説明

電子材料の洗浄方法

【課題】電子材料の洗浄における例えばレジストの剥離処理等に要する時間を短縮し、さらにレジスト剥離後のウエット洗浄によりレジスト残渣を短時間に確実に除去し得る低コストで省資源化の可能な洗浄方法を提供する。
【解決手段】キャリアガス制御弁14を開成し、これとともに加圧ガス制御弁19を開成して所定の圧力で加圧ガスを供給することにより加圧板16を押圧して、気体貯槽15内のキャリアガスGを所定の圧力として、キャリアガス供給配管7に供給する。これとともに洗浄液W1を二流体ノズル8へ供給する。このようにして二流体ノズル8で混合された洗浄液W1とキャリアガスGとから生成される液滴W2の噴流を、シリコンウエハ5に接触させて、該シリコンウエハ5の表面を洗浄する。洗浄液W1としては、硫酸を電気分解して得られる過硫酸を含有する硫酸溶液が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極めて厳しい制御を要求される電子材料、具体的には、半導体用のシリコンウエハ、フラットパネルディスプレイ用のガラス基板等を効果的に清浄化し、また電子材料上のレジスト等を効率的に除去するための洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品となる基板の洗浄には、例えばRCA洗浄に代表されるように高濃度の薬液や洗剤が用いられ、さらに、これらの薬液を濯ぐために非常に多量の純水・超純水が用いられている。また、半導体の製造工程には、半導体ウエハの表面に不純物として金属イオンを局所的に注入する工程が含まれる。この工程では、所望しない部分への金属イオンの注入を防ぐために、感光性樹脂材等から構成されるレジストがマスク材としてパターン形成されており、レジスト表面にも同等濃度のイオンが注入される。イオン注入されたレジストは製造上、不要な産物であるため、ウエハ表面上から剥離除去するためのレジスト除去処理が行われる。
【0003】
このようなレジスト除去処理は、アッシング装置でレジストを灰化した後、洗浄装置に搬入して洗浄液によってレジスト残渣が除去される。しかし、アッシング装置による灰化処理を行うとレジストで保護されていない部分がダメージを受けてしまうという問題がある。この問題に対して特許文献1では、ウエハ表面に硫酸と過酸化水素の混合液であるSPMを供給して、SPMに含まれるペルオキソ一硫酸(HSO)の酸化力により、ウエハ表面の不要なレジストを剥離して除去することが記載されている。
【0004】
また、SPMで洗浄した場合であってもイオンの注入量が高濃度の場合には、レジストの表面が変質していることがあるため、レジストを良好に除去できなかったり、レジストを除去するに時間がかかったりすることがある。そこで、このような場合には特許文献1には、枚葉式の洗浄装置にSPM供給ノズルと液滴を噴流する二流体ノズルとを設置し、液滴噴流を供給後、高温SPMを供給してウエハからレジストを剥離して除去する処理方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、SPMによるレジスト剥離処理は、硫酸と過酸化水素水を混合することによって酸化力を維持しながら洗浄を行うため、一旦使用すると薬液の酸化力が低下してしまう。したがって、枚葉式洗浄装置を用いたレジスト除去工程にSPMを使用する場合は、薬液を循環して再利用すると洗浄力が安定的でなく、さらに硫酸と過酸化水素水を大量に消費するので、ランニングコストが高く、多量の廃液を発生するという欠点がある。
【0006】
このような問題を解決するために、洗浄工程のコスト削減や環境負荷低減と洗浄品質向上の両立を目指し、様々な取り組みがなされ、成果を挙げてきた。例えば、本出願人は、SPM洗浄液の代替として、ダイヤモンドでコーティングした電極で、硫酸を電気分解して得られるペルオキソ一硫酸等の酸化性物質を含有した電解硫酸液を洗浄液とし、硫酸を循環使用する洗浄方法及び洗浄システムを提案している(例えば、特許文献2,3)。この方法であれば、酸化力を容易に一定以上に維持することができるとともに、薬液の追加注入や薬液の入れ替えがほとんどないため、薬液量の大幅削減を図れることが期待されている。また、高い酸化力の洗浄液を連続的に製造することができるので、条件によっては後段でアッシング処理を行わない剥離洗浄(アッシングレスでの洗浄)を実現することが可能となるため、アッシングによるダメージがなく質の向上も図られる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−109167号公報
