説明

発振器及び位相同期回路

【課題】十分に高い周波数帯域において、広帯域にわたって柔軟に発振周波数を調整すること。
【解決手段】信号線131は、電源から直流電圧Vdcが印加されると、電源に接続された始端を節とし、終端を腹とする4分の3波長の定在波を発生させる。ストリップ132−1〜132−nは、それぞれスイッチ133−1〜133−nを介してグランド層に接続されている。スイッチ133−1〜133−nは、切替制御部140による制御に従って、それぞれストリップ132−1〜132−nとグランド層との接続及び非接続を切り替える。スイッチ133−1〜133−nの接続及び非接続を切り替えることにより、擬似的に信号線131とグランド層の間の距離が調節され、伝送線路部130における実効誘電率が変化して、定在波の周波数を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発振器及び位相同期回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば光通信システムなどの通信システムにおいては、共振回路を内在する発振器によって発振周波数を調整する技術が知られている。この技術では、例えばコンデンサやダイオードなどの可変容量素子を共振回路内に設け、この可変容量素子の容量を制御する。これにより、共振回路の共振周波数が調整され、結果的に発振器から出力されるクロック信号の周波数(発振周波数)が変化する。このような発振器を用いることで、例えば20GHz以上の高周波数のクロック信号を出力することができ、昨今の通信速度の高速化や装置の高性能化に対応することが可能となる。
【0003】
また、より高い発振周波数が必要となる場合には、例えばマイクロストリップラインなどの伝送路に発生する定在波を用いた発振器が利用される。このような発振器においては、定在波の電気長を基準として発振器内の伝送路の長さが決定されている。すなわち、発振器内の伝送路の長さが、例えば発振周波数の電気長の4分の3倍など定在波が発生する長さとなっており、伝送路に電圧が印加されると、伝送路上に定在波が発生する。具体的には、伝送路の終端に向かって伝搬される進行波と伝送路の終端で反射する反射波とが合成され定在波が形成される。その結果、発振器からは、伝送路に発生する定在波の周波数に対応するクロック信号が出力されることになる。このような定在波を用いた発振器の場合には、伝送路の終端に可変容量素子が接続されており、可変容量素子の容量が制御されることにより、発振器の発振周波数が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−118550号公報
【特許文献2】特開2005−217752号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Jri Lee et al., "A 75-GHz PLL in 90-nm CMOS Technology", ISSCC 2007/SESSION 23/BROADBAND RF AND RADAR/23.8, pp.432-433
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般に、上述した発振器の発振周波数は、可変容量素子の容量と負の相関関係を有する。具体的には、可変容量素子の容量を小さくすると、発振器の発振周波数が高くなり、可変容量素子の容量を大きくすると、発振器の発振周波数が低くなる。ただし、1つの可変容量素子の容量の可変範囲は限られているため、発振器の発振周波数を広帯域にわたって柔軟に調整するためには、複数の可変容量素子を設けて容量の可変範囲を大きくすることが考えられる。
【0007】
しかしながら、複数の可変容量素子を設ける場合には、可変容量素子の数が増えるにつれて回路全体の寄生容量が増大する。結果として、それぞれの可変容量素子の容量を最小にするように制御しても、複数の可変容量素子による寄生容量のみで回路全体の容量が大きくなり、十分に高い発振周波数が得られないことがある。
【0008】
また、定在波を用いた発振器に関しては、発振周波数が比較的高周波となるが、発振に利用可能な定在波を発生させるためには、可変容量素子の容量の可変範囲が制限される。すなわち、定在波を用いた発振器では、可変容量素子の容量を制御することにより伝送路の終端における進行波の位相が変化するが、伝送路の終端付近を腹とする定在波が発生しなければ、発振周波数を得ることができない。このため、定在波を用いた発振器では、伝送路の終端付近における位相を自在に調節する訳にはいかず、可変容量素子の容量を大幅に変化させることはできない。このような位相による制限条件から、定在波を用いた発振器においては、発振周波数を広帯域にわたって柔軟に調整することが困難である。
【0009】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、十分に高い周波数帯域において、広帯域にわたって柔軟に発振周波数を調整することができる発振器及び位相同期回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願の開示する発振器は、一つの態様において、電源電圧が印加されることにより進行波を伝搬し、電源電圧が印加される電圧印加部から少なくとも一方の端部までの長さが伝搬される進行波の4分の1波長の奇数倍に等しい信号線と、前記信号線によって伝搬される進行波に伴って前記信号線に発生する定在波を維持する維持部と、前記維持部によって維持される定在波を用いて発振周波数の信号を出力する出力部と、前記信号線の近傍において前記信号線に対向する対向部を備えるとともに前記対向部の電位がグランド電位に変化する電位変化部材と、前記電位変化部材が備える前記対向部の電位を変化させることにより、前記出力部から出力される信号の発振周波数を調整する制御部とを有する。
【0011】
また、本願の開示する位相同期回路は、一つの態様において、入力電圧に応じた発振周波数の信号を出力する発振器と、前記発振器によって出力される信号の発振周波数と所定の基準周波数とを比較し、発振周波数と基準周波数との差分に対応する入力電圧を前記発振器へ入力する比較器とを有し、前記発振器は、電源電圧が印加されることにより進行波を伝搬し、電源電圧が印加される電圧印加部から少なくとも一方の端部までの長さが伝搬される進行波の4分の1波長の奇数倍に等しい信号線と、前記信号線の近傍において前記信号線に対向する対向部を備えるとともに前記対向部の電位がグランド電位に変化する電位変化部材と、前記比較器から入力される入力電圧に応じて前記電位変化部材が備える前記対向部の電位を変化させる制御部と、前記制御部の制御によって前記対向部の電位が変化した後に、前記信号線によって伝搬される進行波を用いて発振周波数の信号を出力する出力部とを含む。
【発明の効果】
【0012】
本願の開示する発振器及び位相同期回路の一つの態様によれば、十分に高い周波数帯域において、広帯域にわたって柔軟に発振周波数を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1−1】図1−1は、実施の形態1に係る発振器の構成を示す図である。
【図1−2】図1−2は、実施の形態1に係る増幅部の構成例を示す図である。
【図2】図2は、実施の形態1に係る伝送線路部の構成を模式的に示す斜視図である。
【図3】図3は、信号線近傍の電界強度の具体例を示す図である。
【図4】図4は、実施の形態1に係る伝送線路部の構成を模式的に示す平面図である。
【図5】図5は、実施の形態1に係る伝送線路部の構成を模式的に示す側面図である。
【図6】図6は、実施の形態1に係るスイッチの構成例を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態1に係るスイッチ切替動作の具体例を示す図である。
【図8】図8は、実効誘電率及びインピーダンスの変化の具体例を示す図である。
【図9】図9は、周波数の制御幅の具体例を示す図である。
【図10】図10は、ストリップの他の配置例を示す図である。
【図11】図11は、実施の形態2に係る伝送線路部の構成を模式的に示す斜視図である。
【図12】図12は、実施の形態2に係る伝送線路部の構成を模式的に示す平面図である。
【図13】図13は、実施の形態2に係る伝送線路部の構成を模式的に示す側面図である。
【図14】図14は、実施の形態2に係る半導体ストリップの構成例を示す図である。
【図15】図15は、実施の形態3に係る発振器の構成を示す図である。
【図16】図16は、実施の形態3に係るクランプ部の構成例を示す図である。
【図17】図17は、接続中のスイッチ数と周波数の関係の具体例を示す図である。
【図18】図18は、実施の形態3に係る発振器の変形例を示す図である。
【図19】図19は、実施の形態3に係る伝送線路部の変形例を示す斜視図である。
【図20】図20は、実施の形態3に係る発振器の変形例を示す図である。
【図21】図21は、実施の形態4に係る発振器の構成を示す図である。
【図22】図22は、実施の形態4に係る伝送線路部の構成を示す図である。
【図23】図23は、PLL回路の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願の開示する発振器及び位相同期回路の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
[発振器の構成]
図1−1は、実施の形態1に係る発振器の構成を示す図である。図1−1に示す発振器は、電圧制御部110、可変容量素子120、伝送線路部130、切替制御部140、バッファ部150、出力端子155及び発振誘起部170を有する。
【0016】
電圧制御部110は、可変容量素子120へ印加される電圧を制御し、グランドに対する可変容量素子120の容量を変化させる。
【0017】
可変容量素子120は、電圧制御部110から印加される制御電圧に応じて容量が変化する素子である。可変容量素子120としては、例えばMOSFET(Metal-Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)が用いられ、MOSFETの基板が接地されるとともにソース及びドレインが電圧制御部110に接続され、ゲートが伝送線路部130内の信号線131の一端に接続される。伝送線路部130において発生する定在波の周波数は、可変容量素子120の容量の変化に伴って変化する。すなわち、可変容量素子120の容量を変化させることにより、信号線131の一端における位相シフト量が変化し、定在波の周波数が変化する。具体的には、可変容量素子120の容量を大きくすれば、定在波の周波数が低くなり、可変容量素子120の容量を小さくすれば、定在波の周波数が高くなる。
【0018】
本実施の形態においては、1つのMOSFETのみが可変容量素子120として設けられており、回路に発生する寄生容量が最小限に抑制されている。したがって、回路の寄生容量によって定在波の周波数が低下することを防止することができる。また、1つのMOSFETでは容量の可変範囲が小さいが、本実施の形態においては、可変容量素子120の容量が変化しなくても発振周波数を柔軟に調整することができる。このため、本実施の形態においては、発振周波数の微調整ができる程度に可変容量素子120の容量が変化すれば十分であり、可変範囲を大きくする必要はない。
【0019】
