磁気メモリチップを有する半導体装置の製造方法
【課題】アセンブリ段階において外部磁場から磁気メモリチップを保護する。
【解決手段】主面に磁気メモリ素子および複数のワイヤボンドパッドが形成された磁気メモリチップを準備する。シリコンより高透磁率を有する第1の磁気シールド板を磁気メモリチップの主面に搭載する。磁気メモリチップをリードフレームのダイパッド上に搭載しダイアタッチフィルムにより接着する。磁気メモリチップのワイヤボンドパッドとリードフレームのリードとをワイヤで電気的に接続する。磁気メモリチップ、磁気シールド板、ワイヤ及びリードの一部を樹脂により封止する。複数の磁気メモリチップを有するシリコンウェハを準備し、シリコンウェハの裏面を研削することによりシリコンウェハを所定の厚さまで薄くしてダイアタッチフィルムを張り付けた後にシリコンウェハをダイシングして各々がダイアタッチフィルムをその裏面に有する複数の磁気メモリチップを形成する。
【解決手段】主面に磁気メモリ素子および複数のワイヤボンドパッドが形成された磁気メモリチップを準備する。シリコンより高透磁率を有する第1の磁気シールド板を磁気メモリチップの主面に搭載する。磁気メモリチップをリードフレームのダイパッド上に搭載しダイアタッチフィルムにより接着する。磁気メモリチップのワイヤボンドパッドとリードフレームのリードとをワイヤで電気的に接続する。磁気メモリチップ、磁気シールド板、ワイヤ及びリードの一部を樹脂により封止する。複数の磁気メモリチップを有するシリコンウェハを準備し、シリコンウェハの裏面を研削することによりシリコンウェハを所定の厚さまで薄くしてダイアタッチフィルムを張り付けた後にシリコンウェハをダイシングして各々がダイアタッチフィルムをその裏面に有する複数の磁気メモリチップを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセンブリ段階において外部磁場から磁気メモリチップを保護することができる磁気メモリチップを有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRAM(Magnetic Random Access Memory)は、ナノ磁性体特有のスピン依存伝導現象に基づく磁気抵抗効果を利用した磁気メモリチップであり、外部から電力を供給することなく記憶を保持できる不揮発性メモリである。しかし、MRAMは外部磁場の影響を受けやすく、チップ単体で10[Oe]以上の磁場を受けると、誤書き込みなどの誤動作を誘発する恐れがある。そこで、MRAMを内蔵する磁気メモリチップ装置において、外部磁場からMRAMを保護する磁気シールドを設ける技術が提案されている(例えば、特許文献1〜9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−115578号公報
【特許文献2】特開2004−47656号公報
【特許文献3】特開2004−103071号公報
【特許文献4】特開2004−193247号公報
【特許文献5】特開2004−200185号公報
【特許文献6】特開2004−207322号公報
【特許文献7】特開2004−221288号公報
【特許文献8】特開2004−221463号公報
【特許文献9】特開2005−158985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の磁気メモリチップ装置は、装置が完成した状態において外部磁場からMRAMを保護することができる。しかし、装置のアセンブリ(組み立て)段階において、ダイボンド装置やワイヤボンディング装置など、モーターを用いた製造装置により発生した外部磁場の影響をMRAMが受けてしまうという問題があった。このため、MRAMに磁場の影響を与えないような特別な製造装置を導入しなければならなかった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、アセンブリ段階において外部磁場から磁気メモリチップを保護することができる磁気メモリチップを有する半導体装置の製造方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る磁気メモリチップを有する半導体装置の製造方法は、主面に磁気メモリ素子および複数のワイヤボンドパッドが形成された磁気メモリチップを準備する工程と、シリコンより高透磁率を有する第1の磁気シールド板を前記磁気メモリチップの主面に搭載する工程と、前記磁気メモリチップをリードフレームのダイパッド上に搭載する工程と、前記磁気メモリチップの前記ワイヤボンドパッドと前記リードフレームのリードとをワイヤで電気的に接続する工程と、前記磁気メモリチップ、前記磁気シールド板、前記ワイヤ及び前記リードの一部を樹脂により封止する工程とを有し、前記磁気メモリチップを準備する工程は、複数の磁気メモリチップを有するシリコンウェハを準備する工程と、前記シリコンウェハの裏面を研削することにより前記シリコンウェハを所定の厚さまで薄くする工程と、前記所定の厚さまで薄くされたシリコンウェハの裏面に、ダイアタッチフィルムを張り付けた後に、前記シリコンウェハをダイシングすることによって、各々が前記ダイアタッチフィルムをその裏面に有する複数の磁気メモリチップを形成する工程とを有し、前記磁気メモリチップをリードフレームのダイパッド上に搭載する工程は、前記ダイアタッチフィルムにより前記磁気メモリチップを前記ダイパッドに接着する工程を有する。
【発明の効果】
【0007】
この実施例によれば、アセンブリ段階において外部磁場から磁気メモリチップを保護することができる。これにより、通常の製造装置を用いた場合でも、当該製造装置により発生した外部磁場から磁気メモリチップを保護することができる。従って、アセンブリのラインを変更する必要が無いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図3】標準MRAMを示す斜視図である。
【図4】標準MRAMを示す回路図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の他の例を示す断面図である。
