分解性基を有する繰り返し単位と同様のものが挙げられる。疎水性樹脂(HR)に於ける、酸の作用により分解する基(z)を有する繰り返し単位の含有量は、ポリマー中の全繰り返し単位に対し、1〜80mol%が好ましく、より好ましくは10〜80mol%、更に好ましくは20〜60mol%である。
【0182】
疎水性樹脂(HR)は、更に、下記一般式(III)で表される繰り返し単位を有していてもよい。
【0183】
【化36】

【0184】
一般式(III)に於いて、
4は、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基を有する基を表す。
6は、単結合又は2価の連結基を表す。
【0185】
一般式(III)に於ける、R4のアルキル基は、炭素数3〜20の直鎖若しくは分岐状アルキル基が好ましい。
シクロアルキル基は、炭素数3〜20のシクロアルキル基が好ましい。
アルケニル基は、炭素数3〜20のアルケニル基が好ましい。
シクロアルケニル基は、炭素数3〜20のシクロアルケニル基が好ましい。
6の2価の連結基は、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜5)、オキシ基が好ましい。
【0186】
疎水性樹脂(HR)がフッ素原子を有する場合、フッ素原子の含有量は、疎水性樹脂(HR)の分子量に対し、5〜80質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。また、フッ素原子を含む繰り返し単位が、疎水性樹脂(HR)中10〜100質量%であることが好ましく、30〜100質量%であることがより好ましい。
疎水性樹脂(HR)が珪素原子を有する場合、珪素原子の含有量は、疎水性樹脂(HR)の分子量に対し、2〜50質量%であることが好ましく、2〜30質量%であることがより好ましい。また、珪素原子を含む繰り返し単位は、疎水性樹脂(HR)中10〜100質量%であることが好ましく、20〜100質量%であることがより好ましい。
【0187】
疎水性樹脂(HR)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、好ましくは1,000〜100,000で、より好ましくは1,000〜50,000、更により好ましくは2,000〜15,000である。
【0188】
疎水性樹脂(HR)は、(B)成分の樹脂同様、金属等の不純物が少ないのは当然のことながら、残留単量体やオリゴマー成分が0〜10質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜5質量%、0〜1質量%が更により好ましい。それにより、液中異物や感度等の経時変化のないレジストが得られる。また、解像度、レジスト形状、レジストパターンの側壁、ラフネスなどの点から、分子量分布(Mw/Mn、分散度ともいう)は、1〜5の範囲が好ましく、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2の範囲である。
【0189】
疎水性樹脂(HR)は、各種市販品を利用することもできるし、常法に従って(例えばラジカル重合)合成することができる。例えば、一般的合成方法としては、モノマー種および開始剤を溶剤に溶解させ、加熱することにより重合を行う一括重合法、加熱溶剤にモノマー種と開始剤の溶液を1〜10時間かけて滴下して加える滴下重合法などが挙げられ、滴下重合法が好ましい。反応溶媒としては、例えばテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類やメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類、酢酸エチルのようなエステル溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド溶剤、さらには後述のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノンのような本発明の組成物を溶解する溶媒が挙げられる。より好ましくは本発明の液浸露光用レジスト組成物に用いられる溶剤と同一の溶剤を用いて重合することが好ましい。これにより保存時のパーティクルの発生が抑制できる。
