車両駆動制御装置
【課題】目的地に至る経路を特定するための操作を必要とすることなく、エネルギー消費量の低減を図る。
【解決手段】無線情報に基づいて走行先に渋滞区間が存在することを判定した場合、モータを使用して渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点でバッテリの充電量が予め定められた規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定し(S402)、渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、渋滞開始地点におけるバッテリの充電量が必要バッテリ充電量以上となるように制御指標のスケジュールを規定する(S404)。
【解決手段】無線情報に基づいて走行先に渋滞区間が存在することを判定した場合、モータを使用して渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点でバッテリの充電量が予め定められた規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定し(S402)、渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、渋滞開始地点におけるバッテリの充電量が必要バッテリ充電量以上となるように制御指標のスケジュールを規定する(S404)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の動力源として内燃機関とモータを使用する車両に搭載され、走行用の動力源の駆動制御を行う車両駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、出発地から目的地に至る経路について、渋滞区間のようなエンジンの運転効率の低い区間をモータにより走行し、この区間でモータにより消費される電力量を、エンジンよる走行区間で予め発電してバッテリに蓄積する、という充放電スケジュールを立て、この充放電スケジュールに従ってエンジンとモータの駆動制御を行うようにしたハイブリッド車両の駆動制御装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−333305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載された装置は、目的地の設定や経路探索の実行指示など、目的地に至る経路を特定するための操作が必要であり、ユーザに煩わしさを感じさせてしまう。
【0005】
また、上記特許文献1に記載された装置では、出発地から目的地に至る経路の全区間に対して充放電スケジュールを立てるような構成となっているが、実際の走行では、運転者の運転特性や周辺の交通流の影響等により、充放電スケジュールどおりの駆動制御を実施できなくなってしまう場合も多い。このように、充放電スケジュールどおりの駆動制御を実施できない状況が多くなると、かえってエネルギー消費量が増加してしまうといった状況が発生してしまう。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みたもので、目的地に至る経路を特定するための操作を必要とすることなく、エネルギー消費量の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、無線情報を受信する受信手段と、受信手段を介して受信された無線情報に基づいて走行先に渋滞区間が存在することを判定した場合、モータを使用して渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点でモータを駆動するバッテリの充電量が予め定められた規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定する必要バッテリ充電量特定手段と、渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、渋滞開始地点におけるバッテリの充電量が必要バッテリ充電量以上となるように制御指標のスケジュールを規定するスケジュール規定手段と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、無線情報に基づいて走行先に渋滞区間が存在することを判定した場合、モータを使用して渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点でモータを駆動するバッテリの充電量が予め定められた規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定し、渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、渋滞開始地点におけるバッテリの充電量が必要バッテリ充電量以上となるように制御指標のスケジュールが規定されるので、目的地に至る経路を特定するための操作を必要とすることなく、エネルギー消費量の低減を図ることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、制御指標のスケジュールを規定するための走行条件を収集して記憶手段に記憶させる処理を実施する走行条件記憶処理手段を備え、スケジュール規定手段は、記憶手段から車両の位置より手前の一定区間で収集された走行条件を読み出し、当該走行条件と同一条件で走行するものとして、渋滞開始地点の手前の一部区間について制御指標のスケジュールを規定することを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、車両の位置より手前の一定区間で収集された走行条件と同一条件で走行するものとして、渋滞開始地点の手前の一部区間について制御指標のスケジュールが規定される。すなわち、実際の車両の走行状況に合うように制御指標のスケジュールを規定することができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、渋滞情報に基づいてモータを使用して渋滞区間を走行する際にモータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を算出する消費電力量算出手段を備え、必要バッテリ充電量特定手段は、消費電力量に基づいて、モータを使用して渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点でバッテリの充電量が予め定められた規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定することを特徴としている。
【0012】
このように、渋滞情報に基づいてモータを使用して渋滞区間を走行する際にモータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を算出し、この消費電力量に基づいて、モータを使用して渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点でバッテリの充電量が予め定められた規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定することができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明のように、消費電力量算出手段は、渋滞区間内における走行パターンを規定した走行モデルを用いてモータを使用して渋滞区間を走行する際にモータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を算出することができる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、消費電力量算出手段は、渋滞情報により示される渋滞区間における勾配を特定し、当該渋滞区間における勾配に基づいてモータを使用して渋滞区間を走行する際にモータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を補正することを特徴としている。
【0015】
このような構成によれば、渋滞区間における勾配に基づいてモータを使用して渋滞区間を走行する際にモータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量が補正されるので、精度よく消費電力量を特定することができる。
【0016】
ここで、請求項6に記載の発明のように、自車が渋滞区間内を走行中であるか否かを判定する渋滞区間内走行判定手段を備え、消費電力量算出手段は、自車が渋滞区間内を走行中であると判定された場合に当該渋滞区間内を走行中に収集した走行履歴を用いて渋滞区間を走行する際にモータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を算出することもできる。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、必要バッテリ充電量特定手段は、受信手段を介して受信された無線情報に基づいて走行先に複数の渋滞区間が存在することを判定した場合、各渋滞区間について渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定し、スケジュール規定手段は、複数の渋滞区間についてそれぞれ渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、それぞれ制御指標のスケジュールを規定することを特徴としている。
【0018】
このような構成によれば、無線情報に基づいて走行先に複数の渋滞区間が存在することを判定した場合、各渋滞区間について渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定し、複数の渋滞区間についてそれぞれ渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、それぞれ制御指標のスケジュールが規定される。したがって、例えば、走行先で道路が分岐しており、分岐先の各道路にそれぞれ渋滞区間が存在するような場合、車両がどちらの分岐路へ進行しても制御指標のスケジュールに従った駆動制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置に構成を示す図である。
【図2】ナビゲーションECUの構成を示す図である。
【図3】走行条件記憶処理のフローチャートである。
【図4】耐久記憶媒体に記憶された走行条件の一例を示す図である。
【図5】制御目標値制御処理のフローチャートである。
【図6】計画効果判定処理のフローチャートである。
【図7】計画区間の抽出例を示す図である。
【図8】計画立案処理のフローチャートである。
【図9】目標SOCの推移の予想の一例を示す図である。
【図10】計画制御処理のフローチャートである。
【図11】図7に示した計画区間についてのSOC管理計画の一例を示す図である。
【図12】渋滞区間消費電力特定処理のフローチャートである。
【図13】渋滞区間判定処理のフローチャートである。
【図14】走行履歴(車速、駆動力)の収集について説明するための図である。
【図15】記憶領域1に記憶される走行履歴(車速、駆動力)について説明するための図である。
【図16】記憶領域3に記憶される走行履歴(車速、駆動力)について説明するための図である。
【図17】記憶領域2に記憶される走行履歴(車速、駆動力)について説明するための図である。
【図18】記憶領域1に記憶された走行履歴(車速、駆動力)の更新について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る車両駆動制御装置を搭載した車両の概略構成を図1に概略的に示す。本実施形態における車両駆動制御装置は、走行用の動力源としてエンジンおよびモータを用いるハイブリッド車両に搭載され、エンジンおよびモータの駆動制御を行う。ハイブリッド車両には、内燃機関としてのエンジン1、発電機2、モータ3、差動装置4、タイヤ5a、5b、インバータ6、DCリンク7、インバータ8、バッテリ9、HV制御部10、GPS受信機11、方位センサ12、車速センサ13、地図DB記憶部14、勾配センサ15、無線受信機16、表示部17およびナビゲーションECU20が搭載されている。
【0021】
