説明

電子デバイス及びその製造方法

【課題】化学的、物理的に安定であり、使用に際しての外乱要因(例えば熱)に対しても性能が安定しており、更には、トランジスタとしての機能、発光素子としての機能、太陽電池として機能を融合し得る構成、構造を有する電子デバイスを提供する。
【解決手段】2端子型の電子デバイスは、第1電極31及び第2電極32、並びに、第1電極31と第2電極32の間に設けられた能動層33を備え、能動層20は、保護層で被覆された無機半導体微粒子から構成された複合材料の集合から成り、保護層は、無機半導体微粒子に結合した官能基を一端に有するアルキル鎖、及び、アルキル鎖の他端に結合した有機半導体分子から成り、無機半導体微粒子はn型導電性を有し、有機半導体分子はp型導電性を有し、能動層20への光の照射によって電力が生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電界効果型トランジスタや発光素子として機能し、あるいは又、太陽電池として機能する電子デバイス及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、有機分子の薄膜を用いた電子デバイスの開発が精力的に行われており、その中でも、有機トランジスタ、有機発光素子、有機太陽電池といった有機エレクトロニクスデバイス(以下、単に、有機デバイスと略称する場合がある)が注目を浴びている。これらの有機デバイスの最終的な目標として、低コスト、軽量、可撓性、高性能を挙げることができ、開発の鍵は、有機材料の物性にあると云われている。有機材料は、シリコンを中心とする無機材料と比較して、
(1)低温で、簡易なプロセスにて、大面積の有機デバイスを低コストで製造することができる。
(2)可撓性を有する有機デバイスを製造することが可能である。
(3)有機材料を構成する分子を所望の形態に修飾することで、有機デバイスの性能や物性を制御することができる。
といった種々の利点を有している。
【0003】
しかしながら、有機材料は酸化され易いものがあるし、今後の実用化に向けて、有機材料の化学的、物理的な安定性が十分ではなく、改善の余地があると云われている。このような観点から、最近、無機半導体材料が有する優れた安定性や物性と、溶液プロセスの適用が可能な有機半導体材料とを融合させた有機・無機のハイブリッド材料が注目されている。
【0004】
現在、このような有機・無機のハイブリッド材料の中でも、半導体ナノ粒子と共役系ポリマーとを混合したコンポジット材料が検討されており、太陽電池(例えば、非特許文献1:W. U. Huynh et. al. Science 2002, 295, 2425.、非特許文献2:W. J. E. Beek et. al. Adv. Func. Mater. 2005, 15, 1703. 参照)、発光素子(例えば、非特許文献3:V. L. Colvin et. al. Nature 1994, 370, 354.、非特許文献4:S. Coe et. al. Nature 2002, 420. 800.、非特許文献5:A. H. Mueller et. al. Nano Lett. 2005, 5, 1039. 参照)、電界効果型トランジスタ(例えば、非特許文献6:D. Yu et. al. Science 2003, 300, 1277.、非特許文献7:D. V. Talapin et. al. Science 2005, 310, 86. 参照)等、様々な分野での精力的な研究が進められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】W. U. Huynh et. al. Science 2002, 295, 2425.
【非特許文献2】W. J. E. Beek et. al. Adv. Func. Mater. 2005, 15, 1703.
【非特許文献3】V. L. Colvin et. al. Nature 1994, 370, 354.
【非特許文献4】S. Coe et. al. Nature 2002, 420. 800.
【非特許文献5】A. H. Mueller et. al. Nano Lett. 2005, 5, 1039.
【非特許文献6】D. Yu et. al. Science 2003, 300, 1277.
【非特許文献7】D. V. Talapin et. al. Science 2005, 310, 86.
【非特許文献8】M. A. Loi et. al. Adv. Func. Mat. 2006, 16, 41.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、半導体ナノ粒子と共役系ポリマーとを混合したコンポジット材料を薄膜状に形成した場合、例えば、有機デバイスの使用時に発生する熱によって、半導体ナノ粒子と共役系ポリマーとの間に相分離が生じ、有機デバイスの性能低下の原因となる。
【0007】
また、上述した種々の有機デバイスを融合化又は一体化する研究開発が注目されており、既に、トランジスタ自身に電界発光機能を組み込んだ有機発光トランジスタが報告されている。しかしながら、発電が可能な有機発光トランジスタはまだ報告されていない。このような「多機能有機デバイス」は、将来的に、回路の簡略化、素子の高機能化等に繋がり、次世代素子として関心が高まっている。
【0008】
ところで、電界効果型トランジスタ(FET)と同様の構造を有する3端子型の有機発光素子である有機発光トランジスタにおいて、チャネル形成領域を構成する材料(便宜上、チャンネル材料と呼ぶ)は、ゲート電極に印加されるゲート電圧に基づく変調による電荷の蓄積や、注入された電子と正孔(ホール)との再結合に基づく発光機能を担当する。チャンネル材料として、広くは、p型導電性を有する有機半導体材料あるいはアン・バイポーラ材料が用いられている。p型導電性を有する有機半導体材料からチャネル材料が構成された有機発光トランジスタにおいては、発光強度は、ドレイン電流の絶対値に比例し、ゲート電圧とソース/ドレイン電極間の電圧によって変調することができる。ところで、このような有機発光トランジスタにあっては、正孔(ホール)よりも電子の移動度が著しく遅いため、電子と正孔との再結合による電界発光は、ドレイン電極の近傍でしか観測されないといった問題がある。電子の注入効率を改善するために、バルク・ヘテロジャンクション構造を有する有機発光トランジスタの研究報告もある(例えば、非特許文献8:M. A. Loi et. al. Adv. Func. Mat. 2006, 16, 41. 参照)。しかしながら、バルク状では、分子の集合体の生成、相分離等が容易に生じ、電荷移動度や発光効率の低下の原因となる 。
【0009】
従って、本発明の目的は、化学的、物理的に安定であり、使用に際しての外乱要因(例えば熱)に対しても性能が安定しており、更には、トランジスタとしての機能、発光素子としての機能、太陽電池として機能を融合し得る構成、構造を有する電子デバイス、及び、その製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る電子デバイスは、
(A)制御電極、
(B)第1電極及び第2電極、並びに、
(C)第1電極と第2電極の間であって、絶縁層を介して制御電極と対向して設けられた能動層、
を備えた3端子型の電子デバイスであって、
能動層は、保護層で被覆された無機半導体微粒子から構成された複合材料の集合から成り、
保護層は、無機半導体微粒子に結合した官能基を一端に有するアルキル鎖、及び、アルキル鎖の他端に結合した有機半導体分子から成ることを特徴とする。
【0011】
上記の目的を達成するための本発明の第1の態様に係る電子デバイスの製造方法は、
(A)制御電極、
(B)第1電極及び第2電極、並びに、
(C)第1電極と第2電極の間であって、絶縁層を介して制御電極と対向して設けられた能動層、
を備え、
