説明

通信システム、無線警報装置及びそのプログラム

【課題】低電力通信においてフェージングやマルチパスがあっても正確に通信相手との距離に対応した受信レベル値を決定する。
【解決手段】第1の送受信機2と第2の送受信機5とによってなり、第1の送受信機2は複数のアンテナ1を有してパケットデータを送信している途中に複数のアンテナ1を切り替え、第2の送受信機5は第1の送受信機2でパケットデータを送信する間に切り替えたそれぞれの複数のアンテナ1での送信時間中の受信レベルをそれぞれ少なくとも1回以上測定し、複数の受信レベルから最大値等を計算し、受信レベル値を求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のアンテナを用いて受信レベルを求め、無線送受信機間で定期的或いは不定期的に無線の送受信を行うことによりお互いの存在を確認しあい、無線送受信機間の距離が所定の通信範囲を超えた場合に無線送受信機の機能を制限したり或いは警報を発生させることに用いられるような通信システム、無線警報装置及びそのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、セキュリティを考慮しながら携帯電話、あるいはパソコンをはじめとする電子機器の操作ロックを、ワイヤレスで制御するようにしたセキュリティシステムが実用化されてきている。
【0003】
かかるセキュリティシステムの一形態として、携帯電話の盗難を防止するために、携帯電話の使用者が、カード形態の識別信号送信機を所持し、前記の携帯電話と識別信号送信機との間で予め定めた識別コードを相互に通信し、双方で識別コードを確認できた時に前記携帯電話の使用を可能とするものがある(例えば特許文献1参照)。
【0004】
かかるワイヤレスによる双方向通信システムの特許文献1では、電子機器等の本体側に搭載された機器において、携帯側装置(以降、ワイヤレスキーと称する)から定期的に発せられる信号を検知する動作を継続して行わせる構成であった。
【0005】
そして、サーチモード、アプリモード、サーチモードからアプリモードに移行する中間段階である認証モード、という3つのモードを有し、アプリモードにおいて電子機器の操作を可能とする構成、サーチモードにおいては電子機器の操作を制限する構成が示されている。サーチモードとアプリモードの識別は電波強度によって行われる。
【0006】
例えば、電波強度が強い(ワイヤレスキーを持った使用者との距離が近い)ときはアプリモードとして電子機器が使用可能とし、電波強度が弱い(距離が遠い)ときにはサーチモードとして電子機器を使用制限する。
【0007】
また電界強度や受信レベルの測定に関しては、特許文献2に見られるように、受信ダイバーシティアンテナの切り替え制御に関する例がある。特許文献2では、複数の受信アンテナから受信した信号の受信レベルを測定し、一番受信レベルの大きなアンテナを受信に用いることが記されている。さらに複数回の測定において同一のアンテナが受信に用いられている場合にはフェージングが少ないと判断することが記されている。
【0008】
また、特許文献3に見られるように、送信ダイバーシティアンテナの切り替え制御に関する例がある。特許文献3では、防犯、防災等の検出情報と送信アンテナ情報を1ワードのコード信号として繰り返し無線送出するシステムにおいて、1ワードの送信データ毎に2つのアンテナを切り替えて送信を行うことで、受信側では受信データより送信アンテナ情報を読み出し、その受信レベルを測定して受信レベルの高いほうの送信アンテナからの信号を使用するように制御している。
【特許文献1】特開2004−143806号公報
【特許文献2】特開2002−246969号公報
【特許文献3】特開昭64−60118号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1には電波強度の具体的な測定方法についてはなんら記述されていない。また特許文献2には受信レベルの測定結果によりフェージングが大きいかどうかの判断についての記述はあるが、受信レベルの算出方法や通信相手との距離と受信レベルとの関係についての記述は見られない。
【0010】
また、特許文献3のように、短いデータ通信であるにもかかわらず同じデータを複数回送信して各データの受信レベルを比較して送信アンテナを選択する手段を用いると、短いデータを送信しているにもかかわらず通信時間がかかり、消費電力も大きくなってしまう。さらに、データが非常に短ければ、無線受信による復調を行うことができないので、受信データにアンテナ情報を含ませてもその情報を読み出すことが非常に困難である。
