LiMnO2の安定構造、安定結晶の製造方法、LiMnO2の結晶安定化方法、電池及び電子機器
【課題】α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の安定構造、安定結晶の製造方法、LiMnO2の結晶安定化方法、電池及び電子機器を提供する。
【解決手段】α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶が、結晶よりも格子定数の小さい担持体3によって担持される。結晶は、担持体3の結晶表面を覆うように薄膜2として形成される。担持体3は、Al2O3又はLiCoO2からなる。薄膜2は、パルスレーザ堆積法を用いて室温下で成長させ、大気中でアニールする。
【解決手段】α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶が、結晶よりも格子定数の小さい担持体3によって担持される。結晶は、担持体3の結晶表面を覆うように薄膜2として形成される。担持体3は、Al2O3又はLiCoO2からなる。薄膜2は、パルスレーザ堆積法を用いて室温下で成長させ、大気中でアニールする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LiMnO2の安定構造、安定結晶の製造方法、LiMnO2の結晶安定化方法、電池及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
Liイオン電池は、充放電可能な2次電池の一種であり、現在ノートパソコンや携帯電話端末、デジタルカメラなどの電気製品などに広く用いられている。Liイオン電池は、電圧が高い、エネルギー密度が高い、メモリー効果が無い、サイクル寿命が長い、急速な充電が可能である、保存特性が良い、といった多くの利点を有している。Liイオン電池を用いた新たな製品の台頭、電気自動車への応用などにより、Liイオン電池の今後の需要は大幅に増えると予想されている。
【0003】
Liイオン電池は、正極、負極及び電解液によって構成されたシンプルな構造を有している。現在のところ、正極としては主にLiCoO2が用いられており、負極は炭素を含む材料が用いられている。電解液としては、例えば有機溶媒が用いられている。正極に用いられるLiCoO2は、Rhombohedral構造(またはα−NaFeO2構造)と呼ばれる結晶構造を有しており、CoO2レイヤーが積層された構造をなしている。LiCoO2を正極材料として用いた場合、CoO2レイヤー間にLiイオンが出入りすることでLiイオン電池が動作する。
【0004】
一方で、LiCoO2は、一般的にレアメタルとして知られているCoを用いたものである。Liイオン電池の今後の需要増に鑑みると、Coの希少性が課題になっている。そこで、同様の層状構造を有し、大量に地球上に存在して安価なMnを含むLiMnO2が次世代Liイオン電池用電極材料として期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】富山大学水素同位体科学研究センター研究報告21:45-52,2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、LiMnO2の結晶構造は、Jahn-Teller効果により不安定な構造となるため、これまでRhombohedral構造を有するLiMnO2の安定結晶を作製した例は無かった。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の安定構造、安定結晶の製造方法、LiMnO2の結晶安定化方法、電池及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るLiMnO2の安定構造は、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶が、当該結晶よりも格子定数の小さい担持体によって担持されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶を、格子定数の小さい担持体に担持させることでミスマッチを生じさせ、Mn−O間距離をロッキングさせることができる。このため、Jahn-Teller効果による結晶構造の変化を抑えることができ、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の安定な結晶構造を得ることができる。
【0010】
上記のLiMnO2の安定構造として、前記LiMnO2の結晶が前記担持体の結晶表面を覆うように形成されている構成としても良いし、前記LiMnO2の結晶が前記担持体からなる基板上に薄膜として形成されている構成としても良い。いずれの構成においても、例えばパルスレーザ堆積法などの製法により、確実に製造することができる。この場合、前記担持体は、Al2O3又はLiCoO2からなることが好ましい。
【0011】
本発明に係るLiMnO2安定結晶の製造方法は、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶よりも格子定数の小さい担持体上に、前記構造を有するLiMnO2の結晶を室温下で薄膜成長させ、前記薄膜成長によって成長させたLiMnO2の結晶を大気中でアニールすることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶を、格子定数の小さい担持体に室温下で薄膜成長させ、その後当該成長させたLiMnO2の結晶を大気中でアニールして担持させることとしたので、LiMnO2の結晶と担持体との間でミスマッチを生じさせ、Mn−O間距離をロッキングさせることができる。このため、Jahn-Teller効果による結晶構造の変化を抑えることができ、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2安定結晶を製造することができる。
