説明

車両の室内構造

【課題】三角窓を構成しているピラー周り等の衝突安全性を向上させる。
【解決手段】三角窓9を構成するサブピラー4やこれに近接する前部ドア11の前辺部13、サブピラー4の車内側を覆うピラートリム18、前辺部13の車内側を覆う車内ガーニッシュ19、サブピラー4の後フランジ端部45を覆うシーミング20などを備える。
ルーフサイドレール8には、所定の条件が満たされると展開してサイドウインド14を覆うバッグ部材80が格納されたバッグ格納体81が配設されている。ピラートリム18で覆われたサブピラー4の車内側には、バッグ部材80に連なるテザー83が連結されている。バック格納体81の前端部81aがピラートリム18とサブピラー4との間に入り込んでいて、バッグ部材80の展開時にはピラートリム18が押し広げられ、テザー83が無理なく車内側に引き出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車の側部前方に設けられる三角窓の近傍等、ピラーやピラートリム、ガーニッシュなどを備えた車両の室内構造に関し、中でも、これらに対する乗員の衝突安全性を向上させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1にも見られるように、車体側部のフロントピラーからその下側に分岐するようにサブピラーを設け、これらピラー間に三角窓を形成したミニバン等の自動車が知られている。
【0003】
そして、この種の自動車では、見栄えよくするために、サブピラーの車内側をピラートリムで覆い、サブピラーの後縁に沿うドアの前辺部の車内側をガーニッシュで覆うのが一般的である。
【0004】
また、車両側部のウインドを覆うようにカーテン状のエアバッグを展開させるカーテンエアバッグ装置が知られている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2007−307977号公報
【特許文献2】特開2008−18837号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、この種の自動車の三角窓は比較的小さなものが多く、サブピラー等に取り付けるピラートリムやガーニッシュは、主に装飾性が重視されていた。
【0006】
ところが、近年、デザインの向上等の観点から、サブピラーの上端がフロントピラーの上端に位置するような、三角窓を大きくした自動車も提案されるようになってきている。
【0007】
そうなると、シートベルトを装着していても乗員の頭部がサブピラー等に強い衝撃力で衝突する場合も想定されるため、ピラートリムやガーニッシュも装飾だけでなく、より高い衝突安全性を確保しておく必要がある。
【0008】
また、より大きな衝撃が作用する緊急時には、ピラートリムやガーニッシュで衝突安全性を確保するだけでは足らず、カーテンエアバッグ装置を作動させてエアバッグを展開させることが必要になる。
【0009】
その際、エアバッグの展開が遅れたり、展開が不安定となるおそれがある。
【0010】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、カーテンエアバッグ装置が作動する緊急時には、エアバッグを確実かつ速やかに適切な状態に展開させることができる、衝突安全性に優れた車室構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本願発明では、車体側部に設けられた開口部を開閉するドアと、上記開口部の前側を区切るピラーと、上記ピラーを車幅方向内側から覆うピラートリムと、上記ドアの前辺部を車幅方向内側から覆うガーニッシュとを備えた車両の室内構造であって、上記ドアは、その上側部分にサイドウインドを有し、このドアの車幅方向内側には、乗員が着座するシートが配設され、上記前辺部は上記開口部の上部まで延び、その前辺部の少なくとも上端部近傍の部分が上記ガーニッシュで覆われ、所定の条件が満たされると展開して上記サイドウインドの少なくとも一部を覆うバッグ部材と、このバッグ部材に展開用のガスを供給するインフレータとを含むエアバッグ装置を備え、上記開口部の上側を区切る、車体側部の上辺部には、上記バッグ部材を格納するバッグ格納体が配設され、上記ピラートリムで覆われた上記ピラーの車幅方向内側の部分に、一端が上記バッグ部材の前端部近傍に連結された可撓性のある連結部材の他端が連結され、上記バッグ格納体の前端部が、上記ピラートリムと上記ピラーとの間に入り込んでいるものとした。
