薄膜トランジスタ及び表示装置
【課題】高い経時デバイス安定性及び動作安定性などが薄膜トランジスタを提供する。
【解決手段】基板上10に、ゲート電極15、ゲート絶縁層12、チャネル層11、ソース電極13及びドレイン電極14が形成される薄膜トランジスタにおいて、チャネル層11はインジウム、ゲルマニウム及び酸素を含んでいて、チャネル層11におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.5以上0.97以下である。
【解決手段】基板上10に、ゲート電極15、ゲート絶縁層12、チャネル層11、ソース電極13及びドレイン電極14が形成される薄膜トランジスタにおいて、チャネル層11はインジウム、ゲルマニウム及び酸素を含んでいて、チャネル層11におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.5以上0.97以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物半導体を用いる薄膜トランジスタ及びそれを用いた表示装置に関する。特に、有機エレクトロルミネセンスディスプレイ、無機エレクトロルミネセンスディスプレイ又は液晶ディスプレイに用いられる薄膜トランジスタ及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor,FET)は、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を備える。そして、ゲート電極に電圧を印加して、チャネル層に流れる電流を制御し、ソース電極とドレイン電極間の電流を制御する電子アクティブ素子である。
【0003】
特に、セラミックス、ガラス又はプラスチックなどの絶縁基板上に成膜した薄膜を、チャネル層として用いるFETは薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor,TFT)と呼ばれている。
【0004】
薄膜トランジスタ(TFT)は、大面積の基板上に多数を配することで、広範囲の用途に用いられる。例えば、TFTは、フラットパネルディスプレイの不可欠な構成要素である。
【0005】
TFT及びその関連電子デバイスは、従来、ガラス基板上に作製されてきた。
【0006】
しかし、将来のディスプレイシステムには、性能に加えて、大きな寸法、さらには、より高い可搬性が求められる。ディスプレイの重さは、ガラス基板が大きくなるほど関心が高くなる。
【0007】
解決策の一つは、可撓性(フレキシブル)プラスチック基板を使用するディスプレイシステムの開発にある。すなわち、プラスチック基板上に現行より低いプロセス温度でデバイスを作製することができ、良好なディスプレイ性能を提供することができる新しい薄膜トランジスタ技術の開発が求められる。
【0008】
TFTとして、現在、最も広く使われているのは多結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜をチャネル層材料としたものである。ピクセル駆動用には、アモルファスシリコンTFTが、画像全体の駆動・制御には、高性能な多結晶シリコンTFTが実用化されている。
【0009】
しかしながら、アモルファスシリコン、ポリシリコンTFTをはじめ、これまで開発されてきたTFTは、デバイス作成に高温プロセスが求められ、プラスチック板やフィルムなどの基板上に作成することが困難である。
【0010】
一方、近年、ポリマー板やフィルムなどの基板上に、TFTを形成し、LCDやOLEDの駆動回路として用いることで、フレキシブル・ディスプレイを実現しようとする開発が活発に行われている。
【0011】
プラスチックフィルム上などに成膜可能な材料として、低温で成膜でき、かつ電気伝導性を示す有機半導体膜が注目されている。
【0012】
例えば、有機半導体膜としては、ペンタセンなどの研究開発が進められている。キャリア移動度は約0.5cm2(Vs)-1程度であり、アモルファスSi−MOSFETと同等であることが報告されている。
【0013】
しかし、ペンタセンなどの有機半導体は、熱的安定性が低く(<150℃)、実用的なデバイスは実現していない。
【0014】
また、最近では、TFTのチャネル層に適用し得る材料として、酸化物材料が注目されてきている。たとえば、ZnOを主成分として用いた透明伝導性酸化物多結晶薄膜をチャネル層に用いたTFTの開発が活発に行われている。
【0015】
上記薄膜は、比較的に低温で成膜でき、プラスチック板やフィルムなどの基板上に薄膜を形成することが可能である。
【0016】
しかし、ZnOを主成分とする化合物は室温で安定なアモルファス相を形成することができず、多結晶相になるために、多結晶粒子界面の散乱により、電子移動度を大きくすることができない。また多結晶粒子の形状や相互接続が成膜方法により大きく異なるため、TFT素子の特性がばらついてしまう。
【0017】
最近では、In−Ga−Zn−O系のアモルファス酸化物を用いた薄膜トランジスタが報告されている(非特許文献1)。
【0018】
このトランジスタは、室温でプラスチックやガラス基板への作成が可能である。さらには、電界効果移動度が6−9程度でノーマリ・オフ型のトランジスタ特性が得られている。
【0019】
また、可視光に対して透明であるという特徴を有している。
【0020】
この文献では、In:Ga:Zn=1.1:1.1:0.9(原子比)の組成比を有するアモルファス酸化物をTFTのチャネル層に用いている。
また従来のIn-Ga-Zn-O系の報告(非特許文献1、特許文献1)は、3つの金属元素を含有した多元酸化物半導体の例として知られている。
【非特許文献1】K.Nomura et.al,Nature VOL. 432,P.488-492(2004-11)
【非特許文献2】アプライド・フィジックス・レターズ、89巻06号2103頁(2006年)
【非特許文献3】ソリッド・ステート・エレクトロニクス誌50巻500〜503頁(2006年)
【特許文献1】特開2007-281409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
これらの報告は、研究者及び業界の大きな注目を集めた。
【0022】
しかし、酸化物材料によるTFTを産業界において用いるためには、広い組成範囲でTFT動作を可能にする(組成マージンが大きい)とともに、少ない種類の金属元素の酸化物材料が望ましい。そうなれば、均一性、TFT特性のより良好な制御及び製造コストの面で非常に有利になる。
【0023】
AMOLED(アクティブマトリクス有機発光ダイオード)の駆動TFT及びスイッチングTFTには、TFT特性に加えて、高い経時デバイス安定性及び動作安定性が求められる。
【0024】
また金属元素の組成マージン(例 In/(In+Ga+Zn) やZn/(Zn+In+Ga))をさらに広げることが望まれている。本発明においては、3つの金属元素を有した酸化物半導体としてIn-Ge-Zn-O系を技術開示する。本発明の酸化物半導体 (In-Ge-Zn-O系)は、TFT用途において、従来の2種類もしくは3種類の金属元素を用いた酸化物系よりも広い組成マージンを有するという作用がある。TFT動作に対する組成マージンは、チャンネル材料が半導体としての電気的性質をもつかどうかやアモルファスであるかどうかに大きく依存する。
【0025】
大きな組成マージンを有することは、第面積成膜や高速成膜を必要とする量産において、大きな利点となる。また、低コスト化の観点から、TFT用途の半導体材料は、高価な元素や希少な元素(InやGaなど)の含有量が小さいことが望まれる。
【0026】
そこで、本発明は、上記の課題を解決する薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、ゲート絶縁層を介して、チャネル層とゲート電極とが対向するように配置される薄膜トランジスタにおいて、前記チャネル層はインジウム、ゲルマニウム及び酸素を含んでいて、前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.5以上0.97以下であることを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.5以上0.90以下であることを特徴とする。
【0029】
これにより、オン/オフ比、移動度及びサブスレッショルドスイング値の面で良好なTFT特性が得られる。
【0030】
また、本発明は、前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.6以上0.9以下であることを特徴とする。
【0031】
これにより、オン/オフ比、移動度、及びサブスレッショルドスイング値の面で良好なTFT特性が得られる。
【0032】
また、本発明は、前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.5以上0.75以下であることを特徴とする。
【0033】
これにより、オン/オフ比、移動度、しきい値電圧、及びサブスレッショルドスイング値の面で良好なTFT特性が得られる。
【0034】
また、本発明は、前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.6以上0.75以下であることを特徴とする。
【0035】
これにより、サブスレッショルドスイング値、On/Off、しきい値電圧及び良好な移動度といった優れた性質を有するノーマリ・オフ型トランジスタ特性が得られる。
【0036】
また、本発明は、前記チャネル層の比抵抗は、103Ω・cmから106Ω・cmであることを特徴とする。
【0037】
また、本発明は、前記チャネル層は、アモルファスであることを特徴とする。
【0038】
これにより、環境に対しての安定性が高く、駆動に対する安定性が高い(駆動時の特性変動が小さい)トランジスタを実現できる。
【0039】
TFTは、スイッチングデバイスとしてだけでなく有機発光ダイオード(OLED)用アナログ電流ドライバとしても用いられ、しきい値電圧Vthが変化するとそれに伴って個々の画素輝度(発光輝度)が変化する。そのため、アナログデバイスにとって長期安定性は重要である。
【0040】
本発明では、0.5以上0.75以下のIn/(In+Ge)で表される組成範囲で、周囲環境条件における非常に高いデバイス安定性と駆動ストレス安定性とを実現することができる。
【0041】
また、本発明は、前記ゲート絶縁層は、シリコン酸化物からなることを特徴とする。
【0042】
これにより、μFE、オン/オフ比、Vth及びS値を含むトランジスタ特性が優れ、信頼性の高い電界効果型トランジスタを提供することができる。
【0043】
2種類の金属元素から構成される酸化物の一例として、In−Zn−O系材料の既報(非特許文献2)が知られている。別の例は、In−Ga−O系(非特許文献3)である。
【0044】
しかし、我々が検討した実験結果によると、In−Zn−O系材料を用いたTFTは、環境安定化が組成に依存し、良好な特性を安定して示すIn/(In+Zn)組成範囲はあまり広くない。一方、In−Ga−O系の材料を用いたTFTのオン/オフ比は小さくなり、S値は大きくなる。
【0045】
本発明のIn−Ge−O系TFTは、In-Zn−O系をはじめとする他の2種類の金属元素からなる酸化物を用いたTFTと比べて、よりは広い組成範囲でTFT動作が可能である。
【0046】
In−Zn−O系(非特許文献2)及びIn−Ga−O系(非特許文献3)の酸化物を比較すると、本TFTは、それぞれ安定性及び性能に優れている。
【0047】
また本発明は、Zn, In ,Geを含有した酸化物半導体からなるチャンネルを有した薄膜トランジスタであって、 In/ (In + Ge) で表される組成比が0.50以上 0.97以下であり、さらにZn/( Zn + In + Ge) で表される組成比が0.80以下であるチャンネル層を有することを特徴とした薄膜トランジスタが挙げられる。
【0048】
また本発明は、ZnとInとGeを含有した酸化物からなるチャンネル層を有した電界効果型トランジスタであって、上記酸化物の組成が図57において、点a,b,c,dで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする電界効果型トランジスタである。この組成範囲において、高いオンオフ電流比を(106以上 )得ることができる。
【0049】
また本発明は、上記酸化物の組成が図57において、点a, b, e, m, l で囲まれた範囲の中にあることを特徴とする電界効果型トランジスタである。この組成範囲において、高いオンオフ電流比を(109以上 )と良好な移動度(33cm2/V-s)を得ることができる。
【0050】
また本発明は、上記酸化物の組成が図57において点a, b, e, f ,gで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする電界効果型トランジスタである。この組成範囲において、高いオンオフ電流比を(109以上 )と良好な(小さな)サブスレッシュホルドスウィング値 S (V/dec)を得ることができる。
【0051】
また本発明は、上記酸化物の組成が図57において、点a, n, t, hで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする電界効果型トランジスタである。この組成範囲において、高いオンオフ電流比を(109以上 )と高い移動度(37cm2/V-s)、小さなサブスレッシュホルドスウィング値(S (V/dec)£0.7)を得ることができる。
上記酸化物の組成が図57において、点 h, i, b, e, k, lで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする電界効果型トランジスタである。この組成範囲において、高いオンオフ電流比を(109以上)と良好な移動度(33cm2/V-s)、良好な閾値電圧Vth (V)を得ることができる。
【0052】
また本発明は、上記酸化物の組成が図57において、点 h, i, n, tで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする電界効果型トランジスタである。この組成範囲において、高いオンオフ電流比を(109以上 )と良好な移動度(37cm2/V-s)、小さなS値 (S(V/dec)£0.7)、良好な閾値電圧Vth (V)を得ることができる。
【0053】
また本発明は、上記酸化物の組成が図57において、点s, u, x, y, v, bで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする電界効果型トランジスタである。この組成範囲において、高いオンオフ電流比を(1010以上 )と高い移動度(39cm2/V-s)、小さなS値 (S(V/dec)£0.5)、良好な閾値電圧Vth (V)を得ることができる。
【0054】
また本発明は、上記酸化物の組成が図57において、点s, u, t, nで囲まれた範囲の中にあり、非常に小さいオフ電流(off current £ 10-13(A))を有した電界効果型トランジスタである。10-13(A)は10−13アンペアを示す。
【0055】
また本発明は、上記酸化物の組成が図57において、点 a, b, c 及び dで囲まれた範囲の中にあり、上記酸化物がアモルファスである電界効果型トランジスタである。
【0056】
また本発明は、上記酸化物の組成が図57において、点 a, b, c 及び dで囲まれた範囲の中にあり、破線で囲まれた範囲を以外にあり、上記酸化物がアモルファスである電界効果型トランジスタである。
このように、In−Ge−O系の酸化物を用いたTFTは、非特許文献2及び3に記載される酸化物や他の材料系よりも広い組成マージンを有する。非特許文献1の3種類の金属元素を用いた酸化物In-Ga-Zn−Oと比べて、本発明のIn−Ge−O系は2種類の金属元素からなるため、製造コストの面で有利である。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、用いる元素の数が少ないため、良好なTFT性能を得るための費用対効果に優れた薄膜トランジスタを提供できる。さらに、2種類の金属元素酸化物材料系の中で、本発明の酸化物半導体(例:In−Ge−O)は、TFT用途に用いた際に非常に広い組成マージンを有するという利点がある。すなわち、本発明によれば、組成変動に対しての特性変化が小さいという効果がある。
【0058】
また、0.5以上0.9以下のIn/(In+Ge)で表される組成範囲にわたって高いオン/オフ比と良好な移動度とが得られる。
【0059】
また、本発明によれば、InとGeの組成比を制御することによって、TFT特性を制御したり、TFT性能を向上させたりすることができる。たとえば、サブスレッショルドスイング値(S値(V/Dec))、オン/オフ電流比(On/Off)、電界効果移動度μFE(cm2/Vsec)、しきい値電圧Vth(V)、ターンオン電圧Von(V)で示されるTFT性能を大いに改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の実施の形態を説明する。
【0061】
図1は、本発明の一実施形態としてのアモルファスIn−Ge−Oを含む薄膜トランジスタの概略を示す断面図である。
【0062】
図1(a)及び図1(b)において、10は基板、11はチャネル層、12はゲート絶縁層、13はソース電極、14はドレイン電極、15はゲート電極である。ゲート絶縁層12を介して、チャネル層11とゲート電極15とは、対向するように配置される。
【0063】
電界効果型トランジスタは、ゲート電極15、ソース電極13及びドレイン電極14を有する3端子デバイスである。
【0064】
電界効果型トランジスタは、電圧VGをゲート電極へ印加すると、チャネル層を通って流れるドレイン電流IDを制御することができ、ソース電極とドレイン電極との間を流れる電流を制御する電子デバイスである。
【0065】
図1(a)は、半導体チャネル層11の上にゲート絶縁層12とゲート電極15を有するトップゲート構造の例である。図1(b)は、ゲート電極15の上にゲート絶縁層12と半導体チャネル層11を有するボトムゲート構造の例である。図1(c)は、別のボトムゲート型トランジスタの例である。
【0066】
図1(c)では、ゲート絶縁体22である熱酸化SiO2が形成された基板21の上にチャネル層(酸化物)25を配する。23はソース電極、24はドレイン電極である。基板21は、n+−Siからなり、ゲート電極としても機能する。
【0067】
本実施形態では、TFTの構成は、上記の構造に限定されず、トップゲート又はボトムゲート型、スタガー型などの任意の構造に適用してもよい。
【0068】
(チャネル層:In−Ge−O系)
本実施形態の薄膜トランジスタは、チャネル層がインジウムとゲルマニウムとを含むアモルファス酸化物を用いることができる。
【0069】
特に、In、Geのアモルファス酸化物(In−Ge−O)、GeとZnとのアモルファス酸化物(Zn−Ge−O)又はIn、Zn及びGeのアモルファス酸化物(In−Zn−Ge−O)からなるアモルファス酸化物が望ましい材料である。InとGeとを含む他のアモルファス酸化物等を用いてもよい。
【0070】
本実施形態において、アモルファス酸化物を構成する(酸素を含む)全元素に対するInの割合は、10%以上、40%以下の範囲が望ましい。そして、In−Ge−Oからなるアモルファス酸化物は、全ての元素の中で酸素を最も多く含有し、2番目にインジウム、3番目にゲルマニウムを多く含有することが望ましい。
【0071】
また、Zn−Ge−Oからなるアモルファス酸化物は、全ての元素の中で酸素を最も多く含有し、2番目に亜鉛、3番目にゲルマニウムを多く含有する。
【0072】
また、In−Zn−Ge−Oからなるアモルファス酸化物は、全ての元素の中で酸素を最も多く含有し、2番目に亜鉛(又はインジウム)、3番目にインジウム(又は亜鉛)、4番目にゲルマニウムを多く含有する。
【0073】
最初に、In−Ge−O材料をTFTの活性層に用いる場合の好ましい組成範囲を説明する。
【0074】
In−Ge−O系の材料は、In/(In+Ge)で表される組成比の中で、比較的広い組成比の範囲にわたり、アモルファスの薄膜を作成できる。たとえばスパッタリング法を用いて室温で成膜すると、Ge/(In+Ge)>0.03の場合にアモルファス酸化物薄膜が得られる。
【0075】
上記したように、スパッタリング法で形成したZnOの薄膜は多結晶構造を有し、粒径及び粒界効果によってTFTの性能に悪影響を及ぼすことがある。このような観点から、チャネルを構成する酸化物がアモルファスであることはTFTの性能にとって重要である。
【0076】
次に、TFT特性を調べる。
【0077】
図2は、薄膜トランジスタを作製したときのIn/(In+Ge)組成比の関数としての電子電界効果移動度(μFE)の例を示すグラフである。
【0078】
図2に示すように、0.6以上0.9以下のIn/(In+Ge)で表される広い組成範囲にわたって高いオン/オフ比と良好な移動度が得られる。図2に示したように、電界効果移動度はIn含有率の増加とともに増加する。
【0079】
電界効果移動度は、特に電流駆動能力及び最大スイッチング周波数に関わる半導体チャネル層の性能を定量化するために、最も重要なTFTの電気的パラメータの一つである。
【0080】
要求される移動度の値は特定の用途によって異なるが、たとえば液晶表示デバイスに利用する場合は電界効果移動度0.1cm2/Vsec以上が望ましい。有機ELディスプレイデバイスに利用する場合には1cm2/Vsecの電界効果移動度を有することが望ましい。なお、有機エレクトロルミネセンス(有機EL)は、有機発光ダイオードとも呼ばれる。
【0081】
また、In/(In+Ge)で表される組成比が、0.6以上0.97以下のIn/(In+Ge)で表される組成比で、OLED(有機EL素子)を駆動するのに好適な移動度を得ることができる。
【0082】
その中でも、0.6以上0.75以下のIn/(In+Ge)で表される組成比を用いることで、閾値やS値の優れたTFTを実現できるため、より好ましい。薄膜トランジスタのしきい値電圧Vthが0V以上になると回路を構成しやすくなるために、好ましい。
【0083】
図3は、In−Ge−Oシステム薄膜トランジスタのしきい値電圧の組成依存性を示すグラフである。
【0084】
In/(In+Ge)が0.65以上0.75以下のときに正のVthを示すことが、図3において見ることができる。さらに、サブスレッショルドスイング値S(V/Dec)を考えると、組成範囲が0.65以上、0.75以下の間で非常に小さなSの値を得ることができるので非常に望ましい。
【0085】
図4は、In/(In+Ge)組成比の関数としてのサブスレッショルドスイング値S(V/dec)の値の変化の例を示すグラフである。
【0086】
結論として、薄膜トランジスタのチャネル層にIn−Ge−Oを適用すると、0.5以上0.97以下のIn/(In+Ge)で表される広い組成範囲においてTFT動作が可能である。特に、好ましい組成比は0.6≦In/(In+Ge)≦0.75の間である。
【0087】
望ましい酸化物(チャネル層)の厚さは、10nmから200nmの間である。さらに、好ましい厚さは25nmから70nmの間である。
【0088】
良好なTFT特性の観点から、酸化膜の比抵抗が適切な値であることが好ましい。優れたTFT特性を得るためには、103Ω・cm以上、106Ω・cm以下のオーダーの比抵抗ρを有するアモルファス酸化膜をチャネル層中に利用することが望ましい。
【0089】
本発明の発明者らが鋭意研究した結果、TFTは、適切な比抵抗(≧103Ω・cm)を有する酸化物半導体をチャネル層に適用すると、いわゆる、ノーマリ・オフ特性を示す挙動傾向を示す。
【0090】
ノーマリ・オフ特性は、ゲート電圧を印加していないとき、しきい値電圧は正、トランジスタはオフ状態にあることを意味する。
【0091】
膜の比抵抗は、金属元素の組成、成膜時の酸素分圧、膜厚及び成膜後アニール条件などを制御することによって制御することが可能である。
【0092】
図5は、組成比In/(In+Ge)に対する比抵抗の依存性を示すグラフである。
【0093】
図5に示すように、膜の比抵抗はInリッチな組成領域からGeリッチな組成領域へ移るにつれて大きくなることがわかる。
【0094】
具体的には、図5に示すように、伝導体(〜10−1Ω・cm)から半導体(〜1Ω・cmから106Ω・cm)、半導体から絶縁体(107Ω・cmより大きい)へと変化する。
【0095】
高いしきい値と優れた経時安定性とを有するTFTを得るためには、酸化物中に0.25より高いGe/(Ge+In)で表されるGe含有率を含むことが好ましい。
【0096】
すなわち安定性を高くするためには、In/(Ge+In)で表したIn含有率は0.75以下が望ましい。約1014〜1018/cm3の電子キャリア密度を有するアモルファス酸化膜を形成させることが望ましいが、そのような比抵抗を得ることは、成膜パラメータ及びチャネル層中の材料組成に依存する。
【0097】
比抵抗が103Ω・cmより小さければ、ノーマリ・オフ型トランジスタを実現することが困難であり、比抵抗が10Ω・cmより小さい場合にはオン−オフ比を大きくすることが難しい。
【0098】
ソースドレイン電流は、ゲート電圧を印加してもオン−オフ挙動を示さず、極端な場合にはトランジスタ動作は示されない。キャリア密度(おそらく酸素欠損)が高いInリッチな組成領域の場合である図6のプロットD及びEにその挙動を見ることができる。図6は、アニール前のIn−Ge−O薄膜トランジスタの伝達特性の組成依存性の例を示すグラフである。
【0099】
一方、酸化物層が絶縁体なら、すなわち、一方、比抵抗が1×107Ω・cmより大きいと、ソースドレイン電流を大きくすることは困難になる。電極間ソースドレイン電流は、ゲート電圧を印加してもオン−オフ挙動を示さず、極端な場合にはトランジスタ動作は示されない。
【0100】
次に、比抵抗の経時変化について説明する。比抵抗の経時変化が小さな酸化物半導体を用いることが好ましい。そうすれば、しきい値電圧及びオフ電流の経時変化が小さな薄膜トランジスタを実現することができるからである。
【0101】
図7は、In/(In+Ge)=0.65で表される組成比の薄膜を、大気中に放置した際の比抵抗の経時安定性を示すグラフである。
【0102】
酸化物半導体の比抵抗は、当初、成膜後約300時間の間は時間とともに減少する傾向を示すことが観測されるが、最終的に安定化する。
【0103】
アニールすると、膜の比抵抗は非アニール膜より速い速度で安定化する。
【0104】
Geリッチな組成領域の最終的な比抵抗は、依然として高いオーダー(>103Ωcm)である。
【0105】
比抵抗が安定であることは、TFT特性の経過時間安定性に対応しており、In−Ge−O系の酸化物を含むTFTが高い安定性を有することを示している。
【0106】
さらに、0.5以上0.75以下のIn/(In+Ge)で表される組成範囲で、伝達特性と、しきい値電圧及びオフ電流などのTFT特性とに、ほとんど経時変化がない。
【0107】
図8は、作製後直後のTFT伝達特性とTFT作製一ヶ月後とのTFT伝達特性の比較の例を示すグラフである。
【0108】
この経過時間安定性は、2種類の金属元素からなる酸化物In−Zn−Oと比較すると同等以上である。
【0109】
また、成膜時の酸素分圧を制御すると、薄膜中の酸素損失量を制御し、その結果、電子キャリア密度を制御することができる。
【0110】
図9は、他の成膜パラメータを一定に保持してIn/(In+Ge)=0.65及び0.75の場合の成膜時の酸素分圧によるIn−Ge−O薄膜の比抵抗の変化の例を示すグラフである。
【0111】
(ゲート絶縁層)
ゲート絶縁層は、絶縁体材料である。ゲート絶縁層12として、例えば、シリコン酸化物SiOx又は窒素化シリコンSiNx及びシリコンオキシナイトライドSiOxNyを用いてよい。ゲート絶縁層に用いることができるシリコン以外の酸化物は、GeO2、Al2O3、Ga2O3、Y2O3及びHfO2等である。
【0112】
これらの中でもSiOxは、CVD法によって良質な膜を容易に形成でき好ましい。TFTの安定性もSiOxを用いた際に良好である。
【0113】
したがって、本発明においては、SiO2をゲート絶縁材料として用いると良好なTFT性能を得ることができる。
【0114】
優れた絶縁特性を有する薄膜ゲート絶縁物を利用することによって、ソース−ゲート及びドレイン−ゲート電極間リーク電流を約10−12A(アンペア)に調節することができる。
【0115】
ゲート絶縁層の厚さは、例えば、50〜300nmである。
【0116】
(電極)
ソース電極13、ドレイン電極14及びゲート電極15の材料は高い導電率を有する。例えば、Pt又はAu、Ni、W、Mo及びAgなどの金属電極を用いるとよく、又はIn2O3:Sn及びZnOなどの透明導電膜も用いてよい。Au及びTi等の複数の層のカスケード構造も使用してよい。
【0117】
(基板)
ガラス基板、プラスチック基板及びプラスチックフィルム等を基板10として用いてよい。
【0118】
上記で言及したチャネル層及びゲート絶縁層は、可視光に対して透明である。
【0119】
したがって、用いられる電極も可視光に対して透明なら、可視光域で全体が透明な薄膜トランジスタを作り出すことが可能である。
【0120】
(製造方法)
チャネル層の成膜の方法として、スパッタリング法(SP法)、パルスレーザ蒸着法(PLD法)、電子ビーム蒸着法(EB法)及び原子層蒸着法などの気相蒸着法を用いると好ましい。気相蒸着法の中で、大量生産性を考慮するとSP法が適当である。しかし、膜形成法は、これらの方法に限定されない。
【0121】
意図的な加熱をまったく行わずに基板の温度を室温に保持して成膜することができる。この技法によれば、プラスチック基板上の透明薄膜トランジスタの低温作製プロセスが可能になる。
【0122】
(特性)
次にTFT特性について説明する。
【0123】
電界効果型トランジスタは、ゲート電極15、ソース電極13及びドレイン電極14を有する3端子デバイスである。
【0124】
電界効果型トランジスタは、電圧VGをゲート電極へ印加してチャネル層を通って流れるドレイン電流IDを制御することができ、ソース電極とドレイン電極との間を流れる電流のスイッチング挙動が示される電子デバイスである。
【0125】
ソース電極とドレイン電極との間に5Vから20Vの間のドレイン電圧を印加し、さらに−20Vから20Vの間のゲート電圧を掃引することによって、チャネルを通る電流を制御する。
【0126】
図10は、VD=6Vの固定ドレイン電圧におけるlog(ID)−VG(伝達特性)の例を示すグラフである。ここで五つのプロットは、チャネル層の組成が異なる5つのTFTの特性を示している。
【0127】
図11は、In/(In+Ge)=0.65のチャネル層組成を有するTFTにおいて、さまざまなVGにおけるID対VD(出力特性)の例を示すグラフである。
【0128】
図12は、0.65及び0.75のIn/(In+Ge)で表される組成比を有するIn−Ge−O系の酸化物を含むTFTの伝達特性の二つの例を示すグラフである。
【0129】
下の表1には、これらの場合のS(V/dec)、On/Off、Von(V)、Vth(V)及びμ(cm2/Vsec)の一覧を示す。表1において、5E+10は5×1010を意味する。
【0130】
【表1】
【0131】
トランジスタの特性の違いは、たとえば、電界効果移動度μFE、閾値電圧(Vth)、On/Off比、S値などの違いとして表現することができる。
【0132】
電界効果移動度は、線形領域や飽和領域の特性から求めることができる。
【0133】
たとえば、トランスファ特性の結果から、√Id−Vgのグラフを作製し、この傾きから電界効果移動度を導く方法が挙げられる。本明細書では特にこだわらない限り、この手法で評価している。