能動層は、保護層で被覆された無機半導体微粒子から構成された複合材料の集合から成り、
保護層は、無機半導体微粒子に結合した官能基を一端に有するアルキル鎖、及び、アルキル鎖の他端に結合した有機半導体分子から成る電子デバイスの製造方法であって、
能動層を、複合材料を含む溶液を用いた塗布法に基づき形成することを特徴とする。
【0012】
本発明の第1の態様に係る電子デバイスあるいはその製造方法(以下、これらを総称して、本発明の第1の態様と呼ぶ場合がある)においては、制御電極に印加される電圧によって、第1電極から第2電極に向かって能動層に流れる電流が制御される形態とすることができ、この場合、制御電極がゲート電極に相当し、第1電極及び第2電極がソース/ドレイン電極に相当し、絶縁層がゲート絶縁膜に相当し、能動層がチャネル形成領域に相当する電界効果型トランジスタから電子デバイスは成る形態とすることができる。あるいは又、制御電極、第1電極及び第2電極への電圧の印加によって能動層が発光する発光素子から電子デバイスは成る形態とすることができる。あるいは又、能動層への光の照射によって第1電極と第2電極との間に電流が流れる光電変換素子から成る形態とすることができる。光電変換素子から成る形態とする場合、光電変換素子によって、具体的には、太陽電池やイメージセンサーを構成することができ、この場合、制御電極への電圧の印加は行わなくともよいし、行ってもよく、後者の場合、制御電極への電圧の印加によって、流れる電流の変調を行うことが可能となる。
【0013】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る電子デバイスは、
(A)第1電極及び第2電極、並びに、
(B)第1電極と第2電極の間に設けられた能動層、
を備えた2端子型の電子デバイスであって、
能動層は、保護層で被覆された無機半導体微粒子から構成された複合材料の集合から成り、
保護層は、無機半導体微粒子に結合した官能基を一端に有するアルキル鎖、及び、アルキル鎖の他端に結合した有機半導体分子から成り、
能動層への光の照射によって電力が生成することを特徴とする。
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の第3の態様に係る電子デバイスは、
(A)第1電極及び第2電極、並びに、
(B)第1電極と第2電極の間に設けられた能動層、
を備えた2端子型の電子デバイスであって、
能動層は、保護層で被覆された無機半導体微粒子から構成された複合材料の集合から成り、
保護層は、無機半導体微粒子に結合した官能基を一端に有するアルキル鎖、及び、アルキル鎖の他端に結合した有機半導体分子から成り、
第1電極及び第2電極への電圧の印加によって能動層が発光することを特徴とする。
【0015】
上記の目的を達成するための本発明の第2の態様に係る電子デバイスの製造方法は、
(A)第1電極及び第2電極、並びに、
(B)第1電極と第2電極の間に設けられた能動層、
を備えた2端子型の電子デバイスであって、
能動層は、保護層で被覆された無機半導体微粒子から構成された複合材料の集合から成り、
保護層は、無機半導体微粒子に結合した官能基を一端に有するアルキル鎖、及び、アルキル鎖の他端に結合した有機半導体分子から成り、
能動層への光の照射によって電力が生成し、あるいは又、第1電極及び第2電極への電圧の印加によって能動層が発光する電子デバイスの製造方法であって、
能動層を、複合材料を含む溶液を用いた塗布法に基づき形成することを特徴とする。
【0016】
本発明の第2の態様に係る電子デバイスあるいは本発明の第2の態様に係る電子デバイスの製造方法(以下、これらを総称して、本発明の第2の態様と呼ぶ場合がある)においては、電子デバイスは太陽電池として機能するが、この場合、第1電極は高仕事関数(例えば、φ=4.5eV〜5.5eV)を有する金属から成り、第2電極は低仕事関数(例えば、φ=3.5eV〜4.5eV)を有する金属から成る形態とすることができる。尚、このような形態にあっては、支持部材上に第2電極、能動層、第1電極を順次形成するといった、所謂縦型のデバイス構造とすることが、電力生成効率の向上といった観点から望ましい。ここで、第2電極を構成する低仕事関数を有する金属として、仕事関数が4.19eVのアルミニウム(Al)、又は、仕事関数が3.61eVのマグネシウム(Mg)を挙げることができ、これによって、能動層において生成した電子が第2電極へ注入され易くなる。尚、電子デバイスは、縦型構造に限定するものではなく、支持部材上に第1電極及び第2電極を形成し、第1電極と第2電極との間に位置する支持部材の部分の上に能動層を形成するといった、所謂横型のデバイス構造とすることもできる。そして、これらの場合、有機半導体分子がp型導電性を有するとき、第1電極を構成する材料として、有機半導体分子におけるHOMO(最高被占分子軌道)の有するエネルギー準位に比較的近い仕事関数を有する導電性の材料を選択すればよく、例えば、金(Au)、銀(Ag)を例示することができるし、あるいは又、透明電極を構成するITOや、STOを例示することもできる。また、本発明の第1の態様において、電子デバイスとしての光電変換素子を太陽電池として機能させる場合の第1電極及び第2電極も、以上に説明した材料から構成することが好ましい。
【0017】
上述した好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様、第2の態様若しくは第3の態様に係る電子デバイス、又は、本発明の第1の態様若しくは第2の態様に係る電子デバイスの製造方法(以下、これらを総称して、単に、本発明と呼ぶ場合がある)において、アルキル鎖は、直鎖のアルキル鎖、より具体的には、−(CH2n−(但し、nは3乃至18の整数)である形態とすることができる。尚、アルキル鎖を、鎖状の絶縁性有機分子に代替することも可能である。
【0018】
また、上記の好ましい形態を含む本発明において、無機半導体微粒子はn型導電性を有し、有機半導体分子はp型導電性を有する構成とすることが好ましい。
【0019】
更には、以上に説明した好ましい形態を含む本発明において、有機半導体分子は、縮合多環芳香族化合物、ポルフィリン系誘導体、フェニルビニリデン系の共役系オリゴマー、及び、チオフェン系の共役系オリゴマーから成る群から選択された化合物である構成とすることができる。また、アルキル鎖の一端が有する官能基は、チオール基(−SH)、アミノ基(−NH2)、シアノ基(−NC)、カルボキシ基(−COOH)、リン酸基、及び、ホスフィンオキシド基(−P=O)から成る群から選択された官能基である構成とすることができる。具体的には、p型導電性を示す有機半導体分子として、例えば、アセン系分子(ペンタセン、テトラセン等)といった縮合多環芳香族化合物、ポルフィリン系分子、共役系オリゴマー(フェニルビニリデン系やチオフェン系)を挙げることができる。
【0020】
尚、複合材料の外殻を構成する保護層同士は接触している。具体的には、複合材料の外殻を構成する保護層における有機半導体分子と、この複合材料に隣接した複合材料の外殻を構成する保護層における有機半導体分子とは、π相互作用を有している。云い換えれば、π電子のオーバーラップが生じている。
【0021】
