説明

車両制御装置、車両制御方法及びコンピュータプログラム

【課題】適切に冷却水の温度を調整することを可能とした車両制御装置、車両制御方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】駆動源の駆動制御スケジュール48に基づいて走行予定経路中に車両2のエンジン4が停止する地点であるエンジン駆動停止地点と、エンジン4が停止する区間であるエンジン駆動停止区間をそれぞれ特定し(S3)、エンジン4の駆動停止地点及び駆動停止区間でのエンジン冷却水の温度がエアコンユニット16によるエンジン冷却水の要求温度を満たすようにフィン25の角度を調整する角度制御スケジュール49を生成し(S5)、生成された角度制御スケジュール49に基づいてフィン25の角度を調整し、その結果、車両2の走行に伴って発生する走行風のエンジン用ラジエータ27への送風状態を調整する(S6〜S8)ように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジエータ内の冷却水を熱源とするエアコンユニットを備えた車両の車両制御装置、車両制御方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両に設置されたエアコンは、エンジンを冷却したラジエータ内の冷却水を室内のヒータに導き熱交換することにより、熱を発生させるシステムを採用している。即ち、冷却水を熱源としている。従って、エアコンを正常に作動させる為には、冷却水の温度が一定の要求温度を満たす必要があった。しかしながら、冷却水の温度は車両状態によって大きく変化する。例えば、エンジンを高速で連続稼働させると、エンジンを冷却する為に冷却水の温度は非常に高温となる。一方、外気温が低い状態でエンジンを長時間駆動しないと、冷却水の温度は低温となる。
【0003】
そこで、例えば、特開2007−22297号公報には、現在の冷却水の温度を検出し、検出した冷却水の温度に基づいて、車両前方のフロントグリルに設けられたフィンの角度を調整することによって、車両の走行に伴って発生する走行風のラジエータへの送風状態を調整する技術について記載されている。具体的には、モータを駆動源として走行している状態であって冷却水の温度が所定の閾値より低い場合には、フロントグリルを閉鎖し、ラジエータへ走行風が当たらないようにして、冷却水の温度を下げないようにすることが記載されている。また、冷却水の温度がエアコンの要求温度の閾値を満たしていない場合には、冷却水の温度が該閾値以上となるまでフロントグリルを閉鎖し、ラジエータへ走行風が当たらないようにして、冷却水の温度を下げないようにすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−22297号(第7頁〜第9頁、図2、図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術では、現在の冷却水の温度と閾値に基づいて制御を行っているので、適切に冷却水の温度を調整することができない場合があった。
【0006】
例えば、エンジンが停止状態となる区間の直前で、冷却水の温度が下限閾値は超えていなくとも下限閾値に近い状態にあると、エンジンが停止した後にフロントグリルを閉鎖したとしても冷却水の温度が下限閾値を下回ることとなる。
【0007】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、エンジンの駆動停止地点での冷却水の温度がエアコンユニットによる冷却水の要求温度を満たすように、エンジンの駆動停止地点までの走行風のラジエータへの送風状態を調整するので、地図情報に基づく将来的な車両状態について考慮し、適切に冷却水の温度を調整することを可能とした車両制御装置、車両制御方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る車両制御装置(1)は、ラジエータ(27)内の冷却水を熱源とするエアコンユニット(16)を備えた車両(2)に搭載され、前記車両周辺の地図情報を取得する地図情報取得手段(33)と、前記地図情報取得手段により取得された地図情報に基づいて、前記車両の走行中におけるエンジン(4)の駆動停止地点を予測する駆動停止地点予測手段(33)と、前記駆動停止地点予測手段により予測された前記エンジンの駆動停止地点に基づいて、前記エンジンの駆動停止地点での前記冷却水の温度が前記エアコンユニットによる前記冷却水の要求温度を満たすように、前記エンジンの駆動停止地点までの前記車両の走行に伴って発生する走行風の前記ラジエータへの送風状態を調整する送風状態調整手段(33)と、を有することを特徴とする。
【0009】
また、請求項2に係る車両制御装置(1)は、請求項1に記載の車両制御装置であって、前記地図情報取得手段(33)により取得された地図情報に基づいて、前記車両(2)の走行中におけるエンジン(4)の駆動停止区間を予測する駆動停止区間予測手段(33)を有し、前記送風状態調整手段(33)は、前記駆動停止区間予測手段により予測された前記エンジンの駆動停止区間に基づいて、前記エンジンの駆動停止地点での前記冷却水の温度が、前記エンジンの駆動停止区間での前記冷却水の温度が前記エアコンユニット(16)による前記冷却水の要求温度を満たす温度となるように、前記エンジンの駆動停止地点までの前記車両の走行に伴って発生する走行風の前記ラジエータ(27)への送風状態を調整することを特徴とする。
即ち、上記請求項2に係る車両制御装置では、エンジンの駆動停止区間での冷却水の温度が要求温度の下限値を切ることが無いように、エンジンの停止地点では、要求温度の下限値より所定温度以上高くするようにラジエータへの送風状態を調整する。それによって、エンジンの駆動停止区間において冷却水の温度が徐々に下がったとしても、エアコンユニットによる冷却水の要求温度を満たすことができる。尚、所定温度は、エンジン停止区間の長さと、エンジン停止時における冷却水の温度低下の推移等から算出される。
【0010】
また、請求項3に係る車両制御装置(1)は、請求項1又は請求項2に記載の車両制御装置であって、前記走行風の前記ラジエータ(27)への送風状態と前記冷却水の温度推移とを対応づけて記憶する記憶手段(33)を有し、前記送風状態調整手段(33)は、前記記憶手段に記憶された情報に基づいて前記ラジエータへの送風状態を調整することを特徴とする。
【0011】
