高配向ダイヤモンド膜の製造方法
【課題】表面に結晶粒界がない高配向ダイヤモンド膜を、一定の形状及び寸法で規則的に配列することができ、意図せぬ方位の結晶が発生しないようにした低コストの高配向ダイヤモンド膜の製造方法を提供する。
【解決手段】(001)オフ面基板上に、[100]方向に成長するように、第1の高配向ダイヤモンド膜1を成長させる。次いで、格子状のマスク2を第1の高配向ダイヤモンド膜1上に形成し、その後、平坦化膜としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により成長させる。その後、マスクを除去する。
【解決手段】(001)オフ面基板上に、[100]方向に成長するように、第1の高配向ダイヤモンド膜1を成長させる。次いで、格子状のマスク2を第1の高配向ダイヤモンド膜1上に形成し、その後、平坦化膜としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により成長させる。その後、マスクを除去する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶に近いキャリアの高速移動が可能な高配向ダイヤモンド膜を得るための高配向ダイヤモンド膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高配向ダイヤモンド膜は、気相合成によって形成されたダイヤモンド薄膜であって、薄膜表面積の80%以上がダイヤモンドの(100)結晶面から構成されていると共に、隣接する(100)結晶面の結晶面方位を表すオイラー角{α,β,γ}の差{Δα,Δβ,Δγ}が|△α|≦5°、|△β|≦10°、|△γ|≦5°を同時に満足するものである(特許文献1)。
【0003】
即ち、図17は(100)結晶面が高度に配向したダイヤモンド薄膜表面の構造を模式的に示すものである。薄膜面内に相互に直交するX軸及びY軸を定義し、薄膜表面の法線方向をZ軸と定義する。i番目及びそれに隣接するj番目のダイヤモンド結晶面の結晶面方位を表すオイラー角を夫々{αi,βi,γi}、{αj,βj,γj}とし、両者の角度差を{△α,△β,△γ}とする。オイラー角{α,β,γ}は基準結晶面を基準座標のX、Y、Z軸の周りに角度α、β、γの順に回転して得られる結晶面の配向を表す。
【0004】
このように、|△α|≦5°、|△β|≦10°、|△γ|≦5°を同時に満足する高配向性ダイヤモンド薄膜は、結晶が高度に配向し、単結晶膜と同様にキャリアの移動度が高い。
【0005】
この高配向ダイヤモンド膜は、概略、Siの(001)基板を炭化処理し、バイアス印加による核発生を行い、<100>方向の成長が最も速く、<111>方向の成長が最も遅くなる条件で、配向成長を行い、<111>方向の成長が最も速く、<100>方向の成長が最も遅くなる条件で平坦化成長を行うというこれらの4工程により作製することができる。核発生は、島状に109/cm2以上の高密度になる。そして、配向成長と、平坦化成長により、核から成長した結晶粒子のうち、<100>方位が基板と垂直に近いものが、そうでないものを覆うように淘汰しながら成長する。成長のある時点では、粒径が10〜20μmの結晶粒が寄せ集まった表面になる。各結晶粒は同じ方位のものもあるが、10°程度傾いている場合が多い。これは、ダイヤモンドとSiとの格子定数のミスマッチによる。
【0006】
2個の結晶粒の相互間には、結晶粒界があるが、この結晶粒界は電子デバイスの動作の阻害要因となるため、できることなら除去したい。即ち、結晶粒界は、トランジスタ及びダイオード等の半導体デバイスにおいては、キャリア散乱による移動度低下及びキャリアの自由行程の短縮による抵抗増大並びに応答速度低下、発光デバイス及び導光路においては、光散乱による透過率の低下及び光路の乱れ、光センサにおいては、暗電流の増加及び長波長のカットオフ不全、熱伝導率低下及び表面平坦性低下等の種々の問題点を引き起こす。
【0007】
高配向ダイヤモンド膜は、そのまま成長を続ければ徐々に粒界が減少していくが、膨大な時間を必要とする。また、仮に、平均粒径が大きくなっても、粒界の位置がランダムに存在する状態では、粒界を避けてデバイスを配置することが困難であり、デバイスを大量生産することができない。
【0008】
これを解消するためには、核発生位置又は成長再開位置を決めることにより、粒界を規則的に配置するようにすればよい。このとき、酸化物又は金属マスクで核発生位置又は成長再開位置を制限し、その中間地点での核発生、即ちマスク上から意図しない核発生を完全に防止する必要がある。しかしながら、実際のダイヤモンドの成長条件は、700〜1100℃の高温であり、しかも水素が90%以上のプラズマ中に数時間も曝されるため、マスクの損傷がある。従って、核発生位置又は成長再開位置の間隔を広くしようとすればするほど、その中間を埋めるために長時間を要する。このため意図しない核発生を抑制することが困難である。つまり、最終の結晶粒界を大きくしようとすればするほど、中間のエリアが広くなるため、意図しない核発生の抑制がますます困難となる。意図しない核は、非配向のため、最終的に非配向の結晶が残ってしまう。
【0009】
これを回避する方法として、高配向ダイヤモンド膜を作製した後、リソグラフィとエッチングにより柱状ダイヤモンドを一定の間隔で配置する方法がある。柱の先端は単結晶になっているので、これを横方向に成長させれば、タイル状のダイヤモンド膜を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3150488号公報
【特許文献2】特開2008−108824号公報
【特許文献3】特開平6−172088号公報
【特許文献4】特開平7−89793号公報
【特許文献5】特開2006−176389号公報
【特許文献6】特開2002−75960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の柱状ダイヤモンドを一定の間隔で配置する方法は、柱状突起を残してほとんどの部分をエッチング除去しなければならず、製造コストが高くなるという問題点がある。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、表面に結晶粒界がない高配向ダイヤモンド膜を、一定の形状及び寸法で規則的に配列することができ、意図せぬ方位の結晶が発生しないようにした低コストの高配向ダイヤモンド膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願第1発明に係る高配向ダイヤモンド膜の製造方法は、
オフ面基板を使用し、この基板上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に格子状にマスクを形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
前記マスクを除去する工程と、
を有することを特徴とする。
【0014】
本願第2発明に係る高配向ダイヤモンド膜の製造方法は、
オフ面基板を使用し、この基板上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜の表面に格子状に溝を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
を有することを特徴とする。
【0015】
本願第3発明に係る高配向ダイヤモンド膜の製造方法は、
オフ面基板を使用し、この基板の表面に格子状に溝を形成する工程と、
前記オフ面基板の上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
を有することを特徴とする。
【0016】
本願第4発明に係る高配向ダイヤモンド膜の製造方法は、
ジャスト面基板を使用し、この基板上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜をオフ面研磨する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に格子状にマスクを形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
を有することを特徴とする。
【0017】
本願第5発明に係る高配向ダイヤモンド膜の製造方法は、
ジャスト面基板を使用し、この基板上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜をオフ面研磨する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜の表面に格子状に溝を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
を有することを特徴とする。
【0018】
本願第1乃至第3発明において、前記オフ面基板の面方位は(001)であり、オフ角の傾斜方向は<100>であり、前記マスク又は溝の方向は<110>であることが好ましい。また、本願第4及び第5発明において、前記ジャスト面基板の面方位は(001)であり、前記第1の高配向ダイヤモンド膜のオフ角の傾斜方向は<100>であり、前記マスク又は溝の方向は<110>であることが好ましい。この場合に、オフ角は3乃至11°、更に好ましくは、5乃至9°であることが好ましい。
【0019】
なお、ステップフロー成長とは、結晶が原子層毎に成長するとき、成長表面にテラスと呼ぶ平坦な面と1原子層だけ異なる階段状の構造が形成され、成長がステップ端のところで生じ、あたかもステップが流れる様に動くことによって結晶成長することをいう。
【0020】