【0013】
上記のLiMnO2安定結晶の製造方法は、前記薄膜成長は、パルスレーザ堆積法を用いて行うことを特徴とする。
パルスレーザ堆積法によって室温下で薄膜成長させ成長させたLiMnO2の結晶を大気中でアニールすることで、高精度な結晶を形成することができる。
【0014】
また、前記薄膜成長は、ターゲットとして、Li1.3MnO2を用いることが好ましい。
Liの蒸気圧が比較的高いことが知られている。本発明のようにすることで、LiMnO2を用いるよりも確実にLiMnO2安定結晶を製造することができる。
【0015】
また、前記薄膜成長は、還元雰囲気下で行うことが好ましい。
本発明者は、還元雰囲気下で薄膜成長させた場合により確実にLiMnO2安定結晶を製造することができることを見出した。よって、本発明の構成として採用したものである。
【0016】
また、前記還元雰囲気として、具体的には、酸素分圧を1×10−3Torr以下とする雰囲気であることが好ましい。本発明者は、当該範囲の酸素分圧下で、室温において薄膜成長を行うことで、より確実にLiMnO2安定結晶を製造することができる点を見出した。より好ましくは、酸素分圧を1×10−6Torr以下の圧力下で薄膜成長を行うようにすると、更に確実にLiMnO2安定結晶を製造することができる。
【0017】
また、前記アニールは、300℃以上の温度で行うことが好ましい。高い温度でアニールするほど、結晶性を向上させることができる。また、大気中アニール温度については700℃〜750℃程度とすることで、より確実に結晶性を向上させることができる。この場合、担持体としては、例えばLiCoO2とすることが好ましい。
【0018】
パルスレーザ堆積法の他、前記薄膜成長は、スパッタ法、分子ビームエピタキシー法、ゾルゲル法、CVD法及びスプレー法のうちいずれかによって行う場合であっても、効果的にLiMnO2安定結晶を製造することができる。これらの製造方法のうち、LiMnO2安定結晶の用途や製造環境に応じて適宜製造方法を選択することができる。
【0019】
本発明に係るLiMnO2の結晶安定化方法は、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶を、当該結晶よりも格子定数の小さい担持体を用いて担持させることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶を、格子定数の小さい担持体に担持させることでミスマッチを生じさせ、Mn−O間距離をロッキングさせることができる。このため、Jahn-Teller効果による結晶構造の変化を抑えることができ、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶構造を安定化させることができる。
【0021】
本発明に係る電池は、正極及び負極と、前記正極と前記負極との間に配置される電解液と、を有する電池であって、前記正極の構成材料として、請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のLiMnO2の安定構造を用いることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、安定したα−NaFeO2構造を有するLiMnO2が正極の構成材料として用いられているので、Mnを用いた需要増に応えることができる電池を得ることができる。
【0023】
本発明に係る電子機器は、電源部を有する電子機器であって、前記電源部として、上記の電池が用いられていることを特徴とする。
本発明によれば、Mnを用いたLiイオン電池を安価に得ることができるので、高性能の電子機器を安価で得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、安定化したα−NaFeO2構造のLiMnO2を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るLiMnO2の安定構造を示す概略図。
【図2】パルスレーザ装置の構成を示す模式図。
【図3】基板上に形成された薄膜のXRDのパターンを示す図。
【図4】基板上に形成された薄膜のXRDのパターンを示す図。
【図5】変温XRD測定結果を示す写真図。
【図6】LiMnO2ピークの強度とχ方向の半値幅の温度依存性を示すグラフ。
【図7】LiMnO2ピークの強度とχ方向半値幅のアニール時間依存性を示すグラフ。
【図8】Liイオン電池の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係るLiMnO2の安定構造を示す概略図である。当該安定構造1は、LiMnO2薄膜2と、基板3とを有している。
【0027】
LiMnO2薄膜2は、結晶構造としてRhombohedral構造(またはα−NaFeO2構造)を有している。このLiMnO2薄膜2は、担持体としての基板3上に形成されている。基板3の構成材料として、例えばLiMnO2のRhombohedral構造よりも格子定数の小さい結晶構造を有する材料を用いることができる。このような材料としては、例えばサファイア(Al2O3)やLiCoO2などが挙げられる。
【0028】
LiMnO2薄膜2が基板3上に形成されていることにより、LiMnO2薄膜2を形成する結晶と基板3を形成する結晶との間にミスマッチが発生し、格子定数の小さい方の結晶(基板を構成する材料の結晶)によってLiMnO2結晶がRhombohedral構造になるようにロッキングされる。このため、LiMnO2薄膜2の結晶構造はRhombohedral構造となって安定した状態となっている。
【0029】
