説明

記憶素子、信号処理回路および記憶素子の駆動方法

【課題】消費電力を抑えることができる記憶装置、当該記憶装置を用いた信号処理回路を提供する。
【解決手段】インバータまたはクロックドインバータなどの、入力された信号の位相を反転させて出力する位相反転素子を用いた記憶素子内に、データを保持するための容量素子と、当該容量素子における電荷の蓄積および放出を制御するスイッチング素子とを設ける。例えば、容量素子の一方の電極を位相反転素子の入力あるいは出力に接続し、他方の電極をスイッチング素子に接続する。上記記憶素子を、信号処理回路が有する、レジスタやキャッシュメモリなどの記憶装置に用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置を用いた記憶素子および信号処理回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アモルファスシリコンやポリシリコン、微結晶シリコン等を用いたトランジスタは液晶ディスプレイ等の表示装置に使用されてきたが、これを半導体集積回路に利用する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、近年、ポリシリコンや微結晶シリコンによって得られるものと同程度の高い移動度と、アモルファスシリコンによって得られるものと同程度の均一な素子特性とを兼ね備えた新たな半導体材料として、酸化物半導体と呼ばれる、半導体特性を示す金属酸化物に注目が集まっている。
【0004】
金属酸化物は様々な用途に用いられており、例えば、よく知られた金属酸化物である酸化インジウムは、液晶表示装置などで透明電極材料として用いられている。半導体特性を示す金属酸化物としては、例えば、酸化タングステン、酸化錫、酸化インジウム、酸化亜鉛などがあり、このような半導体特性を示す金属酸化物をチャネル形成領域に用いるトランジスタが、既に知られている(特許文献2乃至特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第7772053号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0072439号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/0193078号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2011/0176357号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、中央演算処理装置(CPU:Central Processing Unit)などの信号処理回路は、その用途によって多種多様な構成を有しているが、一般的に、データやプログラムを記憶するためのメインメモリの他に、レジスタ、キャッシュメモリなど、各種の半導体記憶装置(以下、単に記憶装置とする)が設けられている。レジスタは、演算処理やプログラムの実行状態の保持などのために一時的にデータを保持する役割を担っている。また、キャッシュメモリは、演算装置とメインメモリの間に介在し、メインメモリへのアクセスを減らして演算処理を高速化させることを目的として、CPUに設けられている。
【0007】
レジスタやキャッシュメモリなどの記憶装置は、メインメモリよりも高速でデータの書き込みをおこなう必要がある。よって、通常は、レジスタとしてフリップフロップが、キャッシュメモリとしてSRAMなどが用いられる。
【0008】
図2(A)に、レジスタを構成する記憶素子の一つを例示する。図2(A)に示す記憶素子200は、インバータ201、インバータ202、スイッチング素子203、スイッチング素子204を有する。そして、インバータ201の入力端子への信号INの入力は、スイッチング素子203により制御されている。インバータ201の出力端子の電位は、信号OUTとして、後段の回路に与えられる。また、インバータ201の出力端子はインバータ202の入力端子に接続されており、インバータ202の出力端子は、スイッチング素子204を介してインバータ201の入力端子に接続されている。
【0009】
スイッチング素子203を介して入力された信号INの電位は、スイッチング素子203がオフ、スイッチング素子204がオンになることで、記憶素子200内で保持される。
【0010】
図2(A)に示した記憶素子200の、より具体的な回路構成を、図2(B)に示す。図2(B)に示す記憶素子200は、インバータ201、インバータ202、スイッチング素子203、スイッチング素子204を有しており、これら回路素子の接続構成は図2(A)と同じである。
【0011】
インバータ201は、ゲート電極が互いに接続されたPチャネル型トランジスタ207と、Nチャネル型トランジスタ208とを有している。そして、活性状態でハイレベルの電源電位が与えられているノード(VDD)と、ローレベルの電源電位が与えられているノード(VSS)間において、Pチャネル型トランジスタ207と、Nチャネル型トランジスタ208とは、直列に接続されている。また、同様に、インバータ202は、ゲート電極が互いに接続されたPチャネル型トランジスタ209と、Nチャネル型トランジスタ210とを有している。そして、VDDとVSS間において、Pチャネル型トランジスタ209と、Nチャネル型トランジスタ210とは、直列に接続されている。
【0012】
図2(B)に示すインバータ201は、Pチャネル型トランジスタ207のゲート電極と、Nチャネル型トランジスタ208のゲート電極に与えられる電位の高さに従って、一方がオフ、他方がオンとなるように動作する。よって、VDDとVSS間の電流は、理想的には0になるはずである。しかし、実際には、オフのはずのトランジスタに僅かなオフ電流が流れているため、完全に0にはならない。インバータ202についても同様の現象が生じるため、記憶素子200には、データを保持しているだけの状態でも、消費電力が発生する。
【0013】
例えば、トランジスタのサイズにもよるが、バルクのシリコンを用いて作製されたインバータの場合、室温下、VDDとVSS間の電圧が約1Vの状態にて、0.1pA程度のオフ電流が生じる。図2(A)、図2(B)に示す記憶素子には、インバータ201とインバータ202の、2つのインバータが設けられているので、0.2pA程度のオフ電流が生じる。そして、記憶素子数が約10個程度であるレジスタの場合、オフ電流はレジスタ全体で2μAとなる。
【0014】
さらに、微細化の進展と共に、ゲート絶縁物も薄膜化しているため、ゲート電流も無視できない大きさとなっている。これらも加わって、レジスタの消費電力は回路線幅の縮小化に反して増大している。
【0015】
加えて、近年では、電源電圧の低下による速度の低下を補うために、トランジスタのしきい値を低下させることがおこなわれているが、その結果、オフ電流は1つのインバータあたりさらに3桁程度増加することもある。
【0016】
これらの結果、レジスタの消費電力は回路線幅の縮小化に反して増大している。そして、電力の消費による発熱がICチップの温度の上昇を招き、さらに消費電力が増加するという悪循環に陥りつつある。
【0017】
また、SRAMも上記レジスタと同様に、インバータを用いた構成を有しており、トランジスタのオフ電流により電力が消費される。よって、SRAMを用いたキャッシュメモリも上記の記憶素子(レジスタ)の場合と同様に、データの書き込みがおこなわれていない状態でも、消費電力が嵩んでしまう。
【0018】
そこで、消費電力を抑えるため、データの入出力がおこなわれない期間において、記憶装置への電源電位の供給を一時的に停止するという一つの方法が提案されている。レジスタ、キャッシュメモリには、電源電位の供給が途絶えるとデータを消失してしまう揮発性の記憶装置が用いられているため、その方法では、上記記憶装置の周辺に不揮発性の記憶装置を配置し、上記データをその不揮発性の記憶装置へ一時的に移している。しかし、これらの不揮発性の記憶装置は、主に磁気素子や強誘電体が用いられているため、作製工程が複雑である。
【0019】
また、CPUにおいて長時間の電源停止をおこなう際には、電源停止の前に、記憶装置内のデータをハードディスク、フラッシュメモリ等の外部記憶装置に移すことで、データの消失を防ぐこともできる。しかし、それらの外部記憶装置からデータをレジスタ、キャッシュメモリ、メインメモリに戻すのには時間を要する。よって、ハードディスク、フラッシュメモリ等の外部記憶装置によるデータのバックアップは、消費電力の低減を目的とした短時間(例えば、100μ秒乃至1分)の電源停止には適さない。
【0020】
上述の課題に鑑み、本発明は、複雑な作製工程を必要とせず、消費電力を抑えることができる信号処理回路、当該信号処理回路の駆動方法の提供を目的の一つとする。特に、短時間の電源停止により消費電力を抑えることができる信号処理回路、当該信号処理回路の駆動方法の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
インバータまたはクロックドインバータなどの、入力された信号の位相を反転させて出力する論理素子(以下、位相反転素子と呼ぶ)を用いた記憶素子内に、データを保持するための容量素子と、当該容量素子における電荷の蓄積および放出を制御する容量用スイッチング素子とを設ける。容量素子の一方の電極は位相反転素子の入力あるいは出力に接続し、他方の電極は容量用スイッチング素子のソースあるいはドレインのいずれかに接続する。
【0022】
そして、上記容量用スイッチング素子には、アモルファスシリコン、ポリシリコン、微結晶シリコン、あるいは酸化物半導体等の化合物半導体(好ましくはワイドバンドギャップ化合物半導体)をチャネル形成領域に含んでもよい。
【0023】
上記容量用スイッチング素子はオフ抵抗が高いことが好ましいので、チャネル長が最小加工線幅の10倍以上、好ましくは20倍以上、より好ましくは50倍以上、あるいは1μm以上であるトランジスタを用いてもよい。このとき、トランジスタのチャネル長はチャネル幅の10倍以上、好ましくは20倍以上、より好ましくは50倍以上でもよい。
【0024】
そして、上記記憶素子を、信号処理回路が有する、レジスタ、キャッシュメモリ、メインメモリなどの記憶装置に用いる。酸化物半導体を用いたトランジスタでは、このような長チャネルのトランジスタを用いることで、短チャネル効果による、特にオフ特性の劣化を抑制することもできる。
【0025】
なお、本明細書ではワイドバンドギャップ化合物半導体とは、2電子ボルト以上のバンドギャップを有する化合物半導体のことである。酸化物半導体以外のワイドバンドギャップ化合物半導体としては、硫化亜鉛等の硫化物や、窒化ガリウム等の窒化物が挙げられる。いずれにしても高純度化することで、ドナーやアクセプタの濃度を極めて低くすることが好ましい。
【0026】
容量用スイッチング素子は、位相反転素子の上方に重ねて形成されることが好ましく、容量用スイッチング素子に用いられる酸化物半導体層は、曲がりくねった形状あるいは少なくとも1つの凹部を有する形状とすることで、(1つまたは複数の)位相反転素子上の領域の限られた面積に形成することで、上記のチャネル長を実現できる。
【0027】
なお、1つの容量用スイッチング素子は、複数の位相反転素子の上に重なるように形成されてもよく、1つの位相反転素子の上に、複数の容量用スイッチング素子が重なるように形成されてもよい。例えば、複数の位相反転素子子の上に複数の直線状かつチャネル長がチャネル幅の10倍以上であるスイッチング素子を設けてもよい。
【0028】
具体的には上記のレジスタあるいはSRAM等の回路は2つの位相反転素子(インバータ等)が組み合わされた回路(フリップフロップ回路等)を有するが、その回路の占有する面積は50F(Fは最小加工線幅)以上であり、通常は100F乃至150Fである。例えば、2つのインバータが組み合わされた回路の占有する面積が50Fとし、その半分の面積(25F)に酸化物半導体を用いた容量用スイッチング素子を設ける場合、チャネル幅をFとすると、チャネル長は25Fとできる。Fを40nmとすると、チャネル長は1μmとなる。
【0029】
また、容量素子も位相反転素子の上方に重ねて形成されることが好ましく、容量用スイッチング素子と同じ層に形成されてもよいし、異なる層に形成してもよい。同じ層に形成すると容量用スイッチング素子のための領域と容量素子のための領域を設ける必要があるが、作製工程を簡略化できる。一方、異なる層に設けると、作製工程は余分に必要であるが、集積度を上げることや、容量素子のために使用される面積を大きくでき、容量素子の誘電体を容量用スイッチング素子のゲート絶縁物と異なるものとすること等により、より容量を高めることも可能である。
