説明

車両の接触回避支援装置

【課題】法令上左側通行が義務付けられない環境を走行するような所定の走行状態においても対向車との接触の可能性を的確に判定して接触回避を支援するようにした車両の接触回避支援装置を提供する。
【解決手段】対向車が検出されるとき(S14)、自車と対向車の進路を予測し(S16)、予測された進路が重なる場合(S18)、対向車を障害物と認識し(S20)、自車が左または右に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定し(S24,S28からS32)、対向車との接触の可能性があると判定される場合、対向車との接触回避を支援する(S34)車両の接触回避支援装置において、自車が駐車場などの道路以外の場所を走行するなどの所定の走行状態にあるか否か判定し(S22)、肯定されるとき、自車が左または右に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する(S26からS32)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両の接触回避支援装置に関し、より具体的には車両(自車)の周囲の対向車などの物体との接触の回避を支援するようにした装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に電磁波を送信するレーダを搭載して前方の対向車などの物体を検出・認識し、それとの接触の可能性があると判断される場合、接触回避支援動作を行う装置が知られており、その例として下記の特許文献1記載の技術を挙げることができる。特許文献1記載の技術においては、左側通行であれば、自車の推定移動軌跡が基本的には対向車の左側を通過すると想定したときの横方向の位置の偏差を求め、それに基づいて接触の可能性を判定している。
【特許文献1】特許第3986683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、道路上では法令に従って走行するので、左側通行の場合、対向車に対しては左側を通過し、対向車側に接近して衝突しそうな場合でも本来左側に避けるのが普通である。よって自車から見て対向車の左側に回避可能か否かで接触の可能性を判定することになり、特許文献1記載の技術のように構成することで対向車との接触を回避することができる。しかしながら、道路以外の場所、例えば駐車場のような法令上左側通行が義務付けられない環境を走行するような場合、対向車が左側に回避するとは限らない。
【0004】
従って、この発明の目的は上記した課題を解決し、法令上左側通行が義務付けられない環境を走行するような所定の走行状態においても対向車との接触の可能性を的確に判定して接触回避を支援するようにした車両の接触回避支援装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を解決するために、請求項1にあっては、自車の周囲に存在する物体を検出する物体検出手段と、自車の運動状態を検出する運動状態検出手段と、前記物体検出手段と運動状態検出手段の出力に基づいて対向車が検出されるとき、前記運動状態検出手段の出力に基づいて自車の進路を予測すると共に、前記物体検出手段の出力に基づいて前記対向車の進路を予測し、前記予測された進路が重なる場合、前記対向車を障害物と認識し、自車が左に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する接触可能性判定手段と、前記接触の可能性があると判定される場合、前記対向車との接触回避を支援する接触回避支援動作を実行する接触回避支援手段とを備えた車両の接触回避支援装置において、自車が所定の走行状態にあるか否か判定する自車走行状態判定手段を備えると共に、前記接触可能性判定手段は、自車が所定の走行状態にあると判定されるとき、自車が左または右に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する如く構成した。
【0006】
請求項2に係る車両の接触回避支援装置にあっては、前記自車走行状態判定手段は、自車が道路以外の場所を走行するとき、前記所定の走行状態にあると判定する如く構成した。
【0007】
請求項3に係る車両の接触回避支援装置にあっては、前記自車走行状態判定手段は、自車が所定の速度より低い車速で走行するとき、前記所定の走行状態にあると判定する如く構成した。
【0008】
請求項4にあっては、自車の周囲に存在する物体を検出する物体検出手段と、自車の運動状態を検出する運動状態検出手段と、前記物体検出手段と運動状態検出手段の出力に基づいて対向車が検出されるとき、前記運動状態検出手段の出力に基づいて自車の進路を予測すると共に、前記物体検出手段の出力に基づいて前記対向車の進路を予測し、前記予測された進路が重なる場合、前記対向車を障害物と認識し、自車が左に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する接触可能性判定手段と、前記接触の可能性があると判定される場合、前記対向車との接触回避を支援する接触回避支援動作を実行する接触回避支援手段とを備えた車両の接触回避支援装置において、対向車が所定の走行状態にあるか否か判定する対向車走行状態判定手段を備えると共に、前記接触可能性判定手段は、前記対向車が所定の走行状態にあると判定されるとき、自車が左または右に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する如く構成した。
