説明

測位システムおよび車載装置

【課題】車両の走行時における測位精度を向上させること。
【解決手段】車載装置が、測位した座標を表す車載側測位座標および測位に係る精度を表す車載側測位精度を取得し、取得した車載側測位座標および車載側測位精度を携帯端末装置へ送信し、携帯端末装置は、測位した座標を表す携帯側測位座標および測位に係る精度を表す携帯側測位精度を取得し、車載側測位精度および携帯側測位精度に基づき、車載側測位座標および携帯側測位座標から車両位置を算出するように測位システムを構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両に搭載された車載装置と携帯端末装置とで車両位置を測位する測位システムおよび車載装置に関し、特に、車両の走行時における測位精度を向上させることができる測位システムおよび車載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(Global Positioning System)測位機能、ジャイロ、車速センサ等を利用して現在位置を算出し、自車位置と周辺の道路や建物についての地図情報とを合成してディスプレイへ表示する車両用ナビゲーションシステムが知られている。
【0003】
また、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)といった携帯端末装置の性能向上に伴い、これらの携帯端末装置においてもGPS測位機能を備えた歩行者用ナビゲーションシステムが実現されている。
【0004】
そして、歩行者用ナビゲーション機能を有する携帯端末装置と、車両用ナビゲーション機能を有する車載装置とを接続することで、乗車者の利便性を高める試みもなされている。たとえば、特許文献1には、乗車者が降車する際に、車載装置から携帯端末装置へナビゲーション情報を送信することで、車外においても目的地までのナビゲーションを継続する技術が開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開2002−181555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術は、車載装置のGPS測位機能と携帯端末装置のGPS測位機能とを組み合わせてはいるものの、双方のGPS測位機能を切り替えて使用しているにすぎない。すなわち、特許文献1のものは、車両の走行速度にチューニングされた車載用GPS測位機能を走行時に使用し、利用者の歩行速度にチューニングされた携帯用GPS測位機能を歩行時に使用するものである。
【0007】
このように、携帯用GPS測位機能は、車両の走行時には用いられないことが通常である。これは、携帯用GPS測位機能の精度が、車載用GPS測位機能の精度よりも劣ると一般的に考えられているためである。しかし、車載用GPS測位機能および携帯用GPS測位機能の精度には一長一短があり、携帯用GPS測位機能の精度が劣っているとは言い切れない。
【0008】
たとえば、携帯用GPS測位機能と車載用GPS測位機能とを比較した場合、携帯用GPS測位機能のほうが、感度が高く遮蔽に強いという優位点もある。これは、携帯用GPS測位機能が室内で用いられることを前提として、S/N比(Signal to Noise ratio)が低い部分の衛星電波も受信することができるように充実したフィルタを有しており、また、ネットワーク経由でサーバー装置からGPS測位のための補助情報を受信してGPS測位に用いるアシストGPS(AGPS)に対応している場合が多いためである。
【0009】
この発明は、車載用GPS測位機能および携帯用GPS測位機能を組み合わせることによって車両の走行時における測位精度を向上させるという観点に基づいてなされたものであり、車載用GPS測位機能による測位結果および携帯用GPS測位機能による測位結果を用いて車両の走行時における測位精度を向上させる測位システムおよび車載装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明は、車両に搭載された車載装置と携帯端末装置とで車両位置を測位する測位システムであって、前記車載装置は、測位した座標を表す車載側測位座標および当該測位に係る精度を表す車載側測位精度を取得する車載側測位手段と、前記車載側測位手段が測位した前記車載側測位座標および前記車載側測位精度を前記携帯端末装置へ送信する送信手段とを備え、前記携帯端末装置は、測位した座標を表す携帯側測位座標