説明

相対角度検出装置および電動パワーステアリング装置

【課題】ハウジング外において電線に力が作用したとしても、ハウジング内の電線の端部に大きな力が及ばないようにする技術を提供する。
【解決手段】内外を連通する連通孔が形成されたハウジング内に収納され、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度センサと、相対角度センサから出力される電気信号をハウジング外に配置されるECUに伝送する電線と、ハウジングの連通孔に嵌合されて電線を保持するグロメット320と、ハウジングの外側に配置され、互いに結合されることで電線を屈曲させた状態で把持するキャップ400と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、相対角度検出装置および電動パワーステアリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度を検出する装置が提案されている。
例えば、特許文献1に記載の装置は、トーションバーにより同軸的に連結された第1の回転体及び第2の回転体が有する磁気回路形成部材の外周りに軸線方向へ離隔して配置され、該磁気回路形成部材が発生した磁束を集める2つの集磁環と、各集磁環が集めた磁束の密度に基づいて第1の回転体に加わったトルクを検出する検出部と、集磁環及び検出部を保持し、且つ外周部にハウジングに取着される取着部を有する保持環と、検出部に接続された導線とを備えている。そして、検出部は集磁環の凸片間に発生する磁束密度の変化に応じて検出信号が変わるように構成されており、その検出信号は導線を介してマイクロプロセッサを用いてなる制御部に与えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−187589号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ハウジング内に収納されるセンサ(検出部)と、センサからの検出信号が与えられるとともにハウジング外に配置される装置とが電線(導線)にて接続される構成である場合、ハウジング外において電線に力が作用したとしても、ハウジング内の電線の端部に大きな力が及ぶおそれがある。そして、例えば電線の端部がコネクタに連結され、コネクタが接続端子に差し込まれている場合、ハウジング内の電線の端部に大きな力が及ぶと、コネクタから電線が脱落したり、コネクタが差し込まれた接続端子が折れたりしてしまうおそれがある。
【0005】
これに対して、例えば板金で形成されたプレートをハウジングの外側に配置することで、ハウジングに形成された貫通孔に挿入されたグロメットの抜け止めと、電線の支持とを行うことも考えられる。しかしながら、かかる構成において、ハウジングがアルミニウム製である場合には、プレートとハウジングとの間に電気化学的腐蝕が生じることに起因してグロメットが脱落するおそれがある。また、プレートをハウジングの外側に配置する分の組立て工数が増加してしまう。
本発明は、ハウジング外において電線に力が作用したとしてもハウジング内の電線の端部に大きな力が及ばないようにすることを簡易な構成で実現する装置を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的のもと、本発明は、内外を連通する連通孔が形成されたハウジング内に収納され、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサと、前記センサから出力される電気信号を前記ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されて前記電線を保持する電線保持部材と、前記ハウジングの外側に配置され、互いに結合されることで前記電線を屈曲させた状態で把持する一対の把持部材と、を備えることを特徴とする相対角度検出装置である。
【0007】
ここで、前記一対の把持部材は、互いに結合されることで内部を閉じるとともにその内部を前記電線が貫通する貫通孔を形成し、結合されていない状態で内部を開放するとともに前記ハウジングの外側において当該電線を内部に取り込み可能であるとよい。
また、前記電線を複数有するとともに前記ハウジングの外側において当該複数の電線を束ねる電線カバーを備え、前記一対の把持部材は、互いに結合されることで前記複数の電線における前記電線カバーにて束ねられていない部位を覆い、当該電線カバーにて束ねられた部位を前記貫通孔から外部に出すとよい。
また、前記一対の把持部材のうちいずれか一方の部材は、他方の部材側へ突出し、前記電線を屈曲させる突起を有するとよい。
【0008】
また、前記ハウジングは、前記連通孔と当該連通孔よりも当該連通孔の孔方向の外側に形成された凹部と当該孔方向と交差する方向に開口する開口部とを有する第1の部材と、当該第1の部材に取り付けられることで当該開口部を覆うとともに当該孔方向に突出する突出部を有する第2の部材と、を備え、前記電線保持部材は、前記ハウジングの前記第1の部材の前記連通孔に嵌合される嵌合部と、当該嵌合部よりも外側に設けられる外側部と、を有するとともに、当該嵌合部および当該外側部を貫通する孔に前記電線を保持し、前記ハウジングの前記第1の部材の前記凹部に挿入されて前記電線保持部材の前記嵌合部の外面の一部を覆うとともに当該ハウジングの前記第2の部材の前記突出部により覆われる覆い部材をさらに備えるとよい。
【0009】
他の観点から捉えると、本発明は、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサと、内外を連通する連通孔が形成され、前記センサを収納するハウジングと、前記センサから出力される電気信号を前記ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されて前記電線を保持する電線保持部材と、前記ハウジングの外側に配置され、互いに結合されることで前記電線を屈曲させた状態で把持する一対の把持部材と、を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ハウジング外において電線に力が作用したとしても、ハウジング内の電線の端部に大きな力が及ばないようにすることを、簡易な構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る検出装置を適用した電動パワーステアリング装置の断面図である。
【図2】本実施形態に係る検出装置の斜視図である。
【図3】薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。
【図4】図3の状態で、磁界強度を変化させた場合の、磁界強度と薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
【図5】薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。
【図6】磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