【0134】
閾値電圧の求め方はいくつかの方法があるが、たとえば、√Id−Vgのグラフのx切片から閾値電圧Vthを導くことが挙げられる。
【0135】
On/Off比(オンオフ比)はトランスファ特性における、最も大きなIdと、最も小さなIdの値の比から求めることができる。
【0136】
S値は、トランスファ特性の結果から、Log(Id)−Vdのグラフを作製し、この傾きの逆数から導出することができる。
【0137】
他にも、ターンオン電圧Vonとして、log(ID)−VG特性における電流立ち上がり開始の電圧(ゲート電圧)を評価することができる。
【0138】
上記で言及したものに加えて、さまざまなその他のパラメータによってトランジスタ特性の間の差を示すことができる。
【0139】
(利用)
これらのTFTが示すSの小さな値、ドレイン電流の高いオン/オフ比、良好な移動度及びノーマリ・オフ型特性は、将来のディスプレイシステムにおけるOLEDのTFT要件にとって非常に望ましい特性である。
【0140】
このような薄膜トランジスタを配した半導体装置(アクティブマトリックス基板)は、透明な基板とアモルファス酸化物TFTを用いているため、表示装置に適用した際にその開口率を増やすことができる。
【0141】
特に、有機ELディスプレイに用いる際には、基板側からも光を取り出す構成(ボトムエミッション)を採用することが可能となる。
【0142】
本実施形態の半導体装置は、IDタグ又はICタグなどのさまざまな用途に用いることが考えられる。
【0143】
以下、具体的に、本実施形態の電界効果型トランジスタを配した半導体装置の一例として表示装置を詳細に説明する。
【0144】
本実施形態の電界効果型トランジスタの出力端子であるドレイン電極に、有機又は無機のエレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶素子等の表示素子の電極に接続することで表示装置を構成することができる。
【0145】
以下に、表示装置の断面図を用いて具体的な表示装置構成の例を説明する。
【0146】
例えば、図21に示すように、基体111上に、チャンネル層112と、ソース電極113と、ドレイン電極114とゲート絶縁膜115と、ゲート電極116から構成される電界効果型トランジスタを形成する。
【0147】
そして、ドレイン電極114に、層間絶縁層117を介して電極118が接続されており、電極118は発光層119と接し、さらに発光層119が電極120と接している。
【0148】
かかる構成により、発光層119に注入する電流を、ソース電極113からドレイン電極114に、チャンネル層112に形成されるチャンネルを介して流れる電流値によって制御することが可能となる。
【0149】
したがって、これを電界効果型トランジスタのゲート電極116の電圧によって制御することができる。ここで、電極118、発光層119、電極120は無機若しくは有機のエレクトロルミネッセンス素子を構成する。
【0150】
又は、図22に示すように、ドレイン電極114が延長されて電極118を兼ねており、これを高抵抗膜121、122に挟まれた液晶セルや電気泳動型粒子セル123へ電圧を印加する電極118とする構成を取ることもできる。
【0151】
液晶セルや電気泳動型粒子セル123、高抵抗層121及び122、電極118、電極120は表示素子を構成する。
【0152】
これら表示素子に印加する電圧を、ソース電極113からドレイン電極114にチャンネル層112に形成されるチャンネルを介して流れる電流値によって制御することが可能となる。
【0153】
したがって、これをTFTのゲート電極116の電圧によって制御することができる。ここで表示素子の表示媒体が流体と粒子を絶縁性被膜中に封止したカプセルであるなら、高抵抗膜121、122は不要である。
【0154】
上記の2例において薄膜トランジスタとしては、スタガー構造(トップゲート型)の構成で代表させたが、本発明は必ずしも本構成に限定されるものではない。例えば、薄膜トランジスタの出力端子であるドレイン電極と表示素子の接続が位相幾何的に同一であれば、コプレナー型等他の構成も可能である。
【0155】
また、上記の2例においては、表示素子を駆動する一対の電極が、基体と平行に設けられた例を図示したが、本実施形態は必ずしも本構成に限定されるものではない。
【0156】
例えば、薄膜トランジスタの出力端子であるドレイン電極と表示素子の接続が位相幾何的に同一であれば、いずれかの電極又は両電極が基体と垂直に設けられていてもよい。
【0157】
ここで、表示素子を駆動する一対の電極が、基体と平行に設けられた場合、表示素子がEL素子若しくは反射型液晶素子等の反射型表示素子ならば、いずれかの電極が発光波長又は反射光の波長に対して透明であることが求められる。又は、透過型液晶素子等の透過型表示素子ならば、両電極とも透過光に対して透明であることが求められる。
【0158】
さらに、本実施形態の薄膜トランジスタでは、全ての構成体を透明にすることも可能であり、これにより、透明な表示素子を形成することもできる。また、軽量可撓で透明な樹脂製プラスチック基板など低耐熱性基体の上にも、かかる表示素子を設けることができる。
【0159】
次に、EL素子(ここでは有機EL素子)と電界効果型トランジスタを含む画素を二次元状に複数配置した表示装置について図23を用いて説明する。
【0160】
図23において、有機EL層204を駆動するトランジスタ201、及び画素を選択するトランジスタ202が示されている。
【0161】
また、コンデンサ203は選択された状態を保持するためのものであり、共通電極線207とトランジスタ202のソース部分との間に電荷を蓄え、トランジスタ201のゲートの信号を保持している。画素選択は走査電極線205と信号電極線206により決定される。
【0162】
より具体的に説明すると、画像信号がドライバ回路(不図示)から走査電極205を通してゲート電極へパルス信号で印加される。それと同時に、別のドライバ回路(不図示)から信号電極206を通してやはりパスル信号でトランジスタ202へと印加されて画素が選択される。そのときトランジスタ202がONとなり信号電極線206とトランジスタ202のソースの間にあるコンデンサ203に電荷が蓄積される。
【0163】
これによりトランジスタ201のゲート電圧が所望の電圧に保持されトランジスタ201はONになる。この状態は次の信号を受け取るまで保持される。トランジスタ201がONである状態の間、有機EL層204には電圧、電流が供給され続け発光が維持されることになる。
【0164】
この図23の例では1画素にトランジスタ2ヶ、コンデンサー1ヶの構成であるが、性能を向上させるためにさらに多くのトランジスタ等を組み込んでもよい。
【0165】
(チャンネル層に関する第2の実施態様:In-Ge-Zn-O系)
次に本発明の別の実施の形態 ( In-Ge-Zn-O 系チャンネル層) について説明する。
【0166】
本実施形態では、広い組成マージンを有し且つ高性能な特性を示すTFTを実現するために、新規な金属元素の組み合わせであるZnとInとGeを含有した酸化物チャンネルを有したTFTを技術開示する。本実施形態のIn-Ge-Zn-O系TFTはInとGaとZnを含有した酸化物チャネルを有したTFT(In-Ga-Zn-O系TFT)よりも、広い組成範囲にわたって、トランジスタ動作が可能である。
【0167】
このIn-Ge-Zn-O系TFT の注目すべき特徴は、非特許文献1や特許文献1に記された材料系よりも広い組成マージンを有することである。In-Ge-Zn-O系TFTは、非特許文献2のIn-Ga-Zn-O系TFTと同等もしくはそれ以上の安定性と半導体特性を示しうる。たとえば、金属組成比がIn : Ge : Zn = 42:13:45 のチャンネル層を配したIn-Ge-Zn-O系薄膜トランジスタにおいて、S-value として0.5 (V/decade)、電界効果移動度として 約7.00 cm2/Vs, 閾値電圧として 7.5Vの特性が得られている。図24の(a)には、In:Ge:Zn= 42:13:45のIn-Ge-Zn-O系TFTのトランスファ特性(Log (Id) vs. Vg) を示す。図 24の(b) には出力特性を示す。
【0168】
さらなる注目すべき点として、非特許文献1や特許文献1の材料系に比べて、In-Ge-Zn-O系TFT は作成時のプロセスマージンが大きいという特徴がある。特に、薄膜形成時の酸素分圧やチャンネル層の膜厚に対しての特性変動が小さい。 すなわち、本実施形態のIn-Ge-Zn-O系TFTは、In-Ga-Zn-O系TFTに比べて、コストや量産性に関して有利である。
【0169】
上記の特徴について、以下に図を用いて詳しく説明する。
【0170】
In-Ge-Zn-O系は、広い組成範囲にわたりTFTのチャンネル材料に好適なアモルファス状態の薄膜を得ることができる。スパッタ成膜した際にアモルファス相が得られる組成範囲を、図57に記した。破線で囲まれた領域においては結晶性の膜が得られ、それ以外の領域がアモルファス膜が得られる。ここで、結晶とアモルファスの境界は固定したものではなく、成膜条件や膜厚などに影響を受ける。アモルファスであることは、高性能なTFTを実現するために、重要である。なぜなら、先にZnO膜について説明したように、多結晶膜においては結晶サイズのばらつきや結晶粒界などがTFT特性に悪い影響を与えるからである。In-Ge-Zn-O系は、In-Ga-Zn-O系やIn-Zn-O系に比べて、アモルファスとなりうる組成範囲(Zn/In比の範囲)が広いことから、TFTのチャンネル層として好適な材料である。
【0171】
次に、Geを含有することと作用を、In-Ge-Zn-O系とIn-Zn-O系を比較することで、説明する。特許文献1によると、In-Zn-O系TFTにおける組成マージン(良好なTFT動作が可能な組成範囲)は、Zn/(Zn+In)が 0.3以上 0.7 以下である。3 atomic% (原子パーセント)のGe を含有すると(すなわち Ge/(Zn+In+Ge) = 0.03 のとき)、組成マージンはZn/(Zn+In+Ge)の上限が0.80へと広がる。 5 atomic% のGe を含有すると、組成マージンはZn/(Zn+In+Ge)の上限が0.70へと広がる。すなわち、少量のGeを含有することで、Zn-In-O系に対して組成マージンを拡大することができる。 In-Ge-Zn-O 系は、Zn-In-O 系に比べて、半導体的な性質を示し且つアモルファスである組成範囲が広いために、TFT動作可能な組成範囲が広くなる。
【0172】
環境安定性の観点から言うと、ある適当な量以上のGeを含有することが好ましい。Geを含有することで(Ge含有量が13 atomic%の組成t,やGe含有量が3 atomic%の組成iで)、抵抗率の大気中における経過時間安定性が向上する。
【0173】
Geを含有することで(Ge含有量が13 atomic%である点や点i Ge含有量が3 atomic%である点i)、抵抗率の大気中における経過時間安定性が向上し、抵抗率は時間とともにほとんど変化しなくなる。すなわち、GeをZn-In-O系材料に含有させることで、抵抗率の環境安定性に優れた酸化物半導体とすることができる。
(In-Ge-Zn-O 系チャンネル層において好適な組成範囲)
次に、In-Ge-Zn-O 系材料をTFTのチャンネル層に適用した場合に好適な組成範囲について説明する。
【0174】
3元相図を示す図を用い、In-Ge-Zn-O 系酸化物において元素組成比およびその範囲を説明する。下図において、酸素の量は特に考慮していない。
下図は図57と同一の図である。
【0175】
たとえば、Inを3価、Geを4価、Znを2価とし、ストイキオメトリもしくはストイキオメトリ近傍の酸素量を含有してよい。 ストイキオメトリからのずれ(たとえば、酸素欠損など)は、後述の成膜時の酸素分圧やアニール条件などで制御することができる。
【0176】
たとえば、相図中の点"a" は、InとGeの総原子中におけるIn原子数の割合、すなわちIn/(In+Ge)が0.97であることを示す。また、この点のInの含有率は97 atomic% となる。
【0177】
相図中の破線の左側は、結晶化したIn-Ge-Zn-O膜が得られる領域であり、破線の右側はアモルファスのIn-Ge-Zn-O膜が得られる領域である。
【0178】
、Znが含まれない場合(In-Ge-O)について言えば、組成比In/(In+Ge) が0.97 より大きいと結晶化してしまい好ましくない。また、組成比In/(In+Ge)が 0.5より小さいと絶縁体になっていしまい、チャンネル層としては不適である。
【0179】
特許文献1において、 In-Zn-O系では、 Zn/(Zn + In) が 0.7 以上で結晶化するため好ましくないこと、さらには30 atomic% 以下では低い抵抗の膜しか形成できないためチャンネルとして好ましくないことが記されている。
【0180】
Zn-In-O に3atomic% のGe を含有させることで、アモルファスとなる組成範囲を Zn/(Zn+In) =0.8 まで拡大することができる。
【0181】
相図中のそれぞれの点a〜点vの金属元素組成比 (atomic%) を以下に記す。
【0182】
(a) In:Ge:Zn=97:3:0
(b) In:Ge:Zn=17:3:80
(c) In:Ge:Zn=20:50:30
(d) In:Ge:Zn=50:50:0
(e) In:Ge:Zn=18:21:61
(f) In:Ge:Zn=40:40:20
(g) In:Ge:Zn=60:40:0
(h) In:Ge:Zn=84:16:0
(i) In:Ge:Zn=65:3:32
(k) In:Ge:Zn=50:20:30
(l) In:Ge:Zn=62:38:0
(m) In:Ge:Zn=25:38:37
(n) In:Ge:Zn=25:3:72
(w) In:Ge:Zn=33:3:64
(s) In:Ge:Zn=37:3:60
(u) In:Ge:Zn=45:15:40
(v) In:Ge:Zn=18:15:67
(x) In:Ge:Zn= 40:20:40
(y) In:Ge:Zn= 25:20:55
まず、相図を示す図57中の点"a", "b", "c", "d" で囲まれる線の中の組成範囲について説明する。In-Ge-Zn-O薄膜の組成が、点"a", "b", "c", "d" で囲まれる線の中にあるとき、この薄膜をチャンネル層に用いることでトランジスタを実現できる(スイッチング動作を実現できる)。 この領域中の任意の組成の薄膜を選んでチャンネル層に用いることで、>106以上のオンオフ電流比を有したトランジスタを実現できる。
【0183】
次に、相図 を示す図57中の 点"a", "b", "e", “f” , "g" で囲まれた領域の組成を有した薄膜を用いることで、小さなS値(サブスレッシュホルドスイング値)を有したトランジスタを再現良く実現できる。
【0184】
点"w"の組成の近傍の膜(すなわち、Zn/(Zn + In) が 0.65 ± 0.05 )を用いると、S値が小さく、移動度とオンオフ電流比が大きいトランジスタを実現でき、好ましい。また、この組成は、閾値電圧の値が0V近傍のトランジスタを作りうるという点でも好ましい組成である。
【0185】
さらに、相図を示す図57中の点"h", "i", “b” "e" “k”及び“l” で囲まれる組成範囲では、閾値電圧が0Vに近い値を有したトランジスタを実現できる。
【0186】
さらに、相図を示す図57中の点"a", "b", “e”, "m" 及び“l” で囲まれる組成範囲では、比較的大きな移動度 (≧3cm2/V-s) のトランジスタを実現できる。
【0187】
さらに、相図を示す図57中の点"a", "b", “e”,"f" 及び“gで囲まれる組成範囲では、小さなS値を有したトランジスタを容易に形成できる。
【0188】
さらに、相図を示す図57中の点"a", "n" ,"t" 及び“h”で囲まれる組成範囲では、大きな移動度(≧7cm2/V-s) を有したトランジスタを容易に形成できる。
【0189】
特に、1010以上のオンオフ電流比を有し、S値の小さい、ノーマリ・オフ型トランジスタを実現できる。
【0190】
さらに、相図を示す図57中の点"h", "i", “n” 及び"t"で囲まれる組成範囲では、大きな移動度(≧7cm2/V-s)と小さなS値(£0.7V/dec)、大きなオンオフ電流比を兼ね備えたノーマリ・オフ型のトランジスタを実現できる。
【0191】
さらに、相図を示す図57中の点s”, “u”, “x”, “y”“v”及び“b”で囲まれる組成範囲では、S値が非常に小さく、非常に高い移動度を有したノーマリ・オフ型のトランジスタを実現できる。
【0192】
さらに、相図を示す図57中の点"a", "i" 及び"h"で囲まれる組成範囲では、負の閾値を有したトランジスタを容易に形成できる。成膜時の酸素分圧を選ぶことで、比較的にオン電流が大きく、ヒステリシスが小さいトランジスタを実現できる。すなわち、この組成範囲は、ノーマリオン型トランジスタを実現する際に有用である。
【0193】
さらに、相図を示す図57中の点"l", "k ", "e", “c” 及び "d"で囲まれる組成範囲では、正の閾値を有したトランジスタを容易に形成できる。また、比較的、オフ電流が小さいトランジスタを実現できる。この組成範囲では、移動度はやや小さいけれども、低いキャリア濃度の薄膜を安定して形成することができる。また、Ge含有率が比較的大きいので光吸収端が短波長側にあり、波長400nm付近での光透過性に優れる。また、屈折率は小さくなる。すなわち、この組成範囲は、それほど大きなオン電流を必要としないが、小さなオフ電流と高い光透過性が必要な場合に有用である。
【0194】
In-Ge-Zn-O TFTのさまざまな組成におけるトランスファ特性の中で、比較的良好な特性を示した例を図 25に示す。
【0195】
特に良好な特性を示す図25c と d は、相図を示す図57の点“s”, “u”, “t”, “n” で囲まれた影付き領域に属する。図25a,b,c,d,eのそれぞれのTFTのS (V/dec), On/Off, Von (V), Vth (V) and m(cm2/V-s)は、下記の表2にまとめられている。
【0196】
【表2】
【0197】
(実施例1)
図1の(a)は、アモルファスIn−Ge−Oチャネル層からなる本実施例のトップゲート型電界効果型トランジスタの断面概略図を示す。
【0198】
図1の(a)に示すように、ガラス基板(コーニング社製1737)上にアモルファスIn−Ge−O酸化膜をチャネル層として成膜する。スパッタリングチャンバ中で、アルゴン及び酸素の混合雰囲気中で高周波スパッタリング法を用いてIn−Ge−Oアモルファス酸化膜を形成する。
【0199】
図13は、本発明の一実施形態としての電界効果型トランジスタのチャネル層を成膜するために用いた成膜システムの概略を示す図である。
【0200】
図13に示すように、本実施の形態の成膜システムは、真空排気能力を制御するゲートバルブ57と、それぞれの気体のシステムへのガス流入量を制御するための個別のマスフローコントローラ56とを有する。また、真空イオンゲージ計54と、基板ホルダー55と、基板51と、ターボ分子ポンプ53と、成膜室58と、スパッタリングターゲット付きスパッタリングガン52とを有する。
【0201】
53は、成膜室58を1×10−5Pa(背圧)に達するまで排気するターボ分子真空ポンプである。
【0202】
55は、基板の位置をx、y面内及び垂直なz方向に調節することができる基板ホルダーである。
【0203】
52は、スパッタリングガンであり、上に酸化物ターゲット52(ターゲット)を有する。これらの他に、成膜の間に起きる過熱によるスパッタリングガンへのいかなる損害も防ぐ冷却水供給がある。
【0204】
59は、スパッタリングターゲットのためのrf電源及びマッチングネットワークである。
【0205】
ガス導入系として、アルゴンガスと希釈酸素ガス(Ar:O2=95:5)とのそれぞれに一つずつマスフローコントローラ(MFC)がある。
【0206】
したがって、MFCでアルゴンと希釈酸素ガスの流入量を制御し、ゲートバルブを用いて全圧を制御することで、成膜室内に所定の雰囲気(全圧と酸素分圧)を形成できる。
【0207】
本実施態様では、2インチGeO2セラミックターゲットと二つの2インチIn2O3セラミックターゲット(材料源)との同時スパッタリングによって、In−Ge−O膜をガラス基板上に成膜する。
【0208】
成膜中は、常に、各In2O3ターゲットには35W、GeO2ターゲットには30Wの一定値にRF電源を維持した。
【0209】
成膜時の全ガス圧及びAr:O2流量比は、それぞれ0.4Pa及び69:1である。成膜速度は11nm/分である。さらに、基板温度を室温(〜25℃)に保持した。
【0210】
図14は、アニールしたIn/(In+Ge)=0.65及び0.75を有する酸化物チャネル層のX線回折パターンの例を示すグラフである。
【0211】
図14に示す、この膜で得られたX線回折パターン(薄膜法、入射角0.5°)によると、In/(In+Ge)=0.65で表される組成の場合、回折ピークはまったく見られなかった。すなわち、In−Ge−O膜はこの組成ではアモルファス構造を有する。
【0212】
膜の厚さは、25nmである。さらに、分光エリプソメトリ測定値から推定した平均根自乗平均(rms)表面粗さは、約0.1nmである。
【0213】
蛍光X線分析(XRF)分析の結果、薄膜の金属組成比はIn/(In+Ge)=0.65であった。
【0214】
膜の比抵抗は、約105Ω・cmである。
【0215】
電子キャリア密度は、1×1014/cm3と推定される。
【0216】
図15は、In/(In+Ge)の関数としてのホール移動度μhall(cm2/Vsec)の例を示すグラフである。
【0217】
純アルゴン雰囲気中で成膜した酸化膜のホール測定を実行した。移動度は、In含有率の増加とともに増加することが明らかに分った。In/(In+Ge)=0.95の場合に、非常に高い移動度40cm2/Vsecを実現することができる。
【0218】
次に、フォトリソグラフィーパターン形成法とリフトオフ法とによって、ドレイン電極14及びソース電極13をパターン形成した。ソース及びドレインは、それぞれ40nm及び5nmの厚さを有するAuとTiとの層状構造体である。
【0219】
さらに、ゲート絶縁物として厚さ150nmのSiO2誘電体をスパッタリングで成膜する。SiO2膜の比誘電率は約3.7である。
【0220】
さらに、標準的なフォトリソグラフィー法とリフトオフ法とを用いてゲート電極15をパターン形成した。チャネルの幅及び長さは、それぞれ200μm及び50μmである。
【0221】
(TFT素子の特性の評価)
図11は、室温で測定した、In/(In+Ge)=0.65を有するTFTの電流−電圧特性の例を示すグラフである。
【0222】
ソース電極−ドレイン電極間のドレイン電流IDに対するドレイン電圧VDの依存性を測定しながら一定のゲート電圧(VG)を加えると、VD=約6Vで飽和する(ピンチオフ)典型的な半導体トランジスタ挙動が観測された。
【0223】
VD=6VでVGを−20から20Vまで0.1Vきざみで変化させてTFTの伝達特性log(ID)対VGを評価すると、しきい値ゲート電圧(Vth)3.5Vが得られる。
【0224】
さらに、VG=20VでID=5×10−4Aのソースドレイン電流IDが測定された。
【0225】
図12は、In/(In+Ge)=0.65で表される組成を有するアモルファスIn−Ge−Oチャネル層を有するTFTの伝達特性log(ID)対VGの例を示すグラフである。
【0226】
トランジスタのオン−オフ電流比は、1010以上であった。さらに、出力特性から電界効果移動度を計算すると、TFTの飽和領域で3.4cm2(Vsec)の電界効果移動度μFEがそれぞれ得られる。
【0227】
しきい値電圧Vth(V)が3.5V、サブスレッショルドスイング値S(V/dec)が0.4V/decという小さなノーマリ・オフ型TFT特性の良好なスイッチング性能が得られる。
【0228】
さらに、同様なプロセス条件下で二つ以上のTFTを作製すると、同様なTFT特性を再現することが可能であった。
【0229】
すなわち、In−Ge−Oという新しいアモルファス酸化物半導体をTFTのチャネル層へ利用することによって、優れたトランジスタ特性を実現することができた。
【0230】
これは、In−Ga−Zn−Oシステムより少ない数の金属元素で構成される酸化物を用い、優れたTFT特性を実現することができるので、注目に値する。
【0231】
さらに、酸化物中にGeのような比較的に安価な元素を用いることによって、材料コストを減らすことができる。さらに、この材料は、環境への影響が少ないと予想される。
【0232】
したがって、材料コストが低く、TFT性能が良好なことから、OLEDの動作回路中に本発明のIn−Ge−Oチャネル層薄膜トランジスタを使用すると有望である。
(実施例2)
本実施例においては、チャネル層の材料組成依存性を検討した例である。
【0233】
材料組成依存性を検討するために、成膜にコンビナトリアル法を用いる。すなわち、スパッタ法により様々な組成を有する酸化物の薄膜を一度に一枚の基板上に作製する手法を用いて検討している。
【0234】
ただし、この手法を必ずしも用いる必要はない、所定の組成の材料源(ターゲット)を用意して成膜してもよいし、複数のターゲットのそれぞれへの投入パワーを制御することで、所望の組成の薄膜を形成してもよい。
【0235】
コンビナトリアルスパッタリング法によって組成が分布した酸化物薄膜を基板上に成膜し、素子作成プロセスを行うことで、基板上にさまざまなチャネル組成を有したさまざまなTFTを一度に作製した。引き続き、それぞれのTFTを評価、比較した。
【0236】
基板表面に対して傾けた三つのスパッタデバイスを用いてIn−Ge−O膜をスパッタ成膜した。ターゲットと基板上の所定の位置との間の距離及び角度に依存して、基板上の膜の組成が変化する。
【0237】
したがって、均一な厚さを有するが、広い組成分布を有する薄膜を3インチ基板上に得ることができる。
【0238】
それぞれが直径2インチのGeO2ターゲットと二つのIn2O3ターゲットとを同時にスパッタリングすることによって、In−Ge−O薄膜チャネルを成膜する。In2O3ターゲット及びGeO2ターゲットへのrfパワーをそれぞれ35W及び30Wで一定に維持する。
【0239】
Arで希釈した5%O2気体を使用することによって成膜時のO2分圧を正確に制御した。全圧は0.4Pa、Ar:O2=69:1である。基板温度を25℃に保持した。
【0240】
蛍光X線分析法、分光エリプソメトリ法、X線回折法(XRD)によって薄膜の物理的性質を評価する一方、4端子比抵抗測定及びホール移動度測定によって電気的に測定した。
【0241】
さらに、コンビナトリアル法によって成膜したIn−Ge−O薄膜を用い、n型アモルファス酸化物チャネル層として有するボトムゲートトップコンタクト型TFTを作製し、室温でTFT特性を評価した。
【0242】
分光エリプソメトリ法によって測定したところ、薄膜の厚さは25nm、厚さ分布は±10%の中にある。
【0243】
0.5以上0.9以下のIn/(In+Ge)で表される組成の場合、成膜直後の膜で得られたX線回折パターン(薄膜法、入射角0.5°)には、回折ピークは見えない。
【0244】
したがって、成膜直後のIn−Ge−O膜は、この組成範囲ではアモルファス構造を有する。さらに、膜を空気中、300℃で1時間アニールする。0.5以上0.9以下のIn/(In+Ge)で表される組成の場合、アニール後の膜で得られたX線回折パターンには、回折ピークは見えない。
【0245】
したがって、アニールしたIn−Ge−O膜は、この組成範囲ではアモルファス構造を有する。図14のプロットA及びプロットBは、0.65及び0.75のIn/(In+Ge)で表される組成比にそれぞれ対応するアニールした膜の回折パターンの例を示す。In/(In+Ge)=0.9を超えると、膜は多結晶構造を有し、回折ピークを観測することができる。
【0246】
次に、In−Ge−O薄膜の比抵抗とその組成依存性について説明する。
【0247】
図5は、4端子法シート抵抗測定システムを用いて、In−Ge−O膜のシート抵抗Rsの組成依存性を求めた結果を示すグラフである。
【0248】
ここで、膜厚は分光エリプソメトリ法によって測定し、厚さ及びシート抵抗Rsの測定値を用いて膜の比抵抗を計算した。In−Ge組成比の変化による比抵抗ρの変化を調べた。
【0249】
図5に示すように、膜の比抵抗はInリッチな組成領域からGeリッチな組成領域へ移るにつれて大きくなることがわかる。
【0250】
具体的には、図5に示すように、伝導体(〜10−1Ω・cm)から半導体(〜0.1Ω・cmから105Ω・cm)、半導体から絶縁体(106Ω・cmより大きい)へと変化する。
【0251】
TFTは、0.5以上又は0.97以下のIn/(In+Ge)で表される組成範囲、すなわち半導体的挙動をする組成範囲において良好に動作する。
【0252】
プロットの形状とTFT性能との間に相関が存在することがわかる。
【0253】
図5のρ対組成比のプロットは、半導体領域で四つの勾配を有する。
【0254】
勾配は、
領域1:0.1Ω・cm≦ρ<1Ω・cm、0.9≦In/(In+Ge)≦0.97に対応する、
領域2:1Ω・cm≦ρ<103Ω・cm、0.75<In/(In+Ge)<0.9に対応する、
領域3:103Ω・cm≦ρ<104Ω・cm、0.65≦In/(In+Ge)<0.75にほぼ対応する、
領域4:104Ω・cm≦ρ<107Ω・cm、0.5≦In/(In+Ge)≦0.65に対応する、
に対応する。
【0255】
この傾向は、TFT性能に密接に関連する。領域2の組成及び比抵抗と関連するTFT特性は、図10のプロットD及びCとして示される。
【0256】
同様に、図5の領域2、3及び4の特性組成及び比抵抗を有するチャネル層のTFT伝達曲線は、図10のプロットC、B及びAによってそれぞれ表すことができる。
【0257】
図5の領域1から領域4へ見ていくと、TFTパラメータS、Vth、オン/オフ電流比が著しく改善されることが明らかにわかる。
【0258】
しかし、領域1(Inリッチな組成範囲)から領域4(Geリッチな組成範囲)へ見ていくと、比抵抗が高くなり、キャリア濃度が低くなるため、移動度は減少する。
【0259】
したがって、領域3及び領域4に対応する組成で、非常に良好なTFT特性を実現することができる。
【0260】
詳しく検討すると、領域4(S=0.4)に対応するTFTが最も良いS値(図16)及び最も高い駆動安定性(図8)を有することがわかる。図16は、In/(In+Ge)原子比の関数としてのオン/オフ電流比の例を示すグラフである。
【0261】
ただし、領域4の移動度(移動度=3.4cm2/Vsec)は、領域3(移動度=6cm2/Vsec)より低い。領域3と領域4はともにTFTチャネルとして好適な組成範囲である。
【0262】
図9を参照すると、O2分圧によるIn−Ge−O膜比抵抗の変化を調べる。二つのプロットは、組成比In/(In+Ge)=0.65及び0.75にそれぞれ対応する。
【0263】
所定の組成の膜比抵抗は、酸素分圧の増加とともに増加することがわかる。
【0264】
これは、酸素分圧の増加による酸素空孔の減少と関連付けることができると考えられる。さらに、酸素分圧を調節することによってTFT利用に適する比抵抗範囲も調整することができることが観測される。
【0265】
図7は、経過時間に伴うIn−Ge−O膜の比抵抗の変化を測定した結果を示すグラフである。広い組成範囲のIn−Ge−O薄膜を調べた。
【0266】
図7は、In/(In+Ge)〜0.65のIn−Ge−Oの比抵抗の経時変化の例を示す。
【0267】
成膜直後のIn−Ge−O薄膜比抵抗は、当初、成膜後約300時間(1.5週)は時間とともに低下するが、最終的に安定化することが観測された。
【0268】
