説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】液晶装置等の電気光学装置において、サンプリング用トランジスターの高速化とプッシュダウン現象の抑制を両立させ、高品位な表示を行う。
【解決手段】電気光学装置は、データ線(6)に画像信号線(60)から供給される画像信号をサンプリングするサンプリング用トランジスター(71)を備える。サンプリング用トランジスターのゲート絶縁膜(73)は、ゲート電極(71G)の第1ソースドレイン領域(74S)側の縁部(71Ges)に重なる部分及びゲート電極の第2ソースドレイン領域(74D)側の縁部(71Ged)に重なる部分の各々の膜厚が、ゲート電極の中央部(71Gc)に重なる部分の膜厚よりも厚くなるように形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶装置等の電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた、例えば液晶プロジェクター等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置として、アクティブマトリクス駆動方式の液晶装置が知られている(例えば特許文献1から3参照)。このような液晶装置では、基板上の表示領域に、複数の走査線及び複数のデータ線が互いに交差するように設けられ、これらの交差に対応する画素毎に画素電極及び画素トランジスターが設けられる。更に、基板上の表示領域の周辺に、データ線を駆動するためのデータ線駆動回路、走査線を駆動するための走査線駆動回路、画像信号をサンプリングするための複数のサンプリング用トランジスター等が作り込まれる。このような液晶装置の駆動時には、複数のサンプリング用トランジスターが、画像信号線上の画像信号をサンプリングして各データ線に供給し、画像信号がデータ線から画素トランジスターを介して画素電極に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−34718号公報
【特許文献2】特開平5−13765号公報
【特許文献3】特開平10−189982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したサンプリング用トランジスターがnチャネル型やpチャネル型といった片チャネル型である場合、サンプリング用トランジスターのゲート電極とソースドレイン領域との間に生じる寄生容量を一因として、例えばサンプリング用トランジスターのゲート信号の立下りに応じて画素電極の電位が低下するプッシュダウン現象が生じてしまう場合があるという技術的問題点がある。プッシュダウン現象が生じると、表示斑やフリッカなどの表示不良が生じてしまうおそれがある。
【0005】
一方、前述したような液晶装置の高解像度化のためには、画像信号線からデータ線への画像信号の書き込み時間の短縮が必要であり、サンプリング用トランジスターには、画像信号線からデータ線へ画像信号を高速に伝達する能力が求められる。サンプリング用トランジスターの高速化を実現するためには、サンプリング用トランジスターのゲート絶縁膜の膜厚をより薄くすることによりオン(ON)電流を増大させることが考えられる。しかしながら、サンプリング用トランジスターのゲート絶縁膜の膜厚を単純に薄くすると、ゲート電極とソースドレイン領域との間に生じる寄生容量が増大するため、前述したプッシュダウン現象が生じやすくなってしまうという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は、例えば前述した問題点に鑑みなされたものであり、例えばサンプリング用トランジスターの高速化とプッシュダウン現象の抑制を両立させることができ、高品位な表示を行うことが可能な電気光学装置及びこのような電気光学装置を備える電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、データ線と、画像信号を供給する画像信号線と、前記データ線に前記画像信号線から供給される前記画像信号をサンプリングするサンプリング用トランジスターとを備え、前記サンプリング用トランジスターは、前記画像信号線に電気的に接続された第1ソースドレイン領域、前記データ線に電気的に接続された第2ソースドレイン領域、並びに前記第1ソースドレイン領域及び前記第2ソースドレイン領域間に位置するチャネル領域を有する半導体層と、前記半導体層の前記チャネル領域にゲート絶縁膜を介して対向配置されたゲート電極とを有し、前記ゲート絶縁膜は、前記ゲート電極の前記第1ソースドレイン領域側の縁部に重なる部分及び前記ゲート電極の前記第2ソースドレイン領域側の縁部に重なる部分の各々の膜厚が、前記ゲート電極の中央部に重なる部分の膜厚よりも厚くなるように形成されている。
