説明

車両およびその制御方法

【課題】走行用の動力を出力可能な内燃機関および電動機を備える車両において、アイドル制御量の学習と燃費の向上との両立を図る。
【解決手段】アイドル制御量の学習が完了していないときに(S310)、エコスイッチ信号ESWがオフのときには、エンジン22の停止を禁止すると共に(S320,S340)、エンジン22の運転を継続して学習条件の成立に応じたアイドル制御量の学習を行ない、エコスイッチ信号ESWがオンのときには、エンジン22の停止を許可すると共に(S320,S330)、エンジン22を間欠運転し、エンジン22を運転している最中に学習条件の成立に応じたアイドル制御量の学習を行なう。これにより、アイドル制御量の学習と燃費の向上との両立を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両としては、所定の自動停止条件が成立したときにエンジンを自動停止し、エンジンの自動停止中に所定の再始動条件が成立したときにエンジンを再始動するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この車両では、シフトレバーが走行レンジであるか非走行レンジであるかによって所定の自動停止条件の一部を変更するものとしている。
【特許文献1】特開2004−197638号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、走行用の動力源としてエンジンとモータとを備え、エンジンを間欠運転しながら走行可能な車両では、エンジンをアイドル運転する際のスロットル開度などの制御量が学習されていないときには学習の機会が確保されるようにエンジンの停止を禁止するものがある。また、こうした車両では、運転者によって動力性能より燃費の優先を指示可能なスイッチを備えるものもある。このため、アイドル制御量の学習と燃費の向上との両立を図ることが望まれる。
【0004】
本発明の車両およびその制御方法は、走行用の動力を出力可能な内燃機関および電動機を備える車両において、アイドル制御量の学習と燃費の向上との両立を図ることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の車両およびその制御方法は、少なくとも上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0006】
本発明の車両は、
走行用の動力を出力する内燃機関と、
走行用の動力を出力する電動機と、
前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、
燃費の優先を指示する燃費優先指示スイッチと、
前記内燃機関をアイドル運転する際の制御量を所定の学習条件の成立に応じて学習するアイドル制御量学習が完了しているときには前記内燃機関を間欠運転しながら走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記アイドル制御量学習が完了していないときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されていないときには前記内燃機関の運転を継続しながら前記アイドル制御量学習を実行すると共に前記要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記アイドル制御量学習が完了していないときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されているときには前記内燃機関を間欠運転して該内燃機関を運転している最中に前記アイドル制御量学習を実行すると共に前記要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備えることを要旨とする。
【0007】
この本発明の車両では、内燃機関をアイドル運転する際の制御量を所定の学習条件の成立に応じて学習するアイドル制御量学習が完了しているときには内燃機関を間欠運転しながら走行に要求される要求駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。また、アイドル制御量学習が完了していないときに燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されていないときには内燃機関の運転を継続しながらアイドル制御量学習を実行すると共に要求駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。これにより、内燃機関の運転を継続するから、アイドル制御量学習を実行することができる。さらに、アイドル制御量学習が完了していないときに燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されているときには内燃機関を間欠運転して内燃機関を運転している最中にアイドル制御量学習を実行すると共に要求駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。これにより、内燃機関を間欠運転するから、内燃機関を運転している最中にアイドル制御量学習を実行すると共に、燃費優先の指示に応じて燃費の向上を図ることができる。この結果、アイドル運転する際の制御量の学習と燃費の向上との両立を図ることができる。ここで、「所定の学習条件」には、内燃機関の冷却水温が所定温度以上となるのを含む条件などがある。また、「内燃機関をアイドル運転する際の制御量」には、内燃機関をアイドル運転する際のスロットル開度などが含まれる。
【0008】
こうした本発明の車両において、前記蓄電手段と電力のやりとりが可能で、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記出力軸と前記駆動軸とに動力を入出力可能な電力動力入出力手段を備え、前記電動機は、前記駆動軸に動力を入出力可能に取り付けられてなる、ものとすることもできる。この場合、前記電力動力入出力手段は、動力を入出力可能な発電機と、前記駆動軸と前記出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備える手段であるものとすることもできる。
【0009】
本発明の車両の制御方法は、
走行用の動力を出力する内燃機関と、走行用の動力を出力する電動機と、前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、燃費の優先を指示する燃費優先指示スイッチと、を備える車両の制御方法であって、