【0030】
スイッチン素子のオン抵抗と容量素子の容量は、必要とするスイッチング動作の速さに応じて決定すればよい。電源の停止と回復という目的であればスイッチングに要する時間は、100μ秒もあれば十分である。用途によっては、100ミリ秒以上でもよい。また、スイッチン素子のオフ抵抗と容量素子の容量は、必要とするスイッチング動作の間隔に応じて決定すればよい。なお、スイッチング素子のゲート容量は、容量素子の容量よりも大きくても良い。
【0031】
さらに、信号処理回路は、上記記憶装置に加え、記憶装置とデータのやり取りをおこなう演算回路などの各種論理回路を有する。そして、記憶装置へ電源電圧の供給を停止すると共に、当該記憶装置とデータのやり取りをおこなう演算回路への、電源電圧の供給を停止するようにしてもよい。
【0032】
具体的に、記憶素子は、2つの位相反転素子と、容量素子と、当該容量素子における電荷の蓄積および放出を制御する容量用スイッチング素子とを少なくとも有する。記憶素子に入力されたデータを含む信号は、第1の位相反転素子の入力端子に与えられる。第1の位相反転素子の出力端子は、第2の位相反転素子の入力端子に接続されている。第2の位相反転素子の出力端子は、第1の位相反転素子の入力端子に接続されている。第1の位相反転素子の出力端子または第2の位相反転素子の入力端子の電位が、信号として後段の記憶素子、或いは他の回路に出力される。
【0033】
上記位相反転素子は、ゲート電極が互いに接続された少なくとも1つのPチャネル型トランジスタと、少なくとも1つのNチャネル型トランジスタとが、VDDとVSSの間において、直列に接続された構成を有する。
【0034】
そして、容量素子の一方の電極は、記憶素子に入力された信号のデータを必要に応じて記憶できるように、上記信号の電位が与えられるノードに接続され、他方の電極は上記容量用スイッチング素子に接続している。
【0035】
VDDとVSS間に電源電圧が与えられている状態において、第1の位相反転素子の入力端子にデータを含む信号が入力されると、第1の位相反転素子および第2の位相反転素子によって、そのデータが保持される。電源電圧の印加を停止する前に、上記容量用スイッチング素子をオンにして、信号のデータを容量素子に記憶させる。上記構成により、位相反転素子への電源電圧の印加を停止しても、記憶素子にデータを保持させることが可能である。
【0036】
そして、上記容量用スイッチング素子に用いられるトランジスタのチャネル形成領域は、アモルファスシリコン、ポリシリコン、微結晶シリコン、あるいは化合物半導体、例えば、高純度化された酸化物半導体を含んでおり、かつ、チャネル長が十分に長いため、オフ電流が著しく低いという特性を有している。
【0037】
なお、位相反転素子に用いられるトランジスタには、非晶質、微結晶、多結晶、または単結晶の、シリコン、ガリウム砒素、ガリウム燐、またはゲルマニウムなどの半導体を用いることができる。また、上記トランジスタには、薄膜の半導体を用いて作製されてもよいし、バルクの半導体ウェハを用いて作製されてもよい。
【0038】
なお、酸化物半導体は、少なくともインジウム(In)あるいは亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。特にInとZnを含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それらに加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(Sn)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてハフニウム(Hf)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてアルミニウム(Al)を有することが好ましい。
【0039】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホルミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ルテチウム(Lu)のいずれか一種あるいは複数種を有してもよい。
【0040】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化物であるIn−Zn系酸化物、Sn−Zn系酸化物、Al−Zn系酸化物、Zn−Mg系酸化物、Sn−Mg系酸化物、In−Mg系酸化物、In−Ga系酸化物、三元系金属の酸化物であるIn−Ga−Zn系酸化物(IGZOとも表記する)、Sn−Ga−Zn系酸化物、Al−Ga−Zn系酸化物、Sn−Al−Zn系酸化物、In−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Zn系酸化物、In−Hf−Zn系酸化物、In−La−Zn系酸化物、In−Ce−Zn系酸化物、In−Pr−Zn系酸化物、In−Nd−Zn系酸化物、In−Sm−Zn系酸化物、In−Eu−Zn系酸化物、In−Gd−Zn系酸化物、In−Tb−Zn系酸化物、In−Dy−Zn系酸化物、In−Ho−Zn系酸化物、In−Er−Zn系酸化物、In−Tm−Zn系酸化物、In−Yb−Zn系酸化物、In−Lu−Zn系酸化物、四元系金属の酸化物であるIn−Sn−Ga−Zn系酸化物、In−Hf−Ga−Zn系酸化物、In−Al−Ga−Zn系酸化物、In−Sn−Al−Zn系酸化物、In−Sn−Hf−Zn系酸化物、In−Hf−Al−Zn系酸化物を用いることができる。
【0041】
なお、ここで、例えば、In−Ga−Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の金属元素が入っていてもよい。また、上記酸化物半導体は、シリコンや硫黄、窒素等を含んでいてもよい。
【0042】
或いは、酸化物半導体は、化学式InMO(ZnO)(m>0)で表記できるものを用いることもできる。ここで、Mは、Sn、Ga、Al、HfおよびCoから選ばれた一又は複数の金属元素を示す。
【0043】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)あるいはIn:Ga:Zn=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)の原子比のIn−Ga−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるいはIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子比のIn−Sn−Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0044】
しかし、これらに限られず、必要とする半導体特性(移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のものを用いればよい。また、必要とする半導体特性を得るために、キャリア密度や不純物濃度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間結合距離、密度等を適切なものとすることが好ましい。
【0045】
例えば、In−Sn−Zn系酸化物では比較的容易に高い移動度が得られる。しかしながら、In−Ga−Zn系酸化物でも、バルク内欠陥密度を低減することにより移動度を上げることができる。
【0046】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+c=1)である酸化物が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C=1)の酸化物の近傍であるとは、a、b、cが、
(a―A)+(b―B)+(c―C)≦r
を満たすことをいう。rとしては、例えば、0.05とすればよい。他の酸化物でも同様である。
【0047】
酸化物半導体は単結晶でも、非単結晶でもよい。後者の場合、アモルファスでも、多結晶でもよい。また、アモルファス中に結晶性を有する部分を含む構造でも、非アモルファスでもよい。
【0048】
アモルファス状態の酸化物半導体は、比較的容易に平坦な表面を得ることができるため、これを用いてトランジスタを作製した際の界面散乱を低減でき、比較的容易に、比較的高い移動度を得ることができる。
【0049】
また、結晶性を有する酸化物半導体では、よりバルク内欠陥を低減することができ、表面の平坦性を高めればアモルファス状態の酸化物半導体以上の移動度を得ることができる。表面の平坦性を高めるためには、平坦な表面上に酸化物半導体を形成することが好ましく、具体的には、平均面粗さ(Ra)が1nm以下、好ましくは0.3nm以下、より好ましくは0.1nm以下の表面上に形成するとよい。
【0050】
酸化物半導体は比較的高い移動度(1cm/Vs以上、好ましくは10cm/Vs以上)の半導体特性を示す金属酸化物である。そして、電子供与体(ドナー)となる水分または水素などの不純物および酸素欠損が低減されて高純度化された酸化物半導体(purified OS)は、I型(真性半導体、本明細書では、キャリア濃度が1×1012/cm以下の半導体をI型という)又はI型に限りなく近い(実質的にI型)半導体である。
【0051】
水素濃度に関して、具体的には、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により測定した酸化物半導体に含まれる水素濃度の値が、5×1019/cm以下、好ましくは5×1018/cm以下、より好ましくは5×1017/cm以下、さらに好ましくは1×1016/cm以下となるように、酸化物半導体に含まれる水分または水素などの不純物を除去する。また、酸素欠損の量も可能な限り低減する。このように真性半導体とする上で好ましくないものを除去することを高純度化という。
【0052】
上記構成により、ホール効果測定により測定できる酸化物半導体膜のキャリア密度を、1×1014/cm未満、好ましくは1×1012/cm未満、さらに好ましくは測定限界以下の1×1011/cm未満とすることができる。即ち、酸化物半導体膜のキャリア密度を、限りなくゼロに近づけることができる。
【0053】
また、用いる酸化物半導体のバンドギャップは2電子ボルト以上4電子ボルト以下、好ましくは2.5電子ボルト以上4電子ボルト以下、より好ましくは3電子ボルト以上4電子ボルト以下とする。このようにバンドギャップが広く、水分または水素などの不純物および酸素欠損が十分に低減されて高純度化された酸化物半導体膜を用いることにより、トランジスタのオフ電流を下げることができる。
【0054】
ここで、酸化物半導体膜中および導電膜中の、水素濃度の分析について触れておく。酸化物半導体膜中および導電膜中の水素濃度測定は、SIMSでおこなう。SIMSは、その原理上、試料表面近傍や、材質が異なる膜との積層界面近傍のデータを正確に得ることが困難であることが知られている。
【0055】
そこで、膜中における水素濃度の厚さ方向の分布をSIMSで分析する場合、対象となる膜が存在する範囲において、値に極端な変動が無く、ほぼ一定の値が得られる領域における平均値を、水素濃度として採用する。
【0056】
また、測定の対象となる膜の厚さが小さい場合、隣接する膜内の水素濃度の影響を受けて、ほぼ一定の値が得られる領域を見いだせない場合がある。この場合、当該膜が存在する領域における、水素濃度の極大値または極小値を、当該膜中の水素濃度として採用する。さらに、当該膜の存在する領域において、極大値を示す山型のピーク、極小値を示す谷型のピークが存在しない場合、変曲点の値を水素濃度として採用する。
【0057】
なお、スパッタ等で成膜された酸化物半導体膜中には、不純物である水分または水素が多量に含まれていることが判明している。水分または水素はドナー準位を形成しやすいため、酸化物半導体にとっては不純物である。
【0058】
そこで、本発明の一態様では、酸化物半導体膜中の水分または水素などの不純物を低減するために、酸化物半導体膜に対して、減圧雰囲気下、窒素や希ガスなどの不活性ガス雰囲気下、酸素ガス雰囲気下、又は超乾燥エア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した場合の水分量が20ppm(露点換算で−55℃)以下、好ましくは1ppm以下、より好ましくは10ppb以下の空気)雰囲気下で加熱処理をおこなう。
【0059】
上記加熱処理は、300℃以上850℃以下、好ましくは550℃以上750℃以下の温度範囲でおこなうのが望ましい。なお、この加熱処理は、用いる基板の耐熱温度を超えないものとする。水分または水素の加熱処理による脱離の効果については、TDS(Thermal Desorption Spectrometry;昇温脱離ガス分析法)により確認済みである。