【0008】
本発明の電気光学装置によれば、その動作時には、画像信号が、画像信号線に供給され、更に、データ線に電気的に接続されたサンプリング用トランジスターへと供給される。画像信号の供給と並行して、例えば、データ線駆動回路によって、サンプリング用トランジスターのゲート電極にサンプリング信号(或いは「サンプリング用トランジスター駆動信号」)が供給される。すると、サンプリング用トンランジスターによって、データ線には、サンプリング信号に応じて画像信号が供給される。これにより、データ線に電気的に接続された例えば画素トランジスターに画像信号が供給されることになる。なお、サンプリング用トランジスターは、片チャネル型の薄膜トランジスターから構成される。サンプリング用トランジスターは、第1ソースドレイン領域が画像信号線に電気的に接続され、第2ソースドレイン領域がデータ線に電気的に接続され、ゲート電極にサンプリング信号が供給されることでオン状態とされる。例えば走査線駆動回路から走査線を介して供給される走査信号に応じてオン状態とされる画素トランジスターを介してデータ線から例えば画素電極に画像信号が供給され、画素電極に対応する例えば液晶素子等の表示素子は供給された画像信号に基づいて表示を行う。なお、画素トランジスターは、例えば、データ線と走査線との交差に対応する複数の画素の各々に、画素電極と共に設けられている。画素トランジスターは、例えば片チャネル型の薄膜トランジスターから構成される。画素トランジスターは、データ線及び画素電極間に電気的に接続され、そのゲート電極に走査信号が供給されることでオン状態とされる。
【0009】
ここで特に、サンプリング用トランジスターが片チャネル型の薄膜トランジスタから構成される場合、仮に何らの対策も施さなければ、サンプリング用トランジスターのゲート電極とソースドレイン領域との間に生じる寄生容量を一因として、サンプリング信号(即ち、サンプリング用トランジスターのゲート電極に供給されるパルス信号)の立下りに応じて画素電極の電位が低下するプッシュダウン現象が生じてしまうおそれがある。更に、サンプリング用トランジスターの高速化を図るべく、サンプリング用トランジスターのゲート絶縁膜の膜厚を単純に薄くすると、ゲート電極とソースドレイン領域との間に生じる寄生容量が増大するため、プッシュダウン現象が生じやすくなってしまう。
【0010】
しかるに本発明の電気光学装置によれば、サンプリング用トランジスターのゲート絶縁膜は、ゲート電極の第1ソースドレイン領域側の縁部に平面的に見て重なる部分及びゲート電極の第2ソースドレイン領域側の縁部に平面的に見て重なる部分の各々の膜厚が、ゲート電極の中央部に平面的に見て重なる部分の膜厚よりも厚くなるように形成されている。即ち、サンプリング用トランジスターのゲート絶縁膜は、ゲート電極の中央部に重なる部分よりも第1及び第2ソースドレイン領域側の縁部に重なる部分のほうが、膜厚が厚くなるように形成されている。
【0011】
よって、例えばサンプリング用トランジスターのゲート絶縁膜が均一な膜厚を有する場合と比較して、サンプリング用トランジスターのオン電流を維持或いは増大させることができるとともに、サンプリング用トランジスターのゲート電極及び第1ソースドレイン領域間、並びにゲート電極及び第2ソースドレイン領域間の各々の寄生容量を低減できる。したがって、サンプリング用トランジスターの高速化を図ることができるとともに、プッシュダウン現象を抑制できる。つまり、サンプリング用トランジスターの高速化とプッシュダウン現象の抑制を両立させることができる。この結果、高品位な表示を行うことが可能となる。
【0012】
以上説明したように、本発明の電気光学装置によれば、サンプリング用トランジスターの高速化とプッシュダウン現象の抑制を両立させることができる。この結果、高品位な表示を行うことが可能となる。
【0013】
本発明の電気光学装置の一態様では、画素電極と、前記画素電極に対応して設けられた画素トランジスターとを備え、前記画素トランジスターのゲート絶縁膜は、均一な膜厚で形成されている。
【0014】
この態様によれば、画素トランジスターは、例えば片チャネル型の薄膜トランジスターから構成され、均一な膜厚のゲート絶縁膜を有している。即ち、この態様では、サンプリング用トランジスターのゲート絶縁膜が、ゲート電極の中央部に重なる部分よりも第1及び第2ソースドレイン領域側の縁部に重なる部分のほうが、膜厚が厚くなるように形成されているのに対して、画素トランジスターのゲート絶縁膜は、均一な膜厚を有している。よって、画素トランジスターの微細化を図ることが可能となり、画素開口率の向上や画素の微細化を図ることが可能となる。
【0015】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、前述した本発明の電気光学装置(但し、その各種態様も含む)を具備する。
