説明

露光装置

【課題】 露光装置における投影光学系を介してマスク面とプレート面の位置検出をするにあたり、前記投影光学系における非点隔差の影響をできる限り受けない位置で位置検出マークを検出し、精度良くマスク面とプレート面の位置検出をする方法を提供する。
【解決手段】 露光装置(100)は、物体面(11)上に形成されたパターンを像(21)面上に結像させる投影光学系(30)と、露光波長と異なる波長を有し物体面と像面の相対的な位置ずれ量を前記投影光学系を介して検出する位置検出装置(50)を備えている。位置検出を投影光学系(30)で生ずる非点隔差の影響が少ない位置で実施することで、位置検出の精度を向上させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は露光装置の位置計測に関し、例えば液晶パネル等の表示デバイスのデバイスを製造する工程のうち、リソグラフィー工程において使用される投影露光装置や走査型露光装置において、マスク等の第1物体面上のパターンをプレート等の第2物体面上に投影光学系により投影する際、前記第1物体面と前記第2物体面の相対位置合わせを行う場合に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンやテレビ等に用いられる液晶パネルの大型化が要求されている。このような大型の液晶パネルを露光するための露光装置として、投影光学系を等倍ミラー結像系とし、マスクのパターンを円弧状にプレート面に形成して走査するミラープロジェクション方式が知られている。
【0003】
従来のミラー結像系は、光軸外の円弧形状領域に露光波長において収差が良好となる良像域が形成されるが、その領域の幅は狭く、数mm程度であった。そのため、大型パネル基板の焼付けには時間を必要とし、即ち単位時間あたりに処理できるプレート焼付け量が少ないという課題があった。この課題を解決すべく、前記良像域を拡大された露光装置の投影光学系が特許文献1によって開示されている。前記投影光学系はミラー結像系で、マスク面からプレート面に至る光路に第1の凹反射面、凸反射面、第の2凹反射面が順に配置されている。さらに前記投影光学系は、前記凹反射面と前記凸反射面との間にパワーを有する少なくとも1つの屈折光学部材が配置される。加えて、マスク面から前記第1凹反射面に至る光路中及び前記第2凹反射面から前記像面に至る光路中の少なくとも一方にパワーを有する少なくとも1つの屈折光学部材を配置されていることを特徴としている。
【0004】
また、パネルの高精細化に対する要求に伴い、露光装置における重ね合わせ精度の向上が必要とされている。重ね合わせ精度は、マスクステージおよびプレートステージの駆動精度や位置検出精度などのシステム構成が大きく影響している。マスクおよびプレートの位置検出のシステムに関しては従来様々な提案がなされてきた。位置検出は大きく2つに区分される。一つは、光軸方向(Z方向とする)の面位置検出であり、もう一方は光軸に垂直な平面(X方向およびY方向とする)方向の位置検出である。Z方向の面位置検出として、プレート面に対して斜め方向から入射光を照射し、そのプレート面の表面から斜めに反射する反射光を検出して、その表面位置を検出する斜入射方式の面位置検出技術として特許文献2によって開示されている。
【0005】
また、X方向およびY方向の位置検出方法として、露光波長以外の波長を有した光(非露光光)を位置検出用マークに照射し反射させ、この反射像を前記位置検出装置に備えられた撮像素子面上に形成し、その観測波形を波形処理して位置合わせを行う技術が従来用いられている。
【0006】
非露光光を用いて、位置検出用マークを前記投影光学系を介し観測する技術は、特許文献3や特許文献4によって開示されている。
【0007】
しかし、投影光学系は露光波長を主として設計および調整されるため、非露光光を用いた位置検出手法では、前記投影光学系における色収差の影響が大きく、位置検出精度が低下する等の問題が生じる。この波長差によって前記投影光学系で発生する色収差の問題を解決する技術が、例えば特許文献5によって開示されている。特許文献5では、露光光の波長と非露光光の波長の違いにより投影光学系で生じる非点隔差とコマ収差を補正するように位置検出装置の光学系を構成する実施例が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平5−33371号公報