【0060】
加熱処理は、炉での熱処理またはラピッドサーマルアニール法(RTA法)を用いる。RTA法は、ランプ光源を用いる方法と、加熱されたガス中に基板を移動させて短時間の熱処理をおこなう方法がある。RTA法を用いると熱処理に要する時間を0.1時間よりも短くすることもできる。
【0061】
具体的に、上述した加熱処理等により高純度化された酸化物半導体膜を活性層として用いたトランジスタは、非常に低いオフ電流(非常に高いオフ抵抗)を示す。具体的には、例えば、チャネル幅(W)が1×10μm(チャネル長(L)は1μm)の素子であっても、ドレイン電圧(ソース電極とドレイン電極間の電圧)が1Vのときのオフ電流(ゲート電極とソース電極間の電圧を0V以下としたときのドレイン電流)を、半導体パラメータアナライザの測定限界以下、すなわち1×10−13A以下とすることができる。
【0062】
この場合、オフ電流密度(チャネル幅1μmあたりのオフ電流)は、100zA/μm以下である。上述のような長チャネルかつ狭チャネルのトランジスタであれば、オフ電流は1zA以下となる。従って、高純度化された酸化物半導体膜を活性層として用いたトランジスタは、オフ電流が、結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタに比べて著しく低い。
【0063】
上記構成を有するトランジスタを、容量素子に蓄積された電荷の放出を制御するための容量用スイッチング素子として用いることで、容量素子からの電荷のリークを防ぐことができるため、電源電圧の印加がない場合でも、データを消失させずに保持することが可能となる。そして、容量素子においてデータを保持している期間は、位相反転素子への電源電圧の供給をおこなわなくてもよいので、位相反転素子に用いられているトランジスタのオフ電流に起因する無駄な消費電力を削減することができ、記憶装置、延いては記憶装置を用いた信号処理回路全体の、消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0064】
なお、容量用スイッチング素子のオフ電流は、容量素子の容量と、データを保持する時間とによって決定される。例えば、高純度化された酸化物半導体を用いたトランジスタを容量用スイッチング素子とする場合には、上述のようにドレイン電圧1Vでオフ電流は1zA以下とできる。例えば、容量素子の容量を1fFとすれば、データは1日以上保持できる。
【0065】
一方、データの保持時間としてそれほど長時間が必要とされない場合もある。例えば、データを1秒だけ保持すればよいという場合であれば、容量素子の容量を1fFとすれば、オフ電流は0.1fA以下であればよい。
【0066】
例えば、アモルファスシリコン、ポリシリコン、微結晶シリコン等では、高純度化された酸化物半導体のように1zA以下の低いオフ電流は実現できないが、長チャネルかつ狭チャネルとすることや、特許文献1に記載されているように、半導体層を薄くすることによりオフ電流を0.1fA以下とできる。
【0067】
なお、オフ電流は、半導体の移動度に比例するので、移動度が低いほどオフ電流が低くなる。したがって、ポリシリコンよりもアモルファスシリコンのほうがオフ電流は低くなる。一方、移動度が低い半導体を用いたトランジスタはスイッチング特性が劣るが、このことは本発明の一態様ではほとんど問題とならない。このことについては後述する。
【発明の効果】
【0068】
上記構成を有する記憶素子を、信号処理回路が有するレジスタやキャッシュメモリなどの記憶装置に用いることで、電源停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐことができる。よって、信号処理回路全体、もしくは信号処理回路を構成する一または複数の論理回路において、短い時間でも電源停止をおこなうことができるため、消費電力を抑えることができる信号処理回路、消費電力を抑えることができる当該信号処理回路の駆動方法を提供することができる。
【0069】
なお、電源の停止と回復という操作は、論理回路のクロックに比較すると極めて遅い動きでもよい。すなわち、スイッチングに要する時間時間は100μ秒あれば十分であり、場合によっては、1m秒あるいはそれ以上でもよい。なぜなら、各記憶素子のフリップフロップ回路に保持されていたデータを容量素子に移す過程あるいはその逆の過程は全ての記憶素子で同時におこなうことができるからである。そのような低速動作であれば、長チャネルかつ狭チャネルなトランジスタでも十分である。また、半導体の移動度も1cm/Vs以上であればよい。
【0070】
一般に、トランジスタのオン電流Ionとオフ電流Ioff、スイッチングに要する時間τonとデータを保持する時間τoffとの間には、τoff/τon〜(トランジスタのオン電流)/(トランジスタのオフ電流)/100、という関係がある。したがって、オン電流Ionがオフ電流Ioffの10倍であれば、τoffはτonの10程度である。
【0071】
例えば、容量用スイッチング素子が容量素子に電荷を取り込むのに要する時間として1μ秒必要であれば、その容量素子と容量用スイッチング素子は1秒間データを保持できる。もし、データを保持する期間が1秒を超える場合には、保持したデータを位相反転素子に戻して、増幅し、その後、再び、容量素子に取り込む操作(リフレッシュ)を1秒ごとに繰り返せばよい。
【0072】
また、容量素子に関しても、容量が大きい方が、データをフリップフロップ回路に戻す際のエラーが発生しにくい。一方で、容量が大きいと、容量素子と容量用スイッチング素子とで構成される回路の応答速度が低下する。しかしながら、上述のように、電源の停止と回復という操作は、論理回路のクロック等に比較すると極めて遅い動きでもよいので、容量が1pF以下であれば何ら妨げとなるものではない。
【0073】
なお、DRAMに見られるように、一般に容量素子の容量を大きくする場合には、容量素子を形成することが困難となる。しかしながら、本発明の一態様では、面積が50F以上の位相反転素子の上に容量素子を形成すればよいので、面積が8F以下の領域に容量素子を形成するDRAMに比べると十分に容易であり、特殊な作製方法が要求されないプレーナ型の容量素子でもよい。
【0074】
さらに、容量用スイッチング素子として用いるトランジスタを長チャネルかつ狭チャネルとすることでトランジスタのオフ電流を小さくでき、また、配線の寄生容量の影響も小さいので、容量素子の容量はDRAMで使用されるもの(約30fF)より十分に小さくてもよい。
【0075】
なお、位相反転素子から容量素子に電荷を移す際に、電荷の移動が急激に起こると、位相反転素子の安定性が損なわれ、位相反転素子に保持されていたデータが破壊されてしまうことがある。この際には、容量素子には誤ったデータが保持されることとなる。
【0076】
このような問題点を避けるためには、容量用スイッチング素子のオン電流をある程度低くするとよい。上記のように長チャネルかつ狭チャネルなトランジスタ、あるいは、移動度が10cm/Vs以下のトランジスタはこの目的に適している。
【0077】
本発明の一態様によって、データを容量素子に退避させて保持でき、記憶素子の電源を停止できるので、記憶素子内の位相反転素子に用いるトランジスタのしきい値を低くしてもよい。すなわち、高速かつ省電力な記憶素子となる。
【0078】
なお、上記構成においては、位相反転素子に容量素子の一方の電極が接続し、他方の電極に容量用スイッチング素子が接続するという構成を有する。この構成では、容量用スイッチング素子をオンとしたときのゲート電位が、位相反転素子には及ばないという特徴がある。そのため、容量用スイッチング素子が長チャネルで、そのため、そのゲート容量が容量素子よりも大きくても、位相反転素子のノードには、容量用スイッチング素子のゲートの電位の変動が及ばない。例えば、容量用スイッチング素子のゲート容量を容量素子の容量の5倍以上とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】記憶素子の回路図。
【図2】従来の記憶素子の回路図。
【図3】記憶素子の回路図。
【図4】記憶素子の動作の例。
【図5】記憶素子の動作の例。
【図6】記憶素子の動作の例。
【図7】記憶素子の構造を説明する上面図。
【図8】記憶素子の構造を説明する断面図。
【図9】記憶素子を用いた信号処理回路およびCPUのブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。したがって、本発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0081】
また、本明細書において接続とは電気的な接続を意味しており、電流、電圧または電位が、供給可能、或いは伝送可能な状態に相当する。従って、接続している状態とは、直接接続している状態を必ずしも指すわけではなく、電流、電圧または電位が、供給可能、或いは伝送可能であるように、配線、抵抗などの回路素子を介して間接的に接続している状態も、その範疇に含む。
【0082】
また、回路図上は独立している構成要素どうしが接続しているように図示されている場合であっても、実際には、例えば配線の一部が電極としても機能する場合など、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っているだけの場合もある。本明細書において接続とは、このような、一の導電膜が、複数の構成要素の機能を併せ持っている場合も、その範疇に含める。
【0083】
また、トランジスタが有するソース電極とドレイン電極は、トランジスタの極性および各電極に与えられる電位の高低によって、その呼び方が入れ替わる。一般的に、Nチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられる電極がソース電極と呼ばれ、高い電位が与えられる電極がドレイン電極と呼ばれる。また、Pチャネル型トランジスタでは、低い電位が与えられる電極がドレイン電極と呼ばれ、高い電位が与えられる電極がソース電極と呼ばれる。
【0084】
本明細書では、便宜上、ソース電極とドレイン電極とが固定されているものと仮定して、トランジスタの接続関係を説明する場合があるが、実際には上記電位の関係に従ってソース電極とドレイン電極の呼び方が入れ替わる。
【0085】
なお、本明細書において、トランジスタが直列に接続されている状態とは、第1のトランジスタのソース電極とドレイン電極のいずれか一方のみが、第2のトランジスタのソース電極とドレイン電極のいずれか一方のみに接続されている状態を意味する。また、トランジスタが並列に接続されている状態とは、第1のトランジスタのソース電極とドレイン電極のいずれか一方が、第2のトランジスタのソース電極とドレイン電極のいずれか一方に接続され、第1のトランジスタのソース電極とドレイン電極の他方が第2のトランジスタのソース電極とドレイン電極の他方に接続されている状態を意味する。
【0086】
なお、マイクロプロセッサ、画像処理回路、DSP(Digital Signal Processor)、マイクロコントローラを含むLSI(Large Scale Integrated Circuit)などの集積回路が、本発明の信号処理回路の範疇に含まれるがこれらに限定されない。
【0087】
(実施の形態1)
本発明の一態様に係る記憶装置は、1ビットのデータを記憶することができる記憶素子を、1つまたは複数有する。図1(A)に、本発明の記憶装置が有する記憶素子の回路図の一例を示す。図1(A)に示す記憶素子100は、入力された信号の位相を反転させて出力する第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102と、スイッチング素子103と、スイッチング素子104と、容量素子105と、容量用スイッチング素子106とを、少なくとも有する。
【0088】
記憶素子100に入力されたデータを含む信号INは、スイッチング素子103を介して第1の位相反転素子101の入力端子に与えられる。第1の位相反転素子101の出力端子は、第2の位相反転素子102の入力端子に接続されている。第2の位相反転素子102の出力端子は、スイッチング素子104を介して、第1の位相反転素子101の入力端子に接続されている。
【0089】
第1の位相反転素子101の出力端子または第2の位相反転素子102の入力端子の電位が、信号OUTとして後段の記憶素子、或いは他の回路に出力される。ここで、第1の位相反転素子101の入力端子のノードを第1のノードN1、第1の位相反転素子101の出力端子のノードを第2のノードN2とする。