【0009】
請求項5に係る車両の接触回避支援装置にあっては、前記対向車走行状態判定手段は、前記対向車が所定の速度より低い車速で走行するとき、前記所定の走行状態にあると判定する如く構成した。
【0010】
請求項6にあっては、自車の周囲に存在する物体を検出する物体検出手段と、自車の運動状態を検出する運動状態検出手段と、前記物体検出手段と運動状態検出手段の出力に基づいて対向車が検出されるとき、前記運動状態検出手段の出力に基づいて自車の進路を予測すると共に、前記物体検出手段の出力に基づいて前記対向車の進路を予測し、前記予測された進路が重なる場合、前記対向車を障害物と認識し、自車が左に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する接触可能性判定手段と、前記接触の可能性があると判定される場合、前記対向車との接触回避を支援する接触回避支援動作を実行する接触回避支援手段とを備えた車両の接触回避支援装置において、前記対向車が路側帯を走行可能な車両であるか否か判定する対向車種別判定手段を備えると共に、前記接触可能性判定手段は、前記対向車が路側帯を走行可能な車両であると判定されるとき、自車が左または右に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する如く構成した。
【発明の効果】
【0011】
請求項1にあっては、自車が左に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定すると共に、接触の可能性があると判定される場合、それとの接触回避を支援する接触回避支援動作を実行する車両の接触回避支援装置において、自車が所定の走行状態にあるか否か判定し、肯定されるとき、自車が左または右に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する如く構成したので、法令上自車の左側通行が義務付けられない環境を走行するときも、対向車との接触の可能性を的確に判定することができ、それとの接触回避を支援することができる。
【0012】
請求項2に係る車両の接触回避支援装置にあっては、自車が道路以外の場所を走行するとき、所定の走行状態にあると判定する如く構成したので、上記した効果に加え、道路以外の場所において対向車との接触の可能性を的確に判定することができ、それとの接触回避を支援することができる。
【0013】
請求項3に係る車両の接触回避支援装置にあっては、自車が所定の速度より低い車速で走行するとき、所定の走行状態にあると判定する如く構成したので、上記した効果に加え、駐車場のような道路以外の場所において対向車との接触の可能性を一層的確に判定することができ、それとの接触回避を支援することができる。
【0014】
請求項4にあっては、自車が左に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定すると共に、接触の可能性があると判定される場合、それとの接触回避を支援する接触回避支援動作を実行する車両の接触回避支援装置において、対向車が所定の走行状態にあるか否か判定し、肯定されるとき、自車が左または右に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する如く構成したので、法令上対向車の左側通行が義務付けられない環境を走行するときも対向車との接触の可能性を的確に判定することができ、それとの接触回避を支援することができる。
【0015】
請求項5に係る車両の接触回避支援装置にあっては、対向車が所定の速度より低い車速で走行するとき、所定の走行状態にあると判定する如く構成したので、上記した効果に加え、駐車場のような道路以外の場所において対向車との接触の可能性を一層的確に判定することができ、それとの接触回避を支援することができる。
【0016】
請求項6にあっては、自車が左に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定すると共に、接触の可能性があると判定される場合、それとの接触回避を支援する接触回避支援動作を実行する車両の接触回避支援装置において、対向車が路側帯を走行可能な車両であるか否か判定し、肯定されるとき、自車が左または右に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する如く構成したので、上記した効果に加え、対向車が自転車、二輪車、電動車椅子(電動カート)、耕運機などであるとき、それとの接触の可能性を一層的確に判定することができ、接触回避を支援することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面に即してこの発明に係る車両の接触回避支援装置を実施するための最良の形態について説明する。
