説明

電動パーキングブレーキシステム

【課題】張力センサによって検出された張力を利用できない異常が検出された場合であっても、パーキングブレーキを解除可能とする。
【解決手段】電動パーキングブレーキシステムにおいて、異常が検出された場合であっても、電動モータの作動が可能である場合には、ブレーキ解除要求に応じてブレーキの解除制御が行われる(S6〜8)。その場合に、張力センサの正常時には、張力センサの検出値を使用して、正常時と同様にブレーキ解除制御が行われ(S7)、張力センサの異常時には、モータに流れる実際の電流に基づいてブレーキ解除制御が行われる(S8)。張力センサの異常時にもブレーキを解除することが可能となり、運転者は、速やかに車を移動させることが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動パーキングブレーキシステムにおける押付力の制御に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動パーキングブレーキシステムにおいて軽微な異常が検出された場合に、ブレーキの作動は禁止されるが、解除は許可されることが記載されている。異常が検出されても、電動モータの制御が可能である場合(電動モータが作動可能であり、かつ、張力センサが正常である場合)には、解除要求に応じてブレーキの解除制御が行われるのである。
【特許文献1】特開2006−123797号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、張力センサの異常(張力センサによって検出された張力を利用できなくなる異常)が検出された場合にも、ブレーキ解除可能な電動パーキングブレーキシステムを得ることである。
【課題を解決するための手段および効果】
【0004】
請求項1に記載の電動パーキングブレーキシステムは、(i)(a)摩擦面を有して車輪と共に回転する回転体と、非回転体に相対移動可能に取り付けられた摩擦材と、その摩擦材を前記回転体の摩擦面に押し付ける押付機構とを含むブレーキと、(b)電動モータと、(c)その電動モータの回転軸の回転を出力部材の直線移動に変換する運動変換装置と、(d)一端部において、前記運動変換装置の出力部材に連結されるとともに、他端部において、前記押付機構に連結されたケーブルと、(e)前記電動モータに電流が供給されない状態で、前記ブレーキにおける前記摩擦材の前記摩擦面への押付力を保持する保持機構とを含む電動パーキングブレーキ機構と、(ii)前記ケーブルに加えられる張力を検出する張力センサと、(iii)前記ブレーキの押付力と前記ケーブルの張力との関係と、押付力の目標値とに基づいて目標張力を取得し、前記電動モータの制御により、前記張力センサによって検出された張力をその目標張力に近づける張力制御装置と、(iv)前記張力センサによって検出された張力値を、前記張力制御装置において利用できなくなる異常を検出する異常検出装置と、(v)その異常検出装置によって前記異常が検出された場合において、前記ブレーキの作用中にブレーキ解除要求があった場合に、前記電動モータに流れる電流に基づいて、前記ブレーキの解除を制御する異常時ブレーキ解除装置とを含むものとされる。
電動パーキングブレーキ機構において、電動モータが作動させられると、電動モータの回転軸の回転が出力部材の直線運動に変換されてケーブルが引っ張られる。ブレーキにおいて、押付機構により摩擦材が摩擦面に押し付けられて、ブレーキが作動させられる。張力センサによってケーブルの実際の張力が検出され、検出された張力が目標張力となるように電動モータに供給される電流が制御され、それによって、ブレーキの押付力が制御される。ブレーキにおける押付力は、電動モータに電流が供給されなくても保持機構により保持される。
また、本電動パーキングブレーキシステムにおいては、電動モータが作動可能であり、かつ、張力センサによって検出された張力を利用できなくなる異常が検出された場合には、電動モータへの電流供給の制御が電動モータに流れる電流に基づいて行われる。その結果、張力センサによる検出値を利用できなくなる異常が起きても、ブレーキの解除制御を行うことが可能となる。
【0005】
請求項2に記載の電動パーキングブレーキシステムにおいては、前記異常時ブレーキ解除装置が、前記電動モータに流れる電流が予め定められた設定値に達するまで前記電動モータへの供給電流を制御し、前記電動モータに流れる電流が予め定められた設定値に達すると、前記電動モータへの電流供給を停止する異常時電流制御部を含むものとされる。
本電動パーキングブレーキシステムにおいては、電動モータに流れる電流値が設定値以上となった場合に、電動モータが停止させられる。ブレーキの解除制御において、出力部材が移動端に達した状態(ケーブルが緩められる側の端部に達し、これ以上、ケーブルを緩める方向に移動できない状態)で、電動モータに電流が供給されていると、電動モータに流れる電流が増加し、設定値(ロック電流)以上となることが知られている。この、電動モータに流れる電流が設定値以上になったことが、電動モータへの供給電流の終了条件として利用されるのであり、電動モータに流れる電流が設定値以上になると、電動モータが停止させられる。また、この場合には、ケーブルの張力が0で、ブレーキが解除されたと考えることができる。
それに対して、電動モータに流れる電流が設定値より小さい間は、出力部材が移動途中にあるのであり、この間は、電動モータへの供給電流が制御される。電動モータへの供給電流は、電動パーキングブレーキシステムが正常である場合と同様に制御されるようにしても、異なる態様で制御されるようにしてもよい。例えば、正常である場合より、電動モータの回転速度が小さくなるように(出力部材の移動速度が小さくなるように)制御されるようにすることができる。