【0090】
なお、図1(A)では、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102としてインバータを用いる例を示しているが、第1の位相反転素子101または第2の位相反転素子102として、インバータの他に、クロックドインバータを用いることもできる。
【0091】
容量素子105は、記憶素子100に入力された信号INのデータを必要に応じて記憶できるように、記憶素子100の入力端子、すなわち信号INの電位が与えられる第1のノードN1に接続されている。具体的に、容量素子105は、一対の電極間に誘電体を有するコンデンサであり、その一方の電極は第1のノードN1に接続され、他方の電極は容量用スイッチング素子106の一方の電極に接続される。容量素子105と容量用スイッチング素子106の接続するノードを第3のノードN3とする。
【0092】
容量用スイッチング素子106の他方の電極は、電位VCCが与えられているノードに接続されている。
【0093】
また、容量用スイッチング素子106には、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いている。
【0094】
なお、記憶素子100は、必要に応じて、ダイオード、抵抗素子、インダクタ、キャパシタなどその他の回路素子を、さらに有していてもよい。
【0095】
次いで、図1(A)で示した記憶素子の、より具体的な回路図の一例を、図1(B)に示す。図1(B)に示す記憶素子100は、第1の位相反転素子101と、第2の位相反転素子102と、スイッチング素子103と、スイッチング素子104と、容量素子105と、容量用スイッチング素子106とを有しており、これら回路素子の接続構成は図1(A)と同じである。
【0096】
そして、図1(B)において第1の位相反転素子101は、ゲート電極が互いに接続されたPチャネル型トランジスタ107と、Nチャネル型トランジスタ108とがVDDとVSS間において、直列に接続された構成を有する。具体的には、Pチャネル型トランジスタ107のソース電極がVSSに接続され、Nチャネル型トランジスタ108のソース電極がVDDに接続される。また、Pチャネル型トランジスタ107のドレイン電極と、Nチャネル型トランジスタ108のドレイン電極とが接続されており、上記2つのドレイン電極の電位は、第1の位相反転素子101の出力端子の電位とみなすことができる。また、Pチャネル型トランジスタ107のゲート電極、およびNチャネル型トランジスタ108のゲート電極の電位は、第1の位相反転素子101の入力端子の電位とみなすことができる。
【0097】
また、図1(B)において第2の位相反転素子102は、ゲート電極が互いに接続されたPチャネル型トランジスタ109と、Nチャネル型トランジスタ110とがVDDとVSSの間において、直列に接続された構成を有する。具体的には、Pチャネル型トランジスタ109のソース電極がVDDに接続され、Nチャネル型トランジスタ110のソース電極がVSSに接続される。また、Pチャネル型トランジスタ109のドレイン電極と、Nチャネル型トランジスタ110のドレイン電極とが接続されており、上記2つのドレイン電極の電位は、第2の位相反転素子102の出力端子の電位とみなすことができる。また、Pチャネル型トランジスタ109のゲート電極、およびNチャネル型トランジスタ110のゲート電極の電位は、第2の位相反転素子102の入力端子の電位とみなすことができる。
【0098】
また、図1(B)では、スイッチング素子103として1つのトランジスタを用いている場合を例示しており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig1によりスイッチングが制御される。また、スイッチング素子104として1つのトランジスタを用いている場合を例示しており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig2によりスイッチングが制御される。
【0099】
なお、図1(B)では、スイッチング素子103と、スイッチング素子104が、それぞれトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。本発明の一態様では、スイッチング素子103またはスイッチング素子104が、トランジスタを複数有していてもよい。
【0100】
スイッチング素子103またはスイッチング素子104が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0101】
また、複数のトランジスタを並列に接続する場合、それらの極性を異なるものとしても良く、例えば、Nチャネル型トランジスタとPチャネル型トランジスタを並列に接続した、いわゆるトランスファーゲート構造としてもよい。
【0102】
また、図1(B)では、容量用スイッチング素子106として、酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いており、該トランジスタは、そのゲート電極に与えられる信号Sig3によりスイッチングが制御される。容量用スイッチング素子106に用いるトランジスタは、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に有し、また、そのチャネル長は、最小加工線幅の10倍以上、好ましくは20倍以上、より好ましくは50倍以上、あるいは1μm以上であるため、そのオフ電流は、上述したとおり著しく低い。
【0103】
図1(B)では、容量用スイッチング素子106がトランジスタを一つだけ有する構成を示しているが、本発明はこの構成に限定されない。本発明の一態様では、容量用スイッチング素子106が、トランジスタを複数有していてもよい。容量用スイッチング素子106が、スイッチング素子として機能するトランジスタを複数有している場合、上記複数のトランジスタは並列に接続されていてもよいし、直列に接続されていてもよいし、直列と並列が組み合わされて接続されていてもよい。
【0104】
また、本実施の形態では、少なくとも、容量用スイッチング素子106においてスイッチング素子として用いられるトランジスタが、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に有していればよい。
【0105】
第1の位相反転素子101、第2の位相反転素子102、スイッチング素子103、またはスイッチング素子104に用いられるトランジスタは、酸化物半導体以外の、非晶質、微結晶、多結晶、または単結晶の、シリコン、砒化ガリウム、リン化ガリウム、リン化インジウム、またはゲルマニウムなどの半導体を用いることができる。また、これらのトランジスタは、薄膜の半導体膜を用いて作製されてもよいし、バルク(半導体ウェハ)を用いて作製されてもよい。
【0106】
図7を用いて本実施の形態の記憶素子の回路配置例を説明する。図7(A)には通常のレジスタの1つの記憶素子300のレイアウトを示す。記憶素子300は図1の記憶素子100に相当する。記憶素子300の主要部分であるインバータ等は公知の半導体技術を用いて形成すればよい。すなわち、半導体ウェハ上に素子分離のための絶縁物(素子分離領域)、n型領域およびp型領域を形成し、その上にゲート層である第1層配線と、さらにその上に第2層配線を形成する。
【0107】
第1層配線の一部は、信号Sig1を供給するためのSig1配線302であり、また、一部は信号Sig2を供給するためのSig2配線303である。さらに、第2層配線の一部はノードVDDに接続するVDD配線301であり、また、一部は信号INを入力するためのIN配線304である。図7(A)には上方に接続するためのコンタクトホールの位置も示す。なお、単結晶半導体ウェハを用いた回路では、ノードVSSは半導体ウェハに接続するとよい。
【0108】
また、その上層には、図7(B)に示すように、第3層配線が設けられ、その一部はコンタクトホールを介して第2層配線の一部と接続し、信号OUTを出力するためのOUT配線305となる。また、第3層配線の一部はスイッチング素子である酸化物半導体を用いたトランジスタのゲート配線306および第1容量電極307となる。
【0109】
ゲート配線306は、その後形成する酸化物半導体領域308の80%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上と重なるように形成するとよい。ゲート配線306の一部は、図1の容量用スイッチング素子106のゲート電極となる。なお、ゲート配線306には信号Sig3が供給される。
【0110】
第1容量電極307は、コンタクトホールを介して第2層配線の一部(インバータのいずれかの入力あるいは出力)と接続する。また、第1容量電極307はその後、図1の容量素子105に相当する素子の電極の一部となる。
【0111】
第3層配線の上には、酸化物半導体層(OS層)を形成する。図7(C)に示すように酸化物半導体層の一部は、少なくとも1つの凹部を有し、例えば、U字型の形状の酸化物半導体領域308とする。その他にも、J字型、L字型、V字型、あるいはC字型の形状の酸化物半導体領域308としてもよい。また、2つ以上の凹部を有する形状(例えば、M字型、N字型、S字型、W字型、Z字型その他)、あるいはその他の折り曲がった形状であってもよい。
【0112】
より一般的に定義すると、1つの記憶素子の典型的な長さを記憶素子の占有面積の平方根と定義するとき、酸化物半導体領域308の一端から他端までの長さが上記典型的な長さ以上、好ましくは典型的な長さの2倍以上、より好ましくは5倍以上であるとよい。あるいは、酸化物半導体領域308の外周の長さが典型的な長さの2倍以上、好ましくは4倍以上、より好ましくは10倍以上であるとよい。あるいは、酸化物半導体領域308の面積をその周囲の長さで除した数値が典型的な長さの0.1倍以下であるとよい。
【0113】
このような形状とすることで、酸化物半導体領域308の一端から他端までの長さを記憶素子300の長辺よりも長くできる。例えば、最小加工線幅をFとするとき、一端から他端までの長さを10F以上、好ましくは20F以上、より好ましくは50F以上とし、このような形状の酸化物半導体領域308を用いて形成されるトランジスタ(図1の容量用スイッチング素子106に相当する)のチャネル長は10F以上、好ましくは20F以上、より好ましくは50F以上とできる。図7(C)の場合は、酸化物半導体領域308の一端から他端までの長さは約22Fである。
【0114】
酸化物半導体層の上には、図7(D)に示すように第4層配線が設けられる。第4層配線の一部は、ソース配線309、第2容量電極310となる。ソース配線309は酸化物半導体領域308の一端と接し、酸化物半導体領域で形成されるトランジスタのソース電極となる。
【0115】
第2容量電極310は第1容量電極307の一部と重なって図1の容量素子105の一部となる。図7(D)の場合、容量素子の電極面積(2つの電極が重なっている部分の面積)は18Fである。また、第2容量電極310は酸化物半導体領域308の他端と接し、酸化物半導体領域で形成されるトランジスタのドレイン電極となる。
【0116】
図8には、図7の一点鎖線X−Yに沿った記憶素子300の断面構造を模式的に示す。なお、ハッチングが図7と同じ場合には、図8においても同じものを指し示すものとする。
【0117】
図8(A)は、図7(B)の段階での断面構造を示す。半導体ウェハ表面に素子分離領域311、n型領域、p型領域さらには、第1層配線、第2層配線で回路が形成される。n型領域、p型領域、第1層配線と第2層配線との間には、層間絶縁物312が設けられ、それらの間に電気的な接続が必要な場合にはコンタクトプラグ313が設けられる。さらに上層には、第3層配線によってゲート配線306と第1容量電極307が埋め込み絶縁物314に埋め込まれた状態で設けられる。
【0118】
図8(B)は、図7(D)の段階での断面構造を示す。図8(A)で説明した構造物の上に、さらにゲート絶縁物315と酸化物半導体層(酸化物半導体領域308等)および第4層配線(ソース配線309や第2容量電極310)を形成する。ここで、酸化物半導体層の厚さは1nm乃至30nm、好ましくは1nm乃至10nm、ゲート絶縁物315の厚さは2nm乃至30nm、好ましくは5nm乃至10nmとするとよい。
【0119】
また、特許文献3のように、酸化物半導体層に接して適切な1つあるいは複数の仕事関数が大きな材料が接するように構成してもよい。このようにすると、酸化物半導体層を空乏化することができ、オフ抵抗を高める上で効果がある。
【0120】
本実施の形態においては酸化物半導体層の品質が重視されるので、高純度化された酸化物半導体(膜)を用いるとよい。そのような酸化物半導体(膜)の作製方法の詳細は実施の形態4で説明する。
