説明

車両停止制御装置

【課題】車両停止時において効率的な停止を行うことのできる車両停止制御装置を提供することにある。
【解決手段】車両1が惰性走行中であり(S1)、前方の信号機の表示が赤または黄である場合(S2)、当該信号機に対応する停止線までの距離(信号機距離)と、惰性走行により到達する到達距離とを比較し(S3、S4)、到達距離が信号機距離を超えるときには各種ブレーキを作動し(S5)、到達距離が信号機距離に達しない場合は駆動力を発生させるよう制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両停止制御装置に係り、詳しくは車両を信号機の停止位置に向けて適正に停止させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の燃費向上のため、エンジンの効率を高めたり、エンジンの他に走行用のモータを搭載してハイブリッド電気自動車としたり等、様々な技術が開発されている。
しかし、車両側の改善がなされても、燃費には車両の走行方法に影響を受けるため、車両を運転する運転者の運転の仕方によっては、これらの改善の効果を享受できず、燃費が悪化する場合がある。
【0003】
ここで、車両の停止に関する技術として、ハイブリッド自動車においても車両の停止位置を調整できるようクリープトルクを発生させる技術等がある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−245517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のようにハイブリッド自動車においてクリープ走行が可能となった場合でも、運転者の運転技能によっては、燃料消費や電力消費を悪化させるおそれがある。
車両停止時においては、通常、アクセル及びブレーキ操作を行わない惰性走行のまま目的の位置に停止することが、効率よく適正な停止といえる。
【0006】
例えば、車両前方の信号機が赤(進行不可表示)であったり、先行車両との車間距離が近づいているのに対し、アクセルを踏み続けて停止位置直前で急停車したり、制動をかけ過ぎて目的の位置に到達しなくなりアクセルを踏み直したりすると、無駄なエネルギーの消費が生じて、燃費が悪化する。
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、車両停止時において効率的な停止を行い、燃費を向上させることのできる車両停止制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、請求項1の車両停止制御装置では、車両を駆動させる駆動源と、前記車両の惰性走行を検出する惰性走行検出手段と、前記車両前方にある信号機の表示状態を検出する信号機表示検出手段と、自車両から前記車両前方にある信号機に対応する停止位置までの信号機距離を算出する信号機距離算出手段と、前記車両の惰性走行時に現在地から当該惰性走行により停止する到達距離を算出する到達距離算出手段と、前記惰性走行検出手段により前記車両の惰性走行が検出され、前記信号機表示検出手段により検出される信号機の表示状態が通行可能表示でなく、前記到達距離算出手段により算出される到達距離が、信号機距離算出手段により算出される信号機距離に達しない場合には、前記信号機に対応する停止位置までに要する駆動力を前記駆動源により発生させる車両停止制御手段と、を備えることを特徴としている。
【0008】
請求項2の車両停止制御装置では、請求項1において、さらに、前記車両を制動する制動手段を備え、前記車両停止制御手段は、前記惰性走行検出手段により前記車両の惰性走行が検出され、前記信号機表示検出手段により検出される信号機の表示状態が通行可能表示でなく、前記到達距離算出手段により算出される到達距離が、信号機距離算出手段により算出される信号機距離を超える場合には、前記信号機に対応する停止位置までに要する制動力を前記制動手段により発生させることを特徴としている。
【0009】
請求項3の車両停止制御装置では、請求項2において、さらに、自車両の前方に先行車両がある場合に、当該先行車両との車間距離を算出する車間距離算出手段を備えており、前記惰性走行検出手段により前記車両の惰性走行が検出され、前記信号機表示検出手段により検出される信号機の表示状態が通行可能表示でなく、前記到達距離算出手段により算出される到達距離が、信号機距離算出手段により算出される信号機距離に達しない場合に、自車両の前方に先行車両が存在するときは、前記車間距離算出手段に算出される車間距離を所定距離に維持しつつ停止させるよう前記駆動減または制動手段を制御することを特徴としている。