膜を空気中でアニールすると、比抵抗はより速い速度で安定化する。Geリッチな組成領域(0.5≧Ge/(Ge+In)≧0.25)において、最終的な安定した比抵抗がTFT用途に適切に良好である(105Ω・cm≧ρ≧103Ω・cm)。これによって、高Ge含有率領域におけるTFT特性の優れた安定性を説明することができる。
【0269】
次に、図1(c)に示す構成の、ボトムゲート薄膜トランジスタを作製した。
【0270】
最初に、厚さ100nmの熱酸化SiO2が形成されたn+−Si基板の上に、コンビナトリアルスパッタ法を用いてIn−Ge−Oの組成傾斜膜を成膜した。
【0271】
さらに、フォトリソグラフィーパターン形成法とリフトオフ法とを用いて、Au(100nm)/Ti(5nm)のソース電極及びドレイン電極をパターニング形成した。
【0272】
このようにして、さまざまな組成の活性層を有する多数のFETを有する薄膜を3インチ基板上に得た。最高プロセス温度は、120℃である。SiO2はゲート絶縁体として働き、n+−Siはゲート電極である。
【0273】
次に、TFT特性及びTFT安定性を評価する。
【0274】
図1(c)において、ゲート電極21はn+−Siからなり、ゲート絶縁体22はSiO2からなり、ソース電極23及びドレイン電極24はAu/Tiからなり、活性層25はIn−Ge−Oからなる。
【0275】
チャネルの幅及び長さは、それぞれ150μm及び10μmである。ドレイン電圧VD=6Vを用いてTFTの伝達特性を求める。
【0276】
最小ドレイン電流値に対する最大ドレイン電流値の比によってオン/オフ電流比を求めた。さらに、√ID(ID:ドレイン電流)対ゲート電圧(VG)グラフの傾きから電界効果移動度を計算した。
【0277】
さらに、√ID対VGグラフのx切片を見てしきい値電圧Vthを求めた。また、dVG/d(logID)グラフの最小値をS値(すなわち、電流を1桁増加させるのに必要な電圧VGの値)として採用した。
【0278】
図6は、n型In−Ge−Oチャネル層を有する電界効果型トランジスタ(FET)の伝達特性(log(ID)対VG)の組成依存性を示すグラフである。
【0279】
基板上のさまざまな位置におけるTFT特性を評価することによって、図6に示すように、In−Ge組成比によるTFTの特性の変化を得た。TFT特性は、基板上の位置の変化とともに、すなわちIn:Ge組成比とともに変化することがわかる。
【0280】
図6には、さまざまな組成のTFTのID−VG特性を示す(アニールなし)。
【0281】
Geリッチな組成領域(例えば、A及びB)では、小さな正のしきい値電圧とともに小さなオフ電流と大きなオン電流とが得られた。
【0282】
したがって、ノーマリ・オフ型TFT特性が得られる。
【0283】
一方、Inリッチな組成領域(例えば、プロットD及びE)では、非常に大きなオフ電流が得られた。
【0284】
オフ電流が非常に高いため、Inが0.85以上0.9以下のIn/(In+Ge)で表される組成範囲のTFTのオン/オフ比は〜101のオーダーと非常に小さい。
【0285】
図6のプロットD及びEに明らかに見られるように、In含有率が増加するにつれて、しきい値電圧はより負になる。これは、Inリッチな組成領域の高い導電率(多数のキャリア)によるのではないかと考えられる。したがって、より負のしきい値電圧(Vth)が得られた。
【0286】
0.5以上0.75以下のIn/(In+Ge)で表される組成範囲において、オン/オフ電流比>109の比較的優れた特性が得られた。
【0287】
電界効果移動度μFEはIn含有率の増加とともに増加するが、Sの値が大きくなることがわかる。良好なスイッチング周波数のためには高い移動度が望ましいが、オフからオンのスイッチング性能はS値によって決定される点に注意しなければならない。
【0288】
したがって、小さな正のS値が非常に望ましい。しかし、移動度の値は、所望の用途によって変化することがある。例えば、AMOLED用途では、1cm2/Vsec以上の移動度が望ましい。
【0289】
下の表3、4及び5に、組成比の関数としての成膜直後のTFT及びアニールしたTFTのS、Vth、μの値の一覧をそれぞれ示す。
【0290】
【表3】
【0291】
【表4】
【0292】
【表5】
【0293】
要約すると、0.6以上0.75以下のIn/(In+Ge)で表される組成マージン内の成膜直後のIn−Ge−Oチャネル層TFTで、以下に示すような優れたTFT特性を得ることができる。すなわち、On/Off(>109)、ドレイン飽和電流ID(>10−4A)、Vth(小さな正の値>0)及び移動度(3cm2/Vsec≦μ≦6cm2/Vsec)という特性である。
【0294】
同じTFTを空気中300℃でアニールすると、TFT特性はさらに改善される。
【0295】
図10は、アニールしたTFTの伝達特性(log(ID)対VG)を示す。
【0296】
組成の関数としてのTFT特性の傾向は、アニール前の状態と類似しているが、成膜直後のTFTと比較すると、特にInリッチな組成領域で、TFT特性の絶対値に明らかな変化がある。
【0297】
図10は、TFTをアニールした後の特性の組成依存性の例を示す。
【0298】
図10のプロットD及びEと、図6のプロットD及びEとを比較すると、アニールによってTFT特性が改善されることを明らかに示している。
【0299】
良好なTFT特性を示す組成の範囲がさらに広がっていることが明らかに分る。例えば、それぞれIn/(In+Ge)=0.65、In/(In+Ge)=0.75、In/(In+Ge)=0.85の場合のプロット(B)、(C)、(D)は、良好なTFT特性を示す。
【0300】
Geリッチな組成領域(例えばA及びB)では、小さな正のしきい値電圧Vthとともに小さなオフ電流と大きなオン電流とが得られ、すなわちノーマリ・オフ型TFT特性が得られる。この組成領域におけるS値は非常に低く(0.4≦S≦0.55)、TFTのスイッチング特性に優れている。
【0301】
Geリッチな組成領域(例えば、A及びB)では、オフ電流は若干小さくなり、したがって、Geリッチな組成領域では、オン/オフ比は大きくなる。
【0302】
図2に、アニールしたTFTの電子電界効果移動度μFEのIn:Ge組成依存性を示した。μFEは、In含有率の増加とともに増加することが分かる。
In/(In+Ge)で表される組成が0.97以下0.65以上のとき、17以下3.4cm2/V秒以上のμFEを得ることができる。
【0303】
図3に、しきい値電圧の組成依存性を示した。薄膜トランジスタのしきい値電圧(Vth)が0V以上のとき、回路を構成することがは容易となり好ましい。図3に示すように、In/(In+In)が0.75以下のときVthは正になり、明らかに望ましい特性である。
【0304】
図4に、S値の組成依存性の例を示す。In/(In+Ge)=0.5以上0.75以下が望ましいことがわかる。この範囲ではS値として0.4から0.55の間の小さな値を実現することができるからである。そのような小さなSの値は、明らかにTFTの優れたスイッチング(オフからオンへの)性能を示す。
【0305】
図10に示した、In/(In+Ge)=0.55(図10、プロットA)のTFTの場合、電界効果移動度の値、オン/オフ電流比、ターンオン電圧、しきい値電圧及びS値は、それぞれ以下のようになる。すなわち、電界効果移動度の値が3.4cm2(Vsec)、オン/オフ電流比が4.5×1010、ターンオン電圧が−1.9v、しきい値電圧が3.5v、S値が0.4V/decである。
【0306】
In/(In+Ge)=0.75のTFT(図10、プロットB)の場合、電界効果移動度の値、オン/オフ電流比、ターンオン電圧、しきい値電圧及びS値は、それぞれ以下のようになる。すなわち、電界効果移動度の値は6cm2/Vsec、オン/オフ電流比は2×1010、ターンオン電圧は−5V、しきい値電圧は0V、S値は0.55V/decである。
【0307】
次に、アモルファス酸化物半導体の中での、In−Ge−O系のメリットを調べるために、本発明の発明者らは、類似の構成を有するが異なる酸化物をチャネル層として有するTFTを鋭意作製した。
【0308】
この目的のために、In−Mg−O及びIn−Al−O、In−Ga−OのTFTを作製してTFT特性を比較した。
【0309】
本発明の発明者らは、In−Ge−O系の場合と同様に、In−Mg−O、In−Al−O及びIn−Ga−OのTFTの検討を実施し、組成依存性の結果を得た。それぞれのIn-X-O系において、良好な特性を示したTFTを抽出し、それらを、In−Ge−O系の酸化物を含むTFTと比較した。
【0310】
図17は、これらのそれぞれの材料系のTFT伝達特性(log(ID)対VG)の例を示すグラフである。図17において、Ge1及びGe2は、0.35、0.25のGe/(Ge+In)で表される組成比を有するTFTをそれぞれ表す。
【0311】
In−Ge−OのTFT特性は、明らかにIn−X−O(X=Ga、Al、Mg)のどれよりも優れている。ここで、Xは、2金属酸化物システム中の第2の金属元素を表すために用いられる。第1の金属元素はインジウムである。
【0312】
図18は、In−Ga−O、In−Al−O及びIn−Mg−O系の酸化物半導体を用いたTFTのサブスレッショルドスイング値と本発明のIn−Ge−O系の酸化物を含むTFTのサブスレッショルドスイング値とを比較した例を示す。図18において、サブスレッショルドスイング値は、S(V/dec)で表される。
【0313】
図19は、In−Ga−O、In−Al−O及びIn−Mg−O系の酸化物半導体を用いたTFTのオン−オフ電流比と本発明のIn−Ge−O系の酸化物を含むTFTのオン−オフ電流比との間の比較の例を示すグラフである。
【0314】
図20は、In−Ga−O、In−Al−O、In−Mg−O系の酸化物半導体を用いたTFTの電界効果移動度と本発明のIn−Ge−O系の酸化物半導体を用いたTFTの電界効果移動度との比較の例を示すグラフである。
【0315】
図18、19及び20でそれぞれ示したように、S(V/dec)、On/Off及びμFE(cm2/Vsec)によってTFT特性を比較すると、この事実(In-Ge-O系酸化物半導体の優位性)は明らかである。
【0316】
このようにIn−Ge−Oシステムでは、図18−図20に示したその他のIn−X−Oシステムと比べて、小さなS値と大きな電界効果移動度とともに、高いオン/オフ比が得られることがわかる。
【0317】
In−Ge−O酸化物半導体とシリコン酸化物ゲート絶縁体との間に好ましい界面が容易に形成され、この界面が小さなS値を可能にすると考えられる。
【0318】
また、In−Ge−O系は、TFT動作する組成比の領域がIn−Zn−O系と比べて広いという特徴(利点)がある。下の表6を見れば、In−Ge−Oの場合とIn−Zn−Oの場合とのTFT動作する組成範囲がわかる。In−Ge−O系のTFT動作する組成比の領域がIn−Zn−O系より広いことがわかる。
【0319】
【表6】
【0320】
In−Ge−O系の酸化物を含むTFTは、駆動ストレスに対しても良好である。
また、In−Ge−O系の酸化物を含むTFTは、経過時間に対しての安定性が良好である。
【0321】
図8に、作製直後と作製1ヶ月後とのTFTの伝達特性を示した。図8は、In/(In+Ge)=0.65のチャネル組成に対応する。特性変化が小さいことがわかる。
【0322】
(実施例3)
本実施例は、アモルファスIn−Ge−O酸化物半導体をプラスチック基板上のチャネル層へ利用する例である。
【0323】
本実施例の薄膜トランジスタの構成例を図1(b)に示す。チャネルの長さは60μm、チャネルの幅は180μmである。基板10は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。
【0324】
最初に、フォトリソグラフィーパターン形成法とリフトオフ法とによって、ゲート電極15及びゲート絶縁層12をPET基板10上にパターン形成する。
【0325】
ゲート電極15は、厚さ50nmのTa層からなる。ゲート絶縁層SiOxNyは、スパッタリング技法を用いて成膜され、厚さは150nmである。さらに、SiOxNy膜の比誘電率は、約6である。
【0326】
次に、スパッタリングによってトランジスタのチャネル層を成膜し、フォトリソグラフィーパターン形成とリフトオフ技法とによって形状を定めた。
【0327】
チャネル層は、In−Zn−Ge−Oシステムのアモルファス酸化物11からなり、組成In:Zn:Geは1.4:2.1:1である。
【0328】
上記で言及したアモルファス酸化物In-Zn-Ge膜は、アルゴンガス及び酸素ガス雰囲気中のrfスパッタリング法によって形成した。
【0329】
本実施態様における三つのターゲット(材料源)を同時にスパッタリングした。この目的のために、In2O3、GeO2及びZnOの三つの2インチ小型焼結ターゲットを使用する。
【0330】
各ターゲットへのRFパワーを制御することによって、In:Zn:Ge酸化物薄膜の組成を所望の値に制御することができる。全体の蒸着圧を0.4Paに固定し、Arで希釈した5%O2気体を使用することによって、Ar:O2=69:1を用いてO2分圧を正確に制御した。基板温度は、室温(〜25℃)に保持する。
【0331】
成膜直後の状態とアニール後状態とにおいて、酸化膜の回折パターン(薄膜法、入射角0.5度)に回折ピークは観測されない。すなわち、酸化膜はアモルファスである。アモルファス酸化膜の厚さは、約25nmである。
【0332】
さらに、アモルファス酸化膜の吸収端は、3eVより大きく、光吸収スペクトルで分るように、電磁スペクトルの可視光域及び近赤外光域で非常に良好な透明性を示す。
【0333】
さらに、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極は、透明導電性酸化物とされているインジウムスズ酸化物からなっていた。インジウムスズ酸化物層の厚さは、100nmである。
【0334】
(TFT素子の特性の評価)
室温条件でPET基板上のTFTの特性を測定する。トランジスタのオン−オフ比は、1010以上である。さらに、電子電界効果移動度μFEを計算したところ、3cm2(Vsec)であった。
【0335】
さらに、本実施態様におけるIn−Zn−Geチャネル層を有する薄膜トランジスタは、高い性能及び高い環境安定性を有する。
(実施例4)
本実施例は、チャンネル層にアモルファスからなるIn-Ge-Zn-O を用い、図1の(a) に断面図を示すトップゲート型の構造を有した電界効果トランジスタの例である。
【0336】
図 1(a) に示すように、チャンネル層として、アモルファスからなるIn-Ge-Zn-O 酸化物膜をガラス基板(Corning 社 1737) 上に形成する。 アモルファスIn-Ge-Zn-O 酸化物膜は、アルゴンと酸素の混合雰囲気中でRFスパッタ法で形成する。成膜装置は、図13に準じている。
【0337】
本実施例においてIn-Ge-Zn-O 膜は、3つの2インチサイズのセラミックターゲット(ZnO, GeO2 および In2O3)を用い、同時スパッタによりガラス基板上に形成した。RF 投入パワーは成膜時に一定に保たれており、ZnO, GeO2 および In2O3に対して、それぞれ電源45W, 30W, 35Wである。 成膜時の全圧は0.46Paであり、ArとO2の流量比は69:1である。 成膜レートは11nm/minである。成膜時に、基板加熱は行っていないため、基板温度はほぼ室温に保たれている。
【0338】
図 26に示すように、組成比がIn:Ge:Zn=42:13:45の薄膜のX線回折パターンは、回折ピークを持たず、薄膜はアモルファスである。
【0339】
膜厚は25nmであり、エリプソメトリによる評価によると表面粗さは約. 0.1nm と見積もられた。蛍光X線により組成分析を行うと、In:Ge:Zn=42:13:45であった。抵抗率は 105 W.cm.であり、電子キャリア濃度は1´1014/cm3を見積もられている。
【0340】
次に、ドレイン電極14 とソース電極 13 がリソグラフィー技術とリフトオフ法によりパターン形成される、ソースとドレインはAu とTi の積層電極からなり、それぞれの厚さは40nm 、 5nm,である。 さらに、ゲート絶縁層として厚さ100nm の SiO2をスパッタ法によりする。SiO2 膜の比誘電率は約3.7である。引き続き、ゲート電極15 がパターン形成された。チャンネル幅とチャンネル長は、それぞれ 200mm、50mmである。
【0341】
(TFT特性の評価)
図 24(b) は、組成比Zn:In:Ge=45:13:42 のIn-Ge-Zn-Oチャンネルを有するIn-Ge-Zn-O TFTの電気特性の例を示している。測定は室温で行われている。図 24(b)に示すように、典型的な半導体トランジスタの振る舞いが観測された。一定のゲート電圧下でドレイン電圧を変化させながら、ドレイン電流を測定すると、, 約VD= 6 Vにおいて 電流飽和(pinch-off) が観測された。VD=6V においてVG が-30 から 30 Vの範囲でトランスファ特性 log (ID) vs. VGを評価した。VG=25Vにおけるソース/ドレイン電流IDは ID=5×10-4A であった。 オンオフ電流比は1011台であった。出力特性から電界効果移動度mFEを計算すると、飽和領域において 7.00 cm2(V-s) が得られた。ノーマリ・オフ型の良好なTFT特性を示し、Von と閾値電圧Vth (V) は -0.3 and 7.5Vであった。S値は0.5V/dec である。
【0342】
さらに、2回以上同様なプロセス条件でTFTを試作したところ、同様なTFT特性を再現することができた。
【0343】
すなわち、In-Ge-Zn-Oという新しいアモルファス酸化物をチャンネル層に適用することで、良好なトランジスタ特性が達成された。良好な特性のトランジスタの再現よく形成できる性に理由は定かでないが、真空やさまざまな酸素雰囲気中での安定性やチャンネル膜厚に対する特性変動が小さいことなどがその理由であると考えられる。
【0344】
図 27 と 図28 は、In-Zn-Ge-O系 TFTと In-Zn-Ga-O系TFTの比較を示す図である。図 27は、さまざまなZn/In 組成比に対するトランスファ特性の振る舞いを示している。図 27の左図は、In-Zn-Ge-O系において、 Ge 含有量は9 (atomic%)に固定されている。すなわち Ge/(Ge+Zn+In)=0.09 である。右図は、In-Zn-Ga-O系において、 Ga 含有量は9 (atomic%)に固定されている。すなわち Ga/(Ga+Zn+In)=0.09 である。 図 28は、さまざまなGe (もしくはGa)含有量に対するトランスファ特性の振る舞いを示している。図 28の左図は、In-Zn-Ge-O系において、 Zn/In比が約0.75に固定されている。図 28の右図は、In-Zn-Ga-O系において、 Zn/In比が約0.75に固定されている。図28の左図におけるトランスファ特性a, b, c, d, e の組成は、3元相図である 図 29の1D, 2D, 3D, 4D,5Dの組成に対応している。
【0345】
In-Zn-Ge-O系においては、Geが3atomic%以下の含有量で含有すれば(例えばGe/(Ge+Zn+In)=0.05 、Zn/In=0.75)、キャリア密度を低減し、スイッチオフすることができる。一方で、図28Bに示すように、In-Zn-Ga-O系においては、同程度のGaの含有量ではキャリア濃度を低減し、スイッチをオフするのに不十分であることがわかる。すなわち、In-Zn-Ge-O系では、Ga/(Ga+In+Zn)=0.05 and Zn/In=0.75において、スイッチオフできていない。
【0346】
これはIn-Ge-Zn-O系の特筆すべき利点である。なぜなら、In-Ge-Zn-O系はより広い金属組成範囲において、良好なトランジスタ特性を実現できることを示しているからである。
【0347】
すなわち、本発明の新しい半導体材料であるIn-Ge-Zn-O系は、In-Ga-Zn-O系と比べて組成マージンに優れる。このことはIn-Ge-Zn-O系が量産時のコスト性能に優れることを意味する。
【0348】
さらに、 In-Ga-Zn-O 系においてアモルファスが得られる組成範囲は、Zn含有量においてZn.(Zn+In+Ga)= 0.7以下の範囲に限られるが、In-Ge-Zn-O系においては、 Zn/(Zn+In+Ge)=0.8以下の範囲までアモルファスである。すなわちIn-Ge-Zn-O系はアモルファスの組成領域が広い。
【0349】
InやGaはZnに比べて比較的希少であり高価な元素であるため、Zn組成比が高い材料はコスト的に好ましい材料である。さらには環境性にも優れる。
【0350】
このように、In-Ge-Zn-O チャンネル層を適用したトランジスタは、良好な性能を示し、組成マージンが大きく、材料コストが低いという利点を有することから、有機LED表示装置の駆動回路にとって好適である。
(実施例5)
本実施例では、コンビナトリアルスパッタ法を用いて成膜を行うことで、一度に薄膜材料の組成依存性を検討することができる。この技術をTFT試作に適用することで、一度にTFT特性のチャンネル組成依存性を検討することができる。RFスパッタによりコンビナトリアル法によって、基板上に広い組成範囲にわたり分布を有した膜を一度の成膜によって形成する。
【0351】
In-Ge-Zn-O薄膜は、基板に対して傾いて配置された3つのスパッタターゲットを用いて形成された。薄膜の組成は、基板上の位置に依存して変化している。このようにして、膜厚は均一(同一)で、組成の異なる膜を基板上に形成できる。ターゲットには2インチのセラミックターゲットZnO、GeO2、In2O3 を用いた。
【0352】
投入パワーは、 ZnO、InO3 、GeO2 に対して45W、35 W 、 30 - 45Wである。ここで、5%O2に希釈された Ar+O2 混合ガスとArガスを用い、流用を制御することで、酸素分圧を精度良く制御した。基板温度は、25°Cである。
【0353】
表7にはIn-Ge-Zn-O膜の薄膜形成条件を記した。
組成傾斜膜の膜厚分布をエリプソメトリを用いて評価したところ、膜厚は25nm で、その分布は±10%以内であった。
【0354】
【表7】
【0355】
In-Ge-Zn-O 組成分布膜を25分割し、試料名を1B, 1C, 1D, 2A, 2B, 2C, 2D, 2E, 3A, 3B, 3C, 3D, 3E, 4B, 4C, 4Dとした。GeO2ターゲットへの投入パワーを調節することで、より広い組成範囲の検討が可能である。そろぞれの試料の組成比In : Ge : Znは、蛍光X線法により分析された。図29 の3元相図において組成が記されている。
【0356】
図29 はアモルファスの組成領域と結晶化した組成領域が記されている。アモルファスの同定には、X線回折法を用いている。図29に記された点においては、アモルファスであった。 In-Ge-Zn-O系において、結晶化した組成範囲は、Zn組成の大きい領域に存在する。結晶化した領域は図 29において破線で囲まれた影つき領域である。 注目すべきは、In-Ge-Zn-O系のアモルファスを示す組成範囲が、In-Ga-ZnO系においてアモルファスとなる範囲より広いことである。このようにアモルファスの組成範囲が広いことは、In-Ge-Zn-O系の利点の一つである。
【0357】
分光エリプソメトリと分光評価により、Ge含有量の大きい組成1A, 2A, 3A, 4A, 5A, 1F において、光吸収端が短波長側にあり可視域の屈折率が小さいことがわかった。すなわち、透明な基板上に形成された際に、Ge含有量が大きい薄膜は透過性に優れるという利点がある。
【0358】
次に、抵抗率の組成依存性を評価した。成膜時の酸素分圧制御のために、Ar+O2流量は20sccmとしている。In含有量の大きい組成において抵抗率が小さく、Ge(もしくはZn)含有量の大きい組成において抵抗率が大きいことがわかった。特に、抵抗率の低減にはIn含有量の影響が大きい。これは、In含有量が大きい組成において酸素欠損量が多いことでキャリア濃度が大きいこと、さらには電子移動度が大きいためと考えられる。Ge含有量が多い組成においてはGe-Oの結合エネルギーが大きいため、酸素欠損ができにくいものと考えることができる。
【0359】
In-Ge-Zn-O 薄膜は、In-Ga-Zn-O系薄膜と比べて、チャンネル層に好適な抵抗率を有した薄膜を広い組成範囲で得ることができることがわかった。
【0360】
次に、大気中300℃アニール後の薄膜について述べる。組成が1D , 2D, 3D, 4D, 5Dにおける、アニール前(as deposited)とアニール後(post annealed)の抵抗率(resistivity)を表8と 図 30に示す。
【0361】
【表8】
【0362】
表8 と 図 30 に示すように、抵抗率はアニールによって減少し、チャンネル層に適合した半導体的な振る舞いをする組成範囲が拡大する。
【0363】
次に、抵抗率のGe含有量依存性について述べる。図31 は抵抗率のGe含有量依存性を示している。ここで組成比Zn/(Zn+In)=0.4 である。Ge含有量が増えると抵抗率が大きくなることがわかる。
【0364】
次に、抵抗率の成膜時の酸素分圧依存性について述べる。 酸素分圧によって、キャリア濃度を制御することができる。主に酸素欠損量が酸素分圧によって制御されていると考えられる。図32 は、In-Ge-Zn-O 膜のキャリア濃度の酸素分圧依存性を示している。酸素分圧を精密に制御することで、半導体特性を有した(キャリア濃度が1014 /cm3から 1018 /cm3程度の)薄膜を得ることができる。このような薄膜をチャンネル層に適用することで、好適な特性を示すTFTを実現することができる。図32 に示すように、典型的には0.008 Pa,の酸素分圧において半導体特性を示した薄膜を形成できる。酸素分圧が 0.01Pa 以上だと絶縁体になり、0.002Pa 以下だと伝導体になり、チャンネル層としては不適である。
【0365】
また、好適な酸素分圧は、チャンネル層の金属組成に依存する。ゆえに複数の酸素分圧での形成を検討した。
【0366】
図33 はIn-Ge-Zn-O 膜をAr+02 の流量が20sccm で成膜したときと、10sccm で成膜したのときの抵抗率を比較したものである。図 34 は300℃で1時間のアニールを行った膜の抵抗率である。Ar+O2 流量が小さいときに抵抗率が小さいことがわかる。これはAr+O2 流量が小さいときに、酸素欠損の量が増加したためと考えることができる。図 34に示すように、アニールにより抵抗率が減少する。図 35 と36 には、 相図を用いて抵抗率の振る舞いを記した。
【0367】
TFTのチャンネル層に適した抵抗率を示す組成範囲は、酸素分圧に依存して移動する。
(実施例6)
本実施例は、実施例2(In-Ge-O TFTs の組成依存性に関する実施例)と同様な手法で、In-Ge-Zn-O TFT の組成依存性を検討した例である。TFT試作のコンビナトリアル手法を適用している。チャンネル層の薄膜形成手法は、実施例2に準じている。チャンネル層の膜厚は約25nmである。
【0368】
以下、In-Ge-Zn-O TFTのトランスファ特性の組成依存性の結果について説明する。チャンネル層の成膜において、Ar+O2ガスの流量を20 sccmとしている。In-rich な組成(すなわち相図の図57において点 “a”, “i”, “h”で囲まれた組成範囲)において、オン電流が比較的大きく、電子移動度が7 cm2(V・s)-1 以上の大きな値を示すことがわかった。Inの含有量が大きすぎる場合(含有量が97 atomic% 以上の場合)には、負のゲート電圧が印加された場合でさえ、正のゲート電圧が印加された場合と同程度の電流が流れてしまう。すなわち、このようなInの含有量が大きすぎると、トランジスタ動作を示さなかった。
【0369】
チャンネル層の組成は、相図の図57において点“a”, “i” and “h”で囲まれた範囲にある場合には、オン電流が大きく、ターンオン電圧が負のトランジスタが実現された。
【0370】
一方、Geの含有量が増加するにつれて、オフ電流が減少する。また、移動度も小さくなる。閾値電圧は正の値を示し、結果としてノーマリ・オフ特性(ゲート電圧に電圧を印加しない場合、オフ状態となり、電流がほとんど流れない特性)が得られる。 Ge 含有量が 3 atomic%と 25atomic% の間において、109以上のオンオフ電流比と小さなオフ電流が実現される。このとき、移動度は 3 から16 cm2 V/s の間の値が得られる。もっとも移動度の大きいトランジスタは、 InとZnの含有量が大きい組成で得られた。好ましい組成範囲は、Zn rich な組成 (Zn/(In+Zn+Ge)=0.65) であり、全体的に良好なTFT特性が得られる。移動度、オンオフ電流比、閾値電圧、S値として、それぞれ 15.65 cm2(V・S)-1, 1 × 1011, 6 V, 0.26 V/decadeが得られた。X線回折の結果は、この好ましい組成領域でIn-Ge-Zn-O filmはアモルファスであることが確認された。さらに、非常に小さいS値を有したトランジスタが、 図57の点“s”, “u”, “v” “b”で囲まれたZn−richな領域で実現できた。
【0371】
また、図57の点“s”, “u”, “t”, “n” で囲まれた組成範囲において、すべてのTFT特性(移動度、オンオフ電流比、ノーマリ・オフ特性)が良好であった。
【0372】
抵抗率が数 Ωcm to 数100 Ωcm の薄膜をチャンネル層に用いた場合にTFT動作が実現されることが確認された。
【0373】
次に、Ar+O2流量が10 sccm の条件でチャンネル層が形成された場合のTFT特性について説明する。これによって、In-Ge-Zn-O 膜の成膜時の酸素分圧依存性が調べられた。アニール処理を行わない場合のTFTに関して、酸素流量比を大きくするにつれて、オンオフ電流比と閾値電圧は増加する。In-Ge-Zn-O 膜の抵抗率は、20sccm のAr+O2ガス流量を用いた方が、10sccm の流量を用いた場合よりも大きい。結果として、トランジスタ動作が可能となる組成領域は、In-richな組成領域の方向に移動する。結果として、移動度の大きなTFTを得ることができる。 成膜時の酸素分圧が大きいと、アニール処理を施していないトランジスタにおいては、その閾値電圧が正の方向に移動することがわかった。すなわち、アニール処理を施していない(as-deposit)トランジスタにおいては、成膜時の酸素分圧(酸素流量)によって影響を受ける。
【0374】
一方で、300°C で1時間のアニール処理を施したTFTにおいては、TFT の性能が、成膜時の酸素分圧にほとんど影響を受けなかった。アニール後の抵抗値が成膜時の酸素分圧によって影響を受けるような場合であっても、TFT特性(オンオフ電流比、閾値電圧、移動度など)はほとんど変化しなかった。このことは、In-Ge-Zn-O系TFTは成膜時の酸素分圧に対しての特性マージンが広い、すなわちプロセスマージンが広いことを示している。この結果は図 37 , 図 38 および図 39に示されている。これらの図には、さまざまな金属元素組成における、成膜時の酸素分圧変化にともなうトランスファ特性の変化が記されている。1D はIn rich( In含有量が60atomic%以上)の組成, 4Eは Zn richな組成( Zn含有量が 60atomic%以上) 、3Aは Ge含有量が25atomic%の組成である。これらの組成におけるTFT特性は、表9にまとめた。
【0375】
表9 には、さまざまなチャンネル組成を有したTFTの組成が記されている。チャンネル層を成膜する際のAr+O2ガス流量に対してまとめられている。また、TFT形成後のアニール処理をせずに評価した(as-depo)データと、アニール後に評価したデータが記されている。
【0376】
【表9】
【0377】