このハイブリッド車両は、エンジン1およびモータ3を走行用の動力源とし、アクセル操作に応じて複数の走行モードを切り替えて走行する。エンジン1を動力源とする場合は、エンジン1の回転力が、図示しないクラッチ機構および差動装置4を介してタイヤ5a、5bに伝わる。また、モータ3を動力源とする場合は、バッテリ9の直流電力がDCリンク7およびインバータ8を介して交流電力に変換され、その交流電力によってモータ3が作動し、このモータ3の回転力が、差動装置4を介してタイヤ5a、5bに伝わる。以下、エンジン1のみを動力源とする走行のモードをエンジン走行モード、モータ3のみを動力源とする走行のモードをモータ走行モード、エンジン1とモータ3を動力源とする走行のモードをハイブリッド走行モードという。ただし、以下、ハイブリッド走行モードとエンジン走行モードを含めてハイブリッド走行モードという。
【0022】
また、エンジン1の回転力は発電機2にも伝えられ、その回転力によって発電機2が交流電力を生成し、生成された交流電力はインバータ6、DCリンク7を介して直流電力に変換され、その直流電力がバッテリ9に蓄積される。このようなバッテリ9への充電は、燃料を使用したエンジン1の作動による充電である。以下、この種の充電を、内燃充電という。
【0023】
また、図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ3に回転力として加わり、この回転力によってモータ3が交流電力を生成し、生成された交流電力がインバータ8、DCリンク7を介して直流電力に変換され、その直流電力がバッテリ9に蓄積される。以下、この種の充電を、回生充電という。
【0024】
HV制御部10は、ナビゲーションECU20からの指令等に応じて、発電機2、モータ3、インバータ6、インバータ8、バッテリ9の上述のような作動の実行・非実行等を制御する。HV制御部10は、例えばマイクロコンピュータを用いて実現してもよいし、下記のような機能を実現するための専用の回路構成を有するハードウェアであってもよい。
【0025】
より具体的には、HV制御部10は、現在SOC、基準SOCという2つの値を記憶しており、また、以下の(A)、(B)の処理を行う。
(A)アクセル開度、バッテリ9のバッテリ充電量、バッテリ9の温度等に基づいて、動力源の異なる複数の走行モード(モータ走行モード、ハイブリッド走行モード)の切り替えを繰り返し行うとともに、ナビゲーションECU20から入力される制御目標値(目標SOC)に基づいて、基準SOCの値を変化させ、ハイブリッド車両のバッテリ9の充電量を目標SOCに近づけるように、発電機2、モータ3、インバータ6、インバータ8等を制御する。また、内燃充電の実行・非実行、回生充電の実行・非実行の切り替えも繰り返し行う。HV制御部10は、現在SOCがこの目標SOCおよびその近傍の値を維持するよう、走行方法の決定および決定した走行方法に基づくアクチュエータの制御を実行する。
(B)定期的に現在SOCをナビゲーションECU20に通知する。
【0026】
SOC(State of Charge)とは、バッテリの残量を表す指標であり、その値が高いほど残量が多い。現在SOCは、現在のバッテリ9のSOCを示す。HV制御部10は、この現在SOCの値を、逐次バッテリ9の状態を検出することで、繰り返し更新する。基準SOCは、HV制御部10にて発電/アシストを判断する制御目標値(例えば60パーセント)である。この値はナビゲーションECU20からの制御によって変更可能となっている。
【0027】
HV制御部10は、ナビゲーションECU20から入力される制御目標値に基づいて、ハイブリッド車両の走行モードの切り替え、また、内燃充電の実行・非実行、回生充電の実行・非実行を切り替える制御を行う。本実施形態における制御目標値は目標SOCである。HV制御部10は、現在SOCがこの目標SOCおよびその近傍の値を維持するよう、走行方法の決定および決定した走行方法に基づくアクチュエータの制御を実行する。本実施形態における制御目標値は目標SOCである。HV制御部10は、現在SOCがこの目標SOCおよびその近傍の値を維持するよう、走行方法の決定および決定した走行方法に基づくアクチュエータの制御を実行する。
【0028】
また、ナビゲーションECU20から制御目標値が入力されない場合、HV制御部10は、車速、アクセル開度等に応じた駆動制御を自律的に行う。
【0029】
GPS受信機11、方位センサ12、および車速センサ13は、それぞれハイブリッド車両の位置、進行方向、走行速度を特定する周知のセンサである。
【0030】
地図DB記憶部14は、地図データを記憶する記憶媒体である。地図データは、複数の交差点のそれぞれに対応するノードデータ、および、交差点と交差点を結ぶ道路区間すなわちリンクのそれぞれに対応するリンクデータを有している。1つのノードデータは、当該ノードの識別番号、所在位置情報、種別情報を含む。また、1つのリンクデータは、当該リンクの識別番号(以下、リンクIDという)、位置情報、種別情報等を含んでいる。
【0031】
ここで、リンクの位置情報には、当該リンクが含む形状補完点の所在位置データ、および、当該リンクの両端のノードおよび形状補完点のうち隣り合う2つを繋ぐセグメントのデータを含んでいる。各セグメントのデータは、当該セグメントのセグメントID、当該セグメントの勾配、向き、長さ等の情報を有している。
【0032】
勾配センサ15は、車両のピッチ方向、ヨー方向、ロール方向の方位変化量を検出するジャイロセンサによって構成されている。このジャイロセンサによって検出されるピッチ方向の方位変化量から道路の勾配を算出することが可能となっている。
【0033】
無線受信機16は、外部より無線送信されるVICS情報を受信するためのものである。このVICS情報には、渋滞情報、事故情報、規制情報等の情報が含まれる。また、渋滞情報には、渋滞区間(渋滞開始地点、渋滞終了地点)、渋滞区間長および渋滞を通過するのに要する時間等の情報が含まれる。
【0034】
表示部17は、液晶等のディスプレイを有し、このディスプレイにナビゲーションECU20より入力される映像信号に応じた映像を表示させる。
【0035】
図2に示す様に、ナビゲーションECU20は、RAM21、ROM22、データ書き込み可能な耐久記憶媒体23、および制御部24を有している。耐久記憶媒体とは、ナビゲーションECU20の主電源の供給が停止してもデータを保持し続けることができる記憶媒体をいう。耐久記憶媒体23としては、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、EEPROM等の不揮発性記憶媒体、および、バックアップRAMがある。
【0036】
制御部24は、ROM22または耐久記憶媒体23から読み出したプログラムを実行し、その実行の際にはRAM21、ROM22、および耐久記憶媒体23から情報を読み出し、RAM21および耐久記憶媒体23に対して情報の書き込みを行い、HV制御部10、GPS受信機11、方位センサ12、車速センサ13、地図DB記憶部14、勾配センサ15等と信号の授受を行う。なお、制御部24は、GPS受信機11、方位センサ12および車速センサ13から取得した現在位置を特定するための情報に基づいて、現在位置を特定する現在位置特定処理等を実施する。
【0037】
また、図2に示すように、制御部24は、マップマッチング処理25、経路算出処理26、ナビゲーション処理27、制御目標値記憶処理28、走行時処理29等の処理を、所定のプログラムを実行することで実現する。
【0038】
マップマッチング処理25において、制御部24は、GPS受信機11、方位センサ12および車速センサ13から取得した現在位置を特定するための情報に基づいて、現在位置が地図DB記憶部14の地図中のどの道路上にいるかを判定する。
【0039】
経路算出処理26において、制御部24は、図示しない操作装置を用いたユーザによる目的地指定に基づいて、指定された目的地までの最適な経路を、地図データを用いて決定する。
【0040】
ナビゲーション処理27において、制御部24は、目的地点までの走行経路に沿ってハイブリッド車両を走行させるためのガイド表示を、表示部17、スピーカ(図示せず)等を用いて、ドライバに対して行う。
【0041】
制御部24は、車両の走行に伴って制御指標のスケジュールを規定するための走行条件を収集して耐久記憶媒体23に記憶させる走行条件記憶処理を実施する。
【0042】
制御目標値記憶処理28において、制御部24は、耐久記憶媒体23に記憶した走行条件と同一条件で渋滞区間より一定距離手前の区間を走行するものとして、この渋滞開始地点に連なる手前の区間を計画区間として目標SOCのスケジュールを規定し、この目標SOCのスケジュールを耐久記憶媒体23に記憶させる処理を行う。
【0043】
また、走行時処理29において、車両の現在位置における目標SOCのスケジュールが耐久記憶媒体23に記憶されていることを判定すると、この耐久記憶媒体23に記憶した目標SOCのスケジュールに従ってエンジンとモータの駆動制御を行うようになっている。
【0044】
図3に、上記走行条件記憶処理のフローチャートを示す。車両のイグニッションスイッチがオン状態になると、本駆動制御装置は動作状態となり、制御部24は、図に示す処理を周期的に実施する。
【0045】
まず、走行条件を収集する(S102)。本実施形態では、一定距離(例えば、5メートル)毎に、車速(km/h)、道路勾配(%)、モータ3の駆動電力(W)、区間内の走行時間(秒)、区間内の停車率(%)、エアコンやナビゲーション装置等の補機で消費される消費電力(W)を走行条件として収集する。ここで、区間内の停車率=区間内の停車時間/区間内の走行時間である。
【0046】
次に、走行履歴を保存する(S104)。具体的には、自車が位置する道路の道路識別子を特定し、この道路識別子と関連付けて、S102にて収集した走行条件(走行履歴)を耐久記憶媒体23に記憶させる。本実施形態では、10キロメートル(km)以上の走行距離分の走行条件が記憶可能となっている。
【0047】
図4に、耐久記憶媒体23に記憶された走行条件の一例を示す。なお、この図には、車速のみが示されている。このように、耐久記憶媒体23には、一定時間毎に収集された走行条件が道路識別子と関連付けて記憶される。なお、道路識別子は、道路区間を識別するためのリンクIDあるいはセグメントIDである。
【0048】
上記走行条件記憶処理により、例えば、高速道路の走行であれば、高速道路の走行に応じた走行条件が耐久記憶媒体23に記憶され、一般道路の走行であれば、一般道路の走行に応じた走行条件が耐久記憶媒体23に記憶される。また、一般道路の走行から高速道路の走行となった場合には、一般道路の走行から高速道路の走行となった場合の走行条件が耐久記憶媒体23に記憶される。
【0049】
図5に、制御目標値制御処理28のフローチャートを示す。車両のイグニッションスイッチがオン状態になると、制御部24は、図3に示した処理を並行して図5に示す処理を周期的に実施する。
【0050】
まず、無線受信機16により外部情報が受信され、この外部情報に基づいて走行先に渋滞区間が存在するか否かを判定する(S200)。
【0051】
ここで、外部情報が受信されない場合、あるいは、外部情報が受信されても、走行先に渋滞区間が存在しないと判定された場合、S200の判定はNOとなり、S200の判定を繰り返し実施する。
【0052】
そして、無線受信機16により渋滞情報が受信され、この渋滞情報に基づいて走行先に渋滞区間が存在すると判定されると、S200の判定はYESとなり、次に、計画効果判定処理を実施する(S300)。
【0053】
図6に、この計画効果判定処理のフローチャートを示す。この計画効果判定処理では、まず、計画区間を設定する(S302)。具体的には、渋滞区間より手前の一部区間を計画区間として抽出する。本実施形態では、渋滞開始地点に連なる手前の特定地点から渋滞開始地点に至る一部区間を計画区間として抽出する。
【0054】
図7に、計画区間の抽出例を示す。この図の例では、区間9、10が渋滞区間となっており、この渋滞開始地点より手前の区間6〜9が計画区間として抽出されている。
【0055】
なお、本実施形態では、目的地に至る経路が探索されないため、走行先に分岐路がある場合、どちらの分岐路へ進行するのか分からない。このため、分岐先の各道路にそれぞれ渋滞区間が存在するような場合には、分岐先の各道路の各渋滞区間についてそれぞれ渋滞区間より手前の区間を抽出する。また、例えば、高速道路を走行中で、走行先に渋滞区間が存在し、その渋滞区間の先にも渋滞区間が存在するような場合にも、各渋滞区間についてそれぞれ渋滞区間より手前の区間を抽出する。
【0056】
次に、現在のバッテリ残量を特定する(S304)。本ナビゲーションECU20には、モータ3を駆動するバッテリ9の残量(バッテリ充電量)を示す信号が入力されるようになっており、このバッテリの残量を示す信号を用いて現在のバッテリ残量を特定する。
【0057】
