車載用ナビゲーション装置、路面標示識別プログラム及び路面標示識別方法
【課題】道路の走行環境が変わる中で、カメラで撮像された道路の路面の標示を的確に検出し、車両の進行方向の認識精度を向上する。
【解決手段】車載用ナビゲーション装置100は、車両に搭載されたカメラ6より撮像された車両の後方の映像の中で道路標示の認識に不要なライト照射部分の画像を検出し、検出された画像領域を避けた所定形状の画像領域を切り出し順次記憶部7bに記憶する。そして、新たに得られた切出画像と既に記憶部7bに記憶されている切出画像とを合成し、その合成画像から道路標示の画像を検出及び認識する。
【解決手段】車載用ナビゲーション装置100は、車両に搭載されたカメラ6より撮像された車両の後方の映像の中で道路標示の認識に不要なライト照射部分の画像を検出し、検出された画像領域を避けた所定形状の画像領域を切り出し順次記憶部7bに記憶する。そして、新たに得られた切出画像と既に記憶部7bに記憶されている切出画像とを合成し、その合成画像から道路標示の画像を検出及び認識する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の路面にペイントされた進行方向標示(直進標示、右折標示、左折標示、これらの組み合わせた標示等)から、現在の車両の進行方向を識別して車両を目的地まで案内する車載用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(全地球測位システム)などの位置検知装置と地図情報とを用いて、自車両の現在の道路上の位置を特定するとともに、ユーザによって指定された目的地までの道路経路の表示などの走行案内を行う車載用ナビゲーション装置が知られている。
【0003】
従来、車載用ナビゲーション装置において、路面上の方向指示標示の画像をカメラにより撮影し、撮影した画像から方向指示標示を認識することで、車両の走行レーンを特定する技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
これにより、路面上にペイントされた進行方向標示から、車両がルート通りの道路へ向かう走行レーンを走行しているか否かを判定し、利用者に適切な案内を行うことができる。
【特許文献1】特開2005−214883公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カメラでは、路面の進行方向標示だけでなく、周囲の情景(風景など)も撮影される。このような情景画像は、雨などの天候による路面状況の変動や昼夜の明るさの変動による画質の変化、特に夜間の後続車両のライトなどによる映像の白色化、また隣接走行する他の車両の影の影響やガードレールやポール等の路側部の不要な物体による隠蔽によって道路標示の認識に適さない画像となり、その結果、車両の進行方向の認識精度が低下することがある。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、道路の走行環境が変わる中で、カメラにより道路を含んで映された画像から路面標示を的確に認識し、車両の進行方向の認識精度を向上することができる車載用ナビゲーション装置、路面標示識別プログラム及び路面標示識別方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために本発明の車載用ナビゲーション装置は、撮影方向を車両の前方または後方に向けて車両に取り付けられ、前記車両の前方または後方の路面を少なくとも含む画像を撮像するカメラと、前記カメラにより撮影された画像が記憶された記憶部と、前記カメラにより撮影された画像に含まれる路面標示の認識に不要な領域を検出する第1画像処理部と、前記第1画像処理部により検出された前記画像の前記不要領域を前記記憶部に既に記憶されている旧画像またはその一部の画像領域により補完して合成画像を生成する第2画像処理部と、前記第2画像処理部により合成された合成画像と予め設定されている標示情報とを用いて前記路面にペイントされた路面標示の検出および認識を行う標示認識部とを具備することを特徴とする。
【0008】
本発明の車載用ナビゲーション装置は、撮影方向を車両後方に向けて車両の後部に取り付けられ、前記車両後方の路面を少なくとも含む映像を撮像するカメラと、画像を記憶可能な記憶部と、前記カメラにより撮影された映像を画面単位に所定時間間隔で前記記憶部に順次取り込む画面取込部と、前記記憶部に取り込まれた前記画面の画像に含まれる路面標示の認識に不要な領域を検出する不要領域検出部と、前記不要領域検出部により検出された不要領域を避けた所定形状の画像領域を切り出し、前記記憶部に記憶する画像切出部と、前記画像切出部により前記記憶部に記憶された新たな画像領域と前記記憶部に既に記憶されている一つ前の旧画像領域とを比較し移動量を算出する移動量算出部と、前記移動量算出部により算出された前記路面標示の移動量に従って新旧の画像領域を結合した合成画像を生成する画像合成部と、前記画像合成部により合成された合成画像と予め設定されている標示情報とを用いて前記路面標示の検出および認識を行う路面標示認識部とを具備することを特徴とする。
【0009】
本発明では、例えば他車両やその車両による影によって認識対象である路面標示が隠蔽された場合に、新たに切出した画像に、過去に記憶しておいた画像の中からマークが隠蔽される前の画像を合成し、その合成画像を用いてマークを検出及び認識するので、進行方向標示などの路面標示を的確に認識し、車両の進行方向の認識精度を向上することができる。
【0010】
また、カメラで撮影された情景画像から認識に適した状態の良い画像領域を切り出し、記憶しておいた画像と合成することで認識精度を向上することができる。また、単に切り出すのではなく、路面標示の認識の妨げとなるライトの照射領域などの不要な画像領域を除外し、またはその部分を除去した画像領域を過去の状態の良い画像で補完することで、路面標示の種別を的確に認識し、車両の進行方向の認識精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、道路の走行環境が変わる中で、カメラにより道路を含んで映された画像から路面標示を的確に認識し、車両の進行方向の認識精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態にかかる車載用ナビゲーション装置のハードウェア構成を示すブロック図、図2は図1の車載用ナビゲーション装置の機能構成図である。
【0013】
同図に示すように、この車載用ナビゲーション装置100は、GPS受信機1と、HD(Hard Disk )、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory )、DVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory )などのメディアから地図情報やそれに関連する情報を読み出すディスクドライブ2と、ユーザから出発地、目的地などの入力や各種操作のための入力を行う操作入力部3と、自車両の位置(自車位置)とその周辺の地図情報や自車両のナビゲーションのための情報表示を行うCRT(陰極線管)やLCD(液晶表示装置)などの表示装置4と、ナビゲーションに関する音声情報を出力するスピーカ5と、自車両の前方または後方の路面を撮影するカメラ6と、制御装置7とを備えて構成される。
【0014】
制御装置7は、CPU(Central Processing Unit)7aと、RAM(Random Access Memory)などの記憶部7bと、CPU7aによって実行されるプログラムや各種の設定データなどが書き換え不能(固定的)に格納されたROM(Random Only Memory)7cと、電気的に消去および書き換えが可能なEEPROM等のフラッシュメモリ7dとを備えて構成される。
【0015】
記憶部7bは、CPU7aの作業領域や映像を取り込んだときの画面データ(画像データ)やその画像から切り出した部分領域(画像領域)のデータなどの記憶領域として機能する。
【0016】
ROM7cには、標示情報として、道路標示の識別データが記憶されている。道路標示の識別データとは、標示画像とその名称を特定する情報とが対応付けられた情報である。標示画像の名称を特定する情報は、名称の場合もありIDや番号の場合もある。標示情報は、道路標示認識の際の比較データとして利用される。
【0017】
GPS受信機1は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)により自車両の現在位置を測位して、自車両の現在位置(自車位置)を検出し、その自車位置検出結果を制御装置7へ入力するものである。
【0018】
カメラ6は、撮影方向を車両後方に向けて車両の後部に取り付けられており、バックビューモニターなどとも言う。つまりカメラ6は、自車両の車体の後部(リア部分など)に装着されている。カメラ6は、自車両の後方の路面部分を撮影して、路面にペイントされた直進、左折、右折などの各種の道路標示やライン、撮影範囲内の情景などの映像を制御装置7に入力する映像入力手段である。すなわち、カメラ6は、車両後方の路面を少なくとも含む映像を撮像する。
【0019】
カメラ6は、具体的には、例えばCCD(Charge-Coupled Devices)などの撮像素子と、この撮像素子によって撮像された信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換して制御装置7に出力する信号処理回路とを有している。
【0020】
図2に示すように、この車載用ナビゲーション装置100は、第1画像処理部10、第2画像処理部20、路面標示認識部30、ナビゲーション部40などを備えている。第12画像処理部20は、画面取込部11、不要領域検出部12、画像切出部13などを有している。第2画像処理部20は、移動量算出部21、画像合成部22などを有している。
【0021】
画面取込部11は、カメラ6により撮影された映像を1画面毎の画像データとして画面単位に所定時間間隔で記憶部7bに順次取り込む。
【0022】
不要領域検出部12は、記憶部7bに取り込まれた画面の画像データに含まれる、路面にペイントされた道路標示(直進の矢印マークなど)の認識に不要な領域を検出する。
一例としては、カメラ6により撮影された画像の領域内の下地の輝度分布が一定の領域(必要領域)以外の領域(ライトが当たった路面部分)を不要領域として切り出す。
【0023】
画像切出部13は、不要領域検出部12により検出された不要領域を避けた所定形状の画像領域を切り出し記憶部7bに記憶する。
【0024】
また、画像切出部13は、移動量算出部21により算出された移動量に応じて、画像から切り出す画像領域の形状または配置を変更する切出画像変更部として機能する。
【0025】
画像切出部13は、合成画像に含まれる路面標識の検出状態、または認識状態に応じて画像から切り出す画像領域の位置を変更する。また画像切出部13は、時刻によって、画像から切り出す画像領域の位置または形状を変更する。「時刻によって」とは、昼の明るい時間帯(午前6時〜午後4時など)、夕方の薄暗い時間帯(午後4時〜午後7時など)、夜の暗い時間帯(午後7時〜午前6時など)などで画像の切出領域を変更することをいう。
【0026】
すなわち、第1画像処理部10は、カメラ6により撮影された画像の領域内の下地部分である、輝度分布が一定の、標示認識に必要な領域(必要領域)を検出し、その必要領域以外の領域を不要領域(ライトが当たった路面部分)として切り出し、その不要領域部分を記憶部7bに記憶しておいた他の画像やその一部の領域によって補完する。
また、他の方法として、第1画像処理部10は、カメラ6により撮影された映像を画面単位に所定時間間隔(例えば0.1秒間隔など)で画像として順次取り込み、取り込んだその画像から、変化が所定値以下の画像領域(動きのないライトや影の部分)を除くような所定形状の画像領域(路面の下地部分)を切り出し、記憶部7bに記憶する。
