説明

空気流量測定装置の劣化判定装置及び劣化判定方法

【課題】より正確にAFM3の汚損による特性劣化を判定するAFM劣化判定装置1を提供する。
【解決手段】AFM劣化判定装置1は、判定時に、内燃機関の運転状態を、空気流量が所定の流量以上となる高流量域(汚損判定可能流量域)の所定流量となる運転状態に維持して、その運転状態におけるAFM3の測定流量から測定誤差を算出し、測定誤差に基づいて特性劣化の度合を判定している。これによれば、AFM3の測定誤差によって、汚損劣化に起因する測定誤差の度合を判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱式空気流量測定装置の劣化判定装置及び劣化判定方法に関する。特に、熱式空気流量測定装置の汚損による特性劣化を判定する劣化判定装置及び劣化判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンに吸入される空気流量を測定する熱式空気流量測定装置(以下、AFMと呼ぶ)において、汚損による特性劣化が問題となっている。
そこで、特許文献1には、AFMに付着した付着物を所定走行距離が経る毎に除去する手段を備え、汚損を防いでいるAFMが開示されている。
しかしながら、このAFMでは、AFMの特性劣化を診断していないため、AFMが汚損し特性劣化を生じているにも関わらず、付着物の除去が実行されない等の不具合が発生する可能性がある。
すなわち、汚損による特性劣化の度合を判定し、その度合に応じて適切な処置が施されることが好ましい。
【0003】
なお、特許文献2には、AFMの異常判断装置として、AFMからの出力レベルが予め定められた出力レベルか否かによってAFMの異常を判断する判断手段と、バッテリーからAFMに印加される電圧変動を把握する電圧変動把握機能と、電圧変動が把握されると、予め定められた条件を満たしたか否かを判断し、該条件を満たしたと判断した際に、判断機能に判断を開始するよう指示する判断制御機能とを備えたものが開示されている。
この異常判断装置では、電源電圧の変動による異常誤判断は避けられるものの、空気流量のばらつきにより誤判断される可能性がある。
【0004】
また、特許文献3には、AFMの測定誤差によりAFMの異常を判断するに際し、脈動による流量変動を考慮してAFMの測定誤差を補正する手段が開示されている。しかしながら、流量変動の要因となるものは、回転数とエンジントルクだけではなく、関連コンポーネント(EGR弁、スロットル弁、ターボチャージャー、可変吸気機構等の空気流量に影響を与えるコンポーネント)の運転状態もあるが、これらの運転状態については考慮されていない。
AFMの測定誤差をより正確に把握するためには、空気流量をより安定した状態にする必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−174325号公報
【特許文献2】特許第3075877号公報
【特許文献3】特開2000−97101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、より正確にAFMの汚損による特性劣化を判定するAFM劣化判定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔請求項1の手段〕
請求項1のAFM劣化判定装置は、車両のメンテナンス時に、内燃機関に吸入される空気流量を測定する熱式空気流量測定装置(以下、AFM)の特性劣化を判定するものであって、判定時に、内燃機関の運転状態を所定の運転状態にする制御手段と、所定の運転状態におけるAFMの測定誤差を所定の判定値と比較することによって特性劣化の度合を判定する判定手段とを備える。
【0008】
AFMは、汚損によりその特性が劣化する、すなわち測定誤差が大きくなることが知られている。なお、AFMの測定誤差は、汚損劣化に起因するものだけではなく、他の要因に起因するものが含まれている。
他の要因に起因する測定誤差には、例えば、AFM自体の初期ばらつき、空気流量に影響を与える関連コンポーネントの初期ばらつき、通常劣化(関連コンポーネントの通常劣化や、AFMの樹脂部品や電子部品の熱劣化(すなわち、汚損以外によるAFMの通常劣化))に起因する測定誤差がある。
なお、関連コンポーネントとは、吸気ダクト、ターボチャージャー、スロットル弁、EGR弁等、空気流量のばらつきに影響を与えると一般的にされているものである。
【0009】
ここで、AFMの汚損劣化に起因する測定誤差は、いかなる運転状態においても他の要因に起因する測定誤差と区別することができるわけではなく、所定の運転状態において、AFMの汚損劣化に起因する測定誤差と他の要因に起因する測定誤差とを区別できる場合がある。
【0010】
その場合、このAFM劣化判定装置では、内燃機関の運転状態を所定の運転状態にし、その運転状態におけるAFMの測定誤差をみることで、汚損劣化に起因する測定誤差の有無を判定することができ、汚損による特性劣化の度合を判定することができる。
また、判定時には、内燃機関が所定の運転状態にされるため、空気流量が安定した状態でAFMの測定誤差を検出することができ、より正確な劣化判定をすることができる。
【0011】
〔請求項2の手段〕
請求項2のAFM劣化判定装置によれば、制御手段は、内燃機関に吸入される空気流量を所定の流量とすることで、所定の運転状態にする。
これは、運転状態を所定の運転状態にするための一手段である。
【0012】
〔請求項3、4の手段〕
請求項3のAFM劣化判定装置によれば、制御手段は、内燃機関の回転数を所定の回転数にすることにより、内燃機関の運転状態を所定の運転状態にする。
請求項4のAFM劣化判定装置によれば、制御手段は、アクセル開度、または、スロットル開度、または、燃料噴射量、または、インマニ圧力値を所定値にすることによって、内燃機関の運転状態を所定の運転状態にする。