また、請求項4に係る車両制御方法は、ラジエータ(27)内の冷却水を熱源とするエアコンユニット(16)を備えた車両(2)を制御する車両制御方法であって、前記車両周辺の地図情報を取得する地図情報取得ステップと、前記地図情報取得ステップにより取得された地図情報に基づいて、前記車両の走行中におけるエンジン(4)の駆動停止地点を予測する駆動停止地点予測ステップと、前記駆動停止地点予測ステップにより予測された前記エンジンの駆動停止地点に基づいて、前記エンジンの駆動停止地点での前記冷却水の温度が前記エアコンユニットによる前記冷却水の要求温度を満たすように、前記エンジンの駆動停止地点までの前記車両の走行に伴って発生する走行風の前記ラジエータへの送風状態を調整する送風状態調整ステップと、を有することを特徴とする。
【0012】
更に、請求項5に係るコンピュータプログラムは、コンピュータに搭載され、ラジエータ(27)内の冷却水を熱源とするエアコンユニット(16)を備えた車両(2)の制御を実行させるコンピュータプログラムであって、前記車両周辺の地図情報を取得する地図情報取得機能と、前記地図情報取得機能により取得された地図情報に基づいて、前記車両の走行中におけるエンジン(4)の駆動停止地点を予測する駆動停止地点予測機能と、前記駆動停止地点予測機能により予測された前記エンジンの駆動停止地点に基づいて、前記エンジンの駆動停止地点での前記冷却水の温度が前記エアコンユニットによる前記冷却水の要求温度を満たすように、前記エンジンの駆動停止地点までの前記車両の走行に伴って発生する走行風の前記ラジエータへの送風状態を調整する送風状態調整機能と、を実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
前記構成を有する請求項1に記載の車両制御装置によれば、エンジンの駆動停止地点での冷却水の温度がエアコンユニットによる冷却水の要求温度を満たすように、エンジンの駆動停止地点までの走行風のラジエータへの送風状態を調整するので、地図情報に基づく将来的な車両状態について考慮し、適切に冷却水の温度を調整することが可能となる。従って、エンジンが停止した場合でも確実に冷却水の温度がエアコンユニットによる冷却水の要求温度を満たした状態で車両の走行を行うことが可能となる。
【0014】
また、請求項2に記載の車両制御装置によれば、エンジンの駆動停止地点に加えてエンジンの駆動停止区間での冷却水の温度がエアコンユニットによる冷却水の要求温度を満たすように、エンジンの駆動停止地点までの走行風のラジエータへの送風状態を調整するので、地図情報に基づく将来的な車両状態について考慮し、より適切に冷却水の温度を調整することが可能となる。従って、エンジンの駆動停止区間において、確実に冷却水の温度がエアコンユニットによる冷却水の要求温度を満たした状態で車両の走行を行うことが可能となる。
【0015】
また、請求項3に記載の車両制御装置によれば、将来的な冷却水の温度推移を正確に予測することが可能となる。その結果、より適切に冷却水の温度を調整することが可能となる。
【0016】
また、請求項4に記載の車両制御方法によれば、エンジンの駆動停止地点での冷却水の温度がエアコンユニットによる冷却水の要求温度を満たすように、エンジンの駆動停止地点までの走行風のラジエータへの送風状態を調整するので、地図情報に基づく将来的な車両状態について考慮し、適切に冷却水の温度を調整することが可能となる。従って、エンジンが停止した場合でも確実に冷却水の温度がエアコンユニットによる冷却水の要求温度を満たした状態で車両の走行を行うことが可能となる。
【0017】
更に、請求項5に記載のコンピュータプログラムによれば、エンジンの駆動停止地点での冷却水の温度がエアコンユニットによる冷却水の要求温度を満たすように、エンジンの駆動停止地点までの走行風のラジエータへの送風状態を調整させるので、地図情報に基づく将来的な車両状態について考慮し、適切に冷却水の温度を調整させることが可能となる。従って、エンジンが停止した場合でも確実に冷却水の温度がエアコンユニットによる冷却水の要求温度を満たした状態で車両の走行を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る車両制御システムの概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る車両制御システムの内、特にナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図3】フィンが閉鎖角度にある場合の車両のフロントグリル付近を示した図である。
【図4】フィンが開放角度にある場合の車両のフロントグリル付近を示した図である。
【図5】駆動制御スケジュールの一例を示した図である。
【図6】EV走行時及びHV走行時の冷却水の温度推移を示した図である。
【図7】角度制御スケジュールの一例を示した図である。
【図8】本実施形態に係る送風状態調整処理プログラムのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る車両制御装置についてナビゲーション装置に具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係るナビゲーション装置1を車載機として搭載した車両2の車両制御システム3の概略構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は本実施形態に係る車両制御システム3の概略構成図、図2は本実施形態に係る車両制御システム3の内、特にナビゲーション装置1の構成を示すブロック図である。尚、車両2はモータとエンジンを併用して駆動源とするハイブリッド車両である。特に、以下に説明する実施形態では外部電源からバッテリを充電することができるプラグインハイブリッド車両を用いることとする。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る車両制御システム3は、車両2に対して設置されたナビゲーション装置1と、エンジン4と、駆動モータ5と、発電機6と、バッテリ7と、プラネタリギヤユニット8と、車両制御ECU9と、エンジン制御ECU10と、駆動モータ制御ECU11と、発電機制御ECU12と、充電制御ECU13と、フィン角度調整モータ14と、ファン駆動モータ15と、エアコンユニット16と、冷却水温度検出センサ17と、から基本的に構成されている。
【0021】
ここで、ナビゲーション装置1は、車両2の室内のセンターコンソール又はパネル面に備え付けられ、図2に示すように車両周辺の地図や目的地までの案内経路を表示する液晶ディスプレイ35や、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ36等を備えている。そして、GPS等によって車両2の現在位置を特定するととともに、目的地が設定された場合においては目的地までの経路の探索、並びに設定された案内経路に従った案内を液晶ディスプレイ35やスピーカ36を用いて行う。また、ナビゲーション装置1は、後述するように、地図情報に基づいて将来の車両の走行中におけるエンジン4の駆動停止地点や駆動停止区間を予測し、予測結果に基づいてフィン角度調整モータ14の制御スケジュールを生成する。そして、ナビゲーション装置1は、生成された制御スケジュールに基づいて車両制御ECU9に対して制御信号を送信し、フィン角度調整モータ14を制御させることによって、車両2の走行に伴って発生する走行風のラジエータへの送風状態を調整する。尚、ナビゲーション装置1の詳細な構成については後述する。
