説明

画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジ

【課題】クリーニングブレードからすり抜けるトナーによる帯電ローラの汚染を抑制し、汚染が原因の画像欠陥を生じさせない画像形成装置を提供する。
【解決手段】電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層と、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を光エネルギー照射手段で硬化した架橋層を有し、トナーは体積平均粒径1〜5μm、平均円形度0.95〜0.98であり、トナーの外添剤は、一次平均粒径10〜20nm、100〜200nmの外添剤の量をそれぞれX重量%、Y重量%とすると下記式(I)を満たし、クリーニング手段は、硬度が70〜80°で、25℃での反発弾性が10〜35%であるポリウレタンゴム板からなるクリーニングブレードを有する画像形成装置。
1<3X/5+Y<3 …(I)
ただし、X<Y、0<X≦1、1≦Y

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジに関し、特にクリーニングブレードからすり抜けたトナーによる帯電ローラの汚染を抑制し、汚染が原因の画像欠陥を生じさせない画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像形成装置の小型化から感光体の小径化が進み、機械の高速化やメンテナンスフリーの動きも加わり感光体の高耐久化が切望されるようになってきた。有機感光体は、表面層が低分子電荷輸送材料と不活性高分子を主成分としているため一般に柔らかく、電子写真プロセスにおいて繰り返し使用された場合、現像システムやクリーニングシステムによる機械的な負荷により摩耗が発生しやすいという欠点を有している。
【0003】
加えて高画質化の要求からトナー粒子の小粒径化に伴いクリーニング性を上げる目的でクリーニングブレードのゴム硬度の上昇と当接圧力の上昇が余儀なくされ、このことも感光体の摩耗を促進する要因となっている。この様な感光体の摩耗は、感度の劣化、帯電性の低下などの電気的特性を劣化させ、画像濃度低下、地肌汚れ等の異常画像の原因となる。また摩耗が局所的に発生した傷は、クリーニング不良によるスジ状汚れ画像をもたらす。現状では感光体の寿命はこの摩耗や傷が律速となり、交換に至っている。
【0004】
ところで、感光体を帯電する一手段として、芯金上に弾性状の導電性部材で被覆された帯電部材(例えば帯電ローラ)を感光体に接触させ、該帯電部材に駆動電圧を印加して行う接触帯電方式が採用されている(特許文献1、特許文献2参照)。
【0005】
しかし、接触帯電方式では感光体に帯電部材を接触しながら帯電するため、帯電部材にクリーニングブレードをすり抜けたトナーや外添剤、埃などが付着する帯電ローラ汚れにより画像が不均一に成ることや、感光体に付着した付着物により感光層が偏摩耗し、感光体寿命が短くなるなどの問題がある。
【0006】
この帯電ローラ汚れに関しては、DC帯電方式に比べAC帯電方式の方が余裕度は大きいため、経時の画像安定性を考慮するとAC帯電方式を選択するのが好ましい。しかし、AC帯電方式の選択により帯電ローラ汚れが低減するとは言っても、感光体に帯電部材が接触しているため、その余裕度は要求寿命を満足するレベルにまでは達していない。
【0007】
そこで、上記問題点を回避し、感光体を均一に帯電させ、オゾンの発生等も少なく、さらに感光体上の残留トナーによる汚染も少ない帯電装置として、特許文献3や特許文献4のように、帯電部材の両端にスペーサを設けて像担持体と近接非接触配置している帯電装置を有する画像形成装置が知られている。
【0008】
近接非接触配置とは感光体との間に微小な間隙が存在する状態を言い、間隙の具体的な範囲としては10μm〜100μmが好ましく、20μm〜50μmがさらに好ましい。こうすることで、帯電ローラ汚れを低減することは可能であるが、画像欠陥が生じない高品質な画像を得るためには十分であるとは言えない。
【0009】
そこで、特許文献5のように、近接非接触配置している感光体と帯電ローラにおいて、トナーに添加される外添剤について規定することにより、帯電ローラの汚染がなく、汚染が原因の画像欠陥が生じない画像形成装置が知られている。
【特許文献1】特開昭63−149668号公報
【特許文献2】特開平1−267667号公報
【特許文献3】特開2001−194868号公報
【特許文献4】特開2002−55508号公報
【特許文献5】特開2006−154387号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上記に述べた各技術では高耐久化は実現できているが、感光体表層が硬く削れにくい分逆にクリーニングブレードの摩耗余裕度が従来の感光体に比べて若干劣るといった相反作用が問題となっている。特に更なる高画質化の実現のために、従来に比べてより小粒径なトナーを対象としているため、このブレード摩耗余裕度低下によるクリーニング不良がより顕著に現れやすい状況にある。
【0011】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、従来に比べて表面層がより硬度な感光体を用い、しかも従来に比べてより小粒径なトナーを用いても、クリーニングブレードからすり抜けたトナーによる帯電ローラの汚染が抑制され、汚染が原因の画像欠陥が生じない画像形成装置、画像形成方法、プロセスカートリッジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するために下記の構成よりなる。
(1)電子写真感光体と、電子写真感光体に均一に帯電を施す帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を書き込む露光手段と、静電潜像をトナーにより可視像化する現像手段と、前記可視像化された可視像を記録材に転写する転写手段と、記録材上の可視像を定着させる定着手段と、前記感光体表面の転写残トナーをクリーニングするクリーニング手段と、を少なくとも有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有し、該感光層の表面に少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を光エネルギー照射手段で硬化した架橋表面層を有しており、
前記現像手段で使用されるトナーは、体積平均粒径が1〜5μmで、平均円形度が0.95〜0.98であり、
前記トナー表面に添加される外添剤は、一次平均粒径10〜20nmである外添剤の量をX重量%、一次平均粒径100〜200nmである外添剤の量をY重量%とすると、下記式(I)の関係を満たし、
前記クリーニング手段は、硬度が70〜80°で、25℃での反発弾性が10〜35%であるポリウレタンゴム板からなるクリーニングブレードを有することを特徴とする画像形成装置。
1<3X/5+Y<3 …(I)
(ただし上記式(I)中、XおよびYは、 X<Y、0<X≦1、1≦Y である。)
【0013】
(2)前記電子写真感光体は、前記感光層と架橋表面層との間に接着層を有し、少なくとも感光層、接着層及び架橋表面層を順次積層した層構成であることを特徴とする前記(1)に記載の画像形成装置。
【0014】
(3)前記トナーは、少なくとも、活性水素基を有する化合物と反応可能な部位を有する重合体、ポリエステル、着色剤、離型剤とを有機溶媒中に溶解又は分散させたトナー材料液を、水系媒体中で架橋反応又は伸長反応の少なくとも1つの反応をさせて得られることを特徴とする前記(1)または(2)に記載の画像形成装置。
(4)前記トナーは、カラートナーであることを特徴とする前記(1)から(3)のいずれかに記載の画像形成装置。
【0015】
(5)前記現像手段で使用される現像剤は、前記トナーと、磁性キャリアと、からなる二成分現像剤であることを特徴とする前記(1)から(4)のいずれか1項に記載の画像形成装置。
(6)前記現像手段で使用される現像剤は、前記トナーを用いた一成分現像剤であることを特徴とする前記(1)から(4)のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0016】
(7)前記帯電手段は、少なくとも交番電圧を重畳した直流電圧を印加することを特徴とする前記(1)から(6)のいずれか1項に記載の画像形成装置。
(8)前記帯電手段は、ローラ状で電子写真感光体に近接非接触配置された帯電部材を備えることを特徴とする前記(1)から(7)のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0017】
(9)前記画像形成装置は、複数の電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、を有するタンデム型であることを特徴とする前記(1)から(8)のいずれか1項に記載の画像形成装置。
(10)前記画像形成装置は、電子写真感光体上に現像されたトナー画像を中間転写体上に一次転写した後、前記中間転写体上のトナー画像を記録材上に二次転写する中間転写手段を有する画像形成装置であって、
複数色のトナー画像を前記中間転写体上に順次重ね合わせてカラー画像を形成し、前記カラー画像を記録材上に一括で二次転写することを特徴とする前記(1)から(9)のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【0018】
(11)前記定着手段は、磁性金属から構成されて電磁誘導により加熱される加熱ローラと、前記加熱ローラと平行に配置された定着ローラと、前記加熱ローラと前記定着ローラとに張り渡され、前記加熱ローラにより加熱されるとともにこれらのローラによって回転される無端帯状のトナー加熱媒体と、前記トナー加熱媒体を介して前記定着ローラに圧接されるとともに、前記トナー加熱媒体に対して順方向に回転して定着ニップ部を形成する加圧ローラとを有することを特徴とする前記(1)から(10)のいずれか1項に記載の画像形成装置。
(12)前記(1)から(11)のいずれか1項に記載の画像形成装置を用いた画像形成方法。
(13)電子写真感光体と、少なくとも静電潜像をトナーにより可視像化する現像手段及び電子写真感光体表面の転写残トナーをクリーニングするクリーニング手段とを一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在に設けられた画像形成装置用プロセスカートリッジであって、
前記電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有し、該感光層の表面に少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を光エネルギー照射手段で硬化した架橋表面層を有しており、
前記現像手段で使用されるトナーは、体積平均粒径が1〜5μmで、平均円形度が0.95〜0.98であり、
前記トナー表面に添加される外添剤は、一次平均粒径10〜20nmである外添剤の量をX重量%、一次平均粒径100〜200nmである外添剤の量をY重量%とすると、下記式(I)の関係を満たし、
前記クリーニング手段は、硬度が70〜80°で、25℃での反発弾性が10〜35%であるポリウレタンゴム板からなるクリーニングブレードを有することを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
1<3X/5+Y<3 …(I)
(ただし上記式(I)中、XおよびYは、 X<Y、0<X≦1、1≦Y である。)
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、従来より表面層が硬度な感光体を用い、かつ、従来より小粒径なトナーを用いても、クリーニングブレードからすり抜けるトナーによる帯電ローラの汚染を抑制し、汚染が原因の画像欠陥を生じさせない画像形成装置を提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の画像形成装置、方法およびプロセスカートリッジについて、実施形態により詳細に説明する。なお、以下に述べる各実施形態は、本発明の好適な実施形態であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0021】
本発明の実施形態に係る画像形成装置で使用される感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有する電子写真感光体において、該感光体の表面に少なくとも電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を光エネルギー照射手段で硬化した架橋表面層を有することで、耐摩耗性及び耐傷性が高く、クリーニング特性に優れ、かつ長期間にわたり高画質化を実現することができる。
【0022】
この理由としては以下の要因が考えられる。
本発明の架橋表面層に、3官能以上のラジカル重合性モノマーを用いており、これにより3次元の網目構造が発達し、架橋度が非常に高い高硬度架橋表面層が得られ、高い耐摩耗性が達成される。これに対し、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーのみを用いた場合は、架橋表面層中の架橋結合が希薄となり飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。架橋表面層に高分子材料が含有されている場合、3次元網目構造の発達が阻害され架橋度の低下が起こり、本発明に比べ充分な耐摩耗性が得られない。更に、含有される高分子材料とラジカル重合性組成物(ラジカル重合性モノマーや電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物)の反応より生じた硬化物との相溶性が悪く、相分離から局部的な摩耗が生じ、表面の傷となって現れる。
また本発明の架橋表面層は、上記3官能性ラジカル重合性モノマーに加え、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を含有しており、これが上記3官能以上のラジカル重合性モノマー硬化時に架橋結合中に取り込まれる。これに対し、官能基を有しない低分子電荷輸送物質を架橋表面層中に含有させた場合、その相溶性の低さから低分子電荷輸送物質の析出や白濁現象が起こり、架橋表面層の機械的強度も低下する。
【0023】
以下、本発明で用いられる架橋表面層塗布液の構成材料について説明する。本発明で用いられる電荷輸送性を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しておらず、且つラジカル重合性官能基を3個以上有するモノマーを指す。このラジカル重合性官能基としては、炭素−炭素2重結合を有し、ラジカル重合可能な基であれば何れでもよい。
【0024】
これらラジカル重合性官能基としては、例えば、下記に示す1−置換エチレン官能基、1,1−置換エチレン官能基が挙げられる。
(1)1−置換エチレン官能基としては、例えば下記式(i)で表わされる官能基が挙げられる。
CH2=CH−X2− ・・・(i)
【0025】
ただし、式(i)中、X2は、置換基を有していてもよいフェニレン基、ナフチレン基等のアリーレン基、置換基を有していてもよいアルケニレン基、−CO−基、−COO−基、−CON(R36)−基(R36は、水素、メチル基、エチル基等のアルキル基、ベンジル基、ナフチルメチル基、フェネチル基等のアラルキル基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基を表す。)、または−S−基を表わす。
【0026】
これらの置換基を具体的に例示すると、ビニル基、スチリル基、2−メチル−1,3−ブタジエニル基、ビニルカルボニル基、アクリロイルオキシ基、アクリロイルアミド基、ビニルチオエーテル基等が挙げられる。
【0027】
(2)1,1−置換エチレン官能基としては、例えば下記式(ii)で表わされる官能基が挙げられる。
CH2=C(Y4)−X3− ・・・(ii)
(ただし、式中、Y4は、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、メトキシ基あるいはエトキシ基等のアルコキシ基、−COOR37基(R37は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル、フェネチル基等のアラルキル基、置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基、または−CONR3839(R38およびR39は、水素原子、置換基を有していてもよいメチル基、エチル基等のアルキル基、置換基を有していてもよいベンジル基、ナフチルメチル基、あるいはフェネチル基等のアラルキル基、または置換基を有していてもよいフェニル基、ナフチル基等のアリール基を表わし、互いに同一または異なっていてもよい。)、また、X3は上記式(i)のX2と同一の置換基及び単結合、アルキレン基を表わす。ただし、Y4,X3の少なくとも何れか一方がオキシカルボニル基、シアノ基、アルケニレン基、及び芳香族環である。)
【0028】
これらの置換基を具体的に例示すると、α−塩化アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、α−シアノエチレン基、α−シアノアクリロイルオキシ基、α−シアノフェニレン基、メタクリロイルアミノ基等が挙げられる。
【0029】
なお、これらX2,X3、Y4についての置換基にさらに置換される置換基としては、例えばハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等が挙げられる。
【0030】
これらのラジカル重合性官能基の中では、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用であり、3個以上のアクリロイルオキシ基を有する化合物は、例えば水酸基がその分子中に3個以上ある化合物とアクリル酸(塩)、アクリル酸ハライド、アクリル酸エステルを用い、エステル反応あるいはエステル交換反応させることにより得ることができる。また、3個以上のメタクリロイルオキシ基を有する化合物も同様にして得ることができる。また、ラジカル重合性官能基を3個以上有する単量体中のラジカル重合性官能基は、同一でも異なっても良い。
【0031】
電荷輸送性構造を有しない3官能以上の具体的なラジカル重合性モノマーとしては、以下のものが例示されるが、これらの化合物に限定されるものではない。すなわち、本発明において使用する上記ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパントリメタクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリアクリレート、HPA変性トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETTA)、グリセロールトリアクリレート、ECH変性グリセロールトリアクリレート、EO変性グリセロールトリアクリレート、PO変性グリセロールトリアクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ジメチロールプロパンテトラアクリレート(DTMPTA)、ペンタエリスリトールエトキシテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、2,2,5,5,−テトラヒドロキシメチルシクロペンタノンテトラアクリレートなどが挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用しても差し支えない。
【0032】
また、本発明に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、架橋表面層中に緻密な架橋結合を形成するために官能基割合(分子量/官能基数)が250以下が望ましい。官能基割合が250より大きい場合、架橋表面層は柔らかく、耐摩耗性が幾分低下するため、上記例示したモノマー等中、EO、PO、カプロラクトン等の変性基を有するモノマーにおいては、極端に長い変性基を有するものを単独で使用することは好ましくはない。また、表面層に用いられる電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーの成分割合は、架橋表面層全量に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。モノマー成分が20重量%未満では架橋表面層の3次元架橋結合密度が少なく、従来の熱可塑性バインダー樹脂を用いた場合に比べ飛躍的な耐摩耗性向上が達成されない。また、80重量%を超えると電荷輸送性化合物の含有量が低下し、電気的特性の劣化が生じる。使用されるプロセスによって要求される耐摩耗性や電気特性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
【0033】
本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物とは、例えばトリアリールアミン、ヒドラゾン、ピラゾリン、カルバゾールなどの正孔輸送性構造、例えば縮合多環キノン、ジフェノキノン、シアノ基やニトロ基を有する電子吸引性芳香族環などの電子輸送構造を有しており、且つラジカル重合性官能基を有する化合物を指す。このラジカル重合性官能基としては、先のラジカル重合性モノマーで示したものが挙げられ、特にアクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基が有用である。
【0034】
また、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、官能基が、2官能以上の多官能のものを使用することが出来るが、膜質及び静電特性的に、1官能であるものが好ましい。これは、2官能以上の電荷輸送性化合物を用いた場合は複数の結合で架橋構造中に固定されるが、電荷輸送性構造が非常に嵩高いため硬化樹脂中に歪みが発生し架橋表面層の内部応力が高くなり、キャリア付着等でクラックや傷の発生を引き起こしやすくなる。5μm以下の膜厚の場合、特に問題とはならないが、5μmを越える膜を形成した場合、前記架橋表面層の内部応力が非常に高くなり、架橋直後にクラックが発生しやすくなる。
また静電的特性においても、2官能以上の電荷輸送性化合物を用いた場合は複数の結合で架橋構造中に固定されるため、電荷輸送時の中間体構造(カチオンラジカル)が安定して保てず、電荷のトラップによる感度の低下、残留電位の上昇が起こしやすくなる。これらの電気的特性の劣化は、画像濃度低下、文字の細り等の画像として現れる。このようなことから、電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を用い、架橋結合間にペンダント状に固定化することにより、クラックや傷の発生、及び静電的特性の安定化しやすくなる。
また、電荷輸送性構造としてはトリアリールアミン構造が効果が高い。また官能基数が1つでもあるものが好ましく、さらには下記一般式(1)又は(2)の構造で示される化合物を用いた場合、感度、残留電位等の電気的特性が良好に持続される。
【0035】
【化1】

【0036】
上記式(1)および(2)中、R1は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基、置換基を有してもよいアリール基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、−COOR7(R7は水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基)、ハロゲン化カルボニル基若しくはCONR89(R8及びR9は水素原子、ハロゲン原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアラルキル基又は置換基を有してもよいアリール基を示し、互いに同一であっても異なっていてもよい)を表わし、Ar1、Ar2は置換もしくは未置換のアリーレン基を表わし、同一であっても異なってもよい。Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基を表わし、同一であっても異なってもよい。Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。Zは置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、アルキレンオキシカルボニル基を表わす。m、nは0〜3の整数を表わす。
【0037】
以下に、一般式(1)、(2)の具体例を示す。一般式(1)、(2)において、R1の置換基中、アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等、アリール基としては、フェニル基、ナフチル基等が、アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基が、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等がそれぞれ挙げられ、これらは、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メチル基、エチル基等のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フェノキシ基等のアリールオキシ基、フェニル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基等により置換されていても良い。R1の置換基のうち、特に好ましいものは水素原子、メチル基である。
【0038】
Ar3、Ar4は置換もしくは未置換のアリール基であり、本発明において該アリール基としては縮合多環式炭化水素基、非縮合環式炭化水素基及び複素環基が含まれる。
【0039】
縮合多環式炭化水素基としては、好ましくは環を形成する炭素数が18個以下のもの、例えば、ペンタニル基、インデニル基、ナフチル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、as−インダセニル基、s−インダセニル基、フルオレニル基、アセナフチレニル基、プレイアデニル基、アセナフテニル基、フェナレニル基、フェナントリル基、アントリル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、トリフェニレル基、ピレニル基、クリセニル基、及びナフタセニル基等が挙げられる。
【0040】
非縮合環式炭化水素基としては、ベンゼン、ジフェニルエーテル、ポリエチレンジフェニルエーテル、ジフェニルチオエーテル及びジフェニルスルホン等の単環式炭化水素化合物の1価基、あるいはビフェニル、ポリフェニル、ジフェニルアルカン、ジフェニルアルケン、ジフェニルアルキン、トリフェニルメタン、ジスチリルベンゼン、1,1−ジフェニルシクロアルカン、ポリフェニルアルカン、及びポリフェニルアルケン等の非縮合多環式炭化水素化合物の1価基、あるいは9,9−ジフェニルフルオレン等の環集合炭化水素化合物の1価基が挙げられる。
【0041】
複素環基としては、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、オキサジアゾール、及びチアジアゾール等の1価基が挙げられる。
【0042】
また、前記Ar3、Ar4で表わされるアリール基は例えば以下に示すような置換基を有してもよい。
(1)ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等。
(2)アルキル基、好ましくは、C1〜C12特にC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、これらのアルキル基にはさらにフッ素原子、水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチル基、エチル基、n−ブチル基、i−プロピル基、t−ブチル基、s−ブチル基、n−プロピル基、トリフルオロメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−シアノエチル基、2−メトキシエチル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−フェニルベンジル基等が挙げられる。
(3)アルコキシ基(−OR2)であり、R2は(2)で定義したアルキル基を表わす。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、t−ブトキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、i−ブトキシ基、2−ヒドロキシエトキシ基、ベンジルオキシ基、トリフルオロメトキシ基等が挙げられる。
(4)アリールオキシ基であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基が挙げられる。これは、C1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。具体的には、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基、4−メトキシフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基等が挙げられる。
(5)アルキルメルカプト基またはアリールメルカプト基であり、具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、フェニルチオ基、p−メチルフェニルチオ基等が挙げられる。
【0043】
(6)
【化2】

