説明

配線基板及びその製造方法

【課題】微細配線を形成すると配線材料の折れ曲がりや破損が生じて信頼性が悪化するという課題を解決し、配線が微細化した場合でも充分な電気的接続の信頼性を確保することが可能な配線基板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】電気絶縁性基材1と、これを貫通する貫通孔3と、この貫通孔3に充填された導電性ペースト4によって貫通孔3両端で電気的に接続する配線12を備え、上記配線12の少なくとも一方は貫通孔3を覆うランド11部分で厚みが厚く形成された構成にすることにより、貫通孔3を覆うランド11部分でその厚みが厚いために貫通孔3上での配線12の剛性を確保しつつ、それ以外の部分では配線厚みを薄くして微細配線が形成でき、電気的接続性と微細配線を両立した配線基板を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器に使用される配線基板の中で、特にインナービアホール接続により複数個の配線が電気的に接続された配線基板及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化、高性能化に伴い、産業用のみならず広く民生用機器の分野においてもLSI等の半導体チップを高密度に実装できる多層配線基板を安価に供給することが強く要望されてきている。このような多層配線基板では微細な配線ピッチで形成された複数層の配線パターン間を高い接続信頼性で電気的に接続できることが重要である。
【0003】
このような市場の要望に対して従来の多層配線基板の層間接続の主流となっていたスルーホール内壁の金属めっき導体に代えて、多層配線基板の任意の電極を任意の配線パターン位置において層間接続することができるインナービアホール接続法、すなわち全層IVH構造樹脂多層基板と呼ばれるものがある。これは多層配線基板のビアホール内に導電体を充填して必要な各層間のみを接続することが可能であり、部品ランド直下にインナービアホールを設けることができるため、基板サイズの小型化や高密度実装を実現することができる。
【0004】
また、インナービアホールにおける電気的接続は導電性ペーストを用いているためにビアホールにかかる応力を緩和することができ、熱衝撃等による寸法変化に対して安定な電気的接続を実現することができる。
【0005】
このような従来の全層IVH構造樹脂多層基板の製造方法について、図4(a)〜(i)に示す製造工程図を用いて説明すると、まず図4(a)に示すように、電気絶縁性基材1の両面に保護フィルム2をラミネート加工によって貼り付ける。続いて、図4(b)に示すように、電気絶縁性基材1と保護フィルム2の全てを貫通する貫通孔3をレーザー等によって形成する。
【0006】
次に、図4(c)に示すように、貫通孔3に導電体として導電性ペースト4を充填し、その後、両面の保護フィルム2を剥離し、この状態で両面から箔状の配線材料5を積層配置することにより図4(d)の状態にし、続いて、図4(e)に示すように、配線材料5を加熱加圧することにより電気絶縁性基材1に接着させる。この加熱加圧工程によって導電性ペースト4が熱硬化し、配線材料5と導電性ペースト4の電気的接続も行われることになる。続いて、図4(f)に示すように、配線材料5をエッチングによってパターニングすることにより、両面配線基板6が完成する。
【0007】
次に、図4(g)に示すように、両面配線基板6の両面に、上記図4(a)〜(d)に示したものと同様に形成した導電性ペーストが充填された電気絶縁性基材7と配線材料8を積層配置し、続いて、図4(h)に示すように、配線材料8を加熱加圧することにより電気絶縁性基材7に接着させる。この時、同時に両面配線基板6と電気絶縁性基材7も接着されることになる。また、この加熱加圧工程によって上記図4(e)に示した工程と同様に導電性ペースト9が熱硬化し、配線材料8と両面配線基板6上の配線10とが高密度に接触して電気的接続が行われることになる。
【0008】
最後に、図4(i)に示すように、配線材料8の表層をエッチングによってパターニングすることにより、多層配線基板を得ることができるものである。
【0009】
なお、上記説明においては、多層配線基板として4層基板の例を示したが、多層配線基板の層数は4層に限定されるものではなく、同様の工程でさらに多層化することができる。
