説明

送受信モジュール

【課題】大きなパルス幅を有する大電力の高周波信号が入力された場合であっても、リミタ回路および受信回路の増幅器が破壊されることを抑制することができる送受信モジュールを提供する。
【解決手段】アンテナ11と、リミタ回路16および受信系電力増幅器17を備えた受信回路14と、送信系電力増幅器20を備えた送信回路15とが、送受信切替スイッチ13により接続され、アンテナ11と送受信切替スイッチ13の間に設けられた検波回路12により、送受信切替スイッチ13を制御する制御信号を生成する。送受信切替スイッチ13は、制御信号が入力されない状態ではアンテナ11と受信回路14とを導通させ、制御信号が入力されるとアンテナ11と送信回路15とを導通させる。制御信号は、送受信切替スイッチ13に信号が入力された時から、リミタ回路16の熱時定数よりも短い時間までの間に送受信切替スイッチ13に入力される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダ等に使用される送受信モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダ等に使用される送受信モジュールは、所望の高周波信号をアンテナから比測定物(反射物)に送信し、比測定物(反射物)によって反射された高周波信号をアンテナにより受信することにより、比測定物(反射物)までの距離を計測するものである。なお、以下の説明において、比測定物なる記載は、比測定物(反射物)を意味するものとする。
【0003】
通常の送受信モジュールは、高周波信号の送受信端であるアンテナと、このアンテナにサーキュレータを介してそれぞれ接続された送信回路および受信回路と、により構成される。
【0004】
ここで、特にレーダにおいては、より遠方に高周波信号を送信することができること、および比測定物に反射された微弱な高周波信号を受信することができること、が求められる。このため、送信回路および受信回路には、それぞれ増幅器が設けられている。
【0005】
しかし、特に受信回路においては、例えば、極めて近距離に存在する比測定物によって反射された高周波信号を受信する場合がある。このとき、受信回路に設けられた増幅器には、破壊電力を超えた大きな電力の高周波信号が入力される。この結果、受信回路の増幅器が破壊されてしまう。
【0006】
さらに、比測定物が極めて近距離に存在する場合には、アンテナと比測定物との間で高周波信号の多重反射が生じ、その結果として送受信モジュールの送信時負荷VSWRが著しく劣化してしまう。このように送受信モジュールの送信時負荷VSWRが劣化した場合、アンテナから高周波信号を送信する際に、この信号がアンテナで反射してサーキュレータを介して受信回路に入力される。これによっても、受信回路に設けられた増幅器には、破壊電力を超えた大きな電力の高周波信号が入力される。この結果、受信回路の増幅器が破壊されてしまう。
【0007】
従って、従来の送受信モジュールにおいて、サーキュレータと受信回路の増幅器との間には、PINダイオードを用いたリミタ回路が設けられている(特許文献1参照)。このリミタ回路は、この回路に入力された高周波信号の電力を所望の電力にまで抑圧させる回路である。すなわち、送受信モジュールは、大電力の高周波信号を受信した場合であっても、リミタ回路によって所望の電力にまでピーク電力を抑圧させた後に、増幅器に入力されるため、上述の問題を解決することができる。
【0008】
また、通常、比測定物との距離が近い場合において用いられる高周波信号のパルス幅は、例えば1〜2μs程度の短パルスである。一方で、小電力用のPINダイオードを用いたリミタ回路の熱時定数は、およそ50〜100μs程度である。このように、高周波信号のパルス幅は、リミタ回路の熱時定数よりも大幅に小さいため、リミタ回路が熱的に破壊されることはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−153653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、パルス幅の大きな高周波信号を用いる大電力レーダシステムが開発されている。これに伴い、送受信モジュールにおいては、パルス幅の大きな大電力の高周波信号が入力される可能性が生じてきた。
【0011】
例えばリミタ回路の熱時定数が50μsであり、これに対してパルス幅が100μsの高周波信号が送受信モジュールに入力される場合を考えると、パルス前半部分ではリミタ回路によりピーク電力が抑圧されるが、途中でリミタ回路の熱時定数を越え、リミタ回路が熱的に破壊され、機能しなくなる。従って、パルス後半部分ではピーク電力が抑圧されない。このように、パルス後半部分のピーク電力が抑圧されていない高周波信号が後段の増幅器に入力されため、増幅器が破壊される。
【0012】
このように、大きなパルス幅を有する大電力の高周波信号が入力された場合、リミタ回路および受信回路の増幅器が破壊される問題があった。
【0013】
これに対応するために、リミタ回路内のPINダイオードを、大電力用のPINダイオードにすることにより、リミタ回路の熱時定数を拡大することが考えられるが、一般に大電力用のPINダイオードは挿入損失が大きいため、微弱な高周波信号を受信することが困難になる問題がある。
【0014】