【図7】(a)は、規定磁界強度以上の磁界強度で磁界の方向を検出する原理を利用するMRセンサの一例を示す図である。(b)は、(a)に示すMRセンサの構成を等価回路で示した図である。
【図8】磁石が直線運動するときの磁界方向の変化とMRセンサの出力との関係を示す図である。
【図9】MRセンサの他の例を示す図である。
【図10】磁石の運動方向を検知するのに用いる出力の組み合わせの一例を示す図である。
【図11】MRセンサの配置の例を示す図である。
【図12】MRセンサの他の例を示す図である。
【図13】第1の実施形態に係るハーネスコンプの外観図である。
【図14】キャップの概略構成を示す図である。
【図15】第1の実施形態に係るハーネスコンプ、キャップおよび抜け止め部材を組み付ける様子を示す図である。
【図16】第2の実施形態に係るハーネスコンプの外観図である。
【図17】第2の実施形態に係るハウジングの外観図である。
【図18】第2の実施形態に係るグロメットおよびソケットの概略構成を示す図である。
【図19】第2の実施形態に係るハーネスコンプおよびキャップを組み付ける様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態に係る検出装置10を適用した電動パワーステアリング装置100の断面図である。図2は、本実施形態に係る検出装置10の斜視図である。なお、図2においては、構成を分かり易くするために後述するベース50およびフラットケーブルカバー60の一部は省略して示している。
【0013】
電動パワーステアリング装置100は、同軸的に回転する第1の回転軸110と第2の回転軸120とを備えている。第1の回転軸110は、例えばステアリングホイールが連結される回転軸であり、第2の回転軸120は、トーションバー130を介して第1の回転軸110に同軸的に結合されている。そして、第2の回転軸120に形成されたピニオン121が、車輪に連結されるラック軸(不図示)のラック(不図示)と噛み合っており、第2の回転軸120の回転運動がピニオン121,ラックを介してラック軸の直線運動に変換され、車輪が操舵される。
【0014】
また、電動パワーステアリング装置100は、第1の回転軸110および第2の回転軸120を回転可能に支持するハウジング140を備えている。ハウジング140は、例えば自動車などの乗り物の本体フレーム(以下、「車体」と称する場合もある。)に固定される部材であり、第1ハウジング150、第1の部材の一例としての第2ハウジング160および第2の部材の一例としての第3ハウジング170から構成される。
第1ハウジング150は、第2の回転軸120を回転可能に支持する軸受け151を、第2の回転軸120の回転軸方向(以下、単に「軸方向」と称する場合もある。)の一方の端部側(図1においては下側)に有し、軸方向の他方の端部側(図1においては上側)が開口した部材である。
【0015】
第2ハウジング160は、軸方向の両端部が開口した部材であり、その軸方向の一方の端部側の開口部160aと他方の端部側の開口部160bとを有する。そして、一方の端部側の開口部160aが第1ハウジング150における軸方向の他方の端部側の開口部と対向するように配置される。そして、第2ハウジング160は、例えばボルトなどにより第1ハウジング150に固定される。第2ハウジング160の側面には、内外を連通する連通孔161が形成されている。連通孔161は、軸方向に垂直な方向に延びるように形成されている。連通孔161は、後述するハーネスコンプ300のグロメット320の楕円柱部322の外形よりも小さい内側連通孔161aと、楕円柱部322が嵌合される略楕円柱状の外側連通孔161bと、を含んで構成されている。
【0016】
第2ハウジング160は、連通孔161の孔方向(以下、「連通孔方向」と称する場合もある。)の外側に、後述する抜け止め部材500が挿入される被挿入部164(図15参照)と、この被挿入部164の連通孔方向の端面から外側に連通孔方向に延出する板状の延出部165と、を有している。被挿入部164は、第3ハウジング170側から抜け止め部材500を受け入れることが可能なように上方が開口した部位であり、外側連通孔161bの楕円の長辺方向の両側それぞれに抜け止め部材500の厚さと同じかやや大きい幅の凹部が形成されている。延出部165は、軸方向に垂直な面を有する板状の部位であり、連通孔方向の途中の部位に、孔方向に交差する方向の両側から内側に切り欠かれた切り欠き部165a(図15参照)が設けられている。
【0017】
第3ハウジング170は、第1の回転軸110を回転可能に支持する軸受け171を、軸方向の他方の端部側(図1においては上側)に有し、軸方向の一方の端部側(図1においては下側)に開口部170aを有する。そして、軸方向の一方の端部側の開口部170aが第2ハウジング160における軸方向の他方の端部側の開口部160bと対向するように配置されるとともに、例えばボルト(不図示)などにより第2ハウジング160に固定される。また、第3ハウジング170は、第2ハウジング160との締結面から外側に第2ハウジング160の連通孔161の孔方向に延出する板状の延出部172を有している(図15(a)参照)。延出部172は、第3ハウジング170が第2ハウジング160に固定された場合に第2ハウジング160の被挿入部164の上方を覆う大きさに成形されている。
【0018】
また、電動パワーステアリング装置100は、例えば圧入などにより第2の回転軸120に固定されたウォームホイール180と、このウォームホイール180と噛み合うウォームギヤ191が出力軸に連結されるとともに第1ハウジング150に固定される電動モータ190とを備えている。
また、電動パワーステアリング装置100は、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に応じた電気信号を出力する検出装置10と、この検出装置10からの出力値に基づいて電動モータ190の駆動を制御する電子制御ユニット(ECU)200とを備えている。
【0019】
ECU200は、各種演算処理を行うCPUと、CPUにて実行されるプログラムや各種データ等が記憶されたROMと、CPUの作業用メモリ等として用いられるRAMと、を用いて、検出装置10からの出力値を基に第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度を演算する相対角度演算部210を備えている。
検出装置10については、後で詳述する。
【0020】
以上のように構成された電動パワーステアリング装置100においては、ステアリングホイールに加えられた操舵トルクが第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度として現れることに鑑み、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に基づいて操舵トルクを把握する。つまり、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度を検出装置10にて検出し、検出装置10からの出力値に基づいてECU200が操舵トルクを把握し、把握した操舵トルクに基づいて電動モータ190の駆動を制御する。そして、電動モータ190の発生トルクをウォームギヤ191、ウォームホイール180を介して第2の回転軸120に伝達する。これにより、電動モータ190の発生トルクが、ステアリングホイールに加える運転者の操舵力をアシストする。