請求項3に記載の電動パーキングブレーキシステムにおいては、前記異常時ブレーキ解除装置が、前記異常検出装置によって前記異常が検出された後の、前記ブレーキ解除要求が1回目の要求である場合に、その要求に応じて、前記電動モータへの電流供給を制御することによって前記ブレーキを解除し、そのブレーキ解除要求が2回目以降の要求である場合には、それに応じて、前記電動モータへの電流供給の制御を行わない限定的ブレーキ解除部を含むものとされる。
ブレーキ作用中にブレーキ解除要求があった場合には、ブレーキの解除制御が行われるのであるが、異常が検出された後には、1回目の要求は受け入れられるが、2回目以降の要求は拒否される。
通常、異常時には、ブレーキの作動は禁止されるので、2回以上ブレーキの解除要求が出されることはないはずである。しかし、例えば、複数回連続して、ブレーキの解除要求が出される場合(例えば、運転者によってブレーキの解除を指示するスイッチ操作が行われる場合)がある。その場合に、張力センサの異常等により、ケーブルの張力が0であっても0より大きい値として検出される(誤ってブレーキの作用中であるとされる)と、ブレーキの解除要求毎に、電動モータに電流が供給されるおそれがある。出力部材が移動端にある場合に、電動モータに電流が供給されることは望ましいことではない。
一方、電動モータに流れる電流に基づいてブレーキの解除制御が行われれば、車両を移動させることは可能である。
そこで、本電動パーキングブレーキシステムにおいては、異常検出後の、2回目以降のブレーキ解除要求に対して、電動モータに電流が供給されないようにされている。
【実施例】
【0006】
本発明の一実施例である電動パーキングブレーキシステムを図面に基づいて詳細に説明する。
図1において、符号10は電動モータを示し、符号12はクラッチ付き運動変換機構を示す。クラッチ付き運動変換機構12は、電動モータ10の出力軸の回転を出力部材の直線運動に変換するとともに、出力部材に加えられる力によって電動モータ10が回転させられることを防止する。また、符号14,16は左右後輪を示し、符号18,20は車輪14,16にそれぞれ設けられたパーキングブレーキを示す。パーキングブレーキ18,20とクラッチ付き運動変換機構12とは、それぞれ、ケーブル22,24によって連結されている。ケーブル22,24が、電動モータ10の作動により引っ張られると、パーキングブレーキ18,20が作用する状態とされる。本実施例においては、電動モータ10,クラッチ付き運動変換機構12,ケーブル22,24、パーキングブレーキ18,20等により電動パーキングブレーキ機構30が構成されている。
【0007】
クラッチ付き運動変換機構12は、図2に示すように、ギヤ列40,クラッチ42,ねじ機構44等を含む。
ギヤ列40は、複数のギヤ46,48,50から成る。ギヤ46には、電動モータ10の出力軸52(ギヤ)に噛合され、ギヤ46の回転が、ギヤ48を経てギヤ50に伝達される。ギヤ50の電動モータ10とは反対側の端面には、軸線方向と平行に突出する駆動伝達部54が設けられている。
クラッチ42は、一方向クラッチであり、図3に示すように、ハウジング60と、そのハウジング60の内周側に設けられたコイルスプリング62と、クラッチ42の出力軸64と一体的に回転可能なロータ66とを含む。コイルスプリング62は、巻径が弾性的に僅かに収縮させられた状態でハウジング60に嵌合されており、それの外周面がハウジング60の内周面に密着し、素線の端部68,70が、それぞれ、内周側に向かって突出させられた状態で設けられている。また、ギヤ50の駆動伝達部54が2つの端部68,70で挟まれた2つの空間の一方に位置し、ロータ66が他方に位置する。
【0008】
電動モータ10の回転に伴ってギヤ50が回転すると、駆動伝達部54が端部68,70のいずれか一方に当接し、コイルスプリング62が巻き締められてハウジング60の内周面とスプリング62の外周面との間の摩擦力が小さくなる。それによって、コイルスプリング62,ロータ66が回転可能となり、出力軸64を回転させる。出力軸64はギヤ50と一体的に回転させられるのであり、クラッチ42によって、電動モータ10の回転が出力軸64に伝達されることになる。
電動モータ10に電流が供給されない状態において、出力軸64にトルクが加わると、ロータ66が端部68,70のいずれか一方に当接し、それによって、コイルスプリング62が拡径させられる。コイルスプリング62の外周面とハウジング60の内周面との間の摩擦力が大きくなり、コイルスプリング62の回転は阻止される。クラッチ42によって、出力軸64のトルクのギヤ50への伝達が阻止され、電動モータ10に電流が供給されない状態において、出力軸64に加えられるトルクによって電動モータ10が回転させられることはないのである。
【0009】
ねじ機構44は、ハウジング80と、軸線Lと平行な方向に延びた雄ねじ部材82と、雄ねじ部材82に螺合させられた図示しないナットと、ナットに軸線M回りに相対回動可能に取り付けられたイコライザ84とを含む。雄ねじ部材82は、一対のラジアルベアリング85(他方は図示は省略する)、ニードルスラストベアリング86を介して、ハウジング80に相対回転可能に支持される。イコライザ84の両アームには、それぞれ、ケーブル22,24のインナケーブル87が連結されている。イコライザ84の本体には係合突部88が設けられ、図示は省略するが、ハウジング80に、軸線Lと平行な方向に設けられたガイド部に係合させられる。その結果、イコライザ84は、ハウジング80に、軸線Lを中心とした相対回転不能、軸線Lと平行な方向に相対移動可能、かつ、係合突部88の回り(軸線Mの回り)に相対回動可能となっている。
【0010】