前記内燃機関をアイドル運転する際の制御量を所定の学習条件の成立に応じて学習するアイドル制御量学習が完了しているときには前記内燃機関を間欠運転しながら走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記アイドル制御量学習が完了していないときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されていないときには前記内燃機関の運転を継続しながら前記アイドル制御量学習を実行すると共に前記要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記アイドル制御量学習が完了していないときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されているときには前記内燃機関を間欠運転して該内燃機関を運転している最中に前記アイドル制御量学習を実行すると共に前記要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する、
ことを特徴とする。
【0010】
この本発明の車両の制御方法では、内燃機関をアイドル運転する際の制御量を所定の学習条件の成立に応じて学習するアイドル制御量学習が完了しているときには内燃機関を間欠運転しながら走行に要求される要求駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。また、アイドル制御量学習が完了していないときに燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されていないときには内燃機関の運転を継続しながらアイドル制御量学習を実行すると共に要求駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。これにより、内燃機関の運転を継続するから、アイドル制御量学習を実行することができる。さらに、アイドル制御量学習が完了していないときに燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されているときには内燃機関を間欠運転して内燃機関を運転している最中にアイドル制御量学習を実行すると共に要求駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御する。これにより、内燃機関を間欠運転するから、内燃機関を運転している最中にアイドル制御量学習を実行すると共に、燃費優先の指示に応じて燃費の向上を図ることができる。この結果、アイドル運転する際の制御量の学習と燃費の向上との両立を図ることができる。ここで、「所定の学習条件」には、内燃機関の冷却水温が所定温度以上となるのを含む条件などがある。また、「内燃機関をアイドル運転する際の制御量」には、内燃機関をアイドル運転する際のスロットル開度などが含まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための最良の形態を実施例を用いて説明する。
【実施例】
【0012】
図1は、本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。実施例のハイブリッド自動車20は、図示するように、エンジン22と、エンジン22の出力軸としてのクランクシャフト26にダンパ28を介して接続された3軸式の動力分配統合機構30と、動力分配統合機構30に接続された発電可能なモータMG1と、動力分配統合機構30に接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに取り付けられた減速ギヤ35と、この減速ギヤ35に接続されたモータMG2と、車両全体をコントロールするハイブリッド用電子制御ユニット70とを備える。
【0013】
エンジン22は、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関であり、エンジン22の冷却水の温度を検出する水温センサ23からの冷却水温Twなどのエンジン22の運転状態を検出する各種センサから信号を入力するエンジン用電子制御ユニット(以下、エンジンECUという)24により燃料噴射制御や点火制御,吸入空気量調節制御などの運転制御を受けている。エンジンECU24は、エンジン22の冷却水温Twが暖機完了を示す所定温度(例えば、65℃や70℃など)以上となる条件やエンジン22がアイドル運転されている条件などの学習条件が成立したときに、エンジン22の回転数Neをアイドル回転数Nidl(例えば、900rpmや1000rpmなど)にするのに必要なスロットル開度などの制御量を学習し、その学習値を記憶して次回以降のエンジン22のアイドル運転時の制御に用いている。エンジンECU24は、こうしたアイドル運転する際の制御量(以下、アイドル制御量という)の学習が完了しているか否かの情報も記憶している。また、エンジンECU24は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によりエンジン22を運転制御すると共に必要に応じてエンジン22の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、エンジンECU24は、クランクシャフト26に取り付けられた図示しないクランクポジションセンサからの信号に基づいてクランクシャフト26の回転数、即ちエンジン22の回転数Neも演算している。
【0014】
動力分配統合機構30は、外歯歯車のサンギヤ31と、このサンギヤ31と同心円上に配置された内歯歯車のリングギヤ32と、サンギヤ31に噛合すると共にリングギヤ32に噛合する複数のピニオンギヤ33と、複数のピニオンギヤ33を自転かつ公転自在に保持するキャリア34とを備え、サンギヤ31とリングギヤ32とキャリア34とを回転要素として差動作用を行なう遊星歯車機構として構成されている。動力分配統合機構30は、キャリア34にはエンジン22のクランクシャフト26が、サンギヤ31にはモータMG1が、リングギヤ32にはリングギヤ軸32aを介して減速ギヤ35がそれぞれ連結されており、モータMG1が発電機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力をサンギヤ31側とリングギヤ32側にそのギヤ比に応じて分配し、モータMG1が電動機として機能するときにはキャリア34から入力されるエンジン22からの動力とサンギヤ31から入力されるモータMG1からの動力を統合してリングギヤ32側に出力する。リングギヤ32に出力された動力は、リングギヤ軸32aからギヤ機構60およびデファレンシャルギヤ62を介して、最終的には車両の駆動輪63a,63bに出力される。