更には、以上に説明した好ましい形態を含む本発明において、無機半導体微粒子は、CdS、CdSe、ZnS、CdSe/CdS、CdSe/ZnS、PbSe、ZnO、酸化チタン(TiO2)、酸化スズ(SnO2)、テルル化カドミウム(CdTe)、ガリウム砒素(GaAs)、シリコン(Si)、及び、酸化シリコン(SiOX)から成る群から選択された少なくとも1種類の微粒子である構成とすることが好ましい。無機半導体微粒子の平均粒径RAVEの範囲は、限定するものではないが、5.0×10-10m≦RAVE≦1.0×10-6m、好ましくはRAVE≦1×10-8m、より好ましくは5.0×10-10m≦RAVE≦1.0×10-7mであることが望ましい。更には、無機半導体微粒子の発光バンドが380nm乃至800nm間の可視光領域にあることが望ましい。無機半導体微粒子の形状として球形を挙げることができるが、これに限るものではなく、その他、例えば、三角形、四面体、立方体、直方体、円錐、円柱状(ロッド)、三角柱、ファイバー状、毛玉状のファイバー等を挙げることができる。尚、無機半導体微粒子の形状が球形以外の場合の無機半導体微粒子の平均粒径RAVEは、球形以外の無機半導体微粒子の測定された体積と同じ体積を有する球を想定し、係る球の直径の平均値を無機半導体微粒子の平均粒径RAVEとすればよい。無機半導体微粒子の平均粒径RAVEは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察された無機半導体微粒子の粒径を計測することで得ることができる。
【0022】
本発明の第1の態様あるいは第2の態様に係る電子デバイスの製造方法における塗布法として、スピンコート法;浸漬法;キャスト法;スクリーン印刷法やインクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法といった各種印刷法;スタンプ法;スプレー法;エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、ナイフコーター法、スクイズコーター法、リバースロールコーター法、トランスファーロールコーター法、グラビアコーター法、キスコーター法、キャストコーター法、スプレーコーター法、スリットオリフィスコーター法、カレンダーコーター法といった各種コーティング法を例示することができる。また、複合材料を含む溶液における溶媒として、トルエン、クロロホルム、ヘキサン、エタノールといった無極性又は極性の低い有機溶媒を例示することができる。複合材料を含む溶液は、例えば、以下の方法で調製することができる。即ち、保護層前駆体で被覆された無機半導体微粒子を準備する。ここで、保護層前駆体とは、無機半導体微粒子に結合した官能基を一端に有し、他端には、有機半導体分子によって最終的に置換される官能基を有するアルキル鎖から成る。そして、有機半導体分子を溶解した有機溶媒中に保護層前駆体で被覆された無機半導体微粒子を投入し、混合することによって、アルキル鎖の他端の官能基が有機半導体分子によって置換される。こうして、複合材料を含む溶液を得ることができる。あるいは又、既に有機半導体分子が置換されたアルキル鎖(このアルキル鎖を構成する分子は無機半導体微粒子と結合できる官能基を有する)を用い、無機半導体微粒子の合成を行うことによって、複合材料を得ることもできる。
【0023】
以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様において、電子デバイスを電界効果型トランジスタ(FET)とする場合、電界効果型トランジスタとして、ボトムゲート/ボトムコンタクト型、ボトムゲート/トップコンタクト型、トップゲート/ボトムコンタクト型、トップゲート/トップコンタクト型を挙げることができる。尚、複合材料を含む溶液を用いて、塗布法に基づき、能動層を基体上に形成する。
【0024】
より具体的には、ボトムゲート/ボトムコンタクト型の電界効果型トランジスタは、
(a)支持体上に形成されたゲート電極、
(b)ゲート電極及び支持体上に形成されたゲート絶縁膜(基体に相当する)、
(c)ゲート絶縁膜上に形成されたソース/ドレイン電極、並びに、
(d)ソース/ドレイン電極の間であってゲート絶縁膜上に形成され、能動層によって構成されたチャネル形成領域、
を備えている。
【0025】
また、ボトムゲート/トップコンタクト型の電界効果型トランジスタは、
(a)支持体上に形成されたゲート電極、
(b)ゲート電極及び支持体上に形成されたゲート絶縁膜(基体に相当する)、
(c)ゲート絶縁膜上に形成され、能動層によって構成されたチャネル形成領域を含むチャネル形成領域構成層、並びに、
(d)チャネル形成領域構成層上に形成されたソース/ドレイン電極、
を備えている。
【0026】
また、トップゲート/ボトムコンタクト型の電界効果型トランジスタは、
(a)基体上に形成されたソース/ドレイン電極、
(b)ソース/ドレイン電極の間の基体上に形成され、能動層によって構成されたチャネル形成領域、
(c)ソース/ドレイン電極及びチャネル形成領域上に形成されたゲート絶縁膜、並びに、
(d)ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極、
を備えている。
【0027】
また、トップゲート/トップコンタクト型の電界効果型トランジスタは、
(a)基体上に形成され、能動層によって構成されたチャネル形成領域を含むチャネル形成領域構成層、
(b)チャネル形成領域構成層上に形成されたソース/ドレイン電極、
(c)ソース/ドレイン電極及びチャネル形成領域上に形成されたゲート絶縁膜、並びに、
(d)ゲート絶縁膜上に形成されたゲート電極、
を備えている。
【0028】
尚、以上に説明した好ましい形態、構成を含む本発明の第1の態様において、電子デバイスを発光素子や光電変換素子とする場合、発光素子や光電変換素子の構成、構造は、例えば、上述した4種類の電界効果型トランジスタの構成、構造のいずれかと同様とすることができる。
【0029】
基体、あるいは、本発明の第2の態様における支持部材(以下、これらを総称して、基体等と呼ぶ場合がある)は、酸化ケイ素系材料(例えば、SiOXやスピンオンガラス(SOG));窒化ケイ素(SiNY);酸化アルミニウム(Al23);金属酸化物高誘電絶縁膜から構成することができる。基体等をこれらの材料から構成する場合、基体等を、以下に挙げる材料から適宜選択された支持体上に(あるいは支持体の上方に)形成すればよい。即ち、支持体として、あるいは又、上述した基体等以外の基体等として、ポリメチルメタクリレート(ポリメタクリル酸メチル,PMMA)やポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルフェノール(PVP)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリイミド、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)に例示される有機ポリマー(高分子材料から構成された可撓性を有するプラスチック・フィルムやプラスチック・シート、プラスチック基板といった高分子材料の形態を有する)を挙げることができる。このような可撓性を有する高分子材料から構成された基体等を使用すれば、例えば曲面形状を有するディスプレイ装置や電子機器への電子デバイスの組込みあるいは一体化が可能となる。あるいは又、基体等(あるいは支持体)として、各種ガラス基板や、表面に絶縁膜が形成された各種ガラス基板、石英基板、表面に絶縁膜が形成された石英基板、表面に絶縁膜が形成されたシリコン基板を挙げることができる。電気絶縁性の支持体としては、以上に説明した材料から適切な材料を選択すればよい。支持体として、その他、導電性基板(金やアルミニウム等の金属から成る基板、高配向性グラファイトから成る基板)を挙げることもできる。
【0030】
本発明の第1の態様において、制御電極や第1電極、第2電極、各種の配線を構成する材料として、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銀(Ag)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、銅(Cu)、チタン(Ti)、インジウム(In)、錫(Sn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)等の金属、あるいは、これらの金属元素を含む合金、これらの金属から成る導電性粒子、これらの金属を含む合金の導電性粒子、不純物を含有したポリシリコン等の導電性物質を挙げることができるし、これらの元素を含む層の積層構造とすることもできる。更には、制御電極や第1電極、第2電極、各種の配線を構成する材料として、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリスチレンスルホン酸[PEDOT/PSS]といった有機材料(導電性高分子)を挙げることもできる。