および当該測位に係る精度を表す携帯側測位精度を取得する携帯側測位手段と、前記車載側測位精度および前記携帯側測位精度に基づき、前記車載側測位座標および前記携帯側測位座標から前記車両位置を算出する車両位置算出手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、携帯端末装置と連携して車両位置を測位する車載装置であって、測位した座標を表す車載側測位座標および当該測位に係る精度を表す車載側測位精度を取得する車載側測位手段と、前記携帯端末装置が測位した座標を表す携帯側測位座標および当該測位に係る精度を表す携帯側測位精度を受信する受信手段と、前記車載側測位精度および前記携帯側測位精度に基づき、前記車載側測位座標および前記携帯側測位座標から前記車両位置を算出する車両位置算出手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、車載装置が、測位した座標を表す車載側測位座標および測位に係る精度を表す車載側測位精度を取得し、取得した車載側測位座標および車載側測位精度を携帯端末装置へ送信し、携帯端末装置は、測位した座標を表す携帯側測位座標および測位に係る精度を表す携帯側測位精度を取得し、車載側測位精度および携帯側測位精度に基づき、車載側測位座標および携帯側測位座標から車両位置を算出することとしたので、測位精度の高低に応じて車載側測位座標および携帯側測位座標から車両位置を算出することによって、車載用GPS測位機能および携帯用GPS測位機能を相互に補完しあい、車両の走行時における測位精度を向上させることができるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明によれば、測位した座標を表す車載側測位座標および測位に係る精度を表す車載側測位精度を取得し、携帯端末装置が測位した座標を表す携帯側測位座標および測位に係る精度を表す携帯側測位精度を受信し、車載側測位精度および携帯側測位精度に基づき、車載側測位座標および携帯側測位座標から車両位置を算出することとしたので、測位精度の高低に応じて車載側測位座標および携帯側測位座標から車両位置を算出することによって、車載用GPS測位機能を携帯用GPS測位機能で補完し、車両の走行時における測位精度を向上させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る測位システムの好適な実施例1および実施例2を詳細に説明する。なお、実施例1では、携帯端末装置が後述する系統誤差情報を保持する場合について、実施例2では、車載装置にも系統誤差情報を保持させる場合について、それぞれ説明することとする。また、以下に示す各実施例では、携帯端末装置として携帯電話を用いた場合について説明するが、PDA(Personal Digital Assistant)やノートブックパソコンといった携帯可能な端末装置を用いることとしてもよい。
【実施例1】
【0015】
図1は、実施例1に係る計測システムの概要を示す図である。同図に示すように、実施例1に係る測位システム1は、GPS(Global Positioning System)測位機能(以下、「車載側GPS機能」と記載する)を備えた車載装置10と、GPS測位機能(以下、「携帯側GPS機能」と記載する)を備えた携帯端末装置20とから構成される。
【0016】
ここで、車載側GPS機能は、衛星電波のうちS/N比が高い部分のみを使用するフィルタ構成を備えているのに対し、携帯側GPS機能は、S/N比が低い部分をも使用するフィルタ構成を備えている。このため、車載側GPS機能は、携帯側GPS機能に比べて感度が低いが、フィルタ構成が単純であるので高速な情報処理が可能であり、測位周期を短くできるので高速移動時の測位に適している。一方、携帯側GPS機能は、車載側GPS機能に比べて感度が高いが、フィルタ構成が複雑であるので測位周期が長くなくなるため、低速移動時の測位に適している。
【0017】
また、携帯側GPS機能は室内における使用を前提としているため、上記したように感度が高く、ネットワーク経由でサーバー装置からGPS測位のための補助情報を受信してGPS測位に用いるアシストGPS(AGPS)に対応しているため、車内のような遮蔽環境にあっても高精度な測位が可能である。
【0018】
