説明

車両の制御装置

【課題】車両のブレーキとアクセルの両方を踏み込んだ時の安全性とドライバビリティを両立させる。
【解決手段】アクセルセンサ12とブレーキスイッチ13の出力に基づいてアクセルとブレーキの両方が踏み込まれていると判断したときに、駆動源11の出力を制限する出力制限制御を実行する機能を備えた車両において、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図を検出する運転者意図検出手段として出力制限禁止スイッチ19を設ける。運転者が出力制限禁止スイッチ19をオン操作したか否かで、運転者が出力制限制御を実行したくないという意図を持っているか否かを判定し、運転者が出力制限制御を実行したくないという意図を持っていると判定されれば、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれていても、出力制限制御を実行せず、アクセルセンサ12で検出した実アクセル開度に応じて駆動源11の出力を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の駆動源としてエンジンとモータの少なくとも一方を搭載した車両のブレーキとアクセルの両方を踏み込んだ時の安全性を向上させた車両の制御装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1(特開2005−291030号公報)には、運転者が間違えてアクセルペダルとブレーキペダルを同時に踏み込むことに起因する車両の暴走を防ぐことを目的として、アクセルペダルとブレーキペダルが同時に所定値以上踏み込まれたことを検出したときにエンジンを強制的にアイドル状態にすることが記載されている。
【0003】
また、特許文献2(特表平2−502558号公報)には、ブレーキとアクセルが同時に操作されたときに駆動出力を所定の小さい値に減少させる安全回路において、ブレーキの操作が検出されても、運転者が新たにアクセルペダルを踏み込んだことをアクセルセンサの出力の時間微分値により検出したときには、安全回路を作動させないようにすることが記載されている。
【0004】
また、特許文献3(US6881174号公報)には、ブレーキとアクセルが同時に操作されたときにそれぞれの操作量に基づいてブレーキ要求がアクセル要求より大きいと判断した場合に、エンジン出力を抑制することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−291030号公報
【特許文献2】特表平2−502558号公報
【特許文献3】US6881174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
例えば、坂道発進時(特に牽引時の坂道発進時)には、車両の後退を防ぐために、運転者がブレーキを踏み込みながら、アクセルを踏み込んで発進する場合がある。また、ダウンシフト時のクラッチミート回転数合わせのために、いわゆるヒール・アンド・トゥによりアクセルとブレーキの両方を同時に踏み込む場合がある。
【0007】
しかし、従来技術では、運転者が上記のような意図を持ってアクセルとブレーキの両方を踏み込んでも、運転者の意図に反して出力制限制御が実行されてしまい、運転者の意図する運転を実現できず、ドライバビリティが悪化してしまう。
【0008】
また、特許文献3の技術では、アクセルとブレーキの同時踏み込み時にブレーキ要求がアクセル要求より大きいと判断した場合にエンジン出力を抑制するようになっているため、アクセルとブレーキの同時踏み込み時に運転者がアクセルをブレーキと間違えて強く踏み込むと、出力制限制御が実行されず、安全性が低下してしまう。特許文献2の技術でも、同様の問題が発生する。
【0009】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、車両のブレーキとアクセルの両方を踏み込んだ時の安全性とドライバビリティを両立させることができる車両の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、車両の駆動源としてエンジンとモータの少なくとも一方を搭載した車両の制御装置において、アクセル操作を検出するアクセル操作検出手段と、ブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段と、前記アクセル操作検出手段でアクセル操作が検出され且つ前記ブレーキ操作検出手段でブレーキ操作が検出された状態になったときに前記駆動源の出力を制限する出力制限制御を実行する出力制限手段と、前記出力制限制御を実行したくないという運転者の意図を検出する運転者意図検出手段とを備え、前記運転者意図検出手段で前記出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出されたときに前記出力制限制御を禁止するようにしたものである。
