説明

配線基板及び積層セラミックコンデンサ

【課題】配線基板に内蔵される内蔵部品のスルーホール導体を信号配線として利用し、低損失で遅延の小さい信号配線を実現可能な配線基板を提供する。
【解決手段】本発明の配線基板10は、半導体チップ200(搭載部品)を載置し、収容穴部11aが開口されたコア材11と、収容穴部11aに収容されスルーホール導体60が形成されたコンデンサ100(内蔵部品)と、コア材11の上下に絶縁層及び導体層を積層形成した配線積層部12、13とを備えている。スルーホール導体60は、第1配線積層部12を介して半導体チップ200に接続される信号配線として用いられ、その内側の領域には閉塞体62(材料)が充填され、その外側の近傍領域には閉塞体63(材料)が充填され、閉塞体62、63がコンデンサ100の材料よりも低い誘電率を有する。これにより高導電率及び低誘電率の信号配線を構成し、低損失で遅延が小さい良好な伝送性能を実現可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コア材に開口された収容穴部に内蔵部品を収容した配線基板と、この配線基板の収容穴部に収容可能な内蔵部品としての積層セラミックコンデンサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、多数の回路素子を形成した半導体チップを載置するためのパッケージが広く用いられている。パッケージの構造としては、例えば、コア材を配置し、その上下に導体層及び絶縁層を交互に積層した配線積層部を形成した配線基板が知られている。このような配線基板には、載置される半導体チップに対して電源供給のための電源配線、グランド配線、データや制御信号の送受信のための信号配線などの配線構造を設ける必要がある。半導体チップが載置された配線基板は、プリント基板等の外部基材に実装され、半導体チップの多数の端子と外部基材が配線基板の配線構造を経由して電気的に接続される。
【0003】
一方、半導体チップに供給される電源を安定化させるために、パッケージにコンデンサを配置して電源配線に接続することが望ましい。この場合、コンデンサを配線基板上に搭載する構成では、コンデンサの配置領域を確保するために他の搭載部品の配置の自由度が低下するとともに、コンデンサや半導体チップとの配線距離が他の配線等に制限されるために長くなる。そのため、信号配線の配線抵抗やインダクタンスが大きくなるので、半導体チップに供給される電源電圧の降下などの特性劣化を招くとともに、配線基板の完成後にコンデンサを搭載する必要があるため製造工程が複雑になる。これらの欠点を是正すべく、配線基板の内部にコンデンサを内蔵する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このようにコンデンサを配線基板に内蔵すれば、配線基板上に搭載する場合に比べて搭載部品に近接してコンデンサを配置することができる。
【0004】
しかし、配線基板にコンデンサを内蔵する場合、配線基板の中央上部に載置された半導体チップの信号端子から延伸される信号配線は、直下のコンデンサの領域を避けて引き回す配置にせざるを得ない。そのため、半導体チップから周辺領域を経由して信号配線を延伸し、それをビア導体で積層方向に接続する配線構造となるため、配線の自由度が小さくなり、さらにはパッケージサイズの増大につながる。
【0005】
一方、ビアアレイタイプのコンデンサを配線基板に内蔵する場合、正極用の配線と負極用の配線に加えて、信号配線として用いる配線構造を付加することが考えられる。一般に、積層セラミックにて構成されるビアアレイタイプのコンデンサにおいて、一部のビア導体を信号配線として用いる場合、コンデンサの材料の誘電率が比較的大きいために信号配線の伝送遅延の増大やインピーダンスの不整合を生じる懸念がある。よって、コンデンサ部を取り囲む低誘電率部を設け、この低誘電率部に信号配線を形成する手法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−228190号公報
【特許文献2】特開2005−39006号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2に開示された手法では、低誘電率部を貫通する信号配線は、コンデンサ部を貫通する正極用のビア導体及び負極用のビア導体と同様の構造で形成される。積層セラミックコンデンサを用いる場合、焼結温度が高いセラミックの焼結体を前提にすると、信号配線の材料及び正極及び負極用の各ビア導体の材料は、ニッケル等の比較的導電率が低い金属が用いられる。一方、焼結温度が低いセラミックの焼結体は、一般に誘電率が低くなり、コンデンサの容量を大きくすることが難しい。よって、コンデンサ部に形成される信号配線の抵抗成分が大きくなり、伝送信号の損失の増加を招き、これにより信号伝送エラーや発熱等が生じるという問題がある。
