説明

車載用表示装置及び方法

【課題】共通の表示部で異なる方向からそれぞれ異なる画像を視認できる車載用表示装置において、車両内の明るさに応じた画像の明るさ調整によるクロストーク発生を最小限に抑えることができる車載用表示装置を提供する。
【解決手段】車両のイルミネーションがオフされた状態では(ステップST1:N)、第1の画像IM1を昼表示用の明るさで表示させ(ステップST4)、イルミネーションがオンされた状態でかつ第1及び第2の画像のソースが同一の場合には(ステップST1:Y,ステップST2:Y)、第1の画像IM1を夜表示用の明るさで表示させ(ステップST3)、イルミネーションがオンされた状態でかつ第1及び第2の画像のソースが異なる場合には(ステップST1:Y,ステップST2:N)、第1の画像IM1を昼表示用の明るさで表示させる(ステップST3)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通の表示画面上で異なる方向からそれぞれ異なる画像を視認できる車載用表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
共通の表示画面上で異なる方向からそれぞれ異なる画像を視認できる、いわゆるマルチビュー表示装置としては、例えば、液晶パネルの前に視差バリアを設け、1ピクセルごとにバックライトからの光の進行方向を振り分けることで、左右において異なる情報(画像)を表示できるものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。このような表示装置を車両に搭載することにより、運転者がナビゲーション画像を観ている間に助手席の搭乗者がテレビ等の他の画像を観ることが可能となる。
【特許文献1】特開2005−78080号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、一般的なナビゲーション装置においては、表示部が設置された周囲の明るさに応じてナビゲーション画像の視認性を高めるために、車両に備わるヘッドランプ等のイルミネーションのオン/オフに応じてナビゲーション画像の明るさを変更することが行われている。すなわち、車両内が明るい場合には、画像を比較的明るく表示し、車両内が暗い場合には、それに合わせて比較的暗い画像を表示する。
しかしながら、デュアルビュー表示装置においては、運転席側にナビゲーション画像が表示され、助手席側にDVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)等のナビゲーション画像以外の画像が表示された状態で、ナビゲーション画像が明るい状態から暗い状態に変更されると、画像間の輝度差が拡大することにより、いわゆるクロストーク現象が生じ、助手席側の画像が運転席側のナビゲーション画像に映り込んでしまう可能性がある。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、共通の表示部に第1及び第2の画像をそれぞれ運転席側及び助手席側から視認できるように表示する車載用表示装置において、車両内の明るさに応じた画像の明るさ調整によるクロストーク発生を最小限に抑えることができる車載用表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る車載用表示装置は、共通の表示部に第1及び第2の画像をそれぞれ異なる方向から視認できるように表示する車載用表示装置であって、表示部周辺の明るさに応じて表示部に表示される第1の画像の明るさを変更する明るさ変更手段を有し、明るさ変更手段は、第1及び第2の画像が共通のソースから供給された画像の場合には、表示部周辺の明るさに応じて第1の画像の明るさを変更し、第1及び第2の画像が異なるソースから供給された画像の場合には、第1の画像の明るさを所定の明るさに維持する、ことを特徴としている。
この構成によれば、第1の画像と第2の画像が共通のソースから供給されている場合には、共通の表示部には同じ画像が表示されるので、第1の画像と第2の画像との間にクロストークが発生しない。このため、明るさ変更手段は、画像の視認性を高めるために、車両内の明るさに応じて表示部に表示される第1の画像の明るさを変更する。一方、第1の画像と第2の画像とが異なるソースから供給されている場合には、第1の画像と第2の画像との間には、クロストークが発生するので、第1の画像の明るさを所定の明るさに維持することにより、第2の画像が第1の画像へ映り込むことを抑制できる。
【0006】