もっとも大きな電界効果移動度が得られた組成領域は、In richの組成領域や Zn-richの組成領域である。たとえば、11.5 cm2(V・S)-1という高い移動度を有した薄膜トランジスタが、Zn-In-Ge の組成比として、62 atomic%, 33 atomic%, 5 atomic%で実現された。すなわち、Znの含有量が最も大きい組成である。 同時に、オンオフ電流比、ターンオン電圧(Von), S値はそれぞれ 1 × 1011, -0.7V, and 0.6 V/decadeであった。チャンネル層成膜時のAr+O2ガス流量比を 20sccm にしても、ほぼ同様な特性が得られた。
【0378】
次に、さまざまなGe組成比のチャンネルを有するIn-Ge-Zn-O TFTについて、図 40と表10とを用いて比較説明する。Ge/(In + Ge + Zn)で表されるGe含有量が 25 atomic% のトランジスタ特性を評価した結果、3 cm2/Vsを超える電界効果移動度を得ることが出来た。Ge 含有量が5 atomic% の酸化物を用いると、12 cm2/Vs を超える電界効果移動度を得ることが出来た。すなわち、Ge含有量を減らすと、電界効果移動度が大きくなる。
【0379】
【表10】
【0380】
閾値電圧が0V以上の薄膜トランジスタを用いると電子回路を構成することが容易になる、図 41 と 表11は、In-Ge-Zn-O 系TFTにおけるターンオン電圧VonのGe含有量依存性を示している。ここでZn/In 組成比は固定されている。図41に示すように、正のターンオン電圧Von、結果として正の閾値電圧を有するTFTは、Ge/(Zn+In+Ge)が0.03以上0.5以下で得ることができる。Ge 含有量が 5atomic% の時、Von は 2.4であり、Ge 含有量が 25atomic% まで増えるにつれて、Von は正の大きな値10.3へと変化する。すなわち、Ge含有量を増やすことで、容易にノーマリオフトランジスタを実現できるようになる。Vonおよび閾値電圧Vthは、Ge含有量が増えるにつれて、より正の側に動く。
【0381】
【表11】
【0382】
高性能のスイッチング素子には、高いオンオフ電流比が望まれる。図 42と表12 はオンオフ電流比への Geを含有させることの効果を示している。Ge 含有量が5atomic%の時、1E+11のオンオフ電流比が得られ、Ge 含有量が25atomic% まで増えるにつれて、オンオフ電流比は1E+10まで減少する。一般に、In-Ge-Zn-O 系のTFTは非常に大きなオンオフ電流比を示すが、Ge含有量を大きくすることで特に大きなオンオフ電流比を得ることができる。
【0383】
【表12】
【0384】
次に、Geを含有することによるS値への効果について説明する。図 43(a) と (b)と表13と表14はS (V/dec) for In-Ge-Zn-O系TFTのS値のGe含有量依存性を示している。ここで、Zn/In組成比は0.4 及び2の結果が記してある。In リッチな組成を有する TFTs (図 43(a)) と Zn リッチの組成を有するTFT (図 43(b))で傾向が異なることが見て取れる。
【0385】
表13に示すように、Zn/In=0.4 でGe 含有量5atomic% において、 S 値は 0.9程度であり、 Zn/In=0.4 でGe含有量が25atomic%では S 値は 0.5 V/decである。すなわち、In リッチの組成では、S 値はGe含有量の増加とともに減少する。
【0386】
【表13】
【0387】
Zn含有量が大きい組成に対しての、Geに効果については図 43 and 表14に記した。Zn/In=2 でGe 含有量が 5atomic% において、S 値は約0.5である。Ge 含有量が25atomic%まで増えるにつれて、S値は 約1.3まで増加する。すなわち、Zn含有量の大きい組成のTFTにおいて、S値はGe含有量の増加とともに増加する。
【0388】
【表14】
【0389】
結果として、Ge含有量を減らすにつれて、電界効果移動度(mFE, cm2/Vs) とオンオフ電流比は増加し、Vthは負の方向に動く。一方で、In 含有量が45atomic%以上の場合には、 S 値はGe含有量が増加するとともに減少する。一方でIn 含有量が45atomic%以下の場合には (In/(In+Ge+Zn)<0.45)、S 値はGe含有量が増加するとともに増加する。
【0390】
移動度はTFT特性パラメータの中で重要な項目の一つである。なぜなら移動度は半導体チャンネル層の性能、特に電流駆動能力や最大駆動周波数をに寄与するからである。実際、液晶表示装置の用途では、0.1 cm2/V-s 以上の移動度が望まれる。また有機ELディスプレイへの用途には1 cm2/V-s 以上の移動度が必要である。要求される移動度は、用途に依存する。本実施例において、組成比Zn/(In+Zn) が 0.10 以上0.86以下、 Ge/(Ge+In+Zn)であらわされるGe含有量が0.03以上 0.3 以下の時に有機ELを駆動可能な移動度を実現できる。さらに、In/(In+Ge) で表される組成比が 0.10以上 0.75以下で、Ge/(Ge+In+Zn)で表されるGe含有量が0.03以上 0.15 以下の時に良好なTFT特性が得られ、好ましい。
【0391】
ゆえに、高移動度で小さなS値を有した薄膜トランジスタを得るためには、Ge 含有量は少ない方が好ましい。この観点から、Ge/(Ge+In+Zn) で表されるGe含有量は 0.3以下であることが好ましく、さらには0.03以上0.15以下であることが好ましい。
【0392】
一方で、Zn含有量が0atomic% であるIn-Ge-O をチャンネルとして用いたTFTのおいては、TFT特性は 図44に示すように、In含有量が増えるにつれて、移動度が大きくなり、S値が大きくなり、 閾値電圧が負の方向に移動する。In/(In+Ge) で表される組成比が 0.9以下のときに、小さなS値が得られる。 加えて、In/(In+Ge) が0.50 以上or 0.85 以下において、非常に小さなS値を有したTFTを実現できる。
【0393】
次に、Ge含有量を固定した際に、Zn/In 比に対するTFT特性の振る舞いについての実験結果を説明する。
【0394】
図 45 と 表15は電界効果移動度mFE, のZn/(In) 比依存性を示している。ここで Ge含有量は8.5atomic%である。 移動度は、Znを高濃度で含有する場合と、 Inを高濃度で含有する場合に大きい。
【0395】
【表15】
【0396】
図 46 と 表16はVon のZn/In 比依存性を示す。
【0397】
【表16】
【0398】
Zn/In比が 1 より小さいと、 Vonが負の値になることが解る。Zn/In比が1より大きくなるにつれて、 Von (さらには Vth)が正の値を示すようになる。
【0399】
図 47 と表17はオンオフ電流比のZn/In比依存性を示している。
【0400】
【表17】
【0401】
広い組成範囲にわたり1010以上の大きなオンオフ電流比が得られることがわかる。 またオンオフ電流比はZn/In 比とともに単調増加する。
【0402】
図 48と表18は S値のZn/In 比依存性を示している。S 値はZn/In比に対して単調増加することがわかる。
【0403】
【表18】
【0404】
次に、チャンネル層成膜時の酸素流量をさらに増やし、Ar+O2流量が40 sccm and 50 sccm において、In-Ge-Zn-O TFTを作成した。Ge含有量が大きい組成においては、ゲート電流を加えても電流の上昇が生じず、TFTはスイッチング特性を示さなかった。Ge含有量が少ない組成においては、大きな電界効果移動度と小さなS値はが得られた。特性値は、Ar+O2流量が20 sccm の時と遜色なかった。特に、Ge含有量が 15 atomic% 以下において、7 cm2/Vs 以上の電界効果移動度と1 V/decade 以下のS値を示した。
【0405】
以下に本実施例の結果、すなわちIn-Ge-Zn-OTFTの組成依存性について簡潔にまとめる。
【0406】
In-rich 組成(相図の図57で点”a”, “i”, “h” で囲まれる領域)において、 移動度とオンオフ電流比が大きく、ヒステリシスが小さい。Vonは負である。
【0407】
Ge-rich 組成( 図57の点"h" “v”, “c” “d”で囲まれる領域)において, オフ電流が小さくt (<1014(A))、 オンオフ電流比が大きく、閾値電圧が正である。光に対する安定性や光透過性に優れる。
【0408】
Zn-rich 組成(図57の点“s”, “u”, “v”, “b” で囲まれる領域)において, 移動度とオンオフ電流比が大きく、オフ電流とS値が比較的小さい。また、駆動安定性が比較的良い。
【0409】
次に、成膜時の酸素分圧の影響に関して、言及する。
【0410】
成膜時の酸素分圧を増加すると、アニール処理を施こさない場合には、トランジスタ動作が可能な組成領域はIn-rich 側へと動く。このことは、移動度を大きくする観点で有利である。しかしながら、アニール処理を施した場合には、成膜時の酸素分圧の影響は大きくない。
【0411】
次に、DC駆動安定性の評価を行った結果について説明する。800 秒間にわたりゲート電圧Vg=12V と ソースドレイン電圧Vd=6Vの直流ストレスを加え、ストレス前後でTFT特性を比較評価した。 図 49(a) と 図 49(b) はストレス前後のトランスファ特性を示している。ここで、組成比はIn :Ge:Zn= 42:13:45 と In :Ge:Zn= 32:8:60である。それぞれ1.48V と 0.45Vの正側への閾値電圧シフトが見られた。駆動安定性はZn含有量が大きいときに良好であることがわかる。
【0412】
表19は、さまざまなIn-Ge-Zn-Oチャンネルを有したTFTの特性一覧である。 表19において、 "-" は未検討であることを示している。
【0413】
【表19】
【0414】
(実施例7)
本実施例はIn-Ge-Zn-O系のTFTにおいて、Ge含有量が3 atomic% から 15 atomic% の範囲(実施例6より小さなGe含有量の範囲)での組成依存性を検討した例である。この組成範囲で良好な経過時間安定性と好適な特性を示すTFTを実現することができる。 また、素子間のばらつきやロット間ばらつきが小さく、結果として作成再現性に優れたTFTを実現できる。
【0415】
In-Ge-Zn-O 薄膜は実施例4と同様な装置により形成された。表20に薄膜形成条件を示す。
【0416】
【表20】
【0417】
In-Ge-Zn-O 膜の抵抗率In-Ge組成比依存性(Zn含有量は固定)を評価すると、In-Ge-O系薄膜と同様な傾向を示すことがわかった。図 50 は、In-Ge-O系の抵抗率のIn/(In+Ge) 組成比依存性と In-Ge-Zn-O 系のIn/(In+Ge) 組成比依存性を比較した図である。In-Ge-Zn-O 系のおいて、Zn の含有量は0 と 25 atomic%である。図50 から、同じIn/(In+Ge) 組成比において、In-Ge-Zn-O 系の抵抗率はIn-Ge-O 系の抵抗率よりも大きいことがわかる。結果として、In-Ge-Zn-O 系は、In-Ge-O 系よりも、TFTのチャンネルに適した抵抗率(数 Ωcm to 数 100 Ωcm) を示す組成範囲が広いことがわかった。
【0418】
さらにIn-Ge-Zn-O 系の抵抗率は経過時間安定性が高い。特に、In rich な組成(In/(In+Ge)30.85)において、In-Ge-Zn-O 系はIn-Ge-O 系よりも抵抗率の安定性に優れている。
【0419】
In-Ge-Zn-O TFT (Zn/(In+Ge+Zn)=0.25、0.953 In/(In+Ge)30.85) のトランスファ特性を作成直後の3ヶ月後に比較評価した結果を図 51 に示す。上記組成のTFTは、経過時間に対して高い安定性を有することがわかる。
【0420】
次に、In-Ge-Zn-O TFTにおける組成依存性(Ge-ratio は 3 atomic% から 15 atomic% )の検討結果を示す。TFTの構造は実施例6と同様である。
【0421】
In-Ge-Zn-O 系のチャンネル層を用いることで、 同様な特性を示すTFTを 再現良く作成することができた。特に、In含有量が65 atomic% 以上33 atomic% 以下の組成で且つ Ge含有量が10atomic%の組成において、移動度は再現良く10 cm2/Vs 以上の値を示した。また、移動度、オンオフ電流比、閾値、S値は、In : Ge : Zn = 33 : 3 : 64においてもっとも優れた特性を示した。この際、移動度、オンオフ電流比、S値、ターンオン電圧、閾値電圧は、 15.65 cm2/Vs, 1011, 0.26 V/decade, 0.1V and 6 Vであった。このベスト組成の素子のトランスファ特性を図 52に示す。このように、Zn-Ge-In-O系を用いることで、非常に高い特性のTFTを実現できる。
【0422】
特許文献1において、In-Ga-Zn-O系において好ましい組成としてIn:Ga:Zn= 38:5:57 が記されている。一方で、In-Ge-Zn-O 系でもっとも好ましい組成は、Zn:In:Ge= 64:33:3である。この組成は、Zn含有量が、In-Ga-Zn-O系の好適組成よりも大きいため、コスト性に優れている。
【0423】
次に、In-Ge-Zn-O 膜の経過時間安定性を調べるために、大気中保管による抵抗率変化を評価した。Ge含有量が3 atomic% 以上であると、Zn/Inがどのような値であっても、半年間大気中保管しても、抵抗率がほとんど変化しないことがわかった。図 54 は、In:Ge:Zn=33:3:64のIn-Ge-Zn-Oの膜の抵抗率の経時変化を示す図である。経時変化がほとんどないことがわかる。図 53 は、Ge含有量が5atomic%のIn-Ge-Zn-Oの膜の抵抗率の経時変化を示す図である。さまざまなZn/In組成比のデータが記されている。5atomic%のGeが添加されていれば、どのようなZn/In比でも抵抗はほとんど変化しないことがわかる。
【0424】
次に、In-Ge-Zn-O膜を用いた TFT の特性の経過時間安定性を調べた。図55にTFT特性の経時変化を示す。Zn:In:Ge=25:75:In:Ge:Zn=70:5:25の組成においては閾値電圧やオンオフ電流比などのTFT特性はほとんど変わらなかった。一方で、In:Ge:Zn=33:5:62の組成においては、閾値電圧が正の小さい値へのシフトが確認された。しかしながら、この閾値電圧Vthの変動はある期間をおいて止まり、その後安定なノーマリ・オフ特性を示すことがわかった。Ge含有量を13atomic% に増やすと、 Zn組成が大きいTFTにおいてその環境安定性をさらに向上させることができる。
【0425】
次に、ノーマリ・オフ特性を示す In-Ge-Zn-O TFTについて述べる。この結果は図56に見ることができる。図56 は、閾値電圧がGe組成比で制御可能であることを示している。Ge含有量が大きくなると、閾値電圧が正の方向に動く。閾値電圧が小さな正の値を示す組成範囲はGe含有量が 3 から15 atomic%の間にある。
【0426】
このようにIn-Ge-Zn-O TFTはGe含有量が3 atomic% から 15 atomic% の範囲において、良好な特性を得ることが可能で、特性の素子間ばらつきがちいさく、特性のロット間ばらつきが小さい。特に、組成比In : Ge:Znが 3 33 : 3 :64 の酸化物をチャンネル層に適用した際に、経過時間安定性に優れ、性能の高いTFTを実現できる。
【0427】
表21にはTFT特性の一覧を示す。さまざまな組成比における電界効果移動度、S値、閾値電圧が記されている。また、素子特性直後と3ヶ月経過後の特性が記されている。TFT特性は、広い組成範囲にわたって、長時間にわたって安定であることがわかる。
【0428】
【表21】
【0429】
3元相図の図57を用いてまとめると、点 ”h”, ”i”, ”n” 及び “t” で囲まれる組成範囲の薄膜をチャンネル層に用いることで、高いオンオフ電流比と良好な移動度を示すノーマリ・オフ型のTFTを実現できる。特に、オンオフ電流比が109以上で、電界効果移動度が 7 cm2/Vs 以上のTFTを実現できる。
【0430】
さらに上記組成範囲の中で点“s”, “u”,“t”,“n”で囲まれた組成範囲のIn-Ge-Zn-O 膜をチャンネル層に用いることで、非常に優れた性能とDC駆動ストレス耐性を兼ね備えたTFTを実現できる。特に、ノーマリ・オフ特性を示し、オンオフ電流比が1010以上であり、電界効果移動度が 10cm2/Vs以上であり、S-value が 0.5 V/decade 以下であり、DC駆動ストレスにより閾値変動が1V以下のTFTを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0431】
本発明において説明したように、本薄膜は、低温で形成することができ、アモルファスなので、PET膜を含む可撓性材料の上に電界効果型トランジスタを形成することができる。
【0432】
したがって、本発明に係わる薄膜トランジスタは、LCD及び有機ELディスプレイのスイッチング素子として利用することができる。さらに、本発明に係わる薄膜トランジスタは、可撓性ディスプレイ、ICカード及びIDタグ等を含む透明(シースルー)型ディスプレイ分野で広い用途の可能性を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0433】
【図1】本発明の一実施形態としてのアモルファスIn−Ge−Oを含む薄膜トランジスタの概略を示す断面図である。
【図2】薄膜トランジスタを作製したときのIn/(In+Ge)組成比の関数としての電子電界効果移動度(μFE)の例を示すグラフである。
【図3】In−Ge−Oシステム薄膜トランジスタのしきい値電圧の組成依存性を示すグラフである。
【図4】In/(In+Ge)組成比の関数としてのサブスレッショルドスイング値S(V/dec)の値の変化の例を示すグラフである。
【図5】組成比In/(In+Ge)に対する比抵抗の依存性を示すグラフである。
【図6】アニール前のIn−Ge−O薄膜トランジスタの伝達特性の組成依存性の例を示すグラフである。
【図7】In/(In+Ge)=0.65で表される組成比の薄膜を、大気中に放置した際の比抵抗の経時安定性を示すグラフである。
【図8】作製後直後のTFT伝達特性とTFT作製一ヶ月後とのTFT伝達特性の比較の例を示すグラフである。
【図9】他の成膜パラメータを一定に保持してIn/(In+Ge)=0.65及び0.75の場合の成膜時の酸素分圧によるIn−Ge−O薄膜の比抵抗の変化の例を示すグラフである。
【図10】VD=6Vの固定ドレイン電圧におけるlog(ID)−VG(伝達特性)の例を示すグラフである。
【図11】In/(In+Ge)=0.65のチャネル層組成を有するTFTにおいて、さまざまなVGにおけるID対VD(出力特性)の例を示すグラフである。
【図12】0.65及び0.75のIn/(In+Ge)で表される組成比を有するIn−Ge−O系の酸化物を含むTFTの伝達特性の二つの例を示すグラフである。
【図13】本発明の一実施形態としての電界効果型トランジスタのチャネル層を成膜するために用いた成膜システムの概略を示す図である。
【図14】アニールしたIn/(In+Ge)=0.65及び0.75を有する酸化物チャネル層のX線回折パターンの例を示すグラフである。
【図15】In/(In+Ge)の関数としてのホール移動度μHall(cm2/Vsec)の例を示すグラフである。
【図16】In/(In+Ge)原子比の関数としてのオン/オフ電流比の例を示すグラフである。
【図17】これらのそれぞれの材料系のTFT伝達特性(log(ID)対VG)の例を示すグラフである。
【図18】In−Ga−O、In−Al−O及びIn−Mg−O系の酸化物を含むTFTのサブスレッショルドスイング値と本発明のIn−Ge−O系の酸化物を含むTFTのサブスレッショルドスイング値とを比較した例を示すグラフである。
【図19】In−Ga−O、In−Al−O及びIn−Mg−O系の酸化物を含むTFTのオン−オフ電流比と本発明のIn−Ge−O系の酸化物を含むTFTのオン−オフ電流比との間の比較の例を示すグラフである。
【図20】In−Ga−O、In−Al−O、In−Mg−O系の酸化物を含むTFTの電界効果移動度と本発明のIn−Ge−O系の酸化物を含むTFTの電界効果移動度との比較の例を示すグラフである。
【図21】本発明に係る一実施形態としての表示装置の概略的な断面図である。
【図22】本発明に係る一実施形態としての表示装置の概略的な断面図である。
【図23】有機EL素子と薄膜トランジスタを含む画素を二次元状に配列した表示装置の構成を概略的に示した図である。
【図24】(a) はIn-Ge-Zn-O TFTの(a)トランスファ特性(log (ID)vs. VG)の一例、(b)出力特性(IDvs. VD)の一例を示す図である。
【図25】トランスファ特性(log (ID)vs. VG))を示す図である。ここで組成比In:Zn:Geは、 (a) 42:13:45, (b) 51:23:26, (c) 32:9:59, (d) 32:3:65 and (e) 34:36:30.である。
【図26】In:Ge:Zn:O 膜のX線解説パターンを示す図である。組成比はIn:Ge:Zn=42:13:45である。
【図27】In-Ge-Zn-O系TFTのトランスファ特性とIn-Ga-Zn-O系TFTのトランスファ特性を比較して示す図である。ここで (a) のIn-Ge-Zn-O ではGe 9atomic% であり、(b)の In-Ga-Zn-O ではGa 9atomic%である。それぞれZn/In比の依存性が記されている。
【図28】In-Ge-Zn-O系TFTのトランスファ特性とIn-Ga-Zn-O系TFTのトランスファ特性を比較して示す図である。 (a)In-Ge-Zn-O aと (b) In-Ga-Zn-O に対して、固定したZn/Inおける、さまざまGe(Ga)含有量のデータが記されている。
【図29】In-Ge-Zn-O 系材料の構造特性を記した3元相図である。
【図30】In-Ge-Zn-O膜の抵抗率のZn/In 比依存性を示す図である。組成比はGe/(In+Ge+Zn)=0.08であり、アニール前及びアニール後で測定している。
【図31】In-Ge-Zn-O膜の抵抗率のGe量atomic% 依存性を示す図である。ここでZn/In=0.4である。成膜時のAr+O2流量は20sccmである。
【図32】In-Ge-Zn-O膜の抵抗率の成膜時の酸素分圧依存性を示す図である。
【図33】は、In-Ge-Zn-O 膜の抵抗率のZn/In 比依存性を示す図である。ここでGe 含有量は8atomic% であり、成膜時のArgon+Oxygen ガスの流量は (a)20sccm (b)10sccm である。
【図34】In-Ge-Zn-O 膜の抵抗率のZn/In 比依存性を示す図である。ここでGe 含有量は8atomic% であり、成膜時のArgon+Oxygen ガスの流量は (a)20sccm (b)10sccm である。大気中300℃のポストアニール処理を施している。
【図35】In-Ge-Zn-O 膜の抵抗率マッピングを示す図である。成膜時の Ar+O2 の流量は20sccm であり、大気中300℃のポストアニール処理を施している。
【図36】In-Ge-Zn-O 膜の抵抗率マッピングを示す図である。成膜時の Ar+O2 の流量は10sccm であり、大気中300℃のポストアニール処理を施している。
【図37】トランスファ特性を示す図である。組成1D ( In:Ge:Zn= 66:8:26)であり、(a)は成膜時のAr/O2流量が20sccm、(b)は10sccmである。左図は、アニール処理を施していない。右図はポストアニール処理を施している。
【図38】トランスファ特性を示す図である。組成3A ( In:Ge:Zn= 27:25:38)であり、(a)は成膜時のAr/O2流量が20sccm、(b)は10sccmである。左図は、アニール処理を施していない。右図はポストアニール処理を施している。
【図39】はトランスファ特性を示す図である。組成4E ( In:Ge:Zn=33:5:62)であり、(a)は成膜時のAr/O2流量が20sccm、 (b)は10sccmである。左図は、アニール処理を施していない。右図はポストアニール処理を施している。
【図40】電界効果移動度の Ge含有量 atomic% 依存性を示す図である。Zn/In 組成比は一定である。
【図41】ターンオン電圧 (Von, V)のGe含有量 atomic% 依存性を示す図である。Zn/In 組成比は一定である。
【図42】オンオフ電流比のGe含有量 atomic% 依存性を示す図である。Zn/In 組成比は〜2である。
【図43】サブスレッシュホルドスイング値 (S, V/dec ) のGe含有量 atomic% 依存性を示す図である。Zn/In 組成比は、(a)が〜0.4、(b) が2である。
【図44】In-Ge-O系TFT特性のIn含有量依存性を示す図である。
【図45】In-Ge-Zn-O系TFTにおける電界効果移動度のZn/In組成比依存性を示す図である。 Ge含有量は8atomic%である。
【図46】In-Ge-Zn-O系TFTにおけるVonのZn/In組成比依存性を示す図である。Ge含有量は8atomic%である。
【図47】In-Ge-Zn-O系TFTにおけるオンオフ電流比のZn/In組成比依存性を示す図である。Ge含有量は8atomic%である。
【図48】In-Ge-Zn-O系TFTにおけるサブスレッシュホルドスイング値のZn/In組成比依存性を示す図である。Ge含有量は8atomic%である。
【図49】、In-Ge-Zn-O系TFTのDC駆動ストレスにより特性変化を示す図である。 (a )においてチャンネルの組成比は In:Ge:Zn=42:13:45であり、(b)においては In:Ge:Zn=32:8:60 である。
【図50】In-Ge-Zn-O 膜の抵抗率の組成比In/(In+Ge) 依存性を示す図である。Zn含有量が 0atomic% と 25atomic%のデータが記されている。
【図51】In-Ge-Zn-O TFT のトランスファ特性を示す図である。TFT作成直後の特性と3ヶ月後の特性が重ねて記されている。Zn/(Zn+In+Ge)=0.25であり、In/(In+Ge)は08.5,0.8,0.95の異なる3種類の特性が比較されている。
【図52】In-Ge-Zn-O TFT のトランスファ特性を示す図である。 組成比はIn:Ge:Zn=33:3:64 であり、アニールを施していない素子の特性とポストアニール処理を施した素子の特性が記されている。
【図53】In-Ge-ZnO膜の抵抗率(ohm.cm) vs 時間(hrs) を示す図である。Ge含有量は〜5%である、さまざまなZn/In 比の薄膜に対して記されている。
【図54】In-Ge-ZnO膜の抵抗率(ohm.cm) vs 時間(hrs) を示す図である。組成比は、Zn:In:Ge = 64:33:3である。
【図55】In-Ge-Zn-O TFT のトランスファ特性の経過時間変化を示す図である。素子作成後と3ヵ月後の特性が記されている。組成比はIn:Ge:Zn (a) = 68:5:27, (b) 45:5:50, (c) 32:5:62である。
【図56】In-Ge-Zn-O TFT のトランスファ特性のGe含有量依存性を示す図である。
【図57】In-Ge-Zn の組成を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物半導体を用いる薄膜トランジスタ及びそれを用いた表示装置に関する。特に、有機エレクトロルミネセンスディスプレイ、無機エレクトロルミネセンスディスプレイ又は液晶ディスプレイに用いられる薄膜トランジスタ及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電界効果型トランジスタ(Field Effect Transistor,FET)は、ゲート電極、ソース電極及びドレイン電極を備える。そして、ゲート電極に電圧を印加して、チャネル層に流れる電流を制御し、ソース電極とドレイン電極間の電流を制御する電子アクティブ素子である。
【0003】
特に、セラミックス、ガラス又はプラスチックなどの絶縁基板上に成膜した薄膜を、チャネル層として用いるFETは薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor,TFT)と呼ばれている。
【0004】
薄膜トランジスタ(TFT)は、大面積の基板上に多数を配することで、広範囲の用途に用いられる。例えば、TFTは、フラットパネルディスプレイの不可欠な構成要素である。
【0005】
TFT及びその関連電子デバイスは、従来、ガラス基板上に作製されてきた。
【0006】
しかし、将来のディスプレイシステムには、性能に加えて、大きな寸法、さらには、より高い可搬性が求められる。ディスプレイの重さは、ガラス基板が大きくなるほど関心が高くなる。
【0007】
解決策の一つは、可撓性(フレキシブル)プラスチック基板を使用するディスプレイシステムの開発にある。すなわち、プラスチック基板上に現行より低いプロセス温度でデバイスを作製することができ、良好なディスプレイ性能を提供することができる新しい薄膜トランジスタ技術の開発が求められる。
【0008】
TFTとして、現在、最も広く使われているのは多結晶シリコン膜又はアモルファスシリコン膜をチャネル層材料としたものである。ピクセル駆動用には、アモルファスシリコンTFTが、画像全体の駆動・制御には、高性能な多結晶シリコンTFTが実用化されている。
【0009】
しかしながら、アモルファスシリコン、ポリシリコンTFTをはじめ、これまで開発されてきたTFTは、デバイス作成に高温プロセスが求められ、プラスチック板やフィルムなどの基板上に作成することが困難である。
【0010】
一方、近年、ポリマー板やフィルムなどの基板上に、TFTを形成し、LCDやOLEDの駆動回路として用いることで、フレキシブル・ディスプレイを実現しようとする開発が活発に行われている。
【0011】
プラスチックフィルム上などに成膜可能な材料として、低温で成膜でき、かつ電気伝導性を示す有機半導体膜が注目されている。
【0012】
例えば、有機半導体膜としては、ペンタセンなどの研究開発が進められている。キャリア移動度は約0.5cm2(Vs)-1程度であり、アモルファスSi−MOSFETと同等であることが報告されている。
【0013】
しかし、ペンタセンなどの有機半導体は、熱的安定性が低く(<150℃)、実用的なデバイスは実現していない。
【0014】
また、最近では、TFTのチャネル層に適用し得る材料として、酸化物材料が注目されてきている。たとえば、ZnOを主成分として用いた透明伝導性酸化物多結晶薄膜をチャネル層に用いたTFTの開発が活発に行われている。
【0015】
上記薄膜は、比較的に低温で成膜でき、プラスチック板やフィルムなどの基板上に薄膜を形成することが可能である。
【0016】
しかし、ZnOを主成分とする化合物は室温で安定なアモルファス相を形成することができず、多結晶相になるために、多結晶粒子界面の散乱により、電子移動度を大きくすることができない。また多結晶粒子の形状や相互接続が成膜方法により大きく異なるため、TFT素子の特性がばらついてしまう。
【0017】
最近では、In−Ga−Zn−O系のアモルファス酸化物を用いた薄膜トランジスタが報告されている(非特許文献1)。
【0018】
このトランジスタは、室温でプラスチックやガラス基板への作成が可能である。さらには、電界効果移動度が6−9程度でノーマリ・オフ型のトランジスタ特性が得られている。
【0019】
また、可視光に対して透明であるという特徴を有している。
【0020】
この文献では、In:Ga:Zn=1.1:1.1:0.9(原子比)の組成比を有するアモルファス酸化物をTFTのチャネル層に用いている。