次に、上記のように構成されたLiMnO2安定構造1の製造方法を説明する。本実施形態では、基板3にパルスレーザ堆積法を用いてLiMnO2薄膜2を形成する手法を例に挙げて説明する。
図2は、パルスレーザ堆積法に用いられるパルスレーザ装置Pの構成を概略的に示す図である。
【0030】
同図に示すように、パルスレーザ装置Pは、真空チャンバ11、レーザ光源12及びガス供給源13を有している。真空チャンバ11は、窓部14及び15、放射温度計16が設けられている。真空チャンバ11内には、ターゲットT及び基板3が配置されるようになっている。基板3としては、例えば上記のサファイア基板が用いられる。基板3は、不図示の基板配置筒によって保持されるようになっている。
【0031】
レーザ光源12としては、例えばKrFエキシマレーザを照射する光源が用いられる。ガス供給源13は、配管を介して真空チャンバ11に接続されている。ガス供給源13は、例えばO2供給源が用いられている。ガス供給源13は、真空チャンバ11内の酸素分圧を調整する。
【0032】
パルスレーザ装置Pは、真空チャンバ11内のターゲットT上にレーザ光源12からレーザを照射する装置である。レーザ光源12から照射されたレーザ光は、レンズ17及び入射窓14を介して真空チャンバ11内に到達し、ターゲットT上に照射される。ターゲットTでは、レーザ光の紫外光エネルギーによって瞬間的に昇華され、プルームと呼ばれる一種のプラズマ20を発生させる。このプラズマ20は、雰囲気ガス分子との衝突を繰り返した後、基板3上へ到達してLiMnO2薄膜2が形成される。このように、LiMnO2薄膜がパルスレーザ堆積法によって薄膜成長されて形成される。
【0033】
基板3上に室温下で薄膜2を形成した後、大気中アニールを行い、LiMnO2の結晶性を向上させる。アニールを行うアニール装置としては、例えばULVAC理工株式会社製の超高真空型卓上ランプ加熱装置MILA3000シリーズなどを用いることができる。他の装置であっても勿論構わない。大気中アニールは、300℃以上の温度で行うことが好ましい。更に好ましくは、700〜750℃の温度で行うことが好ましいといえる。
【0034】
パルスレーザ堆積法によってLiMnO2薄膜2を形成する場合、ターゲットTとしてはLiMnO2ではなく、Li1.3MnO2を用いることが好ましい。Liの蒸気圧が比較的高いことが知られている。Li1.3MnO2を用いることで、LiMnO2を用いるよりも確実にLiMnO2安定結晶を製造することができる。
【0035】
図3は、酸素分圧を1×10−3Torrとして製膜し、その後大気中アニールを行ったときの薄膜2のXRDパターンを示すグラフである。図4は、酸素分圧を1×10−6Torrとしたときのパターンを示すグラフである。
【0036】
図3に示すように、酸素分圧が1×10−3Torrのとき室温製膜したものは、700℃で大気アニールを行った場合にLiMnO2のピークが確認される。図4に示すように、酸素分圧が1×10−6Torrのとき室温製膜したものは、300℃〜700℃で大気アニールを行った場合のいずれの場合においてもLiMnO2のピークが確認される。したがって、酸素分圧を1×10−3Torr以下とする雰囲気、より好ましくは酸素分圧を1×10−6Torr以下とする雰囲気で製膜を行うことが好ましいといえる。
【0037】
次に、LiCoO2を担持体としてLiMnO2の二層膜を形成する場合の例を説明する。図5は、変温XRD測定結果を示す回折パターンである。図5(a)は室温時、図5(b)は200℃で大気アニールしたとき、図5(c)は300℃で大気アニールしたとき、図5(d)は400℃で大気アニールしたとき、図5(e)は500℃で大気アニールしたとき、図5(f)は600℃で大気アニールしたとき、図5(g)は700℃で大気アニールしたときの結果をそれぞれ示している。
【0038】
これらの図に示すように、大気アニール温度が300℃に達したとき(図5(c))にLiMnO2のピークが見え始めることがわかる。したがって、大気アニール温度としては300℃以上が好ましいといえる。また、例えば図3に示すように、酸素分圧が高い場合には、700℃の高温で大気アニールすることでLiMnO2が形成される場合もある。したがって、大気アニール温度としては700℃で行う場合にも好ましい結果が得られるといえる。
【0039】
図6は、LiMnO2ピークの強度(Intensity)とχ方向の半値幅(FWHM)の温度依存性をまとめて示すグラフである。グラフの縦軸(左)はIntensityを示し、グラフの縦軸(右)は半値幅を示す。グラフの横軸は大気アニール温度を示す。
【0040】
同図に示すように、ピークのIntensityが750℃で最大となり、半値幅は750℃で最小となることがわかる。この結果から、大気アニール温度としては750℃が最適であることがわかる。
【0041】
図7は、大気アニール温度が700℃のときのLiMnO2ピークの強度(Intensity)と半値幅のアニール時間依存性を示すグラフである。グラフの縦軸(左)はIntensityを示し、グラフの縦軸(右)は半値幅を示す。グラフの横軸は大気アニール温度を示す。
【0042】
同図に示すように、結晶化は700℃に達してから5分で始まるものの、アニール時間が長くなるにつれピーク強度は徐々に増えていき、半値幅も徐々に小さくなっていくことがわかる。ピーク強度及び半値幅は約45分経過時から一定になり始めているので、大気アニール時間は45分程度が好ましいといえる。
【0043】
上記パルスレーザ装置Pを用いたパルスレーザ堆積法の他、薄膜成長は、スパッタ法、分子ビームエピタキシー法、ゾルゲル法、CVD法及びスプレー法のうちいずれかによって行う場合であっても、室温製膜のち大気アニールすることによって効果的にLiMnO2安定結晶を製造することができる。これらの製造方法のうち、LiMnO2安定結晶の用途や製造環境に応じて適宜製造方法を選択することができる。