【0012】
かかる構成によれば、ドアの車幅方向内側の車室内に配設されたシートに着座する乗員は、車両が衝突して転倒するなど、比較的大きな衝撃が加わった場合には、その頭部がガーニッシュで覆われたドアの前辺部やピラートリムで覆われたピラー、サイドウインドにぶつかるおそれがある。
【0013】
そのようになると、エアバッグ装置が作動してバッグ部材を展開するようになるが、そのとき、そのバッグ部材を格納しているバッグ格納体の前端部が、ピラートリムとピラーとの間に入り込んでいるので、バッグ部材の展開の勢いでピラートリムが押し広げられる。
【0014】
そうすると、ピラーとバッグ部材とに連結され、ピラートリムの内側にあった連結部材はバッグ部材に引っ張られてピラーとピラートリムの間から無理なく車室内に引き出されることとなる。
【0015】
いったん車室内に引き出されれば、後は支障なく連結部材が引き出されるため、連結部材の引っ張り作用によってバッグ部材は適正な状態に安定して展開するようになる。
【0016】
更には、上記ガーニッシュは、車幅方向内側に向かって延びる延設部を有し、この延設部の先端部が、上記ピラートリムの後端部に近接しているようにしておくとよい。
【0017】
そうしておけば、ガーニッシュによってドアの前辺部を広い範囲で覆うことができ、衝突安全性を高めることができる。尚、ガーニッシュにこのような延設部を設ければ、延設部が邪魔になって連結部材を引き出し難くなるが、上述したように、バッグ部材の展開時にはピラートリムが押し広げられるので、連結部材を支障なく引き出すことができる。
【0018】
またこの場合、上記ピラーの後端部には、上記ピラートリムの後端部に係合するシーミングが設けられていて、このシーミングの少なくとも一部が上記延設部によって覆われているようにしてあってもよい。
【0019】
そうすれば、ガーニッシュに乗員の頭部が当接した場合でも、ガーニッシュはシーミングに突き当たるため、シーミングにその衝撃の一部を吸収させて衝撃を緩和することができる。また、そのシーミングはピラートリムに係合しているため、シーミングを介してピラートリムにも衝撃の一部を吸収させることができ、更に衝撃を緩和することができる。
【0020】
また、上記ガーニッシュは、取付軸が略車幅方向に延びる取付部材によって上記前辺部に取り付けられているものとしておくとよい。そうすれば、頭部が当接してガーニッシュに力が作用する方向とガーニッシュの取付方向とが異なることとなるので、ガーニッシュが前辺部から外れ難くなり、頭部が直接ドアの前辺部やピラーに当接するのを確実性をもって防止することができる。
【発明の効果】
【0021】
以上説明したように、本発明によれば、車両が衝突などして、カーテンエアバッグ装置が作動する緊急時には、エアバッグを確実かつ速やかに適切な状態に展開させることができるので、衝突安全性に優れた車両の車室構造を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0023】
図1に、本発明の車室構造を適用した自動車(車両)の一例を示す。同図は、ワゴン型自動車の運転席側のサイドボディ1(車体側部)をその車室側から見た概略図であり、車室内には、車両の前後方向をその前方(図1において左側)から順に、第1シート2a、第2シート2b、第3シート2cが配設されている。尚、以下、説明の都合上、前後や上下等の方向は、特に言及しない限り、この車両の前後や上下等の方向に基づくものとする。また、自動車の両側部の構成は同様であることから、助手席側の側部についての説明は省略する。
【0024】
サイドボディ1には、フロントピラー3やサブピラー4、前センターピラー5、後センターピラー6、クォータピラー7、ルーフサイドレール8などが備えられている。
【0025】