【0190】
重合反応は窒素やアルゴンなど不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。重合開始剤としては市販のラジカル開始剤(アゾ系開始剤、パーオキサイドなど)を用いて重合を開始させる。ラジカル開始剤としてはアゾ系開始剤が好ましく、エステル基、シアノ基、カルボキシル基を有するアゾ系開始剤が好ましい。好ましい開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが挙げられる。反応の濃度は5〜50質量%であり、好ましくは30〜50質量%である。反応温度は、通常10℃〜150℃であり、好ましくは30℃〜120℃、さらに好ましくは60〜100℃である。
【0191】
反応終了後、室温まで放冷し、精製する。精製は、水洗や適切な溶媒を組み合わせることにより残留単量体やオリゴマー成分を除去する液々抽出法、特定の分子量以下のもののみを抽出除去する限外ろ過等の溶液状態での精製方法や、樹脂溶液を貧溶媒へ滴下することで樹脂を貧溶媒中に凝固させることにより残留単量体等を除去する再沈澱法やろ別した樹脂スラリーを貧溶媒で洗浄する等の固体状態での精製方法等の通常の方法を適用できる。たとえば、上記樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒(貧溶媒)を、該反応溶液の10倍以下の体積量、好ましくは10〜5倍の体積量で、接触させることにより樹脂を固体として析
出させる。
【0192】
ポリマー溶液からの沈殿又は再沈殿操作の際に用いる溶媒(沈殿又は再沈殿溶媒)としては、該ポリマーの貧溶媒であればよく、ポリマーの種類に応じて、炭化水素、ハロゲン化炭化水素、ニトロ化合物、エーテル、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、カルボン酸、水、これらの溶媒を含む混合溶媒等の中から適宜選択して使用できる。これらの中でも、沈殿又は再沈殿溶媒として、少なくともアルコール(特に、メタノールなど)または水を含む溶媒が好ましい。
【0193】
沈殿又は再沈殿溶媒の使用量は、効率や収率等を考慮して適宜選択できるが、一般には、ポリマー溶液100質量部に対して、100〜10000質量部、好ましくは200〜2000質量部、さらに好ましくは300〜1000質量部である。
【0194】
沈殿又は再沈殿する際の温度としては、効率や操作性を考慮して適宜選択できるが、通常0〜50℃程度、好ましくは室温付近(例えば20〜35℃程度)である。沈殿又は再沈殿操作は、攪拌槽などの慣用の混合容器を用い、バッチ式、連続式等の公知の方法により行うことができる。
【0195】
沈殿又は再沈殿したポリマーは、通常、濾過、遠心分離等の慣用の固液分離に付し、乾燥して使用に供される。濾過は、耐溶剤性の濾材を用い、好ましくは加圧下で行われる。乾燥は、常圧又は減圧下(好ましくは減圧下)、30〜100℃程度、好ましくは30〜50℃程度の温度で行われる。
【0196】
尚、一度、樹脂を析出させて、分離した後に、再び溶媒に溶解させ、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒と接触させてもよい。即ち、上記ラジカル重合反応終了後、該ポリマーが難溶あるいは不溶の溶媒を接触させ、樹脂を析出させ(工程a)、樹脂を溶液から分離し(工程b)、改めて溶媒に溶解させ樹脂溶液Aを調製(工程c)、その後、該樹脂溶液Aに、該樹脂が難溶あるいは不溶の溶媒を、樹脂溶液Aの10倍未満の体積量(好ましくは5倍以下の体積量)で、接触させることにより樹脂固体を析出させ(工程d)、析出した樹脂を分離する(工程e)ことを含む方法でもよい。
【0197】
以下に疎水性樹脂(HR)の具体例を示す。また、下記表1に、各樹脂における繰り返し単位のモル比(各繰り返し単位と左から順に対応)、重量平均分子量、分散度を示す。
【0198】
【化37】

