説明

電子ユニット

【課題】発熱部品が高密度に実装された複数のPCBを組み合わせた全体の形状を薄型に構成しつつ、効率的に放熱する電子ユニットを提供する。
【解決手段】電子ユニット1を構成する発熱部品17が高密度実装された2枚のPCBを、いずれも半田面を上にして上下に配置し、上側に配置された第1のPCB11の半田面にはこの面を覆うように放熱板14を設け、第1のPCBからの発熱を放熱させる。また、下側に配置された第2のPCB12にはサーマルビア18を設け、発熱部品から部品面に伝導した熱を半田面側に伝導し、さらにこの半田面に放熱シート21を介して密着させた熱拡散板22に伝導して拡散・均熱化してから、2枚のPCB間に設けられた放熱スペーサ15により熱拡散板から放熱板へ熱伝導する。合わせて部品表面からの発熱は、部品面を覆うように設けられた金属ケースに伝導して拡散・均熱化し、基板スペーサ16から放熱板に伝導する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のPCBを組み合わせた電子ユニットに係り、特に、各PCBに発熱部品を高密度実装した場合における放熱構造を考慮した電子ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器等の高機能化や小型化等に伴い、これら機器を構成する各電子ユニット等に対しても、例えば機能集積度を向上させるなど、それぞれに、より一層の高機能化や小型化が求められている。このため、電子ユニット自体が高発熱密度化するのに加え、配置場所によってはその形状が例えば薄型等に制約されたり、あるいは放熱面も特定の面のみに限定されるなど、電子ユニットに対する放熱環境も厳しくなってきており、それぞれに独自の放熱構造を備えて構成されることが多い。
【0003】
発熱部品等が高密度に実装された複数のPCBを含み、全体形状の平面化かつ薄型化を図りつつ、所望の放熱を行う放熱構造を有する電子ユニットの断面図の一例を図2に示す。この図2に例示した従来の電子ユニット2は、半田面側に放熱板14を備え、部品面側には発熱部品17a〜17d等が高密度に実装された、リジッド基板によるPCB11と、同じく発熱部品17e〜17i等が実装されたリジッド基板によるPCB12とが、部品面を向かい合わせるようにPCB11を上側にして上下に並べて配置されるとともに、これら2枚のPCBの間に放熱シート13が挟み込まれるように配置されている。また、放熱板14からは、PCB11の部品面側に貫通するように複数の放熱スペーサ15a〜15cが設けられており、放熱シート13は、これら放熱スペーサ15a〜15cによりPCB12上の発熱部品17e〜17iに密着するように押さえこまれているとともに、基板スペーサ16a及び16bにより、2枚のPCB11及び12との間隔を所定の距離に維持固定し、この電子ユニット2全体を保持している。
【0004】
上記のように構成された従来の電子ユニット2における放熱経路は、主に次のようになる。すなわち、図2において上側に配置されたPCB11上に実装された発熱部品17a〜17dからの発熱は、主にこのPCB11の半田面側に設けられた放熱板14に伝導して拡散され、この放熱板14から放熱される。一方、下側に配置されたPCB12上に実装された発熱部品17e〜17iからの発熱は、上方向、すなわちこれら発熱部品の表面に密着している放熱シート13に伝導するとともに、下方向、すなわちPCB12を構成する基板側にも伝導していく。放熱シート13に伝導した熱は、さらに放熱スペーサ15a〜15cを経由して放熱板14に伝導し、放熱板14から放熱される。また、基板側からは、さらに基板スペーサ16a〜16bを経由した経路により放熱板14から放熱される。図2中には、これら下側のPCB12からの放熱経路を、矢線により示してある。
【0005】
なお、複数のPCBを組み合わせ、放熱経路を確保しつつ所望の形状に構成した事例が開示されている(例えば、特許文献1、及び特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−286757号公報(第6ページ、図1)
【特許文献2】特開2008−140924号公報(第11ページ、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、図2に例示した従来の電子ユニット2では、全体の形状を平面化かつ薄型化した上で、さらに多量の発熱に対して、放熱面としては主に片面(図2の上面)から十分な放熱が可能となるように構成されている。しかしながら、下側に配置されたPCB12の発熱部品17e〜17iからの発熱は、放熱シート13、及び放熱スペーサ15a〜15cを経由して放熱されるが、放熱スペーサ15a〜15cは、上側に配置されたPCB11上の実装部品の空きスペースに貫通させて設けられるため、その位置は、下側に配置されたPCB12上の高発熱部品の位置と的確に対応させることが困難であった。