【特許文献2】特許第3667009号明細書
【特許文献3】特開昭63−32303号公報
【特許文献4】特開平2−130908号公報
【特許文献5】特公平2−35447号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1では露光波長において収差が良好となる良像領域が拡大されている。しかし、非露光光に対し収差が被露光領域内で抑えられていない。そのため、非露光光を用いて、前記投影光学系を介しマスク面とプレート面の相対的な位置ずれ量を前記良像領域の全域で検出する場合、収差が大きく発生している位置でマーク位置検出する可能性がある。
【0010】
図3はXY方向測定用の位置検出用マークの一例である。図3(A)と(B)はそれぞれ、マスク側位置検出用マークとプレート側位置検出用マークを示している。図3(A)と(B)の両図において、上側半分はY方向の位置検出用マークを示しており、下側半分はX方向の位置検出用マークを示している。図3中、12cと22cはマーク内の透過部、12dと22dは遮光部(斜線部)である。
【0011】
図4はプレート面のZ方向位置と、マーク観測波形のコントラストとの関係を示している。図4が示すように、焦点位置はプレート面をZ方向に移動した時に、コントラストが最大となるプレート面位置として一意的に決まる。従って、前記投影光学系で非点隔差が発生している位置でマークを観測した場合、X方向とY方向のプレート面における焦点位置がそれぞれ異なるため、少なくとも一方の方向のマークは焦点を合わせて観測することができない。
【0012】
図6は非点隔差が発生している状態において前記位置検出用マークを観測した波形を示している。例えば、図6の(A)と(B)はX方向の観測波形で、(A)はX方向に焦点を合わせた時の観測波形(図3の破線部の断面波形)、(B)はY方向に焦点を合わせた時の観測波形である。X方向のマーク観測波形は、X方向に焦点を合わせることで、よりコントラストの大きな波形を得ることができる。同様に、図6の(C)と(D)はY方向の観測波形で、(C)はX方向に焦点を合わせた時の観測波形(図3の一点破線部の断面波形)、(D)はY方向に焦点を合わせた時の観測波形である。Y方向のマーク観測波形は、Y方向に焦点を合わせることで、よりコントラストの大きな波形を得ることができる。
【0013】
マーク位置は、位置検出装置に備えられえた撮像素子面上に形成されるマーク観測波形を波形処理することで算出される。この時、マーク観測波形のコントラストが大きい方が精度良く位置検出をすることができる。これは、位置検出装置によって観測されたマーク観測波形をデジタル処理する際、照明光強度のゆらぎや電気的なノイズ、そして露光装置全体の熱揺らぎや振動等による変動成分の影響を受けにくいためである。
【0014】
また、位置検出装置の照明系から照射される光の主光線が、マークの描写されているマスク面及びプレート面に対して傾き、かつマスク面とプレート面の焦点が合っていない場合、両者の位置ずれ量の検出精度が低下する。これは、主光線の傾き分だけマークがX方向もしくはY方向にシフトしてしまうためである。さらにこの時、結像の歪による観測波形の非対称性が発生し、波形処理の際、位置検出精度が低下する要因ともなる。非点隔差がある場合、X方向、Y方向のどちらか一方、或いは両方のマークの焦点が合っていない状態で、マークの位置計測が行われる。そのため、上記に示した要因で位置検出精度が低下する。
【0015】
以上のことから、マーク観測時はX方向とY方向のそれぞれ方向に対し焦点を合わせて位置検出を実施することが重要といえる。
【0016】
特許文献5では、この非点隔差の問題を解決するため、位置検出に用いる非露光光において投影光学系で発生する非点隔差を補正する補正光学系を位置検出装置に配置している。しかし、特許文献5においては、補正光学系の設計や製造コストがかかることや、また前記良像領域の全域でマーク検出を行う場合、前記補正光学系を駆動する等のハード構成が複雑になることや、補正駆動に時間を要するなどの問題が生じる。
【0017】
このような問題を鑑みて、本特許は投影系を介した非露光波長によるマーク位置検出において、安価で且つ位置検出時間も短縮し且つマーク位置検出精度を向上させることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0018】