【0016】
本発明の電子機器によれば、前述した本発明の電気光学装置を具備してなるので、高品位な表示を行うことが可能な、投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサー、ビューファインダー型又はモニター直視型のビデオテープレコーダー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパーなどの電気泳動装置、電子放出装置(Field Emission Display及びConduction Electron-Emitter Display)、これら電気泳動装置、電子放出装置を用いた表示装置を実現することも可能である。
【0017】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する発明を実施するための形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る液晶装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のII−II’線断面図である。
【図3】第1実施形態に係る液晶装置の電気的な構成を概略的に示すブロック図である。
【図4】画素部の電気的な構成を示す回路図である。
【図5】第1実施形態に係るサンプリング用TFTの構成を示す平面図である。
【図6】図5のVI−VI’線断面図である。
【図7】図6の円C1で囲む部分を拡大して示す拡大断面図である。
【図8】プッシュダウン現象を説明するためのタイミングチャートである。
【図9】第1実施形態に係るサンプリング用TFTの製造方法を説明するための製造工程図である。
【図10】第1実施形態に係るサンプリング用TFTの製造方法の第1変形例を説明するための製造工程図である。
【図11】第1実施形態に係るサンプリング用TFTの製造方法の第2変形例を説明するための製造工程図である。
【図12】電気光学装置を適用した電子機器の一例たるプロジェクターの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。以下の実施形態では、本発明の電気光学装置の一例であるTFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
【0020】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る液晶装置について、図1から図9を参照して説明する。
【0021】
先ず、本実施形態に係る液晶装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る液晶装置の構成を示す平面図であり、図2は、図1のII−II’線断面図である。
【0023】
図1及び図2において、本実施形態に係る液晶装置100では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10及び対向基板20の各々は、ガラス基板から構成されている。なお、TFTアレイ基板10及び対向基板20の各々は、例えば石英基板、シリコン基板等から構成されてもよい。TFTアレイ板10と対向基板20との間に液晶層50(図2参照)が封入されている。
【0024】
TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバー或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。
【0025】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。この一辺に沿ったシール領域よりも内側に、サンプリング回路7が額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。また、走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿ったシール領域の内側に、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。また、TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0026】
TFTアレイ基板10上には、外部回路接続端子102と、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104、上下導通端子106等とを電気的に接続するための引回配線90が形成されている。
【0027】