次に、渋滞区間の消費エネルギーを推定する(S306)。具体的には、モータ3のみを使用して渋滞区間をEV走行する際にモータ3を駆動するバッテリ9で必要となる消費電力量を算出する。このようにモータ3のみを使用して渋滞区間をEV走行するのは、渋滞区間のようなエンジンの運転効率の低い区間はモータのみを使用して走行した方が低燃費走行を実現できるからである。ここで、エアコンやナビゲーション装置等の補機により消費される単位時間当たりのエネルギーをA(kW)、渋滞区間を通過するのに要する時間をB(秒)、渋滞区間を通過する際に補機により消費されるエネルギーをC、渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーをD(kW)とすると、渋滞区間をEV走行モードで走行する場合に必要とされるエネルギーEは、E=A×B+D=C+Dとして算出することができる。なお、渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーD(kW)は、渋滞区間内の走行パターンを規定した走行モデルを用いて求めることができる。
【0058】
例えば、平均車速が時速10キロメートル(秒速2.7メートル)の渋滞区間であれば、「時速0キロメートルから7秒で時速20キロメートル(km/h)まで加速し、15秒定常走行し、7秒で時速0キロメートル(km/h)まで減速し11秒間停止」という40秒間のモデルを用い、渋滞区間の区間長が10キロメートルであれば、D=40秒間の走行で消費されるエネルギー×10(km)÷2.7(m/s)÷40(s)として、渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを算出する。
【0059】
また、渋滞区間の区間長が5キロメートルであれば、D=40秒間の走行で消費されるエネルギー×5(km)÷2.7(m/s)÷40(s)として渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを算出する。なお、40秒間の走行で消費されるエネルギーは予め規定された車両固有の値であり、耐久記憶媒体23に記憶されている。本実施形態では、このようにVICS情報で受信する平均車速ごとに走行モデルをもち同じ要領で算出する。
【0060】
また、渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDは、渋滞区間の勾配によって異なってくる。そこで、本実施形態では、エネルギーDの算出精度を高めるため、渋滞情報により示される渋滞区間における勾配を特定し、この渋滞区間における勾配に基づいて渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを補正する。なお、渋滞区間における勾配は、地図データを参照して特定してもよく、また、自車の走行に伴って収集した値を用いて特定してもよい。本実施形態では、勾配に応じて規定した係数KをエネルギーDに乗算することにより補正を行う。上り勾配では、係数K>1、平坦区間では、係数K=1、下り勾配では、係数K<1としてエネルギーDを補正する。
【0061】
次に、渋滞区間でバッテリ残量が閾値以下になるか否かを判定する(S308)。具体的には、モータ3を使用して渋滞区間を走行する際にモータ3を駆動するバッテリ9で必要となる消費電力量を算出し、この消費電力量に基づいて、モータ3を使用して渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点でバッテリの充電量が予め定められた下限規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を算出する。本実施形態では、停車中でもエンジンを駆動させて発電を開始するように規定されている値をバッテリ充電量の下限規格値とする。
【0062】
ここで、必要バッテリ充電量がS304にて特定した現在のバッテリ残量以上の場合、少なくとも渋滞開始地点までにバッテリ9を充電しておく必要がある。本実施形態では、必要バッテリ充電量とS304にて特定した現在のバッテリ残量とを比較して渋滞区間でバッテリ残量が閾値以下になるか否かを判定する。
【0063】
ここで、渋滞区間でバッテリ残量が閾値以下になると判定された場合には、S308の判定はYESとなり、計画有効判定となり、また、渋滞区間でバッテリ残量が閾値よりも大きくなる場合には、S308の判定はNOとなり、計画無効判定となる。
【0064】
図5の説明に戻り、次に、計画立案処理を実施する(S400)。この計画立案処理のフローチャートを図8に示す。この計画立案処理は、S308にて計画有効と判定された場合に実施され、S308にて計画無効と判定された場合には実施されない。すなわち、S308にて計画無効と判定された場合には、図5に示す処理を終了する。
【0065】
この計画立案処理では、まず、渋滞区間前の道路で必要な発電量を確保するように制御目標値を算出する(S402)。具体的には、S306、S308と同様に、モータ3を使用して渋滞区間を走行する際にモータ3を駆動するバッテリ9で必要となる消費電力量を算出し、この消費電力量に基づいて、モータ3を使用して渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点でバッテリの充電量が予め定められた下限規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を算出する。
【0066】
次に、道路区間毎に制御目標値を設定する(S404)。具体的には、渋滞区間より手前の一部区間を計画区間として抽出し、この計画区間について、渋滞開始地点におけるバッテリ9の充電量が必要バッテリ充電量以上となるように、予め定められた区間毎に制御指標のスケジュールを規定する。ここで、抽出する区間は、渋滞開始地点におけるバッテリ9の充電量を必要バッテリ充電量以上とするのに十分な区間長とする必要がある。また、図3に示した走行条件記憶処理により耐久記憶媒体23に記憶された走行条件から直近の一定距離分(例えば、2000メートル)分の走行条件を読み出し、この走行条件を用いて計画区間についてSOC管理計画を作成する。SOC管理計画は、目的地までの目標SOC(制御目標値)の推移を予想したものである。なお、この目標SOCの推移の予想については周知(特開2001−183150号公報、「新エネルギー自動車の開発123〜124頁」CMC出版等参照)であるので、ここではその詳細についての説明は省略する。
【0067】
図9に、このような目標SOCの推移の予想の一例を示す。図に示すように、本実施形態では、計画区間における道路識別子に対応付けて目標SOCを規定したSOC管理計画が作成される。
【0068】
図10に、図7に示した計画区間について計画されたSOC管理計画の一例を示す。図に示されるように、計画区間について、発電効率およびアシスト効率を算出して回生充電、発電、アシストといった制御方法が道路区間毎に決定される。渋滞開始地点におけるバッテリ9の充電量が必要バッテリ充電量以上となり、渋滞開始地点における制御目標値(目標SOC)Xが確保されるように、その手前の計画区間6〜8でバッテリ9の充電が行われるように計画される。渋滞区間の直前の一部区間のみを計画区間としてSOC管理計画を作成するので、例えば、渋滞区間よりもずっと手前で必要以上にバッテリを充電してしまうようなこともなく、低燃費走行を実現することが可能である。
【0069】
図5の説明に戻り、次に、計画制御処理を実施する(S500)。この計画制御処理のフローチャートを図11に示す。この計画立案処理では、まず、走行位置に対応する制御目標値の読み出しを行う(S502)。具体的には、現在位置特定処理により特定された車両の現在位置と地図DB記憶部14に記憶された地図データに基づいて車両が位置する道路区間を特定し、この車両が位置する道路区間に対応する制御目標値を耐久記憶媒体23から読み出す。ただし、図示してないが、車両が位置する道路区間に対応する制御目標値が耐久記憶媒体23に記憶されていない場合は、S510へ進む。
【0070】
車両が位置する道路区間に対応する制御目標値が耐久記憶媒体23に記憶されている場合は、次に、車両の現在位置における制御目標値をHV制御部へ通知する(S504)。車両が計画区間内に位置する場合には、車両の現在位置における制御目標値をHV制御部へ通知し、車両が計画区間内に位置しない場合には、制御目標値の通知を中断する。この場合、HV制御部10は、バッテリ9の充電量がこの制御目標値に近づくように駆動制御を行う。
【0071】
S506では、制御目標値に近づくように現在SOCが推移しているか否かに基づいてバッテリ9の充電量が計画通りに推移しているか否かを判定する。
【0072】
ここで、制御目標値に近づくように現在SOCが推移している場合、S506の判定はYESとなり、次に、車両が渋滞終了地点に到達したか否かに基づいて車両が計画区間を通過したか否かを判定する(S510)。
【0073】
ここで、車両が渋滞終了地点に到達していない場合、S510の判定はNOとなり、S502へ戻る。
【0074】
また、制御目標値に近づくように現在SOCが推移していない場合、S506の判定はNOとなり、車両が目的地を基準とする所定範囲内に到達する前であっても、駆動制御を中止する(S508)。具体的には、制御目標値の通知を中止する。この場合、HV制御部10は、バッテリ9の充電量がこの制御目標値に近づくように駆動制御を行う。
【0075】
そして、車両が渋滞終了地点に到達すると、S510の判定はYESとなり、本処理を終了する。これにより、ナビゲーションECU20からHV制御部10へ制御目標値が入力されなくなり、車速、アクセル開度等に応じた駆動制御が自律的に行われるようになる。
【0076】
上記した構成によれば、無線情報に基づいて走行先に渋滞区間が存在することを判定した場合、モータを使用して渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点でモータを駆動するバッテリの充電量が予め定められた規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定し、渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、渋滞開始地点におけるバッテリの充電量が必要バッテリ充電量以上となるように制御指標のスケジュールが規定されるので、目的地に至る経路を特定するための操作を必要とすることなく、エネルギー消費量の低減を図ることができる。
【0077】
また、車両の位置より手前の一定区間で収集された走行条件と同一条件で走行するものとして、渋滞開始地点の手前の一部区間について制御指標のスケジュールが規定される。すなわち、実際の車両の走行状況に合うように制御指標のスケジュールを規定することができる。
【0078】
また、渋滞区間における勾配を特定し、この渋滞区間における勾配に基づいてモータを使用して渋滞区間を走行する際にモータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量が補正されるので、精度よく消費電力量を特定することができる。
【0079】
また、無線情報に基づいて走行先に複数の渋滞区間が存在することを判定した場合、各渋滞区間について渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定し、複数の渋滞区間についてそれぞれ渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、それぞれ制御指標のスケジュールが規定される。したがって、例えば、走行先で道路が分岐しており、分岐先の各道路にそれぞれ渋滞区間が存在するような場合、車両がどちらの分岐路へ進行しても制御指標のスケジュールに従った駆動制御を実現することができる。
【0080】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、渋滞区間内の走行パターンを規定した走行モデルを用いて渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを求めたが、本実施形態では、渋滞区間走行時における車軸トルク、車軸回転数、ブレーキ制動トルクを予め規定しておき、これらの情報を用いて渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを求める。
【0081】
ここで、エネルギーD=走行エネルギー+補機の消費電力−回生エネルギーとして算出することができる。ここで、走行エネルギー=Σ(車軸トルク[Nm]×車軸回転数[rpm]×2π/60/1000)、回生エネルギー=Σ(ブレーキ制動トルク[Nm]×車軸回転数[rpm]×−2π/60/1000)、補機の消費電力=Σ(補機の消費電力)である。なお、単位時間で取得可能な回生エネルギーには限界があるため、上記計算式における回生エネルギーが予め定められた上限値を超える場合は、回生エネルギーの最大値を回生エネルギーとする。
