MEMS素子
【課題】信頼性の向上を図るMEMS素子を提供する。
【解決手段】本実施形態によるMEMS素子は、基板10上に固定された平板形状の第1電極11と、前記第1電極の上方に対向して配置され、上下方向に可動である平板形状の第2電極15と、前記基板上において、前記第1電極および前記第2電極を収納するキャビティ20を有する膜26と、を具備する。前記第2電極は、ばね部16を介して前記基板上に接続されたアンカー部14に接続されるとともに、その上方において前記膜に接続される。
【解決手段】本実施形態によるMEMS素子は、基板10上に固定された平板形状の第1電極11と、前記第1電極の上方に対向して配置され、上下方向に可動である平板形状の第2電極15と、前記基板上において、前記第1電極および前記第2電極を収納するキャビティ20を有する膜26と、を具備する。前記第2電極は、ばね部16を介して前記基板上に接続されたアンカー部14に接続されるとともに、その上方において前記膜に接続される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、MEMS素子に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的可動部を有するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子が提案されている。このMEMS素子は、例えば圧力センサ、可変容量、マイクロポンプ等のデバイスに応用することができる。
【0003】
例えばMEMS素子を圧力センサとして用いる場合、MEMS素子は固定電極と可動である薄膜ドーム(可動電極)とを有する。そして、ドーム外の圧力に応じて可動である薄膜ドームと固定電極との間の容量(静電容量)値を検出することにより、そのときの圧力を測定する。
【0004】
このとき、薄膜ドームの動作は、中央部で大きく、端部で小さくなる。このため、薄膜ドームの端部は、中央部に比べて固定電極との間の容量変化に寄与しない。言い換えると、主に薄膜ドームの中央部のみが容量変化に寄与する。その結果、外部圧力に対する薄膜ドームと固定電極との間の容量変化が小さく、圧力センサとしての感度が小さくなる。
【0005】
MEMS素子において、圧力センサとしての感度を大きくし、信頼性を向上させることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,625,825号明細書
【特許文献2】特開2000−131173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
信頼性の向上を図るMEMS素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態によるMEMS素子は、基板上に固定された平板形状の第1電極と、前記第1電極の上方に対向して配置され、上下方向に可動である平板形状の第2電極と、前記基板上において、前記第1電極および前記第2電極を収納するキャビティを有する膜と、を具備する。前記第2電極は、ばね部を介して前記基板上に接続されたアンカー部に接続されるとともに、その上方において前記膜に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】第1の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図。
【図1B】第1の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図。
【図1C】第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例を示す断面図。
【図2】第1の実施形態に係るMEMS素子を圧力センサに適用した例を示す図。
【図3】第1の実施形態に係るMEMS素子を可変容量に適用した例を示す図。
【図4A】第1の実施形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図。
【図4B】図4Aに続く、第1の実施形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図。
【図4C】図4Bに続く、第1の実施形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図。
【図4D】図4Cに続く、第1の実施形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図。
【図4E】図4Dに続く、第1の実施形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図。
【図5A】第2の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図。
【図5B】第2の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図。
【図6A】第3の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図。
【図6B】第3の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図。
【図7A】第4の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図。
【図7B】第4の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図。
【図8A】第5の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図。
【図8B】第5の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図。
【図9A】第5の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例を示す平面図。
【図9B】第5の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例を示す断面図。
【図10A】第6の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図。
【図10B】第6の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態を以下に図面を参照して説明する。図面において、同一部分には同一の参照符号を付す。また、重複した説明は、必要に応じて行う。
【0011】
<第1の実施形態>
図1乃至図4を用いて第1の実施形態に係るMEMS素子について説明する。第1の実施形態は、可動電極である上部電極15がばね部16を介して基板10上に配置されたアンカー部14に支持され、かつ薄膜ドーム26に接続されたアンカー部25に支持される例である。これにより、上部電極15を薄膜ドーム26と連動させることができ、上部電極15と下部電極11との間の容量変化を大きくすることができる。以下に、第1の実施形態について詳説する。
【0012】
[構造]
以下に、図1A−図1Cを用いて、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造について説明する。
【0013】
図1Aは、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図である。図1Bは、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図であり、図1AのA−A線に沿った断面図である。
【0014】
図1Aおよび図1Bに示すように、第1の実施形態に係るMEMS素子は、基板10上に形成された下部電極11、上部電極15、および薄膜ドーム26を有する。
【0015】
基板10は、例えば、ガラスなどの絶縁性基板、またはシリコン基板上に設けられた層間絶縁膜である。基板10がシリコン基板上に設けられた層間絶縁膜である場合、シリコン基板の表面には、トランジスタなどの素子が設けられてもよい。それらの素子は、ロジック回路や記憶回路を構成する。層間絶縁膜は、それらの回路を覆うように、シリコン基板上に設けられる。すなわち、MEMS素子は、シリコン基板上の回路の上方に設けられる。
【0016】
なお、層間絶縁膜内にシールドメタルを設けて、下層の回路からのノイズが、MEMS素子に伝播するのを抑制してもよい。また、シリコン基板上の層間絶縁膜は、その寄生容量を小さくするため、誘電率の低い材料が用いられることが望ましい。例えば、層間絶縁膜には、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)が用いられる。また、寄生容量を小さくするために、層間絶縁膜の膜厚は大きいことが望ましい。
【0017】
下部電極11は、基板10上に形成され、固定される。下部電極11は、基板10の表面に平行した平板形状である。下部電極11は、例えばアルミニウム(Al)、アルミニウムを主成分とする合金、銅(Cu)、金(Au)、または白金(Pt)で構成される。下部電極11は、下部電極11と同じ材料で構成された配線24に接続され、それを介して種々の回路に接続される。
【0018】
上部電極15は、下部電極11の上方に形成される。上部電極15は、基板10の表面に平行した平板形状であり、下部電極11に対向して配置される。すなわち、上部電極15は、第1方向(図1Aにおける左右方向)および第1方向に直交する第2方向(図1Aにおける上下方向)に広がる平面(基板10の表面に平行した平面、以下、単に平面と称す)において下部電極11にオーバーラップしている。図面において、上部電極15の平面サイズ(例えば、面積)は、下部電極11の平面サイズよりも小さいが、これに限らず、同程度でもよく、また大きくてもよい。なお、図面において、下部電極11および上部電極15の平面における形状は、長方形であるが、これに限らず、円形や楕円形であってもよい。
【0019】
上部電極15は、例えばAl、Alを主成分とする合金、Cu、Au、またはPtで構成される。すなわち、上部電極15は、延性材料で構成される。延性材料とは、その材料からなる部材に応力を与えて破壊する場合に、その部材が大きな塑性変化(延び)を生じてから破壊される材料のことである。なお、MEMS素子が圧力センサとして適用される場合、上部電極15および下部電極11は、不純物が導入されたドープドシリコンで構成されてもよい。
【0020】
上部電極15は、基板10の表面に垂直方向(上下方向)に可動である。すなわち、上部電極15と下部電極11との間の距離は変化し、これに伴い、上部電極15と下部電極11との間の容量値が変化する。
【0021】
本実施形態に係る上部電極15の種々の接続関係の詳細については、後述する。
【0022】
薄膜ドーム26は、下部電極11および上部電極15を収納するキャビティ20を有する。言い換えると、下部電極11および上部電極15は、キャビティ20内に形成される。キャビティ20内は、乾燥雰囲気、または真空雰囲気に保たれている。このため、有害ガス、例えば水分によって、下部電極11および上部電極15が劣化することが防止され、MEMS素子の特性劣化が防止されている。
【0023】
薄膜ドーム26は、その内側から順に積層された第1層18、第2層21、および第3層22で構成される。
【0024】
第1層18は、複数の貫通孔(開口部)23を有する。複数の貫通孔23は、後述する製造工程において、犠牲層13,17をエッチングして除去し、キャビティ20を形成するためのものである。すなわち、犠牲層13,17は、貫通孔20を通してエッチングされる。
【0025】
第1層18は、例えば絶縁体の脆性材料で構成される。脆性材料とは、その材料からなる部材に応力を与えて破壊する場合に、その部材が塑性変化(形状の変化)をほとんど生じないで破壊される材料のことである。一般に、脆性材料を用いた部材を破壊するのに要するエネルギー(応力)は、延性材料を用いた部材を破壊するのに要するエネルギーより小さい。つまり、脆性材料を用いた部材は、延性材料を用いた部材より、破壊されやすい。言い換えると、脆性材料は、形状変化しづらい硬い(剛性の強い)材料である。ここで、硬い材料とは、ヤング率が大きい材料を意味する。
【0026】
このような絶縁体の脆性材料として、第1層18に、酸化シリコン(SiO、SiO2)または窒化シリコン(SiN)が用いられる。
【0027】
なお、第1層18は、導電体の脆性材料で構成されてもよい。導電体の脆性材料としては、WSiまたはAlSiが用いられる。
【0028】
第2層21は、第1層18上に形成され、複数の貫通孔23を塞いでいる。この第2層21は、キャビティ20を封止しながら、キャビティ20内の有害ガスを透過させて排出し、キャビティ20内の雰囲気を調整する機能を有する。
【0029】
第2層21は、ポリイミド等の有機材料の塗布膜で構成されることが望ましい。これにより、貫通孔23のサイズ(直径または開口面積)が大きくても、貫通孔23を容易かつ確実に封止することができる。したがって、貫通孔23のサイズや配置が制約されない。このため、サイズの大きい複数の貫通孔23を配置することにより、後述する犠牲層のエッチングを短時間で確実に行うことが可能である。
【0030】
なお、第2層21は、有機材料の塗布膜に限らず、SiO(SiO2)、SiN等の絶縁膜で構成されてもよい。
【0031】
第3層22は、第2層21上に形成される。この第3層22は、大気中の水分が第2層21を透過してキャビティ20内に浸入することを防止する防湿膜として機能する。また、第3層22は、脆性材料で構成されることが望ましく、例えばSiN等の絶縁体で構成される。
【0032】
薄膜ドーム26において、第2層21は、剛性の弱い材料である。また、第1層18および/または第3層22は、剛性の強い材料である。このため、薄膜ドーム26全体における上下方向の変位に対するばね定数(以下、単にばね定数と称す)は、第1層18および/または第3層22を構成する脆性材料によって決まる。薄膜ドーム26のばね定数を大きくすることにより、薄膜ドーム26のクリープ現象を抑制することができる。クリープ現象とは、経年変化が増大する現象、または、ある部材に応力が与えられたときに部材の歪み(形状の変化)が増大する現象のことである。
【0033】
また、第1の実施形態では、薄膜ドーム26のばね定数は、後述するばね部16のばね定数よりも大きくなるように構成される。さらに、薄膜ドーム26のばね定数は、上部電極15よりも大きくなるように構成される。
【0034】
なお、薄膜ドーム26として、第1層18、第2層21、および第3層22に限らない。薄膜ドーム26として、別工程において形成される例えばシリコンキャップ等を用いてもよい。
【0035】
以下に、第1の実施形態に係る上部電極15の種々の接続関係について、詳説する。
【0036】
上部電極15は、平面における端部において、ばね部16の一端が接続される。ばね部16は上部電極15と一体に形成され、例えば上部電極15と同じ導電材料で構成される。すなわち、ばね部16は、導電体の脆性材料で構成されるが、これに限らず、上部電極15と異なる材料でもよい。ばね部16と上部電極15とは1つに繋がった単層構造であり、ばね部16は平面においてメアンダ状の形状を有する。言い換えると、ばね部16は、平面において、細くかつ長く形成され、曲がりくねった形状を有する。このように、ばね部16の線幅、膜厚、および湾曲度合いのうち、少なくともいずれか1つを適宜設定することによって、ばね部16のばね定数を上部電極15のばね定数よりも小さくする。また、ばね部16のばね定数は、薄膜ドーム26のばね定数よりも小さい。
【0037】
