説明

配線基板および配線基板の製造方法

【課題】配線導体の抵抗値が低く、かつ配線導体の絶縁基板からの剥離を抑制できる配線基板を提供する。
【解決手段】配線基板1は、ガラス成分を有するセラミックスを含む絶縁基板2と、絶縁基板2に設けられた配線導体3とを有する。配線導体3は、その厚み方向おいて外側に位置する第1導体部3aと、第1導体部3aの間に位置する第2導体部3bとを有する。第2導体部3bは、導体成分を有し、第1導体部3aは、導体成分とガラス成分を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器においては小型化、軽量化、高性能化が進み、電子機器に実装される電子部品も小型化、軽量化、高性能化が望まれている。この様な状況の中で、絶縁体層と導体層とを積層し、これらの積層体内に導体パターンによって回路素子が形成された各種の積層型電子部品が開発されている。
【0003】
このような電子部品は、例えば、セラミック粉末に有機バインダー、可塑剤および溶剤等を加えてスラリーとし、ドクターブレード等によりセラミックグリーンシート(以下、グリーンシートともいう。)を成形した後、金属粉末を含有する導体ペーストを印刷するなどしてグリーンシート上に導体パターンを形成し、次に複数枚の導体パターンが形成されたグリーンシートを積層して加圧することにより積層体を得た後、この積層体を焼成することにより得られる。
【0004】
ここで、大容量且つ高速伝送の電子部品を実現するためには、積層セラミック配線基板において、低抵抗な導体層が求められる。抵抗値の低い導体層を得るためには、導体層を形成するメタライズ層を緻密化する、すなわち金属粒子の粒成長を促進させることにより導電率を高くする、または導体層の厚みを厚くするという方法が考えられる(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平9−293953
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、メタライズ層を緻密化した場合には、導体層と絶縁層との密着力が弱くなり、電子部品の実装時等に熱が加わった場合、層間剥離が発生する可能性がある。
【0006】
また、厚い導体層を形成するために、グリーンシート上に厚い導体パターンを形成すると、導体パターンが形成されたグリーンシートを積層した場合に、導体パターンが形成された領域が重なる部分と他の部分ではその厚み差が大きくなり、積層されたグリーンシートをその厚み方向に加圧した場合に、導体パターンが形成された領域が重なる部分においては加圧力が十分に加わるものの、そうでない部分において加圧力が十分に加わりにくくなるので、不十分な圧着となりやすい。
【0007】
そして、そのように不十分な圧着により形成された積層体を焼成すると、圧着が不十分な部分で層間剥離が発生する可能性があった。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、配線導体の抵抗値が低く、かつ配線導体の絶縁基板からの剥離を抑制できる配線基板およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の配線基板は、ガラス成分を有するセラミックスを含む絶縁基板と、前記の絶縁基板に設けられた配線導体とを有する。前記の配線導体は、その厚み方向おいて外側に位置する第1導体部と、該第1導体部の間に位置する第2導体部とを有する。前記の第1導体部は、前記のガラス成分を有する。
【0010】
本発明の配線基板の製造方法は、支持体上に金属粉末およびバインダーを含む第1導体ペーストを塗布する第1塗布工程と、前記の第1導体ペーストを乾燥させて第1下部導体層を形成する第1乾燥工程と、前記の第1下部導体層上に前記の金属粉末、前記のバインダー、およびガラス成分を含む第2導体ペーストを塗布する第2塗布工程と、前記の第2導体ペーストを乾燥させて第1上部導体層を形成する第2乾燥工程と、前記の支持体および前記の第1上部導体層の上に、前記のガラス成分を含むセラミックスラリーを塗布する第3塗布工程と、前記のセラミックスラリーを乾燥させて、第1導体付きセラミックグリーンシートを得る第3乾燥工程と、前記の支持体と前記の第1導体付きセラミックグリーンシートとの積層体から前記の支持体を剥離する剥離工程と、前記の第1導体付きセラミックグリーンシートの前記の第1下部導体層上に前記の第1導体ペーストを塗布する第4塗布工程と、前記の第1導体ペーストを乾燥させて前記の第2下部導体層を形成する第4乾燥工程と、前記の第1下部導体層上に前記の金属粉末、前記のバインダー、および前記のガラス成分を含む第2導体ペーストを塗布する第5塗布工程と、前記の第2導体ペーストを乾燥させて前記の第2上部導体層を形成する第5乾燥工程と、前記の第1導体付きセラミックグリーンシートおよび前記の第2上部導体層の上に、前記のガラス成分を含むセラミックスラリーを塗布する第6塗布工程と、前記のセラミックスラリーを乾燥させて、第2導体付きセラミックグリーンシートを得る第6乾燥工程と、前記の第2導体付きセラミックグリーンシートを焼成する焼成工程とを有する。