【0031】
本発明において、制御電極や第1電極、第2電極、各種の配線の形成方法として、これらを構成する材料にも依るが、物理的気相成長法(PVD法);MOCVD法を含む各種の化学的気相成長法(CVD法);スピンコート法;浸漬法;キャスト法;上述した各種の印刷法;スタンプ法;上述した各種のコーティング法;リフト・オフ法;ゾル−ゲル法;電着法;シャドウマスク法;電解メッキ法や無電解メッキ法あるいはこれらの組合せといったメッキ法;及び、スプレー法の内のいずれかと、必要に応じてパターニング技術との組合せを挙げることができる。尚、PVD法として、(a)電子ビーム加熱法、抵抗加熱法、フラッシュ蒸着等の各種真空蒸着法、(b)プラズマ蒸着法、(c)2極スパッタリング法、直流スパッタリング法、直流マグネトロンスパッタリング法、高周波スパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンビームスパッタリング法、バイアススパッタリング法等の各種スパッタリング法、(d)DC(direct current)法、RF法、多陰極法、活性化反応法、電界蒸着法、高周波イオンプレーティング法、反応性イオンプレーティング法等の各種イオンプレーティング法を挙げることができる。
【0032】
更には、本発明の第1の態様において、絶縁層(基体に相当する場合がある)やゲート絶縁膜を構成する材料として、酸化ケイ素系材料;窒化ケイ素(SiNY);酸化アルミニウム(Al23)等の金属酸化物高誘電絶縁膜にて例示される無機系絶縁材料だけでなく、ポリメチルメタクリレート(PMMA);ポリビニルフェノール(PVP);ポリビニルアルコール(PVA);ポリイミド;ポリカーボネート(PC);ポリエチレンテレフタレート(PET);ポリスチレン;N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPTMS)、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)、オクタデシルトリクロロシラン(OTS)等のシラノール誘導体(シランカップリング剤);オクタデカンチオール、ドデシルイソシアネイト等の一端に制御電極と結合可能な官能基を有する直鎖炭化水素類にて例示される有機系絶縁材料(有機ポリマー)を挙げることができるし、これらの組み合わせを用いることもできる。尚、酸化ケイ素系材料として、酸化シリコン(SiOX)、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、酸化窒化シリコン(SiON)、SOG(スピンオングラス)、低誘電率SiO2系材料(例えば、ポリアリールエーテル、シクロパーフルオロカーボンポリマー及びベンゾシクロブテン、環状フッ素樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化アリールエーテル、フッ化ポリイミド、アモルファスカーボン、有機SOG)を例示することができる。
【0033】
また、絶縁層やゲート絶縁膜の形成方法として、上述の各種PVD法;各種CVD法;スピンコート法;上述した各種印刷法;上述した各種コーティング法;浸漬法;キャスティング法;ゾル−ゲル法;電着法;シャドウマスク法;及び、スプレー法の内のいずれかを挙げることができる。あるいは又、絶縁層やゲート絶縁膜は、制御電極の表面を酸化あるいは窒化することによって形成することができるし、制御電極の表面に酸化膜や窒化膜を成膜することで得ることもできる。制御電極の表面を酸化する方法として、制御電極を構成する材料にも依るが、O2プラズマを用いた酸化法、陽極酸化法を例示することができる。また、制御電極の表面を窒化する方法として、制御電極を構成する材料にも依るが、N2プラズマを用いた窒化法を例示することができる。あるいは又、例えば、Au電極に対しては、一端をメルカプト基で修飾された直鎖状炭化水素のように、制御電極と化学的に結合を形成し得る官能基を有する絶縁性分子によって、浸漬法等の方法で自己組織的に制御電極表面を被覆することで、制御電極の表面に絶縁層やゲート絶縁膜を形成することもできる。あるいは又、制御電極の表面をシラノール誘導体(シランカップリング剤)により修飾することで、絶縁層やゲート絶縁膜を形成することもできる。
【0034】
電子デバイスを、ディスプレイ装置や各種の電子機器に適用、使用する場合、支持体に多数の電子デバイスを集積したモノリシック集積回路としてもよいし、各電子デバイスを切断して個別化し、ディスクリート部品として使用してもよい。また、電子デバイスを樹脂にて封止してもよい。
【発明の効果】
【0035】
通常、例えば、電界効果型トランジスタのチャネル形成領域を構成する有機半導体材料にあっては、キャリアの伝送のために、1次元的な(即ち、第1電極から第2電極に向かう方向に沿って)、あるいは、2次元性的な(即ち、第1電極から第2電極に向かう方向、及び、チャネル形成領域の厚さ方向に沿って)、安定した分子配列が必須とされる。そして、この分子配列に乱れが生じた場合、電子デバイスの性能低下が生じる。一方、本発明にあっては、能動層は、保護層で被覆された無機半導体微粒子から構成された複合材料の集合から成る。即ち、能動層は、無機半導体微粒子を基準に考えたとき、一種、0次元の(あるいは又、ランダムに3次元的に配列された)分子配列を有すると云える。従って、外部からの刺激によって能動層の構造に乱れが生じ難い。
【0036】
本発明の第1の態様に係る電子デバイスにあっては、第1電極及び第2電極に所定の電圧を印加し、更には、制御電極に電圧を印加することによって、無機半導体微粒子がn型導電性を有し、有機半導体分子がp型導電性を有する場合、能動層に連続した正孔(ホール)の蓄積層が形成される一方、例えば第2電極から無機半導体微粒子に電子が注入される。そして、この電子はホッピングによって無機半導体微粒子を伝わり、最終的に例えば第1電極に到達する。こうして、本発明の第1の態様に係る電子デバイスにあっては、制御電極に電圧を印加することによって、能動層を流れる電流の制御を行うことができる。即ち、電界効果型トランジスタとしての機能を発揮することができる。
【0037】
あるいは又、本発明の第1の態様に係る電子デバイスにあっては、無機半導体微粒子がn型導電性を有し、有機半導体分子がp型導電性を有する場合、第1電極及び第2電極への電圧印加状態に依存して、例えば第2電極から無機半導体微粒子に電子が注入され、この電子はホッピングによって無機半導体微粒子を伝わり、能動層全体へと行き亘る。一方、キヤリアー(正孔、電子)の注入により、無機半導体微粒子と有機半導体分子との界面では強い電場が生じ、正孔が有機半導体分子から無機半導体微粒子内に注入され、エキシトンが形成され、直ちに再結合し、蛍光を発する。このように、本発明の第1の態様に係る電子デバイスにあっては、制御電極、第1電極及び第2電極への電圧の印加によって、発光素子としての機能を発揮することができる。ここで、発光色は、無機半導体微粒子の粒径に依存し、あるいは又、第1電極及び第2電極への電圧印加状態(バイアス)に依存する。即ち、無機半導体微粒子の粒径に依存してバンド・ギャップが相違するので、無機半導体微粒子の粒径が異なると、発光色も異なる。あるいは又、第1電極及び第2電極への電圧印加状態(バイアス)に依存して、有機半導体分子と無機半導体微粒子との界面で、微粒子に正孔が注入されるか、有機半導体分子に電子が注入されるかが決定され、エキシトンの生成部位(微粒子側、有半導体分子側)を選択でき、これによっても発光色が変化する。従って、第1電極及び第2電極への電圧印加状態(バイアス)を制御し、あるいは又、所望の粒径を有する無機半導体微粒子から構成された複合材料を所望の領域に配置することによって、発光色の制御を行うことが可能となる。即ち、高輝度、高蛍光収率であり、第2電極への電子注入が容易であり、電子移動度が高い発光素子を提供することができる。