イコライザ84は、図2に実線で示す位置と二点鎖線で示す位置との間で、ハウジング80に対して相対移動可能とされており、イコライザ84の相対移動に伴ってケーブル22,24のインナケーブル87が引っ張られたり、緩められたりする。また、イコライザ84は、2つのケーブル22,24のインナケーブル87に加えられる張力(以下、単にケーブル22,24の張力という)が同じになるように、係合突部88の回り(軸線Mの回り)に回動させられる。
なお、ハウジング80の内部には、ケーブル24の張力を検出する張力センサ90が設けられている。イコライザ84により、ケーブル22,24に加えられる張力は同じ大きさとされるため、張力センサ90によって検出されたケーブル24に加えられた張力は、ケーブル22に加えられた張力でもある。
また、符号92は異常時解除装置を示す。異常時解除装置92は、電動モータ10の異常時等に、パーキングブレーキ18,20を解除するための装置である。ケーブル93をギヤ95の内部に押し込み、手動で、図示しないグリップ部を回転させると、ギヤ95が回転させられる。そのギヤ95の回転がギヤ46、48を介してギヤ50に伝達され、ギヤ50の回転により、イコライザ84がケーブル22,24を緩める向きに移動させられる。それによって、パーキングブレーキ18,20が解除される。
【0011】
パーキングブレーキ18,20は、図4,5に示すように、本実施例においては、デュオサーボ型のドラムブレーキである。したがって、以下、必要に応じて、パーキングブレーキ18,20をドラムブレーキと称することがある。また、図4において、符号97はブレーキディスクを示し、符号98はキャリパを示し、これらブレーキディスク97とキャリパ98とは、共同してサービスブレーキとしてのディスクブレーキ99を構成する。パーキングブレーキ18,20としてのドラムブレーキは、ブレーキディスク97の内周側に設けられているのであり、本実施例においては、ドラムインディスクブレーキとなっている。ドラムブレーキ18,20は、それそれ、構造が同じものであるため、ドラムブレーキ18について説明し、ドラムブレーキ20についての説明を省略する。
【0012】
ドラムブレーキ18は、図示しない車体に取り付けられた非回転部材としてのバッキングプレート100と、内周面に摩擦面102を備えて車輪14と共に回転するドラム104とを備えている。バッキングプレート100の一直径方向に隔たった2箇所には、それぞれアンカ部材106と中継リンクとしてのアジャスタ108とが設けられている。アンカ部材106はバッキングプレート100に固定されており、アジャスタ108はフローティング式とされている。それらアンカ部材106とアジャスタ108との間には、各々円弧状を成す一対のブレーキシュー110a,110bがドラム104の内周面に対面するように取り付けられている。一対のブレーキシュー110a,110bは、シューホールドダウン装置112a,112bによってバッキングプレート100にそれの面に沿って移動可能に取り付けられている。なお、バッキングプレート100の中央に設けられた貫通穴は、図示しないアクスルシャフトの貫通を許容するためのものである。
【0013】
一対のブレーキシュー110a,110bは、一端部同士がアジャスタ108により作動的に連結される一方、各他端部がアンカ部材106と当接して回動可能に支持されるようになっている。一対のブレーキシュー110a,110bの一端部同士は、アジャスタスプリング114によりアジャスタ108に当接する向きに付勢されており、各他端部はリターンスプリング115によりアンカ部材106に向かって付勢されている。各ブレーキシュー110a,110bの外周面に摩擦材としてのブレーキライニング116a,116bが保持され、それら一対のブレーキライニング116a,116bがドラム104の摩擦面102に接触させられることにより、それらブレーキライニング116a,116bとドラム104との間に摩擦力が発生する。アジャスタ108は、一対のブレーキシュー110a,110bの摩耗に応じて一対のブレーキライニング116a,116bとドラム104との隙間を調整するために操作される。
【0014】
図5に押付機構120を示す。押付機構120は、ブレーキレバー122と、ストラット124とを含み、アンカ部材106をバッキングプレート100に固定するボルト138、140の頭部に相対移動可能に支持されている。ブレーキレバー122,ストラット124は、それぞれ、板状部材であり、ストラット124を構成する2枚の板材の間にブレーキレバー122が挟まれた状態で、ブレーキレバー122とストラット124とがそれらの一端部において連結軸126の回りに相対回動可能に連結されている。ブレーキレバー122において、連結軸126からバッキングプレート100側に隔たった部分に設けられた係合部128にブレーキシュー110aが係合させられ、連結軸126からバッキングプレート100に平行な方向において隔たった端部に設けられた係合部130にケーブル22のインナケーブル87が連結されている。インナケーブル87は、バッキングプレート100に設けられた貫通孔132に一端が固定されたアウタチューブ134に案内されて、バッキングプレート100のブレーキシュー110等が配設された側とは反対側に伸び出させられている。
また、ストラット124において、連結軸126とは反対側の端部に設けられた係合部135にブレーキシュー110bが係合させられている。
なお、係合部130は、図示する状態においては、貫通穴132の(ケーブル22のバッキングプレート100への固定端の)中心線Nより、後退回転方向側に位置する。また、後述するように、押付機構120が円周方向に相対移動させられると、それに伴って係合部130も相対移動させられるが、設計上、中心線Nより前進回転方向側の位置まで相対移動させられることがないようにされている。