【0010】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開平6−268345号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記従来の配線基板では、エッチング法を用いて配線材料5をパターニングしているために、微細な配線を形成するためには配線材料5を薄くする必要があり、このために、配線材料5として箔状の金属箔(一例として銅箔)を用いる場合には、配線材料5が薄いと搬送が困難であり、配線材料5の折れ曲がり、破損というような不具合が生じ、薄い配線材料5を用いることには限界があった。
【0012】
一方、薄い配線材料5を形成するために、配線材料5を電気絶縁性基材1に加熱加圧接着した後にエッチングによって配線材料5の厚みを全体に薄くし、その後に再度エッチングによって微細なパターンを形成することもできるが、このような工程で配線材料5の厚みを薄くする場合には、貫通孔3に充填された導電性ペースト4を覆う部分の配線材料5の厚みが薄くなることから、配線基板6に熱ストレスが付加された際に、導電性ペースト4と電気絶縁性基材1の熱膨張係数の差に起因する応力が配線材料5に加わり、配線材料5の変形が大きくなる。
【0013】
このように、熱ストレス等によって配線材料5が大きく変形することにより導電性ペースト4と配線材料5の界面の接続部分に歪みが生じ、結果として導電性ペースト4と配線材料5の電気的な接続の信頼性を劣化させることになるという課題があった。
【0014】
また、配線材料5の導電性ペースト4と接触する面には、導電性ペースト4との密着強度と電気的な接続を確保するために、表面にはこぶ状の粗化処理と、Zn、Cr、Ni、Co及びこれらの金属酸化皮膜、合金皮膜より形成される表面処理が施されているが、上述の如く、配線基板6の内層に用いる配線材料5を加熱加圧接着後にエッチングによって薄くすると、この粗化処理と表面処理が除去されてしまうことになり、その結果、密着強度が低下し、導電性ペースト4との接続を確保することが困難になるという課題を有したものであった。
【0015】
本発明はこのような従来の課題を解決し、配線がより微細化した場合でも、十分な電気的接続の信頼性を確保することが可能な配線基板及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために本発明は、電気絶縁性基材と、この電気絶縁性基材を貫通する貫通孔と、この貫通孔に充填された導電性ペーストによって貫通孔両端で電気的に接続する配線を備えた配線基板であって、上記配線の少なくとも一方は貫通孔を覆うランド部分で厚みが厚く形成された構成にしたものである。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明による配線基板は、貫通孔を覆うランド部分と微細配線を形成する部分において配線厚みを変え、貫通孔上での配線を厚くすることにより導電性ペーストとランドとの電気的接続性を確保すると共に、それ以外の部分では配線厚みを薄くすることにより簡便なエッチング法によって微細配線を形成することができるようになるため、電気的接続性と微細配線を両立した高密度の配線基板を提供することができるという効果が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1〜3、7に記載の発明について説明する。
【0019】
図1(a)〜(e)は本発明の実施の形態1による両面配線基板の構成を示した断面図と同ランドの一例を示した平面図と断面図であり、同図において1は電気絶縁性基材を示し、この電気絶縁性基材1には貫通孔3が形成されており、この貫通孔3には導電性ペースト4が充填され、この導電性ペースト4によって貫通孔3の両端に形成されたランド11を電気的に接続しているものである。上記ランド11は貫通孔3を覆う部分でその厚みが厚くなっており、貫通孔3上のランド剛性を確保しているものであり、これにより貫通孔3での電気的接続信頼性が確保できるようにしているものである。
【0020】
また、上記電気絶縁性基材1上には配線12が形成されており、この配線12はランド11と同じ配線材料からエッチングによって形成されたものであるが、ランド11とは厚みが異なるものである。配線12はエッチングによって微細な配線を形成するために、ランド11に比べて薄い構成となっているものである。これにより、電気的接続性と微細配線を両立した高密度な両面配線基板を実現しているものである。