【0044】
次に、上記のLiMnO2安定構造を用いたLiイオン電池の構成を説明する。
図7は、Liイオン電池の構成を示す概略図である。
同図に示すように、Liイオン電池30は、正極31、負極32、電解液33、セパレータ34を有している。上記のLiMnO2安定構造は正極31の構成材料として用いられている。正極31は、MnO2のレイヤー間にLiイオンが挟まれた構成になっている。このLiイオンは、セパレータ34を通過して正極31と負極32との間を移動可能になっている。負極32は、炭素を含む構成材料が用いられている。電解液33としては、例えばLiPF4が用いられている。このLiイオン電池30は、現在ノートパソコンや携帯電話端末、デジタルカメラなど電源部を有する種々の電気製品に用いることができる。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶を有する薄膜2を、格子定数の小さい担持体としての基板3に担持させることで、結晶間にミスマッチを生じさせ、Mn−O間距離をロッキングさせることができる。このため、Jahn-Teller効果による結晶構造の変化を抑えることができ、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の安定な結晶構造を得ることができる。
【0046】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
上記実施形態においては、担持体として基板3上に薄膜2を形成する例を挙げて説明したが、これに限られることは無く、例えば粒状に形成された担持体にパルスレーザ堆積法を用いてLiMnO2の結晶を成長させるようにしても構わない。この場合であっても、安定なLiMnO2の結晶を得ることができる。
【符号の説明】
【0047】
1…LiMnO2安定構造 2…薄膜 3…基板
【技術分野】
【0001】
本発明は、LiMnO2の安定構造、安定結晶の製造方法、LiMnO2の結晶安定化方法、電池及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
Liイオン電池は、充放電可能な2次電池の一種であり、現在ノートパソコンや携帯電話端末、デジタルカメラなどの電気製品などに広く用いられている。Liイオン電池は、電圧が高い、エネルギー密度が高い、メモリー効果が無い、サイクル寿命が長い、急速な充電が可能である、保存特性が良い、といった多くの利点を有している。Liイオン電池を用いた新たな製品の台頭、電気自動車への応用などにより、Liイオン電池の今後の需要は大幅に増えると予想されている。
【0003】
Liイオン電池は、正極、負極及び電解液によって構成されたシンプルな構造を有している。現在のところ、正極としては主にLiCoO2が用いられており、負極は炭素を含む材料が用いられている。電解液としては、例えば有機溶媒が用いられている。正極に用いられるLiCoO2は、Rhombohedral構造(またはα−NaFeO2構造)と呼ばれる結晶構造を有しており、CoO2レイヤーが積層された構造をなしている。LiCoO2を正極材料として用いた場合、CoO2レイヤー間にLiイオンが出入りすることでLiイオン電池が動作する。
【0004】
一方で、LiCoO2は、一般的にレアメタルとして知られているCoを用いたものである。Liイオン電池の今後の需要増に鑑みると、Coの希少性が課題になっている。そこで、同様の層状構造を有し、大量に地球上に存在して安価なMnを含むLiMnO2が次世代Liイオン電池用電極材料として期待されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】富山大学水素同位体科学研究センター研究報告21:45-52,2001
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、LiMnO2の結晶構造は、Jahn-Teller効果により不安定な構造となるため、これまでRhombohedral構造を有するLiMnO2の安定結晶を作製した例は無かった。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の安定構造、安定結晶の製造方法、LiMnO2の結晶安定化方法、電池及び電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るLiMnO2の安定構造は、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶が、当該結晶よりも格子定数の小さい担持体によって担持されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶を、格子定数の小さい担持体に担持させることでミスマッチを生じさせ、Mn−O間距離をロッキングさせることができる。このため、Jahn-Teller効果による結晶構造の変化を抑えることができ、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の安定な結晶構造を得ることができる。
【0010】
上記のLiMnO2の安定構造として、前記LiMnO2の結晶が前記担持体の結晶表面を覆うように形成されている構成としても良いし、前記LiMnO2の結晶が前記担持体からなる基板上に薄膜として形成されている構成としても良い。いずれの構成においても、例えばパルスレーザ堆積法などの製法により、確実に製造することができる。この場合、前記担持体は、Al2O3又はLiCoO2からなることが好ましい。
【0011】