【0199】
【化38】

【0200】
【化39】

【0201】
【化40】

【0202】
【表1】

【0203】
カルボン酸オニウム塩
本発明における液浸露光用レジスト組成物は、カルボン酸オニウム塩を含有しても良い。カルボン酸オニウム塩としては、カルボン酸スルホニウム塩、カルボン酸ヨードニウム塩、カルボン酸アンモニウム塩などを挙げることができる。特に、カルボン酸オニウム塩としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が好ましい。更に、本発明のカルボン酸オニウム塩のカルボキシレート残基が芳香族基、炭素−炭素2重結合を含有しないことが好ましい。特に好ましいアニオン部としては、炭素数1〜30の直鎖、分岐、単環または多環環状アルキルカルボン酸アニオンが好ましい。さらに好ましくはこれらのアルキル基の一部または全てがフッ素置換されたカルボン酸のアニオンが好ましい。アルキル鎖中に酸素原子を含んでいても良い。これにより220nm以下の光に対する透明性が確保され、感度、解像力が向上し、疎密依存性、露光マージンが改良される。
【0204】
フッ素置換されたカルボン酸のアニオンとしては、フロロ酢酸、ジフロロ酢酸、トリフロロ酢酸、ペンタフロロプロピオン酸、ヘプタフロロ酪酸、ノナフロロペンタン酸、パーフロロドデカン酸、パーフロロトリデカン酸、パーフロロシクロヘキサンカルボン酸、2,2−ビストリフロロメチルプロピオン酸のアニオン等が挙げられる。
【0205】
これらのカルボン酸オニウム塩は、スルホニウムヒドロキシド、ヨードニウムヒドロキシド、アンモニウムヒドロキシドとカルボン酸を適当な溶剤中酸化銀と反応させることによって合成できる。
【0206】
カルボン酸オニウム塩の組成物中の含量は、組成物の全固形分に対し、一般的には0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%、更に好ましくは1〜7質量%である。
【0207】
酸の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物
酸の作用により分解してアルカリ現像液中での溶解度が増大する、分子量3000以下の溶解阻止化合物(以下、「溶解阻止化合物」ともいう)としては、220nm以下の透過性を低下させないため、ProceedingofSPIE, 2724,355 (1996)に記載されている酸分解性基を含むコール酸誘導体の様な、酸分解性基を含有する脂環族又は脂肪族化合物が好ましい。酸分解性基、脂環式構造としては、(B)成分の樹脂のところで説明したものと同様のものが挙げられる。
【0208】
本発明の液浸露光用レジスト組成物をKrFエキシマレーザーで露光するか、或いは電子線で照射する場合には、フェノール化合物のフェノール性水酸基を酸分解基で置換した構造を含有するものが好ましい。フェノール化合物としてはフェノール骨格を1〜9個含有するものが好ましく、さらに好ましくは2〜6個含有するものである。
【0209】
本発明における溶解阻止化合物の分子量は、3000以下であり、好ましくは300〜3000、更に好ましくは500〜2500である。
【0210】
溶解阻止化合物の添加量は、液浸露光用レジスト組成物の固形分に対し、好ましくは3〜50質量%であり、より好ましくは5〜40質量%である。
【0211】
以下に溶解阻止化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0212】
【化41】