【0022】
また、エンジン4はガソリン、軽油、エタノール等の燃料によって駆動される内燃機関等のエンジンであり、車両2の第1の駆動源として用いられる。そして、エンジン4の駆動力であるエンジントルクはプラネタリギヤユニット8に伝達され、プラネタリギヤユニット8により分配されたエンジントルクの一部により駆動輪19が回転させられ、車両2が駆動される。
【0023】
また、駆動モータ5はバッテリ7から供給される電力に基づいて回転運動するモータであり、車両2の第2の駆動源として用いられる。駆動モータはバッテリ7から供給された電力により駆動され、駆動モータ5のトルクである駆動モータトルクを発生する。そして、発生した駆動モータトルクにより駆動輪19が回転させられ、車両2が駆動される。
特に、本実施形態に係るプラグインハイブリッド車両では、ナビゲーション装置1において後述の駆動制御スケジュール48が設定されている場合には、基本的に設定されている駆動制御スケジュール48に基づいてエンジン4及び駆動モータ5が制御される。具体的には、駆動制御スケジュール48において指定されたEV走行区間では、駆動モータ5のみを駆動源として走行する所謂EV走行を行う。また、駆動制御スケジュール48において指定されたHV走行区間では、エンジン4と駆動モータ5とを駆動源として併用して走行する所謂HV走行を行う。
一方、ナビゲーション装置1において駆動制御スケジュールが設定されていない場合には、基本的にバッテリ4の残量が所定値(例えば35%)以下となるまでは駆動モータ12のみを駆動源として走行する。そして、バッテリ4の残量が所定値以下となった後は通常のハイブリッド車両と同様に、状況に応じてエンジン11又は駆動モータ12のいずれか一方又は両方を駆動源として使用して走行する。
更に、エンジンブレーキ必要時及び制動停止時において、駆動モータ5は回生ブレーキとして機能し、車両慣性エネルギを電気エネルギとして回生する。
【0024】
また、発電機6はプラネタリギヤユニット8により分配されたエンジントルクの一部により駆動され、電力を発生させる発電装置である。そして、発電機6は図示されない発電機用インバータを介してバッテリ7に接続されており、発生した交流電流を直流電流に変換し、バッテリ7に供給する。尚、駆動モータ5と発電機6を一体的に構成しても良い。
【0025】
また、バッテリ7は充電と放電とを繰り返すことができる蓄電手段としての二次電池であり、鉛蓄電池、キャパシタ、ニッケルカドミウム電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池等が用いられる。そして、バッテリ7は、駆動モータ5に加えて、ナビゲーション装置1、フィン角度調整モータ14、ファン駆動モータ15、エアコンユニット16等に対して電力の供給を行う。更に、バッテリ7は車両2の側壁に設けられた充電コネクタ(図示せず)と接続されている。そして、自宅や所定の充電設備を備えた充電施設において、充電コネクタをコンセント等の電力供給源に接続することにより、バッテリ7の充電を行うことが可能となる。更に、バッテリ7は上記駆動モータ5で発生した回生電力や発電機6で発電された電力によっても充電される。
【0026】
また、プラネタリギヤユニット8はサンギヤ、ピニオン、リングギヤ、キャリア等によって構成され、エンジン4の駆動力の一部を発電機6へと分配し、残りの駆動力を駆動輪19へと伝達する。
【0027】
また、車両制御ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)9は、車両2の全体の制御を行う電子制御ユニットである。また、車両制御ECU9には、エンジン4の制御を行う為のエンジン制御ECU10、駆動モータ5の制御を行う為の駆動モータ制御ECU11、発電機6の制御を行う為の発電機制御ECU12、バッテリ7の制御を行う為の充電制御ECU13、フィン角度調整モータ14、ファン駆動モータ15、エアコンユニット16、冷却水温度検出センサ17が接続されるとともに、ナビゲーション装置1が備える後述のナビゲーションECU33に接続されている。また、車両制御ECU9は後述のようにフィン角度調整モータ14を制御することによってフロントグリルに設けられたフィン25の角度を変更し、車両2のフロントグリルの開閉度を調整する(図3、図4参照)。また、車両制御ECU9は後述のようにファン駆動モータ15を制御することによって、エンジン用ラジエータ27及びモータ用ラジエータ28に近接して配置された冷却用ファン26を回転又は停止させ、エンジン用ラジエータ27及びモータ用ラジエータ28内の冷却水の温度を調整する。また、車両制御ECU9はエアコンユニット16の電源がONオンされている状態で、エンジン用冷却水の温度が要求温度の下限を満たしていない場合にはエンジン4を駆動させて冷却水の温度を上昇させる。従って、エアコンユニット16の電源がONオンされた際に、エンジン用冷却水の温度が要求温度の下限を満たしていない場合には、走行するのに必要ないにも関わらずエンジンが駆動することとなり、燃費悪化につながる。
そして、車両制御ECU9は、演算装置及び制御装置としてのCPU21、並びにCPU21が各種の演算処理を行うに当たってワーキングメモリとして使用されるRAM22、制御用のプログラム等が記録されたROM23等の内部記憶装置を備えている。
【0028】
また、エンジン制御ECU10、駆動モータ制御ECU11、発電機制御ECU12及び充電制御ECU13は、図示しないCPU、RAM、ROM等からなり、それぞれエンジン4、駆動モータ5、発電機6、バッテリ7の制御を行う。
【0029】
また、フィン角度調整モータ14は、車両2のフロントグリルに配置されたフィン25の角度を調整する手段である。そして、後述のように、車両制御ECU9は、フィン角度調整モータ14を駆動してフィン25の角度を調整することによって、フロントグリルの開閉を行い、車両2の走行に伴って発生する走行風のエンジン用ラジエータ27及びモータ用ラジエータ28への送風状態を調整する。尚、フィン角度調整モータ14によるフロントグリルの開閉機構の詳細については後述する。
【0030】
ここで、車両2のエンジン冷却系及びモータ冷却系について簡単に説明する。
