説明

配線基板の製造方法

【課題】 微細配線を実現することができる「配線基板の製造方法」を提供すること。
【解決手段】 ダマシンプロセスを用いた配線形成工程を含む配線基板の製造方法において、下層配線層10上に形成された層間絶縁層11に、下層配線層11に達するビアホールVHを形成し、その際に生じたスミアSMを除去した後、層間絶縁層11上に、ビアホールVHの上方に位置する所要の配線パターンの形状に従う開口部(配線溝)OPを有するように感光性永久レジスト層12を形成する。次に、全面にシード層13を形成し、ビアホールVH及び開口部(配線溝)OPの内部を充填するようにしてシード層13上に導体層14を形成した後、感光性永久レジスト層12が露出するまで導体層14の表面を研磨して平坦化し、配線パターン15を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関し、特に、微細配線を形成するのに適応されたダマシンプロセスを用いた配線形成工程を含む配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LSIの高集積化及び高速化により、配線の多層化と微細化が進んでいる。特にロジックデバイスにおいては、トランジスタ特性の高性能化を実現するためには配線の最小ピッチをゲート長に合わせて小さくすることが必須であり、さらに大電流密度での使用条件に耐える配線構造が要求される。配線ピッチが縮小されると、従来はそれほど問題とされなかった配線間容量と配線抵抗に起因する信号遅延が無視できなくなってくる。これを避けるためには、抵抗率の低い配線材料と誘電率の低い層間絶縁膜を用いることが必要である。配線材料としては、従来よりアルミニウム(Al)が用いられているが、最近では、Alと比較して同じ配線断面積で低い配線抵抗を実現できる銅(Cu)が用いられている。Cuは、Alと同じ配線ピッチで同じ配線抵抗では配線の厚みを薄くできるため、結果的に配線間容量を小さくすることができる。しかし、Cuを用いて多層配線を形成する場合、Cuのエッチングや層間絶縁膜の埋め込みが必要であり、現状の技術ではかかる処理を容易に行うことができないという難点がある。
【0003】
そこで、配線を形成する技術として、従来のAl配線技術に用いてきたドライエッチングの手法に代わり、Cuのエッチングを必要としない「ダマシン」が主流となってきている。ダマシンには、シングルダマシンとデュアルダマシンがある。シングルダマシンは、層間絶縁膜に配線となる溝をエッチングにより形成し、さらに拡散防止層としてのバリヤメタル層を堆積し、その上にCu膜を堆積した後、配線溝の上部のCuとバリヤメタルを化学機械研磨(CMP)等により除去して平坦化を行い、配線を形成する手法である。これに対しデュアルダマシンは、下層配線層との電気的コンタクトをとるビアホールを配線溝と共に同時に形成し、バリヤメタル層の堆積、Cu膜の堆積、CMPをそれぞれ1回行い、配線とビア・プラグを同時に形成する手法である。そして、これらの工程を必要な層数となるまで繰り返すことで、多層配線を形成することができる。
【0004】
このようにダマシンプロセスでは、シングルダマシンあるいはデュアルダマシンのいずれにせよ、配線溝とビアホールへの配線材(Cu)の埋め込みが終われば、CMP等の機械加工により平坦化を行う処理が必要とされる。この際、研磨を行う装置は回転系の構造をもつため、機械的振動に起因するノイズが発生し、このノイズにより研磨終端を容易に検出できないといった問題が生じる。また、研磨終端を容易に検出できないため、研磨の終点を適正な範囲内で止めることが難しく、例えばオーバーポリッシング(削り過ぎ)の場合には、配線が細く(つまり配線断面積が小さく)なり、配線抵抗が高くなる(つまり導電性が低下する)といった問題が生じる。他方、アンダーポリッシング(削り残し)の場合には、バリヤメタル層の一部が残存することでリーク電流が生じたり、場合によってはショートをひき起こすといった問題が生じる。さらに、Cuとバリヤメタルを同時に研磨しているため、Cuとバリヤメタルの硬さの違い(一般的にCuの方が柔らかい)に起因して、配線(Cu)上に「ディッシング」と呼ばれる窪み(凹部)が発生する。
【0005】