【0121】
次いで、図1(A)に示す記憶素子の動作の一例について説明する。なお、以下の説明以外の方法で記憶素子を動作させることもできる。
【0122】
まず、データの書き込み時において、スイッチング素子103はオン、スイッチング素子104はオフ、容量用スイッチング素子106はオフとする。そして、VDDとVSS間に適切な電源電圧を与える。
【0123】
記憶素子100に与えられる信号INの電位は、スイッチング素子103を介して第1の位相反転素子101の入力端子に与えられるので、第1の位相反転素子101の出力端子は、信号INの電位の位相が反転した電位になる。そして、スイッチング素子104をオンにし、第1の位相反転素子101の入力端子と第2の位相反転素子102の出力端子とを接続することで、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102にデータが書き込まれる。
【0124】
次いで、入力されたデータの保持を、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102によっておこなう場合、スイッチング素子104をオン、容量用スイッチング素子106をオフの状態にしたままで、スイッチング素子103をオフにする。スイッチング素子103をオフにすることで、入力されたデータは、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102によって保持される。このとき、VDDとVSS間に電源電圧が印加されている状態を維持する。
【0125】
そして、第1の位相反転素子101の出力端子の電位には、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102によって保持されているデータが反映されている。よって、上記電位を読み取ることで、データを記憶素子100から読み出すことができる。
【0126】
なお、データの保持時における消費電力を削減するために、入力されたデータの保持を、容量素子105においておこなう場合、まず、スイッチング素子103はオフ、スイッチング素子104はオンとしたまま、容量用スイッチング素子106はオンとする。そして、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102によって保持されているデータの値に見合った量の電荷が容量素子105に蓄積されることで、容量素子105へのデータの書き込みがおこなわれる。
【0127】
容量素子105にデータが記憶された後、容量用スイッチング素子106をオフにすることで、容量素子105に記憶されたデータは保持される。容量用スイッチング素子106をオフにした後は、VDDとVSSとを共に等電位とする。なお、容量素子105にデータが記憶された後は、スイッチング素子104をオフにしてもよい。
【0128】
以上の操作に伴う電位の変動を、図4を用いて説明する。ここでは、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102が活性であるときのノードVDDの電位を+1V、ノードVSSの電位を0Vとする。最初、図4(A)に示されるように、第1のノードN1はデータに応じて、+1Vあるいは0Vである。一方、図には示されないが、第2のノードN2の電位は第1のノードN1とは位相の反転した状態で、0Vあるいは+1Vである。また、容量用スイッチング素子106はオフであるため、第3のノードN3はフローティング状態である。なお、VCCは+1Vとする。
【0129】
次に、図4(B)に示されるように、容量用スイッチング素子106をオンとすると、第3のノードN3の電位は+1Vとなる。このとき、第1のノードN1と第3のノードN3との電位差により、容量素子105の電極間にはそれに応じた電荷が蓄積される。すなわち、データが容量素子105に書き込まれる。
【0130】
次に、図4(C)に示されるように、容量用スイッチング素子106をオフとすると、第3のノードN3の電位は+1Vのままである。
【0131】
次に、図4(D)に示されるように、ノードVDDとノードVSSの電位をともに0Vとすると、第1のノードN1も0Vとなる。また、VCCも0Vとする。すると、第3のノードN3の電位は、書き込まれたデータに応じて0Vあるいは+1Vである。書き込み時の第1のノードN1の電位が+1Vであれば、この段階で第3のノードN3の電位は0Vとなり、書き込み時の第1のノードN1の電位が0Vであれば、この段階で第3のノードの電位は+1Vのままである。
【0132】
入力されたデータの保持を容量素子105においておこなう場合は、VDDとVSS間に電位差を印加する必要がないので、第1の位相反転素子101が有するPチャネル型トランジスタ107およびNチャネル型トランジスタ108、或いは、第2の位相反転素子102が有するPチャネル型トランジスタ109およびNチャネル型トランジスタ110を介してVDDとVSSの間に流れるオフ電流を限りなく0にすることができる。したがって、データの保持時における記憶素子のオフ電流に起因する消費電力を大幅に削減することができ、記憶装置、延いては記憶装置を用いた信号処理回路全体の、消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0133】
また、容量用スイッチング素子106に用いられているトランジスタは、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に用いているので、そのオフ電流密度を、100zA/μm以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下にすることができる。
【0134】
長チャネルかつ狭チャネルのトランジスタであれば、オフ電流は1zA以下となる。その結果、上記トランジスタを用いた容量用スイッチング素子106がオフである時、容量素子105に蓄積された電荷は殆ど放電しないため、データは保持される。
【0135】
次に、容量素子105に記憶されているデータを読み出す場合について、図5を用いて説明する。まず、スイッチング素子103をオフとする。また、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102も不活性な状態とする。例えば、VDDとVSSに共に、+0.5Vの電位を与えておくと良い。
【0136】
そして、第1のノードN1と第2のノードN2も電位を+0.5Vにする。このときスイッチング素子104はオンでもオフでも良い。第1のノードN1の電位が+0.5Vであるので、第3のノードN3の電位は書き込まれたデータに応じて+0.5Vあるいは+1.5Vのいずれかとなる。また、VCCは+1Vとする(図5(A)参照)。
【0137】
次に、容量用スイッチング素子106をオンとすると、第3のノードN3の電位は+1Vとなる。このとき、容量素子105の一方の電極(容量用スイッチング素子106側の電極)の電位が変動することにより、他方の電極の電位も変動する。例えば、当初、第3のノードN3の電位が+0.5Vであったのであれば、容量用スイッチング素子106をオンとすることにより、第3のノードN3の電位は上昇するので、容量素子105の他方の電極(すなわち、第1のノードN1)の電位は上昇する方向となる。逆に、当初、第3のノードN3の電位が+1.5Vであったのであれば、第3のノードN3の電位は下降するので、容量素子105の他方の電極の電位は下降する方向となる。
【0138】
電位の上昇や下降の程度は、容量素子105の容量と、第1のノードN1の寄生容量を含む容量111との比率で決定される。ここでは、寄生容量を含む容量111が容量素子105の容量の4倍とする。すると、第1のノードN1の電位は+0.6Vか+0.4Vとなる。すなわち、書き込み時の第1のノードN1の電位が+1Vであれば、+0.6Vとなり、書き込み時の第1のノードN1の電位が0Vであれば、+0.4Vとなる(図5(B)参照)。
【0139】
このとき、容量用スイッチング素子106をオンとするため、容量用スイッチング素子106のゲート容量が回路に追加されるが、容量素子105が間に存在するため、その容量がいかに大きくても、直接、第1のノードN1の電位が容量用スイッチング素子106のゲート電位により変動することはない。
【0140】
すなわち、容量用スイッチング素子106のゲート容量や、ゲートの電位の影響を受けずに第1のノードN1の電位が決定される。そのため、容量素子105の容量は容量用スイッチング素子106のゲート容量よりも小さくても良い。
【0141】
その後、VDDに+1Vを与え、VSSに0Vを与えることで、VDDとVSS間に電源電圧を印加する。この過程では、スイッチング素子104をオンとすることが好ましい。この結果、第1のノードN1と第2のノードN2の電位差が増幅される。すなわち、図5(B)で第1のノードN1の電位が+0.6Vであれば、この過程で第1のノードN1の電位は+1Vとなり、第2のノードN2の電位は0Vとなる。また、図5(B)で第1のノードN1の電位が+0.4Vであれば、この過程で第1のノードN1の電位は0Vとなり、第2のノードN2の電位は+1Vとなる。すなわち、データを書き込んだときの状態が復元される(図5(C)参照)。
【0142】
なお、容量素子105の容量が、寄生容量を含む容量111の容量と同程度あるいはそれ以上であれば、より簡単にデータを復元できる。例えば、容量素子105の容量が、寄生容量を含む容量111の容量と同じであれば、図5(B)の段階で、第1のノードの電位は+0.75Vあるいは+0.25Vとなる。そのため、例えば、スイッチング素子104をオフとしたまま第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102のVDDとVSS間に電源電圧を印加することで、誤動作を起こすことなく、信号を増幅し、データを復元することもできる。
【0143】
以上では、容量用スイッチング素子106として、高純度化された酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタを使用する例を示したが、アモルファスシリコン、ポリシリコン、微結晶シリコン等を用いた薄膜トランジスタを用いてもよい。
【0144】
その場合は、オフ電流が、高純度化された酸化物半導体を用いた薄膜トランジスタより大きくなるので、データを保持する時間は短くなる。しかしながら、定期的にデータを第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102に出力し、その後、データを容量素子105に戻す操作を繰り返すこと(リフレッシュ)により、データを保持し続けることができる。
【0145】
なお、この場合のリフレッシュは、DRAMの場合のリフレッシュとは異なり、リフレッシュが必要とされる全ての記憶素子において同時におこなうことができる。そのため、全体の記憶素子がリフレッシュに要する時間はDRAMの場合に比較して極めて短い。もちろん、必要とするブロックの記憶素子ごとに順次、リフレッシュしてもよい。
【0146】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の記憶装置が有する記憶素子の、別の一例について説明する。図1に示される記憶素子100は、容量素子105の一方の電極が第1のノードN1に接続しているが、その他の部分に接続していても良い。例えば、図3(A)に示す記憶素子100aのように、容量素子105の一方の電極が第2のノードN2に接続していてもよいし、図3(B)に示す記憶素子100bのように、容量素子105の一方の電極がスイッチング素子104と第2の位相反転素子102の間に接続していても良い。すなわち、第1の位相反転素子101と第2の位相反転素子102の入力あるいは出力のいずれかと接続していれば良い。
【0147】
そのような構造におけるデータの書き込みや読み出しも実施の形態1で説明した方法と同様におこなえばよい。いずれの構造においても、容量用スイッチング素子106がオンとなることにより、ゲート容量が発生するが、そのことによって、第3のノードN3の電位が変動することはない。そのため、データの読み出しに際して、誤動作する確率を低減できる。
【0148】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の記憶装置が有する記憶素子の、別の一例について説明する。図3(C)に、本実施の形態の記憶素子の回路図を、一例として示す。
【0149】
