説明

走行案内装置、走行案内方法及びコンピュータプログラム

【課題】特定施設と自車との位置関係に基づいて案内の制限を行うことにより、不要な案内によって運転者の集中力を低下させることのない走行案内装置、走行案内方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】学校の周辺エリアを規定するスクールゾーンとして、進入用スクールゾーンと進入用スクールゾーンより広い退出用スクールゾーンの2種類を設定し、自車がいずれかの学校の進入用スクールゾーンに進入し(S11:YES)、スクールゾーンに関する案内を行った(S13)後には、自車が案内対象である学校の退出用スクールゾーンから退出するまでの間、その後のスクールゾーンに関する案内を制限する(S15)ように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車が特定施設に接近した際に特定施設の案内を行う走行案内装置、走行案内方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の走行案内を行い、運転者が所望の目的地に容易に到着できるようにしたナビゲーション装置が車両に搭載されていることが多い。ここで、ナビゲーション装置とは、GPS受信機などにより自車の現在位置を検出し、その現在位置に対応する地図データをDVD−ROMやHDDなどの記録媒体またはネットワークを通じて取得して液晶モニタに表示することが可能な装置である。更に、かかるナビゲーション装置には、所望する目的地を入力すると、自車位置から目的地までの最適経路を探索する経路探索機能を備えており、ディスプレイ画面に誘導経路を表示するとともに、交差点に接近した場合等には音声による案内をすることによって、運転者を所望の目的地まで確実に案内するようになっている。
【0003】
また、従来のナビゲーション装置では、特定施設に対して所定距離以内まで接近した場合に、特定施設について案内することについても行われている。例えば、学校の周辺エリアについては、児童が通学路として利用する道路が多いので、自車が学校に対して所定距離以内まで接近した場合には、児童に注意するように案内することが望ましい。そこで、特開2002−250632号公報には、学校を中心とした所定範囲内のエリアであるスクールゾーンに自車が進入した場合に、スクールゾーンに進入したことを音声や画像で案内するとともに、スクールゾーンから自車が退出した場合に、スクールゾーンから退出したことを同様に音声や画像で案内する走行案内装置について記載されている。
【特許文献1】特開2002−250632号公報(第4頁〜第6頁、図2〜図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、前記した特許文献1に記載された走行案内装置では、スクールゾーンの範囲は学校を中心とした半径所定距離以内の範囲に固定されている。従って、自車がスクールゾーンの境界線付近を走行している場合には、自車がスクールゾーン内への進入及び退出を繰り返し行う状況が発生する場合がある。
【0005】
以下に、図10を用いて従来の問題点について具体例を挙げて説明する。図10に示すように車両101が学校102を中心とした半径所定距離以内(例えば半径500m以内)に規定されたスクールゾーン103の境界線付近を走行する場合には、先ず、地点Aにおいてスクールゾーン103に進入したことの案内が行われる。その後、地点Bにおいてスクールゾーン103から退出したことの案内が行われる。以下同様にして、地点C、Eにおいてスクールゾーン103に進入したことの案内が行われ、地点D、Fにおいてスクールゾーン103から退出したことの案内が行われる。従って、地点Aでスクールゾーン103へ進入したことの案内を行っていたにもかかわらず、その直後において地点C、Eでも同一エリアであるスクールゾーン103の案内が行われることとなる。また、スクールゾーン103から退出したことの案内についても、地点Fのみで行えば足りるにもかかわらず、同一内容の案内が繰り返し行われることとなってしまう。そして、このように同一内容のスクールゾーンの案内を繰り返し行うことは、運転者にとってメリットが少なく、運転者の集中力を低下させる結果にもなっていた。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、特定施設と自車との位置関係に基づいて案内の制限を行うことにより、不要な案内によって運転者の集中力を低下させることのない走行案内装置、走行案内方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る走行案内装置(1)は、地図に関する地図情報を記憶する地図情報記憶手段(22)と、前記地図上における特定施設の位置情報を取得する施設情報取得手段(13)と、自車の現在位置を取得する自車位置取得手段(11)と、前記自車位置取得手段により取得された自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離以下となったか否かを判定する第1距離判定手段(13)と、前記第1距離判定手段により自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離以下となったと判定された場合に前記特定施設に関する案内を行う案内手段(15、16)と、を有する走行案内装置において、前記案内手段により前記特定施設に関する案内が行われた後に前記案内手段による前記特定施設に関する案内を制限する案内制限手段(13)と、前記自車位置取得手段により取得された自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離より長い第2所定距離以上となったか否かを判定する第2距離判定手段(13)と、前記案内制限手段により前記特定施設に関する案内が制限されている場合であって、前記第2距離判定手段により自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第2所定距離以上となったと判定された場合に前記案内制限手段による前記特定施設に関する案内の制限を解除する案内制限解除手段(13)と、を有することを特徴とする。