【0021】
図1(b)は図1(a)に示した両面配線基板の表面に形成されたランド11の外観の一例を示したものであり、電気絶縁性基材1上に形成されたランド11は貫通孔3を覆っているために表面からは貫通孔3は見えていない。従って、この図1(b)に示したランド11のA−A断面を示したのが図1(c)であり、ランド11の厚い部分が貫通孔3を覆った構成になっている。
【0022】
このような構成にすることにより、貫通孔3を覆うランド11が薄い場合に発生する問題であった、熱ストレス等によって配線材料が大きく変形することにより導電性ペーストと配線材料の界面での接続部分に歪みが生じ、結果として導電性ペーストと配線材料の電気的接続の信頼性を劣化させるということがなくなり、貫通孔3上でのランド剛性を確保することにより電気的接続性を確保し、良好な接続信頼性を得ることができるようになるものであり、本実施の形態においては、一例として100μm径の貫通孔3上に9μm以上のランド厚みを確保することによって貫通孔3での電気的接続性を得ることができているものである。
【0023】
また、図1(b)に示すように、ランド11は互いに重なった、異なる2種類のランドによって形成されており、ランドの厚い部分が完全に貫通孔3を覆い、その周辺に微細配線から続く薄い配線の領域が設けられている。このような構成とすることにより、厚いランド部分と薄く微細な配線を直接繋ぐことなく、微細な配線と厚いランド部分とを広い領域で接続することができ、熱衝撃等による配線の断線強度を強め、微細配線の信頼性を高めることができるようになるものである。なお、図1(b)においては一例として厚いランド部分周辺の全てに薄いランド領域を形成した例を示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、少なくとも薄いランド部分を微細配線と厚いランド部分の間に設けることにより同様の効果を得ることができるものである。
【0024】
また、図1(d)、(e)に示すような外観のランド11の構成にしても良い。即ち、初めに形成されるランド部(外側)は貫通孔3を完全に覆っており、貫通孔3上での剛性を確保し、電気的接続が確保されている。このランド上に微細配線から続く小さなランド部(内側)が形成されており、これによって全体としてランド11を小さくすることができるものである。
【0025】
なお、この図1(d)、(e)において、後から形成されるランドが初めに形成されるランドに比べて小さいために、貫通孔3を覆う領域で一部ランドが薄くなる箇所が発生するが、ランド剛性が確保できていれば電気的接続の点では問題はないものである。
【0026】
一方、貫通孔3に形成された導電性ペースト4との電気的接続は、初めに形成されたランド部(外側)によって確保されているために、小さいランド部(内側)については、初めに形成されたランド部(外側)と重なっていれば電気的接続を得ることができる。すなわち、後から形成する小さいランド部を形成する際の位置合わせについてはズレに対する余裕度が大きく、ものづくり上の歩留まりの点で有利な構成となっているものである。
【0027】
なお、この小さいランド部は、図示した形状に限定されるものではなく、初めに形成されるランド部に比べて小さな面積であれば同様の効果が得られることはいうまでもない。
【0028】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項4に記載の発明について説明する。
【0029】
図2(a)〜(e)は本発明の実施の形態2による多層配線基板の構成を示した断面図と同ランドの一例を示した平面図と断面図であり、同図において1と7は電気絶縁性基材を示し、この電気絶縁性基材1、7には貫通孔3が形成されており、この貫通孔3には導電性ペースト4、9が充填され、この導電性ペースト4、9によって任意の場所で配線層間の電気的接続がなされているものである。上記貫通孔3の両端に形成された内層のランド13と表層のランド14は貫通孔3を覆う部分でその厚みが厚くなっており、一方、内層の配線10と表層の配線12は厚みが薄く、エッチングによって微細配線が形成されている。このような構成により、上記実施の形態1と同様に電気的接続性と微細配線を両立することができるようにしているものである。
