説明

透明な整流性の金属−金属酸化物−半導体接触構造およびその製造方法および使用

本発明は、特に光電子工学、太陽光技術、およびセンサ技術の電子部品において使用するための透明な整流性接触構造ならびにその製造方法に関する。本発明による透明な整流性接触構造は、下記の構成要素:a)透明な半導体、b)金属酸化物、金属硫化物、および/または金属窒化物から成り、透明で絶縁性でなく伝導性でなく、固有抵抗が好ましくは10Ωcm〜10Ωcmの範囲内である層、およびc)透明な導電体から成る層を有し、層b)は半導体a)と層c)の間に形成されており、この層b)の組成は特許明細書の中で詳しく定義されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
好ましくは透明な層系として構成されており、かつ整流特性を有する接触構造を提案する。さらに、このような接触構造の作製方法を提示し、ならびにこの接触構造の使用に関する可能性を示す。この接触構造は、少なくとも、好ましくは透明な半導体と透明な金属酸化物と透明な導電体とから成る。
【背景技術】
【0002】
従来技術からは、絶縁特性または伝導特性を有する多層の接触構造が知られている。絶縁性接触構造では、シリコン産業から知られている金属−絶縁体−半導体接合(MIS)またはより特異的には金属−酸化物−半導体接合(MOS)が実現されている。これらは、MISダイオード(例えば電磁放射検出用)およびMOS電界効果トランジスタ(MOSFET)を製造するために使用される。
【0003】
伝導性接触の範囲では、一つには透明なオーミック伝導性酸化物(Transparent Conductive Oxides、TCO)から成るオーミック接触があり、もう一つには不透明な金属接触(オーミックまたは整流性)がある。
【0004】
DE19951207A1(特許文献1)には、電磁放射線を検出するための半導体部品が記載されている。特にUV放射線が測定されるべきであり、その一方で可視光により測定に誤差が生じてはならない。この理由から、可視波長領域内で透明な層構成が用いられている。ガラス基板上に、透明な伝導性金属酸化物(TCO)、ここではフッ素をドープされた酸化スズから成る、または金属から成る接触層が配置される。その上に、入射するUV放射線を吸収すべき、金属酸化物−化合物半導体の層が続く。その後、最上層として、その下にある半導体層と共にショットキー接触を形成する金属層が続く。この金属層は、その透明性を保証するためには、最高でも20nm厚であるべきである。UV放射の20〜30%がこの金属層を通り抜けて侵入する。
【0005】
US7,341,932B2(特許文献2)は、可視光を遮蔽してUV放射(波長<200nm)を検出するのに適したショットキー障壁を有するダイオードの構成を開示している。ショットキー障壁は、Pt層からnドープGaNに移行する境界層で形成されている。このダイオードの活性領域は0.25cm〜1cmの寸法に達する。
【0006】
US7,285,857B2(特許文献3)は、太陽電池用の透明なオーミック伝導性電極の構成を開示している。この太陽電池はGaNから成る。この電極構成は、Znベースの材料と、薄く被覆された金属または透明伝導性酸化物から成る上張層とから成る透明な構造を形成している。
【0007】
WO2008/143526A1(特許文献4)は、酸化亜鉛基板上に金属酸化物または金属を有する整流性接触およびオーミック接触を記載している。整流性接触は、酸化亜鉛上に伝導性の層を被覆し、これらの層の間で整流性の境界層が形成されることによって生成される。このメカニズムは、金属−半導体の層形成物により知られているショットキー接触に対応している。ただし開示されたこの接触構造は透明ではない。
【0008】
WO01/15241A1(特許文献5)では、UV線用のセンサが発表されている。この場合、基板上に光吸収層が配置されており、この光吸収層上では、もう1つの層によりショットキー接触が形成されている。このショットキー接触は、伝導性酸化物(ITO)の層で覆われている。このセンサはさらに、ショットキー接触から離れて配置された2つのオーミック接触を有している。透明な半導体としては金属窒化物(GaN)が使用されている。
【0009】
US2007/0206651A1(特許文献6)の対象は、基板上で、2つの閉じ込め層の間にある活性層を有しており、上側の閉じ込め層上にはインジウムガリウム窒化物から成る接触構造が配置されている発光ダイオードであり、この接触構造のバンドギャップは層ごとに小さくなっていき、接触構造の上面で一番小さく、この上面では接触構造が透明な電極で覆われている。US2007/0206651A1(特許文献6)はLEDを説明しているので、必然的にp伝導型半導体層およびn伝導型半導体層から成る層構造である。したがってこのバイポーラ部品では、整流はpn接合により引き起こされており、金属酸化物と半導体の界面での整流によるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】DE19951207A1