上記構成において、明るさ変更手段は、車両のイルミネーションがオフされた状態では、第1の画像を昼表示用の明るさで表示させ、イルミネーションがオンされた状態でかつ第1及び第2の画像のソースが同一の場合には第1の画像を夜表示用の明るさで表示させ、イルミネーションがオンされた状態でかつ第1及び第2の画像のソースが異なる場合には前記第1の画像を昼表示用の明るさで表示させる、構成を採用できる。
この構成によれば、運転席側画像が表示された状態で夜間走行のためのイルミネーションが点灯された場合に、第1及び第2の画像のソースが同じであれば、夜表示用の明るさに変更され、第1及び第2の画像のソースが異なれば、昼表示用の明るさに維持される。
【0007】
本発明に係る車載用表示装置は、共通の表示部に第1及び第2の画像をそれぞれ異なる方向から視認できるように表示すると共に、第1又は第2の画像として少なくともナビゲーション画像を表示可能な車載用表示装置であって、
周囲の明るさの状態を示す切替信号に基づき、周囲が明るいとき用の明時用ナビゲーション画像と周囲が暗いとき用の暗時用ナビゲーション画像とを切替える画像切替手段と、表示部に表示される第1の画像及び第2の画像の一方のみがナビゲーション画像の場合には、切替信号に関わらず、ナビゲーション画像として明時用ナビゲーション画像を表示させる画像切替制限手段と、を有することを特徴としている。
この構成によれば、例えば、車内のイルミネーションスイッチなどの操作により形成される切替信号に基づいて、明時用ナビゲーション画像と暗時用ナビゲーション画像とを切替えることにより、表示部周辺の明るさの変化に応じてナビゲーション画像の視認性を高めることができる。一方、第1の画像及び第2の画像の一方のみがナビゲーション画像の場合には、切替信号の状態に関わらず、明時用ナビゲーション画像を表示させることで、、第1の画像と第2の画像との間のクロストークの発生を抑制できる。
【0008】
本発明に係る車両用表示方法は、共通の表示部に第1及び第2の画像をそれぞれ異なる方向から視認できるように表示する車両用表示方法であって、第1及び第2の画像が共通のソースから供給された画像の場合には、表示部周辺の明るさに応じて表示部に表示される第1の画像の明るさを変更し、第1及び第2の画像が異なるソースから供給された画像の場合には、表示部周辺の明るさの変動に対して第1の画像の明るさを所定の明るさに維持する、ことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、共通の表示部で異なる方向からそれぞれ異なる画像を視認できる車載用表示装置において、車両内の明るさに応じた表示画像の明るさ調整等によるクロストークの増大を最小限に抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の最良の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る車両用マルチビュー表示装置の基本構成を説明するための図である。
この車載用表示装置は、図1に示すように、表示制御部10、表示部100等から構成されている。
表示制御部10は、第1の画像ソース300Aから画像データ(画像信号)DT1が供給されると共に第2の画像ソース300Bから画像データ(画像信号)DT2が供給されて、これら第1及び第2の画像データDT1,DT2からなる画像データ(画像信号)ADTを共通の表示部100へ出力する。尚、表示制御部10の具体的な構成については後述する。
また、第1及び第2の画像ソース300A,300Bは、後述するカメラ、TV受信部、DVD再生部、HD再生部、ナビゲーション部等の複数のソースで構成される。
【0011】
表示部100は、後述するように、液晶パネル、バックライト、視差バリア等から構成されており、第1の画像データDT1に基づく第1の画像IM1を右方向から観察者OBRが視認できると共に第2の画像データDT2に基づく第2の画像IM2を左方向から観察者OBLが視認できるように共通の表示画面に表示する。尚、表示部100の具体的な構成については後述する。
【0012】
図2は本発明の一実施形態に係る車載用表示装置の外観斜視図、図3は本発明の一実施形態に係る車載用表示装置の車両への搭載例を示す斜視図である。
図2に示す車載用表示装置の装置本体100Aは、車両のダッシュボード部分に内蔵されると共に、表示部100は、図3に示すように運転席DSと助手席ASとの間に配置される。また、表示部100には、表示装置を手動で操作するための操作部150が設けられている。