本発明の課題は、この問題に鑑みてなされたものであり、大きなパルス幅を有する大電力の高周波信号が入力された場合であっても、リミタ回路および受信回路の増幅器が破壊されることを抑制することができる送受信モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による送受信モジュールは、送信信号を送信し、または受信信号を受信するアンテナと、このアンテナに接続され、前記アンテナにおいて受信した前記受信信号を分岐し、その一方に基づいて制御信号を生成する検波回路と、この検波回路に接続された入力端子および制御端子を有するとともに、前記検波回路において分岐された他方の前記受信信号を出力する第1の出力端子および第2の出力端子を有し、前記制御信号が前記制御端子に入力されることによって、前記分岐された他方の受信信号の電力を抑圧して前記第1の出力端子から出力するスイッチと、このスイッチの前記第1の出力端子に接続され、前記スイッチから出力された前記他方の前記受信信号の電力を抑圧するリミタ回路と、このリミタ回路に接続され、リミタ回路によって電力が抑圧された前記受信信号の他方の電力を増幅する第1の電力増幅器と、前記スイッチの前記第2の出力端子に接続された送信回路と、を具備し、前記スイッチは、これに前記受信信号が入力されてから、前記リミタ回路の熱時定数よりも短い時間までは、前記入力端子と前記第1の出力端子とが導通し、それ以降は前記入力端子と前記第2の出力端子とが導通するように制御されることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の送受信モジュールによれば、リミタ回路の熱時定数より小さなパルス幅の高周波信号を受信した場合には、リミタ回路によって、高周波信号のピーク電力を、増幅器の破壊電力以下に抑圧する。また、リミタ回路の熱時定数より大きなパルス幅の高周波信号を受信した場合には、まず、送受切替スイッチによって、リミタ回路の熱時定数より短い時間だけは高周波信号のピーク電力を抑圧せず、それ以降の高周波信号のピーク電力を抑圧する。そして、このように抑圧された高周波信号のピーク電力を、リミタ回路によって、増幅器の破壊電力以下に抑圧する。従って、入力される高周波信号のパルス幅に関わらず、入力される信号が大電力であっても、リミタ回路および受信回路の増幅器が破壊されることを抑制することができる
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態に係る送受信モジュールの要部を示す回路図である。
【図2】図1の送受信モジュールにおいて使用される送受切替スイッチをより具体的に示す回路図である。
【図3】図2に示される送受切替スイッチに適用されるFETの構成を示す断面図である。
【図4】パルス幅が小さい高周波信号を受信した際に、図1の点Aおよび点Bにおける高周波信号のピーク電力の推移を示す図である。
【図5】パルス幅が小さい高周波信号を受信した際に、図1の点Bおよび点Cにおける高周波信号のピーク電力の推移を示す図である。
【図6】パルス幅が大きい高周波信号を受信した際に、図1の点Aおよび点Bにおける高周波信号のピーク電力の推移を示す図である。
【図7】パルス幅が大きい高周波信号を受信した際に、図1の点Bおよび点Cにおける高周波信号のピーク電力の推移を示す図である。
【図8】図1の送受信モジュールにおいて使用される送受切替スイッチの他の形態を示す回路図である。
【図9】図2に示す送受切替スイッチの変形例を示す回路図である。
【図10】図8に示す送受切替スイッチの変形例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本実施形態の送受信モジュールについて詳細に説明する。図1は、本実施形態の送受信モジュールの要部を示す回路図である。図1に示すように、本実施形態の送受信モジュールは、高周波信号(以下、単に信号と称す)の送受信端であるアンテナ11に、検波回路12および送受切替スイッチ13を介して、受信回路14若しくは送信回路15が接続されている。
【0019】
この送受信モジュールは、アンテナ11によって受信された大電力の信号のパルス幅が受信回路14を構成する後述のリミタ回路16の熱時定数(τ)よりも小さい場合には、受信信号のピーク電力を、受信系低雑音増幅器17が破壊されない程度に抑圧するものである。また、受信された信号のパルス幅がリミタ回路16の熱時定数(τ)よりも大きい場合には、受信信号のピーク電力を、リミタ回路16および受信系低雑音増幅器17が破壊されない程度に抑圧するものである。なお、ピーク電力の抑圧は、パルス幅が小さい場合には、リミタ回路16にて行われ、パルス幅が大きい場合には、送受切替スイッチ13およびリミタ回路16にて行われる。以下に、この送受信モジュールの構成を詳細に説明する。
【0020】
まず、アンテナ11によって受信された信号が、受信回路14に到達するまでの流れにそって、構成を説明する。
【0021】
検波回路12はアンテナ11に接続されており、アンテナ11に入力された受信信号は、検波回路12に入力される。この検波回路12は、アンテナ11から入力された信号を分岐し、その一方の信号を送受切替スイッチ13の入力端子13−1に入力するとともに、他方の信号から、送受切替スイッチ13の動作を制御する制御信号を生成し、これを送受切替スイッチ13の制御端子13−2に入力するする回路である。なお、制御信号を生成する具体的な回路については後述する。
【0022】
検波回路12から出力された一方の信号は、送受切替スイッチ13に入力される。送受切替スイッチ13は、入力端子13−1および制御端子13−2を有する他、2箇所の出力端子(第1の出力端子13−3、第2の出力端子13−4)を有している。第1の出力端子13−3は受信回路14に接続されており、第2の出力端子13−4は送信回路15に接続されている。
【0023】
このような送受切替スイッチ13は、具体的には、例えばGaN系の材料からなるFETにより構成されたシャント型のスイッチによって構成される。図2は、シャント型のスイッチの構成を示す回路図である。
【0024】
図2に示すように、シャント型のスイッチは、ノーマルオン型の第1のFET18と、同じくノーマルオン型の第2のFET19と、によって構成される。そして、第1のFET18のドレイン端子18−1は、入力端子13−1と第1の出力端子13−3との間に接続され、第2のFET19のドレイン端子19−1は、入力端子13−1と第2の出力端子13−4との間に接続される。第1のFET18のソース端子18−2、および第2のFET19のソース端子19−2は、それぞれ接地される。そして、第1のFET18のゲート端子18−3、および第2のFET19のゲート端子19−3は、それぞれスイッチ13の制御端子13−2に接続される。
【0025】
この送受切替スイッチ13は、検波回路12から受信回路14に受信信号を送信する際には、入力端子13−1と第1の出力端子13−3とを導通させ、送信回路15から検波回路12に送信信号を送信する際には、入力端子13−1と第2の出力端子13−4とを導通させるように制御される回路である。