【0011】
本発明のように、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図を検出する運転者意図検出手段を設け、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出されたときに出力制限制御を禁止するようにすれば、運転者が意図を持ってアクセルとブレーキの両方を踏み込む場合には、運転者の意図を優先して出力制限制御が実行されず、ドライバビリティを向上できる。一方、運転者が間違ってアクセルとブレーキの両方を踏み込んだ場合には、ブレーキ要求とアクセル要求の大小関係を問わず、確実に出力制限制御を実行できて、安全性を向上できる。これにより、アクセルとブレーキの両方を踏み込んだ時の安全性とドライバビリティを両立させることができる。
【0012】
この場合、請求項2のように、運転者意図検出手段で出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された後に当該運転者の意図が検出されなくなったときに出力制限制御の禁止を解除するようにすれば良い。出力制限制御の禁止を解除すれば、運転者がアクセルとブレーキの両方を踏み込んだときに確実に出力制限制御を実行できる。
【0013】
また、請求項3のように、運転者が交替する可能性がある状態になったことを検出する運転者交替可能性検出手段を備え、前記運転者意図検出手段で出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された後に前記運転者交替可能性検出手段で運転者が交替する可能性がある状態になったことが検出されたときに出力制限制御の禁止を解除するようにしても良い。このようにすれば、交替前の運転者の意図によって出力制限制御が禁止された状態になっていても、運転者の交替により出力制限制御の禁止を自動的に解除することができ、交替後の運転者が間違ってアクセルとブレーキの両方を踏み込んだときに確実に出力制限制御を実行できる。
【0014】
また、請求項4のように、アクセル操作検出手段でアクセル操作が検出され且つブレーキ操作検出手段でブレーキ操作が検出された状態になったときに駆動源の出力を制限する出力制限制御を実行する出力制限手段と、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図を検出する運転者意図検出手段とを備え、前記運転者意図検出手段で前記出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された場合に、前記アクセル操作検出手段と前記ブレーキ操作検出手段の検出結果を比較して、ブレーキ操作の方がアクセル操作よりも先に検出されたときには前記出力制限制御を実行せず、アクセル操作の方がブレーキ操作よりも先に検出されたときのみ前記出力制限制御を実行する限定的な出力制限制御に切り換えるようにしても良い。
【0015】
一般に、運転者が意図を持ってアクセルとブレーキの両方を踏み込む場合は、先にブレーキを踏み込んだ後にアクセルを踏み込むと思われるため、請求項4のように、運転者意図検出手段で出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された場合に、ブレーキ操作の方がアクセル操作よりも先に検出されたときに出力制限制御を実行しないようにすれば、運転者が意図を持って先にブレーキを踏み込んでからアクセルを踏み込む場合に駆動源の出力が制限されることを防止できて、ドライバビリティを向上できる。しかも、運転者意図検出手段で出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された場合でも、アクセル操作の方がブレーキ操作よりも先に検出されたときには、運転者の操作ミスの可能性があることを考慮して、出力制限制御を実行でき、安全性を向上できる。
【0016】
この場合、請求項5のように、運転者意図検出手段で出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された後に当該運転者の意図が検出されなくなったときに前記限定的な出力制限制御を解除してアクセル操作とブレーキ操作の先後を問わず駆動源の出力を制限する元の出力制限制御に復帰するようにすれば良い。限定的な出力制限制御を解除して元の出力制限制御に復帰すれば、運転者が先にブレーキを踏み込んだ後にアクセルを踏み込む場合でも確実に出力制限制御を実行できる。
【0017】