【0011】
一般的に、入力信号のビット同期を取ったり無線送受信部のアナログ回路立ち上がり時間のために必要なビット同期信号と、それに続いてこれよりデータ信号であることを表すフレーム同期信号を合わせて、最低でも数バイト程度を情報として送信したいデータに先立って送信しなければデータ復調は行えない。
【0012】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、フェージングやマルチパスがあっても正確に通信相手との距離に対応した受信レベル値を決定できる低消費電力の通信システム、無線警報装置及びそのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の送受信機は複数のアンテナを有してパケットデータを送信している途中に前記複数のアンテナを切り替え、前記第2の送受信機は前記第1の送受信機でパケットデータを送信する間に切り替えたそれぞれの前記複数のアンテナでの送信時間中の受信レベルをそれぞれ少なくとも1回以上測定し、前記複数の受信レベルから最大値、或いは中央値、或いは平均値等を計算し、受信レベル値を求める構成とする。
【0014】
これによって、複数のアンテナでの送信時間中の受信レベルをそれぞれ測定できるので、フェージングやマルチパスにより受信レベルが変動する影響を除去し、精度よく受信レベルと距離の関係を算出できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、どのような状況においても1度の通信によって正確に通信相手との距離に対応した受信レベル値を決定でき、通信相手との距離を精度よく算出することで、低消費電力で信頼性の高い通信システム、無線警報装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
第1の送受信機と第2の送受信機とによってなり、前記第1の送受信機は複数のアンテナを有してパケットデータを送信している途中に前記複数のアンテナを切り替え、前記第2の送受信機は前記第1の送受信機でパケットデータを送信する間に切り替えたそれぞれの前記複数のアンテナでの送信時間中の受信レベルをそれぞれ少なくとも1回以上測定し、前記複数の受信レベルから最大値、或いは平均値、或いは中央値等を計算し、受信レベル値を求める構成としたものである。
【0017】
これによって、複数のアンテナでの送信時間中の受信レベルをそれぞれ測定できるので、ダイバーシティ効果が得られフェージングやマルチパスにより受信レベルが変動する影響を除去し、精度よく第1の送受信機と第2の送受信機の距離に応じた受信レベルを算出することができる。
【0018】
第2の発明は、第1の発明記載の通信システムにおいて、前記第1の送受信機は複数のアンテナを有して要求信号を送信し、前記第2の送受信機は前記要求信号を受信すると応答信号を返し、前記第1の送受信機は、前記応答信号の受信中に前記複数のアンテナを切り替えて受信を行い、前記複数のアンテナのそれぞれによって受信レベルを少なくとも1回以上測定して、前記複数のアンテナ毎に最大値、或いは平均値、或いは中央値等を計算し受信レベル値を求め、最も大きい受信レベル値となった前記アンテナでその後の受信中の応答信号を受信する構成とする。
【0019】
これによって、効率よく複数のアンテナで複数回受信レベルを測定でき、精度よく第1の送受信機と第2の送受信機の距離に応じた受信レベルを算出することができる。
【0020】
第3の発明は、第1の発明記載の通信システムにおいて、第1の送受信機は複数のアンテナを有して要求信号を送信し、第2の送受信機は前記要求信号を受信すると応答信号を返し、前記第1の送受信機は、前記応答信号の受信中に前記複数のアンテナを切り替えて受信を行い、前記複数のアンテナのそれぞれによって受信レベルを少なくとも1回以上測定して、前記複数のアンテナ毎に最大値、或いは平均値、或いは中央値等を計算し受信レベル値を求め、次回の送信時に小さい受信レベル値となった前記アンテナから順番に切り替える構成とする。
【0021】
これによって、受信レベルの高い可能性のあるアンテナで送信データの大部分を送信することになるので、受信しそこなうことがより少なくなる。
【0022】