本願の出願人は、かかる問題点を解消するための技術を以前に提案した(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2000−332111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本願の出願人が以前に提案した技術(特許文献1の図1)では、下層配線層10上に形成された層間絶縁膜11に、所要形状にパターニングされた配線溝12と下層配線層10に達するビアホール13を形成する工程を開示しているが、ビアホールの形成の際に一般に発生する樹脂片(スミア)を除去するための処理(デスミア)については、どの段階で行うのか特に明確にはしていなかった。また、配線溝のパターニングとビアホールの形成を異なる段階で行う場合に、各処理の順序についても特に明確にはしていなかった。
【0007】
そこで、本発明は、上記の従来技術(特許文献1)とは別のアプローチから、微細配線を実現することができる配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の従来技術の課題を解決するため、本発明の一形態によれば、ダマシンプロセスを用いた配線形成工程を含む配線基板の製造方法であって、前記配線形成工程が、下層配線層上に形成された層間絶縁層に、前記下層配線層に達するビアホールを形成する工程と、前記ビアホールの形成の際に生じたスミアを除去するデスミア工程と、前記層間絶縁層上に、前記ビアホールの上方に位置する所要の配線パターンの形状に従う開口部を有するように感光性永久レジスト層を形成する工程と、前記ビアホール及び前記開口部に導体を埋め込むようにして前記配線パターンを形成する工程とを含むことを特徴とする配線基板の製造方法が提供される。
【0009】
この形態に係る配線基板の製造方法によれば、層間絶縁層上に所要の形状にパターニングされた感光性永久レジスト層の開口部を、目的の配線パターンを形成するために利用している。かかる感光性のレジスト層は、一般的に露光表面においてかなり微細で正確なパターニングが可能であるため、当該レジスト層の膜厚を薄くしても(つまり、配線パターンを規定する開口部の深さを浅くしても)、十分に微細で正確な配線の形成に対応することができる。つまり、微細配線の実現に寄与することができる。
【0010】
また、本発明の他の形態によれば、ダマシンプロセスを用いた配線形成工程を含む配線基板の製造方法であって、前記配線形成工程が、下層配線層上に形成された層間絶縁層に、前記下層配線層に達するビアホールを形成する工程と、前記層間絶縁層上に、前記ビアホールの上方に位置する所要の配線パターンの形状に従う開口部を有するように感光性永久レジスト層を形成する工程と、前記ビアホールの形成の際に生じたスミアを除去するデスミア工程と、前記ビアホール及び前記開口部に導体を埋め込むようにして前記配線パターンを形成する工程とを含むことを特徴とする配線基板の製造方法が提供される。
【0011】
また、本発明の更に他の形態によれば、ダマシンプロセスを用いた配線形成工程を含む配線基板の製造方法であって、前記配線形成工程が、下層配線層上に形成された層間絶縁層上に、前記下層配線層の上方に位置する所要の配線パターンの形状に従う開口部を有するように感光性永久レジスト層を形成する工程と、前記層間絶縁層に、前記下層配線層に達するビアホールを形成する工程と、前記ビアホールの形成の際に生じたスミアを除去するデスミア工程と、前記ビアホール及び前記開口部に導体を埋め込むようにして前記配線パターンを形成する工程とを含むことを特徴とする配線基板の製造方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法について、その配線形成工程を示す図1を参照しながら説明する。本実施形態では、以下に記述するようにデュアルダマシンプロセスを用いて配線形成を行っている。
【0013】
先ず最初の工程では(図1(a)参照)、下層配線層10(配線材料として銅(Cu)を用いた配線層)を覆うように全面に層間絶縁層11を形成する。層間絶縁層11の材料としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂等の熱硬化性樹脂が用いられる。あるいは、紫外線等の光照射によって硬化する性質を有するエポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の感光性樹脂を用いてもよい。