【0030】
図2(b)、(c)は表層に形成されたランド14の外観の一例を示したものであり、これについては上記実施の形態1で図1(b)、(d)を用いて説明したものと同様の効果を発揮するものであり、ここでの詳細な説明は省略するが、このランド構成については多層配線基板の内層のランド13に適用しても同様の効果が得られるものである。
【0031】
また、図2(d)は上記内層のランド13の一例を示した断面図であり、ランド13の導電性ペースト4、9と接触する領域は表裏面で粗化構造が等しく、配線材料表面にこぶ状の粒子が形成された形状のものである。
【0032】
また、図2(e)は内層のランド13の別の例を示した断面図であり、ランド13の薄くなった部分の表面、ランド13の厚い部分の端面について粗化部19を設けても良い。この粗化部19は薬液によるエッチングで容易に形成することができる。これにより、電気絶縁性基材7、1とランド13の密着性をより高めることができ、熱衝撃、PCT、吸湿リフロー等の環境試験において、配線と電気絶縁性基材の界面での剥離をさらに抑制することができる。なお、ここでは、粗化部19をランド13に形成する例を示したが、内層に形成された配線10の表面に粗化部を同時形成し、配線10と電気絶縁性基材7との密着性も高めることも可能である。
【0033】
なお、図2においては、全ての配線において貫通孔を覆う部分でランドを厚くした構成を示したが、この構成は微細配線を形成する層にのみ適用すれば良いものであり、粗い配線を形成する層には従来の配線を形成すれば良いものである。
【0034】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3を用いて、本発明の特に請求項5、8〜11に記載の発明について説明する。
【0035】
図3(a)〜(o)は本発明の実施の形態3による配線基板の製造方法を示した製造工程図であり、図3においては多層配線基板を例にして説明し、両面配線基板は多層配線基板の製造途中で形成されるために合わせて説明することにする。また、図4(a)〜(i)を用いて説明した従来例と同一の部分については詳細な説明は省略する。
【0036】
まず、図3(a)に示すように、電気絶縁性基材1の表裏面には保護フィルム2が設けられている。ここで、電気絶縁性基材1の材料としては、繊維と含浸樹脂の複合基材を用いることができる。一例として、繊維としては、ガラス繊維、アラミド繊維、テフロン(登録商標)繊維等を用いることができる。含浸樹脂としては、エポキシ樹脂、PPE樹脂、PPO樹脂、フェノール樹脂等を用いることができる。この中で、後述する導電性ペーストによる貫通孔での電気的な接続という観点から、基材については被圧縮性、すなわち熱プレスによって基材を硬化させる際にその厚みが収縮する性質を有することがより好ましく、具体的にはアラミド繊維にエポキシ樹脂を空孔が存在するように含浸させた多孔質基材がより好ましい。
【0037】
その他、電気絶縁性基材としてフレキシブル配線基板に用いられるフィルムの両側に接着剤層が設けられた3層構造の材料を用いることもできる。具体的には、エポキシ等の熱硬化性樹脂フィルム、フッ素系樹脂、ポリイミド樹脂、液晶ポリマー等の熱可塑性フィルム基材の両面に接着剤層が設けられた基材を用いることができる。
【0038】
また、保護フィルム2はPETやPENを主成分とするフィルムをラミネートによって電気絶縁性基材1の両面に貼り付けるのが、簡便で生産性の良い製造方法である。
【0039】
次に、図3(b)に示すように、保護フィルム2、電気絶縁性基材1を貫通する貫通孔3を形成する。貫通孔3はパンチ加工、ドリル加工、レーザー加工によって形成することができるが、炭酸ガスレーザーやYAGレーザーを用いれば小径の貫通孔を短時間で形成することができ、生産性に優れた加工を実現できるものである。
【0040】
次に、図3(c)に示すように、貫通孔3に導電性ペースト4を充填する。導電性ペースト4は、銅、銀、金等の金属導電粒子またはこれらの金属合金と樹脂成分から構成される。この時、保護フィルム2は導電性ペースト4が電気絶縁性基材表面に付着するのを防ぐ役割と導電性ペーストの充填量を確保する役割を果たす。導電性ペーストは印刷による充填が可能なため、生産性に優れているという利点も有する。