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用の画素TFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成されている。画像表示領域10aには、画素TFTや走査線、データ線等の配線の上層に画素電極9がマトリクス状に設けられている。画素電極9は、透明導電材料であるITO(Indium Tin Oxide)から形成されている。画素電極9上には、配向膜が形成されている。他方、対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上に、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば遮光性金属膜等から形成されており、対向基板20上の画像表示領域10a内で、例えば格子状等にパターニングされている。そして、遮光膜23上に、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9と対向してベタ状に形成されている。対向電極21上には配向膜が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で、所定の配向状態をとる。
【0028】
なお、ここでは図示しないが、TFTアレイ基板10上には、データ線駆動回路101、走査線駆動回路104の他に、製造途中や出荷時の当該液晶装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路、検査用パターン等が形成されていてもよい。
【0029】
次に、本実施形態に係る液晶装置の電気的な構成について、図3及び図4を参照して説明する。
【0030】
図3は、本実施形態に係る液晶装置の電気的な構成を概略的に示すブロック図である。図4は、画素部の電気的な構成を示す回路図である。
【0031】
図3において、TFTアレイ基板10における画像表示領域10aに、複数の画素部70と、互いに交差するように配線されたn本の走査線11及びm本のデータ線6とを備えている。ここで、m、nはそれぞれ自然数である。
【0032】
画素部70は、画像表示領域10aにn行×m列のマトリクス状に2次元に配置されている。より具体的には、図3に示すように、画素部70は、画像表示領域10aにおける左側から第1列、第2列、…、第m列で、上側から第1行、第2行、…、第n行のマトリクス状に配置されている。即ち、m本のデータ線6及びn本の走査線11の交点に対応して単位表示素子である画素部70が設けられている。
【0033】
図4に示すように、画素部70は、画素TFT30、液晶容量Clc及び付加容量Csを備えている。
【0034】
液晶容量Clcは、画素電極9、対向電極21及び液晶層50(図2参照)による容量である。
【0035】
付加容量Csは、液晶容量Clcに並列に電気的に接続されている。
【0036】
画素TFT30は、本発明に係る「画素トランジスター」の一例としてのNチャネル型又はPチャネル型のTFTであり、ソース端子sがデータ線6に電気的に接続され、ゲート端子gが走査線11に電気的に接続されている。画素TFT30は、走査線線駆動回路104から供給される走査信号によってオンオフが切り換えられる。
【0037】
画素TFT30のドレインは、液晶容量Clc及び付加容量Csの各々の一端に電気的に接続され、付加容量Csの他端は、共通電位LCCOMに電気的に接続されている。画素TFT30のゲート端子gに走査信号が入力されて画素TFT30がオン状態になると、データ線6に電気的に接続された画素TFT30のソース端子sに印加されている電圧が液晶容量Clc及び付加容量Csに印加され、供給された画像信号の電位が維持される。これにより、画像表示が行われる際に画素部70に供給された画像信号の電位を長時間保持することが可能となっている。
【0038】
再び図3において、TFTアレイ基板10上における周辺領域には、データ線駆動回路101及びサンプリング回路7、並びに走査線駆動回路104が設けられている。
【0039】
走査線線駆動回路104は、走査信号印加の基準クロックであるクロック信号CLY(及びその反転信号CLYB)及びシフトレジスタスタート信号DYに基づいて走査信号Gi(i=1、…、n)を生成して、複数の走査線11に印加する。
【0040】
データ線駆動回路101は、クロック信号CLX(及びその反転信号CLXB)及びシフトレジスタスタート信号DXに基づいて、サンプリング回路7(より具体的には、複数のサンプリング用TFT71)を駆動するためのサンプリング信号Si(i=1、…、m)を出力するように構成されている。
【0041】