エンジン冷却系は、エンジン4を冷却する為のシステムであり、エンジン4を冷却するエンジン用冷却水の流路となる循環流路と、エンジン用冷却水が分流して一部がエアコンユニット16に流れるよう循環流路に設けられた分流路と、循環流路にエンジン用冷却水を循環させるウォータポンプと、エンジン用冷却水を外気を用いて冷却するエンジン用ラジエータ27とから構成される。
一方、モータ冷却系は、駆動モータ5を冷却する為のシステムであり、駆動モータ5を冷却するモータ用冷却水の流路となる循環流路と、循環流路にモータ用冷却水を循環させるウォータポンプと、モータ用冷却水を外気を用いて冷却するモータ用ラジエータ28とから構成される。
【0031】
また、ファン駆動モータ15は、エンジン用ラジエータ27及びモータ用ラジエータ28に近接して配置された冷却用ファン26を回転駆動させる為の駆動手段である。車両制御ECU9は、冷却水の温度が所定温度以上となったことを検出した場合にファン駆動モータ15を駆動して冷却用ファン26を回転させることによって、エンジン用ラジエータ27及びモータ用ラジエータ28に送風を行い、各冷却系の冷却水の温度を下げる。
【0032】
また、エアコンユニット16は、上述したエンジン冷却系の分流路に取り付けられ、分流路を流れるエンジン用冷却水と乗員室外又は乗員室内の空気とを熱交換するヒータコアと、ヒータコアに外気を送風するブロワーファンと、ブロワーファンを駆動するブロワーファン用モータと、エアコンユニット16を制御するエアコンECUを備え、ヒータコアでエンジン用冷却水と熱交換して暖められた空気(以下、暖気という)をブロワーファンで乗員室内に送風することにより乗員室内を暖房するユニットである。そして、エアコンECUは、図示しないフロントパネルに配置されたエアコン操作パネルでエアコンの電源がONされた場合にエアコンユニット16を起動し、設定された設定温度となるように乗員室内の温度を検出する車内温度センサから入力された情報に基づいて、ブロワーファン用モータを駆動制御する。
【0033】
また、冷却水温度検出センサ17は、現在のエンジン用冷却水やモータ用冷却水の温度を検出する為の温度センサである。そして、車両制御ECU9は、冷却水温度検出センサ17の検出結果に基づいて現在のエンジン用冷却水やモータ用冷却水の温度を検出する。
【0034】
次に、図3及び図4を用いて、尚、フィン角度調整モータ14によるフロントグリルの開閉機構について説明する。
図3及び図4に示すようにフロントグリルの開閉機構は、自動車のフロントグリルの一部をなし水平方向に細長い矩形の板状に形成された複数のフィン25と、各フィン25の長手方向(水平方向)の中心軸を中心として各フィン25を回動させる駆動源としてのフィン角度調整モータ14とを備える。各フィン25は、図3に示す各フィン25が略水平となる角度(開放角度)から、図4に示す各フィン25が略鉛直方向を向く角度(閉鎖角度)まで回転することが可能に構成されている。したがって、各フィン25の角度を調整することにより、エンジン用ラジエータ27やモータ用ラジエータ28へ供給される走行風の量を調整することができる。例えば、図3に示すように、各フィン25を開放角度にすれば、走行風を最も多くエンジン用ラジエータ27やモータ用ラジエータ28へ供給することができ、各冷却系の冷却水の温度を大きく下げることが可能となる。また、図4に示すように、各フィン25を閉鎖角度にすれば、エンジン用ラジエータ27やモータ用ラジエータ28への走行風の供給を遮断することができ、各冷却系の冷却水の温度が下がることを防止することが可能となる。
【0035】
続いて、ナビゲーション装置1の構成について図2を用いて説明する。
図2に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置1は、車両2の現在位置を検出する現在位置検出部31と、各種のデータが記録されたデータ記録部32と、入力された情報に基づいて、各種の演算処理を行うナビゲーションECU33と、ユーザからの操作を受け付ける操作部34と、ユーザに対して車両周辺の地図や設定された案内経路を表示する液晶ディスプレイ35と、経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ36と、プログラムを記憶した記憶媒体であるDVDを読み取るDVDドライブ37、プローブセンタやVICSセンタ等の情報センタとの間で通信を行う通信モジュール38と、から構成されている。
【0036】
以下に、ナビゲーション装置1を構成する各構成要素について順に説明する。
現在位置検出部31は、GPS41、車速センサ42、ステアリングセンサ43、ジャイロセンサ44等からなり、現在の車両の位置、方位、車両の走行速度、現在時刻等を検出することが可能となっている。ここで、特に車速センサ42は、車両2の移動距離や車速を検出する為のセンサであり、車両2の駆動輪の回転に応じてパルスを発生させ、パルス信号をナビゲーションECU33に出力する。そして、ナビゲーションECU33は発生するパルスを計数することにより駆動輪の回転速度や移動距離を算出する。尚、上記5種類のセンサをナビゲーション装置1が全て備える必要はなく、これらの内の1又は複数種類のセンサのみをナビゲーション装置1が備える構成としても良い。
【0037】
また、データ記録部32は、外部記憶装置及び記録媒体としてのハードディスク(図示せず)と、ハードディスクに記録された地図情報DB46、温度推移学習DB47、駆動制御スケジュール48、角度制御スケジュール49及び所定のプログラム等を読み出すとともにハードディスクに所定のデータを書き込む為のドライバである記録ヘッド(図示せず)とを備えている。
【0038】
ここで、地図情報DB46は、例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、地図を表示するための地図表示データ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、施設に関する施設データ、地点を検索するための検索データ等が記憶された記憶手段である。尚、リンクデータには傾斜区間に関する情報(傾斜角度に関する情報(勾配等)を含む)、カーブに関する情報(開始点、終了点、旋回半径に関する情報を含む)も含まれる。
【0039】
また、温度推移学習DB47は、車両の走行状態(EV走行又はHV走行)と走行風のエンジン用ラジエータ27への送風状態とエンジン用冷却水の温度推移の履歴とを対応づけて記憶する記憶手段である。ここで、走行風のエンジン用ラジエータ27への送風状態は、フィン25の角度に基づいて規定される。従って、ナビゲーションECU33は、車両走行中に車両制御ECU9から取得したエンジン用冷却水の温度推移の履歴をフィンの角度に対応づけて温度推移学習DB47に記憶する。尚、車両の走行状態及びフィン25の角度に対するエンジン用冷却水の温度推移については、車種毎に設定された固定値を用いても良い。また、温度推移学習DB47は、気温、季節、時刻毎に冷却水の温度推移を記憶しても良い。そして、ナビゲーションECU33は後述のように温度推移学習DB47に記憶された情報に基づいて、角度制御スケジュール49を生成し、エンジン用ラジエータ27への送風状態を調整する。