伝送線路部130は、電源に接続された信号線131と接地されたグランド層とを備え、信号線131とグランド層の間に、例えばSiO2及びシリコンの混合媒質を含む誘電体層が挟まれた構成となっている。そして、伝送線路部130は、信号線131に直流電圧Vdcが印加されると進行波を伝搬し、定在波を発生させる。このとき、伝送線路部130は、誘電体層の見かけ上の誘電率を増減させ、定在波の周波数を広帯域にわたって変化させる。具体的には、定在波の周波数fは、光速c、信号線131の長さL、信号線131の一端における位相シフト量△Φ及び伝送線路部130における見かけ上の誘電率Erを用いて、以下の式(1)によって表される。
【数1】

【0020】
上式(1)において、Erは、伝送線路部130における見かけ上の誘電率であり、伝送線路部130によって伝搬される進行波の速度に対応する実効誘電率である。すなわち、誘電体層に含まれる物質は変化しないため、物質に固有の誘電率から定まる誘電体層の比誘電率は変化しないが、進行波の伝搬速度に対応する実効誘電率Erは変化させることができ、実効誘電率Erの変化に伴って、定在波の周波数fも変化する。そして、上述したように、本実施の形態においては、可変容量素子120の容量の可変範囲が小さいため、信号線131の一端における位相シフト量△Φを大きく変化させることはできないが、主に伝送線路部130における実効誘電率Erを変化させることにより、定在波の周波数fを調整する。具体的には、伝送線路部130は、信号線131、ストリップ132−1〜132−n(nは1以上の整数)、スイッチ133−1〜133−n及び増幅部136を有する。
【0021】
信号線131は、一端が直流電圧Vdcを供給する電源に接続され、他端が可変容量素子120及びバッファ部150に接続された伝送路である。なお、以下においては、電源に接続された信号線131の一端を「始端」といい、可変容量素子120及びバッファ部150に接続された信号線131の一端を「終端」という。信号線131の始端から終端までの長さは、発振に使用される進行波の波長の4分の3の長さである。このため、信号線131は、電源から直流電圧Vdcが印加されると、直流電圧Vdcが印加された始端を節とし、終端を腹とする4分の3波長の定在波を発生させる。このとき、信号線131が発生させる定在波の周波数fは、式(1)に示したように、伝送線路部130における実効誘電率Erの平方根に反比例する。したがって、伝送線路部130における実効誘電率Erを大きくすれば、定在波の周波数fが低くなり、伝送線路部130における実効誘電率Erを小さくすれば、定在波の周波数fが高くなる。
【0022】
また、信号線131とグランド層の間には、例えばSiO2及びシリコンの混合媒質を含む誘電体層が形成されており、誘電体層内にストリップ132−1〜132−n及びスイッチ133−1〜133−nが設置されている。そして、混合媒質、ストリップ132−1〜132−n及びスイッチ133−1〜133−nが全体として誘電体層を形成し、伝送線路部130における実効誘電率Erを変化させる。このような伝送線路部130の具体的構成は、後に詳述する。
【0023】
ストリップ132−1〜132−nは、例えば金属などの導体からなる細長い板状部材であり、信号線131に接触しないように、信号線131に沿って並べて配置される。また、ストリップ132−1〜132−nは、それぞれスイッチ133−1〜133−nを介してグランド層に接続されている。したがって、スイッチ133−1〜133−nがストリップ132−1〜132−nとグランド層とを接続すると、信号線131の近傍に配置されたストリップ132−1〜132−nの電位がグランド電位に変化する。
【0024】
スイッチ133−1〜133−nは、切替制御部140による制御に従って、それぞれストリップ132−1〜132−nとグランド層との接続及び非接続を切り替える。スイッチ133−1〜133−nとしては、例えばMOSFETが用いられる。スイッチ133−1〜133−nがストリップ132−1〜132−nとグランド層とを接続すると、擬似的に信号線131がグランド層に近づいたこととなる。すなわち、スイッチ133−1〜133−nの接続及び非接続を切り替えることにより、擬似的に信号線131とグランド層の間の距離が調節され、信号線131とグランド層の間の誘電体層を形成する物質が変化しなくても、進行波の伝搬速度に対応する実効誘電率Erを変化させることができる。
【0025】
具体的には、接続中のスイッチ133−1〜133−nの数が多くなると、信号線131とグランド層が近づいたとみなすことができ、進行波の伝搬速度が遅くなることから、伝送線路部130における実効誘電率Erが大きくなると言える。また、接続中のスイッチ133−1〜133−nの数が少なくなると、信号線131とグランド層が遠ざかったとみなすことができ、進行波の伝搬速度が速くなることから、伝送線路部130における実効誘電率Erが小さくなると言える。また、式(1)に示したように、伝送線路部130における実効誘電率Erが変化すれば、定在波の周波数fも変化する。つまり、スイッチ133−1〜133−nの接続及び非接続を切り替えることにより、実効誘電率Erを変化させ、信号線131に発生する定在波の周波数fを調整することができる。
【0026】
増幅部136は、信号線131に発生する定在波を維持する。すなわち、増幅部136は、信号線131に発生する定在波を増幅して減衰を防止し、信号線131における発振を維持する。具体的には、増幅部136は、信号線131の始端から4分の1波長の位置と、信号線131の終端から所定距離△Lの位置とに接続され、2つの接続位置における定在波の振幅を互いに反転した同じ大きさにする。本来、増幅部136は、例えば定在波の腹が形成される、信号線131の始端から4分の1波長の位置と信号線131の終端の位置とにおける振幅を対応させる。しかし、増幅部136の接続位置における振幅が増幅部136へ到達するまでには遅延が生じるため、本実施の形態においては、増幅部136の接続位置を信号線131の終端から所定距離△Lだけずらして遅延を補償している。これにより、信号線131の始端から4分の1波長の位置と信号線131の終端の位置とにおける定在波の振幅が常に反転した同じ大きさとなる。
【0027】
なお、増幅部136の接続位置は、図1−1に示したものに限定されず、接続位置における定在波の振幅が増幅部136へ到達するまでの遅延が考慮された接続位置であれば任意で良い。また、例えば信号線131の始端から4分の1波長の部分と信号線131の終端とが互いに近づくように信号線131を湾曲させ、近づいた2点を増幅部136の接続位置とすることにより、定在波の振幅が増幅部136へ到達するまでの遅延を無視できる程度にまで小さくすることなども可能である。
【0028】
増幅部136の具体的な構成例としては、例えば図1−2に示すような種類のものがある。すなわち、2つのインバータを組み合わせたインバータ型、入力電圧の位相を調整する位相調整型、2つのNMOS(Negative-channel Metal Oxide Semiconductor)インバータを組み合わせたNMOS型及び2つのCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)インバータを組み合わせたCMOS型などの増幅部136がある。そして、図1−2に示す増幅部136は、いずれも接続位置における信号線131の電圧V1、V2を入力とするとともに、互いの電圧V1、V2を逆位相として発振を維持する。
【0029】
切替制御部140は、スイッチ133−1〜133−nそれぞれの接続及び非接続の切り替えを制御する。具体的には、切替制御部140は、発振器の発振周波数を高くする場合には、接続中のスイッチ133−1〜133−nの数を減少させる。また、切替制御部140は、発振器の発振周波数を低くする場合には、接続中のスイッチ133−1〜133−nの数を増加させる。
【0030】
バッファ部150は、緩衝用の回路を有しており、可変容量素子120及び伝送線路部130などの回路に対する出力端子155側からの影響を排除し、可変容量素子120及び伝送線路部130などを備える回路を安定的に動作させる。具体的には、バッファ部150は、例えばMOSFETを備えており、このMOSFETのゲートは伝送線路部130の終端に接続され、ソースは抵抗素子を介して電源電圧Vddを供給する電源に接続され、ドレインはグランドに接続されている。このため、伝送線路部130に周波数fの定在波が発生すると、周波数fに対応する周期でソース−ドレイン間が導通状態となり、バッファ部150は、周波数fのクロック信号を出力端子155へ出力する。
【0031】
発振誘起部170は、例えば発振器の起動時に、伝送線路部130へ放電して信号線131における進行波を誘発する。具体的には、発振誘起部170は、電源電圧Vddと信号線131の終端との間にスイッチ171を有する。スイッチ171は、発振器の起動時に、一時的に電源電圧Vddと信号線131の終端とを接続し、信号線131における進行波を誘発する。スイッチ171が閉じて電源電圧Vddと信号線131の終端とを接続する時間は、可変容量素子120の容量などに応じて決定される。
【0032】
[伝送線路部の構成]
図2は、本実施の形態に係る伝送線路部130の構成を示す斜視図である。図2に示すように、伝送線路部130は、信号線131とグランド層135の間に誘電体層134が挟まれて構成され、誘電体層134の中にストリップ132−1〜132−n及び図示を省略したスイッチ133−1〜133−nが設けられている。誘電体層134は、大部分が例えばSiO2及びシリコンの混合媒質から形成され、混合媒質の中にストリップ132−1〜132−n及びスイッチ133−1〜133−nが固定された構成となっている。誘電体層134は、全体として1つの誘電体として機能する。また、グランド層135は、接地されており、電位が常にグランド電位に保たれている。
【0033】
ストリップ132−1〜132−nは、信号線131の近傍に信号線131に沿って等間隔に配置されている。なお、図2においては、信号線131の紙面左下の一端が直流電圧Vdcを印加する電源に接続される始端であるものとし、信号線131の紙面右上に示す一端がバッファ部150に接続される終端であるものとする。すなわち、信号線131の進行波伝搬方向は、ストリップ132−1からストリップ132−nへ向かう方向であるものとする。また、それぞれのストリップ132−1〜132−nは、それぞれ接続部132aを介してスイッチ133−1〜133−nに接続されている。
【0034】
このような構成の伝送線路部130において、信号線131に直流電圧Vdcが印加されて、例えば波長λが2mmかつ周波数fが52GHzの進行波が伝搬される場合、信号線131近傍の電解強度の分布は、例えば図3に示すようなものになる。すなわち、電界強度は、信号線131を中心として4分の3波長分の波形状に分布する。この波形は、ストリップ132−1側の端部から0波長及び2分の1波長の位置を節とし、信号線131のストリップ132−1側の端部から4分の1波長及び4分の3波長の位置を腹とする定在波の形状である。定在波の腹部分においては、電界強度が150kV/m(キロボルト/メートル)以上になっている。このように、信号線131の長さを波長λの4分の3の長さとすることにより、信号線131には定在波が発生することがわかる。
【0035】
そして、信号線131の終端は、定在波の腹となって発振しているため、発振器は、定在波を利用して発振周波数のクロック信号を出力することができる。また、式(1)に示したように、定在波の周波数fは、伝送線路部130における実効誘電率Erに依存しているため、伝送線路部130における実効誘電率Erを変化させることにより、定在波の周波数fを調整することができる。この結果、可変容量素子120の容量を変化させなくても、発振器の発振周波数を変化させることができる。