【0213】
その他の添加剤
本発明の液浸露光用レジスト組成物には、必要に応じてさらに染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、及び現像液に対する溶解性を促進させる化合物(例えば、分子量1000以下のフェノール化合物、カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物)等を含有させることができる。
【0214】
このような分子量1000以下のフェノール化合物は、例えば、特開平4−122938号、特開平2−28531号、米国特許第4,916,210、欧州特許第219294等に記載の方法を参考にして、当業者において容易に合成することができる。
カルボキシル基を有する脂環族、又は脂肪族化合物の具体例としてはコール酸、デオキシコール酸、リトコール酸などのステロイド構造を有するカルボン酸誘導体、アダマンタンカルボン酸誘導体、アダマンタンジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0215】
パターン形成方法
本発明の液浸露光用レジスト組成物は、解像力向上の観点から、膜厚30〜250nmで使用されることが好ましく、より好ましくは、膜厚30〜200nmで使用されることが好ましい。液浸露光用レジスト組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性、製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
液浸露光用レジスト組成物中の全固形分濃度は、一般的には1〜10質量%、より好ましくは1〜8.0質量%、さらに好ましくは1.0〜6.0質量%である。
【0216】
本発明の液浸露光用レジスト組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは前記混合溶剤に溶解し、フィルター濾過した後、次のように所定の支持体上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターは0.1ミクロン以下、より好ましくは0.05ミクロン以下、更に好ましくは0.03ミクロン以下のポリテトラフロロエチレン製、ポリエチレン製、ナイロン製のものが好ましい。
【0217】
例えば、液浸露光用レジスト組成物を精密集積回路素子の製造に使用されるような基板(例:シリコン/二酸化シリコン被覆)上にスピナー、コーター等の適当な塗布方法により塗布、乾燥し、レジスト膜を形成する。
当該レジスト膜に、所定のマスクを通して活性光線又は放射線を照射し、好ましくはベーク(加熱)を行い、現像、リンスする。これにより良好なパターンを得ることができる。
【0218】
活性光線又は放射線としては、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、X線、電子線等を挙げることができるが、好ましくは250nm以下、より好ましくは220nm以下、特に好ましくは1〜200nmの波長の遠紫外光、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F2エキシマレーザー(157nm)、X線、電子ビーム等であり、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(13nm)、電子ビームが好ましい。
【0219】
レジスト膜を形成する前に、基板上に予め反射防止膜を塗設してもよい。
反射防止膜としては、チタン、二酸化チタン、窒化チタン、酸化クロム、カーボン、アモルファスシリコン等の無機膜型と、吸光剤とポリマー材料からなる有機膜型のいずれも用いることができる。また、有機反射防止膜として、ブリューワーサイエンス社製のDUV30シリーズや、DUV−40シリーズ、シプレー社製のAR−2、AR−3、AR−5等の市販の有機反射防止膜を使用することもできる。
【0220】
現像工程では、アルカリ現像液を次のように用いる。液浸露光用レジスト組成物のアルカリ現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩、ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性水溶液を使用することができる。
さらに、上記アルカリ現像液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
アルカリ現像液のアルカリ濃度は、通常0.1〜20質量%である。
アルカリ現像液のpHは、通常10.0〜15.0である。
さらに、上記アルカリ性水溶液にアルコール類、界面活性剤を適当量添加して使用する
こともできる。
リンス液としては、純水を使用し、界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。
また、現像処理または、リンス処理の後に、パターン上に付着している現像液またはリンス液を超臨界流体により除去する処理を行うことができる。
【0221】
本発明に於いては、活性光線又は放射線の照射時にレジスト膜とレンズの間に空気よりも屈折率の高い液体(液浸液)を満たして露光(液浸露光)を行う。これにより解像性を高めることができる。用いる液浸液としては空気よりも屈折率の高い液体であればいずれのものでも用いることができるが好ましくは純水である。
【0222】
液浸露光する際に使用する液浸液について、以下に説明する。
液浸液は、露光波長に対して透明であり、かつレジスト膜上に投影される光学像の歪みを最小限に留めるよう、屈折率の温度係数ができる限り小さい液体が好ましいが、特に露光光源がArFエキシマレーザー(波長;193nm)である場合には、上述の観点に加えて、入手の容易さ、取り扱いのし易さといった点から水を用いるのが好ましい。
また、さらに屈折率が向上できるという点で屈折率1.5以上の媒体を用いることもできる。この媒体は、水溶液でもよく有機溶剤でもよい。
【0223】
液浸液として水を用いる場合、水の表面張力を減少させるとともに、界面活性力を増大させるために、ウェハ上のレジスト膜を溶解させず、且つレンズ素子の下面の光学コートに対する影響が無視できる添加剤(液体)を僅かな割合で添加しても良い。その添加剤としては水とほぼ等しい屈折率を有する脂肪族系のアルコールが好ましく、具体的にはメチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。水とほぼ等しい屈折率を有するアルコールを添加することにより、水中のアルコール成分が蒸発して含有濃度が変化しても、液体全体としての屈折率変化を極めて小さくできるといった利点が得られる。一方で、193nm光に対して不透明な物質や屈折率が水と大きく異なる不純物が混入した場合、レジスト膜上に投影される光学像の歪みを招くため、使用する水としては、蒸留水が好ましい。更にイオン交換フィルター等を通して濾過を行った純水を用いてもよい。
【0224】
水の電気抵抗は、18.3MQcm以上であることが望ましく、TOC(有機物濃度)は20ppb以下であることが望ましく、脱気処理をしていることが望ましい。