【0010】
請求項4の車両停止制御装置では、請求項1において、前記車両は、前記駆動源をモータ及びエンジンとするハイブリッド車両であって、前記車両停止制御手段は、前記モータが使用するバッテリのSOCが所定量以上である場合には前記モータによる駆動力、SOCが所定量未満である場合には、前記エンジンによる駆動力を用いることを特徴としている。
【0011】
請求項5の車両停止制御装置では、請求項4において、前記制動手段はモータによる回生ブレーキであることを特徴としている。
請求項6の車両停止制御装置では、請求項1から5のいずれかにおいて、前記車両は、前記車両停止制御手段による制御の実行状態を表示する表示手段を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
上記手段を用いる本発明の請求項1の車両停止制御装置によれば、車両前方の信号機の表示が通行可能でなく、車両が惰性走行にあって、車両前方の信号機に対応する停止位置まで到達しない場合には、車両停止制御手段により当該信号機に対応する停止位置まで到達するよう駆動力を発生させる。したがって、車両は運転者のアクセル操作によらず、適正に信号機の停止位置で停止することができる。
【0013】
これにより、運転者の運転技能に関わらず、無駄なエネルギーを消費しない効率的な停止を行うことができ、車両の燃費を向上させることができる。また、運転者自らによる運転操作が減少することから、運転者の疲労を軽減することもできる。
請求項2の車両停止制御装置によれば、車両が惰性走行により車両前方の信号機における停止位置を超えるような場合には、車両停止制御手段により当該信号機における停止位置を超えないよう制動力を発生させる。したがって、車両は運転者のブレーキ操作によらず、適正に信号機の停止位置で停止することができる。これにより、より確実に効率的な停止を行うことができる。
【0014】
請求項3の車両停止制御装置によれば、車両停止制御手段は、車両前方に先行車両がある場合には、当該先行車両との車間距離を所定距離に維持するよう駆動力または制動力を制御する。
これにより、信号機手前で先行車両がある場合でも、先行車両との車間距離を適正に維持し安全性を確保しつつ、効率的な停止を行うことができる。
【0015】
請求項4の車両停止制御装置によれば、車両が駆動源としてエンジン及びモータを備えるハイブリッド車両である場合に、バッテリのSOCに応じて車両停止制御に用いる駆動源を切り換えることで、モータの電力を確保しつつ効率よく車両の停止を行うことができる。
請求項5の車両停止制御装置によれば、制動手段としてモータによる回生ブレーキを用いることで、制動エネルギーを回収し、より効率のよい停止を行うことができる。
【0016】
請求項6の車両停止制御装置によれば、表示手段により車両停止制御の実行を表示することで、運転者に車両が自動で停止することを示すことで、運転者の操作の割り込みを抑制し、車両停止制御を円滑に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る車両停止制御装置の第1実施形態における全体構成を示した概略構成図である。
【図2】本発明に係る車両停止制御装置の第1実施形態における車両停止ECUの構成を示したブロック図である。
【図3】本発明に係る車両停止制御装置の一実施形態における車両停止ECUの停止制御部が実行する制御ルーチンの一部を表したフローチャートである。
【図4】図3に続く制御ルーチンを表したフローチャートである。
【図5】図3、4に続く制御ルーチンを表したフローチャートである。
【図6】本発明に係る車両停止制御装置の変形例における車両停止ECUの停止制御部が実行する制御ルーチンの一部を表したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1を参照すると、本発明の第1実施形態に係る車両停止制御装置の概略構成図が示されている。
図1に示すように、車両1は駆動源として内燃機関(以下、エンジンという)2と電動機(以下、モータという)4とを搭載し、エンジン2の駆動トルクとモータ4の駆動トルクとをそれぞれ車両1の駆動輪6、6に伝達可能とする、いわゆるパラレル型ハイブリッド電気自動車(以下、ハイブリット車両ともいう)である。