本発明に係るLiMnO2安定結晶の製造方法は、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶よりも格子定数の小さい担持体上に、前記構造を有するLiMnO2の結晶を室温下で薄膜成長させ、前記薄膜成長によって成長させたLiMnO2の結晶を大気中でアニールすることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶を、格子定数の小さい担持体に室温下で薄膜成長させ、その後当該成長させたLiMnO2の結晶を大気中でアニールして担持させることとしたので、LiMnO2の結晶と担持体との間でミスマッチを生じさせ、Mn−O間距離をロッキングさせることができる。このため、Jahn-Teller効果による結晶構造の変化を抑えることができ、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2安定結晶を製造することができる。
【0013】
上記のLiMnO2安定結晶の製造方法は、前記薄膜成長は、パルスレーザ堆積法を用いて行うことを特徴とする。
パルスレーザ堆積法によって室温下で薄膜成長させ成長させたLiMnO2の結晶を大気中でアニールすることで、高精度な結晶を形成することができる。
【0014】
また、前記薄膜成長は、ターゲットとして、Li1.3MnO2を用いることが好ましい。
Liの蒸気圧が比較的高いことが知られている。本発明のようにすることで、LiMnO2を用いるよりも確実にLiMnO2安定結晶を製造することができる。
【0015】
また、前記薄膜成長は、還元雰囲気下で行うことが好ましい。
本発明者は、還元雰囲気下で薄膜成長させた場合により確実にLiMnO2安定結晶を製造することができることを見出した。よって、本発明の構成として採用したものである。
【0016】
また、前記還元雰囲気として、具体的には、酸素分圧を1×10−3Torr以下とする雰囲気であることが好ましい。本発明者は、当該範囲の酸素分圧下で、室温において薄膜成長を行うことで、より確実にLiMnO2安定結晶を製造することができる点を見出した。より好ましくは、酸素分圧を1×10−6Torr以下の圧力下で薄膜成長を行うようにすると、更に確実にLiMnO2安定結晶を製造することができる。
【0017】
また、前記アニールは、300℃以上の温度で行うことが好ましい。高い温度でアニールするほど、結晶性を向上させることができる。また、大気中アニール温度については700℃〜750℃程度とすることで、より確実に結晶性を向上させることができる。この場合、担持体としては、例えばLiCoO2とすることが好ましい。
【0018】
パルスレーザ堆積法の他、前記薄膜成長は、スパッタ法、分子ビームエピタキシー法、ゾルゲル法、CVD法及びスプレー法のうちいずれかによって行う場合であっても、効果的にLiMnO2安定結晶を製造することができる。これらの製造方法のうち、LiMnO2安定結晶の用途や製造環境に応じて適宜製造方法を選択することができる。
【0019】
本発明に係るLiMnO2の結晶安定化方法は、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶を、当該結晶よりも格子定数の小さい担持体を用いて担持させることを特徴とする。
【0020】
本発明によれば、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶を、格子定数の小さい担持体に担持させることでミスマッチを生じさせ、Mn−O間距離をロッキングさせることができる。このため、Jahn-Teller効果による結晶構造の変化を抑えることができ、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶構造を安定化させることができる。
【0021】
本発明に係る電池は、正極及び負極と、前記正極と前記負極との間に配置される電解液と、を有する電池であって、前記正極の構成材料として、請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のLiMnO2の安定構造を用いることを特徴とする。
【0022】
本発明によれば、安定したα−NaFeO2構造を有するLiMnO2が正極の構成材料として用いられているので、Mnを用いた需要増に応えることができる電池を得ることができる。
【0023】
本発明に係る電子機器は、電源部を有する電子機器であって、前記電源部として、上記の電池が用いられていることを特徴とする。
本発明によれば、Mnを用いたLiイオン電池を安価に得ることができるので、高性能の電子機器を安価で得ることができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、安定化したα−NaFeO2構造のLiMnO2を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るLiMnO2の安定構造を示す概略図。
【図2】パルスレーザ装置の構成を示す模式図。
【図3】基板上に形成された薄膜のXRDのパターンを示す図。
【図4】基板上に形成された薄膜のXRDのパターンを示す図。
【図5】変温XRD測定結果を示す写真図。
【図6】LiMnO2ピークの強度とχ方向の半値幅の温度依存性を示すグラフ。
【図7】LiMnO2ピークの強度とχ方向半値幅のアニール時間依存性を示すグラフ。
【図8】Liイオン電池の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本実施形態に係るLiMnO2の安定構造を示す概略図である。当該安定構造1は、LiMnO2薄膜2と、基板3とを有している。
【0027】