ところで、各GPS機能は、複数のGPS衛星から衛星電波を受けることで測位処理を行うが、この際に、各GPS衛星の位置関係からGPS測位の精度劣化の指標となる数値であるDOP(Dilution Of Precision)値を取得することができる。したがって、このDOP値を測位精度として用いることが可能である。なお、以下では、車載装置10における測位精度を「車載側測位精度」と、携帯端末装置20における測位精度を「携帯側測位精度」と、それぞれ記載する。また、車載装置10が算出した測位座標を「車載側測位座標」と、携帯端末装置20が算出した測位座標を「携帯側測位座標」と、それぞれ記載する。
【0019】
実施例1に係る計測システム1では、各GPS機能の測位精度に基づき、車載側測位座標および携帯側測位座標から車両位置を算出することとした。具体的には、車載装置10は、車載側測位座標および車載側測位精度を含む車載側測位データを携帯端末装置20へ送信する(図1の(1)参照)。一方、携帯端末装置20は、携帯側測位座標および携帯側測位精度を含む携帯側測位データおよび受信した車載側測位データを用いて双方の測位座標を補正する(図1の(2)参照)。そして、最終的な車両位置を算出したうえで、算出した補正済座標を車載装置10へ送信し(図1の(3)参照)、車載装置10では、この補正済座標を用いて車両位置を含んだ画面表示を行う(図1の(4)参照)。
【0020】
このように、実施例1に係る計測システム1では、各GPS機能の測位精度に基づき、車載側測位座標および携帯側測位座標から車両位置を算出することとしたので、車載側測位座標および携帯側測位座標の双方に含まれる測位誤差を相互に補正することができ、測位精度を向上させることが可能となる。また、電波がビル等に反射することによって測位誤差を生じさせるマルチパスの問題を低減することができる。
【0021】
なお、計測システム1は、各測位座標の誤差を方位や地域に対応させて記録しておき車両位置の補正に用いるが、この点については後述することとする。また、本実施例1では、アシストGPSに対応した携帯端末装置20を用いる場合について説明するが、アシストGPSに対応しない携帯端末装置20を用いることとしてもよい。
【0022】
次に、図1に示した車載装置10および携帯端末装置20の構成について図2を用いて説明する。図2は、実施例1に係る車載装置10および携帯端末装置20の構成を示すブロック図である。なお、図2においては、本実施例1に係る測位システム1の特徴を説明するために必要な構成要素のみを示している。
【0023】
図2に示すように、車載装置10は、GPSアンテナ11と、ディスプレイ12と、通信部13と、制御部14とを備えている。また、制御部14は、GPS受信部14aと、表示処理部14bとをさらに備えている。GPSアンテナ11は、GPS衛星からの電波を受信するためのアンテナであり、受信した信号をGPS受信部14aへ渡す。ディスプレイ12は、タッチパネルディスプレイ装置等の表示装置であり、表示処理部14bから出力される表示データを表示する。
【0024】
通信部13は、携帯端末装置20との無線通信を行う処理部である。この通信部13は、たとえば、Bluetooth(登録商標)の通信規格に基づき、携帯端末装置20との間で双方向のデータ送受信を行う。なお、本実施例1においては、車載装置10/携帯端末装置20間の通信を無線通信によって行う場合を示しているが、有線通信によって通信することとしてもよい。
【0025】
制御部14は、車載装置10で取得した車載側測位座標および車載側測位精度を含む車載側測位データを通信部13経由で携帯端末装置20へ送信するとともに、携帯端末装置20から受信した補正済座標(車両位置)をディスプレイ12に対して表示する処理を行う処理部である。
【0026】
GPS受信部14aは、GPSアンテナ11からの信号に基づいて車載側測位座標および車載側測位精度等を取得し、取得した携帯側測位座標および車載側測位精度等を含む車載側測位データを通信部13へ出力する処理を行う処理部である。なお、本実施例1では、車載側測位精度としてDOP値を用いる場合について説明するが、DOP値のかわりに捕捉したGPS衛星の個数を用いることとしてもよい。また、車載側測位データには測位時間を含めることとしてもよい。
【0027】
表示処理部14bは、携帯端末装置20から受信した補正済座標を車両位置とし、車両位置に対応するアイコンを地図情報等と合成してディスプレイ12へ表示する処理を行う処理部である。
【0028】
携帯端末装置20は、GPSアンテナ21と、通話用アンテナ22と、通信部23と、制御部24と、記憶部25とを備えている。また、制御部24は、GPS受信部24aと、補助情報受信部24bと、誤差補正部24cとをさらに備えており、記憶部25は、系統誤差情報25aおよびマップ情報25bを記憶する。
