説明

3次元測定装置、3次元測定方法及びプログラム

【課題】適切な測定照度で測定対象物を3次元測定することができる3次元測定装置等の技術を提供する。
【解決手段】制御部は、投影部により縞が投影された測定対象物を撮像し、縞の位相が異なる合計4枚の画像を取得する(ステップ107〜109)。次に、制御部は、4枚の画像から各画素の輝度値を抽出して、位相シフト法により輝度値を各画素の高さへ変換する(ステップ110)。次に、制御部は、基板選択領域及び半田選択領域のそれぞれについて、高さの変換が不可とされた画素の割合(エラー率)を算出する(ステップ111)。制御部は、照明の照度を変化させて、ステップ107〜ステップ111の処理を繰り返す。制御部は、各照度での選択領域のエラー率に基づいて、投影部の最適な照度を決定する(ステップ114)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相シフト法等を使用して測定対象物を3次元測定する3次元測定装置等の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、配線基板等の測定対象物の品質を検査する方法として、測定対象物を撮像して得られた画像を解析して、測定対象物の品質を検査する方法が用いられている。2次元的な画像解析では、測定対象物の欠け、凹み等の高さ方向の欠陥検出が困難であるため、近年においては、3次元的な画像解析により測定対象物の3次元形状を測定して、測定対象物の品質を検査する方法が用いられるようになってきている。
【0003】
画像解析により測定対象物の3次元形状を測定する方法として、光切断法の一種である位相シフト法(時間縞解析法)が広く用いられている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
位相シフト法の原理について説明する。位相シフト法では、まず、投影装置から正弦波状に輝度が変化する縞が測定対象物に投影される。測定対象物に投影される縞の位相は、所定の位相シフト量でシフトされる。位相シフトは、縞の位相が1周期分移動するまで複数回(最低3回、通常4回以上)繰り返される。縞の位相がシフトされると、撮像装置により、位相がシフトされる度に、縞が投影された測定対象物が撮像される。例えば、位相シフト量がπ/2[rad]である場合、0、π/2、π、3π/2と縞の位相がシフトされ、各位相で測定対象物の画像が撮像される。そして合計4枚の画像が取得される。
【0005】
4回の位相シフトの場合、4枚の画像からそれぞれ画素の輝度値を抽出し、下記の式(1)に適用することにより、座標(x、y)での位相φ(x、y)を求めることができる。
φ(x、y)=Tan−1{I3π/2(x、y)−Iπ/2(x、y)}/{I(x、y)−Iπ(x、y)}・・・(1)
【0006】
なお、I(x、y)、Iπ/2(x、y)、Iπ(x、y)、I3π/2(x、y)は、それぞれ、位相が0、π/2、π、3π/2である場合における、座標(x、y)に位置する画素の輝度値である。
【0007】
位相φ(x、y)を求めることができれば、位相φ(x、y)に基づいて三角測量の原理により各座標での高さ情報を得て、測定対象物の3次元形状を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2010−175554号公報(段落[0003]〜[0005])
【特許文献2】特開2009−204373号公報(段落[0023]〜[0027])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
式(1)の右辺に示されているように、位相シフト法では、座標(x、y)における位相φ(x、y)を求める場合、その座標(x、y)に位置する画素の輝度値の差を求める必要がある。
【0010】
ここで、例えば、投影装置の照明が暗すぎる場合、4枚の画像からそれぞれ抽出される輝度値の差が小さくなるため、式(1)により位相φ(x、y)を正確に算出することができない。結果として、正確に測定対象物の3次元形状を測定することができないという問題がある。
【0011】
一方、投影装置の照明が明るすぎる場合、測定対象物に投影された縞の明るい部分に位置する画素の輝度値が撮像装置の認識範囲を超える等の理由により、正確に輝度値の差を算出することができない。従って、照明が暗い場合と同様に、正確に測定対象物の3次元形状を測定することができないという問題がある。
【0012】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、適切な測定照度で測定対象物を3次元測定することができる3次元測定装置等の技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る3次元測定装置は、投影部と、撮像部と、制御部とを具備する。
前記投影部は、照度を変化可能な照明を有し、前記照明からの光により測定対象物に縞を投影し、前記測定対象物に投影される前記縞の位相をシフトする。
前記撮像部は、前記縞が投影された前記測定対象物の画像を撮像する。
前記制御部は、前記測定対象物に投影される前記縞の位相を前記投影部により複数回シフトさせて前記撮像部に複数の前記画像を撮像させ、撮像された前記複数の画像から輝度値を抽出し、抽出された前記輝度値に基づいて、前記測定対象物の3次元測定におけるエラー率を算出し、前記照明の照度を変化させて前記エラー率を前記照度毎に算出し、算出された前記照度毎の前記エラー率に基づいて、前記測定対象物を3次元測定するための測定照度を決定する。
【0014】
この3次元測定装置では、照明の照度を変化させて3次元測定におけるエラー率を照度毎に算出し、算出された照度毎のエラー率に基づいて、測定対象物を3次元測定するための測定照度を決定することができる。従って、この3次元測定装置は、測定対象物に投影される縞の位相をシフトさせて測定対象物を3次元測定する際に、エラー率が小さい適切な測定照度で、測定対象物を3次元測定することができる。
【0015】
上記3次元測定装置において、前記測定対象物は、第1の領域と、前記第1の領域とは前記エラー率が異なる第2の領域とを有していてもよい。
この場合、前記制御部は、前記第1の領域及び第2の領域の前記エラー率である第1のエラー率及び第2のエラー率を、前記照明の照度を変化させて前記照度毎に算出し、算出された照度毎の前記第1のエラー率及び前記第2のエラー率に基づいて、前記測定照度を決定してもよい。
【0016】
これにより、エラー率が異なる複数の領域を有する測定対象物を3次元測定する際の適切な測定照度を決定することができる。
【0017】