この配線基板の製造方法を、「第1の配線基板の製造方法」という。
【0011】
前記の第1の配線基板の製造方法は、好ましくは、前記の焼成工程の前に、前記の第2導体付きセラミックグリーンシートを複数積層して第1グリーンシート積層体を得る工程を有する。また、前記の焼成工程において、前記の第1グリーンシート積層体を焼成する。この配線基板の製造方法を、「第2の配線基板の製造方法」という。
【0012】
前記の第1の配線基板の製造方法は、好ましくは、前記の焼成工程の前に、前記の第2導体付きセラミックグリーンシートの上に、前記の第1導体付きセラミックグリーンシート上に前記の第2下部導体層および前記の第2上部導体層が形成されてなる第3導体付きセラミックグリーンシートを積層して第1グリーンシート積層体を得る工程を有し、前記の焼成工程において、前記の第1グリーンシート積層体を焼成する。この配線基板の製造方法を、「第3の配線基板の製造方法」という。
【0013】
前記の第2の配線基板の製造方法は、好ましくは、前記の第1グリーンシート積層体の上に、前記の第1導体付きセラミックグリーンシート上に前記の第2下部導体層および前記の第2上部導体層が形成されてなる第3導体付きグリーンシートを積層して第2グリーンシート積層体を得る工程を有し、前記の焼成工程において、前記第2グリーンシート積層体を焼成する。この配線基板の製造方法を、「第4の配線基板の製造方法」という。
【0014】
前記の第1乃至第4のいずれかの配線基板の製造方法において、好ましくは、前記の第4塗布工程において、前記の第1導体層の外周より内側に前記の第1導体ペーストを塗布する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の配線基板によれば、配線導体の抵抗値が低く、かつ配線導体の絶縁基板からの剥離を抑制できる配線基板を実現することができる。
【0016】
本発明の配線基板の製造方法によれば、配線導体の抵抗値が低く、かつ配線導体の絶縁基板からの剥離を抑制できる配線基板を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態による配線基板の構成例を示す図である。図1に示すように、本実施の形態による配線基板1は、絶縁基板2と、絶縁基板2の内部に形成された配線導体3とを有する。配線導体3は、絶縁基板2の厚み方向において外側に位置する第1導体部3aと、第1導体部3aの間に位置する第2導体部3bとを有する。
【0019】
例えば、絶縁基板2は、複数の絶縁層2a〜2eが積層されてなり、配線導体3は、絶縁層2a〜2eの間または表面に形成された導体層からなる。この導体層は、図1に示すように、絶縁基板2の厚み方向、すなわち絶縁層2a〜2eの積層方向に4つの部分導体層が積層されてなる。そして、絶縁層2a〜2eに隣接する部分導体層(以下、「第1部分導体層」ともいう。)は、第1導体部3bをなし、中央部の2つの部分導体層(以下、「第2部分導体層」ともいう。)は、第2導体部3aをなす。
【0020】
ここで、絶縁層が、ガラス成分を有する複数のセラミック層である場合、第1部分導体層は、そのガラス成分を含む。そして、第1部分導体層と第2部分導体層は、同じ導体成分を含む。これにより、第1部分導体層と第2部分導体層との密着強度を保持しつつ、絶縁層と第1部分導体層との密着強度が高くなり、第1部分導体層の絶縁層からの剥離を抑制できる。
【0021】
また、導体層全体として、ガラス成分を含有するのは絶縁層に隣接する限られた部分であるから、抵抗値の増加も抑制することができる。
【0022】
なお、本実施の形態による配線基板1においては、絶縁基板3に接する配線導体2の表面の半分以上の領域で、ガラス成分を有することから、絶縁基板3と配線導体2との密着強度を高く維持することができ、配線導体2の絶縁基板3からの剥離を十分抑制することができる。