ばね部16の他端には、アンカー部14が接続される。すなわち、上部電極15は、ばね部16を介してアンカー部14に支持される。アンカー部14は、ばね部16と一体に形成され、同じ導電材料で構成される。すなわち、アンカー部14は、導電体の脆性材料で構成されるが、これに限らず、上部電極15およびばね部16と異なる材料でもよい。アンカー部14は、基板10上に配置された配線12に接続される。配線12は、下部電極11と同レベルに形成され、同じ導電材料で構成される。上部電極15は、ばね部16およびアンカー部14を介して配線12に電気的に接続され、種々の回路に接続される。
【0038】
また、上部電極15は、平面における中央部において、その上方に位置するアンカー部25に支持される。言い換えると、上部電極15は、その上面においてアンカー部25に接する。アンカー部25は、薄膜ドーム26と一体に形成され、薄膜ドーム26と同じ材料で構成される。言い換えると、アンカー部25は、薄膜ドーム26から下方に突出した部分である。すなわち、上部電極15は、アンカー部25を介して薄膜ドーム26に接続される。また、アンカー部25は、薄膜ドーム26の平面における中央部に形成されることが望ましいが、これに限らない。
【0039】
また、薄膜ドーム26の平面における中央部の面積(アンカー部25の平面における面積)は、上部電極15の平面における面積よりも小さい。なお、アンカー部25の平面形状は、例えば長方形であるが、円形でも楕円形でもよい。
【0040】
このように、アンカー部25が上部電極15に接続されることにより、薄膜ドーム26の上下方向の動作が上部電極15の上下方向の動作に連動する。このとき、アンカー部25が平面における薄膜ドーム26の中央部に形成されているため、上部電極15は薄膜ドーム26の中央部の動作に連動する。この薄膜ドーム26の中央部は、端部よりも大きく動作する部分である。すなわち、上部電極15は、薄膜ドーム26において大きく動作する中央部に連動して上下方向に動作する。
【0041】
なお、上部電極15は、アンカー部25に直接接続されなくてもよい。上部電極15は、薄膜ドーム26の上下方向の動作に連動して動作するように、アンカー部25から図示せぬ部材を介して吊るされている状態でもよい。
【0042】
ここで、薄膜ドーム26のばね定数は、ばね部16のばね定数よりも十分大きい。これにより、ばね部16の有無に限らず、実質的に薄膜ドーム26の上下方向の動作を上部電極15に連動させることができる。すなわち、薄膜ドーム26の動作を制御することで、上部電極15と下部電極11の距離および容量を制御することができる。また、上部電極15のばね定数は、ばね部16のばね定数よりも十分大きい。これにより、薄膜ドーム26が上下方向に動作する場合、実質的に上部電極15と下部電極11との平行状態を保つことができる。
【0043】
図1Cは、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例を示す断面図である。
【0044】
図1Cに示すように、下部電極11の表面に絶縁膜30が形成されていてもよい。絶縁膜30は、例えばSiNまたはSiO(SiO2)で構成されるが、これに限らず、種々の絶縁材料で構成されてもよい。この絶縁膜30が下部電極11の表面(上部電極15に対向する面、上面)に形成されることで、下部電極11と上部電極15とが接することによるショートを防ぐことができる。
【0045】
なお、絶縁膜30は、下部電極11の上面に限らず、上部電極15の表面(下部電極11に対向する面、下面)に形成されてもよい。
【0046】
[動作]
以下に、図2および図3を用いて、第1の実施形態に係るMEMS素子の動作について説明する。
【0047】
図2は、第1の実施形態に係るMEMS素子を圧力センサに適用した例を示す図である。図3は、第1の実施形態に係るMEMS素子を可変容量に適用した例を示す図である。なお、図2および図3において、薄膜ドーム26の積層構造は省略して示している。
【0048】
第1の実施形態に係るMEMS素子において、下部電極11は配線24に接続されて種々の回路に接続され、上部電極15はばね部16およびアンカー部14を介して配線12に接続されて種々の回路に接続される。
【0049】
このため、第1の実施形態では、上部電極15と下部電極11との間の距離の変化に伴い、これらの間の容量(静電容量)値が変化することで、MEMS素子を種々のデバイスに応用することができる。
【0050】
図2に示すように、MEMS素子を圧力センサに適用する場合、MEMS素子は、上部電極15と下部電極11との間の容量値を検出する容量値検出回路40に接続される。
【0051】
より具体的には、容量値検出回路40は、一端が配線12に接続され、他端が配線24に接続される。すなわち、容量値検出回路40は、一端が配線12、アンカー部14およびばね部16を介して上部電極15に電気的に接続され、他端が配線24を介して電気的に下部電極11に接続される。容量値検出回路40は、MEMS素子と同一のチップ内に混載されるが、これに限らない。また、容量値検出回路40およびMEMS素子からなる圧力センサは、例えばチップ内に1つ配置される。
【0052】
薄膜ドーム26の外部から圧力が印加されると、薄膜ドーム26内外の圧力差により薄膜ドーム26が変形する。内部よりも外部の圧力が大きい場合、薄膜ドーム26の中央部が凹む(下方に動作する)。すると、アンカー部25を介して接続された上部電極15は、薄膜ドーム26に連動して下方に動作する。これにより、上部電極15と下部電極11との距離が小さくなる。すなわち、上部電極15と下部電極11との間の容量C1が大きくなる。この容量C1を検出することにより、そのときの外部の圧力を測定する。
【0053】
第1の実施形態によれば、上部電極15は、薄膜ドーム26の中央部にアンカー部25を介して接続される。このため、上部電極15は、薄膜ドーム26の中央部の局所的変形を反映して上下方向に動作する。すなわち、薄膜ドーム26の中央部より面積の大きい上部電極15が、下部電極11に対して平行状態を保ったまま上下方向に動作する。したがって、検出される容量値を増幅することができる。
【0054】
また、第1の実施形態によれば、薄膜ドーム26の外部から大きな圧力が印加された場合、上部電極15が下部電極11と接する。すなわち、上部電極15がストッパーとしての役割を果たし、大きな圧力が印加された場合の薄膜ドーム26の破壊を防ぐことができる。
【0055】
一方、図3に示すように、MEMS素子を可変容量に適用する場合、MEMS素子は、上部電極15および下部電極11に電圧を印加する駆動回路41に接続される。
【0056】
より具体的には、駆動回路41は、一端が配線12に接続され、他端が配線24に接続される。すなわち、駆動回路41は、一端が配線12、アンカー部14およびばね部16を介して上部電極15に電気的に接続され、他端が配線24を介して下部電極11に電気的に接続される。駆動回路41は、MEMS素子と同一のチップ内に混載されるが、これに限らない。
【0057】
駆動回路41は、上部電極15および下部電極11に電圧を印加する。これにより、これらの間に電位差が生じ、静電引力によって上部電極15が上下方向に動作する。このため、上部電極15と下部電極11との距離が変化し、これらの間の容量C2が変化する。すなわち、駆動回路41は、上部電極15および下部電極11に電圧を印加することにより、これらの間の容量C2を可変にする。
【0058】
第1の実施形態によれば、容量電極である上部電極15と下部電極11との間のオーバーラップ面積が大きくなる。このため、駆動電圧を低くすることができる。また、薄膜ドーム26は脆性材料を含み、薄膜ドーム26の剛性(ばね定数)は脆性材料によって決まる。このため、長時間応力が印可されても、薄膜ドーム26がクリープ変形を起こさない。
【0059】
なお、駆動回路41を接続することにより、MEMS素子をマイクロポンプとして適用することもできる。すなわち、駆動回路41は、上部電極15および下部電極11に電圧を印加することにより、静電引力によって上部電極15を上下方向に動作させる。これに連動して、上部電極15に接続された薄膜ドーム26が上下方向に動作する。駆動回路41により印加される電圧を変化させることで、薄膜ドーム26を上下方向に動作させてMEMS素子をマイクロポンプとして機能させる。
【0060】
[製造方法]
以下に、図4A−図4Eを用いて、第1の実施形態に係るMEMS素子の製造方法について説明する。
【0061】
図4A−図4Eは、第1の実施形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図である。
【0062】
まず、図4Aに示すように、基板10上に、導電層が形成され、パターニングされる。これにより、基板10上に、下部電極11が形成される。下部電極11は、例えばAl、Alを主成分とする合金、Cu、Au、またはPtで構成され、その膜厚は例えば数100nm〜数μmである。下部電極11の成膜方法としては、スパッタリング法が用いられる。また、パターニング方法としては従来のフォトリソグラフィ法とRIE(Reactive Ion Etching)法が用いられてもよいし、フォトリソグラフィ法とウェットエッチング法が用いられてもよい。
【0063】
このとき、同時に、基板10上に、配線12,24が形成される。このため、配線12,24は、下部電極11と同じ材料で構成される。しかし、これに限らず、配線12,24は、下部電極11とは別工程かつ異なる材料で形成されてもよい。
【0064】
その後、例えばCVD法により、下部電極11の表面を覆うように、絶縁膜30が形成されてもよい。このとき、配線12の表面も絶縁膜30により覆われるが、その後、配線12の表面の一部が露出するように絶縁膜30に開口部を形成する。
【0065】
次に、下部電極11および配線12の一部を覆うように、ポリイミド等の有機材料で構成される第1犠牲層13が塗布される。この第1犠牲層13は、膜厚が例えば数100nm〜数μmで形成される。
【0066】
その後、第1犠牲層13が所望の形状にパターニングされる。これにより、配線12の表面の一部が露出される。第1犠牲層13は、感光露光および現像によりパターニングされてもよい。または、第1犠牲層13上に通常のリソグラフィ法で形成された図示せぬレジストパターンとRIE法より、第1犠牲層13がパターニングされてもよい。または、第1犠牲層13上に形成された図示せぬSiO膜等を通常のリソグラフィ法によるレジストパターンとRIE法あるいはウェットエッチング法によってハードマスクとしてパターニングし、このハードマスクを用いて第1犠牲層13がパターニングされてもよい。
【0067】
次に、第1犠牲層13上に、導電層が形成され、パターニングされる。これにより、第1犠牲層13上に、上部電極15が形成される。上部電極15は、例えばAl、Alを主成分とする合金、Cu、Au、またはPtで構成され、その膜厚は例えば数100nm〜数μmである。上部電極15の成膜方法としては、スパッタリング法が用いられる。また、パターニング方法としては従来のフォトリソグラフィ法とRIE法が用いられてもよいし、フォトリソグラフィ法とウェットエッチング法が用いられてもよい。
【0068】
このとき、同時に、第1犠牲層13上に、ばね部16およびアンカー部14が形成される。これにより、上部電極15は、ばね部16およびアンカー部14を介して配線12に接続される。また、ばね部16およびアンカー部14は、上部電極15と同じ材料で構成される。しかし、これに限らず、ばね部16およびアンカー部14は、上部電極15とは別工程かつ異なる材料で形成されてもよい。
【0069】
次に、図4Bに示すように、上部電極15、ばね部16、アンカー部14、および第1犠牲層13を覆うように、ポリイミド等の有機材料で構成される第2犠牲層17が塗布される。この第2犠牲層17は、膜厚が例えば数100nm〜数μmで形成される。
【0070】
その後、第2犠牲層17が所望の形状にパターニングされる。第2犠牲層17は、感光露光および現像によりパターニングされてもよい。または、第2犠牲層17上に通常のリソグラフィ法で形成された図示せぬレジストパターンとRIE法により、第2犠牲層17がパターニングされてもよい。または、第2犠牲層17上に形成された図示せぬSiO膜等を通常のリソグラフィ法によるレジストパターンとRIE法あるいはウェットエッチング法によってハードマスクとしてパターニングし、このハードマスクを用いて第2犠牲層17がパターニングされてもよい。
【0071】
このとき、上部電極15の平面における中央部の上方に位置する第2犠牲層17の一部もパターニングされ、除去される。これにより、第2犠牲層17を貫通する開口部29が形成され、上部電極15の平面における中央部が露出する。
【0072】
次に、図4Cに示すように、第2犠牲層17を覆うように、第1層18が形成される。第1層18は、膜厚が例えば数100nm〜数μmで形成される。また、第1層18は、絶縁体の脆性材料で構成され、例えばSiNまたはSiO(SiO2)で構成される。第1層18の成膜方法としては、CVD法が用いられる。
【0073】
このとき、第1層18は、開口部29の内面上にも形成される。すなわち、第1層18は、開口部29によって露出した上部電極15の上面にも接して形成される。これにより、後に薄膜ドーム26が上部電極25に接続された構造となる。このとき、開口部29が第1層18によって埋め込まれなくてもよい。
【0074】
次に、第1層18上に、図示せぬレジストが塗布される。その後、通常のリソグラフィ法で形成された図示せぬレジストパターンとRIE法またはウェットエッチング法により、第1層18に第1犠牲層13および第2犠牲層17除去用の複数の貫通孔23が開口される。
【0075】
このとき、図示せぬレジストパターンと第1層18との選択比を調整することにより、貫通孔23の形状が、外側から内側に向かって次第に径が大きくなることが望ましい。言い換えると、貫通孔23の形状が外側から内側に向かって次第に径が小さくなるテーパー形状であることが望ましい。これは、後工程において第1犠牲層13および第2犠牲層17を除去した後に、貫通孔23の封止特性を向上させるためである。
【0076】
次に、図4Dに示すように、O2ガス等を用いたアッシングにより、図示せぬレジストパターン、第1犠牲層13および第2犠牲層17が除去される。これにより、可動電極である上部電極15の動作空間となるキャビティ20が形成される。
【0077】
次に、図4Eに示すように、第1層18上に、第2層21が形成される。これにより、複数の貫通孔23が塞がれ、キャビティ20が封止される。第2層21は、膜厚が例えば数100nm〜数μmで形成される。第2層21は、例えばポリイミド等の有機材料、またはSiN、SiO(SiO2)で構成される。第2層21がポリイミド等の有機材料で構成される場合、例えば塗布法により形成され、SiN、SiO(SiO2)で構成される場合、CVD法により形成される。このとき、開口部29が第2層21によって埋め込まれてもよいし、埋め込まれなくてもよい。
【0078】
次に、図1Bに示すように、第2層21上に、防湿膜としての第3層22が形成される。第3層22は、膜厚が例えば数100nm〜数μmで形成される。第3層22は、例えばSiNで構成されている。第3層22の成膜方法としては、CVD法が用いられる。
【0079】
その後、第3層22が所望の形状にパターニングされる。第3層22は、通常のリソグラフィ法で形成された図示せぬレジストパターンとRIE法またはウェットエッチングにより、パターニングされる。このようにして、第1の実施形態に係るMEMS素子が形成される。
【0080】
[効果]
上記第1の実施形態によれば、MEMS素子において、可動電極である上部電極15がばね部16およびアンカー部14を介して基板10に接続され、かつアンカー部25を介して上方の薄膜ドーム26の平面における中央部に接続される。また、薄膜ドーム26は、上部電極15よりも剛性の強い脆性材料で構成される。これにより、以下の効果を得ることができる。
【0081】