LiMnO2薄膜2は、結晶構造としてRhombohedral構造(またはα−NaFeO2構造)を有している。このLiMnO2薄膜2は、担持体としての基板3上に形成されている。基板3の構成材料として、例えばLiMnO2のRhombohedral構造よりも格子定数の小さい結晶構造を有する材料を用いることができる。このような材料としては、例えばサファイア(Al2O3)やLiCoO2などが挙げられる。
【0028】
LiMnO2薄膜2が基板3上に形成されていることにより、LiMnO2薄膜2を形成する結晶と基板3を形成する結晶との間にミスマッチが発生し、格子定数の小さい方の結晶(基板を構成する材料の結晶)によってLiMnO2結晶がRhombohedral構造になるようにロッキングされる。このため、LiMnO2薄膜2の結晶構造はRhombohedral構造となって安定した状態となっている。
【0029】
次に、上記のように構成されたLiMnO2安定構造1の製造方法を説明する。本実施形態では、基板3にパルスレーザ堆積法を用いてLiMnO2薄膜2を形成する手法を例に挙げて説明する。
図2は、パルスレーザ堆積法に用いられるパルスレーザ装置Pの構成を概略的に示す図である。
【0030】
同図に示すように、パルスレーザ装置Pは、真空チャンバ11、レーザ光源12及びガス供給源13を有している。真空チャンバ11は、窓部14及び15、放射温度計16が設けられている。真空チャンバ11内には、ターゲットT及び基板3が配置されるようになっている。基板3としては、例えば上記のサファイア基板が用いられる。基板3は、不図示の基板配置筒によって保持されるようになっている。
【0031】
レーザ光源12としては、例えばKrFエキシマレーザを照射する光源が用いられる。ガス供給源13は、配管を介して真空チャンバ11に接続されている。ガス供給源13は、例えばO2供給源が用いられている。ガス供給源13は、真空チャンバ11内の酸素分圧を調整する。
【0032】
パルスレーザ装置Pは、真空チャンバ11内のターゲットT上にレーザ光源12からレーザを照射する装置である。レーザ光源12から照射されたレーザ光は、レンズ17及び入射窓14を介して真空チャンバ11内に到達し、ターゲットT上に照射される。ターゲットTでは、レーザ光の紫外光エネルギーによって瞬間的に昇華され、プルームと呼ばれる一種のプラズマ20を発生させる。このプラズマ20は、雰囲気ガス分子との衝突を繰り返した後、基板3上へ到達してLiMnO2薄膜2が形成される。このように、LiMnO2薄膜がパルスレーザ堆積法によって薄膜成長されて形成される。
【0033】
基板3上に室温下で薄膜2を形成した後、大気中アニールを行い、LiMnO2の結晶性を向上させる。アニールを行うアニール装置としては、例えばULVAC理工株式会社製の超高真空型卓上ランプ加熱装置MILA3000シリーズなどを用いることができる。他の装置であっても勿論構わない。大気中アニールは、300℃以上の温度で行うことが好ましい。更に好ましくは、700〜750℃の温度で行うことが好ましいといえる。
【0034】
パルスレーザ堆積法によってLiMnO2薄膜2を形成する場合、ターゲットTとしてはLiMnO2ではなく、Li1.3MnO2を用いることが好ましい。Liの蒸気圧が比較的高いことが知られている。Li1.3MnO2を用いることで、LiMnO2を用いるよりも確実にLiMnO2安定結晶を製造することができる。
【0035】
図3は、酸素分圧を1×10−3Torrとして製膜し、その後大気中アニールを行ったときの薄膜2のXRDパターンを示すグラフである。図4は、酸素分圧を1×10−6Torrとしたときのパターンを示すグラフである。
【0036】
図3に示すように、酸素分圧が1×10−3Torrのとき室温製膜したものは、700℃で大気アニールを行った場合にLiMnO2のピークが確認される。図4に示すように、酸素分圧が1×10−6Torrのとき室温製膜したものは、300℃〜700℃で大気アニールを行った場合のいずれの場合においてもLiMnO2のピークが確認される。したがって、酸素分圧を1×10−3Torr以下とする雰囲気、より好ましくは酸素分圧を1×10−6Torr以下とする雰囲気で製膜を行うことが好ましいといえる。
【0037】
次に、LiCoO2を担持体としてLiMnO2の二層膜を形成する場合の例を説明する。図5は、変温XRD測定結果を示す回折パターンである。図5(a)は室温時、図5(b)は200℃で大気アニールしたとき、図5(c)は300℃で大気アニールしたとき、図5(d)は400℃で大気アニールしたとき、図5(e)は500℃で大気アニールしたとき、図5(f)は600℃で大気アニールしたとき、図5(g)は700℃で大気アニールしたときの結果をそれぞれ示している。
【0038】
これらの図に示すように、大気アニール温度が300℃に達したとき(図5(c))にLiMnO2のピークが見え始めることがわかる。したがって、大気アニール温度としては300℃以上が好ましいといえる。また、例えば図3に示すように、酸素分圧が高い場合には、700℃の高温で大気アニールすることでLiMnO2が形成される場合もある。したがって、大気アニール温度としては700℃で行う場合にも好ましい結果が得られるといえる。
【0039】
図6は、LiMnO2ピークの強度(Intensity)とχ方向の半値幅(FWHM)の温度依存性をまとめて示すグラフである。グラフの縦軸(左)はIntensityを示し、グラフの縦軸(右)は半値幅を示す。グラフの横軸は大気アニール温度を示す。
【0040】
同図に示すように、ピークのIntensityが750℃で最大となり、半値幅は750℃で最小となることがわかる。この結果から、大気アニール温度としては750℃が最適であることがわかる。
【0041】
図7は、大気アニール温度が700℃のときのLiMnO2ピークの強度(Intensity)と半値幅のアニール時間依存性を示すグラフである。グラフの縦軸(左)はIntensityを示し、グラフの縦軸(右)は半値幅を示す。グラフの横軸は大気アニール温度を示す。