その目的を達成するため、本発明の露光装置は、物体面上に形成されたパターンを像面上に結像させる投影光学系と、露光波長と異なる波長を有し物体面と像面の相対的な位置ずれ量を前記投影光学系を介して検出する位置検出装置を備えることを特徴とする。また、その位置検出装置の検出波長において、前記投影光学系の非点隔差が特定の条件を満たす位置で位置ずれ量を検出することでマーク位置検出精度を向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、露光装置において、マスク面とプレート面の相対的な位置合わせを行う際に、投影光学系の非点隔差の影響を考慮して位置合わせ測定を実施することで、安価で且つ位置検出時間も短縮し且つマーク位置検出精度が高い露光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】露光装置の概略構成を示すブロック図。
【図2】円弧形状の被露光領域を示す図。
【図3】位置検出用マークの一例を表す図。
【図4】光軸(Z)方向とマーク観測波形のコントラストとの関係を示す図。
【図5】XY方向のマーク観測波形のコントラストとそれぞれの方向における焦点位置を示す図。
【図6】(A)X方向の位置検出用マーク観測波形(X方向に焦点が合っている時)。(B)X方向の位置検出用マーク観測波形(Y方向に焦点があっている時)。(C)Y方向の位置検出用マーク観測波形(X方向に焦点が合っている時)。(D)Y方向の位置検出用マーク観測波形(Y方向に焦点が合っている時)。
【図7】(A)マスク側位置検出用マーク。(B)プレート側位置検出用マーク。(C)マスク側位置検出用マークとプレート側位置検出用マークとが共に撮像素子に撮像されている撮像画像。
【図8】位置合わせ測定のフローチャート。
【図9】円弧形状の被露光領域における非点隔差ASijkの分布の概略図。
【図10】第2実施形態におけるマーク測定位置を示した図。
【図11】実施形態3を説明するための概略的なブロック図。
【図12】第4実施形態を説明するための概略図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の好ましい実施形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
【0022】
〔第1実施形態〕
図1はマスク面とプレート面の相対位置を合わせる機構を備えた投影露光装置の概略的なブロック図である。
【0023】
11はマスクであり、図3(A)に示されるようなマスク側位置検出用マーク12が描写されている。10はマスクステージを示し、マスク11を保持し、かつXYθ方向に駆動する機能を備えている。21はプレートであり、図3(B)に示されるようなプレート側位置検出用マーク22が描写されている。20はプレートステージを示し、プレート21を保持し、かつXYZθ方向に駆動する機能を備えている。40は照明光学系で、マスク11を所望の角度分布で均一に露光光で照射する機構を備えている。
【0024】
30は投影露光装置の投影光学系を示し、照明光学系40によって照射されたマスクパターンをプレート21上に結像するものである。
【0025】
50は位置検出装置で、マスク側位置検出用マーク12とプレート側位置検出用マーク22を照明し撮像することで、XY方向の位置ずれ量を測定する機能を備えている。位置検出装置50は、図1に示すように、対物レンズ51、リレーレンズ52、光源53、照明光学系54、撮像素子55、対物レンズ駆動制御系56、ミラー57、ハーフミラーもしくは偏光ビームスプリッター58で構成される。対物レンズ51とリレーレンズ52はアフォーカル系をなしており、対物レンズ51は位置検出マークの位置に対応してマスクステージ10上を移動する機能が備わっている。また、リレーレンズ52は位置検出装置50の光学系における光軸に対して平行に駆動する機能が備わっている。本実施の形態1において光源53の波長は露光波長と異なる波長を有し、例えば450nm〜1000nmを使用する。
【0026】
ここで、X方向とY方向それぞれのマーク検出方法について説明する。
【0027】
図7はXY方向位置検出マークの一例を示す平面図である。図7(A)はマスク側位置検出用マーク12を示し、透過部材12c上に遮光部材(図内斜線部)12dによりマークパターンが描写されている。また、図7(B)はプレート側位置検出用マーク22を示し、22dは遮光部材であり、22cは透過部22cである。
【0028】
