説明

電子部品搬送装置及び電子部品搬送装置のクリーニング方法

【課題】微小パーティクルを効率よく除去する。
【解決手段】半導体素子のような電子部品を収納し、当該電子部品を搬送する電子部品搬送装置10Aは、電子部品が搭載される複数の電子部品支持部11と、複数の電子部品支持部11を個々の電子部品支持部11に画定する突起部12,13,14と、を備えている。そして、電子部品支持部11と突起部12,13,14の間の第1の領域並びに突起部12,13,14の端間の第2の領域とが電子部品搬送装置10Aの下面10bから同一の高さに構成されている。このような電子部品搬送装置10Aであれば、微小パーティクルが第1の領域及び第2の領域で滑降し、当該微小パーティクルが効率よく除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子部品搬送装置及び電子部品搬送装置のクリーニング方法に関し、特に電子部品を収納し、搬送する電子部品搬送装置及び電子部品搬送装置のクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の半導体チップを一括して搬送する手段として、チップ搬送用のトレイが使用される。
当該トレイは、通常、樹脂により構成されており、半導体チップを収納する窪み、キャビティ、ポケット等の凹部を備えている。また、凹部は、当該トレイ上に縦横に複数配置されている。そして、半導体チップを収納したトレイを複数段に積層させて、多数の半導体チップを一括して目的地にまで搬送することができる。
【0003】
また、最近では、トレイ内の異物が半導体チップに付着することを防止するために、凹部の底を開口させたトレイが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−001739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記凹部は、通常、樹脂の壁体により個々に分離された構造をなし、当該凹部に異物(例えば、微小パーティクル)が残存すると、その除去に手間を要してしまう。特に、凹部の底のエッジに異物が入り込んでしまうと、その除去は益々困難なものになる。
【0005】
また、凹部の底を開口させたトレイでは、そのトレイを積層させると、開口させた部分から異物が落下し、その下方に位置する半導体チップに異物が付着してしまう。このままの状態で半導体チップを搬送すると、半導体チップが損傷する場合もある。
【0006】
特に、最近の半導体チップは、微細化、高集積化に進行している。これにより、接続端子及びボンディングワイヤが狭ピッチになり、異物の半導体チップへの付着によって、半導体チップは損傷を受け易い状況にある。
【0007】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、電子部品を搬送するトレイ内の微小パーティクルを効率よく除去することのできる電子部品搬送装置及び電子部品搬送装置のクリーニング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、電子部品を搬送する電子部品搬送装置であって、前記電子部品を載置する複数の支持部と、前記複数の支持部を個々の支持部に画定する突起部と、を有し、前記支持部と前記突起部の間の第1の領域並びに前記突起部の端間の第2の領域とが前記電子部品搬送装置の下面から同一の高さに配置されていることを特徴とする電子部品搬送装置が提供される。
【0009】
また、電子部品を載置する複数の支持部と、前記複数の支持部を個々の支持部に画定する突起部と、を有し、前記支持部と前記突起部の間の第1の領域並びに前記突起部の端間の第2の領域とが前記電子部品搬送装置の下面から同一の高さに配置され、前記第1の領域および前記第2の領域が前記支持部の底面よりも低い電子部品搬送装置を用い、前記複数の支持部へ、エアーの噴射もしくは洗浄液のかけ流しを行い、前記個々の支持部に堆積したパーティクルを前記第1の領域または前記第2の領域へ排出することを特徴とする電子部品搬送装置のクリーニング方法が提供される。
【発明の効果】
【0010】
上記手段によれば、電子部品を搬送するトレイ内の微小パーティクルを効率よく除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本実施の形態に係る電子部品搬送装置を、図面を参照しながら詳細に説明する。
<第1の実施の形態>
図1は第1の実施の形態に係る電子部品搬送装置の要部図であり、図1(a)には電子部品搬送装置の平面図が示され、図1(b)には、図1(a)のX−Y断面図が示されている。尚、図1(a)に示したA−B断面については、別の図(後述する図2)に例示する。
【0012】
図1(a)に示す電子部品搬送装置10Aは、電子部品を収納して搬送するトレイであって、平面が矩形状の電子部品支持部(電子部品収納部分)11と、隣接する電子部品支持部11間に設けられた突起部12と、電子部品搬送装置10Aの外周に設けられ、電子部品支持部11に隣接する突起部13,14を備えている。即ち、電子部品搬送装置10Aでは、複数の電子部品支持部11が突起部12〜14により、個々の電子部品支持部11に画定されている。ここで、突起部12〜14は、個々に分離された構成をなし、その長手方向の長さを電子部品支持部11の一辺と略同じ長さとしている。