【0040】
また、駆動制御スケジュール48は、車両2が走行予定経路を走行する前においてナビゲーションECU33により生成され、走行予定経路を車両2が走行する際に、エンジン4及び駆動モータ5をどのように制御するかを決定する制御スケジュールである。
駆動制御スケジュール48では、例えば走行予定経路の区間毎にEV走行を行うEV走行区間と、HV走行を行うHV走行区間とを設定する。具体的には、ナビゲーションECU33は“車両が走行する為に必要な駆動力”をリンク毎に算出し、算出された“車両が走行する為に必要な駆動力”が所定の閾値以上であるリンクはHV走行区間に設定し、閾値未満であるリンクはEV走行区間に設定する。
【0041】
尚、“車両が走行する為に必要な駆動力”については、以下の方法により算出される。
ナビゲーションECU33は、RAM52等に記憶された車両パラメータ(前面投影面積、駆動機構慣性重量、車重、駆動輪の転がり抵抗係数、空気抵抗係数、コーナリング抵抗等)と地図情報DB46に記憶されたリンクデータ(リンク勾配、カーブ形状等)に基づいて、走行予定経路に含まれる各リンクを車両2が走行する際に必要となる駆動力を“車両が走行する為に必要な駆動力”として算出(推定)する。
尚、過去の車両の走行履歴に基づいて“車両が走行する為に必要な駆動力”を算出しても良い。具体的には、過去に車両2が走行中に必要となった駆動力の履歴をリンク毎にDBに記憶する構成とし、走行予定経路に含まれるリンクの履歴をDBから読み出すことによって“車両が走行する為に必要な駆動力”を算出する。
【0042】
以下に、ナビゲーションECU33により設定される駆動制御スケジュール48の一例について説明する。図5では、出発地61から目的地62までの走行予定経路63のリンク毎の“車両が走行する為に必要な駆動力P”と走行予定経路63中において特定されるHV走行区間及びEV走行区間の一例を示した図である。
図5に示す例では、走行予定経路63の内、区間B、区間D、区間Fにおける駆動力Pが所定の閾値P0以上となる。従って、区間B、区間D、区間FをHV走行が行われるHV走行区間として特定する。
一方、走行予定経路63の内、区間A、区間C、区間E、区間Gにおける駆動力Pが所定の閾値P0未満となる。従って、区間A、区間C、区間E、区間GをEV走行が行われるEV走行区間として特定する。
【0043】
そして、車両2が走行予定経路を走行する際には、ナビゲーションECU33は車両2の現在位置と、駆動制御スケジュール48とに基づいて、走行制御を変更(EV走行→HV走行、又は、HV走行→EV走行)するタイミングとなったか否かを判定する。そして、走行制御を変更するタイミングであると判定された場合に、車両制御ECU9に対してEV走行又はHV走行を指示する制御指示を送信する。そして、EV走行を指示する制御指示を受信した車両制御ECU9は、駆動モータ制御ECU11を介して駆動モータ5を制御し、駆動モータ5のみを駆動源とするEV走行を開始する。また、HV走行を指示する制御指示を受信した車両制御ECU9は、エンジン制御ECU10及び駆動モータ制御ECU11を介してエンジン4及び駆動モータ5を制御し、エンジン4と駆動モータ5とを駆動源として併用して走行するHV走行を開始する。
【0044】
一方、角度制御スケジュール49は、車両2が走行予定経路を走行する前においてナビゲーションECU33により生成され、走行予定経路を車両2が走行する際に、フィン角度調整モータ14をどのように制御するかを決定する制御スケジュールである。
角度制御スケジュール49では、例えば走行予定経路の区間毎に、図3に示す各フィン25が略水平となる角度(開放角度)と、図4に示す各フィン25が略鉛直方向を向く角度(閉鎖角度)のいずれかを設定する。具体的には、エンジン4の駆動停止地点(即ち、HV走行区間の終了地点)及び駆動停止区間(即ち、EV走行区間)でのエンジン冷却水の温度がエアコンユニット16によるエンジン冷却水の要求温度を満たすように設定する。
【0045】
ここで、エアコンユニット16によるエンジン冷却水の要求温度は、下限温度Tから上限温度Tまでの温度範囲とする。また、下限温度Tは、エンジン4を駆動させることなく現在の設定温度でエアコンユニット16を稼働させることが可能な最低の温度とする。また、上限温度Tは、冷却用ファン26が作動しない上限の温度とする。即ち、エアコンを稼働させる為にエンジンが駆動することなく、且つ冷却用ファン26も作動しない状態にある冷却水の温度をエアコンユニット16によるエンジン冷却水の要求温度とする。
【0046】
また、EV走行時及びHV走行時におけるフィン25が開放角度にある場合のエンジン用冷却水の温度推移や、フィン25が閉鎖角度にある場合のエンジン用冷却水の温度推移については、温度推移学習DB47に記憶された情報に基づいて推定される。
ここで、図6はエンジン用冷却水の温度推移について示した図である。図6(A)に示すように、EV走行時ではエンジン4が駆動しないので、エンジン用冷却水の温度は基本的に下降する。その際において、フィン25が閉鎖角度にある場合には走行風がエンジン用ラジエータ27に当たらないので、温度推移の下降が緩やかになる。また、フィン25が開放角度にある場合には走行風がエンジン用ラジエータ27に当たるので、閉鎖角度にある場合と比較して温度推移の下降が急になる。一方、図6(B)に示すように、HV走行時ではエンジン4が駆動するので、エンジン用冷却水の温度は基本的に上昇する。その際において、フィン25が閉鎖角度にある場合には走行風がエンジン用ラジエータ27に当たらないので、温度推移の上昇が急になる。また、フィン25が開放角度にある場合には走行風がエンジン用ラジエータ27に当たるので、閉鎖角度にある場合と比較して温度推移の上昇が緩やかになる。
【0047】
次に、ナビゲーションECU33により設定される角度制御スケジュール49の一例について説明する。図7では、出発地61から目的地62までの走行予定経路63におけるエンジン用冷却水の温度Tの予定推移と、走行予定経路63中において特定される開放角度区間及び閉鎖角度区間の一例を示した図である。
ここで、ナビゲーションECU33は、エンジンの駆動停止地点(即ち、HV走行区間の終点)及びエンジンの駆動停止区間(即ち、EV走行区間)でのエンジン用冷却水の温度Tがエアコンユニット16による冷却水の要求温度(T〜T)を満たすように、エンジンの駆動停止地点までのフィン25の角度を調整する。