【図16】本発明の実施の形態2に係る磁気メモリチップ装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態2に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図18】本発明の実施の形態2に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図19】本発明の実施の形態2に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図20】本発明の実施の形態2に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図21】本発明の実施の形態3に係る磁気メモリチップ装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図22】本発明の実施の形態3に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図23】本発明の実施の形態3に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造方法について図1に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、図2に示すように、シリコンからなるウェハ11(シリコンウェハ)上に複数のMRAMチップ(磁気メモリチップ)12を形成する(ステップS1)。MRAMチップは、基本的な構造として、磁性膜からなるピン(pin)層とフリー(free)層との間に極めて薄いトンネル絶縁層が設けられた磁気トンネル接合構造を備える。こうした磁気トンネル接合構造は、一般に、TMR(Tunneling Magneto Resistance)又はMTJ(Magnetic Tunnel Junction)と称される。
【0010】
ピン層での磁化方向は、一定の方向に固定される。一方、フリー層での磁化方向は、外部から制御可能である。ピン層の磁化方向とフリー層の磁化方向が同じ方向に向いた平行状態である場合、磁気メモリ素子の積層方向に流れる電流の抵抗値が低くなる。逆に、ピン層の磁化方向とフリー層磁化方向が、反対方向に向いた反平行状態である場合、磁気メモリ素子の積層方向に流れる電流の抵抗値が高くなる。従って、磁化方向の平行状態又は反平行状態をデジタル値の「0」または「1」に関連付けて、抵抗値の変化を読み取ることによって、従来のRAMと同様にメモリ素子として動作させることができる。
【0011】
MRAMチップは、フリー層の磁化方向を制御する機構の相違に応じて、幾つかの種類に分類される。磁気トンネル接合構造の接合面をXY面とし、接合面に垂直な方向をZ方向として、X方向に沿った第1ライン及びY方向に沿った第2ラインを磁気トンネル接合構造の近傍に配置し、第1ライン及び第2ラインの電流の向きを独立に制御することによって、フリー層の磁化方向を制御することができる。こうした機構を持つ磁気メモリ素子を、ここでは標準MRAMと称する。
【0012】
素子構造に関して、標準MRAMは、図3,4に示すように、2本の電流ラインを磁気トンネル接合に接近させて配置する必要がある。図3を参照して、磁気トンネル接合TMRは、典型的には、磁性膜からなるピン層MPと、極めて薄いトンネル絶縁層MTと、磁性膜からなるフリー層MFとがこの順で積層されて構成される。磁気トンネル接合TMRは、楕円などの異方性を持つ平面形状を有し、その長手方向が磁化容易軸となる。ここで、磁気トンネル接合TMRの接合面をXY面とし、接合面に垂直な方向をZ方向とする。
【0013】
ビットラインBLは、磁気トンネル接合TMRの上方近傍を通過するようにY方向に沿って配置され、フリー層MFと電気接続されている。ディジットラインDLは、磁気トンネル接合TMRの下方近傍を通過するようにX方向に沿って配置される。ストラップSTは、ディジットラインDLを迂回するように、磁気トンネル接合TMRのピン層MPから−Y方向に引き出された配線である。
【0014】
磁気トンネル接合TMRの下方には、ドレイン領域DR、ゲート電極TG及びソース領域SCを含むトランジスタTRが配置される。ドレイン領域DRとストラップSTとは、パッドPD、層間配線LTなど、Z方向の配線によって電気接続される。ソース領域SCは、X方向に延びる読み出しラインLRと電気接続される。ゲート電極TGも、X方向に延びている。
【0015】
次に、標準MRAMの動作について説明する。まず書き込み動作の場合、ビットラインBLに電流がY方向に流れて、ディジットラインDLに電流がX方向に流れると、両者の電流による合成磁界が磁気トンネル接合TMRに印加され、フリー層MFの磁化方向は合成磁界の方向に揃うようになる。続いて、電流がゼロになると、フリー層MFの磁化方向は、平面形状の長手方向に沿った第1方向に一致するようになる。
【0016】
一方、ビットラインBLに電流が−Y方向に流れて、ディジットラインDLに電流がX方向に流れた場合、上述の合成磁界に垂直な方向に合成磁界が発生し、フリー層MFの磁化方向は、この合成磁界の方向に揃うようになる。続いて、電流がゼロになると、フリー層MFの磁化方向は、上述の第1方向とは反対の第2方向に一致するようになる。
【0017】
こうしてディジットラインDLの通電とともに、ビットラインBLでの電流の向きを制御することによって、フリー層MFの磁化方向が第1方向または第2方向に制御可能になり、「0」または「1」の2値状態を記憶することができる。その後、通電オフの状態であってもフリー層MFの磁化方向は保持される。このように、配線電流誘起磁界によって、フリー層MFの磁化方向を書き換える方式のMRAMの場合、メモリセルの消費電力を低減するために、スイッチング磁界を小さくすると、外乱磁場に対するディスターブ耐性が低下するという問題を生じる。
【0018】
次に読み出し動作の場合、ディジットラインDLは関与せず、電流を、ビットラインBL→磁気トンネル接合TMR→ストラップST→パッドPD・層間配線LT→トランジスタTR→読み出しラインLRの経路で供給して、磁気トンネル接合TMRの抵抗値の変化をセンスアンプ(不図示)を用いて検出する。フリー層MFの磁化方向がピン層MPの磁化方向と平行であれば、抵抗値は低くなり、反平行であれば抵抗値は高くなる。従って、フリー層MFの2値状態は、抵抗値の大小に反映されて、外部に読み出される。