また、基板としては、ダイヤモンドのヘテロエピタキシャル成長が可能な基板であれば使用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、平坦化のためのステップフロー成長が、格子状のマスク又は溝により規制されてそれを超えて成長することはなく、これらのマスク又は溝で区切られた領域内に粒界がない平坦化表面が得られる。この平坦化表面は、格子状のマスク又は溝により区切られた領域に形成されるので、このマスク又は溝により決められた特定の場所に、同一形状及び同一サイズで形成される。このため、この場所にトランジスタを作り込むことにより、単結晶基板にトランジスタを設けた場合と同様に、極めて高速の動作が可能なトランジスタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の参考例であり、ストライプ状のマスクを使用した場合の高配向ダイヤモンド膜を形成した状態を示す平面図(a)、断面図(b)である。
【図2】同じくこの参考例におけるステップフロー成長の過程を示す平面図(a)、断面図(b)である。
【図3】同じくこの参考例におけるステップフロー成長の完成後の状態を示す平面図(a)、断面図(b)である。
【図4】同じく、マスクを除去した後の平坦化膜を示す平面図(a)、断面図(b)である。
【図5】本発明の第1実施形態における[100]方向オフ角基板上に成長させた高配向ダイヤモンド膜を示す平面図である。
【図6】同じく格子状マスクを形成した後の高配向ダイヤモンド膜を示す平面図である。
【図7】ステップフロー成長の過程を示す模式図である。
【図8】同じくステップフロー成長が完了した後の表面を示す平面図である。
【図9】同じくマスクを除去した後の表面を示す平面図である。
【図10】本発明の第2実施形態における溝形成後(a)、及びステップフロー成長後(b)の状態を示す断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態におけるオフ面Si基板(a)に溝を形成した後(b)、高配向ダイヤモンドを成長させる(c)工程を示す断面図である。
【図12】同じく、ステップフロー成長させた後(a)、デバイスを作製する(b)工程を示す断面図である。
【図13】本発明の第4実施形態におけるジャストSi基板に高配向ダイヤモンド膜を成長させた後(a)、オフ面研磨する(b)工程を示す断面図である。
【図14】同じく、マスクを形成して高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長させる工程を示す断面図である。
【図15】本発明の第5実施形態を示し、図13の工程の後に、溝を形成する工程を示す断面図である。
【図16】従来例1のSi(001)基板上に高配向ダイヤモンド膜を形成する工程を示す断面図である。
【図17】従来例2の[1−10]方向オフ角基板上に成長させた高配向ダイヤモンド膜の結晶面を示す平面図である。
【図18】同じくそのオフ角との関係を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。先ず、参考例について説明する。単結晶の厚膜及び単結晶バルク結晶をホモエピタキシャル成長させる場合、オフ面基板を使用すると、欠陥の抑制及び成長速度の向上に効果があることが公知である。この場合には、単結晶内の原子層ステップに着目してステップフロー成長を行う。このステップの上段と下段は、完全に同じ方位である。また、単結晶であるために、ステップ端に平行な方向には段差が存在しないため、図1(a)に示すようなストライプ状のマスク30でも結晶性が優れた面を得ることができる(特許文献2)。
【0024】
本願発明者等は、この原理を高配向ダイヤモンド膜の成長に適用することにより、結晶粒界の低減に有効であることを見いだした。図1(a)、(b)に示すように、(001)面から[110]方向に傾斜して研磨した面のSi基板を使用し、従来の方法で高配向ダイヤモンド膜20を形成する。これにより、傾斜方向に沿って階段状の高配向ダイヤモンド膜が得られる。このまま高配向ダイヤモンド膜の成長を続けても、階段の平坦部(テラス21)の斜面方向の長さは、最上位の段を除いてほとんど変化せず、その位置が斜面方向に平行移動するだけである。
【0025】
この場合に、図1に示すように、斜面が延びる方向に垂直な方向、即ち、[−110]方向にストライプ状のマスク30を形成し、マスク30を超えてテラス21が成長しないように成長を制限しながら、高配向ダイヤモンド膜20を横方向(マスク30の長手方向)に成長させる。そうすると、図2(a)、(b)に示すように、高配向ダイヤモンド膜からなる平坦化膜40は、ステップフロー成長する。これにより、マスク30間の領域毎に、最上位テラス(平坦化膜40の斜面)の長さが伸び、下位のテラスが覆われていく。このステップフロー成長が終了すると、図3(a)、(b)に示すように、表面には、平坦化膜40の最上位テラスの結晶がマスク30間の大きさまで広がり、下位のテラスを全て覆う。そして、図4(a)、(b)に示すように、マスク30を除去すると、平坦化膜40の広大な面積のテラスが形成される。
【0026】
しかしながら、このストライプ状のマスク30を使用した場合は、高配向ダイヤモンド膜が単結晶膜ではないことに起因して問題点がある。即ち、高配向ダイヤモンド膜では、Si基板に対して個々の粒子はヘテロエピタキシャル成長の関係にあるのであるが、実際には、個々の粒子は、基板方位から若干のずれがあり、少し離れた位置の粒子は元来相互に繋がっていない関係にあるから、ストライプ状のマスク30と平行の方向にも結晶粒界に起因する段差が存在する。この段差の数は、成長を続けていけば、マスクなしで成長させた高配向ダイヤモンド膜で見られるように、徐々に少なくなっていくのであるが、段差の間隔及び位置はランダムのままであり、完全に消失させることはできない。
【0027】
そこで、本発明においては、格子状のマスク又は溝を使用して、高配向ダイヤモンド膜を形成する。図5乃至図8は本発明の第1実施形態(マスク使用)の高配向ダイヤモンド膜の製造方法を示す平面図である。先ず、図5に示すように、[100]方向のオフ角のSi基板上に、高配向ダイヤモンド膜1を成長させる。なお、紙面に垂直の方向を[001]方向とする。この[001]方向は、(X,Y,Z)座標軸でZ軸に相当し、[100]方向は、X軸に相当する。この高配向ダイヤモンド膜1は、[001]方向に着目すると、図5における左下に位置する結晶面ほど、上位にある(高い)。
【0028】
そして、この高配向ダイヤモンド膜1上に、図6に示すように、格子状のマスク2を形成する。このマスク2を形成した後、図7に示すように、平坦化膜としての第2の高配向ダイヤモンド膜3をステップフロー成長で形成する。そうすると、図7(a)に示すように、この第2の高配向ダイヤモンド膜3は、マスク2に囲まれた領域内で、その左下の位置から、[100]方向に成長する。この第2の高配向ダイヤモンド膜3は、図7(b)、図7(c)、図7(d)に示すように、ステップフロー成長で、原子層の階段状のステップ端で連続的に成長し、このステップ端が[110]方向、[100]方向及び[1−10]方向に移動していく。この平坦化膜のステップフロー成長において、マスク2は、ステップフロー成長を止めてマスク2からはみ出た成長が起きないようにするものである。本実施形態においては、格子状のマスク2によりステップフロー成長が規制されるので、最終的に、マスク2の格子に囲まれた領域内で成長するように規制された平坦化膜が得られる。
【0029】
従って、図8に示すように、このステップフロー成長が完了すると、マスク3で囲まれた全ての領域は、平坦化膜として成長させた第2の高配向ダイヤモンド膜3の唯一の結晶で覆われる。つまり、マスク2により囲まれた各領域には、第2の高配向ダイヤモンド膜の1個のテラスが形成される。
【0030】
そして、図9に示すように、マスク2を除去すると、表面は単結晶の第2の高配向ダイヤモンド膜3が、全て同一の大きさの矩形の形状及び大きさを有して、規則的に碁盤目状に配置された高配向ダイヤモンド膜が得られる。そして、マスク2が存在していた領域には、平坦化成長するまえの第1の高配向ダイヤモンド膜1が露出する。
【0031】
本実施形態においては、矩形の第2の高配向ダイヤモンド膜3にトランジスタを作り込むことにより、単結晶のダイヤモンド膜上にトランジスタを設けた場合と同様に、高速動作が可能なトランジスタを得ることができる。そして、この矩形の第2の高配向ダイヤモンド膜3は、碁盤目状に規則正しく配置され、その形状は、矩形で、全て同一の形状を有しているため、トランジスタを形成する際の回路設計が容易である。
【0032】
本実施形態においては、オフ面基板を使用し、格子状のマスクを形成することにより、第1の高配向性ダイヤモンド膜の表面を区切り、2方向(例えば、[110]方向及び[1−10]方向)の平坦化層となる第2の高配向ダイヤモンド膜のステップフロー成長を制限する。このように、マスクにより囲まれた制限領域内でステップフロー成長を止め、隣の領域にステップフロー成長が延びないようにすることが本発明の特徴である。その結果、マスクにより決められた同一形状及び同一サイズの粒界がない表面、即ち、単結晶表面をもつ高配向ダイヤモンド膜を規則的に配列させることができる。よって、単結晶領域が規則的に配置されているので、トランジスタ等のデバイスを大量生産しやすいという利点がある。また、制限領域と、制限領域との間にのみ、粒界が存在するので、電界効果トランジスタ(FET)のように、全体の大きさに比べてアクティブ領域が小さい場合は、アクティブ領域のみを制限領域内におけば、実質のデバイス動作は単結晶と同等にすることができる。
【0033】
本実施形態のように、マスクを使用する場合は、第2の高配向ダイヤモンド膜の平坦化成長まで行い、これによりほとんどの領域を{100}面で覆った後、そのままマスクを形成してもよいが、表面を研磨した後、マスクを形成することが好ましい。高配向ダイヤモンド膜で平坦化すると、通常、各粒子の高さは種々ばらつく。また、オフ角が大きければ、段差も大きくなる。一般的に段差の凹凸が大きいと、リソグラフィの歩留が低下し、設計どおりのパターンを形成することが困難であるので、好ましくない。このため、平坦化成長した高配向ダイヤモンド膜の表面を、一旦、研磨して、例えば、表面粗度Raを50nm以下にした後、マスクを形成して、更に、平坦化膜を形成すれば、上述の問題点が解消される。