位置検出装置50の光源53により照射された光は、マスク側位置検出用マーク12を照明する。照明された前記マスク側位置検出用マーク12から反射された光を、対物レンズ51、リレーレンズ52を介しCCDなどの撮像素子55上に結像させる。この時、リレーレンズ52を光軸方向に駆動させ、撮像素子55とマスク側位置検出用マーク12とが共役になるようにする。
【0029】
続いて、前記マスク側位置検出用マーク12の透過部12cを透過した光は、投影光学系30を介してプレート側位置検出用マーク22を照明する。照明された前記プレート側位置検出用マーク22からの反射光を撮像素子55で観測できる状態にするため、プレートステージ20を光軸方向(Z方向)に上下駆動し、マスク側位置検出用マーク12とプレート側位置検出用マーク22とが共役の関係となる位置になるよう調整する。なお、プレートステージ20のZ方向の位置は、面検出器投光光学系70aと面検出器受光光学系70bと面検出器演算部70cで構成される斜入射方式の面位置検出器70によって測定される。この時、マスク側位置検出用マーク12とプレート側位置検出用マーク22は結像関係にあるので、両者は同一の光学系すなわち投影光学系30と位置検出装置50を介し、撮像素子55上に結像させることができる。
【0030】
図7(C)はマスク側位置検出用マーク12とプレート側位置検出用マーク22とが共に撮像素子55上に撮像された場合の撮像画像を示している。図7(C)の画像から、マスク側位置検出用マーク12の撮像素子55上における位置と、プレート側位置検出用マーク22の撮像素子55上における位置とを算出することにより、マスク11とプレート21のX方向とY方向における相対位置関係を測定することができる。
【0031】
図2は投影露光装置の被露光領域200を示しており、その形状は光軸Oを中心(0、0)とした円弧形状である。被露光領域内における任意の座標を(Xi、Yj)とし、光源53の波長がλk(光源の波長が単色でない場合は、スペクトル重心となる波長)とした場合、前記座標位置において発生する非点隔差ASijkを後述の方法にて測定する。
【0032】
なお、Rijは光軸を原点とし動径方向の絶対値であり、θij=は偏角であり、
ij=√(Xi、Yj)^2、θij=tan-1(Xi/Yj)
で与えられる。
【0033】
図8にマスク11とプレート21の相対的な位置ずれ量を測定するフローチャートを示す。
【0034】
ステップS102は、被露光領域200の任意の座標(Xi、Yj)における前記非点隔差ASijkを測定する過程である。S102では、次に示す工程が実施される。
【0035】
まず、前記座標(Xi、Yj)に対物レンズ51を駆動させ、マスク側X方向位置検出用マーク12aを測定する。この時、マスク側X方向位置検出用マーク12aの観測波形のコントラストが最大になるようにリレーレンズ52を駆動する。リレーレンズ52の位置は固定したまま、プレート側X方向位置検出用マーク22aを観測する。プレート側X方向位置検出用マーク22aの観測波形のコントラストが最大になるように、プレートステージ20をZ方向に駆動させ、X方向の焦点位置(BPXとする)を算出する。この時、プレートステージ20の面位置は、例えば図1に示されるような斜入射方式の面位置検出装置70によって検出され、記憶演算装置60にその情報は記憶される。
【0036】
前記面位置検出装置は、投光部70a、受光部70b、面位置演算部70cによって構成され、算出された面位置情報は記憶演算装置60に記憶される。
【0037】
続いて、リレーレンズ52の位置はX方向の焦点位置を求めた時の位置に固定したまま、前記座標(Xi、Yj)においてプレート側Y方向位置検出用マーク22bの観測波形のコントラストが最大になるように、プレートステージ20をZ方向に駆動させ、Y方向の焦点位置(BPYとする)を算出する。この時のプレートステージ面位置もX方向と同様に、記憶演算装置60に情報が記憶される。
【0038】
前記光源53の波長がλにおける前記非点隔差発生量をASijkは、算出された前記BPXと前記BPYの差分により定まる。
【0039】
同様の手法で被露光領域200内の各点における非点隔差ASijkを測定する。測定点数が多いほど被露光領域200内の各点における非点隔差ASijkを正確に把握できるが、測定に時間を要するという問題が発生する。測定点数は測定範囲や測定精度など、その時に必要な条件に応じて適切な点数をとることで、測定に際して余計な時間がかかることを防ぐことができる。