【特許文献2】特開2006−114880号公報
【特許文献3】特開2006−278687号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されたSPMによるレジスト剥離処理方法においては、製造工程が複雑になることにより、製造に要する時間が長くなる傾向にあることから、レジスト剥離工程を含め、各工程に要する時間を短縮することが望まれる。また、硫酸溶液を電解して得られた過硫酸含有硫酸溶液を用いてアッシングレスでレジストの剥離洗浄を行った場合、剥離されなかったレジスト残渣が電子材料上に残留し易いため、後段のウエット洗浄において十分な洗浄を行う必要があり、多量の純水・超純水を消費することになり、洗浄力の向上により低コストで省資源化を達成することが望まれている。
【0009】
そこで、特許文献2及び特許文献3に提案されている洗浄方法を適用することが考えられる。この洗浄方法により、薬液使用量、廃液量を削減すると同時に高い洗浄効果を得ることができる。また、特許文献3に記載された洗浄方法は、枚葉式の洗浄にも適用可能である。しかしながら、ドーズ量が多いレジストは、単に硫酸溶液を電解して得られた過硫酸含有硫酸溶液を用いただけでは除去しきれないものもあり、洗浄力の向上が課題であった。さらに、電子材料一般について洗浄効率を高めることができれば、産業上の利用価値が高いことこの上ない。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、電子材料を低コストで省資源化の可能な洗浄方法を提供することを目的とする。特に本発明は、例えばレジストの剥離処理等に要する時間を短縮し、さらにレジスト剥離後のウエット洗浄によりレジスト残渣を短時間に確実に除去し得る洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、洗浄液と気体とから生成される液滴の噴流を、電子材料に接触させて、前記電子材料を洗浄することを特徴とする電子材料の洗浄方法を提供する(請求項1)。
【0012】
上記発明(請求項1)によれば、洗浄液と気体とから生成される液滴の噴流を電子材料に接触させて電子材料の表面を洗浄することにより、洗浄液だけで洗浄するよりも洗浄力が非常に向上するので、電子材料の表面の有機物等を簡便かつ迅速に洗浄することができる。
【0013】
上記発明(請求項1)においては、前記洗浄液が、硫酸、硫酸過酸化水素水混合液及びオゾン溶解硫酸、並びに硫酸を電気分解して得られる洗浄液からなる群より選ばれる1種の液体又は2種以上の混合液からなるのが好ましい(請求項2)。
【0014】
上記発明(請求項2)によれば、これらの薬液の洗浄力を向上させることができるので、シリコンウエハ等の電子材料上のレジスト等でも効果的に除去することができる。
【0015】
また、上記発明(請求項1)においては、前記洗浄液がオゾン水、酸素水、窒素水、水素水及びこれらを加温した水からなる群より選ばれる1種の液体からなるのが好ましい(請求項3)。
【0016】
上記発明(請求項3)によれば、これらの薬液の洗浄力を向上させることができるので、電子材料上の有機物等を効果的に除去して清浄化することができる。
【0017】
上記発明(請求項1〜3)においては、前記気体が、窒素、酸素、希ガス、水素、二酸化炭素、オゾン、清浄空気及び水蒸気からなる群より選ばれる1種のガス又は2種以上の混合ガスであるのが好ましい(請求項4)。
【0018】
上記発明(請求項4)によれば、これらの気体と洗浄液とから生成される液滴の噴流を電子材料に接触させて電子材料の表面を洗浄することにより、洗浄液だけで洗浄するよりも非常に洗浄力が向上するので、電子材料の表面の有機物等を簡便かつ迅速に洗浄することができる。
【0019】
上記発明(請求項1〜4)においては、前記気体の供給温度が、80〜200℃であるのが好ましい(請求項5)。
【0020】
上記発明(請求項5)によれば、洗浄液の温度を低下させることなく、洗浄液と気体とから生成される液滴の噴流により、前記電子材料を洗浄することができる。
【0021】
上記発明(請求項1〜5)においては、前記洗浄液の供給温度が、60〜180℃であるのが好ましい(請求項6)。
【0022】
上記発明(請求項6)によれば、高温の洗浄液により電子材料を効率よく、短時間で洗浄することができる。
【0023】
上記発明(請求項1〜6)においては、前記電子材料が、回転装置に固定されて枚葉洗浄されるのが好ましい(請求項7)。
【0024】