【0042】
同図に示すように、結晶化は700℃に達してから5分で始まるものの、アニール時間が長くなるにつれピーク強度は徐々に増えていき、半値幅も徐々に小さくなっていくことがわかる。ピーク強度及び半値幅は約45分経過時から一定になり始めているので、大気アニール時間は45分程度が好ましいといえる。
【0043】
上記パルスレーザ装置Pを用いたパルスレーザ堆積法の他、薄膜成長は、スパッタ法、分子ビームエピタキシー法、ゾルゲル法、CVD法及びスプレー法のうちいずれかによって行う場合であっても、室温製膜のち大気アニールすることによって効果的にLiMnO2安定結晶を製造することができる。これらの製造方法のうち、LiMnO2安定結晶の用途や製造環境に応じて適宜製造方法を選択することができる。
【0044】
次に、上記のLiMnO2安定構造を用いたLiイオン電池の構成を説明する。
図7は、Liイオン電池の構成を示す概略図である。
同図に示すように、Liイオン電池30は、正極31、負極32、電解液33、セパレータ34を有している。上記のLiMnO2安定構造は正極31の構成材料として用いられている。正極31は、MnO2のレイヤー間にLiイオンが挟まれた構成になっている。このLiイオンは、セパレータ34を通過して正極31と負極32との間を移動可能になっている。負極32は、炭素を含む構成材料が用いられている。電解液33としては、例えばLiPF4が用いられている。このLiイオン電池30は、現在ノートパソコンや携帯電話端末、デジタルカメラなど電源部を有する種々の電気製品に用いることができる。
【0045】
以上のように、本実施形態によれば、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶を有する薄膜2を、格子定数の小さい担持体としての基板3に担持させることで、結晶間にミスマッチを生じさせ、Mn−O間距離をロッキングさせることができる。このため、Jahn-Teller効果による結晶構造の変化を抑えることができ、α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の安定な結晶構造を得ることができる。
【0046】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
上記実施形態においては、担持体として基板3上に薄膜2を形成する例を挙げて説明したが、これに限られることは無く、例えば粒状に形成された担持体にパルスレーザ堆積法を用いてLiMnO2の結晶を成長させるようにしても構わない。この場合であっても、安定なLiMnO2の結晶を得ることができる。
【符号の説明】
【0047】
1…LiMnO2安定構造 2…薄膜 3…基板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶が、当該結晶よりも格子定数の小さい担持体によって担持されている
ことを特徴とするLiMnO2の安定構造。
【請求項2】
前記LiMnO2の結晶は、前記担持体の結晶表面を覆うように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のLiMnO2の安定構造。
【請求項3】
前記LiMnO2の結晶は、前記担持体からなる基板上に薄膜として形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のLiMnO2の安定構造。
【請求項4】
前記担持体は、Al2O3又はLiCoO2からなる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のLiMnO2の安定構造。
【請求項5】
α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶よりも格子定数の小さい担持体上に、前記構造を有するLiMnO2の結晶を室温下で薄膜成長させ、前記薄膜成長によって成長させたLiMnO2の結晶を大気中でアニールする
ことを特徴とするLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項6】
前記薄膜成長は、パルスレーザ堆積法を用いて行う
ことを特徴とする請求項5に記載のLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項7】
前記薄膜成長は、ターゲットとして、Li1.3MnO2を用いる
ことを特徴とする請求項6に記載のLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項8】
前記薄膜成長は、還元雰囲気下で行う
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項9】
前記還元雰囲気は、酸素分圧を1×10−3Torr以下とした雰囲気である
ことを特徴とする請求項8に記載のLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項10】
前記還元雰囲気は、酸素分圧を1×10−6Torr以下とした雰囲気である
ことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項11】
前記アニールは、300℃以上の温度で行う
ことを特徴とする請求項5から請求項10のうちいずれか一項に記載のLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項12】
前記アニールは、700℃〜750℃の温度で行う
ことを特徴とする請求項11に記載のLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項13】