図3に示すケースにおいては、運転席DSに着席した乗員が上記の観察者OBRとなり、助手席ASに着席した乗員が上記の観察者OBLとなる。そして、これらの搭乗者は、それぞれ運転席DS側又は助手席AS側から表示部100に表示された異なる第1の画像IM1及び第2の画像IM2を同時に観ることができる。
【0013】
図4ないし図10は本発明の一実施形態に係る表示装置の具体的な構成を示す図であって、図4は車載用表示装置の機能ブロック図、図5は制御部の構成を示す機能ブロック図、図6は第1及び第2の画質調整回路の機能ブロック図、図7は画像出力部の機能ブロック図、図8は液晶パネルの断面構造及び作用を説明するための図、図9は液晶パネルの正面図、及び図10はTFT基板の回路図である。
【0014】
この車載用表示装置は、図4に示すように、表示部100加えて、制御部20、分配回路30、第1及び第2の画質調整回路50A,50B、画像出力部70等から構成されている。尚、上記した表示制御部10は、制御部20、分配回路30、第1及び第2の画質調整回路50A,50B、画像出力部70等から構成される。
【0015】
制御部20は、図5に示すように、プロセッサ(CPU)21、インターフェース22、ROM23、RAM24等から構成され、ROM23に記憶されたプログラムに従って表示装置を総合的に制御する。
また、制御部20は、後述するように、第1及び第2の画像IM1,IM2が共通のソースから供給された画像の場合には、車両内の明るさに応じて第1の画像IM1の明るさを変更し、第1及び第2の画像IM1,IM2が異なるソースから供給された画像の場合には、車両内の明るさの変動に対して第1の画像IM1の明るさを所定の明るさに維持するように制御する。
【0016】
さらに、制御部20は、図4に示すように、車両に搭載されて画像や音声を供給する供給源としての、車両の周囲等を撮像するカメラ310、音楽や画像を再生するCD/MD(コンパクトディスク/ミニディスク)再生部320、アンテナからラジオ放送波を受信するラジオ受信部330、アンテナからセレクタ341を介してTV放送波を受信するTV受信部340、DVD(デジタル・バーサタイル・ディスク)から音楽情報や画像を再生するDVD再生部350、HD(ハードディスク)に記録された画像や音楽情報を再生するHD再生部360、VICS情報受信部371が受信した道路情報やGPS情報受信部372が受信した地理情報に基づいて地図やルート案内画像を出力するナビゲーション部370等と接続されて、これらとの間でデータを授受すると共にこれらをコントロールする。
また、制御部20には、各種データを記憶するメモリ140、表示装置を操作するための操作部150、表示装置をリモコン操作するためのリモコン171との間で赤外線信号や無線信号を送受するリモコン送受信部170、車両に備わるライトスイッチや光センサで構成されて車両内の明るさを検知する明るさ検知センサ190、車両のヘッドランプ等のイルミネーションをオン/オフさせるイルミネーションスイッチ210、運転席や助手席に設けられる感圧センサ等で構成されて車両の乗員を検出する乗員検知センサ200等が接続され、制御部20は、これらから得られる各種データに基づいて各種制御が可能となっている。
【0017】
分配回路30は、図4に示すように、上記したカメラ310、CD/MD再生部320、ラジオ受信部330、TV受信部340、DVD再生部350、HD再生部360、ナビゲーション部370等から供給される音声データや画像データを、制御部20からの制御指令に応じて、音声調整回路60、第1の画質調整回路50A、あるいは、第2の画質調整回路50Bへ分配する。
音声調整回路60は、図4に示すように、分配回路30から供給された音声データを調整してスピーカ61へ出力する。
【0018】
第1及び第2の画質調整回路50A,50Bは、図6に示すように、それぞれコントラスト調整部51、輝度調整部52、色調調整部53、ガンマ値調整部54等から構成され、制御部20からの制御指令に応じて、第1及び第2の画像データの画質(コントラスト、輝度、色調、ガンマ値)をそれぞれ調整する。尚、第1及び第2の画質調整回路50A,50Bにより、第1及び第2の画像データの明るさを調整することができる。
【0019】
画像出力部70は、図7に示すように、第1及び第2の画質調整回路50A,50Bにおいてそれぞれ画質調整された第1及び第2の画像データがそれぞれ書き込まれる第1及び第2の書込回路71,72、VRAM(Video RAM)73、液晶パネル駆動部74等から構成されている。