上記発明(請求項7)によれば、電子材料を回転させつつ、電子材料表面に向けて洗浄液や液滴の噴流を流しかける枚葉ごとのスピン洗浄を効率良く行うことができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の電子材料の洗浄方法によれば、洗浄液と気体とから生成される液滴の噴流を電子材料に接触させて電子材料の表面を洗浄することにより、洗浄液だけで洗浄するよりも非常に洗浄力が向上するので、電子材料の表面の有機物等を簡便かつ迅速に洗浄することができる。この洗浄液としては、硫酸を電気分解して得られる過硫酸を含有する硫酸溶液が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態に係る電子材料の洗浄方法を適用可能な洗浄システムを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る電子材料の洗浄方法であるウエット洗浄方法を適用可能な洗浄システムを示すフロー図である。
【0028】
図1において、電子材料洗浄システムは、枚葉式洗浄装置1と洗浄流体供給装置2とを備える。枚葉式洗浄装置1は、チャンバ3内に回転装置4を設置した構成を有しており、この回転装置4の回転台4Aに被洗浄物である電子材料としてのシリコンウエハ5が固定されている。このチャンバ3は、その下方から排気が可能な構成とするのが好ましい。また、回転台4Aへのシリコンウエハ5の固定方法に特に制限はないが、回転台4A内部を減圧状態としてシリコンウエハ5を回転台4Aと密着させる方法(真空チャック)が好適である。この場合、回転台4Aとシリコンウエハ5との接触面にテフロンゴム又はフッ素系エラストマー(パーフロロエラストマー)で空間を設け、減圧して回転台4Aとシリコンウエハ5とを密着させる方式が好適である。
【0029】
洗浄流体供給装置2は、図示しない洗浄液源に接続した洗浄液供給配管6と、キャリアガス供給配管7と、これら両配管がそれぞれ接続された内部混合型の二流体ノズル8とを備える。洗浄液供給配管6には、上流側より洗浄液制御弁9と、洗浄液W1の供給圧を計測する供給液圧力計10が取り付けられたジョイント11とがそれぞれ設けられている。この二流体ノズル8の接液部分は、耐熱性、耐薬品性の高い部材であることが望ましく、フッ素樹脂や石英等が好適である。
【0030】
また、キャリアガス供給配管7には、上流側よりキャリアガス圧力計12が取り付けられたジョイント13と、キャリアガス制御弁14とが設けられていて、その基端部は気体貯槽15に接続されている。気体貯槽15は、キャリアガス調整容器Aと加圧板16とにより形成された、その容積が可変可能な密閉構造となっていて、キャリア原料ガス制御弁17を備えたキャリア原料ガス供給配管18が延在している。このキャリアガス原料ガス供給配管18は、キャリアガス調整容器A及び気体貯槽15の密封状態を維持したままキャリアガス調整容器A及び加圧板16を貫通して気体貯槽15に連通している。さらに、該加圧板16とキャリアガス調整容器Aとから形成される外側空間には、図示しない加圧ガス源に接続され、途中に加圧ガス制御弁19と、加圧ガス圧力計20が取り付けられたジョイント21とが設けられた加圧ガス供給配管22が設けられている一方、途中に排気弁23が設けられた排気管24が設けられている。なお、気体貯槽15には、図示しない制御機構に接続した加熱器25が配置されていて、キャリアガスGを後述する所定の温度に制御可能となっている。なお、これらの各種配管としては、PFAチューブ等を用いることができる。
【0031】
ここで、キャリアガスGの供給圧力は、キャリアガス供給圧力計12で表示されるが、洗浄液W1の給水圧力Lより高くする必要がある。目安として、キャリアガス供給圧力(O)は、洗浄液のノズル給水圧力(L)より0.1〜0.2MPa程度高いのが好適に用いられる。そして、このキャリアガスGは二流体ノズル8へ5〜30秒間供給されることが望ましい。
【0032】
このため、気体貯槽15には十分な量のキャリアガスGを貯留・供給する必要がある。具体的には、キャリアガスGの二流体ノズル8への供給時間を10秒とし、洗浄間隔を5分とした場合、キャリアガスGの流量は100〜300NL/分供給するのが望ましい。例えば、キャリアガスGの流量を120NL/分とした場合、1回の洗浄に必要なキャリアガス量(V(L))は、下記式(1)となる。
【0033】
V(L)=120(NL/分)÷60×10(秒)=20(L,標準状態) …(1)
【0034】