従って、先ず、区間Bの終了地点Xにおけるエンジン用冷却水の温度Tがエアコンユニット16による冷却水の要求温度(T〜T)を満たすように、区間A、Bのフィン25の角度を調整する。その結果、EV走行区間である区間Aが閉鎖角度区間に設定され、HV走行区間である区間Bが開放角度区間に設定される。
次に、区間Dの終了地点Yにおけるエンジン用冷却水の温度Tがエアコンユニット16による冷却水の要求温度(T〜T)を満たすように、区間C、Dのフィン25の角度を調整する。その結果、基本的にEV走行区間である区間Cが閉鎖角度区間に設定され、HV走行区間である区間Dが開放角度区間に設定される。しかしながら、区間Cについては常に閉鎖角度区間とすると、エンジンの駆動停止地点である区間Dの終了地点Xにおいてエンジン用冷却水の温度Tが上限温度Tを上回ってしまうので、区間Cの一部は開放角度区間に設定される。
次に、区間Fの終了地点Zにおけるエンジン用冷却水の温度Tがエアコンユニット16による冷却水の要求温度(T〜T)を満たすように、区間E、Fのフィン25の角度を調整する。その結果、基本的にEV走行区間である区間Eが閉鎖角度区間に設定され、HV走行区間である区間Fが開放角度区間に設定される。しかしながら、区間Fについては常に開放角度区間とすると、区間Fの終了地点Zにおいてはエンジン用冷却水の温度Tがエアコンユニット16による冷却水の要求温度(T〜T)を満たすものの、エンジンの駆動停止区間である区間G内においてエンジン用冷却水の温度Tが下限温度Tを下回ってしまうので、区間Fの一部は閉鎖角度区間に設定される。
【0048】
即ち、エンジンの駆動停止区間においてエンジン用冷却水の温度Tがエアコンユニット16による冷却水の要求温度(T〜T)を満たす為には、エンジン停止地点の温度が下限温度Tより所定温度以上高くする必要がある。尚、所定温度は、エンジン停止区間の長さと、エンジン停止時におけるエンジン用冷却水の温度低下の推移から算出される。そして、ナビゲーションECU33は、エンジン停止地点の温度が下限温度Tより所定温度以上高くなるようにエンジン停止地点までのフィン25の角度を調整する。
【0049】
そして、車両2が走行予定経路を走行する際には、ナビゲーションECU33は車両2の現在位置と、角度制御スケジュール49とに基づいて、フィン25の角度を変更(開放角度→閉鎖角度、又は、閉鎖角度→開放角度)するタイミングとなったか否かを判定する。そして、フィン25の角度を変更するタイミングであると判定された場合に、車両制御ECU9に対してフィン25の角度の変更を指示する制御指示を送信する。そして、開放角度への変更する制御指示を受信した車両制御ECU9は、フィン角度調整モータ14を制御し、フィン25の角度を図3に示す各フィン25が略水平となる開放角度に設定する。また、閉鎖角度への変更する制御指示を受信した車両制御ECU9は、フィン角度調整モータ14を制御し、フィン25の角度を図4に示す各フィン25が略鉛直方向を向く閉鎖角度に設定する。その結果、エンジン用冷却水の温度がエアコンユニット16の要求温度を満たした状態で走行予定経路を走行することが可能となる。
【0050】
一方、ナビゲーションECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)33は、目的地が選択された場合に、地図情報DB46に記憶されたリンクデータに基づいて出発地(現在位置や自宅)から目的地までの走行予定経路を設定する誘導経路設定処理、走行予定経路を走行する際における車両2の駆動源(エンジン4及び駆動モータ5)を制御する駆動制御スケジュール48を生成する駆動制御スケジュール生成処理、駆動制御スケジュール48に基づいて車両の走行中におけるエンジンの駆動停止地点や駆動停止区間を予測する予測処理、走行予定経路を走行する際における車両2のフィン角度調整モータ14を制御する角度制御スケジュール49を生成する角度制御スケジュール生成処理、角度制御スケジュール49に基づいてエンジン4の駆動停止地点や駆動停止区間でのエンジン冷却水の温度がエアコンユニット16による冷却水の要求温度を満たすように、エンジン4の駆動停止地点までの走行風のエンジン用ラジエータ27への送風状態を調整する送風状態調整処理等のナビゲーション装置1の全体の制御を行う電子制御ユニットである。そして、演算装置及び制御装置としてのCPU51、並びにCPU51が各種の演算処理を行うにあたってワーキングメモリとして使用されるとともに、経路が探索されたときの経路データ等が記憶されるRAM52、制御用のプログラムのほか、送風状態調整処理プログラム(図8)等が記録されたROM53、ROM53から読み出したプログラムを記憶するフラッシュメモリ54等の内部記憶装置を備えている。
【0051】
操作部34は、走行開始地点としての出発地及び走行終了地点としての目的地を入力する際等に操作され、各種のキー、ボタン等の複数の操作スイッチ(図示せず)から構成される。そして、ナビゲーションECU33は、各スイッチの押下等により出力されるスイッチ信号に基づき、対応する各種の動作を実行すべく制御を行う。尚、液晶ディスプレイ35の前面に設けたタッチパネルによって構成することもできる。
【0052】
また、液晶ディスプレイ35には、道路を含む地図画像、交通情報、操作案内、操作メニュー、キーの案内、出発地から目的地までの走行予定経路、走行予定経路に沿った案内情報、ニュース、天気予報、時刻、メール、テレビ番組等が表示される。
【0053】
また、スピーカ36は、ナビゲーションECU33からの指示に基づいて走行予定経路に沿った走行を案内する音声ガイダンスや、交通情報の案内を出力する。
【0054】
また、DVDドライブ37は、DVDやCD等の記録媒体に記録されたデータを読み取り可能なドライブである。そして、読み取ったデータに基づいて地図情報DB46の更新等が行われる。
【0055】
また、通信モジュール38は、交通情報センタ、例えば、VICS(登録商標:Vehicle Information and Communication System)センタやプローブセンタ等から送信された渋滞情報、規制情報、交通事故情報等の各情報から成る交通情報を受信する為の通信装置であり、例えば携帯電話機やDCMが該当する。
【0056】
続いて、前記構成を有するナビゲーション装置1においてナビゲーションECU33が実行する送風状態調整処理プログラムについて図8に基づき説明する。図8は本実施形態に係る送風状態調整処理プログラムのフローチャートである。ここで、送風状態調整処理プログラムは、車両2のACCがONされた場合に実行され、車両の走行中におけるエンジンの駆動停止地点や駆動停止区間を予測するとともに、予測されたエンジン4の駆動停止地点や駆動停止区間でのエンジン冷却水の温度がエアコンユニット16による冷却水の要求温度を満たすように、エンジン4の駆動停止地点までの走行風のエンジン用ラジエータ27への送風状態を調整するプログラムである。尚、以下の図8にフローチャートで示されるプログラムは、ナビゲーション装置1が備えているRAM52やROM53に記憶されており、CPU51により実行される。