第1及び第2の書込回路71,72は、第1及び第2の画質調整回路50A,50Bで画質調整された第1及び第2の画像データをVRAM73の所定アドレスにそれぞれ書き込む。
VRAM73は、第1及び第2の画像データを保持する。VRAM73に保持された画像データは、表示部100の各画素にそれぞれ対応している。
液晶パネル駆動部74は、後述する液晶パネル110を駆動する回路であり、VRAM73に保持されている画像データに基づいて、液晶パネル110の対応する画素を駆動する。
【0020】
表示部100は、図4に示すように、液晶パネル110、液晶パネル110の背面側から照明光を当てるバックライト120、表示装置を操作する信号を入力するためのタッチパネル130等から構成されている。尚、タッチパネル130は、図示しないが、透明なシート状に形成されて液晶パネル110の前面に貼着される。
【0021】
液晶パネル110は、図8に示すように、バックライト120側から順に配置された、偏光板111、TFT(Thin Film Transistor)基板112、液晶層113、RGBの3原色の画素をもつカラーフィルタ基板114、視差バリア115、ガラス板116、偏光板117等から構成された周知の構造を有する。
この液晶パネル110は、図7及び図8に示すように、例えば、水平方向に800画素、垂直方向に480画素が配列された表示画面を有すると共に、この表示画面には、水平方向において左側表示用画素118(以下、助手席側表示用画素118ともいう。)と右側表示用画素119(以下、運転席側表示用画素119ともいう。)とが交互に配列されて構成されている。
【0022】
視差バリア115は、図8及び図9に示すように、ストライプ状に形成されて遮蔽部と透光部を有し、その遮蔽部は隣接する左側表示用画素118と右側表示用画素119との間に配置される。視差バリア115をカラーフィルタ基板114の前面に配置することにより、左側表示用画素118を透過した照明光は、左側に向かう照明光のみ選択的に視差バリア115の透光部を通過し、右側表示用画素119を透過した照明光は、右側に向かう照明光のみが選択的に視差バリア115の透光部を通過する。これにより、図8に示すように、液晶パネル110の右側(運転席側)からは第1の画像IM1が視認でき、左側(助手席側)からは第2の画像IM2が視認できるようになっている。
尚、視差バリア115は、特開平10−123461号公報や特開平11−84131号公報等に開示されているものと同様のものを使用できる。
【0023】
TFT基板112は、図10に示すように、データ線駆動回路DR1、走査線駆動回路DR2、垂直方向に配列された走査線SCL、水平方向に配列されたデータ線DTL、走査線SCLとデータ線DTLとの交差する領域毎に形成されたTFT素子ELに対応して形成された画素電極EP等を備え、走査線SCL及びデータ線DTLで囲まれた各領域がサブピクセルSBPを構成しており、データ線DTLに沿う各列のサブピクセルSBPは交互に左側表示用画素118と右側表示用画素119とに割り当てられる。
データ線駆動回路DR1は、液晶パネル駆動部74によりその駆動タイミングを制御されて、画素電極EPへの印加電圧を制御する。
走査線駆動回路DR2は、液晶パネル駆動部74によりその駆動タイミングを制御されて、TFT素子ELを選択走査する。
【0024】
メモリ140は、例えば、フラッシュメモリ等の電気的書き換え可能な不揮発性メモリ又はバッテリバックアップされた揮発性メモリにより構成されており、制御部20による制御に必要なデータ等を記憶している。
【0025】
次に、運転席側画像と助手席側画像との間のクロストークについて図11〜図14を参照して説明する。
図11(A)は表示部100の表示画面の観察角度と運転席側表示用画素を透過する光強度との各輝度における関係を示すグラフ、図11(B)は観察角度と助手席側表示用画素及び運転席側表示用画素を透過する光強度との関係を重ねて示したグラフ、図12はクロストーク領域を説明するための図、図13は運転席側画像と助手席画像とが同一ソースの場合におけるクロストークを説明するための図、及び、図14は運転席側画像の輝度を下げた場合のクロストーク領域の位置変化を説明するための図である。
【0026】
運転席側表示用画素119を透過する光は、図11(A)に示すように、視差バリア115が存在するにも関わらず、運転席側だけではなく助手席側にも分布している。また、最大輝度が観察される方向は画像の輝度レベルに応じて変化する。例えば、輝度レベルが255の場合には、最大輝度が観察される方向は運転席側(右側)の略30度の方向であり、この角度は視差バリア115の配置により規定される値である。尚、このような特性は、助手席側表示用画素118についても同様である。