【0029】
GPSアンテナ21は、GPS衛星からの電波を受信するためのアンテナであり、受信した信号をGPS受信部24aへ渡す。通話用アンテナ22は、電話やデータ通信時に基地局との通信に用いられるアンテナであり、受信した信号のうちGPS測位のための補助情報を補助情報受信部24bへ渡す。
【0030】
通信部23は、車載装置10との無線通信を行う処理部であり、たとえば、Bluetooth(登録商標)の通信規格に基づき、車載装置10との間で双方向のデータ送受信を行う。なお、本実施例1においては、車載装置10/携帯端末装置20間の通信を無線通信によって行う場合を示しているが、有線通信によって通信することとしてもよい。
【0031】
制御部24は、GPSアンテナ21および通話用アンテナ22経由で取得した携帯側測位座標および携帯側測位精度を含む携帯側測位データと、車載装置10から受け取った車載側測位データとを用いて測位座標の誤差を補正するとともに、補正済座標を車載装置10に対して送信する処理を行う処理部である。
【0032】
GPS受信部24aは、GPSアンテナ21からの信号に基づいて携帯側測位座標および車載側測位精度等を取得し、取得した携帯側測位座標および携帯側測位精度等を含む携帯側測位データを誤差補正部24cへ出力する処理を行う処理部である。なお、本実施例1では、携帯側測位精度としてDOP値を用いる場合について説明するが、DOP値のかわりに、捕捉したGPS衛星の個数を用いることとしてもよい。また、携帯側測位データには測位時間が含まれるものとする。
【0033】
補助情報受信部24bは、通話用アンテナ22からの信号に基づいてアシストGPS用の補助情報を受信し、受信した補助情報を誤差補正部へ出力する処理を行う処理部である。ここで、補助情報としては、利用可能なGPS衛星の概略的な軌道周回情報や、現在位置を担当するGPS衛星の詳細な軌道周回情報等がある。
【0034】
誤差補正部24cは、GPS受信部24aおよび補助情報受信部24bからの出力により求めた携帯側測位データと、通信部23経由で受け取った車載側測位データとを比較し、相互に誤差補正を行うことで各測位データに含まれる誤差を補正する処理を行う処理部である。また、この誤差補正部24cは、マップ情報25bを用いたマップマッチング処理を行うことで、方位ごとや地域ごとに一定の傾向をもった誤差を指す系統誤差を系統誤差情報25aとして蓄積し、蓄積した系統誤差情報25aを用いて各測位データを補正する処理を行う処理部でもある。
【0035】
ここで、マップマッチング処理とは、たとえば、マップ情報25bに含まれる道路の配置情報に基づき、算出した現在位置が道路上にない場合に、進行方向等を勘案して走行中の道路を推定し、推定した道路上に現在位置を補正する処理のことを指す。
【0036】
また、方位ごとの系統誤差としては、たとえば、装置の個体差に起因するものがあり、GPS測位について特定の方位に測位誤差が多い傾向がみられる場合がある。また、地域ごとの系統誤差としては、マップ情報25bが用いる地図が準拠する地球楕円体と、GPS測位が準拠する地球楕円体とが異なることに起因するものがある。たとえば、日本の地図が準拠するのは「TOKYO測地系」であるので、東京から遠い場所ほど測位誤差が大きくなる傾向がある。
【0037】
記憶部25は、HDD(Hard Disk Drive)やRAM(Random Access Memory)といった記憶デバイスから構成される記憶部であり、系統誤差情報25aおよびマップ情報25bを記憶する。系統誤差情報25aは、車載側測位座標および携帯側測位座標について方位ごとまたは地域ごとの系統誤差を蓄積した情報である。また、この系統誤差情報25aは、誤差補正部24cが所定の方位または所定の地域において各測位座標を補正する際に用いられる。マップ情報25bは、道路や建物についての配置情報であり、誤差補正部24cがマップマッチング処理を行う際に用いられる。
【0038】
次に、実施例1に係る測位システム1が行う処理手順の概要について図3を用いて説明する。図3は、実施例1に係る測位システムが行う処理手順の概要を示すフローチャートである。なお、同図においては、車載装置10の通信部13/携帯端末装置20の通信部3間で接続が確立された後の処理手順を示している。
【0039】