【0041】
次に、図3(d)に示すように、上記保護フィルム2を剥離し、電気絶縁性基材1の両側に配線材料5を積層配置する。この際、導電性ペースト4は保護フィルム2によって充填量を確保している。すなわち、導電性ペースト4は保護フィルム2の厚み程度の高さ分だけ電気絶縁性基材1の表面より突出した状態となっている。
【0042】
また、配線材料5としては銅箔を用いるのが一般的である。この配線材料5の表面には電気絶縁性基材1との密着力を確保する点から密着処理層が形成される。この密着処理層は配線材料となる銅箔表面に粒子状にめっきが施されたものであり、こぶ状の粒子のアンカー効果によって密着強度を確保するものである。このこぶ状の粒子形状については、導電性ペースト4との電気的な接続性にも影響を与える。すなわち、配線材料上のこぶ状の粒子と導電性ペーストに含有される導電性粒子の接触点数を増やすという目的で、これらの粒子の平均粒径比は5倍以下に制御されており、銅箔表面の表面粗さRzとしては3〜15μmに設定されている。
【0043】
ここで、配線材料5としては多層配線基板の内層配線となるため、上述の凹凸形状を配線材料の両面に形成した材料を用いるのが好ましい。一方、ここで示す製造方法によって両面配線基板を形成する場合には、電気絶縁性基材1に接触する側の面にのみ凹凸形状を形成した片面光沢箔を用いることができる。
【0044】
また、配線材料5の表面には、Cr、Zn、Ni、Co、Snもしくはこれらの金属の酸化物皮膜、合金皮膜を形成することが樹脂との密着を向上させる点で好ましい。しかし、このような表面処理層は多量に付着させるとこれらの表面処理層が絶縁の性質を有することから、導電性ペースト4との電気的な接触を阻害し、結果として多層配線基板におけるビア接続信頼性を劣化させることになる。そこで、表面処理としては、表面処理の間から配線材料の母材である金属材料(例えば、配線材料が銅箔の場合には銅)が露出する程度の50μm以下の極薄い厚みで形成することがより好ましい。
【0045】
次に、図3(e)に示すように、加熱加圧によって配線材料5を電気絶縁性基材1の両側に接着すると共に、導電性ペースト4を熱硬化させることにより、導電性ペースト4を介して表裏面の配線材料5を電気的に接続する。
【0046】
次に、図3(f)に示すように、配線材料5の表面に感光性レジスト15を全面に形成した後、露光、現像によってパターン形成する。なお、この際のレジストとしてはドライフィルムタイプと液状タイプを用いることができる。ここで、微細なパターン形成が必要でない場合には、感光性材料を用いずにレジスト材料をスクリーン印刷等にて印刷形成しても構わないものである。
【0047】
また、ここで感光性レジスト15の露光にレーザーを用いた直接描画法を用いることがより好ましい。ここで示した感光性レジスト15のパターンは貫通孔3を覆うように形成する必要があり、この感光性レジスト15と貫通孔3の位置合わせ精度を高くすることが配線パターンの高密度化には必要である。そこで、貫通孔3に充填された導電性ペースト4の位置をX線等によって計測し、貫通孔3の設計座標と実際の座標との補正を行い、この補正に基づいてレーザー描画によって露光するものである。レーザーを用いた直接描画法によれば、露光マスクを用いないことから、上述の露光時の座標変更が容易であり、貫通孔3に対する感光性レジスト15の高精度な位置合わせが可能になり、その結果、ランドサイズを小さくすることができ、高密度配線基板を実現することができる。
【0048】
また、上述のレーザーを用いた直接描画法によって貫通孔を覆うランド部のみに露光を行うため、全てのパターンを直接描画法によって露光する場合に比べて短時間で露光を行うことが可能であり、生産性に優れた方法で高精度の露光を行うことができる。
【0049】
次に、図3(g)に示すように、配線材料5をスライスエッチングによって均一に薄くし、感光性レジスト15を除去する。このスライスエッチングによって配線材料5をエッチングする厚みは微細配線の線幅によって設定することになるが、一例として線幅、線間20μmの配線を形成する場合には、配線材料5を5μmまでエッチングした。
【0050】