これらは、空気流量を所定の流量にするための一手段である。これらによれば、空気流量が安定した状態でAFMの測定誤差を検出することができ、測定誤差による劣化判定をより正確にすることができる。
【0013】
〔請求項5、6の手段〕
請求項5のAFM劣化判定装置によれば、ガソリン車のAFMが判定対象である場合、制御手段は、スロットル開度を制御することにより、内燃機関の回転数を所定の回転数に合わせこむ。
請求項6のAFM劣化判定装置によれば、ディーゼル車のAFMが判定対象である場合、制御手段は、燃料噴射量を制御することにより、内燃機関の回転数を所定の回転数に合わせこむ。
これらは、回転数を所定回転数にするための一手段である。
【0014】
〔請求項7〜11の手段〕
回転数を所定の回転数にする等によって、空気流量の安定化を図っても、空気流量に影響を与える要因の状態によって、空気流量がばらつくことがある。
そこで、請求項7〜11の手段では、判定時に、回転数を所定の回転数にする等によって空気流量の安定化を図ると共に、空気流量に影響を与える要因を所定の状態にしている。これにより、さらに空気流量が安定した状態でAFMの測定誤差を検出することができ、測定誤差による劣化判定をより正確にすることができる。以下、請求項7〜11の手段について具体的に説明する。
【0015】
〔請求項7の手段〕
請求項7のAFM劣化判定装置は、可変バルブタイミング機構を装着している車両のAFMが判定対象であり、判定時に、進角量が所定量に固定された状態となるように可変バルブタイミング機構を制御するバルブ制御手段を備える。
可変バルブタイミング機構(可変吸気バルブタイミング機構、可変排気バルブタイミング機構)、もしくは可変バルブリフト量制御機構、もしくはその両方の機構を装着している車両では、進角量やバルブリフト量によって、内燃機関に吸入される空気流量が変化する。このため、判定時に進角量もしくはバルブリフト量もしくはその両方を所定の条件に固定することによって、より空気流量が安定した状態でAFMの測定誤差を検出することができ、測定誤差による劣化判定をより正確にすることができる。
【0016】
〔請求項8の手段〕
請求項8のAFM劣化判定装置は、スロットル弁を装着している車両のAFMが判定対象であり、判定時に、スロットル開度が所定開度に固定された状態、または、全開に固定された状態となるようにスロットル弁を制御するスロットル制御手段を備える。
ディーゼル車において、スロットル弁を装着している場合には、このスロットル弁のスロットル開度によって、内燃機関に吸入される空気流量がばらつく。このため、判定時にスロットル開度を固定することによって、より空気流量が安定した状態でAFMの測定誤差を検出することができ、測定誤差による劣化判定をより正確にすることができる。
【0017】
〔請求項9の手段〕
請求項9のAFM劣化判定装置は、EGR弁を装着している車両のAFMが判定対象であり、判定時に、EGR弁の弁開度が所定開度に固定された状態、または、全閉に固定された状態となるようにEGR弁を制御するEGR弁制御手段を備える。
EGR弁を装着している車両では、EGR弁の弁開度によって、内燃機関に吸入される新気空気流量がばらつく。このため、判定時にEGR弁の弁開度を固定することによって、より新気空気流量が安定した状態でAFMの測定誤差を検出することができ、測定誤差による劣化判定をより正確にすることができる。
【0018】
〔請求項10の手段〕
請求項10のAFM劣化判定装置は、ターボチャージャーを装着している車両のAFMが判定対象であり、判定時に、ウエストゲートバルブ開度または可変ノズルベーンが所定の状態となるようにターボチャージャーを制御するターボチャージャー制御手段を備える。
ターボチャージャーを装着している車両では、過給圧が変化すると内燃機関に吸入される空気流量が変化する。このため、判定時にウエストゲートバルブ開度または可変ノズルベーンを固定することによって、より空気流量が安定した状態でAFMの測定誤差を検出することができ、測定誤差による劣化判定をより正確にすることができる。
【0019】
〔請求項11の手段〕
請求項11のAFM劣化判定装置は、判定時に、オルタネータの作動状態を所定の状態に制御する電気負荷制御手段を備える。
オルタネータの作動状態は、運転状態に影響を与えるものであるため、判定時にオルタネータの作動状態を所定の状態にすることによって、より空気流量が安定した状態でAFMの測定誤差を検出することができ、測定誤差による劣化判定をより正確にすることができる。
【0020】
〔請求項12の手段〕
請求項12のAFM劣化判定装置は、内燃機関が暖機状態にあるか否かを判断し、暖機状態であると判断した場合に、判定開始の指令を出す判定開始判断手段を備える。
エンジンルームの温度や吸気ダクト内の空気の温度が安定していない場合、空気流量は変動する。そこで、暖機状態となってから判定を開始することによって、より空気流量が安定した状態でAFMの測定誤差を検出することができ、測定誤差による劣化判定をより正確にすることができる。
【0021】
〔請求項13の手段〕
請求項13のAFM劣化判定装置は、前回メンテナンス時期と、前回メンテナンスの際のAFMの測定誤差(前回測定誤差)とを記憶する記憶手段と、今回メンテナンス時期、今回メンテナンスでのAFMの測定誤差(今回測定誤差)、前回メンテナンス時期、および前回測定誤差に基づき、所定の判定値を算出する判定値算出手段とを備える。
これによれば、車両のばらつきを考慮し、車両毎に判定値を定めることができる。例えば、AFMの劣化が早い(早く汚損している)車両の場合は、今回メンテナンスでの判定値を厳しくし、その厳しい判定値に基づいて対応をとることで、車両の不具合が出にくくなるようにすることができる。
【0022】
〔請求項14の手段〕
請求項14のAFM劣化判定装置によれば、今回メンテナンス時期、今回測定誤差、前回メンテナンス時期、および前回測定誤差とに基づき、次回メンテナンスの推奨時期を算出する次回メンテナンス時期算出手段を備える。