上記式中、R3及びR4は各々独立に、水素原子、前記(2)で定義したアルキル基、またはアリール基を表わす。アリール基としては、例えばフェニル基、ビフェニル基又はナフチル基が挙げられ、これらはC1〜C4のアルコキシ基、C1〜C4のアルキル基またはハロゲン原子を置換基として含有してもよい。R3及びR4は共同で環を形成してもよい。具体的には、アミノ基、ジエチルアミノ基、N−メチル−N−フェニルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N,N−ジ(トリール)アミノ基、ジベンジルアミノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、ピロリジノ基等が挙げられる。
【0044】
(7)メチレンジオキシ基、又はメチレンジチオ基等のアルキレンジオキシ基又はアルキレンジチオ基等が挙げられる。
(8)置換又は無置換のスチリル基、置換又は無置換のβ−フェニルスチリル基、ジフェニルアミノフェニル基、ジトリルアミノフェニル基等。
【0045】
前記Ar1、Ar2で表わされるアリーレン基としては、前記Ar3、Ar4で表されるアリール基から誘導される2価基である。
【0046】
前記式(1)中、Xは単結合、置換もしくは無置換のアルキレン基、置換もしくは無置換のシクロアルキレン基、置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基、酸素原子、硫黄原子、ビニレン基を表わす。
【0047】
置換もしくは無置換のアルキレン基としては、C1〜C12、好ましくはC1〜C8、さらに好ましくはC1〜C4の直鎖または分岐鎖のアルキレン基であり、これらのアルキレン基にはさらに水酸基、シアノ基、C1〜C4のアルコキシ基、フェニル基又はハロゲン原子(F、Cl、BrまたはI:以下同様。)、C1〜C4のアルキル基もしくはC1〜C4のアルコキシ基で置換されたフェニル基を有していてもよい。具体的にはメチレン基、エチレン基、n−ブチレン基、i−プロピレン基、t−ブチレン基、s−ブチレン基、n−プロピレン基、トリフルオロメチレン基、2−ヒドロキシエチレン基、2−エトキシエチレン基、2−シアノエチレン基、2−メトキシエチレン基、ベンジリデン基、フェニルエチレン基、4−クロロフェニルエチレン基、4−メチルフェニルエチレン基、4−ビフェニルエチレン基等が挙げられる。
【0048】
置換もしくは無置換のシクロアルキレン基としては、C5〜C7の環状アルキレン基であり、これらの環状アルキレン基にはフッ素原子、水酸基、C1〜C4のアルキル基、C1〜C4のアルコキシ基を有していても良い。具体的にはシクロヘキシリデン基、シクロへキシレン基、3,3−ジメチルシクロヘキシリデン基等が挙げられる。
【0049】
置換もしくは無置換のアルキレンエーテル基としては、エチレンオキシ、プロピレンオキシ、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール、トリプロピレングリコールを表わし、アルキレンエーテル基アルキレン基はヒドロキシル基、メチル基、エチル基等の置換基を有してもよい。
【0050】
ビニレン基は、
【化3】

で表わされ、ここで、R5は水素、アルキル基(前記(2)で定義されるアルキル基と同じ基)、アリール基(前記Ar3、Ar4で表わされるアリール基と同じ基)、aは1または2、bは1〜3を表わす。
【0051】
前記Zは置換もしくは未置換のアルキレン基、置換もしくは無置換の2価のアルキレンエーテル基、2価のアルキレンオキシカルボニル基を表わす。置換もしくは未置換のアルキレン基としては、前記Xのアルキレン基と同様なものが挙げられる。置換もしくは無置換のアルキレンエーテル2価基としては、前記Xのアルキレンエーテル基の2価基が挙げられる。アルキレンオキシカルボニル2価基としては、カプロラクトン変性2価基が挙げられる。
【0052】
また、本発明の1官能の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物として更に好ましくは、下記一般式(3)の構造の化合物が挙げられる。
【0053】
【化4】

【0054】
上記一般式(3)中、o、p、qはそれぞれ0又は1の整数、Raは水素原子、メチル基を表わし、s、tは0〜3の整数を表わし、Rb、Rcは水素原子以外の置換基で炭素数1〜6のアルキル基を表わし、s、tがそれぞれ2以上の場合には、これら2以上のRbまたはRcは同一でも、異なっていても良い。Zaは単結合、メチレン基、エチレン基、
【化5】

を表す。
【0055】
上記一般式で表わされる化合物としては、Rb、Rcの置換基として、特にメチル基、エチル基である化合物が好ましい。
【0056】
本発明で用いる上記一般式(1)及び(2)特に(3)の1官能性の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物は、炭素−炭素間の二重結合が両側に開放されて重合するため、末端構造とはならず、連鎖重合体中に組み込まれ、3官能以上のラジカル重合性モノマーとの重合で架橋形成された重合体中では、高分子の主鎖中に存在し、かつ主鎖−主鎖間の架橋鎖中に存在(この架橋鎖には1つの高分子と他の高分子間の分子間架橋鎖と、1つの高分子内で折り畳まれた状態の主鎖のある部位と主鎖中でこれから離れた位置に重合したモノマー由来の他の部位とが架橋される分子内架橋鎖とがある)するが、主鎖中に存在する場合であってもまた架橋鎖中に存在する場合であっても、鎖部分から懸下するトリアリールアミン構造は、窒素原子から放射状方向に配置する少なくとも3つのアリール基を有し、バルキーであるが、鎖部分に直接結合しておらず鎖部分からカルボニル基等を介して懸下しているため立体的位置取りに融通性ある状態で固定されているので、これらトリアリールアミン構造は重合体中で相互に程よく隣接する空間配置が可能であるため、分子内の構造的歪みが少なく、また、電子写真感光体の表面層とされた場合に、電荷輸送経路の断絶を比較的免れた分子内構造を採りうるものと推測される。
【0057】
本発明の1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
【0058】
【表1】

【0059】
【表2】

【0060】
【表3】

【0061】
【表4】

【0062】
【表5】

【0063】
【表6】

【0064】
【表7】

【0065】
【表8】

【0066】
【表9】

【0067】
【表10】

【0068】
【表11】

【0069】
【表12】

【0070】
本発明の2官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
【表13】

【0071】
【表14】

【0072】
【表15】

【0073】
【表16】

【0074】
【表17】

【0075】
【表18】

【0076】
【表19】

【0077】
【表20】

【0078】
【表21】

【0079】
【表22】

【0080】
【表23】

【0081】
【表24】

【0082】
【表25】

【0083】
【表26】

【0084】
【表27】

【0085】
【表28】

【0086】
【表29】

【0087】
【表30】

【0088】
【表31】

【0089】
【表32】

【0090】
【表33】

【0091】
【表34】

【0092】
【表35】

【0093】
【表36】

【0094】
【表37】

【0095】
【表38】

【0096】
【表39】

【0097】
【表40】

【0098】
【表41】

【0099】
【表42】

【0100】
【表43】

【0101】
【表44】

【0102】
【表45】

【0103】
【表46】

【0104】
【表47】

【0105】
【表48】

【0106】
【表49】

【0107】
【表50】

【0108】
【表51】

【0109】
【表52】

【0110】
【表53】

【0111】
【表54】

【0112】
【表55】

【0113】
【表56】

【0114】
本発明の3官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の具体例を以下に示すが、これらの構造の化合物に限定されるものではない。
【表57】