したがって、上記気体貯槽15は、上記式(1)を十分超える容積(最大容積)とするのが望ましく、装置上の余裕を考慮すると、必要量の1.5倍である30L程度とするのが望ましい。なお。気体貯槽15の容積をあまり大きくしても、意味がないばかりか加熱器25による効率が悪くなるため最大でも2倍以下程度である。
【0035】
上述したような構成の洗浄システムにおいて、洗浄液W1としては、洗浄対象となる電子材料や洗浄目的に応じて任意に選択することができ、例えば、硫酸、硫酸過酸化水素水混合液(SPM)及びオゾン溶解硫酸(SOM)、並びに硫酸を電気分解して得られる洗浄液からなる群より選ばれる1種の液体又は2種以上の混合液等を用いることができる。
【0036】
特に、本実施形態のように被洗浄物がシリコンウエハ5の場合には、硫酸を電気分解して得られる洗浄液が好ましい。この硫酸を電気分解して得られる洗浄液は、図示しない電解反応装置で硫酸を電気分解することにより、過硫酸を含有する硫酸溶液として製造することができるものである。ここで過硫酸とは、ペルオキソ一硫酸(HSO)及びペルオキソ二硫酸(H)を示す。これらペルオキソ一硫酸とペルオキソ二硫酸は、いずれも高い酸化力を有する。
【0037】
電解反応装置では、陽極と陰極とを対にして電気分解を行う。この電極の材質には、特に制限はないが、電極として一般に広く利用されている白金を陽極として使用した場合、過硫酸を効率的に製造することができず、白金が溶出するという問題がある。そこで、本実施形態においては、電極の少なくとも陽極に導電性ダイヤモンド電極を使用する。導電性ダイヤモンド電極を用い、電流密度0.2A/cm程度の条件下において、硫酸イオン又は硫酸水素イオンからペルオキソ二硫酸イオンを生成し得ることが知られている(Ch.Comninellis et al., Electrochemical and Solid-State Letters, Vol.3, No.2, pp.77-79, 2000)。
【0038】
上記導電性ダイヤモンド電極としては、シリコンウエハ等の半導体材料を基板とし、この基板表面に導電性ダイヤモンド薄膜を膜厚20μm以上に合成させたものや、基板を用いず板状に析出合成したセルフスタンド型導電性多結晶ダイヤモンドを挙げることができる。なお、導電性ダイヤモンド薄膜はダイヤモンド薄膜の合成の際にホウ素又は窒素をドープして導電性を付与したものであり、通常はホウ素をドープしたものが一般的である。これらのドープ量は、少なすぎると技術的意義が発生せず、多すぎてもドープ効果が飽和するため、ダイヤモンド薄膜の炭素量に対して、50〜20000ppmの範囲のものが適している。この導電性ダイヤモンド電極は、通常は板状のものを使用するが、網目構造物を板状にしたものも使用できる。この電解反応装置における電解処理においては、導電性ダイヤモンド電極表面の電流密度を10〜100000A/mとし、濃硫酸をダイヤモンド電極面と平行方向に、通液線速度を10〜10000m/hで接触処理させることが望ましい。
【0039】
このようにして製造される硫酸を電気分解して得られる洗浄液においては、硫酸の濃度が80〜96質量%(過硫酸濃度2〜20[g/L(as S)])となるようにするのが好ましい。過硫酸濃度が2[g/L(as S)]未満では酸化力が不足し、レジストの剥離効果等十分なシリコンウエハ5の洗浄効果が得られない一方、20[g/L(as S)]を超えると電流効率の面から非効率的である。
【0040】
さらに、洗浄液W1として、オゾン水、酸素水、窒素水、水素水等のガス溶解水、又はこれらを加温した温水等を用いることができる。
【0041】
上述したような洗浄液W1は、使用する洗浄液の種類にもよるが、60〜180℃に加熱して用いるのが好ましい。
【0042】
また、キャリアガスGとしては、窒素、酸素、希ガス、水素、二酸化炭素、オゾン、清浄空気及び水蒸気等からなる群より選択される1種のガスを単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。
【0043】
次に、上述したような電子材料洗浄システム、洗浄液W1及びキャリアガスGを用いた本実施形態の電子材料の洗浄について説明する。
【0044】