【0027】
移動量算出部21は、記憶部7bに記憶された新たな画像領域224b(図10参照)と記憶部7bに既に記憶されている一つ前の旧画像領域224a(図9参照)とを比較し道路標示222a,222bの移動量を算出する。この実施例では、一つ前の旧画像領域としたが、サンプリングする期間が短い場合は2つ前または3つの前などの画像でもよい。
【0028】
画像合成部22は、移動量算出部21により算出された道路標示222a,222bの移動量に従って新旧の画像領域224a,224bを結合した合成画像225(図11参照)を生成する。
【0029】
すなわち、第2画像処理部20は、記憶部7bに取り込まれた画像の、画像切出部13により切り出された不要領域部分を記憶部7bに既に記憶されている旧画像またはその一部の画像領域により補完して合成画像を生成し記憶部7bに記憶する。
また、他の方法として、第2画像処理部20は、記憶部7bに記憶された新たな画像領域224bと記憶部7bに既に記憶されている一つ前の旧画像領域224aとを用いて算出した移動量に従って新旧の画像領域224a,224bを結合した合成画像225を生成し記憶部7bに記憶する。
【0030】
路面標示認識部30は、第2画像処理部20により生成され記憶部7bに記憶された合成画像225と予めディスクドライブ2などに設定(記憶)されている標示情報とを用いて道路標示の検出と道路標示の認識を行う。
【0031】
ナビゲーション部40は、路面標示認識部30により認識された道路標示の認識結果に従って、認識時点の車両の進行方向を判定(特定)し、表示装置4とスピーカ5にてナビゲーション、つまり案内を行う。
【0032】
また、ナビゲーション部40は、GPS受信機1(図1参照)にて受信した自車位置の座標情報とディスクドライブ2の記録メディア(ハードディスク(HD)、CD−ROM、DVD−ROM等)に収録されている地図情報とを基に、自車位置が特定地点に接近したことを示す接近情報を出力する。
【0033】
ナビゲーション部40は、自車位置の座標と地図情報の中の特定地点の座標との距離を計算し、この距離が予め決められた閾値以下ならば、その特定地点への「接近」を判断して出力する。ここで、接近しているか否かを示す変数の初期状態を”0”として特定地点に接近していないことを示すものとする。
【0034】
すなわち、ナビゲーション部40にて計算された上記の距離が閾値より大きい場合は変数に”0”が格納され、上記の距離が閾値以下であった場合は変数に”1”が格納される。この変数はCPU7aに与えられ、CPU7aは、変数に”1”が格納されていれば、カメラ6を起動させるように制御を行う。
【0035】
なお、特定地点の座標の情報は予めディスクドライブ2(図1参照)などに構築されたデータベースに格納されている。ナビゲーション部40は、自車位置の座標をキーにデータベースから最も近い特定地点の座標を検索して、自車位置の座標との距離の計算を行う。
【0036】
また、接近情報を示す変数の値は、2種類の値を表現できれば”0”,”1”以外の値を用いてよい。さらに、特定地点に近付くときと遠ざかるときとで判別用の距離の閾値を変更するなど、状況に応じて閾値を変更するようにしてもよい。故に、特定地点に接近したとみなす領域は閾値を一定とした場合には円となるが、その他の形をとることも可能である。
【0037】
以下、図3乃至図12を参照してこの車載用ナビゲーション装置100の動作を説明する。この車載用ナビゲーション装置100場合、車両が走行中に、操作入力部3からの操作で、目的地が設定されると、制御装置7は、ナビゲーション動作を開始する。なお、例えばナビゲーション部40によって特定地点への接近が判定されることで制御装置7からカメラ6へ制御指令が出力されることでカメラ6が撮影を開始してもよい。
【0038】
カメラ6に電源が供給されて、制御指令によりカメラ6が起動すると、カメラ6は、映像の撮影(撮像)を開始する。
【0039】
この例では、例えば一車線の高速道路を走行中の車両のリア部分に車両後方の路面を撮影するような角度でカメラ6が取り付けられているため、図3に示すように、撮影された画面の画像201としては、遠近法で描かれたような道路の両サイドの車線211が映し出され、タイミングによっては、道路の中央部に直進を示す進行方向の矢印の標示212(マーク)が映し出される。
【0040】
カメラ6が動作を開始し、その映像が第1画像処理部10に入力されると、画面取込部11は、入力された映像を毎秒30画面(30画面/秒)という速さで記憶部7bに取り込む(図3のステップS101)。なお、この取り込み速度は、一例であり、車両の走行速度に応じて毎秒10画面(10画面/秒)や5画面(5画面/秒)程度であっても良い。
【0041】
第1画像処理部10は、カメラ6から得られた画像に種々の処理を施して路面標示の認識に適した画像に変換する。
【0042】
この場合、入力画像がカラーである場合を想定する。第1画像処理部10は、まず、記憶部7bに記憶されたカラー画像に対し、グレー画像への変換を行う。第1画像処理部10 は、例えば、記憶部7bから読み出したカラー画像をYUV表色系に変換し、その中のY(輝度)成分を取り出すことによってグレー画像を得る。
【0043】
次に、第1画像処理部10は、変換したグレー画像に対し透視変換を行う。透視変換とは、車両から見た後方の投影画像を、路面真上から見下ろした画像へ変換する処理である。
【0044】
続いて、第1画像処理部10は、透視変換後のグレー画像に対して二値化を行う。これは、個々の画素の値を決められた閾値を基準に二種類の値に表現し直す処理である。
【0045】
例えば、黒画素を”1”、白画素を”0”とする。ここまでの処理によって、図4の投影画像は、図5に示すように、路面の真上から見下ろしたように白黒の路面二値画像202に変換される。路面二値画像202では、車線221が並行になり、矢印の標示222も真下に向いた形になる。変換された路面二値画像202は、記憶部7bに記憶される。
【0046】
なお、これらの処理及びその手法は一例であり、認識に適した情報を得るという主旨を逸脱しない限りにおいてその他の処理及び手法を用いてよい。また、入力画像の種類(カラー、グレースケールなど)及び次に実施する認識処理の内容に合わせ、実施する処理を組み合わせて変更、または一部を削除してもよい。
【0047】
この例では、画像の二値化処理を路面画像取得後、初めの段階で行ったが、これ以外に、例えば画像合成後(図3のS105の後)、路面標示認識前(図3のS106の前)に行ってもよい。また、画像の二値化処理は、必須ではなく行わなくても良い。
【0048】
車両が道路を走行中、カメラにより撮影される情景画像は、同じ地点のものであっても、時刻や天候などのさまざまな条件によって変化する。
【0049】
例えば車両が夜間、道路を走行中に、カメラから得られ、透視変換した路面二値画像202は、図6に示すように、後続車両のヘッドライトの影響により、画像223の部分が、他の部分よりも輝度値が高くなってしまう。
【0050】
この例では、標示222の一部が輝度値の高い画像223にかかってしまい、重畳部分Sがどのような形状か判別できない。
【0051】
そこで、この車載用ナビゲーション装置では、不要領域検出部12が、路面二値画像202より標示222を認識するのに不要な部分(不要領域)を検出することで(S102)、輝度値の高い重畳部分Sを検出し、他の画像によって補完する。この検出および補完の方法として、画像の下地部分をまず検出してそれ以外の領域を不要領域として切り出す第1の方法と、順次取り込んだいくつかの画像から時系列での画像の変化が一定の箇所を不要領域として切り出す第2の方法の2つの方法がある。
例えば第1の方法の場合、不要領域検出部12は、路面二値画像202の領域のうち、下地の輝度の分布が一定の残す必要がある領域(必要領域)を検出する。その必要領域以外の領域、つまり輝度の分布の変化が激しい領域を不要領域(いわゆる削除領域)として検出する。
その後、取り込んだ画像の、不要領域部分を記憶部7bに既に記憶されている旧画像またはその一部の画像領域により補完して合成画像を生成する。
【0052】
上記不要領域検出処理は、撮影された路面画像毎に行うことが可能であり、最初の路面画像から判定した必要領域をそのまま固定して用いても良い。
【0053】
また、第2の方法では、時系列での画像の変化が一定の箇所を不要領域として検出する。
【0054】
この際、不要領域検出部12は、図8に示すように、新たに得られた路面二値画像202bと記憶部7bに既に記憶されている旧路面二値画像202aとを比較して、位置の変化が所定値以下の画像領域を除くような所定形状(長方形など)の画像領域224を切り出す。
【0055】
例えば自車が一定の速度で走行中は、後続車両もほぼ同じ速度で追従していることから、後続車両のヘッドライトの影響が生じて輝度値が高くなっている両者の画像223a,画像223bの部分は、位置の変化がほとんどない一方で、矢印の標示222a,222bの部分の位置の変化が激しい。
【0056】
これにより、不要領域検出部12によって、輝度分布が一定の下地部分に比べて輝度の変化が激しい画像223a,223b(路面のライト照射部分)、または位置の変化が少ない画像223a,画像223bの部分が不要部分として検出される。
【0057】
画像切出部13は、不要領域検出部12により検出された不要領域223a,画像223bの部分を避けた所定形状の画像領域224を路面二値画像202a,202bから順に切り出し(S103)、記憶部7bに記憶する。
【0058】
この段階では、標示222が含まれているか否かは判断できないため、道幅方向に長い長方形の形状の画像領域224を切り出すものとする。
【0059】
画像領域を切り出し記憶した後、続いて、第2画像処理部20の移動量算出部21は、新旧それぞれの画像領域224a,224b(以下「切出画像」と称す)を記憶部7bから読み出す。図9の画像が一つ前の切出画像224aであり、図10の画像が今回新たに得られた新たな切出画像224bである。
【0060】
移動量算出部21により読み出された2つの切出画像224a,224bは、車両に取り付けられたカメラ6から後方を映した画像であるため、路面標示等は、画面(画像)の下から上に移動してゆく。つまり、図9における画像224a内の標示222aは、図10における画像224b内の標示222bのように上に移動する。図9における画像224a内の車線221aも、図10における画像224bでは矢印マークの標示222bの画像が上に移動しているが、図9の車線の標示221aと図10の車線の標示221bは、平行線であるため、変化が分からない。
【0061】
これら複数の切出画像224aおよび切出画像224bは、2枚だけに限らず、記憶部7bの記憶容量が許す限り、記憶部7bに多数保持することも可能である。
【0062】
移動量算出部21は、記憶部7bから読み出した2つの切出画像224a,224bを基に移動量を算出する(S104)。
【0063】
2枚の切出画像224a,224b間で移動量を算出する方法としては、一般に良く知られている相互相関係数を利用する。この他にも移動量を算出する方法は種々あり、他の方法を用いても良い。
【0064】
画像合成部22は、2つの切出画像224a,224bを、図11に示すように、移動量算出部21で算出された移動量Sの分ずらした上で、互いの画像を合成し(S105)、図12に示すような合成画像203を生成し記憶部7bに記憶する。この合成画像203では、後続車両からのヘッドライトの影響が出ている部分をなくし路面標示(車線の標示231,直進標示232)のみを存在させた画像が得られる。
【0065】
この画像合成部22の処理では、2つの切出画像224a,224bが移動した距離(画素数)の分、切出画像224a,224bをずらして重ね合わせる。双方の画像が重なった領域225は、互いの画素の平均を取っても良い。
【0066】