【0115】
【表58】

【0116】
【表59】

【0117】
【表60】

【0118】
【表61】

【0119】
また、本発明に用いられる電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物は、架橋表面層の電荷輸送性能を付与するために重要で、この成分は架橋表面層全量に対し20〜80重量%、好ましくは30〜70重量%である。この成分が20重量%未満では架橋表面層の電荷輸送性能が充分に保てず、繰り返しの使用で感度低下、残留電位上昇などの電気特性の劣化が現れる。また、80重量%を超えると電荷輸送構造を有しない3官能モノマーの含有量が低下し、架橋結合密度の低下を招き高い耐摩耗性が発揮されない。使用されるプロセスによって要求される電気特性や耐摩耗性が異なるため一概には言えないが、両特性のバランスを考慮すると30〜70重量%の範囲が最も好ましい。
【0120】
本発明の表面層は、少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を光エネルギー照射手段によって硬化したものであるが、これ以外に塗工時の粘度調整、架橋表面層の応力緩和、低表面エネルギー化や摩擦係数低減などの機能付与の目的で1官能及び2官能のラジカル重合性モノマー、機能性モノマー及びラジカル重合性オリゴマーを併用することができる。これらのラジカル重合性モノマー、オリゴマーとしては、公知のものが利用できる。
【0121】
1官能のラジカルモノマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、2−エチルヘキシルカルビトールアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、ベンジルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、フェノキシテトラエチレングリコールアクリレート、セチルアクリレート、イソステアリルアクリレート、ステアリルアクリレート、スチレンモノマーなどが挙げられる。
【0122】
2官能のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、EO変性ビスフェノールAジアクリレート、EO変性ビスフェノールFジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどが挙げられる。
【0123】
機能性モノマーとしては、例えば、オクタフルオロペンチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2−パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、2−パーフルオロイソノニルエチルアクリレートなどのフッ素原子を置換したもの、特公平5−60503号公報、特公平6−45770号公報記載のシロキサン繰り返し単位:20〜70のアクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、メタクリロイルポリジメチルシロキサンエチル、アクリロイルポリジメチルシロキサンプロピル、アクリロイルポリジメチルシロキサンブチル、ジアクリロイルポリジメチルシロキサンジエチルなどのポリシロキサン基を有するビニルモノマー、アクリレート及びメタクリレートが挙げられる。
【0124】
ラジカル重合性オリゴマーとしては、例えば、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリエステルアクリレート系オリゴマーが挙げられる。
但し、1官能及び2官能のラジカル重合性モノマーやラジカル重合性オリゴマーを多量に含有させると架橋表面層の3次元架橋結合密度が実質的に低下し、耐摩耗性の低下を招く。このためこれらのモノマーやオリゴマーの含有量は、3官能以上のラジカル重合性モノマー100重量部に対し50重量部以下、好ましくは30重量部以下に制限される。
【0125】
また、本発明の表面層は少なくとも電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物を硬化したものであるが、必要に応じてこの架橋反応を効率よく進行させるために重合開始剤を使用してもよい。
【0126】
重合開始剤としては、ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン−1、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−2−モルフォリノ(4−メチルチオフェニル)プロパン−1−オン、1−フェニル−1,2−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、などのアセトフェノン系またはケタール系光重合開始剤、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、などのベンゾインエーテル系光重合開始剤、ベンゾフェノン、4−ヒドロキシベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルフェニールエーテル、アクリル化ベンゾフェノン、1,4−ベンゾイルベンゼン、などのベンゾフェノン系光重合開始剤、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジクロロチオキサントン、などのチオキサントン系光重合開始剤、その他の光重合開始剤としては、エチルアントラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルエトキシホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,4−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシエステル、9,10−フェナントレン、アクリジン系化合物、トリアジン系化合物、イミダゾール系化合物、が挙げられる。また、光重合促進効果を有するものを単独または上記光重合開始剤と併用して用いることもできる。例えば、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、安息香酸(2−ジメチルアミノ)エチル、4,4‘−ジメチルアミノベンゾフェノン、などが挙げられる。
【0127】
これらの重合開始剤は1種単独で、又は2種以上を混合して用いてもよい。重合開始剤の含有量は、ラジカル重合性を有する総含有物100重量部に対し、0.5〜40重量部、好ましくは1〜20重量部である。
【0128】
更に、本発明の架橋表面層用塗工液は必要に応じて各種可塑剤(応力緩和や接着性向上の目的)、レベリング剤、ラジカル反応性を有しない低分子電荷輸送物質などの添加剤が含有できる。これらの添加剤は公知のものが使用可能であり、可塑剤としてはジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂に使用されているものが利用可能で、その使用量は塗工液の総固形分に対し20重量%以下、好ましくは10重量%以下に抑えられる。また、レベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが利用でき、その使用量は塗工液の総固形分に対し3重量%以下が適当である。
【0129】
本発明の架橋表面層は、少なくとも電荷輸送構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物を含有する塗工液を塗布、硬化することにより形成される。かかる塗工液は、ラジカル重合性モノマーが液体である場合、これに他の成分を溶解して塗布することも可能であるが、必要に応じて溶媒により希釈して塗布される。このとき用いられる溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系、テトラヒドロフラン、ジオキサン、プロピルエーテルなどのエーテル系、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼンなどのハロゲン系、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族系、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテートなどのセロソルブ系などが挙げられる。これらの溶媒は単独または2種以上を混合して用いてもよい。溶媒による希釈率は組成物の溶解性、塗工法、目的とする膜厚により変わり、任意である。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行なうことができる。
【0130】
本発明においては、かかる架橋表面層用塗工液を塗布後、外部から光エネルギーを与え硬化させる。光のエネルギーとしては主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプなどのUV照射光源が利用できるが、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は300mW/cm2以上、1000mW/cm2以下が好ましく、300mW/cm2未満では硬化反応に時間を要する。1000mW/cm2より強いと反応の進行が不均一となり、架橋表面層の荒れが激しくなる。
また光エネルギーにより硬化するときには、酸素による架橋阻害を防止するために、酸素濃度を低減することが好ましい。
【0131】
架橋表面層塗工液に含有される組成物においては、バインダー樹脂を含有させることも感光体表面の平滑性、電気特性、あるいは耐久性を損なわない範囲であれば可能である。しかし塗工液にバインダー樹脂などの高分子材料を含有させると、ラジカル重合性組成物(ラジカル重合性モノマー及び電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物)の硬化反応より生成した高分子との相溶性の悪さから相分離が生じ、架橋表面層表面の凹凸が激しくなる。したがって、バインダー樹脂は使用しない方が好ましい。
【0132】
本発明の架橋表面層においては、電気的特性を維持するため嵩高い電荷輸送性構造を含有させ、且つ高強度化のため架橋結合密度を高める必要がある。この様な架橋表面層塗工後の硬化にあたっては、非常に高いエネルギーを外部から加え急激に反応を進めると、硬化が不均一に進行し架橋膜表面の凹凸が激しくなる。このため光の照射強度、重合開始剤量により反応速度制御が可能な光の外部エネルギーを用いたものが好ましい。
【0133】
本発明の架橋表面層形成材料を用いた場合において、塗工方法について例示すると、例えば、塗工液として、3つのアクリロイルオキシ基を有するアクリレートモノマーと、一つのアクリロイルオキシ基を有するトリアリールアミン化合物を使用する場合、これらの使用割合は7:3から3:7であり、また、重合開始剤をこれらアクリレート化合物全量に対し3〜20重量%添加し、さらに溶媒を加えて塗工液を調製する。例えば、架橋表面層の下層となる電荷輸送層において、電荷輸送物質としてトリアリールアミン系ドナー、及びバインダー樹脂として、ポリカーボネートを使用し、架橋表面層をスプレー塗工により形成する場合、上記塗工液の溶媒としては、テトラヒドロフラン、2−ブタノン、酢酸エチル等が好ましく、その使用割合は、アクリレート化合物全量に対し3倍量〜10倍量である。
【0134】
次いで、例えば、アルミシリンダー等の支持体上に、下引き層、電荷発生層、上記電荷輸送層を順次積層した感光体上に、上記調製した塗工液をスプレー等により塗布する。その後、比較的低温で短時間乾燥し(25〜80℃、1〜10分間)、UV照射して硬化させる。
UV照射の場合、メタルハライドランプ等を用いるが、照度(365nm)は300mW/cm2以上、1000mW/cm2以下が好ましく、例えば600mW/cm2のUV光を照射する場合、例えば硬化に際し、ドラムを回転して全ての面を均一に45〜360秒程度照射すればよい。このときドラム温度は100℃を越えないように制御する。
硬化終了後は、残留溶媒低減のため100〜150℃で10分〜30分加熱して、本発明の感光体を得る。
【0135】
本発明に使用される電子写真感光体をその層構造に従い説明する。図1は、本発明の電子写真感光体を表わす断面図であり、導電性支持体上に、電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する感光層が設けられた単層構造の感光体であり、架橋表面層が感光層の表面に設けられている。図2は、導電性支持体上に、電荷発生機能を有する電荷発生層と、電荷輸送物機能を有する電荷輸送層とが積層された積層構造の感光体であり、架橋表面層が電荷輸送層の表面に設けられている。
【0136】
また、本発明では、感光層と架橋表面層との間に、接着強度を向上させるため、接着層を設けてもよい。図1に示す感光体に前記接着層を設けた場合を図3に、図2に示す感光体に前記接着層を設けた場合を図4に示す。
【0137】
<導電性支持体について>
導電性支持体としては、体積抵抗1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えば、アルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、金、銀、白金などの金属、酸化スズ、酸化インジウムなどの金属酸化物を蒸着またはスパッタリングにより、フィルム状もしくは円筒状のプラスチック、紙に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレスなどの板およびそれらを押し出し、引き抜きなどの工法で素管化後、切削、超仕上げ、研摩などの表面処理を施した管などを使用することができる。また、特開昭52−36016号公報に開示されたエンドレスニッケルベルト、エンドレスステンレスベルトも導電性支持体として用いることができる。
【0138】
この他、上記支持体上に導電性粉体を適当な結着樹脂に分散して塗工したものについても、本発明の導電性支持体として用いることができる。この導電性粉体としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、また、アルミニウム、ニッケル、鉄、ニクロム、銅、亜鉛、銀などの金属粉、あるいは導電性酸化スズ、ITOなどの金属酸化物粉体などが挙げられる。
【0139】
また、同時に用いられる結着樹脂には、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂などの熱可塑性、熱硬化性樹脂または光硬化性樹脂が挙げられる。このような導電性層は、これらの導電性粉体と結着樹脂を適当な溶剤、例えば、テトラヒドロフラン、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、トルエンなどに分散して塗布することにより設けることができる。
【0140】
さらに、適当な円筒基体上にポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、塩化ゴム、テフロン(登録商標)などの素材に前記導電性粉体を含有させた熱収縮チューブによって導電性層を設けてなるものも、本発明の導電性支持体として良好に用いることができる。
【0141】
<感光層について>
次に感光層について説明する。感光層は積層構造でも単層構造でもよい。
積層構造の場合には、感光層は電荷発生機能を有する電荷発生層と電荷輸送機能を有する電荷輸送層とから構成される。また、単層構造の場合には、感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層である。以下、積層構造の感光層及び単層構造の感光層のそれぞれについて述べる。
【0142】
<感光層が積層構造(電荷発生層と電荷輸送層からなるもの)>
(電荷発生層)
電荷発生層は、電荷発生機能を有する電荷発生物質を主成分とする層で、必要に応じてバインダー樹脂を併用することもできる。電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。無機系材料には、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン−テルル、セレン−テルル−ハロゲン、セレン−ヒ素化合物や、アモルファス・シリコン等が挙げられる。アモルファス・シリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子、ハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが良好に用いられる。
【0143】
一方、有機系材料としては、公知の材料を用いることができる。例えば、金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有するアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジフェニルアミン骨格を有するアゾ顔料、ジベンゾチオフェン骨格を有するアゾ顔料、フルオレノン骨格を有するアゾ顔料、オキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ビススチルベン骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルオキサジアゾール骨格を有するアゾ顔料、ジスチリルカルバゾール骨格を有するアゾ顔料、ペリレン系顔料、アントラキノン系または多環キノン系顔料、キノンイミン系顔料、ジフェニルメタン及びトリフェニルメタン系顔料、ベンゾキノン及びナフトキノン系顔料、シアニン及びアゾメチン系顔料、インジゴイド系顔料、ビスベンズイミダゾール系顔料などが挙げられる。これらの電荷発生物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0144】
電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。これらのバインダー樹脂は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。また、電荷発生層のバインダー樹脂として上述のバインダー樹脂の他に、電荷輸送機能を有する高分子電荷輸送物質、例えば、アリールアミン骨格やベンジジン骨格やヒドラゾン骨格やカルバゾール骨格やスチルベン骨格やピラゾリン骨格等を有するポリカーボネート、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリシロキサン、アクリル樹脂等の高分子材料やポリシラン骨格を有する高分子材料等を用いることができる。
【0145】
前者の具体的な例としては、特開平01−001728号公報、特開平01−009964号公報、特開平01−013061号公報、特開平01−019049号公報、特開平01−241559号公報、特開平04−011627号公報、特開平04−175337号公報、特開平04−183719号公報、特開平04−225014号公報、特開平04−230767号公報、特開平04−320420号公報、特開平05−232727号公報、特開平05−310904号公報、特開平06−234836号公報、特開平06−234837号公報、特開平06−234838号公報、特開平06−234839号公報、特開平06−234840号公報、特開平06−234841号公報、特開平06−239049号公報、特開平06−236050号公報、特開平06−236051号公報、特開平06−295077号公報、特開平07−056374号公報、特開平08−176293号公報、特開平08−208820号公報、特開平08−211640号公報、特開平08−253568号公報、特開平08−269183号公報、特開平09−062019号公報、特開平09−043883号公報、特開平09−71642号公報、特開平09−87376号公報、特開平09−104746号公報、特開平09−110974号公報、特開平09−110976号公報、特開平09−157378号公報、特開平09−221544号公報、特開平09−227669号公報、特開平09−235367号公報、特開平09−241369号公報、特開平09−268226号公報、特開平09−272735号公報、特開平09−302084号公報、特開平09−302085号公報、特開平09−328539号公報等に記載の電荷輸送性高分子材料が挙げられる。
【0146】
また、後者の具体例としては、例えば特開昭63−285552号公報、特開平05−19497号公報、特開平05−70595号公報、特開平10−73944号公報等に記載のポリシリレン重合体が例示される。
【0147】
また、電荷発生層には低分子電荷輸送物質を含有させることができる。電荷発生層に併用できる低分子電荷輸送物質には、正孔輸送物質と電子輸送物質とがある。電子輸送物質としては、たとえばクロルアニル、ブロムアニル、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、2,4,7−トリニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン、2,4,5,7−テトラニトロキサントン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、2,6,8−トリニトロ−4H−インデノ〔1,2−b〕チオフェン−4−オン、1,3,7−トリニトロジベンゾチオフェン−5,5−ジオキサイド、ジフェノキノン誘導体などの電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独で、または2種以上の混合物として用いることができる。
【0148】
正孔輸送物質としては、以下に表わされる電子供与性物質が挙げられ、良好に用いられる。正孔輸送物質としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、モノアリールアミン誘導体、ジアリールアミン誘導体、トリアリールアミン誘導体、スチルベン誘導体、α−フェニルスチルベン誘導体、ベンジジン誘導体、ジアリールメタン誘導体、トリアリールメタン誘導体、9−スチリルアントラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、ジビニルベンゼン誘導体、ヒドラゾン誘導体、インデン誘導体、ブタジェン誘導体、ピレン誘導体等、ビススチルベン誘導体、エナミン誘導体等、その他公知の材料が挙げられる。これらの正孔輸送物質は、単独または2種以上の混合物として用いることができる。
【0149】
電荷発生層を形成する方法には、真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法とが大きく挙げられる。前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD法等が用いられ、上述した無機系材料、有機系材料が良好に形成できる。
【0150】
また、後述のキャスティング法によって電荷発生層を設けるには、上述した無機系もしくは有機系電荷発生物質を必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、トルエン、ジクロロメタン、モノクロロベンゼン、ジクロロエタン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、アニソール、キシレン、メチルエチルケトン、アセトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布することにより、形成できる。また、必要に応じて、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のレベリング剤を添加することができる。塗布は、浸漬塗工法やスプレーコート、ビードコート、リングコート法などを用いて行うことができる。
【0151】
以上のようにして設けられる電荷発生層の膜厚は、0.01〜5μm程度が適当であり、好ましくは0.05〜2μmである。
【0152】
(電荷輸送層について)
電荷輸送層は電荷輸送機能を有する層である。電荷輸送層は電荷輸送機能を有する電荷輸送物質および結着樹脂を適当な溶剤に溶解ないし分散し、これを電荷発生層上に塗布、乾燥することにより形成し、この上に上記本発明のラジカル重合性組成物(電荷輸送性構造を有しないラジカル重合性モノマー及び電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物;以下同じ)を含有する架橋表面層用塗工液を塗布し、外部エネルギーにより架橋硬化させる。
電荷輸送物質としては、前記電荷発生層で記載した電子輸送物質、正孔輸送物質及び高分子電荷輸送物質を用いることができる。高分子電荷輸送物質を用いることにより、表面層塗工時の下層の溶解性を低減でき、とりわけ有用である。
【0153】
結着樹脂としては、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0154】
電荷輸送物質の量は結着樹脂100重量部に対し、20〜300重量部、好ましくは40〜150重量部が適当である。但し、高分子電荷輸送物質を用いる場合は、単独でも結着樹脂との併用も可能である。
【0155】
電荷輸送層の塗工に用いられる溶媒としては前記電荷発生層と同様なものが使用できるが、電荷輸送物質及び結着樹脂を良好に溶解するものが適している。これらの溶剤は単独で使用しても2種以上混合して使用しても良い。また、電荷輸送層の形成には電荷発生層と同様な塗工法が可能である。また、必要により可塑剤、レベリング剤を添加することもできる。
【0156】
電荷輸送層に併用できる可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート等の一般の樹脂の可塑剤として使用されているものがそのまま使用でき、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜30重量部程度が適当である。
【0157】
電荷輸送層に併用できるレベリング剤としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等のシリコーンオイル類や、側鎖にパーフルオロアルキル基を有するポリマーあるいはオリゴマーが使用され、その使用量は、結着樹脂100重量部に対して0〜1重量部程度が適当である。電荷輸送層の膜厚は、5〜40μm程度が適当であり、好ましくは10〜30μm程度が適当である。
【0158】
架橋表面層が電荷輸送層の表面部分である場合、前述の架橋表面層作製方法に記載したように、かかる電荷輸送層上に本発明のラジカル重合性組成物を含有する塗工液を塗布、必要に応じて乾燥後、外部エネルギーにより硬化反応を開始させ、架橋表面層が形成される。このとき、架橋表面層の膜厚は、1〜20μm、好ましくは2〜10μmである。1μmより薄いと膜厚ムラによって耐久性のバラツキが生じ、20μmより厚いと電荷輸送層全体の膜厚が厚くなり電荷の拡散から画像の再現性が低下する。
【0159】
<感光層(単層のもの)>
単層構造の感光層は電荷発生機能と電荷輸送機能を同時に有する層で、電荷発生機能を有する電荷発生物質と電荷輸送機能を有する電荷輸送物質と結着樹脂を適当な溶媒に溶解ないし分散し、これを塗布、乾燥することによって形成できる。また、必要により可塑剤やレベリング剤等を添加することもできる。電荷発生物質の分散方法、それぞれ電荷発生物質、電荷輸送物質、可塑剤、レベリング剤は前記電荷発生層、電荷輸送層において既に述べたものと同様のものが使用できる。結着樹脂としては、先に電荷輸送層の項で挙げた結着樹脂のほかに、電荷発生層で挙げたバインダー樹脂を混合して用いてもよい。また、先に挙げた高分子電荷輸送物質も使用可能で、架橋表面層への下層感光層組成物の混入を低減できる点で有用である。かかる感光層の膜厚は、5〜30μm程度が適当であり、好ましくは10〜25μm程度が適当である。
【0160】
架橋表面層が単層構造の感光層の表面に設けられる場合、前述のようにかかる感光層上に本発明のラジカル重合性組成物を含有する塗工液を塗布、必要に応じて乾燥後、外部エネルギーにより硬化し、架橋表面層を形成する。このとき、架橋表面層の膜厚は、1〜20μm、好ましくは2〜10μmである。1μmより薄いと膜厚ムラによって耐久性のバラツキが生じ、20μmより厚いと電荷輸送層全体の膜厚が厚くなり電荷の拡散から画像の再現性が低下する。
【0161】
単層構造の感光層中に含有される電荷発生物質は感光層全量に対し1〜30重量%が好ましく、感光層に含有される結着樹脂は全量の20〜80重量%、電荷輸送物質は10〜70重量部が良好に用いられる。
【0162】
<接着層について>
本発明では感光層と架橋表面層の接着強度を向上させるため、感光層と架橋表面層の間に接着層を設けてもよい。架橋表面層を設けることで耐摩耗性を向上させるとともに、表面の高硬度化によって低下した接着強度を、接着層を設けることで接着性を向上させることが可能となる。
接着層には電荷輸送層で用いられるバインダー樹脂と架橋表面層で用いられるラジカル重合性モノマー、さらに必要に応じて1官能の電荷輸送構造を有するラジカル重合性化合物を混合させた塗工液を電荷輸送層上に塗布し、さらに続けて架橋表面層用塗工液を塗布し、同時に光硬化させることで電荷輸送層と架橋表面層を結合させる働きを示すようになる。
【0163】
次に接着層に用いられる材料構成について説明する。
本発明の接着層では架橋表面層と感光層の接着性を向上させるため、ラジカル重合性モノマーとバインダー樹脂を含有させている。また電気特性を向上させるために、必要に応じて電荷輸送構造を有する1官能のラジカル重合化合物を含有させることができる。ここで用いるラジカル重合性モノマーは架橋表面層で使用される3官能以上のラジカル重合性モノマーのみならず、1官能、2官能のラジカル重合性モノマーを用いることも可能である。また、電荷輸送構造を有する1官能のラジカル重合化合物としては架橋表面層で用いられるものが使用可能である。
【0164】
バインダー樹脂は電荷輸送層に用いられるものが使用可能であり、具体的にはポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート、酢酸セルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルトルエン、ポリ−N−ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド樹脂等の熱可塑性または熱硬化性樹脂が挙げられる。接着層の形成法としては、前述の電荷輸送層のごとく一般に用いられる塗工法が採用される。なお、接着層の厚さは0.05〜5μmが好ましく、0.1〜1μmがより好ましい。0.05μmより薄いと十分な接着効果が得られず、5μmより厚いと電気特性が悪くなる。
【0165】
<下引き層について>
本発明の感光体においては、導電性支持体と感光層との間に下引き層を設けることができる。下引き層は一般には樹脂を主成分とするが、これらの樹脂はその上に感光層を溶剤で塗布することを考えると、一般の有機溶剤に対して耐溶剤性の高い樹脂であることが望ましい。このような樹脂としては、ポリビニルアルコール、カゼイン、ポリアクリル酸ナトリウム等の水溶性樹脂、共重合ナイロン、メトキシメチル化ナイロン等のアルコール可溶性樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アルキッド−メラミン樹脂、エポキシ樹脂等、三次元網目構造を形成する硬化型樹脂等が挙げられる。また、下引き層にはモアレ防止、残留電位の低減等のために酸化チタン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化インジウム等で例示できる金属酸化物の微粉末顔料を加えてもよい。
【0166】
これらの下引き層は、前述の感光層の如く適当な溶媒及び塗工法を用いて形成することができる。更に本発明の下引き層として、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、クロムカップリング剤等を使用することもできる。この他、本発明の下引き層には、Al23を陽極酸化にて設けたものや、ポリパラキシリレン(パリレン)等の有機物やSiO2、SnO2、TiO2、ITO、CeO2等の無機物を真空薄膜作成法にて設けたものも良好に使用できる。このほかにも公知のものを用いることができる。下引き層の膜厚は0〜5μmが適当である。
【0167】
<各層への酸化防止剤の添加について>
また、本発明においては、耐環境性の改善のため、とりわけ、感度低下、残留電位の上昇を防止する目的で、架橋表面層、単層感光層、電荷発生層、電荷輸送層、接着層、下引き層等の各層に酸化防止剤を添加することができる。
【0168】
本発明に用いることができる酸化防止剤として、下記のものが挙げられる。
(フェノール系化合物)
2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレン−ビス−(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス−(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス−[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’−ビス(4’−ヒドロキシ−3’−t−ブチルフェニル)ブチリックアッシド]クリコ−ルエステル、トコフェロール類など。