【0026】
なお、入力端子13−1と、第1の出力端子13−3または第2の出力端子13−4との導通の切り替えは、検波回路12にて生成される制御信号によって行われる。
【0027】
図2に示されるシャント型のスイッチに適用されるノーマルオン型FET18の構成は、図3に示す通りである。
【0028】
図3は、ノーマルオン型FET18の構成を示す断面図である。図3に示すように、ノーマルオン型FET18は、バルク状のGaN層36上に、n+型のGaN層37が形成されている。このn+型のGaN層37は電子走行層であり、例えば1〜2μm程度の厚みで形成されている。このようなn+型のGaN層37上には、互いに離間してドレイン電極38、ソース電極39が形成されており、これらの電極38、39間には、ゲート電極40が形成されている。
【0029】
なお、このシャント型のスイッチ17に適用される第2のFET19の構成は、第1のFET18と同様である。
【0030】
このようなシャント型のスイッチは、いずれか一方のFETのゲート端子に所望の電圧を印加することにより、入力端子13−1と第1の出力端子13−3との導通状態と、入力端子13−1と第2の出力端子13−3との導通状態と、を選択可能なスイッチである。すなわち、入力端子13−1と第1の出力端子13−3とを導通させたい場合には、第1のFET18のゲート端子18−3に所望の電圧を印加し、入力端子13−1と第2の出力端子13−4とを導通させたい場合には、第2のFET19のゲート端子19−4に所望の電圧を印加することにより、出力される端子を選択可能なスイッチである。
【0031】
例えば、通常時には第1のFET18のゲート端子18−3に電圧を印加しておき、第1のFET18を短絡状態にしておく。これにより、入力端子13−1に入力された受信信号の大部分は、第1の出力端子13−3から出力される。
【0032】
この状態から、検波回路12にて生成される制御信号を第1のFET18のゲート端子18−3に入力すると、第1のFET18は開放状態となる。従って、入力端子13−1に入力された受信信号の大部分は、第2の出力端子13−4から出力される。ここで、制御信号とは、通常時に第1のFET18のゲート端子18−3に印加される電圧、および通常時に第2のFET19のゲート端子19−3に印加される電圧が、それぞれ反転した信号である。
【0033】
具体的には、次のように動作する。通常時には、第1のFET18のゲート端子18−3に−3V、第2のFET19のゲート端子19に0Vの電圧を印加しておく。この状態において、例えば入力端子13−1にピーク電力が10Wの受信信号が入力されると、第1の出力端子13−3からはピーク電力が10W程度の受信信号が出力され、第2の出力端子13−4からはピーク電力が0.01W程度の受信信号が出力される。
【0034】
しかし、第1のFET18のゲート端子18−3に例えば0Vの制御信号が入力され、第2のFET19のゲート端子19−3に例えば−3Vの制御信号が入力されると、入力端子13−1に入力された受信信号は、その大部分が第2の出力端子13−4から出力されるようにスイッチされる。すなわち、第1の出力端子13−3からはピーク電力が0.01W程度の受信信号が出力され、第2の出力端子13−3からはピーク電力が10W程度の受信信号が出力される。
【0035】
以上のシャント型スイッチは、例えば上述のように入力端子13−1にピーク電力が10Wの受信信号が入力された場合、通常時は第1の出力端子13−3からは10W程度のピーク電力の受信信号が出力されるが、制御信号が入力されることによって第1の出力端子13−3からは0.01W程度のピーク電力の受信信号が出力されるような特性を有する。すなわち、このシャント型のスイッチは、第1の出力端子13−3から見れば、制御信号が入力されることによって、出力される受信信号のピーク電力はおよそ30dB程度抑圧される特性を有する。
【0036】
なお、このような特性は、スイッチの一般的な特性であり、一般的なスイッチとしての特性を十分に満たす。本来のスイッチの特性としては、例えば上述のシャント型のスイッチに制御信号が入力されることにより、第1の出力端子13−3からは信号が完全に出力されないことが望ましい。しかし、本願においては、制御信号が入力されることにより、第1の出力端子13−3からリークされる電力を積極的に利用する。
【0037】
このような送受切替スイッチ13に受信信号が入力されると、そのΔt(<τ)後に制御信号が入力され、第1の出力端子13−3から出力される受信信号のピーク電力は、例えば30dB程度抑圧される。従って、後段のリミタ回路16には、この回路16の熱時定数(τ)より長い時間に渡って、大電力が入力されることが抑制される。
【0038】
送受切替スイッチ13から出力された受信信号は、受信回路14に入力される。受信回路14は、リミタ回路16および受信系低雑音増幅器17がこの順で直列に接続された回路である。受信系低雑音増幅器17の出力は、受信信号を処理する受信信号処理回路(図示せず)に送信される。
【0039】
ここで、リミタ回路16は、小電力用のPINダイオード16−1およびDCリターン回路16−2からなり、PINダイオード16−1のアノードおよびDCリターン回路16−2の一端は、スイッチ13の第1の出力端子13−3と、後述の受信系低雑音増幅器17と、の間に、互いに並列に接続されている。そして、PINダイオード16−1のカソードおよびDCリターン回路16−2の他端は接地されている。なお、DCリターン回路16−2は、例えばλ/4短絡線路によって構成される。また、PINダイオード16−1は、例えば熱時定数が50〜100μs程度の小信号用のPINダイオードである。このPINダイオード16−1は、熱時定数がこれより大きい大信号用のPINダイオードと比較して、挿入損失が小さいため、好適に用いられる。
【0040】
このリミタ回路16は、入力された受信信号のピーク電力を、受信系低雑音増幅器17の破壊レベルより小さくなるように抑圧する回路である。なお、この回路のより詳細な動作の説明は、後述する。
【0041】