【0008】
本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、載置された搭載部品の直下の領域に内蔵部品を収容した配線基板において、内蔵部品の領域を避けることなく半導体チップと外部基材との間に導電率の高い信号配線を配置し、その周囲に低誘電率の材料を設け、低損失かつ遅延の小さい信号配線を実現可能で小型化に適した配線基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の配線基板は、搭載部品を載置し、当該搭載部品と外部基材との間を電気的に接続する配線基板であって、上面及び下面を貫通する収容穴部が開口されたコア材と、前記収容穴部に収容され、上面及び下面を貫通する一又は複数の第1スルーホール導体が形成された内蔵部品と、前記コア材の上面側に絶縁層及び導体層を交互に積層形成した第1配線積層部と、前記コア材の下面側に絶縁層及び導体層を交互に積層形成した第2配線積層部とを備え、前記第1スルーホール導体を、前記第1配線積層部を介して前記搭載部品に接続される信号配線として用い、前記第1スルーホール導体の内側の領域に前記内蔵部品の材料の誘電率よりも低い誘電率を有する材料を充填し、かつ前記第1スルーホール導体の外側の近傍領域を前記内蔵部品の材料の誘電率よりも低い誘電率を有する材料で覆った構造を有している。
【0010】
なお、本明細書において「スルーホール導体」の文言は、配線基板もしくは内蔵部品の層間を導通させる管状の導体の意味で用いるものとする。
【0011】
本発明の配線基板によれば、コア材の収容穴部に内蔵部品を収容し、内蔵部品を上下に貫通する第1スルーホール導体を形成し、これを搭載部品に接続される信号配線として用いる構造を実現した。これにより、搭載部材から外部基材に信号配線を延伸する場合、コンデンサの配置に制約されることなく直下の経路を活用できるとともに、信号配線の周囲の材料を低い誘電率で形成することができる。よって、配線基板のパッケージの小型化を実現しつつ、搭載部品に入出力される伝送信号の遅延を防止して良好な伝送特性を確保することができる。
【0012】
本発明において、前記第1スルーホール導体は、前記内蔵部品の内部導体の導電率よりも高い導電率を有する金属を用いて形成することが望ましい。これにより、第1スルーホール導体を用いた信号配線は、周囲の材料が低い誘電率であることに加え、それ自体が高い導電率の材料で形成されるので、信号配線の低損失化を図るとともに、伝送信号の遅延を一層抑制することができる。
【0013】
本発明において、前記内蔵部品として、セラミック焼結体を用いて構成されたコンデンサを用いることができる。この場合、前記内蔵部品には、前記信号配線をシールドするための第2スルーホール導体を前記第1スルーホール導体の側面を取り囲むように形成し、前記第1スルーホール導体と前記第2スルーホール導体とに挟まれた領域に前記内蔵部品の材料の誘電率よりも低い誘電率を有する材料を充填してもよい。さらに、前記第1スルーホール導体及び前記第2スルーホール導体は、前記搭載部品の中央部の直下の位置に形成してもよい。ここで、前記搭載部品が所定の平面形状(例えば、正方形)を有する場合において、その「中央部」は、前記搭載部品の平面形状の中心から、その平面形状の略半分のサイズの形状部分の範囲内であることが望ましい。
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の積層セラミックコンデンサは、セラミック誘電体層と内部電極層とを交互に積層し、前記内部電極層に接続された複数のビア導体をアレイ状に配置した積層セラミックコンデンサであって、前記複数のビア導体が配置されていない領域の上面及び下面を貫通し、前記内部電極層及び前記ビア導体の導電率よりも高い導電率を有する金属を用いて形成された一又は複数の第1スルーホール導体を備え、前記第1スルーホール導体の内側の領域に前記セラミック誘電体層の誘電率よりも低い誘電率を有する材料を充填し、かつ前記第1スルーホール導体の外側の近傍領域を前記内蔵部品の材料の誘電率よりも低い誘電率を有する材料で覆った構造を有している。
【0015】