同図に示すように、携帯端末装置20が、車載側測位データを要求すると(ステップS101)、車載装置10は、車載側測位データを携帯端末装置20に対して送信する(ステップS102)。つづいて、携帯端末装置20は、車載側測位データに含まれる車載側測位精度に基づいて車載側が測位状態であるか否かを判定する(ステップS103)。そして、車載側が測位状態である場合には(ステップS103,Yes)、携帯側測位データに含まれる携帯側測位精度に基づいて携帯側が測位状態であるか否かを判定する(ステップS104)。
【0040】
そして、携帯側が測位状態である場合には(ステップS104,Yes)、車載側測位データに含まれる車載側測位座標と携帯側測位データに含まれる携帯側測位座標との平均を算出座標とする(ステップS105)。ここで、ステップS105における平均処理のバリエーションについて説明しておく。
【0041】
かかる平均処理は、単純平均および加重平均のいずれかを選択することができる。単純平均が選択された場合には、車載側測位座標と携帯側測位座標との和を2で除することによって平均を求める。一方、加重平均が選択された場合には、各測位精度を用いた重み付けによって平均を求める。
【0042】
具体的には、各測位精度としてDOP値を用いた場合、このDOP値は1以上の値をとり、DOP値が1であるときに精度が最良となる。このため、DOP値から1を引いた値を「ΔD」と表わすとともに、各測位座標を「P」とし、車載側の「ΔD」および「P」を「ΔDc」および「Pc」と、携帯側の「ΔD」および「P」を「ΔDp」および「Pp」とすると、求められる加重平均値は、式「加重平均値=Pc×(ΔDp/(ΔDc+ΔDp))+Pp×(ΔDc/(ΔDc+ΔDp))」で表わされる。
【0043】
フローチャートの説明に戻り、ステップS104において携帯側が測位状態ではない場合には(ステップS104,No)、車載側測位座標を算出座標とする(ステップS106)。また、ステップS103において車載側が測位状態ではない場合には(ステップS103,No)、携帯側が測位状態であるか否かが判定され(ステップS107)、携帯側が測位状態である場合には(ステップS107,Yes)、携帯側測位座標を算出座標とする(ステップS108)。そして、ステップS105、ステップS106およびステップS108において算出された算出座標を出力し(ステップS109)、ステップS101以降の処理を繰り返す。
【0044】
なお、ステップS107の判定条件を満たさなかった場合は(ステップS107,No)、車載側および携帯側双方が測位状態ではない場合であるので、ステップS109の処理を行うことなくステップS101以降の処理を繰り返すことになる。
【0045】
次に、携帯端末装置20の誤差補正部24cが系統誤差情報25aを蓄積する処理手順について図4および図5を用いて説明する。図4は、方位に係る系統誤差情報25aの蓄積処理手順を示すフローチャートであり、図5は、地域(エリア)に係る系統誤差情報25aの蓄積処理手順を示すフローチャートである。なお、図4および図5では、図3におけるステップS109で出力された算出座標を入力データとして系統誤差を蓄積する手順について示している。
【0046】
まず、方位に係る系統誤差情報の蓄積処理手順について説明する。図4に示すように、算出座標が入力されると(ステップS201)、マップ情報25bを用いたマップマッチングによって真の移動方位を推定する(ステップS202)。そして、車両側測位座標および携帯側測位座標から求められる方位と真の移動方位との差分を算出し(ステップS203)、方位と関連付けて系統誤差情報25aに追加する(ステップS204)。また、真の移動方位との差分について各測位精度に基づく重み付け処理を行ったうえで(ステップS205)、方位と関連付けて系統誤差情報25aに追加し(ステップS206)、処理を終了する。
【0047】
次に、地域(エリア)に係る系統誤差情報の蓄積処理手順について説明する。図5に示すように、算出座標が入力されると(ステップS301)、マップ情報25bを用いたマップマッチングによって真の座標を推定する(ステップS302)。そして、車両側測位座標および携帯側測位座標と真の座標との差分を算出し(ステップS303)、エリアと関連付けて系統誤差情報25aに追加する(ステップS304)。また、真の座標との差分について各測位精度に基づく重み付け処理を行ったうえで(ステップS305)、エリアと関連付けて系統誤差情報25aに追加し(ステップS306)、処理を終了する。
【0048】