また従来のIn-Ga-Zn-O系の報告(非特許文献1、特許文献1)は、3つの金属元素を含有した多元酸化物半導体の例として知られている。
【非特許文献1】K.Nomura et.al,Nature VOL. 432,P.488-492(2004-11)
【非特許文献2】アプライド・フィジックス・レターズ、89巻06号2103頁(2006年)
【非特許文献3】ソリッド・ステート・エレクトロニクス誌50巻500〜503頁(2006年)
【特許文献1】特開2007-281409号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
これらの報告は、研究者及び業界の大きな注目を集めた。
【0022】
しかし、酸化物材料によるTFTを産業界において用いるためには、広い組成範囲でTFT動作を可能にする(組成マージンが大きい)とともに、少ない種類の金属元素の酸化物材料が望ましい。そうなれば、均一性、TFT特性のより良好な制御及び製造コストの面で非常に有利になる。
【0023】
AMOLED(アクティブマトリクス有機発光ダイオード)の駆動TFT及びスイッチングTFTには、TFT特性に加えて、高い経時デバイス安定性及び動作安定性が求められる。
【0024】
また金属元素の組成マージン(例 In/(In+Ga+Zn) やZn/(Zn+In+Ga))をさらに広げることが望まれている。本発明においては、3つの金属元素を有した酸化物半導体としてIn-Ge-Zn-O系を技術開示する。本発明の酸化物半導体 (In-Ge-Zn-O系)は、TFT用途において、従来の2種類もしくは3種類の金属元素を用いた酸化物系よりも広い組成マージンを有するという作用がある。TFT動作に対する組成マージンは、チャンネル材料が半導体としての電気的性質をもつかどうかやアモルファスであるかどうかに大きく依存する。
【0025】
大きな組成マージンを有することは、第面積成膜や高速成膜を必要とする量産において、大きな利点となる。また、低コスト化の観点から、TFT用途の半導体材料は、高価な元素や希少な元素(InやGaなど)の含有量が小さいことが望まれる。
【0026】
そこで、本発明は、上記の課題を解決する薄膜トランジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、ゲート絶縁層を介して、チャネル層とゲート電極とが対向するように配置される薄膜トランジスタにおいて、前記チャネル層はインジウム、ゲルマニウム及び酸素を含んでいて、前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.5以上0.97以下であることを特徴とする。
【0028】
また、本発明は、前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.5以上0.90以下であることを特徴とする。
【0029】
これにより、オン/オフ比、移動度及びサブスレッショルドスイング値の面で良好なTFT特性が得られる。
【0030】
また、本発明は、前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.6以上0.9以下であることを特徴とする。
【0031】
これにより、オン/オフ比、移動度、及びサブスレッショルドスイング値の面で良好なTFT特性が得られる。
【0032】
また、本発明は、前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.5以上0.75以下であることを特徴とする。
【0033】
これにより、オン/オフ比、移動度、しきい値電圧、及びサブスレッショルドスイング値の面で良好なTFT特性が得られる。
【0034】
また、本発明は、前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.6以上0.75以下であることを特徴とする。
【0035】
これにより、サブスレッショルドスイング値、On/Off、しきい値電圧及び良好な移動度といった優れた性質を有するノーマリ・オフ型トランジスタ特性が得られる。
【0036】
また、本発明は、前記チャネル層の比抵抗は、103Ω・cmから106Ω・cmであることを特徴とする。
【0037】
また、本発明は、前記チャネル層は、アモルファスであることを特徴とする。
【0038】
これにより、環境に対しての安定性が高く、駆動に対する安定性が高い(駆動時の特性変動が小さい)トランジスタを実現できる。
【0039】
TFTは、スイッチングデバイスとしてだけでなく有機発光ダイオード(OLED)用アナログ電流ドライバとしても用いられ、しきい値電圧Vthが変化するとそれに伴って個々の画素輝度(発光輝度)が変化する。そのため、アナログデバイスにとって長期安定性は重要である。
【0040】
本発明では、0.5以上0.75以下のIn/(In+Ge)で表される組成範囲で、周囲環境条件における非常に高いデバイス安定性と駆動ストレス安定性とを実現することができる。
【0041】
また、本発明は、前記ゲート絶縁層は、シリコン酸化物からなることを特徴とする。
【0042】
これにより、μFE、オン/オフ比、Vth及びS値を含むトランジスタ特性が優れ、信頼性の高い電界効果型トランジスタを提供することができる。
【0043】
2種類の金属元素から構成される酸化物の一例として、In−Zn−O系材料の既報(非特許文献2)が知られている。別の例は、In−Ga−O系(非特許文献3)である。
【0044】
しかし、我々が検討した実験結果によると、In−Zn−O系材料を用いたTFTは、環境安定化が組成に依存し、良好な特性を安定して示すIn/(In+Zn)組成範囲はあまり広くない。一方、In−Ga−O系の材料を用いたTFTのオン/オフ比は小さくなり、S値は大きくなる。
【0045】
本発明のIn−Ge−O系TFTは、In-Zn−O系をはじめとする他の2種類の金属元素からなる酸化物を用いたTFTと比べて、よりは広い組成範囲でTFT動作が可能である。
【0046】
In−Zn−O系(非特許文献2)及びIn−Ga−O系(非特許文献3)の酸化物を比較すると、本TFTは、それぞれ安定性及び性能に優れている。
【0047】
また本発明は、Zn, In ,Geを含有した酸化物半導体からなるチャンネルを有した薄膜トランジスタであって、 In/ (In + Ge) で表される組成比が0.50以上 0.97以下であり、さらにZn/( Zn + In + Ge) で表される組成比が0.80以下であるチャンネル層を有することを特徴とした薄膜トランジスタが挙げられる。
【0048】
また本発明は、ZnとInとGeを含有した酸化物からなるチャンネル層を有した電界効果型トランジスタであって、上記酸化物の組成が図57において、点a,b,c,dで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする電界効果型トランジスタである。この組成範囲において、高いオンオフ電流比を(106以上 )得ることができる。
【0049】
また本発明は、上記酸化物の組成が図57において、点a, b, e, m, l で囲まれた範囲の中にあることを特徴とする電界効果型トランジスタである。この組成範囲において、高いオンオフ電流比を(109以上 )と良好な移動度(33cm2/V-s)を得ることができる。
【0050】
また本発明は、上記酸化物の組成が図57において点a, b, e, f ,gで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする電界効果型トランジスタである。この組成範囲において、高いオンオフ電流比を(109以上 )と良好な(小さな)サブスレッシュホルドスウィング値 S (V/dec)を得ることができる。
【0051】
また本発明は、上記酸化物の組成が図57において、点a, n, t, hで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする電界効果型トランジスタである。この組成範囲において、高いオンオフ電流比を(109以上 )と高い移動度(37cm2/V-s)、小さなサブスレッシュホルドスウィング値(S (V/dec)£0.7)を得ることができる。
上記酸化物の組成が図57において、点 h, i, b, e, k, lで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする電界効果型トランジスタである。この組成範囲において、高いオンオフ電流比を(109以上)と良好な移動度(33cm2/V-s)、良好な閾値電圧Vth (V)を得ることができる。
【0052】
また本発明は、上記酸化物の組成が図57において、点 h, i, n, tで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする電界効果型トランジスタである。この組成範囲において、高いオンオフ電流比を(109以上 )と良好な移動度(37cm2/V-s)、小さなS値 (S(V/dec)£0.7)、良好な閾値電圧Vth (V)を得ることができる。
【0053】
また本発明は、上記酸化物の組成が図57において、点s, u, x, y, v, bで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする電界効果型トランジスタである。この組成範囲において、高いオンオフ電流比を(1010以上 )と高い移動度(39cm2/V-s)、小さなS値 (S(V/dec)£0.5)、良好な閾値電圧Vth (V)を得ることができる。
【0054】
また本発明は、上記酸化物の組成が図57において、点s, u, t, nで囲まれた範囲の中にあり、非常に小さいオフ電流(off current £ 10-13(A))を有した電界効果型トランジスタである。10-13(A)は10−13アンペアを示す。
【0055】
また本発明は、上記酸化物の組成が図57において、点 a, b, c 及び dで囲まれた範囲の中にあり、上記酸化物がアモルファスである電界効果型トランジスタである。
【0056】
また本発明は、上記酸化物の組成が図57において、点 a, b, c 及び dで囲まれた範囲の中にあり、破線で囲まれた範囲を以外にあり、上記酸化物がアモルファスである電界効果型トランジスタである。
このように、In−Ge−O系の酸化物を用いたTFTは、非特許文献2及び3に記載される酸化物や他の材料系よりも広い組成マージンを有する。非特許文献1の3種類の金属元素を用いた酸化物In-Ga-Zn−Oと比べて、本発明のIn−Ge−O系は2種類の金属元素からなるため、製造コストの面で有利である。
【発明の効果】
【0057】
本発明によれば、用いる元素の数が少ないため、良好なTFT性能を得るための費用対効果に優れた薄膜トランジスタを提供できる。さらに、2種類の金属元素酸化物材料系の中で、本発明の酸化物半導体(例:In−Ge−O)は、TFT用途に用いた際に非常に広い組成マージンを有するという利点がある。すなわち、本発明によれば、組成変動に対しての特性変化が小さいという効果がある。
【0058】
また、0.5以上0.9以下のIn/(In+Ge)で表される組成範囲にわたって高いオン/オフ比と良好な移動度とが得られる。
【0059】
また、本発明によれば、InとGeの組成比を制御することによって、TFT特性を制御したり、TFT性能を向上させたりすることができる。たとえば、サブスレッショルドスイング値(S値(V/Dec))、オン/オフ電流比(On/Off)、電界効果移動度μFE(cm2/Vsec)、しきい値電圧Vth(V)、ターンオン電圧Von(V)で示されるTFT性能を大いに改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0060】
以下、添付図面を参照して本発明を実施するための最良の実施の形態を説明する。
【0061】
図1は、本発明の一実施形態としてのアモルファスIn−Ge−Oを含む薄膜トランジスタの概略を示す断面図である。
【0062】
図1(a)及び図1(b)において、10は基板、11はチャネル層、12はゲート絶縁層、13はソース電極、14はドレイン電極、15はゲート電極である。ゲート絶縁層12を介して、チャネル層11とゲート電極15とは、対向するように配置される。
【0063】
電界効果型トランジスタは、ゲート電極15、ソース電極13及びドレイン電極14を有する3端子デバイスである。
【0064】
電界効果型トランジスタは、電圧VGをゲート電極へ印加すると、チャネル層を通って流れるドレイン電流IDを制御することができ、ソース電極とドレイン電極との間を流れる電流を制御する電子デバイスである。
【0065】
図1(a)は、半導体チャネル層11の上にゲート絶縁層12とゲート電極15を有するトップゲート構造の例である。図1(b)は、ゲート電極15の上にゲート絶縁層12と半導体チャネル層11を有するボトムゲート構造の例である。図1(c)は、別のボトムゲート型トランジスタの例である。
【0066】
図1(c)では、ゲート絶縁体22である熱酸化SiO2が形成された基板21の上にチャネル層(酸化物)25を配する。23はソース電極、24はドレイン電極である。基板21は、n+−Siからなり、ゲート電極としても機能する。
【0067】
本実施形態では、TFTの構成は、上記の構造に限定されず、トップゲート又はボトムゲート型、スタガー型などの任意の構造に適用してもよい。
【0068】
(チャネル層:In−Ge−O系)
本実施形態の薄膜トランジスタは、チャネル層がインジウムとゲルマニウムとを含むアモルファス酸化物を用いることができる。
【0069】
特に、In、Geのアモルファス酸化物(In−Ge−O)、GeとZnとのアモルファス酸化物(Zn−Ge−O)又はIn、Zn及びGeのアモルファス酸化物(In−Zn−Ge−O)からなるアモルファス酸化物が望ましい材料である。InとGeとを含む他のアモルファス酸化物等を用いてもよい。
【0070】
本実施形態において、アモルファス酸化物を構成する(酸素を含む)全元素に対するInの割合は、10%以上、40%以下の範囲が望ましい。そして、In−Ge−Oからなるアモルファス酸化物は、全ての元素の中で酸素を最も多く含有し、2番目にインジウム、3番目にゲルマニウムを多く含有することが望ましい。
【0071】
また、Zn−Ge−Oからなるアモルファス酸化物は、全ての元素の中で酸素を最も多く含有し、2番目に亜鉛、3番目にゲルマニウムを多く含有する。
【0072】
また、In−Zn−Ge−Oからなるアモルファス酸化物は、全ての元素の中で酸素を最も多く含有し、2番目に亜鉛(又はインジウム)、3番目にインジウム(又は亜鉛)、4番目にゲルマニウムを多く含有する。
【0073】
最初に、In−Ge−O材料をTFTの活性層に用いる場合の好ましい組成範囲を説明する。
【0074】
In−Ge−O系の材料は、In/(In+Ge)で表される組成比の中で、比較的広い組成比の範囲にわたり、アモルファスの薄膜を作成できる。たとえばスパッタリング法を用いて室温で成膜すると、Ge/(In+Ge)>0.03の場合にアモルファス酸化物薄膜が得られる。
【0075】
上記したように、スパッタリング法で形成したZnOの薄膜は多結晶構造を有し、粒径及び粒界効果によってTFTの性能に悪影響を及ぼすことがある。このような観点から、チャネルを構成する酸化物がアモルファスであることはTFTの性能にとって重要である。
【0076】
次に、TFT特性を調べる。
【0077】
図2は、薄膜トランジスタを作製したときのIn/(In+Ge)組成比の関数としての電子電界効果移動度(μFE)の例を示すグラフである。
【0078】
図2に示すように、0.6以上0.9以下のIn/(In+Ge)で表される広い組成範囲にわたって高いオン/オフ比と良好な移動度が得られる。図2に示したように、電界効果移動度はIn含有率の増加とともに増加する。
【0079】
電界効果移動度は、特に電流駆動能力及び最大スイッチング周波数に関わる半導体チャネル層の性能を定量化するために、最も重要なTFTの電気的パラメータの一つである。
【0080】
要求される移動度の値は特定の用途によって異なるが、たとえば液晶表示デバイスに利用する場合は電界効果移動度0.1cm2/Vsec以上が望ましい。有機ELディスプレイデバイスに利用する場合には1cm2/Vsecの電界効果移動度を有することが望ましい。なお、有機エレクトロルミネセンス(有機EL)は、有機発光ダイオードとも呼ばれる。
【0081】
また、In/(In+Ge)で表される組成比が、0.6以上0.97以下のIn/(In+Ge)で表される組成比で、OLED(有機EL素子)を駆動するのに好適な移動度を得ることができる。
【0082】
その中でも、0.6以上0.75以下のIn/(In+Ge)で表される組成比を用いることで、閾値やS値の優れたTFTを実現できるため、より好ましい。薄膜トランジスタのしきい値電圧Vthが0V以上になると回路を構成しやすくなるために、好ましい。
【0083】
図3は、In−Ge−Oシステム薄膜トランジスタのしきい値電圧の組成依存性を示すグラフである。
【0084】
In/(In+Ge)が0.65以上0.75以下のときに正のVthを示すことが、図3において見ることができる。さらに、サブスレッショルドスイング値S(V/Dec)を考えると、組成範囲が0.65以上、0.75以下の間で非常に小さなSの値を得ることができるので非常に望ましい。
【0085】
図4は、In/(In+Ge)組成比の関数としてのサブスレッショルドスイング値S(V/dec)の値の変化の例を示すグラフである。
【0086】
結論として、薄膜トランジスタのチャネル層にIn−Ge−Oを適用すると、0.5以上0.97以下のIn/(In+Ge)で表される広い組成範囲においてTFT動作が可能である。特に、好ましい組成比は0.6≦In/(In+Ge)≦0.75の間である。
【0087】
望ましい酸化物(チャネル層)の厚さは、10nmから200nmの間である。さらに、好ましい厚さは25nmから70nmの間である。
【0088】
良好なTFT特性の観点から、酸化膜の比抵抗が適切な値であることが好ましい。優れたTFT特性を得るためには、103Ω・cm以上、106Ω・cm以下のオーダーの比抵抗ρを有するアモルファス酸化膜をチャネル層中に利用することが望ましい。
【0089】
本発明の発明者らが鋭意研究した結果、TFTは、適切な比抵抗(≧103Ω・cm)を有する酸化物半導体をチャネル層に適用すると、いわゆる、ノーマリ・オフ特性を示す挙動傾向を示す。
【0090】
ノーマリ・オフ特性は、ゲート電圧を印加していないとき、しきい値電圧は正、トランジスタはオフ状態にあることを意味する。
【0091】
膜の比抵抗は、金属元素の組成、成膜時の酸素分圧、膜厚及び成膜後アニール条件などを制御することによって制御することが可能である。
【0092】
図5は、組成比In/(In+Ge)に対する比抵抗の依存性を示すグラフである。
【0093】
図5に示すように、膜の比抵抗はInリッチな組成領域からGeリッチな組成領域へ移るにつれて大きくなることがわかる。
【0094】
具体的には、図5に示すように、伝導体(〜10−1Ω・cm)から半導体(〜1Ω・cmから106Ω・cm)、半導体から絶縁体(107Ω・cmより大きい)へと変化する。
【0095】
高いしきい値と優れた経時安定性とを有するTFTを得るためには、酸化物中に0.25より高いGe/(Ge+In)で表されるGe含有率を含むことが好ましい。
【0096】
すなわち安定性を高くするためには、In/(Ge+In)で表したIn含有率は0.75以下が望ましい。約1014〜1018/cm3の電子キャリア密度を有するアモルファス酸化膜を形成させることが望ましいが、そのような比抵抗を得ることは、成膜パラメータ及びチャネル層中の材料組成に依存する。
【0097】
比抵抗が103Ω・cmより小さければ、ノーマリ・オフ型トランジスタを実現することが困難であり、比抵抗が10Ω・cmより小さい場合にはオン−オフ比を大きくすることが難しい。
【0098】
ソースドレイン電流は、ゲート電圧を印加してもオン−オフ挙動を示さず、極端な場合にはトランジスタ動作は示されない。キャリア密度(おそらく酸素欠損)が高いInリッチな組成領域の場合である図6のプロットD及びEにその挙動を見ることができる。図6は、アニール前のIn−Ge−O薄膜トランジスタの伝達特性の組成依存性の例を示すグラフである。
【0099】
一方、酸化物層が絶縁体なら、すなわち、一方、比抵抗が1×107Ω・cmより大きいと、ソースドレイン電流を大きくすることは困難になる。電極間ソースドレイン電流は、ゲート電圧を印加してもオン−オフ挙動を示さず、極端な場合にはトランジスタ動作は示されない。
【0100】
次に、比抵抗の経時変化について説明する。比抵抗の経時変化が小さな酸化物半導体を用いることが好ましい。そうすれば、しきい値電圧及びオフ電流の経時変化が小さな薄膜トランジスタを実現することができるからである。
【0101】
図7は、In/(In+Ge)=0.65で表される組成比の薄膜を、大気中に放置した際の比抵抗の経時安定性を示すグラフである。
【0102】
酸化物半導体の比抵抗は、当初、成膜後約300時間の間は時間とともに減少する傾向を示すことが観測されるが、最終的に安定化する。
【0103】
アニールすると、膜の比抵抗は非アニール膜より速い速度で安定化する。
【0104】
Geリッチな組成領域の最終的な比抵抗は、依然として高いオーダー(>103Ωcm)である。
【0105】
比抵抗が安定であることは、TFT特性の経過時間安定性に対応しており、In−Ge−O系の酸化物を含むTFTが高い安定性を有することを示している。
【0106】
さらに、0.5以上0.75以下のIn/(In+Ge)で表される組成範囲で、伝達特性と、しきい値電圧及びオフ電流などのTFT特性とに、ほとんど経時変化がない。
【0107】
図8は、作製後直後のTFT伝達特性とTFT作製一ヶ月後とのTFT伝達特性の比較の例を示すグラフである。
【0108】
この経過時間安定性は、2種類の金属元素からなる酸化物In−Zn−Oと比較すると同等以上である。
【0109】
また、成膜時の酸素分圧を制御すると、薄膜中の酸素損失量を制御し、その結果、電子キャリア密度を制御することができる。
【0110】
図9は、他の成膜パラメータを一定に保持してIn/(In+Ge)=0.65及び0.75の場合の成膜時の酸素分圧によるIn−Ge−O薄膜の比抵抗の変化の例を示すグラフである。
【0111】
(ゲート絶縁層)
ゲート絶縁層は、絶縁体材料である。ゲート絶縁層12として、例えば、シリコン酸化物SiOx又は窒素化シリコンSiNx及びシリコンオキシナイトライドSiOxNyを用いてよい。ゲート絶縁層に用いることができるシリコン以外の酸化物は、GeO2、Al2O3、Ga2O3、Y2O3及びHfO2等である。
【0112】
これらの中でもSiOxは、CVD法によって良質な膜を容易に形成でき好ましい。TFTの安定性もSiOxを用いた際に良好である。
【0113】
したがって、本発明においては、SiO2をゲート絶縁材料として用いると良好なTFT性能を得ることができる。
【0114】
優れた絶縁特性を有する薄膜ゲート絶縁物を利用することによって、ソース−ゲート及びドレイン−ゲート電極間リーク電流を約10−12A(アンペア)に調節することができる。
【0115】
ゲート絶縁層の厚さは、例えば、50〜300nmである。
【0116】
(電極)
ソース電極13、ドレイン電極14及びゲート電極15の材料は高い導電率を有する。例えば、Pt又はAu、Ni、W、Mo及びAgなどの金属電極を用いるとよく、又はIn2O3:Sn及びZnOなどの透明導電膜も用いてよい。Au及びTi等の複数の層のカスケード構造も使用してよい。
【0117】
(基板)
ガラス基板、プラスチック基板及びプラスチックフィルム等を基板10として用いてよい。
【0118】
上記で言及したチャネル層及びゲート絶縁層は、可視光に対して透明である。
【0119】
したがって、用いられる電極も可視光に対して透明なら、可視光域で全体が透明な薄膜トランジスタを作り出すことが可能である。
【0120】
(製造方法)
チャネル層の成膜の方法として、スパッタリング法(SP法)、パルスレーザ蒸着法(PLD法)、電子ビーム蒸着法(EB法)及び原子層蒸着法などの気相蒸着法を用いると好ましい。気相蒸着法の中で、大量生産性を考慮するとSP法が適当である。しかし、膜形成法は、これらの方法に限定されない。
【0121】
意図的な加熱をまったく行わずに基板の温度を室温に保持して成膜することができる。この技法によれば、プラスチック基板上の透明薄膜トランジスタの低温作製プロセスが可能になる。
【0122】
(特性)
次にTFT特性について説明する。
【0123】
電界効果型トランジスタは、ゲート電極15、ソース電極13及びドレイン電極14を有する3端子デバイスである。
【0124】
電界効果型トランジスタは、電圧VGをゲート電極へ印加してチャネル層を通って流れるドレイン電流IDを制御することができ、ソース電極とドレイン電極との間を流れる電流のスイッチング挙動が示される電子デバイスである。
【0125】
ソース電極とドレイン電極との間に5Vから20Vの間のドレイン電圧を印加し、さらに−20Vから20Vの間のゲート電圧を掃引することによって、チャネルを通る電流を制御する。
【0126】
図10は、VD=6Vの固定ドレイン電圧におけるlog(ID)−VG(伝達特性)の例を示すグラフである。ここで五つのプロットは、チャネル層の組成が異なる5つのTFTの特性を示している。
【0127】
図11は、In/(In+Ge)=0.65のチャネル層組成を有するTFTにおいて、さまざまなVGにおけるID対VD(出力特性)の例を示すグラフである。
【0128】
図12は、0.65及び0.75のIn/(In+Ge)で表される組成比を有するIn−Ge−O系の酸化物を含むTFTの伝達特性の二つの例を示すグラフである。
【0129】
下の表1には、これらの場合のS(V/dec)、On/Off、Von(V)、Vth(V)及びμ(cm2/Vsec)の一覧を示す。表1において、5E+10は5×1010を意味する。
【0130】
【表1】
【0131】
トランジスタの特性の違いは、たとえば、電界効果移動度μFE、閾値電圧(Vth)、On/Off比、S値などの違いとして表現することができる。
【0132】
電界効果移動度は、線形領域や飽和領域の特性から求めることができる。
【0133】
たとえば、トランスファ特性の結果から、√Id−Vgのグラフを作製し、この傾きから電界効果移動度を導く方法が挙げられる。本明細書では特にこだわらない限り、この手法で評価している。
【0134】
閾値電圧の求め方はいくつかの方法があるが、たとえば、√Id−Vgのグラフのx切片から閾値電圧Vthを導くことが挙げられる。
【0135】
On/Off比(オンオフ比)はトランスファ特性における、最も大きなIdと、最も小さなIdの値の比から求めることができる。
【0136】
S値は、トランスファ特性の結果から、Log(Id)−Vdのグラフを作製し、この傾きの逆数から導出することができる。
【0137】
他にも、ターンオン電圧Vonとして、log(ID)−VG特性における電流立ち上がり開始の電圧(ゲート電圧)を評価することができる。
【0138】
上記で言及したものに加えて、さまざまなその他のパラメータによってトランジスタ特性の間の差を示すことができる。
【0139】
(利用)
これらのTFTが示すSの小さな値、ドレイン電流の高いオン/オフ比、良好な移動度及びノーマリ・オフ型特性は、将来のディスプレイシステムにおけるOLEDのTFT要件にとって非常に望ましい特性である。
【0140】
このような薄膜トランジスタを配した半導体装置(アクティブマトリックス基板)は、透明な基板とアモルファス酸化物TFTを用いているため、表示装置に適用した際にその開口率を増やすことができる。
【0141】
特に、有機ELディスプレイに用いる際には、基板側からも光を取り出す構成(ボトムエミッション)を採用することが可能となる。
【0142】
本実施形態の半導体装置は、IDタグ又はICタグなどのさまざまな用途に用いることが考えられる。
【0143】
以下、具体的に、本実施形態の電界効果型トランジスタを配した半導体装置の一例として表示装置を詳細に説明する。
【0144】
本実施形態の電界効果型トランジスタの出力端子であるドレイン電極に、有機又は無機のエレクトロルミネッセンス(EL)素子、液晶素子等の表示素子の電極に接続することで表示装置を構成することができる。
【0145】
以下に、表示装置の断面図を用いて具体的な表示装置構成の例を説明する。
【0146】
例えば、図21に示すように、基体111上に、チャンネル層112と、ソース電極113と、ドレイン電極114とゲート絶縁膜115と、ゲート電極116から構成される電界効果型トランジスタを形成する。
【0147】
そして、ドレイン電極114に、層間絶縁層117を介して電極118が接続されており、電極118は発光層119と接し、さらに発光層119が電極120と接している。
【0148】
かかる構成により、発光層119に注入する電流を、ソース電極113からドレイン電極114に、チャンネル層112に形成されるチャンネルを介して流れる電流値によって制御することが可能となる。
【0149】
したがって、これを電界効果型トランジスタのゲート電極116の電圧によって制御することができる。ここで、電極118、発光層119、電極120は無機若しくは有機のエレクトロルミネッセンス素子を構成する。
【0150】
又は、図22に示すように、ドレイン電極114が延長されて電極118を兼ねており、これを高抵抗膜121、122に挟まれた液晶セルや電気泳動型粒子セル123へ電圧を印加する電極118とする構成を取ることもできる。
【0151】
液晶セルや電気泳動型粒子セル123、高抵抗層121及び122、電極118、電極120は表示素子を構成する。
【0152】
これら表示素子に印加する電圧を、ソース電極113からドレイン電極114にチャンネル層112に形成されるチャンネルを介して流れる電流値によって制御することが可能となる。
【0153】
したがって、これをTFTのゲート電極116の電圧によって制御することができる。ここで表示素子の表示媒体が流体と粒子を絶縁性被膜中に封止したカプセルであるなら、高抵抗膜121、122は不要である。
【0154】
上記の2例において薄膜トランジスタとしては、スタガー構造(トップゲート型)の構成で代表させたが、本発明は必ずしも本構成に限定されるものではない。例えば、薄膜トランジスタの出力端子であるドレイン電極と表示素子の接続が位相幾何的に同一であれば、コプレナー型等他の構成も可能である。
【0155】
また、上記の2例においては、表示素子を駆動する一対の電極が、基体と平行に設けられた例を図示したが、本実施形態は必ずしも本構成に限定されるものではない。
【0156】
例えば、薄膜トランジスタの出力端子であるドレイン電極と表示素子の接続が位相幾何的に同一であれば、いずれかの電極又は両電極が基体と垂直に設けられていてもよい。
【0157】
ここで、表示素子を駆動する一対の電極が、基体と平行に設けられた場合、表示素子がEL素子若しくは反射型液晶素子等の反射型表示素子ならば、いずれかの電極が発光波長又は反射光の波長に対して透明であることが求められる。又は、透過型液晶素子等の透過型表示素子ならば、両電極とも透過光に対して透明であることが求められる。
【0158】
さらに、本実施形態の薄膜トランジスタでは、全ての構成体を透明にすることも可能であり、これにより、透明な表示素子を形成することもできる。また、軽量可撓で透明な樹脂製プラスチック基板など低耐熱性基体の上にも、かかる表示素子を設けることができる。
【0159】
次に、EL素子(ここでは有機EL素子)と電界効果型トランジスタを含む画素を二次元状に複数配置した表示装置について図23を用いて説明する。
【0160】
図23において、有機EL層204を駆動するトランジスタ201、及び画素を選択するトランジスタ202が示されている。