【0019】
モータ4は、バッテリ8に蓄えられた直流電力を図示しないインバータによって交流電力に変換して供給されることにより回転駆動する。また、モータ4は、車両減速時等には発電機として機能させることで、駆動輪6の回転による運動エネルギーが当該モータ4を介して交流電力に変換され、回生制動力(回生ブレーキ)を発生する(制動手段)。そして、この交流電力はインバータによって直流電力に変換された後、バッテリ8に充電され、駆動輪6の回転による運動エネルギーが電気エネルギーとして回収される。
【0020】
また、車両1の各車輪6には、制動力を発生させるブレーキ10(制動手段)が設けられている。さらに車両1には、制動力を発生させる手段として、エンジン2の排気を利用する排気ブレーキ(制動手段)もある。
さらに、車両1には、ミリ波レーダ12、車速センサ14、アクセル開度センサ16、ブレーキ開度センサ18、情報受信ユニット20等の各種センサやデバイスが設けられている。
【0021】
ミリ波レーダ12は、車両1の前部に設置され、ミリ波帯の電波を用いて車両1の前方にある先行車両等の障害物を検知し、自車両と先行車両との相対距離及び相対速度を測定するものである。
車速センサ10は、車両1の車輪速から車速を検出するものである。
アクセル開度センサ16は運転者のアクセル操作量を検知し、ブレーキ開度センサ18は運転者のブレーキ操作量を検知するものである。
【0022】
情報受信ユニット20は、例えば人工衛星からのGPS(Global Positioning System)信号を受信して自車両1の現在位置情報を受信するGPSや、道路交通情報や道路上の信号機の位置及び表示情報等を受信する道路情報受信機等からなる。当該情報受信ユニット20により受信した情報は車両に搭載されたナビゲーションユニット22に入力される。
【0023】
当該ナビゲーションユニット22は、予め地図情報が記憶されており、当該地図情報としては、道路の位置や幅、道路勾配、標高等や、道路上に配置された信号機の位置及び当該信号機に対応する停止線位置(停止位置)情報等が含まれている。そして、当該ナビゲーションユニット22は、情報受信ユニット20により受信した情報と照合することで、自車両が現在走行している道路の各情報や自車両前方で最も近接した信号機における停止線位置及び表示状態を取得する。
【0024】
さらに、車両1には、エンジン2の制御を行うエンジンECU24、モータ4の制御を行うモータECU26、ブレーキ10の制御を行うブレーキECU28、車両1の停止を制御する車両停止ECU30等、各種装置の制御を行う各ECU(電子コントロールユニット)が設けられており、当該各種ECUには上記各種センサ等により検出された情報がCAN(Controller Area Network)等の通信線を介してそれぞれ入力される。
【0025】
エンジンECU24及びモータECU26は、それぞれアクセル開度センサ16からのアクセル操作量情報が入力され、バッテリ8の充電率(SOC:State of Charge)に応じて、エンジン2またはモータ4の駆動力を発生させる。例えばバッテリ8のSOCが低い場合には、エンジン2による駆動を行い、SOCが十分である場合にはモータ4による駆動を行う。またエンジン2の駆動トルクの一部を用いてモータ4を回転させることによりモータ4を発電機として機能させ、発電された電力をバッテリ8に充電することも可能である。さらにモータECU26はモータ4による回生ブレーキを用いるよう制御することも可能である。
【0026】
ブレーキECU28は、ブレーキ開度センサ18からブレーキ操作量情報が入力され、当該ブレーキ操作量情報に応じてブレーキ10や排気ブレーキ等の各種ブレーキによる制動力を制御する。
車両停止ECU30は、車両前方の信号機の表示が青(通行可能)でない赤(通行不可)または黄(停止)であって、惰性走行に入った場合に、車両1を運転者の操作によらず自動的に停止させる制御を行うものである。当該車両停止ECU30は、運転席に設けられた表示灯32と接続されており、当該車両停止ECU30の制御実行時には当該表示灯を点灯させ、運転者に車両停止制御が実行されていることを示す。
【0027】
ここで、当該車両停止ECU30の構成についてより詳しく説明する。
図2を参照すると、車両停止ECUの構成がブロック図で示されており、以下同図に基づき説明する。