【0057】
先ず、送風状態調整処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU51はナビゲーション装置1において設定された走行予定経路を車両2の走行予定経路として取得する。ここで、走行予定経路は、例えば、操作部34の操作により目的地が入力された場合において、経路探索の結果により設定された出発地(例えば車両2の現在位置)から目的地までの走行予定経路がある。尚、経路探索の処理に関しては既に公知であるのでその説明は省略する。
【0058】
次に、S2でCPU51は、走行予定経路における駆動制御スケジュール48を生成する。具体的にCPU51は、RAM52等に記憶された車両パラメータ(前面投影面積、駆動機構慣性重量、車重、駆動輪の転がり抵抗係数、空気抵抗係数、コーナリング抵抗等)と、地図情報DB46に記憶されたリンクデータ(リンク勾配、カーブ形状等)と、に基づいて生成する。尚、駆動制御スケジュール48の生成処理の詳細については、既に図5を用いて説明したので詳細は省略する。
【0059】
続いて、S3においてCPU51は、前記S2で生成された駆動制御スケジュール48に基づいて、走行予定経路中に車両2のエンジン4が停止する地点であるエンジン駆動停止地点と、エンジン4が停止する区間であるエンジン駆動停止区間をそれぞれ特定する。具体的には、HV走行区間の終了地点がエンジン4の駆動停止地点となり、EV走行区間がエンジン駆動停止区間となる。
【0060】
その後に、S4においてCPU51は、現在のエンジン用冷却水の温度T(即ち、走行開始直前のエンジン用冷却水の温度)を取得する。尚、現在のエンジン用冷却水の温度Tは、冷却水温度検出センサ17によって検出され、車両制御ECU9から検出された温度がナビゲーションECU33へと送信されることに基づいて取得する。
【0061】
次に、S5においてCPU51は、走行予定経路における角度制御スケジュール49を生成する。具体的に、CPU51は前記S2で生成された駆動制御スケジュール48と、前記S4で取得した現在のエンジン用冷却水の温度Tと、温度推移学習DB47から読み出したエンジン用冷却水の温度推移の履歴に基づいて生成し、エンジン4の駆動停止地点及び駆動停止区間でのエンジン冷却水の温度が、エアコンユニット16によるエンジン冷却水の要求温度を満たすようにフィン25の角度を調整するスケジュールとする。尚、角度制御スケジュール49の生成処理の詳細については、既に図6、図7を用いて説明したので詳細は省略する。
【0062】
続いて、S6においてCPU51は、現在位置検出部31により車両2の現在位置を検出し、検出された車両2の現在位置と前記5で生成された角度制御スケジュール49とに基づいて、フィン25の角度を変更(開放角度→閉鎖角度、又は、閉鎖角度→開放角度)するタイミングとなったか否かを判定する。
【0063】
そして、フィン25の角度を変更するタイミングとなったと判定された場合(S6:YES)には、S7へと移行する。一方、フィン25の角度を変更するタイミングでないと判定された場合(S6:NO)には、S8へと移行する。
【0064】
S7においてCPU51は、角度制御スケジュール49に基づいてフィン25の角度を調整し、その結果、車両2の走行に伴って発生する走行風のエンジン用ラジエータ27への送風状態を調整する。具体的には、フィン25の角度を変更するタイミングであると判定された場合に、車両制御ECU9に対してフィン25の角度を開放角度又は閉鎖角度のいずれかへと変更する制御指示を送信する。そして、開放角度への変更する制御指示を受信した車両制御ECU9は、フィン角度調整モータ14を制御し、フィン25の角度を図3に示す各フィン25が略水平となる開放角度に設定する。その結果、走行風を最も多くエンジン用ラジエータ27へ供給することができ、各冷却系の冷却水の温度を大きく下げることが可能となる。また、閉鎖角度への変更する制御指示を受信した車両制御ECU9は、フィン角度調整モータ14を制御し、フィン25の角度を図4に示す各フィン25が略鉛直方向を向く閉鎖角度に設定する。その結果、エンジン用ラジエータ27への走行風の供給を遮断することができ、各冷却系の冷却水の温度が下がることを防止することが可能となる。その後、S8へと移行する。
【0065】
S8においてCPU51は、車両2が走行予定経路の目的地に到着したか否か判定する。そして、目的地に到着したと判定された場合(S8:YES)には、当該送風状態調整処理プログラムを終了する。一方、目的地に到着していないと判定された場合(S8:NO)には、S6へと戻り、継続して処理を行う。
【0066】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係るナビゲーション装置1、ナビゲーション装置1による車両制御方法及びナビゲーション装置1で実行されるコンピュータプログラムでは、走行予定経路の経路情報及び車両情報に基づいて駆動源の駆動制御スケジュール48を生成し(S2)、生成された駆動制御スケジュール48に基づいて走行予定経路中に車両2のエンジン4が停止する地点であるエンジン駆動停止地点と、エンジン4が停止する区間であるエンジン駆動停止区間をそれぞれ特定し(S3)、エンジン4の駆動停止地点及び駆動停止区間でのエンジン冷却水の温度がエアコンユニット16によるエンジン冷却水の要求温度を満たすようにフィン25の角度を調整する角度制御スケジュール49を生成し(S5)、生成された角度制御スケジュール49に基づいてフィン25の角度を調整し、その結果、車両2の走行に伴って発生する走行風のエンジン用ラジエータ27への送風状態を調整する(S6〜S8)ので、車両2の走行中にエンジン4を駆動する区間と停止する区間がそれぞれ存在するハイブリッド車両においても、将来的な車両状態について考慮し、適切にエンジン用冷却水の温度を調整することが可能となる。従って、エンジン用冷却水の温度がエアコンユニット16による冷却水の要求温度を満たした状態で車両の走行を行うことが可能となる。
また、温度推移学習DB47に記憶されたエンジン用冷却水の温度推移の履歴に基づいて角度制御スケジュール49を生成するので、将来的な冷却水の温度推移を正確に予測し、適切な角度制御スケジュール49を生成することが可能となる。その結果、より適切に冷却水の温度を調整することが可能となる。