【0019】
こうしたMRAMをマトリクス状に多数配列することによって、大容量の不揮発性メモリを実現できる。この場合、ビットラインBL、ディジットラインDL、読み出しラインLRを共用するため、トランジスタTRを介在させることにより、ゲート電極TG及びビットラインBLによるマトリクス走査を実現する。
【0020】
MRAMのメモリセルの構成としては、上記の標準MRAM型に限ることなく、スピン注入磁化反転を利用するタイプのMRAMなどにも、本発明は適宜適用可能である。
【0021】
ウェハ11上に複数のMRAMチップを形成する工程(ステップS1)の次に、MRAMチップ12をリセットするために、ウェハ11について磁界中において275℃で4時間の磁場アニールを行う(ステップS2)。
【0022】
次に、図5に示すように、プローブ13を用いて個々のMRAMチップ12についてプローブ検査を行う(ステップS3)。このプローブ検査により良好と判断されたMRAMチップ12にプログラム・救済情報を書き込む(ステップS4)。そして、図6に示すように、ウェハ11を裏面から研磨機14によりバックグラインドする(ステップS5)。
【0023】
次に、図7に示すように、ウェハ11をダイアタッチフィルム15に貼り付ける。図8に示すように、ウェハ11の外周に沿ってダイアタッチフィルム15を切り取る。そして、図9に示すように、ウェハ11の裏面に、ダイアタッチフィルム15を介して、厚さ100μmのNiFe板(高透磁率板)16を貼り付ける(ステップS6)。150℃に加熱してダイアタッチフィルム15を硬化させる。
【0024】
次に、図10に示すように、積層したウェハ11及びNiFe板16にダイアタッチフィルム17(接着層)を貼り付ける。そして、図11に示すように、ダイシングブレード18を用いてMRAMチップ12ごとにウェハ11をダイシングする(ステップS7)。その後、洗浄を行う。
【0025】
次に、図12に示すように、MRAMチップ12をダイパッド21上にダイアタッチフィルム17を介してダイボンドする(ステップS8)。150℃に加熱してダイアタッチフィルム17を硬化させる。MRAMチップ12と外部リード22とを金ワイヤ23によりワイヤボンドする(ステップS9)。そして、図13に示すように、MRAMチップ12及び金ワイヤ23を樹脂24により樹脂封止する(ステップS10)。
【0026】
次に、図14に示すように、電界めっきにより、Cuからなる外部リード22の表面にNi/Pd/Au積層のめっき膜25を形成する(ステップS11)。また、外部リード22を成型する。最後に、製造された磁気メモリチップ装置のテストを行う(ステップS12)。
【0027】
以上説明したように、本実施の形態では、アセンブリ段階の途中においてシリコンよりも透磁率が高い物質からなるNiFe板16をウェハ11の裏面に貼り付けている。これにより、外部からの磁力線はNiFe板16を主に通り、シリコンからなるMRAMチップ12を通る磁力線の量を減らすことができる。従って、その後のアセンブリ段階において外部磁場からMRAMチップ12を保護することができる。具体的には、ダイシング装置、ダイボンド装置及びワイヤボンド装置により発生した外部磁場からMRAMチップ12を保護することができる。このため、これらの製造装置として外部磁場を防ぐ対策をした特別なものを用意する必要がなく、一般的な製造装置を用いることができる。ただし、バックグラインド装置には外部磁場を防ぐ対策をするのが有効である。
【0028】
また、電界めっきでは外部磁界の影響が特に問題となるが、既にMRAMチップ12にNiFe板16を貼り付けているため、外部磁場からMRAMチップ12を保護することができる。ただし、予めめっき膜を形成したリードフレームを用いれば、樹脂封止後の電界めっきが不要になるため、より好ましい。
【0029】
上記の例ではQFP(Quad Flat Package)型パッケージの場合について説明したが、これに限らず、図15に示すようなBGA(Ball Grid Array)型パッケージにも本実施の形態を適用することができる。この場合、NiFe板16を貼り付けたMRAMチップ12を配線基板26上に搭載する。そして、配線基板26の下面に半田ボール27を形成する。
【0030】
また、NiFe板16の厚さが100μmの場合について説明したが、これに限らずNiFe板16の厚さが50μm以上であれば外部磁場からMRAMチップ12を保護することができる。ただし、NiFe板16の厚さが100μm以上であることが好ましい。このような厚いNiFe板16を前工程でウェハ11に成膜すると、その応力によりウェハ11が反るという問題がある。しかし、本実施の形態ではウェハ11上に、MRAMチップ12を形成後、後工程において別体として形成されたNiFe板16をウェハ11に貼り付けるため、このような問題は極力低減できる。
【0031】
また、ダイアタッチフィルム17の厚さは10μm以上であることが好ましい。これにより、MRAMチップ12とNiFe板16との熱膨張係数の差による応力をダイアタッチフィルム17が緩和することができる。一方、ダイアタッチフィルム17の厚さは40μm以下であることが好ましい。これにより、MRAMチップ12とNiFe板16との距離が縮まるため、外部磁場に対するシールド効果が大きくなる。
【0032】
なお、熱膨張係数差による応力を緩和するために、NiFe板16とMRAMチップ12との間にシリコンダミーチップを設けても良い。また、別の半導体チップをMRAMチップ12上にフリップチップ接続させてもよい。また、NiFe板16の代わりに、外乱磁場対策処理を施したベースSiなどの材料をSOIのように接合してもよい。また、書き込んだ情報を保護するため、MRAMチップ12にプログラム・救済情報を書き込んだ後の工程は300℃以下の低温プロセスとするのが好ましい。ただし、磁場アニールのプロセス温度以下とするのがより好ましい。
【0033】
また、NiFe板16をMRAMチップ12の表面に貼り付けてもよい。この場合、ダイアタッチフィルム15及びNiFe板16は、MRAMチップ12表面のワイヤボンドパッドの位置に開口を設けるか、又は板状に長くすることで、ワイヤボンドパッドを避けて貼り付ける必要がある。ただし、以後のダイシング工程での水圧等でダイアタッチフィルム17が剥がれない程度の接着強度が必要である。
