説明

電力供給制御装置

【課題】 チャタリングを抑制しつつ過熱保護が可能な電力供給制御装置を提供する。
【解決手段】 パワーMOSFET15に対して、過熱状態となっても少なくとも10ms間隔でしか強制オンオフ動作はされないため、例えば放熱性の高い周期環境であっても、高周期でのチャタリング現象を防止できる。また、過熱状態が継続して上記10ms周期の強制オンオフ動作が実行された場合、Mbitカウンタ回路71がオーバフローしたときにもパワーMOSFET15等に2次遮断動作をさせる構成であり、過熱状態に基づく外部回路の焼損も防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力供給制御装置に関し、特に、過熱保護機能に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、制御信号に基づきオンオフ動作する半導体スイッチを備え、その半導体スイッチに連なる電源から負荷への電力供給を制御する電力供給制御装置がある。そして、下記特許文献1に示すように、上記半導体スイッチとして、過熱保護機能付きFETが使用されることがある。この過熱保護機能付きFETは、当該FETの温度を検出する温度センサを備え、例えば負荷の短絡等によってドレイン−ソース間に過電流が流れて温度が上昇し所定の温度に達したときにゲートへの制御信号の入力を遮断する。そして、FETの温度が低下し、次に到来する制御信号の立ち上がり電圧でゲートの遮断を解除する構成になっている。
【特許文献1】特開平7−221261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、従来の電力供給装置における過熱保護機能は、FETの温度が所定の温度を下回ったときに即座にFETをオンして通電状態に復帰させる構成になっていた。従って、例えば電力供給装置が放熱性の高い環境下に配されている場合や電力供給装置自体が放熱性の高い材料で形成されている場合には、FETは強制遮断と通電への復帰とを高周期で繰り返す、チャタリングを起こし、FETが破壊されてしまうといった問題があった。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、チャタリングを抑制しつつ過熱保護が可能な電力供給制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明に係る電力供給制御装置は、負荷への通電を行う半導体スイッチと、前記半導体スイッチの温度を検出する温度検出手段と、前記温度検出手段での検出温度と閾値温度との比較に基づき温度の異常検出の判断を行う過熱異常検出回路と、前記過熱異常検出回路が前記温度異常検出したことを条件に、前記半導体スイッチに強制的に自己復帰可能な1次遮断動作をさせる自己保護回路と、を備える電力供給制御装置であって、前記自己保護回路は、前記過熱異常検出回路が前記異常検出し前記1次遮断動作をさせた後、基準時間待った後に、前記過熱異常検出回路の判断結果に基づき前記半導体スイッチに通電状態への復帰または前記1次遮断動作をさせることを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1に記載の電力供給制御装置において、前記過熱異常検出回路が前記異常検出したときに間欠的に繰り返される強制オンオフ動作時における前記半導体スイッチの強制オンオフ動作時間を積算し、その積算時間が積算閾値に達したことを条件に前記半導体スイッチに自己復帰不能な2次遮断動作を実行させる負荷保護回路を備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項2に記載の電力供給制御装置において、前記半導体スイッチに流れる電流量を検出する電流検出手段と、前記半導体スイッチの通電時において前記電流検出手段での検出値と閾値電流値との比較に基づき前記半導体スイッチに流れる電流の異常検出を行う電流異常検出回路と、を備え、前記自己保護回路は、前記半導体スイッチに対し、更に、前記電流異常検出回路又は前記過熱異常検出回路が異常検出したことを条件に前記1次遮断動作をさせ、その後に通電状態に復帰させてこのときに前記電流異常検出回路又は前記過熱異常検出回路が異常検出したことを条件に再度前記1次遮断動作をさせる、強制オンオフ動作を間欠的に実行する構成とされ、前記負荷保護回路は、前記強制オンオフ動作の実行時における前記半導体スイッチの強制オンオフ動作時間を積算し、その積算時間が積算閾値に達したことを条件に前記2次遮断動作をさせることを特徴とする。
【0008】
なお、本発明で「電流検出手段」は、半導体スイッチに流れる電流量を直接検出するものだけでなく、間接的に検出するものであってもよい。例えば、下記の(a)〜(c)の構成が含まれる。
(a)半導体スイッチの出力に連なるシャント抵抗を設けて、このシャント抵抗の負荷電圧に基づき半導体スイッチの電流量を検出する構成。
(b)半導体スイッチの出力端子(例えばMOS−FETの場合はソース電極)の電位レベルに基づき半導体スイッチの電流量を検出する構成。
(c)半導体スイッチのオン抵抗(例えばMOS−FETの場合は通電時におけるドレイン−ソース間の抵抗値に基づき半導体スイッチの電流量を検出する構成。
(d)半導体スイッチに流れる電流量に応じたセンス電流を流すセンス回路を設けて、このセンス電流量に基づき半導体スイッチの電流量を検出する構成。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載の電力供給制御装置において、前記半導体スイッチと、前記温度検出手段と、前記過熱異常検出回路と、前記自己保護回路と、前記負荷保護回路と、前記電流検出手段と、前記電流異常検出回路とは、ワンチップ又は複数チップでワンパッケージ内に収容されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
<請求項1の発明>
本構成によれば、温度の異常検出し半導体スイッチを1次遮断動作させた後、所定時間待った後に、過熱異常検出回路の判断結果に基づき半導体スイッチを通電状態に復帰させるかどうかの判断を行う構成とした。従って、例えば電力供給制御装置が配された環境下の放熱特定に応じた基準時間を設定することで、上述した高周期のチャタリングを防止できる。なお、基準時間を変更可能な調整手段を設ける構成であってもよい。
【0011】
<請求項2の発明>