【0036】
次に、伝送線路部130の構成について、図4及び図5を参照しながら、さらに具体的に説明する。なお、図4及び図5においては、ストリップ132−1〜132−n及びスイッチ133−1〜133−nのそれぞれを、単にストリップ132及びスイッチ133と示している。
【0037】
図4は、本実施の形態に係る伝送線路部130の構成を模式的に示す平面図である。図4に示すように、伝送線路部130は、長さLenが1.5mmかつ幅wが0.07mmの信号線131と、横幅Lsが0.075mmかつ縦幅wsが0.12mmの複数のストリップ132とを有する。各ストリップ132は、信号線131に対向し、互いに0.12mmの間隔ssを空けて、等間隔に並べられている。また、各ストリップ132には、スイッチ133に接続する接続部132aが設けられている。なお、図4に示す構成は、本実施の形態に係る伝送線路部130の具体的構成例に過ぎず、信号線131及びストリップ132の寸法は、図中の寸法に限定されるものではない。
【0038】
各ストリップ132は、信号線131に対向して配置されているため、各ストリップ132の電位がグランド電位となることにより、信号線131とグランド層との距離を擬似的に近づけることができる。そして、信号線131がグランド層に近づけば、伝送線路部130における実効誘電率Erが大きくなったとみなすことができる。結果として、式(1)の右辺の分母が大きくなり、信号線131に発生する定在波の周波数fが小さくなる。したがって、グランド電位となるストリップ132の数を増減させることにより、定在波の周波数fを調節し、発振器の発振周波数を調整することができる。
【0039】
図5は、本実施の形態に係る伝送線路部130の構成を模式的に示す側面図である。図5に示すように、伝送線路部130は、層構造を有しており、紙面向かって上方から信号線131、SiO2層134a、シリコン層134b及びグランド層135が形成されている。SiO2層134a及びシリコン層134bは、誘電体層134を形成している。
【0040】
信号線131は、伝送線路部130の表面に形成されており、グランド層135から信号線131までの距離hは、0.25mmである。SiO2層134aは、内部にストリップ132が固定されたSiO2からなる絶縁層であり、グランド層135からストリップ132までの距離hsは、0.1mmである。したがって、ストリップ132から信号線131までの距離hvは、0.15mmとなる。なお、SiO2層134aは、スイッチ133を形成するMOSFETのゲート133aも備えている。そして、ゲート133aは、切替制御部140に接続されている。
【0041】
シリコン層134bは、スイッチ133を形成するMOSFETのソース133b及びドレイン133cを内包する半導体層である。図5では図示を省略したが、スイッチ133のソース133bは、グランド層135に接続されている。また、スイッチ133のドレイン133cは、ストリップ132に接続されている。伝送線路部130の構成を図5に示すような層構造にする場合には、標準的なCMOSプロセスで伝送線路部130を成形することができ、発振器を容易に製造することができる。
【0042】
SiO2層134aを構成するSiO2及びシリコン層134bを構成するシリコンは、それぞれ不変の比誘電率を有する物質である。そこで、SiO2の比誘電率をεr(SiO2)、シリコンの比誘電率をεr(Si)とし、図5に示すように、SiO2層134aの高さをh(SiO2)、シリコン層134bの高さをh(Si)とすると、誘電体層134の比誘電率εrは、以下の式(2)で表される。
【数2】

【0043】
そして、伝送線路部130における実効誘電率Erは、スイッチ133の総数n、接続中のスイッチ133の数k、誘電体層134の比誘電率εr、信号線131とグランド層135の間の距離h及び信号線131とストリップ132の間の距離hvを用いて、以下の式(3)で表される。ただし、A、Bは、誘電体層134の比誘電率εrに応じて定まる定数である。
【数3】

【0044】
式(3)からわかるように、信号線131の幅wと変数zの比が1以下の場合も1より大きい場合も、変数zが大きくなると、実効誘電率Erが小さくなる。そして、変数zは、接続中のスイッチ133の数に応じた信号線131とグランド層135の間の実効的な距離を示しており、接続中のスイッチ133が少ないほど変数zが大きくなる。したがって、式(3)から、接続中のスイッチ133の数を減らすと実効誘電率Erが小さくなることを確認することができる。そして、実効誘電率Erが小さくなれば、伝送線路部130に発生する定在波の周波数fが大きくなる。
【0045】
このように、本実施の形態に係る伝送線路部130は、スイッチ133の接続及び非接続を切り替えて、接続中のスイッチ133の数を増減させることにより、実効誘電率Erを変化させ、定在波の周波数fを調整することができる。この結果、可変容量素子120の可変範囲が小さくても、バッファ部150から出力端子155へ出力される発振周波数を広帯域にわたって柔軟に調整することができる。
【0046】
[スイッチの構成]
図6は、本実施の形態に係るスイッチ133の構成例を示す図である。図6に示すスイッチ133は、ゲート133a、ソース133b、ドレイン133c及びビア133dを有する。上述したように、ゲート133aは、切替制御部140に接続されており、切替制御部140からゲート電圧が印加されると、ソース133bとドレイン133cの間を導通状態とする。すなわち、ゲート133aは、ゲート電圧が印加されるとスイッチ133を接続状態にし、ドレイン133cの電位をソース133bの電位と一致させる。また、ゲート133aは、切替制御部140からゲート電圧が印加されない間は、スイッチ133を非接続状態にし、ドレイン133cの電位をソース133bの電位と一致させることがない。
【0047】
ソース133bは、グランド層135に接続されており、スイッチ133が接続状態の場合に、グランド電位をドレイン133cへ伝達する。ドレイン133cは、ビア133dを介してストリップ132に接続されており、スイッチ133が接続状態の場合に、電位がグランド電位となる。ビア133dは、ドレイン133cとストリップ132の接続部132aとを接続しており、スイッチ133が接続状態の場合に、ストリップ132の電位をドレイン133cのグランド電位に一致させる。
【0048】
このように構成されたスイッチ133において、切替制御部140からゲート133aにゲート電圧が印加されると、ソース133bとドレイン133cの間が導通状態となり、ドレイン133cに接続されたストリップ132の電位がグランド電位となる。すなわち、切替制御部140による制御により、スイッチ133が接続状態となると、グランド層135、ソース133b、ドレイン133c、ビア133d及びストリップ132の電位がいずれもグランド電位となり、擬似的に信号線131とグランド層135との距離が近づく。これにより、伝送線路部130における実効誘電率Erが変化し、伝送線路部130に発生する定在波の周波数fが調整される。
【0049】
[発振器の動作]
次いで、上記のように構成された伝送線路部130を有する発振器の動作について説明する。電源から直流電圧Vdcが信号線131の始端に印加されると、信号線131には、可変容量素子120の容量と伝送線路部130における実効誘電率Erとに応じた周波数fの定在波が発生する。このとき、伝送線路部130における実効誘電率Erは、切替制御部140によってスイッチ133−1〜133−nの接続及び非接続が切り替えられることによって調節される。
【0050】
具体的には、切替制御部140によって接続状態とされたスイッチ133−1〜133−nに対応するストリップ132−1〜132−nの電位がグランド電位となる。このため、接続中のスイッチ133−1〜133−nの数が増えると信号線131とグランド層135とが擬似的に近づく。この結果、直流電圧Vdcの印加により信号線131を伝搬される進行波の伝搬速度が低下し、実効誘電率Erが大きくなったとみなすことができ、定在波の周波数fが小さくなる。
【0051】
反対に、接続中のスイッチ133−1〜133−nの数が減ると信号線131とグランド層135とが擬似的に遠ざかる。この結果、直流電圧Vdcの印加により信号線131を伝搬される進行波の伝搬速度が上昇し、実効誘電率Erが小さくなったとみなすことができ、定在波の周波数fが大きくなる。
【0052】
また、可変容量素子120の容量は、電圧制御部110から可変容量素子120へ印加される制御電圧によって調整される。ただし、本実施の形態においては、可変容量素子120の容量の可変範囲は小さく、位相シフト量△Φを微小に変化させることにより、定在波の周波数fの微調整のみが行われる。このように可変容量素子120の容量の可変範囲が小さくても、本実施の形態においては、伝送線路部130における実効誘電率Erの可変範囲が大きいため、周波数fの制御範囲を大きくすることができる。
【0053】
このように周波数fが調整された定在波は、信号線131のバッファ部150に接続された終端において腹を有しているため、バッファ部150によって、定在波の周波数fに対応するクロック信号が出力端子155へ出力される。
【0054】
[スイッチの切替動作]
次に、本実施の形態に係るスイッチ133の切替動作の具体例について説明する。図7は、信号線131に対して9個のストリップ132−1〜132−9を配置する場合の、スイッチ133−1〜133−9の切替動作の具体例を示す図である。図7において、紙面向かって上部には、信号線131に発生する定在波の波形を示しており、紙面向かって下部には、周波数fの大小に応じて接続状態とすべきスイッチ133−1〜133−9を示している。すなわち、図7中○印で示すスイッチ133−1〜133−9を接続状態とすることにより、それぞれ対応するストリップ132−1〜132−9の電位がグランド電位となり、定在波の周波数fの大小が変化する。
【0055】
具体的には、接続中のスイッチが少ないほど定在波の周波数fは大きく、接続中のスイッチが多いほど定在波の周波数fは小さくなる。そして、図7においては、接続中のスイッチが均等に配置されるように、スイッチ133−1〜133−9の接続及び非接続が切り替えられることが示されている。すなわち、例えば1個のスイッチのみを接続状態にする場合には、中央に配置されたストリップ132−5に対応するスイッチ133−5が接続状態とされ、残りの8個のスイッチが非接続状態とされる。
【0056】
また、例えば2個のスイッチを接続状態にする場合には、スイッチ133−5に加えて、スイッチ133−7が接続状態とされ、残りの7個のスイッチが非接続状態とされる。
ここで、2個目のスイッチとしてスイッチ133−7が選択されるのは、ストリップ132−7が定在波の節163の近傍に配置されているからである。すなわち、定在波の腹に配置されたストリップ(例えばストリップ132−4、132−9など)の電位がグランド電位となる場合には、比較的大きな寄生容量が発生してエネルギーロスが発生する一方、定在波の節に配置されたストリップ(例えばストリップ132−1、132−7など)の電位がグランド電位となる場合には、寄生容量の発生を抑制することができる。このため、スイッチの接続に際して、接続状態となるスイッチの配置が均等とならない場合には、定在波の波形を考慮して接続状態とするスイッチが決定される。