【0169】
(パラフェニレンジアミン類)
N−フェニル−N’−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジ−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジ−t−ブチル−p−フェニレンジアミンなど。
【0170】
(ハイドロキノン類)
2,5−ジ−t−オクチルハイドロキノン、2,6−ジドデシルハイドロキノン、2−ドデシルハイドロキノン、2−ドデシル−5−クロロハイドロキノン、2−t−オクチル−5−メチルハイドロキノン、2−(2−オクタデセニル)−5−メチルハイドロキノンなど。
【0171】
(有機硫黄化合物類)
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジテトラデシル−3,3’−チオジプロピオネートなど。
【0172】
(有機燐化合物類)
トリフェニルホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィン、トリ(ジノニルフェニル)ホスフィン、トリクレジルホスフィン、トリ(2,4−ジブチルフェノキシ)ホスフィンなど。
【0173】
これら化合物は、ゴム、プラスチック、油脂類などの酸化防止剤として知られており、市販品を容易に入手できる。本発明における酸化防止剤の添加量は、添加する層の総重量に対して0.01〜10重量%である。
【0174】
次に本発明の画像形成装置で用いられるトナーについて述べる。最初に本発明におけるトナーの重要な点(体積平均粒径、平均円形度、外添剤)について述べ、後でトナーの構成材料と作製方法について述べる。
【0175】
(体積平均粒径)
本発明におけるトナーは、体積平均粒径が1.0〜5.0μmであることが好ましい。このような粒径を有するトナーとすることにより、ドットを忠実に再現できるため高解像で高画質の画像が得られ、とりわけフルカラー複写機などに用いた場合に色再現性に優れた高画質の画像が得られる。本発明における範囲よりも体積平均粒径が大きい場合、高解像で高画質の画像を得ることが難しくなると共に、現像剤中のトナーの収支が行われた場合にトナーの粒径の変動が大きくなる場合が多い。逆に、体積平均粒径が本発明の範囲よりも小さいトナーは、実質的に作製が困難である。
【0176】
一般的には、トナーの粒径は小さければ小さい程、クリーニング性に対しては不利であると言われているが、本発明の感光体、トナー、クリーニングブレードからなるトータル的なシステムによって、この課題を解決することができた。
【0177】
トナーの体積平均粒径は、粒度測定器(「マルチサイザーIII」、ベックマンコールター社製)を用い、アパーチャー径100μmで測定し、解析ソフト(Beckman Coulter Mutlisizer 3 Version3.51)にて解析を行った。具体的にはガラス製100mlビーカーに10wt%界面活性剤(アルキルベンゼンスルフォン酸塩ネオゲンSC−A;第一工業製薬性)を0.5ml添加し、各トナー0.5g添加しミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mlを添加した。得られた分散液を超音波分散器(W−113MK−II本多電子社製)で10分間分散処理した。前記分散液を前記マルチサイザーIIIを用い、測定用溶液としてアイソトンIII(ベックマンコールター製)を用いて測定を行った。測定は装置が示す濃度が8±2%に成るように前記トナーサンプル分散液を滴下した。本測定法は粒径の測定再現性の点から前記濃度を8±2%にすることが重要である。この濃度範囲であれば粒径に誤差は生じない。
【0178】
(平均円形度)
さらに、本発明の画像形成装置で用いられるトナーは、平均円形度が0.95〜0.98であることが好ましい。平均円形度SR=(粒子投影面積と同じ面積の円の周囲長/粒子投影像の周囲長)で定義され、トナーが真球に近いほど1に近い値となる。円形度の高いトナーは、現像電界の影響を受けやすく、静電潜像の電界に沿って忠実に現像される。微小な潜像ドットを再現する際には緻密で均一な現像がされることで細線再現性が高くなる。また、円形度の高いトナーは、その表面は滑らかで適度な流動性をもつために電界の影響を受けやすく、電界に沿って忠実に転移しやすいために転写率が高くなり、高品位の画像を得ることができる。しかし、トナーの平均円形度が0.95未満では、忠実な現像、転写率の高い転写ができなくなるため、平均円形度は0.95以上が好ましい。
【0179】
この円形度は、乾式粉砕で製造されるトナーでは、熱的又は機械的に球形化処理する。熱的には、例えば、アトマイザーなどに熱気流とともにトナー母体粒子を噴霧することで球形化処理を行うことができる。また、機械的にはボールミル等の混合機に比重の軽いガラス等の混合媒体とともに投入して攪拌することで、球形化処理することができる。ただし、熱的球形化処理では凝集し粒径の大きいトナー母体粒子又は機械的球形化処理では微粉が発生するために再度の分級工程が必要になる。また、水系溶媒中で製造されるトナーでは、溶媒を除去する工程で強い攪拌を与えることで、形状を制御することができる。
【0180】
尚、トナーの平均円形度は、超微粉トナーの計測にフロー式粒子像分析装置(「FPIA−2100」;シスメックス社製)を用いて計測し、解析ソフト(FPIA−2100 Data Processing Program for FPIA version00−10)を用いて解析を行った。具体的には、ガラス製100mlビーカーに10wt%界面活性剤(アルキルベンゼンスルフォン酸塩ネオゲンSC−A;第一工業製薬性)を0.1〜0.5ml添加し、各トナー0.1〜0.5g添加しミクロスパーテルでかき混ぜ、次いでイオン交換水80mlを添加した。得られた分散液を超音波分散器(本多電子社製)で3分間分散処理した。前記分散液を前記FPIA−2100を用いて濃度を5000〜15000個/μlが得られるまでトナーの形状及び分布を測定した。本測定法は平均円形度の測定再現性の点から前記分散液濃度が5000〜15000個/μlにすることが重要である。前記分散液濃度を得るために前記分散液の条件、すなわち添加する界面活性剤量、トナー量を変更する必要がある。界面活性剤量は前述したトナー粒径の測定と同様にトナーの疎水性により必要量が異なり、多く添加すると泡によるノイズが発生し、少ないとトナーを十分にぬらすことが出来ないため、分散が不十分となる。またトナー添加量は粒径により異なり、小粒径の場合は少なく、また大粒径の場合は多くする必要があり、トナー粒径が1〜5μmの場合、トナー量を0.1〜0.5g添加することにより分散液濃度を5000〜15000個/μlにあわせることが可能となる。
【0181】
(外添剤)
本発明におけるトナーの表面に添加する外添剤は、無機微粒子が好ましく用いられる。無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ケイ砂、クレー、雲母、ケイ灰石、ケイソウ土、酸化クロム、酸化セリウム、ベンガラ、三酸化アンチモン、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素などを挙げることができる。
【0182】
添加される外添剤の量は、外添剤を添加する前のトナー(母体)に対し、一次平均粒径10〜20nmである外添剤の量をX重量%、一次平均粒径100〜200nmである外添剤の量をY重量%とすると、式(I)の関係を満たしているのが好ましい。
1<3X/5+Y<3 …(I)
ただし上式(I)中、XおよびYは、 X<Y、0<X≦1、1≦Y である。
【0183】
本発明におけるトナーは、従来に比べてより小粒径で球形に近い形状のため、クリーニングに対しては不利である。そのため、一次平均粒径100〜200nmの大粒径外添剤の添加量を多くすることで、ブレードエッジ部にダム層を形成し、トナーのすり抜けを抑制する効果を狙っている。反対に、一次平均粒径10〜20nmの小粒径外添剤は、ダム層形成の効果は小さく、むしろ外添剤自体がすり抜けやすいため、添加量を少なくして添加剤自体のすり抜けを抑制する効果を狙っている。また、大粒径外添剤は、感光体とトナー間または、中間転写ベルトとトナー間の付着力低減効果が大きく得られるため、感光体上から中間転写ベルトあるいは、中間転写ベルトから転写体への転写効率を向上させることが可能である。そのため、感光体上で見ると転写残トナー量を低減することが可能であり、結果クリーニングにより有利に働くこととなる。特にこの転写残トナー量低減効果は、本発明の感光体との組合せで高い効果を得ることが可能となる。この大粒径外添剤は、トナーが経時で機械的なストレスを受けてもトナー母体中に埋没しにくいため、長期的にこの効果を発揮することが可能である。これに対し、小粒径外添剤は、付着力低減効果はあるものの、その効果は大粒径外添剤に比べると小さく、大粒径外添剤ほどの劇的な効果は得られない。更に、小粒径外添剤は、トナーが経時で機械的なストレスを受けるとトナー母体中に埋没しやすいため、長期的にこの効果を発揮することが難しい。
【0184】
本発明者が鋭意研究を重ねた結果、この小粒径外添剤と大粒径外添剤の添加量の関係が式(I)の関係を満たす場合にすり抜けを抑制するのに有効であることを見出した。式(I)の値が1よりも小さい場合、大粒径添加剤の量がダム層を形成するのに不十分であるため、トナーのすり抜けを抑制することができない。式(I)の値が3よりも大きい場合、トナーの流動性自体が極端に悪くなってしまうため、その他のプロセスへ悪影響を与えてしまう。
【0185】
以下、本発明の画像形成装置で用いられるトナーの構成材料及び作製方法について説明する。本発明で用いられるトナーの母体着色粒子は、少なくとも結着樹脂、有彩色の着色剤、離型剤とからなり、粉砕法、重合法(懸濁重合、乳化重合分散重合、乳化凝集、乳化会合等)等の製造方法があるが、これらの製造方法に限るものではない。本発明で用いられるトナーは、高画質高精細の画像を出力させるべく、小粒径で球形に近いトナーであることが好ましい。このようなトナーの製造方法としては、水系媒体中で油相を乳化、懸濁又は凝集させトナー母体粒子を形成させる、懸濁重合法、乳化重合法、ポリマー懸濁法等がある。以下、これらのトナー製造方法、及び該製造方法において用いる材料、添加剤等について説明する。
【0186】
(懸濁重合法)
油溶性重合開始剤、重合性単量体中に着色剤、離型剤等を分散し、界面活性剤、その他固体分散剤等が含まれる水系媒体中で後に述べる乳化法によって乳化分散する。その後重合反応を行い粒子化し、余剰にある界面活性剤等を洗浄除去してトナー粒子を得る。重合性単量体としてアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミン、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのアミノ基を有すアクリレート、メタクリレートなどを一部用いることによってトナー粒子表面に官能基を導入できる。また、使用する分散剤として酸基や塩基性基を有すものを選ぶことよって粒子表面に分散剤を吸着残存させ、官能基を導入することができる。
【0187】
(乳化重合凝集法)
水溶性重合開始剤、重合性単量体を水中で界面活性剤を用いて乳化し、通常の乳化重合の手法によりラテックスを合成する。別途着色剤、離型剤等を水系媒体中分散した分散体を用意し、混合の後にトナーサイズまで凝集させ、加熱融着させることによりトナーを得る。ラテックスとして懸濁重合法に使用されうる単量体と同様なものを用いればトナー粒子表面に官能基を導入できる。
【0188】
(ポリマー懸濁法)
水系媒体としては、水単独でもよいが、水と混和可能な溶剤を併用することもできる。混和可能な溶剤としては、アルコール(メタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などが挙げられる。トナー組成物の油相には、樹脂、プレポリマー、顔料等の着色剤、離型剤、帯電制御剤等を揮発性溶剤に溶解又は分散する。水系媒体中に、トナー組成物からなる油相を界面活性剤、固体分散剤等の存在下で分散させ、プレポリマーの反応を行わせて粒子化する。
【0189】
トナー粒子に官能基を導入するには、懸濁重合法で用いた官能基を有する単量体との共重合体や、ポリエステル樹脂の場合には酸の単量体として酸基の官能基を3以上有するものを用いたり、得られたポリエステル樹脂の末端の水酸基をさらに複数の酸基を有する化合物によりエステル化することによって得ることができる。また、後に述べる水系媒体中での分散安定剤として、酸基を有する界面活性剤や極性高分子、有機、無機樹脂微粒子を用い、トナー粒子表面に残存させ酸基を導入することができる。酸基としてはカルボキシル基、スルホン基、スルホン酸基、リン酸基などがあげられる。
【0190】
(乾式粉砕法)
粉砕系の一例としては、少なくとも結着剤樹脂、帯電制御剤および着色剤を含む原材料を機械的に混合する工程と、溶融混練する工程と、粉砕する工程と、分級する工程とを有するトナーの製造方法が適用できる。また、着色剤の分散性を向上させるために着色剤をマスターバッチ処理後、他の原材料と混合し、次工程へ処理しても良い。
【0191】
機械的に混合する混合工程は、回転させる羽による通常の混合機などを用いて通常の条件で行えばよく、特に制限はない。以上の混合工程が終了したら、次いで混合物を混練機に仕込んで溶融混練する。溶融混練機としては、一軸、二軸の連続混練機や、ロールミルによるバッチ式混練機を用いることができる。トナーを混練する具体的な装置としては、バッチ式の2本ロール、バンバリーミキサーや連続式の2軸押出し機、例えば神戸製鋼所社製KTK型2軸押出し機、東芝機械社製TEM型2軸押出し機、KCK社製2軸押出し機、池貝鉄工社製PCM型2軸押出し機、栗本鉄工所社製KEX型2軸押出し機や、連続式の1軸混練機、例えばブッス社製コ・ニーダ等が好適に用いられる。以上により得られた溶融混練物は冷却した後粉砕されるが、粉砕は、例えば、ハンマーミルやロートプレックス等を用いて粗粉砕し、更にジェット気流を用いた微粉砕機や機械式の微粉砕機などを使用することができる。粉砕は、平均粒径が3〜15μmになるように行うのが望ましい。さらに、粉砕物は風力式分級機等により、1〜5μmに粒度調整される。次いで、外添剤のトナー粒子へ外添が行われるが、トナー粒子と外添剤を、ミキサー類を用い混合・攪拌することにより外添剤が解砕されながらトナー粒子表面に被覆される。
【0192】
この粉砕系トナーでは、公知の結着樹脂を用いることができるが、顔料の分散性を良好にし、より広い色再現域の画像を得る観点からポリエステル樹脂を用いることが好ましい。さらに、結着樹脂である結晶性ポリエステルと非結晶性ポリエステルと、離型剤からなるで、広い定着温度幅を確保することができる。また、光沢性を損なわないためには、やはり離型剤の分散性を良好にすることでホットオフセットを防止することができる。
【0193】
本発明の画像形成装置で用いるトナーは、ポリマー懸濁法に近く、少なくとも、活性水素基を有する化合物と反応可能な部位を有する重合体、ポリエステル、着色剤、離型剤とを有機溶媒中にそれぞれ溶解又は分散させたトナー材料液を、水系媒体中で架橋及び/又は伸長反応させて得られるトナーが好ましい。活性水素基を有する化合物と反応可能な部位を有する重合体としては、活性水素基を有する化合物反応可能な部位を有するポリエステルプレポリマーが好ましく、該ポリエステルプレポリマーは、水系媒体中で架橋及び/又は伸長反応し、変性ポリエステルとしてトナーに含有される。以下に、このトナーの製造方法について詳述する。
【0194】
(変性ポリエステル)
本発明に係るトナーはバインダー樹脂として変性ポリエステル(i)を含むことが好ましい。変性ポリエステル(i)としては、ポリエステル樹脂中にエステル結合以外の結合基が存在したり、またポリエステル樹脂中に構成の異なる樹脂成分が共有結合、イオン結合などで結合した状態をさす。具体的には、ポリエステル末端に、カルボン酸基、水酸基と反応するイソシアネート基などの官能基を導入し、さらに活性水素基を有する化合物と反応させ、ポリエステル末端を変性したものを指す。
【0195】
変性ポリエステル(i)としては、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との反応により得られるウレア変性ポリエステルなどが挙げられる。イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)としては、多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の重縮合物で、かつ活性水素基を有するポリエステルを、さらに多価イソシアネート化合物(PIC)と反応させたものなどが挙げられる。上記ポリエステルの有する活性水素基としては、水酸基(アルコール性水酸基及びフェノール性水酸基)、アミノ基、カルボキシル基、メルカプト基などが挙げられ、これらのうち好ましいものはアルコール性水酸基である。
【0196】
ウレア変性ポリエステルは、以下のようにして生成される。
多価アルコール化合物(PO)としては、2価アルコール(DIO)および3価以上の多価アルコール(TO)が挙げられ、(DIO)単独、または(DIO)と少量の(TO)との混合物が好ましい。
2価アルコール(DIO)としては、アルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなど);アルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコールなど);脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールAなど);ビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなど);上記脂環式ジオールのアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物;上記ビスフェノール類のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなど)付加物などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコールおよびビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物であり、特に好ましいものはビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加物、およびこれと炭素数2〜12のアルキレングリコールとの併用である。3価以上の多価アルコール(TO)としては、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコール(グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトールなど);3価以上のフェノール類(トリスフェノールPA、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなど);上記3価以上のポリフェノール類のアルキレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0197】
多価カルボン酸(PC)としては、2価カルボン酸(DIC)および3価以上の多価カルボン酸(TC)が挙げられ、(DIC)単独、および(DIC)と少量の(TC)との混合物が好ましい。
2価カルボン酸(DIC)としては、アルキレンジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、セバシン酸など);アルケニレンジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸など);芳香族ジカルボン酸(フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸など)などが挙げられる。これらのうち好ましいものは、炭素数4〜20のアルケニレンジカルボン酸および炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸である。3価以上の多価カルボン酸(TC)としては、炭素数9〜20の芳香族多価カルボン酸(トリメリット酸、ピロメリット酸など)などが挙げられる。なお、多価カルボン酸(PC)としては、上述のものの酸無水物または低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いて多価アルコール(PO)と反応させてもよい。
【0198】
多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)の比率は、水酸基[OH]とカルボキシル基[COOH]の当量比[OH]/[COOH]として、通常2/1〜1/1、好ましくは1.5/1〜1/1、さらに好ましくは1.3/1〜1.02/1である。
【0199】
なお、多価アルコール化合物(PO)、及び多価カルボン酸(PC)としては、上記例示されたものの他、重縮合により活性水素基を有するポリエステルを形成できるものであれば、他のものを使用することも可能である。
【0200】
多価イソシアネート化合物(PIC)としては、脂肪族多価イソシアネート(テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなど);脂環式ポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルメタンジイソシアネートなど);芳香族ジイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなど);芳香脂肪族ジイソシアネート(α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートなど);イソシアネート類;前記ポリイソシアネートをフェノール誘導体、オキシム、カプロラクタムなどでブロックしたもの;およびこれら2種以上の併用が挙げられる。
【0201】
多価イソシアネート化合物(PIC)の比率は、イソシアネート基[NCO]と、水酸基を有するポリエステルの水酸基[OH]の当量比[NCO]/[OH]として、通常5/1〜1/1、好ましくは4/1〜1.2/1、さらに好ましくは2.5/1〜1.5/1である。[NCO]/[OH]が5を超えると低温定着性が悪化する。[NCO]のモル比が1未満では、ウレア変性ポリエステルを用いる場合、そのエステル中のウレア含量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0202】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の多価イソシアネート化合物(PIC)構成成分の含有量は、通常0.5〜40wt%、好ましくは1〜30wt%、さらに好ましくは2〜20wt%である。0.5wt%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。また、40wt%を超えると低温定着性が悪化する。
【0203】
イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中の1分子当たりに含有されるイソシアネート基は、通常1個以上、好ましくは、平均1.5〜3個、さらに好ましくは、平均1.8〜2.5個である。1分子当たり1個未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0204】
次に、ポリエステルプレポリマー(A)と反応させるアミン類(B)としては、2価アミン化合物(B1)、3価以上の多価アミン化合物(B2)、アミノアルコール(B3)、アミノメルカプタン(B4)、アミノ酸(B5)、およびB1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)などが挙げられる。
【0205】
2価アミン化合物(B1)としては、芳香族ジアミン(フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタンなど);脂環式ジアミン(4,4’−ジアミノ−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、ジアミンシクロヘキサン、イソホロンジアミンなど);および脂肪族ジアミン(エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど)などが挙げられる。3価以上の多価アミン化合物(B2)としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどが挙げられる。アミノアルコール(B3)としては、エタノールアミン、ヒドロキシエチルアニリンなどが挙げられる。アミノメルカプタン(B4)としては、アミノエチルメルカプタン、アミノプロピルメルカプタンなどが挙げられる。アミノ酸(B5)としては、アミノプロピオン酸、アミノカプロン酸などが挙げられる。B1〜B5のアミノ基をブロックしたもの(B6)としては、前記B1〜B5のアミン類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)から得られるケチミン化合物、オキサゾリジン化合物などが挙げられる。これらアミン類(B)のうち好ましいものは、B1およびB1と少量のB2の混合物である。
【0206】
アミン類(B)の比率は、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)中のイソシアネート基[NCO]と、アミン類(B)中のアミノ基[NHX]の当量比[NCO]/[NHX]として、通常2/1〜1/2、好ましくは1.5/1〜1/1.5、さらに好ましくは1.2/1〜1/1.2である。[NCO]/[NHX]が2を超えたり1/2未満では、ウレア変性ポリエステルの分子量が低くなり、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0207】
また、ウレア変性ポリエステル中には、ウレア結合と共にウレタン結合を含有していてもよい。ウレア結合含有量とウレタン結合含有量のモル比は、通常100/0〜10/90であり、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは、60/40〜30/70である。ウレア結合のモル比が10%未満では、耐ホットオフセット性が悪化する。
【0208】
本発明で用いられる変性ポリエステル(i)は、ワンショット法、プレポリマー法により製造される。変性ポリエステル(i)の重量平均分子量は、通常1万以上、好ましくは2万〜1000万、さらに好ましくは3万〜100万である。この時のピーク分子量は1000〜10000が好ましく、1000未満では伸長反応しにくくトナーの弾性が少なくその結果耐ホットオフセット性が悪化する。また10000を超えると定着性の低下や粒子化や粉砕において製造上の課題が高くなる。変性ポリエステル(i)の数平均分子量は、後述の変性されていないポリエステル(ii)を用いる場合は特に限定されるものではなく、前記重量平均分子量とするのに得やすい数平均分子量でよい。(i)単独の場合は、数平均分子量は、通常20000以下、好ましくは1000〜10000、さらに好ましくは2000〜8000である。20000を超えると低温定着性及びフルカラー装置に用いた場合の光沢性が悪化する。
【0209】
変性ポリエステル(i)を得るためのポリエステルプレポリマー(A)とアミン類(B)との架橋反応又は伸長反応には、必要により反応停止剤を用い、得られるウレア変性ポリエステルの分子量を調整することができる。反応停止剤としては、モノアミン(ジエチルアミン、ジブチルアミン、ブチルアミン、ラウリルアミンなど)、およびそれらをブロックしたもの(ケチミン化合物)などが挙げられる。
【0210】
(未変性ポリエステル)
本発明においては、前記変性されたポリエステル(i)単独使用だけでなく、この(i)と共に、未変性ポリエステル(ii)をバインダ樹脂成分として含有させることもできる。(ii)を併用することで、低温定着性及びフルカラー装置に用いた場合の光沢性が向上し、単独使用より好ましい。(ii)としては、前記(i)のポリエステル成分と同様な多価アルコール(PO)と多価カルボン酸(PC)との重縮合物などが挙げられ、好ましいものも(i)と同様である。また、(ii)は無変性のポリエステルだけでなく、ウレア結合以外の化学結合で変性されているものでもよく、例えばウレタン結合で変性されていてもよい。(i)と(ii)は少なくとも一部が相溶していることが低温定着性、耐ホットオフセット性の面で好ましい。従って、(i)のポリエステル成分と(ii)は類似の組成が好ましい。(ii)を含有させる場合の(i)と(ii)の重量比は、通常5/95〜80/20、好ましくは5/95〜30/70、さらに好ましくは5/95〜25/75、特に好ましくは7/93〜20/80である。(i)の重量比が5%未満では、耐ホットオフセット性が悪化するとともに、耐熱保存性と低温定着性の両立の面で不利になる。
【0211】
(ii)のピーク分子量は、通常1000〜10000、好ましくは2000〜8000、さらに好ましくは2000〜5000である。1000未満では耐熱保存性が悪化し、10000を超えると低温定着性が悪化する。
【0212】
バインダ樹脂のガラス転移点(Tg)は通常35〜70℃、好ましくは55〜65℃である。35℃未満ではトナーの耐熱保存性が悪化し、70℃を超えると低温定着性が不十分となる。ウレア変性ポリエステルは、得られるトナー母体粒子の表面に存在しやすいため、トナーにおいては、公知のポリエステル系トナーと比較して、ガラス転移点が低くても耐熱保存性が良好な傾向を示す。
【0213】
(着色剤)
着色剤としては公知の染料及び顔料が全て使用でき、例えば、カーボンブラック、ニグロシン染料、鉄黒、ナフトールイエローS、ハンザイエロー(10G、5G、G)、カドミュウムイエロー、黄色酸化鉄、黄土、黄鉛、チタン黄、ポリアゾイエロー、オイルイエロー、ハンザイエロー(GR、A、RN、R)、ピグメントイエローL、ベンジジンイエロー(G、GR)、パーマネントイエロー(NCG)、バルカンファストイエロー(5G、R)、タートラジンレーキ、キノリンイエローレーキ、アンスラザンイエローBGL、イソインドリノンイエロー、ベンガラ、鉛丹、鉛朱、カドミュウムレッド、カドミュウムマーキュリレッド、アンチモン朱、パーマネントレッド4R、パラレッド、ファイセーレッド、パラクロルオルトニトロアニリンレッド、リソールファストスカーレットG、ブリリアントファストスカーレット、ブリリアントカーンミンBS、パーマネントレッド(F2R、F4R、FRL、FRLL、F4RH)、ファストスカーレットVD、ベルカンファストルビンB、ブリリアントスカーレットG、リソールルビンGX、パーマネントレッドF5R、ブリリアントカーミン6B、ポグメントスカーレット3B、ボルドー5B、トルイジンマルーン、パーマネントボルドーF2K、ヘリオボルドーBL、ボルドー10B、ボンマルーンライト、ボンマルーンメジアム、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、ローダミンレーキY、アリザリンレーキ、チオインジゴレッドB、チオインジゴマルーン、オイルレッド、キナクリドンレッド、ピラゾロンレッド、ポリアゾレッド、クロームバーミリオン、ベンジジンオレンジ、ペリノンオレンジ、オイルオレンジ、コバルトブルー、セルリアンブルー、アルカリブルーレーキ、ピーコックブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、インダンスレンブルー(RS、BC)、インジゴ、群青、紺青、アントラキノンブルー、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ、コバルト紫、マンガン紫、ジオキサンバイオレット、アントラキノンバイオレット、クロムグリーン、ジンクグリーン、酸化クロム、ピリジアン、エメラルドグリーン、ピグメントグリーンB、ナフトールグリーンB、グリーンゴールド、アシッドグリーンレーキ、マラカイトグリーンレーキ、フタロシアニングリーン、アントラキノングリーン、酸化チタン、亜鉛華、リトボン及びそれらの混合物が使用できる。着色剤の含有量はトナーに対して通常1〜15重量%、好ましくは3〜10重量%である。
【0214】
本発明で用いる着色剤は樹脂と複合化されたマスターバッチとして用いることもできる。マスターバッチの製造またはマスターバッチとともに混練されるバインダー樹脂としては、先にあげた変性、未変性ポリエステル樹脂の他にポリスチレン、ポリp−クロロスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の重合体;スチレン−p−クロロスチレン共重合体、スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、エポキシ樹脂、エポキシポリオール樹脂、ポリウレタン、ポリアミド、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂、ロジン、変性ロジン、テルペン樹脂、脂肪族又は脂環族炭化水素樹脂、芳香族系石油樹脂、塩素化パラフィン、パラフィンワックスなどが挙げられ、単独あるいは混合して使用できる。
【0215】