【0034】
オフ面基板の基準面は、(001)面である。オフ面Si基板を使用して高配向ダイヤモンド膜を成膜したものを基板としても良いし、ジャスト面Si基板上に成膜した高配向ダイヤモンド膜をオフ面研磨したものを使用してもよい。(001)面を基準に高配向ダイヤモンドを成長させると、四角形の{100}面が出現するので、四角形の制限領域で、表面を規則的に覆い尽くすには、基準面を(001)面とした方が好都合である。
【0035】
(001)面に対し、オフ角の傾斜方向は<100>とし、マスクの方向は<110>とすることが好ましい。オフ角の傾斜方向を制限領域の対角線の方向、即ち、[100]方向に一致させることにより、最上位の面を制限領域内の1点、即ち、角付近(例えば、図7の左下)に位置させることができる。その後、<110>方向に制限領域の端までステップ端が到達したとき、ステップ端と制限領域の縁とが平行なために一致し、制限領域を1個の結晶面で覆い尽くすには、最も効率が良い。ステップ端と制限領域の縁とがずれていると、最終的に単一の(100)面で覆うとき、結晶面とパターンが傾いている分、ステップフロー成長時間が長くなるというロスが生じる。
【0036】
オフ角は、3乃至11°、より望ましくは5乃至9°である。オフ角は小さい方がSi基板を効率的に使用できる。しかし、オフ角が小さすぎると、各結晶粒の上下方向の位置関係が乱れやすくなり、一方向のステップフロー成長に移行させるのが困難になる。一方、オフ角を大きくすると、ステップフローの方向が定まりやすいが、上位の面がマスクパターンの端まで成長するまでに、オフ方向に沿った断面をもって考えるとすると、ジャスト面よりr2・θ/2(rはマスクパターンの端から端までの距離、θはオフ角の大きさ)の面積分だけ多く成長させなければならない。即ち、オフ角θの大きさが大きいと、成膜時間が長くなり、製造コストが増加すると共に、隣の制限領域との間の段差が大きくなり、その後のデバイス作製時のリソグラフィにおいて、焦点距離の差が大きくなる。そうすると、微細加工が困難になる。このため、適切なオフ角は、上記事情を勘案して決めるものであり、3乃至11°、より好ましくは、5乃至9°が好ましい。
【0037】
基板としては、ダイヤモンドのヘテロエピタキシャル成長が可能なものであれば、種々の基板を使用することができる。Si(001)、SiC(001)、Ir(001)及びPt(001)等の基板を使用することができるが、この中で、Si(001)基板が最も好ましい。
【0038】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図10(a)、(b)は本発明の第2実施形態(溝使用)を示す模式的断面図である。本実施形態は、Si基板(図示せず)上に第1の高配向ダイヤモンド膜5を配向成長させた後、ダイヤモンド膜をドライエッチングすることにより溝7を形成する。この溝7は、平面視で格子状をなす。その後、溝7が形成された第1の高配向ダイヤモンド5上にステップフロー成長で平坦化膜としての第2の高配向ダイヤモンド膜6を形成する。この第2の高配向ダイヤモンド膜6は、その成長が格子状の溝7により阻止されて、溝7を超えて成長することはない。これにより、第1実施形態と同様に、平坦化のステップフロー成長が完了すると、溝7により囲まれた制限領域内に、表面に粒界がなく、表面が単結晶と同様の特性をもつ第2の高配向ダイヤモンド膜6が形成される。
【0039】
本実施形態は、第1実施形態のマスクの代わりに、溝を格子状に形成したものであるが、この溝によっても、ステップフロー成長を停止させて制限領域を区画することができ、この溝により決められた制限領域内に同一形状及び同一サイズの粒界がない表面、即ち、単結晶表面をもつ領域を規則的に配列させることができる。
【0040】
溝の場合は、Si基板に予め溝を形成しておくか、高配向ダイヤモンド膜の形成の途中に溝を形成するか、平坦化のための第2の高配向ダイヤモンド膜の形成後に溝を形成することができる。この中で、平坦化後に溝を形成することが最も好ましく、次いで、高配向ダイヤモンド膜の形成途中のバイアス核発生後が好ましく、次いで、Si基板に予め溝を形成しておくことが好ましい。Si基板への溝形成又はバイアス核発生後の溝形成は、ダイシングソーで行ってもよく、また、Siをエッチングできる液剤を使用してもよく、更に、プラズマでエッチングすることにより形成してもよい。Si基板が第1の高配向ダイヤモンド膜で覆われた後の溝形成は、酸素を含むプラズマでダイヤモンドをエッチングすればよい。その他の処理条件は、第1実施形態のマスク使用の場合と同様である。
【0041】
図11及び図12は本発明の第3実施形態を示す断面図である。本実施形態は、オフ面Si基板に溝を形成するものである。図11(a)に示すように、(100)面のオフ面を有するSi基板8に、図11(b)に示すように、ダイシングソー等により溝7を格子状に形成し、更に、図11(c)に示すように、溝7が形成されたSi基板8の上に、高配向ダイヤモンド膜9を形成する。その後、図12(a)に示すように、平坦化膜として第2の高配向ダイヤモンド膜10をステップフロー成長により形成する。この第2の高配向ダイヤモンド膜10は、ステップフロー成長する結果、格子状の溝7により囲まれた領域の表面において、粒界が消え、表面は単結晶と同様の特性を有する高配向ダイヤモンド膜が得られる。図12(b)に示すように、この単結晶に近い表面を有する平坦化膜としての高配向ダイヤモンド膜10上に、デバイスを作成する。このデバイスの作成後は、溝7の位置で、各デバイスを分割してもよい。
【0042】
本実施形態も、溝7により囲まれた領域に、表面に粒界がない高配向ダイヤモンド膜を形成することができる。
【0043】
図13(a)、(b)及び図14は、本発明の第4実施形態に係る高配向ダイヤモンド膜の成長過程を示す模式的断面図である。図13(a)に示すように、Si(001)基板11上に、第1の高配向ダイヤモンド膜12を形成し、その後、この高配向ダイヤモンド膜12上に平坦化膜として、第2の高配向ダイヤモンド膜13を形成する。この第2の高配向ダイヤモンド膜13は、その表面がSi(001)基板11の表面に平行な結晶粒として成長する。
【0044】
次に、図13(b)に示すように、この第2の高配向ダイヤモンド膜13の表面をオフ面研磨して、オフ面14を形成する。その後、図14に示すようにして、このオフ面14の上に、マスク15を格子状に形成する。次いで、平坦化膜として高配向ダイヤモンド膜17をステップフロー成長で形成する。これにより、格子状のマスク15に囲まれた領域内に、粒界がない高配向ダイヤモンド膜17が形成される。
【0045】
また、図15に示すように、このマスク15の代わりに、高配向ダイヤモンド膜13に溝16を格子状に形成しても良い。溝16の形成後、平坦化膜としての高配向ダイヤモンド膜17をステップフロー成長で形成することにより、この高配向ダイヤモンド膜17はステップフロー成長が溝16により阻止され、この溝16を超えて平坦化膜が成長することはない。これにより、格子状の溝16に囲まれた領域内に、粒界がない高配向ダイヤモンド膜17が形成される。
【実施例】
【0046】
次に、本発明の実施例について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。下記表1は、従来例、比較例及び実施例の各工程を示す。高配向ダイヤモンド膜は、下記表2に記載の方法で作製した。これらの高配向ダイヤモンド膜の形成方法は、特許文献3及び4に記載されている方法と同様の方法である。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
この高配向ダイヤモンド膜の形成工程における代表的なものは、例えば、Si(100)ウエハを基板とし、マイクロ波プラズマCVD装置を使用し、上記表2の条件で表面炭化工程を30分間、バイアス核発生工程を15分間、配向成長工程を15時間、平坦化成長工程は、30時間実施した。この平坦化成長工程の粒径拡大条件は、例えば、特許文献5にも開示されている。
【0050】
次に、マスクの形成方法について説明する。先ず、高配向ダイヤモンド膜の表面上に、CVD(化学気相成長)法によりSiO2膜を形成した。なお、CVDの代わりに、蒸着法を使用してもよい。このSiO2膜の厚さは500nmである。次に、全面にレジストを塗布し、このレジストをフォトリソグラフィによりストライプ状(比較例)又は格子状(実施例)にパターニングした。このレジストパターンの幅は、5〜10μm、ストライプ又は格子のピッチは50〜200μmとした。次に、CF4+5体積%Arを使用した誘導結合プラズマにより、レジストをマスクとしてSiO2膜をエッチングし、既にパターニングされているレジストパターンをSiO2膜に転写した。これは、特許文献6に記載された方法と同様である。
【0051】
SiO2の代わりに、Al2O3等の酸化物、Pt、Ni、Fe、Co等の炭素を固溶する金属を使用することもできる。各素材のエッチングによるパターニングは、既知の方法によればよい。エッチングによるパターニングの代わりに、リフトオフ法も使用できる。このリフトオフ法は、レジストをパターニング形成した後、全面にマスク材料を蒸着し、その後、レジストを除去することにより、レジスト上のマスク材料も除去するものである。このリフトオフ法による場合は、レジストの耐久性の点から、CVDではなく蒸着によりマスク材料を形成することが好ましい。
【0052】
なお、マスクを形成した後、高配向ダイヤモンド膜のステップフロー成長を行うが、その途中で、マスク上に意図せずにダイヤモンド粒子が成長したり、マスクが減少したりする。これにより、マスクには、ピンホール等の損傷が生じる可能性がある。このため、マスクは、定期的に、例えば、ステップフロー成長の10時間毎に形成し直すことが好ましい。