これによれば、車両のばらつきを考慮し、車両毎に次回メンテナンス時期を定めることができる。例えば、AFMの劣化が早い(早く汚損している)車両の場合は、次回メンテナンス時期を早めて、車両の不具合が出にくくなるようにすることができる。
【0023】
〔請求項15の手段〕
請求項15のAFM劣化判定装置は、AFMの測定流量を、空気の温度及び圧力により補正する補正手段を備え、補正後の測定流量に基づきAFMの測定誤差を算出する。
空気の温度や圧力が異なる場所では、同じ回転数であっても、内燃機関への吸入質量流量が変化するため、内燃機関が吸入する空気流量が変わる。
そこで、例えば、AFMの測定誤差が、AFMの測定流量と、ある回転数での基準流量との差分に基づいて算出される場合、AFMの測定流量を空気の温度及び圧力により補正することにより、高地や高温、低温環境下でも正確な劣化判定をすることができる。
【0024】
〔請求項16の手段〕
請求項16のAFM劣化判定装置によれば、空気の温度及び圧力は、インテークマニホールドで測定されたものである。
インテークマニホールドには、既に、空気の温度及び圧力を検出するセンサが装着されている場合が多い。そのため、空気の温度及び圧力を測定するセンサを追加して設けることなく、AFMの測定流量を補正することができる。
【0025】
〔請求項17の手段〕
請求項17のAFM劣化判定装置によれば、車両に搭載されたECU、および、ECUに外部から接続されるサービスツールの少なくとも一方が、制御手段と判定手段としての機能を有する。
つまり、ECUまたはサービスツールのいずれか一方が、制御手段及び判定手段の両方の機能を有していてもよいし、ECUとサービスツールのいずれか一方が制御手段としての機能を有し、ECUとサービスツールのいずれか他方が判定手段としての機能を有していてもよい。また、ECUとサービスツールとの両方によって制御手段と判定手段としての機能を達成してもよい。
AFM劣化判定装置は、車両のメンテナンス時にAFMの劣化を判定するものであるため、ECUやサービスツールを制御手段と判定手段として機能させるならば、AFM劣化判定装置の構成をシンプルにすることができる。
【0026】
〔請求項18の手段〕
請求項18のAFM劣化判定方法は、車両のメンテナンス時に、内燃機関に吸入される空気流量を測定するAFMによる測定誤差によってAFMの特性劣化の度合を判定する判定手段を備えるAFM劣化判定装置を用いた劣化判定方法であって、判定時に、手動によって所定のアクセル開度を保ち、所定のアクセル開度を保った状態におけるAFMによる測定誤差によって特性劣化の度合を判定する。
これにより、請求項1〜3と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】AFMを搭載する内燃機関(ディーゼルエンジン)及び周辺装置を表す概略図である(実施例1)。
【図2】AFM劣化判定装置の基本的構成を示すブロック図である(実施例1、実施例2、実施例4)。
【図3】汚損判定可能流量域、および、判定値について説明する図である(実施例1)。
【図4】AFMを搭載する内燃機関(ガソリンエンジン)及び周辺装置を表す概略図である(実施例4)。
【図5】洗浄実施有無判定値を説明する図である(実施例5)。
【発明を実施するための形態】
【0028】
実施形態のAFM劣化判定装置は、車両のメンテナンス時に、内燃機関に吸入される空気流量を測定する熱式空気流量測定装置(以下、AFM)の特性劣化を判定するものであって、判定時に、内燃機関の運転状態を、所定の運転状態にする制御手段と、所定の運転状態におけるAFMの測定誤差を所定の判定値と比較することによって特性劣化の度合を判定する判定手段とを備える。
【0029】
具体的には、制御手段により内燃機関の回転数を所定の回転数にした運転状態で、判定を開始し、その運転状態におけるAFMの測定誤差を所定の判定値と比較することによって特性劣化の度合を判定する。
【実施例】
【0030】
〔実施例1の構成〕
実施例1のAFM劣化判定装置1の構成を、図1〜3を用いて説明する。
AFM劣化判定装置1は、車両のメンテナンス時に、内燃機関2に吸入される空気流量を測定する熱式空気流量測定装置(以下、AFM3)の特性劣化度合を判定する装置である。
実施例1では、ディーゼルエンジン搭載車両に装着されたAFM3を異常検出の対象としている。このディーゼルエンジン搭載車両は、スロットル弁4、ターボチャージャー5、EGR弁6を装着している。
【0031】
そして、吸気通路9には、上流側から、AFM3、ターボチャージャー5のコンプレッサ10、スロットル弁4、EGR弁6が順に設けられている。また、排気通路11には、上流側から、ターボチャージャー5のタービン12、触媒13が順に設けられている。
AFM3は、流量を検出する検出部、検出部の入出力を制御する電子回路等により構成される周知のセンサである。
【0032】
AFM劣化判定装置1は、ECU20と、メンテナンス時にECU20に接続される外部接続機器(サービスツール21)とを含んで構成される。
ECU20(電子制御ユニット)は、CPU、記憶装置(ROM、RAM等のメモリ)を含んで構成され、記憶装置に記憶された制御プログラムと各種アクチュエータの状態を検出するセンサ(各種アクチュエータ状態検出センサ)からのセンサ出力に応じて、各種アクチュエータの制御を行う。
【0033】
なお、本実施例のECU20は、エンジンECUであって、燃料ポンプ23、燃料噴射弁24、スロットル弁4、EGR弁6、ターボチャージャー5等の駆動を制御する。
サービスツール21は、マイクロコンピュータを主体として構成されており、ECU20と接続された状態において、ECU20と双方向に通信可能である。
【0034】
AFM劣化判定装置1は、判定時に、内燃機関2の運転状態を、空気流量が所定の流量となる所定の運転状態(例えば、AFM3がボビン式AFMの場合は、空気流量が所定の流量以上となる高流量の所定の運転状態)にし、所定の運転状態におけるAFM3の測定誤差を所定の判定値と比較することによって、汚損による特性劣化の度合を判定する。