このリミタ回路16により、後段の受信系低雑音増幅器17には、この増幅器17の破壊レベルより小さいピーク電力の受信信号が入力される。
【0042】
リミタ回路16から出力された受信信号は、受信系低雑音増幅器17に入力される。ここで受信信号は、この後段の受信信号処理回路(図示せず)において必要な電力レベルまで電力が増幅され、受信信号処理回路(図示せず)に送信される。
【0043】
また、上述の送受切替スイッチ13の第2の出力端子13−4に接続された送信回路15は、送信系電力増幅器20および図示されない送信波生成回路を含む回路である。送信波生成回路により生成された送信信号は、送信系電力増幅器20においてその電力が増幅された後、送受切替スイッチ13、検波回路12を介してアンテナ11に供給される。
【0044】
次に、検波回路12において分岐された他方の受信信号から、送受切替スイッチ13の動作を制御する制御信号が生成されるまでの流れにそって、検波回路12の構成を説明する。
【0045】
検波回路12は、電力モニタ回路21、検波系電力増幅器22、比較駆動器23、およびOR回路24からなり、これらが直列に接続されている。
【0046】
上述のようにアンテナ11に入力された受信信号は検波回路12に入力されるが、より具体的には、電力モニタ回路21に入力される。アンテナ11に接続された電力モニタ回路21は、より具体的にはカプラ25、整流用ダイオード26、および抵抗27からなる。このうちカプラ25は、互いに近接された第1、第2のマイクロストリップライン28−1、28−2からなり、第1のマイクロストリップライン28−1の一端は、カプラ25の入力端子25−1となってアンテナ11に接続され、他端はカプラ25の第1の出力端子25−2となって送受切替スイッチ13の入力端子13−1に接続されている。また、第2のマイクロストリップライン28−2の一端は、カプラ25の第2の出力端子25−3となって整流用ダイオード26に接続され、他端はカプラ25の第3の出力端子25−4となって抵抗27を介して接地されている。このカプラ25により、入力された受信信号は、分岐される。
【0047】
一方で、整流用ダイオード26は、入力された受信信号を整流する(交流信号を直流信号に変換する)ものである。この整流用ダイオード26により、カプラ25において分岐された交流の受信信号は、直流信号に変換される。
【0048】
すなわち、以上に説明した電力モニタ回路21は、カプラ25に入力された受信信号を分岐し、その一方を送受切替スイッチ13に送信する一方で、分岐された他方の信号を整流用ダイオード26に供給するとともに、整流用ダイオード26によって、直流信号に変換されて出力する回路である。
【0049】
電力モニタ回路21によって直流信号に変換されて出力された信号は、検波系電力増幅器22に入力される。検波系電力増幅器22は、より具体的には第1の差動増幅器29、第1の増幅器用抵抗30、第2の増幅器用抵抗31および、第3の増幅器用抵抗32により構成されている。このうち、第1の差動増幅器29の非反転入力端子には、整流用ダイオード26の出力端子と、一端が接地された第1の増幅器用抵抗30の他端とが、共通に接続されている。また、第1の差動増幅器29の反転入力端子は、第2の増幅器用抵抗31を介して接地されている。さらに、第1の差動増幅器29の出力端子は、比較駆動器23の入力端子に接続されている。なお、第1の差動増幅器29の反転入力端子と出力端子との間には、第3の増幅器用抵抗32が接続されており、これによって負帰還回路が形成されている。
【0050】
この検波系電力増幅器17は、直流信号に変換された信号の電力を増幅する回路であるが、負帰還回路を有する構成であるため、電力を安定して増幅させることが可能な回路である。
【0051】
検波系電力増幅器22によって電力が増幅された信号は、比較駆動器23に入力される。比較駆動器23は、より具体的には第2の差動増幅器33および定電圧源34からなる。このうち、第2の差動増幅器33の非反転入力端子には、第1の差動増幅器29の出力端子が接続され、出力端子には、OR回路24の第1の入力端子が接続される。また、第2の差動増幅器33の反転入力端子には、定電圧源34が接続されている。
【0052】
この比較駆動器23は、検波系電力増幅器22によって電力が増幅された信号の電圧と、定電圧源の電圧とを比較して、これらの差分に基づいた電圧の信号(差分信号)を出力する回路である。なお、定電圧源34の電圧は、送受切替スイッチ13の入力端子13−1に受信信号が入力されてから一定時間(τより短い時間)後に、入力端子13−1と第2の出力端子13−4とが導通するようにスイッチ13を制御する制御信号が、後述するOR回路24から出力される程度の電圧に設定されている。
【0053】
比較駆動器23から出力された差分信号は、OR回路24の一方の入力端子に入力される。また、OR回路24の他方の入力端子には、送信波生成回路(図示せず)が接続されている。なお、送信波生成回路(図示せず)は、送受信モジュールを、受信状態から送信状態に切り替えるための送受切替信号35を生成する回路である。
【0054】
このOR回路24は、差分信号、または送受切替信号35のいずれか一方が入力されると、送受切替スイッチ13の入力端子13−1と第2の出力端子13−4とが導通するように制御する制御信号を出力する回路である。
【0055】
なお、出力される制御信号の電圧は、カプラ25の分岐比、検波系電力増幅器22の増幅率、および比較駆動器23に用いられる定電圧源34の電圧をそれぞれ適宜調節することにより決定される。
【0056】
ここで、カプラ25の第1の出力端子25−2と送受信切替スイッチ13の入力端子13−1とは直接接続される一方で、カプラ25の第2の出力端子25−3と送受信切替スイッチ13の制御端子13−2とは、検波回路12、検波系電力増幅器22、比較駆動器23およびOR回路24を介して接続される。従って、カプラ25において分岐された信号の一方が送受信切替スイッチ13の入力端子13−1に入力されてから、カプラ25において分岐された信号の他方から制御信号を生成し、これが送受信切替スイッチ13の制御端子13−2に入力し、スイッチ動作が完了するまでには、例えば1〜2μs程度の時間差が生じる。この送受信モジュールにおいては、この時間差が、リミタ回路16の熱時定数(τ)よりも短い時間(Δt)になるように構成される。