本発明の積層セラミックコンデンサにおいて、前記第1スルーホール導体の側面を取り囲むように形成された第2スルーホール導体をさらに設け、前記第1スルーホール導体と前記第2スルーホール導体とに挟まれた領域に前記セラミック誘電体層の誘電率よりも低い誘電率を有する材料を充填してもよい。この場合、前記第1スルーホール導体及び前記第2スルーホール導体は、銅めっきにより形成してもよい。さらに、前記第2スルーホール導体は、前記内部電極層の正極又は負極と同じ電位に接続してもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、搭載部品を載置する配線基板にコンデンサ等の内蔵部品を収容する場合、内蔵部品を貫通する一又は複数の第1スルーホール導体を形成し、これを信号配線として用い、その内側の領域および外側近傍の領域を低誘電率の材料を用いて形成する構造を採用したので、配線基板上で直下のコンデンサを避けることなく信号配線を引き回すとともに、信号配線を経由して入出力される伝送信号の遅延を防止して伝送性能の向上が可能となる。また、第1スルーホール導体を高導電率の金属で形成し、その周囲に低誘電率の材料を設けることができるので、低損失かつ伝送遅延を一層抑制可能な信号配線を構成し、信号伝送エラーや発熱等の問題が生じることを防止し得る配線基板を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態の配線基板の概略の断面構造を示す図である。
【図2】図1のコンデンサの断面図である。
【図3】図1のコンデンサの上面図である。
【図4】本実施形態の配線基板の製造方法を説明する第1の図である。
【図5】本実施形態の配線基板の製造方法を説明する第2の図である。
【図6】本実施形態の配線基板の製造方法を説明する第3の図である。
【図7】本実施形態の配線基板の製造方法を説明する第4の図である。
【図8】本実施形態の配線基板の製造方法を説明する第5の図である。
【図9】本実施形態の配線基板の製造方法を説明する第6の図である。
【図10】本実施形態の変形例として、スルーホール導体及び閉塞体の形成方法を変更した場合の配線基板の概略の断面構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を適用した配線基板の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本実施形態の配線基板の概略の断面構造を示す図である。図1に示す配線基板10は、コア材11と、コア材11の上面側の第1配線積層部12と、コア材11の下面側の第2配線積層部13とを含む構造を有している。本実施形態の配線基板10は、その内部に内蔵部品としてのコンデンサ100が内蔵されているとともに、上部に搭載部品としての半導体チップ200が載置されている。
【0020】
コア材11は、例えば、SiOなどのフィラー材を含有するエポキシ樹脂からなる。コア材11の上面には導体層21が形成され、コア材11の下面には導体層22が形成されている。コア材11には、中央を矩形状に貫通する収容穴部11aが開口され、この収容穴部11aにコンデンサ100が埋め込まれた状態で収容されている。コア材11の収容穴部11aとコンデンサ100の側面との間隙部には、樹脂充填材50が充填されている。樹脂充填材50としては、例えば高分子材料からなる熱硬化性樹脂が用いられる。樹脂充填材50はコンデンサ100を固定する役割を有し、コンデンサ100及びコア材11の変形を樹脂充填材50が吸収するように作用する。
【0021】
コンデンサ100は、ビアアレイタイプの積層セラミックコンデンサであり、その中央部に信号配線及びシールド構造を形成した点が特徴的である。すなわち、コンデンサ100の中央部には、所定箇所を積層方向に貫通する2重構造の複数のスルーホール導体60、61が形成されている。各々のスルーホール導体60の内部は閉塞体62で埋められるとともに、各々のスルーホール導体60、61に挟まれた領域は閉塞体63で埋められている。内周側のスルーホール導体60(本発明の第1スルーホール導体)は、半導体チップ200と外部基材(不図示)の間の信号配線として用いられ、外周側のスルーホール導体61(本発明の第2スルーホール導体)は、信号配線を取り囲むシールド構造として用いられる。それぞれのスルーホール導体60、61は例えば銅メッキにより形成され、それぞれの閉塞体62、63は例えば低誘電率のエポキシ樹脂など、コンデンサ100の材料の誘電率よりも低い誘電率を有する材料からなる。なお、コンデンサ100の詳細な構造については後述する。