【0034】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る磁気メモリチップ装置の製造方法について図16に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、実施の形態1と同様にステップS5までの工程を行う。次に、図17に示すようにウェハ11をダイアタッチフィルム31に貼り付け、ダイシングブレード18を用いてMRAMチップ12ごとにウェハ11をダイシングする(ステップS7)。その後、洗浄を行う。
【0035】
次に、図18に示すように、NiFe板16をダイアタッチフィルム32に貼り付け、個片化する。そして、ダイシングしたウェハ11の個々のMRAMチップ12上に、ダイボンドヘッド33を用いて、個片化したNiFe板16をダイアタッチフィルム32を介して貼り付ける(ステップS13)。この際、図19に示すように、MRAMチップ12のワイヤボンドパッド34にNiFe板16が接触しないようにする。
【0036】
次に、図20に示すように、ダイボンドピックアップコレット35を用いて、積層したMRAMチップ12及びNiFe板16ごとにピックアップして、リードフレーム又は配線基板上にダイアタッチフィルム31を介してダイボンドする(ステップS8)。150℃に加熱してダイアタッチフィルム31,27を硬化させる。
【0037】
その後、実施の形態1と同様にステップS9〜S12の工程を行う。なお、リードフレーム又は配線基板に予めNiFe板を貼り付け、その上にNiFe板を貼り付けたMRAMチップを貼り付けてサンドイッチ構造にしてもよい。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態では、アセンブリ段階の途中においてシリコンよりも透磁率が高い物質からなるNiFe板16をウェハ11の裏面に貼り付けている。これにより、その後のアセンブリ段階において外部磁場からMRAMチップ12を保護することができる。具体的には、ダイボンド装置及びワイヤボンド装置により発生した外部磁場からMRAMを保護することができる。このため、これらの製造装置として外部磁場を防ぐ対策をした特別なものを用意する必要がなく、一般的な製造装置を用いることができる。ただし、バックグラインド装置、ダイシング装置、及びウェハに個片化したNiFe板を貼り付けるダイボンド装置には外部磁場を防ぐ対策をする必要がある。
【0039】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係る磁気メモリチップ装置の製造方法について図21に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、実施の形態1と同様にステップS5までの工程を行う。次に、MRAMチップ12ごとにウェハ11をダイシングし(ステップS7)、図22に示すようにMRAMチップ12を配線基板26上にダイボンドする(ステップS8)。なお、MRAMチップ12をリードフレーム上にダイボンドしてもよい。
【0040】
次に、図23に示すように、個々のMRAMチップ12上に、個片化したNiFe板16を貼り付ける(ステップS14)。この際、MRAMチップ12のワイヤボンドパッドにNiFe板16が接触しないようにする。その後、実施の形態1と同様にステップS9〜S12の工程を行う。なお、リードフレーム又は配線基板に予めNiFe板を貼り付け、その上にNiFe板を貼り付けたMRAMチップを貼り付けてサンドイッチ構造にしてもよい。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態では、アセンブリ段階の途中においてシリコンよりも透磁率が高い物質からなるNiFe板16をウェハ11の裏面に貼り付けている。これにより、その後のアセンブリ段階において外部磁場からMRAMチップ12を保護することができる。具体的には、ワイヤボンド装置によりスパーク等で発生した外部磁場からMRAMを保護することができる。このため、ワイヤボンド装置として外部磁場を防ぐ対策をした特別なものを用意する必要がなく、一般的な製造装置を用いることができる。ただし、バックグラインド装置、ダイシング装置及びダイボンド装置には外部磁場を防ぐ対策をする必要がある。
【符号の説明】
【0042】
11 ウェハ(シリコンウェハ)
12 チップ(磁気メモリチップ)
15 ダイアタッチフィルム
16 NiFe板(高透磁率板)
17,31 ダイアタッチフィルム(接着層)
21 ダイパッド(リードフレーム)
26 配線基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、アセンブリ段階において外部磁場から磁気メモリチップを保護することができる磁気メモリチップを有する半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MRAM(Magnetic Random Access Memory)は、ナノ磁性体特有のスピン依存伝導現象に基づく磁気抵抗効果を利用した磁気メモリチップであり、外部から電力を供給することなく記憶を保持できる不揮発性メモリである。しかし、MRAMは外部磁場の影響を受けやすく、チップ単体で10[Oe]以上の磁場を受けると、誤書き込みなどの誤動作を誘発する恐れがある。そこで、MRAMを内蔵する磁気メモリチップ装置において、外部磁場からMRAMを保護する磁気シールドを設ける技術が提案されている(例えば、特許文献1〜9参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−115578号公報
【特許文献2】特開2004−47656号公報
【特許文献3】特開2004−103071号公報
【特許文献4】特開2004−193247号公報
【特許文献5】特開2004−200185号公報
【特許文献6】特開2004−207322号公報
【特許文献7】特開2004−221288号公報
【特許文献8】特開2004−221463号公報