【0021】
以下に、検出装置10について詳述する。
検出装置10は、第1の回転軸110に取り付けられる磁石20と、この磁石20の磁場(磁石20から発生される磁界)に基づいて第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に応じた電気信号を出力する相対角度センサ30と、この相対角度センサ30を実装するプリント基板40と、を備えている。また、検出装置10は、第2の回転軸120に取り付けられるとともにプリント基板40を支持するベース50と、後述するフラットケーブル70を収納する有底円筒状のフラットケーブルカバー60と、を備えている。また、検出装置10は、一方の端部がプリント基板40に設けられた端子に接続されるとともに、他方の端部がフラットケーブルカバー60に固定された端子に接続されるフラットケーブル70と、フラットケーブルカバー60に固定された端子とECU200とを接続するハーネスコンプ300と、を備えている。また、検出装置10は、ハウジング140の外側に配置され、互いに結合されることでハーネスコンプ300の後述する複数の電線310を屈曲させた状態で把持するキャップ400(図15参照)と、ハーネスコンプ300の後述するグロメット320がハウジング140から抜け落ちるのを抑制する抜け止め部材500(図15参照)とを備えている。
【0022】
磁石20は、円筒(ドーナツ)状であり、その内側に第1の回転軸110が嵌合され、この第1の回転軸110と共に回転する。そして、第1の回転軸110の円周方向にN極とS極とが交互に配置されるとともに円周方向に着磁されている。
相対角度センサ30は、第1の回転軸110の回転半径方向には磁石20の外周面の外側であり、第1の回転軸110の軸方向には磁石20が設けられた領域内となるように配置されている。本実施形態に係る相対角度センサ30は、磁界によって抵抗値が変化することを利用した磁気センサであるMRセンサ(磁気抵抗素子)である。そして、この相対角度センサ30が、磁石20の磁場(磁石20から発生される磁界)に基づいて第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度に応じた電気信号を出力することで、同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度を検出する。この相対角度センサ30および相対回転角度の検出手法については後で詳述する。
【0023】
プリント基板40は、第1の回転軸110の回転半径方向には磁石20の外周面の外側に配置されるように、例えばボルトなどによりベース50に固定される。
ベース50は、円盤状の部材であり、第2の回転軸120に嵌合され、この第2の回転軸120と共に回転する。
フラットケーブルカバー60は、有底円筒状の部材であり、ハウジング140に固定される。フラットケーブルカバー60をハウジング140に固定する態様としては、以下の態様を例示することができる。すなわち、フラットケーブルカバー60の外周面に、円周方向に等間隔に複数個(本実施形態においては90度間隔に4個)の凸部61を、外側に延出するように形成する。一方、ハウジング140の第1ハウジング150に、凸部61が嵌合される凹部151を、凸部61と同数個形成する。そして、フラットケーブルカバー60の凸部61を第1ハウジング150に形成した凹部151に嵌合することで、第2の回転軸120の回転方向の位置決めを行う。そして、第2ハウジング160でフラットケーブルカバー60の上面を押さえることで軸方向の位置決めを行う。あるいは、フラットケーブルカバー60を、例えばボルトなどにより第1ハウジング150または第2ハウジング160に固定してもよい。
【0024】
フラットケーブル70は、一方の端部がプリント基板40の端子41に接続されるとともに他方の端部がフラットケーブルカバー60の内側に設けられた接続端子62に接続されて、ベース50における軸方向の一方の端面とフラットケーブルカバー60の内側とで形成される空間内に、渦状に巻かれた状態で収納される。そして、フラットケーブル70は、軸方向の他方の端部側から見た場合に、図2に示すように、右方向に巻かれており、ステアリングホイール、言い換えれば第1の回転軸110および第2の回転軸120が右方向に回転された場合には、一方の端部が第2の回転軸120の回転に従って右方向に回転するので、ステアリングホイールが回転されていない中立状態よりも巻き数が増加する。他方、ステアリングホイールが左方向に回転された場合には、ステアリングホイールが回転されていない中立状態よりも巻き数が減少する。
ハーネスコンプ300は、相対角度センサ30からの出力信号をECU200に伝送する機能を有する。このハーネスコンプ300については後で詳述する。
【0025】
以下に、本実施形態に係る相対角度センサ30について説明する。
本実施形態に係る相対角度センサ30は、磁場(磁界)によって抵抗値が変化することを利用したMRセンサ(磁気抵抗素子)である。
【0026】
先ず、MRセンサの動作原理について説明する。
MRセンサは、Si若しくはガラス基板と、その上に形成されたNi−Feなどの強磁性金属を主成分とする合金の薄膜で構成されており、その薄膜強磁性金属の抵抗値は、特定方向の磁界の強度に応じて抵抗値が変化する。
【0027】
図3は、薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。図4は、図3の状態で、磁界強度を変化させた場合の、磁界強度と薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
図3に示すように、基板の上に矩形状に形成した薄膜強磁性金属に、矩形の長手方向、つまり図中Y方向に電流を流す。一方、磁界Hを、電流方向(Y方向)に対して垂直方向(図中X方向)に印加し、その状態で、磁界の強さを変更する。このときに、薄膜強磁性金属の抵抗値がどのように変化するかを示したのが図4である。
【0028】
図4に示すように、磁界の強さを変化させたとしても、無磁界(磁界強度ゼロ)時からの抵抗値変化は最大で約3%となる。
以下では、抵抗値変化量(ΔR)が、近似的に「ΔR∝H」の式で表すことができる領域外を「飽和感度領域」と称す。そして、飽和感度領域においては、ある磁界強度(以下、「規定磁界強度」と称す。)以上になると3%の抵抗値変化は変わらない。
【0029】
図5は、薄膜強磁性金属に流す電流の方向と印加する磁界の方向とを示す図である。図6は、磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係を示す図である。
図5のように、矩形状に形成した薄膜強磁性金属の矩形の長手方向、つまり図中Y方向に電流を流し、磁界の方向として電流方向に対して角度変化θを与える。このとき、磁界の向きに起因する薄膜強磁性金属の抵抗値の変化を知るために、印加する磁界強度は、磁界強度に起因しては抵抗値が変化しない上述した規定磁界強度以上とする。