【0027】
このことから、図11(B)に示すように、助手席側表示用画素118及び運転席側表示用画素119をそれぞれ透過した光は、運転席側及び助手席側の双方に重なって分布する。このため、助手席側表示用画素118に表示される画像の輝度と運転席側表示用画素119に表示される画像の輝度との差が小さい領域では、図12に示すように、第1の画像IM1(以下、運転席側画像IM1ともいう)と第2の画像IM2(以下、助手席側画像IM2ともいう)とが重なって観察されるクロストーク領域CRが表示画面に垂直な方向に関して対称に形成されると共に、このクロストーク領域CRの両側に可視範囲K1,K2がそれぞれ形成される。
【0028】
ここで、クロストーク領域CRは、運転席側画像IM1と助手席側画像IM2の輝度差が小さい領域であり、可視範囲K1は、運転席側画像IM1と助手席側画像IM2の輝度差が比較的大きい領域であって、運転席側画像IM1を明瞭に観察できる範囲であり、可視範囲K2は、運転席側画像IM1と助手席側画像IM2の輝度差が比較的大きい領域であって、助手席側画像IM2が明瞭に観察できる範囲である。尚、2つの可視範囲K1,K2は、クロストーク領域CRにより互いに隔てられているが、可視範囲K1,K2とクロストーク領域CRとを画定する境界が明確に存在するわけではない。
【0029】
上記したクロストーク領域CRは、運転席側画像IM1と助手席側画像IM2とが共にナビゲーション画像のように同一ソースに基づく場合には、図13に示すように、クロストークは発生しない。また、運転席側画像IM1と助手席側画像IM2との輝度を変更したとしてもクロストークは発生しない。
また、運転席側画像IM1の明るさ(輝度)を助手席側画像IM2に対して相対的下げる、例えば、図14に示すように、運転席側画像IM1の輝度を200まで下げると共に助手席側画像IM2の輝度を255に維持して両画像の最大輝度を異ならせると、クロストーク領域CRの中心位置は運転席側へ移動し、可視範囲K2が拡大し可視範囲K1が狭まる。可視範囲K1が狭まると、助手席側画像IM2が運転席側画像IM1へ映り込みやすくなる。
【0030】
制御部20では、上記したようなクロストークの特性を考慮して、図15に示すような明るさ変更処理を実行する。尚、本例では、運転席側画像IM1としてナビゲーション画像を表示し、助手席側画像IM2としてナビゲーション画像あるいはDVD画像を表示する場合について説明する。また、この処理は、車載用表示装置の動作中に繰り返し実行される。
制御部20は、先ず、イルミネーションスイッチ210がオンされたかを判断する(ステップST1)。イルミネーションスイッチ210がオンされると、夜間照明が必要であると判断でき、車両内も暗いと判断できるからである。
【0031】
制御部20は、イルミネーションスイッチ210がオフ状態にある場合には、運転席側画像IM1を昼用の明るさで表示する(ステップST4)。具体的には、制御部20は、図16(A),(B)の上側に示すように、メモリ140から予め設定された昼用の設定値に基づいて運転席側画像IM1が比較的明るくなるように画質を調整する。
【0032】
一方、制御部20は、イルミネーションスイッチ210がオンされた場合には、運転席側画像IM1と助手席側画像IM2とが同一ソース(ナビゲーション部)から供給されたものであるかを判断し(ステップST2)、同一ソースの場合には、運転席側画像IM1を夜用の明るさで表示する(ステップST3)。具体的には、制御部20は、図16(A)の下側に示すように、メモリ140から予め設定された夜用の設定値に基づいて運転席側画像IM1が比較的暗くなるように画質を調整する。このとき、ナビゲーション画像からなる運転席側画像IM1を暗くしたとしても、助手席側画像IM2も同じナビゲーション画像であるため、クロストークが発生せず、運転席側画像IM1の視認性が低下することがない。
【0033】
尚、ステップST2において、運転席側画像IM1がナビゲーション画像で助手席側画像IM2がDVD画像の場合には、上記した昼用の設定値に基づいて画像表示される(ステップST4)。すなわち、運転席側画像IM1と助手席側画像IM2とが異なるソースの画像である場合には、図16(B)の上側と下側に示すように、昼と夜とで運転席側画像IM1の輝度は変化せず、輝度が一定に維持される。
【0034】