【0082】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、S306にて渋滞区間内の走行パターンを規定した走行モデルを用いて渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを求めたが、本実施形態では、車両の走行に伴って収集した走行履歴に基づいて渋滞区間の走行モデルを特定する渋滞区間消費電力特定処理を実施し、この走行モデルを用いて渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを求める。
【0083】
図12に、本実施形態に係る渋滞区間消費電力特定処理のフローチャートを示す。車両のイグニッションスイッチがオン状態になると、制御部24は、図に示す処理を実施する。
【0084】
まず、RAM21の記憶領域1に記憶されているデータを消去し(S602)、一定時間(例えば、0.5秒)毎に道路区間内で収集した走行履歴をRAM21の記憶領域1に記憶させる(S604)。本実施形態では、停車時間を間引くようにして走行履歴(車速、駆動力)を記憶する。走行履歴には、車速(km/h)、モータ3の駆動電力(W)、区間内の走行時間(秒)、区間内の停車時間(秒)、区間内の平均車速(km/h)、区間内の停車率(%)が含まれる。平均車速=Σ車速/走行時間として算出することができる。また、区間内の停車率=区間内の停車時間/区間内の走行時間として算出することができる。
【0085】
図14に、収集された走行履歴(車速、駆動力)の一例を示す。また、図15に、記憶領域1に記憶された走行履歴(車速、駆動力)の一例を示す。図15に示されるように、記憶領域1には、停車中(車速=0)における走行履歴を間引くようにして走行履歴が記憶される。停車時間については、走行履歴とは別に記憶領域1に記憶される。
【0086】
次に、一定距離走行したか否かを判定する(S606)。本実施形態では、車両の走行距離が2000メートル(m)に到達したか否かを判定する。
【0087】
ここで、車両の走行距離が2000メートル(m)に到達していない場合、S606の判定はNOとなり、S606の判定を繰り返し実施する。そして、車両の走行距離が2000メートル(m)に到達すると、S606の判定はYESとなり、次に、渋滞区間判定処理を実施する。
【0088】
図13に、この渋滞区間判定処理のフローチャートを示す。この渋滞区間判定処理では、まず、記憶した走行履歴を取得する(S702)。ここでは、記憶領域1に記憶した走行履歴を取得する。
【0089】
次に、「平均車速が時速Aキロメートル(km/h)よりも大きく、かつ、停車率がB%以下であるか否か」を渋滞条件として、この渋滞条件を満たすか否かに基づいて渋滞区間か否かを判定する(S704)。
【0090】
ここで、平均車速が時速Aキロメートル(km/h)よりも大きく、かつ、停車率がB%以下である場合、S704の判定はYESとなり、S702にて取得した走行履歴、すなわち記憶領域1に記憶された走行履歴を渋滞区間の走行履歴として記憶領域3に記憶させる(S706)。
【0091】
図16に、記憶領域3に記憶された走行履歴(車速、駆動力)の一例を示す。この記憶領域3には、渋滞条件を満たした場合の2000メートル分の最新の走行履歴が記憶される。
【0092】
図12の説明に戻り、次に、一定時間(例えば、0.5秒)毎に道路区間内で収集した走行履歴をRAM21の記憶領域2に記憶させる(S608)。
【0093】
次に、一定距離走行したか否かを判定する(S610)。本実施形態では、車両の走行距離が500メートルに到達したか否かを判定する。
【0094】
ここで、車両の走行距離が500メートル(m)に到達していない場合、S606の判定はNOとなり、S608へ戻る。
【0095】
図17に、記憶領域2に記憶された走行履歴(車速、駆動力)の一例を示す。この記憶領域2には、2000メートル以上走行した後に収集された500メートル走行分の走行履歴が記憶される。なお、この記憶領域2には、記憶領域1と同様に、停車時間が間引かれた走行履歴(車速、駆動力)が記憶され、停車時間は、走行履歴(車速、駆動力)とは別に記憶される。
【0096】
そして、車両の走行距離が500メートル(m)に到達すると、S610の判定はYESとなり、次に、再度、渋滞区間判定処理を実施する。
【0097】
この渋滞区間判定処理のS702においては、記憶領域2に記憶した走行履歴を取得する。したがって、S706では、記憶領域2に記憶した走行履歴を渋滞区間の走行履歴として記憶領域3に記憶させる(S706)。
【0098】
図12の説明に戻り、次に、記憶領域1の走行履歴を最古500メートル分破棄する(S612)。すなわち、記憶領域1に記憶されている走行履歴のうち最古500メートル分の走行履歴を消去する。
【0099】
次に、記憶領域2の走行履歴を記憶領域1に記憶させる(S614)。具体的には、記憶領域2に記憶した最新の500メートル分の走行履歴を記憶領域1に記憶させ、記憶領域1に記憶されている500〜2000メートル分の走行履歴を一体化する。
【0100】
次に、記憶領域2の走行履歴を破棄する(S616)。すなわち、記憶領域2に記憶されている走行履歴を消去する。
【0101】
次に、車両が走行を終了したか否かを判定する(S618)。本実施形態では、シフトレバーがパーキング(P)に位置しているか否かに基づいて車両が走行を終了したか否かを判定する。
【0102】
ここで、シフトレバーがパーキング(P)以外に位置する場合、S618の判定はNOとなり、S608へ戻る。したがって、500メートル走行する毎に、最新の2000メートル分の走行履歴が記憶領域1に記憶される。
【0103】
図18に、記憶領域1に記憶された走行履歴(車速、駆動力)の一例を示す。図に示されるように、最新の500メートル分の走行履歴が記憶領域1に記憶され、最古500メートル分の走行履歴が消去される。このように、500メートル走行する毎に、記憶領域1に記憶される20000メートル分の走行履歴が更新される。
【0104】
そして、シフトレバーがパーキング(P)に位置すると、S618の判定はYESとなり、本処理を終了する。
【0105】
上記渋滞区間消費電力特定処理により、記憶領域3に渋滞区間走行時における走行履歴(車速、駆動力)が記憶領域3に記憶される。この車両の走行に伴って収集した走行履歴に基づいて渋滞区間の走行モデルを特定し、当該渋滞区間の走行モデルを用いて渋滞区間をEV走行する際にモータ3を駆動するバッテリ9で必要となる消費電力量を算出する。制御部24は、車速から車軸回転数を特定するとともに、駆動力から車軸トルク、ブレーキ制動トルクを特定することにより、上記第2実施形態と同様に、渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを算出することができる。
【0106】
上記したように、自車が渋滞区間内を走行中であるか否かを判定した場合、当該渋滞区間内を走行中に収集した走行履歴を用いて渋滞区間を走行する際にモータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を算出することができる。
【0107】
(その他の実施形態)
上記第1〜第3実施形態では、車両駆動制御装置の搭載車両として、走行用の動力源としてエンジンおよびモータを用いるハイブリッド車両を例に示したが、例えば、家庭用電源等による充電に対応したプラグインハイブリッド車両、モータを駆動するバッテリを充電する内燃機関を備えた車両としてもよい。
【0108】
また、上記第1〜第3実施形態では、図5にて計画効果判定処理300を実施し、計画効果判定処理300により計画効果有効と判定された場合に、計画立案処理S300を実施したが、計画効果判定処理300を省略して、常時、計画立案処理S300を実施してもよい。
【0109】
また、上記第1実施形態では、S308にて、停車中でもエンジンを駆動させて発電を開始するように規定されている値をバッテリ充電量の下限規格値としたが、例えば、通常時に発電しない非効率な速度(加速度)領域でも発電を開始するように規定されている値をバッテリ充電量の下限規格値としてもよい。
【0110】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、無線受信機16が受信手段に相当し、S402が必要バッテリ充電量特定手段に相当し、S404がスケジュール規定手段に相当し、図3の走行条件記憶処理が走行条件記憶処理手段に相当し、S704が渋滞区間内走行判定手段に相当する。
【符号の説明】
【0111】
1 エンジン
2 発電機
3 モータ
4 差動装置
5a タイヤ
5b タイヤ
6 インバータ
7 DCリンク
8 インバータ
9 バッテリ
10 HV制御部
11 GPS受信機
12 方位センサ
13 車速センサ
14 地図DB記憶部
15 勾配センサ
16 無線受信機
20 ナビゲーションECU
21 RAM
22 ROM
23 耐久記憶媒体
24 制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行用の動力源として内燃機関とモータを使用する車両に搭載され、走行用の動力源の駆動制御を行う車両駆動制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、出発地から目的地に至る経路について、渋滞区間のようなエンジンの運転効率の低い区間をモータにより走行し、この区間でモータにより消費される電力量を、エンジンよる走行区間で予め発電してバッテリに蓄積する、という充放電スケジュールを立て、この充放電スケジュールに従ってエンジンとモータの駆動制御を行うようにしたハイブリッド車両の駆動制御装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−333305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載された装置は、目的地の設定や経路探索の実行指示など、目的地に至る経路を特定するための操作が必要であり、ユーザに煩わしさを感じさせてしまう。
【0005】
また、上記特許文献1に記載された装置では、出発地から目的地に至る経路の全区間に対して充放電スケジュールを立てるような構成となっているが、実際の走行では、運転者の運転特性や周辺の交通流の影響等により、充放電スケジュールどおりの駆動制御を実施できなくなってしまう場合も多い。このように、充放電スケジュールどおりの駆動制御を実施できない状況が多くなると、かえってエネルギー消費量が増加してしまうといった状況が発生してしまう。
【0006】
本発明は上記問題に鑑みたもので、目的地に至る経路を特定するための操作を必要とすることなく、エネルギー消費量の低減を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、無線情報を受信する受信手段と、受信手段を介して受信された無線情報に基づいて走行先に渋滞区間が存在することを判定した場合、モータを使用して渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点でモータを駆動するバッテリの充電量が予め定められた規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定する必要バッテリ充電量特定手段と、渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、渋滞開始地点におけるバッテリの充電量が必要バッテリ充電量以上となるように制御指標のスケジュールを規定するスケジュール規定手段と、を備えたことを特徴としている。
【0008】