【0022】
コア材11には、所定箇所を積層方向に貫通する複数のスルーホール導体30が形成されている。スルーホール導体30の内部は、例えばエポキシ樹脂からなる閉塞体31で埋められている。スルーホール導体30は、各導体層21、22における任意の配線パターンを積層方向に接続導通する役割を有する。
【0023】
第1配線積層部12は、コア材11の上面側に積層形成された樹脂絶縁層14、16と、樹脂絶縁層14の上面に形成された導体層23と、樹脂絶縁層16の上面に形成された複数の端子パッド25と、樹脂絶縁層16の上面を覆うソルダーレジスト層18とからなる構造を有する。樹脂絶縁層14の所定位置には、各導体層21、23を積層方向に接続導通する複数のビア導体32が設けられ、樹脂絶縁層16の所定位置には、導体層23と端子パッド25を積層方向に接続導通する複数のビア導体34が設けられている。ソルダーレジスト層18は、複数箇所が開口されて複数の端子パッド25が露出し、そこに複数の半田バンプ40が形成されている。各々の半田バンプ40は、配線基板10に載置される半導体チップ200の各パッド201に接続される。
【0024】
第2配線積層部13は、コア材11の下面側に積層形成された樹脂絶縁層15、17と、樹脂絶縁層15の下面に形成された導体層24と、樹脂絶縁層17の下面に形成された複数のBGA用パッド26と、樹脂絶縁層17の下面を覆うソルダーレジスト層19とからなる構造を有する。樹脂絶縁層15の所定位置には、各導体層22、24を積層方向に接続導通する複数のビア導体33が設けられ、樹脂絶縁層17の所定位置には、導体層24とBGA用パッド26を積層方向に接続導通する複数のビア導体35が設けられている。ソルダーレジスト層19は、複数箇所が開口されて複数のBGA用パッド26が露出し、そこに複数の半田ボール41が接続される。配線基板10をBGAパッケージとして用いる場合、複数の半田ボール41を介して、外部基材と配線基板10の各部との電気的接続が可能となる。
【0025】
上述したように、本実施形態の配線基板10の構造上の特徴は、内蔵されるコンデンサ100を貫通するスルーホール導体60を信号配線として用いる点である。本来、コンデンサ100には、電源とグランドを内部電極層に供給するためのビア導体のみが積層方向の配線として形成されるが、本実施形態の構造によればコンデンサ100自体には供給されない信号配線を配線基板10の中央領域に配置することができる。そのため、半導体チップ200のパッド201から半田ボール41に至る信号経路は、スルーホール導体60を含む最短の経路を構成することができる。また、コンデンサ100に形成されるビア導体は誘電率が高いセラミックに囲まれるのに比べ、スルーホール導体60の近傍の閉塞体62、63は、コンデンサ100の材料(例えば、チタン酸バリウム)に比べて誘電率を低くすることができる。さらに、コンデンサ100のビア導体には導電率が比較的低いニッケルが用いられるのに対し、スルーホール導体60は、銅などの高い導電率の金属材料を用いることができる。従って、本実施形態の信号配線により高導電率かつ低誘電率の伝送路を構成できるので、信号の遅延を防止して良好な伝送性能を確保できるとともに、抵抗成分の増加による信号伝送エラーや発熱などの不具合を防止することができる。
【0026】
また、コンデンサ100には、信号配線となるスルーホール導体60の周囲に、閉塞体63を挟んでシールド構造となるスルーホール導体61が形成されているので、信号配線への電磁的干渉を有効に抑制することができる。この場合、信号配線と外部との間の電磁的干渉を抑制する効果に加え、複数の信号配線の各々に対し個別にシールド構造が形成されるので、信号配線同士の電磁的干渉を抑制する効果がある。さらに、スルーホール導体61をグランドに接続して信号配線のグランドを強化することも可能であり、これにより信号の遅延を一層抑えることができる。
【0027】
なお、本実施形態では簡単のため、コンデンサ100に4本の信号配線(2×2)を貫通させる場合を例にとって説明するが、信号配線の本数は適宜に変更できる。この場合、4本の信号配線を取り囲む4つのシールド構造を形成する場合に限らず、1つのシールド構造で4本の信号配線を取り囲む構造としてもよい。また、コンデンサ100に、信号配線となるスルーホール導体60及びその内部の閉塞体62のみを形成し、シールド構造となるスルーホール導体61及びその内部の閉塞体63を設けない構造を採用することができる。
【0028】