【0161】
また、コンデンサ203は選択された状態を保持するためのものであり、共通電極線207とトランジスタ202のソース部分との間に電荷を蓄え、トランジスタ201のゲートの信号を保持している。画素選択は走査電極線205と信号電極線206により決定される。
【0162】
より具体的に説明すると、画像信号がドライバ回路(不図示)から走査電極205を通してゲート電極へパルス信号で印加される。それと同時に、別のドライバ回路(不図示)から信号電極206を通してやはりパスル信号でトランジスタ202へと印加されて画素が選択される。そのときトランジスタ202がONとなり信号電極線206とトランジスタ202のソースの間にあるコンデンサ203に電荷が蓄積される。
【0163】
これによりトランジスタ201のゲート電圧が所望の電圧に保持されトランジスタ201はONになる。この状態は次の信号を受け取るまで保持される。トランジスタ201がONである状態の間、有機EL層204には電圧、電流が供給され続け発光が維持されることになる。
【0164】
この図23の例では1画素にトランジスタ2ヶ、コンデンサー1ヶの構成であるが、性能を向上させるためにさらに多くのトランジスタ等を組み込んでもよい。
【0165】
(チャンネル層に関する第2の実施態様:In-Ge-Zn-O系)
次に本発明の別の実施の形態 ( In-Ge-Zn-O 系チャンネル層) について説明する。
【0166】
本実施形態では、広い組成マージンを有し且つ高性能な特性を示すTFTを実現するために、新規な金属元素の組み合わせであるZnとInとGeを含有した酸化物チャンネルを有したTFTを技術開示する。本実施形態のIn-Ge-Zn-O系TFTはInとGaとZnを含有した酸化物チャネルを有したTFT(In-Ga-Zn-O系TFT)よりも、広い組成範囲にわたって、トランジスタ動作が可能である。
【0167】
このIn-Ge-Zn-O系TFT の注目すべき特徴は、非特許文献1や特許文献1に記された材料系よりも広い組成マージンを有することである。In-Ge-Zn-O系TFTは、非特許文献2のIn-Ga-Zn-O系TFTと同等もしくはそれ以上の安定性と半導体特性を示しうる。たとえば、金属組成比がIn : Ge : Zn = 42:13:45 のチャンネル層を配したIn-Ge-Zn-O系薄膜トランジスタにおいて、S-value として0.5 (V/decade)、電界効果移動度として 約7.00 cm2/Vs, 閾値電圧として 7.5Vの特性が得られている。図24の(a)には、In:Ge:Zn= 42:13:45のIn-Ge-Zn-O系TFTのトランスファ特性(Log (Id) vs. Vg) を示す。図 24の(b) には出力特性を示す。
【0168】
さらなる注目すべき点として、非特許文献1や特許文献1の材料系に比べて、In-Ge-Zn-O系TFT は作成時のプロセスマージンが大きいという特徴がある。特に、薄膜形成時の酸素分圧やチャンネル層の膜厚に対しての特性変動が小さい。 すなわち、本実施形態のIn-Ge-Zn-O系TFTは、In-Ga-Zn-O系TFTに比べて、コストや量産性に関して有利である。
【0169】
上記の特徴について、以下に図を用いて詳しく説明する。
【0170】
In-Ge-Zn-O系は、広い組成範囲にわたりTFTのチャンネル材料に好適なアモルファス状態の薄膜を得ることができる。スパッタ成膜した際にアモルファス相が得られる組成範囲を、図57に記した。破線で囲まれた領域においては結晶性の膜が得られ、それ以外の領域がアモルファス膜が得られる。ここで、結晶とアモルファスの境界は固定したものではなく、成膜条件や膜厚などに影響を受ける。アモルファスであることは、高性能なTFTを実現するために、重要である。なぜなら、先にZnO膜について説明したように、多結晶膜においては結晶サイズのばらつきや結晶粒界などがTFT特性に悪い影響を与えるからである。In-Ge-Zn-O系は、In-Ga-Zn-O系やIn-Zn-O系に比べて、アモルファスとなりうる組成範囲(Zn/In比の範囲)が広いことから、TFTのチャンネル層として好適な材料である。
【0171】
次に、Geを含有することと作用を、In-Ge-Zn-O系とIn-Zn-O系を比較することで、説明する。特許文献1によると、In-Zn-O系TFTにおける組成マージン(良好なTFT動作が可能な組成範囲)は、Zn/(Zn+In)が 0.3以上 0.7 以下である。3 atomic% (原子パーセント)のGe を含有すると(すなわち Ge/(Zn+In+Ge) = 0.03 のとき)、組成マージンはZn/(Zn+In+Ge)の上限が0.80へと広がる。 5 atomic% のGe を含有すると、組成マージンはZn/(Zn+In+Ge)の上限が0.70へと広がる。すなわち、少量のGeを含有することで、Zn-In-O系に対して組成マージンを拡大することができる。 In-Ge-Zn-O 系は、Zn-In-O 系に比べて、半導体的な性質を示し且つアモルファスである組成範囲が広いために、TFT動作可能な組成範囲が広くなる。
【0172】
環境安定性の観点から言うと、ある適当な量以上のGeを含有することが好ましい。Geを含有することで(Ge含有量が13 atomic%の組成t,やGe含有量が3 atomic%の組成iで)、抵抗率の大気中における経過時間安定性が向上する。
【0173】
Geを含有することで(Ge含有量が13 atomic%である点や点i Ge含有量が3 atomic%である点i)、抵抗率の大気中における経過時間安定性が向上し、抵抗率は時間とともにほとんど変化しなくなる。すなわち、GeをZn-In-O系材料に含有させることで、抵抗率の環境安定性に優れた酸化物半導体とすることができる。
(In-Ge-Zn-O 系チャンネル層において好適な組成範囲)
次に、In-Ge-Zn-O 系材料をTFTのチャンネル層に適用した場合に好適な組成範囲について説明する。
【0174】
3元相図を示す図を用い、In-Ge-Zn-O 系酸化物において元素組成比およびその範囲を説明する。下図において、酸素の量は特に考慮していない。
下図は図57と同一の図である。
【0175】
たとえば、Inを3価、Geを4価、Znを2価とし、ストイキオメトリもしくはストイキオメトリ近傍の酸素量を含有してよい。 ストイキオメトリからのずれ(たとえば、酸素欠損など)は、後述の成膜時の酸素分圧やアニール条件などで制御することができる。
【0176】
たとえば、相図中の点"a" は、InとGeの総原子中におけるIn原子数の割合、すなわちIn/(In+Ge)が0.97であることを示す。また、この点のInの含有率は97 atomic% となる。
【0177】
相図中の破線の左側は、結晶化したIn-Ge-Zn-O膜が得られる領域であり、破線の右側はアモルファスのIn-Ge-Zn-O膜が得られる領域である。
【0178】
、Znが含まれない場合(In-Ge-O)について言えば、組成比In/(In+Ge) が0.97 より大きいと結晶化してしまい好ましくない。また、組成比In/(In+Ge)が 0.5より小さいと絶縁体になっていしまい、チャンネル層としては不適である。
【0179】
特許文献1において、 In-Zn-O系では、 Zn/(Zn + In) が 0.7 以上で結晶化するため好ましくないこと、さらには30 atomic% 以下では低い抵抗の膜しか形成できないためチャンネルとして好ましくないことが記されている。
【0180】
Zn-In-O に3atomic% のGe を含有させることで、アモルファスとなる組成範囲を Zn/(Zn+In) =0.8 まで拡大することができる。
【0181】
相図中のそれぞれの点a〜点vの金属元素組成比 (atomic%) を以下に記す。
【0182】
(a) In:Ge:Zn=97:3:0
(b) In:Ge:Zn=17:3:80
(c) In:Ge:Zn=20:50:30
(d) In:Ge:Zn=50:50:0
(e) In:Ge:Zn=18:21:61
(f) In:Ge:Zn=40:40:20
(g) In:Ge:Zn=60:40:0
(h) In:Ge:Zn=84:16:0
(i) In:Ge:Zn=65:3:32
(k) In:Ge:Zn=50:20:30
(l) In:Ge:Zn=62:38:0
(m) In:Ge:Zn=25:38:37
(n) In:Ge:Zn=25:3:72
(w) In:Ge:Zn=33:3:64
(s) In:Ge:Zn=37:3:60
(u) In:Ge:Zn=45:15:40
(v) In:Ge:Zn=18:15:67
(x) In:Ge:Zn= 40:20:40
(y) In:Ge:Zn= 25:20:55
まず、相図を示す図57中の点"a", "b", "c", "d" で囲まれる線の中の組成範囲について説明する。In-Ge-Zn-O薄膜の組成が、点"a", "b", "c", "d" で囲まれる線の中にあるとき、この薄膜をチャンネル層に用いることでトランジスタを実現できる(スイッチング動作を実現できる)。 この領域中の任意の組成の薄膜を選んでチャンネル層に用いることで、>106以上のオンオフ電流比を有したトランジスタを実現できる。
【0183】
次に、相図 を示す図57中の 点"a", "b", "e", “f” , "g" で囲まれた領域の組成を有した薄膜を用いることで、小さなS値(サブスレッシュホルドスイング値)を有したトランジスタを再現良く実現できる。
【0184】
点"w"の組成の近傍の膜(すなわち、Zn/(Zn + In) が 0.65 ± 0.05 )を用いると、S値が小さく、移動度とオンオフ電流比が大きいトランジスタを実現でき、好ましい。また、この組成は、閾値電圧の値が0V近傍のトランジスタを作りうるという点でも好ましい組成である。
【0185】
さらに、相図を示す図57中の点"h", "i", “b” "e" “k”及び“l” で囲まれる組成範囲では、閾値電圧が0Vに近い値を有したトランジスタを実現できる。
【0186】
さらに、相図を示す図57中の点"a", "b", “e”, "m" 及び“l” で囲まれる組成範囲では、比較的大きな移動度 (≧3cm2/V-s) のトランジスタを実現できる。
【0187】
さらに、相図を示す図57中の点"a", "b", “e”,"f" 及び“gで囲まれる組成範囲では、小さなS値を有したトランジスタを容易に形成できる。
【0188】
さらに、相図を示す図57中の点"a", "n" ,"t" 及び“h”で囲まれる組成範囲では、大きな移動度(≧7cm2/V-s) を有したトランジスタを容易に形成できる。
【0189】
特に、1010以上のオンオフ電流比を有し、S値の小さい、ノーマリ・オフ型トランジスタを実現できる。
【0190】
さらに、相図を示す図57中の点"h", "i", “n” 及び"t"で囲まれる組成範囲では、大きな移動度(≧7cm2/V-s)と小さなS値(£0.7V/dec)、大きなオンオフ電流比を兼ね備えたノーマリ・オフ型のトランジスタを実現できる。
【0191】
さらに、相図を示す図57中の点s”, “u”, “x”, “y”“v”及び“b”で囲まれる組成範囲では、S値が非常に小さく、非常に高い移動度を有したノーマリ・オフ型のトランジスタを実現できる。
【0192】
さらに、相図を示す図57中の点"a", "i" 及び"h"で囲まれる組成範囲では、負の閾値を有したトランジスタを容易に形成できる。成膜時の酸素分圧を選ぶことで、比較的にオン電流が大きく、ヒステリシスが小さいトランジスタを実現できる。すなわち、この組成範囲は、ノーマリオン型トランジスタを実現する際に有用である。
【0193】
さらに、相図を示す図57中の点"l", "k ", "e", “c” 及び "d"で囲まれる組成範囲では、正の閾値を有したトランジスタを容易に形成できる。また、比較的、オフ電流が小さいトランジスタを実現できる。この組成範囲では、移動度はやや小さいけれども、低いキャリア濃度の薄膜を安定して形成することができる。また、Ge含有率が比較的大きいので光吸収端が短波長側にあり、波長400nm付近での光透過性に優れる。また、屈折率は小さくなる。すなわち、この組成範囲は、それほど大きなオン電流を必要としないが、小さなオフ電流と高い光透過性が必要な場合に有用である。
【0194】
In-Ge-Zn-O TFTのさまざまな組成におけるトランスファ特性の中で、比較的良好な特性を示した例を図 25に示す。
【0195】
特に良好な特性を示す図25c と d は、相図を示す図57の点“s”, “u”, “t”, “n” で囲まれた影付き領域に属する。図25a,b,c,d,eのそれぞれのTFTのS (V/dec), On/Off, Von (V), Vth (V) and m(cm2/V-s)は、下記の表2にまとめられている。
【0196】
【表2】
【0197】
(実施例1)
図1の(a)は、アモルファスIn−Ge−Oチャネル層からなる本実施例のトップゲート型電界効果型トランジスタの断面概略図を示す。
【0198】
図1の(a)に示すように、ガラス基板(コーニング社製1737)上にアモルファスIn−Ge−O酸化膜をチャネル層として成膜する。スパッタリングチャンバ中で、アルゴン及び酸素の混合雰囲気中で高周波スパッタリング法を用いてIn−Ge−Oアモルファス酸化膜を形成する。
【0199】
図13は、本発明の一実施形態としての電界効果型トランジスタのチャネル層を成膜するために用いた成膜システムの概略を示す図である。
【0200】
図13に示すように、本実施の形態の成膜システムは、真空排気能力を制御するゲートバルブ57と、それぞれの気体のシステムへのガス流入量を制御するための個別のマスフローコントローラ56とを有する。また、真空イオンゲージ計54と、基板ホルダー55と、基板51と、ターボ分子ポンプ53と、成膜室58と、スパッタリングターゲット付きスパッタリングガン52とを有する。
【0201】
53は、成膜室58を1×10−5Pa(背圧)に達するまで排気するターボ分子真空ポンプである。
【0202】
55は、基板の位置をx、y面内及び垂直なz方向に調節することができる基板ホルダーである。
【0203】
52は、スパッタリングガンであり、上に酸化物ターゲット52(ターゲット)を有する。これらの他に、成膜の間に起きる過熱によるスパッタリングガンへのいかなる損害も防ぐ冷却水供給がある。
【0204】
59は、スパッタリングターゲットのためのrf電源及びマッチングネットワークである。
【0205】
ガス導入系として、アルゴンガスと希釈酸素ガス(Ar:O2=95:5)とのそれぞれに一つずつマスフローコントローラ(MFC)がある。
【0206】
したがって、MFCでアルゴンと希釈酸素ガスの流入量を制御し、ゲートバルブを用いて全圧を制御することで、成膜室内に所定の雰囲気(全圧と酸素分圧)を形成できる。
【0207】
本実施態様では、2インチGeO2セラミックターゲットと二つの2インチIn2O3セラミックターゲット(材料源)との同時スパッタリングによって、In−Ge−O膜をガラス基板上に成膜する。
【0208】
成膜中は、常に、各In2O3ターゲットには35W、GeO2ターゲットには30Wの一定値にRF電源を維持した。
【0209】
成膜時の全ガス圧及びAr:O2流量比は、それぞれ0.4Pa及び69:1である。成膜速度は11nm/分である。さらに、基板温度を室温(〜25℃)に保持した。
【0210】
図14は、アニールしたIn/(In+Ge)=0.65及び0.75を有する酸化物チャネル層のX線回折パターンの例を示すグラフである。
【0211】
図14に示す、この膜で得られたX線回折パターン(薄膜法、入射角0.5°)によると、In/(In+Ge)=0.65で表される組成の場合、回折ピークはまったく見られなかった。すなわち、In−Ge−O膜はこの組成ではアモルファス構造を有する。
【0212】
膜の厚さは、25nmである。さらに、分光エリプソメトリ測定値から推定した平均根自乗平均(rms)表面粗さは、約0.1nmである。
【0213】
蛍光X線分析(XRF)分析の結果、薄膜の金属組成比はIn/(In+Ge)=0.65であった。
【0214】
膜の比抵抗は、約105Ω・cmである。
【0215】
電子キャリア密度は、1×1014/cm3と推定される。
【0216】
図15は、In/(In+Ge)の関数としてのホール移動度μhall(cm2/Vsec)の例を示すグラフである。
【0217】
純アルゴン雰囲気中で成膜した酸化膜のホール測定を実行した。移動度は、In含有率の増加とともに増加することが明らかに分った。In/(In+Ge)=0.95の場合に、非常に高い移動度40cm2/Vsecを実現することができる。
【0218】
次に、フォトリソグラフィーパターン形成法とリフトオフ法とによって、ドレイン電極14及びソース電極13をパターン形成した。ソース及びドレインは、それぞれ40nm及び5nmの厚さを有するAuとTiとの層状構造体である。
【0219】
さらに、ゲート絶縁物として厚さ150nmのSiO2誘電体をスパッタリングで成膜する。SiO2膜の比誘電率は約3.7である。
【0220】
さらに、標準的なフォトリソグラフィー法とリフトオフ法とを用いてゲート電極15をパターン形成した。チャネルの幅及び長さは、それぞれ200μm及び50μmである。
【0221】
(TFT素子の特性の評価)
図11は、室温で測定した、In/(In+Ge)=0.65を有するTFTの電流−電圧特性の例を示すグラフである。
【0222】
ソース電極−ドレイン電極間のドレイン電流IDに対するドレイン電圧VDの依存性を測定しながら一定のゲート電圧(VG)を加えると、VD=約6Vで飽和する(ピンチオフ)典型的な半導体トランジスタ挙動が観測された。
【0223】
VD=6VでVGを−20から20Vまで0.1Vきざみで変化させてTFTの伝達特性log(ID)対VGを評価すると、しきい値ゲート電圧(Vth)3.5Vが得られる。
【0224】
さらに、VG=20VでID=5×10−4Aのソースドレイン電流IDが測定された。
【0225】
図12は、In/(In+Ge)=0.65で表される組成を有するアモルファスIn−Ge−Oチャネル層を有するTFTの伝達特性log(ID)対VGの例を示すグラフである。
【0226】
トランジスタのオン−オフ電流比は、1010以上であった。さらに、出力特性から電界効果移動度を計算すると、TFTの飽和領域で3.4cm2(Vsec)の電界効果移動度μFEがそれぞれ得られる。
【0227】
しきい値電圧Vth(V)が3.5V、サブスレッショルドスイング値S(V/dec)が0.4V/decという小さなノーマリ・オフ型TFT特性の良好なスイッチング性能が得られる。
【0228】
さらに、同様なプロセス条件下で二つ以上のTFTを作製すると、同様なTFT特性を再現することが可能であった。
【0229】
すなわち、In−Ge−Oという新しいアモルファス酸化物半導体をTFTのチャネル層へ利用することによって、優れたトランジスタ特性を実現することができた。
【0230】
これは、In−Ga−Zn−Oシステムより少ない数の金属元素で構成される酸化物を用い、優れたTFT特性を実現することができるので、注目に値する。
【0231】
さらに、酸化物中にGeのような比較的に安価な元素を用いることによって、材料コストを減らすことができる。さらに、この材料は、環境への影響が少ないと予想される。
【0232】
したがって、材料コストが低く、TFT性能が良好なことから、OLEDの動作回路中に本発明のIn−Ge−Oチャネル層薄膜トランジスタを使用すると有望である。
(実施例2)
本実施例においては、チャネル層の材料組成依存性を検討した例である。
【0233】
材料組成依存性を検討するために、成膜にコンビナトリアル法を用いる。すなわち、スパッタ法により様々な組成を有する酸化物の薄膜を一度に一枚の基板上に作製する手法を用いて検討している。
【0234】
ただし、この手法を必ずしも用いる必要はない、所定の組成の材料源(ターゲット)を用意して成膜してもよいし、複数のターゲットのそれぞれへの投入パワーを制御することで、所望の組成の薄膜を形成してもよい。
【0235】
コンビナトリアルスパッタリング法によって組成が分布した酸化物薄膜を基板上に成膜し、素子作成プロセスを行うことで、基板上にさまざまなチャネル組成を有したさまざまなTFTを一度に作製した。引き続き、それぞれのTFTを評価、比較した。
【0236】
基板表面に対して傾けた三つのスパッタデバイスを用いてIn−Ge−O膜をスパッタ成膜した。ターゲットと基板上の所定の位置との間の距離及び角度に依存して、基板上の膜の組成が変化する。
【0237】
したがって、均一な厚さを有するが、広い組成分布を有する薄膜を3インチ基板上に得ることができる。
【0238】
それぞれが直径2インチのGeO2ターゲットと二つのIn2O3ターゲットとを同時にスパッタリングすることによって、In−Ge−O薄膜チャネルを成膜する。In2O3ターゲット及びGeO2ターゲットへのrfパワーをそれぞれ35W及び30Wで一定に維持する。
【0239】
Arで希釈した5%O2気体を使用することによって成膜時のO2分圧を正確に制御した。全圧は0.4Pa、Ar:O2=69:1である。基板温度を25℃に保持した。
【0240】
蛍光X線分析法、分光エリプソメトリ法、X線回折法(XRD)によって薄膜の物理的性質を評価する一方、4端子比抵抗測定及びホール移動度測定によって電気的に測定した。
【0241】
さらに、コンビナトリアル法によって成膜したIn−Ge−O薄膜を用い、n型アモルファス酸化物チャネル層として有するボトムゲートトップコンタクト型TFTを作製し、室温でTFT特性を評価した。
【0242】
分光エリプソメトリ法によって測定したところ、薄膜の厚さは25nm、厚さ分布は±10%の中にある。
【0243】
0.5以上0.9以下のIn/(In+Ge)で表される組成の場合、成膜直後の膜で得られたX線回折パターン(薄膜法、入射角0.5°)には、回折ピークは見えない。
【0244】
したがって、成膜直後のIn−Ge−O膜は、この組成範囲ではアモルファス構造を有する。さらに、膜を空気中、300℃で1時間アニールする。0.5以上0.9以下のIn/(In+Ge)で表される組成の場合、アニール後の膜で得られたX線回折パターンには、回折ピークは見えない。
【0245】
したがって、アニールしたIn−Ge−O膜は、この組成範囲ではアモルファス構造を有する。図14のプロットA及びプロットBは、0.65及び0.75のIn/(In+Ge)で表される組成比にそれぞれ対応するアニールした膜の回折パターンの例を示す。In/(In+Ge)=0.9を超えると、膜は多結晶構造を有し、回折ピークを観測することができる。
【0246】
次に、In−Ge−O薄膜の比抵抗とその組成依存性について説明する。
【0247】
図5は、4端子法シート抵抗測定システムを用いて、In−Ge−O膜のシート抵抗Rsの組成依存性を求めた結果を示すグラフである。
【0248】
ここで、膜厚は分光エリプソメトリ法によって測定し、厚さ及びシート抵抗Rsの測定値を用いて膜の比抵抗を計算した。In−Ge組成比の変化による比抵抗ρの変化を調べた。
【0249】
図5に示すように、膜の比抵抗はInリッチな組成領域からGeリッチな組成領域へ移るにつれて大きくなることがわかる。
【0250】
具体的には、図5に示すように、伝導体(〜10−1Ω・cm)から半導体(〜0.1Ω・cmから105Ω・cm)、半導体から絶縁体(106Ω・cmより大きい)へと変化する。
【0251】
TFTは、0.5以上又は0.97以下のIn/(In+Ge)で表される組成範囲、すなわち半導体的挙動をする組成範囲において良好に動作する。
【0252】
プロットの形状とTFT性能との間に相関が存在することがわかる。
【0253】
図5のρ対組成比のプロットは、半導体領域で四つの勾配を有する。
【0254】
勾配は、
領域1:0.1Ω・cm≦ρ<1Ω・cm、0.9≦In/(In+Ge)≦0.97に対応する、
領域2:1Ω・cm≦ρ<103Ω・cm、0.75<In/(In+Ge)<0.9に対応する、
領域3:103Ω・cm≦ρ<104Ω・cm、0.65≦In/(In+Ge)<0.75にほぼ対応する、
領域4:104Ω・cm≦ρ<107Ω・cm、0.5≦In/(In+Ge)≦0.65に対応する、
に対応する。
【0255】
この傾向は、TFT性能に密接に関連する。領域2の組成及び比抵抗と関連するTFT特性は、図10のプロットD及びCとして示される。
【0256】
同様に、図5の領域2、3及び4の特性組成及び比抵抗を有するチャネル層のTFT伝達曲線は、図10のプロットC、B及びAによってそれぞれ表すことができる。
【0257】
図5の領域1から領域4へ見ていくと、TFTパラメータS、Vth、オン/オフ電流比が著しく改善されることが明らかにわかる。
【0258】
しかし、領域1(Inリッチな組成範囲)から領域4(Geリッチな組成範囲)へ見ていくと、比抵抗が高くなり、キャリア濃度が低くなるため、移動度は減少する。
【0259】
したがって、領域3及び領域4に対応する組成で、非常に良好なTFT特性を実現することができる。
【0260】
詳しく検討すると、領域4(S=0.4)に対応するTFTが最も良いS値(図16)及び最も高い駆動安定性(図8)を有することがわかる。図16は、In/(In+Ge)原子比の関数としてのオン/オフ電流比の例を示すグラフである。
【0261】
ただし、領域4の移動度(移動度=3.4cm2/Vsec)は、領域3(移動度=6cm2/Vsec)より低い。領域3と領域4はともにTFTチャネルとして好適な組成範囲である。
【0262】
図9を参照すると、O2分圧によるIn−Ge−O膜比抵抗の変化を調べる。二つのプロットは、組成比In/(In+Ge)=0.65及び0.75にそれぞれ対応する。
【0263】
所定の組成の膜比抵抗は、酸素分圧の増加とともに増加することがわかる。
【0264】
これは、酸素分圧の増加による酸素空孔の減少と関連付けることができると考えられる。さらに、酸素分圧を調節することによってTFT利用に適する比抵抗範囲も調整することができることが観測される。
【0265】
図7は、経過時間に伴うIn−Ge−O膜の比抵抗の変化を測定した結果を示すグラフである。広い組成範囲のIn−Ge−O薄膜を調べた。
【0266】
図7は、In/(In+Ge)〜0.65のIn−Ge−Oの比抵抗の経時変化の例を示す。
【0267】
成膜直後のIn−Ge−O薄膜比抵抗は、当初、成膜後約300時間(1.5週)は時間とともに低下するが、最終的に安定化することが観測された。
【0268】
膜を空気中でアニールすると、比抵抗はより速い速度で安定化する。Geリッチな組成領域(0.5≧Ge/(Ge+In)≧0.25)において、最終的な安定した比抵抗がTFT用途に適切に良好である(105Ω・cm≧ρ≧103Ω・cm)。これによって、高Ge含有率領域におけるTFT特性の優れた安定性を説明することができる。
【0269】
次に、図1(c)に示す構成の、ボトムゲート薄膜トランジスタを作製した。
【0270】
最初に、厚さ100nmの熱酸化SiO2が形成されたn+−Si基板の上に、コンビナトリアルスパッタ法を用いてIn−Ge−Oの組成傾斜膜を成膜した。
【0271】
さらに、フォトリソグラフィーパターン形成法とリフトオフ法とを用いて、Au(100nm)/Ti(5nm)のソース電極及びドレイン電極をパターニング形成した。
【0272】
このようにして、さまざまな組成の活性層を有する多数のFETを有する薄膜を3インチ基板上に得た。最高プロセス温度は、120℃である。SiO2はゲート絶縁体として働き、n+−Siはゲート電極である。
【0273】
次に、TFT特性及びTFT安定性を評価する。
【0274】
図1(c)において、ゲート電極21はn+−Siからなり、ゲート絶縁体22はSiO2からなり、ソース電極23及びドレイン電極24はAu/Tiからなり、活性層25はIn−Ge−Oからなる。
【0275】
チャネルの幅及び長さは、それぞれ150μm及び10μmである。ドレイン電圧VD=6Vを用いてTFTの伝達特性を求める。
【0276】
最小ドレイン電流値に対する最大ドレイン電流値の比によってオン/オフ電流比を求めた。さらに、√ID(ID:ドレイン電流)対ゲート電圧(VG)グラフの傾きから電界効果移動度を計算した。
【0277】
さらに、√ID対VGグラフのx切片を見てしきい値電圧Vthを求めた。また、dVG/d(logID)グラフの最小値をS値(すなわち、電流を1桁増加させるのに必要な電圧VGの値)として採用した。
【0278】
図6は、n型In−Ge−Oチャネル層を有する電界効果型トランジスタ(FET)の伝達特性(log(ID)対VG)の組成依存性を示すグラフである。
【0279】
基板上のさまざまな位置におけるTFT特性を評価することによって、図6に示すように、In−Ge組成比によるTFTの特性の変化を得た。TFT特性は、基板上の位置の変化とともに、すなわちIn:Ge組成比とともに変化することがわかる。
【0280】
図6には、さまざまな組成のTFTのID−VG特性を示す(アニールなし)。
【0281】
Geリッチな組成領域(例えば、A及びB)では、小さな正のしきい値電圧とともに小さなオフ電流と大きなオン電流とが得られた。
【0282】
したがって、ノーマリ・オフ型TFT特性が得られる。
【0283】
一方、Inリッチな組成領域(例えば、プロットD及びE)では、非常に大きなオフ電流が得られた。
【0284】
オフ電流が非常に高いため、Inが0.85以上0.9以下のIn/(In+Ge)で表される組成範囲のTFTのオン/オフ比は〜101のオーダーと非常に小さい。
【0285】
図6のプロットD及びEに明らかに見られるように、In含有率が増加するにつれて、しきい値電圧はより負になる。これは、Inリッチな組成領域の高い導電率(多数のキャリア)によるのではないかと考えられる。したがって、より負のしきい値電圧(Vth)が得られた。
【0286】
0.5以上0.75以下のIn/(In+Ge)で表される組成範囲において、オン/オフ電流比>109の比較的優れた特性が得られた。
【0287】
電界効果移動度μFEはIn含有率の増加とともに増加するが、Sの値が大きくなることがわかる。良好なスイッチング周波数のためには高い移動度が望ましいが、オフからオンのスイッチング性能はS値によって決定される点に注意しなければならない。
【0288】
したがって、小さな正のS値が非常に望ましい。しかし、移動度の値は、所望の用途によって変化することがある。例えば、AMOLED用途では、1cm2/Vsec以上の移動度が望ましい。
【0289】
下の表3、4及び5に、組成比の関数としての成膜直後のTFT及びアニールしたTFTのS、Vth、μの値の一覧をそれぞれ示す。
【0290】
【表3】
【0291】
【表4】
【0292】
【表5】
【0293】
要約すると、0.6以上0.75以下のIn/(In+Ge)で表される組成マージン内の成膜直後のIn−Ge−Oチャネル層TFTで、以下に示すような優れたTFT特性を得ることができる。すなわち、On/Off(>109)、ドレイン飽和電流ID(>10−4A)、Vth(小さな正の値>0)及び移動度(3cm2/Vsec≦μ≦6cm2/Vsec)という特性である。
【0294】
同じTFTを空気中300℃でアニールすると、TFT特性はさらに改善される。
【0295】
図10は、アニールしたTFTの伝達特性(log(ID)対VG)を示す。
【0296】
組成の関数としてのTFT特性の傾向は、アニール前の状態と類似しているが、成膜直後のTFTと比較すると、特にInリッチな組成領域で、TFT特性の絶対値に明らかな変化がある。
【0297】
図10は、TFTをアニールした後の特性の組成依存性の例を示す。
【0298】
図10のプロットD及びEと、図6のプロットD及びEとを比較すると、アニールによってTFT特性が改善されることを明らかに示している。
【0299】
良好なTFT特性を示す組成の範囲がさらに広がっていることが明らかに分る。例えば、それぞれIn/(In+Ge)=0.65、In/(In+Ge)=0.75、In/(In+Ge)=0.85の場合のプロット(B)、(C)、(D)は、良好なTFT特性を示す。