【0040】
以上の工程により、被露光領域200の任意の座標(Xi、Yj)における前記非点隔差ASijkが測定される。
【0041】
図8のステップS103は、前記ステップS102によって測定された被露光領域200内における非点隔差ASijkの測定値を記憶演算装置60に記憶する過程である。図9は記憶演算装置60に記憶される被露光領域200内における非点隔差ASijkの分布の概略図である。
【0042】
図8のステップS104は、前記記憶演算装置60に記憶された前記非点隔差ASijkの分布情報をもとに、対物レンズ51を駆動させる過程である。ステップS104では、以下の工程が実施される。前記記憶演算装置60に記憶された前記非点隔差ASijkの分布情報を、対物レンズ駆動制御系56に伝達する。対物レンズ51は対物レンズ駆動制御系56からの伝達された情報に基づき、マーク検出位置が条件1を満たす位置において位置検出マークを検出するように、マスク面11上をXY方向に駆動する。
【0043】
条件1
【0044】
【数1】


ここで、λは前記位置検出装置に用いる位置検出用マーク検出光の波長、NAは前記位置検出装置の対物レンズ51の開口数、ASijkは波長λにおいて前記座標(Xi、Yj)で発生する非点隔差である。また、tは0≦t≦1の値をとる係数で、前記位置検出装置に求められている検出精度によって決まる。
【0045】
t=1の時、ASijkは位置検出装置もつ焦点深度と等しくなり、一般にマークはボケの影響が少なく前記撮像素子55に結像されるとされている。tの値が小さくなればなるほど、X方向とY方向ともにコントラストの高い観測波形を得ることができ、位置検出精度が向上する。
【0046】
ステップS105は、ステップS104により定められた位置で、位置検出マークを位置検出装置50で観測する過程である。
【0047】
ステップS106は、ステップS105によって観測されたマーク画像より、マスク11とプレート21の相対的な位置を算出する過程である。ステップS106では、非点隔差ASijkが少ない状態で位置検出用マークを観測しているため、非点隔差の影響が軽減されており、その結果位置検出精度が向上している。
【0048】
以上に述べた内容により、非点隔差の影響を受けずに高精度な相対位置検出が可能となる。
【0049】
〔第2実施形態〕
第1実施形態において、図2に示す円弧状被露光領域200の全領域に対し非点隔差ASijkを測定すると、図8におけるS102に時間を要してしまうという問題が生じる。
【0050】

一方、測定点数を減らすと前記被露光領域の非点隔差ASijkを正確に取得できないという問題が生じる。そこで本第2実施形態では測定点数を少なくかつ、非点隔差ASijkを前記被露光領域の全面で取得する方法について説明する。
【0051】
本実施形態は光軸に対して光学特性が対称である投影光学系を備えた露光装置に適応するものである。なお、前記投影光学系を構成する光学部品の製造誤差や組み立て誤差によって生じる非点隔差は、第1実施形態記載の条件1として示された非点隔差の値に対して十分小さいものとする。この時、前記被露光領域において、光軸を原点とし動径方向の絶対値Rijが等し位置では、非点隔差ASijkも同等といえる。
【0052】
この特性により前記被露光領域の全領域において非点隔差ASijkを測定しなくても、動径方向の絶対値が異なる複数位置で非点隔差を測定することで、前記被露光領域内の非点隔差を予想することができる。以下その手順について説明する。
【0053】
まず、動径方向の絶対値が異なる複数の測定位置に対物レンズ51を駆動し、それぞれの測定位置に対して第1実施形態で示す手順で非点隔差を測定する。図10は前記測定点の一例であり、被露光領域内で偏角θijがθij=0位置を等しいピッチで5点(図10内の(0、Yi)から(0、Yi+5)で示される5点)を測定する。
【0054】
測定された5点それぞれの非点隔差の値は、記憶演算装置60に記憶される。記憶演算装置60により、非点隔差量が最も小さい測定点が識別され、その動径方向の絶対値の値(Rmin)とするが算出される。前記記憶演算装置60からの情報は対物レンズ駆動制御系56に伝達される。対物レンズ51は、前記被露光領域において非点隔差が最も小さい点を含む動径方向に沿って駆動し、位置検出マークの測定を行う。従って、前記被露光領域における位置検出位置の軌跡は、図10の点線201が示すように半径Rminの円弧状となる。