【0015】
モータMG1およびモータMG2は、いずれも発電機として駆動することができると共に電動機として駆動できる周知の同期発電電動機として構成されており、インバータ41,42を介してバッテリ50と電力のやりとりを行なう。インバータ41,42とバッテリ50とを接続する電力ライン54は、各インバータ41,42が共用する正極母線および負極母線として構成されており、モータMG1,MG2のいずれかで発電される電力を他のモータで消費することができるようになっている。したがって、バッテリ50は、モータMG1,MG2のいずれかから生じた電力や不足する電力により充放電されることになる。なお、モータMG1,MG2により電力収支のバランスをとるものとすれば、バッテリ50は充放電されない。モータMG1,MG2は、いずれもモータ用電子制御ユニット(以下、モータECUという)40により駆動制御されている。モータECU40には、モータMG1,MG2を駆動制御するために必要な信号、例えばモータMG1,MG2の回転子の回転位置を検出する回転位置検出センサ43,44からの信号や図示しない電流センサにより検出されるモータMG1,MG2に印加される相電流などが入力されており、モータECU40からは、インバータ41,42へのスイッチング制御信号が出力されている。モータECU40は、ハイブリッド用電子制御ユニット70と通信しており、ハイブリッド用電子制御ユニット70からの制御信号によってモータMG1,MG2を駆動制御すると共に必要に応じてモータMG1,MG2の運転状態に関するデータをハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。なお、モータECU40は、回転位置検出センサ43,44からの信号に基づいてモータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2も演算している。
【0016】
バッテリ50は、バッテリ用電子制御ユニット(以下、バッテリECUという)52によって管理されている。バッテリECU52には、バッテリ50を管理するのに必要な信号、例えば、バッテリ50の端子間に設置された図示しない電圧センサからの端子間電圧,バッテリ50の出力端子に接続された電力ライン54に取り付けられた図示しない電流センサからの充放電電流,バッテリ50に取り付けられた温度センサ51からの電池温度Tbなどが入力されており、必要に応じてバッテリ50の状態に関するデータを通信によりハイブリッド用電子制御ユニット70に出力する。また、バッテリECU52は、バッテリ50を管理するために電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて残容量SOCを演算したり、演算した残容量SOCと電池温度Tbとに基づいてバッテリ50を充放電してもよい最大許容電力である入出力制限Win,Woutを演算している。なお、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、電池温度Tbに基づいて入出力制限Win,Woutの基本値を設定し、バッテリ50の残容量SOCに基づいて出力制限用補正係数と入力制限用補正係数とを設定し、設定した入出力制限Win,Woutの基本値に補正係数を乗じることにより設定することができる。
【0017】
ハイブリッド用電子制御ユニット70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPU72の他に処理プログラムを記憶するROM74と、データを一時的に記憶するRAM76と、図示しない入出力ポートおよび通信ポートとを備える。ハイブリッド用電子制御ユニット70には、イグニッションスイッチ80からのイグニッション信号,シフトレバー81の操作位置を検出するシフトポジションセンサ82からのシフトポジションSP,アクセルペダル83の踏み込み量を検出するアクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Acc,ブレーキペダル85の踏み込み量を検出するブレーキペダルポジションセンサ86からのブレーキペダルポジションBP,車速センサ88からの車速V,車両の燃費を優先する旨を指示するエコスイッチ89からのエコスイッチ信号ESWなどが入力ポートを介して入力されている。ハイブリッド用電子制御ユニット70は、前述したように、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と通信ポートを介して接続されており、エンジンECU24やモータECU40,バッテリECU52と各種制御信号やデータのやりとりを行なっている。
【0018】
こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20は、運転者によるアクセルペダル83の踏み込み量に対応するアクセル開度Accと車速Vとに基づいて駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクを計算し、この要求トルクに対応する要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるように、エンジン22とモータMG1とモータMG2とが運転制御される。エンジン22とモータMG1とモータMG2の運転制御としては、要求動力に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にエンジン22から出力される動力のすべてが動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによってトルク変換されてリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御するトルク変換運転モードや要求動力とバッテリ50の充放電に必要な電力との和に見合う動力がエンジン22から出力されるようにエンジン22を運転制御すると共にバッテリ50の充放電を伴ってエンジン22から出力される動力の全部またはその一部が動力分配統合機構30とモータMG1とモータMG2とによるトルク変換を伴って要求動力がリングギヤ軸32aに出力されるようモータMG1およびモータMG2を駆動制御する充放電運転モード、エンジン22の運転を停止してモータMG2からの要求動力に見合う動力をリングギヤ軸32aに出力するよう運転制御するモータ運転モードなどがある。ここで、トルク変換運転モードは、充放電運転モードのうちバッテリ50の充放電が行なわれない状態であるから、実質的な制御における差異はないため、以下、両者を合わせてエンジン運転モードという。