本構成によれば、異常検出したときに間欠的に繰り返される強制オンオフ動作時における半導体スイッチの強制オンオフ動作時間(強制オンオフ動作のオン時間及びオフ時間)を積算し、その積算時間が積算閾値(例えば外部回路が焼損しまたはそのおそれがあるときの蓄積発熱量に対応する限界時間)に達したことを条件に半導体スイッチに自己復帰不能な2次遮断動作を実行させる構成とした。つまり、過熱保護機能を利用して、半導体スイッチに連なる外部回路(例えば電線)に与える熱量に対応する強制オンオフ動作時間を積算し、その積算時間が外部回路を焼損させるおそれがある値に達する前に半導体スイッチを自己復帰不能に強制遮断する、いわゆるヒューズ機能を有しているのである。
【0012】
<請求項3の発明>
本構成は、過熱異常だけでなく過電流異常に対する自己保護機能をも有しており、過熱異常または過電流異常が発生したときに、このときの強制オンオフ動作時における半導体スイッチの強制オンオフ動作時間に基づきヒューズ機能の実行を図ることができる。
【0013】
<請求項4の発明>
本構成によれば、半導体スイッチ、温度検出手段、過熱異常検出回路、自己保護回路、負荷保護回路、電流検出手段及び電流異常検出回路が、ワンチップ又は複数チップでワンパッケージ内に収容されている。なお、閾値温度を定める、例えば抵抗素子をパッケージの外部に設ける構成としてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の一実施形態を図1ないし図8を参照しつつ説明する。
(1)全体構成
図1は、本実施形態に係る電力供給制御装置10の全体構成を示すブロック図であり、同図に示すように、本実施形態の電力供給制御装置10は、定電圧信号、或いは、PWM(Pulse Width Modulation。パルス幅変調)制御信号などの制御信号S1を直接又は間接的にパワーMOSFET15の制御入力端子(ゲート端子G)に与えることで、このパワーMOSFET15の出力側に連なる車両用電源60(以下、単に電源60とも称する)から負荷50への電力供給を制御するように構成されている。なお、本実施形態では、電力供給制御装置10は図示しない車両に搭載され、負荷50として例えば車両用のランプ、クーリングファン用モータやデフォッガー用ヒータなどの駆動制御をするために使用される。この電力供給制御装置10は、入力端子P1において、操作スイッチ52及び抵抗(図2:図1では図示略)が接続される構成をなし、操作スイッチ52がONとなることで動作するようになっている。
【0015】
図1に示すように、信号S1は入力端子P1に接続された入力インターフェース45に入力されるようになっており、このS1の入力に応じてFET47がオン状態となり、保護用論理回路40が通電される構成をなしている。保護用論理回路40にはチャージポンプ回路41とターンオフ回路42がそれぞれ接続されており、さらに過電流検知回路13(電流異常検出回路)、過温度検出回路48(過熱異常検出回路)もそれぞれ接続されている。
【0016】
チャージポンプ回路41は、パワーMOSFET15に接続されており、チャージポンプ回路41とパワーMOSFET15のゲート端子Gとの間には、過電流検出回路13からのライン(具体的には、後述するセンスMOSFET16のゲート端子Gからのライン(図2参照))が接続されている。また、チャージポンプ回路41とパワーMOSFET15のゲート端子Gとの間のラインにおける過電流検知回路13との接続点と、パワーMOSFET15のゲート端子Gとの間には、ターンオフ回路42からのラインが接続されている。また、ターンオフ回路42は、パワーMOSFET15のドレイン電源端子Dとソース端子Sにもそれぞれ接続されている。なお、図1において図示は省略しているが、半導体スイッチ素子11の出力端子P3と外部端子P4の間には外付け抵抗12が接続され、外部端子P4と入力端子P1の間には第2外付け抵抗14が接続されている。なお、これらの端子の詳細については後述する。
【0017】
次に、過電流検知回路13について説明する。図2は、電力供給制御装置10の過電流検知回路13(過電流検知回路13は異常検出回路に相当する)を主として示す回路図である。同図に示すように、電力供給制御装置10は、パワーMOSFET15(パワーMOSFET15は、パワーFETに相当する)と、パワーMOSFET15の電流量に応じたセンス電流が流れるセンスMOSFET16(センスMOSFET16は、センスFETに相当する)と、パワーMOSFET15に流れる電流の異常検出を行う後述の過電流検知回路13とがワンチップ化された形態、或いは、複数のチップで構成されてワンパッケージ内に収容された形態にて半導体スイッチ素子11が構成されている。
【0018】
パワーMOSFET15は、ドレイン端子Dが電源端子P2に接続され、ソース端子Sが出力端子P3に接続されている。センスMOSFET16は、ゲート端子G及びドレイン端子DがパワーMOSFET15のゲート端子G及びドレイン端子Dと共通接続されている。また、パワーMOSFET15のソース端子S及びセンスMOSFET16のソース端子Sは、オペアンプ18の各入力端子にそれぞれ接続されており、互いに同電位に保たれるように構成されている。オペアンプ18の出力側には、FET20のゲート端子が接続されている。これらパワーMOSFET15及びセンスMOSFET16は、スイッチ52がONとなって入力端子P1から入力信号S1が入力されることを条件としてONするように構成されている。
【0019】
半導体スイッチ素子11の外部には、外付け抵抗12(外付け抵抗12は、閾値設定用抵抗に相当する)が設けられており、この外付け抵抗12は、一端が半導体スイッチ素子11の出力端子P3(パワーMOSFET15のソース端子Sが接続される端子)に接続され、他端が、半導体スイッチ素子11の外部端子P4と接続されている。外付け抵抗12は、一端の接続点(即ち、パワーMOSFETのソース端子S)の電圧レベルVsに応じた電流を、外部端子P4を通して流すように構成されている。
【0020】
また、半導体スイッチ素子11の外部には、後述の定電圧手段と外部端子P4との間に接続される第2外付け抵抗14が設けられており、定電圧手段の電圧レベルに応じて第2外付け抵抗14を電流Irbが流れるようになっている。この電流Irbと外付け抵抗12を流れる電流Irsとの加算電流Irに応じて、過電流検知回路13で閾値電流Ia、Ib(後述)が生成されるようになっている。
【0021】