【0015】
押付機構120は、被支持部136,137においてボルト138、140の頭部に支持されており、インナケーブル87が引っ張られると、ブレーキレバー122が被支持部136とボルト138の頭部との接触点まわりに回動し、その結果、連結軸126およびストラット124が図5において右方へ移動させられ、ストラット124がブレーキシュー110bを右方へ押す。その際、ブレーキシュー110bからの反力がストラット124,連結126およびブレーキレバー122を介してブレーキシュー110aに伝達され、ブレーキシュー110aが図5において左方へ押される。ブレーキシュー110a,110bには、それぞれ、同じ大きさの拡開力が加えられて、拡開させられるのであり、その結果、ブレーキライニング116a,116bがドラム104の内周面102に互いに同じ大きさの力で押し付けられる。なお、ケーブル22に加えられた引張力は、ブレーキレバー122のレバー比に応じて倍力され、その倍力された力から、被支持部136,137とボルト138,140の頭部との間の摩擦力に応じた力を差し引いた大きさの拡開力として、ブレーキシュー110a,110bに加えられる。
【0016】
ドラム104にトルクが加えられている状態で、ドラムブレーキ18が作動させられると、ドラム104からブレーキシュー110a,110bに円周方向の力が加えられ、ブレーキシュー110a,110bの一方がアンカ部材106に当接させられ、いわゆるデュオサーボ効果が生じる。前進回転方向(車両が前進する場合の車輪の回転方向)Pのトルクが加えられると、自己サーボ効果によりブレーキシュー110aが拡開力のみによる場合より大きな力でドラム104に押し付けられる(接触面圧が増大させられる)。この自己サーボ効果による円周方向の力が拡開力と共に、アジャスタ108によってブレーキシュー110bに伝達され、ブレーキシュー110bはブレーキシュー110aよりも更に強くドラム104に押し付けられる。ブレーキシュー110bがアンカ部材106に当接させられ、制動トルクが発生させられる。後退回転方向(車両が後退する場合の車輪の回転方向)Qのトルクが加えられた場合には、逆に、ブレーキシュー110aがブレーキシュー110bよりも強くドラム104に押し付けられる。この場合のブレーキシュー110a,110bのドラム104への押付力は、ケーブル22の張力の大きさに応じた大きさとなるのであり、これら張力と制動可能トルクとの間には、図6に示す曲線で表される関係がある。車両が停止状態にあり、かつ、ブレーキライニング116a,116bとドラム内周面102との間の摩擦係数が一定である場合には、制動可能トルク、摩擦力、押付力、拡開力の間には一定の関係が成立し、拡開力が大きくなれば、押付力、摩擦力、制動可能トルクも大きくなる関係にある。したがって、例えば、張力と拡開力との関係に基づけば、張力と押付力との関係、張力と摩擦力との関係、張力と制動可能トルクとの関係を取得することが可能となる。
【0017】
電動モータ10は、図1に示すように、電動パーキングブレーキECU200の指令に基づいて制御される。電動パーキングブレーキECU200は、コンピュータを主体とするものであり、入出力部202,実行部204,記憶部206等を含む。入出力部202には、パーキングブレーキスイッチ(以下、単に、パーキングスイッチと略称する)210,張力センサ90(図2参照),電流検出部211等が接続されるとともに、駆動回路212を介して電動モータ10が接続される。電動モータ10が電動パーキングブレーキのアクチュエータである。
電動パーキングブレーキECU200は、CAN214を介して、車両に設けられた他のコンピュータ、例えば、スリップ制御ECU(VSCECU)220,エンジン・トランスミッションECU(ETCECU)222、イグニッションスイッチ224、報知装置225等に接続される。また、スリップ制御ECU220には前後加速度センサ226、車輪速センサ227が接続され、エンジン・トランスミッションECU222にはシフト位置センサ228が接続されており、前後加速度、シフト位置、車輪速(あるいは車速)等の情報がスリップ制御ECU220,エンジン・トランスミッションECU222,CAN214を介して、電動パーキングブレーキECU200に供給される。
【0018】
パーキングスイッチ210は、パーキングブレーキ18,20の作動(以下、パーキングブレーキ18,20の作動をロックと称することがある)を指示する場合、解除(以下、パーキングブレーキ18,20の解除をリリースと称することがある)を指示する場合に、操作されるスイッチであり、例えば、ロック側操作部とリリース側操作部とを有するものとすることができる。ロック側操作部が操作された場合(以下、ロック指示操作が行われた場合と略称する)にはロック要求があるとされ、リリース側操作部が操作された場合(以下、リリース指示操作が行われた場合と略称する)にはリリース要求があるとされる。
張力センサ90は、前述のように、ケーブル22,24の張力を検出するものであり、図2の運動変換機構12のハウジング80の内部に設けられる。
電流検出部211は、電動モータ10に実際に流れる電流値を検出するものである。電動モータ10に流れる電流値に基づけば、電動モータ10の作動状態がわかる。
報知装置225は、電動パーキングブレーキシステムの異常等を報知するものであり、例えば、ディスプレイを含むものとすることができる。その他、音声作成部を含むものとしたり、発光部を含むものとしたりすることもできる。報知装置225は、警報装置としての機能も有する。
シフト位置センサ228は、シフト操作部材230の位置を検出するものである。シフト操作部材230のシフト位置とトランスミッションのシフト位置とは同じであるのが普通であるため、トランスミッションのシフト位置を検出するものとすることもできる。