【0023】
また、図1の配線基板1のように、絶縁層と導体層とを交互に積層して配線基板を形成している場合には、絶縁層と導体層との界面に圧縮応力が働いているため、絶縁層と導体層との界面において密着性が高ければ、導体層の絶縁層からの剥離を十分抑制することができる。従って、配線導体2の表面においてガラス成分を含有する領域が小さい場合でも、配線導体2における、絶縁基板2の厚み方向において外側に位置する領域にガラス成分を有するのであれば、層間剥離を十分に抑制することができる。
【0024】
以下に、図1の配線基板の製造方法を説明する。図2は、配線基板1の製造方法を説明するための図である。まず、図2(a)に示すように、支持体11上に第1導体ペースト12aを塗布して乾燥させ、その乾燥した第1導体ペースト12a(第1下部導体層)上に第2導体ペースト12bを塗布して乾燥させる(これにより、第1上部導体層が形成される)ことにより乾燥導体ペースト12cを形成する。支持体11は、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリイミド系、又は塩化ビニル系等の有機樹脂からなるフィルム状のものである。
【0025】
支持体11の表面には、乾燥導体ペースト12cおよび後に形成されるセラミックグリーンシート(以下、まとめて「導体付きセラミックグリーンシート14」という。)の剥離性を考慮して、離型剤若しくは帯電防止剤などの表面処理層を形成しておくことが好ましい。特に、支持体11からの剥離時に導体付きセラミックグリーンシート14が伸び等の変形をしてしまうことを抑えるためには、支持体11の表面に離型剤の表面処理層が形成されていることがより好ましい。
【0026】
離型剤の種類としては、大別してシリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有系、アルキッド樹脂系、若しくはポリオレフィン樹脂系などを用いることができる。特に、耐熱性、剥離性及びコストの観点から、シリコーン系がより望ましい。
【0027】
第1導体ペースト12aは、金属導体粉末に有機バインダー、有機溶剤、および必要に応じて分散剤等を加えて、ボールミル、三本ロールミル、若しくはプラネタリーミキサー等の混練手段によって混合および混練することにより作製される。
【0028】
金属導体粉末は、タングステン(W),モリブデン(Mo),マンガン(Mn),銅(Cu),銀(Ag),金(Au),白金(Pt),アルミニウム(Al),銀−鉛(Ag−Pd)合金、又は銀−白金(Ag−Pt)合金が挙げられるが、その中でもガラスセラミック粉末が焼成される温度で焼結する金属の粉末である、Cu,Ag,Au,Pt,Al,Ag−Pd合金又はAg−Pt合金がより好ましい。
【0029】
第1導体ペースト12aの有機バインダーは、従来導体ペーストに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸、若しくはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,又はアクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,若しくはセルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。有機バインダーの選定に当たっては、焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系、若しくはアルキド系の有機バインダーがより好ましい。
【0030】
第1導体ペースト12aの有機溶剤は、導体粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート若しくはフタル酸等などが使用可能である。
【0031】
第2導体ペースト12bは、金属導体粉末と絶縁層の原料であるガラスセラミック粉末に有機バインダー、有機溶剤、および必要に応じて分散剤等を加えて、ボールミル、三本ロールミル、若しくはプラネタリーミキサー等の混練手段によって混合および混練することにより作製される。
【0032】
金属導体粉末は、タングステン(W),モリブデン(Mo),マンガン(Mn),銅(Cu),銀(Ag),金(Au),白金(Pt),アルミニウム(Al),銀−鉛(Ag−Pd)合金、又は銀−白金(Ag−Pt)合金が挙げられるが、その中でもガラスセラミック粉末が焼成される温度で焼結する金属の粉末である、Cu,Ag,Au,Pt,Al,Ag−Pd合金又はAg−Pt合金がより好ましい。