このような構成によれば、無線情報に基づいて走行先に渋滞区間が存在することを判定した場合、モータを使用して渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点でモータを駆動するバッテリの充電量が予め定められた規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定し、渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、渋滞開始地点におけるバッテリの充電量が必要バッテリ充電量以上となるように制御指標のスケジュールが規定されるので、目的地に至る経路を特定するための操作を必要とすることなく、エネルギー消費量の低減を図ることができる。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、制御指標のスケジュールを規定するための走行条件を収集して記憶手段に記憶させる処理を実施する走行条件記憶処理手段を備え、スケジュール規定手段は、記憶手段から車両の位置より手前の一定区間で収集された走行条件を読み出し、当該走行条件と同一条件で走行するものとして、渋滞開始地点の手前の一部区間について制御指標のスケジュールを規定することを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、車両の位置より手前の一定区間で収集された走行条件と同一条件で走行するものとして、渋滞開始地点の手前の一部区間について制御指標のスケジュールが規定される。すなわち、実際の車両の走行状況に合うように制御指標のスケジュールを規定することができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、渋滞情報に基づいてモータを使用して渋滞区間を走行する際にモータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を算出する消費電力量算出手段を備え、必要バッテリ充電量特定手段は、消費電力量に基づいて、モータを使用して渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点でバッテリの充電量が予め定められた規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定することを特徴としている。
【0012】
このように、渋滞情報に基づいてモータを使用して渋滞区間を走行する際にモータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を算出し、この消費電力量に基づいて、モータを使用して渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点でバッテリの充電量が予め定められた規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定することができる。
【0013】
また、請求項4に記載の発明のように、消費電力量算出手段は、渋滞区間内における走行パターンを規定した走行モデルを用いてモータを使用して渋滞区間を走行する際にモータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を算出することができる。
【0014】
また、請求項5に記載の発明は、消費電力量算出手段は、渋滞情報により示される渋滞区間における勾配を特定し、当該渋滞区間における勾配に基づいてモータを使用して渋滞区間を走行する際にモータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を補正することを特徴としている。
【0015】
このような構成によれば、渋滞区間における勾配に基づいてモータを使用して渋滞区間を走行する際にモータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量が補正されるので、精度よく消費電力量を特定することができる。
【0016】
ここで、請求項6に記載の発明のように、自車が渋滞区間内を走行中であるか否かを判定する渋滞区間内走行判定手段を備え、消費電力量算出手段は、自車が渋滞区間内を走行中であると判定された場合に当該渋滞区間内を走行中に収集した走行履歴を用いて渋滞区間を走行する際にモータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を算出することもできる。
【0017】
また、請求項7に記載の発明は、必要バッテリ充電量特定手段は、受信手段を介して受信された無線情報に基づいて走行先に複数の渋滞区間が存在することを判定した場合、各渋滞区間について渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定し、スケジュール規定手段は、複数の渋滞区間についてそれぞれ渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、それぞれ制御指標のスケジュールを規定することを特徴としている。
【0018】
このような構成によれば、無線情報に基づいて走行先に複数の渋滞区間が存在することを判定した場合、各渋滞区間について渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定し、複数の渋滞区間についてそれぞれ渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、それぞれ制御指標のスケジュールが規定される。したがって、例えば、走行先で道路が分岐しており、分岐先の各道路にそれぞれ渋滞区間が存在するような場合、車両がどちらの分岐路へ進行しても制御指標のスケジュールに従った駆動制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両の駆動制御装置に構成を示す図である。
【図2】ナビゲーションECUの構成を示す図である。
【図3】走行条件記憶処理のフローチャートである。
【図4】耐久記憶媒体に記憶された走行条件の一例を示す図である。
【図5】制御目標値制御処理のフローチャートである。
【図6】計画効果判定処理のフローチャートである。
【図7】計画区間の抽出例を示す図である。
【図8】計画立案処理のフローチャートである。
【図9】目標SOCの推移の予想の一例を示す図である。
【図10】計画制御処理のフローチャートである。
【図11】図7に示した計画区間についてのSOC管理計画の一例を示す図である。
【図12】渋滞区間消費電力特定処理のフローチャートである。
【図13】渋滞区間判定処理のフローチャートである。
【図14】走行履歴(車速、駆動力)の収集について説明するための図である。
【図15】記憶領域1に記憶される走行履歴(車速、駆動力)について説明するための図である。
【図16】記憶領域3に記憶される走行履歴(車速、駆動力)について説明するための図である。
【図17】記憶領域2に記憶される走行履歴(車速、駆動力)について説明するための図である。
【図18】記憶領域1に記憶された走行履歴(車速、駆動力)の更新について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態に係る車両駆動制御装置を搭載した車両の概略構成を図1に概略的に示す。本実施形態における車両駆動制御装置は、走行用の動力源としてエンジンおよびモータを用いるハイブリッド車両に搭載され、エンジンおよびモータの駆動制御を行う。ハイブリッド車両には、内燃機関としてのエンジン1、発電機2、モータ3、差動装置4、タイヤ5a、5b、インバータ6、DCリンク7、インバータ8、バッテリ9、HV制御部10、GPS受信機11、方位センサ12、車速センサ13、地図DB記憶部14、勾配センサ15、無線受信機16、表示部17およびナビゲーションECU20が搭載されている。
【0021】
このハイブリッド車両は、エンジン1およびモータ3を走行用の動力源とし、アクセル操作に応じて複数の走行モードを切り替えて走行する。エンジン1を動力源とする場合は、エンジン1の回転力が、図示しないクラッチ機構および差動装置4を介してタイヤ5a、5bに伝わる。また、モータ3を動力源とする場合は、バッテリ9の直流電力がDCリンク7およびインバータ8を介して交流電力に変換され、その交流電力によってモータ3が作動し、このモータ3の回転力が、差動装置4を介してタイヤ5a、5bに伝わる。以下、エンジン1のみを動力源とする走行のモードをエンジン走行モード、モータ3のみを動力源とする走行のモードをモータ走行モード、エンジン1とモータ3を動力源とする走行のモードをハイブリッド走行モードという。ただし、以下、ハイブリッド走行モードとエンジン走行モードを含めてハイブリッド走行モードという。
【0022】
また、エンジン1の回転力は発電機2にも伝えられ、その回転力によって発電機2が交流電力を生成し、生成された交流電力はインバータ6、DCリンク7を介して直流電力に変換され、その直流電力がバッテリ9に蓄積される。このようなバッテリ9への充電は、燃料を使用したエンジン1の作動による充電である。以下、この種の充電を、内燃充電という。
【0023】
また、図示しない制動機構によりハイブリッド車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ3に回転力として加わり、この回転力によってモータ3が交流電力を生成し、生成された交流電力がインバータ8、DCリンク7を介して直流電力に変換され、その直流電力がバッテリ9に蓄積される。以下、この種の充電を、回生充電という。
【0024】
HV制御部10は、ナビゲーションECU20からの指令等に応じて、発電機2、モータ3、インバータ6、インバータ8、バッテリ9の上述のような作動の実行・非実行等を制御する。HV制御部10は、例えばマイクロコンピュータを用いて実現してもよいし、下記のような機能を実現するための専用の回路構成を有するハードウェアであってもよい。
【0025】
より具体的には、HV制御部10は、現在SOC、基準SOCという2つの値を記憶しており、また、以下の(A)、(B)の処理を行う。
(A)アクセル開度、バッテリ9のバッテリ充電量、バッテリ9の温度等に基づいて、動力源の異なる複数の走行モード(モータ走行モード、ハイブリッド走行モード)の切り替えを繰り返し行うとともに、ナビゲーションECU20から入力される制御目標値(目標SOC)に基づいて、基準SOCの値を変化させ、ハイブリッド車両のバッテリ9の充電量を目標SOCに近づけるように、発電機2、モータ3、インバータ6、インバータ8等を制御する。また、内燃充電の実行・非実行、回生充電の実行・非実行の切り替えも繰り返し行う。HV制御部10は、現在SOCがこの目標SOCおよびその近傍の値を維持するよう、走行方法の決定および決定した走行方法に基づくアクチュエータの制御を実行する。
(B)定期的に現在SOCをナビゲーションECU20に通知する。
【0026】
SOC(State of Charge)とは、バッテリの残量を表す指標であり、その値が高いほど残量が多い。現在SOCは、現在のバッテリ9のSOCを示す。HV制御部10は、この現在SOCの値を、逐次バッテリ9の状態を検出することで、繰り返し更新する。基準SOCは、HV制御部10にて発電/アシストを判断する制御目標値(例えば60パーセント)である。この値はナビゲーションECU20からの制御によって変更可能となっている。
【0027】
HV制御部10は、ナビゲーションECU20から入力される制御目標値に基づいて、ハイブリッド車両の走行モードの切り替え、また、内燃充電の実行・非実行、回生充電の実行・非実行を切り替える制御を行う。本実施形態における制御目標値は目標SOCである。HV制御部10は、現在SOCがこの目標SOCおよびその近傍の値を維持するよう、走行方法の決定および決定した走行方法に基づくアクチュエータの制御を実行する。本実施形態における制御目標値は目標SOCである。HV制御部10は、現在SOCがこの目標SOCおよびその近傍の値を維持するよう、走行方法の決定および決定した走行方法に基づくアクチュエータの制御を実行する。
【0028】
また、ナビゲーションECU20から制御目標値が入力されない場合、HV制御部10は、車速、アクセル開度等に応じた駆動制御を自律的に行う。
【0029】
GPS受信機11、方位センサ12、および車速センサ13は、それぞれハイブリッド車両の位置、進行方向、走行速度を特定する周知のセンサである。
【0030】
地図DB記憶部14は、地図データを記憶する記憶媒体である。地図データは、複数の交差点のそれぞれに対応するノードデータ、および、交差点と交差点を結ぶ道路区間すなわちリンクのそれぞれに対応するリンクデータを有している。1つのノードデータは、当該ノードの識別番号、所在位置情報、種別情報を含む。また、1つのリンクデータは、当該リンクの識別番号(以下、リンクIDという)、位置情報、種別情報等を含んでいる。
【0031】
ここで、リンクの位置情報には、当該リンクが含む形状補完点の所在位置データ、および、当該リンクの両端のノードおよび形状補完点のうち隣り合う2つを繋ぐセグメントのデータを含んでいる。各セグメントのデータは、当該セグメントのセグメントID、当該セグメントの勾配、向き、長さ等の情報を有している。
【0032】
勾配センサ15は、車両のピッチ方向、ヨー方向、ロール方向の方位変化量を検出するジャイロセンサによって構成されている。このジャイロセンサによって検出されるピッチ方向の方位変化量から道路の勾配を算出することが可能となっている。
【0033】