【特許文献9】特開2005−158985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の磁気メモリチップ装置は、装置が完成した状態において外部磁場からMRAMを保護することができる。しかし、装置のアセンブリ(組み立て)段階において、ダイボンド装置やワイヤボンディング装置など、モーターを用いた製造装置により発生した外部磁場の影響をMRAMが受けてしまうという問題があった。このため、MRAMに磁場の影響を与えないような特別な製造装置を導入しなければならなかった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、アセンブリ段階において外部磁場から磁気メモリチップを保護することができる磁気メモリチップを有する半導体装置の製造方法を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る磁気メモリチップを有する半導体装置の製造方法は、主面に磁気メモリ素子および複数のワイヤボンドパッドが形成された磁気メモリチップを準備する工程と、シリコンより高透磁率を有する第1の磁気シールド板を前記磁気メモリチップの主面に搭載する工程と、前記磁気メモリチップをリードフレームのダイパッド上に搭載する工程と、前記磁気メモリチップの前記ワイヤボンドパッドと前記リードフレームのリードとをワイヤで電気的に接続する工程と、前記磁気メモリチップ、前記磁気シールド板、前記ワイヤ及び前記リードの一部を樹脂により封止する工程とを有し、前記磁気メモリチップを準備する工程は、複数の磁気メモリチップを有するシリコンウェハを準備する工程と、前記シリコンウェハの裏面を研削することにより前記シリコンウェハを所定の厚さまで薄くする工程と、前記所定の厚さまで薄くされたシリコンウェハの裏面に、ダイアタッチフィルムを張り付けた後に、前記シリコンウェハをダイシングすることによって、各々が前記ダイアタッチフィルムをその裏面に有する複数の磁気メモリチップを形成する工程とを有し、前記磁気メモリチップをリードフレームのダイパッド上に搭載する工程は、前記ダイアタッチフィルムにより前記磁気メモリチップを前記ダイパッドに接着する工程を有する。
【発明の効果】
【0007】
この実施例によれば、アセンブリ段階において外部磁場から磁気メモリチップを保護することができる。これにより、通常の製造装置を用いた場合でも、当該製造装置により発生した外部磁場から磁気メモリチップを保護することができる。従って、アセンブリのラインを変更する必要が無いという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図3】標準MRAMを示す斜視図である。
【図4】標準MRAMを示す回路図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図8】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図9】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図11】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図12】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す断面図である。
【図14】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す断面図である。
【図15】本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の他の例を示す断面図である。
【図16】本発明の実施の形態2に係る磁気メモリチップ装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図17】本発明の実施の形態2に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図18】本発明の実施の形態2に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図19】本発明の実施の形態2に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図20】本発明の実施の形態2に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図21】本発明の実施の形態3に係る磁気メモリチップ装置の製造方法を示すフローチャートである。
【図22】本発明の実施の形態3に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【図23】本発明の実施の形態3に係る磁気メモリチップ装置の製造工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施の形態1.
本発明の実施の形態1に係る磁気メモリチップ装置の製造方法について図1に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、図2に示すように、シリコンからなるウェハ11(シリコンウェハ)上に複数のMRAMチップ(磁気メモリチップ)12を形成する(ステップS1)。MRAMチップは、基本的な構造として、磁性膜からなるピン(pin)層とフリー(free)層との間に極めて薄いトンネル絶縁層が設けられた磁気トンネル接合構造を備える。こうした磁気トンネル接合構造は、一般に、TMR(Tunneling Magneto Resistance)又はMTJ(Magnetic Tunnel Junction)と称される。
【0010】
ピン層での磁化方向は、一定の方向に固定される。一方、フリー層での磁化方向は、外部から制御可能である。ピン層の磁化方向とフリー層の磁化方向が同じ方向に向いた平行状態である場合、磁気メモリ素子の積層方向に流れる電流の抵抗値が低くなる。逆に、ピン層の磁化方向とフリー層磁化方向が、反対方向に向いた反平行状態である場合、磁気メモリ素子の積層方向に流れる電流の抵抗値が高くなる。従って、磁化方向の平行状態又は反平行状態をデジタル値の「0」または「1」に関連付けて、抵抗値の変化を読み取ることによって、従来のRAMと同様にメモリ素子として動作させることができる。
【0011】