このマスターバッチはマスターバッチ用の樹脂と着色剤とを高せん断力をかけて混合、混練してマスターバッチを得ることができる。この際着色剤と樹脂の相互作用を高めるために、有機溶剤を用いることができる。またいわゆるフラッシング法と呼ばれる着色剤の水を含んだ水性ペーストを樹脂と有機溶剤とともに混合混練を行い、着色剤を樹脂側に移行させ、水分と有機溶剤成分を除去する方法も着色剤のウェットケーキをそのまま用いることができるため乾燥する必要がなく、好ましく用いられる。混合混練するには3本ロールミル等の高せん断分散装置が好ましく用いられる。
【0216】
(離型剤)
また、トナーバインダー、着色剤とともに離型剤としてワックスを含有させることもできる。本発明で用いるワックスとしては公知のものが使用でき、例えばポリオレフィンワックス(ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなど);長鎖炭化水素(パラフィンワックス、サゾールワックスなど);カルボニル基含有ワックスなどが挙げられる。
【0217】
これらのうち好ましいものは、カルボニル基含有ワックスである。カルボニル基含有ワックスとしては、ポリアルカン酸エステル(カルナバワックス、モンタンワックス、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレートなど);ポリアルカノールエステル(トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなど);ポリアルカン酸アミド(エチレンジアミンジベヘニルアミドなど);ポリアルキルアミド(トリメリット酸トリステアリルアミドなど);およびジアルキルケトン(ジステアリルケトンなど)などが挙げられる。これらカルボニル基含有ワックスのうち好ましいものは、ポリアルカン酸エステルである。
【0218】
ワックスの融点は、通常40〜160℃であり、好ましくは50〜120℃、さらに好ましくは60〜90℃である。融点が40℃未満のワックスは耐熱保存性に悪影響を与え、160℃を超えるワックスは低温での定着時にコールドオフセットを起こしやすい。また、ワックスの溶融粘度は、融点より20℃高い温度での測定値として、5〜1000cpsが好ましく、さらに好ましくは10〜100cpsである。1000cpsを超えるワックスは、耐ホットオフセット性、低温定着性への向上効果に乏しい。トナー中のワックスの含有量は通常0〜40重量%であり、好ましくは3〜30重量%である。
【0219】
(帯電制御剤)
本発明のトナーは、必要に応じて帯電制御剤を含有してもよい。帯電制御剤としては公知のものが全て使用でき、例えばニグロシン系染料、トリフェニルメタン系染料、クロム含有金属錯体染料、モリブデン酸キレート顔料、ローダミン系染料、アルコキシ系アミン、四級アンモニウム塩(フッ素変性四級アンモニウム塩を含む)、アルキルアミド、燐の単体または化合物、タングステンの単体または化合物、フッ素系活性剤、サリチル酸金属塩及び、サリチル酸誘導体の金属塩等である。
【0220】
具体的にはニグロシン系染料のボントロン03、第四級アンモニウム塩のボントロンP−51、含金属アゾ染料のボントロンS−34、オキシナフトエ酸系金属錯体のE−82、サリチル酸系金属錯体のE−84、フェノール系縮合物のE−89(以上、オリエント化学工業社製)、第四級アンモニウム塩モリブデン錯体のTP−302、TP−415(以上、保土谷化学工業社製)、第四級アンモニウム塩のコピーチャージPSY VP2038、トリフェニルメタン誘導体のコピーブルーPR、第四級アンモニウム塩のコピーチャージ NEG VP2036、コピーチャージ NX VP434(以上、ヘキスト社製)、LRA−901、ホウ素錯体であるLRー147(日本カーリット社製)、銅フタロシアニン、ペリレン、キナクリドン、アゾ系顔料、その他スルホン酸基、カルボキシル基、四級アンモニウム塩等の官能基を有する高分子系の化合物が挙げられる。
【0221】
本発明において帯電制御剤の使用量は、バインダー樹脂の種類、必要に応じて使用される添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではないが、好ましくはバインダー樹脂100重量部に対して、0.1〜10重量部の範囲で用いられる。好ましくは、0.2〜5重量部の範囲がよい。10重量部を越える場合にはトナーの帯電性が大きすぎ、主帯電制御剤の効果を減退させ、現像ローラとの静電的吸引力が増大し、現像剤の流動性低下や、画像濃度の低下を招く。これらの帯電制御剤はマスターバッチ、樹脂とともに溶融混練した後溶解分散させる事もできるし、もちろん有機溶剤に直接溶解、分散する際に加えても良いし、トナー表面にトナー粒子作成後固定化させてもよい。
【0222】
(外添剤)
本発明における外添剤の重要な事項については先述したとおりであるが、以下では一般的に考慮されねばならない事項について述べる。得られた着色粒子の流動性や現像性、帯電性を補助するための外添剤としては、無機微粒子や疎水化処理無機微粒子等を用いることができる。それらは、条件を満たせば公知のものすべてが使用可能である。例えば、シリカ微粒子、疎水性シリカ、脂肪酸金属塩(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウムなど)、金属酸化物(チタニア、アルミナ、酸化スズ、酸化アンチモンなど)、フルオロポリマー等を含有してもよい。
【0223】
特に好適な外添剤としては、疎水化されたシリカ、チタニア、酸化チタン、アルミナ微粒子があげられる。シリカ微粒子としては、HDK H 2000、HDK H 2000/4、HDK H 2050EP、HVK21、HDK H 1303(以上ヘキスト)やR972、R974、RX200、RY200、R202、R805、R812(以上日本アエロジル)がある。また、チタニア微粒子としては、P−25(日本アエロジル)やSTT−30、STT−65C−S(以上チタン工業)、TAF−140(富士チタン工業)、MT−150W、MT−500B、MT−600B、MT−150A(以上テイカ)などがある。特に疎水化処理された酸化チタン微粒子としては、T−805(日本アエロジル)やSTT−30A、STT−65S−S(以上チタン工業)、TAF−500T、TAF−1500T(以上富士チタン工業)、MT−100S、MT−100T(以上テイカ)、IT−S(石原産業)などがある。
【0224】
疎水化処理された無機微粒子、シリカ微粒子及びチタニア微粒子、アルミナ微粒子を得るためには、親水性の微粒子をメチルトリメトキシシランやメチルトリエトキシシラン、オクチルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤で処理して得ることができる。またシリコーンオイルを必要ならば熱を加えて無機微粒子に処理した、シリコーンオイル処理無機微粒子も好適である。
【0225】
シリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、クロルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、フッ素変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アルコール変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル、エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル、フェノール変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、メルカプト変性シリコーンオイル、アクリル、メタクリル変性シリコーンオイル、α−メチルスチレン変性シリコーンオイル等が使用できる。
【0226】
無機微粒子としては、例えばシリカ、アルミナなど先述したとおりであり、その中でも特にシリカと二酸化チタンが好ましい。この他、高分子系微粒子たとえばソープフリー乳化重合や懸濁重合、分散重合によって得られるポリスチレン、メタクリル酸エステルやアクリル酸エステル共重合体やシリコーン、ベンゾグアナミン、ナイロンなどの重縮合系、熱硬化性樹脂による重合体粒子が挙げられる。
【0227】
このような流動化剤は表面処理を行って、疎水性を上げ、高湿度下においても流動特性や帯電特性の悪化を防止することができる。例えばシランカップリング剤、シリル化剤、フッ化アルキル基を有するシランカップリング剤、有機チタネート系カップリング剤、アルミニウム系のカップリング剤、シリコーンオイル、変性シリコーンオイルなどが好ましい表面処理剤として挙げられる。
【0228】
感光体や一次転写媒体に残存する転写後の現像剤を除去するためのクリーニング性向上剤としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸など脂肪酸金属塩、例えばポリメチルメタクリレート微粒子、ポリスチレン微粒子などのソープフリー乳化重合などによって製造された、ポリマー微粒子などを挙げることかできる。ポリマー微粒子は比較的粒度分布が狭く、体積平均粒径が0.01から1μmのものが好ましい。
【0229】
次に、トナーの製造方法について説明する。ここでは、好ましい製造方法について示すが、これに限られるものではない。
(トナーの製造方法)
1)着色剤、未変性ポリエステル、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー、離型剤を有機溶媒中に分散させトナー材料液を作る。
有機溶媒は、沸点が100℃未満の揮発性であることが、トナー母体粒子形成後の除去が容易である点から好ましい。具体的には、トルエン、キシレン、ベンゼン、四塩化炭素、塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロエチリデン、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを単独あるいは2種以上組合せて用いることができる。特に、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒および塩化メチレン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化炭化水素が好ましい。有機溶媒の使用量は、ポリエステルプレポリマー100重量部に対し、通常0〜300重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは25〜70重量部である。
【0230】
2)トナー材料液を界面活性剤、樹脂微粒子の存在下、水系媒体中で乳化させる。
水系媒体は、水単独でも良いし、アルコール(メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコールなど)、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、セルソルブ類(メチルセルソルブなど)、低級ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)などの有機溶媒を含むものであってもよい。トナー材料液100重量部に対する水系媒体の使用量は、通常50〜2000重量部、好ましくは100〜1000重量部である。50重量部未満ではトナー材料液の分散状態が悪く、所定の粒径のトナー粒子が得られない。20000重量部を超えると経済的でない。
【0231】
また、水系媒体中の分散を良好にするために、界面活性剤、樹脂微粒子等の分散剤を適宜加える。界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、リン酸エステルなどのアニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩、アミノアルコール脂肪酸誘導体、ポリアミン脂肪酸誘導体、イミダゾリンなどのアミン塩型や、アルキルトリメチルアンモニム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、ピリジニウム塩、アルキルイソキノリニウム塩、塩化ベンゼトニウムなどの4級アンモニウム塩型のカチオン性界面活性剤、脂肪酸アミド誘導体、多価アルコール誘導体などの非イオン界面活性剤、例えばアラニン、ドデシルジ(アミノエチル)グリシン、ジ(オクチルアミノエチル)グリシンやN−アルキル−N,N−ジメチルアンモニウムべタインなどの両性界面活性剤が挙げられる。
【0232】
また、フルオロアルキル基を有する界面活性剤を用いることにより、非常に少量でその効果をあげることができる。好ましく用いられるフルオロアルキル基を有するアニオン性界面活性剤としては、炭素数2〜10のフルオロアルキルカルボン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホニルグルタミン酸ジナトリウム、3−[ω−フルオロアルキル(C6〜C11)オキシ]−1−アルキル(C3〜C4)スルホン酸ナトリウム、3−[ω−フルオロアルカノイル(C6〜C8)−N−エチルアミノ]−1−プロパンスルホン酸ナトリウム、フルオロアルキル(C11〜C20)カルボン酸及びその金属塩、パーフルオロアルキルカルボン酸(C7〜C13)及びその金属塩、パーフルオロアルキル(C4〜C12)スルホン酸及びその金属塩、パーフルオロオクタンスルホン酸ジエタノールアミド、N−プロピル−N−(2−ヒドロキシエチル)パーフルオロオクタンスルホンアミド、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキル(C6〜C10)−N−エチルスルホニルグリシン塩、モノパーフルオロアルキル(C6〜C16)エチルリン酸エステルなどが挙げられる。
【0233】
商品名としては、サーフロンS−111、S−112、S−113(旭硝子社製)、フロラードFC−93、FC−95、FC−98、FC−129(住友3M社製)、ユニダインDS−101、DS−102(ダイキン工業社製)、メガファックF−110、F−120、F−113、F−191、F−812、F−833(大日本インキ社製)、エクトップEF−102、103、104、105、112、123A、123B、306A、501、201、204、(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−100、F150(ネオス社製)などが挙げられる。
【0234】
また、カチオン性界面活性剤としては、フルオロアルキル基を有する脂肪族1級、2級もしくは3級アミン酸、パーフルオロアルキル(C6〜C10)スルホンアミドプロピルトリメチルアンモニウム塩などの脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、商品名としてはサーフロンS−121(旭硝子社製)、フロラードFC−135(住友3M社製)、ユニダインDS−202(ダイキンエ業杜製)、メガファックF−150、F−824(大日本インキ社製)、エクトップEF−132(トーケムプロダクツ社製)、フタージェントF−300(ネオス社製)などが挙げられる。
【0235】
樹脂微粒子は、水性分散体を形成しうる樹脂であればいかなる樹脂も使用でき、熱可塑性樹脂でも熱硬化性樹脂でもよい。例えばビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ケイ素系樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、アニリン樹脂、アイオノマー樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。樹脂としては、上記の樹脂を2種以上併用しても差し支えない。
【0236】
このうち好ましいのは、微細球状樹脂粒子の水性分散体が得られやすい点から、ビニル系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂及びそれらの併用が好ましい。例えばビニル系樹脂としては、ビニル系モノマーを単独重合また共重合したポリマーで、例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸−アクリル酸エステル重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体等の樹脂が挙げられる。樹脂微粒子の平均粒径は5〜2000nm、好ましくは20〜300nmである。また、リン酸三カルシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、コロイダルシリカ、ヒドロキシアパタイト等の無機化合物分散剤も用いることができる。
【0237】
上記の樹脂微粒子、無機化合物分散剤と併用して使用可能な分散剤として、高分子系保護コロイドにより分散液滴を安定化させても良い。例えばアクリル酸、メタクリル酸、α−シアノアクリル酸、α−シアノメタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、フマール酸、マレイン酸または無水マレイン酸などの酸類、あるいは水酸基を含有する(メタ)アクリル系単量体、例えばアクリル酸−β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−β−ヒドロキシエチル、アクリル酸−β−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−β−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−γ−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロビル、メタクリル酸−3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル、ジエチレングリコールモノアクリル酸エステル、ジエチレングリコールモノメタクリル酸エステル、グリセリンモノアクリル酸エステル、グリセリンモノメタクリル酸エステル、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミドなど、ビニルアルコールまたはビニルアルコールとのエーテル類、例えばビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルプロピルエーテルなど、またはビニルアルコールとカルボキシル基を含有する化合物のエステル類、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニルなど、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドあるいはこれらのメチロール化合物、アクリル酸クロライド、メタクリル酸クロライドなどの酸クロライド類、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、ビニルイミダゾール、エチレンイミンなどの含窒素化合物、またはその複素環を有するものなどのホモポリマーまたは共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシプロピレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシプロピレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルフェニルエステル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエステルなどのポリオキシエチレン系、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース類などが使用できる。
【0238】
分散の方法としては特に限定されるものではないが、低速せん断式、高速せん断式、摩擦式、高圧ジェット式、超音波などの公知の設備が適用できる。この中でも、分散体の粒径を2〜20μmにするために高速せん断式が好ましい。高速せん断式分散機を使用した場合、回転数は特に限定はないが、通常1000〜30000rpm、好ましくは5000〜20000rpmである。分散時間は特に限定はないが、バッチ方式の場合は、通常0.1〜5分である。分散時の温度としては、通常、0〜150℃(加圧下)、好ましくは40〜98℃である。
【0239】
3)乳化液の作製と同時に、アミン類(B)を添加し、イソシアネート基を有するポリエステルプレポリマー(A)との反応を行わせる。
この反応は、分子鎖の架橋反応又は伸長反応の少なくともいずれかの反応を伴う。反応時間は、ポリエステルプレポリマー(A)の有するイソシアネート基構造とアミン類(B)との反応性により選択されるが、通常10分〜40時間、好ましくは2〜24時間である。反応温度は、通常、0〜150℃、好ましくは40〜98℃である。また、必要に応じて公知の触媒を使用することができる。具体的にはジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレートなどが挙げられる。
【0240】
4)反応終了後、乳化分散体(反応物)から有機溶媒を除去し、洗浄、乾燥してトナー母体粒子を得る。
有機溶媒を除去するためには、系全体を徐々に層流の攪拌状態で昇温し、一定の温度域で強い攪拌を与えた後、脱溶媒を行うことで紡錘形のトナー母体粒子が作製できる。また、分散安定剤としてリン酸カルシウム塩などの酸、アルカリに溶解可能な物を用いた場合は、塩酸等の酸により、リン酸カルシウム塩を溶解した後、水洗するなどの方法によって、トナー母体粒子からリン酸カルシウム塩を除去する。その他酵素による分解などの操作によっても除去できる。
【0241】
5)上記で得られたトナー母体粒子に、荷電制御剤を打ち込み、ついで、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子等の無機微粒子を外添させ、トナーを得る。
荷電制御剤の打ち込み、及び無機微粒子の外添は、ミキサー等を用いた公知の方法によって行われる。
【0242】
これにより、小粒径であって、粒径分布のシャープなトナーを容易に得ることができる。さらに、有機溶媒を除去する工程で強い攪拌を与えることで、真球状からラクビーボール状の間の形状を制御することができ、さらに、表面のモフォロジーも滑らかなものから梅干形状の間で制御することができる。
【0243】
トナーを二成分系現像剤として用いる場合には、磁性キャリアと混合して用いれば良く、現像剤中のキャリアとトナーの含有比は、現像剤としてトナー濃度が1〜10wt%が好ましい。磁性キャリアとしては、粒子径20〜50μm程度の鉄粉、フェライト粉、マグネタイト粉、磁性樹脂キャリアなど従来から公知のものが使用できる。
【0244】
樹脂被覆層を有する磁性キャリアが好ましく、その被覆材料としては、アミノ系樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等があげられる。またポリビニルおよびポリビニリデン系樹脂、例えばアクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリスチレン樹脂およびスチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、およびシリコーン樹脂等が使用できる。
【0245】
また必要に応じて、導電粉等を被覆樹脂中に含有させてもよい。導電粉としては、金属粉、カーボンブラック、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛等が使用できる。これらの導電粉は、平均粒子径1μm以下のものが好ましい。平均粒子径が1μmよりも大きくなると、電気抵抗の制御が困難になる。
また、トナーはキャリアを使用しない一成分系の磁性トナー又は非磁性トナーとしても用いることができる。
【0246】
次に本発明における画像形成装置の好ましい形態について説明する。まず、本発明における画像形成装置の重要な点(クリーニングブレードの硬度、反発弾性、ポリウレタンゴム板など)について述べる。
【0247】
(クリーニングブレード硬度)
本発明におけるクリーニングブレードは、硬度(JIS−A硬度/JIS K6253硬さ試験で規定)が70〜80°であるのが好ましい。硬度が70°未満の場合には、軟らかくクリーニングブレード自体が磨耗しやすいために、磨耗により生じる隙間のためにトナーすり抜けが発生し経時でクリーニング性能が劣化しやすい。また、硬度が80°を超える場合には、硬いためクリーニングブレードの欠けが生じやすく、経時でクリーニング性能が劣化しやすい。
【0248】
そこで、本発明の画像形成装置のクリーニングブレードは、硬度を70〜80°、より好ましくは72〜76°であるのが良い。これにより、経時でのクリーニング性能の劣化を抑制することが可能となっている。
【0249】
(クリーニングブレード反発弾性)
本発明におけるクリーニングブレードは、反発弾性(JIS K6255反発弾性試験で規定)が25℃において10〜35%であるのが好ましい。反発弾性が10%未満の場合には、クリーニングブレードは十分にトナーをせき止められずにすり抜けやすくなってしまう。また、反発弾性が35%を超える場合は、ブレードエッジが微小に振動するスティックスリップ運動が激しくなり、ブレードエッジが経時でカケやすくなり、カケた部分からトナーがすり抜けクリーニング性能が劣化する。
そこで、本発明におけるクリーニングブレードは、25℃での反発弾性を10〜35%とする。これにより、経時でもクリーニング性能の劣化を抑制することが可能となる。
【0250】
(クリーニングブレードの作製)
クリーニングブレードの作製は、公知の方法で行うことができる。例えば、ポリウレタンゴム板の製造方法は、ポリオール化合物とジイソシアネート化合物を反応させてイソシアネートプレポリマー又はイソシアネート擬似プレポリマーを製造するプレポリマー製造工程、イソシアネートプレポリマー又はイソシアネート擬似プレポリマーと架橋剤並びに鎖延長剤を含む成分と混合して反応性組成物とする混合工程、反応性組成物を金型等を使用して所定形状の成形体に成形する成形工程により製造する。こうして得られたウレタンゴム板は、裁断工程により所定のブレード形状に裁断される。
イソシアネート化合物とポリオール化合物の種類と割合、反応条件、架橋方法により硬度と反発弾性が変化するので、これらを適宜調整することにより硬度と反発弾性を本発明の範囲とすることができる。
【0251】
本発明の実施形態におけるクリーニングブレードは、厚さ2mmで形成され、厚さ1mmの鉄製支持体にホットメルト接着剤で取り付けられたものである。
【0252】
本発明によれば、少なくとも複数の電子写真感光体、帯電手段、露光手段、転写手段を有するタンデム型画像形成装置、画像形成方法が提供される。これによって、1ドラム型画像形成装置にくらべて、非常に高速で良好なフルカラー画像を得ることができる。
【0253】
また、本発明によれば、電子写真感光体上に現像されたトナー画像を中間転写体上に一次転写したのち、該中間転写体上のトナー画像を記録材上に二次転写する中間転写手段を有する画像形成装置であって、複数色のトナー画像を中間転写体上に順次重ね合わせてカラー画像を形成し、該カラー画像を記録材上に一括で二次転写することで、色ズレを抑えた良好な画像が提供される。
さらに中間転写体を介するレイアウトによって、画像形成装置内のレイアウトの自由度が向上し、装置の小型化、メンテナンス性の向上などが達成される。
【0254】
<画像形成方法及び装置について>
次に図面に基づいて本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置を詳しく説明する。
本発明の画像形成方法ならびに画像形成装置とは、平滑な電荷輸送性表面架橋層を有する感光体を用い、例えば少なくとも感光体に帯電、画像露光、現像の過程を経た後、画像保持体(転写紙)へのトナー画像の転写、定着及び感光体表面のクリーニングというプロセスよりなる画像形成方法ならびに画像形成装置である。
【0255】
図5は、画像形成装置の一例を示す概略図である。感光体を平均的に帯電させる手段として、帯電チャージャ(3)が用いられる。この帯電手段としては、コロトロンデバイス、スコロトロンデバイス、固体放電素子、針電極デバイス、ローラ帯電デバイス、導電性ブラシデバイス等が用いられ、公知の方式が使用可能である。
【0256】
特に本発明の構成は、接触帯電方式又は非接触近接配置帯電方式のような帯電手段からの近接放電により感光体組成物が分解する様な帯電手段を用いた場合に有効である。ここで言う接触帯電方式とは、感光体に帯電ローラ、帯電ブラシ、帯電ブレード等が直接接触する帯電方式である。一方の近接帯電方式とは、例えば帯電ローラが感光体表面と帯電手段との間に200μm以下の空隙を有するように非接触状態で近接配置したタイプのものである。この空隙は、大きすぎた場合には帯電が不安定になりやすく、また、小さすぎた場合には、感光体に残留したトナーが存在する場合に、帯電部材表面が汚染されてしまう可能性がある。したがって、空隙は10〜200μm、好ましくは10〜100μmの範囲が適当である。そして帯電装置には少なくとも交番電圧を重畳した直流電圧を印加することが好ましい。
【0257】
次に、均一に帯電された感光体(1)上に静電潜像を形成するために画像露光部(5)が用いられる。この光源には、蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)などの発光物全般を用いることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルターなどの各種フィルターを用いることもできる。
【0258】
次に、感光体(1)上に形成された静電潜像を可視化するために現像ユニット(6)が用いられる。現像方式としては、乾式トナーを用いた一成分現像法、二成分現像法、湿式トナーを用いた湿式現像法がある。感光体に正(負)帯電を施し、画像露光を行なうと、感光体表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。
【0259】
次に、感光体上で可視化されたトナー像を転写体(9)上に転写するために転写チャージャ(10)が用いられる。また、転写をより良好に行なうために転写前チャージャ(7)を用いてもよい。これらの転写手段としては、転写チャージャ、バイアスローラーを用いる静電転写方式、粘着転写法、圧力転写法等の機械転写方式、磁気転写方式が利用可能である。静電転写方式としては、前記帯電手段が利用可能である。
【0260】
次に、転写体(9)を感光体(1)より分離する手段として分離チャージャ(11)、分離爪(12)が用いられる。その他分離手段としては、静電吸着誘導分離、側端ベルト分離、先端グリップ搬送、曲率分離等が用いられる。分離チャージャ(11)としては、前記帯電手段が利用可能である。
【0261】
次に、転写後感光体上に残されたトナーをクリーニングするためにファーブラシ(14)、クリーニングブレード(15)が用いられる。クリーニングブレードとしては先述のように硬度(JIS−A硬度/JIS K6253硬さ試験で規定)が70〜80°、反発弾性(JIS K6255反発弾性試験で規定)が25℃において10〜35%であるポリウレタンゴム板からなるのが好ましい。
【0262】
また、クリーニングをより効率的に行なうためにクリーニング前チャージャ(13)を用いてもよい。その他クリーニング手段としては、ウェブ方式、マグネットブラシ方式等があるが、それぞれ単独又は複数の方式を一緒に用いてもよい。
【0263】
次に、必要に応じて感光体上の潜像を取り除く目的で除電手段が用いられる。除電手段としては除電ランプ(2)、除電チャージャが用いられ、それぞれ前記露光光源、帯電手段が利用できる。
その他、感光体に近接していない原稿読み取り、給紙、定着、排紙等のプロセスは公知のものが使用できる。
【0264】
本発明の画像形成装置としては、例えば図6に示した中間転写手段を有する画像形成装置を用いることができる。
図6において、本体(100)は電子写真方式によるカラー画像形成を行なうための画像書込部(120Bk,120C,120M,120Y)、画像形成部(130Bk,130C,130M,130Y)、給紙部(140)から主に構成されている。画像信号を元に、画像処理部(図示せず)で画像処理を行ない、画像形成用の黒(Bk),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各色信号に変換し、画像書込部(120Bk,120C,120M,120Y)に送信する。画像書込部(120Bk,120C,120M,120Y)は、例えば、レーザ光源、回転多面鏡等の偏向器、走査結像光学系及びミラー群(いずれも図示せず)からなるレーザ走査光学系であり、上記の各色信号に対応した4つの書込光路を有し、画像形成部(130Bk,130C,130M,130Y)に各色信号に応じた画像書込を行なう。
【0265】
画像形成部(130Bk,130C,130M,130Y)は、黒,シアン,マゼンタ,イエロー用の各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)を備え、これらの各色用の感光体(210Bk,210C,210M,210Y)には本発明に係る架橋表面層を有する感光体が用いられる。各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)の周囲には、帯電装置(215Bk,215C,215M,215Y)、上記画像書込部(120Bk,120C,120M,120Y)からのレーザ光の露光部、各色用の現像装置(200Bk,200C,200M,200Y)、1次転写装置(230Bk,230C,230M,230Y)、クリーニング装置(300Bk,300C,300M,300Y)、除電装置(図示せず)等が配設されている。なお、上記現像装置(200Bk,200C,200M,200Y)には、2成分磁気ブラシ現像方式を用いている。また、中間転写ベルト(220)が各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)と1次転写装置(230Bk,230C,230M,230Y)との間に介在し、この中間転写ベルト(220)に各感光体から各色のトナー像が順次重ね合わせて転写され、各感光体上のトナー像を担持する。