【0030】
図6(a)に示すように、抵抗変化量は、電流方向と磁界の方向が垂直(θ=90度、270度)の時に最大となり、電流方向と磁界の方向が平行(θ=0度、180度)の時に最小となる。かかる場合の抵抗値の最大の変化量をΔRとすると、薄膜強磁性金属の抵抗値Rは、電流方向と磁界方向の角度成分として変化し、式(1)のように示され、図6(b)に示すようになる。
R=R0−ΔRsinθ・・・(1)
ここで、R0は、規定磁界強度以上の磁界を電流方向と平行(θ=0度あるいは180度)に印加した場合の抵抗値である。
式(1)により、規定磁界強度以上の磁界の方向は、薄膜強磁性金属の抵抗値を把握することで検出することができる。
【0031】
次に、MRセンサの検出原理について説明する。
図7(a)は、規定磁界強度以上の磁界強度で磁界の方向を検出する原理を利用するMRセンサの一例を示す図である。図7(b)は、図7(a)に示すMRセンサの構成を等価回路で示した図である。
図7(a)に示すMRセンサの薄膜強磁性金属は、縦方向が長くなるように形成された第1のエレメントE1と横方向が長くなるように形成された第2のエレメントE2とが直列に配置されている。
【0032】
かかる形状の薄膜強磁性金属においては、第1のエレメントE1に対して最も大きな抵抗値変化を促す垂直方向の磁界は、第2のエレメントE2に対し最小の抵抗値変化の磁界方向となる。そして、第1のエレメントE1の抵抗値R1は式(2)、第2のエレメントE2の抵抗値R2は式(3)で与えられる。
R1=R0−ΔRsinθ・・・(2)
R2=R0−ΔRcosθ・・・(3)
【0033】
図7(a)に示すようなエレメント構成のMRセンサの等価回路は図7(b)に示すようになる。
図7に示すように、第1のエレメントE1の、第2のエレメントE2と接続されていない方の端部をグランド(Gnd)とし、第2のエレメントE2の、第1のエレメントE1と接続されていない方の端部の出力電圧をVccとした場合に、第1のエレメントE1と第2のエレメントE2との接続部の出力電圧Voutは式(4)で与えられる。
Vout=(R1/(R1+R2))×Vcc…(4)
【0034】
式(4)に、式(2)、(3)を代入し整理すると、式(5)の通りとなる。
Vout=Vcc/2+α×cos2θ…(5)
ここで、αは、α=(ΔR/(2(2×R0−ΔR)))×Vccである。
式(5)により、磁界の方向は、Voutを検出することで把握することができる。
【0035】
図8は、磁石が直線運動するときの磁界方向の変化とMRセンサの出力との関係を示す図である。
図8(a)に示すように、N極とS極が交互に配列された磁石に対して、図7に示したMRセンサを、規定磁界強度以上の磁界強度が印加されるギャップ(磁石とMRセンサとの距離)Lで、かつ磁界の方向変化がMRセンサのセンサ面に寄与するように配置する。
【0036】
そして、磁石を、図8(c)に示した、N極中心からS極中心までの距離(以下、「着磁ピッチ」と称する場合もある。)λ分、図8(a)に示すように左方向に移動させる。かかる場合、MRセンサには、磁石の位置に応じて図8(c)に示した矢印の向きの磁界が印加されることとなり、磁石が着磁ピッチλを移動したとき、センサ面では磁界の方向が1/2回転する。ゆえに、第1のエレメントE1と第2のエレメントE2との接続部の出力電圧Voutの波形は、式(5)に示した「Vout=Vcc/2+α×cos2θ」より、図8(d)に示すように1周期の波形となる。
【0037】
図9は、MRセンサの他の例を示す図である。
図7に示したエレメント構成の代わりに図9(a)に示すようなエレメント構成にすれば、図9(b)に示すように、一般的に知られているホイートストン・ブリッジ(フルブリッジ)の構成にすることができる。ゆえに、図9(a)に示すエレメント構成のMRセンサを用いることにより検出精度を高めることが可能となる。
【0038】
磁石の運動の方向を検出する手法について説明する。
図6に示した磁界の向きと薄膜強磁性金属の抵抗値との関係および式(1)「R=R0−ΔRsinθ」からすると、図5で見た場合に、磁界の向きを電流の方向に対して時計回転方向に回転させても反時計回転方向に回転させても薄膜強磁性金属の抵抗値は同じである。ゆえに、薄膜強磁性金属の抵抗値を把握できても磁石の運動の方向は把握できない。
【0039】
図10は、磁石の運動方向を検知するのに用いる出力の組み合わせの一例を示す図である。図10のように1/4周期の位相差を持った2つの出力を組み合わせることで磁石の運動方向の検知が可能となる。これらの出力を得る為には、図8で示す(i)と(ii)又は(i)と(iv)の位相関係となるように、二つのMRセンサを配置すればよい。
図11は、MRセンサの配置の例を示す図である。図11に示すように2つのMRセンサを重ね、一方のセンサを他方のセンサに対して45度傾けて配置することも好適である。
【0040】
図12は、MRセンサの他の例を示す図である。図12(a)に示すように、2組のフルブリッジ構成のエレメントを互いに45度傾けて一つの基板上に形成し、図12(b)に示すような等価回路となるエレメント構成にすることも好適である。これにより、一つのMRセンサで、図12(c)に示すように、正確な正弦波、余弦波の出力が可能となる。それゆえ、図12に示すエレメント構成のMRセンサの出力値により、MRセンサに対する磁石の運動方向及び運動量を把握することができる。
【0041】
上述したMRセンサの特性に鑑み、本実施形態に係る検出装置10においては、相対角度センサ30として、図12に示すエレメント構成のMRセンサを用いる。相対角度センサ30は、上述したように、磁石20の外周面に対して垂直に配置され、第2の回転軸120の軸方向の位置は、磁石20の領域内である。それゆえ、かかる場合には、第1の回転軸110と共に回転する磁石20の磁場により、相対角度センサ30では、磁石20の位置に応じて、図8(c)に示すような磁場方向の変化となる。
【0042】
その結果、磁石20が着磁ピッチλを移動(回転)したとき、相対角度センサ30の感磁面では磁場の方向が1/2回転すると共に、相対角度センサ30からの出力値VoutA,VoutBは、それぞれ図12(c)に示すような1/4周期の位相差となる余弦曲線(余弦波)および正弦曲線(正弦波)となる。
すなわち、運転者がステアリングホイールを回転すると、これに伴って第1の回転軸110が回転し、トーションバー130が捩れる。そして、第2の回転軸120が第1の回転軸110より少し遅れて回転する。この遅れは、トーションバー130に連結された第1の回転軸110と第2の回転軸120との回転角度の差となって現れる。検出装置10は、この回転角度の差に応じた、1/4周期の位相差の、余弦曲線および正弦曲線となるVoutA,VoutBを出力する。
なお、相対角度センサ30の感磁面とは、相対角度センサ30において磁場を検出することができる面のことである。
【0043】