以上の処理を、カメラ6で撮影された車両後方の道路の情景映像を連続して取り込むことにより、後続車両のヘッドライトなどの影響を受けない画像が得られ、路面標示の認識処理に適した画像を生成することができる。
【0067】
なお、上記説明では2枚の切出画像224a,224bによって画像を合成したが、逐次処理を行う場合は前の合成画像を保持し、その合成画像と新たな部分画像によって移動量を算出して、合成することも可能である。
【0068】
また、合成画像203は、次々と新たに発生する切出画像によって旧切出画像が合成されてゆくが、合成処理のために適切な画像サイズで切り出しておくことにより記憶部7b(画像バッファ)の使用領域の削減を図ることもできる。
【0069】
移動量算出部21で算出される移動量は、カメラ6が搭載されている自車両の走行速度に比例して増加する。走行速度がより高速になると、連続した部分画像間における重なりの部分がなくなり、画像合成することが不可能になる恐れがある。
【0070】
そこで、移動量算出部21で算出された移動量に応じて、最適な切出画像の形状を算出することで、画像どうしの重なりを維持する。
【0071】
つまり、車両の速度が高速の場合は、切出画像の垂直方向の長さを長くし、逆に車両の速度が低速の場合は切出画像の垂直方向の長さを短くする。
【0072】
さらに、例えば図7に示した後続車両のヘッドライトによる高輝度な画像領域223aが後続車両の急な接近のため、より手前側に広がった場合、画像領域223aが切出画像224a内に入り込んでしまい、結果として画像認識処理に適さない合成画像が生成される恐れがある。
【0073】
このような場合、以下の方法により、切出画像224aの位置を変更しても良い。つまり、生成された合成画像203を一定サイズのブロックに分割し、分割したブロック内における平均輝度を求める。その平均輝度の分布を調べ、局所的に輝度値が高いブロックがあれば、合成画像に高輝度な領域が含まれているもと判定し、切出画像224aの設定位置を自車両に近い側に変更する。この結果、生成される合成画像は、画像認識処理に適したものになる。
【0074】
なお、移動量算出部21にて算出された移動量がほぼゼロ、つまり新旧の切出画像に差がない場合、画像合成部22は、合成処理を行わないようにしてもよい。
【0075】
合成画像203が記憶部7bに記憶されると、路面標示認識部30は、第2画像処理部20により生成及び記憶された合成画像203に対して路面標示の認識のために必要な情報の抽出を行い、この抽出情報を基に路面標示の認識を行う(S106)。
【0076】
ここで、路面標示認識部30による路面標示の認識処理の具体例について説明する。路面標示認識部30は、まず、記憶部7bより合成画像203を取得する。次に路面標示認識部30は、取得した合成画像203に対してハフ変換を行うことで画像中の直線を抽出し、その直線の座標などのパラメータを得る。以後、この直線のパラメータを得るまでの処理を「直線の検出」と呼ぶ。
【0077】
路面標示認識部30は、路面標示に対して予め決められた条件と直線のパラメータを基に上記の車線の標示231、直進標示(矢印マークの標示)231などの路面標示を認識する。
【0078】
路面標示に対して予め決められた条件とは、例えば、図5に示した車線221の場合には「直線が縦方向に、端から端まで伸びた部分」、進行方向標示(矢印マーク)の場合は、「縦長の長方形の下の部分に三角を付加した形状をなすもの」などとして設定される。
【0079】
画像中の直線などが抽出されると、路面標示認識部30は、その抽出情報を用いて合成画像203の左右の車線の標示231の間にペイントされている直進標示(矢印マークの標示)232の認識を行う。
【0080】
直進標示(矢印マーク)232などの路面標示の認識は、以下のようにして行われる。
【0081】
すなわち、路面標示認識部30は、まず、合成画像203中に含まれる直進標示(矢印マーク)232の範囲を特定する処理を行う。この処理は、射影を用いるなどして実施する。
【0082】
直進標示(矢印マーク)232は、2本の車線の標示231間に存在する。そこで、縦軸方向と横軸方向の射影をとれば、それぞれの軸方向の射影値の分布に直進標示(矢印マーク)232と車線の標示231それぞれの特徴が現れるので、これを基に画像中の直進標示(矢印マーク)232の範囲を特定する。
【0083】
ここで、図13,14を参照して、路面標示認識部30が、射影により、合成画像203に含まれる直進標示(矢印マーク)232の範囲を特定する処理(射影処理)について説明する。図13は射影処理の一例を示す図、図14はその射影処理の結果に基づく標示の範囲の特定方法を示す図である。なお、射影処理の前に、標示の部分を黒画素としてカウントするために、第1画像処理部10にて路面二値画像202(図5参照)に対して白と黒との反転処理を施しておくこととする。
【0084】
図13に示すように、路面標示認識部30は、まず、横軸上の位置ごとに黒画素数をカウントし、この黒画素数のカウント値が予め決められた閾値Aを超える部分を検出する。なお、この射影処理の前に、標示の部分を黒画素としてカウントするために、路面二値画像に対して白と黒との反転処理を施すこととする。
【0085】
路面標示認識部30は、このようにして検出された部分を車線の標示231に相当する部分と見なし、このような車線の標示231に相当する部分が二箇所に検出されたならば、各々の車線の標示231の部分に挟まれた範囲を横軸上の路面標示の探索範囲として絞り込む。
【0086】
次に、路面標示認識部30は、絞り込んだ路面標示の探索範囲について、閾値Aよりも小さい値として予め決めておいた閾値Bを超える部分を検出し、この部分を矢印マークの標示232が存在する横軸上の範囲と判定する。
【0087】
次に、路面標示認識部30は、縦軸方向についても同様に縦軸上の位置ごとの黒画素数の値をカウントし、この黒画素数のカウント値が予め決められた閾値Cを超える部分を検出する。
【0088】
路面標示認識部30は、このようにして検出された部分を、矢印マークの標示232が存在する縦軸上の範囲として判定する。そして、路面標示認識部30は、判定した路面標示の横軸上の存在範囲と縦軸上の存在範囲とを合せて、図14に示すように、矢印マークの標示232の範囲230として特定する。
【0089】
次に、路面標示認識部30は、特定した矢印マークの標示232の範囲230に対して路面標示認識処理を行う。この路面標示認識処理には、基準となる矢印などの標示の二値画像とその名前を示すラベルとのセット(組)を複数収めた標示情報データベース(以下「標示情報」と称す)が用いられる。ラベルは路面標示の一般名称、あるいは特定の規則に基づいて各路面標示に割り振られたコード、番号などである。路面標示認識部30は、特定した矢印マークの標示232の範囲230の二値画像を、ROM7cの標示情報に格納されている基準となる路面標示の二値画像のサイズに合せて拡大または縮小した後、標示情報の各路面標示の二値画像と照合し、位置が重なるドットの値が一致した数を算出し、その結果を「類似度」とする。そして、路面標示認識部30は、算出された類似度が最大となった、標示情報内の路面標示の二値画像のラベルを認識結果として出力する。
【0090】
なお、上記の方法によらず、特定した矢印マークの標示232の範囲230の画像から、路面標示の濃度・方向成分といった数値を求めて数次元のベクトルデータを生成し、標示情報に格納された基準の路面標示毎のベクトルデータとの内積を「類似度」として算出し、最大の類似度となった標示情報内の画像のラベルを認識結果として出力するようにしてもよい。
【0091】
ナビゲーション部40は、路面標示認識部30により認識されたラベルによって、路面にペイントされている路面標示(進行方向標示)を直進標示(矢印マーク)232と認識し、GPS受信機1により自車両の現在位置を測位した結果と合わせて、ナビゲーション中の経路(ルート)を車両が正常に進んでいるか否かの案内を行う(S107)。
【0092】
このようにこの第1実施形態の車載用ナビゲーション装置によれば、カメラ6で撮影された情景画像から、認識に不要な部分を除外した画像領域(認識に適した状態の良い画像領域)を切り出し、記憶部7bに記憶していた一つ前の切出画像と合成することで、路面標示を的確に検出及び認識し、車両の進行方向の認識精度を向上することができる。
【0093】
また、映像から画像の一部領域を固定的に切り出すだけでなく、道路標示の認識の妨げとなる例えば後続車両のヘッドライトで白くなった路面の画像を除外するような形状で画像の一部領域を切り出し、過去の切出画像と合成することで、路面標示の認識に適した画像を生成し、車両の進行方向の認識精度を向上することができる。
【0094】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、上記第1実施形態の変形例であり、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
【0095】
この第2実施形態の車載用ナビゲーション装置のハードウェア構成は、図1に示したものと同様であり、図2に示した機能構成に一部の機能を追加したものである。
【0096】
すなわち、この車載用ナビゲーション装置は、図15に示すように、第2画像処理部20に不要画像除去部23を備える。この他、この第2実施形態では、図2に示されている第1画像処理部10、路面標示認識部30、ナビゲーション部40、記憶部7a、ROM7c、ディスクドライブ2なども備えられている。
【0097】
不要画像除去部23は、記憶部7bに記憶された新たな画像領域と記憶部7bに既に記憶されている旧画像領域(保持画像)とを比較して認識不要な物体の画像を検出する不要領域検出部として機能する。
【0098】
不要画像除去部23は、検出された不要な物体の画像領域に、記憶部7bの不要な物体が含まれていない旧画像領域(保持画像)から抽出した画像領域を合成する。
【0099】
不要画像除去部23は、認識不要な物体の画像部分を合成画像から消去する消去部として機能する。
【0100】
すなわち、不要画像除去部23は、移動量算出部21の処理結果を利用して、路面平面より高さがある、例えば路肩(路側)のポールやガードレールなどを検出する。
【0101】
図16はカメラにより撮影された道路を示している。画像401は、車両の搭載されたバックビューモニターの画像であり、この画像401には、2本の車線411と直進を意味する路面標示412および路肩のポール413が含まれている。
【0102】
図17は画像切出部13の前処理として図16の画像401に対して透視変換処理を行った画像402を示している。
【0103】
路面平面上に存在する車線の標示421や路面標示422に対して、路面平面より高さがある路肩のポール423の画像は、透視変換処理によって斜めになる。
【0104】
図18および図19は、連続して取り込んだ道路の情景画像を、画像切出を行う前の処理で透視変換処理を行った画像を示している。
【0105】
図18および図19に示す画像は、第1の実施形態と同様に、車両に取り付けられたカメラ6からの画像であるため、画像に含まれる路面標示等は、下から上に移動していく。
【0106】
図18における画像402aの路面標示422aは、図19における画像402b内の路面標示422bのように上に移動するが、移動量が少ないためその形状はほぼ変化しない。しかし、図18における路肩のポール423aは、路面平面より高さがある物体のため、所定時間経過後の図19の画像402bにおいては、路肩のポール423bは位置が移動し、かつ見え方、つまり形状が変化する。
【0107】
これは、画像切出部13の前処理である透視変換処理の影響であり、遠くに行くほど変形量が大きくなる。
【0108】
このような透視変換の前処理が行われた後、画像切出部13によって、図18および図19の画像402a,402bに対してそれぞれ切り出し処理が行われて、図18の部分画像424a、図19の部分画像424bが切り出されて記憶部7bに記憶された後、移動量算出部21により、記憶部7bに記憶された新旧の切出画像から移動量の算出が行われる。