第4の発明は、第1〜3の発明のいずれか記載の通信システムと、前記受信レベル値を基に、あらかじめ定めた閾値あるいは表あるいは関係式より前記第1の送受信機と前記第2の送受信機間の距離を推定する距離推定手段とを有し、前記第1の送受信機と前記第2の送受信機との間で定期的或いは不定期的に無線の送受信を行うことによりお互いの距離を確認しあい、前記距離推定手段で推定した距離が所定の距離以上の場合には、前記第1の送受信機あるいは前記第2の送受信機に接続される本体装置の機能を制限したり或いは警報を発生させることする。
【0023】
これによって、フェージングやマルチパスにより受信レベルが変動する影響をより除去し、精度よく受信レベルと距離の関係を算出して、決められた距離を閾値として前記第1の送受信機あるいは前記第2の送受信機に接続される本体装置の機能を制限したり或いは警報を発生させることができる。
【0024】
第5の発明は、第1〜4の発明のいずれか記載の通信システムや無線警報装置の少なくとも一部をコンピュータに実現させるためのプログラムとする。そして、プログラムであるので、電気・情報機器、コンピュータ、等のハードリソースを協働させて本発明の少なくとも一部を簡単なハードウェアで実現できる。また記録媒体に記録したり通信回線を用いてプログラムを配信したりすることでプログラムの配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0026】
(実施の形態1)
図1は本発明の第1の実施の形態における通信システムを用いた無線警報装置のブロック図を示すものである。
【0027】
図1において、通信システム101は、第1の送受信機アンテナ1aおよび1b、第1
の送受信機2、第1の送受信機アンテナ1aまたは1bを切り替えるための電子スイッチ3、第2の送受信機アンテナ4、第2の送受信機5、受信レベル決定手段6、距離推定手段7で構成されている。
【0028】
そして、第2の送受信機5で受信した信号の受信レベルを受信レベル決定手段6によって決定し、受信レベル決定手段5によって決定した受信レベルによって第1の送受信機2と第2の送受信機5との間の距離を距離推定手段7によって推定し、距離推定手段7の出力で機能制限手段8を起動するように構成されている。
【0029】
第1の送受信機アンテナ1aと1bは、指向特性の異なるアンテナで構成する。その一例として、アンテナ単体としては同一の指向特性のアンテナであるが、アンテナ1aと1bでアンテナの配置を直交させることによりアンテナ1aと1bで指向特性を直交させることができる。もちろん、アンテナ単体としても指向特性の異なる二つのアンテナを用意しても良い。
【0030】
また第1の送受信機アンテナ1aと1bは、偏波特性の異なるアンテナで構成してもよい。その一例として、アンテナ単体としては同一の指向特性及び偏波特性のアンテナであるが、アンテナ1aと1bでアンテナの配置を変えて偏波面が直交するように構成することができる。もちろん、アンテナ単体としても形状が異なり偏波特性の異なる二つのアンテナを用意しても良い。
【0031】
第1の送受信機2は、第2の送受信機5の認証を行うための鍵となるもので、第1の送受信機2の搭載された機器を使用する人が常に携帯するように、小形で軽量のカード、キーホルダー、ネックレス、腕時計、腕輪、指輪等の形状とするため、電池等の小形電源で駆動するものである。
【0032】
図1の通信システム101を用いた無線警報装置の動作について送受信の信号を示す図2および図3、4のフローチャートを参照しながら説明する。
【0033】
第1の送受信機2及び第2の送受信機5はそれぞれ無線送信手段と無線受信手段を有している(図示しない)。
【0034】
第1の送受信機2は、電池等の小形電源で駆動するため、通信時間をできるだけ短縮して機器の消費電力を抑えることが必要なので、送信信号21は間欠で短時間のみとすることが望ましい。
【0035】
例えば図2のような2バイト(2値9600bpsで送信する場合は、1.67ミリ秒程度)の送信信号21を送信する場合は、10秒毎に(S301)定期的に第1の送受信機2は送信するアンテナを電子スイッチ3によって第1の送受信機アンテナ1aにして(S302)、送信を開始し(S303)、8ビット送信後に(S304のYes)、第1の送受信機アンテナ1bに切り替えて(S305)8ビット送信すれば(S306)、1つのパケットデータの送信終了にアンテナを切り替えて同じパケットデータを再度送信する必要はない。2値9600bpsで送信する場合は、送信信号を約833マイクロ秒送信した時点で第1の送受信機アンテナ1bに切り替えればよい。
【0036】