サンプリング回路7は、データ線6毎に設けられた本発明に係る「サンプリング用トランジスター」の一例としての複数のサンプリング用TFT71を備えており、外部回路から画像信号線60を介して供給される画像信号VIDをサンプリング信号Siに応じてサンプリングし、データ線6にデータ信号di(i=1、…、m)として供給する。サンプリング用TFT71は、そのソースが、画像信号線60に電気的に接続され、そのドレインが複数のデータ線6のうち対応する一本に電気的に接続されている。サンプリング用TFT71のゲート電極には、データ線駆動回路101から出力されたサンプリング信号Siが供給される。サンプリング用TFT71のゲート電極にサンプリング信号Siが供給されてサンプリング用TFT71がオン状態になると、画像信号線60上の画像信号がサンプリング用TFT71を介してデータ線6に電気的に接続され、データ線6にデータ信号diが供給される。なお、本実施形態では、1本の画像信号線60を介して1系統の画像信号VIDが供給される場合を例にあげているが、シリアル−パラレル変換によって相展開された複数系統の画像信号が同時に供給されてもよい。このようにシリアルな画像信号を変換して得たパラレルな画像信号を同時供給すると、複数のデータ線6を一群とするグループ毎にデータ線6へのデータ信号入力を行うことができ、駆動周波数を抑えることが可能である。
【0042】
本実施形態では、1H反転駆動方式が採用されており、画像信号VIDは、所定周期で電位が共通電位LCCOM(例えば7ボルト)に対して高位側の正極性と低位側の負極性とで極性反転される。即ち、本実施形態では、各画素部70には、正極性の電位(即ち、プラスフィールドの電位、例えば12ボルト)と、負極性の電位(即ち、マイナスフィールドの電位、例えば2ボルト)とが交互に供給される。より具体的には、画像信号VIDは、一のフレームに対応する表示を行う間、奇数行に配列された画素部70には共通電位LCCOMに対して正極性の電位で供給されると共に偶数行に配列された画素部70には共通電位LCCOMに対して負極性の電位で供給されるように、且つ、これに続く次のフレームに対応する表示を行う間は、逆に偶数行に配列された画素部70には正極性の電位で供給されると共に奇数行に配列された画素部70には負極性の電位で供給されるように、電位が極性反転される。即ち、画像信号VIDは、同一行の画素部70には同一極性の電位で供給されると共に相隣接する行の画素部70には異なる極性の電位で供給されるように、且つ係る電位極性を行毎にフレーム周期で反転するように、電位が極性反転される。
【0043】
次に、本実施形態に係るサンプリング用TFT71の具体的な構成について、図5から図7を参照して説明する。
【0044】
図5は、本実施形態に係るサンプリング用TFT71の構成を示す平面図である。図6は、図5のVI−VI’線断面図である。図7は、図6の円C1で囲む部分を拡大して示す拡大断面図である。
【0045】
図5及び図6において、サンプリング用TFT71は、半導体層74と、ゲート電極71Gと、ゲート絶縁膜73とを備えている。
【0046】
半導体層74は、シリコン膜からなり、ゲート電極71Gからの電界によりチャネルが形成されるチャネル領域74Cと、画像信号線60に電気的に接続されるソース領域74Sと、データ線6に電気的に接続されるドレイン領域74Dとを有している。なお、ソース領域74Sは本発明に係る「第1ソースドレイン領域」の一例であり、ドレイン領域74Dは本発明に係る「第2ソースドレイン領域」の一例である。
【0047】
ゲート電極71Gは、ポリシリコン膜からなり、ゲート絶縁膜73を介して半導体74の上層側に設けられている。ゲート電極71Gは、半導体層74のチャネル領域74Cに対向するように設けられている。
【0048】
ゲート絶縁膜73は、シリコン酸化膜からなり、半導体層74の上面を覆うように設けられている。
【0049】
図6及び図7に示すように、本実施形態では特に、サンプリング用TFT71のゲート絶縁膜73は、ゲート電極71Gのソース領域74S側の縁部71Gesに重なる部分及びゲート電極71のドレイン領域74D側の縁部71Gedに重なる部分の各々の膜厚が、ゲート電極71の中央部71Gcに重なる部分の膜厚よりも厚くなるように形成されている。即ち、サンプリング用TFT71のゲート絶縁膜73は、ゲート電極71Gの中央部71Gcに重なる部分よりもゲート電極71Gの縁部71Ges及び71Gedに重なる部分のほうが、膜厚が厚くなるように形成されている。つまり、図7に示すように、ゲート絶縁膜73のうち縁部71GedにTFTアレイ基板10上で平面的に見て重なる部分の膜厚D2は、ゲート絶縁膜73のうち中央部71GcにTFTアレイ基板10上で平面的に見て重なる部分の膜厚D1よりも厚い。また、図6に示すように、ゲート絶縁膜73のうち縁部71GesにTFTアレイ基板10上で平面的に見て重なる部分の膜厚は、ゲート絶縁膜73のうち中央部71GcにTFTアレイ基板10上で平面的に見て重なる部分の膜厚D1(図7参照)よりも厚い。