【0055】
なお、偏角θij=0の場合、投影光学系30のメリディオナル、サジタルとX方向、Y方向が一致しているが、偏角θij≠0の場合、投影光学系30のメリディオナル、サジタルとX方向、Y方向が一致しなくなる。その場合は、上記測定値を偏角θijの分回転させ、X方向、Y方向の非点隔差に換算して使用すると、更に誤差を低減できる。
【0056】
以上の手法によって、非点隔差発生量の測定点数を減らし、かつ被露光領域において非点隔差発生量が小さい位置でマーク位置検出を実施できる。
【0057】
〔第3実施形態〕
第1実施形態では、プレート側位置検出用マーク22を位置検出装置で検出しているため、プレート側位置検出マーク22からの反射光は投影光学系30を2回通過している。本実施形態では、投影光学系30を1回通してプレート側位置検出用マークを観測する方法を示す。この方法の利点として、投影光学系30を1回介するのみでマークを観測でき、投影光学系30の透過率1回分の透過率低下がないため、光量的に非常に有利となることが挙げられる。
【0058】
図11は実施形態3を説明するための概略的なブロック図である。第1実施形態と同じ構成のものに関しては特に言及しない。図11において、位置検出用マークを照射するマーク照明部80はマスク11の上面に配置されている。マーク照明部80は、対物レンズ81、光源82、照明光学系83、対物レンズ駆動制御系84、ミラー85で構成される。対物レンズ駆動制御系84は、対物レンズ81を座標(Xi、Yj)位置に駆動させる機能を備えている。一方、位置検出用マークを受光するマーク受光部90は、対物レンズ91、リレーレンズ92、撮像素子93、対物レンズ駆動制御系94によって構成されている。対物レンズ駆動制御系94は、照明部80が照射するマーク位置に応じて、対物レンズ91を駆動させる機能を備えている。照明部80の光源82により照射された光は、マスク側位置検出用マーク12を照射する。マスク側位置検出用マーク12を透過した光は、投影光学系30、マーク受光部90の対物レンズ91、リレーレンズ92を介しCCDなどの撮像素子93上に結像される。この時、リレーレンズ92を駆動させ、撮像素子93とマスク側位置検出用マーク12とが共役になるようにする。
【0059】
続いて、マスク側位置検出用マーク12の透過部12cを透過した光は、投影光学系30を介してプレート側位置検出用マーク22を照明する。照明された前記プレート側位置検出用マーク22の透過光を、撮像素子93で観測できる状態にするため、プレートステージ20をZ方向に上下駆動し、マスク側位置検出用マーク12とプレート側位置検出用マーク22とが共役の関係となる位置になるよう調整する。この時、マスク側位置検出用マーク12とプレート側位置検出用マーク22は結像関係にあるので、撮像素子93上に結像させることができる。
【0060】
本実施形態において、非点隔差ASijkを測定する方法を説明する。まず、座標(Xi、Yj)にマーク照明部80の対物レンズ81を駆動させ、マスク側X方向位置検出用マーク12aを測定する。この時、マーク受光部90の対物レンズ91は、前記マスク側X方向位置検出用マーク12aの透過光を観測する位置に駆動される。マスク側X方向位置検出用マーク12aの観測波形のコントラストが最大になるようにリレーレンズ92を駆動する。リレーレンズ92の位置は固定したまま、プレート側X方向位置検出用マーク22aを観測する。プレート側X方向位置検出用マーク22aの観測波形のコントラストが最大になるように、プレートステージ20をZ方向に駆動させ、X方向の焦点位置(BPXとする)を算出する。この時、プレートステージ20の面位置は、例えば図11に示されるような斜入射方式の面位置検出装置70によって検出され、記憶演算装置60にその情報は記憶される。
【0061】
前記面位置検出装置は、投光部70a、受光部70b、面位置演算部70cによって構成され、算出された面位置情報は記憶演算装置60に記憶される。
【0062】
続いて、リレーレンズ92の位置はX方向の焦点位置を求めた時の位置に固定したまま、前記座標(Xi、Yj)においてプレート側Y方向位置検出用マーク22bの観測波形のコントラストが最大になるように、プレートステージ20をZ方向に駆動させ、Y方向の焦点位置(BPYとする)を算出する。この時のプレートステージ面位置もX方向と同様に、記憶演算装置60に情報が記憶される。