【0035】
ここで、所定の流量とは、汚損劣化に起因する測定誤差と他の要因に起因する測定誤差とを区別することの可能な流量のことを指す。
以下に、所定の流量で、汚損劣化に起因する測定誤差と他の要因に起因する測定誤差とが区別可能になる点について説明する。
【0036】
AFM3は、汚損によりその特性が劣化する、すなわち測定誤差が大きくなることが知られている。なお、AFM3の測定誤差は、汚損劣化に起因するものだけではなく、他の要因に起因するものが含まれている。
他の要因に起因する測定誤差には、例えば、AFM3自体の初期ばらつき、空気流量に影響を与える関連コンポーネントの初期ばらつき、通常劣化(関連コンポーネントの通常劣化や、AFM3の樹脂部品や電子部品の熱劣化(すなわち、汚損以外によるAFM3の通常劣化))に起因する測定誤差がある。
なお、関連コンポーネントとは、吸気ダクト26(インテークマニホールド26aを含む)、ターボチャージャー5、スロットル弁4、EGR弁6等、空気流量のばらつきに影響を与えると一般的にされているものである。
【0037】
そして、AFM3の汚損劣化に起因する測定誤差は、例えば、AFM3がボビン式AFMの場合、流量が所定流量以上となる高流量域で大きく現れる。すなわち、流量が小さい領域では、AFM3の汚損劣化に起因する測定誤差は小さく、他の要因に起因する測定誤差に埋もれてしまい、区別ができない。しかし、高流量域では、AFM3の汚損劣化に起因する測定誤差が大きく現れるため、他の要因に起因する測定誤差と区別することができる。
【0038】
さらに、図3を用いて、所定の流量以上で、汚損劣化に起因する測定誤差が他の要因に起因する測定誤差と区別可能になる点をさらに具体的に説明する。
図3は、流量に対する測定誤差の排気ガス規制基準での許容レベル(以下、NG誤差レベルと呼ぶ。図3の破線参照)と、NG誤差レベルよりも厳しく設定された判定に用いる判定基準での許容誤差レベル(以下、OK誤差レベルと呼ぶ。図3の実線参照)を示したものである。
【0039】
本実施例では、所定運転状態(例えば所定エンジン回転数)での基準流量Qstと、所定運転状態でのAFM3による測定流量Qmとの誤差を測定誤差としている(測定誤差=|Qm−Qst|/Qst×100)。なお、AFM3がボビン式AFMの場合、Qm−Qstは負の値となる。
【0040】
AFM3がボビン式AFMの場合、流量が大きくなるにつれて、測定誤差は大きくなる。そのため、NG誤差レベル及びOK誤差レベルも、流量が大きくなるほど大きくなるように定められている。
例えば、このOK誤差レベルをもとに、測定誤差を判定すると、低流量域では、汚損劣化に起因する測定誤差があったとしても、他の要因に起因する測定誤差のオーダーに入ってしまい汚損劣化に起因する測定誤差を区別することができない。
【0041】
すなわち、実験的・経験的に、他の要因に起因する測定誤差のオーダーは分かっており、Dk以上の測定誤差に関しては、汚損に起因する誤差であると区別可能であることが分かっている。このため、OK誤差レベルをもとに測定誤差を判定する場合には、Dk以上の測定誤差が出現する流量Qkよりも大きい流量でなければ、汚損劣化に起因する測定誤差を区別することができない。言い換えると、流量Qkよりも大きい流量で出現する測定誤差の大きさをみれば、汚損劣化に起因する測定誤差の度合がわかり、汚損劣化の度合を判定することが可能となる。
【0042】
なお、実際のメンテナンスでは、流量の運転によるばらつきを考慮して、Qkよりも大きめの流量Qk´を基準として、Qk´よりも高流量域を、汚損劣化に起因する測定誤差の区別可能な流量範囲(汚損判定可能流量域)としている。
なお、Qk´は、Qkでの流量のばらつきに対応するOK誤差レベルのグラフ上での測定誤差のばらつきΔE分を測定誤差Dkに加算した測定誤差Dk´が出現する流量である。
そして、例えば、汚損判定可能流量域内の所定流量(例えばQa)に運転状態を維持して、判定を開始する。なお、定格流量の7割以上の流量であれば、殆どの場合、流量Qk´以上の汚損判定可能流量域に入ると経験上分かっている。
【0043】
〔劣化判定について〕
以下に、AFM劣化判定装置1の構成、および、特性劣化度合の判定について詳しく説明する。
ECU20は、本発明の制御手段(噴射量制御手段)、スロットル制御手段、EGR弁制御手段、ターボチャージャー制御手段、記憶手段としての機能を備え、運転状態指令部31、前回メンテナンス時期・前回誤差値記憶部32、センサ出力−物理量変換部33等を有する。
【0044】
サービスツール21は、本発明の判定手段、判定値算出手段、次回メンテナンス時期算出手段、補正手段としての機能を有し、判定開始信号出力部35、流量補正部36、測定誤差算出部37、判定値計算部38、判定部39、次回推奨メンテナンス時期見積り部40、判定結果・次回メンテナンス時期表示及び書き込み部41、判定終了信号出力部42等を有する。
【0045】
判定開始信号出力部35は、作業者がサービスツール21をECU20に接続し、入力手段により判定開始の入力をすると、判定開始信号をECU20に出力する。
【0046】
運転状態指令部31は、判定開始信号が入力されると、各種アクチュエータ(燃料噴射弁24、スロットル弁4、EGR弁6、ウエストゲートバルブ5a)のコントローラに制御信号を出力し、各種アクチュエータを所定の運転状態に制御する。すなわち、各種アクチュエータ状態検出センサのセンサ出力をもとに、各種アクチュエータが所定の運転状態になるよう制御する。
【0047】
本実施例では、サービスツール21から判定開始信号がECU20に送られると、ECU20からの制御信号によって、所定のエンジン回転数を得るための噴射量を噴射するように燃料噴射弁24が制御される。例えば、所定のエンジン回転数となるように、噴射量が制御される。
【0048】
また、スロットル弁4が、スロットル開度を所定開度に固定した状態、または、全開に固定した状態となるように制御される。