【0109】
不要画像除去部23は、移動量算出部21により算出された移動量に従って2枚の画像間の画像の一致度を算出する。一致度は、部分画像をブロックに分割して、算出された移動量分をずらし、各ブロックにおいて相互相関係数を算出することで求める。
【0110】
この例の場合、図18の路面標示422aと、図19の路面標示422bとは、一致度が高くなる。
【0111】
一方、図18における路肩のポール423aと図19のおける路肩のポール423bは、前述の透視変換処理の影響により同じオブジェクトでありながら形状が変形しているため、一致度は高くならない。この結果、不要画像除去部23は、一致度が高くないブロックには路面平面より高い位置にある不要物体が存在するものと判定する。
【0112】
路面標示を認識する上で、路面平面以外の物体はノイズに他ならない。このため、その物体の存在する画像領域を後段の画像認識処理に通知することで、誤認識の防止や処理時間の短縮を図ることができる。
【0113】
なお、カメラで車両の後方を撮影する場合については、カメラで撮影された路面画像から「高さのある障害物」を認識するだけであるが、例えばカメラを車両のフロント部分に搭載して車両の前方を撮影しているときに、高さのある障害物を認識した場合、ナビゲーションにて表示中の路面標示の他に、アラーム等で運転者に注意を促すことも可能である。
【0114】
さらに、上述したような路肩に存在するポールの場合、画像合成部22にてその部分の画像領域を合成しないようにすることで、誤認識の防止や処理時間の短縮に加え、画像データの記憶量を削減することができる。
【0115】
以上、第2実施形態では、路肩のポールを例に説明したが、不要画像除去部23は、路肩のポールのみに対応するものではなく、例えば隣に走行する車両や同じ車線にいる後続車両なども路面平面より高さを持った、路面標示の認識に不要な物体であるため、同様に処理することが可能である。
【0116】
以下、図20〜図23を参照して第2実施形態の応用例について説明する。この応用例は、路面にできた影によって路面標示が隠されてしまった場合の例である。図20は画像切出部13の前処理である透視変換処理を行った後の画像502を示している。
【0117】
図20に示す画像502には、車線の標示521および路面標示522と共に、隣接車線の車両による影523が含まれている。この影523は、路面標示522の一部を隠蔽している。このような影523を含む画像に対して路面標示の認識処理を行った場合、正しい認識結果を得ることは難しい。
【0118】
図21および図22は、連続した情景画像を画像切出部13の前処理により透視変換処理を行った画像502a,502bを示している。
【0119】
これらの画像502a,502bは、第1の実施形態と同様に、車両に取り付けられたカメラ6からの画像であるため、画像内にある路面標示は下から上に移動していく。
【0120】
図21における画像502aに含まれる路面標示522aは、図22における画像502b内の路面標示522bのように上に移動する。図21、図22のいずれの画像502a,502bの場合においても路面標示522a、522bは、隣接車両の影523a,523bによって路面標示522a,522bの一部が隠蔽されている。
【0121】
従って、図21における切出画像524aおよび図22における切出画像524bをそのまま利用して画像を合成しても影の部分が残ってしまい、路面標示の認識に適した画像を生成することは難しい。この場合、切り出した部分の画像(切出画像)を組み合わせて画像を生成する、またはカメラ6から取り込んだ各画面の画像全体を記憶部7bに数枚分保持しておき、その中から状態が良い画像を利用することで、図23に示すような画像503における路面標示532のように影の無い合成画像を生成することができる。
【0122】
つまり、図21における画像502aの路面標示522aでは、矢印の棒の部分に影523aの一部がかかっているが、図22における画像502bの路面標示522bでは、矢印の棒の部分には影523bがかかっていない。
【0123】
したがって、それぞれの画像から影がかかっていない部分領域を画像合成部22が選定してその部分領域を切り出し合成する。この際、影の有無の判別には、例えば画像全体をブロック領域分割し、輝度の分布を計測し、周囲より暗いブロックを検出し、その部分を影と判定する。
【0124】
このようにこの第2実施形態の車載用ナビゲーション装置によれば、上記第1実施形態の効果の他、不要領域除去部23を設けたことで、路面標示の認識に妨げとなる、例えば路肩のポールや自車に隣接して走行する他の車両の影などの不要な画像領域を除去し、また除去した不要画像領域を過去の状態の良い画像で補完することで、路面標示を的確に検出及び認識できるようになり、車両の進行方向の認識精度を向上することができる。
【0125】
すなわち、透視変換処理と局所的な画像間の一致度を計測することで路面平面より高い、路面標示の認識に不要な物体(路肩のポールなど)の検出が可能となり、画像からその物体を消去し、またその部分を保持していた他の画像で補完することができる。
【0126】
さらに、路面標示が影などで隠されていた場合、記憶部7bに予め保持しておいた数枚の画面の画像の中から、路面標示が隠されていない画像またはその一部の部分画像を選出し隠蔽画像に合成することで、路面標示が隠されていないクリアな画像を生成することができる。これらの結果、後段で行われる車両の進行方向の認識精度を向上することができる。
【0127】
本発明は、上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々更新を加え得ることは勿論である。
【0128】
上記実施形態では、車両の後方を撮影した画像について処理を行う例について説明したが、車両の前方を撮影した画像であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本実施形態の車載用ナビゲーション装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】図1の車載用ナビゲーション装置の機能ブロック図である。
【図3】車載用ナビゲーション装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】カメラからの車両後方の映像を取り込んだ画像の一例を示す図である。
【図5】図4の画像を透視処理した画像の一例を示す図である。
【図6】ヘッドライトの影響を受けて路面標示の一部が識別不能になっている様子を示す図である。
【図7】一つの前の画像から部分画像を切り出す様子を示す図である。
【図8】図7の画像の後に取り込んだ新たな画像から部分画像を切り出す様子を示す図である。
【図9】図7の一つ前の画像から切り出された切出画像を示す図である。
【図10】図8の画像から切り出された新たな切出画像を示す図である。
【図11】2つの切出画像を合成する様子を示す図である。
【図12】生成された合成画像を示す図である。
【図13】路面上の矢印などの道路標示の範囲を特定するための射影処理の例を示す図である。
【図14】図13の射影処理の結果に基づく標示の範囲の特定方法を示す図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る車載用カーナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図16】カメラにより撮影された道路の画像を示す図である。
【図17】図16の画像に対して透視変換処理を行った画像を示す図である。
【図18】あるタイミングで撮影された路肩にポールが存在する道路の情景画像に対して透視変換処理を行った画像を示す図である。
【図19】図18の画像に続いて撮影され、透視変換処理を行った画像を示す図である。
【図20】影の影響で路面標示が隠されている様子を示す図である。
【図21】あるタイミングで撮影された影を含む道路の情景画像に対して透視変換処理を行った画像を示す図である。
【図22】図21の画像に続いて撮影され、透視変換処理を行った画像を示す図である。
【図23】影のある画像領域に既に記憶されている他の画像領域を合成し影を除去した画像を示す図である。
【符号の説明】
【0130】
1…GPS受信機、2…ディスクドライブ、3…操作入力部、4…表示装置、5…スピーカ、6…カメラ、7…制御装置、7a…CPU、7b…記憶部、7c…ROM、7d…フラッシュメモリ、10…第1画像処理部、11…画面取込部、12…不要領域検出部、13…画像切出部、20…第2画像処理部、21…移動量算出部、22…画像合成部、23…不要画像除去部、30…路面標示認識部、40…ナビゲーション部、100…車載用ナビゲーション装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の路面にペイントされた進行方向標示(直進標示、右折標示、左折標示、これらの組み合わせた標示等)から、現在の車両の進行方向を識別して車両を目的地まで案内する車載用ナビゲーション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS(全地球測位システム)などの位置検知装置と地図情報とを用いて、自車両の現在の道路上の位置を特定するとともに、ユーザによって指定された目的地までの道路経路の表示などの走行案内を行う車載用ナビゲーション装置が知られている。
【0003】
従来、車載用ナビゲーション装置において、路面上の方向指示標示の画像をカメラにより撮影し、撮影した画像から方向指示標示を認識することで、車両の走行レーンを特定する技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
これにより、路面上にペイントされた進行方向標示から、車両がルート通りの道路へ向かう走行レーンを走行しているか否かを判定し、利用者に適切な案内を行うことができる。
【特許文献1】特開2005−214883公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、カメラでは、路面の進行方向標示だけでなく、周囲の情景(風景など)も撮影される。このような情景画像は、雨などの天候による路面状況の変動や昼夜の明るさの変動による画質の変化、特に夜間の後続車両のライトなどによる映像の白色化、また隣接走行する他の車両の影の影響やガードレールやポール等の路側部の不要な物体による隠蔽によって道路標示の認識に適さない画像となり、その結果、車両の進行方向の認識精度が低下することがある。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、道路の走行環境が変わる中で、カメラにより道路を含んで映された画像から路面標示を的確に認識し、車両の進行方向の認識精度を向上することができる車載用ナビゲーション装置、路面標示識別プログラム及び路面標示識別方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために本発明の車載用ナビゲーション装置は、撮影方向を車両の前方または後方に向けて車両に取り付けられ、前記車両の前方または後方の路面を少なくとも含む画像を撮像するカメラと、前記カメラにより撮影された画像が記憶された記憶部と、前記カメラにより撮影された画像に含まれる路面標示の認識に不要な領域を検出する第1画像処理部と、前記第1画像処理部により検出された前記画像の前記不要領域を前記記憶部に既に記憶されている旧画像またはその一部の画像領域により補完して合成画像を生成する第2画像処理部と、前記第2画像処理部により合成された合成画像と予め設定されている標示情報とを用いて前記路面にペイントされた路面標示の検出および認識を行う標示認識部とを具備することを特徴とする。
【0008】