【0057】
さらに、例えば3個のスイッチを接続状態にする場合には、スイッチ133−5、133−7に加えて、スイッチ133−3が接続状態とされ、残りの6個のスイッチが非接続状態とされる。ストリップ132−3は、定在波の腹162に比較的近いが、2個のスイッチを接続状態とした段階で、既にスイッチ133−7が接続状態となっていることから、スイッチ133−7と対称的な位置に配置されたスイッチ133−3が接続状態とされる。
【0058】
このように、接続中のスイッチが満遍なく均等に配置されるようにスイッチ133−1〜133−9を切り替えることにより、信号線131全体が平均的にグランド層135に近づくことになる。このため、確実に信号線131の実効誘電率Erを変化させ、信号線131に発生する定在波の周波数fを正確に調整することができる。
【0059】
以下同様に、例えば4個のスイッチを接続状態にする場合には、定在波の節161に近いストリップ132−1に対応するスイッチ133−1が新たに接続状態にされる。そして、例えば5個のスイッチを接続状態にする場合には、既に接続中のスイッチ133−1と対称的な位置に配置されたスイッチ133−9が接続状態とされ、例えば6個のスイッチを接続状態にする場合には、定在波の節163に近いストリップ132−6に対応するスイッチ133−6が接続状態とされる。
【0060】
なお、図7においては、接続中のスイッチ数が増える際、既に接続中のスイッチを継続的に接続状態とするものとしたが、接続中のスイッチ数が変化する場合に、どのスイッチを接続状態とするかは任意に決定することができる。すなわち、例えば接続中のスイッチ数を1個から2個に増やす場合、既に接続中のスイッチ133−5を非接続状態に切り替えた上で、改めて例えばスイッチ133−3、133−7を接続状態に切り替えるなどとしても良い。こうすることにより、接続中のスイッチの配置を常に均等にすることができる。また、接続中のスイッチの配置の均等性を考慮せず、定在波の節161、163に近いストリップに対応するスイッチから順に接続状態としていくなどの順序も考えられる。
【0061】
このようにスイッチ133を切り替え、接続状態のスイッチ133の数を変化させることにより、図8に実線で示すように、信号線131のインピーダンスは、例えば50Ωを中心として、分散△zの範囲で増減する。同様に、図8に破線で示すように、伝送線路部130における実効誘電率Erは、最小値Er(low)から最大値Er(high)まで変化する。したがって、例えば半数のスイッチ133を接続状態とした場合の実効誘電率Er(o)に対応する周波数foを中心周波数として設定すれば、接続中のスイッチ133の数の増減による実効誘電率Erの変化に合わせて定在波の周波数fを調整することができる。
【0062】
さらに、本実施の形態においては、可変容量素子120の容量も可変であるため、電圧制御部110から可変容量素子120へ印加される制御電圧Vcontを変更することにより、接続中のスイッチ133の数を固定しても定在波の周波数fを微調整することができる。すなわち、例えば図9に示すように、制御電圧Vcontを大きくすれば、接続中のスイッチ133の数が変化しなくても、定在波の周波数fが高くなる。そして、図9に示す複数の曲線は、それぞれ接続中のスイッチ133の数が異なる場合の周波数fの変化を示しており、紙面向かって下方の曲線ほど接続中のスイッチ133が多い場合の周波数fの変化を示している。したがって、スイッチ133の切り替えと制御電圧Vcontの変更とにより、定在波の周波数fは、図9に示した広範な制御幅で調整されることになる。
【0063】
以上のように、本実施の形態によれば、スイッチを介してグランド層に接続されたストリップを信号線の近傍に配置し、スイッチの接続及び非接続を切り替えることにより、信号線とグランド層とを擬似的に近づけたり遠ざけたりする。これにより、信号線を伝搬される進行波の伝搬速度に対応する実効誘電率が変化する。結果として、信号線に発生する定在波の周波数を変化させることができ、発振器の発振周波数を広帯域にわたって柔軟に調整することができる。また、発振周波数の調整に多数の容量素子を必要としないため、寄生容量の発生を抑制することができ、十分に高い周波数帯域の発振周波数のクロック信号を出力することができる。
【0064】
なお、上記実施の形態1においては、複数のストリップ132を信号線131に沿って等間隔に配置するものとしたが、ストリップ132の配置はこれに限定されない。すなわち、例えば図10に示すように、複数のストリップ132の間の間隔が不均一であっても良い。図10は、信号線131に発生する定在波の腹よりも節の付近に多くのストリップ132が配置される構成を示している。すなわち、定在波の節に近い順に、ストリップ132の間の間隔ss1、ss2、ss3及びss4が以下の式(4)の関係を満たしている。
ss1<ss2<ss3<ss4 ・・・(4)
【0065】
こうすることにより、定在波の腹における寄生容量の発生と、これに伴うエネルギーロスとを低減することができ、効率的に定在波の周波数fを調整することができる。同様に考えて、信号線131のバッファ部150に接続する終端にも定在波の腹が形成されるため、信号線131の終端周辺にはストリップ132が配置されないようにしても良い。
【0066】
(実施の形態2)
実施の形態2の特徴は、実施の形態1におけるストリップとスイッチの双方の機能を併せ持つ半導体ストリップを信号線の近傍に配置して信号線の実効誘電率を変化させ、発振周波数を柔軟に調整することである。
【0067】
本実施の形態に係る発振器の全体の構成は、実施の形態1に係る発振器の構成(図1−1)と同様であるため、その説明を省略する。ただし、本実施の形態においては、伝送線路部130の構成が実施の形態1と異なっている。
【0068】
[伝送線路部の構成]
図11は、本実施の形態に係る伝送線路部130の構成を示す斜視図である。図11において、図2と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。図11に示すように、伝送線路部130は、信号線131とグランド層135の間に誘電体層134が挟まれて構成され、誘電体層134の中に半導体ストリップ201−1〜201−nが設けられている。
【0069】
半導体ストリップ201−1〜201−nは、例えばMOSFETなどの半導体からなり、信号線131に接触しないように、信号線131に沿って並べて配置される。具体的には、半導体ストリップ201−1〜201−nのドレインが信号線131に対向し、半導体ストリップ201−1〜201−nのゲートは切替制御部140に接続されている。また、図11においては図示を省略したが、半導体ストリップ201−1〜201−nのソースは、グランド層135に接続されている。したがって、半導体ストリップ201−1〜201−nのゲートに切替制御部140からゲート電圧が印加されると、信号線131に対向するドレインの電位がグランド電位となる。このように、本実施の形態における半導体ストリップ201−1〜201−nは、実施の形態1におけるストリップ132−1〜132−nとスイッチ133−1〜133−nとを一体にした部材であるとみなすことができる。
【0070】
図12は、本実施の形態に係る伝送線路部130の構成を模式的に示す平面図である。図12に示すように、伝送線路部130は、信号線131及び半導体ストリップ201−1〜201−nを有する。半導体ストリップ201−1〜201−nは、それぞれゲート201a、ソース201b及びドレイン201cを備えている。各半導体ストリップ201−1〜201−nのドレイン201cは、信号線131に対向しており、ソース201bは、グランド層135に接続されている。そして、ゲート201aは、切替制御部140に接続され、必要に応じてゲート電圧が印加されるようになっている。なお、図12中Xの方向から見た半導体ストリップ201−1の構成については、後に図14を参照して詳述する。
【0071】
本実施の形態においては、各半導体ストリップ201−1〜201−nのソース201bがグランド層135に接続されているため、ゲート201aにゲート電圧が印加されてソース201bとドレイン201cが導通状態となることにより、ドレイン201cの電位がグランド電位となる。また、ドレイン201cは、信号線131に対向しているため、ドレイン201cの電位がグランド電位となることにより、信号線131とグランド層135との距離を擬似的に近づけることができる。そして、信号線131がグランド層135に近づけば、伝送線路部130における実効誘電率Erが大きくなったとみなすことができ、これに伴って、信号線131に発生する定在波の周波数fが小さくなる。したがって、ゲート電圧が印加されて導通状態となる半導体ストリップ201−1〜201−nの数を増減させることにより、定在波の周波数fを調節し、発振器の発振周波数を調整することができる。
【0072】
図13は、本実施の形態に係る伝送線路部130の構成を模式的に示す側面図である。図13において、図5と同じ部分には同じ符号を付し、その説明を省略する。図13に示すように、伝送線路部130は、図5と同様の層構造を有しており、SiO2層134aは、半導体ストリップ201のゲート201aを備えている。このゲート201aは、切替制御部140に接続されている。
【0073】
シリコン層134bは、半導体ストリップ201のソース201b及びドレイン201cを備えた半導体層である。図13では省略したが、半導体ストリップ201のソース201bは、グランド層135に接続されている。また、ゲート201aにゲート電圧が印加されることによりソース201bと導通状態となるドレイン201cは、信号線131に対向している。このように、信号線131の近傍に配置されるストリップを半導体ストリップ201とすることにより、信号線131の近傍に導体のストリップを配置しなくても実効誘電率Erを変化させることができ、信号線131の近傍に導体を配置することによる寄生容量の増大を防止することができる。
【0074】
図14は、図12のXの方向から見た半導体ストリップ201−1の構成例を示す図である。上述したように、ゲート201aは、切替制御部140に接続されており、切替制御部140からゲート電圧が印加されると、ソース201bとドレイン201cの間を導通状態とする。すなわち、ゲート201aは、ゲート電圧が印加されると、ドレイン201cの電位をソース201bの電位と一致させる。
【0075】
ソース201bは、グランド層135に接続されており、ゲート201aにゲート電圧が印加されると、グランド電位をドレイン201cへ伝達する。ドレイン201cは、ソース201bから離間する方向に長く延伸されており、延伸された部分が信号線131と対向している。そして、ドレイン201cは、ゲート201aにゲート電圧が印加された場合に、電位がグランド電位となる。本実施の形態においては、ドレイン201cをソース201bよりも長く延伸された形状とすることにより、信号線131とドレイン201cを対向させつつ、ゲート201a及びソース201bを信号線131から離れた位置に設けることができる。これにより、信号線131及び半導体ストリップ201を備える伝送線路部130の製造を容易にすることができる。ただし、ドレイン201cが信号線131に対向していれば、必ずしもドレイン201cをソース201bと異なる形状にする必要はない。
【0076】