【0053】
次に、高配向ダイヤモンド膜に溝を形成する方法について説明する。段落0050及び0051と同様の方法で、但し、パターンは反転させたマスクを形成した後、O2に少量(1〜10体積%)のArを添加したガスを使用した誘導結合プラズマにより、高配向ダイヤモンド膜にバイアスを−1900V印加した状態で、この高配向ダイヤモンド膜をエッチングした。この方法は、特許文献6に記載された方法と同様である。その結果、高配向ダイヤモンド膜がその表面に垂直の方向にエッチングされ、溝が形成された。
【0054】
ステップフロー成長の条件は、表2の平坦化成長の条件と同一である。
【0055】
次に、Si基板の溝形成方法について説明する。核発生後の溝形成も同様の方法である。Si基板上にレジストを形成した後、これをフォトリソグラフィでパターニングし、このレジストパターンをマスクとして、Si用プラズマエッチング方法によりSi基板をエッチングして溝を形成した。なお、このSi基板に対する溝の形成は、上記プラズマエッチングではなく、ダイシングソーを使用しても良い。溝の深さは50〜200μm、溝の幅は20〜50μm、溝のピッチは50〜200μmである。但し、溝の幅は溝ピッチの1/2を超えないようにした。溝形状は断面がU字形又は矩形のいずれでもよい。しかし、溝形状は、断面がV字形になるようにした方が、溝間に残る台地の上縁(台地上面と溝側面との間の角度)が鈍角になり、高配向ダイヤモンド膜の成長時にプラズマ電界が集中せず、上縁からの非配向結晶の成長を抑制できるため好ましい。核発生後でも、Si基板の表面には高硬度ダイヤモンド膜は殆ど成長していないので、Si基板の表面に溝を形成する場合と同様の方法で溝を形成できる。
【0056】
Si基板は、Siのインゴットに対し、ジャスト面(001)で、又はジャスト面(001)に対して傾斜させてスライスし、スライスした面を研磨し、更に、CMP(化学的機械的研磨)を実施し、研磨面をバッファードフッ酸で洗浄した。その後、このSi基板上に高配向ダイヤモンド膜を成長させる。
【0057】
高配向ダイヤモンド膜のオフ面研磨は、既知のスカイフ板を使用する方法で、ジャスト面(001)の基板面に対し、[100]方向に傾斜させて研磨した後、研磨による歪み及び欠陥を除去するために、全面を、O2に少量(1〜10体積%)のArを添加したガスを使用した誘導結合プラズマにより、0.1〜0.5μmの深さにエッチング除去した。
【0058】
以上の方法により、表1に記載の従来例、比較例、実施例の各方法で、高配向ダイヤモンド膜を形成した。従来例1においては、図16(a)に示すように、ジャスト(001)面Si基板100上に、高配向ダイヤモンド層を成長させた。この高配向ダイヤモンド層は、基板100上の配向成長層101と配向成長層101上の平坦化層102である。平坦化層102の結晶面は、基板面にほぼ平行であり、{100}面である。但し、実際は、配向成長層101を形成する前に、表面炭化層と核発生層を形成するが、これらは極めて薄いため、図示していない。これらの各層の形成条件は、表2に記載の条件範囲内にある。配向成長層101では高配向ダイヤモンド層が成長し、この配向成長層101の表面を平坦化するようにして平坦化層102が成長している。
【0059】
その後、平坦化成長を継続すると、図16(b)に示すように、高配向ダイヤモンド層がステップフロー成長し、単層のダイヤモンド層の端部で成長が生じ、上層にいくほど、結晶粒子が大きくなっていく。
【0060】
そして、平坦化成長を続けると、図16(c)に示すように、ステップフロー成長により上位の粒子が拡大し、粒界はある程度減少していくが、その粒界の位置はランダムである。このように、従来例1の場合は、粒界がない領域を規則的な位置に設けることはできなかった。
【0061】
従来例2の場合は、(001)面から[1−10]方向へオフしたオフ面Si基板上に高配向ダイヤモンド膜を成長し、その後、ステップフローで平坦化層を成長させた。このときの高配向ダイヤモンド膜の結晶粒界を図17に模式的に示す。左縁の結晶面ほど高位にある。しかし、この従来例2の場合は、結晶面が均一に成長することがなく、粒界がない領域を規則的な位置に設けることができなかった。図18はオフ角が2°(図18(a))、3°(図18(b))、5°(図18(c))、7°(図18(d))、9°(図18(e))の場合のオフ面Si基板上に成膜した高配向ダイヤモンド膜の結晶面を示す。このように、いずれのオフ角においても、結晶粒界がない領域を規則正しい位置に設けることはできなかった。なお、図18は、走査型電子顕微鏡により、図中に記載のスケールで、結晶の表面を撮影したものである。
【0062】
また、比較例の場合は、図1乃至図4に示すように、ストライプ状のマスクにて平坦化膜のステップフロー成長は停止するが、マスクに対して垂直の方向には、結晶粒界がない領域が不規則に並んでいた。
【0063】
これに対し、実施例1の場合は、図5乃至図9に示すように、粒界がない領域が規則的に並んだ高配向ダイヤモンド膜が得られた。また、実施例2の場合は、高配向ダイヤモンド膜に格子状の溝を形成したものであり、図10に示すように、粒界がないダイヤモンド表面が格子状の溝に囲まれた領域に形成された。更に、実施例3の場合は、オフ面Si基板に格子状の溝を形成したものであり、図11及び図12に示すように、粒界がないダイヤモンド表面が格子状の溝に囲まれた領域に形成された。実施例4の場合は、バイアス核発生後に溝を形成したものであり、実施例3の図11及び図12と同様であった。実施例5の場合は、図13及び図14に示すように、ジャスト(001)面Si基板を使用し、高配向ダイヤモンド膜にオフ面研磨を施した上でマスクを形成したものであるが、実施例1の図9と同様に、粒界がない領域が規則的に配列した高配向ダイヤモンド膜が得られた。実施例6の場合は、図13及び図15に示すように、ジャスト(001)面Si基板を使用し、高配向ダイヤモンド膜にオフ面研磨を施した上で溝を形成したものであるが、実施例2と同様に、粒界がない領域が規則的に配列した高配向ダイヤモンド膜が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、高配向ダイヤモンド膜を形成する際に、表面に結晶粒界がない領域を同一の大きさ形状で、規則的に配列することができ、単結晶ダイヤモンドにトランジスタ等のデバイスを形成した場合と同様の高速動作が可能となり、ダイヤモンド基板上にデバイスを形成する技術の応用に多大の貢献をなす。
【符号の説明】
【0065】
1、3、5、6、9、10、12、13、101、102:高配向ダイヤモンド膜
2、15:格子状マスク
7、16:溝
8、11、100:オフ面Si基板
14:オフ面
【技術分野】
【0001】
本発明は、単結晶に近いキャリアの高速移動が可能な高配向ダイヤモンド膜を得るための高配向ダイヤモンド膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高配向ダイヤモンド膜は、気相合成によって形成されたダイヤモンド薄膜であって、薄膜表面積の80%以上がダイヤモンドの(100)結晶面から構成されていると共に、隣接する(100)結晶面の結晶面方位を表すオイラー角{α,β,γ}の差{Δα,Δβ,Δγ}が|△α|≦5°、|△β|≦10°、|△γ|≦5°を同時に満足するものである(特許文献1)。
【0003】
即ち、図17は(100)結晶面が高度に配向したダイヤモンド薄膜表面の構造を模式的に示すものである。薄膜面内に相互に直交するX軸及びY軸を定義し、薄膜表面の法線方向をZ軸と定義する。i番目及びそれに隣接するj番目のダイヤモンド結晶面の結晶面方位を表すオイラー角を夫々{αi,βi,γi}、{αj,βj,γj}とし、両者の角度差を{△α,△β,△γ}とする。オイラー角{α,β,γ}は基準結晶面を基準座標のX、Y、Z軸の周りに角度α、β、γの順に回転して得られる結晶面の配向を表す。
【0004】
このように、|△α|≦5°、|△β|≦10°、|△γ|≦5°を同時に満足する高配向性ダイヤモンド薄膜は、結晶が高度に配向し、単結晶膜と同様にキャリアの移動度が高い。
【0005】
この高配向ダイヤモンド膜は、概略、Siの(001)基板を炭化処理し、バイアス印加による核発生を行い、<100>方向の成長が最も速く、<111>方向の成長が最も遅くなる条件で、配向成長を行い、<111>方向の成長が最も速く、<100>方向の成長が最も遅くなる条件で平坦化成長を行うというこれらの4工程により作製することができる。核発生は、島状に109/cm2以上の高密度になる。そして、配向成長と、平坦化成長により、核から成長した結晶粒子のうち、<100>方位が基板と垂直に近いものが、そうでないものを覆うように淘汰しながら成長する。成長のある時点では、粒径が10〜20μmの結晶粒が寄せ集まった表面になる。各結晶粒は同じ方位のものもあるが、10°程度傾いている場合が多い。これは、ダイヤモンドとSiとの格子定数のミスマッチによる。
【0006】
2個の結晶粒の相互間には、結晶粒界があるが、この結晶粒界は電子デバイスの動作の阻害要因となるため、できることなら除去したい。即ち、結晶粒界は、トランジスタ及びダイオード等の半導体デバイスにおいては、キャリア散乱による移動度低下及びキャリアの自由行程の短縮による抵抗増大並びに応答速度低下、発光デバイス及び導光路においては、光散乱による透過率の低下及び光路の乱れ、光センサにおいては、暗電流の増加及び長波長のカットオフ不全、熱伝導率低下及び表面平坦性低下等の種々の問題点を引き起こす。
【0007】
高配向ダイヤモンド膜は、そのまま成長を続ければ徐々に粒界が減少していくが、膨大な時間を必要とする。また、仮に、平均粒径が大きくなっても、粒界の位置がランダムに存在する状態では、粒界を避けてデバイスを配置することが困難であり、デバイスを大量生産することができない。