上記3次元測定装置において、前記制御部は、前記照度毎に前記第1のエラー率及び前記第2のエラー率の和を算出し、前記照度毎の前記第1のエラー率及び前記第2のエラー率の和に基づいて、前記測定照度を決定してもよい。
【0018】
上記3次元測定装置において、前記制御部は、前記第1のエラー率及び前記第2のエラー率の和が、所定の閾値未満となる前記照度の範囲を判定し、前記照度の範囲の中間値を測定照度として決定してもよい。
【0019】
これにより、エラー率が急激に変化するリスクのある値が測定照度として採用されてしまうことを避けることができる。
【0020】
上記3次元測定装置において、前記制御部は、前記照度の変化に対する、前記第1のエラー率及び前記第2のエラー率の和の変化率に基づいて、前記測定照度を決定してもよい。
【0021】
これにより、エラー率が急激に変化するリスクのある値が測定照度として採用されてしまうことを避けることができる。
【0022】
上記3次元測定装置において、前記制御部は、前記第1のエラー率及び前記第2のエラー率の和が最小となる照度を前記測定照度として決定してもよい。
【0023】
上記3次元測定装置において、前記制御部は、前記第1のエラー率及び前記第2のエラー率のうち、少なくとも一方に重み係数を乗じて、第1のエラー率及び前記第2のエラー率のうち一方を優先させた上で、前記第1のエラー率及び第2のエラー率の和を算出してもよい。
【0024】
これにより、測定対象物の複数の領域のうち、エラー率が重要となる領域についてエラー率を優先させた上で、エラー率の和を算出し、このエラー率の和に基づいて、測定照度を決定することができる。
【0025】
上記3次元測定装置において、前記制御部は、前記縞の位相をシフトさせて撮像された前記複数の画像から抽出された前記輝度値について、前記複数の画像間で同じ画素に対応する輝度値の差を算出し、算出された前記輝度値の差が第1の閾値未満であるかを判定し、前記輝度の差が前記第1の閾値未満となる前記画素の割合を前記エラー率として算出してもよい。
【0026】
これにより、照明が暗過ぎて照明の照度が適切でない場合に、エラー率を適切に算出することができる。
【0027】
上記3次元測定装置において、前記制御部は、前記複数の画像から抽出された、前記複数の画像間で同じ画素に対応する前記輝度値のうち、少なくとも1つの前記輝度値が第2の閾値以上であるかを判定し、前記輝度値が前記第2の閾値以上となる割合を前記エラー率として算出してもよい。
【0028】
これにより、照明が明る過ぎて、照明の照度が適切でない場合に、エラー率を適切に算出することができる。
【0029】
上記3次元測定装置において、前記制御部は、前記縞の位相をシフトさせて撮像された前記複数の画像から抽出された、前記複数の画像間で同じ画素に対応する前記輝度値のうち、少なくとも1つの前記輝度値が所定の閾値以上であるかを判定し、前記輝度値が前記閾値以上となる割合を前記エラー率として算出してもよい。
【0030】
これにより、照明が明る過ぎて照明の照度が適切でない場合に、エラー率を適切に算出することができる。
【0031】
本発明の一形態に係る3次元測定方法は、光の照度を変化可能な照明からの光により測定対象物に縞を投影することを含む。
前記測定対象物に投影される前記縞の位相を複数回シフトさせて複数の画像が撮像される。
撮像された前記複数の画像から輝度値が抽出される。
抽出された前記輝度値に基づいて、前記測定対象物の3次元測定におけるエラー率が算出される。
前記照明の照度を変化させて前記エラー率が前記照度毎に算出される。
算出された前記照度毎の前記エラー率に基づいて、前記測定対象物を3次元測定するための測定照度が決定される。
【0032】
本発明の一形態に係るプログラムは、3次元測定装置に、光の照度を変化可能な照明からの光により測定対象物に縞を投影するステップを実行させる。
前記測定対象物に投影される前記縞の位相を複数回シフトさせて複数の画像を撮像するステップを実行させる。
撮像された前記複数の画像から輝度値を抽出するステップを実行させる。
抽出された前記輝度値に基づいて、前記測定対象物の3次元測定におけるエラー率を算出するステップを実行させる。
前記照明の照度を変化させて前記エラー率を前記照度毎に算出するステップを実行させる。
算出された前記照度毎の前記エラー率に基づいて、前記測定対象物を3次元測定するための測定照度を決定するステップを実行させる。
【発明の効果】
【0033】
以上説明したように、本発明の一形態によれば、適切な測定照度で測定対象物を3次元測定することができる3次元測定装置等の技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態に係る3次元測定装置を示す図である。
【図2】3次元測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】表示部の画面上に表示される基板の2次元画像の一例を示す図である。
【図4】基板に投影される縞の照射状態を示す図である。
【図5】エラー率を算出する際の処理を示すフローチャートである。
【図6】基板へ投影される縞の位相が0、π/2、π、3π/2である場合それぞれについての、縞と垂直方向の輝度値をグラフ化した図である。
【図7】基板へ投影される縞の位相が0、π/2、π、3π/2である場合それぞれについての、縞と垂直方向の輝度値をグラフ化した図である。
【図8】基板へ投影される縞の位相が0、π/2、π、3π/2である場合それぞれについての、縞と垂直方向の輝度値をグラフ化した図である。
【図9】投影部の測定照度を決定する際の処理を示すフローチャートである。
【図10】投影部の照度と、基板選択領域及び半田選択領域のエラー率との関係を示す図である。
【図11】投影部の照度と、半田選択領域のエラー率と、基板選択領域のエラー率と、基板選択領域及び半田選択領域のエラー率の和との関係を示す図である。
【図12】投影部の照度と、基板選択領域及び半田選択領域のエラー率との関係を示す図である。
【図13】投影部の照度と、半田選択領域のエラー率と、基板選択領域のエラー率と、基板選択領域及び半田選択領域のエラー率の和との関係を示す図である。
【図14】エラー率が急激に変化するリスクのある値を避けるようにして測定照度を決定する場合の処理を示すフローチャートである。
【図15】エラー率が急激に変化するリスクのある値を避けるようにして測定照度を決定する場合の他の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0036】
[3次元測定装置の全体構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る3次元測定装置100を示す図である。図1に示すように、3次元測定装置100は、測定対象物1を載置するステージ10と、投影部20と、撮像部15と、2次元画像取得用の照明部14と、制御部16と、記憶部17と、表示部18と、入力部19とを有する。