上記の例では、第1の送受信機2からの送信信号21を10秒毎に定期的に送信することとしたが、この送信信号21の送信の間隔は、それぞれの機器の移動速度や用途に応じて距離の確認が必要である間隔以内で設定すればよい。
【0037】
第2の送受信機5が第一の送受信機2からの送信の開始を検出するためには、キャリア
センスを行う方法があるが、キャリアセンスを行うためには受信を事前に開始しておかなければならないため、実際に信号を送受信していない間の受信動作のための消費電力が無駄である。
【0038】
このため、第2の送受信機5は第一の送受信機2の送信タイミングに同期して受信動作を行うようにするために事前に同期合わせ処理を行う。
【0039】
まず、第1の送受信機2または第2の送受信機5から間欠的に繰り返し無線によりサーチ信号を送信し、相手の送受信機は、定期的に受信動作を行い、サーチ信号を受信すると受信した時間を基点として通信タイミングを生成することで通信の同期を取る。
【0040】
第2の送受信機5は第一の送受信機2からの送信の開始に合わせて10秒毎に(S401のYes)受信動作を開始し(S402)、例えば2値9600bpsで通信する場合は、200マイクロ秒毎に(S405)8回受信レベル値を測定する(S404)。受信レベル値の測定方法としては、第2の送受信機5で受信した受信信号レベルをA/D変換し、受信信号レベルに応じたアナログ値をデータに変換して受信レベル値とする。
【0041】
本実施の形態のように、通信時間を短縮して機器の消費電力を抑えるために非常に短いパケットデータを送信して受信レベルを決定しようとした場合、受信レベルの測定は、送信されているはずの時間を少なくともアンテナの切り替え回数分に等間隔に分割した時間間隔で行えば、少なくとも各アンテナからの送信信号の受信レベルを測定できるはずである。
【0042】
しかしながら、第2の送受信機5が受信を開始するタイミングが第1の送受信機2が送信信号21の送信を開始するタイミングとちょうど一致していなければ(例えば少し早く受信を開始してしまうと)、受信レベルを測定しても送信信号の信号レベルでなく、ノイズの受信レベルを測定してしまう可能性がある。
【0043】
このため、受信レベルの測定は送信されているはずの時間(上記の例では1.67ミリ秒)の間に短い間隔で複数回行って最大値を受信レベル値と決定することにすれば、送信と受信のタイミングが完全に同期して起動しなくても、各アンテナから送信された信号の受信レベルを測定して、受信レベル値として決定することができる。同時に、複数回測定することは時間ダイバーシチの効果も得られるため、より正確に受信レベル値を得ることができる。
【0044】
受信レベルの測定間隔は、同期タイミングの許容誤差によって決定すればよく、例えば、上記のように1.67ミリ秒の間に2つのアンテナで8回の受信レベル測定を行うとすると、約600マイクロ秒程度の送受信タイミングの誤差であれば、2つのアンテナのいずれもの送信信号の受信レベルの測定を少なくとも1回以上行うことが可能である。
【0045】
フェージングやマルチパスがあると受信レベルが時間により変動する。例えば、「ディジタル無線通信の変復調(斉藤洋一氏著)」の194ページに示された受信ダイバーシティによる受信レベルの確率分布図を図10に示す。
【0046】
図10のMで示す値はアンテナ数で、横軸は中央値(多数個の測定値を大きい順に並べた場合の中央に位置する数値)との差を示しており、レイリー分布として考えた受信レベルの中央値より大きく受信レベルが観測される場合(確率分布でほぼ確率99%となる割合)は、せいぜい6dB程度であるが、受信レベルが低く観測される場合(確率分布でほぼ確率1%となる割合)は、20dBと大きく減衰する場合が多い。
【0047】
このため、受信レベル決定手段6では、第2の送受信機5で測定した複数の受信レベル値の中から最も大きい値をとる(S406)ことにすることにより、上記フェージングの特徴である位置や時間による急激な受信レベルの減衰の現象を抑えて、より正確な距離に応じた受信レベル値を決定することができる。
【0048】
また、他の受信レベル値の決定方法の例を次に示す。
【0049】
図2における受信信号22で測定した8つの受信レベル値を用いる場合には、8つの受信レベルの平均値を正しい受信レベル値としたり、大きいほうから並べて中央値に相当する4つ目或いは5つ目の受信レベル値を正しい受信レベル値と決定することもできる。
【0050】