次に、図1のコンデンサ100の構造について、図2及び図3を参照して説明する。それぞれ、図2にコンデンサ100の断面図を示し、図3にコンデンサ100の上面図を示している。本実施形態のコンデンサ100は、上述したようにビアアレイタイプのコンデンサであり、セラミック焼結体101を用いて複数のセラミック誘電体層102を積層形成した構造を有する。セラミック焼結体101は、例えばチタン酸バリウム等の高誘電率セラミックからなる。各々のセラミック誘電体層102の間には、第1内部電極層110aと第2内部電極層110bが交互に配置されている。第1内部電極層110aは電源用の電極として機能し、第2内部電極層110bはグランド用の電極として機能し、両電極が絶縁体である各セラミック誘電体層102を挟んで対向配置されることで所定の容量が形成される。
【0029】
図3に示すように、セラミック焼結体101の上面の周辺領域には、複数の第1端子電極107a及び複数の第2端子電極107bがアレイ状に配置されている。一方、セラミック焼結体の中央領域には、上述の4つのスルーホール導体60の上端の位置に4つの端子電極107cが配置されるとともに、これらの各端子電極107cは閉塞体62(図1)を挟んで4つのスルーホール導体61により取り囲まれている。なお、セラミック焼結体101の下面には、図3と同様の配置で、複数の第1端子電極108aと、複数の第2端子電極108bと、4つの端子電極108cが形成されている。
【0030】
また、セラミック焼結体101には、全てのセラミック誘電体層102を貫通する多数のビアホールにニッケル等を埋め込んだ複数の第1ビア導体109a及び複数の第2ビア導体109bが形成されている。そして、各々の第1ビア導体109aは、上方の第1端子電極107aと下方の第1端子電極108aとを積層方向に接続導通している。また、各々の第2ビア導体109bは、上方の第2端子電極107bと下方の第2端子電極108bとを積層方向に接続導通している。
【0031】
図1及び図2において、半導体チップ200における電源用のパッド201は、半田バンプ40、端子パッド25、ビア導体34、導体層23、ビア導体32、第1端子電極107a、第1ビア導体109aを経由して第1内部電極層110aに接続されるとともに、さらに第1端子電極108a、ビア導体33、導体層24、ビア導体35、BGA用パッド26を経由して、電源用の半田ボール41に接続される。また、半導体チップ200におけるグランド用のパッド201は、上記のような経路を経て、第2端子電極107b、第2ビア導体109b、第2内部電極層110bに接続され、最終的にグランド用の半田ボール41に接続される。
【0032】
本実施形態のコンデンサ100において、スルーホール導体60を用いて信号配線を構成することは、ビア導体を用いるよりも伝送性能の面で有利である。すなわち、一般に、エポキシ樹脂からなる閉塞体62、63の誘電率は、コンデンサ100の材料であるチタン酸バリウム等と比べて十分に低いため、スルーホール導体60を用いた信号配線は、コンデンサ100のビア導体に比べて、伝送信号の遅延を抑制することができる。また、コンデンサ100を同時焼成する場合の制約からビア導体はニッケル等の材料を用いて形成せざるを得ないが、スルーホール導体60は、導電率の高い銅めっきを用いて形成できるので、信号配線の抵抗成分を小さくすることができる。
【0033】
なお、コンデンサ100に形成される第1ビア導体109a及び第2ビア導体109bのサイズと間隔は適宜に変更することができ、それに伴い第1端子電極107a、108a及び第2端子電極107b、108bの配置も変化する。また、信号配線として用いられるスルーホール導体60、61の個数や位置も適宜に変更することができる。なお、コンデンサ100におけるスルーホール導体60、61の位置は、必ずしも中央部に限られないが、信号配線の引き回しの自由度を高くする観点からコンデンサ100の中央付近であることが好ましい。
【0034】
また、コンデンサ100において、シールド構造となるスルーホール導体61は、正極又は負極と同電位に保つことが望ましい。例えば、図3において、スルーホール導体61と近傍のグランド用の第2端子電極107bとの間を接続する配線パターンを設ければよい。これにより、信号配線に対するシールドの効果が向上する。なお、スルーホール導体61を他の配線には接続せずにフローティング状態に保ってもよい。
【0035】