ECU200の相対角度演算部210は、相対角度センサ30の出力値VoutAおよびVoutBを基に、第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度θtを以下の式(6)を用いて演算する。
θt=arctan(VoutB/VoutA)…(6)
このようにして、相対角度演算部210は、相対角度センサ30からの出力値に基づいて第1の回転軸110と第2の回転軸120との相対回転角度及び捩れ方向、つまりはステアリングホイールに加わるトルクの大きさ及び向きを把握することが可能となる。
【0044】
また、上述のように構成された検出装置10を組み付ける際には、フラットケーブルカバー60と、プリント基板40を取り付けたベース50と、フラットケーブルカバー60とベース50との間に収容するフラットケーブル70と、を予めユニット化しておく。そして、そのユニットを、第2の回転軸120が組み付けられた第1ハウジング150に、フラットケーブルカバー60の凸部61が第1ハウジング150の凹部151に嵌るように取り付ける。その際、ベース50を、第2の回転軸120に取り付ける。
このように、検出装置10を予めユニット化が可能な構造とすることで組み付け性を向上させることができる。
【0045】
次に、ハーネスコンプ300について説明する。
図13は、第1の実施形態に係るハーネスコンプ300の外観図である。
ハーネスコンプ300は、複数の電線310と、これら複数の電線310を保持する電線保持部材の一例としてのグロメット320と、複数の電線310の一方の端部に連結される第1のコネクタ350と、複数の電線310の他方の端部に連結される第2のコネクタ360と、を備えている。また、ハーネスコンプ300は、グロメット320と第1のコネクタ350との間において複数の電線310を束ねる第1のカバー370と、グロメット320と第2のコネクタ360との間において複数の電線310を束ねる電線カバーの一例としての第2のカバー380と、を備えている。
【0046】
ハーネスコンプ300は、4本の電線310を有しており、これら4本の電線310の一方の端部が、第1のコネクタ350、接続端子62などを介してプリント基板40(図2参照)に、4本の電線310の他方の端部が、第2のコネクタ360などを介してECU200に接続されている。そして、4本の電線310が、ECU200から相対角度センサ30への電源供給や、相対角度センサ30からECU200への出力値の伝送に用いられる。
【0047】
電線310は、線状に引き伸ばされた金属などの導体が絶縁体で覆われたものであり、電気を伝導する。第1の実施形態に係るハーネスコンプ300においては、4本の電線310を有しており、これら4本の電線310の一方の端部が第1のコネクタ350に接続され、他方の端部が第2のコネクタ360に接続されるとともに、絶縁体の第1のカバー370および第2のカバー380にて束ねられている。
【0048】
グロメット320は、ゴムなどの弾性材料を加硫成形することで下記所定形状に成形されている。すなわち、グロメット320は、四角柱状の四角柱部321と、この四角柱部321の大きさよりも大きく、第2ハウジング160の連通孔161の外側連通孔161bの大きさと同じかやや小さく、外側連通孔161bの中に挿入される楕円柱状の楕円柱部322と、を有している。これら四角柱部321および楕円柱部322は、第2のコネクタ360側から順に第2ハウジング160の連通孔161の孔方向に並んでいる。また、これら四角柱部321および楕円柱部322には、電線310を通すために、第2ハウジング160の連通孔161の孔方向に形成された電線孔320aが電線310の数と同数(本実施形態においては4つ)形成されている。電線孔320aの孔の大きさは電線310の大きさよりも小さく、電線310が圧入されると、電線孔320aの大きさが大きくなるように弾性変形する。それゆえ、グロメット320は、この弾性変形から復帰しようとする力で電線310を押し、電線310が電線孔320aの孔方向に移動するのを抑制する。加えて、ハウジング140内の気密性を高める。なお、楕円柱部322が、第2ハウジング160の連通孔161に嵌合される嵌合部の一例として、四角柱部321が、楕円柱部322よりも外側に設けられる外側部の一例として機能する。
【0049】
楕円柱部322の外周面には、周方向の全周に亘って外周面から外側に突出する突起324が、電線孔320aの孔方向(連通孔方向)に複数(本実施形態においては3つ)設けられている。突起324の最外周部の大きさは第2ハウジング160の連通孔161の外側連通孔161bの大きさよりも大きい。楕円柱部322の外周面は、第2ハウジング160の外側連通孔161bを形成する周囲の壁163(図1(b)参照)の内周面の大きさと同じかやや小さく、第2ハウジング160に嵌合された状態では、その外周面から外側に突出する突起324が周囲の壁163に押されることにより全体的に内側に弾性変形しようとする。これにより、グロメット320は、電線孔320aの周囲部分にて電線孔320aに挿入された電線310を押圧し、電線310をより強く保持する。加えて、ハウジング140内の気密性を高める。
【0050】
以上のように構成されたハーネスコンプ300は、以下のようにして組み立てられる。
すなわち、先ず、グロメット320に形成された複数の電線孔320aそれぞれに電線310を挿入する。その後、複数の電線310を、第1のカバー370および第2のカバー380で束ねる。そして、第1のカバー370で束ねられた複数の電線310の先端を第1のコネクタ350に接続し、第2のカバー380で束ねられた複数の電線310の先端を第2のコネクタ360に接続する。
【0051】
次に、キャップ400について説明する。
図14は、キャップ400の概略構成を示す図である。
キャップ400は、外面から突出する突出部411を有する雄側部材410と、外面の外側に突出部411の先端部を受け入れる受け部421が設けられた雌側部材420とから構成される。このキャップ400が、互いに結合されることでハーネスコンプ300の複数の電線310を屈曲させた状態で把持する一対の把持部材として機能する。
【0052】
雄側部材410の突出部411は、下面から下方に伸びる下方部位411aと、雌側部材420側に横方向に伸びる横方向部位411bとから構成されており、横方向部位411bの先端には、横方向に対して傾斜した傾斜面411cと、傾斜面411cの終端から上方に向かう垂直面411dとが形成されている。また、雄側部材410の下面における、下方部位411aが設けられている部位の周辺には凹みが設けられており、下方部位411aを第2ハウジング160の延出部165の切り欠き部165aに嵌め込み可能となっている。
【0053】
雌側部材420の受け部421は、雌側部材420の下面との間に、雄側部材410の突出部411の先端を受け入れる受入孔422を形成するように下面から下方にコの字状に突出する。また、雌側部材420の下面における、受け部421が設けられている部位の周辺には凹みが設けられており、受け部421を第2ハウジング160の延出部165の切り欠き部165aに嵌め込み可能となっている。
【0054】