【0037】
ステージ10は、駆動によりステージ10を移動させるステージ移動機構11に連結されている。ステージ移動機構11は、制御部16に電気的に接続されており、制御部16からの駆動信号に応じて、ステージ10をXYZ方向に移動させる。
【0038】
投影部20は、照度を変化可能な照明としての光源21と、光源21からの光を集光する集光レンズ22と、集光レンズ22により集光された光を回折する回折格子23と、回折格子23により回折された光を測定対象物1に投影する投影レンズ24とを有する。
【0039】
光源21としては、例えば、ハロゲンランプ、キセノンランプ、水銀ランプ、LED(Light Emitting Diode)等が挙げられるが、光源21の種類は、特に限定されない。光源21は、照度調整機構25に電気的に接続されている。照度調整機構25は、制御部16の制御により、光源21の照度を調整する。
【0040】
回折格子23は、複数のスリットを有しており、光源21からの光を回折させて、正弦波状に輝度が変化する縞を測定対象物1に投影させる。回折格子23には、スリットが形成された方向と直交する方向に回折格子23を移動させる格子移動機構26が設けられている。この格子移動機構26は、制御部16の制御に応じて、回折格子23を移動させ、測定対象物1に投影される縞の位相をシフトさせる。なお、回折格子23、格子移動機構26の代わりに、格子状の縞模様を表示する液晶格子等が用いられても構わない。
【0041】
2次元画像取得用の照明部14は、表示部18の画面上に表示される測定対象物1の2次元画像を撮像部15により取得する際に、測定対象物1に対して光を照射する。この照明部14は、環状の形状を有する上部照明12及び下部照明13の2つの照明を含む。
【0042】
撮像部15は、CCD(Charge Coupled Device)センサ、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサ等の撮像素子と、測定対象物1からの光を撮像素子の撮像面に結像させる結像レンズ等の光学系とを含む。撮像部15は、測定対象物1を3次元測定するために、投影部20により正弦波状の縞が投影された測定対象物1を撮像する。また、撮像部15は、表示部18に表示される2次元画像を取得するために、2次元画像取得用の照明部14により測定対象物1が照らされている状態で、測定対象物1を撮像する。
【0043】
表示部18は、例えば、液晶ディスプレイ等により構成され、制御部16の制御に応じて、測定対象物1の2次元画像や3次元画像等を表示する。入力部19は、キーボード、マウス、タッチパネル等により構成され、ユーザからの指示を入力する。
【0044】
記憶部17は、3次元測定装置100の処理に必要な各種のプログラムが記憶されるROM(Read Only memory)等の不揮発性のメモリと、制御部16の作業領域として用いられるRAM(Random Access memory)等の揮発性のメモリとを有する。
【0045】
制御部16は、例えば、CPU(Central Processing Unit)により構成され、記憶部17に記憶された各種のプログラムに基づき、3次元測定装置100を統括的に制御する。例えば、制御部16は、照度調整機構25を制御して、投影部20の照度を調整したり、格子移動機構26を制御して、測定対象物1に投影される縞の位相をシフトさせたりする。また、撮像部15を制御して縞が投影された測定対象物1の画像を撮像したり、撮像された画像に基づいて位相シフト法により測定対象物1を3次元測定したりする。制御部16の制御については、後に詳述する。
【0046】
本実施形態では、測定対象物1の一例として、実装部品を半田付けするための半田が形成された基板1を例に挙げて説明する。ユーザは、3次元測定装置100を用いて、基板1を3次元測定し、基板1上に形成された半田の印刷状態を検査する。
【0047】
[動作説明]
次に、3次元測定装置100の動作について説明する。
図2は、3次元測定装置100の動作を示すフローチャートである。
【0048】
まず、3次元測定装置100の制御部16は、ステージ移動機構11を制御して、ステージ10を基板1の受け取り位置まで移動させる。そして、基板受け渡し装置(図示せず)から、基板1を受け取り、ステージ10を移動させて基板1を撮像位置まで移動させる(ステップ101)。
【0049】
次に、制御部16は、2次元画像用の照明部14を発光させて基板1を照らし、照明部14からの光により基板1が照らされている状態で、撮像部15により基板1を撮像する(ステップ102)。これにより、制御部16は、表示用の2次元画像を取得する。
【0050】
2次元画像を取得すると、制御部16は、取得された2次元画像を表示部18の画面上に表示させる(ステップ103)。
【0051】
図3は、このとき表示部18の画面上に表示される2次元画像の一例を示す図である。
図3に示すように、測定対象物1としての基板1は、基板領域2(第1の領域)と、半田が形成された半田形成領域3(第2の領域)とを有している。
【0052】
2次元画像が表示部18に表示されると、ユーザは、表示部18に表示された画像を見ながら、入力部19を介して、基板領域2及び半田形成領域3の中から、それぞれ基板選択領域4及び半田選択領域5を指定する。
【0053】
ここで、個々の半田形成領域3が微小な場合、半田形成領域3のみが選択されると、後に3次元測定におけるエラー率を算出する際の母数となる画素数が小さくなってしまう。そこで、半田形成領域3が微小な場合、ユーザは、半田形成領域3が密集している箇所において、複数の半田形成領域3を取り囲むようにして、半田選択領域5を指定してもよい。
【0054】
再び図2を参照して、制御部16は、表示部18の画面上に基板1の2次元画像を表示させると、基板選択領域4及び半田選択領域5が指定されたかを判定する(ステップ104)。選択領域が指定された場合(ステップ104のYES)、制御部16は、入力部19を介してユーザから照度の決定の指示が入力されたかを判定する(ステップ105)。
【0055】
入力部19を介して照度の決定の指示が入力された場合(ステップ105のYES)、制御部16は、照度調整機構25を制御して、光源21の照度を初期値(例えば、20)に設定する(ステップ106)。光源21の照度が初期値に設定されると、投影部20により、基板1に縞が投影される。次に、制御部16は、縞が投影された基板1の画像を撮像部15により撮像する(ステップ107)。
【0056】