このように構成された半導体ストリップ201において、切替制御部140からゲート201aにゲート電圧が印加されると、ソース201bとドレイン201cの間が導通状態となり、ドレイン201cの電位がグランド電位となる。すなわち、切替制御部140による制御により、半導体ストリップ201が導通状態となると、グランド層135、ソース201b及びドレイン201cの電位がいずれもグランド電位となり、擬似的に信号線131とグランド層135との距離が近づく。これにより、伝送線路部130における実効誘電率Erが変化し、伝送線路部130に発生する定在波の周波数fが調整される。
【0077】
[発振器の動作]
次いで、上記のように構成された伝送線路部130を有する発振器の動作について説明する。電源から直流電圧Vdcが信号線131の始端に印加されると、信号線131には、可変容量素子120の容量と伝送線路部130における実効誘電率Erとに応じた周波数fの定在波が発生する。このとき、伝送線路部130における実効誘電率Erは、切替制御部140によって半導体ストリップ201−1〜201−nの導通及び非導通が切り替えられることによって調節される。
【0078】
具体的には、切替制御部140によって導通状態とされた半導体ストリップ201−1〜201−nのドレイン201cの電位がグランド電位となり、導通状態とされた半導体ストリップ201−1〜201−nの数が増えると信号線131とグランド層135とが擬似的に近づく。この結果、直流電圧Vdcの印加により信号線131を伝搬される進行波の伝搬速度が低下し、実効誘電率Erが大きくなったとみなすことができ、定在波の周波数fが小さくなる。
【0079】
反対に、導通状態とされた半導体ストリップ201−1〜201−nの数が減ると信号線131とグランド層135とが擬似的に遠ざかる。この結果、直流電圧Vdcの印加により信号線131を伝搬される進行波の伝搬速度が上昇し、実効誘電率Erが小さくなったとみなすことができ、定在波の周波数fが大きくなる。
【0080】
半導体ストリップ201−1〜201−nの導通及び非導通の切り替えについては、実施の形態1のスイッチ133−1〜133−nの接続及び非接続の切り替えと同様の順序で行うことができる。すなわち、切替制御部140は、導通状態の半導体ストリップの配置が満遍なく均等となる順序で、半導体ストリップ201−1〜201−nのゲート201aにゲート電圧を印加するとともに、定在波の節付近の半導体ストリップのゲート201aに優先的にゲート電圧を印加する。
【0081】
また、可変容量素子120の容量は、電圧制御部110から可変容量素子120へ印加される制御電圧によって調整される。ただし、本実施の形態においては、可変容量素子120の容量の可変範囲は小さく、位相シフト量△Φを微小に変化させることにより、定在波の周波数fの微調整のみが行われる。このように可変容量素子120の容量の可変範囲が小さくても、本実施の形態においては、伝送線路部130における実効誘電率Erの可変範囲が大きいため、周波数fの制御範囲を大きくすることができる。
【0082】
このように周波数fが調整された定在波の波形は、信号線131のバッファ部150に接続された終端において腹となっているため、バッファ部150によって、定在波の周波数fに対応するクロック信号が出力端子155へ出力される。
【0083】
以上のように、本実施の形態によれば、ソースがグランド層に接続された半導体ストリップをドレインが信号線に対向するように配置し、半導体ストリップの導通及び非導通を切り替えることにより、信号線とグランド層とを擬似的に近づけたり遠ざけたりする。これにより、信号線を伝搬される進行波の伝搬速度に対応する実効誘電率が変化する。結果として、信号線に発生する定在波の周波数を変化させることができ、発振器の発振周波数を広帯域にわたって柔軟に調整することができる。また、発振周波数の調整に多数の容量素子を必要としないため、寄生容量の発生を抑制することができ、十分に高い周波数帯域の発振周波数のクロック信号を出力することができる。さらに、信号線の近傍に配置されるストリップが導体ではなく半導体であるため、導体を配置することによる寄生容量の増大を防止することができる。
【0084】
(実施の形態3)
実施の形態3の特徴は、クランプ回路で接続された2本の信号線を有する発振器において、それぞれの信号線の近傍にストリップを配置する構成とすることにより、十分に高い発振周波数を広帯域にわたって柔軟に調整することである。
【0085】
[発振器の構成]
図15は、本実施の形態に係る発振器の構成を示す図である。図15に示す発振器は、電圧制御部310、可変容量素子320、伝送線路部330、340、クランプ部350、切替制御部360、バッファ部370、380及び出力端子375、385を有する。
【0086】
電圧制御部310は、可変容量素子320へ印加される電圧を制御し、可変容量素子320の容量を変化させる。
【0087】
可変容量素子320は、電圧制御部310から印加される制御電圧に応じて容量が変化する素子である。可変容量素子320としては、例えばコンデンサが用いられる。伝送線路部330、340の終端における定在波の位相は、可変容量素子320の容量に応じてシフトする。したがって、可変容量素子320の容量を増減させれば、伝送線路部330、340の信号線331、341の終端における位相シフト量が変化し、定在波の周波数が変化する。ただし、可変容量素子320の容量を大幅に増減させると、信号線331、341の終端における位相シフト量が過剰に大きくなり、信号線331、341の終端で発振しなくなる。したがって、可変容量素子320の容量は、大きく増減させることはできず、電圧制御部310による制御電圧の調節のみでは、定在波の周波数を柔軟に調整することはできない。
【0088】
伝送線路部330、340は、それぞれ定電流源Isに接続された信号線331、341とグランド層とを備え、信号線331、341とグランド層との間に、例えばSiO2及びシリコンの混合媒質を含む誘電体層が挟まれた構成となっている。そして、伝送線路部330、340は、定電流源Isから電源電圧が印加されると進行波を伝搬し、定在波を発生させる。すなわち、伝送線路部330、340は、それぞれ実施の形態1に係る伝送線路部130とほぼ同様の構成となっている。
【0089】
伝送線路部330、340は、互いに位相が反転した定在波を発生させる。また、伝送線路部330、340は、それぞれ実効誘電率を増減させ、定在波の周波数を広帯域にわたって変化させる。具体的には、定在波の周波数fは、光速c、信号線331、341の長さL、信号線331、341の終端における位相シフト量△Φ及び実効誘電率Erを用いて、実施の形態1における式(1)によって表される。
【0090】
上述したように、本実施の形態においては、可変容量素子320の容量を大幅に増減させて信号線331、341の終端における位相シフト量△Φを大きくすることはできない。このため、伝送線路部330、340の実効誘電率Erを変化させることにより、定在波の周波数fを調整する。具体的には、伝送線路部330は、信号線331、ストリップ332−1〜332−n及びスイッチ333−1〜333−nを有する。また、伝送線路部340は、信号線341、ストリップ342−1〜342−n及びスイッチ343−1〜343−nを有する。
【0091】
信号線331、341は、それぞれ始端が定電流源Isに接続され、終端が可変容量素子320及びバッファ部370、380に接続された伝送路である。信号線331、341の始端から終端までの長さは、発振に使用される進行波の波長の4分の3の長さである。このため、信号線331、341は、定電流源Isから電源電圧が印加されると、定電流源Isに接続された始端を節とし、終端を腹とする4分の3波長の定在波を発生させる。ただし、信号線331、341の終端における定在波の位相は、可変容量素子320の容量によって、位相シフト量△Φだけシフトしている。また、信号線331、341が発生させる定在波の周波数fは、式(1)に示したように、伝送線路部330、340における実効誘電率Erの平方根に反比例する。したがって、実効誘電率Erを大きくすれば、定在波の周波数fが低くなり、実効誘電率Erを小さくすれば、定在波の周波数fが高くなる。
【0092】
ストリップ332−1〜332−n、342−1〜342−nは、例えば金属などの導体からなる細長い板状部材であり、それぞれ信号線331、341に接触しないように、信号線331、341に沿って並べて配置される。また、ストリップ332−1〜332−n、342−1〜342−nは、それぞれスイッチ333−1〜333−n、343−1〜343−nを介してグランド層に接続されている。したがって、スイッチ333−1〜333−n、343−1〜343−nがストリップ332−1〜332−n、342−1〜342−nとグランド層とを接続すると、信号線331、341の近傍に配置されたストリップ332−1〜332−n、342−1〜342−nの電位がグランド電位となる。
【0093】
スイッチ333−1〜333−n、343−1〜343−nは、切替制御部360による制御に従って、それぞれストリップ332−1〜332−n、342−1〜342−nとグランド層との接続及び非接続を切り替える。スイッチ333−1〜333−n、343−1〜343−nとしては、例えばMOSFETが用いられる。スイッチ333−1〜333−n、343−1〜343−nがストリップ332−1〜332−n、342−1〜342−nとグランド層とを接続すると、擬似的に信号線331、341がグランドに近づいたこととなる。すなわち、スイッチ333−1〜333−n、343−1〜343−nの接続及び非接続を切り替えることにより、擬似的に信号線331、341とグランド層の間の距離が調節され、それぞれ伝送線路部330、340における実効誘電率Erを変化させることができる。
【0094】
具体的には、接続中のスイッチ333−1〜333−n、343−1〜343−nの数が多くなると、信号線331、341とグランド層が近づいたとみなすことができ、進行波の伝搬速度が遅くなることから、実効誘電率Erが大きくなると言える。また、接続中のスイッチ333−1〜333−n、343−1〜343−nの数が少なくなると、信号線331、341とグランド層が遠ざかったとみなすことができ、進行波の伝搬速度が速くなることから、実効誘電率Erが小さくなると言える。これに伴い、式(4)に示したように、実効誘電率Erの平方根に反比例して定在波の周波数が変化する。つまり、スイッチ333−1〜333−n、343−1〜343−nの接続及び非接続を切り替えることにより、定在波の周波数を調整することができる。
【0095】
クランプ部350は、信号線331、341の始端から4分の1波長の位置に接続され、信号線331、341に発生する定在波の振幅を対応させる。すなわち、クランプ部350は、信号線331に発生する定在波の振幅と信号線341に発生する定在波の振幅とを互いに反転した同じ大きさの振幅にする。したがって、クランプ部350は、例えば信号線331のクランプ部350が接続された位置の振幅が正であれば、信号線341のクランプ部350が接続された位置の振幅を負にして、2つの振幅の大きさを同じにする。
【0096】
切替制御部360は、スイッチ333−1〜333−n、343−1〜343−nそれぞれの接続及び非接続の切り替えを制御する。具体的には、切替制御部360は、互いに対応するスイッチ333−1〜333−nとスイッチ343−1〜343−nとを同時に接続状態から非接続状態に切り替えたり、非接続状態から接続状態に切り替えたりする。そして、切替制御部360は、発振器の発振周波数を高くする場合には、接続中のスイッチ333−1〜333−n、343−1〜343−nの数を減少させる。また、切替制御部360は、発振器の発振周波数を低くする場合には、接続中のスイッチ333−1〜333−n、343−1〜343−nの数を増加させる。