前後加速度センサ226は、車両の前後方向の加速度を検出するものであるが、本実施例においては、前後加速度に基づいて車両の傾斜角度が取得される。車両の傾斜角度は、車体が路面に平行な姿勢である場合には、車両が停止している路面の傾斜角度θと同じになる。
傾斜角度θは、車両の質量M(kg)、車両に斜面に沿って作用する力F(N)、重力加速度g(m/s2)、前後加速度センサ226による検出値G(m/s2)とした場合に、式
F=M・g・sinθ
G=g・sinθ
に従って取得される。
【0019】
本実施例において、電動パーキングブレーキシステムが正常である場合には、パーキングブレーキ18,20がパーキングスイッチ210の操作に応じて作動させられる。
パーキングスイッチ210のロック指示操作が行われた場合には、電動モータ10が正方向に回転させられる。ケーブル22,24が引っ張られ、パーキングブレーキ18,20が作動させられる。この場合の電動モータ10への電流供給は、ケーブル22,24に加えられる張力に基づいて制御される。パーキングブレーキ18,20による目標制動トルクが傾斜角度θ、シフト位置等に基づいて決定され、目標制動トルクと、図6に示す制動可能トルクと張力との間の関係とから、目標張力が求められる。そして、張力センサ90によって検出されたケーブル22,24の実際の張力が目標張力に近づくように、電動モータ10への供給電流が制御されるのである。パーキングブレーキ18,20において、ブレーキシュー110a,110bが拡開させられ、ドラム104の内周面に押し付けられる。それによって、パーキングブレーキ18,20が作動させられる。
パーキングスイッチ210のリリース指示操作が行われた場合には、電動モータ10が逆方向に回転させられる。張力センサ90によって検出されたケーブル22,24の実際の張力が設定値(停止しきい値)以下になると、電動モータ10へ電流が供給されなくなることにより、電動モータ10の作動が停止させられる。設定値は、0とすることができるが、0より大きい値(例えば、電動モータ10の慣性等を考慮して決まる値とすることができる)とすることもできる。パーキングブレーキ18,20において、リターンスプリング115により、ブレーキシュー110a,110bが縮径させられる。それによって、パーキングブレーキ18,20が解除される。
このように、張力センサ90によって検出されたケーブル22,24の張力に基づいて行われる電動モータ10への供給電流の制御を、張力センサ使用制御と称し、張力センサ使用制御モードが設定された場合に、行われる。
なお、電動パーキングブレーキシステムが正常である場合に、イコライザ84(ナット)がハウジング80に当接しないように、電動モータ10への電流供給が制御される。
【0020】
本実施例においては、電動パーキングブレーキシステムの異常の有無が検出され、異常が検出された場合には、その異常の内容に応じて電動モータ10が制御される。
異常の有無は、図10,11のフローチャートで表される異常検出プログラム1,2の実行により検出される。異常検出プログラム1,2は、それぞれ、予め定められた設定時間毎に実行される。
図10の異常検出プログラム1を表すフローチャートにおいて、ステップ101(以下、S101と略称する。他のステップについても同様とする)において、CAN214を介して情報が正常に受信されるか否かが判定され、S102において、張力センサ90が正常であるか否かが判定され、S103において、電動モータ10が正常であるか否かが判定され、S104において、その他の異常が有るか否か(断線等している箇所が有るか否か)が判定される。
具体的に、S101においては、CAN214を介して各センサ226,227,228による検出値を表す情報等が、予め定められた設定時間毎に受信されるか否かが判定される。正常に受信されない場合には、S105において、異常(軽微な異常)であるとされる。
S102において、張力センサ自体が正常であるか否か、張力センサ90から電動パーキングブレーキECU200に情報を送信可能な状態にあるか否か等が検出される。張力センサ90やハーネス関係が異常である場合には、S106において、張力センサ90の異常であるとされる。
S103においては、電動モータ10,駆動回路212等が正常で、電源線、信号線等が断線しておらず、電動モータ10が正常に作動可能であるか否かが判定される。正常に作動可能でない場合には、S103の判定がNOとなり、S107において、さらに、電動モータ10が作動不能であるか否かが判定される。電動モータ10の作動が正常でなくても、作動可能であれば、S108において異常(軽微な異常)であると判定され、作動不能である場合には、S109において作動不能異常であると判定される。
S104において、例えば、電動パーキングブレーキシステム内に設けられた1つ以上の電流計によって検出された電流値が正常範囲内にあるか否かが判定される。正常範囲内にない場合には、S110において、異常(軽微な異常)であるとされる。
【0021】
図11の異常検出プログラム2を表すフローチャートにおいて、S121において、電動モータ10が作動中であるか否かが判定される。ロック制御中である場合と、リリース制御中である場合とがある。電動モータ10が作動中である場合には、S122において、電動モータ10に流れる電流値等(電動モータ10の作動状態)が検出され、S123において、ケーブル22,24に加えられる張力が張力センサ90によって検出される。そして、S124において、張力と電動モータ10の作動状態との関係が正常な関係であるか否かが判定される。これらが互いに対応する関係にある場合には、S124の判定がYESとなり、正常であるとされる。正常な関係にない場合には、S124の判定がNOとなり、さらに、異常の内容が検出される。