次に、制御部16は、格子移動機構26を制御して回折格子23を移動させることで、基板1に投影される縞の位相をπ/2[rad]シフトさせる(ステップ108)。縞の位相をシフトさせると、次に、制御部16は、同じ照度で4枚の画像が撮像されたかを判定する(ステップ109)。
【0057】
同じ照度で4枚の画像が撮像されていない場合(ステップ109のNO)、制御部16は、ステップ107へ戻り、縞が投影された基板1を撮像する。これにより、同じ照度で、それぞれ縞の位相が異なる合計4枚の画像が撮像される。
【0058】
図4は、縞の照射状態を示す図である。図4には、左側から順番に縞の位相が0、π/2、π、3π/2である場合の縞の照射状態が示されている。
【0059】
図2を参照して、同じ照度で4枚目の基板1の画像が撮像された場合(ステップ109のYES)、制御部16は、4枚の画像に基づいて、位相シフト法により、画像の各画素での高さを算出する(ステップ110)。
【0060】
この場合、制御部16は、4枚の画像から各画素(各座標(x、y))の輝度値を抽出し、以下の式(2)を適用することにより、各画素での位相φ(x、y)を算出する。そして、制御部16は、算出された各画素での位相φ(x、y)に基づいて、3角測量の原理を利用して、各画素の高さを算出する。
【0061】
なお、下記の式(2)は、上記した式(1)と同じであり、I(x、y)、Iπ/2(x、y)、Iπ(x、y)、I3π/2(x、y)は、それぞれ、縞の位相が0、π/2、π、3π/2である場合における各画素(各座標)の輝度値である。
φ(x、y)=Tan−1{I3π/2(x、y)−Iπ/2(x、y)}/{I(x、y)−Iπ(x、y)}・・・(2)
【0062】
ここで、輝度値を高さに変換する際に、所定の条件下で、その画素では、位相φ(x、y)に基づく高さの変換が不可とされ、その画素は、エラーとされる。
【0063】
各画素の輝度値を各座標の高さに変換すると、次に、制御部16は、基板選択領域4及び半田選択領域5のそれぞれについて、高さの変換が不可とされた画素の割合(エラー率)を算出する(ステップ111)。
【0064】
なお、位相φ(x、y)に基づく高さへの変換が不可とされる条件や、高さへの変換が不可とされた画素の割合(エラー率)の算出方法についての詳細は、後述する。
【0065】
エラー率を算出すると、次に、制御部16は、現在の投影部20の照度が最大値(例えば、240)であるかを判定する(ステップ112)。照度が最大値でない場合(ステップ112のNO)、制御部16は、照度を変更する(例えば、照度+20)(ステップ113)。
【0066】
そして、制御部16は、再びステップ107へ戻り、その変更された照度で縞が投影された基板1を撮像して、再び4枚の画像を撮像する。4枚の画像が撮像されると、位相シフト法により各画素(各座標)での高さが算出され、その照度でのエラー率が算出される。この一連の処理は、投影部20の照度が最大となるまで繰り返される。
【0067】
照度が最大値である場合(ステップ112のYES)、制御部16は、各照度での選択領域4、5におけるエラー率に基づいて、3次元測定における測定照度を決定する(ステップ114)。この場合、例えば、選択領域4、5のエラー率が最小となる照度が測定照度として決定される。なお、測定照度の決定方法についての詳細は、後述する。
【0068】
測定照度が決定されると、制御部16は、測定照度を記憶部17に記憶する。照度が決定された場合、決定された照度を表示部18に表示してもよい。これにより、ユーザは、その基板1を3次元測定するために最適な照度を視認することができる。
【0069】
ユーザは、表示部18に表示された照度を、入力部19を介して3次元測定装置100に入力して投影部20の照度を設定する。測定照度が決定された場合、制御部16は、決定された測定照度を自動的に設定しても構わない。
【0070】
1枚目の基板1と同様の構成を有する2枚目以降の基板1については、決定された測定照度で投影部20から基板1に縞が投影される。そして、この照度で撮像された4枚の画像に基づいて、基板1の3次元情報が算出され、基板1の3次元画像が表示部18の画面上に表示される。ユーザは、表示部18の画面上に表示された3次元画像を見て、基板1上に形成された半田の印刷状態を検査する。
【0071】
図2の説明では、ユーザが表示部18の画面上に表示された基板1の画像を見ながら基板選択領域4及び半田選択領域5を指定する場合について説明した。しかし、この処理は、制御部16が自動的に実行してもよい。この場合、制御部16は、ステップ103で取得された2次元画像を画像解析して、基板領域2と半田形成領域3を判定し、基板領域2及び半田形成領域3から基板選択領域4及び半田選択領域5を指定すればよい。
【0072】
図2の説明では、投影部の照度の初期値を20に設定し、照度を+20ずつ変化させて、最大値240まで変化させる場合について説明した。一方、最初は繰り返しのステップ幅を大きく設定し(例えば、+50)、エラー率が小さくなる付近に照度の初期値及び最大値を再設定して、ステップ幅を小さくしていく方法が用いられてもよい(例えば、+50→+10→+1)。これにより、効率的かつ詳細に測定照度を決定することができる。
【0073】
「エラー率の算出方法」
次に、図2のステップ110、111で説明した、位相φ(x、y)に基づく高さへの変換が不可(エラー)とされる条件や、高さへの変換が不可とされる画素の割合(エラー率)の算出方法について、詳細に説明する。
【0074】
図5は、エラー率を算出する際の処理を示すフローチャートである。図6、図7及び図8は、基板1へ投影される縞の位相が0、π/2、π、3π/2である場合それぞれについての、縞と垂直方向の輝度値をグラフ化した図である。
【0075】
なお、図6は、投影部20の照度が適切である場合の一例が示されている。図7は、投影部20の照度が小さすぎる場合の一例が示されており、図8は、投影部20の照度が大きすぎる場合の一例が示されている。
【0076】
図5に示すように、制御部16は、同じ照度で撮像された、縞の位相が異なる4枚の画像について、各画素(各座標(x、y))の輝度値I(x、y)、Iπ/2(x、y)、Iπ(x、y)、I3π/2(x、y)を抽出する(ステップ201)。
【0077】
ここで、輝度値は、撮像された画像全体から抽出されてもよいし、基板選択領域4及び半田選択領域5の全体から抽出してもよい(図3参照)。
【0078】
次に、制御部16は、基板選択領域4及び半田選択領域5内の1つの画素に対応する輝度値I(x、y)、Iπ/2(x、y)、Iπ(x、y)、I3π/2(x、y)を入力する(ステップ202)。
【0079】