【0050】
ここで仮に何らの対策も施さず、ゲート絶縁膜73の膜厚が均一である場合には、サンプリング用TFT71のゲート電極71Gとソース領域74Sとの間に生じる寄生容量やゲート電極71Gとドレイン領域74Dとの間に生じる寄生容量Cgd(図7参照)を一因として、サンプリング信号Si(即ち、サンプリング用TFT71のゲート電極71Gに供給されるパルス信号)の立下りに応じて画素電極9の電位が低下するプッシュダウン現象が生じてしまうおそれがある。
【0051】
図8は、プッシュダウン現象を説明するためのタイミングチャートである。
【0052】
即ち、図8に示すように、サンプリング信号に応じて画素電極9にプラスフィールドの電位V1(例えば12ボルト)を書き込む際やマイナスフィールドの電位V2(例えば2ボルト)を書き込む際、サンプリング信号が立ち下がる時点T1において、寄生容量Cgdを一因として、画素電極9の電位が、電位V1から電位差ΔV1だけ低下したり、電位V2から電位差ΔV2だけ低下したりするプッシュダウン現象が生じてしまうおそれがある。なお、走査信号が立下る時点T2において、画素TFT30におけるゲート電極とソースドレイン領域との間の寄生容量を一因として、画素電極9の電位が低下する他のプッシュダウン現象が生じ得るが、画素TFT30における寄生容量を一因とするプッシュダウン現象に係る電位低下量は、サンプリング用TFT71における寄生容量を一因とするプッシュダウン現象に係る電位低下量と比べて、顕著に小さいので、表示上の不具合として視認されることは実践上殆どない。
【0053】
更に、サンプリング用TFT71の高速化を図るべく、サンプリング用TFT71のゲート絶縁膜73の膜厚を単純に薄くすると、ゲート電極71G及びソース領域74S間並びにゲート電極71G及びドレイン領域74D間の各々に生じる寄生容量が増大するため、プッシュダウン現象が生じやすくなってしまう。
【0054】
しかるに本実施形態では特に、前述したように、サンプリング用TFT71のゲート絶縁膜73は、ゲート電極71Gのソース領域74S側の縁部71Gesに重なる部分及びゲート電極71のドレイン領域74D側の縁部71Gedに重なる部分の各々の膜厚が、ゲート電極71の中央部71Gcに重なる部分の膜厚よりも厚くなるように形成されている。
【0055】
よって、サンプリング用TFT71のゲート絶縁膜73が均一な膜厚を有する場合と比較して、サンプリング用TFTのオン電流を維持或いは増大させることができるとともに、サンプリング用TFT71のゲート電極71G及びソース領域74S間、並びにゲート電極71G及びドレイン領域74D間の各々の寄生容量を低減できる。したがって、サンプリング用TFTの高速化を図ることができるとともに、プッシュダウン現象を抑制できる。つまり、サンプリング用TFT71の高速化とプッシュダウン現象の抑制を両立させることができる。この結果、高品位な表示を行うことが可能となる。
【0056】
更に本実施形態では特に、画素TFT30は、均一な膜厚のゲート絶縁膜を有している。即ち、本実施形態では特に、サンプリング用TFT71のゲート絶縁膜73が、ゲート電極71Gの中央部71Gcに重なる部分よりも縁部71Ges及び71Gedに重なる部分のほうが、膜厚が厚くなるように形成されているのに対して、画素TFT30のゲート絶縁膜は、均一な膜厚を有している。よって、画素TFT30の微細化を図ることが可能となり、画素開口率(即ち、画素における光を透過可能な開口領域の割合)の向上や画素の微細化を図ることが可能となる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る液晶装置によれば、サンプリング用TFT71の高速化とプッシュダウン現象の抑制を両立させることができる。この結果、高品位な表示を行うことが可能となる。
【0058】
次に、本実施形態に係るサンプリング用TFT71の製造方法について、図9を参照して説明する。
【0059】
図9は、本実施形態に係るサンプリング用TFT71の製造方法を説明するための製造工程図である。なお、図9は、図6に示した断面図に対応して示してある。
【0060】
図9(a)において、先ず、TFTアレイ基板10上にシリコンからなる半導体層74を形成する。次に、半導体層74上に例えばCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法によりシリコン酸化膜731を形成する。次に、シリコン酸化膜731上に例えばCVD法によりポリシリコン膜を形成し、このポリシリコン膜を所定の平面形状にパターニングすることによりゲート電極71Gを形成する。
【0061】