【0057】
次に、以上に説明した送受信モジュールの動作について説明する。なお、この動作の説明においては、はじめに、送受信モジュールに、リミタ回路16の熱時定数(τ)よりも小さいパルス幅(T1<Δt<τ)の信号が入力された場合の動作を説明し、次に、リミタ回路16の熱時定数(τ)よりも大きいパルス幅(Δt(例えば100μs)<τ<T2)の信号が入力された場合の動作を説明する。
【0058】
はじめに、送受信モジュールに、リミタ回路16の熱時定数(τ)よりも小さいパルス幅(T1)の信号が入力された場合の動作について、図4、図5を参照して説明する。図4は、パルス幅(T1)の信号を受信した際に、図1の点Aおよび点Bにおける信号のピーク電力の推移を示す図であり、図5は、パルス幅(T1)の信号を受信した際に、図1の点Bおよび点Cにおける信号のピーク電力の推移を示す図である。
【0059】
まず、検波回路12に入力された受信信号は、カプラ25によって分岐される。分岐された一方の受信信号は、送受切替スイッチ13の入力端子13−1に入力される。また、分岐された他方の受信信号は、カプラ25の第2の出力端子25−3に接続された整流用ダイオード26によって整流されて直流に変換された後に、検波系電力増幅器22に入力される。
【0060】
送受切替スイッチ13に入力される一方の受信信号が図1の点Aを通過すると、この点Aにおける電力レベルは、図4のAに示すように、受信信号が通過し始めるとともに電力レベルがWまで上昇し、その状態がT1時間だけ続いた後、電力レベルが雑音レベルにまで低下する。なお、整流用ダイオード26に送られる受信信号のピーク電力は、送受切替スイッチ13の入力端子13−1に入力される受信信号のピーク電力Wのおよそ1/10乃至1/100程度である。
【0061】
上述のカプラ25による受信信号の分岐は、以下のように分岐される。第1のマイクロストリップライン28−1に受信信号が入力されると、第1のマイクロストリップライン28−1の第1の出力端子25−2から受信信号が出力されるとともに、第1のマイクロストリップライン28−1に近接された第2のマイクロストリップライン28−2に誘導電流を発生させる。この誘導電流がカプラ25の第2の出力端子25−3から出力される。以上のように受信信号は分岐される。
【0062】
整流用ダイオード26によって直流に変換された受信信号は、検波系電力増幅器22を構成する第1の差動増幅器29の非反転入力端子に入力され、電力増幅される。増幅された受信信号は、この増幅器22の出力端子に接続された比較駆動器23に入力される。
【0063】
増幅された受信信号が比較駆動器23を構成する第2の差動増幅器33の非反転入力端子に入力されると、第2の差動増幅器33は、入力された受信信号の電圧と定電圧源34の電圧との差分電圧に基づいた差分信号を出力する。
【0064】
比較駆動器23から出力される差分信号は、OR回路24の一方の入力端子に入力される。しかし、この時点では送受信モジュールは受信状態であるため、OR回路24の他方の入力端子には、送受切替信号35は入力されない。従って、OR回路24からは、送受切替スイッチ13の動作を制御する制御信号が出力される。
【0065】
OR回路24から出力される制御信号が、送受切替スイッチ13の制御端子13−2に入力されることにより、送受信切替スイッチ13の入力端子13−1と第1の出力端子13−3との導通状態は、入力端子13−1と第2の出力端子13−4との導通状態に切り替えられる。
【0066】
ここで、送受切替スイッチ13の入力端子13−1に受信信号が入力されてから、制御信号が送受切替スイッチ13の制御端子13−2に入力され、スイッチ動作が完了するまでにはΔtだけの時間がかかる。しかし、受信信号のパルス幅(T1)はΔtよりも短いため、スイッチ動作が完了する前に、受信信号は全て第1の出力端子13−3から出力される。従って、この送受切替スイッチ13に入力された信号のピーク電力は抑圧されずに、第1の出力端子13−3から出力される。
【0067】
従って、例えば、送受切替スイッチ13の入力端子13−1にピーク電力が10Wの受信信号が入力された場合、送受切替スイッチ13の第1の出力端子13−3からは、ピーク電力が抑圧されずにそのままピーク電力が10Wの受信信号が出力される。
【0068】
第1の出力端子13−3から出力された信号は、リミタ回路16に入力される。リミタ回路16に入力される信号が、図1の点Bを通過すると、この点Bにおける電力レベルは、図4のBに示すように、受信信号が通過し始めるとともに電力レベルがWまで上昇し、その状態がT1時間だけ続いた後、電力レベルが雑音レベルにまで低下する。すなわち、送受切替スイッチ13によってピーク電力が抑圧されないため、図1の点Aを通過する信号と図1の点Bを通過する信号のピーク電力はほぼ一致する。
【0069】
送受切替スイッチ13から出力された信号がリミタ回路16に入力されると、リミタ回路16が有するPINダイオード16−1によって規定される電力値Wc(<受信系低雑音増幅器17の破壊レベルW)にまでピーク電力が抑圧され、このピーク電力が抑圧された信号が受信系低雑音増幅器17に入力される。受信系低雑音増幅器17に入力される信号が、図1の点Cを通過すると、この点Cにおける電力レベルは、図5のCに示すように、受信信号が通過し始めるとともに電力レベルがW(<W<W)まで上昇し、その状態がT1時間だけ続いた後、電力レベルが雑音レベル程度にまで低下する。すなわち、リミタ回路16によって、信号のピーク電力を、受信系低雑音増幅器17の破壊レベルWより小さくなるように抑圧する。
【0070】