【0008】
また、発熱部品17e〜17iの高さの差異により、放熱シート13と放熱スペーサ15a〜15cとの間や、放熱シート13と発熱部品17e〜17iとの間に隙間が生じて、熱的な接触が不十分となることがあった。このため、放熱効果が低減し、電子ユニット2が、厳しい熱的環境に置かれる場合があった。さらに、このような発熱部品17e〜17i等の高さに起因する不十分な接触状態が発生しないよう、例えば、個々の発熱部品に対応させて放熱スペーサ等の放熱経路を設けることはできるが、この場合には、機械的な構造が複雑化するとともに高密度実装も困難になり、高コスト化するという問題があった。
【0009】
本発明は、上述の事情を考慮してなされたものであり、発熱部品が高密度に実装された複数のPCBを組み合わせた全体の形状を薄型に構成しつつ、効率的に放熱する電子ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の電子ユニットは、部品面に発熱部品が高密度実装された第1のPCBと、前記第1のPCBの半田面を覆うように密着させて設けられるとともに、この第1のPCBの部品面側に貫通させ突出させた熱伝導性のスペーサを有する放熱板と、部品面に発熱部品が高密度実装されるとともに、部品面の熱を半田面に伝達するサーマルビアが形成された第2のPCBと、前記第2のPCBの発熱部品の表面と導電性接着剤により熱的に接続され、この第2のPCBの部品面側全体を覆うように設けられた金属ケースと、前記第2のPCBの半田面側に放熱シートを挟んで密着して配置された熱拡散板と、前記第1のPCBの部品面側と前記第2のPCBの半田面側に配置された熱拡散板とを対向させ、前記第1のPCBの部品面側に突出した前記放熱板のスペーサと前記熱拡散板とを熱的に接続させて全体を保持固定する基板スペーサとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、発熱部品が高密度に実装された複数のPCBを組み合わせた全体の形状を薄型に維持したまま、各発熱部品からの発熱を効率的に放熱することのできる電子ユニットを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る電子ユニットの一実施例を示す断面図。
【図2】従来の電子ユニットの一例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る電子ユニットを実施するための形態について、図1を参照して説明する。なお、以下の説明においては、背景技術の欄において図2を参照して説明した従来の電子ユニットと同一の構成に相当する部分には、同一の符号を用いて説明する。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明に係る電子ユニット1の一実施例を示す断面図である。この事例では、本電子ユニットに含まれる2枚のPCBが上下に配置された場合を示している。図1に例示したように、この電子ユニット1は、第1のPCB11、その半田面側に密着させた放熱板14、第2のPCB12、その部品面側全体を覆う金属ケース19、及び半田面側に放熱シート21を挟んで密着させた熱拡散板22、ならびに、これら2枚のPCBを含む全体を保持固定する基板スペーサ16a及び16bから構成されている。
【0015】
第1のPCB11は、本実施例においてはリジッド基板で構成されているものとし、その部品面側には形状の異なる発熱部品17a〜17dが高密度実装されている。また、半田面側には、後述の放熱板14が密着して設けられている。放熱板14は、例えば銅系やアルミニウム系合金等に代表される熱伝導率の高い材料を用いて作られている。この放熱板14の一方の面は、第1のPCBの半田面を覆うように密着しているとともに、第1のPCB11の半田面側から部品面側に貫通し突出した、熱伝導性を持った放熱スペーサ15a〜15cを備えている。この放熱スペーサ15a〜15cは、後述するが、熱拡散板22と接触して熱拡散板22から放熱板14への熱伝導経路となる。また、反対側の面は、本電子ユニット1の上面をなしており、本実施例においては、平面上に形成されているものとしている。そして、第1のPCB11、及び後述する第2のPCB12からの発熱を放熱する。
【0016】