そして、距離推定手段7は、この受信レベル値として決定した値より、あらかじめ定めた閾値、或いはあらかじめテーブル等に格納されている受信レベル値と距離の関係の表、或いは「受信レベル=A×距離」という関係式から距離を推定することができる。ここで、AとBはある定数である。
【0051】
例えば、距離推定手段7により第1の送受信機2と第2の送受信機5の間が距離にして2m以下に相当すると判定すれば、機能制限手段8に対しての機能制限要求を行わない。
【0052】
また、距離推定手段7により第1の送受信機2と第2の送受信機5の間が距離にして2mより離れていると判定すれば、機能制限手段8に対しての機能制限要求を行う。
【0053】
機能制限とは、例えば携帯電話に本システムを搭載した場合には、キー操作を禁止したり、電子マネー機能を禁止したり、電話の発信を禁止したりすることにより、携帯電話の機能の一部或いは全てを使えなくすることである。
【0054】
第2の送受信機5は、電源の起動時には連続受信を行い、第1の送受信機2からの受信信号22によって距離が2m以下に相当すると判断すると、受信信号22を受けたタイミングをもとに第1の送受信機2が送信を行う10秒毎に受信処理を起動し、受信が終了すると受信処理を停止することで電力の消費を抑える。
【0055】
また、受信レベル決定手段6によって決定した受信レベル値が第1の送受信機2からの受信信号22としての有効値(ノイズのレベルを超えているとみなせる電界強度レベルで、例えば−110dBm)を超えなければ、受信間隔がずれている可能性があるため第1の送受信機2からの受信信号22によって距離が2m以下に相当すると判断するまで連続受信を行い、その後再び10秒毎の受信処理に戻る。
【0056】
また、本実施の形態のように、通信時間を短縮して機器の消費電力を抑えるために非常に短いパケットデータを送信する場合、受信信号の復調は技術的に困難ではあるが、第1の送受信機2からの送信信号21にビット同期信号と第1の送受信機2を示すIDのように通信相手が特定できる情報とデータに入れて受信側で確認することができれば、第2の送受信機5によって受信したデータを復調してIDを確認することで、第1の送受信機2の特定ができるので、他のシステムの送信信号での受信レベルと誤ることがなくなる。
【0057】
また、上記のようにIDを確認する場合には、ビット同期を検出後にIDを確認するまでに確実に第1の送受信機アンテナ1を切り替えておき、途切れることなくIDを受信できるようにする。例えば、アンテナの切り替え時には送受信機アンテナ1aと送受信機アンテナ1bが両方とも受信できる状態になるように電子スイッチ3を制御する等で受信が途切れないようにしてもよい。
【0058】
以上のように、本実施の形態によると、第1の送受信機2から第1の送受信機アンテナ1aと1bの2つのアンテナを順番に用いて信号を送信して、第2の送受信機5で2つの第1の送受信機アンテナ1のそれぞれから送信された信号の受信レベルを複数回測定して、それより受信レベル決定手段6によって受信レベル値を決定する。
【0059】
これによって、アンテナの位置や時間でフェージングによって一方のアンテナからの信号受信レベルが減衰しても他方のアンテナからの信号受信レベルを選択できるように測定値の平均値、或いは中央値、或いは最大値等を計算して受信レベルを決定することで安定した受信レベル値が得られ、受信レベル値に相当する第1の送受信機2と第2の送受信機5との距離をより正確に推定して、携帯電話等の機能制御を行う距離の管理を正確にできる。
【0060】
なお、本発明においては、無線送信中に送信アンテナを切り替えているので、無線信号が一瞬途切れるなどして歪むことによる受信波形への影響が懸念されるが、無線信号を周波数偏移変調(FSK;frequency shift keying)のような周波数変調を用いた信号とすれば、本来の送信振幅は一定であるため、送信アンテナ切り替え時の振幅変動は受信データの復調においては影響を受けにくいので、復調データの誤り率を非常に低くすることができる。
【0061】
また、送信アンテナの切り替え速度に関しては、受信回路や復調の方法および処理時間によって異なるが、例えば、ビット長の1/3以下の時間内に切り替えを行えれば、ほとんどの場合に正しくデータサンプリングすることができるので十分に正しく復調することができる。
【0062】
例えば、図5(A)に示すようなFSK信号の復調回路では、図5(B)の入力信号を周波数検波することによってFSKの周波数偏移に応じた電圧が検波信号として得られ、これを受信信号速度に応じたタイミング回路によってサンプリングすることで復調出力を得ることができる。
