説明

表面処理装置

【課題】処理ガスが系外へ漏洩、拡散するのを防止又は抑制できる表面処理装置を提供する。
【解決手段】ノズル部の被処理物Wと対面する面33に、処理ガスを噴出する噴出口31と、吸引口34を開口形成する。吸引口34における噴出口31側とは反対側の縁を、噴出口31側の縁より上側(対面方向の逆側)に引っ込ませ、吸引口34より外側の第2面部分33bを、吸引口34と噴出口31の間の第1面部分33aより上側(対面方向の逆側)に引っ込ませる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、処理ガスを被処理物に噴き付けて表面処理するとともに噴き付け後のガスを吸い込んで排出する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1の表面処理装置のノズル部には、被処理物との対向面に噴射口と吸引口が開口されている。噴射口から処理ガスが噴射されて被処理物に接触し、表面処理がなされる。処理済みのガスが吸引口から吸引されるようになっている。
【特許文献1】特開平9−92493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
処理ガス中には腐食性や毒性を有する成分が含まれている場合が少なくない。そのため、処理ガスの拡散を許すと各部材の腐食を招いたり安全上の問題を生じたりする。特に、ローラコンベアや移動ステージ等を用いてインラインで連続処理する場合、処理室からの漏洩が起きやすく、駆動系、配管系、躯体等の腐食が問題になっている。処理室を密閉構造にし、枚葉式の処理をすれば、系外への漏洩を極力防止できるが、被処理物の出し入れに時間を要し生産速度が遅くなる。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、処理室を密閉しなくても処理ガスの処理室外への拡散、漏洩を防止ないしは抑制でき、特にインラインによる連続処理に好適なノズル構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、上記事情鑑みて提案されたものであり、処理ガスを被処理物に噴き付けて表面処理する装置であって、
被処理物の配置されるべき被処理位置と対面するノズル部を備え、このノズル部には前記被処理位置に向けて前記処理ガスを噴出する噴出口と、ガスを吸引する吸引口とが並んで形成され、前記吸引口における前記噴出口側とは反対側の縁が前記噴出口側の縁より前記対面方向の逆側に引っ込んでいることを特徴とする。
これによって、ノズル部の外側の雰囲気ガスを引き込み易くでき、この雰囲気ガスの引き込み流によって処理ガスが系外へ漏洩、拡散するのを防止又は抑制することができる。したがって、被処理物の連続処理ひいてはインライン化を容易化できる。
【0005】
前記ノズル部の前記被処理位置と対面する面が、前記噴出口と前記吸引口との間の第1面部分と、前記吸引口を挟んで前記第1面部分とは反対側の第2面部分とを有していることが好ましい。
前記第2面部分が、前記第1面部分より前記対面方向の逆側に引っ込んでいてもよい。これによって、外部の雰囲気ガスの引き込みを容易化でき、処理ガスの漏洩、拡散を確実に防止又は抑制することができる。
【0006】
前記第2面部分が、前記噴出口側とは反対側に向かうにしたがって前記被処理位置へ向けて突出されていることが好ましい。
これによって、前記第2面部分と被処理物との間にディフューザが形成されるようにでき、このディフューザ効果によって処理ガスの漏洩、拡散をより確実に防止又は抑制することができる。
【0007】
前記ノズル部の前記吸引口より前記噴出口側とは反対側には前記被処理位置に向けて不活性ガスを噴出する不活性噴出口が設けられているのが好ましい。これによって、不活性ガスからなるガスカーテンを形成でき、このガスカーテンによって処理ガスが外部に漏洩するのをより確実に防止することができる。
前記不活性噴出口の先端部分が、前記吸引口へ向かうように前記対面方向に対し斜めになっていることが好ましい。これによって、不活性ガスの噴出時のエジェクタ効果で外部の雰囲気ガスを確実に引き込むことができ、処理ガスの漏洩、拡散を一層確実に防止又は抑制することができる。
前記不活性噴出口の先端部分が、前記ノズル部の前記被処理位置と対面する面における前記第2面部分より前記吸引口側とは反対側に開口されていることが好ましい。これによって、前記ノズル部の前記被処理位置と対面する面における前記不活性噴出口と前記第2面部分との間の面部分(スロート面)と被処理物との間にスロートが形成されるようにでき、このスロートを通過するガスの静圧を低下させることができ、外部の雰囲気ガスの引き込みを一層容易化して処理ガスの漏洩、拡散を一層確実に防止又は抑制することができる。