例えば、ケーブル22,24の張力が電動モータ10の作動状態に対して過大で、通常の作動状態ではあり得ない大きさである場合等には、S125の判定がYESとなり、S126において、張力センサ90の異常であるとされる。
また、電動モータ10が正方向に回転するように電流(ケーブル22,24を引っ張るための電流)が供給されているにも係わらず、張力値が0のままである場合等には、S127の判定がYESとなり、S128において、電動モータ10の作動不能異常であるとされる。この場合には、ケーブル22,24が切断されている可能性もある。それ以外の場合には、S129において、異常(軽微な異常)であるとされる。
【0022】
このように、本実施例においては、異常検出プログラム1,2の実行により、軽微な異常(電動モータ10の作動可能な異常)、電動モータ10の作動不能異常、張力センサ90の異常が区別して検出される。なお、S106,126において、張力センサ90の異常と検出された場合には、前述のように、張力センサ自体の異常、ハーネス関係の異常等が含まれ、厳密にいえば、張力センサ90による検出値を電動モータ10への供給電流の制御に利用できなくなった異常である。以下、張力センサ90による検出値を利用できなくなった異常(張力センサ90自体の異常とは限らないが)を、張力センサ90の異常と略称する。
【0023】
異常が、電動モータの作動不能異常でない場合には、パーキングブレーキ18,20の作動(ロック)は禁止されるが、解除(リリース)は許可される。すなわち、張力センサ90の異常が検出されても、ブレーキ18,20の解除は許可されるのであり、本実施例においては、電動モータ10に流れる電流に基づいて電動モータ10への供給電流が制御され、パーキングブレーキ18,20が解除される。イコライザ84(イコライザ84が固定されたナット)が移動端(ケーブル22,24の緩み側の端部)にあり(ハウジング80、あるいは、ハウジング80に設けられたストッパに当接した状態にあり)、それ以上、その方向へ移動できない状態で、電流が供給されていると、電動モータ10に流れる電流が大きくなり、設定値(ロック電流値と称する)以上となることが知られている。そこで、電動モータ10に流れる電流がロック電流値に達すると電動モータ10への電流の供給が停止させられる。
また、電動モータ10に流れる電流がロック電流値より小さい間は、電動モータ10の回転速度が正常な場合より小さくなる大きさに制御される。
【0024】
図7のフローチャートで表される電動モータ制御プログラムは、予め定められた設定時間毎に実行される。S1において、異常(軽微な異常、モータ作動不能異常、張力センサ異常の少なくとも1つ)が検出されたか否かが判定される。検出されない場合には、判定がNOとなり、S2において、前述のように、張力センサ使用制御が実行される。張力センサ使用制御モードは、電動パーキングブレーキシステムが正常な場合に設定されるが、後述するように、異常である場合にも設定されることがある。
それに対して、異常が検出された場合には、S1の判定がYESとなり、S3において、電動モータ10の作動不能異常が含まれるか否かが判定される。電動モータ10の作動不能異常が含まれる場合には、ブレーキ18,20の作動も解除も行われることはない。
電動モータ10の作動不能異常でない場合には、S3の判定がNOとなり、S4において、解除要求があるか否か、すなわち、パーキングスイッチ210のリリース指示操作が行われたか否かが判定される。
リリース指示操作が行われた場合には、S4の判定がYESとなり、S5において、今回のリリース指示操作が異常が検出された後の第1回目の操作であるか否かが判定される。
1回目である場合には、そのリリース指示操作に応じてブレーキ解除が行われるのであるが、その場合には、S5の判定がYESとなり、S6において、張力センサ90の異常が含まれるか否かが判定される。
【0025】
張力センサ90の異常が含まれない場合には、S6の判定がNOとなり、S7において、張力センサ使用制御モードが設定され、張力センサ使用制御モードによってリリース制御が行われる。
図8のフローチャートで表されるように、S71において、張力センサ90による検出値が上述の停止しきい値(設定値)以下であるか否かが判定され、設定値以下でない場合には、S72において、制御指令値が作成される。制御指令値としての電流値は、電動パーキングブレーキシステムが正常である場合と同様に、すなわち、電動モータ10の回転速度がシステムが正常である場合と同じとなる大きさの電流値が制御指令値として作成されるのである。そして、S73において、制御指令値が駆動回路212に出力される。張力センサ90による検出値が停止しきい値より大きい間は、S71〜73が繰り返し実行され、電動モータ10が逆方向に、システムが正常である場合と同じ回転速度で回転させられる。そして、張力が停止しきい値以下になると、S71の判定がYESとなり、S74において、電流値が0である制御指令値が作成され、S75において、出力される。電動モータ10の停止指令が出力されるのである。
【0026】
それに対して、張力センサ90が異常である場合には、S6の判定がYESとなり、S8において、モータ電流使用制御モードが設定される。モータ電流使用制御は、電動モータ10に流れる実際の電流値に基づいて行われる電動モータ10への供給電流の制御であり、モータ電流使用制御モードが設定されると、実行される。