【実施例1】
【0018】
図1はこの発明の第1実施例に係る車両の接触回避支援装置を全体的に示す概略図である。
【0019】
図1において、符号10は接触回避支援装置を示し、装置10は、内燃機関(図に「ENG」と示す。以下「エンジン」という)12の駆動力を自動変速機(図に「T/M」と示す)14から駆動輪(図示せず)に伝達する車両(自車。エンジン12、自動変速機14などで部分的に示す)16に搭載され、制御装置18と、ブレーキアクチュエータ20と、EPS(Electric Power Steering)アクチュエータ22と、警報装置24と、シートベルト駆動機構26とを備える。
【0020】
制御装置18は、走行制御部28と、エンジン制御部30と、変速制御部32と、ブレーキ制御部34と、EPS制御部36と、シートベルト制御部38とからなる。これら制御部は全てマイクロコンピュータを備えると共に、相互に通信自在に構成される。
【0021】
走行制御部28は接触回避支援動作を行う接触回避支援手段などとして機能するが、それについては後述する。エンジン制御部30と変速制御部32は、エンジン12と自動変速機14の動作を制御するが、エンジン制御部30と変速制御部32の動作は本願の要旨と直接の関連を有しないため、説明は省略する。
【0022】
ブレーキアクチュエータ20は、ブレーキペダル(図示せず)の踏み込み力を増力するマスタバック(図示せず)と、増力された踏み込み力で制動圧を発生し、ブレーキ油圧機構(図示せず)を介して駆動輪と従動輪に装着されたブレーキを動作させるマスタシリンダ(図示せず)からなる。
【0023】
ブレーキ制御部34はブレーキアクチュエータ20に接続される。ブレーキ制御部34は、走行制御部28の指令に応じ、ブレーキ油圧機構を介して乗員(運転者)のブレーキペダル操作とは独立にブレーキアクチュエータ20を動作させる自動ブレーキを実行することで車両16の走行を制動(減速)する。
【0024】
EPSアクチュエータ22は、前輪が駆動輪である場合を例にとって説明すると、ステアリングシャフトなどから伝達されるステアリングホイール(図示せず)の回転運動をピニオンを介してラック(共に図示せず)の往復運動に変換し、タイロッド(図示せず)を介し前輪を転舵させる機構において、そのラック上に配置された電動機からなる。
【0025】
EPS制御部36はEPSアクチュエータ22に接続される。EPS制御部36は、走行制御部28の指令に応じ、EPSアクチュエータ22を動作させて乗員(運転者)に操舵トルクを付与する。
【0026】
警報装置24は車両16の運転席付近に設置されたオーディオスピーカとインディケータ(共に図示せず)を備え、走行制御部28に接続される。走行制御部28は警報装置24を動作させ、音声と視覚を介して乗員に警報する。
【0027】
シートベルト駆動機構26は、車両16の運転席に設置され、運転者が装着するシートベルト(図示せず)に接続され、シートベルトを駆動する。シートベルト制御部38はシートベルト駆動機構26に接続され、その駆動力を調節して乗員に警報する。また、走行制御部28は、さらに必要に応じ、EPS制御部36を介してEPSアクチュエータ22を動作させてステアリングホイールを回転させることによっても乗員に警報する。
【0028】
上記に加え、装置10は、図示のようなセンサ類を備える。
【0029】
以下説明すると、撮影装置40は、CCDカメラやC−MOSカメラからなるカメラ40aと画像処理部40bからなる。カメラ40aは車両16のフロントウィンドウ内の車室側でルームミラー近傍の位置に配置され、フロントウィンドウ越しに進行方向前方を撮影する。画像処理部40bは、カメラ40aで撮影して得た画像を入力し、フィルタリングや二値化などの画像処理を行って画像データを生成し、走行制御部28に出力する。
【0030】
レーダ装置42は、車両16のボディのノーズ部などに配置されてレーザ光やミリ波などの電磁波を車両16の進行方向前方などの周囲に発信(送信)するレーダ42aと、それが車両16の周囲に存在する物体によって反射されて生じた反射波を受信するレーダ処理部42bからなる。レーダ処理部42bは反射波の有無から物体を検出すると共に、物体が検出されるときはその距離、方位、移動速度を検出して走行制御部28に出力する。
【0031】
操舵トルクセンサ44はステアリングホイールとEPSアクチュエータ22の間に配置され、ステアリングホイールから乗員が入力(操作)した操舵力(操舵トルク)の方向と大きさに応じた出力を生じる。操舵角センサ46はステアリングシャフトの付近に配置され、ステアリングホイールを通じて乗員が入力(操作)した操舵角の方向と大きさに応じた出力を生じる。
【0032】
ヨーレートセンサ48は車両16の重心位置付近に配置され、車両16の鉛直軸(ヨー軸)回りのヨーレート(回転角速度)に応じた出力を生じる。車速センサ50は駆動輪のドライブシャフト(図示せず)の付近に配置され、駆動輪の所定回転ごとにパルスを出力する。
【0033】