【0014】
次の工程では(図1(b)参照)、下層配線層10上に形成された層間絶縁層11に、例えば、CO2 レーザ、YAGレーザ等のレーザにより、下層配線層10に達するビアホールVHを形成する。このとき、ビアホールVH内の下層配線層10(Cu)上には、レーザによる穴明け処理によって生じた樹脂片(樹脂スミア)SMが残留している。なお、この工程ではレーザによりビアホールVHを形成しているが、前の工程で形成した層間絶縁層11が感光性樹脂からなる場合には、通常のフォトリソグラフィにより、当該ビアホールVHを形成することができる。
【0015】
次の工程では(図1(c)参照)、前の工程で下層配線層10(Cu)上に残留した樹脂スミアSMを、デスミア液を使用したウエット処理により除去する。具体的には、デスミア液としてアルカリ過マンガン酸塩溶液(過マンガン酸ナトリウム又は過マンガン酸カリウムを含む溶液)を使用し、あらかじめ当該樹脂(スミアSM)を膨潤させたものをこの溶液で溶解除去する。これによって、下層配線層10(Cu)の表面が清浄化され、後の工程でめっき処理を行った時にそのめっき膜との密着性を高めることができる。なお、この工程ではウエット処理によりデスミアを行っているが、他の手段としては、例えば、プラズマを用いたドライプロセスを使用してもよい。
【0016】
次の工程では(図1(d)参照)、層間絶縁層11上に、所要の形状にパターニングされた感光性永久レジスト層12を形成する。感光性永久レジスト層12の材料としては、例えば、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂等の絶縁性樹脂が用いられ、特性的には線膨張係数が70ppm/℃以下で、かつ、引っ張り強度が70MPa以上のものが用いられる。また、形態としては液状もしくはフィルム状のもの(例えば、ドライフィルム)が用いられる。具体的には、ビアホールVHの内部を含めて全面に感光性レジストを塗布し(液状の場合)、あるいはラミネートし(フィルム状の場合)、ビアホールVHの上方に位置する所要の配線パターンの形状に従うようにパターニングされたマスク(図示せず)を用いて露光及び現像(レジストのパターニング)を行うことで、当該配線パターンの形状に応じた開口部OP(破線で表示)を有する感光性永久レジスト層12を形成する。この感光性永久レジスト層12に形成された開口部OPは、配線パターンが形成されるべき「配線溝」を規定する。
【0017】
次の工程では(図1(e)参照)、ビアホールVH及び開口部(配線溝)OPの内壁を含めて全面(下層配線層10、層間絶縁層11及び感光性永久レジスト層12上)に、例えば、無電解めっきにより、銅(Cu)のシード層13を形成する。このとき、下層配線層10の表面はデスミア処理によって清浄となっているので、シード層13と下層配線層10との電気的な接続信頼性を確保することができる。なお、この工程では無電解めっきを行っているが、他の手段として、スパッタリングや蒸着等を行ってもよい。
【0018】
次の工程では(図1(f)参照)、ビアホールVH及び開口部(配線溝)OPの内部を充填するようにしてシード層13上に、このシード層13を給電層として電解Cuめっきにより、Cuの導体層14を形成する。本実施形態では、パルスめっきと直流めっきを組み合わせて電解Cuめっきを行っている。具体的には、ビアホールVHの部分が充填されるまではパルスめっきを行い、その後、直流めっきにより配線部分(開口部OP)を充填する。パルスめっきを行う際の条件は、フォワード方向(つまり、Cuが析出する方向)の電流密度が0.5〜10A/dm2 、そのめっき時間が0.1msec〜1sec で、リバース方向(つまり、Cuを溶かす方向)の電流密度が0.1〜10A/dm2 、そのめっき時間が0.1msec〜100msecである。また、直流めっきは、電流密度が0.5〜5A/dm2 の条件下で行う。
【0019】