次に、携帯端末装置20の誤差補正部24cが系統誤差情報25aを利用する手順について図6を用いて説明する。図6は、系統誤差情報25aの利用処理手順を示すフローチャートである。なお、同図においては、車載装置10が行う処理が図3と同様であるので、携帯端末装置20が行う処理手順のみを示している。
【0049】
同図に示すように、携帯端末装置20が車載側測位データを要求し(ステップS401)、車載装置10から車載側測位データを受け取ると、車載側測位データに含まれる車載側測位精度に基づいて車載側が測位状態であるか否かを判定する(ステップS402)。そして、車載側が測位状態である場合には(ステップS402,Yes)、携帯側測位データに含まれる携帯側測位精度に基づいて携帯側が測位状態であるか否かを判定する(ステップS403)。なお、ステップS402およびステップS403における測位状態であるか否かの判定処理は、図3の場合と同様に、それぞれ、車載側測位精度および携帯側測位精度に基づいて行われる。
【0050】
そして、携帯側が測位状態である場合には(ステップS403,Yes)、車載側測位データに含まれる車載側測位座標と携帯側測位データに含まれる携帯側測位座標との平均を算出座標とする(ステップS404)。ここで、ステップS404における平均処理については、図3と同様に、単純平均および加重平均のいずれかを選択することができる。
【0051】
そして、ステップS403において携帯側が測位状態ではない場合には(ステップS403,No)、車載側測位座標を算出座標とする(ステップS405)。また、ステップS402において車載側が測位状態ではない場合には(ステップS402,No)、携帯側が測位状態であるか否かが判定され(ステップS406)、携帯側が測位状態である場合には(ステップS406,Yes)、携帯側測位座標を算出座標とする(ステップS407)。そして、ステップS404、ステップS405およびステップS407において算出された算出座標について、系統誤差情報25aに基づく補正を行ったうえで(ステップS408)、補正後の算出座標を出力し(ステップS409)、ステップS401以降の処理を繰り返す。
【0052】
なお、ステップS406の判定条件を満たさなかった場合は(ステップS406,No)、車載側および携帯側双方が測位状態ではない場合であるので、ステップS409の処理を行うことなくステップS401以降の処理を繰り返すことになる。
【0053】
上述してきたように、本実施例1によれば、車載装置が、測位した座標を表す車載側測位座標および測位に係る精度を表す車載側測位精度を取得し、取得した車載側測位座標および車載側測位精度を携帯端末装置へ送信し、携帯端末装置は、測位した座標を表す携帯側測位座標および測位に係る精度を表す携帯側測位精度を取得し、車載側測位精度および携帯側測位精度に基づき、車載側測位座標および携帯側測位座標から車両位置を算出することとしたので、測位精度の高低に応じて車載側測位座標および携帯側測位座標から車両位置を算出することによって、車載用GPS測位機能および携帯用GPS測位機能を相互に補完しあい、車両の走行時における測位精度を向上させることができる。
【0054】
また、方位または地域(エリア)についての系統誤差情報を蓄積し、蓄積した系統誤差情報を用いて各測位座標を補正することとしたので、所定の方位や所定の地域について一定の傾向をもった誤差を効率的に補正することができる。なお、本実施例1では、携帯端末装置側で誤差補正処理を行うこととしたが、携帯端末装置が携帯側測位データを車載装置へ送信し、車載装置側で誤差補正処理を行うように測位システムを構成することとしてもよい。
【0055】
ところで、上述した実施例1では、携帯端末装置が系統誤差情報を保持する場合について説明したが、車載装置にも系統誤差情報を保持させることとしてもよい。そこで、以下に示す実施例2では、車載装置にも系統誤差情報を保持させる場合について説明することとする。
【実施例2】
【0056】
図7は、実施例2に係る車載装置10aおよび携帯端末装置20の構成を示すブロック図である。なお、実施例2に係る携帯端末装置20は、誤差補正部24cが行う処理が実施例1とは若干異なるものの、基本的な動作は同一であるために、実施例1と同一の符号を付している。また、車載装置10aについては、実施例1に係る車載装置10と異なる構成要素には、新たに符号を付し、同一の構成要素については実施例1と同一の符号を付している。また、以下では、実施例1と共通する説明については、省略するか簡単な説明にとどめることとする。