上記したセンサの出力も走行制御部28に送られ、走行制御部28はそれらの入力値から操舵トルクなどを検出すると共に、車速センサ50の出力をカウントして車両16の走行速度である車速を検出する。
【0034】
装置10は、さらに、ナビゲーション装置54を備える。ナビゲーション装置54は、現在位置検出部54aと、ナビゲーション処理部54bと、地図データ記憶部54cと、入力部54dと、表示部54eからなる。
【0035】
現在位置検出部54aは、GPS(Global Positioning System)信号などの測位信号を受信する測位信号受信部54a1と、車両16の水平面での向きや鉛直方向に対する傾斜角度などに応じた信号を出力するジャイロセンサ54a2を備え、受信した測位信号あるいはジャイロセンサ54a2と前記した車速センサ50の出力に基づく自律航法に基づいて車両16の現在位置を算出する。
【0036】
地図データ記憶部54cはCD−ROMなどの記憶媒体からなり、車両16が走行する道路の幅員、交差点、右折レーンなどを含む地図(道路)データを記憶(格納)する。入力部54dは過剰動作抑制スイッチ(後述)などを含むスイッチ群やキーボードなどからなり、表示部54eはディスプレイを備える。
【0037】
ナビゲーション処理部54bは、地図データ記憶部54cに記憶される地図(道路)データにおいて現在位置検出部54aで得られる車両16の現在位置、あるいは入力部54dに入力される車両16の位置などを表示部54eに表示させる。ナビゲーション処理部54bと走行制御部28は通信自在に接続され、ナビゲーション処理部54bは自車16が走行する位置を道路地図データ上に特定する情報を走行制御部28に出力する。
【0038】
図2は、図1に示す装置10を示すフロー・チャートである。図2は、より具体的には装置10の制御装置18の内の走行制御部28の動作を示すフロー・チャートである。
【0039】
以下説明すると、S10において前記したレーダ装置42のレーダ処理部42bの出力に基づき、自車(車両)16の周囲の物体(ガードレール、先行車、対向車など)を検出すると共に、検出された物体の自車16に対する相対位置と相対速度を検出する。次いでS12に進み、車速センサ50とヨーレートセンサ48の出力から自車(車両)16の車速とヨーレート、即ち、自車16の運動状態を検出する。
【0040】
次いでS14に進み、物体の自車16に対する相対速度と自車16の車速の差から物体の対地速度を求め、対地速度が自車16の方向に向かってくる物体、即ち、対向車があるか否か判断する。
【0041】
S14で否定されるときは以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときは対向車が検出されたと判断し、S16に進み、検出された運動状態(換言すればS12の運動状態検出手段の出力)に基づいて自車16の進路を予測すると共に、対向車の位置の変化(換言すればS10の物体検出手段の出力)に基づいて対向車の進路を予測する。
【0042】
次いでS18に進み、予測された自車16の進路と対向車の進路が重なるか否か判断し、否定されるときは以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS20に進み、対向車を障害物と認識する。
【0043】
次いでS22に進み、自車16が所定の走行状態にあるか否か判断(判定)する。ここで「自車16が所定の走行状態にある」とは、法令上左側通行が義務付けられないような環境を走行する状態、具体的には道路以外の場所、例えば駐車場を走行する状態、より具体的にはそのような場所を所定の速度(例えば25km/h)より低い速度で走行する状態にあることを意味する。
【0044】
S22の判断は具体的には、ナビゲーション装置54のナビゲーション処理部54bにアクセスして地図データ記憶部54cに記憶される地図(道路)データを読み出し、自車16が道路以外の場所、例えば駐車場を走行しているか否か判断することで行う。
【0045】
S22で否定されるときはS24に進み、対向車は直進すると想定し、図3に示す如く、左に回避するための回避量を算出する。他方、S22で肯定されるときはS26に進み、図4に示す如く、左に回避するための回避量と右に回避するための回避量をそれぞれ算出し、それらの中の小さい方を選択する。
【0046】
次いでS28に進み、算出あるいは選択された回避量から図5に示す特性に従って接触回避支援タイミング(時間)を算出する。図示の如く、回避量が大きくなるほど回避に時間がかかるため、接触回避支援タイミングは回避量が増加するほど増大するように設定される。
【0047】
次いでS30に進み、算出された接触回避支援タイミングに、自車16に対する対向車の相対速度を乗算して接触回避支援作動距離を算出し、S32に進み、接触回避支援作動距離が自車16に対する対向車の相対距離(自車16と対向車との離間距離)を超えるか否か判断する。
【0048】
S32で否定されるときは以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときは対向車と自車16との接触の可能性があると判定し、S34に進み、警報作動、具体的には接触回避支援動作の実行、より具体的には警報装置24を作動させて音声または視覚による警報を実行する。