【0063】
前記光源82の波長がλにおける前記非点隔差発生量をASijkは、算出された前記BPXと前記BPYの差分により定まる。同様の手法で被露光領域200内の各点における非点隔差ASijkを測定する。
【0064】
本実施形態では、以上の工程により非点隔差ASijkの測定が行われ、高精度にマスク11とプレート21の位置ずれ量を検出することができる。なお、照明部80をプレート21の下面に設置し、受光部90をマスク11上面に設置して測定を実施してもよい。但し、この時、マスク側位置検出用マーク12は図3の(B)、プレート側位置検出用マーク22は図3の(A)に示されるものとする。
【0065】
〔第4実施形態〕
第1実施形態では、非点隔差ASijkを測定する際、マスク側位置検出用マーク12とプレート側位置検出用マーク22を用いる手法を説明した。本実施形態では、前記手法において、マスク側位置検出用マーク12およびプレート側位置検出用マーク22の代わりに、マスク側基準プレート13およびプレート側基準プレート23を用いる手法を説明する。この手法においては、マスク11やプレート21を使用せず、投影光学系30で発生する非点隔差ASijkを測定することが可能である。
【0066】
図12は第4実施形態を説明するための概略図である。第1実施形態と同じ構成のものに関しては特に言及しない。
【0067】
マスクステージ10は、ステージ位置検出系100によって、その位置や姿勢が随時測定されている。前記ステージ位置検出系100は、ステージの位置や姿勢を測定するレーザ干渉計100aと、レーザ干渉計100aによって測定された情報を記憶演算する記憶演算装置100bによって構成される。マスクステージ10には、マスクステージ10に対して相対位置が保証されるようにマスク側基準プレート13が配置されている。マスク側基準プレート13には、図3(A)で示されるような位置検出用マークが描写されており、その高さは、マスク側位置検出用マーク12の高さとほぼ一致する。マスク側基準プレート13の上面には第3実施形態で説明した照明部80が固定される。マスクステージ10には、レーザ干渉計100aから出射されたビームを反射するミラー100cが固定されていて、レーザ干渉計100aによりマスクステージ10の位置や姿勢は随時測定される。マスクステージ10は、記憶演算装置100bから伝達された位置や姿勢の情報に基づき、位置や姿勢を制御する。
【0068】
一方、プレートステージ20には、プレートステージ20に対して相対位置が保証されるようにプレート側基準プレート23が配置されている。プレート側基準プレート23のパターン面には、図3(B)に示すような位置検出用マークが描写されており、プレート21の上面とその高さがほぼ一致する。プレート側基準プレート23の下面には第3実施形態で説明した受光部90が固定される。プレートステージ20には、レーザ干渉計101から出射されたビームを反射するミラー103が固定されていて、レーザ干渉計101によりプレートステージ20の位置や姿勢は随時測定される。プレートステージ20は、記憶演算装置102から伝達された位置や姿勢の情報に基づき、位置や姿勢が制御される。
【0069】
非点隔差ASijkを測定する際、マスクステージ10は座標(Xi、Yj)位置にマスク側基準プレートが配置されるように駆動する。同様に、プレートステージ20は、前記座標(Xi、Yj)に対応する位置にプレート側基準プレート23が配備されるように駆動する。基準プレートがステージに対して相対位置が定まっていることと、ステージ検出系100によってステージ位置が測定されていることにより、両基準プレートは座標(Xi、Yj)位置に精度良く配置される。非点隔差ASijkの測定法と位置ずれ量の算出法は第1実施形態から第3実施形態で述べた通りである。
【符号の説明】
【0070】
10 マスクステージ
11 マスク
12 マスク側位置検出用マーク
12a マスク側位置検出用マーク(X方向)
12b マスク側位置検出用マーク(Y方向)
12c 透過部
12d 遮光部(斜線部)
13 マスク側基準プレート
20 プレートステージ
21 プレート
22 プレート側位置検出用マーク
22a プレート側位置検出用マーク(X方向)
22b プレート側位置検出用マーク(Y方向)
22c 透過部
22d 遮光部
23 プレート側基準プレート
30 露光装置投影光学系
40 露光装置照明光学系
50 位置検出装置