なお、本工程が終了した段階では、電解めっきによるCuの堆積処理が行われているにすぎないので、図示のように導体層14(Cu)の表面は平坦とはなっていない。また、この工程では電解めっきにより導体層14を形成しているが、他の手段として、例えば、無電解めっきやCVD法等を用いることも可能である。
【0020】
最後の工程では(図1(g)参照)、導体層14(Cu)の表面を平坦化し、この平坦化処理を感光性永久レジスト層12の表面が露出するまで継続する。具体的には、バフ研磨、ベルト研磨等による機械研磨により、導体層14の表面を研磨して平坦化し、感光性永久レジスト層12の表面が露出した時点で研磨処理を止める。バフ研磨は、研磨材を埋め込んだロール状のバフ(不織布)を回転させ、冷却水で対象物表面(この場合、導体層14の表面)及びバフを湿潤させながら、バフを対象物表面に押し当てて研磨する方法である。また、ベルト研磨は、同様に冷却水で対象物表面及び研磨ベルト(研磨材を埋め込んだもの)を湿潤させながら、研磨ベルトを回転するローラ上を搬送させながら対象物表面に押し当てて研磨する方法である。例えば、バフ研磨の場合、#300と#600の2種類のバフロールを用いて、1mの長さのライン上で1m/min.の速度で水平搬送される研磨対象物に対し研磨を行い(つまり、1タクトが60sec )、これを4回〜6回程度繰り返す。
【0021】
あるいは、バフ研磨とエッチング液を用いた化学研磨とを組み合わせた方法を用いてもよい。具体的には、上記のバフ研磨(1タクトが60sec )を2回繰り返した後、硫酸/過酸化水素系エッチング液(エッチングレートが1μm/min.〜5μm/min.、好適には2μm/min.)を用いたスプレーエッチングにより、120sec 程度、研磨対象物を化学研磨する。
【0022】
また、導体層14の表面を平坦化する方法としては、上記の機械研磨(バフ研磨)等以外にも化学機械研磨(CMP)による方法が考えられるが、後述するように、研磨処理に要する時間を考慮すると上記の機械研磨(バフ研磨)等の方が好適である。
【0023】
以上の工程により、所要の形状にパターニングされた感光性永久レジスト層12の開口部(配線溝)OPとその下方のビアホールVHを埋め込むようにして配線層(配線パターン)15が形成されたことになる。
【0024】
さらに、図1には示していないが、必要に応じて上記の配線形成工程を所要の配線層数となるまで繰り返し、その両面に、最外層の配線パターンの所要の箇所に画定されたパッド部が露出するようにそれぞれ保護膜(例えば、ソルダレジスト層)を形成し、さらに、この保護膜から露出しているパッド部に適宜表面処理を施した後、必要に応じて、保護膜から露出しているパッド部に外部接続端子(例えば、はんだバンプ)を形成することで、多層配線基板を製造することができる。
【0025】
以上説明したように、本実施形態に係る配線形成方法によれば、層間絶縁層11上に所要の形状にパターニングされた感光性永久レジスト層12の開口部(配線溝)OPを、目的とする配線パターン15を形成するために利用している。このような感光性のレジスト層は一般的に露光表面においてかなり微細で正確なパターニングが可能であるため、仮に感光性永久レジスト層12の膜厚を薄く(つまり、配線溝OPの深さを浅く)しても、十分に微細で正確な配線の形成に対応することができる。つまり、配線パターン15の微細化を実現することができる。
【0026】
また、感光性永久レジスト層12は、ウエット処理によるデスミアを行った後に形成されるので、耐デスミア性の無い材料でも使用することができる。つまり、デスミアは樹脂を溶かす処理であるので、何らかの処置を講じなければ、スミア部以外の樹脂も溶解してしまう。従って、デスミアを行う前に感光性永久レジスト層が形成された場合には、当該レジスト層を構成する材料には「耐デスミア性」が要求される。この場合、その要求に見合った特定の材料を選定しなければならないが、本実施形態ではその必要はない。
【0027】