【0008】
これを解消するためには、核発生位置又は成長再開位置を決めることにより、粒界を規則的に配置するようにすればよい。このとき、酸化物又は金属マスクで核発生位置又は成長再開位置を制限し、その中間地点での核発生、即ちマスク上から意図しない核発生を完全に防止する必要がある。しかしながら、実際のダイヤモンドの成長条件は、700〜1100℃の高温であり、しかも水素が90%以上のプラズマ中に数時間も曝されるため、マスクの損傷がある。従って、核発生位置又は成長再開位置の間隔を広くしようとすればするほど、その中間を埋めるために長時間を要する。このため意図しない核発生を抑制することが困難である。つまり、最終の結晶粒界を大きくしようとすればするほど、中間のエリアが広くなるため、意図しない核発生の抑制がますます困難となる。意図しない核は、非配向のため、最終的に非配向の結晶が残ってしまう。
【0009】
これを回避する方法として、高配向ダイヤモンド膜を作製した後、リソグラフィとエッチングにより柱状ダイヤモンドを一定の間隔で配置する方法がある。柱の先端は単結晶になっているので、これを横方向に成長させれば、タイル状のダイヤモンド膜を形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3150488号公報
【特許文献2】特開2008−108824号公報
【特許文献3】特開平6−172088号公報
【特許文献4】特開平7−89793号公報
【特許文献5】特開2006−176389号公報
【特許文献6】特開2002−75960号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述の柱状ダイヤモンドを一定の間隔で配置する方法は、柱状突起を残してほとんどの部分をエッチング除去しなければならず、製造コストが高くなるという問題点がある。
【0012】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、表面に結晶粒界がない高配向ダイヤモンド膜を、一定の形状及び寸法で規則的に配列することができ、意図せぬ方位の結晶が発生しないようにした低コストの高配向ダイヤモンド膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本願第1発明に係る高配向ダイヤモンド膜の製造方法は、
オフ面基板を使用し、この基板上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に格子状にマスクを形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
前記マスクを除去する工程と、
を有することを特徴とする。
【0014】
本願第2発明に係る高配向ダイヤモンド膜の製造方法は、
オフ面基板を使用し、この基板上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜の表面に格子状に溝を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
を有することを特徴とする。
【0015】
本願第3発明に係る高配向ダイヤモンド膜の製造方法は、
オフ面基板を使用し、この基板の表面に格子状に溝を形成する工程と、
前記オフ面基板の上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
を有することを特徴とする。
【0016】
本願第4発明に係る高配向ダイヤモンド膜の製造方法は、
ジャスト面基板を使用し、この基板上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜をオフ面研磨する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に格子状にマスクを形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
を有することを特徴とする。
【0017】
本願第5発明に係る高配向ダイヤモンド膜の製造方法は、
ジャスト面基板を使用し、この基板上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜をオフ面研磨する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜の表面に格子状に溝を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
を有することを特徴とする。
【0018】
本願第1乃至第3発明において、前記オフ面基板の面方位は(001)であり、オフ角の傾斜方向は<100>であり、前記マスク又は溝の方向は<110>であることが好ましい。また、本願第4及び第5発明において、前記ジャスト面基板の面方位は(001)であり、前記第1の高配向ダイヤモンド膜のオフ角の傾斜方向は<100>であり、前記マスク又は溝の方向は<110>であることが好ましい。この場合に、オフ角は3乃至11°、更に好ましくは、5乃至9°であることが好ましい。
【0019】
なお、ステップフロー成長とは、結晶が原子層毎に成長するとき、成長表面にテラスと呼ぶ平坦な面と1原子層だけ異なる階段状の構造が形成され、成長がステップ端のところで生じ、あたかもステップが流れる様に動くことによって結晶成長することをいう。
【0020】
また、基板としては、ダイヤモンドのヘテロエピタキシャル成長が可能な基板であれば使用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、平坦化のためのステップフロー成長が、格子状のマスク又は溝により規制されてそれを超えて成長することはなく、これらのマスク又は溝で区切られた領域内に粒界がない平坦化表面が得られる。この平坦化表面は、格子状のマスク又は溝により区切られた領域に形成されるので、このマスク又は溝により決められた特定の場所に、同一形状及び同一サイズで形成される。このため、この場所にトランジスタを作り込むことにより、単結晶基板にトランジスタを設けた場合と同様に、極めて高速の動作が可能なトランジスタを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の参考例であり、ストライプ状のマスクを使用した場合の高配向ダイヤモンド膜を形成した状態を示す平面図(a)、断面図(b)である。
【図2】同じくこの参考例におけるステップフロー成長の過程を示す平面図(a)、断面図(b)である。
【図3】同じくこの参考例におけるステップフロー成長の完成後の状態を示す平面図(a)、断面図(b)である。
【図4】同じく、マスクを除去した後の平坦化膜を示す平面図(a)、断面図(b)である。
【図5】本発明の第1実施形態における[100]方向オフ角基板上に成長させた高配向ダイヤモンド膜を示す平面図である。
【図6】同じく格子状マスクを形成した後の高配向ダイヤモンド膜を示す平面図である。
【図7】ステップフロー成長の過程を示す模式図である。
【図8】同じくステップフロー成長が完了した後の表面を示す平面図である。
【図9】同じくマスクを除去した後の表面を示す平面図である。
【図10】本発明の第2実施形態における溝形成後(a)、及びステップフロー成長後(b)の状態を示す断面図である。
【図11】本発明の第3実施形態におけるオフ面Si基板(a)に溝を形成した後(b)、高配向ダイヤモンドを成長させる(c)工程を示す断面図である。
【図12】同じく、ステップフロー成長させた後(a)、デバイスを作製する(b)工程を示す断面図である。
【図13】本発明の第4実施形態におけるジャストSi基板に高配向ダイヤモンド膜を成長させた後(a)、オフ面研磨する(b)工程を示す断面図である。
【図14】同じく、マスクを形成して高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長させる工程を示す断面図である。
【図15】本発明の第5実施形態を示し、図13の工程の後に、溝を形成する工程を示す断面図である。
【図16】従来例1のSi(001)基板上に高配向ダイヤモンド膜を形成する工程を示す断面図である。
【図17】従来例2の[1−10]方向オフ角基板上に成長させた高配向ダイヤモンド膜の結晶面を示す平面図である。
【図18】同じくそのオフ角との関係を示す顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照して具体的に説明する。先ず、参考例について説明する。単結晶の厚膜及び単結晶バルク結晶をホモエピタキシャル成長させる場合、オフ面基板を使用すると、欠陥の抑制及び成長速度の向上に効果があることが公知である。この場合には、単結晶内の原子層ステップに着目してステップフロー成長を行う。このステップの上段と下段は、完全に同じ方位である。また、単結晶であるために、ステップ端に平行な方向には段差が存在しないため、図1(a)に示すようなストライプ状のマスク30でも結晶性が優れた面を得ることができる(特許文献2)。
【0024】
本願発明者等は、この原理を高配向ダイヤモンド膜の成長に適用することにより、結晶粒界の低減に有効であることを見いだした。図1(a)、(b)に示すように、(001)面から[110]方向に傾斜して研磨した面のSi基板を使用し、従来の方法で高配向ダイヤモンド膜20を形成する。これにより、傾斜方向に沿って階段状の高配向ダイヤモンド膜が得られる。このまま高配向ダイヤモンド膜の成長を続けても、階段の平坦部(テラス21)の斜面方向の長さは、最上位の段を除いてほとんど変化せず、その位置が斜面方向に平行移動するだけである。
【0025】