なお、リミタ回路16は、以下のように動作することによりピーク電力を抑圧させる。リミタ回路16に大電力の受信信号が入力されると、PINダイオード16−1の両端に電圧が印加され、PINダイオード16−1は短絡する。しかし、PINダイオード16−1に印加される電圧は、このダイオード16−1の特性によって定められるリミット電圧以上に大きくなることはない。一方で、PINダイオード16−1が短絡すると、λ/4波長短絡線路からなるDCリターン回路16−2およびPINダイオード16−1には直流電流が流れ、DCリターン回路16−2は、交流信号に対しては開放、直流信号に対しては短絡となる。従って、受信信号によってPINダイオード16−1に印加される電圧がリミット電圧を超える場合には、受信信号の一部はリミタ回路16によって反射され、PINダイオード16−1間の電圧は、リミット電圧以上にはならない。これにより、リミタ回路16から出力される受信信号のピーク電力は、リミット電圧により定められる電力まで抑圧されて出力される。
【0071】
すなわち、リミタ回路16に用いられるPINダイオード16−1を、リミタ回路16から出力される信号の電力が後段の信系低雑音増幅器17の破壊電力Wより小さくなるように選定することにより、リミタ回路16からは、受信系低雑音増幅器17の破壊電力Wより小さい電力レベルの受信信号が出力される。
【0072】
上述のリミタ回路16において、PINダイオード16−1の破壊電力がW以下であっても、このピーク電力が入力される時間T1は、リミタ回路16の熱時定数(τ)よりも短いため、PINダイオード16−1が破壊されることはない。
【0073】
このようにリミタ回路16によって、受信信号のピーク電力を、受信系低雑音増幅器17の破壊電力W以下の電力(W)まで抑圧し、これを受信系低雑音増幅器17に入力する。従って、受信系低雑音増幅器17が破壊されることもない。
【0074】
以上に説明したように、送受信モジュールが、リミタ回路16の熱時定数(τ)よりも小さなパルス幅(T1)の信号を受信した場合、リミタ回路16によって、受信系低雑音増幅器17の破壊電力W以下の電力(W)になるように受信信号のピーク電力が抑圧される。従って、リミタ回路16の熱破壊は抑制され、さらに、受信系低雑音増幅器17の破壊も抑制される。
【0075】
次に、以上に説明した送受信モジュールが、リミタ回路16の熱時定数(τ)よりも大きなパルス幅(T2)の信号を受信した場合の動作について、図6、図7を参照して説明する。なお、図6は、パルス幅(T2)の信号を受信した際に、図1の点Aおよび点Bにおける信号のピーク電力の推移を示す図であり、図7は、パルス幅(T2)の信号を受信した際に、図1の点Bおよび点Cにおける信号のピーク電力の推移を示す図である。
【0076】
アンテナ11において受信された信号は、検波回路12において分岐され、その一方は送受切替スイッチ13の入力端子13−1に入力される点は、上述の動作と同じである。また、検波回路12おいて分岐された他方の信号が、OR回路24の一方の入力端子に入力され、送受切替スイッチ13の動作を制御する制御信号が出力されるまでは、上述の動作と同じである。従って、以下に、送受切替スイッチ13の入力端子13−1に信号が入力されるとともに、このスイッチ13の制御端子13−2に制御信号が入力された後の動作について説明する。
【0077】
先の説明と同様に、送受切替スイッチ13にパルス幅(T2)でピーク電力がWの信号が入力されてから、制御信号が送受切替スイッチ13に入力され、スイッチ動作が完了するまでにはΔt(<T2)だけの時間がかかる。従って、送受切替スイッチ13に信号が入力されてからΔtの時間は、送受切替スイッチ13の入力端子13−1と第1の出力端子13−3とが導通状態にある。よって、送受切替スイッチ13に入力される信号を構成するパルスのうち、立ち上がり部分からΔtまでの部分は、ピーク電力Wが抑圧されずに第1の出力端子13−3から出力される。しかし、パルスのうち、Δt以降の部分については、送受切替スイッチ13の入力端子13−1と第2の出力端子13−4とが導通状態に切り替わっているため、第2の出力端子13−4から出力される。
【0078】
従って、例えば図2に示されるシャント型のスイッチの入力端子13−1にピーク電力が10W程度の大電力の信号が入力された場合、初めはピーク電力が抑圧されずに第1の出力端子13−3からは、ピーク電力がほぼ10W程度の受信信号が出力される。しかし、途中からはピーク電力が0.01W程度まで抑圧されて出力される。
【0079】
第1の出力端子13−3から出力された信号は、リミタ回路16に入力される。リミタ回路16に入力される信号が、図1の点Bを通過すると、この点Bにおける電力レベルは、図6のBに示すように、受信信号が通過し始めるとともに電力レベルがWまで上昇し、その後Δtまではピーク電力がWの状態が続く。そして、Δt以降T2までは、ピーク電力がWの状態が続き、最後に電力レベルが雑音レベル程度にまで低下する。すなわち、送受切替スイッチ13によって、信号を構成するパルスの一部のピーク電力が抑圧される。なお、図6のAは、ピーク電力がWで、パルス幅T2の信号が図1の点Aを通過する際の、この点Aにおける電力レベルの推移を示すが、この説明は省略する。
【0080】
送受切替スイッチ13から出力された信号がリミタ回路16に入力されると、リミタ回路16が有するPINダイオード16−1によって規定される電力値Wc(<W)にまで信号のピーク電力が抑圧される。すなわち、リミタ回路16によって、信号のピーク電力を、後段の受信系低雑音増幅器17の破壊レベルWより小さくなるように抑圧する。このリミタ回路16の動作は、先に説明した動作と同じである。
【0081】
ここで、送受切替スイッチ13により、パルス幅T2の信号は、パルスの立ち上がりからΔt(<τ)までの間のピーク電力は大電力Wであるが、それ以降は、Wまでピーク電力が抑圧されている。従って、リミタ回路16には、熱時定数(τ)を超えて大電力が入力されることは抑制されるため、リミタ回路16が熱破壊されることが抑制される。
【0082】
リミタ回路16によってピーク電力が抑圧された信号は、受信系低雑音増幅器17に入力される。受信系低雑音増幅器17に入力される信号が、図1の点Cを通過すると、この点Cにおける電力レベルは、図7のCに示すように、受信信号が通過し始めるとともに電力レベルがW(<W<W)まで上昇し、その状態がT2時間だけ続いた後、電力レベルが雑音レベル程度にまで低下する。従って、受信系低雑音増幅器17が破壊されることもない。
【0083】