【特許文献2】US7,341,932B2
【特許文献3】US7,285,857B2
【特許文献4】WO2008/143526A1
【特許文献5】WO01/15241A1
【特許文献6】US2007/0206651A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって透明な整流性接触構造の構成および製造方法を見出すという課題が提起される。さらに、この透明な整流性層構造の用途の可能性を示す。
【課題を解決するための手段】
【0012】
以下で「透明」とは、考察されるスペクトル領域内において照射された光束の少なくとも50%、好ましくは75%以上が層系を通り抜けることを意味する。考察されるスペクトル領域には、380〜780nmの波長領域内の可視光が含まれることが好ましい。
【0013】
本発明によれば、上記課題は請求項1に従って解決される。センサ技術での適用における透明な整流性接触構造の使用は、独立請求項3の主題である。透明な整流性接触構造の製造方法は独立請求項12で開示されている。透明な整流性接触構造の使用に関する可能性は独立請求項17で開示されている。有利な実施形態は関連する従属請求項に示されている。
【0014】
半導体または金属酸化物の透明性にとって重要なのは、伝導帯と価電子帯を隔てるバンドギャップ、または吸収係数と関連する層厚ある。したがって可視領域内でも透明な半導体を製造するには、窒化ガリウム、酸化亜鉛、およびその他の窒化物化合物もしくは酸化物化合物を使用する。ここでは、特にインジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide、ITO)、フッ素スズ酸化物(Fluor Tin Oxide、FTO)、アルミニウム亜鉛酸化物(Aluminium Zinc Oxide、AZO)、およびアンチモンスズ酸化物(Antimony Tin Oxide、ATO)を挙げることができる。
【0015】
本発明は、好ましくは透明であり、かつ
a)好ましくは透明で、好ましくは半導体層として形成された半導体と、
b)透明な金属酸化物、透明な金属窒化物、または透明な金属硫化物の層と、
c)透明な導電体の層と
を上記の順番で有する整流性接触構造を開示する。
【0016】
構成要素a)〜c)が共に1つの層系を構成しており、この層系は、層c)が半導体a)と接触しないように形成されることが好ましい。
【0017】
層系の透明性を保証するためには、大きなバンドギャップを有する半導体a)、例えばZnO、GaN、またはさらなる透明な半導体、例えばダイヤモンド、AlN、ZnMgO、CuAlO、AlInN、ZnS、ZnSe、AlGaN、ZnCdO、Ga、In、もしくはInGaNを使用することが有利である。有機半導体を利用することもできる。可視スペクトル領域(380〜780nm)の全体において透明である必要がない場合、例えば赤外線スペクトル領域内での用途には、他の半導体、例えばSi、Ge、GaAs、InP、GaPなどを使用してもよい。
【0018】
半導体は、バルク材料(Volumenmaterial)として、薄層として、またはナノ構造として形成することができる。
【0019】
半導体a)上に金属酸化物層b)が被覆される。この金属酸化物層は、透明性を保証するためには、十分に薄くなければならない。しかしながらこのように薄い金属酸化物層は、横の伝導性が低い。したがって、接触構造の面全体での荷電キャリアの均質な導入または同じ電圧を可能にするため、金属酸化物層上に透明な導電性層が被覆される。この透明な導電体は、層系の最上層であることが好ましい。その際、材料としては、薄く、したがって透明でもある金属が使用されるか、または高伝導性の透明な酸化物(例えばAZO、ITO、FTO、ATOなど)が使用される。
【0020】
前述の組合せでは、層系はその用途固有のスペクトル領域では透明であり、同時に高い整流作用を示す。この高い整流作用は、絶縁性でなく伝導性でない金属酸化物の使用によって達成され(この金属酸化物の固有抵抗は、伝導性材料の固有抵抗と非伝導性材料の固有抵抗の間にある)、この金属酸化物は、従来から使用されている純粋な金属より高い仕事関数を有する。
【0021】
前述の構成要素
a)透明な半導体と、