MRAMチップは、フリー層の磁化方向を制御する機構の相違に応じて、幾つかの種類に分類される。磁気トンネル接合構造の接合面をXY面とし、接合面に垂直な方向をZ方向として、X方向に沿った第1ライン及びY方向に沿った第2ラインを磁気トンネル接合構造の近傍に配置し、第1ライン及び第2ラインの電流の向きを独立に制御することによって、フリー層の磁化方向を制御することができる。こうした機構を持つ磁気メモリ素子を、ここでは標準MRAMと称する。
【0012】
素子構造に関して、標準MRAMは、図3,4に示すように、2本の電流ラインを磁気トンネル接合に接近させて配置する必要がある。図3を参照して、磁気トンネル接合TMRは、典型的には、磁性膜からなるピン層MPと、極めて薄いトンネル絶縁層MTと、磁性膜からなるフリー層MFとがこの順で積層されて構成される。磁気トンネル接合TMRは、楕円などの異方性を持つ平面形状を有し、その長手方向が磁化容易軸となる。ここで、磁気トンネル接合TMRの接合面をXY面とし、接合面に垂直な方向をZ方向とする。
【0013】
ビットラインBLは、磁気トンネル接合TMRの上方近傍を通過するようにY方向に沿って配置され、フリー層MFと電気接続されている。ディジットラインDLは、磁気トンネル接合TMRの下方近傍を通過するようにX方向に沿って配置される。ストラップSTは、ディジットラインDLを迂回するように、磁気トンネル接合TMRのピン層MPから−Y方向に引き出された配線である。
【0014】
磁気トンネル接合TMRの下方には、ドレイン領域DR、ゲート電極TG及びソース領域SCを含むトランジスタTRが配置される。ドレイン領域DRとストラップSTとは、パッドPD、層間配線LTなど、Z方向の配線によって電気接続される。ソース領域SCは、X方向に延びる読み出しラインLRと電気接続される。ゲート電極TGも、X方向に延びている。
【0015】
次に、標準MRAMの動作について説明する。まず書き込み動作の場合、ビットラインBLに電流がY方向に流れて、ディジットラインDLに電流がX方向に流れると、両者の電流による合成磁界が磁気トンネル接合TMRに印加され、フリー層MFの磁化方向は合成磁界の方向に揃うようになる。続いて、電流がゼロになると、フリー層MFの磁化方向は、平面形状の長手方向に沿った第1方向に一致するようになる。
【0016】
一方、ビットラインBLに電流が−Y方向に流れて、ディジットラインDLに電流がX方向に流れた場合、上述の合成磁界に垂直な方向に合成磁界が発生し、フリー層MFの磁化方向は、この合成磁界の方向に揃うようになる。続いて、電流がゼロになると、フリー層MFの磁化方向は、上述の第1方向とは反対の第2方向に一致するようになる。
【0017】
こうしてディジットラインDLの通電とともに、ビットラインBLでの電流の向きを制御することによって、フリー層MFの磁化方向が第1方向または第2方向に制御可能になり、「0」または「1」の2値状態を記憶することができる。その後、通電オフの状態であってもフリー層MFの磁化方向は保持される。このように、配線電流誘起磁界によって、フリー層MFの磁化方向を書き換える方式のMRAMの場合、メモリセルの消費電力を低減するために、スイッチング磁界を小さくすると、外乱磁場に対するディスターブ耐性が低下するという問題を生じる。
【0018】
次に読み出し動作の場合、ディジットラインDLは関与せず、電流を、ビットラインBL→磁気トンネル接合TMR→ストラップST→パッドPD・層間配線LT→トランジスタTR→読み出しラインLRの経路で供給して、磁気トンネル接合TMRの抵抗値の変化をセンスアンプ(不図示)を用いて検出する。フリー層MFの磁化方向がピン層MPの磁化方向と平行であれば、抵抗値は低くなり、反平行であれば抵抗値は高くなる。従って、フリー層MFの2値状態は、抵抗値の大小に反映されて、外部に読み出される。
【0019】
こうしたMRAMをマトリクス状に多数配列することによって、大容量の不揮発性メモリを実現できる。この場合、ビットラインBL、ディジットラインDL、読み出しラインLRを共用するため、トランジスタTRを介在させることにより、ゲート電極TG及びビットラインBLによるマトリクス走査を実現する。
【0020】
MRAMのメモリセルの構成としては、上記の標準MRAM型に限ることなく、スピン注入磁化反転を利用するタイプのMRAMなどにも、本発明は適宜適用可能である。
【0021】
ウェハ11上に複数のMRAMチップを形成する工程(ステップS1)の次に、MRAMチップ12をリセットするために、ウェハ11について磁界中において275℃で4時間の磁場アニールを行う(ステップS2)。
【0022】
次に、図5に示すように、プローブ13を用いて個々のMRAMチップ12についてプローブ検査を行う(ステップS3)。このプローブ検査により良好と判断されたMRAMチップ12にプログラム・救済情報を書き込む(ステップS4)。そして、図6に示すように、ウェハ11を裏面から研磨機14によりバックグラインドする(ステップS5)。
【0023】
次に、図7に示すように、ウェハ11をダイアタッチフィルム15に貼り付ける。図8に示すように、ウェハ11の外周に沿ってダイアタッチフィルム15を切り取る。そして、図9に示すように、ウェハ11の裏面に、ダイアタッチフィルム15を介して、厚さ100μmのNiFe板(高透磁率板)16を貼り付ける(ステップS6)。150℃に加熱してダイアタッチフィルム15を硬化させる。
【0024】
次に、図10に示すように、積層したウェハ11及びNiFe板16にダイアタッチフィルム17(接着層)を貼り付ける。そして、図11に示すように、ダイシングブレード18を用いてMRAMチップ12ごとにウェハ11をダイシングする(ステップS7)。その後、洗浄を行う。
【0025】
次に、図12に示すように、MRAMチップ12をダイパッド21上にダイアタッチフィルム17を介してダイボンドする(ステップS8)。150℃に加熱してダイアタッチフィルム17を硬化させる。MRAMチップ12と外部リード22とを金ワイヤ23によりワイヤボンドする(ステップS9)。そして、図13に示すように、MRAMチップ12及び金ワイヤ23を樹脂24により樹脂封止する(ステップS10)。
【0026】