また、請求項6のように、運転者が交替する可能性がある状態になったことを検出する運転者交替可能性検出手段を備え、運転者意図検出手段で出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された後に運転者交替可能性検出手段で運転者が交替する可能性がある状態になったことが検出されたときに前記限定的な出力制限制御を解除してアクセル操作とブレーキ操作の先後を問わず駆動源の出力を制限する元の出力制限制御に復帰するようにしても良い。このようにすれば、交替前の運転者の意図によって限定的な出力制限制御に切り換えられた状態になっていても、運転者の交替により限定的な出力制限制御から自動的に元の出力制限制御に戻すことができ、交替後の運転者が先にブレーキを踏み込んだ後にアクセルを踏み込む場合でも確実に出力制限制御を実行できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は本発明の実施例1のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】図2は実施例1の出力制限制御プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】図3は実施例1の出力制限制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【図4】図4は実施例2の出力制限制御プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】図5は実施例2の出力制限制御の実行例を説明するタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための形態を具体化した2つの実施例1,2を説明する。
【実施例1】
【0020】
本発明の実施例1を図1乃至図3に基づいて説明する。
まず、図1に基づいて本発明の実施例1のシステム構成を説明する。
車両には、駆動源11としてエンジンとモータの両方又はいずれか一方が搭載されている。例えば、エンジンのみを駆動源11とする車両、エンジンとモータの両方を駆動源11とするハイブリッド車両、モータのみを駆動源11とする電気自動車のいずれであっても良い。
【0021】
車両には、アクセル操作量(アクセル開度)を検出する少なくとも1つのアクセルセンサ12(アクセル操作検出手段)と、ブレーキ操作/解除に応じてオン/オフする少なくとも1つのブレーキスイッチ13(ブレーキ操作検出手段)と、車速を検出する少なくとも1つの車速センサ15と、駆動源11の回転速度を検出する回転速度センサ16等が搭載され、これら各種センサやスイッチの信号が駆動源11の出力を制御する電子制御ユニット(以下「ECU」と表記する)17に入力される。
【0022】
ECU17は、車両運転中にアクセルセンサ12で検出したアクセル開度(アクセル操作量)等に基づいて目標出力を設定し、駆動源11の出力が目標出力となるように出力調整手段18を操作して駆動源11の出力を目標出力に調整する。例えば、エンジンのみを駆動源11とする車両では、出力調整手段18は、スロットル開度を電子制御する電子スロットルシステムや、燃料噴射量を制御する燃料噴射制御システム等であり、モータのみを駆動源11とする電気自動車では、出力調整手段18は、モータ出力を調整するインバータ装置である。ハイブリッド車両では、エンジンとモータの両方の出力調整手段18が併設される。
【0023】
本実施例1では、ECU17は、アクセルセンサ12とブレーキスイッチ13の信号に基づいてアクセルとブレーキの両方が踏み込まれていると判断したときに、出力調整手段18に出力する指令出力(目標出力)を所定値以下に制限して駆動源11の出力を所定値以下に制限する出力制限制御を実行する。ここで、駆動源11の出力制限値は、アイドル時の出力値よりも大きく、比較的安全な低速走行が可能な出力が確保されるように設定されている。
【0024】
本実施例1では、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれていると判断したときに、指令出力の演算に用いる制御用アクセル開度を所定の制限値cACCRESTに設定することで、駆動源11の出力を所定値以下に制限する。或は、出力調整手段18に出力する指令出力を所定の制限値に設定するようにしても良い。
【0025】
ところで、坂道発進時(特に牽引時の坂道発進時)には、車両の後退を防ぐために、運転者がブレーキを踏み込みながら、アクセルを踏み込んで発進する場合がある。また、ダウンシフト時のクラッチミート回転数合わせのために、いわゆるヒール・アンド・トゥによりアクセルとブレーキの両方を同時に踏み込む場合がある。これらの場合に、出力制限制御を実行すると、運転者の意図する運転を実現できず、ドライバビリティが悪化してしまう。
【0026】