ルーフサイドレール8は、サイドボディ1の上部をその前後に延びるように設けられていて、その前端部及び後端部にそれぞれ連続してフロントピラー3及びクォータピラー7が連結されている。そして、一連に連なったフロントピラー3及びルーフサイドレール8の下側に、前から順に、サブピラー4、前センターピラー5、後センターピラー6がそれぞれ略上下に延びるように連結されている。
【0026】
また、サイドボディ1には、サブピラー4と前センターピラー5とでその前後が区切られ、ルーフサイドレール8でその上側の部分が区切られることによって、前ドア開口部1aが形成されている。同様にして、前センターピラー5と後センターピラー6との間には後ドア開口部1bが形成されている。そして、フロントピラー3とサブピラー4との間には三角窓9が備えられ、後センターピラー6とクォータピラー7との間にはクォータ窓10が備えられている。
【0027】
前ドア開口部1a及び後ドア開口部1bには、仮想線で示す前部ドア11及び後部ドア12がそれぞれ開閉自在に備えられていて、前部ドア11の車内側(車幅方向内側)には第1シート2aが位置し、後部ドア12の車内側には第2シート2bが位置するように配設されている。
【0028】
前部ドア11の上側部分には、前ドア開口部1aの前縁部や後縁部、上縁部に沿うように、前辺部13や後辺部、上辺部からなるウインド枠が形成されていて、このウインド枠内に昇降自在な前サイドウインド14が備えられている。同様にして後部ドア12の上側部分にもウインド枠が形成されていて、このウインド枠内に昇降自在な後サイドウインド15が備えられている。
【0029】
三角窓9や前サイドウインド14、後サイドウインド15、クォータ窓10の上端縁及び下端縁は、それぞれ前後方向に連続するように配設されていて、全体視では、前後に延びる一つの帯状のウインド(ウインド帯ともいう)が形成されているようになっている。
【0030】
ルーフサイドレール8の車内側には、展開時に、このウインド帯の、前サイドウインド14からクォータ窓10までの範囲を覆うこととなる格納状態のカーテンエアバッグ装置16が配設されている。尚、このカーテンエアバッグ装置16については別途後述する。
【0031】
この自動車では、サブピラー4がフロントピラー3とルーフサイドレール8との連結部位の近くから分岐していて、三角窓9が比較的大きく形成されている。
【0032】
具体的には、図1のように所定の標準状態を側方から見て、サブピラー4の上端部4aは、第1シート2aに着座した乗員M(ここでは運転者)の頭部と略同等の高さか、あるいはそれよりも上側に位置している。また、ステアリングホイール17の中心線を含んで延びる基準線Sよりも、サブピラー4の上端部4aは後方、つまり運転者M側に位置している。
【0033】
そのため、例えば、自動車が衝突して運転者Mが前のめりになると、その頭部をサブピラー4近傍にぶつけるおそれがあることから、衝突安全性が向上するように、サブピラー4近傍の車室構造に工夫が凝らされている。
【0034】
図2は、前部ドア11を閉じた状態におけるそのサブピラー4近傍を示しており、サブピラー4や、これの後方に近接して前ドア開口部1aの上端部まで延びている前部ドア11の前辺部13の車内側は、これらの上下両端部間にわたってピラートリム18や車内ガーニッシュ19などで覆われている。尚、ルーフサイドレール8の車室側は、ルーフパネル(図示せず)とともに、ピラートリム18よりも軟質な素材のルーフトリム8aで覆われている。
【0035】
図2のX−X線断面を表した図3に示すように、サブピラー4の近傍には、そのほかにもシーミング20、ウエザーストリップ21、車外ガーニッシュ22などが配設されている。尚、図3では、その左側が車内側、右側が車外側(車幅方向外側)となっている。
【0036】
サブピラー4は、パネル鋼板をプレス加工して形成された、インナーパネルとしての第1サブピラーパネル41と、第2サブピラーパネル42と、アウターパネルとしての第3サブピラーパネル43とで構成されていて、これらの前後の両端にそれぞれ形成されたフランジを溶接接合して形成された前フランジ端部44及び後フランジ端部45と、これら前後のフランジ端部44,45に連なるピラー本体部46とを備えている。ピラー本体部46は、その内部に第2サブピラーパネル42で区画された2つの閉空間を有し、剛性に優れた閉断面構造となっている。