半導体スイッチ素子11の内部には、入力端子P1と接続されるツェナーダイオード38が設けられている。このツェナーダイオード38は、図1に示す入力インターフェース45の一部を構成している。本実施形態では、入力の論理は正論理とされており、入力端子P1は、入力信号S1がアクティブのときに一定電圧に保たれるように構成されている。即ち、本実施形態では、電源と抵抗54とツェナーダイオード38によって定電圧手段が構成されている。第2外付け抵抗14は、このように一定電圧に設定される入力端子P1に一端が接続され、他端が外部端子P4に接続されており、この第2外付け抵抗14を、一定電流Irbが流れるようになっている。つまり、外部端子P4には、一定電流Irbと外付け抵抗12を流れる電流Irsとの加算電流Irが流れることとなる。
【0022】
一方、過電流検知回路13は、外部端子P4に接続されており、パワーMOSFET15のソース端子Sの電圧レベルVsに応じて外付け抵抗12を通して流れる電流Irsと、外付け抵抗12とは異なる経路からの定電流(即ち、電流Irb)との加算電流Irに基づいて閾値電流Ia、Ib(後述)を設定し、この閾値電流Ia、Ibをセンス電流Isと比較することに基づいて異常信号OC、SC(後述)を出力することとなる。なお、電流Irsは、外付け抵抗12の抵抗値Rsに対するパワーMOSFET15のソース端子レベルVsの割合Vs/Rsに応じて定まる値であり、ソース端子レベルVsが増加するとIrsも増加し、Vsが減少するとIrsも減少するようになっている(即ち、ソース端子レベルVsの増減に応じてIrsも増減するようになっている)。
【0023】
過電流検知回路13においては、FET24、FET26によってカレントミラー回路が構成されるため、センス電流Isと同レベルのミラー電流Is’が流れ、FET28、FET30、及びFET34によるカレントミラー回路により、ミラー電流Is’と同レベルのミラー電流Is”がFET30、FET34に流れるように構成されている。即ち、センス電流Isと同レベルのミラー電流Is”がFET30、FET34に流れることとなる。そして、これらミラー電流Is”を後述する閾値電流Ia、Ibと比較することによって異常検出を行う。
【0024】
また、過電流検知回路13は、外部端子P4に接続されており、外部端子P4を通して流れる電流Irに応じた閾値電流Ia、Ibと、センス電流Is(詳しくは、センス電流Isのミラー電流Is”)とを比較することに基づき異常信号を出力する構成をなしている。具体的には、FET22、FET32、FET36によりカレントミラー回路が構成されており、外部端子P4を通して流れる電流Irと同レベル、又は、電流Irと比例するレベルの第1閾値電流Ia及び第2閾値電流IbがFET32、FET36にそれぞれ流れるように構成されている。FET32とFET36は、互いにチャネル幅が異なるように設定されており、一定比率の電流が流れるように構成されている。本実施形態では、外部端子Irを流れる電流と同じレベルの第2閾値電流Ibが流れ、第2閾値電流Ibに対して一定割合(例えばIbの5/8程度)の第1閾値電流Iaが流れるようにFET22、FET32、FET36が構成されている。なお、IbとIaの比率は一定であればよく、構成や環境に応じて適切に定めることができる。
【0025】
過電流検知回路13は、第1異常状態を検出する第1異常検出部(即ち、FET30、FET32、検出ライン31によって構成される部分)と、第2異常状態を検出する第2異常検出部(即ち、FET34、FET36、検出ライン35によって構成される部分)とを有している。
【0026】
第1異常検出部では、電流Irsと電流Irbとの加算電流Irに比例した第1閾値電流Iaが設定され、、この第1閾値電流Iaとセンス電流Is(詳しくはセンス電流Isのミラー電流Is”)と比較し、センス電流Isが第1閾値電流Iaを上回る場合(即ち、ミラー電流Is”が第1閾値電流Iaを超える場合)に、検出ライン31から第1異常信号OCを出力する。この第1異常信号OCは、過電流状態を示す信号として用いられる。
【0027】
第2異常検出部では、電流Irsと電流Irbとの加算電流Irと同レベルの閾値電流Ibが設定され、この第2閾値電流Ibとセンス電流Is(詳しくはセンス電流Isのミラー電流Is”)とを比較し、センス電流Isが第2閾値電流Ibを上回る場合(即ち、ミラー電流Is”が第2閾値電流Ibを超える場合)に、検出ライン35から第2異常信号SCを出力する。この第2異常信号SCは、短絡状態を示す信号(換言すれば、第1異常状態よりも大きな電流が流れた状態を示す信号)として用いられる。
【0028】
なお、上述の第1異常信号OC及び第2異常信号SCは保護用論理回路40に並列に入力されるように構成されており、後述の保護動作がなされるようになっている。また、これら第1異常信号OC及び第2異常信号SCはOR回路49にも入力されるようになっており、これら第1異常信号OC及び第2異常信号SC、或いは過温度検知回路からの温度異常を示す第3異常信号OTのいずれかの信号が入力された場合には、FET46がオンされ、プルアップ抵抗54を利用して外部装置(例えば警告ランプ等)に異常を示す信号が出力される。
【0029】
(2)閾値設定
次に、閾値電流の設定について説明する。
図3は、センスMOSFET16のドレイン−ソース間電圧Vdsと、センスMOSFET16に流れるセンス電流Isとの関係、及び閾値電流Ibを示す図である。横軸は、センスMOSFET16のドレイン−ソース間電圧Vdsを示し、縦軸は、そのドレイン−ソース間電圧Vdsに応じてセンスMOSFET16を流れるセンス電流Isを示している。
【0030】
負荷が正常状態の場合パワーMOSFET15がオンした際の、センスMOSFET16のドレイン−ソース間電圧Vds及び電流Isの安定点は、負荷線L1とオン抵抗線L2との交点Aとなる。即ち、センスMOSFET16のドレイン−ソース間電圧Vds及び電流Isの値は、パワーMOSFET15のオン状態が維持されるのに伴って、点B(Vs(パワーMOSFET15のソース電圧)=0、Id(パワーMOSFET15のドレイン電流)=0の状態)から、負荷線L1に沿って変化し、安定点(交点A)に到達した時点で安定するのが理想的である。
【0031】
しかしながら、負荷が短絡しているなどの異常事態が発生している場合、起動時に点Bから出発しても、その負荷50での電圧降下が極めて少ないため、パワーMOSFET15のソース電圧Vsはほとんど上昇しない。即ち、パワーMOSFET15のドレイン−ソース間電圧があまり変化しない状態で、パワーMOSFET15を流れる電流Idが急激に上昇してしまい、対応して、線L3に示すようにセンス電流Isが点Bから出発して急激に上昇することとなる。
【0032】