【0063】
送信データのビット切替時に、1/3程度かかったとすると、図6の入力信号のようにビット間の波形が歪むが、サンプリング信号のタイミングを適切に取ることによって、正確な復調出力を得ることができる。
【0064】
(実施の形態2)
図7は本発明の第2の実施の形態における通信システムを用いた無線警報装置のブロック図を示すものである。
【0065】
図7において、図1と構成の異なる点は、第1の送受信機2側に受信レベル決定手段6、距離推定手段7を設け、さらに距離推定手段7の出力を警報手段9に通知していることである。
【0066】
また、第2の送受信機5では第1の送受信機2から受信したパケットデータに入った「機能制限指示」により直接機能制限手段8を制御する。
【0067】
図7の通信システム102の動作について送受信の信号を示す図8を参照しながら説明する。
【0068】
第1の送受信機2の起動時には、まず電子スイッチ3を第1の送受信機アンテナ1aにして要求信号41を送信する(図8(A)要求信号41参照)。
【0069】
第2の送受信機5はその信号を受信する(図8(B)受信信号42参照)。その後、第1の送受信機2からの要求信号42であることをヘッダまたはデータエリアに含まれるIDによって通信相手を確認して、応答信号44を送信する(図8(D)応答信号44参照)。この応答信号44には、第2の送受信機5のIDがヘッダまたはデータエリアに含まれている。
【0070】
第1の送受信機2では、まず電子スイッチ3を第1の送受信機アンテナ1aにして応答信号44の受信を開始し(図8(C)受信信号43)、8ビット受信したところで、電子スイッチ3を第1の送受信機アンテナ1bに切り替えて受信を続ける。受信を開始してから200マイクロ秒毎に4回受信レベルを測定して、さらに4ビット受信した(つまり16ビット受信し、受信レベルを8回測定した)ところで、受信レベル決定手段6は、前半に測定した4回の受信レベルと後半に受信した4回の受信レベルのそれぞれからアンテナ1aでの受信レベル値とアンテナ1bでの受信レベル値を決定し、この2つの受信レベルを比較して大きなほうの受信レベル値が得られたアンテナを第1の送受信機2に通知する。
【0071】
第1の送受信機2では受信レベル決定手段6から通知されたアンテナ(例えば、アンテナ1aでの受信レベル値が「−90dBm」で、アンテナ1bでの受信レベル値が「−80dBm」と決定すれば、電子スイッチ3によって切り替えてアンテナ1bで受信信号43の残りの信号を受信する。
【0072】
第1の送受信機2は、受信信号43を受信終了すると、先ほどのアンテナ1aでの受信レベル値とアンテナ1bとで受信レベル値の大きなほうを受信信号43の受信レベル値と決定して距離推定手段に通知する。
【0073】
距離推定手段7では、第1の実施の形態と同様に、決定した受信レベル値より第1の送受信機2と第2の送受信機5との間の距離を推定する。
【0074】
また、要求信号41および応答信号44には第1の送受信機2および第2の送受信機5のそれぞれのIDが含まれていることで、受信によってIDを検出することによりお互いが正しい通信相手であることを認証する。
【0075】
そして例えば20秒ごとに第1の送受信機2から要求信号41が順次送信され、第2の送受信機5から応答信号44が返信される。この繰り返しによりお互いの認証が維持される。この要求信号41の送信の間隔は、用途に応じて認証が維持される必要のある間隔以内で設定すればよい。
【0076】
第1の送受信機2からは、前回の応答信号の受信レベル値が大きかった方のアンテナに電子スイッチ3によって切り替えて次の要求信号41を送信する。
【0077】
このように要求信号41に対して応答信号44を返信しお互いが認証しあっている状態において、距離推定手段7により第1の送受信機2と第2の送受信機5の間が距離にしてたとえば2m以下に相当すると判定すれば、警報手段9からの警報は行わない。
【0078】
さらに、第1の送受信機2からの要求信号41のデータに「機能制限なし」の通知を含めることにより、第2の送受信機5では、組み込まれた携帯電話などの電子機器の機能制限手段8への機能制限要求は行わない。
【0079】
また、距離推定手段7により第1の送受信機2と第2の送受信機5の間が距離にして2mよりも離れていると判定すれば、距離推定手段7は、報知手段9に対して報知信号を送
る。報知手段7は報知信号を受信するとブザーなどを鳴動させ第1の送受信機2と第2の送受信機5が所定の距離以上離れたこと、すなわちおき忘れを報知する。