図2に示すように車両停止ECU30は、信号機情報取得部40、自車両位置認識部42を有しており、それぞれナビゲーションユニット22から対応する情報を取得する。
【0028】
詳しくは、信号機情報取得部40は、車両前方にある信号機に対応する停止線の位置、及び当該信号機の表示状態に関する情報を取得する。なお、ここでの車両前方にある信号機とは、自車両が走行している道路の進行方向上の所定距離内にある信号機のうち最も近い位置にある信号機とする。
自車両位置認識部42は、ナビゲーションユニット22からのGPS情報と予め記憶されている地図情報とに基づき、地図上での自車両の走行位置及び現在走行している道路の勾配等の自車両位置情報を認識する。
【0029】
これら信号機情報取得部40にて取得した信号機情報、及び自車両位置認識部42において認識した自車両位置情報は、車両停止ECU30の信号機距離算出部44に入力される。
当該信号機距離算出部44は、自車両と自車両前方の信号機に対応する停止線までの距離(以下、信号機距離という)を算出するものである。
【0030】
また自車両位置認識部42において認識された自車両位置情報は、車速センサ14により検出される車速情報とともに車両停止ECU30の到達距離算出部46に入力される。
当該到達距離算出部46は、現在自車両が走行している道路勾配等の道路情報を加味しつつ、現在の車速から惰性走行を開始した場合に到達する距離(以下、到達距離という)を算出するものである。
【0031】
また、ミリ波レーダ12により検出された情報は車両停止ECU30の車間距離算出部48に入力される。当該車間距離算出部48では、ミリ波レーダ12により先行車両が検出された場合に、当該先行車両と自車両との車間距離を算出するものである。
さらに、バッテリ8の情報は車両停止ECU30のSOC認識部50に入力される。当該SOC認識部50はバッテリ8の現在のSOCを認識するものである。
【0032】
車両停止ECU30は、さらに車両停止制御部52を有しており、当該車両停止制御部52に、上記信号機距離算出部44、到達距離算出部46、車間距離算出部48、SOC認識部50からの情報と、車速センサ14、アクセル開度センサ16及びブレーキ開度センサ18からの情報が入力される。
当該車両停止制御部52は入力された各情報に基づき、車両1の惰性走行中に、前方の信号機に到達するまでの適正な停止を行うべく、エンジンECU24、モータECU26、及びブレーキECU28を介して、エンジン2及びモータ4による駆動力、ブレーキ10やモータ4による制動力を調整する車両停止制御を行うものである。また、当該車両停止制御実行時においては表示灯32を点灯させる。
【0033】
以下、当該車両停止ECU30の車両停止制御部52において実行される車両停止制御について詳しく説明する。
図3には、車両停止ECU30の車両停止制御部において実行される車両停止制御ルーチンを示すフローチャートが示されており、以下同フローチャートに沿って説明する。
【0034】
図3のステップS1に示すように、車両停止ECU30の車両停止制御部52において、まず車両1が惰性走行中であるか否かを判別する。これはアクセル開度センサ16及びブレーキ開度センサ18からの情報から、アクセル操作なし(アクセルOFF)且つブレーキ操作なし(ブレーキOFF)であるか否かにより判別する。運転者によりアクセル操作またはブレーキ操作がなされている場合は、当該判別結果は偽(No)となり、運転者による操作を優先すべく当該ルーチンをリターンする。一方、惰性走行中である場合は、当該判別結果は真(Yes)となり、次のステップS2に進む。
【0035】
ステップS2では、信号機情報取得部40において取得した情報から、自車両前方にあり最も近い信号機の表示状態が赤(通行禁止)または黄(停止)であるか否かを判別する。信号機の表示状態が青(通行可能)である場合は、当該判別結果は偽(No)となり、車両停止制御は行なわず、当該ルーチンをリターンする。一方、信号機の表示状態が赤または黄であり、車両1を停止させる必要がある場合は次のステップS3に進む。
【0036】
ステップS3では、表示灯32を点灯させ、運転者に車両停止制御の実行を示すとともに、信号機距離算出部44及び到達距離算出部46において信号機距離及び到達距離を算出する。