即ち、ソース電圧Vsが低く、ドレイン−ソース間電圧Vdsが高いときに電流Idが急上昇してしまうこととなるが、本実施形態に係る電力供給制御装置10では、このような電流Idの異常上昇を速やかに防止するため、電流Idに対し一定比率で流れるセンス電流Isを閾値電流Ia、Ibと比較して異常検出を行う構成とし、さらに、ソース電圧Vsが低いときには、それに応じて閾値電流Ia、Ibを低く設定するようにして閾値設定の適正化を図っている。そして、Isが閾値電流Ia、Ibを上回ることを条件として保護回路40にて遮断動作を行うようにしている。なお、保護回路40による遮断動作については後述する。
【0033】
閾値電流Ia、Ibは、上述したように、第2外付け抵抗14を流れる定電流Irbと、パワーMOSFET15のソース端子Sの電圧Vsに応じて外付け抵抗12を流れる電流Irsとの加算電流Irに応じて、FET22,FET32、FET36によるカレントミラー回路により生成される。このうち、第2閾値電流Ibが、電流Irと同レベルの電流となるように、FET22、FET36が構成されており、電流Ir(即ち、第2閾値電流Ib)とドレイン−ソース間電圧Vdsとの関係は図3の線L4のように示される。図3に示すように、電流Irとドレイン−ソース間電圧Vdsとの関係を示す線L4は、所定領域においてL1の勾配と同勾配とされている。
【0034】
第2閾値電流Ibは、パワーMOSFET15のソース端子Sの電圧Vsの増減に応じて増減する電流とされている。即ち、ソース端子Sの電圧Vsのレベルが低い状態ではそれに応じた低い閾値電流Ibが設定され、Vsが高い場合には、それに応じた高い閾値電流が設定されるようになっている。したがって、閾値電流を一定値とする場合と比較して閾値電流を最適化できる。即ち、Vdsが大きくなるに従って閾値電流に達するまでの時間が短くなり、迅速かつパワーMOSFET15での電力損失が小さい状態での遮断が可能となる。
【0035】
本実施形態では、最大負荷時におけるセンス電流Isの通常時(異常状態が発生していない場合)の負荷線L1を、Is=m・Vds+n(ただし、m、nは定数)で表した場合、第2閾値電流Ibは、領域Cにおいて、Ib=m・Vds+s(ただし、sは定数)と設定される。領域DにおいてIb=s(ただしsは定数)と設定される。また、Ibの勾配は、Vs/Rsで定められるため、外付け抵抗12の抵抗値Rsを調整することにより、負荷線L1の勾配と閾値電流のラインL4の勾配を領域Cにおいて同一とすることができる。また、バイアス電流Irbは、第2外付け抵抗14の抵抗値Rbを調整することにより設定できる。
【0036】
大部分の領域Cにおいて勾配がほぼ同一とされ、領域Dにおいて適切な閾値電流が定められることで、短絡が生じたとしても、センス電流Isは、時間を要することなく即座に閾値電流Ibに達することとなり、効果的な保護が図られることとなる。即ち、仮に閾値電流を一定レベルに設定する場合、短絡発生からセンス電流Isが閾値電流に達するまでに時間がかかるため、その間、保護が図られず、悪影響が懸念されるが、本実施形態では、状態に応じた閾値電流が設定されるため、迅速で適切な保護が図られることとなる。
【0037】
なお、図3では、第2閾値電流Ibの設定方法について詳細に説明したが、第1閾値電流Iaも同様に設定されることとなる。なお、第1閾値電流Iaは第2閾値電流Ibに対して所定割合となる電流であるため、第1閾値電流Iaを示すラインはそのようなラインとなる
【0038】
本実施形態では、閾値設定用の抵抗が半導体スイッチ素子11の内部ではなく、半導体スイッチ素子11の外部に外付け抵抗12、14として設けられるため、図3の破線L4にてばらつき幅が例示されるように、製造過程に起因する抵抗値のばらつきが抑えられ、閾値電流Ia、Ibを精度高く設定でき、ひいては、異常検出を高精度に行うことができる。また、このように閾値電流Ia、Ibが精度高く設定される一方で、カレントミラー回路によってセンス電流Isを精度高く反映したばらつきの少ないミラー電流Is”が生成され(破線L1にて示されるばらつき幅を参照)、これが閾値電流Ia、Ibと比較されることとなるため、精度の高い電流同士の比較が可能となり、異常検出の精度が極めて高くなる。そして、パワーMOSFET15のソース端子Sの電圧Vsの増減に応じて増減するように閾値電流Ia、Ibを設定できるため(より詳しくは、大部分の領域において、閾値電流のラインL4が負荷線L1の勾配とほぼ同勾配となるように設定され、それ以外の領域についても、適切な閾値電流が定められるため)、全ての領域において一律に一定レベルの閾値を設定するような構成と比較して、短絡が生じた場合に、センス電流のレベルが即座に閾値電流レベルに達することとなり、迅速な保護が図られる。
【0039】
(3)保護用論理回路
図4には、前述の制御信号S1を受けることで起動する保護用論理回路40の構成が示されている。この保護用論理回路40は、正常時には、チャージポンプ回路41を駆動させ、このチャージポンプ回路41は昇圧した電圧をパワーMOSFET15及びセンスMOSFET16の各ゲート−ソース間に与えてオンして通電状態にさせるように動作する。一方、保護用論理回路40は、上記第1異常信号OC、第2異常信号SCまたは第3異常信号OTを受けた異常検出時には、チャージポンプ回路41をオフさせるとともに、ターンオフ回路42を駆動させる制御信号S4を出力し、これにより、パワーMOSFET15及びセンスMOSFET16の各ゲート−ソース間の電荷を放電し、遮断動作させるように動作する。
【0040】
保護用論理回路40は、オシュレータ72(OSC)、Nbitカウンタ回路70、Mbitカウンタ回路71、NOR回路76及びAND回路77等を含んで構成されている。このうち、NOR回路76には、第1異常信号OC、第2異常信号SC、第3異常信号OTが入力される。そして、このNOR回路76からの信号S5と、Nbitカウンタ回路70からそのカウンタが初期値(N=0)のときに出力される信号S6とがAND回路77に入力され、このAND回路77からのリセット信号RST3がオシュレータ72及びNbitカウンタ回路70に与えられて初期化されるようになっている。
【0041】