【0038】
ここで、本発明の第1の態様に係る電子デバイスが、電界効果型トランジスタとしての機能を発揮するか、発光素子として機能するかは、第1電極及び第2電極への電圧印加状態(バイアス)に依存する。先ず、第2電極からの無機半導体微粒子へ電子注入が起こらない範囲のバイアスを加えた上、制御電極を変調することにより第1電極から第2電極へ電流が流れる。これがトランジスタ動作である。一方、正孔が十分に蓄積された上、第1電極及び第2電極へのバイアスを増加すると、無機半導体微粒子へ電子注入が始まり、正孔との再結合によって発光が起こる。
【0039】
尚、本発明の第1の態様に係る電子デバイスにおいては、能動層への光の照射によって第1電極と第2電極との間に電流が流れる光電変換素子を構成し得る。従って、能動層を構成する材料を適切に設計、選択することで、1つの電子デバイスが、有機太陽電池を含む光電変換素子、有機トランジスタ、有機発光素子といった3種類の電子デバイスとしての機能を発揮することが可能となる。
【0040】
また、本発明の第2の態様にあっては、能動層を構成する保護層で被覆された無機半導体微粒子から構成された複合材料内において、pn接合部には界面電位があって、障壁の電界が存在する。ここで、この能動層に光が照射されることによって、複合材料において生成した正孔及び電子は、この電界のために引き分けられ、電位差(光起電力)が生じる。そして、無機半導体微粒子がn型導電性を有し、有機半導体分子がp型導電性を有する場合、上述したと同様に、生成した正孔は、複合材料の外殻を構成する保護層における有機半導体分子を伝わって、最終的に例えば第1電極に到達する。一方、電子はホッピングによって無機半導体微粒子を伝わり、最終的に例えば第2電極に到達する。こうして、本発明の第2の態様にあっては、能動層に光が照射されることによって、電力(光起電力)が生成し、電荷分離の効率が非常に高く、エネルギートラップの生成確率が小さい、太陽電池としての機能を発揮することができる。更には、n型導電性を有する無機半導体微粒子は、自らも、光励起状態から電子を直接第2電極へ注入することが可能であるが故に、太陽光に対する光増感作用の効率を一層高めることができる。
【0041】
本発明の第3の態様に係る電子デバイスは、第1電極及び第2電極への電圧の印加によって能動層が発光する発光素子として機能する。ここで、本発明の第3の態様に係る電子デバイスにおいて、無機半導体微粒子がn型導電性を有し、有機半導体分子がp型導電性を有する場合、第1電極及び第2電極への電圧印加状態に依存して、例えば第2電極から無機半導体微粒子に電子が注入され、この電子はホッピングによって無機半導体微粒子を伝わり、能動層全体へと行き亘る。一方、第1電極から有機半導体分子に正孔が注入されると、キヤリアー(正孔、電子)の注入により、無機半導体微粒子と有機半導体分子との界面では強い電場が生じ、正孔が有機半導体分子から無機半導体微粒子内に注入され、あるいは又、電子が無機半導体微粒子から有機半導体分子内に注入され、エキシトンが形成され、直ちに再結合し、蛍光を発する。
【0042】
更には、本発明にあっては、能動層が保護層で被覆された無機半導体微粒子から構成された複合材料の集合から成るので、分子レベルのpnジャンクション構造を有し、従来の技術のように、有機分子と微粒子との間の相分離が起こらないし、pn接合部界面における電子移動効率の向上を図ることができる。また、本発明にあっては、保護層で被覆された無機半導体微粒子から構成された複合材料の集合から能動層が構成されているので、共有結合のpnジャンクション構造を有し、従来の技術のように、有機分子と微粒子との間の相分離が起こらないし、p型領域とn型領域との接触面積を増加させることによって、電荷分離効率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】図1の(A)及び(B)は、実施例1の電子デバイスの製造方法の概要を説明するための基体等の模式的な一部端面図であり、図1の(C)は、保護層で被覆された無機半導体微粒子21から構成された複合材料の概念図であり、図1の(D)は、能動層の概念図である。
【図2】図2の(A)及び(B)は、実施例2の電子デバイスの製造方法の概要を説明するための基体等の模式的な一部端面図である。
【図3】図3の(A)及び(B)は、実施例3の電子デバイスの製造方法の概要を説明するための基体等の模式的な一部端面図である。
【図4】図4の(A)〜(C)は、実施例4の電子デバイスの製造方法の概要を説明するための基体等の模式的な一部端面図である。
【図5】図5は、実施例6の電子デバイスの模式的な一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明する。
【実施例1】
【0045】
実施例1は、本発明の第1の態様に係る電子デバイス及びその製造方法に関する。実施例1の電子デバイスは、
(A)制御電極、
(B)第1電極及び第2電極、並びに、
(C)第1電極と第2電極の間であって、絶縁層を介して制御電極と対向して設けられた能動層、
を備えた3端子型の電子デバイスである。
【0046】
そして、図1の(D)に概念図を示す能動層20は、保護層で被覆された無機半導体微粒子21から構成された複合材料(図1の(C)の概念図参照)の集合から成り、保護層は、無機半導体微粒子21に結合した官能基を一端に有するアルキル鎖、及び、アルキル鎖の他端に結合した有機半導体分子から成る。ここで、具体的には、無機半導体微粒子21は、n型導電性を有し、平均粒径RAVEが、5.0×10-10m≦RAVE≦1.0×10-7mを満足するCdS、CdSe、ZnS、CdSe/CdS、CdSe/ZnS、PbSe、ZnO、酸化チタン(TiO2)、酸化スズ(SnO2)、テルル化カドミウム(CdTe)、ガリウム砒素(GaAs)、シリコン(Si)、及び、酸化シリコン(SiOX)から成る群から選択された少なくとも1種類の微粒子から成る。一方、アルキル鎖は、−(CH2n−(但し、n=3〜18)であり、チオール基(−SH)、アミノ基(−NH2)、シアノ基(−NC)、カルボキシ基(−COOH)、リン酸基、及び、ホスフィンオキシド基(−P=O)から成る群から選択された官能基を一端に有する。更には、アルキル鎖の他端に結合したp型導電性を有する有機半導体分子として、アセン系分子(ペンタセン、テトラセン等)といった縮合多環芳香族化合物、ポルフィリン系分子、共役系オリゴマー(フェニルビニリデン系やチオフェン系)を挙げることができる。有機半導体分子の構造式を以下に例示するが、式(1)〜式(8)において、nは、例えば、3乃至18の整数である。尚、実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例6においては、無機半導体微粒子と無機半導体微粒子の間の距離(具体的には、官能基を有するアルキル鎖の長さと有機半導体分子の長さの合計の2倍)が、電子が無機半導体微粒子間をホッピングによって移動できるような距離となるように、官能基を有するアルキル鎖及び有機半導体分子を選択する必要がある。
【0047】

【0048】

【0049】

【0050】

【0051】

【0052】

【0053】

【0054】

【0055】
より具体的には、実施例1の電子デバイスは、制御電極に印加される電圧によって、第1電極から第2電極に向かって能動層に流れる電流が制御される電界効果型トランジスタ(FET)であり、制御電極がゲート電極に相当し、第1電極及び第2電極がソース/ドレイン電極に相当し、絶縁層がゲート絶縁膜に相当し、能動層がチャネル形成領域に相当する。即ち、図1の(B)に模式的な一部断面図を示すように、実施例1の電子デバイスは、ボトムゲート/ボトムコンタクト型の電界効果型トランジスタ[より具体的には、薄膜トランジスタ(TFT)]であり、