また、雄側部材410の上面には、前後方向に伸びる棒状の回転軸412が設けられ、この回転軸412の端部と上面とを連結する連結部413が回転軸412の両端それぞれに設けられている。他方、雌側部材420の上面には、雄側部材410の回転軸412と嵌合する軸受423が設けられている。そして、雌側部材420は、雄側部材410の回転軸412を軸として雄側部材410に対して回転可能となっている。
【0055】
このように構成されたキャップ400は、雄側部材410の突出部411の傾斜面411cおよび垂直面411dが雌側部材420の受入孔422に挿入されることで結合して内部を閉じるとともに、その内部をハーネスコンプ300の複数の電線310が前後方向に貫通する貫通孔401を形成する。一方、キャップ400は、雄側部材410の突出部411が雌側部材420の受け部421には入り込んでおらず両者が結合されていない状態では、雌側部材420は雄側部材410に対して回転可能であり、図14(a)に示すように、内部を開放するとともにハーネスコンプ300の複数の電線310を横方向からその内部に取り込み可能である。
【0056】
また、雄側部材410には、図14(a)に示すように、横方向に伸びる複数(本実施形態においては2本)の棒状の突起414を有している。複数の突起414の距離は、内側に複数の電線310を有する第2のカバー380の略円形の外形の大きさよりも小さくなるように形成されている。また、複数の突起414の内の最も奥側(このキャップ400が第2ハウジング160に装着された場合に最も連通孔161に近い位置)に位置する突起414の高さは、第2のカバー380で束ねられた複数の電線310を上方に持ち上げる高さに設定されている。雄側部材410にこの複数の突起414が設けられていることにより、キャップ400は、結合した場合に、第2のカバー380で束ねられた複数の電線310を屈曲させた状態で把持するとともに貫通孔401を介して外部に露出させる。
なお、キャップ400は、樹脂をインジェクション成形することで上記形状に成形されている。
【0057】
次に、抜け止め部材500について説明する。
抜け止め部材500は、板状の部材であり、その外形は第2ハウジング160の外側連通孔161bの大きさよりも大きい。抜け止め部材500の厚さおよび横幅は、それぞれ第2ハウジング160の被挿入部164の厚さおよび横幅よりも小さく、上方より、第2ハウジング160の被挿入部164に挿入される。抜け止め部材500には、中央下部に下端から切り欠かれた下側切り欠き部501(図15参照)が形成されている。下側切り欠き部501の大きさは、グロメット320の四角柱部321の大きさよりも大きい。ただ、下側切り欠き部501の横幅の大きさは、グロメット320の楕円柱部322の楕円の長辺よりも小さく、抜け止め部材500は、グロメット320の楕円柱部322を覆うように形成されている。
なお、抜け止め部材500は、樹脂をインジェクション成形することで上記形状に成形されている。
【0058】
次に、ハーネスコンプ300、キャップ400および抜け止め部材500を組み付ける手法について説明する。
図15は、ハーネスコンプ300、キャップ400および抜け止め部材500を組み付ける様子を示す図である。
第1ハウジング150および第2ハウジング160に、第1の回転軸110、第2の回転軸120、フラットケーブルカバー60などを組み付け、第3ハウジング170を組み付ける前の状態で、第1のコネクタ350側から第2ハウジング160に形成された連通孔161に通す。そして、グロメット320の突起324が連通孔161の外側連通孔161bの周囲の壁163の内周面に接触するように嵌合し、グロメット320の楕円柱部322の端面が内側連通孔161aの端面に突き当たるまでグロメット320を押し込んでいく。このようにして、グロメット320を第2ハウジング160に装着する。そして、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の接続端子62に差し込む。また、抜け止め部材500を第2ハウジング160の被挿入部164に挿入する。そして、キャップ400の雄側部材410の下方部位411aを、第2ハウジング160の延出部165の切り欠き部165aに嵌め込むとともに、雄側部材410に設けられた複数の突起414の間に、内側に複数の電線310を有する第2のカバー380を挿入する。図15(b)は、このときの状態を示す図である。そして、その後、雄側部材410の突出部411の傾斜面411cおよび垂直面411dを雌側部材420の受入孔422に挿入することでキャップ400を結合して内部を閉じ、第2のカバー380で束ねられた複数の電線310を、貫通孔401を介して外部に露出させる。また、第3ハウジング170を第2ハウジング160に固定する。その際、第3ハウジング170の延出部172にて第2ハウジング160の被挿入部164の上方を覆う。また、第2のコネクタ360をECU200の端子に差し込む。
【0059】
以上のように構成され、ハウジング140に装着されるハーネスコンプ300においては、電線310を保持するグロメット320は、第2ハウジング160の連通孔161に挿入される楕円柱部322だけではなく、連通孔161から飛び出た四角柱部321をも設けられ、これら全ての部位において電線310を強く保持するので、連通孔161に挿入される部位のみにて電線310を保持する構成と比べてより強く電線310を保持する。加えて、ハウジング140内の気密性を高める。また、グロメット320が第2ハウジング160の連通孔161に嵌合されると、グロメット320の突起324が第2ハウジング160の連通孔161の周囲の壁163に押されることで電線孔320aの径が小さくなる方向に弾性変形し、電線310をより強く保持する。それゆえ、組み付けられた後、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても電線310がグロメット320に対して移動することが抑制される。加えて、ハウジング140内の気密性が高められる。
【0060】
また、第2ハウジング160の被挿入部164に挿入された抜け止め部材500がグロメット320の楕円柱部322の外面を覆い、第3ハウジング170の延出部172がその抜け止め部材500の上方を覆っているため、グロメット320がハウジング140から脱落することが抑制される。第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310は、キャップ400にて屈曲させられた状態で把持されている。したがって、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても、その力がグロメット320に伝達されたり、グロメット320がハウジング140から脱落したりすることが抑制される。それゆえ、第1のコネクタ350から電線310が脱落したり、第1のコネクタ350が差し込まれた接続端子62が折れたりすることが抑制される。
また、ハウジング140の外に出たばかりであって第2のカバー380にて束ねられていない複数の電線310は、キャップ400にて覆われているので、ハウジング140の外側から加えられる力によるグロメット320の電線孔320aの変形が抑制され、ハウジング140内の気密性が保たれる。