以上に説明したように、送受信モジュールが、リミタ回路16の熱時定数(τ)よりも大きなパルス幅(T2)の信号を受信した場合、リミタ回路16の熱時定数(τ)を超えて大電力がリミタ回路16に入力されないように、送受切替スイッチ13によって、信号のピーク電力の一部を抑圧する。さらに、この信号のピーク電力が、受信系低雑音増幅器17の破壊電力W以下の電力(W)になるように、リミタ回路16によって抑圧する。従って、リミタ回路16の熱破壊は抑制され、さらに、受信系低雑音増幅器17の破壊も抑制される。
【0084】
以上に説明したように、本実施形態の送受信モジュールによれば、アンテナ11によって受信された大電力の信号のパルス幅がリミタ回路16の熱時定数(τ)よりも小さい場合には、受信信号のピーク電力を、受信系低雑音増幅器17が破壊されない程度に抑圧することができる。また、受信された信号のパルス幅がリミタ回路16の熱時定数(τ)よりも大きい場合には、受信信号のピーク電力を、リミタ回路16および受信系低雑音増幅器17が破壊されない程度に抑圧することができる。従って、送受信モジュールに入力される信号のパルス幅に関わらず、大電力の信号を受信することによるリミタ回路16および受信系低雑音増幅器17の破壊を抑制することができる。
【0085】
以上に本実施形態の送受信モジュールについて説明した。しかし、本発明の送受信モジュールは、上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、送受切替スイッチ13は、図2に示されるようなシャント型のスイッチに限定されず、例えば図8に示すように、GaN系の材料により形成されたノーマルオン型の第1のFET42、およびノーマルオン型の第2のFET43を有するシリーズ型のスイッチであってもよい。このシリーズ型のスイッチの第1のFET42のドレイン端子42−1、および第2のFET43のソース端子43−2は、スイッチ13の入力端子13−1に接続されている。第1のFET42のソース端子42−2は、スイッチ13の第1の出入力端子13−3に接続されており、第2のFET43のドレイン端子43−1は、スイッチ13の第2の出力端子13−4に接続されている。そして、第1のFET42のゲート端子42−2および第2のFET43のゲート端子43−2は、ともにスイッチ13の制御端子13−2に接続されている。
【0086】
このスイッチも、図2に示されるシャント型のスイッチと同様の特性を有する。すなわち、FET42、43に制御信号を入力することにより入力端子13−1との導通状態がスイッチし、第1の出力端子13−3から見れば、出力される受信信号のピーク電力は抑圧される。しかし、このシリーズ型のスイッチは、シャント型のスイッチと比較して、熱耐性が劣るため、本願においては、図2に示されるシャント型のスイッチを適用することが好ましい。
【0087】
なお、図2、図8に示す各スイッチに使用されるFET18、19、42、43は、GaN系のFETであったが、これらはGaN系の材料を用いたFET以外であってもよく、GaAs系、InP系の材料を用いたFET、HEMT等、高周波特性に優れたスイッチ素子であれば適用可能である。
【0088】
また、送受切替スイッチ13は、図9に示されるようなダイオード44−1、44−2を用いたシャント型のスイッチであってもよい。このシャント型のスイッチは、入力端子13−1と第1の出力端子13−3との間に、第1のキャパシタ45−1、第2のキャパシタ45−2が直列に接続され、入力端子13−1と第2の出力端子13−4との間に、第3のキャパシタ45−3、第4のキャパシタ45−3が直列に接続されるとともに、第1のキャパシタ45−1と第2のキャパシタ45−2との間には、カソードが接地された第1のPINダイオード44−1のアノード、第3のキャパシタ45−3と第4のキャパシタ45−4との間には、カソードが接地された第2のPINダイオード44−2のアノードがそれぞれ接続されたものである。また、第1のキャパシタ45−1と第2のキャパシタ45−2との間には、第1のPINダイオード44−1と並列に、一端が第5のキャパシタ45−5を介して接地された4/λ線路46−1が接続されており、第3のキャパシタ45−3と第4のキャパシタ45−4との間には、第2のPINダイオード44−2と並列に、一端が第6のキャパシタ45−6を介して接地された4/λ線路46−2が接続されたものである。なお、制御端子13−2は、4/λ線路46−1と第5のキャパシタ45−5との間、および、4/λ線路46−2と第6のキャパシタ45−6との間にそれぞれ接続されている。
【0089】
また、送受切替スイッチ13は、図10に示されるようなダイオード47−1、47−2を用いたシリーズ型のスイッチであってもよい。このシリーズ型のスイッチは、入力端子13−1と第1の出力端子13−3との間に、第1のキャパシタ48−1、第1のPINダイオード47−1、第2のキャパシタ48−2が直列に接続され、入力端子13−1と第2の出力端子13−4との間に、第3のキャパシタ48−3、第2のPINダイオード47−2、第4のキャパシタ48−4が直列に接続されたものである。そして、第1のPINダイオード47−1のカソード、および第2のPINダイオード47−2のカソードには、それぞれ一端が接地された4/λ線路49−1、49−2が接続されており、また、第1のPINダイオード47−1のアノード、および第2のPINダイオード47−2のアノードには、それぞれ第5、第6のキャパシタ48−5、48−6を介して一端が接地された4/λ線路49−3、49−4が接続されている。なお、制御端子13−2は、4/λ線路49−3と第5のキャパシタ48−5との間、および、4/λ線路49−4と第6のキャパシタ48−6との間にそれぞれ接続されている。
【0090】
以上に示したように、送受切替スイッチ13に適用されるスイッチ素子については限定されない。
【0091】
以上には、送受信切替スイッチ13の変形例について説明したが、本発明の送受信モジュールにおいては、他にも、例えば電力モニタ回路20内のカプラ25は、一般に、入力された受信信号を所望の分岐比で分岐できる構成であればよく、上述の構成に限定されるものではない。
【0092】