また、液浸液の屈折率を高めることにより、リソグラフィー性能を高めることが可能である。このような観点から、屈折率を高めるような添加剤を水に加えたり、水の代わりに重水(D2O)を用いてもよい。
【0225】
本発明の液浸露光用レジスト組成物によるレジスト膜と液浸液との間には、レジスト膜を直接、液浸液に接触させないために、液浸液難溶性膜(以下、「トップコート」ともいう)を設けてもよい。トップコートに必要な機能としては、レジスト上層部への塗布適正、放射線、特に193nmに対する透明性、液浸液難溶性である。トップコートは、レジストと混合せず、さらにレジスト上層に均一に塗布できることが好ましい。
トップコートは、193nm透明性という観点からは、芳香族を豊富に含有しないポリマーが好ましく、具体的には、炭化水素ポリマー、アクリル酸エステルポリマー、ポリメタクリル酸、ポリアクリル酸、ポリビニルエーテル、シリコン含有ポリマー、フッ素含有ポリマーなどが挙げられる。前述の疎水性樹脂(HR)はトップコートとしても好適なものである。トップコートから液浸液へ不純物が溶出すると光学レンズを汚染するという観点からは、トップコートに含まれるポリマーの残留モノマー成分は少ない方が好ましい。
【0226】
トップコートを剥離する際は、現像液を使用してもよいし、別途剥離剤を使用してもよ
い。剥離剤としては、レジスト膜への浸透が小さい溶剤が好ましい。剥離工程がレジスト膜の現像処理工程と同時にできるという点では、アルカリ現像液により剥離できることが好ましい。アルカリ現像液で剥離するという観点からは、トップコートは酸性が好ましいが、レジスト膜との非インターミクス性の観点から、中性であってもアルカリ性であってもよい。
トップコートと液浸液との間には屈折率の差がない方が、解像力が向上する。ArFエキシマレーザー(波長:193nm)において、液浸液として水を用いる場合には、ArF液浸露光用トップコートは、液浸液の屈折率に近いことが好ましい。屈折率を液浸液に近くするという観点からは、トップコート中にフッ素原子を有することが好ましい。また、透明性・屈折率の観点から薄膜の方が好ましい。
【0227】
トップコートは、レジスト膜と混合せず、さらに液浸液とも混合しないことが好ましい。この観点から、液浸液が水の場合には、トップコートに使用される溶剤は、液浸露光用レジスト組成物に使用される溶媒に難溶で、かつ非水溶性の媒体であることが好ましい。さらに、液浸液が有機溶剤である場合には、トップコートは水溶性であっても非水溶性であってもよい。
【実施例】
【0228】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0229】
合成例1
窒素気流下、シクロヘキサノン30gを3つ口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した。これに、2−シアノー2,6−ノルボルニルカルボラクトンー5−メタクリレート9.9g、3−ヒドロキシアダマンチル−1−メタクリレート4.7g、シクロヘキシルメタクリレート1.7g、1−エチルシクロヘキシルメタクリレート5.5、重合開始剤V−601(和光純薬製)をモノマーに対し8mol%をシクロヘキサノン55gを6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2時間反応させた。反応液を放冷後、メタノール900m/水100mlの混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥すると、樹脂(1)が16.5g得られた。得られた樹脂(1)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算で8300、分散度(Mw/Mn)は1.84であった。
【0230】
合成例2
窒素気流下、シクロヘキサノン20g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20gを3つ口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した。これに、2−シアノー2,6−ノルボルニルカルボラクトンー5−メタクリレート9.9g、3,5−ジヒドロキシアダマンチル−1−メタクリレート2.5g、1−エチルシクロペンチルアクリレート8.4g、重合開始剤V−601(和光純薬製)をモノマーに対し6mol%をシクロヘキサノン35g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート35gに溶解させた溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2時間反応させた。反応液を放冷後、メタノール900m/水100mlの混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥すると、樹脂(2)が16.7g得られた。得られた樹脂(2)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算で11000、分散度(Mw/Mn)は1.78であった。
【0231】
合成例3
窒素気流下、シクロヘキサノン15g、プロピレングリコールモノメチルエーテル10g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート20gを3つ口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した。これに、2−シアノー2,6−ノルボルニルカルボラクトンー5−メタクリレート14.9g、3,5−ジヒドロキシアダマンチル−1−メタクリレート3.9g、1−エチルシクロペンチルメタクリレート10.9g、シクロヘキシルメ
タクリレート2.52g、重合開始剤V−601(和光純薬製)をモノマーに対し6mol%をシクロヘキサノン25g、プロピレングリコールモノメチルエーテル20g、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート40gに溶解させた溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、さらに80℃で2時間反応させた。反応液を放冷後、メタノール900m/水100mlの混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥すると、樹脂(12)が26.2g得られた。得られた樹脂(12)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算で9200、分散度(Mw/Mn)は1.65であった。
【0232】
樹脂(3)〜(6)についてモノマーを変更した以外は、合成例1と同様の条件で製造した。樹脂(7)〜(11)についてモノマーを変更した以外は、合成例2と同様の条件で製造した。樹脂(13)〜(14)についてモノマーを変更した以外は、合成例3と同様の条件で製造した。
【0233】
以下、樹脂(1)〜(14)の構造を示す。
【0234】
【化42】