【0266】
1次転写装置(230Bk,230C,230M,230Y)の間に導電性ローラ(241),(242),(243)が設けられている。そして、転写紙は給紙部(140)から給紙された後、レジストローラ対(160)を介して転写ベルト(500)に担持され、中間転写ベルト(220)と転写ベルト(500)が接触するところで2次転写ローラ(600)により中間転写ベルト(220)上のトナー像が転写紙に転写され、カラー画像形成が行なわれる。
そして、画像形成後の転写紙は転写ベルト(500)で定着装置(150)に搬送され、画像が定着されてカラー画像が得られる。転写されずに残った中間転写ベルト(220)上のトナーは、導電性ファーブラシ(261)、(262)からなる中間転写体クリーニング装置によってベルトから除去される。
【0267】
転写紙への転写前の中間転写ベルト(220)上のトナー極性は、現像時と同じマイナス極性であるため、2次転写ローラ(600)にはプラスの転写バイアス電圧が印加され、トナーは転写紙上に転写される。この部分でのニップ圧が転写性に影響し、定着性に大きく影響する。また、転写されずに残った中間転写ベルト(220)上のトナーは、転写紙と中間転写ベルト(220)とが離れる瞬間にプラス極性側に放電帯電され、0〜プラス側に帯電される。なお、転写紙のジャム時や非画像域に形成されたトナー像は、2次転写の影響を受けないため、もちろんマイナス極性のままである。
【0268】
感光体層の厚みを30μmとし、光学系のビームスポット径を50×60μm、光量を0.47mWとしている。感光体(黒)(210Bk)の帯電(露光側)電位V0を−700V、露光後電位VLを−120Vとして現像バイアス電圧を−470Vすなわち現像ポテンシャル350Vとして現像工程が行なわれるものである。感光体(黒)(210Bk)上に形成されたトナー(黒)の顕像はその後、転写(中間転写ベルト及び転写紙)、定着工程を経て画像として完成される。転写は最初、1次転写装置(230Bk,230C,230M,230Y)から中間転写ベルト(220)へ全色転写された後、更に別の2次転写ローラ(600)へのバイアス印加により転写紙へ転写される。
【0269】
次に、感光体クリーニング装置について詳細に説明する。図6において、各現像装置(200Bk,200C,200M,200Y)と各クリーニング装置(300Bk,300C,300M,300Y)とは、各々トナー移送管(250Bk,250C,250M,250Y)で接続されている(図5中の破線)。そして、各トナー移送管(250Bk,250C,250M,250Y)の内部には、スクリュー(図示せず)が入っており、各クリーニング装置(300Bk,300C,300M,300Y)で回収されたトナーが、各現像装置(200Bk,200C,200M,200Y)へ移送されるようになっている。
【0270】
従来の4つの感光体ドラムとベルト搬送との組合せによる直接転写方式では、感光体と転写紙が当接することにより紙粉が付着しトナーを回収すると紙粉が含有しているので、画像形成時にトナー抜け等の画像劣化をきたし使用することができなかった。更に、従来の一つの感光体ドラムと中間転写とを組合せたシステムでは、中間転写体の採用で転写紙転写時の感光体への紙粉付着はなくなったが、感光体への残トナーのリサイクルを行おうした場合、混色したトナーを分離することは実用上不可能である。また、混色トナーを黒トナーとして使用する提案があるが、全色混合しても黒にならず、プリントモードにより色が変化するため1つの感光体の構成ではトナーリサイクルは不可能であった。
これに対して、本実施形態に係るプリンタでは、中間転写ベルト(220)を使用するので紙粉の混入が少なく、かつ、紙転写時の感光体への紙粉の付着も防止される。各感光体(210Bk,210C,210M,210Y)が独立した色のトナーを使用するので各感光体クリーニング装置(300Bk,300C,300M,300Y)を接離する必要もなく、確実にトナーのみを回収することができる。
【0271】
上記中間転写ベルト(220)上に残ったプラス帯電されたトナーは、マイナス電圧が印加された導電性ファーブラシ(262)でクリーニングされる。導電性ファーブラシ(262)への電圧印加方法は、導電性ファーブラシ(261)と極性が異なるだけで全く同一である。転写されずに残ったトナーも2つの導電性ファーブラシ(261),(262)でほとんどクリーニングされる。ここで、導電性ファーブラシ(262)でクリーニングされずに残ったトナー、紙粉、タルク等は、導電性ファーブラシ(262)のマイナス電圧により、マイナス帯電される。次の黒色の1次転写は、プラス電圧による転写であり、マイナス帯電したトナー等は中間転写ベルト(220)側に引き寄せられるため、感光体(黒)(210Bk)側への移行は防止できる。
【0272】
次に、本実施形態の画像形成装置に使用される中間転写ベルト(220)について説明する。中間転写ベルトは前述のとおり、単層の樹脂層であることが好ましいが、必要に応じて、弾性層や、表層を保有しても良い。
上記樹脂層を構成する樹脂材料としては、ポリカーボネート、フッ素系樹脂(ETFE,PVDF)、ポリスチレン、クロロポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体(スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体及びスチレン−アクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体(スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニル共重合体等)、スチレン−α−クロルアクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−アクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂(スチレンまたはスチレン置換体を含む単重合体または共重合体)、メタクリル酸メチル樹脂、メタクリル酸ブチル樹脂、アクリル酸エチル樹脂、アクリル酸ブチル樹脂、変性アクリル樹脂(シリコーン変性アクリル樹脂、塩化ビニル樹脂変性アクリル樹脂、アクリル・ウレタン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルポリウレタン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニリデン、アイオノマー樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、ケトン樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合体、キシレン樹脂及びポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではないことは当然である。
【0273】
また、上記弾性層を構成する弾性材料(弾性材ゴム、エラストマー)としては、ブチルゴム、フッ素系ゴム、アクリルゴム、EPDM、NBR、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレンターポリマー、クロロプレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ウレタンゴム、シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、エピクロロヒドリン系ゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、多硫化ゴム、ポリノルボルネンゴム、水素化ニトリルゴム、熱可塑性エラストマー(例えばポリスチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、ポリウレア、ポリエステル系、フッ素樹脂系)等からなる群より選ばれる1種類あるいは2種類以上を使用することができる。ただし、上記材料に限定されるものではないことは当然である。
【0274】
また、上記表層の材料は特に制限は無いが、中間転写ベルト表面へのトナーの付着力を小さくして2次転写性を高めるものが要求される。例えば、ポリウレタン、ポリエステル、エポキシ樹脂等の1種類あるいは2種類以上を使用し表面エネルギーを小さくし潤滑性を高める材料、例えばフッ素樹脂、フッ素化合物、フッ化炭素、2酸化チタン、シリコンカーバイト等の粉体、粒子を1種類あるいは2種類以上または粒径を異ならしたものを分散させ使用することができる。また、フッ素系ゴム材料のように熱処理を行なうことで表面にフッ素リッチな層を形成させ表面エネルギーを小さくさせたものを使用することもできる。
【0275】
上記樹脂層や弾性層には、抵抗値調節用導電剤が添加される。この抵抗値調節用導電剤は特に制限はないが、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アルミニウムやニッケル等の金属粉末、酸化錫,酸化チタン、酸化アンチモン、酸化インジウム、チタン酸カリウム、酸化アンチモン−酸化錫複合酸化物(ATO)、酸化インジウム−酸化錫複合酸化物(ITO)等の導電性金属酸化物、導電性金属酸化物は、硫酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、炭酸カルシウム等の絶縁性微粒子を被覆したものでもよい。上記導電剤に限定されるものではないことは当然である。
【0276】
本発明は、このような画像形成手段に先述した感光層の表面に架橋表面層を有する電子写真感光体を用いる画像形成方法及び画像形成装置を提供するものである。この画像形成手段は、複写装置、ファクシミリ、プリンタ内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形態でそれら装置内に組み込まれ、着脱自在としたものであってもよい。プロセスカートリッジの一例を図7に示す。
【0277】
画像形成装置用プロセスカートリッジとは、感光体101を内蔵し、他に帯電手段102、現像手段104、転写手段106、クリーニング手段107、除電手段(図示せず)の少なくとも一つを具備し、画像形成装置本体に着脱可能とした装置(部品)である。
【0278】
図7に例示される装置による画像形成プロセスについて示すと、感光体101は、矢印方向に回転しながら、帯電手段102による帯電、露光手段(図示せず)露光103により、その表面に露光像に対応する静電潜像が形成され、この静電潜像は、現像手段104でトナー現像され、該トナー現像は転写手段106により、転写体105に転写され、プリントアウトされる。次いで、像転写後の感光体表面は、クリーニング手段107によりクリーニングされ、さらに除電手段(図示せず)により除電されて、再び以上の操作を繰り返すものである。
【0279】
本発明によるプロセスカートリッジは、平滑な電荷輸送性表面架橋層を有する感光体と、少なくとも現像手段とクリーニング手段を有する。
【0280】
本発明の画像形成方法において使用される定着装置としては、例えば図8に示した定着装置を用いることができる。
図8に示す定着装置は、誘導加熱手段(6)の電磁誘導により加熱される加熱ローラ(1)と、加熱ローラ(1)と平行に配置された定着ローラ(2)(対向回転体)と、加熱ローラ(1)と定着ローラ(2)とに張り渡され、加熱ローラ(1)により加熱されるとともに少なくともこれらの何れかのローラの回転により矢印A方向に回転する無端帯状の耐熱性ベルト(トナー加熱媒体)(3)と、ベルト(3)を介して定着ローラ(2)に圧接されるとともにベルト(3)に対して順方向に回転する加圧ローラ(4)(加圧回転体)とから構成されている。
【0281】
加熱ローラ(1)は例えば鉄、コバルト、ニッケルまたはこれら金属の合金等の中空円筒状の磁性金属部材からなり、外径を例えば20〜40mm、肉厚を例えば0.3〜1.0mmとして、低熱容量で昇温の早い構成となっている。
定着ローラ(2)(対向回転体)は、例えばステンレススチール等の金属製の芯金(2a)と、耐熱性を有するシリコーンゴムをソリッド状または発泡状にして芯金(2a)を被覆した弾性部材(2b)とからなる。そして、加圧ローラ(4)からの押圧力でこの加圧ローラ(4)と定着ローラ(2)との間に所定幅の接触部を形成するために外径を20〜40mm程度として加熱ローラ(1)と同じか、(1)より大きくしている。弾性部材(2b)は、その肉厚を4〜6mm程度としている。この構成により、加熱ローラ(1)の熱容量は定着ローラ(2)の熱容量より小さくなるので、加熱ローラ(1)が急激に加熱されてウォームアップ時間が短縮される。
【0282】
加熱ローラ(1)と定着ローラ(2)とに張り渡されたベルト(3)は、誘導加熱手段(6)により加熱される加熱ローラ(1)との接触部位(W1)で加熱される。そして、ローラ(1),(2)の回転によってベルト(3)の内面が連続的に加熱され、結果としてベルト全体に渡って加熱される。
また、図9にベルト(3)の構成を示す。ベルト(3)の構成は、以下の通りである。
内層から表層に向かって下記4層となる。
・基体(樹脂層:ポリイミド(PI)樹脂など)
・発熱層(導電材料として、Ni,Ag,SUS等):(3a)
・中間層(弾性層で均一定着を狙う):(3b)
・表層(離型層)(弗素樹脂材料で、離型効果とオイルレスを狙う):(3c)
【0283】
離型層(3c)の厚さとしては、10μmから300μm程度が望ましく、特に200μm程度が望ましい。このようにすれば、転写材(11)上に形成されたトナー像(T)をベルト(3)の表層部が十分に包み込むため、トナー像(T)を均一に加熱溶融することが可能になる。
離型層(3c)の厚さ、即ち表面離型層は経時耐磨耗性を確保するためには最低10μmは必要である。
また、離型層(3c)の厚さが300μmよりも大きい場合には、ベルト(3)の熱容量が大きくなってウォームアップにかかる時間が長くなる。さらに加えて、トナー定着工程においてベルト表面温度が低下しにくくなって、定着部出口における融解したトナーの凝集効果が得られず、ベルトの離型性が低下してトナーがベルトに付着する、いわゆるホットオフセットが発生する。
【0284】
なお、ベルト(3)の基材として、上記金属からなる発熱層(3a)の代わりに、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂などの耐熱性を有する樹脂層を用いてもよい。
【0285】
加圧ローラ(4)は、たとえば銅またはアルミ等の熱伝導性の高い金属製の円筒部材からなる芯金(4a)と、この芯金(4a)の表面に設けられた耐熱性およびトナー離型性の高い弾性部材(4b)とから構成されている。芯金(4a)には上記金属以外にSUSを使用しても良い。加圧ローラ(4)はベルト(3)を介して定着ローラ(2)を押圧して定着ニップ部(N)を形成しているが、本実施の形態では、加圧ローラ(4)の硬度を定着ローラ(2)に比べて硬くすることによって、加圧ローラ(4)が定着ローラ(2)(及びベルト(3))へ食い込む形となり、この食い込みにより、記録材(11)は加圧ローラ(4)表面の円周形状に沿うため、記録材(11)がベルト(3)表面から離れやすくなる効果を持たせている。この加圧ローラ(4)の外径は定着ローラ(2)と同じ20〜40mm程度であるが、肉圧は0.5〜2.0mm程度で定着ローラ(2)より薄く構成されている。
【0286】
電磁誘導により加熱ローラ(1)を加熱する誘導加熱手段(6)は、図8に示すように、磁界発生手段である励磁コイル(7)と、この励磁コイル(7)が巻き回されたコイルガイド板(8)とを有している。コイルガイド板(8)は加熱ローラ(1)の外周面に近接配置された半円筒形状をしており、励磁コイル(7)は長い一本の励磁コイル線材をこのコイルガイド板(8)に沿って加熱ローラ(1)の軸方向に交互に巻き付けたものである。なお、励磁コイル(7)は、発振回路が周波数可変の駆動電源(図示せず)に接続されている。
励磁コイル(7)の外側には、フェライト等の強磁性体よりなる半円筒形状の励磁コイルコア(9)が、励磁コイルコア支持部材(10)に固定されて励磁コイル(7)に近接配置されている。
【実施例】
【0287】
以下、本発明を実施例及び比較例にて更に詳細に説明する。なお、本発明は、ここに例示される実施例及び比較例に限定されるものではない。なお、実施例中の部は重量部を表す。まず、評価に用いたトナーの具体的な作製例について説明する。本発明で用いるトナーは、これらの例に限定されるものではない。
【0288】
[トナー1]
〜有機微粒子エマルションの合成〜
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、水683部、メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩(エレミノールRS−30、三洋化成工業製)11部、メタクリル酸166部、アクリル酸ブチル110部、過硫酸アンモニウム1部を仕込み、3800回転/分で30分間撹拌したところ、白色の乳濁液が得られた。加熱して、系内温度75℃まで昇温し4時間反応させた。さらに、1%過硫酸アンモニウム水溶液30部加え、75℃で6時間熟成してビニル系樹脂(メタクリル酸−アクリル酸ブチル−メタクリル酸エチレンオキサイド付加物硫酸エステルのナトリウム塩の共重合体)の水性分散液[微粒子分散液1]を得た。[微粒子分散液1]をLA−920で測定した体積平均粒径は、110nmであった。[微粒子分散液1]の一部を乾燥して樹脂分を単離した。単離した樹脂分のTgは58℃であり、重量平均分子量は13万であった。
【0289】
〜水相の調整〜
水990部、[微粒子分散液1]83部、ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウムの48.3%水溶液(エレミノールMON−7:三洋化成工業製)37部、酢酸エチル90部を混合撹拌し、乳白色の液体を得た。これを[水相1]とする。
【0290】
〜フッ素系活性剤水溶液の調整〜
N,N,N,−トリメチル−[3−(4−ペルフルオロノネニルオキシベンズアミド)プロピル]アンモニウム、ヨージド製品名フタージェント310(ネオス社製)10部、メタノール297部を容器に入れ、50℃に加熱し透明になるまで攪拌する。得られたフッ素系活性剤メタノール溶液を、攪拌しているイオン交換水693部に滴下し、滴下終了後50℃で30分攪拌して、[フッ素系活性剤水溶液1]を得た。
【0291】
〜低分子ポリエステルの合成〜
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物229部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド3モル付加物529部、テレフタル酸208部、アジピン酸46部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧下230℃で7時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時間反応した後、反応容器に無水トリメリット酸44部を入れ、180℃、常圧で3時間反応し、[低分子ポリエステル1]を得た。[低分子ポリエステル1]は、数平均分子量2300、重量平均分子量6700、Tg43℃、酸価25であった。
【0292】
〜中間体ポリエステルの合成〜
冷却管、撹拌機および窒索導入管の付いた反応容器中に、ビスフェノールAエチレンオキサイド2モル付加物682部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド2モル付加物81部、テレフタル酸283部、無水トリメリット酸22部およびジブチルチンオキサイド2部を入れ、常圧下230℃で7時間反応し、さらに10〜15mmHgの減圧で5時間反応した[中間体ポリエステル1]を得た。[中間体ポリエステル1]は、数平均分子量2200、重量平均分子量9700、Tg54℃、酸価0.5、水酸基価52であった。
【0293】
次に、冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応容器中に、[中間体ポリエステル1]410部、イソホロンジイソシアネート89部、酢酸エチル500部を入れ100℃で5時間反応し、[プレポリマー1]を得た。[プレポリマー1]の遊離イソシアネート重量%は、1.53%であった。
【0294】
〜ケチミンの合成〜
撹拌棒および温度計をセットした反応容器に、イソホロンジアミン170部とメチルエチルケトン75部を仕込み、50℃で4時間半反応を行い、[ケチミン化合物1]を得た。[ケチミン化合物1]のアミン価は417であった。
【0295】
〜マスターバッチ(MB)の合成〜
水1200部、カーボンブラック(PrinteX35 デクサ製)540部〔DBP吸油量=42ml/100mg、pH=9.5〕、ポリエステル樹脂1200部を加え、ヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で混合し、混合物を2本ロールを用いて130℃で1時間混練後、圧延冷却しパルペライザーで粉砕して、[マスターバッチ1]を得た。
【0296】
〜油相の作製〜
撹拌棒および温度計をセットした容器に、[低分子ポリエステル1]378部、カルナバWAX100部、酢酸エチル947部を仕込み、撹拌下80℃に昇温し、80℃のまま5時間保持した後、1時間で30℃に冷却した。次いで容器に[マスターバッチ1]500部、酢酸エチル500部を仕込み、1時間混合して[原料溶解液1]を得た。
【0297】
[原料溶解液1]1324部を容器に移し、ビーズミル(ウルトラビスコミル、アイメックス社製)を用いて、送液速度1kg/hr、ディスク周速度6m/秒、0.5mmジルコニアビーズを80体積%充填、3パスの条件で、カーボンブラック、WAXの分散を行った。次いで、[低分子ポリエステル1]の65%酢酸エチル溶液1324部を加え、上記条件のビーズミルで2パスし、[顔料・WAX分散液1]を得た。[顔料・WAX分散液1]の固形分濃度(130℃、30分)は50%であった。
【0298】
〜乳化⇒脱溶剤〜
[顔料・WAX分散液1]749部、[プレポリマー1]を115部、[ケチミン化合物1]2.9部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)で5000rpmで2分間混合した後、容器に[水相1]1200部を加え、TKホモミキサーで、回転数13,000rpmで25分間混合して[乳化スラリー1]を得た。
撹拌機および温度計をセットした容器に、[乳化スラリー1]を投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で7時間熟成を行い、[分散スラリー1]を得た。
【0299】
〜洗浄⇒フッ素活性剤処理⇒乾燥⇒風篩〜
[分散スラリー1]100部を減圧濾過した後、
(1):濾過ケーキにイオン交換水100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(2):(1)の濾過ケーキに10%水酸化ナトリウム水溶液100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで30分間)した後、減圧濾過した。
(3):(2)の濾過ケーキに10%塩酸100部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過した。
(4):(3)の濾過ケーキにイオン交換水300部を加え、TKホモミキサーで混合(回転数12,000rpmで10分間)した後濾過する操作を2回行い[濾過ケーキ1]を得た。
(5):[濾過ケーキ1]630部、イオン交換水2928部を容器に入れ、スリーワンモータ(新東科学製)で攪拌(回転数:400rpmで5分)して30℃に加熱する。回転数・温度を保ちながら[フッ素系活性剤水溶液1]11部を滴下する。滴下終了後60分間攪拌し、濾過を行い[フッ素系活性剤処理後濾過ケーキ1]を得た。
[フッ素系活性剤処理後濾過ケーキ1]を循風乾燥機にて45℃で48時間乾燥した。そして、目開き75μmメッシュで篩い、トナーを得た。
【0300】
このトナー100部に対して、平均粒径0.015μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を0.1部と平均粒径0.015μmの酸化チタン微粉体(イソブチルトリメトキシシラン処理)0.1部と平均粒径0.140μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を1.0部をヘンシェルミキサーで混合してからフルイがけをして[トナー1]を作製した。
【0301】
[トナー2]
[トナー1]において、外添剤の添加を、トナー100部に対して、平均粒径0.015μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を0.5部と平均粒径0.015μmの酸化チタン微粉体(イソブチルトリメトキシシラン処理)0.4部と平均粒径0.140μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を1.0部をヘンシェルミキサーで混合してからフルイがけをした以外は[トナー1]と同様にして[トナー2]を作製した。
【0302】
[トナー3]
[トナー1]において、〜乳化⇒脱溶剤〜の工程を以下に変更し、外添剤の添加を、得られたトナー100部に対して、平均粒径0.015μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を0.7部と平均粒径0.015μmの酸化チタン微粉体(イソブチルトリメトキシシラン処理)0.3部と平均粒径0.140μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を1.2部をヘンシェルミキサーで混合してからフルイがけをした以外は[トナー1]と同様にして[トナー3]を作製した。
【0303】
〜乳化⇒脱溶剤〜
[顔料・WAX分散液1]749部、[プレポリマー1]を115部、[ケチミン化合物1]2.9部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)で6,000rpmで2分間混合した後、容器に[水相1]1200部を加え、TKホモミキサーで、回転数13,000rpmで10分間混合し[乳化スラリー2]を得た。
撹拌機および温度計をセットした容器に、[乳化スラリー2]を投入し、30℃で5時間脱溶剤した後、45℃で3時間熟成を行い、[分散スラリー2]を得た。
【0304】
[トナー4]
[トナー3]において、外添剤の添加を、トナー100部に対して、平均粒径0.015μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を0.7部と平均粒径0.015μmの酸化チタン微粉体(イソブチルトリメトキシシラン処理)0.3部と平均粒径0.140μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を2.2部をヘンシェルミキサーで混合してからフルイがけをした以外は[トナー3]と同様にして[トナー4]を作製した。
【0305】
[トナー5]
[トナー3]において、外添剤の添加を、トナー100部に対して、平均粒径0.015μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を0.3部と平均粒径0.015μmの酸化チタン微粉体(イソブチルトリメトキシシラン処理)0.2部と平均粒径0.140μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を1.7部をヘンシェルミキサーで混合してからフルイがけをした以外は[トナー3]と同様にして[トナー5]を作製した。
【0306】
[トナー6]
[トナー1]において、〜乳化⇒脱溶剤〜の工程を以下に変更し、外添剤の添加を、得られたトナー100部に対して、平均粒径0.015μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を0.2部と平均粒径0.015μmの酸化チタン微粉体(イソブチルトリメトキシシラン処理)0.1部と平均粒径0.140μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を1.0部をヘンシェルミキサーで混合してからフルイがけをした以外は[トナー1]と同様にして[トナー6]を作製した。
【0307】
〜乳化⇒脱溶剤〜
[顔料・WAX分散液1]749部、[プレポリマー1]を115部、[ケチミン化合物1]2.9部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)で6,500rpmで3分間混合した後、容器に[水相1]1200部を加え、TKホモミキサーで、回転数16,000rpmで35分間混合し[乳化スラリー4]を得た。
撹拌機および温度計をセットした容器に、[乳化スラリー4]を投入し、30℃で8時間脱溶剤した後、45℃で7時間熟成を行い、[分散スラリー4]を得た。
【0308】
[比較トナー1]
[トナー1]において、外添剤の添加を、トナー100部に対して、平均粒径0.015μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を0.8部と平均粒径0.015μmの酸化チタン微粉体(イソブチルトリメトキシシラン処理)0.4部と平均粒径0.140μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を1.4部をヘンシェルミキサーで混合してからフルイがけをした以外は[トナー1]と同様にして[比較トナー1]を作製した。
【0309】
[比較トナー2]
[トナー1]において、外添剤の添加を、トナー100部に対して、平均粒径0.015μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を0.3部と平均粒径0.015μmの酸化チタン微粉体(イソブチルトリメトキシシラン処理)0.2部と平均粒径0.140μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を2.8部をヘンシェルミキサーで混合してからフルイがけをした以外は[トナー1]と同様にして[比較トナー2]を作製した。
【0310】
[比較トナー3]
[トナー1]において、〜乳化⇒脱溶剤〜の工程を以下に変更し、外添剤の添加を、得られたトナー100部に対して、平均粒径0.015μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を0.3部と平均粒径0.015μmの酸化チタン微粉体(イソブチルトリメトキシシラン処理)0.2部と平均粒径0.140μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)1.7部をヘンシェルミキサーで混合してからフルイがけをした以外は[トナー1]と同様にして[比較トナー3]を作製した。
【0311】
〜乳化⇒脱溶剤〜
[顔料・WAX分散液1]630部、[プレポリマー1]を120部、[ケチミン化合物1]3.1部を容器に入れ、TKホモミキサー(特殊機化製)で5,000rpmで2分間混合した後、容器に[水相1]1200部を加え、TKホモミキサーで、回転数11,000rpmで50分間混合し[乳化スラリー3]を得た。
撹拌機および温度計をセットした容器に、[乳化スラリー3]を投入し、30℃で10時間脱溶剤した後、45℃で10時間熟成を行い、[分散スラリー3]を得た。
【0312】
[比較トナー4]
[トナー1]において、外添剤の添加を、トナー100部に対して、平均粒径0.015μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を0.5部と平均粒径0.015μmの酸化チタン微粉体(イソブチルトリメトキシシラン処理)0.1部と平均粒径0.140μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を0.9部をヘンシェルミキサーで混合してからフルイがけをした以外は[トナー1]と同様にして[比較トナー4]を作製した。
【0313】
[比較トナー5]
[トナー1]において、外添剤の添加を、トナー100部に対して、平均粒径0.015μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を1.0部と平均粒径0.015μmの酸化チタン微粉体(イソブチルトリメトキシシラン処理)0.1部と平均粒径0.140μmのシリカ微粉体(ヘキサメチルジシラザン処理)を1.0部をヘンシェルミキサーで混合してからフルイがけをした以外は[トナー1]と同様にして[比較トナー5]を作製した。
【0314】
以上のようにして得られた評価トナーの物性一覧を下記表62に示す。
【表62】