続いてステップS4では、上記ステップS3で算出した到達距離が信号機距離に対して適正であるか、即ち現時点での車速からの惰性走行により、信号機の停止線まで到達できるか否かを判別する。到達距離が信号機距離とほぼ同等で現在の惰性走行を維持すれば適正に停止できる場合は、現在の状態を維持すべく当該ルーチンをリターンする。
【0037】
一方、車速が過剰等であり、到達距離が信号機距離を超える場合は、ステップS5に進む。
ステップS5では、車両停止制御部52は、ブレーキ10や、モータ4による回生ブレーキ、排気ブレーキ等の各種ブレーキを用い、到達距離が信号機距離と等しくなるように、制動力を発生させ、当該ルーチンをリターンする。具体的には、信号機距離から逆算して、当該信号機の停止線までに一定の減速度で車速を低下させるよう制動力を発生させる。
【0038】
また、上記ステップS4において車速不足等のため到達距離が信号機距離に達しない場合には、図4のステップS6に進む。
ステップS6では、車間距離算出部48からの情報から先行車両があるか否かを判別する。当該判別結果が真(Yes)の場合、即ち先行車両がある場合には、先行車両との車間距離を所定距離に保ちつつ、車両を停止させるべく、次のステップS7へと進む。
【0039】
ステップS7では、車間距離算出部48において先行車両との車間距離を算出し、続くステップS8において、当該算出した車間距離が予め定められた所定距離より大であるか否かを判別する。なお、当該所定距離は先行車両との衝突を避けることができる距離であり、車速に応じて設定される。車間距離が所定距離以下である場合には、当該判別結果は偽(No)となり、ステップS9に進む。
【0040】
ステップS9では、車両停止制御部52は、先行車両との車間距離を所定距離まで拡げるべく、各種ブレーキにより制動力を発生させ、当該ルーチンをリターンする。
一方、上記ステップS8の判別結果が真(Yes)である場合、即ち車間距離が所定距離より大である場合には、次のステップS10に進む。
【0041】
ステップS10ではSOC認識部50において認識されたバッテリ8のSOCが所定SOC(例えば50%)より大であるか否かを判別する。SOCが所定SOCより大である場合、当該判別結果は真(Yes)となり、ステップS11に進む。
ステップS11では、モータECU26を介してモータ4により車両1に駆動力を発生させるモータアシストを行う。
【0042】
そして、次のステップS12では、車間距離が所定距離以下となったか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合は、上記ステップS11に戻りモータアシストを継続する。一方、車間距離が所定距離まで近づき、当該判別結果が真(Yes)となると、次のステップS13に進む。
ステップS13では、車間距離を所定距離に維持すべくモータアシストを終了し惰性走行に戻して、当該ルーチンをリターンする。
【0043】
また、上記ステップS10において、SOCが所定SOC以下である場合には、ステップS14に進む。
ステップS14では、エンジンECU24を介してエンジン2により車両1に駆動力を発生させるエンジンアシストを行う。
そして、次のステップS15では、車間距離が所定距離以下となったか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合は、上記ステップS14に戻りエンジンアシストを継続する。一方、車間距離が所定距離まで近づき、当該判別結果が真(Yes)となると、次のステップS16に進む。
【0044】
ステップS16では、車間距離を所定距離に維持すべくエンジンアシストを終了し惰性走行に戻して、当該ルーチンをリターンする。
また、上記ステップS6において、車両1の惰性走行において車速が不足し信号機の停止線に達せず、且つ先行車両がない場合には図5のステップS17に進む。
【0045】
ステップS17では、上記ステップS10と同様にSOCが所定SOCより大であるか否かを判別する。当該判別結果が真(Yes)である場合は、ステップS18に進む。
ステップS18では、モータアシストを行い、次のステップS19において、当該モータアシストにより車速を増加させたことで到達距離が信号機距離以上となったか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合は、上記ステップS18に戻り、モータアシストを継続し、当該判別結果が真(Yes)となると、次のステップS20に進む。
【0046】