【0235】
下記表2に、樹脂(1)〜(14)について、組成比(モル比、各繰り返し単位と左から順に対応)、重量平均分子量、分散度を示す。
【0236】
【表2】

【0237】
比較合成例1
モノマーを変更した以外は、合成例1と同様の条件で樹脂を製造し、比較樹脂(1’)13.5gを得た。比較樹脂(1’)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算で7200、分散度(Mw/Mn)は1.80であった。
【0238】
比較合成例2
モノマーを変更した以外は、合成例1と同様の条件で樹脂を製造し、比較樹脂(2’)12.5gを得た。比較樹脂(2’)の重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算で8500、分散度(Mw/Mn)は1.85であった。
【0239】
以下、比較樹脂(1’)〜(2’)の構造を示す。
【0240】
【化43】

【0241】
下記表3に、比較樹脂(1’)〜(2’)について、組成比(モル比、各繰り返し単位と左から順に対応)、重量平均分子量、分散度を示す。
【0242】
【表3】

【0243】
実施例1〜14及び比較例1〜2
<レジスト調製>
下記表4〜5に示す成分を溶剤に溶解させ、それぞれについて固形分濃度7質量%の溶液を調製し、これを0.1μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターで濾過してポジ型レジスト溶液を調製した。調製したポジ型レジスト組成物を下記の方法で評価し、結果を表4〜5に示した。
【0244】
〔画像性能試験〕
【0245】
(露光条件)
本条件は、純水を用いた液浸露光法によりレジストパターンを形成するものである。
シリコンウエハー上に有機反射防止膜ARC29A(日産化学社製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、78nmの反射防止膜を形成した。その上に調製したポジ型レジスト組成物を塗布し、120℃で、60秒間ベークを行い、200nmのレジスト膜を形成した。得られたウェハーをArFエキシマレーザー液浸スキャナー(NA0.85)を用い、パターン露光した。液浸液としては超純水を使用した。その後110℃で、60秒間加熱した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、純水でリンスした後、スピン乾燥してレジストパターンを得た。
【0246】
得られたレジストパターンについて走査型電子顕微鏡(日立製S−4800)を用い、パターン倒れ性能及びパターンプロファイルを観察した。
【0247】
〔パターン倒れ評価〕
85nmのラインアンドスペースパターンを再現する露光量を最適露光量とし、ラインアンドスペース1:1の密集パターン及びラインアンドスペース1:10の孤立パターンについて、最適露光量で露光した際により微細なマスクサイズにおいてパターンが倒れず
に解像する線幅(nm)を限界パターン倒れ線幅とした。値が小さいほど、より微細なパターンが倒れずに解像することを表し、パターン倒れが発生しにくいことを示す。
【0248】
〔プロファイル形状評価方法〕
85nmの孤立パターンを観察し、矩形なものを○、ややテーパー形状のものを△、膜減りが発生しているものを×とした。
【0249】
〔溶出〕
調製したポジ型レジスト組成物を8インチシリコンウエハーに塗布し、120℃、60秒ベークを行い150nmのレジスト膜を形成した。該レジスト膜を波長193nmの露光機で全面20mJ/cm露光した後、超純水製造装置(日本ミリポア製、Milli-Q Jr.)を用いて脱イオン処理した純水5mlを上記レジスト膜上に滴下した。水をレジスト膜上に50秒間乗せた後、その水を採取して、酸の溶出濃度をLC-MSで定量した。
LC装置 ; Waters社製2695
MS装置 ; Bruker Daltonics社製esquire 3000plus
上記LC-MS装置にてアニオンに相当する分子量のイオン種の検出強度を測定し、酸の溶出量を算出した。
【0250】
【表4】