まず、図示しないキャリア原料ガス源からキャリア原料ガス供給配管18を経由して気体貯槽15にキャリア原料ガスを供給する。このキャリア原料ガスは、キャリア原料ガス制御弁17により所定の流量及び圧力に制御された状態で供給される。このとき、排気弁23は開成していて、加圧板16の上部の空間の空気を排気管24から系外へ排出することにより加圧板16が上昇して気体貯槽15の容積が増大する。さらに、加熱器25により気体貯槽15内のキャリア原料ガスが加熱される。このキャリア原料ガスは、加熱器25により80〜200℃、特に100〜180℃に加熱するのが好ましい。これにより気体貯槽15から供給されるキャリアガスGの温度もこれとほぼ同じ温度となるが、キャリアガスGをこのような温度とすることにより、洗浄液W1を60〜180℃に加熱した場合であっても、二流体ノズル8においてキャリアガスGと混合しても洗浄液W1の温度低下を招くことがない。
【0045】
続いて、キャリアガス制御弁14を開成したら、これとともに加圧ガス制御弁19を開成して所定の圧力で加圧ガスを供給することにより加圧板16を押圧して、気体貯槽15内のキャリアガスGを所定の圧力でキャリアガス供給配管7に供給する。このキャリアガスGは、キャリアガス制御弁14で所定の流量に調整されて、二流体ノズル8へ供給される。本実施形態においては、洗浄時間を5分としているので、流量5NL/分で4分間(20L(標準状態))供給し1分間の予備時間を設けて二流体ノズル8へ供給される。
【0046】
これとともに洗浄液W1を二流体ノズル8へ供給する。この洗浄液W1洗浄流体の液量は0.05〜0.5L/分が好ましく、0.1〜0.4L/分程度が好ましい。また、洗浄液W1の供給液圧力は0.05〜0.5MPa程度が望ましく、0.1〜0.4MPa程度が好ましい。そして、洗浄液W1の供給温度は、60〜180℃、特に80〜160℃にあらかじめ加熱して供給するのが好ましい。
【0047】
上述したようなキャリアガスGと洗浄液W1とは、洗浄液W1の体積1に対してキャリアガスGが10〜10000となるように流量を適宜制御して供給すればよい。
【0048】
そして、二流体ノズル8において洗浄液W1とキャリアガスGとを混合しながら噴出することにより生成される液滴W2の噴流を、シリコンウエハ5に接触させて、その表面を洗浄する。このとき回転台4Aを10〜500rpm、好ましくは100〜300rpmで回転させる。これによりシリコンウエハ5を効果的に洗浄することができる。このとき本実施形態においては、チャンバ3がその下方から排気が可能な構成となっているので、二流体ノズル8から吐出される液滴W2の噴流によるミストがチャンバ3内で舞い上がることがなく、被洗浄物であるシリコンウエハ5に液滴W2が付着して汚染するのを防止可能となっている。
【0049】
このようにして薬液洗浄工程を終了したら、必要に応じリンス水によるリンス洗浄を行っても良い。リンス水としては通常超純水が使用される。ここで、超純水とは、例えば、電気比抵抗が18MΩ・cm以上で、金属イオン濃度が5ng/L以下で、残留イオン濃度が10ng/L以下で、1mL中に0.1μm以上の微粒子数が5個以下で、TOCが0.1〜10μg/Lの水質を有する水をいう。また、ウエット洗浄を行ってもよい。このウエット洗浄は、純水もしくは各種ガス等を溶解した機能性水により、シリコンウエハ5を洗浄すればよい。
【0050】
上記洗浄後は、常法に従って、スピン乾燥、IPA乾燥等を行うことにより、一連のレジスト剥離洗浄除去処理を終了し、レジストを除去した電子材料は、次工程へ送給される。
【0051】
このような操作を連続的あるいは断続的に繰り返すことにより、シリコンウエハ5を順次処理することができる。なお、一枚のシリコンウエハ5に対して上記操作を複数回繰り返してもよい。
【0052】
以上、本発明を前記実施形態に基づき説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されない。
【0053】
前記実施形態においては、シリコンウエハ5に対してアッシングを行わない場合について説明してきたが、洗浄液洗浄を行うに先立ち、アッシング処理を行ってもよい。アッシング処理は、常法に従って、酸素プラズマ等により、電子材料上のレジストを灰化処理することにより行われる。ただし、本発明において、硫酸溶液の電気分解により製造した過硫酸含有硫酸溶液を用いればアッシング処理を省略しても、レジスト残渣の問題を引き起こすことなく、確実にレジストを洗浄除去することができ、アッシング処理の省略で、一連のレジスト剥離処理に要する時間とコストの大幅な削減が可能となる。
【0054】
また、電子材料としては、本実施形態においては、シリコンウエハ5の場合について説明してきたが、フラットパネルディスプレイ等他の電子材料にも適用可能である。
【実施例】
【0055】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0056】