次に、図9(b)において、半導体層74及びシリコン酸化膜731にゲート電極71Gを熱酸化マスクとして熱酸化処理を施すことにより、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜73を形成する。次に、ゲート電極71Gをマスクとして、半導体層74に不純物をドープすることにより、ソース領域74S、ドレイン領域74D及びチャネル領域74Cを形成する。
【0062】
ここで、この熱酸化処理によって、半導体層74のうちゲート電極71によって覆われていない部分を酸化することができるとともに、半導体層74のうちゲート電極71の縁部71Ges及び71Gedに重なる部分を酸化することができる。更に、この熱酸化処理によって、ゲート電極71の縁部71Ges及び71Gedの各々の下面(即ち、半導体層74と対向する側の面)を酸化することができる。なお、この熱酸化処理によって、ゲート電極71の外表面が酸化され、ゲート電極71の外表面にシリコン酸化膜が形成される。
【0063】
このように熱酸化処理を施すことにより、ゲート電極71Gの中央部71Gcに重なる部分よりも縁部71Ges及び71Gedに重なる部分のほうが膜厚が厚いゲート絶縁膜73を、自己整合的に(即ち、セルフアラインで)形成することができる。
【0064】
次に、本実施形態に係るサンプリング用TFT71の製造方法の第1変形例について、図10を参照して説明する。
【0065】
図10は、本実施形態に係るサンプリング用TFT71の製造方法の第1変形例を説明するための製造工程図である。なお、図10は、図6に示した断面図に対応して示してある。
【0066】
図10(a)において、先ず、TFTアレイ基板10上にシリコンからなる半導体層74を形成する。次に、半導体層74上に例えばCVD法によりシリコン酸化膜731を形成する。次に、シリコン酸化膜731上に例えばCVD法によりシリコン窒化膜を形成し、このシリコン窒化膜を、後に形成すべきゲート電極71の平面形状と同じ平面形状にパターニングすることによりシリコン窒化膜810を形成する。シリコン窒化膜810は、耐酸化性を有しており、後に行われる熱酸化処理において、熱酸化マスクとして機能する。
【0067】
次に、図10(b)において、シリコン窒化膜810を熱酸化マスクとして、半導体層74及びシリコン酸化膜731に熱酸化処理を施すことにより、シリコン酸化膜からなるゲート絶縁膜73を形成する。
【0068】
ここで、この熱酸化処理によって、半導体層74のうちシリコン窒化膜810によって覆われていない部分を酸化することができるとともに、半導体層74のうちシリコン窒化膜810の縁部810a1及び810a2に重なる部分を酸化することができる。
【0069】
このように熱酸化処理を施すことにより、シリコン窒化膜810の中央部810cに重なる部分よりも縁部810a1及び810a2に重なる部分のほうが膜厚が厚いゲート絶縁膜73を形成することができる。
【0070】
次に、シリコン窒化膜810を除去した後、ゲート絶縁膜73上に例えばCVD法によりポリシリコン膜を形成し、このポリシリコン膜を所定の平面形状にパターニングすることによりゲート電極71Gを形成する。次に、ゲート電極71Gをマスクとして、半導体層74に不純物をドープすることにより、ソース領域74S、ドレイン領域74D及びチャネル領域74Cを形成する。
【0071】
ここで、シリコン窒化膜810とゲート電極71との平面形状が同じであるので、ゲート電極71Gの中央部71Gcに重なる部分よりも縁部71Ges及び71Gedに重なる部分のほうが膜厚が厚いゲート絶縁膜73を形成することができる。
【0072】
次に、本実施形態に係るサンプリング用TFT71の製造方法の第2変形例について、図11を参照して説明する。
【0073】
図11は、本実施形態に係るサンプリング用TFT71の製造方法の第2変形例を説明するための製造工程図である。なお、図11は、図6に示した断面図に対応して示してある。
【0074】
図11(a)において、先ず、TFTアレイ基板10上にシリコンからなる半導体層74を形成する。次に、半導体層74上に例えばCVD法によりシリコン酸化膜を形成し、このシリコン酸化膜のうち後にゲート電極71が形成されるべき領域に位置する部分を除去することにより、シリコン酸化膜732を形成する。
【0075】
次に、図11(b)において、TFTアレイ基板10上の全面に例えばCVD法によりシリコン酸化膜733を形成する。これにより、半導体層74上に、シリコン酸化膜732及び733が積層されてなるゲート絶縁膜73を形成することができる。
【0076】
次に、図11(c)において、ゲート絶縁膜73上に例えばCVD法によりポリシリコン膜を形成し、このポリシリコン膜を所定の平面形状にパターニングすることによりゲート電極71Gを形成する。次に、ゲート電極71Gをマスクとして、半導体層74に不純物をドープすることにより、ソース領域74S、ドレイン領域74D及びチャネル領域74Cを形成する。