b)透明な金属酸化物、透明な金属窒化物、または透明な金属硫化物と、
c)透明な導電体と
のうち少なくとも1つが、それ自体もまた複数の層から構成されていることが好ましい。
【0022】
半導体a)は、好ましくは任意にドープされているか、別の元素もしくは化合物と混合されているか、または合金化されている。
【0023】
半導体(構成要素a))が基板上に被覆され、それを基礎として接触構造がさらに積み上げられることが好ましい。代替策としては、半導体がバルク材料であり、それ自身がさらなる層構成のための基板である。基板自体が透明および/または柔軟であり得ることが有利である。柔軟な基板の曲げ半径は、好ましくは2cm超、さらに好ましくは0.5cm、および特に好ましくは1mm以下に達する。基板のための適切な材料としては、例えばプラスチック、ガラス、サファイア、シリコン、SiO、ZnO、GaNが使用される。
【0024】
半導体a)は、有利にはヘテロ構造としても形成される。したがって半導体は、異なる材料の薄層の連続から成ることができ、この薄層の連続は、場合によっては周期的に繰り返される。その際、積層された層内で様々な半導体を使用することも有利である。半導体中の荷電キャリア密度は、好ましくは1012〜1019cm−3の範囲内、および特に好ましくは1014〜1018cm−3の範囲内である。
【0025】
層b)の材料は高い仕事関数を有することが有利である。したがって例えばAg、Pt、Ir、Cu、Pd、Cr、Ni、およびその他の金属の酸化物、窒化物、および硫化物を使用することができる。この金属酸化物が、金属窒化物または金属硫化物と取り替えられることが好ましい。層b)は、透明性を保証するためには、好ましくは30nmより薄く、特に好ましくは20nmより薄く、およびさらに好ましくは10nmより薄い。層b)の材料は絶縁性ではない。層b)の伝導性は、金属酸化物、金属窒化物、または金属硫化物を適切な物質と混合するかまたは適切な物質でドープすることにより改善される。層b)の固有抵抗は、10Ωcm〜10Ωcmの範囲内であることが好ましい。したがって層b)の材料は伝導性でもなく、この材料の固有抵抗は、伝導性材料の固有抵抗と絶縁性材料の固有抵抗の間の範囲内にある。
【0026】
様々な金属酸化物、金属窒化物、または金属硫化物から成る層形成物でもよい。この金属酸化物、金属窒化物、または金属硫化物は、化学量論比により定められているより多くの金属原子を含むことが好ましい。
【0027】
透明な導電体の層(層c))は、有利には薄い透明な金属層(例えばAu、Ag、Pt)または適切な透明伝導性酸化物(TCO:例えばITO、FTO、AZO、およびATO)を有している。この透明な導電体の層は、接触構造の最上層であることが好ましい。層c)は、化学的に安定していることが好ましい。透明な導電体の層が金属である場合、この層は透明であるために十分に薄い。最大厚が20nmであることが有利であると実証されたが、最大厚は使用する金属に応じて決まる。層c)の固有抵抗は、好ましくは10−4Ωcm〜10−5Ωcmの範囲内、およびさらに好ましくは1Ωcm〜10−6Ωcmの範囲内である。
【0028】
透明な金属層は、ドープされていてもよく、かつ/または物質の混合物を含んでいてもよく、かつ/または複数の層から成っていてもよい。透明な導電体が伝導性金属酸化物(TCO)を有する場合、この伝導性金属酸化物は、化学量論比により定められているより多くの金属原子を含むことができる。透明な導電体の層が伝導性有機材料、例えばPEDOT:pss(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホネート))も有し得ることが有利である。層c)と半導体a)の間のエッジ電流を回避するためには、層c)が層b)を完全には覆っていないことが有利である。層c)は、層b)を好ましくは90%〜100%未満、さらに好ましくは95%〜98%覆っている。
【0029】
好ましくは、透明な層c)上に、追加層としての上張層が被覆される。この上張層が層系内への光入射を容易にする反射防止特性を有することにより、透明な整流性接触構造内への光入射が改善されることが有利である。この上張層の厚さは少なくとも3nmである。上張層は、透明な接触構造だけを覆うのではなく、透明な接触構造が内部に形成されている部品全体または透明な接触構造が属する半導体構造の領域を覆い得ることが有利であり、その際、場合によってはあり得る接続またはボンディング接触は除外することができる。上張層自体もまた、ドープされていてもよく、かつ/または物質の混合物を含んでいてもよく、合金化されていてもよく、かつ/または多層であってもよい。