【0037】
横断面視においては、前フランジ端部44は相対的に車外側に位置するとともに前方に向かって延び、後フランジ端部45は相対的に車内側に位置するとともに後方に向かって延びていて、ピラー本体部46は、前から後に向かって車外側から車内側に斜めに延びるように、サブピラー4は配設されている。
【0038】
前フランジ端部44の車外側には、接着剤を介して三角窓9を構成する三角ガラス9aが取り付けられている。
【0039】
フロントピラー3とともにこのサブピラー4の全体を車内側から覆うように、ポリプロピレン製のピラートリム18が設けられている。ピラートリム18のサブピラー4を覆う部分の横断面は、略L字形状をしていて、ピラートリム18は、ピラー本体部46と略平行なピラートリム本体部50と、このピラートリム本体部50の後端から車外側に屈曲形成されたピラートリム後端部51と、ピラートリム本体部50の車外側に、長手方向に沿って所定間隔置きに複数設けられたピラートリム取付部52,52,・・・とを備えている。
【0040】
ピラートリム18は、そのピラートリム取付部52を第1サブピラーパネル41にクリップ23で固定することにより、サブピラー4に取り付けられている。具体的には、第1サブピラーパネル41に、これと略直交する取付軸23aを有する複数のクリップ23,23,・・・が装着され、これらクリップ23の取付軸23aにピラートリム取付部52に形成された切欠部(図示せず)を差し込んで固定されている。
【0041】
シーミング20は、横断面が略J字形状をした弾性を有する樹脂部品であり、サブピラー4の後フランジ端部45に装着されて、これを覆う装着部20aと、この装着部20aの後端から屈曲して車内側に突出した係合部20bとを有している。このシーミング20の係合部20bは、ピラートリム後端部51とその外面に接するように係合している。
【0042】
前部ドア11の前辺部13は、パネル鋼板をプレス加工して形成された、インナーパネルとしての第1ドアパネル61と、アウターパネルとしての第2ドアパネル62と、サッシュ63とで、剛性に優れた閉断面構造が構成されている。
【0043】
第1ドアパネル61は、略断面コ字形状に形成されていて、横断面視において、前後に延びる支持面部61aと、この支持面部61aの前方から車外側に延びる前面部と、支持面部61aの後方から車外側に延びる後面部と、これら前面部及び後面部の各々から張り出す前後のフランジ部とを有している。一方、第2ドアパネル62は断面直線状に形成され、サッシュ63は一対の側壁部を有する断面コ字形状にそれぞれ形成されている。
【0044】
そして、第1ドアパネル61の前側のフランジ部は第2ドアパネル62の前端と溶接接合されて前方に延びる接合部64が設けられ、第1ドアパネル61の後側のフランジ部及び第2ドアパネル62の後端は、開口側を後に向けたサッシュ63の各側壁部にそれぞれ溶接接合されてサッシュ部65が設けられている。
【0045】
このサッシュ部65は、その開口に前サイドウインド14の前端部を受け入れて、前サイドウインド14を上下にスライド案内する。また、支持面部61aは第2ドアパネル62と略平行になっていて、横断面視においては、第2ドアパネル62はサブピラー4の前フランジ端部44と略面一状に前後方向に並んで位置し、前辺部13はサブピラー4の後方に近接して位置している。
【0046】
第2ドアパネル62の車外側には、これを覆うように車外ガーニッシュ22が取り付けられている。また、接合部64には、ゴム製のウエザーストリップ21が取り付けられていて、前部ドア11を閉じた状態では、このウエザーストリップ21がサブピラー4の第3サブピラーパネル43に圧着するようになっている。
【0047】
車内ガーニッシュ19は、ポリプロピレン製の成形部材からなり、横断面が略L字形状をした固定部70及びこれに連なる弾性腕部71(延設部)と、弾性腕部71の先端から固定部70の無い面側に折り返し形成され、外方に膨出するように湾曲しているカバー部72と、弾性腕部71とカバー部72との間に、長手方向に沿って所定間隔置きに設けられた複数のリブ部73,73,・・・とを有している。