MEMS素子を圧力センサとして適用する場合、薄膜ドーム26の中央部が端部よりも大きく上下方向に動作する。第1の実施形態では、上部電極15がアンカー部25を介して薄膜ドーム26の中央部に接続される。これにより、上部電極15は、薄膜ドーム26の中央部の動作に連動して上下方向に動作する。すなわち、薄膜ドーム26の中央部の動作を反映して、それよりも面積が大きい上部電極15が上下方向に平行に動作する。そして、上部電極15と下部電極11との間の容量値を検出する。したがって、薄膜ドーム26自体を可動電極として固定電極との間の容量値を測定する場合と比較して、容量値の変化量を増幅することができる。その結果、圧力センサとしての感度を上げることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0082】
また、薄膜ドーム26の外部から大きな圧力が印加された場合、上部電極15が下部電極11と接する。これらが接した状態からさらに大きな圧力が印加されても、薄膜ドーム26がそれ以上変形することはない。すなわち、上部電極15がストッパーとしての役割を果たし、大きな圧力が印加された場合の薄膜ドーム26の破壊を防ぐことができる。
【0083】
一方、MEMS素子を可変容量またはマイクロポンプとして適用する場合、上部電極15および下部電極11に電圧を印加し、その時に発生する静電引力により、上部電極15を上下方向に動作させる。第1の実施形態では、薄膜ドーム自体を可動電極として用いる場合と比較して、可動電極である上部電極15の面積が大きい。このため、上部電極15と下部電極11との間のオーバーラップ面積を大きくすることができる。これにより、駆動電圧を低くすることができ、消費電力の低減を図ることができる。
【0084】
また、薄膜ドーム26は、脆性材料を含む。このため、薄膜ドーム26のばね定数は、薄膜ドーム26に含まれるばね定数によって決まる。このため、動作時に長時間応力が印加されても薄膜ドーム26のクリープ変形を抑制することができる。
【0085】
ところで、薄膜ドーム26の内部の体積をV、圧力をPとすると、ボイルの法則により、
PV=一定 ・・・ (1)
という関係が成り立つ。薄膜ドーム26の外部の圧力がΔP増加すると、(1)の関係により、
PV=(P+ΔP)(V−ΔV) ・・・ (2)
という関係が成り立つ。すなわち、体積がΔVだけ減少することで、薄膜ドーム26の内部および外部の圧力が釣り合う。薄膜ドーム26の平面面積が同じと仮定すると、ΔPが同じであれば、薄膜ドーム26の内部の体積Vが大きいほうが体積変化ΔVが大きくなる。このため、電極間の距離の変化量が大きくなり、電極間の容量の変化量も大きくなる。すなわち、薄膜ドーム26内の体積Vが大きいほうが、圧力センサの感度を向上できる。
【0086】
しかし、薄膜ドーム自体を可動電極として用いる場合、薄膜ドーム内の体積を大きくすると、薄膜ドームと固定電極との間の距離が大きくなる。これにより、これらの間の容量値が減り、圧力センサとしての感度が低下する。このため、単純に薄膜ドームの体積を増やすことはできない。
【0087】
これに対し、第1の実施形態では、可動電極として薄膜ドーム26に接続された上部電極15を設けている。このため、薄膜ドーム26の体積を大きくしても、上部電極15と下部電極11との距離を大きくしなければ上記問題は解決できる。より具体的には、上部電極15と薄膜ドーム26の間の距離を大きくする。すなわち、アンカー部25の上下方向の距離(長さ)を大きくする。これにより、上部電極15と下部電極11との容量値を変えることなく、薄膜ドーム26の内部の体積を大きくすることができ、圧力センサの感度を向上できる。このとき、上部電極15と薄膜ドーム26の間の距離(アンカー部25の上下方向の長さ)を上部電極15と下部電極11との間の距離よりも大きくすることで、上部電極15と下部電極11との間で十分な容量値を得ることができる。ここで、上部電極15と下部電極11との間の距離とは、動作前において上部電極15が上下方向に動かず、ばね部16が基板10の表面に対して平行状態の場合を示す。言い換えると、外部からの圧力によって薄膜ドーム26に凹凸が生じず、上部電極15、ばね部16、およびアンカー部14の一部が同レベルに位置している場合を示す。
【0088】
<第2の実施形態>
図5を用いて第2の実施形態に係るMEMS素子について説明する。第1の実施形態は、上部電極15がばね部16を介してアンカー部14に支持され、かつ薄膜ドーム26に接続されるアンカー部25に支持された。これに対し、第2の実施形態は、上部電極15がばね部16およびアンカー部14には支持されず、薄膜ドーム26に接続されるアンカー部25のみに支持される例である。以下に、第2の実施形態について詳説する。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の点については説明を省略し、主に異なる点について説明する。
【0089】
[構造]
以下に、図5A−図5Bを用いて、第2の実施形態に係るMEMS素子の構造について説明する。
【0090】
図5Aは、第2の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図である。図5Bは、第2の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図であり、図5AのB−B線に沿った断面図である。
【0091】
図5Aおよび図5Bに示すように、第2の実施形態に係るMEMS素子において、上部電極15は、平面における中央部において、その上方に位置するアンカー部25のみに支持される。すなわち、第1の実施形態におけるばね部16およびアンカー部14は存在しない。
【0092】
また、薄膜ドーム26における第1層18は、例えば導電体の脆性材料で構成される。導電体の脆性材料としては、WSiまたはAlSiが用いられる。
【0093】
なお、これに限らず、第1層18は、導電体の延性材料で構成されてもよい。導電体の延性材料としては、AlまたはAuが用いられる。このとき、薄膜ドーム26の全体の剛性を強くする必要があるため、第3層22は脆性材料で構成され、例えばSiNで構成される。
【0094】
また、第1層18は、基板10上において配線50と接続され、それを介して種々の回路に接続される。すなわち、上部電極15は、導電体であるアンカー部25と接することで、アンカー部25(第1層18)を介して配線50に電気的に接続され、種々の回路に接続される。
【0095】
配線50は、下部電極11と同時に形成されてもよいし、第1層18と同時に形成されてもよい。このため、配線50は、下部電極11と同じ材料または第1層18と同じ材料で構成される。なお、これに限らず、下部電極11および第1層18とは別工程かつ異なる材料で形成されてもよい。
【0096】
[動作]
以下に、第2の実施形態に係るMEMS素子の動作について説明する。
【0097】
第1の実施形態に係るMEMS素子において、下部電極11は配線24に接続されて種々の回路に接続され、上部電極15はアンカー部25(第1層18)を介して配線50に接続されて種々の回路に接続される。
【0098】
このため、第1の実施形態では、上部電極15と下部電極11との間の距離の変化に伴い、これらの間の容量(静電容量)値が変化することで、MEMS素子を種々のデバイスに応用することができる。
【0099】
MEMS素子を圧力センサに適用する場合、MEMS素子は、上部電極15と下部電極11との間の容量値を検出する容量値検出回路40に接続される。
【0100】
より具体的には、容量値検出回路40は、一端が配線50に接続され、他端が配線24に接続される。すなわち、容量値検出回路40は、一端が配線50および第1層18を介して上部電極15に電気的に接続され、他端が配線24を介して下部電極11に電気的に接続される。
【0101】
一方、MEMS素子を可変容量またはマイクロポンプに適用する場合、MEMS素子は、上部電極15および下部電極11に電圧を印加する駆動回路41に接続される。
【0102】
より具体的には、駆動回路41は、一端が配線50に接続され、他端が配線24に接続される。すなわち、駆動回路41は、一端が配線50および第1層18を介して上部電極15に電気的に接続され、他端が配線24を介して下部電極11に電気的に接続される。
【0103】
[効果]
上記第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0104】
さらに、第2の実施形態では、上部電極15がばね部16およびアンカー部14には支持されず、薄膜ドーム26に接続されるアンカー部25のみに支持される。すなわち、ばね部16およびアンカー部14を形成する必要がない。
【0105】
<第3の実施形態>
図6を用いて第3の実施形態に係るMEMS素子について説明する。第1の実施形態は、上部電極15が1つのアンカー部25を介して薄膜ドーム26に接続された。これに対し、第3の実施形態は、上部電極15が複数のアンカー部60を介して薄膜ドーム26に接続される例である。以下に、第3の実施形態について詳説する。なお、第3の実施形態において、第1の実施形態と同様の点については説明を省略し、主に異なる点について説明する。
【0106】
[構造]
以下に、図6A−図6Bを用いて、第3の実施形態に係るMEMS素子の構造について説明する。
【0107】
図6Aは、第3の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図である。図6Bは、第3の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図であり、図6AのC−C線に沿った断面図である。
【0108】
図6Aおよび図6Bに示すように、第3の実施形態に係るMEMS素子において、上部電極15は、その上方に位置する複数のアンカー部60に支持される。言い換えると、上部電極15は、その上面において複数のアンカー部60に接する。アンカー部60は、薄膜ドーム26と一体に形成され、薄膜ドーム26と同じ材料で構成される。言い換えると、アンカー部60は、薄膜ドーム26から下方に突出した部分である。すなわち、上部電極15は、複数のアンカー部60を介して薄膜ドーム26に接続される。
【0109】
また、複数のアンカー部60は、上部電極15の平面における任意の位置に配置されるが、上部電極15の平面における中央部に対して対称位置に配置されることが望ましい。
【0110】
なお、図面において、上部電極15は、2つのアンカー部60に支持されているが、これに限らず、3つ以上のアンカー部60に支持されてもよい。
【0111】
[効果]
上記第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0112】
さらに、第3の実施形態では、上部電極15が複数のアンカー部60を介して薄膜ドーム26に接続される。これにより、上部電極15と薄膜ドーム26との接続強度を強くすることができる。これらの接続強度の強化は、特にMEMS素子を駆動回路41により駆動させる必要がある可変容量およびマイクロポンプとして適用する場合において有効である。
【0113】
<第4の実施形態>
図7を用いて第4の実施形態に係るMEMS素子について説明する。第4の実施形態は、MEMS素子が第1下部電極71と第2下部電極72とを有し、浮遊状態である上部電極15を介してこれらの間の容量値を検出する例である。なお、第4の実施形態において、第1の実施形態と同様の点については説明を省略し、主に異なる点について説明する。以下に、第4の実施形態について詳説する。
【0114】
[構造]
以下に、図7A−図7Bを用いて、第4の実施形態に係るMEMS素子の構造について説明する。
【0115】
図7Aは、第4の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図である。図7Bは、第4の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図であり、図7AのD−D線に沿った断面図である。
【0116】
図7Aおよび図7Bに示すように、第4の実施形態に係るMEMS素子は、第1下部電極71および第2下部電極72を有する。また、上部電極15は、平面における中央部において、その上方に位置するアンカー部25のみに支持される。すなわち、第1の実施形態におけるばね部16およびアンカー部14は存在しない。
【0117】
第1下部電極71および第2下部電極72は、基板10上に形成され、固定される。第1下部電極71および第2下部電極72は、基板10の表面に平行した平板形状である。第1下部電極71および第2下部電極72は、例えばAl、Alを主成分とする合金、Cu、Au、またはPtで構成される。第1下部電極71は同じ材料で構成された配線73に接続され、それを介して種々の回路に接続される。また、第2下部電極72は同じ材料で構成された配線74に接続され、それを介して種々の回路に接続される。
【0118】
第1下部電極71および第2下部電極72は、第1方向において互いに分離している。また、第1下部電極71および第2下部電極72はそれぞれ、上部電極15の一部に対向して配置される。より具体的には、第1下部電極71は上部電極15の第1方向における一方側に対向し、第2下部電極72は他方側に対向している。すなわち、第1下部電極71は平面において上部電極15の第1方向における一方側とオーバーラップし、第2下部電極72は他方側にオーバーラップしている。
【0119】
なお、図面において、第1下部電極71および第2下部電極72の平面における形状は、長方形であるが、これに限らず、円形や楕円形であってもよい。
【0120】
上部電極15は、基板10の表面に垂直方向(上下方向)に可動である。すなわち、上部電極15と第1下部電極71との間の距離、および上部電極15と第2下部電極72との間の距離は変化する。これに伴い、上部電極15を介した第1下部電極71と第2下部電極72との間の容量値が変化する。
【0121】
[動作]
以下に、第4の実施形態に係るMEMS素子の動作について説明する。
【0122】
第4の実施形態に係るMEMS素子において、第1下部電極71は配線73に接続されて種々の回路に接続され、第2下部電極72は配線74に接続されて種々の回路に接続される。また、上部電極15は、浮遊状態である。
【0123】
このため、第4の実施形態では、上部電極15と第1下部電極71、および上部電極15と第2下部電極72との間の距離の変化に伴い、上部電極15を介した第1下部電極71と第2下部電極72との間の容量C5が変化することで、MEMS素子を種々のデバイスに応用することができる。
【0124】
MEMS素子を圧力センサに適用する場合、MEMS素子は、第1下部電極71と第2下部電極72との間の容量値を検出する容量値検出回路40に接続される。
【0125】
より具体的には、容量値検出回路40は、一端が配線73に接続され、他端が配線74に接続される。すなわち、容量値検出回路40は、一端が配線73を介して第1下部電極71に電気的に接続され、他端が配線74を介して第2下部電極72に電気的に接続される。
【0126】
一方、MEMS素子を可変容量またはマイクロポンプに適用する場合、MEMS素子は、第1下部電極71および第2下部電極72に電圧を印加する駆動回路41に接続される。
【0127】
より具体的には、駆動回路41は、一端が配線50に接続され、他端が配線24に接続される。すなわち、駆動回路41は、一端が配線73を介して第1下部電極71に電気的に接続され、他端が配線74を介して第2下部電極72に電気的に接続される。
【0128】
[効果]
上記第4の実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0129】
<第5の実施形態>