そして、EGR弁6は、弁開度を所定開度に固定した状態、または、全閉に固定した状態となるように制御される。
また、ターボチャージャー5のウエストゲートバルブ5aは、弁開度が所定の状態となるように制御される。
なお、EGR弁6が全閉となるように制御されている場合は、ウエストゲートバルブ5aを開けて、所定の開度に固定した状態となるように制御する。EGR弁6が全閉となると、新気流量が多くなるため、過給圧を抑えてターボチャージャー5の過回転を防ぐためである。
【0049】
そして、各種アクチュエータが所定の運転状態になったら、AFM3からのセンサ出力が物理量(流量)に変換され(センサ出力−物理量変換部33)、AFM3の測定流量がサービスツール21に送られる。
このとき、インテークマニホールド26aに装着されている吸気温センサ44及び吸気圧センサ45のセンサ出力もセンサ出力−物理量変換部33により、温度及び圧力に変換され、サービスツール21に送られる。
【0050】
流量補正部36は、AFM3の測定流量を空気の温度及び圧力に応じて補正する。すなわち、吸気温センサ44及び吸気圧センサ45で測定された温度及び圧力に基づいて、AFM3の測定流量を基準温度、定置(海抜0mまたは所定海抜)での基準圧力(大気圧)における流量に換算する補正をする。そして、補正後の測定流量が今回メンテナンスで用いるAFM3の測定流量Qmとなる。
【0051】
次に、測定誤差算出部37は、所定エンジン回転数での基準流量Qstと、流量補正部36で補正された測定流量Qmとから、測定誤差(今回測定誤差Dmt)を算出する。
ここで、Qstとは、所定エンジン回転数での基準流量であり、例えば、予めサービスツール21に値が記憶されている。なお、所定エンジン回転数にしても、実際には、インマニ圧のばらつきの影響で、真の流量はQstとはならない。そこで、所定エンジン回転数での真の流量をQaとして図3に示している。なお、Qaは上述の汚損判定可能流量域内にある。
【0052】
前回メンテナンス時期・前回誤差値記憶部32は、前回メンテナンス時期Tb及び前回メンテナンス時のAFM3の測定誤差(以下、前回測定誤差Dmb)を記憶している。
そして、この前回メンテナンス時期・前回誤差値記憶部32で記憶された前回メンテナンス時期Tb及び前回測定誤差Dmbはサービスツール21に入力される。
そして、判定値計算部38において、前回メンテナンス時期Tb、前回測定誤差Dmb、今回のメンテナンス時期Tt、今回測定誤差Dmtに基づき、今回の判定で用いる所定の判定値(OK判定値)が算出される。
【0053】
判定値計算部38では、例えば、前回メンテナンス時期Tb、前回測定誤差Dmb、今回のメンテナンス時期Tt、今回測定誤差Dmtを用いて特性劣化速度を算出し、特性劣化速度から次回メンテナンス時期までに増加するであろうと推測される測定誤差(推測増加誤差)を算出する。なお、特性劣化速度は、例えば、(Dmt−Dmb)/(Tt−Tb)で算出される。
【0054】
そして、予め記憶されているNG誤差レベル(図3破線参照)から、推測増加誤差分の余裕を持たせてOK誤差レベル(図3実線参照)が設定される。なお、このOK誤差レベルは、判定に用いる判定基準での許容誤差レベルであり、交換等の措置をするかどうかの基準となるレベルのことである。
【0055】
なお、OK誤差レベルのグラフに照らせば、流量QaでのOK誤差レベル(Da)を今回測定誤差Dmtと比較するOK判定値として用いるべきであるが、流量Qaは運転のばらつきによってばらつくため、この流量のばらつきを考慮して、Daよりも小さいDa´を本実施例でのOK判定値としている。
【0056】
すなわち、所定のエンジン回転数等に制御した場合でも、エンジン状態や環境のばらつきによってインマニ圧がばらつくため、流量がばらつく。そして、流量が少ない方にばらついた場合、OK誤差レベルのグラフに照らせば、本来Daよりも小さい誤差値で判定しなければならないのに、Daで判定することになり、判定が甘くなってしまう。そこで、その流量のばらつき分を考慮して、ΔE分だけDaよりも小さい誤差値Da´をOK判定値としている。
【0057】
次に、判定部39にて、OK判定値(Da´)と今回測定誤差Dmtとを比較し、汚損による特性劣化度合を判定する。例えば、今回測定誤差DmtがOK判定値よりも大きい場合は、AFM3の汚損度合が進んでおり、「要措置レベル」と判定する。「要措置レベル」とは、AFM3の洗浄または交換等の措置が必要と考えられる汚損度合であるとする判定結果である。
【0058】
次回推奨メンテナンス時期見積り部40は、判定値の算出に用いた特性劣化速度に基づいて、次回メンテナンス時期として推奨される時期を算出する。
次に、判定結果・次回メンテナンス時期表示及び書き込み部41が、サービスツール21のディスプレイ等に、判定部39からの判定結果と、次回推奨メンテナンス時期見積り部40で算出された次回推奨メンテナンス時期とを表示させる。また、今回のメンテナンス時期Tt、今回測定誤差Dmtを、新たな前回メンテナンス時期Tb、前回測定誤差Dmbとして、前回メンテナンス時期・前回誤差値記憶部32に書き込む。
【0059】
そして、サービスツール21の入力手段により作業者が判定終了の入力をすると、判定終了信号出力部42が判定終了信号をECU20に出力する。運転状態指令部31は、この判定終了信号を受けて、各種アクチュエータを所定運転状態から解除するように制御する。
【0060】
〔実施例1の作用効果〕
実施例1のAFM劣化判定装置1は、判定時に、内燃機関の運転状態を、空気流量が所定の流量となる所定の運転状態にし、所定の運転状態におけるAFM3の測定誤差を所定の判定値と比較することによって特性劣化の度合を判定する。
すなわち、内燃機関2の運転状態を汚損判定可能流量域の所定流量(実施例では流量Qa)となる運転状態に維持して、その運転状態におけるAFM3の測定流量から測定誤差Dmtを算出し、測定誤差Dmtに基づいて特性劣化の度合を判定している。