次に、制御部16は、選択領域4、5内の1つの画素について、縞の位相が0である場合の画像(1枚目の画像)の輝度値I(x、y)と、縞の位相がπである場合の画像(3枚目の画像)の輝度値Iπ(x、y)との差の絶対値を算出する(ステップ203)。同様にして、制御部16は、選択領域4、5内の1つの画素について、縞の位相がπ/2である場合の画像(2枚目の画像)の輝度値Iπ/2(x、y)と、縞の位相が3π/2である場合の画像(4枚目の画像)の輝度値I3π/2(x、y)との差の絶対値を算出する(ステップ204)。
【0080】
次に、制御部16は、輝度値I(x、y)及び輝度値Iπ(x、y)の差の絶対値と、輝度値Iπ/2(x、y)及び輝度値I3π/2(x、y)の差の絶対値との2つの絶対値のうち、大きいほうの値が第1の閾値Th1未満であるかを判定する(ステップ205)。
【0081】
ステップ205では、制御部16は、2つの絶対値の両方の値が、第1の閾値Th1未満であるかを判定している。第1の閾値Th1は、例えば、15とされる(図6〜図8参照)。
【0082】
2つの絶対値のうち、大きいほうの値が第1の閾値Th1未満である場合(ステップ205のYES)、制御部16は、その画素については、位相シフト法による高さへの変換を不可(エラー)とする(ステップ208)。そして、制御部16は、次のステップ209へ進む。
【0083】
一方、2つの絶対値のうち、大きいほうの値が第1の閾値Th1以上である場合(ステップ205のNO)、制御部16は、次のステップ206へ進む。ステップ206では、制御部16は、4つの輝度値I(x、y)、Iπ/2(x、y)、Iπ(x、y)、I3π/2(x、y)のうち、少なくとも1つの値が第2の閾値Th2以上であるかを判定する。第2の閾値Th2は、例えば、256とされる(図6、図7参照)。
【0084】
4つの輝度値のうち、少なくとも1つの値が第2の閾値Th2以上である場合(ステップ206のYES)、制御部16は、輝度値に基づく高さへの変換を不可(エラー)として(ステップ208)、次のステップ209へ進む。
【0085】
一方、4つの輝度値が全て第2の閾値Th2未満である場合(ステップ206のNO)、制御部16は、輝度値に基づく高さへの変換を可として(ステップ207)、次のステップ209へ進む。
【0086】
ステップ209では、制御部16は、基板選択領域4及び半田選択領域5内の全ての画素について、エラーか否かの判定がされたかを判定する。
【0087】
基板選択領域4及び半田選択領域5について、未判定の画素が残っている場合(ステップ209のNO)、制御部16は、ステップ202へ戻り、ステップ202〜209の処理を繰り返す。
【0088】
一方、基板選択領域4及び半田選択領域5に含まれる全ての画素について、判定が終了した場合(ステップ209のYES)、制御部16は、基板選択領域4及び半田選択領域5のそれぞれについて、エラー率を算出する(ステップ210)。この場合、制御部16は、基板選択領域4内でエラーとなった画素の数を、基板選択領域4全体の画素数で除算することで、基板選択領域4のエラー率(第1のエラー率)を算出することができる。同様に、制御部16は、半田選択領域5内でエラーとなった画素数を、半田選択領域5全体の画素数で除算することで、半田選択領域5のエラー率(第2のエラー率)を算出することができる。
【0089】
ステップ201〜ステップ210の処理は、投影部20の照度が変化される毎に実行され、これにより、照度毎に選択領域毎のエラー率が算出される。
【0090】
図6を参照して、図6では、投影部20の照度が適切な場合の一例が示されている。図6に示す実線は、I(x、y)及びIπ(x、y)の差の絶対値と、Iπ/2(x、y)及びI3π/2(x、y)の差の絶対値のうち、何れか大きいほうの値を示している。なお、この実線は、4つの輝度値のうち少なくとも1つが、第2の閾値Th2以上である場合には、輝度値が0とされる。
【0091】
図6の実線で示すように、2つの絶対値のうち大きいほうの値が、全域で、第1の閾値Th1(15)以上とされている(ステップ205参照)。また、図6の実線で示すように、4つの輝度値が、全域で第2の閾値Th2(256)未満とされている(ステップ206参照)。従って、図6に示す例では、投影部20の照度が適切であり、輝度値の差が大きいことから、全域で、高さへの変換が可とされる(ステップ207参照)。なお、図6に示す例では、エラー率は、0%とされる。
【0092】
図7を参照して、図7では、投影部20の照度が小さすぎる場合の一例が示されている。図7の実線で示すように、2つの絶対値のうち大きいほうの値が、全域で、第1の閾値Th1未満とされている(ステップ205参照)。従って、図7に示す例では、投影部20の照度が小さすぎて、輝度値の差が小さいことから、全域で、高への変換が不可(エラー)とされる(ステップ208参照)。なお、図7に示す例では、エラー率は、100%とされる。
【0093】
図8を参照して、図8では、投影部20の照度が大きすぎる場合の一例が示されている。図8の実線で示すように、Aで示す範囲では、2つの絶対値のうち、大きいほうの値が第1の閾値Th1以上とされている(ステップ205参照)。また、Aで示す範囲では、4つの輝度値のうち、少なくとも1つの値が第2の閾値Th2以上でない(ステップ206参照)。従って、Aに示す範囲に含まれる画素では、輝度値に基づく高さへの変換が可とされる(ステップ207参照)。
【0094】
一方、Bに示す範囲では、4つの輝度値のうち、少なくとも1つが第2の閾値Th2以上となる(ステップ206参照)。従って、Bに示す範囲に含まれる画素では、輝度値に基づく高さ方向への変換が不可とされる(ステップ208参照)。なお、4つの輝度値のうち、少なくとも1つの値が第2の閾値Th2以上となる場合には、撮像部15による認識の範囲を超えることから、実線に示す輝度値は0とされている。
【0095】
図5〜図8に示したように、本実施形態では、第1の閾値及び第2の閾値を用いることによって、照明が暗過ぎたり、明るすぎたりして照度が適切でない場合に、エラー率を適切に算出することができる。
【0096】
「投影部20の照度の決定方法」
次に、図2のステップ114で説明した、投影部20の測定照度の決定方法について詳細に説明する。
【0097】
図9は、投影部20の測定照度を決定する際の処理を示すフローチャートである。
図9に示すように、制御部16は、照度毎に、基板選択領域4のエラー率(第1のエラー率)と半田選択領域5のエラー率(第2のエラー率)との和を算出する。照度毎に、選択領域4、5のエラー率の和を算出すると、制御部16は、エラー率の和が最小となる照度を、投影部20の測定照度として決定する(ステップ302)。
【0098】
図10は、投影部20の照度と、基板選択領域4及び半田選択領域5のエラー率との関係を示す図である。図11は、投影部20の照度と、半田選択領域5のエラー率と、基板選択領域4のエラー率と、基板選択領域4及び半田選択領域5のエラー率の和との関係を示す図である。