【0251】
【表5】

【0252】
表における記号は次の通りである。
酸発生剤は先に例示したものに対応する。
【0253】
N−1:N,N−ジブチルアニリン
N−2:N,N−ジヘキシルアニリン
N−3:2,6−ジイソプロピルアニリン
N−4:トリ−n−オクチルアミン
N−5:N,N−ジヒドロキシエチルアニリン
N−6:2,4,5−トリフェニルイミダゾール
N−7:トリス(メトキシエトキシエチル)アミン
N−8:2−フェニルベンゾイミダゾール
N−9:2−[2−{2−(2,2−ジメトキシフェノキシエトキシ)エチル}−ビス(2−メトキシエチル)]−アミン
【0254】
W−1:メガファックF176(大日本インキ化学工業(株)製)(フッ素系)
W−2:メガファックR08(大日本インキ化学工業(株)製)(フッ素及びシリコン系)
W−3:ポリシロキサンポリマーKP−341(信越化学工業(株)製)(シリコン系)
W−4:トロイゾルS−366(トロイケミカル(株)製)
W−5:PF656(OMNOVA社製、フッ素系)
W−6:PF6320(OMNOVA社製、フッ素系)
【0255】
SL−1:シクロヘキサノン
SL−2:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
SL−3:乳酸エチル
SL−4:プロピレングリコールモノメチルエーテル
SL−5:γ−ブチロラクトン
SL−6:プロピレンカーボネート
【0256】
表4〜5から、本発明のレジスト組成物は、液浸露光に於いて、レジストパターンの倒れ、プロファイルの劣化が少なく、液浸液への溶出が抑制されていることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合溶媒として、鎖状ケトン、環状ケトン、鎖状エーテル及び環状エーテルからなる群から選択される溶剤を用いて製造された、下記一般式(I)で表される繰り返し単位を有し、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂及び
(B)活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物
を含有することを特徴とする液浸露光用レジスト組成物。
【化1】

一般式(I)に於いて、
は、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
は、アルキル基を表す。
は、複数ある場合は各々独立して、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、シアノ基又は水酸基を表す。
CAは、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基を表す。
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
nは、0又は正の整数を表す。
【請求項2】
重合溶媒が、鎖状ケトン又は環状ケトンであることを特徴とする請求項1に記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項3】
重合溶媒が、環状ケトン及び鎖状ケトンを含有する混合溶剤であることを特徴とする請求項1に記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項4】
(A)成分の樹脂が、更に、ラクトン基を有する繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項5】
(A)成分の樹脂が、更に、水酸基を有する繰り返し単位を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の液浸露光用レジスト組成物。
【請求項6】
下記一般式(Im)で表されるモノマーを含有するモノマーを、鎖状ケトン、環状ケトン、鎖状エーテル及び環状エーテルからなる群から選択される溶剤を含有する重合溶媒中で重合させることを特徴とする、酸の作用により分解し、アルカリ現像液中での溶解度が増大する樹脂の製造方法。
【化2】

一般式(Im)に於いて、
は、水素原子、ハロゲン原子又はアルキル基を表す。
は、アルキル基を表す。
は、複数ある場合は各々独立して、ハロゲン原子、アルキル基、シクロアルキル基、シアノ基又は水酸基を表す。
CAは、炭素数5若しくは6のシクロアルキル基を表す。
Aは、単結合又は2価の連結基を表す。
nは、0又は正の整数を表す。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載のレジスト組成物を用いて、レジスト膜を形成し、該レジスト膜を、液浸露光、現像することを特徴とするパターン形成方法。

【公開番号】特開2009−271253(P2009−271253A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120530(P2008−120530)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】