図8および図9を用いて第5の実施形態に係るMEMS素子について説明する。第5の実施形態は、MEMS素子がレファレンス下部電極86およびレファレンス上部電極89を有する例である。なお、第5の実施形態において、第1の実施形態と同様の点については説明を省略し、主に異なる点について説明する。以下に、第5の実施形態について詳説する。
【0130】
[構造]
以下に、図8A−図8Bを用いて、第5の実施形態に係るMEMS素子の構造について説明する。
【0131】
図8Aは、第5の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図である。図8Bは、第5の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図であり、図8AのE−E線に沿った断面図である。
【0132】
図8Aおよび図8Bに示すように、第5の実施形態に係るMEMS素子は、薄膜ドーム26のキャビティ20内の端部に収納されるレファレンス下部電極86およびレファレンス上部電極89を備える。レファレンス下部電極86およびレファレンス上部電極89は、下部電極11および上部電極15と同じ構造を有し、同工程において同時に形成される。また、レファレンス下部電極86およびレファレンス上部電極89は、下部電極11および上部電極15とは絶縁分離される。下部電極11は、第1の実施形態における配線24に接続されず、浮遊状態である。
【0133】
レファレンス下部電極86は、基板10上に形成され、固定される。レファレンス下部電極86は、基板10の表面に平行した平板形状である。レファレンス下部電極86は、例えば下部電極11と同じ材料で構成される。レファレンス下部電極86は、浮遊状態である。
【0134】
レファレンス上部電極89は、レファレンス下部電極86の上方に形成される。レファレンス上部電極89は、基板10の表面に平行した平板形状であり、レファレンス下部電極86に対向して配置される。すなわち、レファレンス上部電極89は、平面においてレファレンス下部電極86にオーバーラップしている。図面において、レファレンス上部電極89の平面サイズは、レファレンス下部電極86の平面サイズよりも小さいが、これに限らず、同程度でもよく、また大きくてもよい。なお、図面において、下部電極11および上部電極15の平面における形状は、長方形であるが、これに限らず、円形や楕円形であってもよい。レファレンス上部電極89は、例えば上部電極15と同じ材料で構成される。
【0135】
レファレンス上部電極89は、平面における端部において、ばね部90の一端が接続される。ばね部90はレファレンス上部電極89と一体に形成され、例えばレファレンス上部電極89と同じ導電材料で構成される。ばね部90とレファレンス上部電極89とは1つに繋がった単層構造であり、ばね部90は平面においてメアンダ状の形状を有する。言い換えると、ばね部90は、平面において、細くかつ長く形成され、曲がりくねった形状を有する。このように、ばね部90の線幅、膜厚、および湾曲度合いのうち、少なくともいずれか1つを適宜設定することによって、ばね部90のばね定数をレファレンス上部電極89のばね定数よりも小さくする。
【0136】
ばね部90の他端には、アンカー部88が接続される。すなわち、レファレンス上部電極89は、ばね部90を介してアンカー部88に支持される。アンカー部88は、ばね部90と一体に形成され、同じ導電材料で構成される。アンカー部88は、基板10上に配置された配線87に接続される。配線87は、レファレンス下部電極86と同レベルに形成され、同じ導電材料で構成される。レファレンス上部電極89は、ばね部90およびアンカー部88を介して配線87に電気的に接続され、種々の回路に接続される。
【0137】
なお、レファレンス下部電極86およびレファレンス上部電極89は、下部電極15および上部電極15と同じ大きさ(面積)でなくてもよく、また、異なる材料であってもよい。
【0138】
図9Aは、第5の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例を示す平面図である。図9Bは、第5の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例を示す断面図であり、図9AのF−F線に沿った断面図である。
【0139】
図9Aおよび図9Bに示すように、レファレンス下部電極86およびレファレンス上部電極89は、下部電極15および上部電極15とは異なる薄膜ドーム26aのキャビティ20a内に形成されてもよい。
【0140】
薄膜ドーム26aは、薄膜ドーム26に隣接して形成され、一体に形成されたものである。すなわち、薄膜ドーム26aは、その内側から順に積層され、第1層18、第2層21、および第3層22とそれぞれ一体に形成された第1層18a、第2層21a、および第3層22aで構成される。
【0141】
[動作]
以下に、第5の実施形態に係るMEMS素子の動作について説明する。
【0142】
第5の実施形態に係るMEMS素子において、下部電極11は浮遊状態であり、上部電極15はばね部16およびアンカー部14を介して配線12に接続され、種々の回路に接続される。また、レファレンス下部電極86は浮遊状態であり、レファレンス上部電極89はばね部90およびアンカー部88を介して配線87に電気的に接続され、種々の回路に接続される。
【0143】
これら下部電極11および上部電極15と、レファレンス下部電極86およびレファレンス上部電極89とは、同じ構造を有する。
【0144】
このため、第5の実施形態では、上部電極15と浮遊電極である下部電極11との間の距離の変化に伴い、これらの間の容量C6が変化する。一方、レファレンス上部電極89は、薄膜ドーム26に接続されていない。すなわち、レファレンス上部電極89およびレファレンス下部電極86はいずれも固定電極であり、これらの間の容量Crefは変化しない。容量C6と容量Crefとを比較することで、MEMS素子を種々のデバイスに応用することができる。
【0145】
MEMS素子を圧力センサに適用する場合、MEMS素子は、上部電極15と下部電極11との間の容量C6と、レファレンス上部電極89とレファレンス下部電極86との間の容量Crefとを比較することで容量C6を検出する容量値検出回路40に接続される。
【0146】
より具体的には、容量値検出回路40は、一端が配線12に接続され、他端が配線87に接続される。すなわち、容量値検出回路40は、一端が配線12を介して上部電極15に電気的に接続され、他端が配線87を介してレファレンス上部電極89に電気的に接続される。
【0147】
なお、第5の実施形態では、上部電極15と浮遊電極である下部電極11との間の容量(浮遊容量)C6と、レファレンス上部電極89と浮遊電極であるレファレンス下部電極86との間のレファレンス容量(レファレンス浮遊容量)Crefとを比較することにより、容量C6を検出したが、これに限らない。下部電極11およびレファレンス下部電極86にそれぞれ配線を介して種々の回路を接続し、上部電極15およびレファレンス上部電極89を浮遊電極としてもよい。また、上部電極15およびレファレンス上部電極89にそれぞれ配線12,87を介して種々の回路を接続したうえで、下部電極11およびレファレンス下部電極86にそれぞれ配線を介して種々の回路を接続することにより、各電極間(上部電極15と下部電極11との間、およびレファレンス上部電極89とレファレンス下部電極86との間)の容量をそれぞれ検出して、これらを比較してもよい。
【0148】
[効果]
上記第5の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0149】
ところで、上部電極15の面積が大きくなると、上部電極15の残留応力等により上部電極15に反りが生じる。その結果、上部電極15と下部電極11との間で平行状態を保てなくなってしまう。特に、この反り量が温度やチップ間でばらつくと、電極間の容量値の検出精度が低下する。
【0150】
これに対し、第5の実施形態では、同じ薄膜ドーム26内に、不変のレファレンス容量Crefを有するレファレンス上部電極89およびレファレンス下部電極86が形成される。レファレンス上部電極89およびレファレンス下部電極86は、同じ薄膜ドーム26内の上部電極15および下部電極11と同じ環境下に置かれる。すなわち、レファレンス上部電極89は、上部電極15と同程度の反り量(反り比)を有することになる。このため、レファレンス容量Crefと容量C6とを比較して容量C6を検出することにより、反り量による容量値のバラつきを相殺することができる。その結果、温度やチップ間による電極間の容量値のばらつきを低減することができる。
【0151】
<第6の実施形態>
図10を用いて第6の実施形態に係るMEMS素子について説明する。第6の実施形態は、上部電極15がばね部100およびアンカー部101にも支持される例である。以下に、第6の実施形態について詳説する。なお、第6の実施形態において、第1の実施形態と同様の点については説明を省略し、主に異なる点について説明する。
【0152】
[構造]
以下に、図10A−図10Bを用いて、第6の実施形態に係るMEMS素子の構造について説明する。
【0153】
図10Aは、第6の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図である。図10Bは、第6の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図であり、図10AのG−G線に沿った断面図である。なお、図10Bにおいて、後述するばね部100、アンカー部101、およびダミー配線102も合わせて示している。
【0154】
図10Aおよび図10Bに示すように、第6の実施形態に係るMEMS素子において、上部電極15は、平面における端部において、ばね部100の一端が接続される。ばね部100の他端には、アンカー部101が接続される。すなわち、上部電極15は、ばね部100を介してアンカー部101に支持される。アンカー部101は、基板10上に配置されたダミー配線102に接続される。ダミー配線102は、浮遊状態である。
【0155】
なお、図面において、ばね部100、アンカー部101、およびダミー配線102は、4個ずつ設けられているが、これに限らない。ばね部100、アンカー部101、およびダミー配線102は、1〜3個、または5個以上設けられてもよい。
【0156】
ばね部100は、例えば導電体または絶縁体の脆性材料で構成される。絶縁体の脆性材料として、第1層18に、SiO(SiO2)またはSiNが用いられる。導電体の脆性材料としては、WSiまたはAlSiが用いられる。アンカー部101は、例えば、ばね部16と一体に形成され、同じ導電材料で構成されるが、これに限らない。ダミー配線102は、例えば、下部電極11と同レベルに形成され、同じ導電材料で構成されるが、これに限らない。
【0157】
一方、上述したように、ばね部16は、延性材料で構成される。このとき、ばね部100の線幅、膜厚、および湾曲度合いのうち、少なくともいずれか1つを適宜設定することによって、ばね部100のばね定数をばね部16のばね定数よりも大きくする。
【0158】
[効果]
上記第6の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0159】
さらに、第6の実施形態では、上部電極15が延性材料で構成されたばね定数の小さなばね部16だけでなく、脆性材料で構成されたばね定数の大きなばね部100によっても支持される。これにより、上部電極15がばね部16のみで支持される場合と比較して、上部電極15のクリープ現象を抑制することができる。
【0160】
また、上部電極15が複数のばね部16,100によって支持される。言い換えると、上部電極15は、複数箇所の端部において支持されている。これにより、上部電極15の面積が大きい場合であっても、残留応力等によって生じる上部電極15の反り量を抑制することができる。
【0161】
なお、上述した上部電極15の反り量は、ばね部100としてばね部16と同じ延性材料を用いても抑制することができる。言い換えると、上部電極15を複数の延性材料からなるばね部16,100で支持してもよい。このとき、ばね部100の線幅、膜厚、および湾曲度合いのうち、少なくともいずれか1つを適宜設定することによって、ばね部100のばね定数をばね部16のばね定数よりも大きくすることが望ましいが、これに限らない。
【0162】
なお、上記各実施形態を矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせることも可能である。
【0163】
その他、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で、種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0164】
10…基板、11…下部電極、14,25…アンカー部、15…上部電極、16…ばね部、20,20a…キャビティ、26,26a…薄膜ドーム、40…容量値検出回路、86…レファレンス下部電極、89…レファレンス上部電極。
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、MEMS素子に関する。
【背景技術】
【0002】
機械的可動部を有するMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子が提案されている。このMEMS素子は、例えば圧力センサ、可変容量、マイクロポンプ等のデバイスに応用することができる。
【0003】
例えばMEMS素子を圧力センサとして用いる場合、MEMS素子は固定電極と可動である薄膜ドーム(可動電極)とを有する。そして、ドーム外の圧力に応じて可動である薄膜ドームと固定電極との間の容量(静電容量)値を検出することにより、そのときの圧力を測定する。
【0004】
このとき、薄膜ドームの動作は、中央部で大きく、端部で小さくなる。このため、薄膜ドームの端部は、中央部に比べて固定電極との間の容量変化に寄与しない。言い換えると、主に薄膜ドームの中央部のみが容量変化に寄与する。その結果、外部圧力に対する薄膜ドームと固定電極との間の容量変化が小さく、圧力センサとしての感度が小さくなる。
【0005】
MEMS素子において、圧力センサとしての感度を大きくし、信頼性を向上させることが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,625,825号明細書
【特許文献2】特開2000−131173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
信頼性の向上を図るMEMS素子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本実施形態によるMEMS素子は、基板上に固定された平板形状の第1電極と、前記第1電極の上方に対向して配置され、上下方向に可動である平板形状の第2電極と、前記基板上において、前記第1電極および前記第2電極を収納するキャビティを有する膜と、を具備する。前記第2電極は、ばね部を介して前記基板上に接続されたアンカー部に接続されるとともに、その上方において前記膜に接続される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1A】第1の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図。
【図1B】第1の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図。
【図1C】第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例を示す断面図。
【図2】第1の実施形態に係るMEMS素子を圧力センサに適用した例を示す図。
【図3】第1の実施形態に係るMEMS素子を可変容量に適用した例を示す図。