【0008】
前記被処理位置を挟んで前記ノズル部と対向するようにして他の吸引部を設けることが好ましい。これにより、被処理位置の裏側へ流れた処理ガスを前記吸引部にて吸引し排出することができる。
移動手段によって、前記被処理物を、前記ノズル部と前記吸引部との間に通すように移動させることが好ましい。これにより、被処理物を連続処理することができる。
【0009】
内部に前記被処理位置が配されるとともに前記ノズル部の少なくとも被処理位置側の部分が臨む処理ハウジングを、更に備えることが好ましい。これによって、処理ガスを処理ハウジング内にある程度閉じ込めておくことができ、処理ガスの拡散を抑制することができる。
前記移動手段が、前記処理ハウジングの外部に配置された駆動部と、前記駆動部の動力を前記被処理物に直接又は間接的に伝達する伝達部とを含むことが好ましい。これによって、駆動部の腐食を防止することができる。
【0010】
前記処理ハウジングを囲む外周ハウジングと、前記外周ハウジングと処理ハウジングとの間を吸引排気する排気部とを、更に備えることが好ましい。
これによって、処理ガスが処理ハウジングから漏れたとしても外周ハウジング内にとどめて外部に漏洩しないようにでき、更には排気部にて吸引して排出することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、処理ガスが系外へ漏洩、拡散するのを防止又は抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
図1は、液晶パネル製造ラインにおけるアイランドエッチング工程に用いられる表面処理装置1を示したものである。被処理物Wは、液晶パネル用の無アルカリガラス基板である。図2に示すように、ガラス基板Wは、四角形状をなしている。ガラス基板Wの長手方向(図1及び図2の左右方向)の寸法は、例えば1300mmであり、短手方向(図2において上下方向)の寸法は、例えば1100mmである。ガラス基板Wの表面(上面)には、アモルファスシリコンの層(図示省略)がCVDによって形成されている。このアモルファスシリコン層を表面処置装置にてエッチングする。
【0013】
図1に示すように、表面処理装置1は、二重ハウジング10と、移動手段20とを備えている。二重ハウジング10は、内部に処理室11aを画成する処理ハウジング11と、この処理ハウジング11を囲む外周ハウジング12とを含んでいる。
【0014】
処理ハウジング11の左右の壁には、それぞれ開口11bが設けられている。この開口11bを通してガラス基板Wを搬入出できるようになっている。
ガラス基板Wが開口11bを通過するときの開口11bの上縁からガラス基板Wの上面までの距離は、例えば5mm程度になるように設定されている。また、処理ハウジング11の天井部の下面からガラス基板Wの上面までの距離は、例えば20mm程度になっている。
処理ハウジング11の左側の壁と後記ノズルヘッド30の左端面との間の距離、及び処理ハウジング11の右側の壁と後記ノズルヘッド30の右端面との間の距離は、それぞれ例えば300mmになっている。
【0015】
外周ハウジング12の左右の壁には、それぞれ開口12aが設けられている。開口12aは、処理ハウジング11の開口11bと同じ高さに位置されている。この開口12aを通してガラス基板Wを搬入出できるようになっている。外周ハウジング12の一側部には、排気ダクト13(排気部)が設けられている。排気ダクト13によって、外周ハウジング12と処理ハウジング11との間を吸引排気できるようになっている。外周ハウジング12の天井部には、ファンフィルタユニット14が設けられている。
【0016】
図1及び図2に示すように、移動手段20は、浮上エアステージで構成されている。浮上エアステージ20は、外周ハウジング12の左右外側と、外周ハウジング12の内部とにそれぞれ配置されている。外周ハウジング12の例えば左側の浮上エアステージ20は、被処理物Wの搬入用であり、外周ハウジング12の右側の浮上エアステージ20は、被処理物Wの搬出用である。これら浮上エアステージ20は、二重ハウジング10の開口12a,11bに合わせた高さに位置されている。外周ハウジング12の内部の浮上エアステージ20は、処理ハウジング11の左右両側の開口11bを通して、処理ハウジング11を左右に貫通している。