【0077】
このような第2変形例に係る製造方法によれば、熱酸化処理を施すことなく、ゲート電極71Gの中央部71Gcに重なる部分よりも縁部71Ges及び71Gedに重なる部分のほうが膜厚が厚いゲート絶縁膜73を形成することができる。
【0078】
<電子機器>
次に、前述した電気光学装置である液晶装置を各種の電子機器に適用する場合について説明する。
【0079】
図12は、プロジェクターの構成例を示す平面図である。以下では、この液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクターについて説明する。
【0080】
図12に示されるように、プロジェクター1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される。
【0081】
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、前述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
【0082】
ここで、各液晶パネル1110R、1110B及び1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0083】
なお、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルターを設ける必要はない。
【0084】
なお、図12を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピューターや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダー型、モニター直視型のビデオテープレコーダー、カーナビゲーション装置、ページャー、電子手帳、電卓、ワードプロセッサー、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0085】
また、本発明は前述の各実施形態で説明した液晶装置以外にも反射型液晶装置(LCOS)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等にも適用可能である。
【0086】
本発明は、前述した実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置、及び該電気光学装置を備えてなる電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0087】
6…データ線、10…TFTアレイ基板、11…走査線、20…対向基板、30…画素TFT、50…液晶層、60…画像信号線、71…サンプリング用TFT、71G…ゲート電極、71Gc…中央部、71Ges、71Ged…縁部、73…ゲート絶縁膜、74S…ソース領域、74D…ドレイン領域、74…半導体層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ線と、
画像信号を供給する画像信号線と、
前記データ線に前記画像信号線から供給される前記画像信号をサンプリングするサンプリング用トランジスターと
を備え、
前記サンプリング用トランジスターは、前記画像信号線に電気的に接続された第1ソースドレイン領域、前記データ線に電気的に接続された第2ソースドレイン領域、並びに前記第1ソースドレイン領域及び前記第2ソースドレイン領域間に位置するチャネル領域を有する半導体層と、前記半導体層の前記チャネル領域にゲート絶縁膜を介して対向配置されたゲート電極とを有し、
前記ゲート絶縁膜は、前記ゲート電極の前記第1ソースドレイン領域側の縁部に重なる部分及び前記ゲート電極の前記第2ソースドレイン領域側の縁部に重なる部分の各々の膜厚が、前記ゲート電極の中央部に重なる部分の膜厚よりも厚くなるように形成されている
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
画素電極と、
前記画素電極に対応して設けられた画素トランジスターと
を備え、
前記画素トランジスターのゲート絶縁膜は、均一な膜厚で形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気光学装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−150145(P2012−150145A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−6672(P2011−6672)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】