本発明の車載用ナビゲーション装置は、撮影方向を車両後方に向けて車両の後部に取り付けられ、前記車両後方の路面を少なくとも含む映像を撮像するカメラと、画像を記憶可能な記憶部と、前記カメラにより撮影された映像を画面単位に所定時間間隔で前記記憶部に順次取り込む画面取込部と、前記記憶部に取り込まれた前記画面の画像に含まれる路面標示の認識に不要な領域を検出する不要領域検出部と、前記不要領域検出部により検出された不要領域を避けた所定形状の画像領域を切り出し、前記記憶部に記憶する画像切出部と、前記画像切出部により前記記憶部に記憶された新たな画像領域と前記記憶部に既に記憶されている一つ前の旧画像領域とを比較し移動量を算出する移動量算出部と、前記移動量算出部により算出された前記路面標示の移動量に従って新旧の画像領域を結合した合成画像を生成する画像合成部と、前記画像合成部により合成された合成画像と予め設定されている標示情報とを用いて前記路面標示の検出および認識を行う路面標示認識部とを具備することを特徴とする。
【0009】
本発明では、例えば他車両やその車両による影によって認識対象である路面標示が隠蔽された場合に、新たに切出した画像に、過去に記憶しておいた画像の中からマークが隠蔽される前の画像を合成し、その合成画像を用いてマークを検出及び認識するので、進行方向標示などの路面標示を的確に認識し、車両の進行方向の認識精度を向上することができる。
【0010】
また、カメラで撮影された情景画像から認識に適した状態の良い画像領域を切り出し、記憶しておいた画像と合成することで認識精度を向上することができる。また、単に切り出すのではなく、路面標示の認識の妨げとなるライトの照射領域などの不要な画像領域を除外し、またはその部分を除去した画像領域を過去の状態の良い画像で補完することで、路面標示の種別を的確に認識し、車両の進行方向の認識精度を向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように本発明によれば、道路の走行環境が変わる中で、カメラにより道路を含んで映された画像から路面標示を的確に認識し、車両の進行方向の認識精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態につき図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施形態にかかる車載用ナビゲーション装置のハードウェア構成を示すブロック図、図2は図1の車載用ナビゲーション装置の機能構成図である。
【0013】
同図に示すように、この車載用ナビゲーション装置100は、GPS受信機1と、HD(Hard Disk )、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory )、DVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory )などのメディアから地図情報やそれに関連する情報を読み出すディスクドライブ2と、ユーザから出発地、目的地などの入力や各種操作のための入力を行う操作入力部3と、自車両の位置(自車位置)とその周辺の地図情報や自車両のナビゲーションのための情報表示を行うCRT(陰極線管)やLCD(液晶表示装置)などの表示装置4と、ナビゲーションに関する音声情報を出力するスピーカ5と、自車両の前方または後方の路面を撮影するカメラ6と、制御装置7とを備えて構成される。
【0014】
制御装置7は、CPU(Central Processing Unit)7aと、RAM(Random Access Memory)などの記憶部7bと、CPU7aによって実行されるプログラムや各種の設定データなどが書き換え不能(固定的)に格納されたROM(Random Only Memory)7cと、電気的に消去および書き換えが可能なEEPROM等のフラッシュメモリ7dとを備えて構成される。
【0015】
記憶部7bは、CPU7aの作業領域や映像を取り込んだときの画面データ(画像データ)やその画像から切り出した部分領域(画像領域)のデータなどの記憶領域として機能する。
【0016】
ROM7cには、標示情報として、道路標示の識別データが記憶されている。道路標示の識別データとは、標示画像とその名称を特定する情報とが対応付けられた情報である。標示画像の名称を特定する情報は、名称の場合もありIDや番号の場合もある。標示情報は、道路標示認識の際の比較データとして利用される。
【0017】
GPS受信機1は、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)により自車両の現在位置を測位して、自車両の現在位置(自車位置)を検出し、その自車位置検出結果を制御装置7へ入力するものである。
【0018】
カメラ6は、撮影方向を車両後方に向けて車両の後部に取り付けられており、バックビューモニターなどとも言う。つまりカメラ6は、自車両の車体の後部(リア部分など)に装着されている。カメラ6は、自車両の後方の路面部分を撮影して、路面にペイントされた直進、左折、右折などの各種の道路標示やライン、撮影範囲内の情景などの映像を制御装置7に入力する映像入力手段である。すなわち、カメラ6は、車両後方の路面を少なくとも含む映像を撮像する。
【0019】
カメラ6は、具体的には、例えばCCD(Charge-Coupled Devices)などの撮像素子と、この撮像素子によって撮像された信号をアナログ信号からデジタル信号へ変換して制御装置7に出力する信号処理回路とを有している。
【0020】
図2に示すように、この車載用ナビゲーション装置100は、第1画像処理部10、第2画像処理部20、路面標示認識部30、ナビゲーション部40などを備えている。第12画像処理部20は、画面取込部11、不要領域検出部12、画像切出部13などを有している。第2画像処理部20は、移動量算出部21、画像合成部22などを有している。
【0021】
画面取込部11は、カメラ6により撮影された映像を1画面毎の画像データとして画面単位に所定時間間隔で記憶部7bに順次取り込む。
【0022】
不要領域検出部12は、記憶部7bに取り込まれた画面の画像データに含まれる、路面にペイントされた道路標示(直進の矢印マークなど)の認識に不要な領域を検出する。
一例としては、カメラ6により撮影された画像の領域内の下地の輝度分布が一定の領域(必要領域)以外の領域(ライトが当たった路面部分)を不要領域として切り出す。
【0023】
画像切出部13は、不要領域検出部12により検出された不要領域を避けた所定形状の画像領域を切り出し記憶部7bに記憶する。
【0024】
また、画像切出部13は、移動量算出部21により算出された移動量に応じて、画像から切り出す画像領域の形状または配置を変更する切出画像変更部として機能する。
【0025】
画像切出部13は、合成画像に含まれる路面標識の検出状態、または認識状態に応じて画像から切り出す画像領域の位置を変更する。また画像切出部13は、時刻によって、画像から切り出す画像領域の位置または形状を変更する。「時刻によって」とは、昼の明るい時間帯(午前6時〜午後4時など)、夕方の薄暗い時間帯(午後4時〜午後7時など)、夜の暗い時間帯(午後7時〜午前6時など)などで画像の切出領域を変更することをいう。
【0026】
すなわち、第1画像処理部10は、カメラ6により撮影された画像の領域内の下地部分である、輝度分布が一定の、標示認識に必要な領域(必要領域)を検出し、その必要領域以外の領域を不要領域(ライトが当たった路面部分)として切り出し、その不要領域部分を記憶部7bに記憶しておいた他の画像やその一部の領域によって補完する。
また、他の方法として、第1画像処理部10は、カメラ6により撮影された映像を画面単位に所定時間間隔(例えば0.1秒間隔など)で画像として順次取り込み、取り込んだその画像から、変化が所定値以下の画像領域(動きのないライトや影の部分)を除くような所定形状の画像領域(路面の下地部分)を切り出し、記憶部7bに記憶する。
【0027】
移動量算出部21は、記憶部7bに記憶された新たな画像領域224b(図10参照)と記憶部7bに既に記憶されている一つ前の旧画像領域224a(図9参照)とを比較し道路標示222a,222bの移動量を算出する。この実施例では、一つ前の旧画像領域としたが、サンプリングする期間が短い場合は2つ前または3つの前などの画像でもよい。
【0028】
画像合成部22は、移動量算出部21により算出された道路標示222a,222bの移動量に従って新旧の画像領域224a,224bを結合した合成画像225(図11参照)を生成する。
【0029】
すなわち、第2画像処理部20は、記憶部7bに取り込まれた画像の、画像切出部13により切り出された不要領域部分を記憶部7bに既に記憶されている旧画像またはその一部の画像領域により補完して合成画像を生成し記憶部7bに記憶する。
また、他の方法として、第2画像処理部20は、記憶部7bに記憶された新たな画像領域224bと記憶部7bに既に記憶されている一つ前の旧画像領域224aとを用いて算出した移動量に従って新旧の画像領域224a,224bを結合した合成画像225を生成し記憶部7bに記憶する。
【0030】
路面標示認識部30は、第2画像処理部20により生成され記憶部7bに記憶された合成画像225と予めディスクドライブ2などに設定(記憶)されている標示情報とを用いて道路標示の検出と道路標示の認識を行う。
【0031】
ナビゲーション部40は、路面標示認識部30により認識された道路標示の認識結果に従って、認識時点の車両の進行方向を判定(特定)し、表示装置4とスピーカ5にてナビゲーション、つまり案内を行う。
【0032】
また、ナビゲーション部40は、GPS受信機1(図1参照)にて受信した自車位置の座標情報とディスクドライブ2の記録メディア(ハードディスク(HD)、CD−ROM、DVD−ROM等)に収録されている地図情報とを基に、自車位置が特定地点に接近したことを示す接近情報を出力する。
【0033】
ナビゲーション部40は、自車位置の座標と地図情報の中の特定地点の座標との距離を計算し、この距離が予め決められた閾値以下ならば、その特定地点への「接近」を判断して出力する。ここで、接近しているか否かを示す変数の初期状態を”0”として特定地点に接近していないことを示すものとする。
【0034】
すなわち、ナビゲーション部40にて計算された上記の距離が閾値より大きい場合は変数に”0”が格納され、上記の距離が閾値以下であった場合は変数に”1”が格納される。この変数はCPU7aに与えられ、CPU7aは、変数に”1”が格納されていれば、カメラ6を起動させるように制御を行う。
【0035】
なお、特定地点の座標の情報は予めディスクドライブ2(図1参照)などに構築されたデータベースに格納されている。ナビゲーション部40は、自車位置の座標をキーにデータベースから最も近い特定地点の座標を検索して、自車位置の座標との距離の計算を行う。
【0036】
また、接近情報を示す変数の値は、2種類の値を表現できれば”0”,”1”以外の値を用いてよい。さらに、特定地点に近付くときと遠ざかるときとで判別用の距離の閾値を変更するなど、状況に応じて閾値を変更するようにしてもよい。故に、特定地点に接近したとみなす領域は閾値を一定とした場合には円となるが、その他の形をとることも可能である。
【0037】
以下、図3乃至図12を参照してこの車載用ナビゲーション装置100の動作を説明する。この車載用ナビゲーション装置100場合、車両が走行中に、操作入力部3からの操作で、目的地が設定されると、制御装置7は、ナビゲーション動作を開始する。なお、例えばナビゲーション部40によって特定地点への接近が判定されることで制御装置7からカメラ6へ制御指令が出力されることでカメラ6が撮影を開始してもよい。
【0038】
カメラ6に電源が供給されて、制御指令によりカメラ6が起動すると、カメラ6は、映像の撮影(撮像)を開始する。
【0039】