【0049】
第1実施例にあっては上記の如く、自車16の周囲に存在する物体を検出する物体検出手段(撮影装置40、レーダ装置42、走行制御部28,S10)と、自車の運動状態を検出する運動状態検出手段(車速センサ50、ヨーレートセンサ48,S12)と、前記物体検出手段と運動状態検出手段の出力に基づいて対向車が検出されるとき(S14)、前記運動状態検出手段の出力に基づいて自車の進路を予測すると共に、前記物体検出手段の出力に基づいて前記対向車の進路を予測し(S16)、前記予測された進路が重なる場合、前記対向車を障害物と認識し(S18からS20)、自車が左に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する接触可能性判定手段(S24,S28からS32)と、前記接触の可能性があると判定される場合、前記対向車との接触回避を支援する接触回避支援動作を実行する接触回避支援手段(S34)、即ち、自車が対向車を左に回避するとして算出される回避量から接触回避支援作動距離を算出して対向車との相対距離と比較することで対向車との接触の可能性を判定すると共に、接触の可能性があると判定される場合、それとの接触回避を支援する接触回避支援動作を実行する接触回避支援手段(S24,S28からS34)とを備えた車両16の接触回避支援装置10において、自車が所定の走行状態にあるか否か判定する自車走行状態判定手段(S22)を備えると共に、前記接触可能性判定手段は、自車が所定の走行状態にあると判定されるとき、自車が左または右に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する(S26からS32)如く構成したので、法令上自車16の左側通行が義務付けられない環境を走行するときも、対向車との接触の可能性を的確に判定することができ、それとの接触回避を支援することができる。
【0050】
具体的には、前記自車走行状態判定手段は、自車が道路以外の場所を走行するとき、前記所定の走行状態にあると判定する如く構成したので、道路以外の場所において対向車との接触の可能性を的確に判定することができ、それとの接触回避を支援することができる。
【0051】
より具体的には、前記自車走行状態判定手段は、自車が所定の速度より低い車速で走行するとき、前記所定の走行状態にあると判定する如く構成したので、駐車場のような道路以外の場所において対向車との接触の可能性を一層的確に判定することができ、それとの接触回避を支援することができる。
【実施例2】
【0052】
図6はこの発明の第2実施例に係る車両の接触回避支援装置の動作を示すフロー・チャートである。
【0053】
図2に示す第1実施例のフロー・チャートと相違する点に焦点をおいて説明すると、S100からS110までS10からS20までと同様の処理を行ってS112に進み、対向車が所定の走行状態にあるか、あるいは対向車が路側帯を走行可能な車両であるか否か判断(判定)する。
【0054】
ここで「対向車が所定の走行状態にある」とは、法令上対向車の左側通行が義務付けられないような環境を走行する状態、具体的には道路以外の場所、例えば駐車場を走行する状態、より具体的にはそのような場所を所定の速度(例えば25km/h)より低い速度で走行する状態にあることを意味する。
【0055】
また「路側帯」とは、道路の端寄りに道路標示によって区画された帯状の部分を意味し、道路交通法第17条に規定される「歩道等」に含まれる「歩道と路側帯」の内の後者を意味する。
【0056】
また「路側帯を走行可能な対向車」とは、自転車、二輪車、電動車椅子(電動カート)、耕運機などの路側帯を通行可能な車両を全て意味する。尚、「所定の走行状態にある」対向車は、図3と図4に示すような自車16と同様な四輪乗用車と、上記した路側帯を走行可能な対向車を含む。
【0057】
S112の判断は具体的には、ナビゲーション装置54のナビゲーション処理部54bにアクセスして地図データ記憶部54cに記憶される地図(道路)データを読み出し、対向車が道路以外の場所、例えば駐車場を走行しているか、あるいは撮影装置40の出力から対向車が路側帯を走行する車両か否か判断することで行う。
【0058】
尚、S112で否定されるときはS114に進み、左に回避するための回避量を算出する一方、肯定されるときはS116に進み、左右への回避量を算出して小さい方を選択する。次いで、S118に進み、算出あるいは選択された回避量から接触回避支援タイミングを算出する。
【0059】
次いでS120に進み、接触回避支援作動距離を算出し、S122に進み、接触回避支援作動距離が自車16に対する対向車の相対距離を超えるか否か判断し、否定されるときは以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときは対向車と自車16との接触の可能性があると判定し、S124に進み、警報作動を実行する。
【0060】