そこで、本実施例1では、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図を検出する運転者意図検出手段として出力制限禁止スイッチ19を設け、運転者が出力制限制御を実行したくないという意図を持つ場合は、運転者が出力制限禁止スイッチ19をオン操作するようになっている。ECU17は、出力制限禁止スイッチ19がオンされているか否かで、運転者が出力制限制御を実行したくないという意図を持っているか否かを判定し、運転者が出力制限制御を実行したくないという意図を持っていると判定した場合は、出力制限制御を禁止するようにしている。そして、運転者が出力制限禁止スイッチ19をオンからオフに切り換えたときに、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が無くなったと判断して、出力制限制御の禁止を解除するようにしている。
【0027】
ここで、運転者意図検出手段は、出力制限禁止スイッチ19等の専用のスイッチに限定されず、例えば、ハザードランプスイッチ等の既存の操作スイッチを利用して、ハザードランプスイッチ等の既存の操作スイッチをオン操作又は特殊なパターンで操作することで、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図をECU17に入力するようにしても良い。或は、表示装置の表示画面に出力制限制御を実行したくないか否かを切り換える項目を表示させて、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図を表示画面上で運転者が入力するようにしても良い。或は、運転者が出力制限制御を実行したくないという意図を持つ場合に、アクセル又はブレーキを少しだけ踏み込む操作を連続して所定回数行う等、特殊なパターンで操作することで、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図をECU17に入力するようにしても良い。
【0028】
更に、本実施例1では、運転者が交替する可能性がある状態になったことを検出する運転者交替可能性検出手段を備え、運転者意図検出手段で出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された後に運転者交替可能性検出手段で運転者が交替する可能性がある状態になったことが検出されたときに、出力制限禁止スイッチ19を強制的にオフさせる等して、出力制限制御の禁止を解除するようにしている。
【0029】
ここで、運転者交替可能性検出手段は、例えば、次の(1) 〜(8) のいずれかを検出することで、運転者が交替する可能性がある状態になったことを検出するようにすれば良い。
【0030】
(1) イグニッションスイッチのオフ(運転終了の検出)
(2) 運転席のドアスイッチによりドア開放を検出すること
(3) ハザードランプスイッチのオフ(ハザードランプスイッチを運転者意図検出手段として使用する場合)
(4) 運転席のシートベルトスイッチによりシートベルトが開放されたことを検出すること
(5) 運転席の着座センサにより運転者が運転席から降りたことを検出すること
(6) アクセルとブレーキが操作されない状態が所定時間以上続くこと
(7) パーキングブレーキスイッチのオン(パーキングブレーキの作動)
(8) Pレンジ又はNレンジの状態が所定時間以上続くこと
【0031】
以上説明した本実施例1の出力制限制御は、ECU17によって図2の出力制限制御プログラムに従って次のように実行される。図2の出力制限制御プログラムは、ECU17の電源オン期間中に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう出力制限手段としての役割を果たす。本プログラムでは、運転者意図検出手段として出力制限禁止スイッチ19を使用している。
【0032】
本プログラムが起動されると、まず、ステップ100で、出力制限禁止スイッチ19がオフ(OFF)であるか否かで、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が無いか否かを判定する。その結果、出力制限禁止スイッチ19がオン(出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出されている)と判定されれば、出力制限制御が禁止されていると判断して、ステップ104に進み、アクセルセンサ12で検出した実アクセル開度を、そのまま指令出力の演算に用いる制御用アクセル開度に設定する。
制御用アクセル開度=実アクセル開度
【0033】
従って、出力制限禁止スイッチ19がオンの場合(出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出されている場合)は、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれていても、出力制限制御が実行されず、アクセルセンサ12で検出した実アクセル開度に応じて駆動源11の出力が制御される。
【0034】
一方、上記ステップ100で、出力制限禁止スイッチ19がオフ(出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出されていない)と判定されれば、出力制限制御が禁止されていないと判断して、ステップ101に進み、アクセルセンサ12で検出した実アクセル開度が所定開度cACCTHRESHよりも大きいか否かを判定する。ここで、所定開度cACCTHREは、後述する所定の制限値cACCRESTと同一の値又はそれよりも少し大きな値に設定されている。