【0097】
バッファ部370、380は、緩衝用の回路を有しており、可変容量素子320及び伝送線路部330、340などの回路に対する出力端子375、385側からの影響を排除し、可変容量素子320及び伝送線路部330、340などを備える回路を安定的に動作させる。すなわち、バッファ部370、380は、実施の形態1に係るバッファ部150と同様の構成を有しており、それぞれ定在波の周波数fに対応するクロック信号を出力端子375、385へ出力する。ただし、バッファ部370、380からの出力は、互いに反転している。
【0098】
図16は、本実施の形態に係るクランプ部350の構成例として、NMOS型及びCMOS型の2つのクランプ部350の構成を示す図である。
【0099】
NMOS型のクランプ部350は、NMOSインバータを組み合わせて構成されている。具体的には、NMOS型のクランプ部350は、対称的に接続された2つのMOSFET351、352を備えている。すなわち、MOSFET351のゲートにはMOSFET352のソースが接続されており、MOSFET352のゲートにはMOSFET351のソースが接続されている。また、2つのMOSFET351、352のドレインは、いずれも接地されている。
【0100】
一方、CMOS型のクランプ部350は、CMOSインバータを組み合わせて構成されている。具体的には、CMOS型のクランプ部350は、上述した2つのMOSFET351、352に加え、さらに2つのMOSFET353、354を備えている。MOSFET353のゲートにはMOSFET354のソースが反転接続されており、MOSFET354のゲートにはMOSFET353のソースが反転接続されている。また、2つのMOSFET353、354のドレインは、いずれも電源に接続されている。
【0101】
これらのMOSFET351〜354を用いてクランプ部350を構成することにより、クランプ部350へ入力される2つの電圧V1、V2が同一の電圧にクランプされる。したがって、信号線331、341にクランプ部350が接続されることにより、信号線331、341に発生する定在波の振幅を同じ大きさに揃えることができる。
【0102】
[発振器の動作]
次いで、上記のように構成された発振器の動作について説明する。定電流源Isからそれぞれ信号線331、341に電源電圧が印加されると、信号線331、341には、位相シフト量△Φと実効誘電率Erに応じた周波数fの定在波が発生する。このとき、位相シフト量△Φは、可変容量素子320の容量に応じて定まり、電圧制御部310によって制御されている。また、実効誘電率Erは、切替制御部360によってスイッチ333−1〜333−n、343−1〜343−nの接続及び非接続が切り替えられることによって調整される。
【0103】
具体的には、伝送線路部330において、切替制御部360によって接続状態とされたスイッチ333−1〜333−nに対応するストリップ332−1〜332−nの電位がグランド電位となる。このため、接続中のスイッチ333−1〜333−nの数が増えると信号線331とグランド層とが擬似的に近づく。この結果、電源電圧の印加により信号線331を伝搬される進行波の伝搬速度が低下し、実効誘電率Erが大きくなったとみなすことができる。そして、実効誘電率Erの増大に伴って、定在波の周波数fが小さくなる。
【0104】
一方、伝送線路部340においては、切替制御部360によって、接続中のスイッチ333−1〜333−nと対称的なスイッチ343−1〜343−nが接続状態とされ、対応するストリップ342−1〜342−nの電位がグランド電位となる。そして、接続中のスイッチ343−1〜343−nの数が増えると信号線341とグランド層とが擬似的に近づく。この結果、電圧の印加により信号線341を伝搬される進行波の伝搬速度が低下し、実効誘電率Erが大きくなったとみなすことができる。そして、実効誘電率Erの増大に伴って、定在波の周波数fが小さくなる。ただし、信号線341は、信号線331とクランプ部350を介して接続されているため、信号線341に発生する定在波は、信号線331に発生する定在波と比較すると、振幅の大きさは同一であるものの位相が反転している。
【0105】
また、反対に、接続中のスイッチ333−1〜333−n、343−1〜343−nの数が減ると信号線331、341とグランド層とが擬似的に遠ざかる。この結果、電源電圧の印加により信号線331、341を伝搬される進行波の伝搬速度が上昇し、実効誘電率Erが小さくなったとみなすことができる。そして、実効誘電率Erの減少に伴って、それぞれ信号線331、341に発生する定在波の周波数fが大きくなる。
【0106】
スイッチ333−1〜333−n、343−1〜343−nの接続及び非接続の切り替えについては、実施の形態1と同様の順序で行うことができる。すなわち、切替制御部360は、接続中のスイッチの配置が満遍なく均等となる順序で、スイッチ333−1〜333−n、343−1〜343−nを切り替えるとともに、定在波の節付近のストリップに対応するスイッチを優先的に接続状態とする。
【0107】
また、可変容量素子320の容量は、電圧制御部310から可変容量素子320へ印加される制御電圧によって調整される。ただし、上述したように、本実施の形態においては、位相シフト量△Φを大きく増減させることはできないため、可変容量素子320の容量の可変範囲は小さい。このように可変容量素子320の容量の可変範囲が小さく、位相シフト量△Φを大きく増減させない場合でも、本実施の形態においては、実効誘電率Erの可変範囲が大きいため、周波数fの制御範囲を大きくすることができる。
【0108】
このように周波数fが調整された定在波の波形は、信号線331、341の終端において腹となっているため、それぞれバッファ部370、380によって、定在波の周波数fに対応するクロック信号が出力端子375、385へ出力される。
【0109】
[発振周波数の調整の具体例]
図17は、本実施の形態に係る発振器の発振周波数の具体例を示す図である。ここでは、伝送線路部330、340がそれぞれ11個のスイッチ333−1〜333−11、343−1〜343−11を備えているものとする。
【0110】
図17に示すように、それぞれの伝送線路部330、340において、すべてのスイッチが非接続状態である場合には、信号線331、341を伝搬される進行波の遅延は8.9ps(ピコ秒)であり、スイッチが接続されていないため、実効誘電率Erは変化しない。したがって、周波数帯が25GHzでも40GHzでも定在波の周波数fが変化することはない。
【0111】
これに比べて、11個中5個のスイッチが接続状態である場合には、信号線331、341を伝搬される進行波の伝搬速度が低下し、遅延が9.3psとなっている。これは、実効誘電率Erが7%大きくなったとみなすことができる。この結果、25GHzの周波数帯では、周波数fが1.8GHz小さくなり、40GHzの周波数帯では、周波数fが2.8GHz小さくなっている。
【0112】
さらに、すべてのスイッチが接続状態である場合には、進行波の遅延が9.6psとなり、実効誘電率Erが14%大きくなったとみなすことができる。この結果、25GHzの周波数帯では、周波数fが3.6GHz小さくなり、40GHzの周波数帯では、周波数fが5.7GHz小さくなっている。
【0113】
したがって、例えば接続中のスイッチ数が5個のときの発振周波数を中心周波数としておけば、スイッチの接続及び非接続を切り替えることにより、25GHz帯では発振周波数を約1.8GHz増減させることが可能であり、40GHz帯では発振周波数を約2.8GHz増減させることが可能となる。つまり、十分に高い周波数帯域の発振周波数を広帯域にわたって柔軟に調整することができる。
【0114】
以上のように、本実施の形態によれば、2本の信号線を用いて高周波帯域の発振周波数のクロック信号を出力することが可能な発振器において、スイッチを介してグランド層に接続されたストリップをそれぞれの信号線の近傍に配置する。そして、スイッチの接続及び非接続を切り替えることにより、信号線とグランド層とを擬似的に近づけたり遠ざけたりする。これにより、信号線を伝搬される進行波の伝搬速度に対応する実効誘電率が変化し、結果として、信号線に発生する定在波の周波数を変化させることができ、高周波帯域の発振周波数を広帯域にわたって柔軟に調整することができる。
【0115】
なお、上記実施の形態3においては、同一の構成の2つの伝送線路部330、340を設けるものとしたが、これらの伝送線路部330、340に共通する部分を一体化して、発振器の小型化を図ることも可能である。具体的に、実施の形態3に係る発振器の変形例を図18に示す。図18において、図15と同じ部分には同じ符号を付している。
【0116】
図18に示す発振器においては、信号線331、341の双方に跨って対向するストリップ391−1〜391−nが設けられている。そして、ストリップ391−1〜391−nは、それぞれスイッチ392−1〜392−nを介してグランド層に接続されている。したがって、スイッチ392−1〜392−nがストリップ391−1〜391−nとグランド層とを接続すると、信号線331、341の近傍に配置されたストリップ391−1〜391−nの電位がグランド電位となる。
【0117】
スイッチ392−1〜392−nは、切替制御部360による制御に従って、それぞれストリップ391−1〜391−nとグランド層との接続及び非接続を切り替える。スイッチ392−1〜392−nとしては、例えばMOSFETが用いられる。スイッチ392−1〜392−nがストリップ391−1〜391−nとグランド層とを接続すると、擬似的に信号線331、341がグランドに近づいたこととなる。すなわち、スイッチ392−1〜392−nの接続及び非接続を切り替えることにより、擬似的に信号線331、341とグランド層の間の距離が調節され、信号線331、341を含む伝送線路部における実効誘電率Erを変化させることができる。
【0118】
図19は、図18に示した発振器における伝送線路部の構成を示す斜視図である。図19に示すように、伝送線路部は、信号線331、341とグランド層394の間に誘電体層393が挟まれて構成され、誘電体層393の中にストリップ391−1〜391−n及び図示を省略したスイッチ392−1〜392−nが設けられている。誘電体層393は、大部分が例えばSiO2及びシリコンの混合媒質から形成され、混合媒質の中にストリップ391−1〜391−n及びスイッチ392−1〜392−nが固定された構成となっている。誘電体層393は、全体として1つの誘電体として機能する。また、グランド層394は、接地されており、電位が常にグランド電位に保たれている。
【0119】
ストリップ391−1〜391−nは、それぞれ信号線331、341の双方に跨って対向し、等間隔に配置されている。なお、図19においては、信号線331、341の紙面左下の一端が定電流原Isに接続される始端であるものとし、信号線331、341の紙面右上に示す一端がバッファ部370、380に接続される終端であるものとする。すなわち、信号線331、341の進行波伝搬方向は、ストリップ391−1からストリップ391−nへ向かう方向であるものとする。また、それぞれのストリップ391−1〜391−nは、それぞれ図示しないスイッチ392−1〜392−nに接続されている。