【0033】
第2導体ペースト12bの有機バインダーは、従来導体ペーストに使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸、若しくはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,又はアクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,若しくはセルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。有機バインダーの選定に当たっては、焼成工程での分解、揮発性を考慮すると、アクリル系、若しくはアルキド系の有機バインダーがより好ましい。
【0034】
第1導体ペースト12aの有機溶剤は、導体粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート若しくはフタル酸等などが使用可能である。
【0035】
例えば、第1導体ペースト12aは、金属導体粉末100質量部に対して有機バインダーを3〜32質量部、有機溶剤を1〜30質量部加えて混練することにより形成される。また、第1導体ペースト12aは、表層に配線導体を形成した後に滲みが発生しない程度の粘度、具体的には4000〜20000cps程度の粘度にすることが望ましい。
【0036】
支持体11の表面に第1導体ペースト12aを印刷する方法は、特に制限されるものではなく、従来周知のスクリーン印刷法若しくはグラビア印刷法等が使用可能である。
【0037】
例えば、第2導体ペースト12bは、金属導体粉末とセラミックスに含まれるガラスセラミック粉末100質量部に対して有機バインダーを3〜32質量部、有機溶剤を1〜30質量部加えて混練することにより形成される。また、第2導体ペースト12bは、第1導体ペースト12aを形成した後に滲みが発生しない程度の粘度、具体的には4000〜20000cps程度の粘度にすることが望ましい。
【0038】
第1導体ペースト12aの表面に第2導体ペースト12bを印刷する方法は、特に制限されるものではなく、従来周知のスクリーン印刷法若しくはグラビア印刷法等が使用可能である。
【0039】
次に、図2(b)に示すように、乾燥導体ペースト12cを覆うようにセラミックスラリー13を塗布して乾燥させることにより、導体付きセラミックグリーンシート14を形成する。
【0040】
セラミックスラリー13の粉末は、ガラスセラミック粉末(ガラス粉末とフィラー粉末との混合物)を含む。ガラスセラミック粉末のガラス成分としては、例えばSiO−B系、SiO−B−Al系,SiO−B−Al−MO系(ただし、MはCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−Al−MO−MO系(ただし、MおよびMは同じまたは異なってCa,Sr,Mg,BaまたはZnを示す),SiO−B−Al−MO−MO系(ただし、MおよびMは上記と同じである),SiO−B−MO系(ただし、MはLi、NaまたはKを示す),SiO−B−Al−MO系(ただし、Mは上記と同じである),Pb系ガラス,又はBi系ガラス等が挙げられる。
【0041】
また、ガラスセラミック粉末のフィラー粉末としては、例えばAl,SiO,ZrOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,TiOとアルカリ土類金属酸化物との複合酸化物,AlおよびSiOから選ばれる少なくとも1種を含む複合酸化物(例えばスピネル,ムライト,コージェライト)等のセラミック粉末が挙げられる。
【0042】
セラミックグリーンシートの有機バインダーは、従来から使用されているものが使用可能であり、例えばアクリル系(アクリル酸,メタクリル酸、若しくはそれらのエステルの単独重合体または共重合体,具体的にはアクリル酸エステル共重合体,メタクリル酸エステル共重合体,又はアクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等),ポリビニルブチラ−ル系,ポリビニルアルコール系,アクリル−スチレン系,ポリプロピレンカーボネート系,若しくはセルロース系等の単独重合体または共重合体が挙げられる。特に、焼成工程での分解、および揮発性を考慮すると、アクリル系バインダーがより好ましい。
【0043】