(a)支持体10上に形成されたゲート電極14(制御電極に相当する)、
(b)ゲート電極14及び支持体10上に形成されたゲート絶縁膜15(絶縁層に相当し、且つ、基体13に相当する)、
(c)ゲート絶縁膜15上に形成されたソース/ドレイン電極16(第1電極及び第2電極に相当する)、並びに、
(d)ソース/ドレイン電極16の間であってゲート絶縁膜15上に形成され、能動層20によって構成されたチャネル形成領域17、
を備えている。
【0056】
以下、基体等の模式的な一部端面図である図1の(A)及び(B)を参照して、実施例1の電子デバイス(電界効果型トランジスタ)の製造方法の概要を説明する。
【0057】
尚、複合材料を含む溶液を調製しておく。具体的には、保護層前駆体で被覆された無機半導体微粒子を準備する。ここで、保護層前駆体とは、先に説明したように、無機半導体微粒子に結合した官能基を一端に有し、他端には、有機半導体分子によって最終的に置換される官能基(具体的には、例えば、−COOH,−NH2,−OH)を有するアルキル鎖から成る。そして、有機半導体分子を溶解した有機溶媒(媒質:クロロホルム、ジクロロメタン、THF、トルエン等の一般的な有機溶媒)中に保護層前駆体で被覆された無機半導体微粒子を投入し、混合することによって、アルキル鎖の他端の官能基が有機半導体分子によって置換される。こうして、複合材料を含む溶液を得ることができる。あるいは又、既に有機半導体分子が置換されたアルキル鎖(このアルキル鎖を構成する分子は無機半導体微粒子と結合できる官能基を有する)を用い、無機半導体微粒子の合成を行うことによって、複合材料を得た後、得られた複合材料を有機溶媒に添加することによっても、複合材料を含む溶液を得ることができる。
【0058】
[工程−100]
先ず、支持体10上にゲート電極14を形成する。具体的には、ガラス基板11の表面に形成されたSiO2から成る絶縁膜12上に、ゲート電極14を形成すべき部分が除去されたレジスト層(図示せず)を、リソグラフィ技術に基づき形成する。その後、密着層としてのチタン(Ti)層(図示せず)、及び、ゲート電極14としての金(Au)層を、順次、真空蒸着法にて全面に成膜し、その後、レジスト層を除去する。こうして、所謂リフト・オフ法に基づき、ゲート電極14を得ることができる。
【0059】
[工程−110]
次に、ゲート電極14を含む支持体10(より具体的には、ガラス基板11の表面に形成された絶縁膜12)上に、基体13に相当するゲート絶縁膜15を形成する。具体的には、SiO2から成るゲート絶縁膜15を、スパッタリング法に基づきゲート電極14及び絶縁膜12上に形成する。ゲート絶縁膜15の成膜を行う際、ゲート電極14の一部をハードマスクで覆うことによって、ゲート電極14の取出部(図示せず)をフォトリソグラフィ・プロセス無しで形成することができる。
【0060】
[工程−120]
その後、ゲート絶縁膜15の上に、金(Au)層から成るソース/ドレイン電極16を形成する(図1の(A)参照)。具体的には、密着層としての厚さ約0.5nmのチタン(Ti)層(図示せず)、及び、ソース/ドレイン電極16として厚さ約25nmの金(Au)層を、順次、真空蒸着法に基づき形成する。これらの層の成膜を行う際、ゲート絶縁膜15の一部をハードマスクで覆うことによって、ソース/ドレイン電極16をフォトリソグラフィ・プロセス無しで形成することができる。
【0061】
[工程−130]
次いで、能動層20を、複合材料を含む溶液を用いた塗布法に基づき基体13上に形成する。具体的には、予め調製された複合材料を含む溶液を用いて、スピンコート法により、全面に複合材料を含む溶液を塗布し、乾燥させることで、能動層20をゲート絶縁膜15及びソース/ドレイン電極16上に形成することができる(図1の(B)参照)。
【0062】
[工程−140]
最後に、全面にパッシベーション膜(図示せず)を形成することで、ボトムゲート/ボトムコンタクト型のFET(具体的には、TFT)を得ることができる。
【0063】
実施例1、あるいは、後述する実施例2〜実施例4の電子デバイス(具体的には、FET)にあっては、第1電極及び第2電極(ソース/ドレイン電極16)に所定の電圧を印加し、更には、制御電極(ゲート電極14)に電圧を印加することによって、先に説明したとおり、能動層20に連続した正孔の蓄積層が形成される一方、無機半導体微粒子21に電子が一方のソース/ドレイン電極16(第2電極、ドレイン電極)から注入される。第1電極及び第2電極(ソース/ドレイン電極16)への電圧印加状態に依存して、電子はホッピングによって無機半導体微粒子を伝わり、最終的に例えば他方のソース/ドレイン電極(第1電極、ソース電極)に到達する。こうして、この電子デバイスにあっては、制御電極(ゲート電極)に電圧を印加することによって、能動層20を流れる電流の制御(変調)を行うことができる。
【実施例2】
【0064】
実施例2は、実施例1の変形である。実施例2にあっては、電子デバイスを、ボトムゲート/トップコンタクト型のFET(具体的には、TFT)とした。実施例2の電界効果型トランジスタは、図2の(B)に模式的な一部断面図を示すように、
(a)支持体10上に形成されたゲート電極14(制御電極に相当する)、
(b)ゲート電極14及び支持体10上に形成されたゲート絶縁膜15(絶縁層に相当し、且つ、基体13に相当する)、
(c)ゲート絶縁膜15上に形成され、能動層20によって構成されたチャネル形成領域17を含むチャネル形成領域構成層18、並びに、
(d)チャネル形成領域構成層18上に形成されたソース/ドレイン電極16(第1電極及び第2電極に相当する)、
を備えている。
【0065】
以下、基体等の模式的な一部端面図である図2の(A)及び(B)を参照して、実施例2の電子デバイス(電界効果型トランジスタ)の製造方法の概要を説明する。
【0066】
[工程−200]
先ず、実施例1の[工程−100]と同様にして、支持体10上にゲート電極14を形成した後、実施例1の[工程−110]と同様にして、ゲート電極14を含む支持体(より具体的には絶縁膜12)上に、基体13に相当するゲート絶縁膜15を形成する。
【0067】
[工程−210]
次いで、実施例1の[工程−130]と同様にして、能動層20を基体13の上に形成する(図2の(A)参照)。こうして、チャネル形成領域17を含むチャネル形成領域構成層18を形成することができる。
【0068】
[工程−220]
その後、チャネル形成領域構成層18の上に、チャネル形成領域17を挟むようにソース/ドレイン電極16を形成する(図2の(B)参照)。具体的には、実施例1の[工程−120]と同様にして、密着層としてのチタン(Ti)層(図示せず)、及び、ソース/ドレイン電極16としての金(Au)層を、順次、真空蒸着法に基づき形成する。これらの層の成膜を行う際、チャネル形成領域構成層18の一部をハードマスクで覆うことによって、ソース/ドレイン電極16をフォトリソグラフィ・プロセス無しで形成することができる。
【0069】
[工程−230]
最後に、全面にパッシベーション膜(図示せず)を形成することで、実施例2の半導体装置を完成させることができる。
【実施例3】
【0070】
実施例3も、実施例1の変形である。実施例3にあっては、電子デバイスを、トップゲート/ボトムコンタクト型のFET(具体的には、TFT)とした。実施例3の電界効果型トランジスタは、図3の(B)に模式的な一部断面図を示すように、
(a)基体13に相当する絶縁膜12上に形成されたソース/ドレイン電極16(第1電極及び第2電極に相当する)、
(b)ソース/ドレイン電極16の間の基体13上に形成され、能動層20によって構成されたチャネル形成領域17、