【0013】
また、電子部品搬送装置10Aは、図1(b)に示すように、電子部品支持部11と突起部12との間に溝部15を設けている。当該溝部15は、電子部品搬送装置10A内で全て同じ深さに構成されている。また、上述した突起部12〜14は、電子部品搬送装置10Aの下面10bから同じ高さとなっている。
【0014】
そして、直線状に隣接する突起部12端間の面16、隣接する突起部13端間の面17、隣接する突起部14端間の面18及び電子部品搬送装置10Aの四隅の面19と、溝部15の底面とは、電子部品搬送装置10Aの下面10bから同じ高さに構成されている。
【0015】
即ち、電子部品搬送装置10Aは、矢印a−a’または矢印b−b’で示す方向に、同じ深さの通路を有している。
尚、このような通路は、図中に示す矢印の数に限らず、電子部品搬送装置10A内の縦横に複数形成している。
【0016】
また、このような電子部品搬送装置10Aは、例えば、射出成形により上記部位を一体的に製造される。即ち、電子部品支持部11、突起部12〜14及び溝部15は、樹脂によって一体的に形成されている。樹脂の材質としては、例えば、アクリロニトリル、ブタジエン、ABS樹脂などを用いてもよい。また、帯電防止性を有する樹脂を採用することで、後述する異物が静電気によって付着する影響を避けることができる。また、後述するように、電子部品搬送装置10Aを洗浄液にてクリーニングする場合は、この洗浄液に対する耐性を有した材料を用いる。
【0017】
続いて、電子部品支持部11の周辺の構造について説明する。
図2は第1の実施の形態に係る電子部品搬送装置の要部図であり、図2(a)及び図2(b)は、図1(a)のA−B断面図が示されている。尚、図2(b)では、電子部品支持部11に電子部品20が載置された状態が示されている。
【0018】
電子部品搬送装置10Aは、図2(a)に示すように、電子部品支持部11と、電子部品支持部11の両側に設けられた突起部12と、を有している。図示する突起部12は、その断面を台形としている。或いは、突起部12の断面を矩形状、半円状としてもよい(図示しない)。また、電子部品搬送装置10Aは、電子部品支持部11と突起部12との間に溝部15を設けている。そして、電子部品搬送装置10Aは、図2(b)に示すように、電子部品支持部11及び両側の突起部12によって形成された凹みに電子部品20を収納することができる。電子部品20としては、例えば、半導体チップが該当する。また、図2には電子部品20として、バンプ電極(半田ボール)が配設されていない構造のものを例示したが、電子部品20としては、BGA(Ball Grid Array)構造を備えたものであってもよい。
【0019】
次に、立体図を用いて電子部品搬送装置10Aの構造を補説する。
図3は第1の実施の形態に係る電子部品搬送装置の要部立体図であり、電子部品搬送装置10Aの上面を斜視した図である。
【0020】
上述したように、電子部品搬送装置10Aは、電子部品支持部11と、隣接する電子部品支持部11間に設けられた突起部12と、電子部品支持部11と突起部12との間に設けられた溝部15を有している。当該溝部15の底面15bは、直線状に隣接する突起部12間の面16と同じ高さに構成されている。
【0021】
即ち、電子部品搬送装置10Aには、矢印a−a’または矢印b−b’で例示する方向に、同じ深さの通路が形成されている。
このように、図1〜図3に例示したように、電子部品搬送装置10Aでは、溝部15の底面を第1の領域の面(電子部品支持部11と突起部12によって挟まれた領域の面)、上述した面16,17,18,19を第2の領域の面とすると、第1の領域の面と第2の領域の面とが電子部品搬送装置10Aの下面10bから同じ高さに構成されている。
【0022】
また、前記第1の領域および前記第2の領域においては、支持部11の底面(電子部品20の載置面)よりも低くなっている。
また、前記第1の領域および前記第2の領域は、図3及び図4に示す範囲に限らず、図1に示すように電子部品搬送装置10Aの前記外周部にまで連通している。
【0023】
次に、電子部品搬送装置10A内に存在している異物(微小パーティクル)がどのような作用によって効率よく除去されるのかを説明する。
図4は第1の実施の形態に係る電子部品搬送装置の要部立体図であり、電子部品搬送装置10Aの上面を斜視した図である。
【0024】
ここで、図4(a)は、電子部品搬送装置10Aの主面が地面(図示しない)に対し平行な状態であり、図4(a)は、電子部品搬送装置10Aの主面が地面に対し傾けた状態である。そして、図4(a)に示すように、電子部品搬送装置10A内には、異物30が存在している。異物30は、例えば、電子部品20の一部が欠けた微小パーティクルである。
【0025】
電子部品搬送装置10Aの電子部品支持部11にエアブローあるいは洗浄液をかけ流すことで、少なくとも電子部品支持部11は清浄な状態にクリーニングを行うことができる。異物30は、エアブローもしくは洗浄液とともに電子部品支持部11の外部へ除去されるが、溝部15もしくは突起部12端間の面16にわずかに残留する場合がある。このような場合であっても、少なくとも電子部品支持部11は清浄な状態であるため、電子部品20への異物30の影響はない。また、後述するように、電子部品搬送装置10Aを積み重ねて使用しても、異物30が、積み重ねた上段の電子部品搬送装置10Aから下段の電子部品搬送装置10Aへ落下することがない。