また、感光性永久レジスト層12の材料として所定の特性(線膨張係数が70ppm/℃以下で、引っ張り強度が70MPa以上)を有した絶縁性樹脂を用いているので、絶縁膜(レジスト層12)としての信頼性を確保することができる。これに関して、本発明者らは、PCT(Pressure Cooker Test)及びT/S(Thermal Shock )による信頼性試験を、以下の条件(PCT:100℃、100%RH(2.1atm );T/S:125℃と−55℃の状態を交互に5分ずつ繰り返すサイクル)で行った。すなわち、上記の特性を満足しない材料(例えば、線膨張係数が80ppm/℃で、引っ張り強度が60MPaの材料)からなる絶縁膜に対して、PCTを96時間行ったときに、当該絶縁膜とこの上に形成された導体層(図1の導体層14に相当)の間に層間剥離が発生し、さらにT/Sを1000サイクル行ったときに、クラックが発生した。これに対し、上記の特性を満足する材料(例えば、線膨張係数が70ppm/℃で、引っ張り強度が70MPaの材料)からなる絶縁膜に対して、PCTを168時間行い、さらにT/Sを1000サイクル行った後でも、当該絶縁膜に異状は見られなかった(信頼性の確保)。
【0028】
また、必要に応じて(例えば、無電解めっきによりシード層13を形成したときに、その下層の層間絶縁層11との密着力が弱かったためにシード層13が部分的に剥がれてしまった場合)、デスミア処理を行った後(感光性永久レジスト層12を形成する前)に、例えばドライエッチング等により、層間絶縁層11の表面を粗化(凹凸を形成)してからフォトレジスト(感光性永久レジスト層12)を硬化させるようにしてもよい。あるいは感光性永久レジスト層12を形成した後(シード層13を形成する前)に、同様にドライエッチング等により、層間絶縁層11及び感光性永久レジスト層12の表面を粗化するようにしてもよい。このような粗化処理を施すことで、シード層13と層間絶縁層11との間、あるいはシード層13と層間絶縁層11及び感光性永久レジスト層12との間の密着性を高めることができる。
【0029】
図2はその効果を補足説明するための図であり、ドライエッチングによる粗化処理を行った場合の感光性永久レジスト層12の表面の状態を、ドライエッチングを行わなかった場合と対比させて示した図(写真撮影によるもの)である。図中、(a)はドライエッチングによる粗化処理後に感光性永久レジスト層12を硬化させた場合、(b)は感光性永久レジスト層12の硬化後にドライエッチング(粗化処理)を行った場合、(c)はドライエッチング(粗化処理)を行わなかった場合を示している。(a)〜(c)の各場合において無電解Cuめっきを行ったとき(図1(e)のシード層13の形成)、(a)の場合にはシード層13の剥離は見られなかったが、(b)及び(c)の場合にはいずれもシード層13の部分的な剥離が見られた(但し、(c)の場合と比べて(b)の場合の方が剥離の度合いは小さかった)。
【0030】
また、図1(f)の工程において電解Cuめっきにより導体層14を形成する際に、厚さ方向に深いビアホールVHの部分を選択的にパルスめっきにより充填した後、直流めっきを施すようにしているので、配線層(配線パターン)15が形成されない部分(感光性永久レジスト層12上)のめっき厚さを薄くすることができる。これは、この後の工程で行う研磨処理の際の均一性及び生産性の向上に大いに寄与する。
【0031】
また、図1(g)の工程において機械研磨(バフ研磨等)により、あるいは機械研磨とエッチングによる化学研磨との組み合わせにより導体層14(Cu)の表面を平坦化しているので、化学機械研磨(CMP)による方法と比べて、研磨処理に要する時間の点で有利である。これに関して、本発明者らは、図3に例示する配線基板構造(サンプル)を作製し、3種類の方法(CMP、バフロール研磨のみ、バフロール研磨+エッチング)で研磨を行った。その結果、図示のように「バフロール研磨のみ」と「バフロール研磨+エッチング」では、「CMP」と比べて研磨工程時間を短縮できることが判明した。この研磨時間の短縮は生産性の向上に大いに寄与する。また、エッチングを併用する方法では、エッチング液とエッチングレートを特定することで、最終的に平坦化される表面の均一性が向上した(Cu厚さのばらつき:σ=1.0μm)。
【0032】
図4は、上述した実施形態に係る配線形成方法を用いて製造された配線基板の一構成例を部分的に示したものである。
【0033】