【0099】
図10及び図11では、測定対象物1として、基板領域2が白色である基板1(白基板1)が用いられた場合の一例が示されている。
【0100】
図11に示すように、白基板1の場合、照度が80のときにエラー率の和が4.02%で最小となるから、この場合、測定照度として80が選択される(ステップ302参照)。
【0101】
図12は、投影部20の照度と、基板選択領域4及び半田選択領域5のエラー率との関係を示す図である。図13は、投影部20の照度と、半田選択領域5のエラー率と、基板選択領域4のエラー率と、基板選択領域4及び半田選択領域5のエラー率の和との関係を示す図である。
【0102】
図12及び図13では、測定対象物1として、基板領域2が青色である基板1(青基板1)が用いられた場合の一例が示されている。
【0103】
図13に示すように、青基板1の場合、照度が240のときにエラー率の和が4.88で最小となるから、測定照度として、240が選択される(ステップ302参照)。
【0104】
このように、本実施形態に係る3次元測定装置100では、白基板1及び青基板1で異なった測定照度が決定される。すなわち、本実施形態では、実際に測定対象物1のエラー率を算出して、エラー率に基づいて、測定照度を決定することができるので、基板1の種類(色)ごとにその種類に応じた適切な測定照度を決定することができる。
【0105】
図9のステップ301では、単純に2つの選択領域4、5のエラー率の和を算出する場合について説明した。一方、制御部16は、基板選択領域4のエラー率及び半田選択領域5のエラー率うち、少なくとも一方に重み係数を乗じることで、一方のエラー率を優先させた上で、第1のエラー率及び第2のエラー率の和を算出してもよい。
【0106】
ここで、3次元測定における測定対象は、基板領域2ではなく、半田形成領域3であり、半田選択領域5におけるエラー率が測定精度に与える影響が大きい。また、3次元測定において基板領域2からデータを取得するのは、半田形成領域3の高さの基準を決定するためである。従って、基板領域2では、平面の高さの平均値や、傾きが求められる程度のデータが得られれば十分である。
【0107】
従って、重み係数が用いられる場合、典型的には、基板選択領域4のエラー率よりも半田選択領域5のエラー率が優先される。例えば、半田選択領域5:基板選択領域4で、重み係数の比率は、6:4、7:3等とされる。
【0108】
ところで、図10及び図11に示すように、測定対象物1が白基板1である場合、選択領域4、5のエラー率の和が最小となるのは、照度が80のときである。一方、照度が100の場合、基板選択領域4のエラー率が急激に大きくなり、それに応じて、選択領域4、5のエラー率の和も急激に大きくなる。従って、測定照度を80として決定してしまうと、測定照度が少しでもずれた場合に、エラー率の和が急激に増加してしまう可能性がある。
【0109】
そこで、制御部16は、エラー率が急激に変化するリスクのある値を避けるようにして測定照度を決定してもよい。
【0110】
図14は、エラー率が急激に変化するリスクのある値を避けるようにして測定照度を決定する場合の処理を示すフローチャートである。
【0111】
図14に示すように、制御部16は、照度毎に、基板選択領域4のエラー率(第1のエラー率)と半田選択領域5のエラー率(第2のエラー率)との和を算出する(ステップ401)。この場合、上記したように、制御部16は、基板選択領域4のエラー率及び半田選択領域5のエラー率のうち、少なくとも一方に重み係数を乗じた上で、エラー率の和を算出してもよい。
【0112】
次に、制御部16は、選択領域4、5のエラー率の和が所定の閾値Th3(例えば、15%)未満となる照度の範囲を判定する(ステップ402)。
【0113】
次に、制御部16は、エラー率の和が閾値Th3未満となる照度の範囲から、中間値を算出し、この中間値を測定照度として決定する(ステップ403)。
【0114】
例えば、測定対象物1が白基板1であり、図10及び図11に示すようなエラー率が算出された場合について説明する。この場合、選択領域4、5のエラー率の和が閾値Th3(15%)未満である照度の範囲は、40〜80である(ステップ402)。そして、この40〜80の照度の中間値は、60であるので、測定照度は、60であるとして決定される(ステップ403)。
【0115】
図14に示す処理により、エラー率が急激に変化するリスクのある値を避けるようにして測定照度を決定することができる。
【0116】
一方、測定対象物1が青基板1であり、図12及び図13に示すようなエラー率が算出された場合について説明すると、選択領域4、5のエラー率の和が閾値Th3(15%)未満となる照度の範囲は、80〜240である(ステップ402)。そして、この照度の範囲80〜240の中間値は、160であるから、160が測定照度として決定される(ステップ403)。
【0117】
青基板1の場合、エラー率の和は、測定照度に対して単調減少である。しかしながら、照度をさらに上げたり、撮像部15の露光時間を長くしたりした場合には、基板選択領域4及び半田選択領域5のエラー率が共に上昇し、これによりエラー率の和が急激に増加する可能性がある。従って、白基板1の場合だけでなく、青基板1の場合にも、図14に示す処理を実行することが有効である。
【0118】
以上の説明では、エラー率が急激に変化するリスクのある値が測定照度として採用されてしまうことを避ける方法の一つとして、エラー率の和が閾値Th3未満となる照度の範囲の中間値を用いる場合について説明した。一方、エラー率が急激に変化するリスクのある値が測定照度として採用されることを避ける他の方法として、照度の変化に対する、エラー率の和の変化率を利用する形態が挙げられる。
【0119】
図15は、エラー率の変化率を利用する場合の処理を示すフローチャートである。
【0120】
図15に示すように、制御部16は、照度毎に、基板選択領域4及び半田選択領域5のエラー率の和を算出する(ステップ501)。次に、制御部16は、エラー率の和が最小となる照度を判定する(ステップ502)。
【0121】
次に、制御部16は、エラー率の和の最小値と、エラー率の和の最小値を与える照度よりも1段階低い照度(例えば、−20)のエラー率の和との差を算出する。すなわち、制御部16は、エラー率の和の最小値を与える照度と、その照度よりも1段階低い照度との間で、エラー率の和の差を算出する。
【0122】
そして、制御部16は、エラー率の和の最小値と、エラー率の和の最小値を与える照度よりも1段階低い照度のエラー率の和との差が、所定の閾値Th4未満であるかを判定する(ステップ503)。閾値Th4は、例えば、5%〜10%程度とされる。