これによれば、AFM3の測定誤差Dmtによって、汚損劣化に起因する測定誤差の度合を判定することができ、汚損による特性劣化の度合を判定することができる。
【0061】
また、本実施例では、スロットル弁4、EGR弁6、およびターボチャージャー5が装着されたディーゼルエンジン搭載車両のAFM3を判定対象としており、判定時に、エンジン回転数を所定の回転数にすることによって内燃機関2の運転状態を汚損判定可能流量域の所定流量となる運転状態に制御している。
しかし、スロットル弁4、EGR弁6、およびターボチャージャー5の状態によって空気流量がばらつくことがある。
【0062】
そこで、判定時には、スロットル開度、EGR弁6の弁開度、及びウエストゲートバルブ5aの弁開度がそれぞれ所定の開度に固定された状態となるようにスロットル弁4、EGR弁6、およびターボチャージャー5を制御する。
これによれば、さらに空気流量が安定した状態でAFM3の測定誤差Dmtをより正確に検出することができるため、測定誤差Dmtによる劣化判定をより正確にすることができる。
【0063】
なお、本実施例では、ターボチャージャー5のウエストゲートバルブ5aの弁開度が所定の開度になるように制御されていたが、タービン12の周囲に可変ノズルベーン5bを有する場合は、可変ノズルベーン5bを所定角度に固定するように制御してもよい。また、ウエストゲートバルブ5aの弁開度を所定の開度に固定するとともに、可変ノズルベーン5bを所定角度に固定するようにターボチャージャー5を制御してもよい。
【0064】
さらに、本実施例のAFM劣化判定装置1は、前回メンテナンス時期Tb、前回測定誤差Dmb、今回のメンテナンス時期Tt、今回測定誤差Dmtを用いて特性劣化速度を算出し、特性劣化速度に基づいて今回メンテナンスで使用する判定値を算出する。
【0065】
これによれば、車両のばらつきを考慮し、車両毎に判定値を定めることができる。例えば、AFM3の劣化が早い(早く汚損している)車両の場合は、今回メンテナンスでの判定値を厳しくし、その厳しい判定値に基づいて対応をとることで、車両の不具合が出にくくなるようにすることができる。
【0066】
また、AFM劣化判定装置1は、前回メンテナンス時期Tb、前回測定誤差Dmb、今回のメンテナンス時期Tt、今回測定誤差Dmtを用いて特性劣化速度を算出し、特性劣化速度に基づいて次回メンテナンスの推奨時期を算出する。
これによれば、車両のばらつきを考慮し、車両毎に次回メンテナンス時期を定めることができる。例えば、AFM3の劣化が早い(早く汚損している)車両の場合は、次回メンテナンス時期を早めて、車両の不具合が出にくくなるようにすることができる。
【0067】
また、AFM劣化判定装置1は、インテークマニホールド26aに装着されている吸気温センサ44及び吸気圧センサ45で測定された温度及び圧力に基づいて、AFM3の測定流量を基準温度、定置(海抜0mまたは所定海抜)での基準圧力(大気圧)での流量に換算する補正をする。そして、補正後の測定流量から測定誤差Dmtを算出している。
【0068】
空気の温度や圧力が異なる場所では、同じエンジン回転数であっても、内燃機関への吸入質量流量が変化するため、内燃機関が吸入する空気流量が変わるが、本実施例では、空気の温度や圧力で測定流量を補正したうえで測定誤差Dmtを算出しているため、高地や高温、低温環境下でも測定誤差Dmtによる劣化判定を正確にすることができる。
【0069】
また、空気の温度及び圧力は、インテークマニホールド26aに装着されている吸気温センサ44及び吸気圧センサ45で測定されており、測定流量の補正のために、新たにセンサを追加して設ける必要がない。
【0070】
〔実施例2の構成〕
実施例2の構成を、実施例1とは異なる点を中心に図2を用いて説明する。
実施例2のAFM劣化判定装置1は、判定時に、オルタネータの作動状態を所定の状態に制御する。
すなわち、運転状態指令部31は電気負荷制御手段としての機能も有し、判定開始信号が入力されると、エアコンやオーディオ等の電気負荷となる機器の作動状態が所定の状態となるよう制御する。これにより、オルタネータの作動状態が所定の状態に維持される。
【0071】
オルタネータの作動状態は、運転状態に影響を与えるものであるため、判定時にオルタネータの作動状態を所定の状態にすることによって、より空気流量が安定した状態でAFM3の測定誤差を検出することができ、測定誤差による劣化判定をより正確にすることができる。
【0072】
〔実施例3の構成〕
実施例3の構成を、実施例1とは異なる点を中心に説明する。
実施例3のAFM劣化判定装置1は、内燃機関2が暖機状態にあるか否かを判断し、暖機状態であると判断した場合に、判定開始の指令を出す判定開始判断手段を備える。
すなわち、ECU20は判定開始判断手段としての機能も有し、サービスツール21からの判定開始信号を受信した後、内燃機関2が暖機状態であるか否かを判断し、暖機状態であると判断した場合に、判定開始の指令を運転状態指令部31に出力する。
【0073】
なお、暖機状態であるか否かの判断は、例えば、吸気温の変化量またはエンジンルーム温度の変化量によって判断する。すなわち、エンジン冷却水温度を検出する水温センサ46や、吸気温センサ44からのセンサ出力を用いて判断する。
【0074】
エンジンルームの温度や吸気温が安定していない場合、空気流量は変動する。そこで、暖機状態となってから判定を開始することによって、より空気流量が安定した状態でAFM3の測定誤差を検出することができ、測定誤差による劣化判定をより正確にすることができる。
【0075】
〔実施例4の構成〕
実施例4の構成を、実施例1とは異なる点を中心に、図2、図4に基づいて説明する。
実施例4のAFM劣化判定装置1は、主にガソリンエンジン搭載車両に装着されたAFM3を異常検出の対象としている。このガソリンエンジン搭載車両は可変吸気バルブタイミング機構48を装着している。AFM3は吸気通路9において、スロットル弁49(電子スロットル弁)の上流側に設けられている。
【0076】