【0120】
このように、図19に示す伝送線路部においては、信号線331、341それぞれに個別にストリップ及びスイッチが設けられるのではなく、共通のストリップ391−1〜391−n及びスイッチ392−1〜392−nが設けられる。このため、伝送線路部を小型化することができ、発振器の小型化を図ることができる。
【0121】
さらに、例えば図20に示すように、クランプ部350を信号線331a、341aの終端よりもバッファ部370、380側に設けることも可能である。この場合、信号線331a、341aの始端から終端までの長さを、発振に使用される進行波の波長の4分の1の長さとし、発振器の小型化を図ることができる。すなわち、図18に示した信号線331、341の長さが進行波の波長の4分の3であるのに対し、図20に示す信号線331a、341aの長さを進行波の波長の4分の1とすることにより、発振器全体が小型化される。そして、信号線331a、341aが短くなったことにより、クランプ部350は、信号線331a、341aの延長線上の2点における振幅を対応させる。これにより、高周波帯域の発振周波数を広帯域にわたって柔軟に調整するとともに、さらに発振器の小型化を図ることができる。
【0122】
(実施の形態4)
実施の形態4の特徴は、両端が定在波の腹となる信号線と補助用のアーク形状の信号線とを有する発振器において、それぞれの信号線の近傍にストリップを配置する構成とすることにより、小型化された発振器の発振周波数を広帯域にわたって柔軟に調整することである。
【0123】
[発振器の構成]
図21は、本実施の形態に係る発振器の構成を示す図である。図21に示す発振器は、伝送線路部410、420、バッファ部430、440及び出力端子435、445を有する。
【0124】
伝送線路部410は、定電流源に接続された信号線411とグランド層とを備え、信号線411とグランド層との間に、例えばSiO2及びシリコンの混合媒質を含む誘電体層が挟まれた構成となっている。そして、伝送線路部410は、定電流源から電源電圧が印加されると進行波を伝搬し、波長の2分の1の定在波を発生させる。すなわち、伝送線路部410は、信号線411の両端が腹となる定在波を発生させる。具体的には、伝送線路部410は、信号線411及びストリップ412−1〜412−nを有する。
【0125】
信号線411は、両端がそれぞれバッファ部430、440に接続され、中心に定電流源が接続されている。信号線411の長さは、発振に使用される進行波の波長の2分の1の長さである。したがって、信号線411の定電流源との接続部分から両端までの長さは、それぞれ4分の1波長に等しい。このため、信号線411は、定電流源から電源電圧が印加されると、定電流源に接続された中心を節とし、両端を腹とする2分の1波長の定在波を発生させる。
【0126】
ストリップ412−1〜412−nは、それぞれ図示しないスイッチを介してグランド層に接続されており、信号線411に接触しないように、信号線411に沿って並べて配置される。したがって、図示しないスイッチがストリップ412−1〜412−nとグランド層とを接続すると、信号線411の近傍に配置されたストリップ412−1〜412−nの電位がグランド電位となる。
【0127】
このように、本実施の形態に係る伝送線路部410は、信号線411の中心に電源が接続されて電源電圧が印加され、信号線411の長さが2分の1波長である点を除けば、実施の形態1の伝送線路部130と同様の構成となっている。
【0128】
伝送線路部420は、伝送線路部410に発生する余分な周波数成分を除去するために設けられた補助用の伝送線路部である。具体的には、伝送線路部420は、信号線421及びストリップ422−1〜422−nを有する。
【0129】
信号線421は、アーク形状に湾曲しており、中心が接地されている。信号線421の長さは、信号線411と同様に進行波の波長の2分の1の長さである。また、信号線411の中心と信号線421の中心とを結ぶ中心線に対して、信号線411及び信号線421が線対称な形状となるように、信号線421が配置されている。すなわち、信号線411の中心と信号線421の中心とが対向している。
【0130】
ストリップ422−1〜422−nは、それぞれ図示しないスイッチを介してグランドに接続されており、信号線421に接触しないように、信号線421に沿って並べて配置される。したがって、図示しないスイッチがストリップ422−1〜422−nとグランドとを接続すると、信号線421の近傍に配置されたストリップ422−1〜422−nの電位がグランド電位となる。
【0131】
バッファ部430、440は、緩衝用の回路を有しており、伝送線路部410、420などの回路に対する出力端子435、445側からの影響を排除し、伝送線路部410、420などを備える回路を安定的に動作させる。すなわち、バッファ部430、440は、実施の形態1に係るバッファ部150と同様の構成を有しており、それぞれ定在波の周波数に対応するクロック信号を出力端子435、445へ出力する。ただし、バッファ部430、440からの出力は、互いに反転している。
【0132】
図22は、本実施の形態に係る伝送線路部420の構成を示す図である。図22に示すように、信号線421は、両端から中心までの長さが進行波の波長の4分の1であるとともに、両端間の距離が進行波の波長の4分の1となるように湾曲して成形されている。また、上述したように、信号線411の長さも進行波の波長の2分の1であるため、実施の形態1などの発振器と比較すると、信号線の長さが短い。結果として、伝送線路部410、420を小型化することができ、発振器の実装面積を小さくすることができる。
【0133】
[発振器の動作]
次いで、上記のように構成された発振器の動作について説明する。定電流源から信号線411の中心に電源電圧が印加されると、信号線411には、2分の1波長分の定在波が発生する。このとき、信号線411の近傍に信号線421が配置されているため、信号線411に発生する例えば2倍波や3倍波などの余分な周波数成分は除去される。また、伝送線路部410における実効誘電率は、ストリップ412−1〜412−nの電位を選択的にグランド電位にすることによって調整される。すなわち、ストリップ412−1〜412−nには、それぞれ図示しないスイッチが接続されており、スイッチが接続状態となると、対応するストリップ412−1〜412−nの電位がグランド電位となる。
【0134】
そして、接続中のスイッチの数が増えると信号線411とグランド層とが擬似的に近づき、実効誘電率が大きくなったとみなすことができる。この結果、信号線411に発生する定在波の周波数が小さくなる。反対に、接続中のスイッチの数が減ると信号線411とグランド層とが擬似的に遠ざかり、実効誘電率が小さくなったとみなすことができる。この結果、信号線411に発生する定在波の周波数が大きくなる。
【0135】
なお、スイッチを切り替えてストリップ412−1〜412−nの電位をグランド電位にする場合には、伝送線路部420においても図示しないスイッチが切り替えられ、対応するストリップ422−1〜422−nの電位もグランド電位にされる。
【0136】
このように周波数が調整された定在波の波形は、信号線411の両端において腹となっているため、バッファ部430、440によって、定在波の周波数のクロック信号が出力端子435、445へ出力される。
【0137】
以上のように、本実施の形態によれば、波長の2分の1の長さの信号線を用いた小型な発振器において、スイッチを介してグランド層に接続されたストリップを信号線の近傍に配置する。そして、スイッチの接続及び非接続を切り替えることにより、信号線とグランド層とを擬似的に近づけたり遠ざけたりする。これにより、信号線を伝搬される進行波の伝搬速度に対応する実効誘電率が変化し、結果として、信号線に発生する定在波の周波数を変化させることができ、小型な発振器の発振周波数を広帯域にわたって柔軟に調整することができる。
【0138】
なお、上記実施の形態4においては、伝送線路部410、420を別々に設けるものとしたが、上記実施の形態3の変形例と同様に、伝送線路部410、420の共通する部分を一体化して、発振器の小型化を図ることも可能である。すなわち、伝送線路部410のストリップ412−1〜412−nと伝送線路部420のストリップ422−1〜422−nとを対応するもの同士一体化するとともに、一体化されたストリップそれぞれをスイッチを介してグランド層に接続するようにしても良い。
【0139】
また、上記実施の形態2〜4においては、複数のストリップ又は半導体ストリップの間の間隔について言及しなかったが、これらのストリップ又は半導体ストリップは、どのように配置されても良い。すなわち、実施の形態2〜4においても、実施の形態1と同様に、複数のストリップ又は半導体ストリップが等間隔に配置されても良い。また、定在波の節付近に、定在波の腹付近よりも多くのストリップ又は半導体ストリップが配置されるようにしても良い。
【0140】
また、上記実施の形態1〜3においては、信号線の長さを進行波の波長の4分の3の長さとし、上記実施の形態4においては、信号線の長さを進行波の波長の2分の1の長さとした。これらは、信号線の端部に定在波の腹が形成され、発振させるために設定された長さである。したがって、信号線の端部に定在波の腹が形成されれば、信号線の長さは上述したものに限定されない。具体的には、信号線の電源電圧が印加される位置から発振する端部までの長さが4分の1波長の奇数倍であれば、信号線の端部に定在波の腹が形成され、発振器は、発振周波数のクロック信号を出力することができる。
【0141】
上記各実施の形態1〜4の発振器は、例えば出力周波数を所定の基準周波数と一致させ、位相を同期するためのPLL(Phase Locked Loop)回路などに用いることができる。図23は、PLL回路の構成を示すブロック図である。図23に示すPLL回路は、位相比較器10、ローパスフィルタ20、VCO(Voltage Controlled Oscillator)30及び分周器40を有する。
【0142】
位相比較器10は、基準周波数と分周器40から出力される周波数とを比較し、位相差に対応する電圧信号をローパスフィルタ20へ出力する。ローパスフィルタ20は、電圧信号の交流成分を除去し、電圧信号の直流成分をVCO30へ出力する。
【0143】
VCO30は、印加電圧に応じて発振周波数を調整する発振器を備えており、ローパスフィルタ20から出力される電圧信号の直流成分に応じた出力周波数の信号を出力する。すなわち、VCO30は、上記各実施の形態1〜4の発振器を備えている。そして、VCO30は、ローパスフィルタ20から出力される電圧信号の直流成分に応じて、スイッチの接続及び非接続を切り替えたり、半導体ストリップの導通及び非導通を切り替えたりすることにより、出力周波数を柔軟に調整する。これにより、VCO30からは、確実に電圧信号の直流成分に応じた出力周波数の信号が出力される。
【0144】
分周器40は、VCO30の出力周波数を分周し、位相比較器10へフィードバックする。
【0145】
このように、PLL回路に上記実施の形態1〜4の発振器を用いることにより、VCO30において発振周波数を柔軟に調整することができるため、PLL回路は、基準周波数と正確に一致する出力周波数の信号を出力することができる。
【0146】
以上の各実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0147】