この状態ではスライスエッチングした配線材料5の表面は略平坦である。そこで、配線材料5をスライスエッチングした状態で、感光性レジスト15を残したままで、さらに配線材料5表面をエッチングによって粗化処理することがより好ましい。粗化処理液については配線材料5を溶解するエッチング液にエッチングを阻害する添加剤を混合した液が用いられ、例えばCZ処理、BO処理(メック製)として市販されているものを用いることができる。
【0051】
次に、図3(h)に示すように、感光性レジスト16を全面に形成し、露光、現像によってパターン形成する。ここで、既にスライスエッチングによってランドパターンが形成されているため、配線材料5表面には凹凸が形成されている。この凹凸へ均一に感光性レジスト16を被覆させるために、液状の感光性レジストを用いることが好ましい。その結果、微細配線とランドとの接続部分における配線欠損を低減することができ、配線形成の歩留まりを向上させることができる。なお、ここでの露光については上述のレーザー直接描画法を用いても構わないが、既に形成されているランドとの位置合わせについては、既に実施の形態1の図1(d)、(e)で説明したように余裕度があり、フィルムマスクを用いて基板前面に一括で露光するのが生産性を高める点でより好ましいものである。
【0052】
次に、図3(i)に示すように、スライスエッチングした配線材料5をエッチングし、感光性レジスト16を除去する。ここで、配線材料5を薄く形成してパターニングするためにエッチング時間を短くすることができ、これによりレジストパターン端部からエッチングされるサイドエッチング量を少なくすることができるものであり、このようにしてエッチング法にて微細配線ができるものである。ここで、ランド13は厚い部分にて表面の粗化形状、表面処理がレジストによって保護され、配線材料として初めに備えていた状態を維持しているものである。
【0053】
次に、図3(j)に示すように、両面配線基板6の両側に図3(a)〜(d)に示したものと同様に形成した導電性ペーストが充填された電気絶縁性基材7と配線材料8を積層配置させる。この時、配線材料8の電気絶縁性基材7と接触する面については、密着性と導電性ペーストとの接続性を両立する目的で、既に説明した配線材料5と同様の処理が施される。また、本実施の形態では多層配線基板として4層基板を例にして説明しており、ここで示した配線材料8は多層配線基板の表層配線となる材料であり、片面光沢箔を用いても良い。
【0054】
次に、図3(k)に示すように、配線材料8を加熱加圧することにより電気絶縁性基材7に接着させる。この時、同時に両面配線基板6と電気絶縁性基材7も接着することになる。この加熱加圧工程で図3(e)に示した工程と同様に導電性ペースト9が熱硬化し、配線材料8と両面配線基板上の配線17と高密度に接触して電気的な接続が実現されるものである。
【0055】
次に、図3(l)に示すように、配線材料8の表面に図3(f)に示したのと同様に貫通孔を覆うランドを形成するために感光性レジスト15を全面に形成して露光、現像によってパターン形成する。引き続き、配線材料8をスライスエッチングすると図3(m)の状態が得られる。次に、図3(n)に示すように、再度、感光性レジスト16をパターン形成し、配線材料8をエッチングすることにより図3(o)に示すような多層配線基板を作製することができる。なお、ここでの感光性レジスト形成、エッチングについては、既に図3(h)、(i)で述べた例と同様であるため、ここでの詳細な説明は省略する。
【0056】
このように本実施の形態の製造方法によれば、ハーフエッチングによってランド部分以外の配線を薄くすることにより微細配線を形成することができると共に、ランド部分ではその厚みを厚くすることにより貫通孔上での配線剛性を高めることができ、配線基板の電気的接続性と微細配線を両立することができるようになるものである。
【0057】
なお、本実施の形態においては多層配線基板として4層基板の例を示したが、多層配線基板の層数は4層に限定されるものではなく、同様の工程でさらに多層化することができることは従来例と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明による配線基板及びその製造方法は、ハーフエッチングによってランド部分以外の配線を薄くすることによりエッチングによる微細配線を形成することができると共に、貫通孔を覆うランド部を厚くすることにより貫通孔上のランド剛性を高め、貫通孔の電気的接続性を高めることができ、電気的接続性と微細配線を両立した配線基板を実現することができるようになるものである。すなわち、微細な配線を備え、導電性ペーストによって層間接続を行った全層IVH構造の配線基板として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】(a)本発明の実施の形態1による配線基板の構成を示した断面図、(b)同ランドの一例を示した平面図、(c)同断面図、(d)同ランドの他の例を示した平面図、(e)同断面図