ここで、「案内を制限する」とは案内を行わないこと、案内の内容を一部省略すること、音声で案内する場合に音量を小さくすること等を含む。
【0008】
また、請求項2に係る走行案内装置(1)は、請求項1に記載の走行案内装置であって、前記案内手段(15、16)は音声による案内を行う音声案内手段(16)を備え、前記案内制限手段(13)は前記音声案内手段による音声の案内を行わないように前記案内手段の案内を制限することを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に係る走行案内方法は、地図情報記憶媒体(22)に記憶された地図上における特定施設の位置情報を取得する施設情報取得ステップ(S2)と、自車の現在位置を取得する自車位置取得ステップ(S1)と、前記自車位置取得ステップにより取得された自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離以下となったか否かを判定する第1距離判定ステップ(S11)と、前記第1距離判定ステップにより自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離以下となったと判定された場合に前記特定施設に関する案内を行う案内ステップ(S13、S14)と、を有する走行案内方法において、前記案内ステップにより前記特定施設に関する案内が行われた後に前記案内ステップによる前記特定施設に関する案内を制限する案内制限ステップ(S15)と、前記自車位置取得ステップにより取得された自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離より長い第2所定距離以上となったか否かを判定する第2距離判定ステップ(S21)と、前記案内制限ステップにより前記特定施設に関する案内が制限されている場合であって、前記第2距離判定ステップにより自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第2所定距離以上となったと判定された場合に前記案内制限ステップによる前記特定施設に関する案内の制限を解除する案内制限解除ステップ(S25)と、を有することを特徴とする。
【0010】
更に、請求項4に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに搭載され、地図情報記憶媒体(22)に記憶された地図上における特定施設の位置情報を取得する施設情報取得機能(S2)と、自車の現在位置を取得する自車位置取得機能(S1)と、前記自車位置取得機能により取得された自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離以下となったか否かを判定する第1距離判定機能(S11)と、前記第1距離判定機能により自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離以下となったと判定された場合に前記特定施設に関する案内を行う案内機能(S13、S14)と、前記案内機能により前記特定施設に関する案内が行われた後に前記案内機能による前記特定施設に関する案内を制限する案内制限機能(S15)と、前記自車位置取得機能により取得された自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離より長い第2所定距離以上となったか否かを判定する第2距離判定機能(S21)と、前記案内制限機能により前記特定施設に関する案内が制限されている場合であって、前記第2距離判定機能により自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第2所定距離以上となったと判定された場合に前記案内制限機能による前記特定施設に関する案内の制限を解除する案内制限解除機能(S25)と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
前記構成を有する請求項1に記載の走行案内装置によれば、特定施設から第1所定距離離れた付近を走行していた場合であっても、一旦特定施設に関する案内が行われた後は案内の制限を行うので、不要な案内を繰り返し行うことによって運転者の集中力を低下させることがない。
【0012】
また、請求項2に記載の走行案内装置によれば、運転者にとって特に運転の集中の妨げになる虞が高い音声による案内を行わないように案内を制限するので、音声案内を頻繁に行うことによって運転者の集中力が低下することを防止する。
【0013】
また、請求項3に記載の走行案内方法によれば、特定施設から第1所定距離離れた付近を走行していた場合であっても、一旦特定施設に関する案内が行われた後は案内の制限を行うので、不要な案内を繰り返し行うことによって運転者の集中力を低下させることがない。
【0014】