【0123】
エラー率の和の最小値と、1段階低い照度でのエラー率の和との差が閾値Th4未満である場合(ステップ503のYES)、制御部16は、次のステップ504へ進む。ステップ504では、制御部16は、エラー率の和の最小値と、エラー率の和の最小値を与える照度よりも1段階高い照度(例えば、+20)のエラー率の和との差を算出する。すなわち、制御部16は、エラー率の和の最小値を与える照度と、その照度よりも1段階高い照度との間で、エラー率の和の差を算出する。そして、制御部16は、エラー率の和の最小値と、1段階高い照度のエラー率の和との差が所定の閾値Th4未満であるかを判定する。
【0124】
エラー率の和の最小値と、1段階高い照度でのエラー率の和との差が閾値Th4未満の場合(ステップ504のYES)、制御部16は、エラー率の和の最小値を与える照度を測定照度として決定する(ステップ505)。
【0125】
ステップ503において、エラー率の和の最小値と、エラー率の和の最小値を与える照度よりも1段階低い照度のエラー率の和との差が所定の閾値Th4以上の場合(ステップ503のNO)、制御部16は、ステップ506へ進む。ステップ506では、制御部16は、エラー率の和の最小値と、エラー率の和の最小値を与える照度よりも1段階高い照度のエラー率の和との差が閾値Th4未満であるかを判定する。
【0126】
エラー率の和の最小値と、1段階高い照度のエラー率の和との差が閾値Th4以上である場合(ステップ506のNO)、制御部16は、エラー率の和の最小値を与える照度を測定照度として決定する(ステップ505)。
【0127】
一方、エラー率の和の最小値と、エラー率の和の最小値を与える照度よりも1段階高い照度のエラー率の和との差が、閾値Th4未満である場合(ステップ506のYES)、制御部16は、ステップ507へ進む。ステップ507では、制御部16は、エラー率の和の最小値を与える照度よりも1段階高い照度のエラー率の和と、2段階高い照度(例えば、+40)のエラー率の和との差を算出する。そして、制御部16は、1段階高い照度のエラー率の和と、2段階高い照度のエラー率の和との差が、閾値Th4未満であるかを判定する。
【0128】
1段階高い照度のエラー率の和と、2段階高い照度のエラー率の和との差が、閾値Th4以上である場合(ステップ507のNO)、制御部16は、エラー率の和の最小値を与える照度を測定照度として決定する(ステップ505)。
【0129】
一方、1段階高い照度のエラー率の和と、2段階高い照度のエラー率の和との差が、閾値Th4未満である場合(ステップ507のYES)、エラー率の和の最小値を与える照度よりも1段階高い照度を測定照度として決定する(ステップ508)。
【0130】
ステップ504において、エラー率の和の最小値と、エラー率の和の最小値を与える照度よりも1段階高い照度のエラー率の和との差が、閾値Th4以上である場合(ステップ504のNO)、制御部16は、ステップ509へ進む。ステップ509では、制御部16は、エラー率の和の最小値を与える照度よりも1段階低い照度のエラー率の和と、2段階低い照度(例えば、−40)のエラー率の和との差を算出する。そして、1段階低い照度のエラー率の和と、2段階低い照度のエラー率の和との差が閾値Th4未満であるかを判定する。
【0131】
1段階低い照度のエラー率の和と、2段階低い照度のエラー率の和との差が、閾値Th4以上である場合(ステップ509のNO)、制御部16は、エラー率の和の最小値を与える照度を測定照度とする(ステップ505)。
【0132】
一方、1段階低い照度のエラー率の和と、2段階低い照度のエラー率の和との差が、閾値Th4未満である場合(ステップ509のYES)、制御部16は、エラー率の和の最小値を与える照度よりも1段階低い照度を測定照度とする(ステップ510)。
【0133】
図14に示す処理により、照度の変化に対する、エラー率の和の変化率に基づいて、測定照度が決定されるので、エラー率が急激に変化するリスクがある値が測定照度として採用されてしまうことを回避することができる。
【0134】
[作用等]
以上説明したように、本実施系形態に係る3次元測定装置100では、投影部20の照度を変化させて3次元測定におけるエラー率を照度毎に算出し、算出された照度毎のエラー率に基づいて、測定対象物1を3次元測定するための測定照度を決定することができる。これにより、本実施形態に係る3次元測定装置100では、測定対象物1を3次元測定する際に、エラー率が小さい(エラーでない有効な画素数が多い)適切な測定照度で、測定対象物1を3次元測定することができる。
【0135】
また、本実施形態では、実際に測定対象物1のエラー率を算出して、エラー率に基づいて、測定照度を決定することができるので、測定対象物1の種類ごとにその種類に応じた適切な測定照度を決定することができる。例えば、上記したように、白基板1及び青基板1でそれぞれ適切な測定照度を決定することができる。
【0136】
また、本実施形態では、基板選択領域4のエラー率(第1のエラー率)及び半田選択領域5のエラー率(第2のエラー率)の2つのエラー率に基づいて、測定照度を決定することができる。このように、本実施形態では、測定対象物1がエラー率の異なる複数の領域を有する場合に、それぞれのエラー率に応じた適切な測定照度を決定することができる。
【0137】
[各種変形例]
以上の説明では、測定対象物1として、実装部品を半田付けするための半田が形成された基板1(白基板1、青基板1)を例に挙げて説明した。しかし、測定対象物1は、これに限られない。測定対象物1の他の例としては、実装部品を接着するための接着剤が形成された基板が挙げられる。また、配線パターンが形成された配線基板、ランドが形成された基板、ガラスが印刷された基板、蛍光体が印刷された基板等が挙げられる。また、ナノ銀インク、ポリイミドインク、カーボンナノチューブインク等のインクが印刷された基板、シルク印刷が施された基板、アルミニウム電極が形成されたガラス基板(TFT(Thin Film Transistor)として用いられる)等が挙げられる。
【0138】
上記した測定対象物1の他の例は、基板領域2(第1の領域)の他に、基板領域2とはエラー率が異なる領域(第2の領域)(例えば、接着剤、配線パターン、ランド、ガラス、インク等が形成された領域)を含む。3次元測定装置100は、基板領域2から指定された基板選択領域4のエラー率と、基板領域2以外の領域から指定された選択領域のエラー率との2つのエラー率に基づいて、測定照度を決定することができる。
【0139】
以上の説明では、異なる2つのエラー率に基づいて測定照度を決定する場合について説明した。一方、3次元測定装置100は、エラー率が異なる3つ以上の領域から指定された3以上の選択領領域のエラー率に基づいて、測定照度を決定しても構わない。