このような構成により、オシュレータ72及びNbitカウンタ回路70は、保護用論理回路40が第1異常信号OC、第2異常信号SC又は第3異常信号OTを受ける前は、リセット状態で待機する。そして、オシュレータ72及びNbitカウンタ回路70は、第1異常信号OC、第2異常信号SC及び第3異常信号OTのいずれかを受けたときにリセット状態が解除され、Nbitカウンタ回路70がオシュレータ72の発振周波数に応じたタイミングでNbit分の時間(本実施形態では例えば10ms)のカウントを開始し、Nbit分カウントした後にリセットされ再びNbit分のカウントを開始する。また、オシュレータ72及びNbitカウンタ回路70は、保護用論理回路40が第1異常信号OC、第2異常信号SC及び第3異常信号OTのいずれも受けておらず、かつ、Nbitカウンタ回路70のカウンタがゼロになっているときにリセットされるようになっている。従って、Nbitカウンタ回路70は、保護用論理回路40が第1異常信号OC、第2異常信号SC又は第3異常信号OTを一旦受けると、その後、再度第1異常信号OC又は第2異常信号SCを受けるかどうかにかかわらず、Nbit分カウントアップするまでカウントを継続する。
【0042】
また、Nbitカウンタ回路70は、k(<N)bit分カウント(本実施形態では例えば500μs)したときに出力信号S8を出力する。そして、AND回路79は、この出力信号S8と、第2異常信号SCとが与えられるようになっている。要するに、AND回路79は、保護用論理回路40に第2異常信号SCが入力されてNbitカウンタ回路70がカウントを開始したときは、k(<N)bit分カウント後に出力信号S9を出力するのである。
更に、Nbitカウンタ回路70は、h(k<h<N)bit分カウント(本実施形態では例えば2ms)したときに出力信号S2を出力する。そして、AND回路78は、この出力信号S2と、第1異常信号OCとが与えられるようになっている。要するに、AND回路78は、保護用論理回路40に第1異常信号OCが入力されてNbitカウンタ回路70がカウントを開始したときは、h(k<h<N)bit分カウント後に出力信号S7を出力するのである。
【0043】
Mbitカウンタ回路71は、Nbitカウンタ回路70がオーバフロー(Nbit分カウントアップ)した回数をMbit分カウントするものである。そして、Mbitカウンタ回路71は、例えば、制御信号S1が入力端子に入力された時(例えば負荷駆動信号が入力された時)にリセット信号RST2を受けてカウンタがリセットされ、常にはローレベルの出力信号S3を出力し、オーバフロー(Mbit分カウントアップ)したときに反転したハイレベルの出力信号S3を出力するように動作する。つまり、Mbitカウンタ回路71は、制御信号S1が入力端子に入力された時(例えば負荷駆動信号が入力された時)のリセット信号RST2を受けたときのみカウンタがリセットされるようになっている。
また、Nbitカウンタ回路70とMbitカウンタ回路71との間には、AND回路91が設けられている。このAND回路91は、Nbitカウンタ回路70がオーバフロー(Nbit分カウントアップ)したときに出力するカウントアップ信号と、第3異常信号OTを反転した信号とが入力される。つまり、Nbitカウンタ回路70からのカウントアップ信号は、過熱状態の検出(第3異常信号OT出力)でないときは有効化されてMbitカウンタ回路71に与えられるが、過熱状態の検出(第3異常信号OT出力)には無効化される。
【0044】
また、保護用論理回路40は、チャージポンプ回路41、ターンオフ回路42に制御信号S4を与えてオンオフ動作させる、ラッチ回路としてのRS−FF74(RSフリップフロップ)を有している。このRS−FF74は、セット端子SにOR回路73からのセット信号SETが入力され、リセット端子Rにリセット信号RST1が入力され、出力端子Qにチャージポンプ回路41及びターンオフ回路42のそれぞれ入力端子が接続されている。
【0045】
RS−FF74は、リセット状態で出力端子Qからローレベルの制御信号S4を出力してチャージポンプ回路41をオンしターンオフ回路42をオフすることにより、パワーMOSFET15及びセンスMOSFET16は、チャージポンプ回路41からの昇圧された電圧信号を受けて通電状態となる。そして、このリセット状態でセット信号SETが入力されることでチャージポンプ回路41がオフしターンオフ回路42がオンし、これにより、パワーMOSFET15及びセンスMOSFET16は、各ゲートーソース間の電荷が放電され遮断動作に切り替わり、オフする。
【0046】
OR回路73は、上記AND回路78からの出力信号S7と、AND回路79からの出力信号S9と、第3異常信号OTとが入力される。従って、OR回路73は、過電流状態の検出(第1異常信号OC出力)時から2ms経過後、又は、短絡状態の検出(第2異常信号SC出力)時から500μs経過後、或いは、過熱状態の検出(第3異常信号OT出力)時に、RS−FF74にセット信号SETを与える。
【0047】
また、AND回路75は、Mbitカウンタ回路71からの出力信号S3を反転した信号が入力されるとともに、上段のAND回路90にて有効化されたリセット信号RST1が入力される。つまり、AND回路75は、Mbitカウンタ回路71からローレベルの出力信号を受けているときは、リセット信号RST1を有効化させてRS−FF74のリセット端子Rに与える一方で、Mbitカウンタ回路71からハイレベルの出力信号を受けたときには、リセット信号RST1を無効化させてRS−FF74のリセット端子Rにリセット信号RST1を与えないようにする有効化手段として機能する。
AND回路90は、第3異常信号OTを反転した信号と、リセット信号RST1とが入力される。つまり、過熱状態の検出(第3異常信号OT出力)でないときにリセット信号RST1を有効化してAND回路75に与える一方で、過熱状態の検出(第3異常信号OT出力)時はリセット信号RST1を無効化する有効化手段として機能する。
【0048】
次に、リセット信号RST1は、制御信号S1が入力端子に入力された時、又は、Nbitカウンタ回路70のカウンタが初期値(N=0)の時に出力される。
【0049】
(動作)
<短絡異常の発生時>
以上の構成により、保護用論理回路40は、制御信号S1が入力端子に入力された時にRS−FF74によってパワーMOSFET15及びセンスMOSFET16をオンして通電状態とし、例えば、第2異常信号SCを受けたときに、Nbitカウンタ回路70がカウントを開始し、そのNbitカウンタ回路70がkカウントし、かつ、短絡状態が継続したとき(500μs後)にRS−FF74がセット状態となりパワーMOSFET15及びセンスMOSFET16をオフして強制的に遮断動作をさせる。
【0050】