【図4A】第1の実施形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図。
【図4B】図4Aに続く、第1の実施形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図。
【図4C】図4Bに続く、第1の実施形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図。
【図4D】図4Cに続く、第1の実施形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図。
【図4E】図4Dに続く、第1の実施形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図。
【図5A】第2の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図。
【図5B】第2の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図。
【図6A】第3の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図。
【図6B】第3の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図。
【図7A】第4の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図。
【図7B】第4の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図。
【図8A】第5の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図。
【図8B】第5の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図。
【図9A】第5の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例を示す平面図。
【図9B】第5の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例を示す断面図。
【図10A】第6の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図。
【図10B】第6の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態を以下に図面を参照して説明する。図面において、同一部分には同一の参照符号を付す。また、重複した説明は、必要に応じて行う。
【0011】
<第1の実施形態>
図1乃至図4を用いて第1の実施形態に係るMEMS素子について説明する。第1の実施形態は、可動電極である上部電極15がばね部16を介して基板10上に配置されたアンカー部14に支持され、かつ薄膜ドーム26に接続されたアンカー部25に支持される例である。これにより、上部電極15を薄膜ドーム26と連動させることができ、上部電極15と下部電極11との間の容量変化を大きくすることができる。以下に、第1の実施形態について詳説する。
【0012】
[構造]
以下に、図1A−図1Cを用いて、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造について説明する。
【0013】
図1Aは、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図である。図1Bは、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図であり、図1AのA−A線に沿った断面図である。
【0014】
図1Aおよび図1Bに示すように、第1の実施形態に係るMEMS素子は、基板10上に形成された下部電極11、上部電極15、および薄膜ドーム26を有する。
【0015】
基板10は、例えば、ガラスなどの絶縁性基板、またはシリコン基板上に設けられた層間絶縁膜である。基板10がシリコン基板上に設けられた層間絶縁膜である場合、シリコン基板の表面には、トランジスタなどの素子が設けられてもよい。それらの素子は、ロジック回路や記憶回路を構成する。層間絶縁膜は、それらの回路を覆うように、シリコン基板上に設けられる。すなわち、MEMS素子は、シリコン基板上の回路の上方に設けられる。
【0016】
なお、層間絶縁膜内にシールドメタルを設けて、下層の回路からのノイズが、MEMS素子に伝播するのを抑制してもよい。また、シリコン基板上の層間絶縁膜は、その寄生容量を小さくするため、誘電率の低い材料が用いられることが望ましい。例えば、層間絶縁膜には、TEOS(Tetra Ethyl Ortho Silicate)が用いられる。また、寄生容量を小さくするために、層間絶縁膜の膜厚は大きいことが望ましい。
【0017】
下部電極11は、基板10上に形成され、固定される。下部電極11は、基板10の表面に平行した平板形状である。下部電極11は、例えばアルミニウム(Al)、アルミニウムを主成分とする合金、銅(Cu)、金(Au)、または白金(Pt)で構成される。下部電極11は、下部電極11と同じ材料で構成された配線24に接続され、それを介して種々の回路に接続される。
【0018】
上部電極15は、下部電極11の上方に形成される。上部電極15は、基板10の表面に平行した平板形状であり、下部電極11に対向して配置される。すなわち、上部電極15は、第1方向(図1Aにおける左右方向)および第1方向に直交する第2方向(図1Aにおける上下方向)に広がる平面(基板10の表面に平行した平面、以下、単に平面と称す)において下部電極11にオーバーラップしている。図面において、上部電極15の平面サイズ(例えば、面積)は、下部電極11の平面サイズよりも小さいが、これに限らず、同程度でもよく、また大きくてもよい。なお、図面において、下部電極11および上部電極15の平面における形状は、長方形であるが、これに限らず、円形や楕円形であってもよい。
【0019】
上部電極15は、例えばAl、Alを主成分とする合金、Cu、Au、またはPtで構成される。すなわち、上部電極15は、延性材料で構成される。延性材料とは、その材料からなる部材に応力を与えて破壊する場合に、その部材が大きな塑性変化(延び)を生じてから破壊される材料のことである。なお、MEMS素子が圧力センサとして適用される場合、上部電極15および下部電極11は、不純物が導入されたドープドシリコンで構成されてもよい。
【0020】
上部電極15は、基板10の表面に垂直方向(上下方向)に可動である。すなわち、上部電極15と下部電極11との間の距離は変化し、これに伴い、上部電極15と下部電極11との間の容量値が変化する。
【0021】
本実施形態に係る上部電極15の種々の接続関係の詳細については、後述する。
【0022】
薄膜ドーム26は、下部電極11および上部電極15を収納するキャビティ20を有する。言い換えると、下部電極11および上部電極15は、キャビティ20内に形成される。キャビティ20内は、乾燥雰囲気、または真空雰囲気に保たれている。このため、有害ガス、例えば水分によって、下部電極11および上部電極15が劣化することが防止され、MEMS素子の特性劣化が防止されている。
【0023】
薄膜ドーム26は、その内側から順に積層された第1層18、第2層21、および第3層22で構成される。
【0024】
第1層18は、複数の貫通孔(開口部)23を有する。複数の貫通孔23は、後述する製造工程において、犠牲層13,17をエッチングして除去し、キャビティ20を形成するためのものである。すなわち、犠牲層13,17は、貫通孔20を通してエッチングされる。
【0025】
第1層18は、例えば絶縁体の脆性材料で構成される。脆性材料とは、その材料からなる部材に応力を与えて破壊する場合に、その部材が塑性変化(形状の変化)をほとんど生じないで破壊される材料のことである。一般に、脆性材料を用いた部材を破壊するのに要するエネルギー(応力)は、延性材料を用いた部材を破壊するのに要するエネルギーより小さい。つまり、脆性材料を用いた部材は、延性材料を用いた部材より、破壊されやすい。言い換えると、脆性材料は、形状変化しづらい硬い(剛性の強い)材料である。ここで、硬い材料とは、ヤング率が大きい材料を意味する。
【0026】
このような絶縁体の脆性材料として、第1層18に、酸化シリコン(SiO、SiO2)または窒化シリコン(SiN)が用いられる。
【0027】
なお、第1層18は、導電体の脆性材料で構成されてもよい。導電体の脆性材料としては、WSiまたはAlSiが用いられる。
【0028】
第2層21は、第1層18上に形成され、複数の貫通孔23を塞いでいる。この第2層21は、キャビティ20を封止しながら、キャビティ20内の有害ガスを透過させて排出し、キャビティ20内の雰囲気を調整する機能を有する。
【0029】
第2層21は、ポリイミド等の有機材料の塗布膜で構成されることが望ましい。これにより、貫通孔23のサイズ(直径または開口面積)が大きくても、貫通孔23を容易かつ確実に封止することができる。したがって、貫通孔23のサイズや配置が制約されない。このため、サイズの大きい複数の貫通孔23を配置することにより、後述する犠牲層のエッチングを短時間で確実に行うことが可能である。
【0030】
なお、第2層21は、有機材料の塗布膜に限らず、SiO(SiO2)、SiN等の絶縁膜で構成されてもよい。
【0031】
第3層22は、第2層21上に形成される。この第3層22は、大気中の水分が第2層21を透過してキャビティ20内に浸入することを防止する防湿膜として機能する。また、第3層22は、脆性材料で構成されることが望ましく、例えばSiN等の絶縁体で構成される。
【0032】
薄膜ドーム26において、第2層21は、剛性の弱い材料である。また、第1層18および/または第3層22は、剛性の強い材料である。このため、薄膜ドーム26全体における上下方向の変位に対するばね定数(以下、単にばね定数と称す)は、第1層18および/または第3層22を構成する脆性材料によって決まる。薄膜ドーム26のばね定数を大きくすることにより、薄膜ドーム26のクリープ現象を抑制することができる。クリープ現象とは、経年変化が増大する現象、または、ある部材に応力が与えられたときに部材の歪み(形状の変化)が増大する現象のことである。
【0033】
また、第1の実施形態では、薄膜ドーム26のばね定数は、後述するばね部16のばね定数よりも大きくなるように構成される。さらに、薄膜ドーム26のばね定数は、上部電極15よりも大きくなるように構成される。
【0034】
なお、薄膜ドーム26として、第1層18、第2層21、および第3層22に限らない。薄膜ドーム26として、別工程において形成される例えばシリコンキャップ等を用いてもよい。
【0035】
以下に、第1の実施形態に係る上部電極15の種々の接続関係について、詳説する。
【0036】
上部電極15は、平面における端部において、ばね部16の一端が接続される。ばね部16は上部電極15と一体に形成され、例えば上部電極15と同じ導電材料で構成される。すなわち、ばね部16は、導電体の脆性材料で構成されるが、これに限らず、上部電極15と異なる材料でもよい。ばね部16と上部電極15とは1つに繋がった単層構造であり、ばね部16は平面においてメアンダ状の形状を有する。言い換えると、ばね部16は、平面において、細くかつ長く形成され、曲がりくねった形状を有する。このように、ばね部16の線幅、膜厚、および湾曲度合いのうち、少なくともいずれか1つを適宜設定することによって、ばね部16のばね定数を上部電極15のばね定数よりも小さくする。また、ばね部16のばね定数は、薄膜ドーム26のばね定数よりも小さい。
【0037】
ばね部16の他端には、アンカー部14が接続される。すなわち、上部電極15は、ばね部16を介してアンカー部14に支持される。アンカー部14は、ばね部16と一体に形成され、同じ導電材料で構成される。すなわち、アンカー部14は、導電体の脆性材料で構成されるが、これに限らず、上部電極15およびばね部16と異なる材料でもよい。アンカー部14は、基板10上に配置された配線12に接続される。配線12は、下部電極11と同レベルに形成され、同じ導電材料で構成される。上部電極15は、ばね部16およびアンカー部14を介して配線12に電気的に接続され、種々の回路に接続される。
【0038】
また、上部電極15は、平面における中央部において、その上方に位置するアンカー部25に支持される。言い換えると、上部電極15は、その上面においてアンカー部25に接する。アンカー部25は、薄膜ドーム26と一体に形成され、薄膜ドーム26と同じ材料で構成される。言い換えると、アンカー部25は、薄膜ドーム26から下方に突出した部分である。すなわち、上部電極15は、アンカー部25を介して薄膜ドーム26に接続される。また、アンカー部25は、薄膜ドーム26の平面における中央部に形成されることが望ましいが、これに限らない。
【0039】
また、薄膜ドーム26の平面における中央部の面積(アンカー部25の平面における面積)は、上部電極15の平面における面積よりも小さい。なお、アンカー部25の平面形状は、例えば長方形であるが、円形でも楕円形でもよい。
【0040】
このように、アンカー部25が上部電極15に接続されることにより、薄膜ドーム26の上下方向の動作が上部電極15の上下方向の動作に連動する。このとき、アンカー部25が平面における薄膜ドーム26の中央部に形成されているため、上部電極15は薄膜ドーム26の中央部の動作に連動する。この薄膜ドーム26の中央部は、端部よりも大きく動作する部分である。すなわち、上部電極15は、薄膜ドーム26において大きく動作する中央部に連動して上下方向に動作する。
【0041】
なお、上部電極15は、アンカー部25に直接接続されなくてもよい。上部電極15は、薄膜ドーム26の上下方向の動作に連動して動作するように、アンカー部25から図示せぬ部材を介して吊るされている状態でもよい。
【0042】
ここで、薄膜ドーム26のばね定数は、ばね部16のばね定数よりも十分大きい。これにより、ばね部16の有無に限らず、実質的に薄膜ドーム26の上下方向の動作を上部電極15に連動させることができる。すなわち、薄膜ドーム26の動作を制御することで、上部電極15と下部電極11の距離および容量を制御することができる。また、上部電極15のばね定数は、ばね部16のばね定数よりも十分大きい。これにより、薄膜ドーム26が上下方向に動作する場合、実質的に上部電極15と下部電極11との平行状態を保つことができる。
【0043】
図1Cは、第1の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例を示す断面図である。
【0044】
図1Cに示すように、下部電極11の表面に絶縁膜30が形成されていてもよい。絶縁膜30は、例えばSiNまたはSiO(SiO2)で構成されるが、これに限らず、種々の絶縁材料で構成されてもよい。この絶縁膜30が下部電極11の表面(上部電極15に対向する面、上面)に形成されることで、下部電極11と上部電極15とが接することによるショートを防ぐことができる。
【0045】
なお、絶縁膜30は、下部電極11の上面に限らず、上部電極15の表面(下部電極11に対向する面、下面)に形成されてもよい。
【0046】
[動作]
以下に、図2および図3を用いて、第1の実施形態に係るMEMS素子の動作について説明する。
【0047】
図2は、第1の実施形態に係るMEMS素子を圧力センサに適用した例を示す図である。図3は、第1の実施形態に係るMEMS素子を可変容量に適用した例を示す図である。なお、図2および図3において、薄膜ドーム26の積層構造は省略して示している。
【0048】
第1の実施形態に係るMEMS素子において、下部電極11は配線24に接続されて種々の回路に接続され、上部電極15はばね部16およびアンカー部14を介して配線12に接続されて種々の回路に接続される。