有利には、上張層は透明な接触構造の上面だけでなく、接触構造の側面にも延びており、したがって上張層はその下にある層のエッジおよび/または透明な整流性接触構造が属する部品の領域も覆っている。上張層はパッシベーション効果を有しており、したがって非導電性(絶縁体)である。上張層の固有抵抗は、好ましくは少なくとも1010Ωcm、および特に好ましくは約1012Ωcm以上である。有利には、誘電体、例えばHfO、Al、ZrO、SiO、Siなどが使用される。しかし有機性の上張層、例えばPMMAもしくはエポキシ樹脂、またはそれらと誘電体との混合物も適している。上張層が、化学的パッシベーション効果も有しており、したがって上張層がその下の層を化学的な変化から保護することが好ましい。上張層の製造には、確立されている堆積方法、例えば陰極噴霧(スパッタリング)、スピンコーティング、ディップコーティング、原子層堆積(ALD)、パルスレーザ堆積(PLD)などが使用される。上張層は、一つには、例えばトランジスタ構造が内部に形成されている部品において使用する場合に、特にソースとドレインの間の部品表面に沿ったリーク電流を減少させる。もう一つには、透明な接触構造において使用する場合に、透明な金属層とその下にある半導体の間の金属酸化物層の周縁に沿った電流を抑制する。これは、オフ電流(部品のスイッチを切った状態でその後も流れる電流)を減少させ、したがってオフ状態(スイッチを切った状態)での部品の電力消費を減らす。オフ電流の減少は、さらに部品のダイナミックレンジを上昇させる(オン電流とオフ電流の間の比率、オン状態とはスイッチを入れた状態であり、オン電流とはスイッチを入れた状態の電流である)。
【0030】
透明な整流性接触構造を製造するためには、半導体結晶または半導体層が適切にドープされることが好ましい。可視領域内の光を透過する透明な接触構造用の半導体としては、特に、適切なドーピング(例えばAl)を施されたZnOが考慮される。その後、半導体を既知の方法(例えば湿式エッチングまたは乾式エッチング)により構造化するか、または半導体表面または基板表面に適切な構造を成長させ、次いでこの構造をドープする。場合によってはこの半導体をさらに、例えばプラズマを用いて洗浄する。半導体a)の当該の構造の上に、金属酸化物、金属硫化物、または金属窒化物から成る透明な層b)が被覆される。これは、例えば反応性または非反応性のスパッタリング(DC、AC、マグネトロン)、パルスレーザ堆積(PLD)、分子線エピタキシー(MBE)、原子層堆積(ALD)、化学気相堆積(CVD/PECVD)、有機金属気相エピタキシー(MOVPE)、または従来技術から知られた対応する方法によって行われる。これに関しては、金属層が被覆され、その後、この金属層が適切に酸化されることが有利である。1種のまたは異なる金属酸化物、金属硫化物、または金属窒化物の複数の層から成る層b)は、個々の層を相次いで被覆することにより生成されることが好ましい。層b)は、好ましくは構造を覆いならした形で(strukturuebergreifend)形成され、続いて構造化されるか、または所望の構造上で成長することにより生成される。場合によっては層b)の材料は適切に後処理され、例えばさらなる酸化またはベークにより後処理される。
【0031】
層b)上には、層c)として透明な導電体が被覆される。層c)自体もまた、同種のまたは異なる透明な導電体の積層から成ることができる。透明な導電体は、適切な金属(例えばPt、Au)および/または透明な金属酸化物および/または有機導体によって構成される。金属層は、透明性を維持するために、相応に薄く形成されなければならない。金属層の形成には、従来技術から知られた方法が使用される。透明な導電体が透明な金属酸化物から成る場合、好ましくはAZO、ITO、ATO、またはFTOが使用される。透明な導電体の層も、構造を覆いならした形で形成され、続いて構造化されるか、または所望の構造上で成長することにより生成される。
【0032】
透明な導電体の層は、場合によっては、例えば上張層または追加層を施されることにより適切に後加工される。上張層は、層c)が、層b)と追加的な上張層の間に配置されるように、透明な整流性接触構造の上面を覆うことが好ましい。上張層は、反射防止特性ならびに/または化学的および/もしくは電気的なパッシベーション効果を有することができる。上張層は、有利には非導電性材料(例えばHfO、Al、ZrO、SiO、Siなど、またさらに有機材料、例えばPMMA(ポリメチルメタクリレートまたはエポキシ樹脂))から、公知の方法により生成される。これらの方法は、例えば陰極噴霧(スパッタリング)、スピンコーティング、ディップコーティング、原子層堆積(ALD)、パルスレーザ堆積(PLD)である。