無線受信機16は、外部より無線送信されるVICS情報を受信するためのものである。このVICS情報には、渋滞情報、事故情報、規制情報等の情報が含まれる。また、渋滞情報には、渋滞区間(渋滞開始地点、渋滞終了地点)、渋滞区間長および渋滞を通過するのに要する時間等の情報が含まれる。
【0034】
表示部17は、液晶等のディスプレイを有し、このディスプレイにナビゲーションECU20より入力される映像信号に応じた映像を表示させる。
【0035】
図2に示す様に、ナビゲーションECU20は、RAM21、ROM22、データ書き込み可能な耐久記憶媒体23、および制御部24を有している。耐久記憶媒体とは、ナビゲーションECU20の主電源の供給が停止してもデータを保持し続けることができる記憶媒体をいう。耐久記憶媒体23としては、例えば、ハードディスク、フラッシュメモリ、EEPROM等の不揮発性記憶媒体、および、バックアップRAMがある。
【0036】
制御部24は、ROM22または耐久記憶媒体23から読み出したプログラムを実行し、その実行の際にはRAM21、ROM22、および耐久記憶媒体23から情報を読み出し、RAM21および耐久記憶媒体23に対して情報の書き込みを行い、HV制御部10、GPS受信機11、方位センサ12、車速センサ13、地図DB記憶部14、勾配センサ15等と信号の授受を行う。なお、制御部24は、GPS受信機11、方位センサ12および車速センサ13から取得した現在位置を特定するための情報に基づいて、現在位置を特定する現在位置特定処理等を実施する。
【0037】
また、図2に示すように、制御部24は、マップマッチング処理25、経路算出処理26、ナビゲーション処理27、制御目標値記憶処理28、走行時処理29等の処理を、所定のプログラムを実行することで実現する。
【0038】
マップマッチング処理25において、制御部24は、GPS受信機11、方位センサ12および車速センサ13から取得した現在位置を特定するための情報に基づいて、現在位置が地図DB記憶部14の地図中のどの道路上にいるかを判定する。
【0039】
経路算出処理26において、制御部24は、図示しない操作装置を用いたユーザによる目的地指定に基づいて、指定された目的地までの最適な経路を、地図データを用いて決定する。
【0040】
ナビゲーション処理27において、制御部24は、目的地点までの走行経路に沿ってハイブリッド車両を走行させるためのガイド表示を、表示部17、スピーカ(図示せず)等を用いて、ドライバに対して行う。
【0041】
制御部24は、車両の走行に伴って制御指標のスケジュールを規定するための走行条件を収集して耐久記憶媒体23に記憶させる走行条件記憶処理を実施する。
【0042】
制御目標値記憶処理28において、制御部24は、耐久記憶媒体23に記憶した走行条件と同一条件で渋滞区間より一定距離手前の区間を走行するものとして、この渋滞開始地点に連なる手前の区間を計画区間として目標SOCのスケジュールを規定し、この目標SOCのスケジュールを耐久記憶媒体23に記憶させる処理を行う。
【0043】
また、走行時処理29において、車両の現在位置における目標SOCのスケジュールが耐久記憶媒体23に記憶されていることを判定すると、この耐久記憶媒体23に記憶した目標SOCのスケジュールに従ってエンジンとモータの駆動制御を行うようになっている。
【0044】
図3に、上記走行条件記憶処理のフローチャートを示す。車両のイグニッションスイッチがオン状態になると、本駆動制御装置は動作状態となり、制御部24は、図に示す処理を周期的に実施する。
【0045】
まず、走行条件を収集する(S102)。本実施形態では、一定距離(例えば、5メートル)毎に、車速(km/h)、道路勾配(%)、モータ3の駆動電力(W)、区間内の走行時間(秒)、区間内の停車率(%)、エアコンやナビゲーション装置等の補機で消費される消費電力(W)を走行条件として収集する。ここで、区間内の停車率=区間内の停車時間/区間内の走行時間である。
【0046】
次に、走行履歴を保存する(S104)。具体的には、自車が位置する道路の道路識別子を特定し、この道路識別子と関連付けて、S102にて収集した走行条件(走行履歴)を耐久記憶媒体23に記憶させる。本実施形態では、10キロメートル(km)以上の走行距離分の走行条件が記憶可能となっている。
【0047】
図4に、耐久記憶媒体23に記憶された走行条件の一例を示す。なお、この図には、車速のみが示されている。このように、耐久記憶媒体23には、一定時間毎に収集された走行条件が道路識別子と関連付けて記憶される。なお、道路識別子は、道路区間を識別するためのリンクIDあるいはセグメントIDである。
【0048】
上記走行条件記憶処理により、例えば、高速道路の走行であれば、高速道路の走行に応じた走行条件が耐久記憶媒体23に記憶され、一般道路の走行であれば、一般道路の走行に応じた走行条件が耐久記憶媒体23に記憶される。また、一般道路の走行から高速道路の走行となった場合には、一般道路の走行から高速道路の走行となった場合の走行条件が耐久記憶媒体23に記憶される。
【0049】
図5に、制御目標値制御処理28のフローチャートを示す。車両のイグニッションスイッチがオン状態になると、制御部24は、図3に示した処理を並行して図5に示す処理を周期的に実施する。
【0050】
まず、無線受信機16により外部情報が受信され、この外部情報に基づいて走行先に渋滞区間が存在するか否かを判定する(S200)。
【0051】
ここで、外部情報が受信されない場合、あるいは、外部情報が受信されても、走行先に渋滞区間が存在しないと判定された場合、S200の判定はNOとなり、S200の判定を繰り返し実施する。
【0052】
そして、無線受信機16により渋滞情報が受信され、この渋滞情報に基づいて走行先に渋滞区間が存在すると判定されると、S200の判定はYESとなり、次に、計画効果判定処理を実施する(S300)。
【0053】
図6に、この計画効果判定処理のフローチャートを示す。この計画効果判定処理では、まず、計画区間を設定する(S302)。具体的には、渋滞区間より手前の一部区間を計画区間として抽出する。本実施形態では、渋滞開始地点に連なる手前の特定地点から渋滞開始地点に至る一部区間を計画区間として抽出する。
【0054】
図7に、計画区間の抽出例を示す。この図の例では、区間9、10が渋滞区間となっており、この渋滞開始地点より手前の区間6〜9が計画区間として抽出されている。
【0055】
なお、本実施形態では、目的地に至る経路が探索されないため、走行先に分岐路がある場合、どちらの分岐路へ進行するのか分からない。このため、分岐先の各道路にそれぞれ渋滞区間が存在するような場合には、分岐先の各道路の各渋滞区間についてそれぞれ渋滞区間より手前の区間を抽出する。また、例えば、高速道路を走行中で、走行先に渋滞区間が存在し、その渋滞区間の先にも渋滞区間が存在するような場合にも、各渋滞区間についてそれぞれ渋滞区間より手前の区間を抽出する。
【0056】
次に、現在のバッテリ残量を特定する(S304)。本ナビゲーションECU20には、モータ3を駆動するバッテリ9の残量(バッテリ充電量)を示す信号が入力されるようになっており、このバッテリの残量を示す信号を用いて現在のバッテリ残量を特定する。
【0057】
次に、渋滞区間の消費エネルギーを推定する(S306)。具体的には、モータ3のみを使用して渋滞区間をEV走行する際にモータ3を駆動するバッテリ9で必要となる消費電力量を算出する。このようにモータ3のみを使用して渋滞区間をEV走行するのは、渋滞区間のようなエンジンの運転効率の低い区間はモータのみを使用して走行した方が低燃費走行を実現できるからである。ここで、エアコンやナビゲーション装置等の補機により消費される単位時間当たりのエネルギーをA(kW)、渋滞区間を通過するのに要する時間をB(秒)、渋滞区間を通過する際に補機により消費されるエネルギーをC、渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーをD(kW)とすると、渋滞区間をEV走行モードで走行する場合に必要とされるエネルギーEは、E=A×B+D=C+Dとして算出することができる。なお、渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーD(kW)は、渋滞区間内の走行パターンを規定した走行モデルを用いて求めることができる。
【0058】
例えば、平均車速が時速10キロメートル(秒速2.7メートル)の渋滞区間であれば、「時速0キロメートルから7秒で時速20キロメートル(km/h)まで加速し、15秒定常走行し、7秒で時速0キロメートル(km/h)まで減速し11秒間停止」という40秒間のモデルを用い、渋滞区間の区間長が10キロメートルであれば、D=40秒間の走行で消費されるエネルギー×10(km)÷2.7(m/s)÷40(s)として、渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを算出する。
【0059】
また、渋滞区間の区間長が5キロメートルであれば、D=40秒間の走行で消費されるエネルギー×5(km)÷2.7(m/s)÷40(s)として渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを算出する。なお、40秒間の走行で消費されるエネルギーは予め規定された車両固有の値であり、耐久記憶媒体23に記憶されている。本実施形態では、このようにVICS情報で受信する平均車速ごとに走行モデルをもち同じ要領で算出する。
【0060】
また、渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDは、渋滞区間の勾配によって異なってくる。そこで、本実施形態では、エネルギーDの算出精度を高めるため、渋滞情報により示される渋滞区間における勾配を特定し、この渋滞区間における勾配に基づいて渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを補正する。なお、渋滞区間における勾配は、地図データを参照して特定してもよく、また、自車の走行に伴って収集した値を用いて特定してもよい。本実施形態では、勾配に応じて規定した係数KをエネルギーDに乗算することにより補正を行う。上り勾配では、係数K>1、平坦区間では、係数K=1、下り勾配では、係数K<1としてエネルギーDを補正する。
【0061】
次に、渋滞区間でバッテリ残量が閾値以下になるか否かを判定する(S308)。具体的には、モータ3を使用して渋滞区間を走行する際にモータ3を駆動するバッテリ9で必要となる消費電力量を算出し、この消費電力量に基づいて、モータ3を使用して渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点でバッテリの充電量が予め定められた下限規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を算出する。本実施形態では、停車中でもエンジンを駆動させて発電を開始するように規定されている値をバッテリ充電量の下限規格値とする。
【0062】
ここで、必要バッテリ充電量がS304にて特定した現在のバッテリ残量以上の場合、少なくとも渋滞開始地点までにバッテリ9を充電しておく必要がある。本実施形態では、必要バッテリ充電量とS304にて特定した現在のバッテリ残量とを比較して渋滞区間でバッテリ残量が閾値以下になるか否かを判定する。
【0063】
ここで、渋滞区間でバッテリ残量が閾値以下になると判定された場合には、S308の判定はYESとなり、計画有効判定となり、また、渋滞区間でバッテリ残量が閾値よりも大きくなる場合には、S308の判定はNOとなり、計画無効判定となる。
【0064】
図5の説明に戻り、次に、計画立案処理を実施する(S400)。この計画立案処理のフローチャートを図8に示す。この計画立案処理は、S308にて計画有効と判定された場合に実施され、S308にて計画無効と判定された場合には実施されない。すなわち、S308にて計画無効と判定された場合には、図5に示す処理を終了する。
【0065】
この計画立案処理では、まず、渋滞区間前の道路で必要な発電量を確保するように制御目標値を算出する(S402)。具体的には、S306、S308と同様に、モータ3を使用して渋滞区間を走行する際にモータ3を駆動するバッテリ9で必要となる消費電力量を算出し、この消費電力量に基づいて、モータ3を使用して渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点でバッテリの充電量が予め定められた下限規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を算出する。
【0066】