図3(C)に示す記憶素子100cは、入力された信号の位相を反転させて出力する第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102と、スイッチング素子103と、スイッチング素子104と、第1の容量素子105aと、第1の容量用スイッチング素子106aと、第2の容量素子105bと、第2の容量用スイッチング素子106bとを、少なくとも有する。
【0150】
記憶素子100cに入力されたデータを含む信号INは、スイッチング素子103を介して第1の位相反転素子101の入力端子に与えられる。第1の位相反転素子101の出力端子は、第2の位相反転素子102の入力端子に接続されている。第2の位相反転素子102の出力端子は、スイッチング素子104を介して、第1の位相反転素子101の入力端子に接続されている。第1の位相反転素子101の出力端子または第2の位相反転素子102の入力端子の電位は、信号OUTとして後段の記憶素子、或いは他の回路に出力される。
【0151】
第1の容量素子105aの一方の電極は、記憶素子100cに入力された信号INのデータを必要に応じて記憶できるように記憶素子100cの入力端子、すなわち信号INの電位が与えられる第1のノードN1に接続されている。また、第1の容量素子105aの他方の電極は、第1の容量用スイッチング素子106aの一方の電極に接続される。第1の容量用スイッチング素子106aの他方の電極は電位VCCが与えられているノードに接続されている。
【0152】
第2の容量素子105bの一方の電極は、記憶素子100cに入力された信号INのデータを必要に応じて記憶できるように記憶素子100cの出力端子、すなわち信号OUTの電位が与えられる第2のノードN2に接続されている。また、第2の容量素子105bの他方の電極は、第2の容量用スイッチング素子106bの一方の電極にも接続される。第2の容量用スイッチング素子106bの他方の電極は電位VCCが与えられているノードに接続されている。第2の容量素子105bと第2の容量用スイッチング素子106bの接続するノードを第4のノードN4とする。
【0153】
なお、図3(C)では、第1の位相反転素子101、第2の位相反転素子102としてインバータを用いる例を示しているが、第1の位相反転素子101または第2の位相反転素子102として、インバータの他に、クロックドインバータを用いることもできる。また、第1の容量素子105aと第2の容量素子105bが、第1の位相反転素子101、第2の位相反転素子102と接続するノードは上記に限られず、互いに位相が逆である2つのノードであれば良い。
【0154】
また、第1の容量用スイッチング素子106aおよび第2の容量用スイッチング素子106bは、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に有するトランジスタを用いている。第1の容量用スイッチング素子106aおよび第2の容量用スイッチング素子106bは、実施の形態1の容量用スイッチング素子106と同様に、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102およびの上方に酸化物半導体を用いて形成し、最小加工線幅をFとするとき、そのチャネル長を10F以上、好ましくは20F以上、より好ましくは50F以上、あるいは1μmとするとよい。
【0155】
なお、記憶素子100cは、必要に応じて、ダイオード、抵抗素子、インダクタ、キャパシタなどその他の回路素子を、さらに有していてもよい。
【0156】
次いで、図3(C)に示す記憶素子の動作の一例について説明する。なお、以下の説明以外の方法で記憶素子を動作させることもできる。以下では、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102が活性であるときのノードVDDの電位を+1V、ノードVSSの電位を0Vとする。
【0157】
まず、データの書き込み時において、スイッチング素子103はオン、スイッチング素子104はオフ、第1の容量用スイッチング素子106aはオフ、第2の容量用スイッチング素子106bはオフとする。そして、VDDとVSS間に電源電圧を印加する。記憶素子100cに与えられる信号INの電位は、スイッチング素子103を介して第1の位相反転素子101の入力端子に与えられるので、第1の位相反転素子101の出力端子は、信号INの電位の位相が反転した電位になる。そして、スイッチング素子104をオンにし、第1の位相反転素子101の入力端子と第2の位相反転素子102の出力端子とを接続することで、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102にデータが書き込まれる。
【0158】
次いで、入力されたデータの保持を、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102によっておこなう場合、スイッチング素子104をオン、第1の容量用スイッチング素子106aをオフ、第2の容量用スイッチング素子106bをオフの状態にしたままで、スイッチング素子103をオフにする。スイッチング素子103をオフにすることで、入力されたデータは、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102によって保持される。このとき、VDDとVSS間に電源電圧が印加されている状態を維持する。
【0159】
そして、第1の位相反転素子101の出力端子の電位には、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102によって保持されているデータが反映されている。よって、上記電位を読み取ることで、データを記憶素子100cから読み出すことができる。
【0160】
なお、データの保持時における消費電力を削減するために、入力されたデータの保持を、第1の容量素子105a、第2の容量素子105bにおいておこなう場合は、スイッチング素子103をオフ、スイッチング素子104をオン、第1の容量用スイッチング素子106aをオン、第2の容量用スイッチング素子106bをオンとする。
【0161】
そして、第1の容量用スイッチング素子106a及び第2の容量用スイッチング素子106bを介して、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102に保持されているデータの値に見合った量の電荷が、第1の容量素子105a、第2の容量素子105bに蓄積されることで、第1の容量素子105a、第2の容量素子105bへのデータの書き込みがおこなわれる。詳細は実施の形態1あるいは図4を参照すればよい。
【0162】
なお、第1の容量素子105aが有する一対の電極間の電圧と、第2の容量素子105bが有する一対の電極間の電圧は、その極性が逆になる。
【0163】
第1の容量素子105aにデータが記憶された後、第1の容量用スイッチング素子106aをオフにすることで、第1の容量素子105aに記憶されたデータは保持される。また、第2の容量素子105bにデータが記憶された後、第2の容量用スイッチング素子106bをオフにすることで、第2の容量素子105bに記憶されたデータは保持される。第1の容量用スイッチング素子106a、第2の容量用スイッチング素子106bをオフにした後は、VDDとVSSに、例えば0Vを与えて等電位とする。
【0164】
このように、入力されたデータの保持を第1の容量素子105aおよび第2の容量素子105bにおいておこなう場合は、VDDとVSS間に電源電圧を印加する必要がないので、第1の位相反転素子101或いは第2の位相反転素子102のVDDとVSS間に流れるオフ電流を、限りなく0にすることができる。したがって、保持時における記憶素子のオフ電流に起因する消費電力を大幅に削減することができ、記憶装置、延いては記憶装置を用いた信号処理回路全体の、消費電力を低く抑えることが可能となる。
【0165】
また、第1の容量用スイッチング素子106aおよび第2の容量用スイッチング素子106bに用いられているトランジスタは、高純度化された酸化物半導体をチャネル形成領域に用いているので、そのオフ電流密度を、100zA/μm以下、好ましくは10zA/μm以下、より好ましくは1zA/μm以下にすることができる。
【0166】
長チャネルかつ狭チャネルのトランジスタであれば、オフ電流は1zA以下となる。その結果、上記トランジスタを用いた第1の容量用スイッチング素子106aがオフである時、第1の容量素子105aに蓄積された電荷は殆ど放電しないため、データは保持される。また、上記トランジスタを用いた第2の容量用スイッチング素子106bがオフである時、第2の容量素子105bに蓄積された電荷は殆ど放電しないため、データは保持される。
【0167】
次に、第1の容量素子105aおよび第2の容量素子105bに記憶されているデータを読み出す場合について、図6を用いて説明する。まず、スイッチング素子103をオフとする。また、第1の位相反転素子101および第2の位相反転素子102も不活性な状態とする。例えば、VDDとVSSに共に0Vの電位を与えておくと良い。
【0168】
そして、第1のノードN1と第2のノードN2も電位を0Vにする。このときスイッチング素子104はオンでもオフでも良い。第1のノードN1の電位が0Vであるので、第3のノードN3の電位は書き込まれたデータに応じて0Vあるいは+1Vのいずれかとなる。また、第4のノードN4の電位は書き込まれたデータに応じて、第3のノードとは逆の位相となり、0Vあるいは+1Vのいずれかとなる。VCCは+1Vとする(図6(A)参照)。
【0169】
次に、第1の容量用スイッチング素子106aをオンとすると、第3のノードN3の電位は+1Vとなる。このとき、第1の容量素子105aの一方の電極の電位が変動することにより、他方の電極の電位も変動する。例えば、当初、第3のノードN3の電位が0Vであったのであれば、第1の容量用スイッチング素子106aをオンとすることにより、第3のノードN3の電位は上昇するので、第1の容量素子105aの他方の電極(すなわち、第1のノードN1)の電位は上昇する方向となる。逆に、当初、第3のノードN3の電位が+1Vであったのであれば、第3のノードN3の電位は変わらず、第1の容量素子105aの他方の電極の電位も変わらない。
【0170】
第2の容量用スイッチング素子106bをオンとすることで、第2の容量素子105bにおいても、上記と全く同じことが起こり、結果として、当初、第4のノードN4の電位が+1Vであったならば、第2のノードN2の電位は変わらず、第4のノードN4の電位が0Vであったならば、第2のノードN2の電位は上昇する方向となる。
【0171】
電位の上昇の程度は、実施の形態1で説明したように、第1の容量素子105aの容量と、第1のノードN1の寄生容量を含む容量、および第2の容量素子105bの容量と、第2のノードN2の寄生容量を含む容量との比率で決定される。ここでは、第1のノードN1の寄生容量を含む容量が第1の容量素子105aの容量の4倍であり、第2のノードN2の寄生容量を含む容量が第2の容量素子105bの容量の4倍であるとする。
【0172】
すると、第1のノードN1の電位は+0.1Vか0V、第2のノードN2の電位は0Vか+0.1Vとなる。すなわち、書き込み時の第1のノードN1の電位が+1V(すなわち、書き込み時の第2のノードN2の電位が0V)であれば、第1のノードN1の電位は+0.1V、第2のノードN2の電位は0Vとなり、書き込み時の第1のノードN1の電位が0V(すなわち、書き込み時の第2のノードN2の電位が+1V)であれば、第1のノードN1の電位は0V、第2のノードN2の電位は+0.1Vとなる(図6(B)参照)。
【0173】
このとき、第1の容量用スイッチング素子106aや第2の容量用スイッチング素子106bをオンとするため、第1の容量用スイッチング素子106aや第2の容量用スイッチング素子106bのゲート容量が回路に追加されるが、第1の容量素子105aや第2の容量素子105bが間に存在するため、それらの容量がいかに大きくても、直接、第1のノードN1や第2のノードN2の電位がそれらのゲートの電位によって変動することはない。
【0174】
すなわち、第1の容量用スイッチング素子106aや第2の容量用スイッチング素子106bのゲート容量や、それらのゲートの電位の影響を受けずに第1のノードN1や第2のノードN2の電位が決定される。そのため、第1の容量素子105aや第2の容量素子105bの容量は第1の容量用スイッチング素子106aや第2の容量用スイッチング素子106bのゲート容量よりも小さくても良い。
【0175】