図示の例では、上述した配線形成方法をプラスチックタイプの半導体パッケージとして供されるビルドアップ多層配線基板に適用し、外部接続端子としてはんだバンプ(はんだボール)が接合されたボール・グリッド・アレイ(BGA)型パッケージの形態で実現した場合の構成例が示されている。図示の配線基板20は、図中破線で示すように半導体チップ1を搭載し、この半導体チップ1を搭載した状態でマザーボード等のプリント配線板に実装されて、半導体装置を構成する。
【0034】
この配線基板20において、21は配線基板20のベースとなる絶縁材料(例えば、ガラスエポキシ樹脂、ガラスBT樹脂等)からなるコア基板、22はコア基板21の両面に所要の形状にパターニングされたCuの配線層(図1の下層配線層10に相当)を示し、この配線層22はコア基板21と共にビルドアップ多層配線基板の1層目(コア層)を構成する。また、23はコア基板21に設けられたスルーホールに充填されたエポキシ樹脂等からなる絶縁体、24はコア基板21及び配線層22上に形成されたエポキシ樹脂等からなる層間絶縁層(図1の層間絶縁層11に相当)、25は絶縁層としてのフォトレジスト層(図1の感光性永久レジスト層12に相当)、26はCuの配線層(図1の配線パターン15に相当)を示す。この配線層26は、層間絶縁層24の所要の箇所(配線層22上の対応する部分)に形成されたビアホールとフォトレジスト層25の所要の箇所(ビアホールの上方の対応する部分)に画定された開口部(配線溝)とを埋め込むようにして形成されている。各絶縁層24,25及び配線層26は、ビルドアップ多層配線基板の2層目を構成する。
【0035】
また、27は保護膜としてのソルダレジスト層を示し、フォトレジスト層25及び配線層(配線パターン)26上に、それぞれ各配線パターンの所要の箇所に画定されたパッド部が露出するように全面を覆って形成されている。さらに、各ソルダレジスト層27から露出している配線パターン26のパッド部上にニッケル(Ni)/金(Au)のめっき層28が被着されており、さらに一方の面(図示の例では下側の面)のNi/Auめっき層28上に外部接続端子29(例えば、はんだバンプ)が接合されている。
【0036】
配線基板20に半導体チップ1を搭載する際には、上側のソルダレジスト層27から露出している配線パターン26のパッド部に、半導体チップ1のパッド上に接合された電極端子2(例えば、はんだバンプ、金(Au)スタッドバンプ等)が電気的に接続されるように当該チップをフリップチップ接続し、さらに当該ソルダレジスト層との間にアンダーフィル樹脂(例えば、エポキシ樹脂)を充填し、熱硬化させて接着する。また、配線基板20をマザーボード等のプリント配線板に実装する際には、同様にして下側のソルダレジスト層27から露出している配線パターン26のパッド部に、外部接続端子として供されるはんだボールをリフローにより接合し(はんだバンプ29)、このはんだバンプ29を介してプリント配線板上の対応するパッドもしくはランドに接続し、アンダーフィル樹脂を充填して接着する。
【0037】
図4に示す構成例では、外部接続端子(はんだバンプ29)を設けているが、これは必ずしも設ける必要はない。要は、必要なときに外部接続端子を接合できるように最外層の配線層26のパッド部(Ni/Auめっき層28)がソルダレジスト層27から露出していれば十分である。また、図示の例では、コア基板21を挟んでその両側に2層ずつ、計4層の配線層22,26が形成されているが、必要に応じて、更なる多層配線化を行ってもよいことはもちろんである。
【0038】
また、図4の構成例では、図1の実施形態に係る配線形成方法をBGA型パッケージの形態で実現した場合を例にとって説明したが、かかる配線形成方法は、外部接続端子としてのピンが基板の一方の面に多数立設されたピン・グリッド・アレイ(PGA)型パッケージの形態で実現する場合にも同様に適用され得る。この場合、ピンの接合は、例えば、下側のソルダレジスト層27から露出している配線パターン26のパッド部上に適量のはんだを載せ、その上に径大の頭部を有するT字状のピンの頭部を配置し、さらにリフローを行ってはんだを固めることにより、行われる。
【0039】