次に、図14に示すように、電界めっきにより、Cuからなる外部リード22の表面にNi/Pd/Au積層のめっき膜25を形成する(ステップS11)。また、外部リード22を成型する。最後に、製造された磁気メモリチップ装置のテストを行う(ステップS12)。
【0027】
以上説明したように、本実施の形態では、アセンブリ段階の途中においてシリコンよりも透磁率が高い物質からなるNiFe板16をウェハ11の裏面に貼り付けている。これにより、外部からの磁力線はNiFe板16を主に通り、シリコンからなるMRAMチップ12を通る磁力線の量を減らすことができる。従って、その後のアセンブリ段階において外部磁場からMRAMチップ12を保護することができる。具体的には、ダイシング装置、ダイボンド装置及びワイヤボンド装置により発生した外部磁場からMRAMチップ12を保護することができる。このため、これらの製造装置として外部磁場を防ぐ対策をした特別なものを用意する必要がなく、一般的な製造装置を用いることができる。ただし、バックグラインド装置には外部磁場を防ぐ対策をするのが有効である。
【0028】
また、電界めっきでは外部磁界の影響が特に問題となるが、既にMRAMチップ12にNiFe板16を貼り付けているため、外部磁場からMRAMチップ12を保護することができる。ただし、予めめっき膜を形成したリードフレームを用いれば、樹脂封止後の電界めっきが不要になるため、より好ましい。
【0029】
上記の例ではQFP(Quad Flat Package)型パッケージの場合について説明したが、これに限らず、図15に示すようなBGA(Ball Grid Array)型パッケージにも本実施の形態を適用することができる。この場合、NiFe板16を貼り付けたMRAMチップ12を配線基板26上に搭載する。そして、配線基板26の下面に半田ボール27を形成する。
【0030】
また、NiFe板16の厚さが100μmの場合について説明したが、これに限らずNiFe板16の厚さが50μm以上であれば外部磁場からMRAMチップ12を保護することができる。ただし、NiFe板16の厚さが100μm以上であることが好ましい。このような厚いNiFe板16を前工程でウェハ11に成膜すると、その応力によりウェハ11が反るという問題がある。しかし、本実施の形態ではウェハ11上に、MRAMチップ12を形成後、後工程において別体として形成されたNiFe板16をウェハ11に貼り付けるため、このような問題は極力低減できる。
【0031】
また、ダイアタッチフィルム17の厚さは10μm以上であることが好ましい。これにより、MRAMチップ12とNiFe板16との熱膨張係数の差による応力をダイアタッチフィルム17が緩和することができる。一方、ダイアタッチフィルム17の厚さは40μm以下であることが好ましい。これにより、MRAMチップ12とNiFe板16との距離が縮まるため、外部磁場に対するシールド効果が大きくなる。
【0032】
なお、熱膨張係数差による応力を緩和するために、NiFe板16とMRAMチップ12との間にシリコンダミーチップを設けても良い。また、別の半導体チップをMRAMチップ12上にフリップチップ接続させてもよい。また、NiFe板16の代わりに、外乱磁場対策処理を施したベースSiなどの材料をSOIのように接合してもよい。また、書き込んだ情報を保護するため、MRAMチップ12にプログラム・救済情報を書き込んだ後の工程は300℃以下の低温プロセスとするのが好ましい。ただし、磁場アニールのプロセス温度以下とするのがより好ましい。
【0033】
また、NiFe板16をMRAMチップ12の表面に貼り付けてもよい。この場合、ダイアタッチフィルム15及びNiFe板16は、MRAMチップ12表面のワイヤボンドパッドの位置に開口を設けるか、又は板状に長くすることで、ワイヤボンドパッドを避けて貼り付ける必要がある。ただし、以後のダイシング工程での水圧等でダイアタッチフィルム17が剥がれない程度の接着強度が必要である。
【0034】
実施の形態2.
本発明の実施の形態2に係る磁気メモリチップ装置の製造方法について図16に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、実施の形態1と同様にステップS5までの工程を行う。次に、図17に示すようにウェハ11をダイアタッチフィルム31に貼り付け、ダイシングブレード18を用いてMRAMチップ12ごとにウェハ11をダイシングする(ステップS7)。その後、洗浄を行う。
【0035】
次に、図18に示すように、NiFe板16をダイアタッチフィルム32に貼り付け、個片化する。そして、ダイシングしたウェハ11の個々のMRAMチップ12上に、ダイボンドヘッド33を用いて、個片化したNiFe板16をダイアタッチフィルム32を介して貼り付ける(ステップS13)。この際、図19に示すように、MRAMチップ12のワイヤボンドパッド34にNiFe板16が接触しないようにする。
【0036】
次に、図20に示すように、ダイボンドピックアップコレット35を用いて、積層したMRAMチップ12及びNiFe板16ごとにピックアップして、リードフレーム又は配線基板上にダイアタッチフィルム31を介してダイボンドする(ステップS8)。150℃に加熱してダイアタッチフィルム31,27を硬化させる。
【0037】
その後、実施の形態1と同様にステップS9〜S12の工程を行う。なお、リードフレーム又は配線基板に予めNiFe板を貼り付け、その上にNiFe板を貼り付けたMRAMチップを貼り付けてサンドイッチ構造にしてもよい。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態では、アセンブリ段階の途中においてシリコンよりも透磁率が高い物質からなるNiFe板16をウェハ11の裏面に貼り付けている。これにより、その後のアセンブリ段階において外部磁場からMRAMチップ12を保護することができる。具体的には、ダイボンド装置及びワイヤボンド装置により発生した外部磁場からMRAMを保護することができる。このため、これらの製造装置として外部磁場を防ぐ対策をした特別なものを用意する必要がなく、一般的な製造装置を用いることができる。ただし、バックグラインド装置、ダイシング装置、及びウェハに個片化したNiFe板を貼り付けるダイボンド装置には外部磁場を防ぐ対策をする必要がある。
【0039】
実施の形態3.