図9のフローチャートで表されるように、S81において、電流値がロック電流値以上であるか否かが判定され、ロック電流値より小さい間、S82において、電流値である制御指令値が作成されて、S83において、駆動回路212に出力される。S82において、制御指令値は、電動モータ10の回転速度が、電動パーキングブレーキシステムが正常である場合の回転速度より小さくなるように決められる。電流値がロック電流値より小さい間は、S81〜83が繰り返し実行され、電動モータ10は、逆方向に、正常時より小さい回転速度で回転させられる。電流値がロック電流値に達すると、S81の判定がYESとなり、S84、85においてモータ停止指令が出力される。
【0027】
それに対して、解除要求がない場合(運転者によってリリース指示操作が行われない場合)、あるいは、ロック指示操作が行われた場合には、S4の判定がNOとなる。この場合には、いずれにしても、電動モータ10が作動させられることはない。電動パーキングブレーキシステムの異常時には、ロック指示操作が行われても、ロック制御が行われることはないのである。
また、2回以上リリース指示操作が行われても、2回目以降の操作に対してはS5の判定がNOとなる。2回目以降のリリース指示操作に対しては電動モータ10に電流が供給されることがないのである。異常時には、ロック制御が行われないため、パーキングブレーキ18,20は解除状態にあるはずである。しかし、何らかの原因で、ケーブル22,24の張力が0より大きい場合や、張力センサ90の異常により0より大きいと誤って検出される場合があり、パーキングブレーキ18,20を解除するために電動モータ10に電流が供給されるおそれがある。しかし、異常時に、電動モータ10に電流が供給されること自体は望ましくない。また、一旦、リリース制御が行われれば、車両を移動させることは可能である。そこで、本実施例においては、2回目以降のリリース指示操作に対しては、電動モータ10に電流が供給されないようにしたのである。
このように、異常が検出された後、パーキングブレーキ18,20の解除が1回行われれば、それ以降は、ロック制御もリリース制御も行われることはないのであり、電動パーキングブレーキシステムが作動させられることはない。
なお、電動パーキングブレーキシステムの異常時には、そのことが運転者に報知される。
【0028】
このように、本実施例においては、張力センサ90が異常であっても、電動モータ10が作動可能であれば、パーキングブレーキ18,20の解除が許可される。張力センサ90が異常であってもリリース指示操作が行われれば、パーキングブレーキ18,20を解除させることができるのであり、車両を速やかに移動させることが可能となる。
また、その場合には、電動モータ10に流れる電流に基づいて解除制御が行われる。電動モータ10に流れる電流がロック電流値以上になったことが終了条件とされるため、張力センサ90によって検出された張力に基づかなくても、電動モータ10への供給電流を制御すること(停止条件を定めること)が可能となる。
さらに、電動モータ10の回転速度が小さくされるため、ブレーキの解除速度を小さくすることができ、それによって、運転者が異常に対処し易くなる。また、イコライザ84(ナット)の移動速度が小さくされるため、ハウジング80等に当接しても、当接時に生じる衝撃音を小さくし、振動を小さくすることができる。さらに、ハウジング80からねじ部材82に作用する力を小さくすることができるため、ねじ部材82の耐久性を向上させることが可能となる。
【0029】
以上のように、本実施例においては、電動パーキングブレーキECU200等の電動モータ制御プログラムを記憶する部分、実行する部分等により張力制御装置が構成される。また、電動パーキングブレーキECU200の、図10,11のフローチャートで表される異常検出プログラムを記憶する部分、実行する部分等により異常検出装置が構成される。また、異常検出装置のうちの、S102,106,125,126を記憶する部分、実行する部分等により張力異常検出部が構成される。さらに、電動パーキングブレーキECU200の図7のフローチャートで表される電動モータ制御プログラムのS1,3〜8を記憶する部分、実行する部分等により、異常時ブレーキ解除装置が構成される。
また、S8を記憶する部分、実行する部分等により異常時電流制御部が構成され、S5の判定がNOの場合に、電動モータ10に電流が供給されないようにされた部分等により限定的ブレーキ解除部が構成される。
張力制御装置は、押付力制御装置、張力依拠制御部でもある。また、異常時ブレーキ解除装置は、異常時ブレーキ解除部、異常時制御部でもある。さらに、電動パーキングブレーキECU200のS82を記憶する部分、実行する部分等により異常時減速部、回転速度低減部、張力異常時回転速度低減部が構成される。
【0030】
なお、張力センサ90の異常時には、電動モータ10への供給電流が予め定められた設定時間の間、供給されるようにすることができる。電動モータ10への電流供給開始時から設定時間の経過した後に、モータ停止指令が出力されるのである。この場合においても、張力センサ90の検出値を使用することなく、ブレーキ解除を行うことが可能となる。リリース制御開始時のイコライザ84の位置が取得できる場合には、その位置に応じて時間を決めることができる。
また、ドラムブレーキにおいて、アンカ部材106に加えられる力を検出するトルクセンサを設け、実際の制動トルク(押付力に対応)が目標制動トルクに近づくように、電動モータ10への供給電流が制御されるようにすることができる。そして、張力センサ90の異常時には、トルクセンサによる検出値に基づいて電動モータ10への供給電流が制御されるようにすることもできる。
さらに、上記実施例においては、張力センサ90の異常以外の異常時には、電動モータ10の回転速度が抑制されることがなく、正常時と同じ回転速度とされたが(S72)、S82における場合と同様に、回転速度が正常時より小さくされるようにすることもできる。電動パーキングブレーキシステムの何らかの異常時に、ブレーキの解除速度が正常時より小さくされることは望ましいことである。