以上のように、本実施形態によれば、マルチビュー表示装置において、車内の明るさに応じて運転席側画像IM1の明るさを調整する際に、助手席側画像IM2のソースを考慮することにより、運転席側画像IM1へ助手席側画像IM2が映り込んで、運転席側画像IM1の視認性が低下するのを防止できる。
【0035】
上記実施形態では、イルミネーションスイッチ210のオン/オフに応じて、運転席側画像IM1の明るさを昼用と夜用とで2段階に変更する場合について説明したが、これに限定されるわけではなく、例えば、イルミネーションスイッチ210に代えて、明るさ検知センサ190等により車両内の明るさの変化を連続的に検出し、これに応じて運転席側画像IM1の明るさを多段階あるいは連続的に変更することも可能である。
また、車両に天候を検知する雨滴センサを設置したり、通信手段を備えて外部から天候の情報を取得して現在の天候に応じて画像の明るさを調整する構成とすることも可能である。雨天や曇天の状況では、車両周囲が薄暗いため、運転席画像と助手席画像の明るさが晴天時よりも目立つため、輝度差が大きければ雨天や曇天の時に明るさを調整することも可能である。さらに、ナビゲーション部370からの位置情報に基づいて、トンネルや屋内駐車場等の暗い場所に車両が存在すると判断される場合にも画像の明るさを調整することも可能である。
【0036】
また、上記実施形態では、運転席側画像IM1と助手席側画像IM2のソースが異なる場合には、運転席側画像IM1を予め設定された昼用の明るさに調整する構成について説明したが、これに限定されるわけではなく、助手席側画像IM2のソースの種類に応じて運転席側画像IM1の明るさを調整することも可能である。
さらに、運転席側画像IM1と助手席側画像IM2のソースの種類に応じて運転席及び助手席の画像の明るさを調整する、あるいは、どちらか一方の画像の明るさを調整することも可能である。例えば、助手席側が暗い画像で、運転席側が明るい画像の場合には、助手席側画像の明るさを上げる、運転席側画像の明るさを下げる、あるいは、両方の画像の明るさのバランスを調整することも可能である。
【0037】
また、上記実施形態では、運転席側画像IM1としてナビゲーション画像を表示する場合について説明したが、これに限定されるわけではなく、DVD画像やTV画像の場合についても本発明を適用できる。
【0038】
上記実施形態では、画像の明るさを調整する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、単に画像の明るさを調整するのではなく、例えば、周囲の明るさに応じて、周囲が明るいとき用の明時用ナビゲーション画像と周囲が暗いとき用の暗時用ナビゲーション画像と選択的に表示することも可能である。明時用ナビゲーション画像と暗時用ナビゲーション画像とは、例えば、色合い等を変えて画像自体が異なっており、明時用ナビゲーション画像は明るいときに見やすい画像であり、暗時用ナビゲーション画像は暗いときに見やすい画像である。
具体的には、イルミネーションスイッチ210等の信号で構成される周囲の明るさの状態を示す切替信号に基づき、表示部100の周囲が明るいときは明時用ナビゲーション画像を表示させ、周囲が暗いときには暗時用ナビゲーション画像を表示させる。そして、表示部100に表示される第1の画像IM1及び第2の画像IM2の一方のみがナビゲーション画像の場合には、イルミネーションスイッチ210等の信号で構成される切替信号(の状態の変化)に関わらず、ナビゲーション画像として明時用ナビゲーション画像を表示させて明時用ナビゲーション画像と暗時用ナビゲーション画像との切替を制限する構成とすることも可能である。
【0039】
上記実施形態では、表示部100に液晶パネルを使用した場合について説明したが、これに限定されるわけではなく、液晶パネル以外のフラットパネルディスレイ、例えば有機ELディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、冷陰極フラットパネルディスプレイ等を用いることもできる。
【0040】
上記実施形態は本発明の好適な実施形態である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の一実施形態に係る車載用表示装置の基本構成を説明するための図である。
【図2】車載用表示装置の外観斜視図である。
【図3】車載用表示装置の車両への適用例を示す斜視図である。
【図4】車載用表示装置の構成を示す機能ブロック図である。
【図5】制御部の構成を示す機能ブロック図である。
【図6】第1及び第2の画質調整回路の構成を示す機能ブロック図である。
【図7】画像出力部の構成を示す機能ブロック図である。