(付記1)電源電圧の印加に伴って進行波を伝搬し、電源電圧が印加される電圧印加部から少なくとも一方の端部までの長さが伝搬される進行波の4分の1波長の奇数倍に等しい信号線と、
前記信号線によって伝搬される進行波に伴って前記信号線に発生する定在波を維持する維持部と、
前記維持部によって維持される定在波を用いて発振周波数の信号を出力する出力部と、
前記信号線の近傍において前記信号線に対向する対向部を備えるとともに前記対向部の電位がグランド電位に変化する電位変化部材と、
前記電位変化部材が備える前記対向部の電位を変化させることにより、前記出力部から出力される信号の発振周波数を調整する制御部と
を有することを特徴とする発振器。
【0148】
(付記2)前記電位変化部材は、
前記信号線に対向して配置される導体からなり、
前記制御部は、
前記導体と電位がグランド電位に保たれたグランドとの接続及び非接続を切り替える切替部と、
前記切替部における接続及び非接続の切り替えを制御する切替制御部とを含む
ことを特徴とする付記1記載の発振器。
【0149】
(付記3)前記電位変化部材は、
制御電圧が印加される第1の端子と、電位がグランド電位に保たれたグランドに接続される第2の端子と、前記対向部を備える第3の端子とを有する半導体であって、前記第1の端子に印加される制御電圧に応じて前記第2の端子及び前記第3の端子の間の導通及び非導通を切り替える半導体からなり、
前記制御部は、
前記第1の端子に印加する制御電圧を調節して、前記第2の端子及び前記第3の端子の間の導通及び非導通の切り替えを制御することを特徴とする付記1記載の発振器。
【0150】
(付記4)前記信号線は、
一端に前記電圧印加部が設けられ、前記一端から他端までの長さが伝搬される進行波の4分の1波長の奇数倍に等しいことを特徴とする付記1記載の発振器。
【0151】
(付記5)前記信号線は、
中心に前記電圧印加部が設けられ、前記中心から両端それぞれまでの長さが伝搬される進行波の4分の1波長の奇数倍に等しいことを特徴とする付記1記載の発振器。
【0152】
(付記6)前記制御部は、
前記出力部によって出力される信号の発振周波数を高くする場合に、前記電位変化部材が備える前記対向部の電位をグランド電位に変化させることを特徴とする付記1記載の発振器。
【0153】
(付記7)前記信号線の前記端部に接続され、印加される制御電圧に応じて容量が可変の可変容量素子をさらに有することを特徴とする付記1記載の発振器。
【0154】
(付記8)複数の前記電位変化部材を有し、
前記制御部は、
前記出力部によって出力される信号の発振周波数を高くする場合に、前記対向部の電位がグランド電位となる電位変化部材の数を増加させる一方、前記出力部によって出力される信号の発振周波数を低くする場合に、前記対向部の電位がグランド電位となる電位変化部材の数を減少させることを特徴とする付記1記載の発振器。
【0155】
(付記9)前記複数の電位変化部材は、
前記信号線に沿って互いに等間隔に配置されることを特徴とする付記8記載の発振器。
【0156】
(付記10)前記複数の電位変化部材は、
前記信号線の前記電圧印加部付近において前記信号線の前記端部付近よりも密に配置されることを特徴とする付記8記載の発振器。
【0157】
(付記11)前記制御部は、
前記対向部の電位がグランド電位となる電位変化部材の数を増加させる際、グランド電位となる電位変化部材の配置が均等となる順序で前記複数の電位変化部材の電位をグランド電位に変化させることを特徴とする付記8記載の発振器。
【0158】
(付記12)前記制御部は、
前記対向部の電位がグランド電位となる電位変化部材の数を増加させる際、前記信号線の前記電圧印加部の位置又は前記電圧印加部から進行波の2分の1波長の整数倍離れた位置に近い電位変化部材から順に電位をグランド電位に変化させることを特徴とする付記8記載の発振器。
【0159】
(付記13)2本の前記信号線を有し、
前記維持部は、
2本の前記信号線を互いに接続し、2本の前記信号線それぞれにおいて発生する定在波の振幅を対応させることを特徴とする付記1記載の発振器。
【0160】
(付記14)前記信号線の近傍に配置され、前記信号線と同じ長さを有するとともに両端間の距離が前記信号線の長さの2分の1になるように湾曲した補助信号線をさらに有することを特徴とする付記1記載の発振器。
【0161】
(付記15)電源電圧の印加に伴って進行波を伝搬し、電源電圧が印加される電圧印加部から少なくとも一方の端部までの長さが伝搬される進行波の4分の1波長の奇数倍に等しい信号線と、
前記信号線における進行波の伝搬速度に対応する実効誘電率を変更する変更部と、
前記変更部によって実効誘電率が変更された後、前記信号線によって伝搬される進行波を用いて発振周波数の信号を出力する出力部と
を有することを特徴とする発振器。
【0162】
(付記16)入力電圧に応じた発振周波数の信号を出力する発振器と、
前記発振器によって出力される信号の発振周波数と所定の基準周波数とを比較し、発振周波数と基準周波数との差分に対応する入力電圧を前記発振器へ入力する比較器とを有し、
前記発振器は、
電源電圧の印加に伴って進行波を伝搬し、電源電圧が印加される電圧印加部から少なくとも一方の端部までの長さが伝搬される進行波の4分の1波長の奇数倍に等しい信号線と、
前記信号線の近傍において前記信号線に対向する対向部を備えるとともに前記対向部の電位がグランド電位に変化する電位変化部材と、
前記比較器から入力される入力電圧に応じて前記電位変化部材が備える前記対向部の電位を変化させる制御部と、
前記制御部の制御によって前記対向部の電位が変化した後、前記信号線によって伝搬される進行波を用いて発振周波数の信号を出力する出力部とを含む
ことを特徴とする位相同期回路。
【符号の説明】
【0163】
10 位相比較器
20 ローパスフィルタ
30 VCO
40 分周器
110、310 電圧制御部
120、320 可変容量素子
130、330、340、410、420 伝送線路部
131、331、341、411、421 信号線
132、332、342、391、412、422 ストリップ
132a 接続部
133、333、343、392 スイッチ
133a ゲート
133b ソース
133c ドレイン
133d ビア
134、393 誘電体層
134a SiO2
134b シリコン層
135、394 グランド層
136 増幅部
140、360 切替制御部
150、370、380、430 バッファ部
155、375、385、435 出力端子
170 発振誘起部
201 半導体ストリップ
201a ゲート
201b ソース
201c ドレイン
350 クランプ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源電圧の印加に伴って進行波を伝搬し、電源電圧が印加される電圧印加部から少なくとも一方の端部までの長さが伝搬される進行波の4分の1波長の奇数倍に等しい信号線と、
前記信号線によって伝搬される進行波に伴って前記信号線に発生する定在波を維持する維持部と、
前記維持部によって維持される定在波を用いて発振周波数の信号を出力する出力部と、
前記信号線の近傍において前記信号線に対向する対向部を備えるとともに前記対向部の電位がグランド電位に変化する電位変化部材と、
前記電位変化部材が備える前記対向部の電位を変化させることにより、前記出力部から出力される信号の発振周波数を調整する制御部と
を有することを特徴とする発振器。
【請求項2】
前記電位変化部材は、
前記信号線に対向して配置される導体からなり、
前記制御部は、
前記導体と電位がグランド電位に保たれたグランドとの接続及び非接続を切り替える切替部と、
前記切替部における接続及び非接続の切り替えを制御する切替制御部とを含む
ことを特徴とする請求項1記載の発振器。
【請求項3】
前記電位変化部材は、
制御電圧が印加される第1の端子と、電位がグランド電位に保たれたグランドに接続された第2の端子と、前記対向部を備える第3の端子とを有する半導体であって、前記第1の端子に印加される制御電圧に応じて前記第2の端子及び前記第3の端子の間の導通及び非導通を切り替える半導体からなり、
前記制御部は、
前記第1の端子に印加する制御電圧を調節して、前記第2の端子及び前記第3の端子の間の導通及び非導通の切り替えを制御することを特徴とする請求項1記載の発振器。
【請求項4】
前記制御部は、
前記出力部によって出力される信号の発振周波数を高くする場合に、前記電位変化部材が備える前記対向部の電位をグランド電位に変化させることを特徴とする請求項1記載の発振器。
【請求項5】
前記信号線の前記端部に接続され、印加される制御電圧に応じて容量が可変の可変容量素子をさらに有することを特徴とする請求項1記載の発振器。
【請求項6】
複数の前記電位変化部材を有し、
前記制御部は、
前記出力部によって出力される信号の発振周波数を高くする場合に、前記対向部の電位がグランド電位となる電位変化部材の数を増加させる一方、前記出力部によって出力される信号の発振周波数を低くする場合に、前記対向部の電位がグランド電位となる電位変化部材の数を減少させることを特徴とする請求項1記載の発振器。
【請求項7】
2本の前記信号線を有し、
前記維持部は、
2本の前記信号線を互いに接続し、2本の前記信号線それぞれにおいて発生する定在波の振幅を対応させることを特徴とする請求項1記載の発振器。
【請求項8】
前記信号線の近傍に配置され、前記信号線と同じ長さを有するとともに両端間の距離が前記信号線の長さの2分の1になるように湾曲した補助信号線をさらに有することを特徴とする請求項1記載の発振器。
【請求項9】
電源電圧の印加に伴って進行波を伝搬し、電源電圧が印加される電圧印加部から少なくとも一方の端部までの長さが伝搬される進行波の4分の1波長の奇数倍に等しい信号線と、
前記信号線における進行波の伝搬速度に対応する実効誘電率を変更する変更部と、
前記変更部によって実効誘電率が変更された後、前記信号線によって伝搬される進行波を用いて発振周波数の信号を出力する出力部と
を有することを特徴とする発振器。
【請求項10】
入力電圧に応じた発振周波数の信号を出力する発振器と、
前記発振器によって出力される信号の発振周波数と所定の基準周波数とを比較し、発振周波数と基準周波数との差分に対応する入力電圧を前記発振器へ入力する比較器とを有し、
前記発振器は、
電源電圧の印加に伴って進行波を伝搬し、電源電圧が印加される電圧印加部から少なくとも一方の端部までの長さが伝搬される進行波の4分の1波長の奇数倍に等しい信号線と、
前記信号線の近傍において前記信号線に対向する対向部を備えるとともに前記対向部の電位がグランド電位に変化する電位変化部材と、
前記比較器から入力される入力電圧に応じて前記電位変化部材が備える前記対向部の電位を変化させる制御部と、
前記制御部の制御によって前記対向部の電位が変化した後、前記信号線によって伝搬される進行波を用いて発振周波数の信号を出力する出力部とを含む
ことを特徴とする位相同期回路。

【図1−1】
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【図1−2】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2011−4093(P2011−4093A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−144676(P2009−144676)
【出願日】平成21年6月17日(2009.6.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】