更に、請求項4に記載のコンピュータプログラムによれば、特定施設から第1所定距離離れた付近を走行していた場合であっても、一旦特定施設に関する案内が行われた後は案内の制限を行うようにコンピュータを実行させるので、不要な案内を繰り返し行うことによって運転者の集中力を低下させることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明に係る走行案内装置についてナビゲーション装置に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1の概略構成について図1を用いて説明する。図1は本実施形態に係るナビゲーション装置1を示したブロック図である。
【0016】
図1に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、自車の現在位置を検出する現在位置検出部(自車位置取得手段)11と、各種のデータが記録されたデータ記録部12と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU(施設情報取得手段、第1距離判定手段、案内制限手段、第2距離判定手段、案内制限解除手段)13と、操作者からの操作を受け付ける操作部14と、操作者に対して自車周辺の地図やスクールゾーンに対する案内等を表示するディスプレイ(案内手段)15と、経路案内に関する音声ガイダンスやスクールゾーンに対する案内等を出力するスピーカ(案内手段)16と、プログラムを記憶した記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ17、交通情報センタ等の情報センタとの間で通信を行う通信装置18と、から構成されている。また、ナビゲーションECU13には、自車の走行速度を検出する車速センサ19が接続される。
【0017】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部11は、GPS31、地磁気センサ32、距離センサ33、ステアリングセンサ34、方位検出部としてのジャイロセンサ35、高度計(図示せず)等からなり、現在の自車の位置、方位等を検出することが可能となっている。
【0018】
また、データ記録部12は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB(地図情報記憶手段)22、所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0019】
ここで、地図情報DB22は、経路案内、交通情報案内及び地図表示に必要な各種地図データが記録されている。具体的には、学校等の施設に関する施設データ24、道路(リンク)形状に関するリンクデータ25、ノード点に関するノードデータ26、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、施設に関する施設データ、地点を検索するための検索データ、地図、道路、交通情報等の画像をディスプレイ15に描画するための画像描画データ等から構成されている。そして、ナビゲーションECU13は現在位置検出部11により検出された自車の現在位置と地図情報DB22に記憶された地図データとを用いて、自車の現在位置を地図上の道路にマッチングするマップマッチング処理を行う。
【0020】
また、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、施設データ24に記憶された施設の内、特に学校を中心とした半径所定距離以内のエリア(以下、スクールゾーンという)をスクールゾーンとして規定する。更に、スクールゾーンは、進入用スクールゾーンと退出用スクールゾーンの2種類からなる。ここで、図2は本実施形態に係るスクールゾーンを示した模式図である。
図2では例えば学校51に対して規定された進入用スクールゾーン52と退出用スクールゾーン53を示す。進入用スクールゾーン52は、自車がスクールゾーン外に位置する場合において、スクールゾーン内に進入したか否かを判定する為のゾーンであり、学校51を中心とした半径500m(第1所定距離)以内のエリアである。一方、退出用スクールゾーン53は、自車がスクールゾーン内に位置する場合において、スクールゾーン外へと退出したか否かを判定する為のゾーンであり、学校51を中心とした半径800m(第2所定距離)以内のエリアである。
【0021】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)13は、目的地が選択された場合に現在位置から目的地までの誘導経路を設定する誘導経路設定処理、自車の現在位置を地図上の道路にマッチングするマップマッチング処理、自車がスクールゾーン内に位置する場合にスクールゾーンに対する案内を行うスクールゾーン案内処理等のナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU41、並びにCPU41が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM42、制御用のプログラムのほか、スクールゾーン案内処理プログラム(図3〜図5参照)等が記録されたROM43、ROM43から読み出したプログラムを記録するフラッシュメモリ44等の内部記憶装置を備えている。
【0022】