【0067】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では、先ずCPU51は、駆動源の駆動制御スケジュール48を生成し、生成された駆動制御スケジュール48に基づいて角度制御スケジュール49を生成していたが、地図情報DB46に基づいて角度制御スケジュール49を生成しても良い。その場合には、走行予定経路中における所定角度以上の上り勾配区間をHV走行区間と推定し、それ以外の区間をEV走行区間と推定する。
【0068】
また、本実施形態では出発地から目的地までの全走行予定経路についての角度制御スケジュール49を走行開始前に生成することとしているが、走行中にリアルタイムで生成しても良い。具体的には、現在の冷却水の温度から走行予定経路上にある次のエンジンの駆動停止地点及びエンジンの駆動停止区間での冷却水の温度を予測し、その温度がエアコンユニット16による冷却水の要求温度を満たすように、エンジンの駆動停止地点までの角度制御スケジュール49を生成する。
【0069】
また、図7に示す例では、エンジンが駆動状態にあるHV区間(例えば区間F)の車両の走行に伴って発生する走行風のラジエータへの送風状態と、エンジンが停止状態にあるEV区間(例えば区間C)の車両の走行に伴って発生する走行風のラジエータへの送風状態とをそれぞれ調整することとしているが、HV区間又はEV区間のいずれか一方の車両の走行に伴って発生する走行風のラジエータへの送風状態のみを調整する構成としても良い。
【0070】
また、本実施形態ではエアコンユニット16によるエンジン冷却水の要求温度を、“エンジン4を駆動させることなく現在の設定温度でエアコンユニット16を稼働させることが可能な温度”から“冷却用ファン26が作動しない温度”までの温度範囲としているが、他の温度範囲としても良い。例えば、下限を“エンジン4を駆動させることなく現在の設定温度でエアコンユニット16を稼働させることが可能な温度”から数度高い温度としても良い。
【0071】
また、本実施形態ではナビゲーション装置1をプラグインハイブリッド車両に搭載した例について説明したが、モータとエンジンを備える車両であれば他の車両に対して搭載しても同様の作用効果を得ることが可能である。例えば、通常のハイブリッド車両でも電気自動車であっても良い。
【0072】
また、本実施形態では図8に示す送風状態調整処理プログラムの実行主体は、ナビゲーションECU33であったが、車両制御ECU9が実行する構成としても良い。また、複数のECUによって実行する構成としても良い。
【符号の説明】
【0073】
1 ナビゲーション装置
2 車両
3 車両制御システム
5 駆動モータ
7 バッテリ
14 フィン角度調整モータ
15 ファン駆動モータ
16 エアコンユニット
25 フィン
27 エンジン用ラジエータ
33 ナビゲーションECU
46 地図情報DB
47 温度推移学習DB
48 駆動制御スケジュール
49 角度制御スケジュール
51 CPU
52 RAM
53 ROM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラジエータ内の冷却水を熱源とするエアコンユニットを備えた車両に搭載され、
前記車両周辺の地図情報を取得する地図情報取得手段と、
前記地図情報取得手段により取得された地図情報に基づいて、前記車両の走行中におけるエンジンの駆動停止地点を予測する駆動停止地点予測手段と、
前記駆動停止地点予測手段により予測された前記エンジンの駆動停止地点に基づいて、前記エンジンの駆動停止地点での前記冷却水の温度が前記エアコンユニットによる前記冷却水の要求温度を満たすように、前記エンジンの駆動停止地点までの前記車両の走行に伴って発生する走行風の前記ラジエータへの送風状態を調整する送風状態調整手段と、を有することを特徴とする車両制御装置。
【請求項2】
前記地図情報取得手段により取得された地図情報に基づいて、前記車両の走行中におけるエンジンの駆動停止区間を予測する駆動停止区間予測手段を有し、
前記送風状態調整手段は、前記駆動停止区間予測手段により予測された前記エンジンの駆動停止区間に基づいて、前記エンジンの駆動停止地点での前記冷却水の温度が、前記エンジンの駆動停止区間での前記冷却水の温度が前記エアコンユニットによる前記冷却水の要求温度を満たす温度となるように、前記エンジンの駆動停止地点までの前記車両の走行に伴って発生する走行風の前記ラジエータへの送風状態を調整することを特徴とする請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記走行風の前記ラジエータへの送風状態と前記冷却水の温度推移とを対応づけて記憶する記憶手段を有し、
前記送風状態調整手段は、前記記憶手段に記憶された情報に基づいて前記ラジエータへの送風状態を調整することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両制御装置。
【請求項4】
ラジエータ内の冷却水を熱源とするエアコンユニットを備えた車両を制御する車両制御方法であって、
前記車両周辺の地図情報を取得する地図情報取得ステップと、
前記地図情報取得ステップにより取得された地図情報に基づいて、前記車両の走行中におけるエンジンの駆動停止地点を予測する駆動停止地点予測ステップと、
前記駆動停止地点予測ステップにより予測された前記エンジンの駆動停止地点に基づいて、前記エンジンの駆動停止地点での前記冷却水の温度が前記エアコンユニットによる前記冷却水の要求温度を満たすように、前記エンジンの駆動停止地点までの前記車両の走行に伴って発生する走行風の前記ラジエータへの送風状態を調整する送風状態調整ステップと、を有することを特徴とする車両制御方法。
【請求項5】
コンピュータに搭載され、
ラジエータ内の冷却水を熱源とするエアコンユニットを備えた車両の制御を実行させるコンピュータプログラムであって、
前記車両周辺の地図情報を取得する地図情報取得機能と、
前記地図情報取得機能により取得された地図情報に基づいて、前記車両の走行中におけるエンジンの駆動停止地点を予測する駆動停止地点予測機能と、
前記駆動停止地点予測機能により予測された前記エンジンの駆動停止地点に基づいて、前記エンジンの駆動停止地点での前記冷却水の温度が前記エアコンユニットによる前記冷却水の要求温度を満たすように、前記エンジンの駆動停止地点までの前記車両の走行に伴って発生する走行風の前記ラジエータへの送風状態を調整する送風状態調整機能と、
を実行させることを特徴とするコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−183858(P2011−183858A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−48730(P2010−48730)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【Fターム(参考)】