【0049】
このため、第1の実施形態では、上部電極15と下部電極11との間の距離の変化に伴い、これらの間の容量(静電容量)値が変化することで、MEMS素子を種々のデバイスに応用することができる。
【0050】
図2に示すように、MEMS素子を圧力センサに適用する場合、MEMS素子は、上部電極15と下部電極11との間の容量値を検出する容量値検出回路40に接続される。
【0051】
より具体的には、容量値検出回路40は、一端が配線12に接続され、他端が配線24に接続される。すなわち、容量値検出回路40は、一端が配線12、アンカー部14およびばね部16を介して上部電極15に電気的に接続され、他端が配線24を介して電気的に下部電極11に接続される。容量値検出回路40は、MEMS素子と同一のチップ内に混載されるが、これに限らない。また、容量値検出回路40およびMEMS素子からなる圧力センサは、例えばチップ内に1つ配置される。
【0052】
薄膜ドーム26の外部から圧力が印加されると、薄膜ドーム26内外の圧力差により薄膜ドーム26が変形する。内部よりも外部の圧力が大きい場合、薄膜ドーム26の中央部が凹む(下方に動作する)。すると、アンカー部25を介して接続された上部電極15は、薄膜ドーム26に連動して下方に動作する。これにより、上部電極15と下部電極11との距離が小さくなる。すなわち、上部電極15と下部電極11との間の容量C1が大きくなる。この容量C1を検出することにより、そのときの外部の圧力を測定する。
【0053】
第1の実施形態によれば、上部電極15は、薄膜ドーム26の中央部にアンカー部25を介して接続される。このため、上部電極15は、薄膜ドーム26の中央部の局所的変形を反映して上下方向に動作する。すなわち、薄膜ドーム26の中央部より面積の大きい上部電極15が、下部電極11に対して平行状態を保ったまま上下方向に動作する。したがって、検出される容量値を増幅することができる。
【0054】
また、第1の実施形態によれば、薄膜ドーム26の外部から大きな圧力が印加された場合、上部電極15が下部電極11と接する。すなわち、上部電極15がストッパーとしての役割を果たし、大きな圧力が印加された場合の薄膜ドーム26の破壊を防ぐことができる。
【0055】
一方、図3に示すように、MEMS素子を可変容量に適用する場合、MEMS素子は、上部電極15および下部電極11に電圧を印加する駆動回路41に接続される。
【0056】
より具体的には、駆動回路41は、一端が配線12に接続され、他端が配線24に接続される。すなわち、駆動回路41は、一端が配線12、アンカー部14およびばね部16を介して上部電極15に電気的に接続され、他端が配線24を介して下部電極11に電気的に接続される。駆動回路41は、MEMS素子と同一のチップ内に混載されるが、これに限らない。
【0057】
駆動回路41は、上部電極15および下部電極11に電圧を印加する。これにより、これらの間に電位差が生じ、静電引力によって上部電極15が上下方向に動作する。このため、上部電極15と下部電極11との距離が変化し、これらの間の容量C2が変化する。すなわち、駆動回路41は、上部電極15および下部電極11に電圧を印加することにより、これらの間の容量C2を可変にする。
【0058】
第1の実施形態によれば、容量電極である上部電極15と下部電極11との間のオーバーラップ面積が大きくなる。このため、駆動電圧を低くすることができる。また、薄膜ドーム26は脆性材料を含み、薄膜ドーム26の剛性(ばね定数)は脆性材料によって決まる。このため、長時間応力が印可されても、薄膜ドーム26がクリープ変形を起こさない。
【0059】
なお、駆動回路41を接続することにより、MEMS素子をマイクロポンプとして適用することもできる。すなわち、駆動回路41は、上部電極15および下部電極11に電圧を印加することにより、静電引力によって上部電極15を上下方向に動作させる。これに連動して、上部電極15に接続された薄膜ドーム26が上下方向に動作する。駆動回路41により印加される電圧を変化させることで、薄膜ドーム26を上下方向に動作させてMEMS素子をマイクロポンプとして機能させる。
【0060】
[製造方法]
以下に、図4A−図4Eを用いて、第1の実施形態に係るMEMS素子の製造方法について説明する。
【0061】
図4A−図4Eは、第1の実施形態に係るMEMS素子の製造工程を示す断面図である。
【0062】
まず、図4Aに示すように、基板10上に、導電層が形成され、パターニングされる。これにより、基板10上に、下部電極11が形成される。下部電極11は、例えばAl、Alを主成分とする合金、Cu、Au、またはPtで構成され、その膜厚は例えば数100nm〜数μmである。下部電極11の成膜方法としては、スパッタリング法が用いられる。また、パターニング方法としては従来のフォトリソグラフィ法とRIE(Reactive Ion Etching)法が用いられてもよいし、フォトリソグラフィ法とウェットエッチング法が用いられてもよい。
【0063】
このとき、同時に、基板10上に、配線12,24が形成される。このため、配線12,24は、下部電極11と同じ材料で構成される。しかし、これに限らず、配線12,24は、下部電極11とは別工程かつ異なる材料で形成されてもよい。
【0064】
その後、例えばCVD法により、下部電極11の表面を覆うように、絶縁膜30が形成されてもよい。このとき、配線12の表面も絶縁膜30により覆われるが、その後、配線12の表面の一部が露出するように絶縁膜30に開口部を形成する。
【0065】
次に、下部電極11および配線12の一部を覆うように、ポリイミド等の有機材料で構成される第1犠牲層13が塗布される。この第1犠牲層13は、膜厚が例えば数100nm〜数μmで形成される。
【0066】
その後、第1犠牲層13が所望の形状にパターニングされる。これにより、配線12の表面の一部が露出される。第1犠牲層13は、感光露光および現像によりパターニングされてもよい。または、第1犠牲層13上に通常のリソグラフィ法で形成された図示せぬレジストパターンとRIE法より、第1犠牲層13がパターニングされてもよい。または、第1犠牲層13上に形成された図示せぬSiO膜等を通常のリソグラフィ法によるレジストパターンとRIE法あるいはウェットエッチング法によってハードマスクとしてパターニングし、このハードマスクを用いて第1犠牲層13がパターニングされてもよい。
【0067】
次に、第1犠牲層13上に、導電層が形成され、パターニングされる。これにより、第1犠牲層13上に、上部電極15が形成される。上部電極15は、例えばAl、Alを主成分とする合金、Cu、Au、またはPtで構成され、その膜厚は例えば数100nm〜数μmである。上部電極15の成膜方法としては、スパッタリング法が用いられる。また、パターニング方法としては従来のフォトリソグラフィ法とRIE法が用いられてもよいし、フォトリソグラフィ法とウェットエッチング法が用いられてもよい。
【0068】
このとき、同時に、第1犠牲層13上に、ばね部16およびアンカー部14が形成される。これにより、上部電極15は、ばね部16およびアンカー部14を介して配線12に接続される。また、ばね部16およびアンカー部14は、上部電極15と同じ材料で構成される。しかし、これに限らず、ばね部16およびアンカー部14は、上部電極15とは別工程かつ異なる材料で形成されてもよい。
【0069】
次に、図4Bに示すように、上部電極15、ばね部16、アンカー部14、および第1犠牲層13を覆うように、ポリイミド等の有機材料で構成される第2犠牲層17が塗布される。この第2犠牲層17は、膜厚が例えば数100nm〜数μmで形成される。
【0070】
その後、第2犠牲層17が所望の形状にパターニングされる。第2犠牲層17は、感光露光および現像によりパターニングされてもよい。または、第2犠牲層17上に通常のリソグラフィ法で形成された図示せぬレジストパターンとRIE法により、第2犠牲層17がパターニングされてもよい。または、第2犠牲層17上に形成された図示せぬSiO膜等を通常のリソグラフィ法によるレジストパターンとRIE法あるいはウェットエッチング法によってハードマスクとしてパターニングし、このハードマスクを用いて第2犠牲層17がパターニングされてもよい。
【0071】
このとき、上部電極15の平面における中央部の上方に位置する第2犠牲層17の一部もパターニングされ、除去される。これにより、第2犠牲層17を貫通する開口部29が形成され、上部電極15の平面における中央部が露出する。
【0072】
次に、図4Cに示すように、第2犠牲層17を覆うように、第1層18が形成される。第1層18は、膜厚が例えば数100nm〜数μmで形成される。また、第1層18は、絶縁体の脆性材料で構成され、例えばSiNまたはSiO(SiO2)で構成される。第1層18の成膜方法としては、CVD法が用いられる。
【0073】
このとき、第1層18は、開口部29の内面上にも形成される。すなわち、第1層18は、開口部29によって露出した上部電極15の上面にも接して形成される。これにより、後に薄膜ドーム26が上部電極25に接続された構造となる。このとき、開口部29が第1層18によって埋め込まれなくてもよい。
【0074】
次に、第1層18上に、図示せぬレジストが塗布される。その後、通常のリソグラフィ法で形成された図示せぬレジストパターンとRIE法またはウェットエッチング法により、第1層18に第1犠牲層13および第2犠牲層17除去用の複数の貫通孔23が開口される。
【0075】
このとき、図示せぬレジストパターンと第1層18との選択比を調整することにより、貫通孔23の形状が、外側から内側に向かって次第に径が大きくなることが望ましい。言い換えると、貫通孔23の形状が外側から内側に向かって次第に径が小さくなるテーパー形状であることが望ましい。これは、後工程において第1犠牲層13および第2犠牲層17を除去した後に、貫通孔23の封止特性を向上させるためである。
【0076】
次に、図4Dに示すように、O2ガス等を用いたアッシングにより、図示せぬレジストパターン、第1犠牲層13および第2犠牲層17が除去される。これにより、可動電極である上部電極15の動作空間となるキャビティ20が形成される。
【0077】
次に、図4Eに示すように、第1層18上に、第2層21が形成される。これにより、複数の貫通孔23が塞がれ、キャビティ20が封止される。第2層21は、膜厚が例えば数100nm〜数μmで形成される。第2層21は、例えばポリイミド等の有機材料、またはSiN、SiO(SiO2)で構成される。第2層21がポリイミド等の有機材料で構成される場合、例えば塗布法により形成され、SiN、SiO(SiO2)で構成される場合、CVD法により形成される。このとき、開口部29が第2層21によって埋め込まれてもよいし、埋め込まれなくてもよい。
【0078】
次に、図1Bに示すように、第2層21上に、防湿膜としての第3層22が形成される。第3層22は、膜厚が例えば数100nm〜数μmで形成される。第3層22は、例えばSiNで構成されている。第3層22の成膜方法としては、CVD法が用いられる。
【0079】
その後、第3層22が所望の形状にパターニングされる。第3層22は、通常のリソグラフィ法で形成された図示せぬレジストパターンとRIE法またはウェットエッチングにより、パターニングされる。このようにして、第1の実施形態に係るMEMS素子が形成される。
【0080】
[効果]
上記第1の実施形態によれば、MEMS素子において、可動電極である上部電極15がばね部16およびアンカー部14を介して基板10に接続され、かつアンカー部25を介して上方の薄膜ドーム26の平面における中央部に接続される。また、薄膜ドーム26は、上部電極15よりも剛性の強い脆性材料で構成される。これにより、以下の効果を得ることができる。
【0081】
MEMS素子を圧力センサとして適用する場合、薄膜ドーム26の中央部が端部よりも大きく上下方向に動作する。第1の実施形態では、上部電極15がアンカー部25を介して薄膜ドーム26の中央部に接続される。これにより、上部電極15は、薄膜ドーム26の中央部の動作に連動して上下方向に動作する。すなわち、薄膜ドーム26の中央部の動作を反映して、それよりも面積が大きい上部電極15が上下方向に平行に動作する。そして、上部電極15と下部電極11との間の容量値を検出する。したがって、薄膜ドーム26自体を可動電極として固定電極との間の容量値を測定する場合と比較して、容量値の変化量を増幅することができる。その結果、圧力センサとしての感度を上げることができ、信頼性の向上を図ることができる。
【0082】
また、薄膜ドーム26の外部から大きな圧力が印加された場合、上部電極15が下部電極11と接する。これらが接した状態からさらに大きな圧力が印加されても、薄膜ドーム26がそれ以上変形することはない。すなわち、上部電極15がストッパーとしての役割を果たし、大きな圧力が印加された場合の薄膜ドーム26の破壊を防ぐことができる。
【0083】
一方、MEMS素子を可変容量またはマイクロポンプとして適用する場合、上部電極15および下部電極11に電圧を印加し、その時に発生する静電引力により、上部電極15を上下方向に動作させる。第1の実施形態では、薄膜ドーム自体を可動電極として用いる場合と比較して、可動電極である上部電極15の面積が大きい。このため、上部電極15と下部電極11との間のオーバーラップ面積を大きくすることができる。これにより、駆動電圧を低くすることができ、消費電力の低減を図ることができる。
【0084】
また、薄膜ドーム26は、脆性材料を含む。このため、薄膜ドーム26のばね定数は、薄膜ドーム26に含まれるばね定数によって決まる。このため、動作時に長時間応力が印加されても薄膜ドーム26のクリープ変形を抑制することができる。
【0085】
ところで、薄膜ドーム26の内部の体積をV、圧力をPとすると、ボイルの法則により、
PV=一定 ・・・ (1)
という関係が成り立つ。薄膜ドーム26の外部の圧力がΔP増加すると、(1)の関係により、
PV=(P+ΔP)(V−ΔV) ・・・ (2)
という関係が成り立つ。すなわち、体積がΔVだけ減少することで、薄膜ドーム26の内部および外部の圧力が釣り合う。薄膜ドーム26の平面面積が同じと仮定すると、ΔPが同じであれば、薄膜ドーム26の内部の体積Vが大きいほうが体積変化ΔVが大きくなる。このため、電極間の距離の変化量が大きくなり、電極間の容量の変化量も大きくなる。すなわち、薄膜ドーム26内の体積Vが大きいほうが、圧力センサの感度を向上できる。
【0086】
しかし、薄膜ドーム自体を可動電極として用いる場合、薄膜ドーム内の体積を大きくすると、薄膜ドームと固定電極との間の距離が大きくなる。これにより、これらの間の容量値が減り、圧力センサとしての感度が低下する。このため、単純に薄膜ドームの体積を増やすことはできない。
【0087】
これに対し、第1の実施形態では、可動電極として薄膜ドーム26に接続された上部電極15を設けている。このため、薄膜ドーム26の体積を大きくしても、上部電極15と下部電極11との距離を大きくしなければ上記問題は解決できる。より具体的には、上部電極15と薄膜ドーム26の間の距離を大きくする。すなわち、アンカー部25の上下方向の距離(長さ)を大きくする。これにより、上部電極15と下部電極11との容量値を変えることなく、薄膜ドーム26の内部の体積を大きくすることができ、圧力センサの感度を向上できる。このとき、上部電極15と薄膜ドーム26の間の距離(アンカー部25の上下方向の長さ)を上部電極15と下部電極11との間の距離よりも大きくすることで、上部電極15と下部電極11との間で十分な容量値を得ることができる。ここで、上部電極15と下部電極11との間の距離とは、動作前において上部電極15が上下方向に動かず、ばね部16が基板10の表面に対して平行状態の場合を示す。言い換えると、外部からの圧力によって薄膜ドーム26に凹凸が生じず、上部電極15、ばね部16、およびアンカー部14の一部が同レベルに位置している場合を示す。