次に、道路区間毎に制御目標値を設定する(S404)。具体的には、渋滞区間より手前の一部区間を計画区間として抽出し、この計画区間について、渋滞開始地点におけるバッテリ9の充電量が必要バッテリ充電量以上となるように、予め定められた区間毎に制御指標のスケジュールを規定する。ここで、抽出する区間は、渋滞開始地点におけるバッテリ9の充電量を必要バッテリ充電量以上とするのに十分な区間長とする必要がある。また、図3に示した走行条件記憶処理により耐久記憶媒体23に記憶された走行条件から直近の一定距離分(例えば、2000メートル)分の走行条件を読み出し、この走行条件を用いて計画区間についてSOC管理計画を作成する。SOC管理計画は、目的地までの目標SOC(制御目標値)の推移を予想したものである。なお、この目標SOCの推移の予想については周知(特開2001−183150号公報、「新エネルギー自動車の開発123〜124頁」CMC出版等参照)であるので、ここではその詳細についての説明は省略する。
【0067】
図9に、このような目標SOCの推移の予想の一例を示す。図に示すように、本実施形態では、計画区間における道路識別子に対応付けて目標SOCを規定したSOC管理計画が作成される。
【0068】
図10に、図7に示した計画区間について計画されたSOC管理計画の一例を示す。図に示されるように、計画区間について、発電効率およびアシスト効率を算出して回生充電、発電、アシストといった制御方法が道路区間毎に決定される。渋滞開始地点におけるバッテリ9の充電量が必要バッテリ充電量以上となり、渋滞開始地点における制御目標値(目標SOC)Xが確保されるように、その手前の計画区間6〜8でバッテリ9の充電が行われるように計画される。渋滞区間の直前の一部区間のみを計画区間としてSOC管理計画を作成するので、例えば、渋滞区間よりもずっと手前で必要以上にバッテリを充電してしまうようなこともなく、低燃費走行を実現することが可能である。
【0069】
図5の説明に戻り、次に、計画制御処理を実施する(S500)。この計画制御処理のフローチャートを図11に示す。この計画立案処理では、まず、走行位置に対応する制御目標値の読み出しを行う(S502)。具体的には、現在位置特定処理により特定された車両の現在位置と地図DB記憶部14に記憶された地図データに基づいて車両が位置する道路区間を特定し、この車両が位置する道路区間に対応する制御目標値を耐久記憶媒体23から読み出す。ただし、図示してないが、車両が位置する道路区間に対応する制御目標値が耐久記憶媒体23に記憶されていない場合は、S510へ進む。
【0070】
車両が位置する道路区間に対応する制御目標値が耐久記憶媒体23に記憶されている場合は、次に、車両の現在位置における制御目標値をHV制御部へ通知する(S504)。車両が計画区間内に位置する場合には、車両の現在位置における制御目標値をHV制御部へ通知し、車両が計画区間内に位置しない場合には、制御目標値の通知を中断する。この場合、HV制御部10は、バッテリ9の充電量がこの制御目標値に近づくように駆動制御を行う。
【0071】
S506では、制御目標値に近づくように現在SOCが推移しているか否かに基づいてバッテリ9の充電量が計画通りに推移しているか否かを判定する。
【0072】
ここで、制御目標値に近づくように現在SOCが推移している場合、S506の判定はYESとなり、次に、車両が渋滞終了地点に到達したか否かに基づいて車両が計画区間を通過したか否かを判定する(S510)。
【0073】
ここで、車両が渋滞終了地点に到達していない場合、S510の判定はNOとなり、S502へ戻る。
【0074】
また、制御目標値に近づくように現在SOCが推移していない場合、S506の判定はNOとなり、車両が目的地を基準とする所定範囲内に到達する前であっても、駆動制御を中止する(S508)。具体的には、制御目標値の通知を中止する。この場合、HV制御部10は、バッテリ9の充電量がこの制御目標値に近づくように駆動制御を行う。
【0075】
そして、車両が渋滞終了地点に到達すると、S510の判定はYESとなり、本処理を終了する。これにより、ナビゲーションECU20からHV制御部10へ制御目標値が入力されなくなり、車速、アクセル開度等に応じた駆動制御が自律的に行われるようになる。
【0076】
上記した構成によれば、無線情報に基づいて走行先に渋滞区間が存在することを判定した場合、モータを使用して渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点でモータを駆動するバッテリの充電量が予め定められた規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定し、渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、渋滞開始地点におけるバッテリの充電量が必要バッテリ充電量以上となるように制御指標のスケジュールが規定されるので、目的地に至る経路を特定するための操作を必要とすることなく、エネルギー消費量の低減を図ることができる。
【0077】
また、車両の位置より手前の一定区間で収集された走行条件と同一条件で走行するものとして、渋滞開始地点の手前の一部区間について制御指標のスケジュールが規定される。すなわち、実際の車両の走行状況に合うように制御指標のスケジュールを規定することができる。
【0078】
また、渋滞区間における勾配を特定し、この渋滞区間における勾配に基づいてモータを使用して渋滞区間を走行する際にモータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量が補正されるので、精度よく消費電力量を特定することができる。
【0079】
また、無線情報に基づいて走行先に複数の渋滞区間が存在することを判定した場合、各渋滞区間について渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定し、複数の渋滞区間についてそれぞれ渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、それぞれ制御指標のスケジュールが規定される。したがって、例えば、走行先で道路が分岐しており、分岐先の各道路にそれぞれ渋滞区間が存在するような場合、車両がどちらの分岐路へ進行しても制御指標のスケジュールに従った駆動制御を実現することができる。
【0080】
(第2実施形態)
上記第1実施形態では、渋滞区間内の走行パターンを規定した走行モデルを用いて渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを求めたが、本実施形態では、渋滞区間走行時における車軸トルク、車軸回転数、ブレーキ制動トルクを予め規定しておき、これらの情報を用いて渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを求める。
【0081】
ここで、エネルギーD=走行エネルギー+補機の消費電力−回生エネルギーとして算出することができる。ここで、走行エネルギー=Σ(車軸トルク[Nm]×車軸回転数[rpm]×2π/60/1000)、回生エネルギー=Σ(ブレーキ制動トルク[Nm]×車軸回転数[rpm]×−2π/60/1000)、補機の消費電力=Σ(補機の消費電力)である。なお、単位時間で取得可能な回生エネルギーには限界があるため、上記計算式における回生エネルギーが予め定められた上限値を超える場合は、回生エネルギーの最大値を回生エネルギーとする。
【0082】
(第3実施形態)
上記第1実施形態では、S306にて渋滞区間内の走行パターンを規定した走行モデルを用いて渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを求めたが、本実施形態では、車両の走行に伴って収集した走行履歴に基づいて渋滞区間の走行モデルを特定する渋滞区間消費電力特定処理を実施し、この走行モデルを用いて渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを求める。
【0083】
図12に、本実施形態に係る渋滞区間消費電力特定処理のフローチャートを示す。車両のイグニッションスイッチがオン状態になると、制御部24は、図に示す処理を実施する。
【0084】
まず、RAM21の記憶領域1に記憶されているデータを消去し(S602)、一定時間(例えば、0.5秒)毎に道路区間内で収集した走行履歴をRAM21の記憶領域1に記憶させる(S604)。本実施形態では、停車時間を間引くようにして走行履歴(車速、駆動力)を記憶する。走行履歴には、車速(km/h)、モータ3の駆動電力(W)、区間内の走行時間(秒)、区間内の停車時間(秒)、区間内の平均車速(km/h)、区間内の停車率(%)が含まれる。平均車速=Σ車速/走行時間として算出することができる。また、区間内の停車率=区間内の停車時間/区間内の走行時間として算出することができる。
【0085】
図14に、収集された走行履歴(車速、駆動力)の一例を示す。また、図15に、記憶領域1に記憶された走行履歴(車速、駆動力)の一例を示す。図15に示されるように、記憶領域1には、停車中(車速=0)における走行履歴を間引くようにして走行履歴が記憶される。停車時間については、走行履歴とは別に記憶領域1に記憶される。
【0086】
次に、一定距離走行したか否かを判定する(S606)。本実施形態では、車両の走行距離が2000メートル(m)に到達したか否かを判定する。
【0087】
ここで、車両の走行距離が2000メートル(m)に到達していない場合、S606の判定はNOとなり、S606の判定を繰り返し実施する。そして、車両の走行距離が2000メートル(m)に到達すると、S606の判定はYESとなり、次に、渋滞区間判定処理を実施する。
【0088】
図13に、この渋滞区間判定処理のフローチャートを示す。この渋滞区間判定処理では、まず、記憶した走行履歴を取得する(S702)。ここでは、記憶領域1に記憶した走行履歴を取得する。
【0089】
次に、「平均車速が時速Aキロメートル(km/h)よりも大きく、かつ、停車率がB%以下であるか否か」を渋滞条件として、この渋滞条件を満たすか否かに基づいて渋滞区間か否かを判定する(S704)。
【0090】
ここで、平均車速が時速Aキロメートル(km/h)よりも大きく、かつ、停車率がB%以下である場合、S704の判定はYESとなり、S702にて取得した走行履歴、すなわち記憶領域1に記憶された走行履歴を渋滞区間の走行履歴として記憶領域3に記憶させる(S706)。
【0091】
図16に、記憶領域3に記憶された走行履歴(車速、駆動力)の一例を示す。この記憶領域3には、渋滞条件を満たした場合の2000メートル分の最新の走行履歴が記憶される。
【0092】
図12の説明に戻り、次に、一定時間(例えば、0.5秒)毎に道路区間内で収集した走行履歴をRAM21の記憶領域2に記憶させる(S608)。
【0093】
次に、一定距離走行したか否かを判定する(S610)。本実施形態では、車両の走行距離が500メートルに到達したか否かを判定する。
【0094】
ここで、車両の走行距離が500メートル(m)に到達していない場合、S606の判定はNOとなり、S608へ戻る。
【0095】
図17に、記憶領域2に記憶された走行履歴(車速、駆動力)の一例を示す。この記憶領域2には、2000メートル以上走行した後に収集された500メートル走行分の走行履歴が記憶される。なお、この記憶領域2には、記憶領域1と同様に、停車時間が間引かれた走行履歴(車速、駆動力)が記憶され、停車時間は、走行履歴(車速、駆動力)とは別に記憶される。
【0096】
そして、車両の走行距離が500メートル(m)に到達すると、S610の判定はYESとなり、次に、再度、渋滞区間判定処理を実施する。
【0097】
この渋滞区間判定処理のS702においては、記憶領域2に記憶した走行履歴を取得する。したがって、S706では、記憶領域2に記憶した走行履歴を渋滞区間の走行履歴として記憶領域3に記憶させる(S706)。
【0098】
図12の説明に戻り、次に、記憶領域1の走行履歴を最古500メートル分破棄する(S612)。すなわち、記憶領域1に記憶されている走行履歴のうち最古500メートル分の走行履歴を消去する。
【0099】
次に、記憶領域2の走行履歴を記憶領域1に記憶させる(S614)。具体的には、記憶領域2に記憶した最新の500メートル分の走行履歴を記憶領域1に記憶させ、記憶領域1に記憶されている500〜2000メートル分の走行履歴を一体化する。
【0100】
次に、記憶領域2の走行履歴を破棄する(S616)。すなわち、記憶領域2に記憶されている走行履歴を消去する。
【0101】
次に、車両が走行を終了したか否かを判定する(S618)。本実施形態では、シフトレバーがパーキング(P)に位置しているか否かに基づいて車両が走行を終了したか否かを判定する。