【0019】
次に、こうして構成された実施例のハイブリッド自動車20の動作について説明する。図2はハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0020】
駆動制御ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、まず、アクセルペダルポジションセンサ84からのアクセル開度Accや車速センサ88からの車速V,モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2,バッテリ50の残容量SOC,バッテリ50の入出力制限Win,Wout,エンジン停止禁止フラグF1など制御に必要なデータを入力する処理を実行する(ステップS100)。ここで、モータMG1,MG2の回転数Nm1,Nm2は、回転位置検出センサ43,44により検出されたモータMG1,MG2の回転子の回転位置に基づいて演算されたものをモータECU40から通信により入力するものとした。また、バッテリ50の残容量SOCは、図示しない電流センサにより検出された充放電電流の積算値に基づいて演算されたものを、バッテリ50の入出力制限Win,Woutは、バッテリ50の電池温度Tbとバッテリ50の残容量SOCとに基づいて設定されたものを、それぞれバッテリECU52から通信により入力するものとした。さらに、エンジン停止禁止フラグF1は、図3に例示するエンジン停止禁止判定ルーチンにより、エンジン22の停止を許可するときに値0が設定され、エンジン22の停止を禁止するときに値1が設定されたものを入力するものとした。エンジン停止禁止判定の処理については、後述する。
【0021】
こうしてデータを入力すると、入力したアクセル開度Accと車速Vとに基づいて車両に要求されるトルクとして駆動輪63a,63bに連結された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すべき要求トルクTr*とエンジン22に要求される要求パワーPe*とを設定する(ステップS110)。要求トルクTr*は、実施例では、アクセル開度Accと車速Vと要求トルクTr*との関係を予め定めて要求トルク設定用マップとしてROM74に記憶しておき、アクセル開度Accと車速Vとが与えられると記憶したマップから対応する要求トルクTr*を導出して設定するものとした。図4に要求トルク設定用マップの一例を示す。要求パワーPe*は、設定した要求トルクTr*にリングギヤ軸32aの回転数Nrを乗じたものとバッテリ50が要求する充放電要求パワーPb*とロスLossとの和として計算することができる。なお、リングギヤ軸32aの回転数Nrは、車速Vに換算係数kを乗じること(Nr=k・V)によって求めたり、モータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで割ること(Nr=Nm2/Gr)によって求めることができる。
【0022】
続いて、入力したエンジン停止禁止フラグF1を調べ(ステップS120)、エンジン停止禁止フラグF1が値1、即ち、エンジン22の停止が禁止されているときには、前述のエンジン運転モードで走行すると判断し、設定した要求パワーPe*に基づいてエンジン22を運転すべき運転ポイントとしての目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する(ステップS150)。この設定は、エンジン22を効率よく動作させる動作ラインと要求パワーPe*とに基づいて行なわれる。エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を図5に示す。図示するように、目標回転数Ne*と目標トルクTe*は、動作ラインと要求パワーPe*(Ne*×Te*)が一定の曲線との交点により求めることができる。
【0023】
次に、設定した目標回転数Ne*とリングギヤ軸32aの回転数Nr(Nm2/Gr)と動力分配統合機構30のギヤ比ρとを用いて次式(1)によりモータMG1の目標回転数Nm1*を計算すると共に計算した目標回転数Nm1*と現在の回転数Nm1とに基づいて式(2)によりモータMG1のトルク指令Tm1*を計算する(ステップS160)。ここで、式(1)は、動力分配統合機構30の回転要素に対する力学的な関係式である。動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を図6に示す。図中、左のS軸はモータMG1の回転数Nm1であるサンギヤ31の回転数を示し、C軸はエンジン22の回転数Neであるキャリア34の回転数を示し、R軸はモータMG2の回転数Nm2を減速ギヤ35のギヤ比Grで除したリングギヤ32の回転数Nrを示す。式(1)は、この共線図を用いれば容易に導くことができる。なお、R軸上の2つの太線矢印は、モータMG1から出力されたトルクTm1がリングギヤ軸32aに作用するトルクと、モータMG2から出力されるトルクTm2が減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに作用するトルクとを示す。また、式(2)は、モータMG1を目標回転数Nm1*で回転させるためのフィードバック制御における関係式であり、式(2)中、右辺第2項の「k1」は比例項のゲインであり、右辺第3項の「k2」は積分項のゲインである。
【0024】
Nm1*=Ne*・(1+ρ)/ρ-Nm2/(Gr・ρ) (1)
Tm1*=前回Tm1*+k1(Nm1*-Nm1)+k2∫(Nm1*-Nm1)dt (2)
【0025】
こうしてモータMG1の目標回転数Nm1*とトルク指令Tm1*とを計算すると、バッテリ50の入出力制限Win,Woutと計算したモータMG1のトルク指令Tm1*に現在のモータMG1の回転数Nm1を乗じて得られるモータMG1の消費電力(発電電力)との偏差をモータMG2の回転数Nm2で割ることによりモータMG2から出力してもよいトルクの上下限としてのトルク制限Tmin,Tmaxを次式(3)および式(4)により計算すると共に(ステップS170)、要求トルクTr*とトルク指令Tm1*と動力分配統合機構30のギヤ比ρを用いてモータMG2から出力すべきトルクの仮の値である仮トルクTm2tmpを式(5)により計算し(ステップS180)、計算したトルク制限Tmin,Tmaxで仮トルクTm2tmpを制限した値としてモータMG2のトルク指令Tm2*を設定する(ステップS190)。ここで、式(5)は、前述した図6の共線図から容易に導き出すことができる。
【0026】
Tmin=(Win-Tm1*・Nm1)/Nm2 (3)
Tmax=(Wout-Tm1*・Nm1)/Nm2 (4)