【0017】
図2に示すように、浮上エアステージ20には、複数(例えば5つ)のエア噴出部21が設けられている。これらエア噴出部21は、左右に直線状に延びるとともに、互いに前後に間隔を置いて並べられている。
エア噴出部21の幅は、例えば120mmであり、エア噴出部21の前後方向のピッチは、例えば295mmである。
【0018】
図1に示すように、浮上エアステージ20の底部には、浮上エア供給ポート22が設けられている。外周ハウジング12の外部のエア供給源2が、浮上エア供給路2aを介して浮上エア供給ポート22に接続されている。
エア供給源2は、加圧されたクリーンドライエア(CDA)を浮上エア供給路2aに圧送する。このクリーンドライエアが、浮上エア供給ポート22から浮上エアステージ20内のエア通路(図示せず)に導入され、エア噴出部21の上面の多数の小孔21a(図2)から上方へ噴出されるようになっている。この噴出エアによってガラス基板Wが浮上される。エア噴出部21は、エアが上方へ噴出するようになっていればよく、多数の小孔21aに代えて、エア噴出部21を多孔質部材(例えばポーラスアルミナ、ポーラスカーボン、ポーラスアルミ等)で構成してもよい。
【0019】
隣り合うエア噴出部21の列間には、エア噴出部21の上面より低い位置にテフロン(登録商標)製のネット(図示省略)が張られるとともに、推進コロ23がエア噴出部21の上面より僅かに突出するように配置されている。推進コロ23は、ガラス基板Wの長手方向寸法より少し短いピッチ(例えば1000mmピッチ)で左右に並べられている。この推進コロ23の回転によって、ガラス基板Wを一方向(例えば左から右)へ搬送することができる。
処理ハウジング11内におけるガラス基板Wの搬送される仮想水平面P1が、「被処理位置」を構成している。
【0020】
処理ハウジング11の底部には、吸引ダクト15(吸引部)が、開口を上方へ向けて配置され、その開口縁が浮上エアステージ20に当接されている。吸引ダクト15は、図示しない吸引排気部に連なり、浮上エアステージ20のエア噴出部21間のネットを介して浮上エアステージ20より上方のガスを吸引し、排気するようになっている。
【0021】
処理ハウジング11の天井部には、ノズルヘッド30(ノズル部)が設置されている。ノズルヘッド30は、噴出ヘッド部30Aと、この噴出ヘッド部30Aの左右の側部にそれぞれ設けられた吸引ヘッド部30B,30Bとを有している。ヘッド部30A,30Bは、互いに別体の部材で構成されていてもよく、一体の部材で構成されていてもよい。これらヘッド部30A,30Bの下側部分(被処理位置P1側の部分)が、処理ハウジング11の天井部より下に突出し、処理室11a内に臨んでいる。このノズルヘッド30の下方に浮上エアステージ20が配置され、ノズルヘッド30の下方をガラス基板Wが搬送されるようになっている。ノズルヘッド30と、その下方を通過するガラス基板Wとの間の距離(ワークディスタンス)は、例えば2mm程度になるよう設定されている。
【0022】
ノズルヘッド30は、処理ハウジング11内の浮上エアステージ20を挟んで吸引ダクト15と対向している。平面投影視でノズルヘッド30の少なくとも噴出ヘッド部30Aが、吸引ダクト15の開口内に収まるようになっている。
【0023】
噴出ヘッド部30Aには、複数(例えば6つ、図2では3つのみ図示)の噴出口31が形成されている。噴出口31は、前後に延びるスリット状をなし、互いに左右に間隔を置いて並べられている。噴出口31の左右方向の幅寸法は、例えば0.5mmである。図3に示すように、各噴出口31の下端部は、ノズルヘッド30の底面33(被処理物Wと対面する面)に達して開口されている。
【0024】
図1に示すように、外周ハウジング12の外部に処理ガス供給源3が配置されている。この処理ガス供給源3から処理ガス供給路3aが延び、各噴出口31に連なっている。処理ガス供給源3は、処理目的に応じた反応成分を含む処理ガスを生成し、処理ガス供給路3aを介してノズルヘッド30へ送出するようになっている。図示は省略するが、ノズルヘッド30の上側部には、処理ガス供給路3aからの処理ガスをノズルヘッド30の長手方向(図1の紙面直交方向)に均一化する整流部が設けられており、処理ガスが噴出口31の長手方向に均一に導入されるようになっている。
【0025】