【0315】
次に、感光体構成材料の合成例及び感光体作製例を説明する。
(感光体の作製)
まず、評価に用いた感光体の作製例を具体的に説明する。本発明で用いる感光体は、これらの例に限定されるものではない。
<1官能の電荷輸送性構造を有する化合物の合成例>
本発明における1官能の電荷輸送性構造を有する化合物は、例えば特許第3164426号公報記載の方法にて合成される。また、下記にこの一例を示す。
(1)ヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式B)の合成
メトキシ基置換トリアリールアミン化合物(下記構造式A)113.85g(0.3mol)と、ヨウ化ナトリウム138g(0.92mol)にスルホラン240mlを加え、窒素気流中で60℃に加温した。この液中にトリメチルクロロシラン99g(0.91mol)を1時間で滴下し、約60℃の温度で4時間半撹拌し反応を終了させた。この反応液にトルエン約1.5Lを加え室温まで冷却し、水と炭酸ナトリウム水溶液で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン:酢酸エチル=20:1)にて精製した。得られた淡黄色オイルにシクロヘキサンを加え、結晶を析出させた。この様にして下記構造式Bの白色結晶88.1g(収率=80.4%)を得た。
融点:64.0〜66.0℃
【0316】
【表63】

【0317】
【化6】

【0318】
(2)トリアリールアミノ基置換アクリレート化合物(前記例示化合物No.54)
上記(1)で得られたヒドロキシ基置換トリアリールアミン化合物(構造式B)82.9g(0.227mol)をテトラヒドロフラン400mlに溶解し、窒素気流中で水酸化ナトリウム水溶液(NaOH:12.4g,水:100ml)を滴下した。この溶液を5℃に冷却し、アクリル酸クロライド25.2g(0.272mol)を40分かけて滴下した。その後、5℃で3時間撹拌し反応を終了させた。この反応液を水に注ぎ、トルエンにて抽出した。この抽出液を炭酸水素ナトリウム水溶液と水で繰り返し洗浄した。その後、このトルエン溶液から溶媒を除去し、カラムクロマト処理(吸着媒体:シリカゲル、展開溶媒:トルエン)にて精製した。得られた無色のオイルにn−ヘキサンを加え、結晶を析出させた。この様にして例示化合物No.54の白色結晶80.73g(収率=84.8%)を得た。
融点:117.5〜119.0℃
【0319】
【表64】

【0320】
次に、電荷発生物質に用いるチタニルフタロシアニン顔料の具体的な合成例について述べる。
(合成例1)
1、3−ジイミノイソインドリン292gとスルホラン2000mlを混合し、窒素気流下でチタニウムテトラブトキシド204gを滴下する。滴下終了後、徐々に180℃まで昇温し、反応温度を170℃〜180℃の間に保ちながら5時間撹拌して反応を行った。反応終了後、放冷した後析出物を濾過し、クロロホルムで粉体が青色になるまで洗浄し、つぎにメタノールで数回洗浄し、さらに80℃の熱水で数回洗浄した後乾燥し、粗チタニルフタロシアニンを得た。粗チタニルフタロシアニンを20倍量の濃硫酸に溶解し、100倍量の氷水に撹拌しながら滴下し、析出した結晶をろ過、ついで洗浄液が中性になるまで水洗を繰り返し、チタニルフタロシアニン顔料のウェットケーキを得た。このウェットケーキを、洗浄液から不純物(水溶性イオン)が検出できなくなるまで、イオン交換水で徹底的に洗浄した。
【0321】
得られたウェットケーキ20gを1,2−ジクロロエタン200gに投入し、4時間撹拌を行なった。これにメタノール1000gを追加して、1時間撹拌を行った後、濾過を行い、乾燥して、チタニルフタロシアニン粉末を得た(これを顔料1と称する)。
【0322】
得られたチタニルフタロシアニン顔料についてのX線回折スペクトルを以下に示す条件で測定した。
X線管球 Cu
電圧 40kV
電流 20mA
走査速度 1°/分
走査範囲 3°〜40°
時定数 2秒
合成例1により得られたチタニルフタロシアニン顔料のX線回折スペクトルを図10に示す。得られたチタニルフタロシアニン顔料はブラッグ角2θの主要ピークが少なくとも9.6°±0.2°、24.0°±0.2°および27.2°±0.2°にある結晶形を有していることが分かる。
【0323】
次に、感光体の作製例を具体的に示す。
感光体1
Al製支持体(外径30mmφ)に、下記組成の下引き層塗工液を乾燥後の膜厚が3.5μmになるように浸漬法で塗工し、下引き層を形成した。
【0324】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン 40部
(CR−EL、石油産業)
メチルエチルケトン 50部
【0325】
この下引き層上に下記組成のビスアゾ顔料を含む電荷発生層塗工液を浸漬塗工し、加熱乾燥させ、膜厚0.2μmの電荷発生層を形成した。
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造式(I)のビスアゾ顔料 2.5部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC製) 0.5部
シクロヘキサノン 200部
メチルエチルケトン 80部
【0326】
【化7】