Tm2tmp=(Tr*+Tm1*/ρ)/Gr (5)
【0027】
こうしてエンジン22の目標回転数Ne*や目標トルクTe*,モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定すると、エンジン22の目標回転数Ne*と目標トルクTe*についてはエンジンECU24に、モータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*についてはモータECU40にそれぞれ送信して(ステップS200)、駆動制御ルーチンを終了する。目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを受信したエンジンECU24は、エンジン22が目標回転数Ne*と目標トルクTe*とによって示される運転ポイントで運転されるようにエンジン22における燃料噴射制御や点火制御などの制御を行なう。また、トルク指令Tm1*,Tm2*を受信したモータECU40は、トルク指令Tm1*でモータMG1が駆動されると共にトルク指令Tm2*でモータMG2が駆動されるようインバータ41,42のスイッチング素子のスイッチング制御を行なう。こうした制御により、エンジン22の停止が禁止されているときには、エンジン運転モードが選択され、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を効率よく運転して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。なお、エンジン22の運転中は、エンジンECU24により、前述の学習条件の成立に応じてアイドル制御量の学習も行なわれる。
【0028】
ステップS120でエンジン停止禁止フラグF1が値0、即ち、エンジン22の停止が許可されているときには、設定したエンジン22の要求パワーPe*を閾値Prefと比較すると共に(ステップS130)、要求パワーPe*が閾値Pref未満のときには、入力したバッテリ50の残容量SOCを閾値Srefと比較する(ステップS140)。ここで、閾値Prefは、エンジン22を比較的効率よく運転することができるパワー領域の下限値近傍の値を用いるものとした。また、閾値Srefは、エンジン22を始動するために必要な電力量に相当する残容量より若干大きな値を用いるものとした。
【0029】
要求パワーPe*が閾値Pref以上のときや要求パワーPe*が閾値Pref未満でバッテリ50の残容量SOCが閾値Sref未満のときには、前述のエンジン運転モードで走行すると判断し、ステップS150〜S200の処理を実行して、駆動制御ルーチンを終了する。一方、要求パワーPe*が閾値Pref未満でバッテリ50の蓄電量SOCが閾値Sref以上のときには、前述のモータ運転モードで走行すると判断し、エンジン22が停止されるようエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*に値0を設定すると共に(ステップS210)、モータMG1のトルク指令Tm1*に値0を設定し(ステップS220)、設定した値0のトルク指令Tm1*を用いてモータMG2のトルク制限Tmin,Tmaxと仮トルクTm2tmpを計算し(ステップS170,S180)、計算した仮トルクTm2tmpをトルク制限Tmin,Tmaxで制限してモータMG2のトルク指令Tm2*を設定し(ステップS190)、各設定値を送信して(ステップS200)、駆動制御ルーチンを終了する。値0の目標回転数Ne*および目標トルクTe*を受信したエンジンECU24は、エンジン22の燃料噴射制御や点火制御などの制御が行なわれているときにはこれらの制御を停止する。こうして、モータ運転モードでは、バッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でモータMG2からリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。したがって、エンジン22の停止が許可されているときには、エンジン運転モードとモータ運転モードとの切り替えを伴って、即ち、エンジン22の間欠運転を伴って、リングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。なお、エンジン22の間欠運転におけるエンジン22の運転中は、エンジンECU24により、前述の学習条件の成立に応じてアイドル制御量の学習も行なわれる。以上、駆動制御について説明した。
【0030】
次に、エンジン停止禁止判定について説明する。図3に例示したエンジン停止禁止判定ルーチンは、ハイブリッド用電子制御ユニット70により、図2の駆動制御ルーチンと並行して所定時間毎(例えば数msec毎)に繰り返し実行される。
【0031】
図3のエンジン停止禁止判定ルーチンが実行されると、ハイブリッド用電子制御ユニット70のCPU72は、エコスイッチ89からのエコスイッチ信号ESWやアイドル学習フラグF2などのデータを入力し(ステップS300)、入力したアイドル学習フラグF2の値とエコスイッチ信号ESWのオンオフとを調べる(ステップS310,S320)。ここで、アイドル学習フラグF2は、イグニッションオンされた以降にアイドル制御量の学習が完了するまでは値0が設定され、アイドル制御量の学習が完了したときに値1が設定されるフラグとして、エンジンECU24により設定されたものを通信により入力するものとした。
【0032】
アイドル学習フラグF2が値1のとき、即ち、アイドル制御量の学習が完了しているときには、エンジン22の停止を許可するよう、エンジン停止禁止フラグF1に値0を設定する(ステップS330)。また、アイドル学習フラグF2が値0のとき、即ち、アイドル制御量の学習が完了していない状態で、エコスイッチ信号ESWがオフのときには、エンジン22の停止を禁止するようエンジン停止禁止フラグF1に値1を設定する(ステップS340)。これにより、前述の駆動制御においてエンジン22の運転が継続されるから、エンジンECU24によりアイドル制御量を学習することができる。さらに、アイドル制御量の学習が完了していない状態で、エコスイッチ信号ESWがオンのときには、エンジン22の停止を許可するようエンジン停止禁止フラグF1に値0を設定して(ステップS330)、エンジン停止禁止判定ルーチンを終了する。これにより、前述の駆動制御においてエンジン22が間欠運転されるから、エンジン22を運転している最中にエンジンECU24によりアイドル制御量を学習することができ、オン信号としてのエコスイッチ信号ESWに応じてエンジン22の停止を許可するから、燃費の向上を図ることができる。この結果、アイドル制御量の学習と燃費の向上との両立を図ることができる。