操作部14は、案内開始地点としての出発地及び案内終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU13は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、ディスプレイ15の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。
【0023】
また、ディスプレイ15には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、現在位置から目的地までの誘導経路、誘導経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。また、車両がスクールゾーンに進入した際には、車両がスクールゾーンから退出するまでの間、スクールゾーン内に車両が位置することを案内するマークや案内文を表示する。
【0024】
また、スピーカ16は、ナビゲーションECU13からの指示に基づいて誘導経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。また、自車がスクールゾーンに進入した際には、スクールゾーンへと進入したことを案内する音声を出力する。
【0025】
また、DVDドライブ17は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて地図情報DB22の更新等が行われる。
【0026】
また、通信装置18は、交通情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタ等から送信された渋滞情報、規制情報、駐車場情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を、道路に沿って配設された電波ビーコン装置、光ビーコン装置等を介して電波ビーコン、光ビーコン等として受信するビーコンレシーバである。
【0027】
一方、車速センサ19は、車両の車輪の回転に応じて車速パルスを発生させるものであり、車両の移動距離や車速を検出する為に使用する。
【0028】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1においてナビゲーションECU13が実行するスクールゾーン案内処理プログラムについて図3〜図5に基づき説明する。図3は本実施形態に係るスクールゾーン案内処理プログラムのフローチャートである。ここで、スクールゾーン案内処理プログラムは車両のイグニションがONされた後に所定間隔(例えば200ms毎)で実行され、スクールゾーン内に進入した車両に対してスクールゾーンに対する案内を行うプログラムである。尚、以下の図3〜図5にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM42やROM43に記憶されており、CPU41により実行される。
【0029】
先ず、スクールゾーン案内処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU41は現在位置検出部11により自車の現在位置(位置座標)を検出する。
【0030】
次に、S2でCPU41は、自車の周辺(例えば、周囲3km以内)に位置する全ての学校に関するデータ(具体的には学校の位置座標)を地図情報DB22から読み出す。尚、上記S2が施設情報取得手段の処理に相当する。
【0031】
続いて、S3でCPU41は、前記S1で検出した自車の現在位置と、前記S2で取得した各学校の位置座標に基づいて、自車から自車周辺にある各学校までの距離を算出する。
【0032】
その後、S4においてCPU41は自車状態が“スクールゾーン外”であるか否か判定する。ここで、本実施形態に係るナビゲーション装置1では、自車状態が“スクールゾーン内”である場合には、前記した従来の問題点(図10参照)にもある同一内容の案内が繰り返し行われることを防止する為に、スクールゾーンに関する案内の案内制限を行う。従って、前記S4では、スクールゾーンの案内制限を行うことを示す“案内制限フラグ”がOFFであるか否か判定することに相当する。
ここで、自車状態は後述のS15、S25によって設定される。具体的には、自車がスクールゾーン外からいずれかの学校の進入用スクールゾーンへと新たに進入し(自車から学校までの距離が500m以内となり)、スクールゾーンの案内が行われた場合には、自車状態が“スクールゾーン内”であると設定(“案内制限フラグ”がON)される(S15)。また、自車がスクールゾーン内から案内対象となっている学校の退出用スクールゾーン外へと退出した(自車から案内対象の学校までの距離が800m以上となった)場合には、自車状態が“スクールゾーン外”であると設定(“案内制限フラグ”がOFF)される(S25)。
【0033】
そして、自車状態が案内制限を行わない“スクールゾーン外”であると判定された場合(S4:YES)には、後述の進入判定及び案内処理(図4)が行われる。一方、自車状態が案内制限を行う“スクールゾーン内”であると判定された場合(S4:NO)には、後述の退出判定及び案内処理(図5)が行われる。
【0034】
次に、前記S5でナビゲーションECU13により実行される進入判定及び案内処理について図4に基づき説明する。図4は本実施形態に係る進入判定及び案内処理プログラムのフローチャートである。
【0035】
先ず、進入判定及び案内処理プログラムではS11においてCPU41は、前記S3において算出した自車から自車周囲にある各学校までの距離を参照し、自車から最も近い距離にある学校までの距離が500m以内であるか否か判定する。
【0036】