この場合に、図1に示すように、斜面が延びる方向に垂直な方向、即ち、[−110]方向にストライプ状のマスク30を形成し、マスク30を超えてテラス21が成長しないように成長を制限しながら、高配向ダイヤモンド膜20を横方向(マスク30の長手方向)に成長させる。そうすると、図2(a)、(b)に示すように、高配向ダイヤモンド膜からなる平坦化膜40は、ステップフロー成長する。これにより、マスク30間の領域毎に、最上位テラス(平坦化膜40の斜面)の長さが伸び、下位のテラスが覆われていく。このステップフロー成長が終了すると、図3(a)、(b)に示すように、表面には、平坦化膜40の最上位テラスの結晶がマスク30間の大きさまで広がり、下位のテラスを全て覆う。そして、図4(a)、(b)に示すように、マスク30を除去すると、平坦化膜40の広大な面積のテラスが形成される。
【0026】
しかしながら、このストライプ状のマスク30を使用した場合は、高配向ダイヤモンド膜が単結晶膜ではないことに起因して問題点がある。即ち、高配向ダイヤモンド膜では、Si基板に対して個々の粒子はヘテロエピタキシャル成長の関係にあるのであるが、実際には、個々の粒子は、基板方位から若干のずれがあり、少し離れた位置の粒子は元来相互に繋がっていない関係にあるから、ストライプ状のマスク30と平行の方向にも結晶粒界に起因する段差が存在する。この段差の数は、成長を続けていけば、マスクなしで成長させた高配向ダイヤモンド膜で見られるように、徐々に少なくなっていくのであるが、段差の間隔及び位置はランダムのままであり、完全に消失させることはできない。
【0027】
そこで、本発明においては、格子状のマスク又は溝を使用して、高配向ダイヤモンド膜を形成する。図5乃至図8は本発明の第1実施形態(マスク使用)の高配向ダイヤモンド膜の製造方法を示す平面図である。先ず、図5に示すように、[100]方向のオフ角のSi基板上に、高配向ダイヤモンド膜1を成長させる。なお、紙面に垂直の方向を[001]方向とする。この[001]方向は、(X,Y,Z)座標軸でZ軸に相当し、[100]方向は、X軸に相当する。この高配向ダイヤモンド膜1は、[001]方向に着目すると、図5における左下に位置する結晶面ほど、上位にある(高い)。
【0028】
そして、この高配向ダイヤモンド膜1上に、図6に示すように、格子状のマスク2を形成する。このマスク2を形成した後、図7に示すように、平坦化膜としての第2の高配向ダイヤモンド膜3をステップフロー成長で形成する。そうすると、図7(a)に示すように、この第2の高配向ダイヤモンド膜3は、マスク2に囲まれた領域内で、その左下の位置から、[100]方向に成長する。この第2の高配向ダイヤモンド膜3は、図7(b)、図7(c)、図7(d)に示すように、ステップフロー成長で、原子層の階段状のステップ端で連続的に成長し、このステップ端が[110]方向、[100]方向及び[1−10]方向に移動していく。この平坦化膜のステップフロー成長において、マスク2は、ステップフロー成長を止めてマスク2からはみ出た成長が起きないようにするものである。本実施形態においては、格子状のマスク2によりステップフロー成長が規制されるので、最終的に、マスク2の格子に囲まれた領域内で成長するように規制された平坦化膜が得られる。
【0029】
従って、図8に示すように、このステップフロー成長が完了すると、マスク3で囲まれた全ての領域は、平坦化膜として成長させた第2の高配向ダイヤモンド膜3の唯一の結晶で覆われる。つまり、マスク2により囲まれた各領域には、第2の高配向ダイヤモンド膜の1個のテラスが形成される。
【0030】
そして、図9に示すように、マスク2を除去すると、表面は単結晶の第2の高配向ダイヤモンド膜3が、全て同一の大きさの矩形の形状及び大きさを有して、規則的に碁盤目状に配置された高配向ダイヤモンド膜が得られる。そして、マスク2が存在していた領域には、平坦化成長するまえの第1の高配向ダイヤモンド膜1が露出する。
【0031】
本実施形態においては、矩形の第2の高配向ダイヤモンド膜3にトランジスタを作り込むことにより、単結晶のダイヤモンド膜上にトランジスタを設けた場合と同様に、高速動作が可能なトランジスタを得ることができる。そして、この矩形の第2の高配向ダイヤモンド膜3は、碁盤目状に規則正しく配置され、その形状は、矩形で、全て同一の形状を有しているため、トランジスタを形成する際の回路設計が容易である。
【0032】
本実施形態においては、オフ面基板を使用し、格子状のマスクを形成することにより、第1の高配向性ダイヤモンド膜の表面を区切り、2方向(例えば、[110]方向及び[1−10]方向)の平坦化層となる第2の高配向ダイヤモンド膜のステップフロー成長を制限する。このように、マスクにより囲まれた制限領域内でステップフロー成長を止め、隣の領域にステップフロー成長が延びないようにすることが本発明の特徴である。その結果、マスクにより決められた同一形状及び同一サイズの粒界がない表面、即ち、単結晶表面をもつ高配向ダイヤモンド膜を規則的に配列させることができる。よって、単結晶領域が規則的に配置されているので、トランジスタ等のデバイスを大量生産しやすいという利点がある。また、制限領域と、制限領域との間にのみ、粒界が存在するので、電界効果トランジスタ(FET)のように、全体の大きさに比べてアクティブ領域が小さい場合は、アクティブ領域のみを制限領域内におけば、実質のデバイス動作は単結晶と同等にすることができる。
【0033】
本実施形態のように、マスクを使用する場合は、第2の高配向ダイヤモンド膜の平坦化成長まで行い、これによりほとんどの領域を{100}面で覆った後、そのままマスクを形成してもよいが、表面を研磨した後、マスクを形成することが好ましい。高配向ダイヤモンド膜で平坦化すると、通常、各粒子の高さは種々ばらつく。また、オフ角が大きければ、段差も大きくなる。一般的に段差の凹凸が大きいと、リソグラフィの歩留が低下し、設計どおりのパターンを形成することが困難であるので、好ましくない。このため、平坦化成長した高配向ダイヤモンド膜の表面を、一旦、研磨して、例えば、表面粗度Raを50nm以下にした後、マスクを形成して、更に、平坦化膜を形成すれば、上述の問題点が解消される。
【0034】
オフ面基板の基準面は、(001)面である。オフ面Si基板を使用して高配向ダイヤモンド膜を成膜したものを基板としても良いし、ジャスト面Si基板上に成膜した高配向ダイヤモンド膜をオフ面研磨したものを使用してもよい。(001)面を基準に高配向ダイヤモンドを成長させると、四角形の{100}面が出現するので、四角形の制限領域で、表面を規則的に覆い尽くすには、基準面を(001)面とした方が好都合である。
【0035】
(001)面に対し、オフ角の傾斜方向は<100>とし、マスクの方向は<110>とすることが好ましい。オフ角の傾斜方向を制限領域の対角線の方向、即ち、[100]方向に一致させることにより、最上位の面を制限領域内の1点、即ち、角付近(例えば、図7の左下)に位置させることができる。その後、<110>方向に制限領域の端までステップ端が到達したとき、ステップ端と制限領域の縁とが平行なために一致し、制限領域を1個の結晶面で覆い尽くすには、最も効率が良い。ステップ端と制限領域の縁とがずれていると、最終的に単一の(100)面で覆うとき、結晶面とパターンが傾いている分、ステップフロー成長時間が長くなるというロスが生じる。
【0036】
オフ角は、3乃至11°、より望ましくは5乃至9°である。オフ角は小さい方がSi基板を効率的に使用できる。しかし、オフ角が小さすぎると、各結晶粒の上下方向の位置関係が乱れやすくなり、一方向のステップフロー成長に移行させるのが困難になる。一方、オフ角を大きくすると、ステップフローの方向が定まりやすいが、上位の面がマスクパターンの端まで成長するまでに、オフ方向に沿った断面をもって考えるとすると、ジャスト面よりr2・θ/2(rはマスクパターンの端から端までの距離、θはオフ角の大きさ)の面積分だけ多く成長させなければならない。即ち、オフ角θの大きさが大きいと、成膜時間が長くなり、製造コストが増加すると共に、隣の制限領域との間の段差が大きくなり、その後のデバイス作製時のリソグラフィにおいて、焦点距離の差が大きくなる。そうすると、微細加工が困難になる。このため、適切なオフ角は、上記事情を勘案して決めるものであり、3乃至11°、より好ましくは、5乃至9°が好ましい。
【0037】
基板としては、ダイヤモンドのヘテロエピタキシャル成長が可能なものであれば、種々の基板を使用することができる。Si(001)、SiC(001)、Ir(001)及びPt(001)等の基板を使用することができるが、この中で、Si(001)基板が最も好ましい。
【0038】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図10(a)、(b)は本発明の第2実施形態(溝使用)を示す模式的断面図である。本実施形態は、Si基板(図示せず)上に第1の高配向ダイヤモンド膜5を配向成長させた後、ダイヤモンド膜をドライエッチングすることにより溝7を形成する。この溝7は、平面視で格子状をなす。その後、溝7が形成された第1の高配向ダイヤモンド5上にステップフロー成長で平坦化膜としての第2の高配向ダイヤモンド膜6を形成する。この第2の高配向ダイヤモンド膜6は、その成長が格子状の溝7により阻止されて、溝7を超えて成長することはない。これにより、第1実施形態と同様に、平坦化のステップフロー成長が完了すると、溝7により囲まれた制限領域内に、表面に粒界がなく、表面が単結晶と同様の特性をもつ第2の高配向ダイヤモンド膜6が形成される。
【0039】
本実施形態は、第1実施形態のマスクの代わりに、溝を格子状に形成したものであるが、この溝によっても、ステップフロー成長を停止させて制限領域を区画することができ、この溝により決められた制限領域内に同一形状及び同一サイズの粒界がない表面、即ち、単結晶表面をもつ領域を規則的に配列させることができる。
【0040】