【0057】
車載装置10aは、記憶部15をさらに備えており、系統誤差情報15aを記憶する。記憶部15は、HDD(Hard Disk Drive)やRAM(Random Access Memory)といった記憶デバイスから構成される記憶部である。また、系統誤差情報15aは、車載側測位座標に関する系統誤差を蓄積した情報であり、携帯端末装置20の誤差補正部24cから提供される。一方、携帯端末装置20における系統誤差情報25aは、実施例1と同様に、車載側測位座標および携帯側測位座標に関する系統誤差を蓄積した情報である。
【0058】
そして、制御部14に設けられた誤差補正部14cは、系統誤差情報15aに基づき、GPS受信部14aから受け取った車載側測位座標を補正したうえで、補正後の車載側測位座標を車載側測位精度とともに通信部13経由で携帯端末装置20へ送信する。このように、車載装置10a側に系統誤差情報15aを保持させることで、車載装置10は、系統誤差を補正した車載側測位座標を携帯端末装置20に対して提供することが可能となる。
【0059】
なお、本実施例2では、携帯端末装置20における系統誤差情報25aは、実施例1と同様に、車載側測位座標および携帯側測位座標に関する系統誤差を蓄積した情報としたが、携帯側測位座標に関する系統誤差のみを蓄積した情報としてもよい。このようにすることで、車載装置10に関する系統誤差は車載装置10側で、携帯端末装置20に関する系統誤差は携帯端末装置20側で、それぞれ管理することができるので、車載装置10と携帯端末装置20との組み合わせの変更にも容易に対応することができる。
【0060】
次に、本実施例2に係る測位システムが行う処理手順の概要について図8を用いて説明する。図8は、実施例2に係る測位システムが行う処理手順の概要を示すフローチャートである。
【0061】
同図に示すように、携帯端末装置20が、車載側測位データを要求すると(ステップS501)、車載装置10aは、車載側測位データを携帯端末装置20に対して送信する(ステップS502)。つづいて、携帯端末装置20は、携帯側測位データに含まれる携帯側測位精度に基づいて携帯側が測位状態であるか否かを判定する(ステップS503)。
【0062】
そして、携帯側が測位状態である場合には(ステップS503,Yes)、車載側測位データに含まれる車載側測位座標と携帯側測位データに含まれる携帯側測位座標との平均を算出座標とする(ステップS504)。ここで、ステップS504における平均処理については、図3と同様に、単純平均および加重平均のいずれかを選択することができる。
【0063】
一方、ステップS503において携帯側が測位状態ではない場合には(ステップS503,No)、車載側測位座標を算出座標とする(ステップS505)。そして、算出座標をマップマッチング処理へ出力し(ステップS506)、マップマッチングによって真の座標を推定する(ステップS507)。つづいて、両測位座標について真の座標との差分を算出し(ステップS508)、系統誤差情報25aへ蓄積する。そして、車載側測位座標と真の座標との差分を車載装置10aへ送信し(ステップS509)、ステップS501以降の処理を繰り返す。
【0064】
また、車載側測位座標と真の座標との差分を受信した車載装置10aは、かかる誤差情報を系統誤差情報15aへ蓄積する処理を行い(ステップS510)、車載側測位データを系統誤差情報15aに基づいて補正し(ステップS511)、ステップS502以降の処理を繰り返す。
【0065】
このように、本実施例2によれば、車載装置側にも系統誤差情報を保持させることで、車載装置は、系統誤差を補正した車載側測位座標を携帯端末装置に対して提供することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上のように、本発明に係る測位システムおよび車載装置は、測位精度の向上に有用であり、特に、車両走行時における測位精度を向上させたい場合に適している。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】実施例1に係る測位システムの概要を示す図である。
【図2】実施例1に係る車載装置および携帯端末装置の構成を示すブロック図である。
【図3】実施例1に係る測位システムが行う処理手順の概要を示すフローチャートである。
【図4】方位に係る系統誤差情報の蓄積処理手順を示すフローチャートである。
【図5】エリアに係る系統誤差情報の蓄積処理手順を示すフローチャートである。