第2実施例にあっては上記の如く、自車16の周囲に存在する物体を検出する物体検出手段(撮影装置40、レーダ装置42、走行制御部28,S100)と、自車の運動状態を検出する運動状態検出手段(車速センサ50、ヨーレートセンサ48,S102)と、前記物体検出手段と運動状態検出手段の出力に基づいて対向車が検出されるとき(S104)、前記運動状態検出手段の出力に基づいて自車の進路を予測すると共に、前記物体検出手段の出力に基づいて前記対向車の進路を予測し(S106)、前記予測された進路が重なる場合、前記対向車を障害物と認識し(S108からS110)、自車が左に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する接触可能性判定手段(S114,S118からS122)と、前記接触の可能性があると判定される場合、前記対向車との接触回避を支援する接触回避支援動作を実行する接触回避支援手段(S124)、即ち、回避量から接触回避支援作動距離を算出して対向車との相対距離と比較することで対向車との接触の可能性を判定すると共に、接触の可能性があると判定される場合、それとの接触回避を支援する接触回避支援動作を実行する接触回避支援手段(S114,S118からS124)とを備えた車両16の接触回避支援装置10において、前記対向車が所定の走行状態にあるか否か判定する対向車走行状態判定手段(S112)を備えると共に、前記接触可能性判定手段は、前記対向車が所定の走行状態にあると判定されるとき、自車が左または右に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する(S116からS122)如く構成したので、法令上対向車の左側通行が義務付けられない環境を走行するときも、対向車との接触の可能性を的確に判定することができ、それとの接触回避を支援することができる。
【0061】
具体的には、前記対向車走行状態判定手段は、前記対向車が所定の速度より低い車速で走行するとき、前記所定の走行状態にあると判定する如く構成したので、駐車場のような道路以外の場所において対向車との接触の可能性を一層的確に判定することができ、それとの接触回避を支援することができる。
【0062】
また、自車16の周囲に存在する物体を検出する物体検出手段(撮影装置40、レーダ装置42、走行制御部28,S100)と、自車の運動状態を検出する運動状態検出手段(車速センサ50、ヨーレートセンサ48,S102)と、前記物体検出手段と運動状態検出手段の出力に基づいて対向車が検出されるとき(S104)、前記運動状態検出手段の出力に基づいて自車の進路を予測すると共に、前記物体検出手段の出力に基づいて前記対向車の進路を予測し(S106)、前記予測された進路が重なる場合、前記対向車を障害物と認識し(S108からS110)、自車が左に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する接触可能性判定手段(S114,S118からS122)と、前記接触の可能性があると判定される場合、前記対向車との接触回避を支援する接触回避支援動作を実行する接触回避支援手段(S124)とを備えた車両16の接触回避支援装置10において、前記対向車が路側帯を走行可能な車両であるか否か判定する対向車種別判定手段(S112)を備えると共に、前記接触可能性判定手段は、前記対向車が路側帯を走行可能な車両であると判定されるとき、自車が左または右に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する(S116からS122)如く構成したので、対向車が自転車、二輪車、電動車椅子(電動カート)、耕運機などであるとき、それとの接触の可能性を一層的確に判定することができ、接触回避を支援することができる。
【0063】
尚、上記において、警報作動は、警報装置24を作動させて音声または視覚による警報を実行するように構成したが、ブレーキ制御部34、EPS制御部36、シートベルト制御部38の一つまたはそれ以上を動作させても良い。
【0064】
ブレーキ制御部34の場合、ブレーキアクチュエータ20を動作させる自動ブレーキによる車両の減速である。EPS制御部36の場合、EPSアクチュエータ22を動作させるステアリング(操舵)トルク付与であり、シートベルト制御部38の場合、シートベルト駆動機構26を介してシートベルトを引き込ませることによる警報である。尚、ナビゲーション装置54の表示部54eを用いることも可能である。
【0065】
また、自車16あるいは対向車が所定の走行状態にあるか否かをナビゲーション装置54のナビゲーション処理部54bにアクセスして地図データ記憶部54cに記憶される地図(道路)データを読み出して判断するようにしたが、それに代え、あるいはそれに加え、撮影装置40の画像処理部40bの出力から判断しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】この発明の第1実施例に係る車両の接触回避支援装置を全体的に示す概略図である。
【図2】図1に示す装置の動作を示すフロー・チャートである。
【図3】図2フロー・チャートの処理において対向車を左に回避するための回避量を示す説明図である。
【図4】図2フロー・チャートの処理において自車も対向車を左右に回避するときの回避量を示す説明図である。