その後、スイッチング素子104がオンとなった状態で、VSSの電位を0Vに保ったまま、VDDの電位を+1Vにまで上昇させる(図6(C)参照)。この結果、第1のノードN1と第2のノードN2の電位差が増幅される。すなわち、図6(B)で第1のノードN1の電位が+0.1V、第2のノードN2の電位が0Vであれば、この過程で第1のノードN1の電位は+1Vとなり、第2のノードN2の電位は0Vとなる。また、図6(B)で第1のノードN1の電位が0V、第2のノードN2の電位が+0.1Vであれば、この過程で第1のノードN1の電位は0Vとなり、第2のノードN2の電位は+1Vとなる。すなわち、データを書き込んだときの状態が復元される。
【0176】
本実施の形態では、実施の形態1で必要とされたような中間電位(+0.5V)を用いずともデータを復元できる。本実施の形態で開示された事項は、他の実施の形態で開示された事項と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0177】
(実施の形態4)
本実施の形態では、酸化物半導体膜の形成方法について、図8(B)を参照して説明する。最初に、ゲート絶縁物315上に、必要な厚さの酸化物半導体膜を形成する。酸化物半導体膜は、希ガス(代表的にはアルゴン)雰囲気下、酸素雰囲気下、又は希ガス(例えばアルゴン)および酸素混合雰囲気下においてスパッタ法により形成することができる。酸化物半導体膜には、上述したような酸化物半導体を用いることができる。
【0178】
なお、酸化物半導体膜をスパッタ法により成膜する前に、アルゴンガスを導入してプラズマを発生させる逆スパッタをおこない、埋め込み絶縁物314の表面に付着している塵埃を除去することが好ましい。逆スパッタとは、ターゲット側に電圧を印加せずに、アルゴン雰囲気下で基板側にRF電源を用いて電圧を印加して基板近傍にプラズマを形成して表面を改質する方法である。なお、アルゴン雰囲気に代えて窒素、ヘリウムなどを用いてもよい。この工程は、表面の平坦化の効果もある。また、アルゴン雰囲気に酸素、亜酸化窒素などを加えた雰囲気でおこなってもよい。また、アルゴン雰囲気に塩素、四フッ化炭素などを加えた雰囲気でおこなってもよい。
【0179】
本実施の形態では、In(インジウム)、Ga(ガリウム)、およびZn(亜鉛)を含む金属酸化物ターゲットを用いたスパッタ法により得られる膜厚5nmのIn−Ga−Zn系酸化物非単結晶膜を、酸化物半導体膜として用いる。上記ターゲットとして、例えば、各金属の原子の組成比がIn:Ga:Zn=1:1:0.5、In:Ga:Zn=1:1:1、またはIn:Ga:Zn=1:1:2である金属酸化物ターゲットを用いることができる。本実施の形態では、後に加熱処理をおこない意図的に結晶化させるため、結晶化が生じやすい金属酸化物ターゲットを用いることが好ましい。また、In、Ga、およびZnを含む金属酸化物ターゲットの充填率は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9%以下である。充填率の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、形成される酸化物半導体膜中の不純物濃度を低減することができ、電気特性または信頼性の高いトランジスタを得ることができる。
【0180】
減圧状態の処理室内に基板を保持し、処理室内の残留水分を除去しつつ水素および水分が除去されたスパッタガスを導入し、金属酸化物をターゲットとして絶縁表面上に酸化物半導体膜を成膜する。成膜時に、基板温度を100℃以上600℃以下、好ましくは200℃以上400℃以下としてもよい。基板を加熱しながら成膜することにより、成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物濃度を低減し、また、結晶性を高めることができる。さらには、スパッタリングによる損傷が軽減される。
【0181】
処理室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプを用いることが好ましい。例えば、クライオポンプ、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、排気手段としては、ターボポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプを用いて処理室を排気すると、例えば、水素原子、水(HO)など水素原子を含む化合物(好ましくは炭素原子を含む化合物も)等が排気されるため、当該処理室で成膜した酸化物半導体膜に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0182】
成膜条件の一例としては、基板とターゲットの間との距離を170mm、圧力0.4Pa、直流(DC)電源0.5kW、酸素(酸素流量比率100%)雰囲気下とした条件が適用される。なお、パルス直流(DC)電源を用いると、成膜時に発生するパーティクルと呼ばれる塵埃が軽減でき、膜厚分布も均一となるために好ましい。酸化物半導体膜は好ましくは1nm以上30nm以下とする。なお、適用する酸化物半導体材料により適切な厚みは異なり、材料に応じて適宜厚みを選択すればよい。
【0183】
なお、酸化物半導体膜に水素、水酸基および水分がなるべく含まれないようにするために、成膜の前処理として、スパッタリング装置の予備加熱室で基板を予備加熱し、基板に吸着した水素、水分などの不純物を脱離し排気することが好ましい。なお、予備加熱の温度は、100℃以上600℃以下、好ましくは150℃以上300℃以下である。なお、予備加熱室に設ける排気手段はクライオポンプが好ましい。なお、この予備加熱の処理は省略することもできる。
【0184】
次いで、加熱処理をおこない、酸化物半導体膜の表面から結晶を成長させることで、少なくとも一部が結晶化された、或いは単結晶となった、酸化物半導体膜を得る。加熱処理の温度は、450℃以上850℃以下、好ましくは600℃以上700℃以下とする。また、加熱時間は1分以上24時間以下とする。結晶層は、表面から内部に向かって結晶成長し、2nm以上10nm以下の平均厚さを有する板状結晶である。また、表面に形成される結晶層は、その表面にa−b面を有し、表面に対して垂直方向にc軸配向をしている。本実施の形態では、加熱処理によって酸化物半導体膜全体を結晶化させてもよい。
【0185】
なお、加熱処理においては、窒素、酸素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素などが含まれないことが好ましい。または、加熱処理装置に導入する窒素、酸素、またはヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上、好ましくは7N(99.99999%)以上、(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好ましい。また、HOが20ppm以下の乾燥空気雰囲気下で加熱処理をおこなってもよい。本実施の形態では、乾燥空気雰囲気下で700℃、1時間の加熱処理をおこなう。
【0186】
なお、加熱処理装置は電気炉に限られず、抵抗発熱体などの発熱体からの熱伝導または熱輻射によって、被処理物を加熱する装置を備えていてもよい。例えば、GRTA(Gas Rapid Thermal Anneal)装置、LRTA(Lamp Rapid Thermal Anneal)装置等のRTA(Rapid Thermal Anneal)装置を用いることができる。LRTA装置は、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、キセノンアークランプ、カーボンアークランプ、高圧ナトリウムランプ、高圧水銀ランプなどのランプから発する光(電磁波)の輻射により、被処理物を加熱する装置である。GRTA装置は、高温のガスを用いて加熱処理をおこなう装置である。気体には、アルゴンなどの希ガス、または窒素のような、加熱処理によって被処理物と反応しない不活性気体が用いられる。
【0187】
例えば、加熱処理として、650℃〜700℃の高温に加熱した不活性ガス中に基板を移動させて入れ、数分間加熱した後、基板を移動させて高温に加熱した不活性ガス中から出すGRTAをおこなってもよい。GRTAを用いると短時間での高温加熱処理が可能となる。
【0188】
次いで、フォトリソグラフィ法を用いて酸化物半導体膜の形状を実施の形態1で説明した形状に加工することで、酸化物半導体領域308を形成する。なお、このためのレジストマスクをインクジェット法で形成してもよい。レジストマスクをインクジェット法で形成するとフォトマスクを使用しないため、製造コストを低減できる。
【0189】
本実施の形態で開示された事項は、他の実施の形態で開示された事項と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0190】
(実施の形態5)
図9(A)に、上記実施の形態で説明した記憶素子を記憶装置として用いた、本発明の一態様に係る信号処理回路の一例を示す。本発明の一態様に係る信号処理回路は、一または複数の演算装置と、一または複数の記憶装置とを少なくとも有する。具体的に、図9(A)に示す信号処理回路400は、演算回路401、演算回路402、記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405、制御装置406、電源制御回路407を有する。
【0191】
演算回路401、演算回路402は、単純な論理演算をおこなう論理回路をはじめ、加算器、乗算器、さらには各種演算装置などを含む。そして、記憶装置403は、演算回路401における演算処理の際に、データを一時的に保持するレジスタとして機能する。記憶装置404は、演算回路402における演算処理の際に、データを一時的に保持するレジスタとして機能する。
【0192】
また、記憶装置405はメインメモリとして用いることができ、制御装置406が実行するプログラムをデータとして記憶する、或いは演算回路401、演算回路402からのデータを記憶することができる。
【0193】
制御装置406は、信号処理回路400が有する演算回路401、演算回路402、記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405の動作を統括的に制御する回路である。なお、図9(A)では、制御装置406が信号処理回路400の一部である構成を示しているが、制御装置406は信号処理回路400の外部に設けられていてもよい。
【0194】
上記実施の形態で説明した記憶素子を記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405の少なくとも1つに用いることで、記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405への電源電圧の供給の一部もしくは全部を停止しても、データを保持することができる。よって、信号処理回路400全体への電源電圧の供給の一部もしくは全部を停止し、消費電力を抑えることができる。
【0195】
例えば、記憶装置403、記憶装置404、または記憶装置405のいずれか一つまたは複数への電源電圧の供給を停止し、消費電力を抑えることができる。あるいは、例えば、図1に示される記憶素子100のノードVDDおよびノードVSS間の電位を等しくし、Sig3には何らかの人為的な電位(特に接地電位よりも0.5V乃至1.5V低い電位)とすることも消費電力を低減する上では有効である。
【0196】
Sig3を上記の電位とする際には、容量用スイッチング素子106のゲート電極と酸化物半導体領域の間を流れると考えられるが、実際にはその値を測定できないほど微小であるため、電力の消費にはつながらない。これに対し、ノードVDDとノードVSSにに相応の電位差があると、インバータの貫通電流が生じ、相当量の電力を消費することとなる。したがって、ノードVDDおよびノードVSSへの電源の供給を停止することによる消費電力削減の効果は絶大である。
【0197】
なお、記憶装置への電源電圧の供給が停止されるのに合わせて、当該記憶装置とデータのやり取りをおこなう演算回路または制御回路への、電源電圧の供給を停止するようにしてもよい。例えば、演算回路401と記憶装置403において、動作がおこなわれない場合、演算回路401および記憶装置403への電源電圧の供給を停止するようにしてもよい。
【0198】
また、電源制御回路407は、信号処理回路400が有する演算回路401、演算回路402、記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405、制御装置406へ供給する電源電圧の大きさを制御する。電源制御回路は、上記のように、必要に応じて、VDD、VSSおよびSig3の電位を制御し、最も効果的に電力を削減することができる。