【図8】表示部の断面構造を示す図である。
【図9】液晶パネルの正面図である。
【図10】TFT基板の回路図である。
【図11】(A)は表示部100の表示画面の観察角度と運転席側表示用画素を透過する光強度との各輝度における関係を示すグラフ、(B)は観察角度と助手席側表示用画素及び運転席側表示用画素を透過する光強度との関係を重ねて示したグラフである。
【図12】クロストーク領域を説明するための図である。
【図13】運転席側画像と助手席画像とが同一ソースの場合におけるクロストークを説明するための図である。
【図14】運転席側画像の輝度を下げた場合のクロストーク領域の位置変化を説明するための図である。
【図15】制御部による明るさ変更処理の一例を示すフローチャートである。
【図16】昼用画像と夜用画像の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
10…表示制御部
20…制御部(明るさ変更手段)
30…分配回路
50A,50B…第1及び第2の画質調整回路
60…音声調整回路
70…画像出力部
100…表示部
100A…装置本体
110…液晶パネル
120…バックライト
130…タッチパネル
140…メモリ
150…操作部
170…リモコン送受信部
190…明るさ検知センサ
200…乗員検知センサ
300A,300B…画像ソース
310…カメラ
320…CD/MD再生部
330…ラジオ受信部
340…TV受信部
350…DVD再生部
360…HD再生部
370…ナビゲーション部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の表示部に第1及び第2の画像をそれぞれ異なる方向から視認できるように表示する車載用表示装置であって、
表示部周辺の明るさに応じて前記表示部に表示される第1の画像の明るさを変更する明るさ変更手段を有し、
前記明るさ変更手段は、前記第1及び第2の画像が共通のソースから供給された画像の場合には、前記表示部周辺の明るさに応じて前記第1の画像の明るさを変更し、前記第1及び第2の画像が異なるソースから供給された画像の場合には、前記第1の画像の明るさを所定の明るさに維持する、
ことを特徴とする車載用表示装置。
【請求項2】
前記明るさ変更手段は、車両のイルミネーションがオフされた状態では、前記第1の画像を昼表示用の明るさで表示させ、前記イルミネーションがオンされた状態でかつ前記第1及び第2の画像のソースが同一の場合には前記第1の画像を夜表示用の明るさで表示させ、前記イルミネーションがオンされた状態でかつ前記第1及び第2の画像のソースが異なる場合には前記第1の画像を昼表示用の明るさで表示させることを特徴とする請求項1に記載の車載用表示装置。
【請求項3】
共通の表示部に第1及び第2の画像をそれぞれ異なる方向から視認できるように表示すると共に、前記第1又は第2の画像として少なくともナビゲーション画像を表示可能な車載用表示装置であって、
周囲の明るさの状態を示す切替信号に基づき、周囲が明るいとき用の明時用ナビゲーション画像と周囲が暗いとき用の暗時用ナビゲーション画像とを切替える画像切替手段と、
前記表示部に表示される第1の画像及び第2の画像の一方のみがナビゲーション画像の場合には、前記切替信号に関わらず、前記ナビゲーション画像として前記明時用ナビゲーション画像を表示させる画像切替制限手段と、を有することを特徴とする車載用表示装置。
【請求項4】
共通の表示部に第1及び第2の画像をそれぞれ異なる方向から視認できるように表示する車両用表示方法であって、
前記第1及び第2の画像が共通のソースから供給された画像の場合には、前記表示部周辺の明るさに応じて前記表示部に表示される第1の画像の明るさを変更し、
前記第1及び第2の画像が異なるソースから供給された画像の場合には、前記表示部周辺の明るさの変動に対して前記第1の画像の明るさを所定の明るさに維持する、
ことを特徴とする車両用表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−79217(P2007−79217A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−268207(P2005−268207)
【出願日】平成17年9月15日(2005.9.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VICS
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】