【0035】
このステップ101で、実アクセル開度が所定開度cACCTHRESH以下であると判定されれば、ブレーキとアクセルの両方踏み込み時でも実アクセル開度が小さいため、駆動源11の出力制限を行う必要がないと判断して、ステップ104に進み、アクセルセンサ12で検出した実アクセル開度をそのまま制御用アクセル開度に設定する。
【0036】
これに対し、上記ステップ101で、実アクセル開度が所定開度cACCTHRESHより大きいと判定されれば、ステップ102に進み、ブレーキスイッチ13がオン(ON)であるか否かを判定し、ブレーキスイッチ13がオフ(OFF)であると判定されれば、ブレーキが踏み込まれていないため、駆動源11の出力制限を行う必要がないと判断して、ステップ104に進み、アクセルセンサ12で検出した実アクセル開度をそのまま制御用アクセル開度に設定する。
【0037】
一方、上記ステップ102で、ブレーキスイッチ13がオンであると判定されれば、アクセルが所定開度cACCTHRESH以上踏み込まれた状態でブレーキも踏み込まれて出力制限実行条件が成立していると判断して、ステップ103に進み、指令出力の演算に用いる制御用アクセル開度を所定の制限値cACCRESTに設定することで、駆動源11の出力を所定値以下に制限する。
制御用アクセル開度=制限値cACCREST
【0038】
尚、出力制限実行条件が成立してから実際に駆動源11の出力制限が開始されるまでに所定の実行ディレイ時間を設けるようにしても良く、同様に、出力制限から通常の制御に復帰する場合も所定の実行ディレイ時間を設けるようにしても良い。ここで、実行ディレイ時間は、ブレーキスイッチ13のオン/オフ切換時のチャタリング等による出力制限の頻繁な切り換えを防止するための時間である。
【0039】
以上説明した本実施例1の出力制限制御の実行例を図3を用いて説明する。図3の例では、出力制限の開始時と復帰時に所定の実行ディレイ時間を設けている。
図3の例では、時刻t1 で、出力制限禁止スイッチ19がオン操作されて出力制限制御が禁止される。この後は、アクセルセンサ12で所定開度cACCTHRESH以上のアクセルの踏み込みが検出された状態で、ブレーキが踏み込まれてブレーキスイッチ13がオンされても、出力制限制御が実行されず、アクセルセンサ12で検出した実アクセル開度がそのまま制御用アクセル開度に設定されて、実アクセル開度に応じて駆動源11の出力が制御される。
【0040】
尚、出力制限禁止スイッチ19がオフの間(t1 以前)は、アクセルセンサ12で所定開度cACCTHRESH以上のアクセルの踏み込みが検出され且つブレーキが踏み込まれてブレーキスイッチ13がオンされた状態となれば、出力制限実行条件が成立していると判断され、所定の実行ディレイ時間が経過した後に駆動源11の出力制限が実行される。
【0041】
以上説明した本実施例1によれば、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出されたときに出力制限制御を禁止するようにしているため、運転者が意図を持ってアクセルとブレーキの両方を踏み込む場合には、運転者の意図を優先して出力制限制御が実行されず、ドライバビリティを向上できる。一方、運転者が間違ってアクセルとブレーキの両方を踏み込んだ場合には、確実に出力制限制御を実行できて、安全性を向上できる。これにより、アクセルとブレーキの両方を踏み込んだ時の安全性とドライバビリティを両立させることができる。
【0042】
しかも、本実施例1では、運転者が交替する可能性がある状態になったことを検出する運転者交替可能性検出手段を備え、前記運転者意図検出手段で出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された後に前記運転者交替可能性検出手段で運転者が交替する可能性がある状態になったことが検出されたときに出力制限制御の禁止を解除するようにしたので、交替前の運転者の意図によって出力制限制御が禁止された状態になっていても、運転者の交替により出力制限制御の禁止を自動的に解除することができ、交替後の運転者が間違ってアクセルとブレーキの両方を踏み込んだときに確実に出力制限制御を実行できる。
【実施例2】
【0043】
次に、図4及び図5を用いて本発明の実施例2を説明する。
システム構成は、前記実施例1と同じであり、同一符号を付して説明を省略する。
本実施例2においても、アクセルセンサ12で所定開度cACCTHRESH以上のアクセルの踏み込みが検出され且つブレーキが踏み込まれてブレーキスイッチ13がオンされたときに出力制限制御を実行する出力制限手段と、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図を検出する出力制限禁止スイッチ19等の運転者意図検出手段を備えている。