処理ガスとして、例えば、アモルファスシリコンのエッチングにおいては、オゾン等の酸素系反応成分とフッ酸蒸気等のフッ素系反応成分を含むガスが用いられる。オゾンは、酸素(O)を用いてオゾナイザーにて生成できる。フッ酸蒸気は、CF等のフッ素含有物に水(HO)を添加し、プラズマ生成装置にてプラズマ化することにより生成することができる。上記オゾナイザーに代えて、プラズマ生成装置にて酸素原料からオゾンや酸素ラジカル等の酸素系反応成分を生成することにしてもよい。1つのプラズマ生成装置にてフッ酸蒸気と酸素系反応成分とを生成することにしてもよい。プラズマ生成装置は、少なくとも一対の電極を有し、これら電極間でプラズマを生成し、原料ガスをプラズマ化して反応成分を生成する。プラズマは大気圧近傍下で生成するのが好ましい。ここで、大気圧近傍とは、1.013×104〜50.663×104Paの範囲を言い、圧力調整の容易化や装置構成の簡便化を考慮すると、1.333×104〜10.664×104Paが好ましく、9.331×104〜10.397×104Paがより好ましい。
【0026】
図2に示すように、左右の吸引ヘッド部30Bには、吸引口34が形成されている。吸引口34は、前後に延びるスリット状をなしている。吸引口34の左右方向の幅寸法は、噴出口31より大きく、例えば2mmである。
【0027】
図1に示すように、吸引口34は、吸引路4aに連なっている。この吸引路4aが、外周ハウジング12の外部に引き出され、吸引排気手段4に接続されている。吸引排気手段4は、流量制御弁や吸引ポンプや無毒化設備等を含む。
なお、吸引路4aに連なる吸引排気部と、吸引ダクト15に連なる吸引排気部と、排気ダクト13に連なる吸引排気部とを、互いに共用することにしてもよい。
【0028】
吸引口34は、ノズルヘッド30の底面33に達して開口されている。
図3に最も良く示されているように、ノズルヘッド30の底面33における吸引口34より内側の部分は、平坦面33a(第1面部分)になっている。この平坦面33aに噴出口31が開口される一方、ちょうど吸引口34を境に段差が形成され、吸引口34より左右外側の面33b(第2面部分)が、上側へ引っ込んでいる。したがって、吸引口34の外側縁34b(噴出口31側とは反対側の縁)が内側縁34a(噴出口31側の縁)より上側(被処理物Wとの対面方向の逆側)に引っ込んでいる。
第1面部分33aと第2面部分33bとの間の段差の高さhは、例えばh=5〜30mm程度が好ましい。
【0029】
上記構成の表面処理装置1によりガラス基板Wを表面処理する方法を説明する。
処理すべきガラス基板Wを浮上エアステージ20にて浮上させるとともに一方向(例えば左から右)へ搬送する。ガラス基板Wは、外周ハウジング12の左壁の開口12aを通過して外周ハウジング12内に入り、更に、処理ハウジング11の左壁の開口11bを通過して処理ハウジング11内に入る。そして、ノズルヘッド30の下方へ導入される。ノズルヘッド30の底面33とガラス基板Wとの間には処理空間1aが画成される。
【0030】
併行して、処理ガス供給源3の処理ガスを、処理ガス供給路3aを介してノズルヘッド30に導入し、図示しない整流部で前後方向に均一化したうえで噴出口31から下方へ噴出する。この処理ガスが、処理空間1a内を左右外側へ流れながらガラス基板Wの表面のアモルファスシリコン層に接触する。これにより、処理ガス中のオゾン及びフッ酸蒸気(反応成分)とアモルファスシリコンとの反応が起き、アモルファスシリコン層がエッチング(表面処理)される。
【0031】
処理ガスの噴出と併行して、吸引排気手段4を駆動する。この吸引排気手段4の吸引流量は、処理ガスの噴出流量より十分に大きくする。これにより、図3に示すように、処理空間1aから吸引口34の直下に達した処理済みの処理ガスF1が、吸引口34から吸い込まれ、吸引路4aを経て排出される。
さらに、ノズルヘッド30の外側の雰囲気ガスF2が、吸引口34へ吸い込まれる。ここで、ノズルヘッド30の底面33は、吸引口34より外側の第2面部分33bが吸引口34より内側の第1面部分33aより上側へ引っ込み、吸引口34の外側縁34bが内側縁より上に引っ込んでいるため、第2面部分33bとガラス基板Wとの間の空間に入り込む雰囲気ガスF2の流量を大きくでき、この雰囲気ガスの流れF2に処理済みガスF1を取り込むことができる。これによって、処理済みガスF1を雰囲気ガスF2と一緒に吸引口34に確実に吸引して排出することができる。さらには、ガラス基板Wの表面上に付着・滞留したガスを、剥離させて雰囲気ガスと一緒に吸引し排出することができる。
このようにして、処理ガスや付着ガスが、開口12aから処理ハウジング11の外へ漏れるのを防止ないしは抑制することができる。たとえ開口12aから漏れたとしても、外周ハウジング12と処理ハウジング11との間に止め、そこから排気ダクト13によって排気することができる。