次に、本実施形態の配線基板10の製造方法について、図4〜図9を参照して説明する。まず、図4に示すように、収容穴部11aを有するコア材11を作製して準備する。コア材11の作製に際しては、例えば、一辺が400mm程度の正方形の平面形状と厚さ0.8mm程度の基材の両面に銅箔が貼付された銅張積層板を用意する。そして銅張積層板にルータを用いて穴あけ加工を施し、収容穴部11aとなる貫通孔を所定位置にあらかじめ形成しておく。
【0036】
一方、配線基板10に内蔵するコンデンサ100を作製して準備する。コンデンサ100の作製に際しては、セラミックのグリーンシートにニッケルペーストをスクリーン印刷し、第1内部電極層110aとなる塗布膜及び第2内部電極層110bとなる塗布膜をそれぞれ形成する。そして、第1内部電極層110aとなる塗布膜が形成されたグリーンシートと第2内部電極層110bとなる塗布膜が形成されたグリーンシートとを交互に積層し、積層方向に押圧力を付与して各グリーンシートを一体化し、積層体を形成する。続いて、レーザー加工機を用いて積層体に複数のビアホールを貫通形成し、ニッケルペーストを各ビアホールに充填して第1ビア導体109aとなる充填体及び第2ビア導体109bとなる充填体を形成する。そして、積層体の上面にペーストを印刷し、第1端子電極107a及び第2端子電極107bのメタライズ層を形成する。同様に、積層体の下面にペーストを印刷し、第1端子電極108a及び第2端子電極108bのメタライズ層を形成する。
【0037】
次いで、ドリル機を用いた孔あけ加工により、シールド構造となるスルーホール導体61の形成位置に貫通孔(例えば、直径0.6mm)を形成する。なお、ドリル機の代わりに、レーザー加工機やパンチング機を用いて貫通孔を形成してもよい。積層体を乾燥させた後に脱脂し、積層体を所定温度で所定時間焼成すると、チタン酸バリウム及びペースト中のニッケルが同時焼結してセラミック焼結体101が得られる。その後、貫通孔に対して無電解銅めっき及び電解銅めっきを施すことによりスルーホール導体61を形成する。また、貫通孔形成後に、ニッケル等のペーストのスルーホール印刷を行い、焼成することによりスルーホール導体61を形成してもよい。さらに、スルーホール導体61の空洞部にエポキシ樹脂を主成分とするペーストを印刷した後、硬化することにより閉塞体63を形成する。そして、セラミック焼結体101の第1端子電極107a、108a、第2端子電極107b、108bのそれぞれに対し、例えば、厚さ10μm程度の電解銅めっきを施して銅めっき層を形成し、コンデンサ100が完成する。
【0038】
次に図5に示すように、収容穴部11aの底部に、剥離可能な粘着テープ70を密着配置する。この粘着テープ70は支持台71により支持される。そして、マウント装置を用いて、収容穴部11a内にコンデンサ100を収容し、粘着テープ70にコンデンサ100を貼り付けて仮固定する。なお、図5においては、図1のコア材11及びコンデンサ100の各上面を下方に向けた状態を示している(図6も同様)。
【0039】
続いて図6に示すように、ディスペンサ装置を用いて、収容穴部11aとコンデンサ100の側面との間隙部に樹脂充填材50を充填する。樹脂充填材50は熱硬化性樹脂からなるので加熱処理により硬化する。コンデンサ100は、硬化した樹脂充填材50により収容穴部11aの内部で固定され、コア材11と一体化される。このとき、コア材11の導体層21と、コンデンサ100の第1端子電極107a、第2端子電極107bが粘着テープ70と接するので、積層方向で位置が揃ったフラットな面に形成される。なお、樹脂充填材50を充填する方法はディスペンサ装置に限られず、例えば、フィルム状絶縁樹脂材料を押圧して充填する方法を用いてもよい。
【0040】
次いで、コンデンサ100の固定後に粘着テープ70を剥離する。その後、コア材11の上面とコンデンサ100の上面に対し酸性脱脂で溶剤洗浄を施してから研磨することにより、剥離した粘着テープ70の残存する粘着剤を除去する。続いて、第1端子電極107a、第2端子電極107bの上部の銅めっき層の表面を粗化するとともに、コア材11の上部の導体層21の表面を粗化する。粗化の終了後には、コア材11及びコンデンサ100を洗浄する。
【0041】
その後、図7に示すように、ドリル機を用いた孔あけ加工により、コア材11のスルーホール導体30の形成位置に貫通孔を形成するとともに、コンデンサ100の閉塞体63の中央付近におけるスルーホール導体60の形成位置に貫通孔(例えば、直径0.3mm)を形成する。スルーホール導体30、60となるそれぞれの貫通孔に対し、無電解銅めっき及び電解銅めっきを施すことによりスルーホール導体30、60を形成する。また、スルーホール導体30、60のそれぞれの空洞部にエポキシ樹脂を主成分とするペーストを印刷した後、硬化することにより閉塞体31、62を形成する。