その結果、自車から最も近い距離にある学校までの距離が500m以内であると判定された場合(S11:YES)には、自車がスクールゾーン外から進入用スクールゾーン内へと進入したと判定され、S12へと移行する。一方、自車から最も近い距離にある学校までの距離が500mより長いと判定された場合(S11:NO)には、自車がスクールゾーン外に継続して位置すると判定され、S16へと移行する。尚、上記S11が第1距離判定手段の処理に相当する。
【0037】
S12においてCPU41は、自車から最も近い距離にある学校をスクールゾーンの案内対象として選択する。
【0038】
続いて、S13でCPU41は、自車が新たにスクールゾーンへと進入したことを案内する案内音声をスピーカ16より出力する。案内音声としては、例えば『現在スクールゾーンを走行中です。子供の飛び出しに注意してください。』等がある。
【0039】
また、S14でCPU41は、自車がスクールゾーン内に位置することを示す文字列やマークからなる案内画面をディスプレイ15に表示する。表示する文字列やマークとしては、例えば『スクールゾーン走行中』の文字列や子供の姿のマーク等がある。
【0040】
そして、S15においてCPU41は、自車が進入用スクールゾーンを超えてスクールゾーン内に位置する状態になり、既にそのスクールゾーンに関する案内を行ったと判定して、自車状態を“スクールゾーン内”に設定(“案内制限フラグ”をON)する。尚、上記S15が案内制限手段の処理に相当する。
【0041】
一方、前記S11の判定処理で自車から最も近い距離にある学校までの距離が500mより長いと判定された場合には、自車が継続してスクールゾーン外に位置すると判定されるので、スクールゾーンに関する案内画面の表示や音声による案内は行わず(S16)、また、CPU41は自車状態を“スクールゾーン外”に継続して設定(“案内制限フラグ”をOFFに継続)する(S17)。
【0042】
次に、前記S6でナビゲーションECU13により実行される退出判定及び案内処理について図5に基づき説明する。図5は本実施形態に係る退出判定及び案内処理プログラムのフローチャートである。
【0043】
先ず、退出判定及び案内処理プログラムではS21においてCPU41は、前記S3において算出した自車から自車周囲にある各学校までの距離を参照し、自車から前記S12でスクールゾーンの案内対象として選択された学校までの距離が800m以上であるか否か判定する。
【0044】
その結果、自車から案内対象の学校までの距離が800m未満であると判定された場合(S21:NO)には、自車が案内対象にある学校のスクールゾーン内に継続して位置すると判定され、S22へと移行する。一方、自車から案内対象の学校までの距離が800m以上であると判定された場合(S21:YES)には、自車が現在案内対象の学校の退出用スクールゾーン外へと退出したと判定され、S24へと移行する。尚、上記S21が第2距離判定手段の処理に相当する。
【0045】
S22でCPU41は、自車が継続して案内対象となる学校のスクールゾーン内に位置すると判定されるので、スクールゾーンを案内する案内画面(文字列やマーク)の表示を消去することなく継続して表示する。更に、自車状態を“スクールゾーン内”に継続して設定(“案内制限フラグ”をONに継続)する(S23)。
【0046】
一方、S24でCPU41は、自車がスクールゾーン外へと退出したことを案内する為に、自車がスクールゾーン内に位置することを示す案内画面をディスプレイ15から消去する。
【0047】
そして、S25においてCPU41は、自車が退出用スクールゾーンを超えてスクールゾーン外に位置する状態になったと判定し、案内制限を解除する為に自車状態を“スクールゾーン外”に設定(“案内制限フラグ”をOFF)する。尚、上記S25が案内制限解除手段の処理に相当する。
【0048】
次に、図6乃至図9を用いて前記スクールゾーン案内処理プログラムによるスクールゾーン案内の具体例について説明する。
図6に示すように、自車54がスクールゾーン外に位置する状態(即ち、“案内制限フラグ”がOFF)であって、その後に学校51の進入用スクールゾーン52に初めて進入した場合には、進入したG地点ではディスプレイ15においてスクールゾーン内に位置することを案内する案内画像の表示が開始され、更に、スピーカ16からスクールゾーンへと進入したことを案内する案内音声が出力される。また、その後のスクールゾーンの案内を制限するために“案内制限フラグ”がONされる。
【0049】
そして、図7に示すように、自車54が一旦学校51の進入用スクールゾーン52内に進入すると、進入用スクールゾーン52より広い退出用スクールゾーン53の境界を越えない限り、スクールゾーンに関する音声案内を行わないように案内が制限される。従って、車両54が進入用スクールゾーン52の境界付近を走行した場合であっても、案内音声が出力されることがない。また、ディスプレイ15においてスクールゾーンに位置することを案内する案内画像の表示について継続して行うので、案内画像の表示及び非表示が繰り返し行われることもない。
【0050】
その後、図8に示すように、既にスクールゾーンに関する案内が行われた状態(即ち、“案内制限フラグ”がON)であって、学校51の退出用スクールゾーン53から退出した場合には、退出したH地点ではディスプレイ15においてスクールゾーン外に自車54が位置することを案内する為に案内画像の表示が消去される。また、その後においてスクールゾーンの案内の制限を解除するために“案内制限フラグ”がOFFされる。