この例では、例えば一車線の高速道路を走行中の車両のリア部分に車両後方の路面を撮影するような角度でカメラ6が取り付けられているため、図3に示すように、撮影された画面の画像201としては、遠近法で描かれたような道路の両サイドの車線211が映し出され、タイミングによっては、道路の中央部に直進を示す進行方向の矢印の標示212(マーク)が映し出される。
【0040】
カメラ6が動作を開始し、その映像が第1画像処理部10に入力されると、画面取込部11は、入力された映像を毎秒30画面(30画面/秒)という速さで記憶部7bに取り込む(図3のステップS101)。なお、この取り込み速度は、一例であり、車両の走行速度に応じて毎秒10画面(10画面/秒)や5画面(5画面/秒)程度であっても良い。
【0041】
第1画像処理部10は、カメラ6から得られた画像に種々の処理を施して路面標示の認識に適した画像に変換する。
【0042】
この場合、入力画像がカラーである場合を想定する。第1画像処理部10は、まず、記憶部7bに記憶されたカラー画像に対し、グレー画像への変換を行う。第1画像処理部10 は、例えば、記憶部7bから読み出したカラー画像をYUV表色系に変換し、その中のY(輝度)成分を取り出すことによってグレー画像を得る。
【0043】
次に、第1画像処理部10は、変換したグレー画像に対し透視変換を行う。透視変換とは、車両から見た後方の投影画像を、路面真上から見下ろした画像へ変換する処理である。
【0044】
続いて、第1画像処理部10は、透視変換後のグレー画像に対して二値化を行う。これは、個々の画素の値を決められた閾値を基準に二種類の値に表現し直す処理である。
【0045】
例えば、黒画素を”1”、白画素を”0”とする。ここまでの処理によって、図4の投影画像は、図5に示すように、路面の真上から見下ろしたように白黒の路面二値画像202に変換される。路面二値画像202では、車線221が並行になり、矢印の標示222も真下に向いた形になる。変換された路面二値画像202は、記憶部7bに記憶される。
【0046】
なお、これらの処理及びその手法は一例であり、認識に適した情報を得るという主旨を逸脱しない限りにおいてその他の処理及び手法を用いてよい。また、入力画像の種類(カラー、グレースケールなど)及び次に実施する認識処理の内容に合わせ、実施する処理を組み合わせて変更、または一部を削除してもよい。
【0047】
この例では、画像の二値化処理を路面画像取得後、初めの段階で行ったが、これ以外に、例えば画像合成後(図3のS105の後)、路面標示認識前(図3のS106の前)に行ってもよい。また、画像の二値化処理は、必須ではなく行わなくても良い。
【0048】
車両が道路を走行中、カメラにより撮影される情景画像は、同じ地点のものであっても、時刻や天候などのさまざまな条件によって変化する。
【0049】
例えば車両が夜間、道路を走行中に、カメラから得られ、透視変換した路面二値画像202は、図6に示すように、後続車両のヘッドライトの影響により、画像223の部分が、他の部分よりも輝度値が高くなってしまう。
【0050】
この例では、標示222の一部が輝度値の高い画像223にかかってしまい、重畳部分Sがどのような形状か判別できない。
【0051】
そこで、この車載用ナビゲーション装置では、不要領域検出部12が、路面二値画像202より標示222を認識するのに不要な部分(不要領域)を検出することで(S102)、輝度値の高い重畳部分Sを検出し、他の画像によって補完する。この検出および補完の方法として、画像の下地部分をまず検出してそれ以外の領域を不要領域として切り出す第1の方法と、順次取り込んだいくつかの画像から時系列での画像の変化が一定の箇所を不要領域として切り出す第2の方法の2つの方法がある。
例えば第1の方法の場合、不要領域検出部12は、路面二値画像202の領域のうち、下地の輝度の分布が一定の残す必要がある領域(必要領域)を検出する。その必要領域以外の領域、つまり輝度の分布の変化が激しい領域を不要領域(いわゆる削除領域)として検出する。
その後、取り込んだ画像の、不要領域部分を記憶部7bに既に記憶されている旧画像またはその一部の画像領域により補完して合成画像を生成する。
【0052】
上記不要領域検出処理は、撮影された路面画像毎に行うことが可能であり、最初の路面画像から判定した必要領域をそのまま固定して用いても良い。
【0053】
また、第2の方法では、時系列での画像の変化が一定の箇所を不要領域として検出する。
【0054】
この際、不要領域検出部12は、図8に示すように、新たに得られた路面二値画像202bと記憶部7bに既に記憶されている旧路面二値画像202aとを比較して、位置の変化が所定値以下の画像領域を除くような所定形状(長方形など)の画像領域224を切り出す。
【0055】
例えば自車が一定の速度で走行中は、後続車両もほぼ同じ速度で追従していることから、後続車両のヘッドライトの影響が生じて輝度値が高くなっている両者の画像223a,画像223bの部分は、位置の変化がほとんどない一方で、矢印の標示222a,222bの部分の位置の変化が激しい。
【0056】
これにより、不要領域検出部12によって、輝度分布が一定の下地部分に比べて輝度の変化が激しい画像223a,223b(路面のライト照射部分)、または位置の変化が少ない画像223a,画像223bの部分が不要部分として検出される。
【0057】
画像切出部13は、不要領域検出部12により検出された不要領域223a,画像223bの部分を避けた所定形状の画像領域224を路面二値画像202a,202bから順に切り出し(S103)、記憶部7bに記憶する。
【0058】
この段階では、標示222が含まれているか否かは判断できないため、道幅方向に長い長方形の形状の画像領域224を切り出すものとする。
【0059】
画像領域を切り出し記憶した後、続いて、第2画像処理部20の移動量算出部21は、新旧それぞれの画像領域224a,224b(以下「切出画像」と称す)を記憶部7bから読み出す。図9の画像が一つ前の切出画像224aであり、図10の画像が今回新たに得られた新たな切出画像224bである。
【0060】
移動量算出部21により読み出された2つの切出画像224a,224bは、車両に取り付けられたカメラ6から後方を映した画像であるため、路面標示等は、画面(画像)の下から上に移動してゆく。つまり、図9における画像224a内の標示222aは、図10における画像224b内の標示222bのように上に移動する。図9における画像224a内の車線221aも、図10における画像224bでは矢印マークの標示222bの画像が上に移動しているが、図9の車線の標示221aと図10の車線の標示221bは、平行線であるため、変化が分からない。
【0061】
これら複数の切出画像224aおよび切出画像224bは、2枚だけに限らず、記憶部7bの記憶容量が許す限り、記憶部7bに多数保持することも可能である。
【0062】
移動量算出部21は、記憶部7bから読み出した2つの切出画像224a,224bを基に移動量を算出する(S104)。
【0063】
2枚の切出画像224a,224b間で移動量を算出する方法としては、一般に良く知られている相互相関係数を利用する。この他にも移動量を算出する方法は種々あり、他の方法を用いても良い。
【0064】
画像合成部22は、2つの切出画像224a,224bを、図11に示すように、移動量算出部21で算出された移動量Sの分ずらした上で、互いの画像を合成し(S105)、図12に示すような合成画像203を生成し記憶部7bに記憶する。この合成画像203では、後続車両からのヘッドライトの影響が出ている部分をなくし路面標示(車線の標示231,直進標示232)のみを存在させた画像が得られる。
【0065】
この画像合成部22の処理では、2つの切出画像224a,224bが移動した距離(画素数)の分、切出画像224a,224bをずらして重ね合わせる。双方の画像が重なった領域225は、互いの画素の平均を取っても良い。
【0066】
以上の処理を、カメラ6で撮影された車両後方の道路の情景映像を連続して取り込むことにより、後続車両のヘッドライトなどの影響を受けない画像が得られ、路面標示の認識処理に適した画像を生成することができる。
【0067】
なお、上記説明では2枚の切出画像224a,224bによって画像を合成したが、逐次処理を行う場合は前の合成画像を保持し、その合成画像と新たな部分画像によって移動量を算出して、合成することも可能である。
【0068】
また、合成画像203は、次々と新たに発生する切出画像によって旧切出画像が合成されてゆくが、合成処理のために適切な画像サイズで切り出しておくことにより記憶部7b(画像バッファ)の使用領域の削減を図ることもできる。
【0069】
移動量算出部21で算出される移動量は、カメラ6が搭載されている自車両の走行速度に比例して増加する。走行速度がより高速になると、連続した部分画像間における重なりの部分がなくなり、画像合成することが不可能になる恐れがある。
【0070】
そこで、移動量算出部21で算出された移動量に応じて、最適な切出画像の形状を算出することで、画像どうしの重なりを維持する。
【0071】
つまり、車両の速度が高速の場合は、切出画像の垂直方向の長さを長くし、逆に車両の速度が低速の場合は切出画像の垂直方向の長さを短くする。
【0072】
さらに、例えば図7に示した後続車両のヘッドライトによる高輝度な画像領域223aが後続車両の急な接近のため、より手前側に広がった場合、画像領域223aが切出画像224a内に入り込んでしまい、結果として画像認識処理に適さない合成画像が生成される恐れがある。
【0073】
このような場合、以下の方法により、切出画像224aの位置を変更しても良い。つまり、生成された合成画像203を一定サイズのブロックに分割し、分割したブロック内における平均輝度を求める。その平均輝度の分布を調べ、局所的に輝度値が高いブロックがあれば、合成画像に高輝度な領域が含まれているもと判定し、切出画像224aの設定位置を自車両に近い側に変更する。この結果、生成される合成画像は、画像認識処理に適したものになる。
【0074】
なお、移動量算出部21にて算出された移動量がほぼゼロ、つまり新旧の切出画像に差がない場合、画像合成部22は、合成処理を行わないようにしてもよい。
【0075】
合成画像203が記憶部7bに記憶されると、路面標示認識部30は、第2画像処理部20により生成及び記憶された合成画像203に対して路面標示の認識のために必要な情報の抽出を行い、この抽出情報を基に路面標示の認識を行う(S106)。
【0076】
ここで、路面標示認識部30による路面標示の認識処理の具体例について説明する。路面標示認識部30は、まず、記憶部7bより合成画像203を取得する。次に路面標示認識部30は、取得した合成画像203に対してハフ変換を行うことで画像中の直線を抽出し、その直線の座標などのパラメータを得る。以後、この直線のパラメータを得るまでの処理を「直線の検出」と呼ぶ。
【0077】
路面標示認識部30は、路面標示に対して予め決められた条件と直線のパラメータを基に上記の車線の標示231、直進標示(矢印マークの標示)231などの路面標示を認識する。
【0078】
路面標示に対して予め決められた条件とは、例えば、図5に示した車線221の場合には「直線が縦方向に、端から端まで伸びた部分」、進行方向標示(矢印マーク)の場合は、「縦長の長方形の下の部分に三角を付加した形状をなすもの」などとして設定される。
【0079】
画像中の直線などが抽出されると、路面標示認識部30は、その抽出情報を用いて合成画像203の左右の車線の標示231の間にペイントされている直進標示(矢印マークの標示)232の認識を行う。
【0080】
直進標示(矢印マーク)232などの路面標示の認識は、以下のようにして行われる。
【0081】
すなわち、路面標示認識部30は、まず、合成画像203中に含まれる直進標示(矢印マーク)232の範囲を特定する処理を行う。この処理は、射影を用いるなどして実施する。
【0082】