【0033】
以上説明した実施例のハイブリッド自動車20によれば、アイドル制御量の学習が完了していないときにエコスイッチ信号ESWがオフのときには、エンジン22の停止を禁止すると共にエンジン22の運転を継続して学習条件の成立に応じたアイドル制御量の学習を行ない、アイドル制御量の学習が完了していないときにエコスイッチ信号ESWがオンのときには、エンジン22の停止を許可すると共にエンジン22を間欠運転してエンジン22を運転している最中に学習条件の成立に応じたアイドル制御量の学習を行なうから、アイドル制御量の学習と燃費の向上との両立を図ることができる。もとより、アイドル制御量の学習が完了しているか否かやエコスイッチ信号ESWのオンオフに拘わらず、駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行することができる。
【0034】
実施例のハイブリッド自動車20では、減速ギヤ35を介して駆動軸としてのリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしたが、リングギヤ軸32aにモータMG2を直接取り付けるものとしてもよいし、減速ギヤ35に代えて2段変速や3段変速,4段変速などの変速機を介してリングギヤ軸32aにモータMG2を取り付けるものとしても構わない。
【0035】
実施例のハイブリッド自動車20では、モータMG2の動力を減速ギヤ35により変速してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図7の変形例のハイブリッド自動車120に例示するように、モータMG2の動力をリングギヤ軸32aが接続された車軸(駆動輪63a,63bが接続された車軸)とは異なる車軸(図7における車輪64a,64bに接続された車軸)に接続するものとしてもよい。
【0036】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22の動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図8の変形例のハイブリッド自動車220に例示するように、エンジン22のクランクシャフト26に接続されたインナーロータ232と駆動輪63a,63bに動力を出力する駆動軸に接続されたアウターロータ234とを有し、エンジン22の動力の一部を駆動軸に伝達すると共に残余の動力を電力に変換する対ロータ電動機230を備えるものとしてもよい。
【0037】
実施例のハイブリッド自動車20では、エンジン22からの動力を動力分配統合機構30を介して駆動輪63a,63bに接続された駆動軸としてのリングギヤ軸32aに出力すると共にモータMG2からの動力を減速ギヤ35を介してリングギヤ軸32aに出力するものとしたが、図9の変形例のハイブリッド自動車320に例示するように、エンジン22の動力を変速機330を介して駆動輪63a,63bに接続された車軸に出力すると共にモータMGからの動力を駆動輪63a,63bが接続された車軸とは異なる車軸(図9における車輪64a,64bに接続された車軸)に出力するものとしてもよい。即ち、走行用の動力を出力するエンジンと走行用の動力を出力する電動機とを備えるものであれば如何なるタイプのハイブリッド自動車としても構わない。
【0038】
また、こうしたハイブリッド自動車に適用するものに限定されるものではなく、自動車以外の列車などの車両や、車両の制御方法の形態としてもよい。
【0039】
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。実施例では、エンジン22が「内燃機関」に相当し、モータMG2が「電動機」に相当し、バッテリ50が「蓄電手段」に相当し、エコスイッチ89が「燃費優先指示スイッチ」に相当し、アイドル学習フラグF2とエコスイッチ信号ESWのオンオフとに基づいてエンジン停止禁止フラグF1を設定する図3のエンジン停止禁止判定ルーチンと、エンジン停止禁止フラグF1が停止の禁止を示す値1のときにはエンジン運転モードでバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を効率よく運転して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行するようエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*とモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定してエンジンECU24やモータECU40に送信したり、エンジン停止禁止フラグF1が停止の許可を示す値0のときにはエンジン22の要求パワーPe*とバッテリ50の残容量SOCとを各閾値と比較した結果に応じてエンジン運転モードではバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を効率よく運転してリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行するようエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*とモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定したりモータ運転モードではバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を停止してモータMG2からリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行するようエンジン22の値0の目標回転数Ne*および目標トルクTe*とモータMG1の値0のトルク指令Tm1*とモータMG2のトルク指令Tm2*とを設定してエンジンECU24やモータECU40に送信する図2の駆動制御ルーチンとを実行するハイブリッド用電子制御ユニット70と、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を制御すると共にエンジン22の運転中は学習条件の成立に応じてアイドル制御量の学習を行なうエンジンECU24と、トルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するモータECU40とが「制御手段」に相当する。また、動力分配統合機構30とモータMG1とが「電力動力入出力手段」に相当し、モータMG1が「発電機」に相当し、動力分配統合機構30が「3軸式動力入出力手段」に相当し、対ロータ電動機230も「電力動力入出力手段」に相当する。