【0102】
ここで、シフトレバーがパーキング(P)以外に位置する場合、S618の判定はNOとなり、S608へ戻る。したがって、500メートル走行する毎に、最新の2000メートル分の走行履歴が記憶領域1に記憶される。
【0103】
図18に、記憶領域1に記憶された走行履歴(車速、駆動力)の一例を示す。図に示されるように、最新の500メートル分の走行履歴が記憶領域1に記憶され、最古500メートル分の走行履歴が消去される。このように、500メートル走行する毎に、記憶領域1に記憶される20000メートル分の走行履歴が更新される。
【0104】
そして、シフトレバーがパーキング(P)に位置すると、S618の判定はYESとなり、本処理を終了する。
【0105】
上記渋滞区間消費電力特定処理により、記憶領域3に渋滞区間走行時における走行履歴(車速、駆動力)が記憶領域3に記憶される。この車両の走行に伴って収集した走行履歴に基づいて渋滞区間の走行モデルを特定し、当該渋滞区間の走行モデルを用いて渋滞区間をEV走行する際にモータ3を駆動するバッテリ9で必要となる消費電力量を算出する。制御部24は、車速から車軸回転数を特定するとともに、駆動力から車軸トルク、ブレーキ制動トルクを特定することにより、上記第2実施形態と同様に、渋滞区間をEV走行する際に必要となるエネルギーDを算出することができる。
【0106】
上記したように、自車が渋滞区間内を走行中であるか否かを判定した場合、当該渋滞区間内を走行中に収集した走行履歴を用いて渋滞区間を走行する際にモータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を算出することができる。
【0107】
(その他の実施形態)
上記第1〜第3実施形態では、車両駆動制御装置の搭載車両として、走行用の動力源としてエンジンおよびモータを用いるハイブリッド車両を例に示したが、例えば、家庭用電源等による充電に対応したプラグインハイブリッド車両、モータを駆動するバッテリを充電する内燃機関を備えた車両としてもよい。
【0108】
また、上記第1〜第3実施形態では、図5にて計画効果判定処理300を実施し、計画効果判定処理300により計画効果有効と判定された場合に、計画立案処理S300を実施したが、計画効果判定処理300を省略して、常時、計画立案処理S300を実施してもよい。
【0109】
また、上記第1実施形態では、S308にて、停車中でもエンジンを駆動させて発電を開始するように規定されている値をバッテリ充電量の下限規格値としたが、例えば、通常時に発電しない非効率な速度(加速度)領域でも発電を開始するように規定されている値をバッテリ充電量の下限規格値としてもよい。
【0110】
なお、上記実施形態における構成と特許請求の範囲の構成との対応関係について説明すると、無線受信機16が受信手段に相当し、S402が必要バッテリ充電量特定手段に相当し、S404がスケジュール規定手段に相当し、図3の走行条件記憶処理が走行条件記憶処理手段に相当し、S704が渋滞区間内走行判定手段に相当する。
【符号の説明】
【0111】
1 エンジン
2 発電機
3 モータ
4 差動装置
5a タイヤ
5b タイヤ
6 インバータ
7 DCリンク
8 インバータ
9 バッテリ
10 HV制御部
11 GPS受信機
12 方位センサ
13 車速センサ
14 地図DB記憶部
15 勾配センサ
16 無線受信機
20 ナビゲーションECU
21 RAM
22 ROM
23 耐久記憶媒体
24 制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行用の動力源として内燃機関とモータを使用する車両に搭載され、規定された制御指標のスケジュールに従って前記動力源の駆動制御を行うことが可能な車両駆動制御装置であって、
無線情報を受信する受信手段と、
前記受信手段を介して受信された前記無線情報に基づいて走行先に渋滞区間が存在することを判定した場合、前記モータを使用して前記渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点で前記モータを駆動するバッテリの充電量が予め定められた規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定する必要バッテリ充電量特定手段と、
前記渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、前記渋滞開始地点における前記バッテリの充電量が前記必要バッテリ充電量以上となるように前記制御指標のスケジュールを規定するスケジュール規定手段と、を備えたことを特徴とする車両駆動制御装置。
【請求項2】
前記制御指標のスケジュールを規定するための走行条件を収集して記憶手段に記憶させる処理を実施する走行条件記憶処理手段を備え、
前記スケジュール規定手段は、前記記憶手段から前記車両の位置より手前の一定区間で収集された走行条件を読み出し、当該走行条件と同一条件で走行するものとして、前記渋滞開始地点の手前の一部区間について前記制御指標のスケジュールを規定することを特徴とする請求項1に記載の車両駆動制御装置。
【請求項3】
前記渋滞情報に基づいて前記モータを使用して前記渋滞区間を走行する際に前記モータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を算出する消費電力量算出手段を備え、
前記必要バッテリ充電量特定手段は、前記消費電力量に基づいて、前記モータを使用して前記渋滞区間を走行する場合に前記渋滞終了地点で前記バッテリの充電量が予め定められた規格値以上となるように、前記渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両駆動制御装置。
【請求項4】
前記消費電力量算出手段は、渋滞区間内における走行パターンを規定した走行モデルを用いて前記モータを使用して前記渋滞区間を走行する際に前記モータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を算出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両駆動制御装置。
【請求項5】
前記消費電力量算出手段は、前記渋滞情報により示される渋滞区間における勾配を特定し、当該渋滞区間における勾配に基づいて前記モータを使用して前記渋滞区間を走行する際に前記モータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を補正することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両駆動制御装置。
【請求項6】
自車が渋滞区間内を走行中であるか否かを判定する渋滞区間内走行判定手段を備え、
前記消費電力量算出手段は、前記自車が渋滞区間内を走行中であると判定された場合に当該渋滞区間内を走行中に収集した走行履歴を用いて前記渋滞区間を走行する際に前記モータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を算出することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両駆動制御装置。
【請求項7】
前記必要バッテリ充電量特定手段は、前記受信手段を介して受信された前記無線情報に基づいて走行先に複数の前記渋滞区間が存在することを判定した場合、各渋滞区間について前記渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定し、
前記スケジュール規定手段は、前記複数の渋滞区間についてそれぞれ前記渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、それぞれ前記制御指標のスケジュールを規定することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車両駆動制御装置。
【請求項1】
走行用の動力源として内燃機関とモータを使用する車両に搭載され、規定された制御指標のスケジュールに従って前記動力源の駆動制御を行うことが可能な車両駆動制御装置であって、
無線情報を受信する受信手段と、
前記受信手段を介して受信された前記無線情報に基づいて走行先に渋滞区間が存在することを判定した場合、前記モータを使用して前記渋滞区間を走行する場合に渋滞終了地点で前記モータを駆動するバッテリの充電量が予め定められた規格値以上となるように、渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定する必要バッテリ充電量特定手段と、
前記渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、前記渋滞開始地点における前記バッテリの充電量が前記必要バッテリ充電量以上となるように前記制御指標のスケジュールを規定するスケジュール規定手段と、を備えたことを特徴とする車両駆動制御装置。
【請求項2】
前記制御指標のスケジュールを規定するための走行条件を収集して記憶手段に記憶させる処理を実施する走行条件記憶処理手段を備え、
前記スケジュール規定手段は、前記記憶手段から前記車両の位置より手前の一定区間で収集された走行条件を読み出し、当該走行条件と同一条件で走行するものとして、前記渋滞開始地点の手前の一部区間について前記制御指標のスケジュールを規定することを特徴とする請求項1に記載の車両駆動制御装置。
【請求項3】
前記渋滞情報に基づいて前記モータを使用して前記渋滞区間を走行する際に前記モータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を算出する消費電力量算出手段を備え、
前記必要バッテリ充電量特定手段は、前記消費電力量に基づいて、前記モータを使用して前記渋滞区間を走行する場合に前記渋滞終了地点で前記バッテリの充電量が予め定められた規格値以上となるように、前記渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定することを特徴とする請求項1または2に記載の車両駆動制御装置。
【請求項4】
前記消費電力量算出手段は、渋滞区間内における走行パターンを規定した走行モデルを用いて前記モータを使用して前記渋滞区間を走行する際に前記モータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を算出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両駆動制御装置。
【請求項5】
前記消費電力量算出手段は、前記渋滞情報により示される渋滞区間における勾配を特定し、当該渋滞区間における勾配に基づいて前記モータを使用して前記渋滞区間を走行する際に前記モータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を補正することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の車両駆動制御装置。
【請求項6】
自車が渋滞区間内を走行中であるか否かを判定する渋滞区間内走行判定手段を備え、
前記消費電力量算出手段は、前記自車が渋滞区間内を走行中であると判定された場合に当該渋滞区間内を走行中に収集した走行履歴を用いて前記渋滞区間を走行する際に前記モータを駆動するバッテリで必要となる消費電力量を算出することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両駆動制御装置。
【請求項7】
前記必要バッテリ充電量特定手段は、前記受信手段を介して受信された前記無線情報に基づいて走行先に複数の前記渋滞区間が存在することを判定した場合、各渋滞区間について前記渋滞開始地点で必要とされる必要バッテリ充電量を特定し、
前記スケジュール規定手段は、前記複数の渋滞区間についてそれぞれ前記渋滞開始地点の手前の一部区間を抽出し、当該渋滞開始地点の手前の一部区間について、それぞれ前記制御指標のスケジュールを規定することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の車両駆動制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−63186(P2011−63186A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217440(P2009−217440)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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