【0300】
Geリッチな組成領域(例えばA及びB)では、小さな正のしきい値電圧Vthとともに小さなオフ電流と大きなオン電流とが得られ、すなわちノーマリ・オフ型TFT特性が得られる。この組成領域におけるS値は非常に低く(0.4≦S≦0.55)、TFTのスイッチング特性に優れている。
【0301】
Geリッチな組成領域(例えば、A及びB)では、オフ電流は若干小さくなり、したがって、Geリッチな組成領域では、オン/オフ比は大きくなる。
【0302】
図2に、アニールしたTFTの電子電界効果移動度μFEのIn:Ge組成依存性を示した。μFEは、In含有率の増加とともに増加することが分かる。
In/(In+Ge)で表される組成が0.97以下0.65以上のとき、17以下3.4cm2/V秒以上のμFEを得ることができる。
【0303】
図3に、しきい値電圧の組成依存性を示した。薄膜トランジスタのしきい値電圧(Vth)が0V以上のとき、回路を構成することがは容易となり好ましい。図3に示すように、In/(In+In)が0.75以下のときVthは正になり、明らかに望ましい特性である。
【0304】
図4に、S値の組成依存性の例を示す。In/(In+Ge)=0.5以上0.75以下が望ましいことがわかる。この範囲ではS値として0.4から0.55の間の小さな値を実現することができるからである。そのような小さなSの値は、明らかにTFTの優れたスイッチング(オフからオンへの)性能を示す。
【0305】
図10に示した、In/(In+Ge)=0.55(図10、プロットA)のTFTの場合、電界効果移動度の値、オン/オフ電流比、ターンオン電圧、しきい値電圧及びS値は、それぞれ以下のようになる。すなわち、電界効果移動度の値が3.4cm2(Vsec)、オン/オフ電流比が4.5×1010、ターンオン電圧が−1.9v、しきい値電圧が3.5v、S値が0.4V/decである。
【0306】
In/(In+Ge)=0.75のTFT(図10、プロットB)の場合、電界効果移動度の値、オン/オフ電流比、ターンオン電圧、しきい値電圧及びS値は、それぞれ以下のようになる。すなわち、電界効果移動度の値は6cm2/Vsec、オン/オフ電流比は2×1010、ターンオン電圧は−5V、しきい値電圧は0V、S値は0.55V/decである。
【0307】
次に、アモルファス酸化物半導体の中での、In−Ge−O系のメリットを調べるために、本発明の発明者らは、類似の構成を有するが異なる酸化物をチャネル層として有するTFTを鋭意作製した。
【0308】
この目的のために、In−Mg−O及びIn−Al−O、In−Ga−OのTFTを作製してTFT特性を比較した。
【0309】
本発明の発明者らは、In−Ge−O系の場合と同様に、In−Mg−O、In−Al−O及びIn−Ga−OのTFTの検討を実施し、組成依存性の結果を得た。それぞれのIn-X-O系において、良好な特性を示したTFTを抽出し、それらを、In−Ge−O系の酸化物を含むTFTと比較した。
【0310】
図17は、これらのそれぞれの材料系のTFT伝達特性(log(ID)対VG)の例を示すグラフである。図17において、Ge1及びGe2は、0.35、0.25のGe/(Ge+In)で表される組成比を有するTFTをそれぞれ表す。
【0311】
In−Ge−OのTFT特性は、明らかにIn−X−O(X=Ga、Al、Mg)のどれよりも優れている。ここで、Xは、2金属酸化物システム中の第2の金属元素を表すために用いられる。第1の金属元素はインジウムである。
【0312】
図18は、In−Ga−O、In−Al−O及びIn−Mg−O系の酸化物半導体を用いたTFTのサブスレッショルドスイング値と本発明のIn−Ge−O系の酸化物を含むTFTのサブスレッショルドスイング値とを比較した例を示す。図18において、サブスレッショルドスイング値は、S(V/dec)で表される。
【0313】
図19は、In−Ga−O、In−Al−O及びIn−Mg−O系の酸化物半導体を用いたTFTのオン−オフ電流比と本発明のIn−Ge−O系の酸化物を含むTFTのオン−オフ電流比との間の比較の例を示すグラフである。
【0314】
図20は、In−Ga−O、In−Al−O、In−Mg−O系の酸化物半導体を用いたTFTの電界効果移動度と本発明のIn−Ge−O系の酸化物半導体を用いたTFTの電界効果移動度との比較の例を示すグラフである。
【0315】
図18、19及び20でそれぞれ示したように、S(V/dec)、On/Off及びμFE(cm2/Vsec)によってTFT特性を比較すると、この事実(In-Ge-O系酸化物半導体の優位性)は明らかである。
【0316】
このようにIn−Ge−Oシステムでは、図18−図20に示したその他のIn−X−Oシステムと比べて、小さなS値と大きな電界効果移動度とともに、高いオン/オフ比が得られることがわかる。
【0317】
In−Ge−O酸化物半導体とシリコン酸化物ゲート絶縁体との間に好ましい界面が容易に形成され、この界面が小さなS値を可能にすると考えられる。
【0318】
また、In−Ge−O系は、TFT動作する組成比の領域がIn−Zn−O系と比べて広いという特徴(利点)がある。下の表6を見れば、In−Ge−Oの場合とIn−Zn−Oの場合とのTFT動作する組成範囲がわかる。In−Ge−O系のTFT動作する組成比の領域がIn−Zn−O系より広いことがわかる。
【0319】
【表6】
【0320】
In−Ge−O系の酸化物を含むTFTは、駆動ストレスに対しても良好である。
また、In−Ge−O系の酸化物を含むTFTは、経過時間に対しての安定性が良好である。
【0321】
図8に、作製直後と作製1ヶ月後とのTFTの伝達特性を示した。図8は、In/(In+Ge)=0.65のチャネル組成に対応する。特性変化が小さいことがわかる。
【0322】
(実施例3)
本実施例は、アモルファスIn−Ge−O酸化物半導体をプラスチック基板上のチャネル層へ利用する例である。
【0323】
本実施例の薄膜トランジスタの構成例を図1(b)に示す。チャネルの長さは60μm、チャネルの幅は180μmである。基板10は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムである。
【0324】
最初に、フォトリソグラフィーパターン形成法とリフトオフ法とによって、ゲート電極15及びゲート絶縁層12をPET基板10上にパターン形成する。
【0325】
ゲート電極15は、厚さ50nmのTa層からなる。ゲート絶縁層SiOxNyは、スパッタリング技法を用いて成膜され、厚さは150nmである。さらに、SiOxNy膜の比誘電率は、約6である。
【0326】
次に、スパッタリングによってトランジスタのチャネル層を成膜し、フォトリソグラフィーパターン形成とリフトオフ技法とによって形状を定めた。
【0327】
チャネル層は、In−Zn−Ge−Oシステムのアモルファス酸化物11からなり、組成In:Zn:Geは1.4:2.1:1である。
【0328】
上記で言及したアモルファス酸化物In-Zn-Ge膜は、アルゴンガス及び酸素ガス雰囲気中のrfスパッタリング法によって形成した。
【0329】
本実施態様における三つのターゲット(材料源)を同時にスパッタリングした。この目的のために、In2O3、GeO2及びZnOの三つの2インチ小型焼結ターゲットを使用する。
【0330】
各ターゲットへのRFパワーを制御することによって、In:Zn:Ge酸化物薄膜の組成を所望の値に制御することができる。全体の蒸着圧を0.4Paに固定し、Arで希釈した5%O2気体を使用することによって、Ar:O2=69:1を用いてO2分圧を正確に制御した。基板温度は、室温(〜25℃)に保持する。
【0331】
成膜直後の状態とアニール後状態とにおいて、酸化膜の回折パターン(薄膜法、入射角0.5度)に回折ピークは観測されない。すなわち、酸化膜はアモルファスである。アモルファス酸化膜の厚さは、約25nmである。
【0332】
さらに、アモルファス酸化膜の吸収端は、3eVより大きく、光吸収スペクトルで分るように、電磁スペクトルの可視光域及び近赤外光域で非常に良好な透明性を示す。
【0333】
さらに、ソース電極、ドレイン電極及びゲート電極は、透明導電性酸化物とされているインジウムスズ酸化物からなっていた。インジウムスズ酸化物層の厚さは、100nmである。
【0334】
(TFT素子の特性の評価)
室温条件でPET基板上のTFTの特性を測定する。トランジスタのオン−オフ比は、1010以上である。さらに、電子電界効果移動度μFEを計算したところ、3cm2(Vsec)であった。
【0335】
さらに、本実施態様におけるIn−Zn−Geチャネル層を有する薄膜トランジスタは、高い性能及び高い環境安定性を有する。
(実施例4)
本実施例は、チャンネル層にアモルファスからなるIn-Ge-Zn-O を用い、図1の(a) に断面図を示すトップゲート型の構造を有した電界効果トランジスタの例である。
【0336】
図 1(a) に示すように、チャンネル層として、アモルファスからなるIn-Ge-Zn-O 酸化物膜をガラス基板(Corning 社 1737) 上に形成する。 アモルファスIn-Ge-Zn-O 酸化物膜は、アルゴンと酸素の混合雰囲気中でRFスパッタ法で形成する。成膜装置は、図13に準じている。
【0337】
本実施例においてIn-Ge-Zn-O 膜は、3つの2インチサイズのセラミックターゲット(ZnO, GeO2 および In2O3)を用い、同時スパッタによりガラス基板上に形成した。RF 投入パワーは成膜時に一定に保たれており、ZnO, GeO2 および In2O3に対して、それぞれ電源45W, 30W, 35Wである。 成膜時の全圧は0.46Paであり、ArとO2の流量比は69:1である。 成膜レートは11nm/minである。成膜時に、基板加熱は行っていないため、基板温度はほぼ室温に保たれている。
【0338】
図 26に示すように、組成比がIn:Ge:Zn=42:13:45の薄膜のX線回折パターンは、回折ピークを持たず、薄膜はアモルファスである。
【0339】
膜厚は25nmであり、エリプソメトリによる評価によると表面粗さは約. 0.1nm と見積もられた。蛍光X線により組成分析を行うと、In:Ge:Zn=42:13:45であった。抵抗率は 105 W.cm.であり、電子キャリア濃度は1´1014/cm3を見積もられている。
【0340】
次に、ドレイン電極14 とソース電極 13 がリソグラフィー技術とリフトオフ法によりパターン形成される、ソースとドレインはAu とTi の積層電極からなり、それぞれの厚さは40nm 、 5nm,である。 さらに、ゲート絶縁層として厚さ100nm の SiO2をスパッタ法によりする。SiO2 膜の比誘電率は約3.7である。引き続き、ゲート電極15 がパターン形成された。チャンネル幅とチャンネル長は、それぞれ 200mm、50mmである。
【0341】
(TFT特性の評価)
図 24(b) は、組成比Zn:In:Ge=45:13:42 のIn-Ge-Zn-Oチャンネルを有するIn-Ge-Zn-O TFTの電気特性の例を示している。測定は室温で行われている。図 24(b)に示すように、典型的な半導体トランジスタの振る舞いが観測された。一定のゲート電圧下でドレイン電圧を変化させながら、ドレイン電流を測定すると、, 約VD= 6 Vにおいて 電流飽和(pinch-off) が観測された。VD=6V においてVG が-30 から 30 Vの範囲でトランスファ特性 log (ID) vs. VGを評価した。VG=25Vにおけるソース/ドレイン電流IDは ID=5×10-4A であった。 オンオフ電流比は1011台であった。出力特性から電界効果移動度mFEを計算すると、飽和領域において 7.00 cm2(V-s) が得られた。ノーマリ・オフ型の良好なTFT特性を示し、Von と閾値電圧Vth (V) は -0.3 and 7.5Vであった。S値は0.5V/dec である。
【0342】
さらに、2回以上同様なプロセス条件でTFTを試作したところ、同様なTFT特性を再現することができた。
【0343】
すなわち、In-Ge-Zn-Oという新しいアモルファス酸化物をチャンネル層に適用することで、良好なトランジスタ特性が達成された。良好な特性のトランジスタの再現よく形成できる性に理由は定かでないが、真空やさまざまな酸素雰囲気中での安定性やチャンネル膜厚に対する特性変動が小さいことなどがその理由であると考えられる。
【0344】
図 27 と 図28 は、In-Zn-Ge-O系 TFTと In-Zn-Ga-O系TFTの比較を示す図である。図 27は、さまざまなZn/In 組成比に対するトランスファ特性の振る舞いを示している。図 27の左図は、In-Zn-Ge-O系において、 Ge 含有量は9 (atomic%)に固定されている。すなわち Ge/(Ge+Zn+In)=0.09 である。右図は、In-Zn-Ga-O系において、 Ga 含有量は9 (atomic%)に固定されている。すなわち Ga/(Ga+Zn+In)=0.09 である。 図 28は、さまざまなGe (もしくはGa)含有量に対するトランスファ特性の振る舞いを示している。図 28の左図は、In-Zn-Ge-O系において、 Zn/In比が約0.75に固定されている。図 28の右図は、In-Zn-Ga-O系において、 Zn/In比が約0.75に固定されている。図28の左図におけるトランスファ特性a, b, c, d, e の組成は、3元相図である 図 29の1D, 2D, 3D, 4D,5Dの組成に対応している。
【0345】
In-Zn-Ge-O系においては、Geが3atomic%以下の含有量で含有すれば(例えばGe/(Ge+Zn+In)=0.05 、Zn/In=0.75)、キャリア密度を低減し、スイッチオフすることができる。一方で、図28Bに示すように、In-Zn-Ga-O系においては、同程度のGaの含有量ではキャリア濃度を低減し、スイッチをオフするのに不十分であることがわかる。すなわち、In-Zn-Ge-O系では、Ga/(Ga+In+Zn)=0.05 and Zn/In=0.75において、スイッチオフできていない。
【0346】
これはIn-Ge-Zn-O系の特筆すべき利点である。なぜなら、In-Ge-Zn-O系はより広い金属組成範囲において、良好なトランジスタ特性を実現できることを示しているからである。
【0347】
すなわち、本発明の新しい半導体材料であるIn-Ge-Zn-O系は、In-Ga-Zn-O系と比べて組成マージンに優れる。このことはIn-Ge-Zn-O系が量産時のコスト性能に優れることを意味する。
【0348】
さらに、 In-Ga-Zn-O 系においてアモルファスが得られる組成範囲は、Zn含有量においてZn.(Zn+In+Ga)= 0.7以下の範囲に限られるが、In-Ge-Zn-O系においては、 Zn/(Zn+In+Ge)=0.8以下の範囲までアモルファスである。すなわちIn-Ge-Zn-O系はアモルファスの組成領域が広い。
【0349】
InやGaはZnに比べて比較的希少であり高価な元素であるため、Zn組成比が高い材料はコスト的に好ましい材料である。さらには環境性にも優れる。
【0350】
このように、In-Ge-Zn-O チャンネル層を適用したトランジスタは、良好な性能を示し、組成マージンが大きく、材料コストが低いという利点を有することから、有機LED表示装置の駆動回路にとって好適である。
(実施例5)
本実施例では、コンビナトリアルスパッタ法を用いて成膜を行うことで、一度に薄膜材料の組成依存性を検討することができる。この技術をTFT試作に適用することで、一度にTFT特性のチャンネル組成依存性を検討することができる。RFスパッタによりコンビナトリアル法によって、基板上に広い組成範囲にわたり分布を有した膜を一度の成膜によって形成する。
【0351】
In-Ge-Zn-O薄膜は、基板に対して傾いて配置された3つのスパッタターゲットを用いて形成された。薄膜の組成は、基板上の位置に依存して変化している。このようにして、膜厚は均一(同一)で、組成の異なる膜を基板上に形成できる。ターゲットには2インチのセラミックターゲットZnO、GeO2、In2O3 を用いた。
【0352】
投入パワーは、 ZnO、InO3 、GeO2 に対して45W、35 W 、 30 - 45Wである。ここで、5%O2に希釈された Ar+O2 混合ガスとArガスを用い、流用を制御することで、酸素分圧を精度良く制御した。基板温度は、25°Cである。
【0353】
表7にはIn-Ge-Zn-O膜の薄膜形成条件を記した。
組成傾斜膜の膜厚分布をエリプソメトリを用いて評価したところ、膜厚は25nm で、その分布は±10%以内であった。
【0354】
【表7】
【0355】
In-Ge-Zn-O 組成分布膜を25分割し、試料名を1B, 1C, 1D, 2A, 2B, 2C, 2D, 2E, 3A, 3B, 3C, 3D, 3E, 4B, 4C, 4Dとした。GeO2ターゲットへの投入パワーを調節することで、より広い組成範囲の検討が可能である。そろぞれの試料の組成比In : Ge : Znは、蛍光X線法により分析された。図29 の3元相図において組成が記されている。
【0356】
図29 はアモルファスの組成領域と結晶化した組成領域が記されている。アモルファスの同定には、X線回折法を用いている。図29に記された点においては、アモルファスであった。 In-Ge-Zn-O系において、結晶化した組成範囲は、Zn組成の大きい領域に存在する。結晶化した領域は図 29において破線で囲まれた影つき領域である。 注目すべきは、In-Ge-Zn-O系のアモルファスを示す組成範囲が、In-Ga-ZnO系においてアモルファスとなる範囲より広いことである。このようにアモルファスの組成範囲が広いことは、In-Ge-Zn-O系の利点の一つである。
【0357】
分光エリプソメトリと分光評価により、Ge含有量の大きい組成1A, 2A, 3A, 4A, 5A, 1F において、光吸収端が短波長側にあり可視域の屈折率が小さいことがわかった。すなわち、透明な基板上に形成された際に、Ge含有量が大きい薄膜は透過性に優れるという利点がある。
【0358】
次に、抵抗率の組成依存性を評価した。成膜時の酸素分圧制御のために、Ar+O2流量は20sccmとしている。In含有量の大きい組成において抵抗率が小さく、Ge(もしくはZn)含有量の大きい組成において抵抗率が大きいことがわかった。特に、抵抗率の低減にはIn含有量の影響が大きい。これは、In含有量が大きい組成において酸素欠損量が多いことでキャリア濃度が大きいこと、さらには電子移動度が大きいためと考えられる。Ge含有量が多い組成においてはGe-Oの結合エネルギーが大きいため、酸素欠損ができにくいものと考えることができる。
【0359】
In-Ge-Zn-O 薄膜は、In-Ga-Zn-O系薄膜と比べて、チャンネル層に好適な抵抗率を有した薄膜を広い組成範囲で得ることができることがわかった。
【0360】
次に、大気中300℃アニール後の薄膜について述べる。組成が1D , 2D, 3D, 4D, 5Dにおける、アニール前(as deposited)とアニール後(post annealed)の抵抗率(resistivity)を表8と 図 30に示す。
【0361】
【表8】
【0362】
表8 と 図 30 に示すように、抵抗率はアニールによって減少し、チャンネル層に適合した半導体的な振る舞いをする組成範囲が拡大する。
【0363】
次に、抵抗率のGe含有量依存性について述べる。図31 は抵抗率のGe含有量依存性を示している。ここで組成比Zn/(Zn+In)=0.4 である。Ge含有量が増えると抵抗率が大きくなることがわかる。
【0364】
次に、抵抗率の成膜時の酸素分圧依存性について述べる。 酸素分圧によって、キャリア濃度を制御することができる。主に酸素欠損量が酸素分圧によって制御されていると考えられる。図32 は、In-Ge-Zn-O 膜のキャリア濃度の酸素分圧依存性を示している。酸素分圧を精密に制御することで、半導体特性を有した(キャリア濃度が1014 /cm3から 1018 /cm3程度の)薄膜を得ることができる。このような薄膜をチャンネル層に適用することで、好適な特性を示すTFTを実現することができる。図32 に示すように、典型的には0.008 Pa,の酸素分圧において半導体特性を示した薄膜を形成できる。酸素分圧が 0.01Pa 以上だと絶縁体になり、0.002Pa 以下だと伝導体になり、チャンネル層としては不適である。
【0365】
また、好適な酸素分圧は、チャンネル層の金属組成に依存する。ゆえに複数の酸素分圧での形成を検討した。
【0366】
図33 はIn-Ge-Zn-O 膜をAr+02 の流量が20sccm で成膜したときと、10sccm で成膜したのときの抵抗率を比較したものである。図 34 は300℃で1時間のアニールを行った膜の抵抗率である。Ar+O2 流量が小さいときに抵抗率が小さいことがわかる。これはAr+O2 流量が小さいときに、酸素欠損の量が増加したためと考えることができる。図 34に示すように、アニールにより抵抗率が減少する。図 35 と36 には、 相図を用いて抵抗率の振る舞いを記した。
【0367】
TFTのチャンネル層に適した抵抗率を示す組成範囲は、酸素分圧に依存して移動する。
(実施例6)
本実施例は、実施例2(In-Ge-O TFTs の組成依存性に関する実施例)と同様な手法で、In-Ge-Zn-O TFT の組成依存性を検討した例である。TFT試作のコンビナトリアル手法を適用している。チャンネル層の薄膜形成手法は、実施例2に準じている。チャンネル層の膜厚は約25nmである。
【0368】
以下、In-Ge-Zn-O TFTのトランスファ特性の組成依存性の結果について説明する。チャンネル層の成膜において、Ar+O2ガスの流量を20 sccmとしている。In-rich な組成(すなわち相図の図57において点 “a”, “i”, “h”で囲まれた組成範囲)において、オン電流が比較的大きく、電子移動度が7 cm2(V・s)-1 以上の大きな値を示すことがわかった。Inの含有量が大きすぎる場合(含有量が97 atomic% 以上の場合)には、負のゲート電圧が印加された場合でさえ、正のゲート電圧が印加された場合と同程度の電流が流れてしまう。すなわち、このようなInの含有量が大きすぎると、トランジスタ動作を示さなかった。
【0369】
チャンネル層の組成は、相図の図57において点“a”, “i” and “h”で囲まれた範囲にある場合には、オン電流が大きく、ターンオン電圧が負のトランジスタが実現された。
【0370】
一方、Geの含有量が増加するにつれて、オフ電流が減少する。また、移動度も小さくなる。閾値電圧は正の値を示し、結果としてノーマリ・オフ特性(ゲート電圧に電圧を印加しない場合、オフ状態となり、電流がほとんど流れない特性)が得られる。 Ge 含有量が 3 atomic%と 25atomic% の間において、109以上のオンオフ電流比と小さなオフ電流が実現される。このとき、移動度は 3 から16 cm2 V/s の間の値が得られる。もっとも移動度の大きいトランジスタは、 InとZnの含有量が大きい組成で得られた。好ましい組成範囲は、Zn rich な組成 (Zn/(In+Zn+Ge)=0.65) であり、全体的に良好なTFT特性が得られる。移動度、オンオフ電流比、閾値電圧、S値として、それぞれ 15.65 cm2(V・S)-1, 1 × 1011, 6 V, 0.26 V/decadeが得られた。X線回折の結果は、この好ましい組成領域でIn-Ge-Zn-O filmはアモルファスであることが確認された。さらに、非常に小さいS値を有したトランジスタが、 図57の点“s”, “u”, “v” “b”で囲まれたZn−richな領域で実現できた。
【0371】
また、図57の点“s”, “u”, “t”, “n” で囲まれた組成範囲において、すべてのTFT特性(移動度、オンオフ電流比、ノーマリ・オフ特性)が良好であった。
【0372】
抵抗率が数 Ωcm to 数100 Ωcm の薄膜をチャンネル層に用いた場合にTFT動作が実現されることが確認された。
【0373】
次に、Ar+O2流量が10 sccm の条件でチャンネル層が形成された場合のTFT特性について説明する。これによって、In-Ge-Zn-O 膜の成膜時の酸素分圧依存性が調べられた。アニール処理を行わない場合のTFTに関して、酸素流量比を大きくするにつれて、オンオフ電流比と閾値電圧は増加する。In-Ge-Zn-O 膜の抵抗率は、20sccm のAr+O2ガス流量を用いた方が、10sccm の流量を用いた場合よりも大きい。結果として、トランジスタ動作が可能となる組成領域は、In-richな組成領域の方向に移動する。結果として、移動度の大きなTFTを得ることができる。 成膜時の酸素分圧が大きいと、アニール処理を施していないトランジスタにおいては、その閾値電圧が正の方向に移動することがわかった。すなわち、アニール処理を施していない(as-deposit)トランジスタにおいては、成膜時の酸素分圧(酸素流量)によって影響を受ける。
【0374】
一方で、300°C で1時間のアニール処理を施したTFTにおいては、TFT の性能が、成膜時の酸素分圧にほとんど影響を受けなかった。アニール後の抵抗値が成膜時の酸素分圧によって影響を受けるような場合であっても、TFT特性(オンオフ電流比、閾値電圧、移動度など)はほとんど変化しなかった。このことは、In-Ge-Zn-O系TFTは成膜時の酸素分圧に対しての特性マージンが広い、すなわちプロセスマージンが広いことを示している。この結果は図 37 , 図 38 および図 39に示されている。これらの図には、さまざまな金属元素組成における、成膜時の酸素分圧変化にともなうトランスファ特性の変化が記されている。1D はIn rich( In含有量が60atomic%以上)の組成, 4Eは Zn richな組成( Zn含有量が 60atomic%以上) 、3Aは Ge含有量が25atomic%の組成である。これらの組成におけるTFT特性は、表9にまとめた。
【0375】
表9 には、さまざまなチャンネル組成を有したTFTの組成が記されている。チャンネル層を成膜する際のAr+O2ガス流量に対してまとめられている。また、TFT形成後のアニール処理をせずに評価した(as-depo)データと、アニール後に評価したデータが記されている。
【0376】
【表9】
【0377】
もっとも大きな電界効果移動度が得られた組成領域は、In richの組成領域や Zn-richの組成領域である。たとえば、11.5 cm2(V・S)-1という高い移動度を有した薄膜トランジスタが、Zn-In-Ge の組成比として、62 atomic%, 33 atomic%, 5 atomic%で実現された。すなわち、Znの含有量が最も大きい組成である。 同時に、オンオフ電流比、ターンオン電圧(Von), S値はそれぞれ 1 × 1011, -0.7V, and 0.6 V/decadeであった。チャンネル層成膜時のAr+O2ガス流量比を 20sccm にしても、ほぼ同様な特性が得られた。
【0378】
次に、さまざまなGe組成比のチャンネルを有するIn-Ge-Zn-O TFTについて、図 40と表10とを用いて比較説明する。Ge/(In + Ge + Zn)で表されるGe含有量が 25 atomic% のトランジスタ特性を評価した結果、3 cm2/Vsを超える電界効果移動度を得ることが出来た。Ge 含有量が5 atomic% の酸化物を用いると、12 cm2/Vs を超える電界効果移動度を得ることが出来た。すなわち、Ge含有量を減らすと、電界効果移動度が大きくなる。
【0379】
【表10】
【0380】
閾値電圧が0V以上の薄膜トランジスタを用いると電子回路を構成することが容易になる、図 41 と 表11は、In-Ge-Zn-O 系TFTにおけるターンオン電圧VonのGe含有量依存性を示している。ここでZn/In 組成比は固定されている。図41に示すように、正のターンオン電圧Von、結果として正の閾値電圧を有するTFTは、Ge/(Zn+In+Ge)が0.03以上0.5以下で得ることができる。Ge 含有量が 5atomic% の時、Von は 2.4であり、Ge 含有量が 25atomic% まで増えるにつれて、Von は正の大きな値10.3へと変化する。すなわち、Ge含有量を増やすことで、容易にノーマリオフトランジスタを実現できるようになる。Vonおよび閾値電圧Vthは、Ge含有量が増えるにつれて、より正の側に動く。
【0381】
【表11】
【0382】
高性能のスイッチング素子には、高いオンオフ電流比が望まれる。図 42と表12 はオンオフ電流比への Geを含有させることの効果を示している。Ge 含有量が5atomic%の時、1E+11のオンオフ電流比が得られ、Ge 含有量が25atomic% まで増えるにつれて、オンオフ電流比は1E+10まで減少する。一般に、In-Ge-Zn-O 系のTFTは非常に大きなオンオフ電流比を示すが、Ge含有量を大きくすることで特に大きなオンオフ電流比を得ることができる。
【0383】
【表12】
【0384】
次に、Geを含有することによるS値への効果について説明する。図 43(a) と (b)と表13と表14はS (V/dec) for In-Ge-Zn-O系TFTのS値のGe含有量依存性を示している。ここで、Zn/In組成比は0.4 及び2の結果が記してある。In リッチな組成を有する TFTs (図 43(a)) と Zn リッチの組成を有するTFT (図 43(b))で傾向が異なることが見て取れる。
【0385】
表13に示すように、Zn/In=0.4 でGe 含有量5atomic% において、 S 値は 0.9程度であり、 Zn/In=0.4 でGe含有量が25atomic%では S 値は 0.5 V/decである。すなわち、In リッチの組成では、S 値はGe含有量の増加とともに減少する。
【0386】
【表13】
【0387】
Zn含有量が大きい組成に対しての、Geに効果については図 43 and 表14に記した。Zn/In=2 でGe 含有量が 5atomic% において、S 値は約0.5である。Ge 含有量が25atomic%まで増えるにつれて、S値は 約1.3まで増加する。すなわち、Zn含有量の大きい組成のTFTにおいて、S値はGe含有量の増加とともに増加する。
【0388】
【表14】
【0389】
結果として、Ge含有量を減らすにつれて、電界効果移動度(mFE, cm2/Vs) とオンオフ電流比は増加し、Vthは負の方向に動く。一方で、In 含有量が45atomic%以上の場合には、 S 値はGe含有量が増加するとともに減少する。一方でIn 含有量が45atomic%以下の場合には (In/(In+Ge+Zn)<0.45)、S 値はGe含有量が増加するとともに増加する。
【0390】
移動度はTFT特性パラメータの中で重要な項目の一つである。なぜなら移動度は半導体チャンネル層の性能、特に電流駆動能力や最大駆動周波数をに寄与するからである。実際、液晶表示装置の用途では、0.1 cm2/V-s 以上の移動度が望まれる。また有機ELディスプレイへの用途には1 cm2/V-s 以上の移動度が必要である。要求される移動度は、用途に依存する。本実施例において、組成比Zn/(In+Zn) が 0.10 以上0.86以下、 Ge/(Ge+In+Zn)であらわされるGe含有量が0.03以上 0.3 以下の時に有機ELを駆動可能な移動度を実現できる。さらに、In/(In+Ge) で表される組成比が 0.10以上 0.75以下で、Ge/(Ge+In+Zn)で表されるGe含有量が0.03以上 0.15 以下の時に良好なTFT特性が得られ、好ましい。
【0391】
ゆえに、高移動度で小さなS値を有した薄膜トランジスタを得るためには、Ge 含有量は少ない方が好ましい。この観点から、Ge/(Ge+In+Zn) で表されるGe含有量は 0.3以下であることが好ましく、さらには0.03以上0.15以下であることが好ましい。
【0392】