【0026】
また、図4(b)に示すように、電子部品搬送装置10Aの主面を地面に対し傾けて、上記通路が外部に連通している連通部を下側にして傾斜させることで、異物30を電子部品搬送装置10A外に放出させることができる。
【0027】
即ち、電子部品搬送装置10Aには、上記通路が備えられていることから、電子部品搬送装置10Aの主面を地面に対し傾斜させると、異物30はその自重によって上記通路上を滑降し、効率よく電子部品搬送装置10A外に放出される。
【0028】
尚、異物30の除去に関しては、電子部品搬送装置10Aの主面を地面に対し傾斜させた状態で、エアブロー、溶液洗浄等を施してもよい。これにより、異物30の除去効果がより向上する。
【0029】
尚、図4(b)の例では、電子部品搬送装置10Aの主面を地面に対し傾けてクリーニングを行っているが、これに限らない。例えば、電子部品搬送装置10Aの主面を地面に対し垂直に保持して行ってもよいし、主面を地面側に向けた状態(伏せた上体、即ち下側に向けた状態)で傾けて行ってもよい。
【0030】
次に、電子部品20を電子部品搬送装置10Aを用いて搬送する方法について説明する。
図5は第1の実施の形態に係る電子部品搬送装置の要部図である。
【0031】
図示するように、電子部品20を搭載した電子部品搬送装置10Aを複数積層することによって、多数の電子部品20を一度に搬送することができる。尚、最上層には、カバー10cを被覆させている。
【0032】
これにより、積層した電子部品搬送装置10A内に収容した全ての電子部品20は、電子部品搬送装置10A外の雰囲気、異物に晒されることなく目的地にまで搬送される。
このように、電子部品搬送装置10Aは、異物30が電子部品搬送装置10A内で移動できる通路を有している。これにより、異物30を効率よく除去することができる。
【0033】
また、電子部品搬送装置10Aは、電子部品支持部11の底面を開口させていない。即ち、電子部品支持部11を積層させても、電子部品支持部11の底面を開口させていないため、異物30が電子部品20上に落下することもない。
【0034】
従って、電子部品搬送装置10A内に収納された電子部品20は損傷を被ることもなく、目的地にまで搬送させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】第1の実施の形態に係る電子部品搬送装置の要部図である(その1)。
【図2】第1の実施の形態に係る電子部品搬送装置の要部図である(その2)。
【図3】第1の実施の形態に係る電子部品搬送装置の要部立体図である(その1)。
【図4】第1の実施の形態に係る電子部品搬送装置の要部立体図である(その2)。
【図5】第1の実施の形態に係る電子部品搬送装置の要部図である(その3)。
【符号の説明】
【0036】
10A 電子部品搬送装置
10b 下面
10c カバー
11 電子部品支持部
12,13,14 突起部
15 溝部
15b 底面
16,17,18,19 面
20 電子部品
30 異物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品を搬送する電子部品搬送装置であって、
前記電子部品を載置する複数の支持部と、
前記複数の支持部を個々の支持部に画定する突起部と、
を有し、前記支持部と前記突起部の間の第1の領域並びに前記突起部の端間の第2の領域とが前記電子部品搬送装置の下面から同一の高さに配置されていることを特徴とする電子部品搬送装置。
【請求項2】
前記第1の領域および前記第2の領域が前記支持部の底面よりも低いことを特徴とする請求項1記載の電子部品搬送装置。
【請求項3】
前記電子部品搬送装置の外周部において、前記第1の領域および前記第2の領域が前記外周部にまで連通していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子部品搬送装置。
【請求項4】
電子部品を載置する複数の支持部と、
前記複数の支持部を個々の支持部に画定する突起部と、
を有し、前記支持部と前記突起部の間の第1の領域並びに前記突起部の端間の第2の領域とが前記電子部品搬送装置の下面から同一の高さに配置され、前記第1の領域および前記第2の領域が前記支持部の底面よりも低い電子部品搬送装置を用い、
前記複数の支持部へ、エアーの噴射もしくは洗浄液のかけ流しを行い、前記個々の支持部に堆積したパーティクルを前記第1の領域または前記第2の領域へ排出することを特徴とする電子部品搬送装置のクリーニング方法。
【請求項5】
前記電子部品搬送装置の外周部において、前記第1の領域および前記第2の領域が前記外周部にまで連通している部分を下側となるように保持し、前記複数の支持部へエアーの噴射もしくは洗浄液のかけ流しを行い、前記支持部、前記第1の領域、前記第2の領域に堆積したパーティクルを前記部分より排出することを特徴とする電子部品搬送装置のクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−137890(P2010−137890A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−315890(P2008−315890)
【出願日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】