第2のPCB12も、第1のPCBと同様にリジッド基板で構成されており、その部品面側には形状の異なる発熱部品17e〜17iが高密度実装されている。基板には、これら発熱部品17e〜17iからの熱を半田面側に伝達するためのサーマルビア18a〜18jが形成されている。また、この部品面側は、金属ケース19に覆われている。金属ケース19は、例えば銅系やアルミニウム合金等の熱伝導率の高い材料によって作られており、第2のPCB12の部品面側全体を覆うように設けられている。この金属ケース19の第2のPCB12の部品面と対向する側は、各発熱部品17e〜17iの表面と導電性接着剤20により熱的に接続されている。また、その反対側は、本電子ユニット1の下面をなしており、本実施例においては、平面状に形成されているものとしている。そして、この金属ケース19は、発熱部品17e〜17iからの発熱を自ケース全体に拡散するとともに放熱経路ともなる。なお、金属ケース19の内側全体に導電性接着剤20を充填するようにして、各発熱部品17e〜17iの表面とこの金属ケース19とを熱的に接続することもでき、図1では、このように構成した場合を例示している。
【0017】
一方、第2のPCB12の半田面側には、放熱シート21を挟んで熱拡散板22が密着して設けられている。この放熱シート21及び熱拡散板22は、第2のPCB12の半田面側全体を覆うように設けられている。また、熱拡散板22は、例えば銅系やアルミニウム合金等の熱伝導率の高い材料によって平板上に作られている。そして、第2のPCB12の半田面側の熱を全体に拡散するとともに、放熱スペーサ15a〜15cと熱的に接触し、第2のPCB12から放熱板14への熱伝導経路となる。
【0018】
基板スペーサ16a及び16bは、第1のPCB11の部品面側と第2のPCB12の半田面側を向かい合わせ、その間に、第2のPCB12の半田面に密着させた放熱シート21及び熱拡散板22を挟み込むようにして第1のPCB11の部品面に突出した放熱スペーサ15a〜15cと熱拡散板22とを密着させ、これらの熱的な接続を維持しながら電子ユニットとして全体を薄型の形状に保持固定する。また、金属ケース19m、導電性接着剤20、及び熱拡散板22から放熱板14への熱伝導経路としても機能する。
【0019】
次に、上述のように構成された本実施例の電子ユニット1の作用について、図1を参照して説明する。電子ユニット1に通電され動作を開始すると、第1のPCB11及び第2のPCB12に実装された発熱部品17a〜17iが徐々に発熱する。図1において、上側に配置されている第1のPCB11に実装された発熱部品17a〜17dからの発熱は、その半田面側に設けられた放熱板14に伝達される。この放熱板14は、第1のPCB11の半田面側全体を覆うように密着して設けられており、第1のPCB11の半田面側に伝達された熱を効率よく放熱する。
【0020】
一方、下側に配置されている第2のPCB12に実装された発熱部品17e〜17iからの熱は、各部品の取り付けパッドのある基板方向と部品表面とに向けて発せられる。この内、基板方向への熱は、基板に設けられたサーマルビア18a〜18jにより、第2のPCB12の部品面側から半田面側に伝達され、さらに、放熱シート21を挟んでこの半田面に密着させた熱拡散板22に伝達されて、この熱拡散板22全体に拡散される。熱拡散板22には放熱スペーサ15a〜15cが接触し、両者は熱的に接続されているので、熱拡散板22に伝達された熱は、これら放熱スペーサ15a〜15cを熱伝導経路として、さらに放熱板14に伝達され、放熱板14から放熱される。また、発熱部品17e〜17iの表面からの発熱は、導電性接着剤20により接着された金属ケース19に伝導されて金属ケース全体に拡散されるとともに、基板スペーサ16a〜16bを熱伝導経路として上面の放熱板14に伝達され、放熱板14から放熱される。
【0021】
一般に、PCBに実装された発熱部品から発せられる熱は、基板方向と部品表面方向とに移動するが、発熱量の半分以上は、基板方向に移動するとされており、基板方向に移動した熱に対して十分な放熱経路を確保する必要がある。本実施例においては、下側に配置された第2のPCB12に対しては、上記したように、発熱部品17e〜17iからの熱をサーマルビア18a〜18jにより半田面側に伝導し、熱拡散板22により拡散・均熱化し、さらに放熱スペーサ15a〜15cを熱伝導経路として、本ユニット上面の放熱板14へと導いており、十分な熱伝導経路が確保される。また、発熱部品17e〜17iの部品表面からの発熱も、金属ケース19により拡散・均熱化し、基板スペーサ16a〜16bを熱伝導経路として、同じく放熱板14へと導いており、十分な熱伝導経路が確保されている。従って、第2のPCB12からの発熱に対して効率の良い放熱を可能としている。
【0022】