このときの遮断動作は、「自己復帰可能な1次遮断動作」に相当する。即ち、Nbitカウンタ回路70がオーバフローしてカウントがゼロに初期化されたときにリセット信号RST1が出力され、このリセット信号RST1は、AND回路75において有効化される。従って、これによりRS−FF74はリセット状態に変移してパワーMOSFET15及びセンスMOSFET16を通電状態に復帰させることができるのである。
【0051】
そして、この通電状態に復帰したときに、未だ短絡状態となっており、保護用論理回路40が第2異常信号SCを受けたときには、再び上記1次遮断動作を実行する。従って、短絡状態が解消されない限り、RS−FF74は、図5(A)に示すように、500μsの時間幅(パルス幅)のハイレベル信号(パワーMOSFET15等をオンして通電状態とする信号)を10ms周期で出力する制御信号S4(デューティ比5%)をチャージポンプ回路41を通してパワーMOSFET15及びセンスMOSFET16のゲートGに与えて強制オンオフ動作を実行する。
【0052】
そして、Mbitカウンタ回路71は、この強制オンオフ動作の実行回数、つまり、Nbitカウンタ回路70がオーバフローした回数をカウントしM回になったときに、ハイレベルの出力信号を出力する。これにより、AND回路75は、リセット信号RST1を無効化させ、次にNbitカウンタ回路70がオーバフローしてもRS−FF74はリセット状態に変移しなくなる。つまり、このときの遮断動作が「自己復帰不能な2次遮断動作」に相当する。
【0053】
<過電流異常の発生時>
一方、保護用論理回路40は、第1異常信号OCを受けたとき、Nbitカウンタ回路70がカウントを開始し、そのNbitカウンタ回路70がnカウントし、かつ、過電流状態が継続したとき(2ms後)に、上記1次遮断動作を実行する。その後、Nbitカウンタ回路70がオーバフローしてカウントがゼロに初期化されたときにリセット信号RST1が出力され、RS−FF74はリセット状態に変移してパワーMOSFET15及びセンスMOSFET16を通電状態に復帰させる。続いて、この通電状態に復帰したときに、未だ過電流状態となっており、保護用論理回路40が第1異常信号OCを受けたときには、再び上記1次遮断動作を実行する。従って、過電流状態が解消されない限り、RS−FF74は、図5(B)に示すように、2msの時間幅(パルス幅)のハイレベル信号を10ms周期で出力する制御信号S4(デューティ比20%)をチャージポンプ回路41を通してパワーMOSFET15及びセンスMOSFET16のゲートGに与えて強制オンオフ動作を実行する。
【0054】
そして、やはり、この強制オンオフ動作の実行回数、つまり、Nbitカウンタ回路70がオーバフローした回数をカウントしM回になったときに、Mbitカウンタ回路71はハイレベルの出力信号を出力する。これにより、AND回路75は、リセット信号RST1を無効化させ、次にNbitカウンタ回路70がオーバフローしてもRS−FF74はリセット状態に変移しなくなる上記2次遮断動作を実行する。
<過熱異常の発生時>
保護用論理回路40は、第3異常信号OTを受けたとき、Nbitカウンタ回路70がカウントを開始し、それとほぼ同時に、上記1次遮断動作を実行する。その後、Nbitカウンタ回路70がオーバフローしてカウントがゼロに初期化されたときにリセット信号RST1が出力される。ここで、上記AND回路90によって、過熱状態が解消している(第3異常信号OTを受けていない)ときは、リセット信号RST1が有効化されてRS−FF74はリセット状態に変移してパワーMOSFET15及びセンスMOSFET16を通電状態に復帰させる。これに対して、未だ過熱状態が継続している(第3異常信号OTを受けている)ときには、リセット信号RST1は無効化されRS−FF74はセット状態に維持してパワーMOSFET15及びセンスMOSFET16の1次遮断動作を継続する。この動作は、過熱異常が発生したときは、上記短絡異常、過電流異常の発生による強制オンオフ動作時においても実行される。
また、第3異常信号OTを受けることによって、Nbitカウンタ回路70がオーバフローした回数をカウントしM回になったときに、Mbitカウンタ回路71はハイレベルの出力信号を出力する。これにより、AND回路75は、リセット信号RST1を無効化させ、次にNbitカウンタ回路70がオーバフローしてもRS−FF74はリセット状態に変移しなくなる上記2次遮断動作を実行する。つまり、その後に過熱異常が解消されても、制御信号S1が入力端子に再入力された時(例えば負荷駆動信号が再入力された時)にのみMbitカウンタ回路71がリセットされ復帰可能となるのである。
【0055】
<閾値電流値と、デューティ比の定め方>
次に、過電流異常時における第1閾値電流値Ia及び強制オンオフ動作の第1デューティ比D(Da)、短絡異常時における第2閾値電流値Ib及び強制オンオフ動作の第2デューティ比D(Db)の定め方について説明する。
【0056】
図6は、本実施形態の電力供給制御装置10に接続され得る外部回路、例えば電線(例えば電線被覆材)の発煙特性について、電流レベルと通電時間(溶断時間)との関係を示したグラフである。つまり、任意の一定電流(ワンショット電流)を電線に流したときに、当該電線の被覆材の焼損が発生するまでの時間を示している。なお、同グラフは、電力供給制御装置10に接続される電線の発煙特性を示している。なお、電力供給制御装置10に接続される外部回路(電線等の配線部材、負荷)によって発煙特性は異なり、次述する方法によって定まる閾値電流値もそれに対応して異なってくるが、この調整は、前述した外付け抵抗12、14の抵抗値を変更することにより容易に行うことができる。
【0057】
同グラフ中、Istdは定格電流であり、Ioは電線における発熱と放熱のバランスがとれた熱平衡状態で流すことが可能な平衡時限界電流である。この平衡時限界電流Ioよりも高いレベルの電流を流す場合には、過度熱抵抗領域となり、電流レベルと焼損までの時間とが略反比例関係となる。本実施形態のように、電流異常検出時に強制オンオフ制御してパワーMOSFET15等をデューティ比制御する場合には、上記熱平衡状態における平衡時限界電流Ioを基準に、各閾値電流値及びデューディ比を考える必要がある。
【0058】
ここで、一定の平衡時限界電流Ioを与えて電線が溶断するまでの時間t1の総発熱量は、平衡時限界電流Ioの2乗に比例し、デューティ比Dの電流を与えた場合の最大許容電流レベルImaxは、次の式1から求めることができる。
【0059】
Imax=Io/√D