【図2】(a)本発明の実施の形態2による多層配線基板の構成を示した断面図、(b)同ランドの一例を示した平面図、(c)同ランドの他の例を示した平面図、(d)同断面図、(e)同断面図
【図3】(a)〜(o)本発明の実施の形態3による配線基板の製造方法を示した製造工程図
【図4】(a)〜(i)従来の配線基板の製造方法を示した製造工程図
【符号の説明】
【0060】
1、7 電気絶縁性基材
2 保護フィルム
3 貫通孔
4、9 導電性ペースト
5、8 配線材料
6 両面配線基板
10、12、17、18 配線
11、13、14 ランド
15、16 感光性レジスト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気絶縁性基材と、この電気絶縁性基材を貫通する貫通孔と、この貫通孔に充填された導電性ペーストによって貫通孔両端で電気的に接続する配線を備えた配線基板であって、上記配線の少なくとも一方は貫通孔を覆うランド部分で厚みが厚く形成された配線基板。
【請求項2】
電気絶縁性基材と、この電気絶縁性基材を貫通する貫通孔と、この貫通孔に充填された導電性ペーストによって貫通孔両端で電気的に接続する配線を備えた多層配線基板であって、上記配線の少なくとも一方は貫通孔を覆うランド部分で厚みが厚く形成された配線基板。
【請求項3】
電気絶縁性基材と、この電気絶縁性基材を貫通する貫通孔と、この貫通孔に充填された導電性ペーストによって貫通孔両端で電気的に接続する配線を備えた多層配線基板であって、内層の少なくとも1層に形成された配線は貫通孔を覆うランド部分で厚みが厚く形成された配線基板。
【請求項4】
ランド部分では表裏面で粗化構造が等しい請求項3に記載の配線基板。
【請求項5】
ランド部分では表裏面の配線表面にZn、Cr、Ni、Co及びこれらの金属酸化皮膜、合金皮膜のいずれかからなる表面処理が施されている請求項3に記載の配線基板。
【請求項6】
ランド部分以外の配線表面が粗化されている請求項1〜3のいずれか一つに記載の配線基板。
【請求項7】
ランド部分は互いに重なった異なる2種類のランドによって形成されている請求項1〜3のいずれか一つに記載の配線基板。
【請求項8】
電気絶縁性基材に貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、この貫通孔に導電性ペーストを充填するペースト充填工程と、上記電気絶縁性基材の少なくとも片面に配線材料を接着する熱プレス工程と、上記配線材料をエッチングするパターニング工程を備えた配線基板の製造方法において、上記パターニング工程は貫通孔を覆うランド部分以外の配線材料を薄くするハーフエッチング工程と、上記配線材料を所望のパターンに形成するパターンエッチング工程からなる配線基板の製造方法。
【請求項9】
ハーフエッチング工程では、感光性レジストパターンの形成を直接描画法によって行うようにした請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項10】
ハーフエッチング工程では、ハーフエッチング後に感光性レジストパターンを残したまま表面を粗化処理するようにした請求項8に記載の配線基板の製造方法。
【請求項11】
パターンエッチング工程では、液状の感光性レジストを用いるようにした請求項8に記載の配線基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−13121(P2006−13121A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−187704(P2004−187704)
【出願日】平成16年6月25日(2004.6.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】