【図5】図2フロー・チャートの処理において回避量から接触回避支援タイミングを算出するときの特性を示す説明図である。
【図6】この発明の第2実施例に係る車両の接触回避支援装置の動作を示すフロー・チャートである。
【符号の説明】
【0067】
10 車両の接触回避支援装置、16 車両(自車)、18 制御装置、20 ブレーキアクチュエータ、24 警報装置、26 シートベルト駆動機構、28 走行制御部、40 撮影装置、42 レーダ装置、48 ヨーレートセンサ、50 車速センサ、54 ナビゲーション装置、54a 現在位置検出部、54b ナビゲーション処理部、54c 地図データ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車の周囲に存在する物体を検出する物体検出手段と、自車の運動状態を検出する運動状態検出手段と、前記物体検出手段と運動状態検出手段の出力に基づいて対向車が検出されるとき、前記運動状態検出手段の出力に基づいて自車の進路を予測すると共に、前記物体検出手段の出力に基づいて前記対向車の進路を予測し、前記予測された進路が重なる場合、前記対向車を障害物と認識し、自車が左に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する接触可能性判定手段と、前記接触の可能性があると判定される場合、前記対向車との接触回避を支援する接触回避支援動作を実行する接触回避支援手段とを備えた車両の接触回避支援装置において、自車が所定の走行状態にあるか否か判定する自車走行状態判定手段を備えると共に、前記接触可能性判定手段は、自車が所定の走行状態にあると判定されるとき、自車が左または右に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定することを特徴とする車両の接触回避支援装置。
【請求項2】
前記自車走行状態判定手段は、自車が道路以外の場所を走行するとき、前記所定の走行状態にあると判定することを特徴とする請求項1記載の車両の接触回避支援装置。
【請求項3】
前記自車走行状態判定手段は、自車が所定の速度より低い車速で走行するとき、前記所定の走行状態にあると判定することを特徴とする請求項1記載の車両の接触回避支援装置。
【請求項4】
自車の周囲に存在する物体を検出する物体検出手段と、自車の運動状態を検出する運動状態検出手段と、前記物体検出手段と運動状態検出手段の出力に基づいて対向車が検出されるとき、前記運動状態検出手段の出力に基づいて自車の進路を予測すると共に、前記物体検出手段の出力に基づいて前記対向車の進路を予測し、前記予測された進路が重なる場合、前記対向車を障害物と認識し、自車が左に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する接触可能性判定手段と、前記接触の可能性があると判定される場合、前記対向車との接触回避を支援する接触回避支援動作を実行する接触回避支援手段とを備えた車両の接触回避支援装置において、前記対向車が所定の走行状態にあるか否か判定する対向車走行状態判定手段を備えると共に、前記接触可能性判定手段は、前記対向車が所定の走行状態にあると判定されるとき、自車が左または右に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定することを特徴とする車両の接触回避支援装置。
【請求項5】
前記対向車走行状態判定手段は、前記対向車が所定の速度より低い車速で走行するとき、前記所定の走行状態にあると判定することを特徴とする請求項4記載の車両の接触回避支援装置。
【請求項6】
自車の周囲に存在する物体を検出する物体検出手段と、自車の運動状態を検出する運動状態検出手段と、前記物体検出手段と運動状態検出手段の出力に基づいて対向車が検出されるとき、前記運動状態検出手段の出力に基づいて自車の進路を予測すると共に、前記物体検出手段の出力に基づいて前記対向車の進路を予測し、前記予測された進路が重なる場合、前記対向車を障害物と認識し、自車が左に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定する接触可能性判定手段と、前記接触の可能性があると判定される場合、前記対向車との接触回避を支援する接触回避支援動作を実行する接触回避支援手段とを備えた車両の接触回避支援装置において、前記対向車が路側帯を走行可能な車両であるか否か判定する対向車種別判定手段を備えると共に、前記接触可能性判定手段は、前記対向車が路側帯を走行可能な車両であると判定されるとき、自車が左または右に回避することを前提とする判定条件に従って自車との接触の可能性を判定することを特徴とする車両の接触回避支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−169813(P2009−169813A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9090(P2008−9090)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】