一方で、Zn含有量が0atomic% であるIn-Ge-O をチャンネルとして用いたTFTのおいては、TFT特性は 図44に示すように、In含有量が増えるにつれて、移動度が大きくなり、S値が大きくなり、 閾値電圧が負の方向に移動する。In/(In+Ge) で表される組成比が 0.9以下のときに、小さなS値が得られる。 加えて、In/(In+Ge) が0.50 以上or 0.85 以下において、非常に小さなS値を有したTFTを実現できる。
【0393】
次に、Ge含有量を固定した際に、Zn/In 比に対するTFT特性の振る舞いについての実験結果を説明する。
【0394】
図 45 と 表15は電界効果移動度mFE, のZn/(In) 比依存性を示している。ここで Ge含有量は8.5atomic%である。 移動度は、Znを高濃度で含有する場合と、 Inを高濃度で含有する場合に大きい。
【0395】
【表15】
【0396】
図 46 と 表16はVon のZn/In 比依存性を示す。
【0397】
【表16】
【0398】
Zn/In比が 1 より小さいと、 Vonが負の値になることが解る。Zn/In比が1より大きくなるにつれて、 Von (さらには Vth)が正の値を示すようになる。
【0399】
図 47 と表17はオンオフ電流比のZn/In比依存性を示している。
【0400】
【表17】
【0401】
広い組成範囲にわたり1010以上の大きなオンオフ電流比が得られることがわかる。 またオンオフ電流比はZn/In 比とともに単調増加する。
【0402】
図 48と表18は S値のZn/In 比依存性を示している。S 値はZn/In比に対して単調増加することがわかる。
【0403】
【表18】
【0404】
次に、チャンネル層成膜時の酸素流量をさらに増やし、Ar+O2流量が40 sccm and 50 sccm において、In-Ge-Zn-O TFTを作成した。Ge含有量が大きい組成においては、ゲート電流を加えても電流の上昇が生じず、TFTはスイッチング特性を示さなかった。Ge含有量が少ない組成においては、大きな電界効果移動度と小さなS値はが得られた。特性値は、Ar+O2流量が20 sccm の時と遜色なかった。特に、Ge含有量が 15 atomic% 以下において、7 cm2/Vs 以上の電界効果移動度と1 V/decade 以下のS値を示した。
【0405】
以下に本実施例の結果、すなわちIn-Ge-Zn-OTFTの組成依存性について簡潔にまとめる。
【0406】
In-rich 組成(相図の図57で点”a”, “i”, “h” で囲まれる領域)において、 移動度とオンオフ電流比が大きく、ヒステリシスが小さい。Vonは負である。
【0407】
Ge-rich 組成( 図57の点"h" “v”, “c” “d”で囲まれる領域)において, オフ電流が小さくt (<1014(A))、 オンオフ電流比が大きく、閾値電圧が正である。光に対する安定性や光透過性に優れる。
【0408】
Zn-rich 組成(図57の点“s”, “u”, “v”, “b” で囲まれる領域)において, 移動度とオンオフ電流比が大きく、オフ電流とS値が比較的小さい。また、駆動安定性が比較的良い。
【0409】
次に、成膜時の酸素分圧の影響に関して、言及する。
【0410】
成膜時の酸素分圧を増加すると、アニール処理を施こさない場合には、トランジスタ動作が可能な組成領域はIn-rich 側へと動く。このことは、移動度を大きくする観点で有利である。しかしながら、アニール処理を施した場合には、成膜時の酸素分圧の影響は大きくない。
【0411】
次に、DC駆動安定性の評価を行った結果について説明する。800 秒間にわたりゲート電圧Vg=12V と ソースドレイン電圧Vd=6Vの直流ストレスを加え、ストレス前後でTFT特性を比較評価した。 図 49(a) と 図 49(b) はストレス前後のトランスファ特性を示している。ここで、組成比はIn :Ge:Zn= 42:13:45 と In :Ge:Zn= 32:8:60である。それぞれ1.48V と 0.45Vの正側への閾値電圧シフトが見られた。駆動安定性はZn含有量が大きいときに良好であることがわかる。
【0412】
表19は、さまざまなIn-Ge-Zn-Oチャンネルを有したTFTの特性一覧である。 表19において、 "-" は未検討であることを示している。
【0413】
【表19】
【0414】
(実施例7)
本実施例はIn-Ge-Zn-O系のTFTにおいて、Ge含有量が3 atomic% から 15 atomic% の範囲(実施例6より小さなGe含有量の範囲)での組成依存性を検討した例である。この組成範囲で良好な経過時間安定性と好適な特性を示すTFTを実現することができる。 また、素子間のばらつきやロット間ばらつきが小さく、結果として作成再現性に優れたTFTを実現できる。
【0415】
In-Ge-Zn-O 薄膜は実施例4と同様な装置により形成された。表20に薄膜形成条件を示す。
【0416】
【表20】
【0417】
In-Ge-Zn-O 膜の抵抗率In-Ge組成比依存性(Zn含有量は固定)を評価すると、In-Ge-O系薄膜と同様な傾向を示すことがわかった。図 50 は、In-Ge-O系の抵抗率のIn/(In+Ge) 組成比依存性と In-Ge-Zn-O 系のIn/(In+Ge) 組成比依存性を比較した図である。In-Ge-Zn-O 系のおいて、Zn の含有量は0 と 25 atomic%である。図50 から、同じIn/(In+Ge) 組成比において、In-Ge-Zn-O 系の抵抗率はIn-Ge-O 系の抵抗率よりも大きいことがわかる。結果として、In-Ge-Zn-O 系は、In-Ge-O 系よりも、TFTのチャンネルに適した抵抗率(数 Ωcm to 数 100 Ωcm) を示す組成範囲が広いことがわかった。
【0418】
さらにIn-Ge-Zn-O 系の抵抗率は経過時間安定性が高い。特に、In rich な組成(In/(In+Ge)30.85)において、In-Ge-Zn-O 系はIn-Ge-O 系よりも抵抗率の安定性に優れている。
【0419】
In-Ge-Zn-O TFT (Zn/(In+Ge+Zn)=0.25、0.953 In/(In+Ge)30.85) のトランスファ特性を作成直後の3ヶ月後に比較評価した結果を図 51 に示す。上記組成のTFTは、経過時間に対して高い安定性を有することがわかる。
【0420】
次に、In-Ge-Zn-O TFTにおける組成依存性(Ge-ratio は 3 atomic% から 15 atomic% )の検討結果を示す。TFTの構造は実施例6と同様である。
【0421】
In-Ge-Zn-O 系のチャンネル層を用いることで、 同様な特性を示すTFTを 再現良く作成することができた。特に、In含有量が65 atomic% 以上33 atomic% 以下の組成で且つ Ge含有量が10atomic%の組成において、移動度は再現良く10 cm2/Vs 以上の値を示した。また、移動度、オンオフ電流比、閾値、S値は、In : Ge : Zn = 33 : 3 : 64においてもっとも優れた特性を示した。この際、移動度、オンオフ電流比、S値、ターンオン電圧、閾値電圧は、 15.65 cm2/Vs, 1011, 0.26 V/decade, 0.1V and 6 Vであった。このベスト組成の素子のトランスファ特性を図 52に示す。このように、Zn-Ge-In-O系を用いることで、非常に高い特性のTFTを実現できる。
【0422】
特許文献1において、In-Ga-Zn-O系において好ましい組成としてIn:Ga:Zn= 38:5:57 が記されている。一方で、In-Ge-Zn-O 系でもっとも好ましい組成は、Zn:In:Ge= 64:33:3である。この組成は、Zn含有量が、In-Ga-Zn-O系の好適組成よりも大きいため、コスト性に優れている。
【0423】
次に、In-Ge-Zn-O 膜の経過時間安定性を調べるために、大気中保管による抵抗率変化を評価した。Ge含有量が3 atomic% 以上であると、Zn/Inがどのような値であっても、半年間大気中保管しても、抵抗率がほとんど変化しないことがわかった。図 54 は、In:Ge:Zn=33:3:64のIn-Ge-Zn-Oの膜の抵抗率の経時変化を示す図である。経時変化がほとんどないことがわかる。図 53 は、Ge含有量が5atomic%のIn-Ge-Zn-Oの膜の抵抗率の経時変化を示す図である。さまざまなZn/In組成比のデータが記されている。5atomic%のGeが添加されていれば、どのようなZn/In比でも抵抗はほとんど変化しないことがわかる。
【0424】
次に、In-Ge-Zn-O膜を用いた TFT の特性の経過時間安定性を調べた。図55にTFT特性の経時変化を示す。Zn:In:Ge=25:75:In:Ge:Zn=70:5:25の組成においては閾値電圧やオンオフ電流比などのTFT特性はほとんど変わらなかった。一方で、In:Ge:Zn=33:5:62の組成においては、閾値電圧が正の小さい値へのシフトが確認された。しかしながら、この閾値電圧Vthの変動はある期間をおいて止まり、その後安定なノーマリ・オフ特性を示すことがわかった。Ge含有量を13atomic% に増やすと、 Zn組成が大きいTFTにおいてその環境安定性をさらに向上させることができる。
【0425】
次に、ノーマリ・オフ特性を示す In-Ge-Zn-O TFTについて述べる。この結果は図56に見ることができる。図56 は、閾値電圧がGe組成比で制御可能であることを示している。Ge含有量が大きくなると、閾値電圧が正の方向に動く。閾値電圧が小さな正の値を示す組成範囲はGe含有量が 3 から15 atomic%の間にある。
【0426】
このようにIn-Ge-Zn-O TFTはGe含有量が3 atomic% から 15 atomic% の範囲において、良好な特性を得ることが可能で、特性の素子間ばらつきがちいさく、特性のロット間ばらつきが小さい。特に、組成比In : Ge:Znが 3 33 : 3 :64 の酸化物をチャンネル層に適用した際に、経過時間安定性に優れ、性能の高いTFTを実現できる。
【0427】
表21にはTFT特性の一覧を示す。さまざまな組成比における電界効果移動度、S値、閾値電圧が記されている。また、素子特性直後と3ヶ月経過後の特性が記されている。TFT特性は、広い組成範囲にわたって、長時間にわたって安定であることがわかる。
【0428】
【表21】
【0429】
3元相図の図57を用いてまとめると、点 ”h”, ”i”, ”n” 及び “t” で囲まれる組成範囲の薄膜をチャンネル層に用いることで、高いオンオフ電流比と良好な移動度を示すノーマリ・オフ型のTFTを実現できる。特に、オンオフ電流比が109以上で、電界効果移動度が 7 cm2/Vs 以上のTFTを実現できる。
【0430】
さらに上記組成範囲の中で点“s”, “u”,“t”,“n”で囲まれた組成範囲のIn-Ge-Zn-O 膜をチャンネル層に用いることで、非常に優れた性能とDC駆動ストレス耐性を兼ね備えたTFTを実現できる。特に、ノーマリ・オフ特性を示し、オンオフ電流比が1010以上であり、電界効果移動度が 10cm2/Vs以上であり、S-value が 0.5 V/decade 以下であり、DC駆動ストレスにより閾値変動が1V以下のTFTを実現できる。
【産業上の利用可能性】
【0431】
本発明において説明したように、本薄膜は、低温で形成することができ、アモルファスなので、PET膜を含む可撓性材料の上に電界効果型トランジスタを形成することができる。
【0432】
したがって、本発明に係わる薄膜トランジスタは、LCD及び有機ELディスプレイのスイッチング素子として利用することができる。さらに、本発明に係わる薄膜トランジスタは、可撓性ディスプレイ、ICカード及びIDタグ等を含む透明(シースルー)型ディスプレイ分野で広い用途の可能性を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0433】
【図1】本発明の一実施形態としてのアモルファスIn−Ge−Oを含む薄膜トランジスタの概略を示す断面図である。
【図2】薄膜トランジスタを作製したときのIn/(In+Ge)組成比の関数としての電子電界効果移動度(μFE)の例を示すグラフである。
【図3】In−Ge−Oシステム薄膜トランジスタのしきい値電圧の組成依存性を示すグラフである。
【図4】In/(In+Ge)組成比の関数としてのサブスレッショルドスイング値S(V/dec)の値の変化の例を示すグラフである。
【図5】組成比In/(In+Ge)に対する比抵抗の依存性を示すグラフである。
【図6】アニール前のIn−Ge−O薄膜トランジスタの伝達特性の組成依存性の例を示すグラフである。
【図7】In/(In+Ge)=0.65で表される組成比の薄膜を、大気中に放置した際の比抵抗の経時安定性を示すグラフである。
【図8】作製後直後のTFT伝達特性とTFT作製一ヶ月後とのTFT伝達特性の比較の例を示すグラフである。
【図9】他の成膜パラメータを一定に保持してIn/(In+Ge)=0.65及び0.75の場合の成膜時の酸素分圧によるIn−Ge−O薄膜の比抵抗の変化の例を示すグラフである。
【図10】VD=6Vの固定ドレイン電圧におけるlog(ID)−VG(伝達特性)の例を示すグラフである。
【図11】In/(In+Ge)=0.65のチャネル層組成を有するTFTにおいて、さまざまなVGにおけるID対VD(出力特性)の例を示すグラフである。
【図12】0.65及び0.75のIn/(In+Ge)で表される組成比を有するIn−Ge−O系の酸化物を含むTFTの伝達特性の二つの例を示すグラフである。
【図13】本発明の一実施形態としての電界効果型トランジスタのチャネル層を成膜するために用いた成膜システムの概略を示す図である。
【図14】アニールしたIn/(In+Ge)=0.65及び0.75を有する酸化物チャネル層のX線回折パターンの例を示すグラフである。
【図15】In/(In+Ge)の関数としてのホール移動度μHall(cm2/Vsec)の例を示すグラフである。
【図16】In/(In+Ge)原子比の関数としてのオン/オフ電流比の例を示すグラフである。
【図17】これらのそれぞれの材料系のTFT伝達特性(log(ID)対VG)の例を示すグラフである。
【図18】In−Ga−O、In−Al−O及びIn−Mg−O系の酸化物を含むTFTのサブスレッショルドスイング値と本発明のIn−Ge−O系の酸化物を含むTFTのサブスレッショルドスイング値とを比較した例を示すグラフである。
【図19】In−Ga−O、In−Al−O及びIn−Mg−O系の酸化物を含むTFTのオン−オフ電流比と本発明のIn−Ge−O系の酸化物を含むTFTのオン−オフ電流比との間の比較の例を示すグラフである。
【図20】In−Ga−O、In−Al−O、In−Mg−O系の酸化物を含むTFTの電界効果移動度と本発明のIn−Ge−O系の酸化物を含むTFTの電界効果移動度との比較の例を示すグラフである。
【図21】本発明に係る一実施形態としての表示装置の概略的な断面図である。
【図22】本発明に係る一実施形態としての表示装置の概略的な断面図である。
【図23】有機EL素子と薄膜トランジスタを含む画素を二次元状に配列した表示装置の構成を概略的に示した図である。
【図24】(a) はIn-Ge-Zn-O TFTの(a)トランスファ特性(log (ID)vs. VG)の一例、(b)出力特性(IDvs. VD)の一例を示す図である。
【図25】トランスファ特性(log (ID)vs. VG))を示す図である。ここで組成比In:Zn:Geは、 (a) 42:13:45, (b) 51:23:26, (c) 32:9:59, (d) 32:3:65 and (e) 34:36:30.である。
【図26】In:Ge:Zn:O 膜のX線解説パターンを示す図である。組成比はIn:Ge:Zn=42:13:45である。
【図27】In-Ge-Zn-O系TFTのトランスファ特性とIn-Ga-Zn-O系TFTのトランスファ特性を比較して示す図である。ここで (a) のIn-Ge-Zn-O ではGe 9atomic% であり、(b)の In-Ga-Zn-O ではGa 9atomic%である。それぞれZn/In比の依存性が記されている。
【図28】In-Ge-Zn-O系TFTのトランスファ特性とIn-Ga-Zn-O系TFTのトランスファ特性を比較して示す図である。 (a)In-Ge-Zn-O aと (b) In-Ga-Zn-O に対して、固定したZn/Inおける、さまざまGe(Ga)含有量のデータが記されている。
【図29】In-Ge-Zn-O 系材料の構造特性を記した3元相図である。
【図30】In-Ge-Zn-O膜の抵抗率のZn/In 比依存性を示す図である。組成比はGe/(In+Ge+Zn)=0.08であり、アニール前及びアニール後で測定している。
【図31】In-Ge-Zn-O膜の抵抗率のGe量atomic% 依存性を示す図である。ここでZn/In=0.4である。成膜時のAr+O2流量は20sccmである。
【図32】In-Ge-Zn-O膜の抵抗率の成膜時の酸素分圧依存性を示す図である。
【図33】は、In-Ge-Zn-O 膜の抵抗率のZn/In 比依存性を示す図である。ここでGe 含有量は8atomic% であり、成膜時のArgon+Oxygen ガスの流量は (a)20sccm (b)10sccm である。
【図34】In-Ge-Zn-O 膜の抵抗率のZn/In 比依存性を示す図である。ここでGe 含有量は8atomic% であり、成膜時のArgon+Oxygen ガスの流量は (a)20sccm (b)10sccm である。大気中300℃のポストアニール処理を施している。
【図35】In-Ge-Zn-O 膜の抵抗率マッピングを示す図である。成膜時の Ar+O2 の流量は20sccm であり、大気中300℃のポストアニール処理を施している。
【図36】In-Ge-Zn-O 膜の抵抗率マッピングを示す図である。成膜時の Ar+O2 の流量は10sccm であり、大気中300℃のポストアニール処理を施している。
【図37】トランスファ特性を示す図である。組成1D ( In:Ge:Zn= 66:8:26)であり、(a)は成膜時のAr/O2流量が20sccm、(b)は10sccmである。左図は、アニール処理を施していない。右図はポストアニール処理を施している。
【図38】トランスファ特性を示す図である。組成3A ( In:Ge:Zn= 27:25:38)であり、(a)は成膜時のAr/O2流量が20sccm、(b)は10sccmである。左図は、アニール処理を施していない。右図はポストアニール処理を施している。
【図39】はトランスファ特性を示す図である。組成4E ( In:Ge:Zn=33:5:62)であり、(a)は成膜時のAr/O2流量が20sccm、 (b)は10sccmである。左図は、アニール処理を施していない。右図はポストアニール処理を施している。
【図40】電界効果移動度の Ge含有量 atomic% 依存性を示す図である。Zn/In 組成比は一定である。
【図41】ターンオン電圧 (Von, V)のGe含有量 atomic% 依存性を示す図である。Zn/In 組成比は一定である。
【図42】オンオフ電流比のGe含有量 atomic% 依存性を示す図である。Zn/In 組成比は〜2である。
【図43】サブスレッシュホルドスイング値 (S, V/dec ) のGe含有量 atomic% 依存性を示す図である。Zn/In 組成比は、(a)が〜0.4、(b) が2である。
【図44】In-Ge-O系TFT特性のIn含有量依存性を示す図である。
【図45】In-Ge-Zn-O系TFTにおける電界効果移動度のZn/In組成比依存性を示す図である。 Ge含有量は8atomic%である。
【図46】In-Ge-Zn-O系TFTにおけるVonのZn/In組成比依存性を示す図である。Ge含有量は8atomic%である。
【図47】In-Ge-Zn-O系TFTにおけるオンオフ電流比のZn/In組成比依存性を示す図である。Ge含有量は8atomic%である。
【図48】In-Ge-Zn-O系TFTにおけるサブスレッシュホルドスイング値のZn/In組成比依存性を示す図である。Ge含有量は8atomic%である。
【図49】、In-Ge-Zn-O系TFTのDC駆動ストレスにより特性変化を示す図である。 (a )においてチャンネルの組成比は In:Ge:Zn=42:13:45であり、(b)においては In:Ge:Zn=32:8:60 である。
【図50】In-Ge-Zn-O 膜の抵抗率の組成比In/(In+Ge) 依存性を示す図である。Zn含有量が 0atomic% と 25atomic%のデータが記されている。
【図51】In-Ge-Zn-O TFT のトランスファ特性を示す図である。TFT作成直後の特性と3ヶ月後の特性が重ねて記されている。Zn/(Zn+In+Ge)=0.25であり、In/(In+Ge)は08.5,0.8,0.95の異なる3種類の特性が比較されている。
【図52】In-Ge-Zn-O TFT のトランスファ特性を示す図である。 組成比はIn:Ge:Zn=33:3:64 であり、アニールを施していない素子の特性とポストアニール処理を施した素子の特性が記されている。
【図53】In-Ge-ZnO膜の抵抗率(ohm.cm) vs 時間(hrs) を示す図である。Ge含有量は〜5%である、さまざまなZn/In 比の薄膜に対して記されている。
【図54】In-Ge-ZnO膜の抵抗率(ohm.cm) vs 時間(hrs) を示す図である。組成比は、Zn:In:Ge = 64:33:3である。
【図55】In-Ge-Zn-O TFT のトランスファ特性の経過時間変化を示す図である。素子作成後と3ヵ月後の特性が記されている。組成比はIn:Ge:Zn (a) = 68:5:27, (b) 45:5:50, (c) 32:5:62である。
【図56】In-Ge-Zn-O TFT のトランスファ特性のGe含有量依存性を示す図である。
【図57】In-Ge-Zn の組成を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート絶縁層を介して、チャネル層とゲート電極とが対向するように配置される薄膜トランジスタにおいて、
前記チャネル層はインジウム、ゲルマニウム及び酸素を含み、
前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.5以上0.97以下であることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.5以上0.9以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.6以上0.9以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.5以上0.85以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.5以上0.75以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記チャネル層の比抵抗は、103Ω・cm以上、106Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記チャネル層は、アモルファスであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記ゲート絶縁層は、シリコン酸化物からなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタと、
該薄膜トランジスタによって駆動される有機発光ダイオードとを備えることを特徴とする表示装置。
【請求項10】
ZnとInとGeを含有した酸化物からなるチャンネル層を有した電界効果型トランジスタであって、前記酸化物の組成が図57の点a、点b、点c、点dで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項11】
前記酸化物の組成が図57の点a、点b、点e、点m、点lで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項12】
前記酸化物の組成が図57の点a、点b、点e、点f、点gで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項13】
前記酸化物の組成が図57の点a、点n、点t、点hで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項14】
前記酸化物の組成が図57の点h、点i、点b、点e、点k、点lで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項15】
前記酸化物の組成が図57の点h、点i、点n、点tで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項16】
前記酸化物の組成が図57の点s、点u、点x、点y、点v、点bで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項17】
前記酸化物の組成が図57の点s、点u、点t、点nで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項18】
オフ電流が10-13 アンペア以下であることを特徴とする請求項16に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項19】
前記酸化物がアモルファスからなることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項20】
前記トランジスタはゲート絶縁膜を有し、該ゲート絶縁層が酸化シリコンからなることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項21】
請求項10に記載の薄膜トランジスタと、該薄膜トランジスタによって駆動される有機発光ダイオードとを有する表示装置。
【請求項1】
ゲート絶縁層を介して、チャネル層とゲート電極とが対向するように配置される薄膜トランジスタにおいて、
前記チャネル層はインジウム、ゲルマニウム及び酸素を含み、
前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.5以上0.97以下であることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項2】
前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.5以上0.9以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項3】
前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.6以上0.9以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項4】
前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.5以上0.85以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項5】
前記チャネル層におけるIn/(In+Ge)で表される組成比が0.5以上0.75以下であることを特徴とする請求項1に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項6】
前記チャネル層の比抵抗は、103Ω・cm以上、106Ω・cm以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項7】
前記チャネル層は、アモルファスであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項8】
前記ゲート絶縁層は、シリコン酸化物からなることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の薄膜トランジスタと、
該薄膜トランジスタによって駆動される有機発光ダイオードとを備えることを特徴とする表示装置。
【請求項10】
ZnとInとGeを含有した酸化物からなるチャンネル層を有した電界効果型トランジスタであって、前記酸化物の組成が図57の点a、点b、点c、点dで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする薄膜トランジスタ。
【請求項11】
前記酸化物の組成が図57の点a、点b、点e、点m、点lで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項12】
前記酸化物の組成が図57の点a、点b、点e、点f、点gで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項13】
前記酸化物の組成が図57の点a、点n、点t、点hで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項14】
前記酸化物の組成が図57の点h、点i、点b、点e、点k、点lで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項15】
前記酸化物の組成が図57の点h、点i、点n、点tで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項16】
前記酸化物の組成が図57の点s、点u、点x、点y、点v、点bで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項17】
前記酸化物の組成が図57の点s、点u、点t、点nで囲まれた範囲の中にあることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項18】
オフ電流が10-13 アンペア以下であることを特徴とする請求項16に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項19】
前記酸化物がアモルファスからなることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項20】
前記トランジスタはゲート絶縁膜を有し、該ゲート絶縁層が酸化シリコンからなることを特徴とする請求項10に記載の薄膜トランジスタ。
【請求項21】
請求項10に記載の薄膜トランジスタと、該薄膜トランジスタによって駆動される有機発光ダイオードとを有する表示装置。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図37】
【図38】
【図39】
【図55】
【図57】
【図1】
【図8】
【図13】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図56】
【図3】
【図4】
【図5】
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【図12】
【図14】
【図15】
【図16】
【図37】
【図38】
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【図55】
【図57】
【図1】
【図8】
【図13】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図56】
【公開番号】特開2009−206508(P2009−206508A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−15692(P2009−15692)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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