【0042】
さらに、コンデンサ100と一体化されたコア材11の両面の銅箔にエッチングを行い、例えばサブトラクティブ法を用いて、上下の導体層21、22、端子電極107c、108cを形成する。具体的には、無電解銅めっきを施し、その部分を共通電極として電解銅めっきを施した後、ドライフィルムをラミネートして露光及び現像を行うことにより、所定パターンのドライフィルムを形成する。この状態で、不要な電解銅めっき層、無電解銅めっき層、銅箔をエッチングでそれぞれ除去した後、ドライフィルムを剥離する。
【0043】
次に、コア材11及びコンデンサ100の上下の各面に、それぞれエポキシ樹脂を主成分とするフィルム状絶縁樹脂材料を積層する。そして、真空下にて加圧加熱することにより絶縁樹脂材料を硬化させ、図8に示すように、上面側の樹脂絶縁層14と下面側の樹脂絶縁層15とを形成する。続いて、図9に示すように、樹脂絶縁層14には複数のビア導体32を形成するとともに、樹脂絶縁層15には複数のビア導体33を形成する。このとき、レーザー加工により樹脂絶縁層14、15に複数のビアホールを形成し、その中のスミアを除去するデスミア処理を施した後、各ビアホール内にビア導体32、33を形成する。なお、図7〜図9においては、コア材11及びコンデンサ100の各上面を上方に向けた状態を示している。
【0044】
その後、図1に示すように、樹脂絶縁層14、15の表面にパターニングを施し、導体層23、24をそれぞれ形成する。次いで、樹脂絶縁層14の上面と樹脂絶縁層15の下面に、それぞれ上述のフィルム状絶縁樹脂材料を積層し、真空下にて加圧加熱することにより絶縁樹脂材料を硬化させ、樹脂絶縁層16、17を形成する。そして、樹脂絶縁層16、17には、上述のビア導体32、33と同様の手法で、複数のビア導体34、35を形成する。続いて、樹脂絶縁層16の上部に複数の端子パッド25を形成し、樹脂絶縁層17の下部に複数のBGA用パッド26を形成する。次に、樹脂絶縁層16の上面と樹脂絶縁層17の下面に、それぞれ感光性エポキシ樹脂を塗布して硬化させることにより、ソルダーレジスト層18、19を形成する。その後、ソルダーレジスト層18に開口部をパターニングし、複数の端子パッド25に接続される複数の半田バンプ40を形成する。また、ソルダーレジスト層19に開口部をパターニングし、複数のBGA用パッド26に接続される複数の半田ボール41を形成する。以上の手順により本実施形態の配線基板10が完成する。
【0045】
なお、図4〜図9に基づく配線基板10の製造方法は一例であって、異なる手順に従って配線基板10を製造可能である。例えば、上述の例では、配線基板10の収容穴部11aに収容する前のコンデンサ100には、予めシールド構造となるスルーホール導体61及び閉塞体63のみが形成されているが、信号配線となるスルーホール導体60及び閉塞体62を併せて予め形成してもよい。また例えば、信号配線の周囲にシールド構造が不要である場合は、スルーホール導体60及び閉塞体62のみが予め形成されたコンデンサ100を用いてもよい。
【0046】
以上、本実施形態に基づき本発明の内容を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことができる。図10は、本実施形態の変形例として、図1のスルーホール導体30、60及び閉塞体31、62の形成方法を変更した場合の配線基板10の概略の断面構造を示している。図10に示す配線基板10は、図1のスルーホール導体30、60及び閉塞体31、62と比べると、積層方向に延伸されて上下の樹脂絶縁層14、15を貫くスルーホール導体30a、60a及び閉塞体31a、62aを形成した点で相違する。よって、配線基板10の製造時には、コア材11の上下に樹脂絶縁層14、15を形成した後に、スルーホール導体30a、60a及び閉塞体31a、62aを形成する必要がある。なお、図10の配線基板10において、スルーホール導体30a、60a及び閉塞体31a、62a以外の構造は図1と同様である。
【符号の説明】
【0047】
10…配線基板
11…コア材
11a…収容穴部
12…第1配線積層部
13…第2配線積層部
14、15、16、17…樹脂絶縁層
18、19…ソルダーレジスト層
21、22、23、24…導体層
25…端子パッド
26…BGA用パッド
30、30a、60、60a、61…スルーホール導体