【0061】
また、ハーネスコンプ300単体で持ち運びされるとしても、電線310がグロメット320に対して移動し難いように強く保持されているので、このハーネスコンプ300をステアリング装置100に組み付ける作業者は、グロメット320から第1のコネクタ350までの電線310の長さに注意を払うことなく容易に組み付けることができる。
また、例えば板金で形成されたプレートをハウジング140の外側に配置することで、ハウジング140に形成された連通孔161に挿入されたグロメット320の抜け止めと、電線310の支持とを行う構成と比較すると、ハウジング140がアルミニウム製であるとしても、ハウジング140との間で電気化学的腐蝕が生じる部品がないことから耐食性を向上させることができる。また、組立て性も向上させることができる。
【0062】
<第2の実施形態>
図16は、第2の実施形態に係るハーネスコンプ300の外観図である。第2の実施形態に係るハーネスコンプ300は、第1の実施形態に係るハーネスコンプ300に対してグロメット320の形状と、後述するソケット330およびOリング340を備えている点が異なる。
図17は、第2の実施形態に係るハウジング140の外観図である。第2の実施形態に係るハウジング140は、第1の実施形態に係るハウジング140に対して第2ハウジング160の連通孔161の形状およびその周辺部位の形状と、第3ハウジング170の延出部172の大きさが異なる。
以下では、第1の実施形態との差異点についてのみ説明する。
【0063】
第2の実施形態に係るハーネスコンプ300は、複数の電線310と、これら複数の電線310を保持するグロメット320と、グロメット320を保持するとともに第2ハウジング160の連通孔161に挿入されるソケット330と、ソケット330に装着される周知のOリング340と、第1のコネクタ350と、第2のコネクタ360と、第1のカバー370と、第2のカバー380と、を備えている。
第2の実施形態に係る第2ハウジング160は、連通孔161における第1の回転軸110の軸方向の断面形状が円形である点で第1の実施形態に係る第2ハウジング160の連通孔161とは異なる。また、第2の実施形態に係る第2ハウジング160は、被挿入部164や延出部165を備えていない。
第2の実施形態に係る第3ハウジング170の延出部172は、ソケット330の被挿入部332(図18参照)の上方を覆う大きさに設定されている。
【0064】
図18は、第2の実施形態に係るグロメット320およびソケット330の概略構成を示す図である。図18(a)はグロメット320およびソケット330の外観図であり、図18(b)はハーネスコンプ300が第2ハウジング160に装着された状態における図18(a)のY−Y部の断面図である。
グロメット320は、下部が半円柱状であり、上部が四角柱状である。そして、グロメット320の中央部には、電線310を通すために、第2ハウジング160の連通孔161の孔方向に形成された電線孔320aが電線310の数と同数(本実施形態においては4つ)形成されている。
【0065】
ソケット330は、円筒状の円筒状部331と、円筒状部331の円筒の中心軸方向の一方の端部(第2のコネクタ360側の端部)に設けられ、グロメット320が挿入される被挿入部332と、を備えている。
円筒状部331における中心軸方向の途中には、Oリング340が嵌め込まれるリング溝333が周方向の全体に亘って形成されている。リング溝333は、円筒状部331の外周面から中心方向に凹んだ凹部333aと、この凹部333aと円筒状部331の外周面とを繋ぐ傾斜面333bとから形成される。凹部333aの底面およびOリング340の大きさは、ソケット330に装着されたOリング340最外径が第2ハウジング160の連通孔161の大きさよりも大きくなるように設定され、円筒状部331の外周面は第2ハウジング160の連通孔161の大きさと同じかやや小さくなるよう設定されている。円筒状部331における中心軸方向の他方の端部には、この端部の端面から中心軸方向に突出する突出部334が設けられている。突出部334の先端は、円筒状部331の外周面から半径方向の外側に突出した凸部334aを有している。
【0066】
被挿入部332は、基本的には、下部に設けられた半円柱状の半円柱部336と、半円柱部336と連続して半円柱部336の上方に設けられた四角柱状の四角柱部337とから構成され、外形の大きさが円筒状部331の外形よりも大きい。半円柱部336と四角柱部337とには、グロメット320を受け入れるとともに、グロメット320の形状と同じかやや大きい形状の空間が形成されてグロメット320を保持する保持部338が設けられている。また、被挿入部332には、円筒状部331の内側と協働して、複数の電線310を、円筒状部331の中心軸方向に貫通させる貫通孔332aが形成されている。
なお、ソケット330は、樹脂をインジェクション成形することで上記形状に成形されている。
【0067】
次に、第2の実施形態に係るハーネスコンプ300を組み立てる手法について説明する。
先ず、グロメット320をソケット330の被挿入部332に挿入する。その後、グロメット320に形成された複数の電線孔320aそれぞれに電線310を挿入する。そして、複数の電線310を、第1のカバー370および第2のカバー380で束ねる。そして、第1のカバー370で束ねられた複数の電線310の先端を第1のコネクタ350に接続し、第2のカバー380で束ねられた複数の電線310の先端を第2のコネクタ360に接続する。
【0068】
次に、ハーネスコンプ300およびキャップ400を組み付ける手法について説明する。
図19は、ハーネスコンプ300およびキャップ400を組み付ける様子を示す図である。
第1ハウジング150および第2ハウジング160に、第1の回転軸110、第2の回転軸120、フラットケーブルカバー60などを組み付け、第3ハウジング170を組み付ける前の状態で、第1のコネクタ350側から第2ハウジング160に形成された連通孔161に通す。そして、ソケット330に装着されたOリング340の外周面が連通孔161の周囲の壁163(図17参照)の内周面に接触するように嵌合し、円筒状部331の突出部334の凸部334aが連通孔161を通り過ぎるまで(図18(b)の状態となるまで)ソケット330を押し込んでいく。このようにして、ソケット330を第2ハウジング160に装着する。そして、第1のコネクタ350をフラットケーブルカバー60の接続端子62に差し込む。また、キャップ400の雄側部材410に設けられた複数の突起414の間に、内側に複数の電線310を有する第2のカバー380を挿入する。図19(b)は、このときの状態を示す図である。そして、その後、雄側部材410の突出部411の傾斜面411cおよび垂直面411dを雌側部材420の受入孔422に挿入することでキャップ400を結合して内部を閉じ、第2のカバー380で束ねられた複数の電線310を、貫通孔401を介して外部に露出させる。また、第3ハウジング170を第2ハウジング160に固定する。その際、第3ハウジング170の延出部172にてソケット330の被挿入部332の上方を覆う。また、第2のコネクタ360をECU200の端子に差し込む。なお、キャップ400は、複数の突起414の間に把持された、内側に複数の電線310を有する第2のカバー380と、複数の突起414との接触力によりハウジング140に対して移動することが抑制される。