【0044】
前記実施例1では、出力制限禁止スイッチ19等の運転者意図検出手段で出力制限制御を実行したくないという運転者の意図を検出した場合に、出力制限制御を禁止して、アクセルとブレーキの両方が踏み込まれていても、出力制限制御を実行しないようにしたが、一般に、運転者が意図を持ってアクセルとブレーキの両方を踏み込む場合は、先にブレーキを踏み込んだ後にアクセルを踏み込むと思われるため、本実施例2では、出力制限禁止スイッチ19等の運転者意図検出手段で出力制限制御を実行したくないという運転者の意図を検出した場合に、アクセルセンサ12とブレーキスイッチ13の検出結果を比較して、ブレーキ操作の方がアクセル操作よりも先に検出されたときには、出力制限制御を実行せず、アクセル操作の方がブレーキ操作よりも先に検出されたときのみ出力制限制御を実行する限定的な出力制限制御に切り換えるようにしている。
【0045】
本実施例2でも、運転者意図検出手段は、前記実施例1と同様に、出力制限禁止スイッチ19等の専用のスイッチに限定されず、例えば、ハザードランプスイッチ等の既存の操作スイッチを利用したり、表示装置の表示画面に出力制限制御を実行したくないか否かを切り換える項目を表示させて運転者の意図を表示画面上で運転者が入力するようにしたり、アクセル又はブレーキを特殊なパターンで操作したりして、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図をECU17に入力するようにしても良い。
【0046】
この場合、運転者意図検出手段で出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された後に当該運転者の意図が検出されなくなったときに、前記限定的な出力制限制御を解除してアクセル操作とブレーキ操作の先後を問わず駆動源の出力を制限する元の出力制限制御に復帰させるようにしている。限定的な出力制限制御から元の出力制限制御に復帰すれば、運転者が先にブレーキを踏み込んだ後にアクセルを踏み込む場合でも確実に出力制限制御を実行できる。
【0047】
更に、前記実施例1と同様に、運転者が交替する可能性がある状態になったことを検出する運転者交替可能性検出手段を備え、運転者意図検出手段で出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された後に運転者交替可能性検出手段で運転者が交替する可能性がある状態になったことが検出されたときに、出力制限禁止スイッチ19を強制的にオフさせる等して、限定的な出力制限制御を解除してアクセル操作とブレーキ操作の先後を問わず駆動源11の出力を制限する元の出力制限制御に復帰させるようにしている。運転者交替可能性検出手段は、前記実施例1で説明したものと同じものを用いれば良い。
【0048】
本実施例2の出力制限制御は、ECU17によって図4の出力制限制御プログラムに従って実行される。図4の出力制限制御プログラムは、ECU17の電源オン期間中に所定周期で繰り返し実行され、特許請求の範囲でいう出力制限手段としての役割を果たす。
【0049】
本プログラムが起動されると、まず、ステップ200で、出力制限禁止スイッチ19がオフ(OFF)であるか否かで、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が無いか否かを判定し、出力制限禁止スイッチ19がオフ(出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出されていない)と判定されれば、前記実施例1で説明した図4のステップ101〜104と同様の処理を実行する(ステップ201〜204)。これにより、所定開度cACCTHRESH以上のアクセル操作とブレーキ操作(ブレーキスイッチ13のオン)が両方とも検出されている場合は、アクセル操作とブレーキ操作のどちらが先に検出されても、出力制限実行条件が成立して、指令出力の演算に用いる制御用アクセル開度を所定の制限値cACCRESTに設定することで、駆動源11の出力を所定値以下に制限する(ステップ201→202→203)。
【0050】
これに対し、所定開度cACCTHRESH以上のアクセル操作とブレーキ操作(ブレーキスイッチ13のオン)のいずれか一方でも検出されていなければ、駆動源11の出力制限を行う必要がないと判断して、アクセルセンサ12で検出した実アクセル開度をそのまま制御用アクセル開度に設定する(ステップ204)。
【0051】
一方、上記ステップ200で、出力制限禁止スイッチ19がオン(出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出されている)と判定されれば、続くステップ205〜207で、限定的な出力制限実行条件が成立しているか否かを、次の(a) 〜(c) の条件を全て満たすか否かで判定する。