本実施例では、サービスツール21から判定開始信号がECU20に送られると、ECU20からの制御信号によって、所定のエンジン回転数を得るためのスロットル開度となるようにスロットル弁49が制御される。
また、可変吸気バルブタイミング機構48は、進角量が所定量に固定された状態となるように制御される。
【0077】
判定時に、可変吸気バルブタイミング機構48の進角量を所定の進角量に固定することによって、より空気流量が安定した状態でAFM3の測定誤差を検出することができ、測定誤差による劣化判定をより正確にすることができる。
なお、車両に可変排気バルブタイミング機構が装着されている場合には、可変排気バルブタイミング機構も、進角量が所定量に固定された状態に制御する。
また、車両に可変バルブリフト量制御機構が装着されている場合には、可変バルブリフト量制御機構を、バルブリフト量が所定量に固定された状態に制御する。
【0078】
〔実施例5の構成〕
実施例5の構成を、実施例1とは異なる点を中心に、図5に基づいて説明する。
実施例5のAFM劣化判定装置1では、OK判定値に加え、洗浄実施有無判定値を設定し、各判定値とAFM3の測定誤差Dmtとを比較することで、汚損による特性劣化の度合を判定する。
【0079】
洗浄実施有無判定値は、OK判定値よりも小さい誤差値に設定されている。
OK判定値及び洗浄実施有無判定値と測定誤差Dmtとを比較して、測定誤差DmtがOK判定値より大きい場合には、「要措置レベル」と判定され、測定誤差Dmtが洗浄実施有無判定値より大きくOK判定値より小さい場合には、「洗浄推奨レベル」と判定される。また、測定誤差Dmtが洗浄実施有無判定値より小さい場合には、「対策不要レベル」と判定される。
ここで、「洗浄推奨レベル」とは、「要措置レベル」の汚損度合よりは低いが、AFM3の洗浄をした方がよいと考えられる汚損度合であるとの判定結果である。また、「対策不要レベル」とは、洗浄をしなくてもよいと考えられる汚損度合であるとの判定結果である。
【0080】
洗浄実施有無判定値は、その他の要因による測定誤差と推測できるDkに基づき定められている。Dkよりも大きい測定誤差が生じる場合は、AFM3の汚損による測定誤差が生じていると考えられるからである。なお、洗浄実施有無判定値は、測定誤差Dkよりも小さい誤差値Djを判定値としている。これは、流量のばらつきに対応するOK誤差レベルのグラフ上での流量誤差のばらつきΔE分を考慮してのことである。
【0081】
〔変形例〕
AFM劣化判定装置1の態様は、実施例に限定されず種々の変形例を考えることができる。
例えば、実施例1〜5では、判定時に、エンジン回転数を所定の回転数にすることにより、内燃機関2の運転状態を所定の運転状態にしたが、アクセル開度、または、スロットル開度、または、燃料噴射量、または、インマニ圧を所定値に制御することによって、内燃機関2の運転状態を所定の運転状態にしてもよい。
【0082】
実施例1では、流量補正部36、判定値計算部38、判定部39、次回推奨メンテナンス時期見積り部40がサービスツール21に設けられていたが、これらはECU20に設けられていてもよい。
【0083】
また、実施例1〜5のAFM劣化判定装置1は、ECU20によって自動で、判定時に内燃機関2の運転状態が所定の運転状態となるように制御されていたが、判定時に作業者が手動によって、所定のアクセル開度を保つことによって、内燃機関2の運転状態が所定の運転状態となるようにしてもよい。
【0084】
また、実施例1〜5では、主に、AFM3がボビン式AFMに適用される劣化判定について説明したが、本発明は薄膜式AFMの場合にも適用できる。
すなわち、ボビン式AFMの場合は、汚損劣化に起因する測定誤差の区別可能な運転状態とは、内燃機関に吸入される空気流量が高流量域となる運転状態であったが、薄膜式AFMにおいて、汚損劣化に起因する測定誤差の区別可能な運転状態が存在する場合は、その運転状態に維持して、その運転状態におけるAFM3の測定流量から測定誤差を算出し、測定誤差に基づいて特性劣化の度合を判定することができる。
【符号の説明】
【0085】
1 AFM劣化判定装置
2 内燃機関
3 AFM
4 スロットル弁
5 ターボチャージャー
5a ウエストゲートバルブ
5b 可変ノズルベーン
6 EGR弁
20 ECU
21 サービスツール
24 燃料噴射弁
26a インテークマニホールド
44 吸気温センサ
45 吸気圧センサ
48 可変吸気バルブタイミング機構
49 スロットル弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のメンテナンス時に、内燃機関に吸入される空気流量を測定する熱式空気流量測定装置(以下、AFM)の特性劣化を判定するAFM劣化判定装置であって、
判定時に、前記内燃機関の運転状態を所定の運転状態にする制御手段と、
前記所定の運転状態における前記AFMの測定誤差を所定の判定値と比較することによって特性劣化の度合を判定する判定手段とを備えることを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項2】
請求項1に記載のAFM劣化判定装置において、
前記制御手段は、前記内燃機関に吸入される空気流量を所定の流量とすることで、前記所定の運転状態にすることを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のAFM劣化判定装置において、
前記制御手段は、前記内燃機関の回転数を所定の回転数にすることにより、前記内燃機関の運転状態を所定の運転状態にすることを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載のAFM劣化判定装置において、
前記制御手段は、アクセル開度、または、スロットル開度、または、燃料噴射量、または、インマニ圧力値を所定値にすることによって、前記内燃機関の運転状態を所定の運転状態にすることを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項5】