【0069】
以上のように構成され、ハウジング140に装着されるハーネスコンプ300においては、グロメット320がソケット330の被挿入部332に挿入され、第3ハウジング170の延出部172が被挿入部332の上方を覆っており、また、ソケット330の突出部334の凸部334aが第2ハウジング160の内周面に引っ掛かっているため(図18(b)参照)、グロメット320がハウジング140から脱落することが抑制される。第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310は、キャップ400にて屈曲させられた状態で把持されている。したがって、ハウジング140の外側から第2のカバー380にて束ねられた複数の電線310に力が作用したとしても、その力がグロメット320に伝達されたり、グロメット320がハウジング140から脱落したりすることが抑制される。それゆえ、第1のコネクタ350から電線310が脱落したり、第1のコネクタ350が差し込まれた接続端子62が折れたりすることが抑制される。
【0070】
また、ハウジング140の外に出たばかりであって第2のカバー380にて束ねられていない複数の電線310は、キャップ400にて覆われているので、ハウジング140の外側から加えられる力によるグロメット320の電線孔320aの変形が抑制され、ハウジング140内の気密性が保たれる。
また、例えば板金で形成されたプレートをハウジング140の外側に配置することで、ハウジング140に形成された連通孔161に挿入されたグロメット320の抜け止めと、電線310の支持とを行う構成と比較すると、ハウジング140がアルミニウム製であるとしても、ハウジング140との間で電気化学的腐蝕が生じる部品がないことから耐食性を向上させることができる。また、組立て性も向上させることができる。
【0071】
なお、ソケット330の被挿入部332における連通孔方向の端面から外側に連通孔方向に延出し、第1の実施形態に係る第2ハウジング160の延出部165と同形状の部位を設け、この部位に、キャップ400の雄側部材410の下方部位411aを嵌め込むとよい。かかる構造により、第2の実施形態においても、キャップ400がハウジング140に対して移動することが抑制される。
【符号の説明】
【0072】
10…検出装置、20…磁石、30…相対角度センサ、40…プリント基板、50…ベース、60…フラットケーブルカバー、70…フラットケーブル、100…電動パワーステアリング装置、110…第1の回転軸、120…第2の回転軸、130…トーションバー、140…ハウジング、160…第2ハウジング、170…第3ハウジング、180…ウォームホイール、190…電動モータ、200…電子制御ユニット(ECU)、210…相対角度演算部、300…ハーネスコンプ、310…電線、320…グロメット、330…ソケット、340…Oリング、350…第1のコネクタ、360…第2のコネクタ、370…第1のカバー、380…第2のカバー、400…キャップ、500…抜け止め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外を連通する連通孔が形成されたハウジング内に収納され、互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサと、
前記センサから出力される電気信号を前記ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、
前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されて前記電線を保持する電線保持部材と、
前記ハウジングの外側に配置され、互いに結合されることで前記電線を屈曲させた状態で把持する一対の把持部材と、
を備えることを特徴とする相対角度検出装置。
【請求項2】
前記一対の把持部材は、互いに結合されることで内部を閉じるとともにその内部を前記電線が貫通する貫通孔を形成し、結合されていない状態で内部を開放するとともに前記ハウジングの外側において当該電線を内部に取り込み可能であることを特徴とする請求項1に記載の相対角度検出装置。
【請求項3】
前記電線を複数有するとともに前記ハウジングの外側において当該複数の電線を束ねる電線カバーを備え、
前記一対の把持部材は、互いに結合されることで前記複数の電線における前記電線カバーにて束ねられていない部位を覆い、当該電線カバーにて束ねられた部位を前記貫通孔から外部に出すことを特徴とする請求項1または2に記載の相対角度検出装置。
【請求項4】
前記一対の把持部材のうちいずれか一方の部材は、他方の部材側へ突出し、前記電線を屈曲させる突起を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の相対角度検出装置。
【請求項5】
前記ハウジングは、前記連通孔と当該連通孔よりも当該連通孔の孔方向の外側に形成された凹部と当該孔方向と交差する方向に開口する開口部とを有する第1の部材と、当該第1の部材に取り付けられることで当該開口部を覆うとともに当該孔方向に突出する突出部を有する第2の部材と、を備え、
前記電線保持部材は、前記ハウジングの前記第1の部材の前記連通孔に嵌合される嵌合部と、当該嵌合部よりも外側に設けられる外側部と、を有するとともに、当該嵌合部および当該外側部を貫通する孔に前記電線を保持し、
前記ハウジングの前記第1の部材の前記凹部に挿入されて前記電線保持部材の前記嵌合部の外面の一部を覆うとともに当該ハウジングの前記第2の部材の前記突出部により覆われる覆い部材をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の相対角度検出装置。
【請求項6】
互いに同軸的に配置された2つの回転軸の相対回転角度に応じた電気信号を出力するセンサと、
内外を連通する連通孔が形成され、前記センサを収納するハウジングと、
前記センサから出力される電気信号を前記ハウジング外に配置される装置に伝送する電線と、
前記ハウジングの前記連通孔に嵌合されて前記電線を保持する電線保持部材と、
前記ハウジングの外側に配置され、互いに結合されることで前記電線を屈曲させた状態で把持する一対の把持部材と、
を備えることを特徴とする電動パワーステアリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−237637(P2012−237637A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−106591(P2011−106591)
【出願日】平成23年5月11日(2011.5.11)
【出願人】(000146010)株式会社ショーワ (715)
【Fターム(参考)】