【0052】
(a) アクセルセンサ12で検出した実アクセル開度が所定開度cACCTHRESHよりも大きいこと[ステップ205]
(b) ブレーキスイッチ13がオンであること[ステップ206]
(c) アクセル操作タイミングがブレーキ操作タイミングよりも先であること[ステップ207]
【0053】
これら3つの条件(a) 〜(c) のうち、いれか1つでも満たさない条件があれば、限定的な出力制限実行条件が成立せず、ステップ209に進み、アクセルセンサ12で検出した実アクセル開度をそのまま制御用アクセル開度に設定する。
【0054】
これに対し、上記3つの条件(a) 〜(c) を全て満たせば、限定的な出力制限実行条件が成立して、ステップ208に進み、指令出力の演算に用いる制御用アクセル開度を所定の制限値cACCRESTに設定することで、駆動源11の出力を所定値以下に制限する。
【0055】
尚、出力制限実行条件や限定的な出力制限実行条件が成立してから実際に駆動源11の出力制限が開始されるまでに所定の実行ディレイ時間を設けるようにしても良く、同様に、出力制限から通常の制御に復帰する場合も所定の実行ディレイ時間を設けるようにしても良い。
【0056】
以上説明した本実施例2の出力制限制御の実行例を図5を用いて説明する。図5の例では、出力制限の開始時と復帰時に所定の実行ディレイ時間を設けている。
図5の例では、時刻t0 で、アクセル操作を開始した後、時刻t1 で、運転者が出力制限禁止スイッチ19をオンして、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図をECU17に入力する。この後、アクセルセンサ12で検出する実アクセル開度が所定開度cACCTHRESHを越え、時刻t2 で、運転者がブレーキを踏み込んでブレーキスイッチ13がオンされる。この場合、アクセル操作タイミングがブレーキ操作タイミングよりも先であるため、限定的な出力制限実行条件が成立して、所定の実行ディレイ時間が経過した時点t3 で、制御用アクセル開度を所定の制限値cACCRESTに設定することで、駆動源11の出力を所定値以下に制限する。
【0057】
この後、時刻t4 で、運転者がブレーキ操作を解除してブレーキスイッチ13がオフされると、限定的な出力制限実行条件が不成立となり、所定の実行ディレイ時間が経過した時点t5 で、限定的な出力制限制御から通常の制御に復帰する。
【0058】
この後、時点t6 で、運転者がブレーキを踏み込んでブレーキスイッチ13がオンされた後、時点t7 で、運転者が徐々にアクセルを踏み込む。この後、時点t8 で、ブレーキスイッチ13がオンの状態を継続しながら、アクセルセンサ12で検出した実アクセル開度が所定開度cACCTHRESHを越えた状態となるが、この場合、出力制限禁止スイッチ19がオンされ、且つ、ブレーキ操作タイミングがアクセル操作タイミングよりも先であるため、限定的な出力制限制御が実行されず、アクセルセンサ12で検出した実アクセル開度がそのまま制御用アクセル開度に設定されて、実アクセル開度に応じて駆動源11の出力が制御される。
【0059】
以上説明した本実施例2では、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された場合に、ブレーキ操作の方がアクセル操作よりも先に検出されたときには出力制限制御を実行せず、アクセル操作の方がブレーキ操作よりも先に検出されたときのみ出力制限制御を実行する限定的な出力制限制御に切り換えるようにしているため、運転者が意図を持って先にブレーキを踏み込んでからアクセルを踏み込む場合に駆動源11の出力が制限されることを防止でき、ドライバビリティを向上できる。しかも、出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された場合でも、アクセル操作の方がブレーキ操作よりも先に検出されたときには、運転者の操作ミスの可能性があることを考慮して、出力制限制御を実行でき、安全性を向上できる。
【0060】
しかも、本実施例2では、運転者が交替する可能性がある状態になったことを検出する運転者交替可能性検出手段を備え、運転者意図検出手段で出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された後に運転者交替可能性検出手段で運転者が交替する可能性がある状態になったことが検出されたときに限定的な出力制限制御を解除して、アクセル操作とブレーキ操作の先後を問わず駆動源の出力を制限する元の出力制限制御に復帰するようにしたので、交替前の運転者の意図によって限定的な出力制限制御に切り換えられた状態になっていても、運転者の交替により限定的な出力制限制御を自動的に元の出力制限制御に戻すことができ、交替後の運転者が先にブレーキを踏み込んだ後にアクセルを踏み込む場合でも確実に出力制限制御を実行できる。
【0061】