前記薄膜成長は、スパッタ法、分子ビームエピタキシー法、ゾルゲル法、CVD法及びスプレー法のうちいずれかによって行う
ことを特徴とする請求項5に記載のLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項14】
α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶を、当該結晶よりも格子定数の小さい担持体を用いて担持させる
ことを特徴とするLiMnO2の結晶安定化方法。
【請求項15】
正極及び負極と、前記正極と前記負極との間に配置される電解液と、を有する電池であって、
前記正極の構成材料として、請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のLiMnO2の安定構造を用いる
ことを特徴とする電池。
【請求項16】
電源部を有する電子機器であって、
前記電源部として、請求項15に記載の電池が用いられている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項1】
α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶が、当該結晶よりも格子定数の小さい担持体によって担持されている
ことを特徴とするLiMnO2の安定構造。
【請求項2】
前記LiMnO2の結晶は、前記担持体の結晶表面を覆うように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のLiMnO2の安定構造。
【請求項3】
前記LiMnO2の結晶は、前記担持体からなる基板上に薄膜として形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載のLiMnO2の安定構造。
【請求項4】
前記担持体は、Al2O3又はLiCoO2からなる
ことを特徴とする請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のLiMnO2の安定構造。
【請求項5】
α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶よりも格子定数の小さい担持体上に、前記構造を有するLiMnO2の結晶を室温下で薄膜成長させ、前記薄膜成長によって成長させたLiMnO2の結晶を大気中でアニールする
ことを特徴とするLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項6】
前記薄膜成長は、パルスレーザ堆積法を用いて行う
ことを特徴とする請求項5に記載のLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項7】
前記薄膜成長は、ターゲットとして、Li1.3MnO2を用いる
ことを特徴とする請求項6に記載のLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項8】
前記薄膜成長は、還元雰囲気下で行う
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項9】
前記還元雰囲気は、酸素分圧を1×10−3Torr以下とした雰囲気である
ことを特徴とする請求項8に記載のLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項10】
前記還元雰囲気は、酸素分圧を1×10−6Torr以下とした雰囲気である
ことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載のLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項11】
前記アニールは、300℃以上の温度で行う
ことを特徴とする請求項5から請求項10のうちいずれか一項に記載のLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項12】
前記アニールは、700℃〜750℃の温度で行う
ことを特徴とする請求項11に記載のLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項13】
前記薄膜成長は、スパッタ法、分子ビームエピタキシー法、ゾルゲル法、CVD法及びスプレー法のうちいずれかによって行う
ことを特徴とする請求項5に記載のLiMnO2安定結晶の製造方法。
【請求項14】
α−NaFeO2構造を有するLiMnO2の結晶を、当該結晶よりも格子定数の小さい担持体を用いて担持させる
ことを特徴とするLiMnO2の結晶安定化方法。
【請求項15】
正極及び負極と、前記正極と前記負極との間に配置される電解液と、を有する電池であって、
前記正極の構成材料として、請求項1から請求項3のうちいずれか一項に記載のLiMnO2の安定構造を用いる
ことを特徴とする電池。
【請求項16】
電源部を有する電子機器であって、
前記電源部として、請求項15に記載の電池が用いられている
ことを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図5】
【公開番号】特開2010−184848(P2010−184848A)
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−31555(P2009−31555)
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月13日(2009.2.13)
【出願人】(591243103)財団法人神奈川科学技術アカデミー (271)
【Fターム(参考)】
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