上述した実施形態に係る配線形成方法では(図1参照)、層間絶縁層11に対するビアホールVHの形成→樹脂スミアSMの除去(デスミア処理)→配線溝OPのパターニング(感光性永久レジスト層12の形成)の順序でプロセスを進めた場合を例にとって説明したが、プロセスの順序がこれに限定されないことはもちろんであり、種々の変形例が考えられる。
【0040】
図5はその一変形例に係る配線形成工程を示したものであり、図5(b)〜(d)に示すように、ビアホールVHの形成→配線溝OPのパターニング→デスミア処理の順序でプロセスを進めている。これらの処理については、それぞれ図1(b)、(d)及び(c)の工程で行った処理と同じであり、また、図5(a)及び(e)〜(g)の工程で行う処理についても、それぞれ図1(a)及び(e)〜(g)の工程で行った処理と同じであるので、ここではその説明は省略する。
【0041】
また、図6は他の変形例に係る配線形成工程を示したものであり、図6(b)〜(d)に示すように、配線溝OPのパターニング→ビアホールVHの形成→デスミア処理の順序でプロセスを進めている。同様にこれらの処理についても、それぞれ図1(d)、(b)及び(c)の工程で行った処理と同じであり、また、図6(a)及び(e)〜(g)の工程で行う処理についても、それぞれ図1(a)及び(e)〜(g)の工程で行った処理と同じであるので、ここではその説明は省略する。
【0042】
図5、図6に示した各変形例についても同様に、必要に応じて、デスミア処理を行った後(シード層13を形成する前)に、ドライエッチング等により、層間絶縁層11及び感光性永久レジスト層12の表面を粗化(凹凸を形成)するようにしてもよい。
【0043】
なお、図5、図6に示した各変形例において、感光性永久レジスト層12を形成した後にウエット処理によるデスミアを行った場合には、その永久レジスト層12を構成する材料として、耐デスミア性の要求に見合った特定の材料を選定する必要がある。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態に係る配線基板の製造方法における配線形成工程を示す断面図である。
【図2】ドライエッチングによる粗化処理を行った場合と行わなかった場合の感光性永久レジスト層の表面の状態を示す図(写真撮影によるもの)である。
【図3】図1(g)の工程で行う研磨処理に係る効果を説明するための図である。
【図4】図1の実施形態に基づいて製造された配線基板の一構成例を部分的に示す断面図である。
【図5】図1の実施形態の一変形例に係る配線形成工程を示す断面図である。
【図6】図1の実施形態の他の変形例に係る配線形成工程を示す断面図である。
【符号の説明】
【0045】
10,22…下層配線層、
11,24…層間絶縁層、
12,25…フォトレジスト層(感光性永久レジスト層)、
13…Cuのシード層(第1の導体層)、
14…Cuの導体層(第2の導体層)、
15,26…Cuの配線層(配線パターン)、
20…配線基板、
21…コア基板、
27…ソルダレジスト層(保護膜)、
28…Ni/Auめっき層、
29…はんだバンプ(外部接続端子)、
OP…開口部(配線溝)、
SM…樹脂スミア、
VH…ビアホール。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダマシンプロセスを用いた配線形成工程を含む配線基板の製造方法であって、
前記配線形成工程が、
下層配線層上に形成された層間絶縁層に、前記下層配線層に達するビアホールを形成する工程と、
前記ビアホールの形成の際に生じたスミアを除去するデスミア工程と、
前記層間絶縁層上に、前記ビアホールの上方に位置する所要の配線パターンの形状に従う開口部を有するように感光性永久レジスト層を形成する工程と、
前記ビアホール及び前記開口部に導体を埋め込むようにして前記配線パターンを形成する工程とを含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
前記デスミア工程と前記感光性永久レジスト層を形成する工程の間に、前記層間絶縁層の表面を粗化する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