【0048】
車内ガーニッシュ19は、その弾性腕部71及びカバー部72を車内側に向け、固定部70を前にした状態で、固定部70を第1ドアパネル61の支持面部61aにクリップ24で固定することにより、前辺部13に取り付けられている。具体的には、支持面部61aに、これと略直交する取付軸24aを有する複数のクリップ24,24,・・・が装着され、これらクリップ24の取付軸24aに、固定部70に形成された切欠部(図示せず)を差し込んで固定されている。
【0049】
このとき、固定部70(前端部)は、支持面部61aとサブピラー4との間に位置している。そして、その後方に位置する弾性腕部71は、シーミング20に近接してその後方に位置しており、弾性腕部71によってシーミング20の大部分が覆われている。
【0050】
また、弾性腕部71は車内側に向かって延び、その先端部はサブピラー4の後フランジ端部45よりも車内側に位置し、ピラートリム後端部51に近接するように配置されている。また、カバー部72の先端は、サッシュ部65の車内側の側壁部の近傍に位置している。
【0051】
ところで、例えば30km/h等、比較的低速で自動車が衝突するような場合には、カーテンエアバッグ装置16は作動しないため、運転者Mが前のめりになった場合にその頭部がサブピラー4等にぶつかるおそれがある。
【0052】
そのような場合には、図3の矢印線が示すような方向から突っ込んできて、頭部は車内ガーニッシュ19のカバー部72と接触するようになる。そうなると、カバー部72及び弾性腕部71は前方に撓んで弾性腕部71がシーミング20に突き当たり、シーミング20が弾性変形することによって頭部への衝撃を緩和する。また、ピラートリム後端部51によってもシーミング20の係合部20bを介してその衝撃が受け止められるため、更に頭部への衝撃は緩和されることとなる。
【0053】
また、車内ガーニッシュ19のリブ部73は、所定以上の衝撃が加わった場合に砕けるように設定されているため、リブ部73によっても頭部への衝撃が緩和される。リブ部73が砕けると、湾曲したカバー部72が延びてサッシュ部65の側壁部がその先端部によって覆われる。
【0054】
このように本実施形態の車内ガーニッシュ19には、装飾だけでなく、衝突安全性を確保する機能が備わっており、更にその機能が損なわれないように万全を期す工夫が施されている。
【0055】
すなわち、車内ガーニッシュ19を取り付けるクリップ24の取付軸24aが略車幅方向に延びるように配設されている。このように配設することで、頭部がぶつかって車内ガーニッシュ19に外力が加わる方向と取付方向とが異なるようになり、また、外力が作用すると、より確りと固定部70がクリップ24に嵌り込むように作用するため、車内ガーニッシュ19が不用意に外れたり、位置ずれしたりするのを効果的に防止できるようになっている。
【0056】
また、その固定部70を支持面部61aとサブピラー4との間に挟まれるように位置させたことで、更に車内ガーニッシュ19が外れ難くなっている。
【0057】
これと同様にピラートリム18についても、その取付方向と外力が加わる方向とが異なるように設定されているため、ピラートリム18も不用意に外れたりし難くなっている。
【0058】
従って、サブピラー4の近傍に頭部をぶつけるような事態が起きても、確実性をもってその衝撃を吸収させることができるので、運転者Mは安心して運転できるし、同乗者Mも安心して搭乗できる。
【0059】
一方、高速で衝突するような場合には衝撃が大きくなり過ぎて、車内ガーニッシュ19等の衝撃吸収だけでは乗員Mの頭部を万全に保護することができなくなるため、そのような場合には、カーテンエアバッグ装置16が作動して、乗員Mを衝突から保護するように構成されている。
【0060】
カーテンエアバッグ装置16は、図1に示したように、ルーフサイドレール8の車内側に配設されていて、ウインド帯の前サイドウインド14からクォータ窓10に至る範囲を覆うように展開するバッグ部材80やこれに展開用のガスを供給するインフレータ82などを備えている。
【0061】