以上のように、学校と自車との位置関係に基づいてスクールゾーンに関する案内を制限することにより、同一のスクールゾーンに関する音声案内が繰り返し行われることがなくなる。
【0051】
続いて、図9を用いて複数の学校が近接して立地されており、複数のスクールゾーンが一部で重複する場合について説明する。複数のスクールゾーンが重複する場合には、例えば図9に示すように、自車54がH地点で学校51の退出用スクールゾーン53から退出した場合であっても、他の学校61の進入用スクールゾーン62内に位置する場合がある。したがって、自車54が継続してスクールゾーン内に位置するにもかかわらず、H地点において不要なスクールゾーンの音声案内が行われてしまうこととなる。
【0052】
従って、以下のようにスクールゾーンに関する案内の制限を行うようにする。先ず、前記S21で自車から案内対象の学校までの距離が800m以内と判定された場合(S21:YES)において、更に自車から最も近い距離にある学校までの距離が500m以内であるか否か判定する。
【0053】
その結果、自車から最も近い距離にある学校までの距離が500m以内であると判定された場合には、図9に示すように複数のスクールゾーンが重複して配置され、自車が現在案内対象の学校(図9では学校51)の退出用スクールゾーン外へと退出するとともに新たに別の学校(図9では学校61)の進入用スクールゾーン内へと進入したと判定され、自車から最も近い距離にある学校を新たにスクールゾーンの案内対象へと切り替える。その後、S22へと移行する。
【0054】
一方、自車から最も近い距離にある学校までの距離についても500mより長いと判定された場合には、自車が現在案内対象の学校の退出用スクールゾーン外へと退出し、且ついずれの学校のスクールゾーン内にも位置しないと判定され、S24へと移行する。
【0055】
上記のように構成することによって、図9に示す自車54がH地点で学校51の退出用スクールゾーン53から退出した場合であっても、スクールゾーンの案内対象とする学校を学校51から学校61へと切り替えるが、スピーカ16による新たな案内音声の出力は行わないように案内を制限することができる。
【0056】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1、ナビゲーション装置1による走行案内方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、学校の周辺エリアを規定するスクールゾーンとして、進入用スクールゾーンと進入用スクールゾーンより広い退出用スクールゾーンの2種類を設定し、自車がいずれかの学校の進入用スクールゾーンに進入し(S11:YES)、スクールゾーンに関する案内を行った(S13)後には、自車が案内対象である学校の退出用スクールゾーンから退出するまでの間、その後のスクールゾーンに関する案内を制限する(S15)ので、スクールゾーンの境界線付近(例えば、学校から500m離れた付近)を走行していた場合であっても、一旦スクールゾーンに関する案内が行われた後は案内の制限を行うので、不要な案内を繰り返し行うことによって運転者の集中力を低下させることがない。
また、運転者にとって特に運転の集中の妨げになる虞が高い音声による案内を行わないように案内を制限するので、音声案内を頻繁に行うことによって運転者の集中力が低下することを防止する。
【0057】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では学校を中心とした半径500m以内を進入用スクールゾーンに設定し、学校を中心とした半径800m以内を退出用スクールゾーンに設定しているが、進入用スクールゾーンより退出用スクールゾーンが広くなる範囲であれば、数値を変更しても良い。また、運転者の操作によって数値を変更できるようにしても良い。
【0058】
また、本実施形態では自車が一旦学校に500m以内まで接近し、その学校のスクールゾーンに関する案内が行われた後は、自車がその学校の退出用スクールゾーンから退出するまでの間、スクールゾーンに関する音声案内を行わないように案内を制限するが、案内音声の音量を下げることにより案内を制限しても良い。また、案内内容を簡略化することにより案内を制限しても良い。
【0059】
また、本実施形態では進入用スクールゾーン内へと車両が進入した場合には、スクールゾーン内に車両が位置することを音声で案内するようにしているが、学校名や学校の所在地等の学校に関する情報も併せて案内するようにしても良い。
【0060】
また、本実施形態では学校の周囲エリアを規定したスクールゾーンの案内を行う場合について説明したが、他の施設(例えば、病院や消防署)の周囲エリアを案内する場合についても本願発明は適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本実施形態に係るナビゲーション装置のブロック図である。
【図2】本実施形態に係るスクールゾーンを示した模式図である。
【図3】本実施形態に係るスクールゾーン案内処理プログラムのフローチャートである。
【図4】本実施形態に係る進入判定及び案内処理プログラムのフローチャートである。
【図5】本実施形態に係る退出判定及び案内処理プログラムのフローチャートである。
【図6】自車が進入用スクールゾーンに進入した段階を示した模式図である。
【図7】自車が進入用スクールゾーンに進入した後にスクールゾーンに関する案内が制限される段階を示した模式図である。
【図8】自車が退出用スクールゾーンから退出し、スクールゾーンに関する案内の制限が解除される段階を示した模式図である。