【図6】系統誤差情報の利用処理手順を示すフローチャートである。
【図7】実施例2に係る車載装置および携帯端末装置の構成を示すブロック図である。
【図8】実施例2に係る測位システムが行う処理手順の概要を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1 測位システム
10、10a 車載装置
11 GPSアンテナ
12 ディスプレイ
13 通信部
14 制御部
14a GPS受信部
14b 表示処理部
15 記憶部
15a 系統誤差情報
20、20a 携帯端末装置
21 GPSアンテナ
22 通話用アンテナ
23 通信部
24 制御部
24a GPS受信部
24b 補助情報受信部
24c 誤差補正部
25 記憶部
25a 系統誤差情報
25b マップ情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載された車載装置と携帯端末装置とで車両位置を測位する測位システムであって、
前記車載装置は、
測位した座標を表す車載側測位座標および当該測位に係る精度を表す車載側測位精度を取得する車載側測位手段と、
前記車載側測位手段が取得した前記車載側測位座標および前記車載側測位精度を前記携帯端末装置へ送信する送信手段と
を備え、
前記携帯端末装置は、
測位した座標を表す携帯側測位座標および当該測位に係る精度を表す携帯側測位精度を取得する携帯側測位手段と、
前記車載側測位精度および前記携帯側測位精度に基づき、前記車載側測位座標および前記携帯側測位座標から前記車両位置を算出する車両位置算出手段と
を備えたことを特徴とする測位システム。
【請求項2】
前記携帯端末装置の前記車両位置算出手段は、
前記車載側測位座標および前記携帯側測位座標の加重平均をとることによって前記車両位置を算出することを特徴とする請求項1に記載の測位システム。
【請求項3】
前記携帯端末装置は、
道路の配置情報を表すマップ情報に基づいて前記車両位置算出手段が算出した前記車両位置を補正する補正手段をさらに備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の測位システム。
【請求項4】
前記携帯端末装置は、
前記補正手段が補正した前記車両位置と前記車載側測位座標との誤差および前記補正手段が補正した前記車両位置と前記携帯側測位座標との誤差を前記車両の進行方向または前記車両が走行する地域と関連付けることによって方位ごとまたは地域ごとの誤差傾向を表す系統誤差を算出して記憶部へ蓄積させる系統誤差蓄積手段をさらに備え、
前記車両位置算出手段は、
前記車載側測位座標および前記携帯側測位座標を前記系統誤差に基づいて補正したうえで前記車両位置を算出することを特徴とする請求項3に記載の測位システム。
【請求項5】
前記携帯端末装置の方位誤差傾向蓄積手段は、
前記車載側測位精度および前記携帯側測位精度に基づいて前記系統誤差を算出することを特徴とする請求項4に記載の測位システム。
【請求項6】
前記携帯端末装置は、
前記車載側測位座標に係る前記系統誤差を前記車載装置へ送信する系統誤差送信手段をさらに備え、
前記車載装置は、
前記携帯端末装置から受け取った前記系統誤差を記憶部へ蓄積させる車載側系統誤差蓄積手段をさらに備え、
前記車載装置の送信手段は、
前記車載側系統誤差蓄積手段に蓄積された前記系統誤差に基づいて補正した前記車載側測位座標を前記携帯端末装置へ送信することを特徴とする請求項4に記載の測位システム。
【請求項7】
携帯端末装置と連携して車両位置を測位する車載装置であって、
測位した座標を表す車載側測位座標および当該測位に係る精度を表す車載側測位精度を取得する車載側測位手段と、
前記携帯端末装置が測位した座標を表す携帯側測位座標および当該測位に係る精度を表す携帯側測位精度を受信する受信手段と、
前記車載側測位精度および前記携帯側測位精度に基づき、前記車載側測位座標および前記携帯側測位座標から前記車両位置を算出する車両位置算出手段と
を備えたことを特徴とする車載装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−121885(P2009−121885A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294462(P2007−294462)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】