【0140】
以上の説明では、縞の位相を4回シフトさせ、4枚の画像を取得して位相シフト法を適用する場合について説明した。しかし、位相のシフト回数及び画像の枚数は、3以上であれば、本発明を適用することができる。
【0141】
制御部16は、基板選択領域4のエラー率や、半田選択領域5のエラー率等を算出した場合に、表示部18に、図10〜図13に示すようなグラフや表を表示してもよい。また、制御部16は、測定照度を決定した場合に、その測定照度に対応する箇所をグラフや表中で強調表示する等の処理を実行してもよい。これにより、ユーザは、表示部18に表示されたグラフや表を見て、容易に測定照度を認識することができる。
【符号の説明】
【0142】
、Iπ/2、Iπ、I3π/2…輝度値
Th1、Th2、Th3、Th4…閾値
1…測定対象物(基板)
2…基板領域
3…半田形成領域
4…基板選択領域
5…半田選択領域
15…撮像部
16…制御部
20…投影部
21…光源
22…集光レンズ
23…回折格子
24…投影レンズ
25…照度調整機構
26…格子移動機構
100…3次元測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照度を変化可能な照明を有し、前記照明からの光により測定対象物に縞を投影し、前記測定対象物に投影される前記縞の位相をシフトする投影部と、
前記縞が投影された前記測定対象物の画像を撮像する撮像部と、
前記測定対象物に投影される前記縞の位相を前記投影部により複数回シフトさせて前記撮像部に複数の前記画像を撮像させ、撮像された前記複数の画像から輝度値を抽出し、抽出された前記輝度値に基づいて、前記測定対象物の3次元測定におけるエラー率を算出し、前記照明の照度を変化させて前記エラー率を前記照度毎に算出し、算出された前記照度毎の前記エラー率に基づいて、前記測定対象物を3次元測定するための測定照度を決定する制御部と
を具備する3次元測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の3次元測定装置であって、
前記測定対象物は、第1の領域と、前記第1の領域とは前記エラー率が異なる第2の領域とを有し、
前記制御部は、前記第1の領域及び第2の領域の前記エラー率である第1のエラー率及び第2のエラー率を、前記照明の照度を変化させて前記照度毎に算出し、算出された照度毎の前記第1のエラー率及び前記第2のエラー率に基づいて、前記測定照度を決定する
3次元測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の3次元測定装置であって、
前記制御部は、前記照度毎に前記第1のエラー率及び前記第2のエラー率の和を算出し、前記照度毎の前記第1のエラー率及び前記第2のエラー率の和に基づいて、前記測定照度を決定する
3次元測定装置。
【請求項4】
請求項3に記載の3次元測定装置であって、
前記制御部は、前記第1のエラー率及び前記第2のエラー率の和が、所定の閾値未満となる前記照度の範囲を判定し、前記照度の範囲の中間値を測定照度として決定する
3次元測定装置。
【請求項5】
請求項3に記載の3次元測定装置であって、
前記制御部は、前記照度の変化に対する、前記第1のエラー率及び前記第2のエラー率の和の変化率に基づいて、前記測定照度を決定する
3次元測定装置。
【請求項6】
請求項3に記載の3次元測定装置であって、
前記制御部は、前記第1のエラー率及び前記第2のエラー率の和が最小となる照度を前記測定照度として決定する
3次元測定装置。
【請求項7】
請求項3に記載の3次元測定装置であって、
前記制御部は、前記第1のエラー率及び前記第2のエラー率のうち、少なくとも一方に重み係数を乗じて、第1のエラー率及び前記第2のエラー率のうち一方を優先させた上で、前記第1のエラー率及び第2のエラー率の和を算出する
3次元測定装置。
【請求項8】
請求項1に記載の3次元測定装置であって、
前記制御部は、前記縞の位相をシフトさせて撮像された前記複数の画像から抽出された前記輝度値について、前記複数の画像間で同じ画素に対応する輝度値の差を算出し、算出された前記輝度値の差が第1の閾値未満であるかを判定し、前記輝度の差が前記第1の閾値未満となる前記画素の割合を前記エラー率として算出する
3次元測定装置。
【請求項9】
請求項8に記載の3次元測定装置であって、
前記制御部は、前記複数の画像から抽出された、前記複数の画像間で同じ画素に対応する前記輝度値のうち、少なくとも1つの前記輝度値が第2の閾値以上であるかを判定し、前記輝度値が前記第2の閾値以上となる割合を前記エラー率として算出する
3次元測定装置。
【請求項10】
請求項1に記載の3次元測定装置であって、
前記制御部は、前記縞の位相をシフトさせて撮像された前記複数の画像から抽出された、前記複数の画像間で同じ画素に対応する前記輝度値のうち、少なくとも1つの前記輝度値が所定の閾値以上であるかを判定し、前記輝度値が前記閾値以上となる割合を前記エラー率として算出する
3次元測定装置。
【請求項11】
光の照度を変化可能な照明からの光により測定対象物に縞を投影し、
前記測定対象物に投影される前記縞の位相を複数回シフトさせて複数の画像を撮像し、
撮像された前記複数の画像から輝度値を抽出し、
抽出された前記輝度値に基づいて、前記測定対象物の3次元測定におけるエラー率を算出し、
前記照明の照度を変化させて前記エラー率を前記照度毎に算出し、
算出された前記照度毎の前記エラー率に基づいて、前記測定対象物を3次元測定するための測定照度を決定する
3次元測定方法。
【請求項12】
3次元測定装置に、
光の照度を変化可能な照明からの光により測定対象物に縞を投影するステップと、
前記測定対象物に投影される前記縞の位相を複数回シフトさせて複数の画像を撮像するステップと、
撮像された前記複数の画像から輝度値を抽出するステップと、
抽出された前記輝度値に基づいて、前記測定対象物の3次元測定におけるエラー率を算出するステップと、
前記照明の照度を変化させて前記エラー率を前記照度毎に算出するステップと、
算出された前記照度毎の前記エラー率に基づいて、前記測定対象物を3次元測定するための測定照度を決定するステップと
を実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−159412(P2012−159412A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−19794(P2011−19794)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】