セラミックスラリー13の有機溶剤は、セラミック粉末及びガラスセラミック粉末と有機バインダーとを良好に分散させて混合できるようなものであればよく、トルエン,ケトン類,若しくはアルコール類の有機溶媒や水等が挙げられる。
【0044】
これらの中で、トルエン,メチルエチルケトン,およびイソプロピルアルコール等の蒸発係数の高い溶剤はスラリー塗布後の乾燥工程が短時間で実施できるのでより好ましい。
【0045】
導体付きセラミックグリーンシート14を作製するためのスラリーは、セラミック及びガラスセラミック組成粉末100質量部に対して有機バインダーを5〜20質量部、有機溶剤を15〜50質量部加え、ボールミル等の混合手段により混合することにより3〜100cpsの粘度となるように調製される。
【0046】
セラミックスラリーの塗布工法としては、ドクターブレード法,リップコーター法,若しくはダイコーター法等において塗布される。特にダイコーター法やスロットコーター法、若しくはカーテンコーター法等の押し出し式の方法を用いると、これらは非接触式の塗布方法であるため、乾燥導体ペースト12cを物理的な力で混合させてしまうことなく導体付きセラミックグリーンシート14を形成することができるのでより好ましい。
【0047】
支持体11上に塗布したセラミックスラリー13の乾燥は、従来用いられている温風乾燥機や遠赤外線乾燥機等のような輻射熱や伝熱を利用するものの他、溶剤の蒸気圧を低下させ揮発させる真空乾燥機等の乾燥機を用いることにより行なわれてもよい。
【0048】
なお、導体付きセラミックグリーンシート14には、必要に応じて上下の層間の導体層2同士を接続するためのビアホール導体やスルーホール導体等の貫通導体を形成してもよい。これら貫通導体は、金型によるパンチング加工やレーザ加工等により導体付きセラミックグリーンシート14に貫通孔を形成した後に、貫通導体用導体ペーストを印刷やプレス充填等の埋め込み手段によって形成してよい。
【0049】
導体付きセラミックグリーンシート14に貫通穴を加工する際、導体付きセラミックグリーンシート14を支持体11から剥がして行なってもよいが、支持体11上に保持したまま行なうと導体付きセラミックグリーンシート14の変形を防止できるのでより好ましい。
【0050】
また、貫通導体用導体ペーストは、第1導体ペースト12aと同様にして作製され、溶剤や有機バインダーの量により15000cps乃至40000cps程度に調整される。
【0051】
なお、貫通導体用導体ペーストの焼結挙動の調整のために、金属導体粉末にガラスやセラミックスの粉末を加えた無機成分としてもよい。無機成分100質量部に対して有機バインダーの量は3〜15質量部の範囲が好ましい。3重量部以上にすると、ペースト状に調整することが容易となり、15質量部未満では、ペースト中の有機成分の量が適度であるため、焼結後の導体が多孔性となるか過剰に収縮することにより貫通導体内部や貫通導体と貫通孔内壁の間に空隙が生じることを効果的に抑制することができる。
【0052】
その後、支持体11と導体付きセラミックグリーンシート14との積層体から支持体11を剥離する。
【0053】
次に、図2(c)に示すように、導体付きセラミックグリーンシート14の乾燥導体ペースト12c上に、第1導体ペースト12aを塗布して乾燥させた後(これにより、第2下部導体層が形成される)、第2導体ペースト12bを塗布して乾燥させる(これにより、第2上部導体層が形成される)。このとき、第1導体ペースト12aは、平面視したときに乾燥導体ペースト12cよりも面積が小さいことが好ましい。これにより、第1導体ペースト12aを塗布する際に位置ズレが発生しても、導体付きセラミックグリーンシート14において隣接する乾燥導体ペースト13cの間に短絡が発生しにくくなる。第2導体ペースト12bを塗布した後、乾燥させて、乾燥導体ペースト12cを得た後、図2(d)に示すように、この乾燥導体ペースト12cを覆うようにセラミックスラリー13を塗布して、そのセラミックスラリー13を乾燥させる。
【0054】
すると、図3(a)に示すように、導体ペーストの厚みが厚い場合においても、セラミックグリーンシートの段差が小さい、2層の導体付きセラミックグリーンシート14を得ることができる。
【0055】
次に、図3(b)に示すように、2層の導体付きセラミックグリーンシート14同士を位置合わせして積み重ね、圧着することによりグリーンシート積層体15を作製する。
【0056】