溝の場合は、Si基板に予め溝を形成しておくか、高配向ダイヤモンド膜の形成の途中に溝を形成するか、平坦化のための第2の高配向ダイヤモンド膜の形成後に溝を形成することができる。この中で、平坦化後に溝を形成することが最も好ましく、次いで、高配向ダイヤモンド膜の形成途中のバイアス核発生後が好ましく、次いで、Si基板に予め溝を形成しておくことが好ましい。Si基板への溝形成又はバイアス核発生後の溝形成は、ダイシングソーで行ってもよく、また、Siをエッチングできる液剤を使用してもよく、更に、プラズマでエッチングすることにより形成してもよい。Si基板が第1の高配向ダイヤモンド膜で覆われた後の溝形成は、酸素を含むプラズマでダイヤモンドをエッチングすればよい。その他の処理条件は、第1実施形態のマスク使用の場合と同様である。
【0041】
図11及び図12は本発明の第3実施形態を示す断面図である。本実施形態は、オフ面Si基板に溝を形成するものである。図11(a)に示すように、(100)面のオフ面を有するSi基板8に、図11(b)に示すように、ダイシングソー等により溝7を格子状に形成し、更に、図11(c)に示すように、溝7が形成されたSi基板8の上に、高配向ダイヤモンド膜9を形成する。その後、図12(a)に示すように、平坦化膜として第2の高配向ダイヤモンド膜10をステップフロー成長により形成する。この第2の高配向ダイヤモンド膜10は、ステップフロー成長する結果、格子状の溝7により囲まれた領域の表面において、粒界が消え、表面は単結晶と同様の特性を有する高配向ダイヤモンド膜が得られる。図12(b)に示すように、この単結晶に近い表面を有する平坦化膜としての高配向ダイヤモンド膜10上に、デバイスを作成する。このデバイスの作成後は、溝7の位置で、各デバイスを分割してもよい。
【0042】
本実施形態も、溝7により囲まれた領域に、表面に粒界がない高配向ダイヤモンド膜を形成することができる。
【0043】
図13(a)、(b)及び図14は、本発明の第4実施形態に係る高配向ダイヤモンド膜の成長過程を示す模式的断面図である。図13(a)に示すように、Si(001)基板11上に、第1の高配向ダイヤモンド膜12を形成し、その後、この高配向ダイヤモンド膜12上に平坦化膜として、第2の高配向ダイヤモンド膜13を形成する。この第2の高配向ダイヤモンド膜13は、その表面がSi(001)基板11の表面に平行な結晶粒として成長する。
【0044】
次に、図13(b)に示すように、この第2の高配向ダイヤモンド膜13の表面をオフ面研磨して、オフ面14を形成する。その後、図14に示すようにして、このオフ面14の上に、マスク15を格子状に形成する。次いで、平坦化膜として高配向ダイヤモンド膜17をステップフロー成長で形成する。これにより、格子状のマスク15に囲まれた領域内に、粒界がない高配向ダイヤモンド膜17が形成される。
【0045】
また、図15に示すように、このマスク15の代わりに、高配向ダイヤモンド膜13に溝16を格子状に形成しても良い。溝16の形成後、平坦化膜としての高配向ダイヤモンド膜17をステップフロー成長で形成することにより、この高配向ダイヤモンド膜17はステップフロー成長が溝16により阻止され、この溝16を超えて平坦化膜が成長することはない。これにより、格子状の溝16に囲まれた領域内に、粒界がない高配向ダイヤモンド膜17が形成される。
【実施例】
【0046】
次に、本発明の実施例について、本発明の範囲から外れる比較例と比較して説明する。下記表1は、従来例、比較例及び実施例の各工程を示す。高配向ダイヤモンド膜は、下記表2に記載の方法で作製した。これらの高配向ダイヤモンド膜の形成方法は、特許文献3及び4に記載されている方法と同様の方法である。
【0047】
【表1】
【0048】
【表2】
【0049】
この高配向ダイヤモンド膜の形成工程における代表的なものは、例えば、Si(100)ウエハを基板とし、マイクロ波プラズマCVD装置を使用し、上記表2の条件で表面炭化工程を30分間、バイアス核発生工程を15分間、配向成長工程を15時間、平坦化成長工程は、30時間実施した。この平坦化成長工程の粒径拡大条件は、例えば、特許文献5にも開示されている。
【0050】
次に、マスクの形成方法について説明する。先ず、高配向ダイヤモンド膜の表面上に、CVD(化学気相成長)法によりSiO2膜を形成した。なお、CVDの代わりに、蒸着法を使用してもよい。このSiO2膜の厚さは500nmである。次に、全面にレジストを塗布し、このレジストをフォトリソグラフィによりストライプ状(比較例)又は格子状(実施例)にパターニングした。このレジストパターンの幅は、5〜10μm、ストライプ又は格子のピッチは50〜200μmとした。次に、CF4+5体積%Arを使用した誘導結合プラズマにより、レジストをマスクとしてSiO2膜をエッチングし、既にパターニングされているレジストパターンをSiO2膜に転写した。これは、特許文献6に記載された方法と同様である。
【0051】
SiO2の代わりに、Al2O3等の酸化物、Pt、Ni、Fe、Co等の炭素を固溶する金属を使用することもできる。各素材のエッチングによるパターニングは、既知の方法によればよい。エッチングによるパターニングの代わりに、リフトオフ法も使用できる。このリフトオフ法は、レジストをパターニング形成した後、全面にマスク材料を蒸着し、その後、レジストを除去することにより、レジスト上のマスク材料も除去するものである。このリフトオフ法による場合は、レジストの耐久性の点から、CVDではなく蒸着によりマスク材料を形成することが好ましい。
【0052】
なお、マスクを形成した後、高配向ダイヤモンド膜のステップフロー成長を行うが、その途中で、マスク上に意図せずにダイヤモンド粒子が成長したり、マスクが減少したりする。これにより、マスクには、ピンホール等の損傷が生じる可能性がある。このため、マスクは、定期的に、例えば、ステップフロー成長の10時間毎に形成し直すことが好ましい。
【0053】
次に、高配向ダイヤモンド膜に溝を形成する方法について説明する。段落0050及び0051と同様の方法で、但し、パターンは反転させたマスクを形成した後、O2に少量(1〜10体積%)のArを添加したガスを使用した誘導結合プラズマにより、高配向ダイヤモンド膜にバイアスを−1900V印加した状態で、この高配向ダイヤモンド膜をエッチングした。この方法は、特許文献6に記載された方法と同様である。その結果、高配向ダイヤモンド膜がその表面に垂直の方向にエッチングされ、溝が形成された。
【0054】
ステップフロー成長の条件は、表2の平坦化成長の条件と同一である。
【0055】
次に、Si基板の溝形成方法について説明する。核発生後の溝形成も同様の方法である。Si基板上にレジストを形成した後、これをフォトリソグラフィでパターニングし、このレジストパターンをマスクとして、Si用プラズマエッチング方法によりSi基板をエッチングして溝を形成した。なお、このSi基板に対する溝の形成は、上記プラズマエッチングではなく、ダイシングソーを使用しても良い。溝の深さは50〜200μm、溝の幅は20〜50μm、溝のピッチは50〜200μmである。但し、溝の幅は溝ピッチの1/2を超えないようにした。溝形状は断面がU字形又は矩形のいずれでもよい。しかし、溝形状は、断面がV字形になるようにした方が、溝間に残る台地の上縁(台地上面と溝側面との間の角度)が鈍角になり、高配向ダイヤモンド膜の成長時にプラズマ電界が集中せず、上縁からの非配向結晶の成長を抑制できるため好ましい。核発生後でも、Si基板の表面には高硬度ダイヤモンド膜は殆ど成長していないので、Si基板の表面に溝を形成する場合と同様の方法で溝を形成できる。
【0056】
Si基板は、Siのインゴットに対し、ジャスト面(001)で、又はジャスト面(001)に対して傾斜させてスライスし、スライスした面を研磨し、更に、CMP(化学的機械的研磨)を実施し、研磨面をバッファードフッ酸で洗浄した。その後、このSi基板上に高配向ダイヤモンド膜を成長させる。
【0057】
高配向ダイヤモンド膜のオフ面研磨は、既知のスカイフ板を使用する方法で、ジャスト面(001)の基板面に対し、[100]方向に傾斜させて研磨した後、研磨による歪み及び欠陥を除去するために、全面を、O2に少量(1〜10体積%)のArを添加したガスを使用した誘導結合プラズマにより、0.1〜0.5μmの深さにエッチング除去した。
【0058】
以上の方法により、表1に記載の従来例、比較例、実施例の各方法で、高配向ダイヤモンド膜を形成した。従来例1においては、図16(a)に示すように、ジャスト(001)面Si基板100上に、高配向ダイヤモンド層を成長させた。この高配向ダイヤモンド層は、基板100上の配向成長層101と配向成長層101上の平坦化層102である。平坦化層102の結晶面は、基板面にほぼ平行であり、{100}面である。但し、実際は、配向成長層101を形成する前に、表面炭化層と核発生層を形成するが、これらは極めて薄いため、図示していない。これらの各層の形成条件は、表2に記載の条件範囲内にある。配向成長層101では高配向ダイヤモンド層が成長し、この配向成長層101の表面を平坦化するようにして平坦化層102が成長している。
【0059】
その後、平坦化成長を継続すると、図16(b)に示すように、高配向ダイヤモンド層がステップフロー成長し、単層のダイヤモンド層の端部で成長が生じ、上層にいくほど、結晶粒子が大きくなっていく。
【0060】
そして、平坦化成長を続けると、図16(c)に示すように、ステップフロー成長により上位の粒子が拡大し、粒界はある程度減少していくが、その粒界の位置はランダムである。このように、従来例1の場合は、粒界がない領域を規則的な位置に設けることはできなかった。
【0061】