インフレータ82は、所定の条件が満たされたとき、例えば、自動車に備えられている図示しない制御装置が所定以上の速度で障害物に衝突すると判断したときや所定以上の衝撃を感知したときなどに作動し、ガスを発生させてバッグ部材80に一気に供給するように構成されている。
【0062】
バッグ部材80は、図4に示すように、横長の帯状に形成されていて、ガスの供給を受けて膨張する袋状の膨張部80aと、特にその前後の端部に設けられた布状の非膨張部80bとを有している。そして、このバッグ部材80の前後の非膨張部80b,80bの下端寄りの部分には、バッグ部材80の展開を補助する、可撓性のある紐状のテザー83の一端がそれぞれ連結されている。
【0063】
バッグ部材80の中間部分は引っ掛かったり反り返ったりし易いため、テザー83でバッグ部材80をその両側から引っ張ることによってバッグ部材80が速やかに適正な状態に展開するようにしている。
【0064】
バッグ部材80は、その上端縁がルーフサイドレール8に取り付けられ、展開前は蛇腹状に折り畳まれた状態でバッグ格納体81に格納されている。
【0065】
バッグ格納体81のほとんどは、ルーフサイドレール8に備えられた図示しないルーフインナパネルとルーフトリムとの間に収容されているが、その前端部81aは、図2に示すように、ピラートリム18とサブピラー4との間に入り込んでいる。
【0066】
そして、その前端部81aの先端からテザー83の他端が導出され、サブピラー4の中間部、詳しくは図2、図3に示すように、第1サブピラーパネル41の長手方向の中間部分にその他端が連結されていて、展開前の通常の状態においては、テザー83はピラートリム18の内側に収容されている。
【0067】
このように、バッグ格納体81の前端部81aをピラートリム18とサブピラー4との間に入り込ませることで、バッグ部材80の展開時に、ピラートリム18の内側に収容されたテザー83を安定して無理なく車室内に引き出すことができるようになる。
【0068】
この点、図5を参照して説明すると、まず、通常の状態では、同図の(a)のように、バッグ格納体81の先端部81aやテザー83はピラートリム18の内側に収容されているため、見た目が損なわれることはない。
【0069】
そして、所定の条件が満たされて、インフレータ82が作動すると、バッグ部材80の膨張部80aにガスが一気に供給され、バッグ格納体81に格納されていたバッグ部材80は直ちに展開を開始し、ルーフトリム8aの下縁を車室側に移動させる。このとき、バッグ格納体81の前端部81aは、ピラートリム18の内側に入り込んでいるため、(b)のように、その前端部81aに格納されているバッグ部材80が展開する勢いでピラートリム18の上端部は車内側に押し広げられる。詳しくは、図6に示すように、ピラートリム本体部50からピラートリム後端部51にわたる部分が変形して、シーミング20との間に比較的大きな開口が形成されるようになる。
【0070】
そうすると、展開するバッグ部材80に引っ張られてテザー83がこの開口から車室内に無理なく引き出されることとなる。そして、いったんピラートリム後端部51とシーミング20との間から車室内にテザー83を引き出してしまえば、(c)のようにピラートリム18の中間部辺りまで引き出し位置が移動してもテザー83を支障なく引き出すことができるようになる。
【0071】
このとき、テザー83は、車内ガーニッシュ19の弾性腕部71の先端部からカバー部72に至る部分と接触し易いが、その部分は滑らかな湾曲形状に形成されているため、引っ掛からずに円滑にテザー83が案内されるようになっている。またその際、車内ガーニッシュ19はテザー83によって車外側に押し付けられるが、その作用方向が取付方向と異なるうえ、弾性腕部71が弾性変形することで、バッグ部材80の展開時に外れたり、壊れたりするのを効果的に防止できるようになっている。
【0072】
しかも、このとき、テザー83の引き出し位置が下方に行くほど、ピラートリム後端部51とシーミング20との間の開口が小さくなって引き出し時の抵抗が増加するため、バッグ部材80がテザー83に適度に引っ張られ、バッグ部材80がより効果的に展開される利点もある。
【0073】
なお、本発明にかかる車両の車室構造は、前記の実施の形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0074】