【0040】
ここで、「内燃機関」としては、ガソリンまたは軽油などの炭化水素系の燃料により動力を出力する内燃機関に限定されるものではなく、水素エンジンなど如何なるタイプの内燃機関であっても構わない。「電動機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG2に限定されるものではなく、誘導電動機など、走行用の動力を出力するものであれば如何なるタイプの電動機であっても構わない。「蓄電手段」としては、二次電池としてのバッテリ50に限定されるものではなく、キャパシタなど、電動機と電力のやりとりが可能であれば如何なるものとしても構わない。「燃費優先指示スイッチ」としては、エコスイッチ89に限定されるものではなく、燃費の優先を指示するものであれば如何なるものとしても構わない。「制御手段」としては、ハイブリッド用電子制御ユニット70とエンジンECU24とモータECU40とからなる組み合わせに限定されるものではなく単一の電子制御ユニットにより構成されるなどとしてもよい。また、「制御手段」としては、アイドル学習フラグF2とエコスイッチ信号ESWのオンオフとに基づいてエンジン停止禁止フラグF1を設定し、エンジン停止禁止フラグF1が停止の禁止を示す値1のときにはエンジン運転モードでバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を効率よく運転して駆動軸としてのリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行するようエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*とモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定したり、エンジン停止禁止フラグF1が停止の許可を示す値0のときにはエンジン22の要求パワーPe*とバッテリ50の残容量SOCとを各閾値と比較した結果に応じてエンジン運転モードではバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を効率よく運転してリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行するようエンジン22の目標回転数Ne*および目標トルクTe*とモータMG1,MG2のトルク指令Tm1*,Tm2*を設定しモータ運転モードではバッテリ50の入出力制限Win,Woutの範囲内でエンジン22を停止してモータMG2からリングギヤ軸32aに要求トルクTr*を出力して走行するようエンジン22の値0の目標回転数Ne*および目標トルクTe*とモータMG1の値0のトルク指令Tm1*とモータMG2のトルク指令Tm2*とを設定して、目標回転数Ne*と目標トルクTe*とに基づいてエンジン22を制御すると共にエンジン22の運転中は学習条件の成立に応じてアイドル制御量の学習を行ないトルク指令Tm1*,Tm2*に基づいてモータMG1,MG2を制御するものに限定されるものではなく、内燃機関をアイドル運転する際の制御量を所定の学習条件の成立に応じて学習するアイドル制御量学習が完了しているときには内燃機関を間欠運転しながら走行に要求される要求駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御し、アイドル制御量学習が完了していないときに燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されていないときには内燃機関の運転を継続しながらアイドル制御量学習を実行すると共に要求駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御し、アイドル制御量学習が完了していないときに燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されているときには内燃機関を間欠運転して内燃機関を運転している最中にアイドル制御量学習を実行すると共に要求駆動力により走行するよう内燃機関と電動機とを制御するものであれば如何なるものとしても構わない。「電力動力入出力手段」としては、動力分配統合機構30とモータMG1とを組み合わせたものや対ロータ電動機230に限定されるされるものではなく、蓄電手段と電力のやりとりが可能で、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に駆動軸とは独立に回転可能に内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って出力軸と駆動軸とに動力を入出力可能なものであれば如何なるものとしても構わない。「発電機」としては、同期発電電動機として構成されたモータMG1に限定されるものではなく、誘導電動機など、動力を入出力可能なものであれば如何なるタイプの発電機としても構わない。「3軸式動力入出力手段」としては、上述の動力分配統合機構30に限定されるものではなく、ダブルピニオン式の遊星歯車機構を用いるものや複数の遊星歯車機構を組み合わせて4以上の軸に接続されるものやデファレンシャルギヤのように遊星歯車とは異なる差動作用を有するものなど、駆動軸と出力軸と発電機の回転軸との3軸に接続され3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力するものであれば如何なるものとしても構わない。なお、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載した発明を実施するための最良の形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。即ち、課題を解決するための手段の欄に記載した発明についての解釈はその欄の記載に基づいて行なわれるべきものであり、実施例は課題を解決するための手段の欄に記載した発明の具体的な一例に過ぎないものである。
【0041】
以上、本発明を実施するための最良の形態について実施例を用いて説明したが、本発明はこうした実施例に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々なる形態で実施し得ることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、車両の製造産業などに利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の一実施例としてのハイブリッド自動車20の構成の概略を示す構成図である。