従って、第1閾値電流値Ia及び第2閾値電流値Ibは、この最大許容電流レベルImax以下のレベルに設定する必要がある。また、例えば制御信号S1が入力端子に入力された時には定格電流の約10倍(負荷がランプの場合)の突入電流がパワーMOSFET15等に流れるため、この突入電流値よりも大きい値に設定することが望ましい。少なくとも第2閾値電流値Ibは突入電流値よりも大きい値にすべきである。この点を考慮して、本実施形態では、過電流異常について第1デューティ比Daを20%とし、第1閾値電流値Iaの最大値は上記数式1から導出されるImax以下の値に設定されている。また、短絡異常について第2デューティ比Dbを5%とし、第2閾値電流値Ibの最大値は上記数式1から導出されるImax以下の値に設定されている。
【0060】
しかも、過電流異常時と短絡異常時とで強制オンオフ動作の1周期時間を同じ10msとし、かつ、第1閾値電流値Iaに第1デューティ比Daを乗じた値と、第2閾値電流値Ibに第2デューティ比Dbを乗じた値とが等量になるように、第1閾値電流値Iaと第2閾値電流値Ibとが調整されている。なお、各デューティ比の調整は、前述のNbitカウンタ回路70が出力信号S2,S8を出力するカウント数k、hを変更することにより行うことができる。
【0061】
そして、Mbitカウンタ回路71のカウント数M(回数閾値)は、平衡時限界電流Io(定電流)の溶断時間t1と、上記1回の強制オンオフ動作時の強制オンオフ時間(オン時間及びオフ時間の合計時間)との除算によって求めることができる。つまり、強制オンオフ動作が繰り返し行われた場合の積算オン時間が、上記平衡時限界電流Io(定電流)の溶断時間t1を超えない範囲でカウント数Mを定めればよいのである。
【0062】
このように、過電流異常時と短絡異常時とで、同一周期で、かつ、各電流異常毎の閾値電流値(Ia,Ib)に応じたデューティ比(Da,Db)で強制オンオフ動作を実行することで、いずれの電流異常が発生しても、共通のMbitカウンタ回路71のカウンタ数に基づいて2次遮断動作を実行できるのである。即ち、本実施形態に係る電力供給制御装置10は、電流異常を検出して自己復帰可能な1次遮断動作を行う自己保護機能を有するとともに、その電流異常によって電線等に熱量が蓄積されて焼損する前に自己復帰不能な2次遮断動作を行うヒューズ機能(外部回路保護機能)を有するのである。
【0063】
(4)温度センサ及び過熱異常検出回路
さて、本実施形態の半導体スイッチ素子11には、図7に示す過熱異常検出のための回路(温度センサ80及び過温度検出回路48)も収容されている。同図に示すように、電源ライン+Bと接地ラインとの間には、温度センサ(温度検出素子)80と、定電流源81とが直列接続されている。温度センサ80は、例えばパワーMOSFET15のチャネル温度に応じた端子間電圧となる。また、電源ライン+Bと接地ラインとの間には例えば1対の抵抗82,83を直列接続してなる分圧回路が接続されている。更に、互いに直列接続されたスイッチ素子としてのFET84(バイポーラトランジスタであってもよい)及び抵抗85が、抵抗83に対して並列接続されている。
【0064】
そして、温度センサ80と定電流源81との接続点Aの電圧レベルがコンパレータ86の正入力端子に入力され、抵抗82と抵抗83との接続点Bの電圧レベルがコンパレータ86の負入力端子に入力される。コンパレータ86の出力は、スイッチ素子としてのFET87(バイポーラトランジスタであってもよい)の制御入力端子(ゲート)に接続されている。このFET87は、電源ライン+Bと接地ラインとの間で定電流源88と直列接続されており、これらFET87と定電流源88との接続点Cの電圧レベルがFET84の制御入力端子(ゲート)に与えられるようになっている。
【0065】
このような構成により、過熱異常になる前にはFET84はオフしており、抵抗82及び抵抗83に電流が流れて接続点Bがその分担電圧に応じた電圧レベルV1(図8に示す第1閾値温度T1に対応)となり、これがコンパレータ86の負入力端子に第1閾値V1として与えられる。このとき、接続点Aの電圧レベルは、第1閾値V1を下回っており、コンパレータ86はオフしており、FET87はオンして接続点Cの電圧レベルがハイレベルとなっている。
【0066】
これに対して、パワーMOSFET15に例えば大電流が流れて過熱状態になると、接続点Aの電圧レベルは、第1閾値V1を上回り、コンパレータ86がオンし、FET87がオフして接続点Cの電圧レベルがローレベルとなる。本実施形態では、このローレベルとなった信号が第3異常信号OTとして、上記保護用論理回路40に与えられる。この第3異常信号OTは、過熱異常状態を示す信号として用いられる。そして、このとき、FET84はオンして抵抗82からの電流は抵抗83と抵抗85とに分流し、接続点Bが上記第1閾値V1よりも低い第2閾値V2((図8に示す第2閾値温度T2に対応)に変位する。そして、パワーMOSFET15の温度が下がってきて接続点Aの電圧レベルが第2閾値V2を下回ったときに再びコンパレータ86がオフして第3異常信号OTの出力が停止される。
【0067】
そして、上述したように、第3異常信号OTが保護用論理回路40に与えられたときは、Nbitカウンタ回路70がカウントを開始し、それとほぼ同時にRS−FF74がセット状態となりパワーMOSFET15等をオフして強制的に自己復帰可能な遮断動作をさせる。そして、過熱異常が解消したら直ぐに復帰させるわけではなく、10ms経過後に、過熱異常が解消されていればパワーMOSFET15等をオンして復帰させ、過熱異常が解消していなければ1次遮断動作を維持する(図8参照)。
【0068】
要するに、本実施形態では、パワーMOSFET15に対して、過熱状態となっても少なくとも10ms(「基準時間」に相当)間隔でしか強制オンオフ動作はされないため、例えば放熱性の高い周囲環境であっても、高周期でのチャタリング現象を防止できる(図8(B)参照)。
【0069】
また、過熱異常により1次遮断動作がされ、その10ms(Nbitカウンタ回路70がオーバフロー)後に、なお過熱異常が検出されたときは、パワーMOSFET15の復帰を行わず、かつ、Mbitカウンタ回路71のカウントも行われない。一方、過熱異常が検出されなかったときは、パワーMOSFET15を通電状態に復帰させ、再び過熱異常が検出されたときに再び1次遮断動作を行う。このときMbitカウンタ回路71のカウントが行われる。