上記実施形態では、ワゴン型自動車を例に説明したが、それに限らず、トラック等であってもよい。
【0075】
また、適用されるピラーは、三角窓9を構成するサブピラー4に限るものではなく、例えば、フロントピラー3や前センターピラー5等であってもよい。取付部材は、クリップ以外にもボルト等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0076】
【図1】本実施形態における自動車の側部を車内側から見た概略図である。
【図2】本実施形態の要部を示す概略斜視図である。
【図3】図2におけるX−X線断面図である。
【図4】バッグ部材が展開した状態を示す概略図である。
【図5】バッグ部材の展開時における要部を示す概念図である。(a)は展開前を、(b)は展開初期を、(c)は展開後期を表している。
【図6】バッグ部材の展開時における要部の断面図である。
【符号の説明】
【0077】
1 サイドボディ(車体側部)
1a 前ドア開口部
2a 第1シート
3 フロントピラー
4 サブピラー(ピラー)
4a 上端部
5 前センターピラー
6 後センターピラー
7 クォータピラー
8 ルーフサイドレール
8a ルーフトリム
9 三角窓
11 前部ドア(ドア)
12 後部ドア
13 前辺部
14 前サイドウインド
15 後サイドウインド
16 カーテンエアバッグ装置
18 ピラートリム
19 車内ガーニッシュ(ガーニッシュ)
20 シーミング
24 クリップ(取付部材)
24a 取付軸
51 ピラートリム後端部
71 弾性腕部(延設部)
80 バッグ部材
81 バッグ格納体
81a 前端部
82 インフレータ
83 テザー(連結部材)
M 乗員

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体側部に設けられた開口部を開閉するドアと、上記開口部の前側を区切るピラーと、上記ピラーを車幅方向内側から覆うピラートリムと、上記ドアの前辺部を車幅方向内側から覆うガーニッシュとを備えた車両の室内構造であって、
上記ドアは、その上側部分にサイドウインドを有し、このドアの車幅方向内側には、乗員が着座するシートが配設され、
上記前辺部は上記開口部の上部まで延び、その前辺部の少なくとも上端部近傍の部分が上記ガーニッシュで覆われ、
所定の条件が満たされると展開して上記サイドウインドの少なくとも一部を覆うバッグ部材と、このバッグ部材に展開用のガスを供給するインフレータとを含むエアバッグ装置を備え、上記開口部の上側を区切る、車体側部の上辺部には、上記バッグ部材を格納するバッグ格納体が配設され、
上記ピラートリムで覆われた上記ピラーの車幅方向内側の部分に、一端が上記バッグ部材の前端部近傍に連結された可撓性のある連結部材の他端が連結され、
上記バッグ格納体の前端部が、上記ピラートリムと上記ピラーとの間に入り込んでいることを特徴とする車両の室内構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両の室内構造であって、
上記ガーニッシュは、車幅方向内側に向かって延びる延設部を有し、この延設部の先端部が、上記ピラートリムの後端部に近接していることを特徴とする車両の室内構造。
【請求項3】
請求項2に記載の車両の室内構造であって、
上記ピラーの後端部には、上記ピラートリムの後端部に係合するシーミングが設けられていて、このシーミングの少なくとも一部が上記延設部によって覆われていることを特徴とする車両の室内構造。
【請求項4】
請求項1に記載の車両の室内構造であって、
上記ガーニッシュは、取付軸が略車幅方向に延びる取付部材によって上記前辺部に取り付けられていることを特徴とする車両の室内構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−12926(P2010−12926A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174421(P2008−174421)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】