【図2】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行される駆動制御ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図3】実施例のハイブリッド用電子制御ユニット70により実行されるエンジン停止禁止判定ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【図4】要求トルク設定用マップの一例を示す説明図である。
【図5】エンジン22の動作ラインの一例と目標回転数Ne*と目標トルクTe*とを設定する様子を示す説明図である。
【図6】動力分配統合機構30の回転要素における回転数とトルクとの力学的な関係を示す共線図の一例を示す説明図である。
【図7】変形例のハイブリッド自動車120の構成の概略を示す構成図である。
【図8】変形例のハイブリッド自動車220の構成の概略を示す構成図である。
【図9】変形例のハイブリッド自動車320の構成の概略を示す構成図である。
【符号の説明】
【0044】
20,120,220,320 ハイブリッド自動車、22 エンジン、23 水温センサ、24 エンジン用電子制御ユニット(エンジンECU)、23 水温センサ、26 クランクシャフト、28 ダンパ、30 動力分配統合機構、31 サンギヤ、32 リングギヤ、32a リングギヤ軸、33 ピニオンギヤ、34 キャリア、35 減速ギヤ、40 モータ用電子制御ユニット(モータECU)、41,42 インバータ、43,44 回転位置検出センサ、50 バッテリ、51 温度センサ、52 バッテリ用電子制御ユニット(バッテリECU)、54 電力ライン、60 ギヤ機構、62 デファレンシャルギヤ、63a,63b 駆動輪、64a,64b 車輪、70 ハイブリッド用電子制御ユニット、72 CPU、74 ROM、76 RAM、80 イグニッションスイッチ、81 シフトレバー、82 シフトポジションセンサ、83 アクセルペダル、84 アクセルペダルポジションセンサ、85 ブレーキペダル、86 ブレーキペダルポジションセンサ、88 車速センサ、89 エコスイッチ、230 対ロータ電動機、232 インナーロータ 234 アウターロータ、330 変速機、MG1,MG2,MG モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力を出力する内燃機関と、
走行用の動力を出力する電動機と、
前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、
燃費の優先を指示する燃費優先指示スイッチと、
前記内燃機関をアイドル運転する際の制御量を所定の学習条件の成立に応じて学習するアイドル制御量学習が完了しているときには前記内燃機関を間欠運転しながら走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記アイドル制御量学習が完了していないときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されていないときには前記内燃機関の運転を継続しながら前記アイドル制御量学習を実行すると共に前記要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記アイドル制御量学習が完了していないときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されているときには前記内燃機関を間欠運転して該内燃機関を運転している最中に前記アイドル制御量学習を実行すると共に前記要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する制御手段と、
を備える車両。
【請求項2】
前記所定の学習条件は、前記内燃機関の冷却水温が所定温度以上となるのを含む条件である請求項1記載の車両。
【請求項3】
前記内燃機関をアイドル運転する際の制御量は、前記内燃機関をアイドル運転する際のスロットル開度である請求項1または2記載の車両。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1つの請求項に記載の車両であって、
前記蓄電手段と電力のやりとりが可能で、車軸に連結された駆動軸に接続されると共に該駆動軸とは独立に回転可能に前記内燃機関の出力軸に接続され、電力と動力の入出力を伴って前記出力軸と前記駆動軸とに動力を入出力可能な電力動力入出力手段を備え、
前記電動機は、前記駆動軸に動力を入出力可能に取り付けられてなる、
車両。
【請求項5】
前記電力動力入出力手段は、動力を入出力可能な発電機と、前記駆動軸と前記出力軸と前記発電機の回転軸との3軸に接続され該3軸のうちのいずれか2軸に入出力される動力に基づいて残余の軸に動力を入出力する3軸式動力入出力手段と、を備える手段である請求項4記載の車両。
【請求項6】
走行用の動力を出力する内燃機関と、走行用の動力を出力する電動機と、前記電動機と電力のやり取りが可能な蓄電手段と、燃費の優先を指示する燃費優先指示スイッチと、を備える車両の制御方法であって、
前記内燃機関をアイドル運転する際の制御量を所定の学習条件の成立に応じて学習するアイドル制御量学習が完了しているときには前記内燃機関を間欠運転しながら走行に要求される要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記アイドル制御量学習が完了していないときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されていないときには前記内燃機関の運転を継続しながら前記アイドル制御量学習を実行すると共に前記要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御し、前記アイドル制御量学習が完了していないときに前記燃費優先指示スイッチにより燃費の優先が指示されているときには前記内燃機関を間欠運転して該内燃機関を運転している最中に前記アイドル制御量学習を実行すると共に前記要求駆動力により走行するよう前記内燃機関と前記電動機とを制御する、
ことを特徴とする車両の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−274553(P2009−274553A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126909(P2008−126909)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】