従来例2の場合は、(001)面から[1−10]方向へオフしたオフ面Si基板上に高配向ダイヤモンド膜を成長し、その後、ステップフローで平坦化層を成長させた。このときの高配向ダイヤモンド膜の結晶粒界を図17に模式的に示す。左縁の結晶面ほど高位にある。しかし、この従来例2の場合は、結晶面が均一に成長することがなく、粒界がない領域を規則的な位置に設けることができなかった。図18はオフ角が2°(図18(a))、3°(図18(b))、5°(図18(c))、7°(図18(d))、9°(図18(e))の場合のオフ面Si基板上に成膜した高配向ダイヤモンド膜の結晶面を示す。このように、いずれのオフ角においても、結晶粒界がない領域を規則正しい位置に設けることはできなかった。なお、図18は、走査型電子顕微鏡により、図中に記載のスケールで、結晶の表面を撮影したものである。
【0062】
また、比較例の場合は、図1乃至図4に示すように、ストライプ状のマスクにて平坦化膜のステップフロー成長は停止するが、マスクに対して垂直の方向には、結晶粒界がない領域が不規則に並んでいた。
【0063】
これに対し、実施例1の場合は、図5乃至図9に示すように、粒界がない領域が規則的に並んだ高配向ダイヤモンド膜が得られた。また、実施例2の場合は、高配向ダイヤモンド膜に格子状の溝を形成したものであり、図10に示すように、粒界がないダイヤモンド表面が格子状の溝に囲まれた領域に形成された。更に、実施例3の場合は、オフ面Si基板に格子状の溝を形成したものであり、図11及び図12に示すように、粒界がないダイヤモンド表面が格子状の溝に囲まれた領域に形成された。実施例4の場合は、バイアス核発生後に溝を形成したものであり、実施例3の図11及び図12と同様であった。実施例5の場合は、図13及び図14に示すように、ジャスト(001)面Si基板を使用し、高配向ダイヤモンド膜にオフ面研磨を施した上でマスクを形成したものであるが、実施例1の図9と同様に、粒界がない領域が規則的に配列した高配向ダイヤモンド膜が得られた。実施例6の場合は、図13及び図15に示すように、ジャスト(001)面Si基板を使用し、高配向ダイヤモンド膜にオフ面研磨を施した上で溝を形成したものであるが、実施例2と同様に、粒界がない領域が規則的に配列した高配向ダイヤモンド膜が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、高配向ダイヤモンド膜を形成する際に、表面に結晶粒界がない領域を同一の大きさ形状で、規則的に配列することができ、単結晶ダイヤモンドにトランジスタ等のデバイスを形成した場合と同様の高速動作が可能となり、ダイヤモンド基板上にデバイスを形成する技術の応用に多大の貢献をなす。
【符号の説明】
【0065】
1、3、5、6、9、10、12、13、101、102:高配向ダイヤモンド膜
2、15:格子状マスク
7、16:溝
8、11、100:オフ面Si基板
14:オフ面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オフ面基板を使用し、この基板上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に格子状にマスクを形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
前記マスクを除去する工程と、
を有することを特徴とする高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項2】
オフ面基板を使用し、この基板上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜の表面に格子状に溝を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
を有することを特徴とする高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項3】
オフ面基板を使用し、この基板の表面に格子状に溝を形成する工程と、
前記オフ面基板の上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
を有することを特徴とする高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項4】
ジャスト面基板を使用し、この基板上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜をオフ面研磨する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に格子状にマスクを形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
を有することを特徴とする高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項5】
ジャスト面基板を使用し、この基板上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜をオフ面研磨する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜の表面に格子状に溝を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
を有することを特徴とする高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項6】
前記オフ面基板の面方位は(001)であり、オフ角の傾斜方向は<100>であり、前記マスク又は溝の方向は<110>であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項7】
前記ジャスト面基板の基準面は(001)であり、前記第1の高配向ダイヤモンド膜のオフ角の傾斜方向は<100>であり、前記マスク又は溝の方向は<110>であることを特徴とする請求項4又は5に記載の高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項8】
オフ角は3乃至11°であることを特徴とする請求項6又は7に記載の高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項1】
オフ面基板を使用し、この基板上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に格子状にマスクを形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
前記マスクを除去する工程と、
を有することを特徴とする高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項2】
オフ面基板を使用し、この基板上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜の表面に格子状に溝を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
を有することを特徴とする高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項3】
オフ面基板を使用し、この基板の表面に格子状に溝を形成する工程と、
前記オフ面基板の上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
を有することを特徴とする高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項4】
ジャスト面基板を使用し、この基板上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜をオフ面研磨する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に格子状にマスクを形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
を有することを特徴とする高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項5】
ジャスト面基板を使用し、この基板上に第1の高配向ダイヤモンド膜を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜をオフ面研磨する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜の表面に格子状に溝を形成する工程と、
前記第1の高配向ダイヤモンド膜上に平坦化層としての第2の高配向ダイヤモンド膜をステップフロー成長により形成する工程と、
を有することを特徴とする高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項6】
前記オフ面基板の面方位は(001)であり、オフ角の傾斜方向は<100>であり、前記マスク又は溝の方向は<110>であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項7】
前記ジャスト面基板の基準面は(001)であり、前記第1の高配向ダイヤモンド膜のオフ角の傾斜方向は<100>であり、前記マスク又は溝の方向は<110>であることを特徴とする請求項4又は5に記載の高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【請求項8】
オフ角は3乃至11°であることを特徴とする請求項6又は7に記載の高配向ダイヤモンド膜の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−162373(P2011−162373A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24723(P2010−24723)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】
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