【0327】
この電荷発生層上に下記組成の電荷輸送層用塗工液を用いて浸漬塗工し、加熱乾燥させ、膜厚22μmの電荷輸送層とした。
〔電荷輸送層用塗工液〕
ビスフェノールZ型ポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
下記構造式(II)の低分子電荷輸送物質(D−1) 10部
テトラヒドロフラン 80部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 0.2部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
【0328】
【化8】

【0329】
電荷輸送層上に下記組成の架橋表面層塗工液を用いて、スプレー塗工した。メタルハライドランプ、照射光強度:450mW/cm2、照射時間:120秒の条件で光照射を行い、更に130℃で30分乾燥を加え、4.0μmの架橋表面層を設け、本発明の電子写真感光体を得た。
〔架橋表面層用塗工液〕
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 8部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99
下記構造式の電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 2部
(KAYARAD DPCA120、日本化薬製)
【化9】

1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 10部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 80部
ここで得られた感光体を[感光体1]とする。
【0330】
感光体2
感光体1において、架橋表面層の1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物として、例示化合物No.54に変えて例示化合物No.115を用いた以外は感光体1と同様に作製した。
ここで得られた感光体を[感光体2]とする。
【0331】
感光体3
感光体1において、架橋表面層の電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマーとして、KAYARAD TMPTA(日本化薬製)に変えてジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(KAYARAD DPHA(日本化薬製))を用いた以外は感光体1と同様に作製した。
ここで得られた感光体を[感光体3]とする。
【0332】
感光体4
φ30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、3.5μmの下引き層、0.3μmの電荷発生層、23μmの電荷輸送層を形成した。この電荷輸送層上に下記組成の接着層用塗工液と架橋表面層用塗工液を続けてスプレー塗工し、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:120秒の条件で光照射を行ない、更に130℃で20分乾燥を加え、0.5μmの接着層と4μmの表面架橋層を設け、本発明の電子写真感光体を得た。
【0333】
〔下引き層用塗工液〕
アルキッド樹脂 6部
(ベッコゾール1307−60−EL、大日本インキ化学工業製)
メラミン樹脂 4部
(スーパーベッカミン G−821−60、大日本インキ化学工業製)
酸化チタン 40部
(CR−EL、石油産業)
メチルエチルケトン 50部
【0334】
〔電荷発生層用塗工液〕
下記構造式(I)のビスアゾ顔料 2.5部
ポリビニルブチラール(XYHL、UCC製) 0.5部
シクロヘキサノン 200部
メチルエチルケトン 80部
【化10】

【0335】
〔電荷輸送層用塗工液〕
ビスフェノールZ型ポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
下記構造式(II)の低分子電荷輸送物質(D−1) 7部
テトラヒドロフラン 100部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 1部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
【化11】

【0336】
〔接着層用塗工液〕
ポリアリレート 1部
(Uポリマー U−100、ユニチカ製)
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 9部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99
1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 5部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤 0.5部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 400部
【0337】
〔架橋表面層用塗工液〕
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 10部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99
1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 10部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 100部
ここで得られた感光体を[感光体4]とする。
【0338】
感光体5
感光体4において、下記組成の接着層用塗工液に変えた以外は感光体4と同様に作製した。
〔接着層用塗工液〕
ポリアリレート 3部
(Uポリマー U−100、ユニチカ製)
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 7部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99
1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 5部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤 0.5部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 400部
ここで得られた感光体を[感光体5]とする。
【0339】
感光体6
感光体4において、下記組成の接着層用塗工液に変えた以外は感光体1と同様に作製した。
〔接着層用塗工液〕
ポリアリレート 5部
(Uポリマー U−100、ユニチカ製)
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 5部
トリメチロールプロパントリアクリレート
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製)
分子量:296、官能基数:3官能、分子量/官能基数=99
1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 5部
(例示化合物No.54)
光重合開始剤 0.5部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 400部
ここで得られた感光体を[感光体6]とする。
【0340】
感光体7
φ30mmのアルミニウムシリンダー上に、下記組成の下引き層用塗工液、電荷発生層用塗工液、電荷輸送層用塗工液を順次、塗布、乾燥することにより、1.5μmの下引き層、0.3μmの電荷発生層、23μmの電荷輸送層を形成した。この電荷輸送層上に下記組成の接着層用塗工液と架橋表面層用塗工液を続けてスプレー塗工し、メタルハライドランプ:160W/cm、照射距離:120mm、照射強度:500mW/cm2、照射時間:120秒の条件で光照射を行ない、更に130℃で20分乾燥を加え、0.03μmの接着層と4μmの表面架橋層を設け、本発明の電子写真感光体を得た。
【0341】
〔下引き層塗工液〕
酸化チタン 40部
アルコール可溶性ナイロン 32部
メタノール 400部
イソプロパノール 160部
〔電荷発生層塗工液〕
合成例1で合成したチタニルフタロシアニン粉末 4部
ポリビニルブチラール 2部
メチルエチルケトン 150部
【0342】
〔電荷輸送層用塗工液〕
ビスフェノールZ型ポリカーボネート 10部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
下記構造式(II)の低分子電荷輸送物質(D−1) 7部
テトラヒドロフラン 100部
1%シリコーンオイルのテトラヒドロフラン溶液 1部
(KF50−100CS、信越化学工業製)
【化12】

【0343】
〔接着層用塗工液〕
ビスフェノールZポリカーボネート 5部
(パンライトTS−2050、帝人化成製)
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 5部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(KAYARAD DPHA、日本化薬製)
分子量:536、官能基数:5.5官能、分子量/官能基数=97
1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 5部
(例示化合物No.105)
光重合開始剤 0.5部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 400部
【0344】
〔架橋表面層用塗工液〕
電荷輸送性構造を有さない3官能以上のラジカル重合性モノマー 10部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(KAYARAD DPHA、日本化薬製)
分子量:536、官能基数:5.5官能、分子量/官能基数=97
1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物 10部
(例示化合物No.105)
光重合開始剤 1部
1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)
テトラヒドロフラン 100部
ここで得られた感光体を[感光体7]とする。
【0345】
感光体8
感光体2において、架橋表面層の1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の例示化合物No.115に変えて、2官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の例示化合物No.180を用いた以外は感光体2と同様に作製した。
ここで得られた感光体を[感光体8]とする。
【0346】
感光体9
感光体7において、架橋表面層の1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の例示化合物No.105に変えて、3官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物の例示化合物No.379を用いた以外は感光体7と同様に作製した。
ここで得られた感光体を[感光体9]とする。
【0347】
比較感光体1
感光体1において、架橋表面層を設けなかったこと以外は感光体1と同様に作製した。
ここで得られた感光体を[比較感光体1]とする。
【0348】
(クリーニングブレード)
次に、評価に用いたクリーニングブレードの物性を下記表65に示す。
なお、ブレードは、すべてポリウレタンゴムで作製したもので、イソシアネート化合物とポリオール化合物の種類と割合、反応条件、架橋方法により硬度と反発弾性を変化させた。ブレードの厚さは2mmで、厚さ1mmの鉄製支持体にホットメルト接着剤で取り付けた。
【0349】
【表65】

【0350】
(キャリアの作製)
次に、評価に用いたキャリアの具体的な作製例について説明する。本発明で用いるキャリアは、これらの例に限定されるものではない。
アクリル樹脂溶液(固形分50wt%) 21.0部
グアナミン溶液(固形分70wt%) 6.4部
アルミナ粒子[0.3μm、固有抵抗1014(Ω・cm)] 7.6部
シリコン樹脂溶液
[固形分23wt%(SR2410:東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)]
65.0部
アミノシラン
[固形分100wt%(SH6020:東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)]
1.0部
トルエン 60部
ブチルセロソルブ 60部
をホモミキサーで10分間分散し、アルミナ粒子を含むアクリル樹脂及びシリコーン樹脂のブレンド被覆膜形成溶液を得た。芯材として焼成フェライト粉[(MgO)1.8(MnO)49.5(Fe2348.0:平均粒径;35μm]を用い、上記被覆膜形成溶液を芯材表面に膜厚0.15μmになるようにスピラコーター(岡田精工社製)により塗布し乾燥した。得られたキャリアを電気炉中にて150℃で1時間放置して焼成した。冷却後フェライト粉バルクを目開き106μmの篩を用いて解砕し、キャリアを得た。結着樹脂膜厚測定は、透過型電子顕微鏡にてキャリア断面を観察することにより、キャリア表面を覆う被覆膜を観察することができるため、その膜厚の平均値をもって膜厚とした。
【0351】
(二成分現像剤の作製)
上記トナー1〜6及び比較トナー1〜5と上記平均粒径35μmのフェライトキャリアを用い、キャリア100重量部に対しトナー7重量部を容器が転動して攪拌される型式のターブラミキサーを用いて均一混合し帯電させて現像剤を作製した。
【0352】
実施例1〜24、比較例1〜15
このようにして得られた二成分現像剤と、感光体1〜9及び比較感光体1と、ブレード1〜4及び比較ブレード1〜2をフルカラー複合機Imagio NeoC 600(リコー社製)を改造してチューニングした評価機にセットして、A4サイズ、画像面積率5%となるテスト画像を出力するランニング試験を行った。
【0353】
(評価方法)
[クリーニング性]
ランニング5万枚、10万枚終了後にそれぞれ感光体を取り出し、クリーニングブレードを通過した感光体上の転写残トナーを日東電工(株)のプリンタックC(厚さ25μm)で採取し白紙に貼付け、938スペクトロデンシトメータ(X−Rite社製)を用い、観察用光源D50、視野角2°にてIDを10点測定して平均値を算出し、ブランクとの差が0.005以下を◎、0.006〜0.010を○、0.011〜0.015を△、0.016以上を×として4段階の評価をした。
【0354】
[帯電ローラ汚れ]
ランニング5万枚、10万枚終了後にそれぞれ帯電ローラを取り出し、帯電ローラの汚れ具合を目視にて判定した。汚れが全くなく良好なものを◎、わずかに汚れがあるが問題ないものを○、少し汚れがあるが使用できるものを△、汚れがひどく使用に耐えられないものを×として4段階の評価をした。
【0355】
こうして得られた評価結果を、下記表66に示す。
【表66−1】

【0356】
【表66−2】

【0357】
上記表66より本発明でなる感光体、トナー、ブレードを用いた実施例の画像形成装置によれば、5万枚、10万枚のランニング試験においてもクリーニング性に優れ、帯電ローラ汚染が非常に少ないことがわかる。本発明は、感光体、トナー、ブレードがトータルで本発明の条件を満たすことにより、長期的にもクリーニング性に優れ、帯電ローラ汚染が非常に少ない画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジを提供することが可能となる。感光体、トナー、ブレードの何れか一つでも本発明の条件を満たさない場合は、上記画像形成装置、画像形成方法及びプロセスカートリッジの提供は不可能であり、感光体、トナー、ブレードがトータルで本発明の条件を満たすことが重要である。
【0358】
上記実施形態により、従来より表面層が硬度な感光体を用い、かつ、従来より小粒径なトナーを用いても、クリーニングブレードからすり抜けるトナーによる帯電ローラの汚染が抑制され、汚染が原因の画像欠陥が生じない画像形成装置を提供することができる。
また、小粒径で、粒径分布のシャープなトナーを容易に得ることができ、このようなトナーにより高解像で、高画質の画像を形成することができる。
また、カラートナーであることによって小粒径の特徴を十二分に発現することができる。
また、トナーを二成分現像剤、一成分現像剤のいずれで使用しても帯電ローラの汚染に対する抑制作用が得られる。
また、感光体表面の帯電均一性を向上させることができる。
また、感光体上の残留トナーによる汚染の少ない帯電装置が得られる。
また、高速で良好なフルカラー画像を得ることができる。
また、カラー画像を記録材上に一括転写可能なため、高速で色ズレを抑えた良好な画像を提供することができる。
また、上述のように従来より表面層が硬度な感光体を用い、かつ、従来より小粒径なトナーを用いても、クリーニングブレードからすり抜けるトナーによる帯電ローラの汚染が抑制され、汚染が原因の画像欠陥が生じない画像形成方法及びプロセスカートリッジを提供することができる。
【0359】
以上、本発明を好適な実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0360】
【図1】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る電子写真感光体の層構成の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図6】本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図7】本発明の実施形態に係る画像形成装置用プロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【図8】本発明の定着装置の一例を示す概略図である。
【図9】本発明の定着装置において用いるベルトの層構成の一例を示す概略図である。
【図10】本発明の実施形態に係るチタニルフタロシアニン顔料のX線回折スペクトルであり、縦軸はX線回折の強度(任意強度:arbitrarY strength)を、横軸は反射角2θ(°)を示す図である。
【符号の説明】
【0361】
(図5について)
1 感光体
2 除電ランプ
3 帯電チャージャ
4 イレーサ
5 画像露光部
6 現像ユニット
7 転写前チャージャ
8 レジストローラ
9 転写紙
10 転写チャージャ
11 分離チャージャ
12 分離爪
13 クリーニング前チャージャ
14 ファーブラシ
15 クリーニングブレード
【0362】
(図6について)
100 本体
120Bk 画像書込部(黒)
120C 画像書込部(シアン)
120M 画像書込部(マゼンダ)
120Y 画像書込部(イエロー)
130Bk 画像形成部(黒)
130C 画像形成部(シアン)
130M 画像形成部(マゼンダ)
130Y 画像形成部(イエロー)
140 給紙部
150 定着装置
160 レジストローラ対
200Bk 現像装置(黒)
200C 現像装置(シアン)
200M 現像装置(マゼンダ)
200Y 現像装置(イエロー)
210Bk 感光体(黒)
210C 感光体(シアン)
210M 感光体(マゼンダ)
210Y 感光体(イエロー)
215Bk 帯電装置(黒)
215C 帯電装置(シアン)
215M 帯電装置(マゼンダ)
215Y 帯電装置(イエロー)
220 中間転写ベルト
230Bk 1次転写装置(黒)
230C 1次転写装置(シアン)
230M 1次転写装置(マゼンダ)
230Y 1次転写装置(イエロー)
241 導電性ローラ
242 導電性ローラ
243 導電性ローラ
250Bk トナー移送管(黒)
250C トナー移送管(シアン)
250M トナー移送管(マゼンダ)
250Y トナー移送管(イエロー)
260 中間転写ベルトクリーニング装置
261 導電性ファーブラシ
262 導電性ファーブラシ
300Bk クリーニング装置(黒)
300C クリーニング装置(シアン)
300M クリーニング装置(マゼンダ)
300Y クリーニング装置(イエロー)
500 転写ベルト
600 2次転写ローラ
【0363】
(図7について)
101 感光ドラム
102 帯電手段
103 露光
104 現像手段
105 転写体
106 転写手段
107 クリーニングブレード
【0364】
(図8について)
1 加熱ローラ
2 定着ローラ(対向回転体)
2a 芯金
2b 弾性部材
3 耐熱性ベルト(トナー加熱媒体)
4 加圧ローラ(加圧回転体)
4a 芯金
4b 弾性部材
5 温度検知部材
6 誘導加熱手段
7 励磁コイル
8 コイルガイド板
9 励磁コイルコア
10 励磁コイルコア支持部材
11 記録材
N 定着ニップ部
W1 接触部位
T トナー像
(図9について)
3a 発熱層
3b 中間層
3c 表層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子写真感光体と、電子写真感光体に均一に帯電を施す帯電手段と、帯電した電子写真感光体の表面に静電潜像を書き込む露光手段と、静電潜像をトナーにより可視像化する現像手段と、前記可視像化された可視像を記録材に転写する転写手段と、記録材上の可視像を定着させる定着手段と、前記感光体表面の転写残トナーをクリーニングするクリーニング手段と、を少なくとも有する画像形成装置であって、
前記電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有し、該感光層の表面に少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を光エネルギー照射手段で硬化した架橋表面層を有しており、
前記現像手段で使用されるトナーは、体積平均粒径が1〜5μmで、平均円形度が0.95〜0.98であり、
前記トナー表面に添加される外添剤は、一次平均粒径10〜20nmである外添剤の量をX重量%、一次平均粒径100〜200nmである外添剤の量をY重量%とすると、下記式(I)の関係を満たし、
前記クリーニング手段は、硬度が70〜80°で、25℃での反発弾性が10〜35%であるポリウレタンゴム板からなるクリーニングブレードを有することを特徴とする画像形成装置。
1<3X/5+Y<3 …(I)
(ただし上記式(I)中、XおよびYは、 X<Y、0<X≦1、1≦Y である。)
【請求項2】
前記電子写真感光体は、前記感光層と架橋表面層との間に接着層を有し、少なくとも感光層、接着層及び架橋表面層を順次積層した層構成であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記トナーは、少なくとも、活性水素基を有する化合物と反応可能な部位を有する重合体、ポリエステル、着色剤、離型剤とを有機溶媒中に溶解又は分散させたトナー材料液を、水系媒体中で架橋反応又は伸長反応の少なくとも1つの反応をさせて得られることを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記トナーは、カラートナーであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記現像手段で使用される現像剤は、前記トナーと、磁性キャリアと、からなる二成分現像剤であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記現像手段で使用される現像剤は、前記トナーを用いた一成分現像剤であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記帯電手段は、少なくとも交番電圧を重畳した直流電圧を印加することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記帯電手段は、ローラ状で電子写真感光体に近接非接触配置された帯電部材を備えることを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記画像形成装置は、複数の電子写真感光体と、帯電手段と、露光手段と、現像手段と、転写手段と、を有するタンデム型であることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記画像形成装置は、電子写真感光体上に現像されたトナー画像を中間転写体上に一次転写した後、前記中間転写体上のトナー画像を記録材上に二次転写する中間転写手段を有する画像形成装置であって、
複数色のトナー画像を前記中間転写体上に順次重ね合わせてカラー画像を形成し、前記カラー画像を記録材上に一括で二次転写することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記定着手段は、磁性金属から構成されて電磁誘導により加熱される加熱ローラと、前記加熱ローラと平行に配置された定着ローラと、前記加熱ローラと前記定着ローラとに張り渡され、前記加熱ローラにより加熱されるとともにこれらのローラによって回転される無端帯状のトナー加熱媒体と、前記トナー加熱媒体を介して前記定着ローラに圧接されるとともに、前記トナー加熱媒体に対して順方向に回転して定着ニップ部を形成する加圧ローラとを有することを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の画像形成装置を用いた画像形成方法。
【請求項13】
電子写真感光体と、少なくとも静電潜像をトナーにより可視像化する現像手段及び電子写真感光体表面の転写残トナーをクリーニングするクリーニング手段とを一体に支持し、画像形成装置本体に着脱自在に設けられた画像形成装置用プロセスカートリッジであって、
前記電子写真感光体は、導電性支持体上に少なくとも感光層を有し、該感光層の表面に少なくとも電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーと電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物を光エネルギー照射手段で硬化した架橋表面層を有しており、
前記現像手段で使用されるトナーは、体積平均粒径が1〜5μmで、平均円形度が0.95〜0.98であり、
前記トナー表面に添加される外添剤は、一次平均粒径10〜20nmである外添剤の量をX重量%、一次平均粒径100〜200nmである外添剤の量をY重量%とすると、下記式(I)の関係を満たし、
前記クリーニング手段は、硬度が70〜80°で、25℃での反発弾性が10〜35%であるポリウレタンゴム板からなるクリーニングブレードを有することを特徴とする画像形成装置用プロセスカートリッジ。
1<3X/5+Y<3 …(I)
(ただし上記式(I)中、XおよびYは、 X<Y、0<X≦1、1≦Y である。)

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−31719(P2009−31719A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−297701(P2007−297701)
【出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】