また、検波系電力増幅器22は、上述した構成以外であってもよく、例えば、差動増幅器を複数段直列に接続する等、微弱な検波信号の電力を増幅可能な構成であれば、適用可能である。なお、カプラ25によって分岐された信号の電力を増幅しなくとも、最終的に制御信号を生成することが可能であれば、必ずしも検波系電力増幅器22は必要なものではない。
【符号の説明】
【0093】
11・・・アンテナ
12・・・検波回路
13・・・送受切替スイッチ
13−1・・・入力端子
13−2・・・制御端子
13−3・・・第1の出力端子
13−4・・・第2の出力端子
14・・・受信回路
15・・・送信回路
16・・・リミタ回路
16−1・・・小電力用のPINダイオード
16−2・・・DCリターン回路
17・・・受信系低雑音増幅器
18、42・・・ノーマルオン型の第1のFET
19、43・・・ノーマルオン型の第2のFET
18−1、19−1、42−1、43−1・・・ドレイン端子
18−2、19−2、42−2、43−2・・・ソース端子
18−3、19−3、42−3、43−3・・・ゲート端子
20・・・送信系出力増幅器
21・・・電力モニタ回路
22・・・検波系電力増幅器
23・・・比較駆動器
24・・・OR回路
25・・・カプラ
25−1・・・入力端子
25−2・・・第1の出力端子
25−3・・・第2の出力端子
25−4・・・第3の出力端子
26・・・整流用ダイオード
27・・・抵抗
28−1・・・第1のマイクロストリップライン
28−2・・・第2のマイクロストリップライン
29・・・第1の差動増幅器
30・・・第1の増幅器用抵抗
31・・・第2の増幅器用抵抗
32・・・第3の増幅器用
33・・・第2の差動増幅器
34・・・定電圧源
35・・・送受切替信号
36・・・GaN層
37・・・n+型のGaN層
38・・・ドレイン電極
39・・・ソース電極
40・・・ゲート電極
44−1、47−1・・・第1のPINダイオード
44−2、47−2・・・第2のPINダイオード
45−1乃至45−6、48−1乃至48−2・・・キャパシタ
46−1、46−2、49−1乃至49−4、・・・4/λ線路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送信信号を送信し、または受信信号を受信するアンテナと、
このアンテナに接続され、前記アンテナにおいて受信した前記受信信号を分岐し、その一方に基づいて制御信号を生成する検波回路と、
この検波回路に接続された入力端子および制御端子を有するとともに、前記検波回路において分岐された他方の前記受信信号を出力する第1の出力端子および第2の出力端子を有し、前記制御信号が前記制御端子に入力されることによって、前記分岐された他方の受信信号の電力を抑圧して前記第1の出力端子から出力するスイッチと、
このスイッチの前記第1の出力端子に接続され、前記スイッチから出力された前記他方の前記受信信号の電力を抑圧するリミタ回路と、
このリミタ回路に接続され、リミタ回路によって電力が抑圧された前記受信信号の他方の電力を増幅する第1の電力増幅器と、
前記スイッチの前記第2の出力端子に接続された送信回路と、
を具備し、
前記スイッチは、これに前記受信信号が入力されてから、前記リミタ回路の熱時定数よりも短い時間までは、前記入力端子と前記第1の出力端子とが導通し、それ以降は前記入力端子と前記第2の出力端子とが導通するように制御されることを特徴とする送受信モジュール。
【請求項2】
前記スイッチは、複数のノーマルオン型のスイッチ素子により構成されたシャント型のスイッチであることを特徴とする請求項1に記載の送受信モジュール。
【請求項3】
前記ノーマルオン型のスイッチ素子は、GaN系の材料により形成されたスイッチ素子であることを特徴とする請求項2に記載の送受信モジュール。
【請求項4】
前記ノーマルオン型のスイッチ素子は、FETであることを特徴とする請求項3に記載の送受信モジュール。
【請求項5】
前記スイッチは、複数のPINダイオードを有するシャント型のスイッチであることを特徴とする請求項1に記載の送受信モジュール。
【請求項6】
前記複数のPINダイオードは、GaN系の材料により形成されたPINダイオードであることを特徴とする請求項5に記載の送受信モジュール。
【請求項7】
前記検波回路は、入力された前記受信信号を分岐するカプラと、
このカプラの一方の出力端子に接続され、この出力端子から出力された前記受信信号を整流する整流用ダイオードと、
この整流用ダイオードに電気的に接続され、整流された前記受信信号の電圧と、定電圧源の電圧との差に基づいて前記差分信号を生成し、この差分信号を出力する比較駆動器と、
この比較駆動器に接続され、前記差分信号が入力されることにより、前記制御信号を出力するOR回路と、
を具備することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の送受信モジュール。
【請求項8】
前記整流用ダイオードと前記比較駆動器との間には、負帰還回路を備えた第3の電力増幅器を具備することを特徴とする請求項7に記載の送受信モジュール。
【請求項9】
前記リミタ回路は、電力抑圧用PINダイオードおよびDCリターン回路を有し、これらは、この回路の入力端子若しくは出力端子に、並列に接続されたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の送受信モジュール。
【請求項10】
前記電力抑圧用PINダイオードは、小信号の電力を抑圧するPINダイオードであることを特徴とする請求項9に記載の送受信モジュール。
【請求項11】
前記第1の電力増幅器は、低雑音増幅器であることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の送受信モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−188102(P2011−188102A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49330(P2010−49330)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】