【0033】
本発明による整流性接触構造は、電子部品、例えば集積回路、発光ダイオードおよびフォトダイオード、フォトトランジスタ、ならびにその類似物において使用されることが有利である。それだけでなく、本発明による整流性接触構造は、光電子工学、太陽光技術、センサ技術、信号捕捉、信号処理およびデータ処理の適用において、ならびに表示素子、ディスプレイ、およびその類似物を製造する際に使用されることが有利である。なかでも、本発明による整流性接触構造をUV光検出器として使用することが有利である。
【0034】
以下に例示的実施形態により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの例示的実施形態に限定されるわけではない。
【発明を実施するための形態】
【0035】
例示的実施形態1:ヘテロエピタキシャルZnO薄膜上での、整流性の透明なAu/AgO接触部
パルスレーザ堆積(PLD)により、a−サファイア基板上に約1マイクロメートル厚の酸化亜鉛層が堆積される。表面前処理をせずに、アルゴン/酸素雰囲気中での銀の反応性スパッタリングにより、透明なAgO点接触部(厚さ<10nm)が被覆され、この点接触部が、透明な金層(厚さ<5nm)で覆われる。
【0036】
この接触構造は、ダイオードとして作用し、整流器として使用することができ、電磁放射線の検出(フォトダイオード)または吸着した分子の検出(化学的センサ)のために使用することができる。
【0037】
例示的実施形態2:ZnOベースの透明なMESFET(金属半導体電界効果トランジスタ(英語:metal semiconductor field effect transistor、MESFET))における接触部
パルスレーザ堆積(PLD)により、a−サファイア基板上に約20nm厚の酸化亜鉛層が堆積される。この層から、エッチングによりメサ(Mesa)が加工される。上述の接触部に基づき、銀の反応性スパッタリングによりメサ上に透明なAgOゲート接触部が被覆される。続いてPLDにより、透明でアルミニウムをドープされた高伝導性酸化亜鉛が上張層として被覆される。ソース接触部およびドレイン接触部も、透明でアルミニウムをドープされた高伝導性酸化亜鉛のPLDにより製造される。
【0038】
このMESFETをベースとして、完全に透明な集積回路(例えばインバータ、論理ゲート)を製造することができる。これらは、例えばアクティブマトリクス液晶表示素子またはOLEDディスプレイにおけるピクセル制御用の透明なスイッチング素子として使用することもできる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構成要素
a)ZnO、ダイヤモンド、ZnMgO、CuAlO、ZnS、ZnSe、ZnCdO、Ga、In、および有機半導体を含むワイドバンドギャップ半導体群から選択された透明な半導体と、
b)金属酸化物、金属硫化物、および/または金属窒化物から成り、透明で絶縁性でなく伝導性でなく、固有抵抗が好ましくは10Ωcm〜10Ωcmの範囲内である層と、
c)透明な導電体から成る層と
を有する透明な整流性接触構造であって、
層b)が半導体a)と層c)の間に形成されている透明な整流性接触構造。
【請求項2】
層b)が、Ag、Pt、Ir、Cu、Pd、Cr、Ni、およびその他の金属を含む群から選択された金属の酸化物、硫化物、または窒化物を有することを特徴とする請求項1に記載の透明な整流性接触構造。
【請求項3】
センサ技術での用途における透明な整流性接触構造の使用であって、下記の構成要素
a)透明な半導体と、
b)Ag、Pt、Ir、Cu、Pd、Cr、およびその他の金属を含む群から選択された金属の酸化物、硫化物、または窒化物から成り、透明で絶縁性でなく伝導性でなく、固有抵抗が好ましくは10Ωcm〜10Ωcmの範囲内である層と、
c)透明な導電体から成る層と
を有しており、層b)が半導体a)と層c)の間に形成されている透明な整流性接触構造の使用。
【請求項4】
半導体a)が、バルク材料として、薄層として、またはナノ構造として形成されていることを特徴とする請求項1もしくは2に記載の透明な整流性接触構造または請求項3に記載の使用。
【請求項5】
基板が透明および/または柔軟であることを特徴とする請求項2もしくは4に記載の透明な整流性接触構造または請求項3もしくは4に記載の使用。
【請求項6】
半導体a)が、ドープされており、かつ/または混合されており、かつ/または合金化されており、かつ/またはヘテロ構造を有することを特徴とする請求項1、2、4、もしくは5のいずれか一つに記載の透明な整流性接触構造または請求項3〜5のいずれか一つに記載の使用。