【図9】スクールゾーンは重複する場合におけるスクールゾーンの案内制限態様を示した図である。
【図10】従来の問題点を説明した説明図である。
【符号の説明】
【0062】
1 ナビゲーション装置
13 ナビゲーションECU
15 ディスプレイ
16 スピーカ
22 地図情報DB
23 学校座標DB


【特許請求の範囲】
【請求項1】
地図に関する地図情報を記憶する地図情報記憶手段と、
前記地図上における特定施設の位置情報を取得する施設情報取得手段と、
自車の現在位置を取得する自車位置取得手段と、
前記自車位置取得手段により取得された自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離以下となったか否かを判定する第1距離判定手段と、
前記第1距離判定手段により自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離以下となったと判定された場合に前記特定施設に関する案内を行う案内手段と、を有する走行案内装置において、
前記案内手段により前記特定施設に関する案内が行われた後に前記案内手段による前記特定施設に関する案内を制限する案内制限手段と、
前記自車位置取得手段により取得された自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離より長い第2所定距離以上となったか否かを判定する第2距離判定手段と、
前記案内制限手段により前記特定施設に関する案内が制限されている場合であって、前記第2距離判定手段により自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第2所定距離以上となったと判定された場合に前記案内制限手段による前記特定施設に関する案内の制限を解除する案内制限解除手段と、を有することを特徴とする走行案内装置。
【請求項2】
前記案内手段は音声による案内を行う音声案内手段を備え、
前記案内制限手段は前記音声案内手段による音声の案内を行わないように前記案内手段の案内を制限することを特徴とする請求項1に記載の走行案内装置。
【請求項3】
地図情報記憶媒体に記憶された地図上における特定施設の位置情報を取得する施設情報取得ステップと、
自車の現在位置を取得する自車位置取得ステップと、
前記自車位置取得ステップにより取得された自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離以下となったか否かを判定する第1距離判定ステップと、
前記第1距離判定ステップにより自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離以下となったと判定された場合に前記特定施設に関する案内を行う案内ステップと、を有する走行案内方法において、
前記案内ステップにより前記特定施設に関する案内が行われた後に前記案内ステップによる前記特定施設に関する案内を制限する案内制限ステップと、
前記自車位置取得ステップにより取得された自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離より長い第2所定距離以上となったか否かを判定する第2距離判定ステップと、
前記案内制限ステップにより前記特定施設に関する案内が制限されている場合であって、前記第2距離判定ステップにより自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第2所定距離以上となったと判定された場合に前記案内制限ステップによる前記特定施設に関する案内の制限を解除する案内制限解除ステップと、を有することを特徴とする走行案内方法。
【請求項4】
コンピュータに搭載され、
地図情報記憶媒体に記憶された地図上における特定施設の位置情報を取得する施設情報取得機能と、
自車の現在位置を取得する自車位置取得機能と、
前記自車位置取得機能により取得された自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離以下となったか否かを判定する第1距離判定機能と、
前記第1距離判定機能により自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離以下となったと判定された場合に前記特定施設に関する案内を行う案内機能と、
前記案内機能により前記特定施設に関する案内が行われた後に前記案内機能による前記特定施設に関する案内を制限する案内制限機能と、
前記自車位置取得機能により取得された自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第1所定距離より長い第2所定距離以上となったか否かを判定する第2距離判定機能と、
前記案内制限機能により前記特定施設に関する案内が制限されている場合であって、前記第2距離判定機能により自車の現在位置から前記特定施設までの距離が第2所定距離以上となったと判定された場合に前記案内制限機能による前記特定施設に関する案内の制限を解除する案内制限解除機能と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−268125(P2008−268125A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−114563(P2007−114563)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】