【0080】
そして第1の送受信機2は要求信号41のデータに「機能制限指示」の通知を含めることにより、受信機7では、機能制限手段8に対して機能制限指示を通知し、携帯電話などの機器の機能を制限する。
【0081】
以上のように、本実施の形態によると、第1の送受信機2で第1の送受信機アンテナ1aと1bの2つのアンテナを順番に用いて第2の送受信機5からの応答信号を受信して、第1の送受信機の2つのアンテナのそれぞれで受信された信号の受信レベルを複数回測定して、それより受信レベル決定手段6によって受信レベル値を決定する。
【0082】
これによって、アンテナの位置や時間でフェージングによって一方のアンテナからの信号受信レベルが減衰しても他方のアンテナからの信号受信レベルを選択できるように測定値の平均値、或いは中央値、或いは最大値等を計算して受信レベルを決定することで安定した受信レベル値が得られ、受信レベル値に相当する第1の送受信機2と第2の送受信機5との距離をより正確に推定して、携帯電話等の機能制御を行う距離の管理を正確にできる。
【0083】
また、本実施の形態のように複数の受信アンテナを受信途中で切り替える方法は、複数の受信アンテナで同じ信号を同時に受信して良好なほうをとる方法に比べて、受信アンテナの受信回路が1つで済むというメリットがあるため、回路規模やコスト的に有利である。
【0084】
なお、本実施の形態では、要求信号41を送信時の送信アンテナを固定したが、図9(A)に示すように、第1の送受信機2からはまず電子スイッチ3を第1の送受信機アンテナ1aにして要求信号41を送信し、8ビット送信したところで電子スイッチ3を第1の送受信機アンテナ1bに切り替えて送信を続けてもよい。
【0085】
そして、第1の実施の形態と同様に、図9(B)に示すように、第2の送受信機5で200マイクロ秒毎に8回受信レベル値を測定するといったように送信アンテナ1aと1bのそれぞれの送信タイミングを含めて受信レベル値の測定を行い、第2の送受信機5で受信した受信信号の受信レベル値から距離推定を行う受信レベル決定手段および距離推定手段を設けることとすれば、より早く機能制限手段8に対して機能制限の制御ができる。
【0086】
さらに、第2の送受信機5での受信レベル値を応答信号に含めて第1の送受信機2へ送ることとすれば、第1の送受信機2での受信レベル値としての決定に選択の1つとして含めることができる。
【0087】
例えば、アンテナ1aでの受信レベル値が「−90dBm」で、アンテナ1bでの受信レベル値が「−85dBm」で、応答信号に含まれる受信レベルが「−80dBm」であれば、受信レベル値としては最大値をとって「−80dBm」と決定することができ、第1の送受信機2と第2の送受信機5との距離をより正確に推定できる。
【0088】
また、第2の送受信機5からの応答信号のそれぞれのアンテナでの受信レベル値を決定すると、次回の送信時に小さい受信レベル値となったアンテナから順番に切り替えて要求信号を送信する構成とすれば、受信側では複数のアンテナのそれぞれでの受信レベルが測定できる上にそのままアンテナを切り替えずに受信レベルの高い可能性のあるアンテナで要求信号のデータ部分を送信することになるので、受信し損なうことがより少なくなる。
【0089】
また、上記の各実施の形態では、第1の送受信機アンテナを2つで構成しているが、3つ以上で構成して送信または受信中に全てのアンテナに切り替える、または構成したアンテナの中から1回以上切り替えることとして、最も大きな受信レベルを求めるなどすることで、よりフェージングの影響を抑えることができる。
【0090】
なお、本実施の形態で例示した送信信号のフォーマット、ビット数、通信間隔は一例であってこれに限るものではない。
【0091】
また、本実施の形態で説明した手段は、CPU(またはマイコン)、RAM、ROM、記憶・記録装置、I/Oなどを備えた電気・情報機器、コンピュータ、サーバー等のハードリソースを協働させるプログラムの形態で実施してもよい。プログラムの形態であれば、磁気メディアや光メディアなどの記録媒体に記録したりインターネットなどの通信回線を用いて配信することで新しい機能の配布・更新やそのインストール作業が簡単にできる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上のように本発明にかかる通信システム、無線警報装置及びプログラムは、携帯電話、カメラ、ビデオカメラ、ノートパソコン、PDA、携帯オーディオ機器等の携帯電子機器の動作制限や、所有者がそばにいなければ機能制限を行いたい自動車、オートバイ等の車両に用いて、置き忘れや盗難時には迅速に警報動作や機能制限動作をかけることができる機器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の実施の形態1における無線警報装置のブロック図