【請求項7】
層b)が複数の層から成ることを特徴とする請求項1、2、もしくは4〜6のいずれか一つに記載の透明な整流性接触構造または請求項3〜6のいずれか一つに記載の使用。
【請求項8】
層b)が、化学量論比により定められるより多くの金属原子を含むことを特徴とする請求項1、2、もしくは4〜7のいずれか一つに記載の透明な整流性接触構造または請求項3〜7のいずれか一つに記載の使用。
【請求項9】
層c)が、下記の材料
i)透明伝導性酸化物、好ましくはインジウムスズ酸化物(Indium Tin Oxide、ITO)、フッ素スズ酸化物(Fluor Tin Oxide、FTO)、アルミニウム亜鉛酸化物(Aluminium Zinc Oxide、AZO)、およびアンチモンスズ酸化物(Antimony Tin Oxide、ATO)を含む群から選択された透明伝導性酸化物および/または
ii)Au、Ag、Pt、Cu、Inを含む群からの金属および/または
iii)有機伝導性材料
の少なくとも1つを有することを特徴とする請求項1、2、もしくは4〜8のいずれか一つに記載の透明な整流性接触構造または請求項3〜8のいずれか一つに記載の使用。
【請求項10】
層c)が、ドープされており、かつ/または混合物であり、かつ/または合金化されており、かつ/または複数の層から成ることを特徴とする請求項9に記載の透明な整流性接触構造または使用。
【請求項11】
層c)が、化学量論比により定められるより多くの金属原子を含む金属酸化物を有することを特徴とする請求項9または10のいずれか一つに記載の透明な整流性接触構造または使用。
【請求項12】
透明な整流性接触構造の製造方法であって、
ZnO、ダイヤモンド、ZnMgO、CuAlO、ZnS、ZnSe、ZnCdO、Ga、In、および有機半導体を含むワイドバンドギャップ半導体群から選択された透明な半導体a)を準備するステップ、
金属酸化物、金属硫化物、および/または金属窒化物の透明で絶縁性でなく伝導性でなく、固有抵抗が好ましくは10Ωcm〜10Ωcmの範囲内である層b)を、半導体a)の選択された領域上に被覆するステップ、
透明な導電体の層c)を半導体a)の選択された領域上に被覆し、その際、層c)が層b)により半導体a)から隔てられているステップ
を有する方法。
【請求項13】
センサ技術での用途において使用するための透明な整流性接触構造の製造方法であって、
ZnO、ダイヤモンド、ZnMgO、CuAlO、ZnS、ZnSe、ZnCdO、Ga、In、および有機半導体を含むワイドバンドギャップ半導体群から選択された透明な半導体a)を準備するステップ、
Ag、Pt、Ir、Cu、Pd、Cr、およびその他の金属を含む群から選択された金属の酸化物、硫化物、または窒化物から成り、透明で絶縁性でなく伝導性でなく、固有抵抗が好ましくは10Ωcm〜10Ωcmの範囲内である層b)を、半導体a)の選択された領域上に被覆するステップ、
透明な導電体の層c)を半導体a)の選択された領域上に被覆し、その際、層c)が層b)により半導体a)から隔てられているステップ
を有する方法。
【請求項14】
半導体a)がドープされ、かつ/または半導体a)の表面が洗浄されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
層b)が、金属層を酸化することによるか、または同じもしくは異なる金属酸化物の複数の層を次々と形成することにより形成されることを特徴とする請求項12または13に記載の方法。
【請求項16】
層c)が、同じまたは異なる透明な導電体の複数の層を次々と形成することにより形成されることを特徴とする請求項12〜15のいずれか一つに記載の方法。
【請求項17】
光電子工学、太陽光技術、センサ技術、信号捕捉、信号処理およびデータ処理における、表示素子、ディスプレイ、および集積回路における、請求項1〜11のいずれか一つに記載の透明な整流性接触構造の使用。

【公表番号】特表2012−531057(P2012−531057A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516683(P2012−516683)
【出願日】平成22年6月21日(2010.6.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058726
【国際公開番号】WO2010/149616
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(507381019)ウニベルジテート・ライプツィヒ (4)
【Fターム(参考)】