また、電動パーキングブレーキシステムの異常時に、ロック作動が許容されるようにすることもできる。その場合において、張力センサ90が異常である場合には、電動モータ10に流れる電流に基づいて制御されるようにすることができる。
さらに、上記実施例における異常検出の態様は、一例であり、異常検出の内容等は、上記実施例におけるそれに限定されない。張力センサ90の異常、電動モータ10の作動不能異常、それ以外の異常が区別して検出されればよいのである。
【0031】
また、電動パーキングブレーキ機構の構造は、上記実施例におけるそれに限らない。例えば、運動変換機構12は、電動モータ10の出力軸に設けられたギヤに、ケーブル22,24の共通部分(イコライザが設けられた位置よりパーキングブレーキとは反対側の部分)を直接巻き付けた構造を成したものとすることもできる。ケーブルの共通部分は、ギヤの接線方向に延び、電動モータ10の回転により直線的に移動させられる(引っ張られたり、緩められたりする)ことになる。運動変換機構は、さらに、複数のギヤを含むものとすることができ、ウォーム、ウォームホイールを含むものとすることができる。その場合には、クラッチは不要となる。
また、ドラムブレーキは、ユニサーボ型のものとすることもできる。さらに、電動モータ10は超音波モータとすることもでき、その場合には、クラッチは不可欠ではない。さらに、パーキングブレーキはディスクブレーキとすることもできる。
本発明は、上述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例である電動パーキングブレーキシステム全体を示す図である。
【図2】上記電動パーキングブレーキシステムに含まれる電動モータおよび運動変換機構を表す一部断面図である。
【図3】上記運動変換機構のAA断面図(クラッチの断面図)である。
【図4】上記電動パーキングブレーキシステムに含まれるドラムブレーキの正面図である。
【図5】上記ドラムブレーキの押付機構の正面図である。
【図6】上記電動パーキングブレーキシステムに含まれる電動パーキングブレーキECUの記憶部に記憶された制動可能トルクと張力との関係であるテーブルを表すマップである。
【図7】上記電動パーキングブレーキECU200の記憶部に記憶された電動モータ制御プログラムを表すフローチャートである。
【図8】上記プログラムの一部を表すフローチャートである。
【図9】上記プログラムの別の一部を表すフローチャートである。
【図10】上記電動パーキングブレーキECU200の記憶部に記憶された異常検出プログラム1を表すフローチャートである。
【図11】上記電動パーキングブレーキECU200の記憶部に記憶された異常検出プログラム2を表すフローチャートである。
【符号の説明】
【0033】
10:電動モータ 12:クラッチ付き運動変換機構 18,20:パーキングブレーキ 22,24:ケーブル 30:電動パーキングブレーキ機構 90:張力センサ 200:電動パーキングブレーキECU 211:電流検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)摩擦面を有して車輪と共に回転する回転体と、非回転体に相対移動可能に取り付けられた摩擦材と、その摩擦材を前記回転体の摩擦面に押し付ける押付機構とを含むブレーキと、(b)電動モータと、(c)その電動モータの回転軸の回転を出力部材の直線移動に変換する運動変換装置と、(d)一端部において、前記運動変換装置の出力部材に連結されるとともに、他端部において、前記押付機構に連結されたケーブルと、(e)前記電動モータに電流が供給されない状態で、前記ブレーキにおける前記摩擦材の前記摩擦面への押付力を保持する保持機構とを含む電動パーキングブレーキ機構と、
前記ケーブルに加えられる張力を検出する張力センサと、
前記ブレーキの押付力と前記ケーブルの張力との関係と、押付力の目標値とに基づいて目標張力を取得し、前記電動モータの制御により、前記張力センサによって検出された張力をその目標張力に近づける張力制御装置と、
前記張力センサによって検出された張力値を、前記張力制御装置において利用できなくなる異常を検出する異常検出装置と、
その異常検出装置によって前記異常が検出された場合において、前記ブレーキの作用中にブレーキ解除要求があった場合に、前記電動モータに流れる電流に基づいて、前記ブレーキの解除を制御する異常時ブレーキ解除装置と
を含むことを特徴とする電動パーキングブレーキシステム。
【請求項2】
前記異常時ブレーキ解除装置が、前記電動モータに流れる電流が予め定められた設定値に達するまで前記電動モータへの供給電流を制御し、前記電動モータに流れる電流が予め定められた設定値に達すると、前記電動モータへの電流供給を停止する異常時電流制御部を含む請求項1に記載の電動パーキングブレーキシステム。
【請求項3】
前記異常時ブレーキ解除装置が、前記張力センサ異常検出装置によって前記張力センサの異常が検出された後の、前記ブレーキ解除要求が1回目の要求である場合に、その要求に応じて、前記電動モータへの電流供給を制御することによって前記ブレーキを解除し、そのブレーキ解除要求が2回目以降の要求である場合には、それに応じて、前記電動モータへの電流供給の制御を行わない限定的ブレーキ解除部を含む請求項1または2に記載の電動パーキングブレーキシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−68840(P2008−68840A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251802(P2006−251802)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】