前記感光性永久レジスト層を形成する工程と前記配線パターンを形成する工程の間に、前記層間絶縁層及び前記感光性永久レジスト層の表面を粗化する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の配線基板の製造方法。
【請求項4】
ダマシンプロセスを用いた配線形成工程を含む配線基板の製造方法であって、
前記配線形成工程が、
下層配線層上に形成された層間絶縁層に、前記下層配線層に達するビアホールを形成する工程と、
前記層間絶縁層上に、前記ビアホールの上方に位置する所要の配線パターンの形状に従う開口部を有するように感光性永久レジスト層を形成する工程と、
前記ビアホールの形成の際に生じたスミアを除去するデスミア工程と、
前記ビアホール及び前記開口部に導体を埋め込むようにして前記配線パターンを形成する工程とを含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項5】
ダマシンプロセスを用いた配線形成工程を含む配線基板の製造方法であって、
前記配線形成工程が、
下層配線層上に形成された層間絶縁層上に、前記下層配線層の上方に位置する所要の配線パターンの形状に従う開口部を有するように感光性永久レジスト層を形成する工程と、 前記層間絶縁層に、前記下層配線層に達するビアホールを形成する工程と、
前記ビアホールの形成の際に生じたスミアを除去するデスミア工程と、
前記ビアホール及び前記開口部に導体を埋め込むようにして前記配線パターンを形成する工程とを含むことを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項6】
前記デスミア工程と前記配線パターンを形成する工程の間に、前記層間絶縁層及び前記感光性永久レジスト層の表面を粗化する工程を含むことを特徴とする請求項4又は5に記載の配線基板の製造方法。
【請求項7】
前記デスミア工程において、過マンガン酸塩によるウエット処理により当該スミアを除去することを特徴とする請求項1、4又は5に記載の配線基板の製造方法。
【請求項8】
前記感光性永久レジスト層を形成する工程において、該感光性永久レジスト層の材料として、線膨張係数が70ppm/℃以下で、かつ、引っ張り強度が70MPa以上の絶縁性材料を用いることを特徴とする請求項1、4又は5に記載の配線基板の製造方法。
【請求項9】
前記配線パターンを形成する工程は、前記ビアホール及び前記開口部の内壁を含めて全面に第1の導体層を形成する工程と、前記ビアホール及び前記開口部の内部を充填するようにして前記第1の導体層上に第2の導体層を形成する工程と、前記感光性永久レジスト層が露出するまで前記第2の導体層の表面を研磨して平坦化する工程とを含むことを特徴とする請求項1、4又は5に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
前記第2の導体層を形成する工程は、パルスめっきにより前記ビアホールを選択的に充填する工程と、直流めっきにより前記開口部を充填する工程とを含むことを特徴とする請求項9に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
前記第2の導体層の表面を研磨して平坦化する工程において、該平坦化する処理を機械研磨により行うことを特徴とする請求項9に記載の配線基板の製造方法。
【請求項12】
前記第2の導体層の表面を研磨して平坦化する工程において、該平坦化する処理を機械研磨とエッチングによる化学研磨との組み合わせにより行うことを特徴とする請求項9に記載の配線基板の製造方法。
【請求項13】
さらに前記配線形成工程を所要の配線層数となるまで繰り返した後、両面に、最外層の配線パターンの所要の箇所に画定されたパッド部が露出するようにそれぞれ保護膜を形成する工程を含むことを特徴とする請求項1、4又は5に記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−49804(P2006−49804A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−8623(P2005−8623)
【出願日】平成17年1月17日(2005.1.17)
【出願人】(000190688)新光電気工業株式会社 (1,516)
【Fターム(参考)】