〔実施例1〕
図1に示す装置を使用して、電子材料としてKrFエキシマレーザを用いてパターンを形成し、Asイオンの注入濃度1E+15[atoms/cm]でレジストを形成した6インチのシリコンウエハに対し、以下の条件でレジストを剥離除去する試験を行った。
【0057】
<洗浄条件>
二流体ノズル8:スプレーイングジャパン社製,二流体ノズル
洗浄液W1:硫酸濃度85%の電解硫酸溶液(過硫酸濃度約5g/L(as S)、二流体ノズル8の直前の温度150℃)
キャリアガスG:窒素ガス(加熱温度160℃)
洗浄液W1の供給液量:0.4L/分
洗浄液W1のノズル供給水圧:0.2MPa
キャリアガスGの供給圧:0.3MPa
洗浄時の回転台4Aの回転数:100rpm
洗浄時間(1スウィング):10秒
【0058】
上記洗浄条件において、二流体ノズル8からシリコンウエハ5の中心に液の供給を始め、シリコンウエハ5の中心から端まで続いて端から中心まで移動させる動きを1スウィングとして10秒間で行い、これを5スウィング行った。洗浄前後のレジスト除去挙動をレーザー顕微鏡で観察したところ、ウエハ表面の全てでレジストを剥離できていることが確認された。この実施例1から、電解硫酸溶液と窒素ガスとの二流体洗浄により、アッシングレスでレジストを完全に剥離除去することができることが確認された。
【0059】
〔比較例1〕
実施例1において、洗浄液W1として純水を使用したがレジストを全く除去できなかった。
【0060】
〔実施例2〕
実施例1において、洗浄液W1を30mg/Lの濃度で60℃の温オゾン水とし、洗浄対象であるシリコンウエハとしてドーズなしの再生品、いわゆるリワーク品をとした以外は実施例1と同様にして洗浄を行い、洗浄前後のレジスト除去挙動をレーザー顕微鏡で観察したところ、ウエハ表面の全てでレジストを剥離できた。この実施例2から、リワーク品であれば、温オゾン水との二流体洗浄により、アッシングレスでレジストを完全に剥離除去することができることが確認された。
【0061】
〔比較例2〕
前記実施例2において、洗浄液W1として純水を使用したがレジストを全く除去できなかった。
【符号の説明】
【0062】
4…回転装置
4A…回転台(回転装置)
5…シリコンウエハ(電子材料)
G…キャリアガス(気体)
W1…洗浄液
W2…洗浄液と気体とから生成される液滴

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄液と気体とから生成される液滴の噴流を、電子材料に接触させて、前記電子材料を洗浄することを特徴とする電子材料の洗浄方法。
【請求項2】
前記洗浄液が、硫酸、硫酸過酸化水素水混合液及びオゾン溶解硫酸、並びに硫酸を電気分解して得られる洗浄液からなる群より選ばれる1種の液体又は2種以上の混合液からなることを特徴とする請求項1に記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項3】
前記洗浄液が、オゾン水、酸素水、窒素水、水素水及びこれらを加温した水からなる群より選ばれる1種の液体からなることを特徴とする請求項1に記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項4】
前記気体が、窒素、酸素、希ガス、水素、二酸化炭素、オゾン、清浄空気及び水蒸気からなる群より選ばれる1種のガス又は2種以上の混合ガスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項5】
前記気体の供給温度が、80〜200℃であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項6】
前記洗浄液の供給温度が、60〜180℃であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電子材料の洗浄方法。
【請求項7】
前記電子材料が、回転装置に固定されて枚葉洗浄されることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の電子材料の洗浄方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−205015(P2011−205015A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−72936(P2010−72936)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】