積層する方法は、積み重ねた導体付きセラミックグリーンシート14に熱と圧力を加えて熱圧着する方法や、有機バインダー,可塑剤,および溶剤等からなる密着剤をシート間に塗布して熱圧着する方法等が採用可能である。
【0057】
積層の際の加熱加圧の条件は、用いる有機バインダー等の種類や量により異なるが、概ね30〜100℃、2〜20MPaである。
【0058】
このグリーンシート積層体15を大気中または加湿窒素雰囲気中にて、400〜600℃の温度で脱バインダーした後、800〜1000℃の温度で焼成することにより、図2の配線基板1が得られる。
【0059】
なお、半導体チップやチップ部品を搭載するための搭載用電極やコイル内蔵基板を外部配線基板に接続するための電極パッドのような、導体ペーストを焼成してなる表層配線導体には、半田等による半導体チップやチップ部品との接合を強固なものにするために、その表面にニッケル層および金層をメッキ法等により順次被着するとよい。
【0060】
本実施の形態による配線基板1の製造方法においては、支持体11を剥離後、導体付きセラミックグリーンシート14の乾燥導体ペースト12cの上に第1導体ペースト12aを塗布する。そして、その第1導体ペースト12aを乾燥した後、第2導体ペースト12bを塗布し乾燥させ、その後、セラミックスラリー13を塗布して乾燥する。これにより、各導体付きセラミックグリーンシート14において、導体ペーストがグリーンシートに埋没し、導体パターンを形成したグリーンシートの表面が平坦になることから、グリーンシートを積層した場合に導体パターンが形成された領域とそうでない部分で厚み差が小さくなり、グリーンシートを積層する際に不均一な加圧力がかかることを抑制することができる。その結果、配線基板1において、デラミネーション(層間剥離)が発生することを抑制することができる。
【0061】
以上のような方法で作製された配線基板は、配線導体の抵抗値が低く、かつ配線導体の絶縁基板からの剥離を抑制できる。
【0062】
なお、配線基板1の表面に配線導体3を設ける場合、グリーンシート積層体15の上に、図2(c)で示すような、導体付きセラミックグリーンシート14の上に第1導体ペースト12aおよび第2導体ペースト12bを塗布し乾燥させてなるセラミックグリーンシートを配置して一体焼成すると、表面の配線導体3も厚くした配線基板1が得られる。
【実施例】
【0063】
以下、実施例を挙げて本実施の形態による配線基板の製造方法を詳細に説明する。
【0064】
まず、図2(a)に表されるPETより成るフィルム状の支持体11上に、第1導体ペースト12aをスクリーン印刷法によって5乃至20μm厚みに塗布した。第1導体ペースト12aとしては、Cu粉末100質量部に、アクリル樹脂6質量部と有機溶剤としてのα−テルピネオール14質量部とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールにて十分に混練したものを用いた。
【0065】
次に、第1導体ペースト12aを乾燥させた後、この第1導体ペーストの上に第2導体ペースト12bを塗布した。第2導体ペースト12bをスクリーン印刷法によって5乃至10μm厚みに塗布した。第2導体ペースト12bとしては、Cu粉末93質量部とガラス成分7質量部の合計100質量部に、アクリル樹脂6質量部と有機溶剤としてのα−テルピネオール14質量部とを加え、攪拌脱泡機により十分に混合した後に3本ロールにて十分に混練したものを用いた。
【0066】
次に、第1導体ペースト12a,12bが形成された支持体11上に、セラミックスラリー13をダイコーター法により塗布した。セラミックスラリー13としては、無機粉末100質量部と、アクリル樹脂20質量部と、有機溶剤としてトルエンを50質量部としてボールミルにより混合し調製したものを用いた。
【0067】
次に、このセラミックスラリー13を50℃で30分乾燥して得られた導体付きセラミックグリーンシート14の乾燥導体ペースト13c上に、第1導体ペースト12a,第2導体ペースト12b,セラミックスラリー13をそれぞれ順に塗布し乾燥させることにより、図3(a)に示す2層の導体付きセラミックグリーンシート14を形成した。
【0068】