(c)ソース/ドレイン電極16及びチャネル形成領域17上に形成されたゲート絶縁膜15(絶縁層に相当する)、並びに、
(d)ゲート絶縁膜15上に形成されたゲート電極14(制御電極に相当する)、
を備えている。
【0071】
以下、基体等の模式的な一部端面図である図3の(A)及び(B)を参照して、実施例3の電子デバイス(電界効果型トランジスタ)の製造方法の概要を説明する。
【0072】
[工程−300]
先ず、実施例1の[工程−120]と同様の方法で、基体13に相当する絶縁膜12上にソース/ドレイン電極16を形成した後、実施例1の[工程−130]と同様にして、ソース/ドレイン電極16を含む基体13(より具体的には絶縁膜12)上に、能動層20を形成する(図3の(A)参照)。
【0073】
[工程−310]
次いで、ゲート絶縁膜15を、実施例1の[工程−110]と同様の方法で形成する。その後、チャネル形成領域17の上のゲート絶縁膜15の部分に、実施例1の[工程−100]と同様の方法でゲート電極14を形成する(図3の(B)参照)。
【0074】
[工程−320]
最後に、全面にパッシベーション膜(図示せず)を形成することで、実施例3の半導体装置を完成させることができる。
【実施例4】
【0075】
実施例4も、実施例1の変形である。実施例4にあっては、電子デバイスを、トップゲート/トップコンタクト型のFET(具体的には、TFT)とした。実施例4の電界効果型トランジスタは、図4の(C)に模式的な一部断面図を示すように、
(a)基体13に相当する絶縁膜12上に形成され、能動層20によって構成されたチャネル形成領域17を含むチャネル形成領域構成層18、
(b)チャネル形成領域構成層18上に形成されたソース/ドレイン電極16(第1電極及び第2電極に相当する)、
(c)ソース/ドレイン電極16及びチャネル形成領域17上に形成されたゲート絶縁膜15(絶縁層に相当する)、並びに、
(d)ゲート絶縁膜15上に形成されたゲート電極14(制御電極に相当する)、
を備えている。
【0076】
以下、基体等の模式的な一部端面図である図4の(A)〜(C)を参照して、実施例4の電子デバイス(電界効果型トランジスタ)の製造方法の概要を説明する。
【0077】
[工程−400]
先ず、実施例1の[工程−130]と同様にして、基体13(より具体的には絶縁膜12)上に、能動層20を形成する(図4の(A)参照)。
【0078】
[工程−410]
次いで、実施例1の[工程−120]と同様の方法で、チャネル形成領域構成層18上にソース/ドレイン電極16を形成する(図4の(B)参照)。
【0079】
[工程−420]
その後、ゲート絶縁膜15を実施例1の[工程−110]と同様の方法で形成する。次いで、チャネル形成領域17の上のゲート絶縁膜15の部分に、実施例1の[工程−100]と同様の方法でゲート電極14を形成する(図4の(C)参照)。
【0080】
[工程−430]
最後に、全面にパッシベーション膜(図示せず)を形成することで、実施例4の半導体装置を完成させることができる。
【実施例5】
【0081】
実施例5も、実施例1の変形である。実施例5の電子デバイスは、制御電極(ゲート電極14)、第1電極及び第2電極(ソース/ドレイン電極16)への電圧の印加によって能動層20が発光する発光素子から成る。尚、基本的に、無機半導体微粒子のサイズを選ぶことにより、赤、緑、青の3色を発光させることができる。例えば、CdSe/ZnSから無機半導体微粒子を構成した場合、無機半導体微粒子の直径が約3nmのときには青色を発光し、直径が約5nmのときには緑色を発光し、直径が約7nmのときには赤色を発光する。
【0082】
実施例5においても、具体的には、無機半導体微粒子21、アルキル鎖、アルキル鎖の他端に結合した有機半導体分子を、実施例1と同様とすることができる。
【0083】
実施例5の電子デバイスの具体的な構成、構造は、実施例1〜実施例4において説明した電子デバイスの構成、構造と同様とすることができるので、詳細な説明は省略する。尚、実施例5の電子デバイスにあっては、従来の有機エレクトロルミネッセンス表示装置に必要とされる電子輸送層やホール輸送層は不要である。
【0084】
実施例5の電子デバイスにあっては、先に説明したとおり、制御電極、第1電極及び第2電極(ゲート電極14及びソース/ドレイン電極16)への電圧印加状態に依存して、複合材料内において正孔と電子とが再結合し、蛍光を発する。発光色は、無機半導体微粒子21の粒径に依存し、あるいは又、第1電極及び第2電極(ソース/ドレイン電極16)への電圧印加状態(バイアス)に依存する。従って、第1電極及び第2電極(ソース/ドレイン電極16)への電圧印加状態(バイアス)を制御し、あるいは又、所望の粒径を有する無機半導体微粒子から構成された複合材料を所望の領域に配置することによって、発光色の制御を行うことが可能となる。例えば、赤色を発光する電子デバイスと、緑色を発光する電子デバイスと、青色を発光する電子デバイスとを、例えば、デルタ配列、ストライプ配列、ダイアゴナル配列、あるいは、レクタングル配列に基づき配列すれば、カラー画像表示を行うことが可能となる。尚、能動層20への光の照射によって第1電極と第2電極との間(ソース/ドレイン電極16の間)に電流が流れる光電変換素子として機能させることも可能である。そして、この場合、第1電極及び第2電極を構成する材料を適切に選択することで太陽電池として機能させることができるし、無機半導体微粒子のサイズを選ぶことにより、赤、緑、青の3色に対して異なる感度を有するイメージセンサーとして機能させることができる。
【実施例6】
【0085】
実施例6は、本発明の第2の態様若しくは第3の態様に係る電子デバイス、及び、本発明の第2の態様に係る電子デバイスの製造方法に関する。実施例6の電子デバイスは、模式的な一部断面図を図5に示すように、
(A)第1電極31及び第2電極32、並びに、
(B)第1電極31と第2電極32の間に設けられた能動層33、
を備えた2端子型の電子デバイスである。そして、能動層33への光の照射によって電力が生成する。即ち、実施例6の電子デバイスは、太陽電池として機能する。あるいは又、第1電極31及び第2電極32への電圧の印加によって能動層33が発光する発光素子として機能する。
【0086】
能動層33は、保護層で被覆された無機半導体微粒子34から構成された複合材料(概念図は、無機半導体微粒子の参照番号が異なる点を除き、図1の(C)の概念図と同じである)の集合から成り、保護層は、無機半導体微粒子に結合した官能基を一端に有するアルキル鎖、及び、アルキル鎖の他端に結合した有機半導体分子から成る。ここで、具体的には、無機半導体微粒子34、アルキル鎖、アルキル鎖の他端に結合した有機半導体分子を、実施例1と同様とすることができる。また、第1電極31は、高仕事関数を有する金属[具体的には、光を透過するITOから構成された透明電極]から成り、第2電極32は、低仕事関数を有する金属[具体的には、アルミニウム(Al)]から成る。
【0087】
実施例6の電子デバイスにあっては、先に説明したとおり、能動層33を構成する複合材料内において、pn接合部には界面電位があって、障壁の電界が存在する。そして、この能動層33に第1電極31(あるいは、構成材料によっては第2電極32)を介して光が照射されることによって、複合材料において生成した正孔及び電子は、この電界のために引き分けられ、電位差(光起電力)が生じる。生成した正孔は、複合材料の外殻を構成する保護層における有機半導体分子を伝わって、最終的に第1電極31に到達する。一方、電子はホッピングによって無機半導体微粒子を伝わり、最終的に第2電極32に到達する。第2電極32は、低仕事関数を有する金属、具体的には、アルミニウム(Al)から成るので、電子は容易に第2電極32に注入される。こうして、実施例6の電子デバイスにあっては、能動層33に光が照射されることによって、電力(光起電力)が生成する。更には、n型導電性を有する無機半導体微粒子は、自らも、光励起状態から電子を直接第2電極32へ注入することが可能であるが故に、太陽光に対する光増感作用の効率を一層高めることができる。