【0088】
<第2の実施形態>
図5を用いて第2の実施形態に係るMEMS素子について説明する。第1の実施形態は、上部電極15がばね部16を介してアンカー部14に支持され、かつ薄膜ドーム26に接続されるアンカー部25に支持された。これに対し、第2の実施形態は、上部電極15がばね部16およびアンカー部14には支持されず、薄膜ドーム26に接続されるアンカー部25のみに支持される例である。以下に、第2の実施形態について詳説する。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同様の点については説明を省略し、主に異なる点について説明する。
【0089】
[構造]
以下に、図5A−図5Bを用いて、第2の実施形態に係るMEMS素子の構造について説明する。
【0090】
図5Aは、第2の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図である。図5Bは、第2の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図であり、図5AのB−B線に沿った断面図である。
【0091】
図5Aおよび図5Bに示すように、第2の実施形態に係るMEMS素子において、上部電極15は、平面における中央部において、その上方に位置するアンカー部25のみに支持される。すなわち、第1の実施形態におけるばね部16およびアンカー部14は存在しない。
【0092】
また、薄膜ドーム26における第1層18は、例えば導電体の脆性材料で構成される。導電体の脆性材料としては、WSiまたはAlSiが用いられる。
【0093】
なお、これに限らず、第1層18は、導電体の延性材料で構成されてもよい。導電体の延性材料としては、AlまたはAuが用いられる。このとき、薄膜ドーム26の全体の剛性を強くする必要があるため、第3層22は脆性材料で構成され、例えばSiNで構成される。
【0094】
また、第1層18は、基板10上において配線50と接続され、それを介して種々の回路に接続される。すなわち、上部電極15は、導電体であるアンカー部25と接することで、アンカー部25(第1層18)を介して配線50に電気的に接続され、種々の回路に接続される。
【0095】
配線50は、下部電極11と同時に形成されてもよいし、第1層18と同時に形成されてもよい。このため、配線50は、下部電極11と同じ材料または第1層18と同じ材料で構成される。なお、これに限らず、下部電極11および第1層18とは別工程かつ異なる材料で形成されてもよい。
【0096】
[動作]
以下に、第2の実施形態に係るMEMS素子の動作について説明する。
【0097】
第1の実施形態に係るMEMS素子において、下部電極11は配線24に接続されて種々の回路に接続され、上部電極15はアンカー部25(第1層18)を介して配線50に接続されて種々の回路に接続される。
【0098】
このため、第1の実施形態では、上部電極15と下部電極11との間の距離の変化に伴い、これらの間の容量(静電容量)値が変化することで、MEMS素子を種々のデバイスに応用することができる。
【0099】
MEMS素子を圧力センサに適用する場合、MEMS素子は、上部電極15と下部電極11との間の容量値を検出する容量値検出回路40に接続される。
【0100】
より具体的には、容量値検出回路40は、一端が配線50に接続され、他端が配線24に接続される。すなわち、容量値検出回路40は、一端が配線50および第1層18を介して上部電極15に電気的に接続され、他端が配線24を介して下部電極11に電気的に接続される。
【0101】
一方、MEMS素子を可変容量またはマイクロポンプに適用する場合、MEMS素子は、上部電極15および下部電極11に電圧を印加する駆動回路41に接続される。
【0102】
より具体的には、駆動回路41は、一端が配線50に接続され、他端が配線24に接続される。すなわち、駆動回路41は、一端が配線50および第1層18を介して上部電極15に電気的に接続され、他端が配線24を介して下部電極11に電気的に接続される。
【0103】
[効果]
上記第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0104】
さらに、第2の実施形態では、上部電極15がばね部16およびアンカー部14には支持されず、薄膜ドーム26に接続されるアンカー部25のみに支持される。すなわち、ばね部16およびアンカー部14を形成する必要がない。
【0105】
<第3の実施形態>
図6を用いて第3の実施形態に係るMEMS素子について説明する。第1の実施形態は、上部電極15が1つのアンカー部25を介して薄膜ドーム26に接続された。これに対し、第3の実施形態は、上部電極15が複数のアンカー部60を介して薄膜ドーム26に接続される例である。以下に、第3の実施形態について詳説する。なお、第3の実施形態において、第1の実施形態と同様の点については説明を省略し、主に異なる点について説明する。
【0106】
[構造]
以下に、図6A−図6Bを用いて、第3の実施形態に係るMEMS素子の構造について説明する。
【0107】
図6Aは、第3の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図である。図6Bは、第3の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図であり、図6AのC−C線に沿った断面図である。
【0108】
図6Aおよび図6Bに示すように、第3の実施形態に係るMEMS素子において、上部電極15は、その上方に位置する複数のアンカー部60に支持される。言い換えると、上部電極15は、その上面において複数のアンカー部60に接する。アンカー部60は、薄膜ドーム26と一体に形成され、薄膜ドーム26と同じ材料で構成される。言い換えると、アンカー部60は、薄膜ドーム26から下方に突出した部分である。すなわち、上部電極15は、複数のアンカー部60を介して薄膜ドーム26に接続される。
【0109】
また、複数のアンカー部60は、上部電極15の平面における任意の位置に配置されるが、上部電極15の平面における中央部に対して対称位置に配置されることが望ましい。
【0110】
なお、図面において、上部電極15は、2つのアンカー部60に支持されているが、これに限らず、3つ以上のアンカー部60に支持されてもよい。
【0111】
[効果]
上記第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0112】
さらに、第3の実施形態では、上部電極15が複数のアンカー部60を介して薄膜ドーム26に接続される。これにより、上部電極15と薄膜ドーム26との接続強度を強くすることができる。これらの接続強度の強化は、特にMEMS素子を駆動回路41により駆動させる必要がある可変容量およびマイクロポンプとして適用する場合において有効である。
【0113】
<第4の実施形態>
図7を用いて第4の実施形態に係るMEMS素子について説明する。第4の実施形態は、MEMS素子が第1下部電極71と第2下部電極72とを有し、浮遊状態である上部電極15を介してこれらの間の容量値を検出する例である。なお、第4の実施形態において、第1の実施形態と同様の点については説明を省略し、主に異なる点について説明する。以下に、第4の実施形態について詳説する。
【0114】
[構造]
以下に、図7A−図7Bを用いて、第4の実施形態に係るMEMS素子の構造について説明する。
【0115】
図7Aは、第4の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図である。図7Bは、第4の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図であり、図7AのD−D線に沿った断面図である。
【0116】
図7Aおよび図7Bに示すように、第4の実施形態に係るMEMS素子は、第1下部電極71および第2下部電極72を有する。また、上部電極15は、平面における中央部において、その上方に位置するアンカー部25のみに支持される。すなわち、第1の実施形態におけるばね部16およびアンカー部14は存在しない。
【0117】
第1下部電極71および第2下部電極72は、基板10上に形成され、固定される。第1下部電極71および第2下部電極72は、基板10の表面に平行した平板形状である。第1下部電極71および第2下部電極72は、例えばAl、Alを主成分とする合金、Cu、Au、またはPtで構成される。第1下部電極71は同じ材料で構成された配線73に接続され、それを介して種々の回路に接続される。また、第2下部電極72は同じ材料で構成された配線74に接続され、それを介して種々の回路に接続される。
【0118】
第1下部電極71および第2下部電極72は、第1方向において互いに分離している。また、第1下部電極71および第2下部電極72はそれぞれ、上部電極15の一部に対向して配置される。より具体的には、第1下部電極71は上部電極15の第1方向における一方側に対向し、第2下部電極72は他方側に対向している。すなわち、第1下部電極71は平面において上部電極15の第1方向における一方側とオーバーラップし、第2下部電極72は他方側にオーバーラップしている。
【0119】
なお、図面において、第1下部電極71および第2下部電極72の平面における形状は、長方形であるが、これに限らず、円形や楕円形であってもよい。
【0120】
上部電極15は、基板10の表面に垂直方向(上下方向)に可動である。すなわち、上部電極15と第1下部電極71との間の距離、および上部電極15と第2下部電極72との間の距離は変化する。これに伴い、上部電極15を介した第1下部電極71と第2下部電極72との間の容量値が変化する。
【0121】
[動作]
以下に、第4の実施形態に係るMEMS素子の動作について説明する。
【0122】
第4の実施形態に係るMEMS素子において、第1下部電極71は配線73に接続されて種々の回路に接続され、第2下部電極72は配線74に接続されて種々の回路に接続される。また、上部電極15は、浮遊状態である。
【0123】
このため、第4の実施形態では、上部電極15と第1下部電極71、および上部電極15と第2下部電極72との間の距離の変化に伴い、上部電極15を介した第1下部電極71と第2下部電極72との間の容量C5が変化することで、MEMS素子を種々のデバイスに応用することができる。
【0124】
MEMS素子を圧力センサに適用する場合、MEMS素子は、第1下部電極71と第2下部電極72との間の容量値を検出する容量値検出回路40に接続される。
【0125】
より具体的には、容量値検出回路40は、一端が配線73に接続され、他端が配線74に接続される。すなわち、容量値検出回路40は、一端が配線73を介して第1下部電極71に電気的に接続され、他端が配線74を介して第2下部電極72に電気的に接続される。
【0126】
一方、MEMS素子を可変容量またはマイクロポンプに適用する場合、MEMS素子は、第1下部電極71および第2下部電極72に電圧を印加する駆動回路41に接続される。
【0127】
より具体的には、駆動回路41は、一端が配線50に接続され、他端が配線24に接続される。すなわち、駆動回路41は、一端が配線73を介して第1下部電極71に電気的に接続され、他端が配線74を介して第2下部電極72に電気的に接続される。
【0128】
[効果]
上記第4の実施形態によれば、第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0129】
<第5の実施形態>
図8および図9を用いて第5の実施形態に係るMEMS素子について説明する。第5の実施形態は、MEMS素子がレファレンス下部電極86およびレファレンス上部電極89を有する例である。なお、第5の実施形態において、第1の実施形態と同様の点については説明を省略し、主に異なる点について説明する。以下に、第5の実施形態について詳説する。
【0130】
[構造]
以下に、図8A−図8Bを用いて、第5の実施形態に係るMEMS素子の構造について説明する。
【0131】
図8Aは、第5の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図である。図8Bは、第5の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図であり、図8AのE−E線に沿った断面図である。
【0132】
図8Aおよび図8Bに示すように、第5の実施形態に係るMEMS素子は、薄膜ドーム26のキャビティ20内の端部に収納されるレファレンス下部電極86およびレファレンス上部電極89を備える。レファレンス下部電極86およびレファレンス上部電極89は、下部電極11および上部電極15と同じ構造を有し、同工程において同時に形成される。また、レファレンス下部電極86およびレファレンス上部電極89は、下部電極11および上部電極15とは絶縁分離される。下部電極11は、第1の実施形態における配線24に接続されず、浮遊状態である。
【0133】
レファレンス下部電極86は、基板10上に形成され、固定される。レファレンス下部電極86は、基板10の表面に平行した平板形状である。レファレンス下部電極86は、例えば下部電極11と同じ材料で構成される。レファレンス下部電極86は、浮遊状態である。
【0134】
レファレンス上部電極89は、レファレンス下部電極86の上方に形成される。レファレンス上部電極89は、基板10の表面に平行した平板形状であり、レファレンス下部電極86に対向して配置される。すなわち、レファレンス上部電極89は、平面においてレファレンス下部電極86にオーバーラップしている。図面において、レファレンス上部電極89の平面サイズは、レファレンス下部電極86の平面サイズよりも小さいが、これに限らず、同程度でもよく、また大きくてもよい。なお、図面において、下部電極11および上部電極15の平面における形状は、長方形であるが、これに限らず、円形や楕円形であってもよい。レファレンス上部電極89は、例えば上部電極15と同じ材料で構成される。
【0135】
レファレンス上部電極89は、平面における端部において、ばね部90の一端が接続される。ばね部90はレファレンス上部電極89と一体に形成され、例えばレファレンス上部電極89と同じ導電材料で構成される。ばね部90とレファレンス上部電極89とは1つに繋がった単層構造であり、ばね部90は平面においてメアンダ状の形状を有する。言い換えると、ばね部90は、平面において、細くかつ長く形成され、曲がりくねった形状を有する。このように、ばね部90の線幅、膜厚、および湾曲度合いのうち、少なくともいずれか1つを適宜設定することによって、ばね部90のばね定数をレファレンス上部電極89のばね定数よりも小さくする。
【0136】
ばね部90の他端には、アンカー部88が接続される。すなわち、レファレンス上部電極89は、ばね部90を介してアンカー部88に支持される。アンカー部88は、ばね部90と一体に形成され、同じ導電材料で構成される。アンカー部88は、基板10上に配置された配線87に接続される。配線87は、レファレンス下部電極86と同レベルに形成され、同じ導電材料で構成される。レファレンス上部電極89は、ばね部90およびアンカー部88を介して配線87に電気的に接続され、種々の回路に接続される。
【0137】
なお、レファレンス下部電極86およびレファレンス上部電極89は、下部電極15および上部電極15と同じ大きさ(面積)でなくてもよく、また、異なる材料であってもよい。
【0138】
図9Aは、第5の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例を示す平面図である。図9Bは、第5の実施形態に係るMEMS素子の構造の変形例を示す断面図であり、図9AのF−F線に沿った断面図である。