31、31a、62、62a、63…閉塞体
32、33、34、35…ビア導体
40…半田バンプ
41…半田ボール
50…樹脂充填材
100…コンデンサ
200…半導体チップ
201…パッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭載部品を載置し、当該搭載部品と外部基材との間を電気的に接続する配線基板であって、
上面及び下面を貫通する収容穴部が開口されたコア材と、
前記収容穴部に収容され、上面及び下面を貫通する一又は複数の第1スルーホール導体が形成された内蔵部品と、
前記コア材の上面側に絶縁層及び導体層を交互に積層形成した第1配線積層部と、
前記コア材の下面側に絶縁層及び導体層を交互に積層形成した第2配線積層部と、
を備え、前記第1スルーホール導体は、前記第1配線積層部を介して前記搭載部品に接続される信号配線として用いられ、前記第1スルーホール導体の内側の領域には前記内蔵部品の材料の誘電率よりも低い誘電率を有する材料が充填され、かつ前記第1スルーホール導体の外側の近傍領域は前記内蔵部品の材料の誘電率よりも低い誘電率を有する材料で覆われていることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
前記第1スルーホール導体は、前記内蔵部品の内部導体の導電率よりも高い導電率を有する金属を用いて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線基板。
【請求項3】
前記内蔵部品は、セラミック焼結体を用いて構成されたコンデンサであることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線基板。
【請求項4】
前記内蔵部品には、前記信号配線をシールドするための第2スルーホール導体が前記第1スルーホール導体の側面を取り囲むように形成され、前記第1スルーホール導体と前記第2スルーホール導体とに挟まれた領域には前記内蔵部品の材料の誘電率よりも低い誘電率を有する材料が充填されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の配線基板。
【請求項5】
前記第1スルーホール導体及び前記第2スルーホール導体は、前記搭載部品の中央部の直下に位置することを特徴とする請求項4に記載の配線基板。
【請求項6】
セラミック誘電体層と内部電極層とを交互に積層し、前記内部電極層に接続された複数のビア導体をアレイ状に配置した積層セラミックコンデンサであって、
前記複数のビア導体が配置されていない領域の上面及び下面を貫通し、前記内部電極層及び前記ビア導体の導電率よりも高い導電率を有する金属を用いて形成された一又は複数の第1スルーホール導体を備え、
前記第1スルーホール導体の内側の領域には前記セラミック誘電体層の誘電率よりも低い誘電率を有する材料が充填され、かつ前記第1スルーホール導体の外側の近傍領域は前記内蔵部品の材料の誘電率よりも低い誘電率を有する材料で覆われているが充填されていることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。
【請求項7】
前記第1スルーホール導体の側面を取り囲むように形成された第2スルーホール導体をさらに備え、前記第1スルーホール導体と前記第2スルーホール導体とに挟まれた領域には前記セラミック誘電体層の誘電率よりも低い誘電率を有する材料が充填されていることを特徴とする請求項6に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項8】
前記第1スルーホール導体及び前記第2スルーホール導体は、銅めっきにより形成されていることを特徴とする請求項7に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項9】
前記第2スルーホール導体は、前記内部電極層の正極又は負極と同じ電位に接続されていることを特徴とする請求項7又は8に記載の積層セラミックコンデンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−171348(P2010−171348A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14783(P2009−14783)
【出願日】平成21年1月26日(2009.1.26)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】