このようにして得られた図3(a)に表される導体付きセラミックグリーンシート14においては、乾燥導体ペースト12cと、その乾燥導体ペースト12c上のセラミックグリーンシートとの厚みの和L1と、乾燥導体ペースト12cが形成されていない領域上の上部セラミックグリーンシートの厚みL2との差(L1−L2)は、2μm以下であった。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態による配線基板の構成例を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態による配線基板の製造方法を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態による配線基板の製造方法を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
1・・・・・・配線基板
2・・・・・・絶縁基板
2a〜2e・・絶縁層
3a・・・・・第1部分導体層
3b・・・・・第2部分導体層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス成分を有するセラミックスを含む絶縁基板と
前記絶縁基板に設けられた配線導体と
を有する配線基板であって、
前記配線導体は、その厚み方向おいて外側に位置する第1導体部と、該第1導体部の間に位置する第2導体部とを有し、
前記第1導体部は、前記ガラス成分を有する配線基板。
【請求項2】
支持体上に金属粉末およびバインダーを含む第1導体ペーストを塗布する第1塗布工程と
前記第1導体ペーストを乾燥させて第1下部導体層を形成する第1乾燥工程と、
前記第1下部導体層上に前記金属粉末、前記バインダー、およびガラス成分を含む第2導体ペーストを塗布する第2塗布工程と、
前記第2導体ペーストを乾燥させて第1上部導体層を形成する第2乾燥工程と、
前記支持体および前記第1上部導体層の上に、前記ガラス成分を含むセラミックスラリーを塗布する第3塗布工程と、
前記セラミックスラリーを乾燥させて、第1導体付きセラミックグリーンシートを得る第3乾燥工程と、
前記支持体と前記第1導体付きセラミックグリーンシートとの積層体から前記支持体を剥離する剥離工程と、
前記第1導体付きセラミックグリーンシートの前記第1下部導体層上に前記第1導体ペーストを塗布する第4塗布工程と、
前記第1導体ペーストを乾燥させて前記第2下部導体層を形成する第4乾燥工程と、
前記第2下部導体層上に前記金属粉末、前記バインダー、および前記ガラス成分を含む第2導体ペーストを塗布する第5塗布工程と、
前記第2導体ペーストを乾燥させて前記第2上部導体層を形成する第5乾燥工程と、
前記第1導体付きセラミックグリーンシートおよび前記第2上部導体層の上に、前記ガラス成分を含むセラミックスラリーを塗布する第6塗布工程と、
前記セラミックスラリーを乾燥させて、第2導体付きセラミックグリーンシートを得る第6乾燥工程と、
前記第2導体付きセラミックグリーンシートを焼成する焼成工程と
を有する配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記焼成工程の前に、前記第2導体付きセラミックグリーンシートを複数積層して第1グリーンシート積層体を得る工程を有し、
前記焼成工程において、前記第1グリーンシート積層体を焼成する請求項2に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
前記焼成工程の前に、
前記第2導体付きセラミックグリーンシートの上に、前記第1導体付きセラミックグリーンシート上に前記第2下部導体層および前記第2上部導体層が形成されてなる第3導体付きセラミックグリーンシートを積層して第1グリーンシート積層体を得る工程を有し、
前記焼成工程において、前記第1グリーンシート積層体を焼成する請求項2に記載の配線基板。
【請求項5】
前記第1グリーンシート積層体の上に、前記第1導体付きセラミックグリーンシート上に前記第2下部導体層および前記第2上部導体層が形成されてなる第3導体付きグリーンシートを積層して第2グリーンシート積層体を得る工程を有し、
前記焼成工程において、前記第2グリーンシート積層体を焼成する請求項3に記載の配線基板。
【請求項6】
前記第4塗布工程において、前記第1導体層の外周より内側に前記第1導体ペーストを塗布する請求項2乃至請求項5のいずれかに記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−80820(P2010−80820A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249699(P2008−249699)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】