【0032】
処理済みのガラス基板Wは、処理ハウジング11の右壁の開口11bを通過し、更に外周ハウジング12の右壁の開口12aを通過し、搬出される。
ガラス基板Wは、複数枚、間隔を置いて一列に並べられ、浮上エアステージ20によって連続的に処理室11aに導入される。ノズルヘッド30の下方にガラス基板Wが位置していないときは、未処理の処理ガスF1が浮上エアステージ20のネットを通過して下方へ流れる。この処理ガスは、吸引ダクト15に吸い込まれ、排出される。
【0033】
以上のように、表面処理装置1によれば開口12a,11bを常時開放させていたとしても、処理ガスが外界へ漏洩するのを確実に防止することができ、複数のガラス基板Wを常時開放された開口12a,11bを介して連続的に搬送しながら連続的に処理することができ、インライン化が可能になる。
【0034】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の実施形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
図4は、本発明の第2実施形態を示したものである。この実施形態では、上記第1実施形態と同様にノズルヘッド30の左右(同図では左側のみ図示)の吸引口34の外側縁34bが内側縁より上側へ引っ込む一方、この吸引口34の外側縁34bから左右外側へ延びる底面33c(第2面部分)が、吸引口34から離れるにしたがって下へ突出する斜面になっている(噴出口31側とは反対側に向かうにしたがって被処理位置P1へ向けて突出されている)。第2面部分33cは、ガラス基板Wと協働してディフューザ部を構成することになる。第2面部分33cの最も下に位置する外側縁33dは、吸引口34より内側の第1面部分33aと同じ高さになっているが、第1面部分33aより下に位置していてもよく、第1面部分33aより上に位置していてもよい。
斜面をなす第2面部分33cの傾斜角度θは、例えばθ=3〜30°程度が好ましい。
【0035】
第2実施形態によれば、第2面部分33cの外側縁とガラス基板Wとの間の隙間が狭くなっているため、処理空間1aからの処理済みの処理ガスF1が外部へ漏れにくくすることができる。加えて、第2面部分33cとガラス基板Wとの間のディフューザ効果により、ノズルヘッド30の外側の雰囲気ガスF2が、第2面部分33cとガラス基板Wとの間の空間に入り込んだ後、膨張する。これにより、処理空間1aからの処理済みガスF1が、雰囲気ガスの流れF2に確実に取り込まれて混合され、雰囲気ガスF2と一緒に吸引口34に確実に吸い込まれる。よって、処理ガス済みガスF1が外部に漏洩するのを確実に防止することができる。
【0036】
図5は、本発明の第3実施形態を示したものである。この実施形態のノズルヘッド30には、左右(同図では左側のみ図示)の吸引口34のさらに外側に不活性噴出口35が設けられている。不活性噴出口35は、まっすぐ下方へ延び、ノズルヘッド30の底面33に達して開口されている。不活性噴出口35の上流端は、不活性供給路5aを介して不活性ガス供給源5に連なっている。不活性ガスは、被処理物Wとの反応性を有しないものであればよく、例えば、窒素、空気、アルゴン、ヘリウム等を用いる。
【0037】
第3実施形態によれば、吸引口34の外側に不活性ガスのカーテンF3を形成することができ、処理済みガスF1の外部への漏洩を一層確実に防止することができる。また、不活性ガスは、表面処理装置1の各構成部材等に接触しても腐食等の反応を起こすことがなく、外界に漏洩しても何ら支障がない。不活性ガスF3は、処理済みガスF1とともに吸引口34に吸引されて排出される。さらに、ガラス基板Wの表面に付着、滞留しているガスを剥離させて不活性ガスと一緒に吸引口34から吸引して排出することができ、上記付着ガスがガラス基板Wと共に外部に搬出されるのを防止することができる。
【0038】
図6は、本発明の第4実施形態を示したものである。この実施形態では、不活性噴出口35の下側部(先端部分)が、最下端の開口へ向かうにしたがって吸引口34へ近づくように斜めになり、エジェクタ路35aを構成している。ノズルヘッド30底面におけるエジェクタ路35aの先端開口と第2面部分33c(ディフューザ部)との間は、水平なスロート面33eになっている。スロート面33eは、ガラス基板Wと協働してスロート部を構成することになる。
【0039】