ステップS20では到達距離が適正となったのを維持すべくモータアシストを終了し惰性走行に戻して、当該ルーチンをリターンする。
一方、上記ステップS17において、SOCが所定SOC以下である場合には、ステップS21に進む。
ステップS21ではエンジンアシストを行い、次のステップS22において、当該エンジンアシストにより車速を増加させたことで到達距離が信号機距離以上となったか否かを判別する。当該判別結果が偽(No)である場合は、上記ステップS21に戻り、エンジンアシストを継続し、当該判別結果が真(Yes)となると、次のステップS23に進む。
【0047】
ステップS23では到達距離が適正となったのを維持すべくエンジンアシストを終了し惰性走行に戻して、当該ルーチンをリターンする。
車両停止ECU30の車両停止制御部52は、車両が停止するまで以上のような制御ルーチンを繰り返す。なお、当該車両停止制御実行中であっても、運転者により直接アクセルペダル操作またはブレーキペダル操作が行われた場合は、当該操作を優先すべく車両停止制御を直ちに終了する。また、車両停止制御を終了したときには表示灯32を消灯する。
【0048】
このように、車両前方の信号が赤または黄で、車両1が惰性走行にあって、車両1の到達距離が信号機距離に達しない場合に、車両停止ECU30は当該信号機の停止線まで車両を到達させるようにエンジン2またはモータ4により駆動力を発生させ、当該停止線を超える場合には、停止線を超えないように制動力を発生させる。
【0049】
したがって、車両1は、運転者のアクセルペダル操作及びブレーキペダル操作によらず、適正に停止線で停止することができる。また、運転者自らによる運転操作が減少することから、運転者の疲労を軽減することもできる。
また、車両1の前に先行車両がある場合には、当該先行車両との車間距離を所定距離に維持するよう駆動力及び制動力を制御する。これにより、信号機手前で先行車両がある場合でも、先行車両との車間距離を適正に維持し安全性を確保しつつ、効率的な停止を行うことができる。
【0050】
また、当該車両1は駆動源としてエンジン2及びモータ4を備えるハイブリッド車両であり、バッテリ8のSOCに応じて車両停止制御に用いる駆動源を切り換えていることから、モータ4の電力を確保しつつ、効率よく車両の停止を行うことができる。さらに、制動時にはモータ4による回生ブレーキを用いることで、制動エネルギーを回収し、より効率のよい停止を行うことができる。
【0051】
そして、当該車両停止制御実行時においては表示灯32を点灯することで、運転者に車両1が自動で停止することを示すことで、運転者の操作の割り込みを抑制し、車両停止制御を円滑に実行することができる。
これらのことから、本発明に係る車両停止制御装置によれば、運転者の運転技能に関わらず、無駄なエネルギーを消費しない効率的な停止を行うことができ、車両1の燃費を向上させることができる。
【0052】
以上で本発明に係る車両停止制御装置の実施形態についての説明を終えるが、実施形態は上記実施形態に限られるものではない。
例えば、上記実施形態では、車両1は駆動源としてエンジン2とモータ4を備えたハイブリッド車両であるが、エンジンのみを駆動源とする車両にも本発明は適用可能である。
【0053】
具体的に、エンジンのみの車両に対し車両停止ECUの車両停止制御部が行う車両停止制御は、図3のステップS4において到達距離が信号機距離に達しないと判別された場合に、図6に示すステップS30に進む。
ステップS30において先行車両があるか否かを判別し、先行車両がある場合は車間距離を所定距離に保ちながらの停止を行うべくステップS31に進む。
【0054】
ステップS31では車間距離を算出し、ステップ32にて車間距離が所定距離以下である場合は、ステップS33にてブレーキ制御を行う。
一方、ステップS32にて車間距離が所定距離より大である場合は、ステップS34にてエンジンアシストを行い、ステップS35において車間距離が所定距離以下となるまでエンジンアシストを維持する。
【0055】
そして、車間距離が所定距離以下となった時点でステップS36に進み、エンジンアシストを終了して、当該ルーチンをリターンする。
また、ステップS30において先行車両がなかった場合には、ステップS37にてエンジンアシストを行い、ステップS35において到達距離が信号機距離以下になるまで当該エンジンアシストを維持する。
【0056】