加えて、本電子ユニット1の外側の面となる放熱板14の上面側、及び金属ケース19の下面側は、いずれも凹凸のない平板上に形成されている。特に金属ケース19は、第2のPCB12の部品面全体を覆うように設けられており、熱伝導経路として機能させつつ、各発熱部品の基板面からの高さの違い等、それぞれの部品の形状の差異を簡素な機械的構造により吸収するとともに、金属ケース19装着後の第2のPCB12全体の高さも、例えば図2に例示した従来例と大差のないものとしている。また、第2のPCB12の半田面に放熱シート21及び熱拡散板22を設けているが、これらも薄板状に構成されたものである。従って、基板スペーサ16a〜16bにより全体を保持固定した電子ユニットとしても、従来と同様に平面状かつ薄型の形状を維持している。
【0023】
以上説明したように、本実施例においては、電子ユニットを構成する発熱部品が高密度実装された2枚のPCBを、いずれも半田面を上にして上下に配置し、上側に配置された第1のPCBの半田面にはこの面を覆うように放熱板を設け、第1のPCBからの発熱を放熱させている。また、下側に配置された第2のPCBにはサーマルビアを設け、発熱部品から部品面に伝導した熱を半田面側に伝導し、さらにこの半田面に放熱シートを介して密着させた熱拡散板に伝導して拡散・均熱化し、2枚のPCB間に設けられた放熱スペーサにより熱拡散板から放熱板への熱伝導経路を確保して放熱を促進している。合わせて部品表面からの発熱は、部品面を覆うように設けられた金属ケースに伝導して拡散・均熱化し、基板スペーサを熱伝導経路として放熱板に伝導している。従って、上側に配置された第1のPCBの放熱はもちろんのこと、下側に配置された第2のPCBに対しても、簡易な機械構造によりその両面から十分な放熱経路を確保することができ、電子ユニット全体として効率の良い放熱を可能にしている。また、このような効率の良い放熱構造を、従来と同様に外側を平面とした薄型の形状のまま実現している。従って、発熱部品が高密度に実装された複数のPCBを組み合わせた全体の形状を薄型に維持したまま、各発熱部品からの発熱を効率的に放熱することのできる電子ユニットを得ることができる。
【0024】
なお、本発明は、上記した実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0025】
1、2 電子ユニット
11 第1のPCB
12 第2のPCB
13、21 放熱シート
14 放熱板
15a〜15c 放熱スペーサ
16a〜16b 基板スペーサ
17a〜17i 発熱部品
18a〜18j サーマルビア
19 金属ケース
20 導電性接着剤
22 熱拡散板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品面に発熱部品が高密度実装された第1のPCBと、
前記第1のPCBの半田面を覆うように密着させて設けられるとともに、この第1のPCBの部品面側に貫通させ突出させた熱伝導性のスペーサを有する放熱板と、
部品面に発熱部品が高密度実装されるとともに、部品面の熱を半田面に伝達するサーマルビアが形成された第2のPCBと、
前記第2のPCBの発熱部品の表面と導電性接着剤により熱的に接続され、この第2のPCBの部品面側全体を覆うように設けられた金属ケースと、
前記第2のPCBの半田面側に放熱シートを挟んで密着して配置された熱拡散板と、
前記第1のPCBの部品面側と前記第2のPCBの半田面側に配置された熱拡散板とを対向させ、前記第1のPCBの部品面側に突出した前記放熱板のスペーサと前記熱拡散板とを熱的に接続させて全体を保持固定する基板スペーサとを有することを特徴とする電子ユニット。
【請求項2】
前記放熱板の、前記第1のPCBの半田面に密着させた面と対向する面を、平面に形成したことを特徴とする請求項1に記載の電子ユニット。
【請求項3】
前記金属ケースの、前記第2のPCBの部品面側の面と対向する面を、平面に形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子ユニット。
【請求項4】
前記第1のPCB及び第2のPCBは、リジッド基板により構成したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の電子ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2011−9522(P2011−9522A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152326(P2009−152326)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】