第4実施形態によれば、不活性ガスF3がエジェクタ路35aから吸引口34の側へ向けて噴出されるとともに、この不活性ガスの噴出流F3のエジェクタ効果によって、外部の雰囲気ガスF2をノズルヘッド30とガラス基板Wとの間に確実に引き込むことができる。この雰囲気ガスの引き込み流F2によって、処理済みガスF1が外部に漏れるのを確実に防止することができる。また、不活性ガスの噴出流量は小さくて済み、ランニングコストの削減を図ることができる。
【0040】
不活性ガスF3と雰囲気ガスF2は、互いに混合されながらスロート部へ流入し、流速が増大して静圧が低下し、その後、ディフューザ部へ流入して減速される。これによって、雰囲気ガスF2の引き込み流量を確実に増大させることができ、処理済みガスF1の漏洩を一層確実に防止することができる。
【0041】
図7は、本発明の第5実施形態を示したものである。この実施形態では、ガラス基板Wの移動手段としてローラコンベア40が用いられている。ローラコンベア40は、モータ等の駆動部41と、この駆動部41とコンベア本体42とを接続する伝達部43とを有している。伝達部43は、プーリ、エンドレスベルト、チェーン、ギア列等で構成されている。コンベア本体42は、左右に並べられたローラ軸(詳細図示省略)と、各ローラ軸に設けられたローラ44とを有している。駆動部41の動力が伝達部43によってローラ軸に伝達され、ローラ44が回転されることにより、ガラス基板Wが移動(駆動部41の動力が被処理物Wに間接的に伝達)されるようになっている。
【0042】
処理室11a内のコンベア本体42のための駆動部41は、処理室11aの外部に配置されている。これによって、処理ガス又は反応による副生成物が腐食性成分を含んでいたとしても、その腐食性成分が駆動部41に接触するのを防止できる。したがって、駆動部41の腐食を防止でき、長寿命化を図ることができる。
駆動部41は、外周ハウジング12と処理ハウジング11の間に配置してもよく、外周ハウジング12の外部に配置してもよい。
【0043】
本発明は、上記実施形態に限定されるものでなく、当業者に自明の範囲で種々の改変をなすことができる。
例えば、上記実施形態に記載した寸法等の数値はあくまでも例示であって、これに何ら限定されるものではなく、適宜変更することができる。
被処理物Wは、ガラス基板に限られず、シリコンウェハでもよく、樹脂フィルムでもよく、表面処理されるものであれば特に限定がない。
表面処理の内容は、アモルファスシリコン層のエッチングに限られず、酸化膜や窒化膜等の他の成分のエッチングでもよく、エッチングに限られず、成膜、表面改質、洗浄等、種々の表面処理に適用可能である。成膜としては例えばアモルファスシリコン層のCVDが挙げられる。表面改質としては、例えばゴム管の継部分等の接着性を向上させる処理や、濡れ性を向上させる処理等が挙げられる。
処理ガスは、被処理物Wの組成や表面処理の内容に応じて適宜選択される。上記実施形態のオゾンやフッ酸蒸気をはじめ、HF、 COF、 F、 CO、 NO等の腐食性、毒性を有する成分を用いてもよい。本発明によれば、処理ガス成分が腐食性、毒性を有している場合であっても、外部への漏洩を確実に防止することができ、信頼性を確保することができる。
移動手段には特に限定がない。浮上式ステージに代えて被処理物Wを接触させて載置するプレートステージを用いてもよく、移動手段が、このプレートステージを移動させるようになっていてもよい。被処理物Wがウェハ等の場合、この被処理物Wを吸着ハンドで吸着し、この吸着ハンドをマニピュレータ(移動手段)で移動させるようにしてもよい。被処理物Wが、長い樹脂フィルムである場合、移動手段として樹脂フィルムを繰り出すロールと巻き取るロールを用いてもよい。
被処理物Wを位置固定する一方、移動手段にてノズル部30を移動させることにしてもよく、被処理物Wとノズル部を共に移動させることにしてもよい。移動手段を省略し、ノズル部と被処理物Wとを相対移動させずに処理することにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、例えば液晶パネルなどの半導体装置の製造工程に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の第1実施形態を示し、表面処理装置の全体構成の正面図である。
【図2】上記表面処理装置の平面図である。
【図3】上記表面処理装置のノズルヘッドの断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態を示すノズルヘッドの断面図である。
【図5】本発明の第3実施形態を示すノズルヘッドの断面図である。