【0088】
あるいは又、実施例6の電子デバイスにあっては、先に説明したとおり、第1電極31及び第2電極32への電圧印加状態に依存して、例えば第2電極32から無機半導体微粒子に電子が注入され、この電子はホッピングによって無機半導体微粒子を伝わり、能動層33の全体へと行き亘る。一方、第1電極から有機半導体分子に正孔が注入されると、キヤリアー(正孔、電子)の注入により、無機半導体微粒子と有機半導体分子との界面では強い電場が生じ、正孔が有機半導体分子から無機半導体微粒子内に注入され、あるいは又、電子が無機半導体微粒子から有機半導体分子内に注入され、エキシトンが形成され、直ちに再結合し、蛍光を発する。尚、実施例6の電子デバイスを発光素子として機能させる場合、第1電極31及び第2電極32を構成する材料には、上述した制限、即ち、第1電極31を構成する材料は高仕事関数を有する金属とし、第2電極32を構成する材料は低仕事関数を有する金属とするといった制限は無く、導電性を有する材料であれば、第1電極31及び第2電極32を如何なる材料から構成してもよい。また、無機半導体微粒子のサイズを、例えば、実施例5に記載したと同様とすれば、青色の発光、緑色の発光、赤色の発光を得ることができる。
【0089】
実施例6の電子デバイスの製造にあっては、例えば、ガラスのような無機材料、ポリイミドやポリエチレンテレフタレートのような有機高分子材料から成る支持部材30上にスパッタリング法に基づき、ITOから成る第1電極31を形成した後、第1電極31上にPEDOT/PSSから成るバッファ層(図示せず)を形成し、係るバッファ層上に、能動層33を、複合材料を含む溶液(溶媒として、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン等の有機溶媒を使用)を用いた塗布法(例えば、スピンコート法)に基づき形成する。次いで、アルミニウムから成る第2電極32を真空蒸着法に基づき能動層33上に形成する。こうして、実施例6の電子デバイスを得ることができる。
【0090】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。電子デバイスの構造や構成、形成条件、製造条件は例示であり、適宜変更することができる。本発明によって得られた電子デバイスである電界効果型トランジスタ(FET)を、例えば、ディスプレイ装置や各種の電子機器に適用、使用する場合、支持体や支持部材に多数のFETを集積したモノリシック集積回路としてもよいし、各FETを切断して個別化し、ディスクリート部品として使用してもよい。実施例1〜実施例5において説明した本発明の第1の態様に係る電子デバイスにおいては、能動層への光の照射によって電力を生成し得るので、能動層を構成する材料を適切に設計、選択することで、1つの電子デバイスが、有機太陽電池を含む光電変換素子、有機トランジスタ、有機発光素子といった3種類の電子デバイスとしての機能を発揮することが可能となる。
【符号の説明】
【0091】
10・・・支持体、11・・・ガラス基板、12・・・絶縁膜、13・・・基体、14・・・ゲート電極(制御電極)、15・・・ゲート絶縁膜(絶縁層)、16・・・ソース/ドレイン電極(第1電極及び第2電極)、17・・・チャネル形成領域、18・・・チャネル形成領域構成層、20,33・・・能動層、21,34・・・無機半導体微粒子、30・・・支持部材、31・・・第1電極、32・・・第2電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)第1電極及び第2電極、並びに、
(B)第1電極と第2電極の間に設けられた能動層、
を備えた2端子型の電子デバイスであって、
能動層は、保護層で被覆された無機半導体微粒子から構成された複合材料の集合から成り、
保護層は、無機半導体微粒子に結合した官能基を一端に有するアルキル鎖、及び、アルキル鎖の他端に結合した有機半導体分子から成り、
無機半導体微粒子はn型導電性を有し、有機半導体分子はp型導電性を有し、
能動層への光の照射によって電力が生成することを特徴とする電子デバイス。
【請求項2】
第1電極は、高仕事関数を有する金属から成り、
第2電極は、低仕事関数を有する金属から成ることを特徴とする請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
第1電極はITOから成り、第2電極はアルミニウム又はマグネシウムから成ることを特徴とする請求項2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
(A)第1電極及び第2電極、並びに、
(B)第1電極と第2電極の間に設けられた能動層、
を備えた2端子型の電子デバイスであって、
能動層は、保護層で被覆された無機半導体微粒子から構成された複合材料の集合から成り、
保護層は、無機半導体微粒子に結合した官能基を一端に有するアルキル鎖、及び、アルキル鎖の他端に結合した有機半導体分子から成り、
無機半導体微粒子はn型導電性を有し、有機半導体分子はp型導電性を有し、
第1電極及び第2電極への電圧の印加によって能動層が発光することを特徴とする電子デバイス。
【請求項5】
アルキル鎖は、−(CH2n−(但し、nは3乃至18の整数)であることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の電子デバイス。
【請求項6】
有機半導体分子は、縮合多環芳香族化合物、ポルフィリン系誘導体、フェニルビニリデン系のオリゴマー、及び、チオフェン系のオリゴマーから成る群から選択された化合物であることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の電子デバイス。
【請求項7】
アルキル鎖の一端が有する官能基は、チオール基(−SH)、アミノ基(−NH2)、シアノ基(−NC)、カルボキシ基(−COOH)、リン酸基、及び、ホスフィンオキシド基(−P=O)から成る群から選択された官能基であることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の電子デバイス。
【請求項8】
無機半導体微粒子は、CdS、CdSe、ZnS、CdSe/CdS、CdSe/ZnS、PbSe、及び、ZnOから成る群から選択された少なくとも1種類の微粒子であることを特徴とする請求項1又は請求項4に記載の電子デバイス。
【請求項9】
(A)第1電極及び第2電極、並びに、
(B)第1電極と第2電極の間に設けられた能動層、
を備えた2端子型の電子デバイスであって、
能動層は、保護層で被覆された無機半導体微粒子から構成された複合材料の集合から成り、
保護層は、無機半導体微粒子に結合した官能基を一端に有するアルキル鎖、及び、アルキル鎖の他端に結合した有機半導体分子から成り、
無機半導体微粒子はn型導電性を有し、有機半導体分子はp型導電性を有し、
能動層への光の照射によって電力が生成し、あるいは又、第1電極及び第2電極への電圧の印加によって能動層が発光する電子デバイスの製造方法であって、
能動層を、複合材料を含む溶液を用いた塗布法に基づき形成することを特徴とする電子デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−182333(P2009−182333A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24508(P2009−24508)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【分割の表示】特願2006−225489(P2006−225489)の分割
【原出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】