51 対物レンズ(位置検出装置光学系内)
52 リレーレンズ(位置検出装置光学系内)
53 光源(位置検出装置光学系内)
54 照明光学系(位置検出装置光学系内)
55 撮像素子(位置検出装置光学系内)
56 対物レンズ駆動制御系(位置検出装置光学系内)
57 ミラー(位置検出装置光学系内)
58 ハーフミラーもしくは偏光ビームスプリッター(位置検出装置光学系内)
60 記憶演算装置
70 面位置検出器
70a 面位置検出器投光光学系
70b 面位置検出器受光光学系
70c 面位置検出器演算部
80 マーク照明部
81 対物レンズ(マーク照明部光学系内)
82 光源(マーク照明部光学系内)
83 照明光学系(マーク照明部光学系内)
84 対物レンズ駆動制御系(マーク照明部光学系内)
85 ミラー(マーク照明部光学系内)
90 マーク受光部
91 対物レンズ(マーク受光部光学系内)
92 リレーレンズ(マーク受光部光学系内)
93 撮像素子(マーク受光部光学系内)
94 対物レンズ駆動制御系(マーク受光部光学系内)
95 ミラー(マーク受光部光学系内)
100 ステージ位置検出系
100a レーザ干渉計
100b 記憶演算装置
103c ミラー
200 円弧状の被露光領域
201 第2実施形態において位置検出マーク測定を実施する位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体面上に形成されたパターンを像面上に結像させる投影光学系と、露光波長と異なる波長を有し物体面上の位置検出マークと像面上位置検出マークの相対的な位置ずれ量を前記投影光学系を介して検出する位置検出装置を備え、
前記検出装置が有する露光波長とは異なる波長において前記投影光学系で生ずる非点隔差が特定の条件を満たす位置で前記位置ずれ量を検出することを特徴とする露光装置。
【請求項2】
前記投影光学系は、前記物体面から前記像面に至る光路に第1の凹反射面、凸反射面、第の2凹反射面が順に配置された投影光学系であって、
前記投影光学系は、前記第1の凹反射面と前記凸反射面との間に配置されたパワーを有する少なくとも1つの屈折光学部材と、前記物体面から前記第1凹反射面に至る光路中及び前記第2凹反射面から前記像面に至る光路中の少なくとも一方に配置されたパワーを有する少なくとも1つの屈折光学部材とが含まれていることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項3】
前記位置検出装置は、物体面上の任意の位置に駆動可能な対物レンズを備え、物体面上の位置検出マークと像面上位置検出マークの相対的な位置ずれ量を測定する機能と、像面上のパターンから前記投影光学系において発生する非点隔差を測定する機能と、前記非点隔差の値を記憶する記憶機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
【請求項4】
請求項1に記載の前記特定の条件が以下の不等式で示されることを特徴とする請求項1に記載の露光装置。
AS≦t×λ/(2×NA
ここで、λは前記位置検出装置に用いる位置検出用マーク検出光の波長、NAは前記位置検出装置の対物レンズ51の開口数、ASは波長λにおいて前記投影光学系で発生する非点隔差である。また、tは0≦t≦1の値をとる係数で、前記位置検出装置に求められている検出精度によって決まる。
【請求項5】
前記投影光学系は、前記物体面上に形成されたパターンを前記像面上に前記露光波長によって露光する被露光領域を有し、前記被露光領域内にて前記検出波長における非点隔差が請求項4に記載の条件式を満たす像高を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の露光装置。
【請求項6】
前記位置検出装置は、前記位置検出装置の有する露光波長とは異なる波長において前記投影光学系で生ずる非点隔差を検出する手段と、前記位置ずれ量を検出する手段を備えることを特徴とする請求項1又は請求項3に記載の露光装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−189734(P2012−189734A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52306(P2011−52306)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】