尚、上記実施例1,2において、ブレーキスイッチを複数設けても良い。複数のブレーキスイッチを設ける場合は、例えば、複数のブレーキスイッチのいずれか1つがオンしたときに、ブレーキ操作が行われたと判断するようにしても良い。同様に、アクセルセンサも複数設けても良い。
【符号の説明】
【0062】
11…駆動源、12…アクセルセンサ(アクセル操作検出手段)、13…ブレーキスイッチ(ブレーキ操作検出手段)、17…ECU(出力制限手段)、18…出力調整手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動源としてエンジンとモータの少なくとも一方を搭載した車両の制御装置において、
アクセル操作を検出するアクセル操作検出手段と、
ブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段と、
前記アクセル操作検出手段でアクセル操作が検出され且つ前記ブレーキ操作検出手段でブレーキ操作が検出された状態になったときに前記駆動源の出力を制限する出力制限制御を実行する出力制限手段と、
前記出力制限制御を実行したくないという運転者の意図を検出する運転者意図検出手段とを備え、
前記出力制限手段は、前記運転者意図検出手段で前記出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出されたときに前記出力制限制御を禁止する手段を有することを特徴とする車両の制御装置。
【請求項2】
前記出力制限手段は、前記運転者意図検出手段で前記出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された後に当該運転者の意図が検出されなくなったときに前記出力制限制御の禁止を解除することを特徴とする請求項1に記載の車両の制御装置。
【請求項3】
運転者が交替する可能性がある状態になったことを検出する運転者交替可能性検出手段を備え、
前記出力制限手段は、前記運転者意図検出手段で前記出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された後に前記運転者交替可能性検出手段で運転者が交替する可能性がある状態になったことが検出されたときに前記出力制限制御の禁止を解除することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
【請求項4】
車両の駆動源としてエンジンとモータの少なくとも一方を搭載した車両の制御装置において、
アクセル操作を検出するアクセル操作検出手段と、
ブレーキ操作を検出するブレーキ操作検出手段と、
前記アクセル操作検出手段でアクセル操作が検出され且つ前記ブレーキ操作検出手段でブレーキ操作が検出された状態になったときに前記駆動源の出力を制限する出力制限制御を実行する出力制限手段と、
前記出力制限制御を実行したくないという運転者の意図を検出する運転者意図検出手段とを備え、
前記出力制限手段は、前記運転者意図検出手段で前記出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された場合に、前記アクセル操作検出手段と前記ブレーキ操作検出手段の検出結果を比較して、ブレーキ操作の方がアクセル操作よりも先に検出されたときには前記出力制限制御を実行せず、アクセル操作の方がブレーキ操作よりも先に検出されたときのみ前記出力制限制御を実行する限定的な出力制限制御に切り換えることを特徴とする車両の制御装置。
【請求項5】
前記出力制限手段は、前記運転者意図検出手段で前記出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された後に当該運転者の意図が検出されなくなったときに前記限定的な出力制限制御を解除してアクセル操作とブレーキ操作の先後を問わず前記駆動源の出力を制限する元の出力制限制御に復帰することを特徴とする請求項4に記載の車両の制御装置。
【請求項6】
運転者が交替する可能性がある状態になったことを検出する運転者交替可能性検出手段を備え、
前記出力制限手段は、前記運転者意図検出手段で前記出力制限制御を実行したくないという運転者の意図が検出された後に前記運転者交替可能性検出手段で運転者が交替する可能性がある状態になったことが検出されたときに前記限定的な出力制限制御を解除してアクセル操作とブレーキ操作の先後を問わず前記駆動源の出力を制限する元の出力制限制御に復帰することを特徴とする請求項4又は5に記載の車両の制御装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−7568(P2012−7568A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145686(P2010−145686)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】