このように過熱状態が断続的に検出されてMbitカウンタ回路71がオーバフローしたときにもパワーMOSFET15等に2次遮断動作をさせる構成であり、過熱状態に基づく外部回路の焼損も防止できる。即ち、本実施形態に係る電力供給制御装置10は、電流異常だけでなく過熱異常によっても電線等に熱量が蓄積されて焼損する前に自己復帰不能な2次遮断動作を行うヒューズ機能(外部回路保護機能)を有するである。なお、他の方法として、過熱状態が断続的に検出されたときにおけるパワーMOSFET15の強制オンオフ動作時における強制オンオフ時間を積算し、その積算時間が積算閾値に達したときに2次遮断動作を行う構成であってもよい。
【0070】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0071】
(1)上記実施形態に対して、過熱異常に基づく自己保護機能のみを有する構成であってもよい。また、Mbitカウンタ回路71を取り除き、ヒューズ機能を有しない構成であってもよい。
【0072】
(2)1次遮断動作や2次遮断動作の実行を外部に報知する報知手段としては、例えばパワーMOSFET15またはセンスMOSFET16のソース電位レベルに基づき信号出力する構成が考えられる。但し、この場合、その信号出力のための信号ラインが新たに必要となる。
【0073】
(3)上記実施形態では、基準時間は一定であったが、必ずしても一定である必要はない。
【0074】
(4)上記実施形態では、過熱異常検出の場合の強制オンオフ動作時におけるパワーMOSFET15の通電時間は一定としたが、一定でない構成であってもよい。この場合、各強制オンオフ動作時の通電時間を通算し、この積算値が積算閾値に達したことを条件に2次遮断動作させる構成であってもよい。
【0075】
(5)上記実施形態では、2つの電流異常(短絡異常、過電流異常)に対応して2つの閾値電流値Ia,Ibを設けた構成としたが、これに限らず、1つ又は3つ以上の電流異常に対して複数レベルの閾値電流値を設けて、各電流異常を検出構成であってもよい。
【0076】
(6)上記実施形態では、短絡異常時と過電流異常時とで強制オンオフ動作時の各閾値電流値×デューディ比を等量として、1つのMbitカウンタ回路71で積算して外部回路保護(ヒューズ)機能を実行させる構成としたが、これに限らず、各電流異常について、その閾値電流値とデューティ比とに基づきその強制オンオフ時間を独立的に積算する構成であってもよい。この場合には、Mbitカウンタ回路71に相当するカウンタ手段が複数必要となる。また、実際の強制オンオフ時間を積分回路等を用いて積算する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の電力供給制御装置の全体構成を例示するブロック図
【図2】図1の電力供給制御装置の過電流検知回路(異常検出回路)の構成を主として例示する回路図
【図3】パワーMOSFETのドレイン−ソース間の電圧と、各電流との関係を示す図
【図4】保護回路を概念的に例示するブロック図
【図5】制御信号S4について説明する説明図
【図6】発煙特性について説明する説明図
【図7】過熱異常検出のための回路構成図
【図8】過熱異常検出とパワーMOSFETのオンオフ状態との関係を説明するためのタイムチャート
【符号の説明】
【0078】
10…電力供給制御装置
11…半導体チップ
13…過電流検知回路(電流異常検出回路)
12…外付け抵抗
14…第2外付け抵抗
15…パワーMOSFET(パワーFET、半導体スイッチ)
16…センスMOSFET(センスFET、電流検出手段)
38…ツェナーダイオード
40…保護用論理回路(自己保護回路、負荷保護回路)
48…過温度検出回路(過熱異常検出回路)
80…温度センサ(温度検出手段)
P1…入力端子
P3…出力端子
P4…外部端子
Ia…第1閾値電流(第1閾値電流値)
Ib…第2閾値電流(第2閾値電流値)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷への通電を行う半導体スイッチと、
前記半導体スイッチの温度を検出する温度検出手段と、
前記温度検出手段での検出温度と閾値温度との比較に基づき温度の異常検出の判断を行う過熱異常検出回路と、
前記過熱異常検出回路が前記温度異常検出したことを条件に、前記半導体スイッチに強制的に自己復帰可能な1次遮断動作をさせる自己保護回路と、を備える電力供給制御装置であって、
前記自己保護回路は、前記過熱異常検出回路が前記異常検出し前記1次遮断動作をさせた後、基準時間待った後に、前記過熱異常検出回路の判断結果に基づき前記半導体スイッチに通電状態への復帰または前記1次遮断動作をさせることを特徴とする電力供給制御装置。
【請求項2】
前記過熱異常検出回路が前記異常検出したときに間欠的に繰り返される強制オンオフ動作時における前記半導体スイッチの強制オンオフ動作時間を積算し、その積算時間が積算閾値に達したことを条件に前記半導体スイッチに自己復帰不能な2次遮断動作を実行させる負荷保護回路を備えていることを特徴とする請求項1に記載の電力供給制御装置。
【請求項3】
前記半導体スイッチに流れる電流量を検出する電流検出手段と、
前記半導体スイッチの通電時において前記電流検出手段での検出値と閾値電流値との比較に基づき前記半導体スイッチに流れる電流の異常検出を行う電流異常検出回路と、を備え、
前記自己保護回路は、前記半導体スイッチに対し、更に、前記電流異常検出回路又は前記過熱異常検出回路が異常検出したことを条件に前記1次遮断動作をさせ、その後に通電状態に復帰させてこのときに前記電流異常検出回路又は前記過熱異常検出回路が異常検出したことを条件に再度前記1次遮断動作をさせる、強制オンオフ動作を間欠的に実行する構成とされ、
前記負荷保護回路は、前記強制オンオフ動作の実行時における前記半導体スイッチの強制オンオフ動作時間を積算し、その積算時間が積算閾値に達したことを条件に前記2次遮断動作をさせることを特徴とする請求項2に記載の電力供給制御装置。
【請求項4】
前記半導体スイッチと、前記温度検出手段と、前記過熱異常検出回路と、前記自己保護回路と、前記負荷保護回路と、前記電流検出手段と、前記電流異常検出回路とは、ワンチップ又は複数チップでワンパッケージ内に収容されていることを特徴とする請求項3に記載の電力供給制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−158122(P2006−158122A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−346904(P2004−346904)
【出願日】平成16年11月30日(2004.11.30)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】