【0199】
電源電圧の供給を停止する場合、電源制御回路407において供給の停止をおこなってもよいし、演算回路401、演算回路402、記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405、制御装置406のそれぞれにおいて供給の停止をおこなってもよい。すなわち、電源電圧の供給を停止するためのスイッチング素子は、電源制御回路407に設けられていてもよいし、演算回路401、演算回路402、記憶装置403、記憶装置404、記憶装置405、制御装置406のそれぞれに設けられていてもよい。後者の場合、電源制御回路407は、必ずしも本発明の信号処理回路に設ける必要はない。
【0200】
なお、メインメモリである記憶装置405と、演算回路401、演算回路402、制御装置406の間に、キャッシュメモリとして機能する記憶装置を設けてもよい。キャッシュメモリを設けることで、低速なメインメモリへのアクセスを減らして演算処理などの信号処理を高速化させることができる。キャッシュメモリとして機能する記憶装置にも、上述した記憶素子を用いることで、信号処理回路400の消費電力を抑えることができる。
【0201】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本発明の一態様に係る信号処理回路の一つである、CPUの構成について説明する。
【0202】
図9(B)に、本実施の形態のCPUの構成を示す。図9(B)に示すCPUは、基板410上に、演算回路(ALU:Arithmetic logic unit)411、演算回路コントローラ(ALU Controller)412、命令デコーダー(Instruction Decoder)413、割り込みコントローラ(Interrupt Controller)414、タイミングコントローラ(Timing Controller)415、レジスタ(Register)416、レジスタコントローラ(Register Controller)417、バスインターフェース(Bus I/F)418、書き換え可能なROM419、ROMインターフェース(ROM I/F)420を主に有している。ROM419およびROMインターフェース420は、別チップに設けてもよい。勿論、図9(B)に示すCPUは、その構成を簡略化して示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。
【0203】
バスインターフェース418を介してCPUに入力された命令は、命令デコーダー413に入力され、デコードされた後、演算回路コントローラ412、割り込みコントローラ414、レジスタコントローラ417、タイミングコントローラ415に入力される。
【0204】
演算回路コントローラ412、割り込みコントローラ414、レジスタコントローラ417、タイミングコントローラ415は、デコードされた命令に基づき、各種制御をおこなう。具体的に演算回路コントローラ412は、演算回路411の動作を制御するための信号を生成する。また、割り込みコントローラ414は、CPUのプログラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマスク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ417は、レジスタ416のアドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ416の読み出しや書き込みをおこなう。
【0205】
またタイミングコントローラ415は、演算回路411、演算回路コントローラ412、命令デコーダー413、割り込みコントローラ414、レジスタコントローラ417の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えばタイミングコントローラ415は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号CLK2を上記各種回路に供給する。
【0206】
本実施の形態のCPUでは、レジスタ416に、上記実施の形態で示した構成を有する記憶素子を設けるとよい。レジスタコントローラ417は、演算回路411からの指示に従い、レジスタ416における保持動作の選択をおこなう。すなわち、レジスタ416が有する記憶素子において、位相反転素子によるデータの保持をおこなうか、容量素子によるデータの保持をおこなうかを、選択する。位相反転素子によるデータの保持が選択されている場合、レジスタ416内の記憶素子への、電源電圧の供給がおこなわれる。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換えがおこなわれ、レジスタ416内の記憶素子への電源電圧の供給を停止することができる。
【0207】
この様にして、一時的にCPUの動作を停止し、電源電圧の供給を停止した場合においてもデータを保持することが可能であり、消費電力の低減をおこなうことができる。具体的には、例えば、パーソナルコンピュータのユーザーが、キーボードなどの入力装置への情報の入力を停止している間でも、CPUを停止することができ、それにより消費電力を低減することができる。
【0208】
本実施の形態では、CPUを例に挙げて説明したが、本発明の信号処理回路はCPUに限定されず、DSP、カスタムLSI、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のLSIにも応用可能である。また、本発明に示す信号処理回路を用いることで、信頼性が高い電子機器、消費電力の低い電子機器を提供することが可能である。
【0209】
特に外部より電力の供給を常時受けることが困難な携帯用の電子機器の場合、本発明の一態様に係る消費電力の低い信号処理回路をその構成要素に追加することにより、連続使用時間を長くできるといったメリットが得られる。
【0210】
本発明の一態様に係る信号処理回路は、表示装置、パーソナルコンピュータ、記録媒体を備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Disc等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いることができる。その他に、本発明の一態様に係る信号処理回路を用いることができる電子機器として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯情報端末、電子書籍、ビデオカメラやデジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディスプレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディオプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンター、プリンター複合機、現金自動預け入れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。
【符号の説明】
【0211】
100 記憶素子
100a 記憶素子
100b 記憶素子
100c 記憶素子
101 第1の位相反転素子
102 第2の位相反転素子
103 スイッチング素子
104 スイッチング素子
105 容量素子
105a 第1の容量素子
105b 第2の容量素子
106 容量用スイッチング素子
106a 第1の容量用スイッチング素子
106b 第2の容量用スイッチング素子
107 Pチャネル型トランジスタ
108 Nチャネル型トランジスタ
109 Pチャネル型トランジスタ
110 Nチャネル型トランジスタ
111 寄生容量を含む容量
200 記憶素子
201 インバータ
202 インバータ
203 スイッチング素子
204 スイッチング素子
207 Pチャネル型トランジスタ
208 Nチャネル型トランジスタ
209 Pチャネル型トランジスタ
210 Nチャネル型トランジスタ
300 記憶素子
301 VDD配線
302 Sig1配線
303 Sig2配線
304 IN配線
305 OUT配線
306 ゲート配線
307 第1容量電極
308 酸化物半導体領域
309 ソース配線
310 第2容量電極
311 素子分離領域
312 層間絶縁物
313 コンタクトプラグ
314 埋め込み絶縁物
315 ゲート絶縁物
400 信号処理回路
401 演算回路
402 演算回路
403 記憶装置
404 記憶装置
405 記憶装置
406 制御装置
407 電源制御回路
410 基板
411 演算回路
412 演算回路コントローラ
413 命令デコーダー
414 割り込みコントローラ
415 タイミングコントローラ
416 レジスタ
417 レジスタコントローラ
418 バスインターフェース
419 ROM
420 ROMインターフェース
N1 第1のノード
N2 第2のノード
N3 第3のノード
N4 第4のノード
IN 信号
OUT 信号
Sig1 信号
Sig2 信号
Sig3 信号
CLK1 基準クロック信号
CLK2 内部クロック信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに、他の出力端子が自らの入力端子に接続されることで、データの保持をおこなう一対の位相反転素子と、
容量素子と、
前記位相反転素子の少なくとも1つの上層に設けられ、前記容量素子への前記データの書き込みを制御するスイッチング素子と、を有し、
前記容量素子の一方の電極は前記位相反転素子の出力あるいは入力のいずれかに接続し、前記容量素子の他方の電極は前記スイッチング素子のソースもしくはドレインのいずれか一方に接続する記憶素子。
【請求項2】
請求項1記載の記憶素子において、さらに第2の容量素子と、
前記位相反転素子の少なくとも1つの上層に設けられ、前記容量素子への前記データの書き込みを制御する第2のスイッチング素子と、を有し、
前記第2の容量素子の一方の電極は前記位相反転素子の出力あるいは入力のいずれか他方に接続し、
前記第2の容量素子の他方の電極は、前記第2のスイッチング素子のソースもしくはドレインのいずれか一方に接続する記憶素子。
【請求項3】
前記スイッチング素子は、半導体層に少なくとも1つの凹部を有する請求項1または2のいずれかに記載の記憶素子。
【請求項4】
前記スイッチング素子は、チャネル長が最小加工線幅の10倍以上である請求項1または請求項3のいずれかに記載の記憶素子。
【請求項5】
前記スイッチング素子は、チャネル長が1μm以上である請求項1乃至4のいずれかに記載の記憶素子。
【請求項6】
前記容量素子の容量が、前記スイッチング素子のゲート容量よりも小さい請求項1乃至5のいずれかに記載の記憶素子。
【請求項7】
前記スイッチング素子は、チャネル形成領域に酸化物半導体を有する請求項1乃至6のいずれかに記載の記憶素子。
【請求項8】
請求項7において、前記酸化物半導体は、In−Ga−Zn系酸化物である記憶素子。
【請求項9】
請求項7または8のいずれかにおいて、前記チャネル形成領域の水素濃度は、5×1019/cm以下である記憶素子。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかにおいて、前記一対の位相反転素子のいずれか一方は、インバータまたはクロックドインバータである記憶素子。
【請求項11】
演算回路と、前記演算回路からのデータを記憶する記憶装置とを有し、前記記憶装置は、請求項1乃至10のいずれかに記載の記憶装置である信号処理回路。
【請求項12】
CPU、DSP、またはマイクロコントローラを含むLSIである請求項11記載の信号処理回路。
【請求項13】
請求項1乃至9のいずれかに記載の記憶素子において、
前記容量用スイッチング素子をオフとした状態で前記位相反転素子の入力と出力の電位をともに第1の電位とする過程と、
前記容量用スイッチング素子をオンとする過程と、
前記前記位相反転素子を活性状態とする過程とを有し、
前記第1の電位は、前記位相反転素子が活性状態とした際に、前記位相反転素子に印加される低いほうの電位よりも高く、高いほうの電位よりも低いことを特徴とする記憶素子の駆動方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−253334(P2012−253334A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−108077(P2012−108077)
【出願日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】