直進標示(矢印マーク)232は、2本の車線の標示231間に存在する。そこで、縦軸方向と横軸方向の射影をとれば、それぞれの軸方向の射影値の分布に直進標示(矢印マーク)232と車線の標示231それぞれの特徴が現れるので、これを基に画像中の直進標示(矢印マーク)232の範囲を特定する。
【0083】
ここで、図13,14を参照して、路面標示認識部30が、射影により、合成画像203に含まれる直進標示(矢印マーク)232の範囲を特定する処理(射影処理)について説明する。図13は射影処理の一例を示す図、図14はその射影処理の結果に基づく標示の範囲の特定方法を示す図である。なお、射影処理の前に、標示の部分を黒画素としてカウントするために、第1画像処理部10にて路面二値画像202(図5参照)に対して白と黒との反転処理を施しておくこととする。
【0084】
図13に示すように、路面標示認識部30は、まず、横軸上の位置ごとに黒画素数をカウントし、この黒画素数のカウント値が予め決められた閾値Aを超える部分を検出する。なお、この射影処理の前に、標示の部分を黒画素としてカウントするために、路面二値画像に対して白と黒との反転処理を施すこととする。
【0085】
路面標示認識部30は、このようにして検出された部分を車線の標示231に相当する部分と見なし、このような車線の標示231に相当する部分が二箇所に検出されたならば、各々の車線の標示231の部分に挟まれた範囲を横軸上の路面標示の探索範囲として絞り込む。
【0086】
次に、路面標示認識部30は、絞り込んだ路面標示の探索範囲について、閾値Aよりも小さい値として予め決めておいた閾値Bを超える部分を検出し、この部分を矢印マークの標示232が存在する横軸上の範囲と判定する。
【0087】
次に、路面標示認識部30は、縦軸方向についても同様に縦軸上の位置ごとの黒画素数の値をカウントし、この黒画素数のカウント値が予め決められた閾値Cを超える部分を検出する。
【0088】
路面標示認識部30は、このようにして検出された部分を、矢印マークの標示232が存在する縦軸上の範囲として判定する。そして、路面標示認識部30は、判定した路面標示の横軸上の存在範囲と縦軸上の存在範囲とを合せて、図14に示すように、矢印マークの標示232の範囲230として特定する。
【0089】
次に、路面標示認識部30は、特定した矢印マークの標示232の範囲230に対して路面標示認識処理を行う。この路面標示認識処理には、基準となる矢印などの標示の二値画像とその名前を示すラベルとのセット(組)を複数収めた標示情報データベース(以下「標示情報」と称す)が用いられる。ラベルは路面標示の一般名称、あるいは特定の規則に基づいて各路面標示に割り振られたコード、番号などである。路面標示認識部30は、特定した矢印マークの標示232の範囲230の二値画像を、ROM7cの標示情報に格納されている基準となる路面標示の二値画像のサイズに合せて拡大または縮小した後、標示情報の各路面標示の二値画像と照合し、位置が重なるドットの値が一致した数を算出し、その結果を「類似度」とする。そして、路面標示認識部30は、算出された類似度が最大となった、標示情報内の路面標示の二値画像のラベルを認識結果として出力する。
【0090】
なお、上記の方法によらず、特定した矢印マークの標示232の範囲230の画像から、路面標示の濃度・方向成分といった数値を求めて数次元のベクトルデータを生成し、標示情報に格納された基準の路面標示毎のベクトルデータとの内積を「類似度」として算出し、最大の類似度となった標示情報内の画像のラベルを認識結果として出力するようにしてもよい。
【0091】
ナビゲーション部40は、路面標示認識部30により認識されたラベルによって、路面にペイントされている路面標示(進行方向標示)を直進標示(矢印マーク)232と認識し、GPS受信機1により自車両の現在位置を測位した結果と合わせて、ナビゲーション中の経路(ルート)を車両が正常に進んでいるか否かの案内を行う(S107)。
【0092】
このようにこの第1実施形態の車載用ナビゲーション装置によれば、カメラ6で撮影された情景画像から、認識に不要な部分を除外した画像領域(認識に適した状態の良い画像領域)を切り出し、記憶部7bに記憶していた一つ前の切出画像と合成することで、路面標示を的確に検出及び認識し、車両の進行方向の認識精度を向上することができる。
【0093】
また、映像から画像の一部領域を固定的に切り出すだけでなく、道路標示の認識の妨げとなる例えば後続車両のヘッドライトで白くなった路面の画像を除外するような形状で画像の一部領域を切り出し、過去の切出画像と合成することで、路面標示の認識に適した画像を生成し、車両の進行方向の認識精度を向上することができる。
【0094】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。この第2実施形態は、上記第1実施形態の変形例であり、第1実施形態と同様の構成には同一の符号を付しその説明は省略する。
【0095】
この第2実施形態の車載用ナビゲーション装置のハードウェア構成は、図1に示したものと同様であり、図2に示した機能構成に一部の機能を追加したものである。
【0096】
すなわち、この車載用ナビゲーション装置は、図15に示すように、第2画像処理部20に不要画像除去部23を備える。この他、この第2実施形態では、図2に示されている第1画像処理部10、路面標示認識部30、ナビゲーション部40、記憶部7a、ROM7c、ディスクドライブ2なども備えられている。
【0097】
不要画像除去部23は、記憶部7bに記憶された新たな画像領域と記憶部7bに既に記憶されている旧画像領域(保持画像)とを比較して認識不要な物体の画像を検出する不要領域検出部として機能する。
【0098】
不要画像除去部23は、検出された不要な物体の画像領域に、記憶部7bの不要な物体が含まれていない旧画像領域(保持画像)から抽出した画像領域を合成する。
【0099】
不要画像除去部23は、認識不要な物体の画像部分を合成画像から消去する消去部として機能する。
【0100】
すなわち、不要画像除去部23は、移動量算出部21の処理結果を利用して、路面平面より高さがある、例えば路肩(路側)のポールやガードレールなどを検出する。
【0101】
図16はカメラにより撮影された道路を示している。画像401は、車両の搭載されたバックビューモニターの画像であり、この画像401には、2本の車線411と直進を意味する路面標示412および路肩のポール413が含まれている。
【0102】
図17は画像切出部13の前処理として図16の画像401に対して透視変換処理を行った画像402を示している。
【0103】
路面平面上に存在する車線の標示421や路面標示422に対して、路面平面より高さがある路肩のポール423の画像は、透視変換処理によって斜めになる。
【0104】
図18および図19は、連続して取り込んだ道路の情景画像を、画像切出を行う前の処理で透視変換処理を行った画像を示している。
【0105】
図18および図19に示す画像は、第1の実施形態と同様に、車両に取り付けられたカメラ6からの画像であるため、画像に含まれる路面標示等は、下から上に移動していく。
【0106】
図18における画像402aの路面標示422aは、図19における画像402b内の路面標示422bのように上に移動するが、移動量が少ないためその形状はほぼ変化しない。しかし、図18における路肩のポール423aは、路面平面より高さがある物体のため、所定時間経過後の図19の画像402bにおいては、路肩のポール423bは位置が移動し、かつ見え方、つまり形状が変化する。
【0107】
これは、画像切出部13の前処理である透視変換処理の影響であり、遠くに行くほど変形量が大きくなる。
【0108】
このような透視変換の前処理が行われた後、画像切出部13によって、図18および図19の画像402a,402bに対してそれぞれ切り出し処理が行われて、図18の部分画像424a、図19の部分画像424bが切り出されて記憶部7bに記憶された後、移動量算出部21により、記憶部7bに記憶された新旧の切出画像から移動量の算出が行われる。
【0109】
不要画像除去部23は、移動量算出部21により算出された移動量に従って2枚の画像間の画像の一致度を算出する。一致度は、部分画像をブロックに分割して、算出された移動量分をずらし、各ブロックにおいて相互相関係数を算出することで求める。
【0110】
この例の場合、図18の路面標示422aと、図19の路面標示422bとは、一致度が高くなる。
【0111】
一方、図18における路肩のポール423aと図19のおける路肩のポール423bは、前述の透視変換処理の影響により同じオブジェクトでありながら形状が変形しているため、一致度は高くならない。この結果、不要画像除去部23は、一致度が高くないブロックには路面平面より高い位置にある不要物体が存在するものと判定する。
【0112】
路面標示を認識する上で、路面平面以外の物体はノイズに他ならない。このため、その物体の存在する画像領域を後段の画像認識処理に通知することで、誤認識の防止や処理時間の短縮を図ることができる。
【0113】
なお、カメラで車両の後方を撮影する場合については、カメラで撮影された路面画像から「高さのある障害物」を認識するだけであるが、例えばカメラを車両のフロント部分に搭載して車両の前方を撮影しているときに、高さのある障害物を認識した場合、ナビゲーションにて表示中の路面標示の他に、アラーム等で運転者に注意を促すことも可能である。
【0114】
さらに、上述したような路肩に存在するポールの場合、画像合成部22にてその部分の画像領域を合成しないようにすることで、誤認識の防止や処理時間の短縮に加え、画像データの記憶量を削減することができる。
【0115】
以上、第2実施形態では、路肩のポールを例に説明したが、不要画像除去部23は、路肩のポールのみに対応するものではなく、例えば隣に走行する車両や同じ車線にいる後続車両なども路面平面より高さを持った、路面標示の認識に不要な物体であるため、同様に処理することが可能である。
【0116】
以下、図20〜図23を参照して第2実施形態の応用例について説明する。この応用例は、路面にできた影によって路面標示が隠されてしまった場合の例である。図20は画像切出部13の前処理である透視変換処理を行った後の画像502を示している。
【0117】
図20に示す画像502には、車線の標示521および路面標示522と共に、隣接車線の車両による影523が含まれている。この影523は、路面標示522の一部を隠蔽している。このような影523を含む画像に対して路面標示の認識処理を行った場合、正しい認識結果を得ることは難しい。
【0118】
図21および図22は、連続した情景画像を画像切出部13の前処理により透視変換処理を行った画像502a,502bを示している。
【0119】
これらの画像502a,502bは、第1の実施形態と同様に、車両に取り付けられたカメラ6からの画像であるため、画像内にある路面標示は下から上に移動していく。
【0120】
図21における画像502aに含まれる路面標示522aは、図22における画像502b内の路面標示522bのように上に移動する。図21、図22のいずれの画像502a,502bの場合においても路面標示522a、522bは、隣接車両の影523a,523bによって路面標示522a,522bの一部が隠蔽されている。
【0121】
従って、図21における切出画像524aおよび図22における切出画像524bをそのまま利用して画像を合成しても影の部分が残ってしまい、路面標示の認識に適した画像を生成することは難しい。この場合、切り出した部分の画像(切出画像)を組み合わせて画像を生成する、またはカメラ6から取り込んだ各画面の画像全体を記憶部7bに数枚分保持しておき、その中から状態が良い画像を利用することで、図23に示すような画像503における路面標示532のように影の無い合成画像を生成することができる。
【0122】
つまり、図21における画像502aの路面標示522aでは、矢印の棒の部分に影523aの一部がかかっているが、図22における画像502bの路面標示522bでは、矢印の棒の部分には影523bがかかっていない。