本発明の実施の形態3に係る磁気メモリチップ装置の製造方法について図21に示すフローチャートを参照しながら説明する。まず、実施の形態1と同様にステップS5までの工程を行う。次に、MRAMチップ12ごとにウェハ11をダイシングし(ステップS7)、図22に示すようにMRAMチップ12を配線基板26上にダイボンドする(ステップS8)。なお、MRAMチップ12をリードフレーム上にダイボンドしてもよい。
【0040】
次に、図23に示すように、個々のMRAMチップ12上に、個片化したNiFe板16を貼り付ける(ステップS14)。この際、MRAMチップ12のワイヤボンドパッドにNiFe板16が接触しないようにする。その後、実施の形態1と同様にステップS9〜S12の工程を行う。なお、リードフレーム又は配線基板に予めNiFe板を貼り付け、その上にNiFe板を貼り付けたMRAMチップを貼り付けてサンドイッチ構造にしてもよい。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態では、アセンブリ段階の途中においてシリコンよりも透磁率が高い物質からなるNiFe板16をウェハ11の裏面に貼り付けている。これにより、その後のアセンブリ段階において外部磁場からMRAMチップ12を保護することができる。具体的には、ワイヤボンド装置によりスパーク等で発生した外部磁場からMRAMを保護することができる。このため、ワイヤボンド装置として外部磁場を防ぐ対策をした特別なものを用意する必要がなく、一般的な製造装置を用いることができる。ただし、バックグラインド装置、ダイシング装置及びダイボンド装置には外部磁場を防ぐ対策をする必要がある。
【符号の説明】
【0042】
11 ウェハ(シリコンウェハ)
12 チップ(磁気メモリチップ)
15 ダイアタッチフィルム
16 NiFe板(高透磁率板)
17,31 ダイアタッチフィルム(接着層)
21 ダイパッド(リードフレーム)
26 配線基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主面に磁気メモリ素子および複数のワイヤボンドパッドが形成された磁気メモリチップを準備する工程と、
シリコンより高透磁率を有する第1の磁気シールド板を前記磁気メモリチップの主面に搭載する工程と、
前記磁気メモリチップをリードフレームのダイパッド上に搭載する工程と、
前記磁気メモリチップの前記ワイヤボンドパッドと前記リードフレームのリードとをワイヤで電気的に接続する工程と、
前記磁気メモリチップ、前記磁気シールド板、前記ワイヤ及び前記リードの一部を樹脂により封止する工程とを有し、
前記磁気メモリチップを準備する工程は、
複数の磁気メモリチップを有するシリコンウェハを準備する工程と、
前記シリコンウェハの裏面を研削することにより前記シリコンウェハを所定の厚さまで薄くする工程と、
前記所定の厚さまで薄くされたシリコンウェハの裏面に、ダイアタッチフィルムを張り付けた後に、前記シリコンウェハをダイシングすることによって、各々が前記ダイアタッチフィルムをその裏面に有する複数の磁気メモリチップを形成する工程とを有し、
前記磁気メモリチップをリードフレームのダイパッド上に搭載する工程は、前記ダイアタッチフィルムにより前記磁気メモリチップを前記ダイパッドに接着する工程を有する磁気メモリチップを有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記磁気メモリチップの裏面側に、更に、前記第1の磁気シールド板と異なる、第2の磁気シールド板を形成する請求項1に記載の磁気メモリチップを有する半導体装置の製造方法。
【請求項1】
主面に磁気メモリ素子および複数のワイヤボンドパッドが形成された磁気メモリチップを準備する工程と、
シリコンより高透磁率を有する第1の磁気シールド板を前記磁気メモリチップの主面に搭載する工程と、
前記磁気メモリチップをリードフレームのダイパッド上に搭載する工程と、
前記磁気メモリチップの前記ワイヤボンドパッドと前記リードフレームのリードとをワイヤで電気的に接続する工程と、
前記磁気メモリチップ、前記磁気シールド板、前記ワイヤ及び前記リードの一部を樹脂により封止する工程とを有し、
前記磁気メモリチップを準備する工程は、
複数の磁気メモリチップを有するシリコンウェハを準備する工程と、
前記シリコンウェハの裏面を研削することにより前記シリコンウェハを所定の厚さまで薄くする工程と、
前記所定の厚さまで薄くされたシリコンウェハの裏面に、ダイアタッチフィルムを張り付けた後に、前記シリコンウェハをダイシングすることによって、各々が前記ダイアタッチフィルムをその裏面に有する複数の磁気メモリチップを形成する工程とを有し、
前記磁気メモリチップをリードフレームのダイパッド上に搭載する工程は、前記ダイアタッチフィルムにより前記磁気メモリチップを前記ダイパッドに接着する工程を有する磁気メモリチップを有する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記磁気メモリチップの裏面側に、更に、前記第1の磁気シールド板と異なる、第2の磁気シールド板を形成する請求項1に記載の磁気メモリチップを有する半導体装置の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2012−256906(P2012−256906A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−166714(P2012−166714)
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【分割の表示】特願2009−501206(P2009−501206)の分割
【原出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月27日(2012.7.27)
【分割の表示】特願2009−501206(P2009−501206)の分割
【原出願日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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