【0139】
図9Aおよび図9Bに示すように、レファレンス下部電極86およびレファレンス上部電極89は、下部電極15および上部電極15とは異なる薄膜ドーム26aのキャビティ20a内に形成されてもよい。
【0140】
薄膜ドーム26aは、薄膜ドーム26に隣接して形成され、一体に形成されたものである。すなわち、薄膜ドーム26aは、その内側から順に積層され、第1層18、第2層21、および第3層22とそれぞれ一体に形成された第1層18a、第2層21a、および第3層22aで構成される。
【0141】
[動作]
以下に、第5の実施形態に係るMEMS素子の動作について説明する。
【0142】
第5の実施形態に係るMEMS素子において、下部電極11は浮遊状態であり、上部電極15はばね部16およびアンカー部14を介して配線12に接続され、種々の回路に接続される。また、レファレンス下部電極86は浮遊状態であり、レファレンス上部電極89はばね部90およびアンカー部88を介して配線87に電気的に接続され、種々の回路に接続される。
【0143】
これら下部電極11および上部電極15と、レファレンス下部電極86およびレファレンス上部電極89とは、同じ構造を有する。
【0144】
このため、第5の実施形態では、上部電極15と浮遊電極である下部電極11との間の距離の変化に伴い、これらの間の容量C6が変化する。一方、レファレンス上部電極89は、薄膜ドーム26に接続されていない。すなわち、レファレンス上部電極89およびレファレンス下部電極86はいずれも固定電極であり、これらの間の容量Crefは変化しない。容量C6と容量Crefとを比較することで、MEMS素子を種々のデバイスに応用することができる。
【0145】
MEMS素子を圧力センサに適用する場合、MEMS素子は、上部電極15と下部電極11との間の容量C6と、レファレンス上部電極89とレファレンス下部電極86との間の容量Crefとを比較することで容量C6を検出する容量値検出回路40に接続される。
【0146】
より具体的には、容量値検出回路40は、一端が配線12に接続され、他端が配線87に接続される。すなわち、容量値検出回路40は、一端が配線12を介して上部電極15に電気的に接続され、他端が配線87を介してレファレンス上部電極89に電気的に接続される。
【0147】
なお、第5の実施形態では、上部電極15と浮遊電極である下部電極11との間の容量(浮遊容量)C6と、レファレンス上部電極89と浮遊電極であるレファレンス下部電極86との間のレファレンス容量(レファレンス浮遊容量)Crefとを比較することにより、容量C6を検出したが、これに限らない。下部電極11およびレファレンス下部電極86にそれぞれ配線を介して種々の回路を接続し、上部電極15およびレファレンス上部電極89を浮遊電極としてもよい。また、上部電極15およびレファレンス上部電極89にそれぞれ配線12,87を介して種々の回路を接続したうえで、下部電極11およびレファレンス下部電極86にそれぞれ配線を介して種々の回路を接続することにより、各電極間(上部電極15と下部電極11との間、およびレファレンス上部電極89とレファレンス下部電極86との間)の容量をそれぞれ検出して、これらを比較してもよい。
【0148】
[効果]
上記第5の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0149】
ところで、上部電極15の面積が大きくなると、上部電極15の残留応力等により上部電極15に反りが生じる。その結果、上部電極15と下部電極11との間で平行状態を保てなくなってしまう。特に、この反り量が温度やチップ間でばらつくと、電極間の容量値の検出精度が低下する。
【0150】
これに対し、第5の実施形態では、同じ薄膜ドーム26内に、不変のレファレンス容量Crefを有するレファレンス上部電極89およびレファレンス下部電極86が形成される。レファレンス上部電極89およびレファレンス下部電極86は、同じ薄膜ドーム26内の上部電極15および下部電極11と同じ環境下に置かれる。すなわち、レファレンス上部電極89は、上部電極15と同程度の反り量(反り比)を有することになる。このため、レファレンス容量Crefと容量C6とを比較して容量C6を検出することにより、反り量による容量値のバラつきを相殺することができる。その結果、温度やチップ間による電極間の容量値のばらつきを低減することができる。
【0151】
<第6の実施形態>
図10を用いて第6の実施形態に係るMEMS素子について説明する。第6の実施形態は、上部電極15がばね部100およびアンカー部101にも支持される例である。以下に、第6の実施形態について詳説する。なお、第6の実施形態において、第1の実施形態と同様の点については説明を省略し、主に異なる点について説明する。
【0152】
[構造]
以下に、図10A−図10Bを用いて、第6の実施形態に係るMEMS素子の構造について説明する。
【0153】
図10Aは、第6の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す平面図である。図10Bは、第6の実施形態に係るMEMS素子の構造を示す断面図であり、図10AのG−G線に沿った断面図である。なお、図10Bにおいて、後述するばね部100、アンカー部101、およびダミー配線102も合わせて示している。
【0154】
図10Aおよび図10Bに示すように、第6の実施形態に係るMEMS素子において、上部電極15は、平面における端部において、ばね部100の一端が接続される。ばね部100の他端には、アンカー部101が接続される。すなわち、上部電極15は、ばね部100を介してアンカー部101に支持される。アンカー部101は、基板10上に配置されたダミー配線102に接続される。ダミー配線102は、浮遊状態である。
【0155】
なお、図面において、ばね部100、アンカー部101、およびダミー配線102は、4個ずつ設けられているが、これに限らない。ばね部100、アンカー部101、およびダミー配線102は、1〜3個、または5個以上設けられてもよい。
【0156】
ばね部100は、例えば導電体または絶縁体の脆性材料で構成される。絶縁体の脆性材料として、第1層18に、SiO(SiO2)またはSiNが用いられる。導電体の脆性材料としては、WSiまたはAlSiが用いられる。アンカー部101は、例えば、ばね部16と一体に形成され、同じ導電材料で構成されるが、これに限らない。ダミー配線102は、例えば、下部電極11と同レベルに形成され、同じ導電材料で構成されるが、これに限らない。
【0157】
一方、上述したように、ばね部16は、延性材料で構成される。このとき、ばね部100の線幅、膜厚、および湾曲度合いのうち、少なくともいずれか1つを適宜設定することによって、ばね部100のばね定数をばね部16のばね定数よりも大きくする。
【0158】
[効果]
上記第6の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0159】
さらに、第6の実施形態では、上部電極15が延性材料で構成されたばね定数の小さなばね部16だけでなく、脆性材料で構成されたばね定数の大きなばね部100によっても支持される。これにより、上部電極15がばね部16のみで支持される場合と比較して、上部電極15のクリープ現象を抑制することができる。
【0160】
また、上部電極15が複数のばね部16,100によって支持される。言い換えると、上部電極15は、複数箇所の端部において支持されている。これにより、上部電極15の面積が大きい場合であっても、残留応力等によって生じる上部電極15の反り量を抑制することができる。
【0161】
なお、上述した上部電極15の反り量は、ばね部100としてばね部16と同じ延性材料を用いても抑制することができる。言い換えると、上部電極15を複数の延性材料からなるばね部16,100で支持してもよい。このとき、ばね部100の線幅、膜厚、および湾曲度合いのうち、少なくともいずれか1つを適宜設定することによって、ばね部100のばね定数をばね部16のばね定数よりも大きくすることが望ましいが、これに限らない。
【0162】
なお、上記各実施形態を矛盾が生じない範囲で適宜組み合わせることも可能である。
【0163】
その他、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で、種々に変形することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。例えば、実施形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする課題の欄で述べた課題が解決でき、発明の効果の欄で述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【符号の説明】
【0164】
10…基板、11…下部電極、14,25…アンカー部、15…上部電極、16…ばね部、20,20a…キャビティ、26,26a…薄膜ドーム、40…容量値検出回路、86…レファレンス下部電極、89…レファレンス上部電極。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に固定された平板形状の第1電極と、
前記第1電極の上方に対向して配置され、上下方向に可動である平板形状の第2電極と、
前記基板上において、前記第2電極を収納する第1キャビティを有する第1膜と、
を具備し、
前記第2電極は、ばね部を介して前記基板上に接続されたアンカー部に接続されるとともに、その上方において前記第1膜に接続されることを特徴とするMEMS素子。
【請求項2】
基板上に固定された平板形状の第1電極と、
前記第1電極の上方に対向して配置され、上下方向に可動である平板形状の第2電極と、
前記基板上において、前記第2電極を収納する第1キャビティを有する第1膜と、
を具備し、
前記第2電極は、その上方において前記第1膜に接続され、前記層は絶縁体を含むことを特徴とするMEMS素子。
【請求項3】
前記第1膜は、絶縁体を含むことを特徴とする請求項1に記載のMEMS素子。
【請求項4】
前記基板上に固定された平板形状の第3電極と、
前記第3電極の上方に対向して配置された平板形状の第4電極と、
をさらに具備し、
前記第1キャビティは、前記第4電極を収納することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のMEMS素子。
【請求項5】
前記基板上に固定された平板形状の第3電極と、
前記第3電極の上方に対向して配置された平板形状の第4電極と、
前記基板上において、前記第4電極を収納する第2キャビティを有する第2膜と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のMEMS素子。
【請求項6】
前記第1電極と前記第2電極との間の容量値を検出する回路をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のMEMS素子。
【請求項7】
前記回路は、前記第1電極および前記第2電極に電気的に接続されることを特徴とする請求項6に記載のMEMS素子。
【請求項8】
前記第1膜は脆性材料を含み、前記第1膜のばね定数は前記脆性材料によって決まることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のMEMS素子。
【請求項9】
前記第1膜のばね定数は、前記ばね部のばね定数よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のMEMS素子。
【請求項10】
前記第2電極のばね定数は、前記ばね部のばね定数よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のMEMS素子。
【請求項11】
前記第1膜と前記第2電極との距離は、前記第1電極と前記第2電極との距離よりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のMEMS素子。
【請求項1】
基板上に固定された平板形状の第1電極と、
前記第1電極の上方に対向して配置され、上下方向に可動である平板形状の第2電極と、
前記基板上において、前記第2電極を収納する第1キャビティを有する第1膜と、
を具備し、
前記第2電極は、ばね部を介して前記基板上に接続されたアンカー部に接続されるとともに、その上方において前記第1膜に接続されることを特徴とするMEMS素子。
【請求項2】
基板上に固定された平板形状の第1電極と、
前記第1電極の上方に対向して配置され、上下方向に可動である平板形状の第2電極と、
前記基板上において、前記第2電極を収納する第1キャビティを有する第1膜と、
を具備し、
前記第2電極は、その上方において前記第1膜に接続され、前記層は絶縁体を含むことを特徴とするMEMS素子。
【請求項3】
前記第1膜は、絶縁体を含むことを特徴とする請求項1に記載のMEMS素子。
【請求項4】
前記基板上に固定された平板形状の第3電極と、
前記第3電極の上方に対向して配置された平板形状の第4電極と、
をさらに具備し、
前記第1キャビティは、前記第4電極を収納することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のMEMS素子。
【請求項5】
前記基板上に固定された平板形状の第3電極と、
前記第3電極の上方に対向して配置された平板形状の第4電極と、
前記基板上において、前記第4電極を収納する第2キャビティを有する第2膜と、
をさらに具備することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のMEMS素子。
【請求項6】
前記第1電極と前記第2電極との間の容量値を検出する回路をさらに具備することを特徴とする請求項1に記載のMEMS素子。
【請求項7】
前記回路は、前記第1電極および前記第2電極に電気的に接続されることを特徴とする請求項6に記載のMEMS素子。
【請求項8】
前記第1膜は脆性材料を含み、前記第1膜のばね定数は前記脆性材料によって決まることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のMEMS素子。
【請求項9】
前記第1膜のばね定数は、前記ばね部のばね定数よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のMEMS素子。
【請求項10】
前記第2電極のばね定数は、前記ばね部のばね定数よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載のMEMS素子。
【請求項11】
前記第1膜と前記第2電極との距離は、前記第1電極と前記第2電極との距離よりも大きいことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のMEMS素子。
【図1A】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図1B】
【図1C】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図4E】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図7A】
【図7B】
【図8A】
【図8B】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【公開番号】特開2013−103285(P2013−103285A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247284(P2011−247284)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]