【0123】
したがって、それぞれの画像から影がかかっていない部分領域を画像合成部22が選定してその部分領域を切り出し合成する。この際、影の有無の判別には、例えば画像全体をブロック領域分割し、輝度の分布を計測し、周囲より暗いブロックを検出し、その部分を影と判定する。
【0124】
このようにこの第2実施形態の車載用ナビゲーション装置によれば、上記第1実施形態の効果の他、不要領域除去部23を設けたことで、路面標示の認識に妨げとなる、例えば路肩のポールや自車に隣接して走行する他の車両の影などの不要な画像領域を除去し、また除去した不要画像領域を過去の状態の良い画像で補完することで、路面標示を的確に検出及び認識できるようになり、車両の進行方向の認識精度を向上することができる。
【0125】
すなわち、透視変換処理と局所的な画像間の一致度を計測することで路面平面より高い、路面標示の認識に不要な物体(路肩のポールなど)の検出が可能となり、画像からその物体を消去し、またその部分を保持していた他の画像で補完することができる。
【0126】
さらに、路面標示が影などで隠されていた場合、記憶部7bに予め保持しておいた数枚の画面の画像の中から、路面標示が隠されていない画像またはその一部の部分画像を選出し隠蔽画像に合成することで、路面標示が隠されていないクリアな画像を生成することができる。これらの結果、後段で行われる車両の進行方向の認識精度を向上することができる。
【0127】
本発明は、上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々更新を加え得ることは勿論である。
【0128】
上記実施形態では、車両の後方を撮影した画像について処理を行う例について説明したが、車両の前方を撮影した画像であっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本実施形態の車載用ナビゲーション装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図2】図1の車載用ナビゲーション装置の機能ブロック図である。
【図3】車載用ナビゲーション装置の動作を示すフローチャートである。
【図4】カメラからの車両後方の映像を取り込んだ画像の一例を示す図である。
【図5】図4の画像を透視処理した画像の一例を示す図である。
【図6】ヘッドライトの影響を受けて路面標示の一部が識別不能になっている様子を示す図である。
【図7】一つの前の画像から部分画像を切り出す様子を示す図である。
【図8】図7の画像の後に取り込んだ新たな画像から部分画像を切り出す様子を示す図である。
【図9】図7の一つ前の画像から切り出された切出画像を示す図である。
【図10】図8の画像から切り出された新たな切出画像を示す図である。
【図11】2つの切出画像を合成する様子を示す図である。
【図12】生成された合成画像を示す図である。
【図13】路面上の矢印などの道路標示の範囲を特定するための射影処理の例を示す図である。
【図14】図13の射影処理の結果に基づく標示の範囲の特定方法を示す図である。
【図15】本発明の第2実施形態に係る車載用カーナビゲーション装置の構成を示すブロック図である。
【図16】カメラにより撮影された道路の画像を示す図である。
【図17】図16の画像に対して透視変換処理を行った画像を示す図である。
【図18】あるタイミングで撮影された路肩にポールが存在する道路の情景画像に対して透視変換処理を行った画像を示す図である。
【図19】図18の画像に続いて撮影され、透視変換処理を行った画像を示す図である。
【図20】影の影響で路面標示が隠されている様子を示す図である。
【図21】あるタイミングで撮影された影を含む道路の情景画像に対して透視変換処理を行った画像を示す図である。
【図22】図21の画像に続いて撮影され、透視変換処理を行った画像を示す図である。
【図23】影のある画像領域に既に記憶されている他の画像領域を合成し影を除去した画像を示す図である。
【符号の説明】
【0130】
1…GPS受信機、2…ディスクドライブ、3…操作入力部、4…表示装置、5…スピーカ、6…カメラ、7…制御装置、7a…CPU、7b…記憶部、7c…ROM、7d…フラッシュメモリ、10…第1画像処理部、11…画面取込部、12…不要領域検出部、13…画像切出部、20…第2画像処理部、21…移動量算出部、22…画像合成部、23…不要画像除去部、30…路面標示認識部、40…ナビゲーション部、100…車載用ナビゲーション装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影方向を車両の前方または後方に向けて車両に取り付けられ、前記車両の前方または後方の路面を少なくとも含む画像を撮像するカメラと、
前記カメラにより撮影された画像が記憶された記憶部と、
前記カメラにより撮影された画像に含まれる路面標示の認識に不要な領域を検出する第1画像処理部と、
前記第1画像処理部により検出された前記画像の前記不要領域を前記記憶部に既に記憶されている旧画像またはその一部の画像領域により補完して合成画像を生成する第2画像処理部と、
前記第2画像処理部により合成された合成画像と予め設定されている標示情報とを用いて前記路面にペイントされた路面標示の検出および認識を行う標示認識部と
を具備することを特徴とする車載用カーナビゲーション装置。
【請求項2】
撮影方向を車両後方に向けて車両の後部に取り付けられ、前記車両後方の路面を少なくとも含む映像を撮像するカメラと、
画像を記憶可能な記憶部と、
前記カメラにより撮影された映像を画面単位に所定時間間隔で前記記憶部に順次取り込む画面取込部と、
前記記憶部に取り込まれた前記画面の画像に含まれる路面標示の認識に不要な領域を検出する不要領域検出部と、
前記不要領域検出部により検出された不要領域を避けた所定形状の画像領域を切り出し、前記記憶部に記憶する画像切出部と、
前記画像切出部により前記記憶部に記憶された新たな画像領域と前記記憶部に既に記憶されている一つ前の旧画像領域とを比較し移動量を算出する移動量算出部と、
前記移動量算出部により算出された前記路面標示の移動量に従って新旧の画像領域を結合した合成画像を生成する画像合成部と、
前記画像合成部により合成された合成画像と予め設定されている標示情報とを用いて前記路面標示の検出および認識を行う路面標示認識部と
を具備することを特徴とする車載用カーナビゲーション装置。
【請求項3】
前記画像切出部は、
前記移動量算出部により算出された移動量に応じて、前記画面の画像から切り出す画像領域の形状または配置を変更する切出画像変更部を具備することを特徴とする請求項2記載の車載用カーナビゲーション装置。
【請求項4】
前記切出画像変更部は、
前記合成画像に含まれる道路標示の検出状態または認識状態に応じて前記画面の画像から切り出す画像領域の位置を変更することを特徴とする請求項3記載の車載用カーナビゲーション装置。
【請求項5】
前記切出画像変更部は、
時刻によって、前記画面の画像から切り出す画像領域の位置を変更することを特徴とする請求項3記載の車載用カーナビゲーション装置。
【請求項6】
前記第1画像処理部または前記不要領域検出部は、
前記記憶部に記憶された新たな画像領域と前記記憶部に既に記憶されているいくつかの旧画像領域とを比較して路面標示の認識に不要な物体が存在する画像領域を検出し、
前記第2画像処理部または前記画像合成部は、
前記検出された不要な物体の画像領域に、前記記憶部の前記不要な物体が含まれていない旧画像領域から抽出した画像領域を合成することを特徴とする請求項1または2いずれか記載の車載用カーナビゲーション装置。
【請求項7】
前記第1画像処理部または前記不要領域検出部により検出された前記不要な物体の画像領域を前記合成画像から消去する消去部を具備することを特徴とする請求項6記載の車載用カーナビゲーション装置。
【請求項1】
撮影方向を車両の前方または後方に向けて車両に取り付けられ、前記車両の前方または後方の路面を少なくとも含む画像を撮像するカメラと、
前記カメラにより撮影された画像が記憶された記憶部と、
前記カメラにより撮影された画像に含まれる路面標示の認識に不要な領域を検出する第1画像処理部と、
前記第1画像処理部により検出された前記画像の前記不要領域を前記記憶部に既に記憶されている旧画像またはその一部の画像領域により補完して合成画像を生成する第2画像処理部と、
前記第2画像処理部により合成された合成画像と予め設定されている標示情報とを用いて前記路面にペイントされた路面標示の検出および認識を行う標示認識部と
を具備することを特徴とする車載用カーナビゲーション装置。
【請求項2】
撮影方向を車両後方に向けて車両の後部に取り付けられ、前記車両後方の路面を少なくとも含む映像を撮像するカメラと、
画像を記憶可能な記憶部と、
前記カメラにより撮影された映像を画面単位に所定時間間隔で前記記憶部に順次取り込む画面取込部と、
前記記憶部に取り込まれた前記画面の画像に含まれる路面標示の認識に不要な領域を検出する不要領域検出部と、
前記不要領域検出部により検出された不要領域を避けた所定形状の画像領域を切り出し、前記記憶部に記憶する画像切出部と、
前記画像切出部により前記記憶部に記憶された新たな画像領域と前記記憶部に既に記憶されている一つ前の旧画像領域とを比較し移動量を算出する移動量算出部と、
前記移動量算出部により算出された前記路面標示の移動量に従って新旧の画像領域を結合した合成画像を生成する画像合成部と、
前記画像合成部により合成された合成画像と予め設定されている標示情報とを用いて前記路面標示の検出および認識を行う路面標示認識部と
を具備することを特徴とする車載用カーナビゲーション装置。
【請求項3】
前記画像切出部は、
前記移動量算出部により算出された移動量に応じて、前記画面の画像から切り出す画像領域の形状または配置を変更する切出画像変更部を具備することを特徴とする請求項2記載の車載用カーナビゲーション装置。
【請求項4】
前記切出画像変更部は、
前記合成画像に含まれる道路標示の検出状態または認識状態に応じて前記画面の画像から切り出す画像領域の位置を変更することを特徴とする請求項3記載の車載用カーナビゲーション装置。
【請求項5】
前記切出画像変更部は、
時刻によって、前記画面の画像から切り出す画像領域の位置を変更することを特徴とする請求項3記載の車載用カーナビゲーション装置。
【請求項6】
前記第1画像処理部または前記不要領域検出部は、
前記記憶部に記憶された新たな画像領域と前記記憶部に既に記憶されているいくつかの旧画像領域とを比較して路面標示の認識に不要な物体が存在する画像領域を検出し、
前記第2画像処理部または前記画像合成部は、
前記検出された不要な物体の画像領域に、前記記憶部の前記不要な物体が含まれていない旧画像領域から抽出した画像領域を合成することを特徴とする請求項1または2いずれか記載の車載用カーナビゲーション装置。
【請求項7】
前記第1画像処理部または前記不要領域検出部により検出された前記不要な物体の画像領域を前記合成画像から消去する消去部を具備することを特徴とする請求項6記載の車載用カーナビゲーション装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【公開番号】特開2008−187347(P2008−187347A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−17868(P2007−17868)
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月29日(2007.1.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(301063496)東芝ソリューション株式会社 (1,478)
【Fターム(参考)】
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