【図2】本発明の実施の形態1の送受信信号を説明する図
【図3】本発明の実施の形態1における第1の送受信機の送信フローチャート
【図4】本発明の実施の形態1における第2の送受信機の受信フローチャート
【図5】本発明の実施の形態1のFSK信号の復調を行う回路と復調波形を示す図
【図6】本発明の実施の形態1のFSK信号の復調での送信アンテナ切り替え時の復調波形を示す図
【図7】本発明の実施の形態2における無線警報装置のブロック図
【図8】本発明の実施の形態2の送受信信号を説明する図
【図9】本発明の実施の形態2の別の送受信信号を説明する図
【図10】ダイバーシティによる受信レベルの確率分布図
【符号の説明】
【0094】
1 第1の送受信機アンテナ(1a、1b)
2 第1の送受信機
3 電子スイッチ
4 第2の送受信機アンテナ
5 第2の送受信機
6 受信レベル決定手段
7 距離推定手段
8 機能制限手段
9 警報手段
101、102 通信システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の送受信機と第2の送受信機とによってなり、前記第1の送受信機は複数のアンテナを有してパケットデータを送信している途中に前記複数のアンテナを切り替え、前記第2の送受信機は前記第1の送受信機でパケットデータを送信する間に切り替えたそれぞれの前記複数のアンテナでの送信時間中の受信レベルをそれぞれ少なくとも1回以上測定し、前記複数の受信レベルから最大値、或いは平均値、或いは中央値等を計算し、受信レベル値を求める通信システム。
【請求項2】
前記第1の送受信機は複数のアンテナを有して要求信号を送信し、前記第2の送受信機は前記要求信号を受信すると応答信号を返す通信システムにおいて、
前記第1の送受信機は、前記応答信号の受信中に前記複数のアンテナを切り替えて受信を行い、前記複数のアンテナのそれぞれによって受信レベルを少なくとも1回以上測定して、前記複数のアンテナ毎に最大値、或いは平均値、或いは中央値等を計算し受信レベル値を求め、最も大きい受信レベル値となった前記アンテナでその後の受信中の応答信号を受信する構成とした請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
前記第1の送受信機は複数のアンテナを有して要求信号を送信し、前記第2の送受信機は前記要求信号を受信すると応答信号を返す通信システムにおいて、
前記第1の送受信機は、前記応答信号の受信中に前記複数のアンテナを切り替えて受信を行い、前記複数のアンテナのそれぞれによって受信レベルを少なくとも1回以上測定して、前記複数のアンテナ毎に最大値、或いは平均値、或いは中央値等を計算し受信レベル値を求め、次回の送信時に小さい受信レベル値となった前記アンテナから順番に切り替える構成とした請求項1記載の通信システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の通信システムと、前記受信レベル値を基に、あらかじめ定めた閾値あるいは表あるいは関係式より前記第1の送受信機と前記第2の送受信機間の距離を推定する距離推定手段とを有し、
前記第1の送受信機と前記第2の送受信機との間で定期的或いは不定期的に無線の送受信を行うことによりお互いの距離を確認しあい、前記距離推定手段で推定した距離が所定の距離以上の場合には、前記第1の送受信機あるいは前記第2の送受信機に接続される本体装置の機能を制限したり或いは警報を発生させる無線警報装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の通信システムや無線警報装置の少なくとも一部をコンピュータに実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−195154(P2007−195154A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328982(P2006−328982)
【出願日】平成18年12月6日(2006.12.6)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】