請求項3に記載のAFM劣化判定装置において、
前記内燃機関はガソリンエンジンであり、
前記制御手段は、スロットル開度を制御することにより、前記内燃機関の回転数を前記所定の回転数にすることを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項6】
請求項3に記載のAFM劣化判定装置において、
前記内燃機関はディーゼルエンジンであり、
前記制御手段は、燃料噴射量を制御することにより、前記内燃機関の回転数を前記所定の回転数にすることを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれかに記載のAFM劣化判定装置において、
前記車両が可変バルブタイミング機構、もしくは可変バルブリフト量制御機構、もしくはその両方の機構を装着している車両である場合、
判定時に、進角量もしくはバルブリフト量もしくはその両方が所定量に固定された状態となるように前記可変バルブタイミング機構、もしくは前記可変バルブリフト量制御機構、もしくはその両方の機構を制御するバルブ制御手段を備えることを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項8】
請求項6に記載のAFM劣化判定装置において、
前記車両がスロットル弁を装着している車両である場合、
判定時に、スロットル開度が所定開度に固定された状態、または、全開に固定された状態となるように前記スロットル弁を制御するスロットル制御手段を備えることを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項9】
請求項2〜8のいずれかに記載のAFM劣化判定装置において、
前記車両がEGR弁を装着している場合には、
判定時に、前記EGR弁の弁開度が所定開度に固定された状態、または、全閉に固定された状態となるように前記EGR弁を制御するEGR弁制御手段を備えることを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項10】
請求項2〜9のいずれかに記載のAFM劣化判定装置において、
前記車両がターボチャージャーを装着している場合には、
判定時に、ウエストゲートバルブ開度または可変ノズルベーンが所定の状態となるように前記ターボチャージャーを制御するターボチャージャー制御手段を備えることを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項11】
請求項2〜10のいずれかに記載のAFM劣化判定装置において、
判定時に、オルタネータの作動状態を所定の状態に制御する電気負荷制御手段を備えることを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項12】
請求項2〜11のいずれかに記載のAFM劣化判定装置において、
前記内燃機関が暖機状態にあるか否かを判断し、暖機状態であると判断した場合に、判定開始の指令を出す判定開始判断手段を備えることを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項13】
請求項2〜12のいずれかに記載のAFM劣化判定装置において、
前回メンテナンス時期と、前回メンテナンスの際の前記AFMの測定誤差(前回測定誤差)とを記憶する記憶手段と、
今回メンテナンス時期、今回メンテナンスでの前記AFMの測定誤差(今回測定誤差)、前記前回メンテナンス時期、および前記前回測定誤差に基づき、前記所定の判定値を算出する判定値算出手段とを備えることを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項14】
請求項13に記載のAFM劣化判定装置において、
前記今回メンテナンス時期、前記今回測定誤差、前記前回メンテナンス時期、および前記前回測定誤差に基づき、次回メンテナンスの推奨時期を算出する次回メンテナンス時期算出手段を備えることを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項15】
請求項2〜14のいずれかに記載のAFM劣化判定装置において、
前記AFMの測定流量を、空気の温度及び圧力により補正する補正手段を備え、
補正後の測定流量に基づき前記AFMの測定誤差を算出することを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項16】
請求項15に記載のAFM劣化判定装置において、
前記空気の温度及び圧力は、インテークマニホールドで測定されたものであることを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項17】
請求項1または2に記載のAFM劣化判定装置において、
前記車両に搭載されたECU、および、前記ECUに外部から接続されるサービスツールの少なくとも一方が、前記制御手段と前記判定手段としての機能を有することを特徴とするAFM劣化判定装置。
【請求項18】
車両のメンテナンス時に、内燃機関に吸入される空気流量を測定するAFMによる測定誤差によって前記AFMの特性劣化の度合を判定する判定手段を備えるAFM劣化判定装置を用いたAFM劣化判定方法であって、
判定時に、手動によって所定のアクセル開度を保ち、
前記所定のアクセル開度を保った状態における前記AFMによる測定誤差によって特性劣化の度合を判定することを特徴とするAFM劣化判定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−88206(P2012−88206A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235950(P2010−235950)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】