そして、到達距離が信号機距離以下となった時点でステップS39に進み、エンジンアシストを終了して、当該ルーチンをリターンする。
これにより、エンジンのみの車両においても上記実施形態と同様の効果を奏することができる。
その他、上記実施形態では、信号機に対応する停止位置や、信号機の表示状態とナビゲーションユニットを介して情報受信ユニットから取得しているが、当該信号機の停止位置及び表示状態を取得する手段はこれに限られるものでなく、例えば車両に信号機の表示や停止線を判別可能なカメラを搭載する等しても構わない。
【符号の説明】
【0057】
1 車両
2 エンジン(駆動源)
4 モータ(駆動源)
10 ブレーキ(制動手段)
12 ミリ波レーダ
14 車速センサ
16 アクセル開度センサ
18 ブレーキ開度センサ
20 情報受信ユニット
22 ナビゲーションユニット
30 車両停止ECU(車両停止制御手段)
32 表示灯
52 車両停止制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を駆動させる駆動源と、
前記車両の惰性走行を検出する惰性走行検出手段と、
前記車両前方にある信号機の表示状態を検出する信号機表示検出手段と、
自車両から前記車両前方にある信号機に対応する停止位置までの信号機距離を算出する信号機距離算出手段と、
前記車両の惰性走行時に現在地から当該惰性走行により停止する到達距離を算出する到達距離算出手段と、
前記惰性走行検出手段により前記車両の惰性走行が検出され、前記信号機表示検出手段により検出される信号機の表示状態が通行可能表示でなく、前記到達距離算出手段により算出される到達距離が、信号機距離算出手段により算出される信号機距離に達しない場合には、前記信号機に対応する停止位置までに要する駆動力を前記駆動源により発生させる車両停止制御手段と、
を備えることを特徴とする車両停止制御装置。
【請求項2】
さらに、前記車両を制動する制動手段を備え、
前記車両停止制御手段は、前記惰性走行検出手段により前記車両の惰性走行が検出され、前記信号機表示検出手段により検出される信号機の表示状態が通行可能表示でなく、前記到達距離算出手段により算出される到達距離が、信号機距離算出手段により算出される信号機距離を超える場合には、前記信号機に対応する停止位置までに要する制動力を前記制動手段により発生させることを特徴とする請求項1に記載の車両停止制御装置。
【請求項3】
さらに、自車両の前方に先行車両がある場合に、当該先行車両との車間距離を算出する車間距離算出手段を備えており、
前記惰性走行検出手段により前記車両の惰性走行が検出され、前記信号機表示検出手段により検出される信号機の表示状態が通行可能表示でなく、前記到達距離算出手段により算出される到達距離が、信号機距離算出手段により算出される信号機距離に達しない場合に、自車両の前方に先行車両が存在するときは、前記車間距離算出手段に算出される車間距離を所定距離に維持しつつ停止させるよう前記駆動減または制動手段を制御することを特徴とする請求項2記載の車両停止制御装置。
【請求項4】
前記車両は、前記駆動源をモータ及びエンジンとするハイブリッド車両であって、
前記車両停止制御手段は、前記モータが使用するバッテリのSOCが所定量以上である場合には前記モータによる駆動力、SOCが所定量未満である場合には、前記エンジンによる駆動力を用いることを特徴とする請求項1または3記載の車両停止制御装置。
【請求項5】
前記制動手段はモータによる回生ブレーキであることを特徴とする請求項4記載の車両停止制御装置。
【請求項6】
前記車両は、前記車両停止制御手段による制御の実行状態を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の車両停止制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−116428(P2012−116428A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−270315(P2010−270315)
【出願日】平成22年12月3日(2010.12.3)
【出願人】(598051819)ダイムラー・アクチェンゲゼルシャフト (1,147)
【氏名又は名称原語表記】Daimler AG
【住所又は居所原語表記】Mercedesstrasse 137,70327 Stuttgart,Deutschland
【Fターム(参考)】