【図6】本発明の第4実施形態を示すノズルヘッドの断面図である。
【図7】本発明の第5実施形態を示す正面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 表面処理装置
1a 処理空間
2 エア供給源
2a 浮上エア供給路
3 処理ガス供給源
3a 処理ガス供給路
4 吸引排気手段
4a 吸引路
5 不活性ガス供給源
5a 不活性供給路
10 二重ハウジング
11 処理ハウジング
11a 処理室
11b 開口
12 外周ハウジング
12a 開口
13 排気ダクト(排気部)
14 ファンフィルタユニット
15 吸引ダクト(吸引部)
20 浮上エアステージ(移動手段)
21 エア噴出部
21a 小孔
22 浮上エア供給ポート
23 推進コロ
30 ノズルヘッド(ノズル部)
30A 噴出ヘッド部
30B 吸引ヘッド部
31 噴出口
33 ノズルヘッド底面(被処理物と対面する面)
34 吸引口
33a 第1面部分
33b 第2面部分
33c 第2面部分(ディフューザ部)
33d 外側縁
33e スロート面
34a 吸引口の噴出口側の縁
34b 吸引口の噴出口側とは反対側の縁
35 不活性噴出口
35a エジェクタ路
40 ローラコンベア(移動手段)
41 駆動部
42 コンベア本体
43 伝達部
F1 処理ガス流
F2 雰囲気ガス流
F3 不活性ガス流
P1 被処理位置
W ガラス基板(被処理物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理ガスを被処理物に噴き付けて表面処理する装置であって、
被処理物の配置されるべき被処理位置と対面するノズル部を備え、このノズル部には前記被処理位置に向けて前記処理ガスを噴出する噴出口と、ガスを吸引する吸引口とが並んで形成され、前記吸引口における前記噴出口側とは反対側の縁が前記噴出口側の縁より前記対面方向の逆側に引っ込んでいることを特徴とする表面処理装置。
【請求項2】
前記ノズル部の前記被処理位置と対面する面が、前記噴出口と前記吸引口との間の第1面部分と、前記吸引口を挟んで前記第1面部分とは反対側の第2面部分とを有し、前記第2面部分が、前記第1面部分より前記対面方向の逆側に引っ込んでいることを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項3】
前記ノズル部の前記被処理位置と対面する面が、前記吸引口の前記反対側の縁に連なる第2面部分を有し、この第2面部分が、前記噴出口側とは反対側に向かうにしたがって前記被処理位置へ向けて突出されていることを特徴とする請求項1に記載の表面処理装置。
【請求項4】
前記ノズル部の前記吸引口より前記噴出口側とは反対側には不活性ガスを噴出する不活性噴出口が設けられており、この不活性噴出口の先端部分が、前記吸引口へ向かうように前記対面方向に対し斜めになって、前記被処理位置と対面する面における前記第2面部分より前記吸引口側とは反対側に開口されていることを特徴とする請求項3に記載の表面処理装置。
【請求項5】
前記被処理位置を挟んで前記ノズル部と対向するように配置され、ガスを吸引する吸引部と、
前記被処理物を、前記ノズル部と前記吸引部との間に通すように移動させる移動手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の表面処理装置。
【請求項6】
内部に前記被処理位置が配されるとともに前記ノズル部の少なくとも被処理位置側の部分が臨む処理ハウジングを、更に備え、
前記移動手段が、前記処理ハウジングの外部に配置された駆動部と、前記駆動部の動力を前記被処理物に直接又は間接的に伝達する伝達部とを含むことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の表面処理装置。
【請求項7】
前記処理ハウジングを囲む外周ハウジングと、前記外周ハウジングと処理ハウジングとの間を吸引排気する排気部とを、更に備えたことを特徴とする請求項6に記載の表面処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−129997(P2009−129997A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−300938(P2007−300938)
【出願日】平成19年11月20日(2007.11.20)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】